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2016.10.21 ノルウェーにおけるbcgの効果の持続性と経時的変化

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introduction

BCGは結核に対する唯一のワクチンであり、小児の粟粒結核と結核性髄膜炎を平均 86 %予防するとされている。一方で肺結核の予防効果については国や地域によって大きな差があり、未だ議論がなされている。

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BCG の長期間の有効性についてはこれまでほとんど情報がなかったが、ネイティブアメリカンとアラスカ原住民を対象とした BCG 試験( 2004 年)によって接種後最大 40 年間の有効性が示された。しかし同様の長期有効性は他の地域で実証されていない。

introduction

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そこで今回、ヨーロッパにおけるBCGの長期有効性を評価するため、 TuberculinSkinTest (以後TST )やBCG摂取歴のデータが適切に管理されている ( 結核サーベイランス <1962-2011> )ノルウェーにて後ろ向きコホートスタディを行った。

introduction

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登録基準1962-1975 に行われたノルウェー全国結核集団健診および BCG 摂取プログラムにおいてツベルクリン反応陰性が確認された後 BCG 接種を受けた 12-50 歳のヒト( 1948-1961 はデータが電子化されていなかったため除外した。)

METHODSStudy design and population

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除外基準・結核感染の既往がある・ TST の結果あるいは BCG 摂取歴が不明・ 11 歳以下、 51 歳以上( 11 歳以下の場合、通常は結核感染者と接触がない限り BCG 摂取がされていなかったため)

METHODSStudy design and population

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METHODSProcedures・スクリーニングは胸部レントゲンと TST を実施できる健診車を用いて行い、地域での結核発生状況に応じて 2-10 年おきに繰り返された。・全体を通した結核スクリーニングと BCG 接種プログラムへの参加率は 80-85 %であった。・ TST はノルウェーで標準的な方法であったアドレナリンフォンピルケ法( aP 法)で行われた。また、感度を上げる目的でツベルクリンの投与量は 1954 以降はそれまでの 2 倍量とされた。・ TST 陽性の判定は 4mm 以上の硬結をもってなされた。・ 1959 年までは液体の BCG が使用されており、それ以降 1973 年まではフリーズドライの BCG が使用された。

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METHODSProcedures

・登録の時点から結核の初感染、海外への移住、死亡、フォローアップの終了( 2011/10/31 )までの期間を人年として加算していった。・結核感染は国内結核登録を通じて把握し、戸籍を通じて死亡や移住を確認した。・国勢調査( 1960 、 1970 )から生年月日や性、結婚歴、家主の教育レベルや地位、同居人数、都市または農村といった居住環境に関する情報を入手した。

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METHODSStatistical analysis 

Cox 回帰モデルを用いて全期間と一定期間( 5 年および10 年間隔)における BCG 接種者と未接種者の結核感染率を比較し HRs と 95 %信頼区間を算出した。また、 Vaccine  Effectiveness ( VE )を VE=( 1-HRV/U ) として算出した。 v= vaccinated U=unvaccinated

Sensitivity analysisスクリーニング後 2 年以内に結核を発症した場合、すでに感染していたが TST で偽陰性となってしまったものと仮定して検討

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RESULTS

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RESULTS・登録時、 BCG 接種群では非接種群よりも「男性の割合が多い」「若年者が多い」「家主の教育レベルが高い」「同居者数が多い」という傾向にあった。・その他の characteristics については両群間で差はなかった。・フォローアップの中央値は接種群で 44 年、非接種群で41 年であった。

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RESULTS・ BCG 接種の有無に関わらず、カテゴリー内だけでみた年齢調整結核感染率は性別においてのみ有意差を認め、男性が女性の2倍以上高かった。( 2.2vs5.6per100 000person-years;; HR 2.46[95% CI 1.67-3.62])  eTable1 参照・一方で、各カテゴリーと BCG VE との間には有意な関係性を認めなかった。 eTable2 参照

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RESULTS

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Discussion・今回の研究では BCG の接種後 40 年間は結核のリスクをほぼ半減することができることを示した。・接種後の最初の 20 年間では約 60 %の予防接種効果が得られ、 20~ 40 年の間はエビデンスレベルは低いが約 40 %の効果を得られることがわかった。・ BCG は全結核感染に対し肺結核感染でよりリスクを減少させると推測された。・今回の研究の強みはサンプルサイズの大きさと、 TST ・ BCG 接種歴といったデータの適切な管理状況、 50 年間に渡る良好な結核サーベイランス、行政のデータベースへのアクセスが可能であったという点が挙げられる。

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Discussion接種後 5 年間の VE が予想よりも低くなった原因としては TST の厳格性の低さ(実際には感染していたが偽陰性となった)とスクリーニングで繰り返し TST 陰性となっていた低リスクの BCG 未接種患者の存在が挙げられる。緩い TST によって同様の低い VE となった研究は過去にも報告されている。その他の要因としては再接種者を初接種者として登録してしまった可能性が挙げられる。再接種にはブースター効果はないとされており、この場合初回接種として登録された個人はフォローアップの時点ですでに VE が減少傾向にあり、 VE の過小評価につながった可能性がある。

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接種後 5 年以降のデータは過去のノルウェーやフランス、イギリス、ネイティブアメリカンやアラスカ先住民の研究の結果と一致している。20 年以上の BCG の有効性についての報告があるのはネイティブアメリカンとアラスカ原住民の研究のみである。60 年以降の VE は 55 %で今回の研究の 40 年以降の VE と類似している。高い結核感染率を有する人口を対象としたネイティブアメリカンとアラスカ原住民の研究と比較すると今回の研究はパワー不足であるが、どちらも 20 年以上にわたる BCG の効果の持続性について示した。

Discussion

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Limitation

・ノルウェーにおける結核感染率はが非常に少ない点( 1940s-1970sにかけて国家レベルの結核制御プログラムと居住環境の改善により)・試験内でツベルクリンテストの厳格性にむらがあった点(ある期間では高容量のツベルクリンを使用しており、また 2 期性の試験を行ったのに対して、ある期間には各スクリーニングで 1 回しかツベルクリンテストを行っていなかった)。この点で、本当はツベルクリン反応陽性であったものが偽陰性となり、 VE が低く見積もられた可能性がある。

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Limitation○潜在的な選択バイアスと交絡因子の存在の可能性・ワクチン接種の辞退者はもともと結核感染の高リスクであった可能性があり、 VE の過剰評価につながった可能性がある。・非接種群は接種群に比べて高齢であったことから人生の早い段階で高い結核リスクにさらされてきた可能性があるが、何度も TST 陰性を保ってきているという点でむしろより低リスクの可能性があり、 VE の過小評価につながった可能性がある。・全ての潜在的な交絡因子を除外しきれているとは限らない。

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Conclusion今回の研究で BCG の効果は少なくとも 20 年間持続することが分かった。また、 BCG は肺結核の予防にも有効である可能性が示された。これらの点から、 BCG の費用対効果の高さについては見直される必要がある。BCG は今後も世界からの結核撲滅のために十分貢献していくと予想される。