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熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による原因菌の違い~ JCHO 中京病院 救急科 黒木雄一 大西伸也 大熊正剛 松浦裕司 宮尾大樹 中島紳史 大須賀章倫 上山昌史 形成外科 浅井真太郎 飛田晶 林絵実 須藤大雅 寺嶋咲絵

熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

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2014/6/5に日本熱傷学会総会で発表予定

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Page 1: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による原因菌の違い~

JCHO 中京病院 救急科 黒木雄一 大西伸也 大熊正剛 松浦裕司 宮尾大樹 中島紳史 大須賀章倫 上山昌史

形成外科 浅井真太郎 飛田晶 林絵実 須藤大雅 寺嶋咲絵

Page 2: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

日本熱傷学会総会・学術集会 利益相反 開示

所属・氏名

演題発表に関連し、開示すべき利益相反関係にある 企業などはありません。

様式1

Page 3: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

BURN SEPSIS

菌血症

呼吸器感染

熱傷創感染

VAP 尿路感染

カテーテル感染

Page 4: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

BURN SEPSIS

菌血症

呼吸器感染

熱傷創感染

VAP 尿路感染

カテーテル感染

菌血症は抗菌薬全身投与の絶対適応

Page 5: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

菌血症の頻度,菌種,抗菌薬感受性は 受傷後時期により変化しうる

手術

手術

手術

手術

手術

抗菌薬 抗菌薬 抗菌薬 抗菌薬

人工呼吸

カテーテル

院内感染(水平感染)

受傷後日数

Page 6: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

菌血症の頻度,菌種,抗菌薬感受性は 受傷後時期により変化しうる

手術

手術

手術

手術

手術

抗菌薬 抗菌薬 抗菌薬 抗菌薬

人工呼吸

カテーテル

院内感染(水平感染)

受傷後日数

Page 7: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

目的

熱傷患者に合併した

菌血症の頻度,菌種,抗菌薬感受性の

受傷後時期による違いを把握する

Page 8: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

熱傷入院患者 2011年4月~2013年3月

N=80

血液培養なし

N=43 軽快退院(n=39)

3日以内に死亡(n=4)

血液培養あり

N=37

対象

Page 9: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

方法1_血液培養

• 血液培養実施基準は設定しておらず,主治医の判断で実施しているが,Severe sepsis/ Septic shockの場合は必ず実施

• 1検体2セット採取

• 1セット以上から菌が検出された場合を陽性と判定

Page 10: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

方法2_血液培養実施時期の分類

血液培養が実施された日を,受傷後日数(d)

により以下の5つのPhaseに分類

Phase I:0-3d

Phase II:4-7d

Phase III:8-14d

Phase IV:15-28d

Phase V:29d-

Page 11: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

方法3_抗菌薬感受性率

• MRSAと真菌以外の菌については,主要な抗菌薬(PIPC,CEZ,CTM,CAZ,GM,LVFX,IPM)の感受性率を各時期別に算出した

• 各抗菌薬の感受性率は次のように算出した

感受性率=

検出された菌が抗菌薬に感受性を示した検体数

陽性検体数(MRSAと真菌を除く)

Page 12: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

方法4_抗菌療法 • 局所抗菌療法として,SDBにはバラマイシン®軟膏,DDB~DBあるいは感染した創にはゲーベンクリーム®またはテラジアパスタ®+カデックス®

合剤を使用

• 周術期には監視創培養で感受性のある抗菌薬を開創(術後2~3日)まで経静脈投与

• 菌血症と判明した場合やSevere sepsis/Septic shockの場合は,抗菌薬の経静脈投与をただちに開始

Page 13: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

患者背景 血培あり 血培なし P value

患者数 37 43 年齢

中央値(最小-最大) 70†(18-91) 53(0- 89) 0.024

男/女 25/12 21/22 0.115 TBSA %

中央値(最小-最大) 26‡(4-85) 12(2- 95) <0.001

Burn Index 中央値(最小-最大)

18‡(2-75) 6(1-95) <0.001

気道熱傷 n(%) 17†(46) 10(23) 0.037 受傷原因 n(%) 0.004

火焔 高温液体 電撃傷

28(75)

8(21)

1(2)

17(39)

22(51)

1(2)

死亡 n(%) 5(13) 4(9) 0.726

Page 14: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

菌血症頻度=血培陽性患者数/血培実施患者数(n)

11% 18%

29%

56%

82%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

0-3d

n=18

4-7d

n=22

8-14d

n=21

15-28d

n=18

29d-

n=11

Page 15: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

血培陽性率=陽性検体数/検体数(n)

10%

17%

28%

47% 49%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

0-3d

n=21

4-7d

n=24

8-14d

n=25

15-28d

n=21

29d-

n=37

Page 16: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

Phase I(0-3d):21検体/18患者

⇒2検体/2患者で陽性

PIPC

CEZ

CTM

CAZ

GM

LVFX

IPM

0

1

2

G+ G-

B群溶連菌

MSSA

100%

100%

100%

100%

100%

100%

100%

感受性率

検体数

Page 17: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

Phase II(4-7d):24検体/22患者 ⇒4検体/4患者で陽性

0

1

2

3

4

G+ G-

PIPC

CEZ

CTM

CAZ

GM

LVFX

IPM

※MRSAを除く

MRSA 緑膿菌

クレブシエラ

エンテロバクター

大腸菌

100%

100%

100%

66%

0%

0%

33%

感受性率

検体数

Page 18: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

Phase III(8-14d):25検体/21患者 ⇒7検体/6患者で陽性

0

2

4

6

G+ G-

PIPC

CEZ

CTM

CAZ

GM

LVFX

IPM

※MRSAを除く

MSSA MRSA

腸球菌

緑膿菌 大腸菌

マルトフィリア

検体数

100%

100%

100%

50%

16%

16%

83%

感受性率

Page 19: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

Phase IV(15-28d):21検体/18患者

⇒10検体/10患者で陽性

0

2

4

6

8

10

G+ G- 真菌

カンジダ

PIPC

CEZ

CTM

CAZ

GM

LVFX

IPM

※MRSAとカンジダを除く

CNS 腸球菌

MRSA

MSSA 緑膿菌

セラチア マルトフィリア

エンテロバクター

検体数

100%

100%

100%

70%

20%

20%

80%

感受性率

Page 20: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

Phase V(29d-):37検体/11患者 ⇒18検体/9患者で陽性

0

5

10

15

20

G+ G-

PIPC

CEZ

CTM

CAZ

GM

LVFX

IPM

※MRSAを除く

MRSA CNS 緑膿菌

クレブシエラ

エンテロバクター

アシネトバクター

大腸菌

シトロバクター

セラチア

マルトフィリア

検体数

100%

86%

46%

26%

9%

40%

感受性率

80%

Page 21: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

死亡症例 No.

年齢 性

TBSA Burn index

0-3d 4-7d 8-14d 15-28d 29d- 生存 日数

1 88 M

35 35 Ope ① ②

35 血培

MSSA MSSA MSSA MRSA

エンテロバクター

2 74 M

85 75 Ope ① ② ③④ ⑤⑥

61 血培

GBS 大腸菌 マルトフィリア マルトフィリア 緑膿菌

緑膿菌

3 81 M

45 28 Ope

① ② ③④ ⑤⑥ 59 血培 エンテロバクター 大腸菌

4 74 M

52 49 Ope ① ② ③ ④⑤

102 血培

シトロバクター クレブシエラ

5 77 F

65 65 Ope ① ② ③ ④ ⑤ 50 血培 MRSA セラチア セラチア

Page 22: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

死亡症例 No.

年齢 性

TBSA Burn index

0-3d 4-7d 8-14d 15-28d 29d- 生存 日数

1 88 M

35 35 Ope ① ②

35 血培

MSSA MSSA MSSA MRSA

エンテロバクター

2 74 M

85 75 Ope ① ② ③④ ⑤⑥

61 血培

GBS 大腸菌 マルトフィリア マルトフィリア 緑膿菌

緑膿菌

3 81 M

45 28 Ope

① ② ③④ ⑤⑥ 59 血培 エンテロバクター 大腸菌

4 74 M

52 49 Ope ① ② ③ ④⑤

102 血培

シトロバクター クレブシエラ

5 77 F

65 65 Ope ① ② ③ ④ ⑤ 50 血培 MRSA セラチア セラチア

Page 23: 熱傷患者の菌血症 ~受傷後時期による違い~

まとめと考察 • 受傷後日数とともに菌血症頻度は上昇した. ⇒日数が経過するほど,熱傷による非感染性SIRSとSepsisを判別しやすくなり,菌血症の可能性の高い患者に対して選択的に血液培養が実施されていたためと考えられた.

• 受傷後4日以降になると,MRSA以外に,緑膿菌をはじめとするグラム陰性菌が血液培養から検出されるようになった.

⇒CEZなどの狭域抗菌薬が効果を示すのは受傷後3日までで,4日以降は抗MRSA薬とともに,緑膿菌を含んだグラム陰性菌をカバーする抗菌薬を投与する必要があると考えられる.