View
4
Download
0
Category
Preview:
Citation preview
8 9
第1章
ドリルの種類と特徴
本章ではドリルを材質、構造、切れ刃数、外周刃形状、刃底形状などで分類し、特徴ついて解説します。ドリルを正しく理解して、適正に使えるようになりましょう。
図1.1に、ドリルを使用した穴加工の様子を、図1.2に、生産現場で使用されるいろいろなドリルを示します。図からわかるように、ドリルは穴をあけるための切削工具で、その種類は多種多様です。切削工具とは金属や木材を削るときに使用する刃物の総称です。 ドリルは「ツイストドリル」と呼ばれることもあります。「ツイスト(twist)」は日本語で「ねじる、ひねる」という意味で、ツイストドリルは「ねじれたドリル」という意味になります。ドリルを見ると、溝がねじれていることがわかります。ドリルの溝は穴をあける際に発生する切りくずを運搬する役割を担っており、切りくずは滑り台を駆け上がるように溝を通って排出されます。切りくずを排出しなければ穴をあけることはできないので、ドリルの溝がねじれていることは穴加工にとってたいへん重要なポイントといえます。ドリルを使用した穴あけは日曜大工から生産現場まで広く行われるもっとも基本的な加工ですが、正確な位置に、真っ直ぐで長く、真円な穴をあけることは難しく、精度の高い穴加工ができるか否かはドリルの形状と取り扱い、切削条件によって決まります。
5キリ
図1.3 機械加工で使用される図面の例 図1.4 木工作業で使用する「錐(きり)」
図1.2 いろいろなドリル
図1.3に、機械加工で使用される図面の例を示します。図に示すように、機械加工ではドリルによる穴加工を「キリ」と表記します。つまり、キリと書いてあれば「ドリルで穴をあける」という意味になります。キリは図1.4に示す木工作業で使用する「錐(きり)」に由来しています。
ドリル加工はキリと表記される
ひとくちコラム
図1.1 ドリルを使った穴加工の様子
ドリル
切りくず工作物送り方向
1 1 ドリルの種類と特徴
10 11
第1章
ドリルの種類と特徴
図1.5~図1.8に、JIS B 0170に規定されているドリルの各部の名称を示します。図に示すように、ドリルの各部には名称が付けられています。「(主)切れ刃」は工作物を削る刃に相当する箇所で、「溝」は工作物を削るときに発生する切りくずを運ぶ働きをします。溝は英語でフルート(flute)ですので、工具メーカのカタログなどでは溝を「フルート」と記載していることもあります。「直径」は刃部先端の寸法を示し、ドリルの呼び寸法になります。ドリルの直径は刃部先端でもっとも太く、シャンクに近づくほど細くなっています。ドリルの直径に関しては③-④で詳しく解説しています。「リード」はリーディングエッジ(溝とマージンが交わる線)が1回転したときの軸方向の長さです。 本図では、ドリルの基本を知るために知っておくべき主要な箇所の名称のみを紹介し、JISに記載されているすべての箇所の名称は記載していません。すべての名称を知りたい場合にはJISを参照してください。
図1.5 ドリルの各部の名称①
図1.6 ドリルの各部の名称②
図1.7 ドリルの各部の名称③
ボデー
全長
溝 シャンク
二番取り深さ
ランド
マージン
チゼルエッジ長さ
チゼルエッジ
二番取り直径
リード
シャンクの長さ溝長
すくい面
(主)切れ刃
マージン
溝
ヒール
切れ刃の長さ
外周コーナ
タング
1 2 ドリルの各部の名称
12 13
第1章
ドリルの種類と特徴
図1.8 ドリルの各部の名称④
図1.9 ドリルの直径と刃の長さ
溝の角度(θ2)
ランドの角度(θ1)
図1.9に示すように、ドリルを先端から見ると、刃が直径よりも長いことがわかります。ドリルは直径よりも長い刃を使って穴をあけていることになります。固定概念にとらわれず、いろいろな見方でモノを見ることが大切です。
ドリル(Drill)は「切削工具、錐(きり)」という意味ですが、「反復練習、訓練」という意味もあります。ドリルはぐるぐる回転しながら穴を深くしますが、この動きが反復練習して知識を深めることに似ているというのが由来です。 小学校のときに算数や漢字などの練習問題を「ドリル」といいました。なぜドリルというのか疑問に思った方も多いと思いますが、「ドリル」には反復練習を行い、知識を深めていくという意味もあるのです。
ドリルの刃は直径よりも長い!?
もう1つのドリル
ひとくちコラム
ひとくちコラム
ランド幅
溝幅
直径
切れ刃
Recommended