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原産性を判断するための基本的考え方整えるべき保存書類の例示 2013 6 月改訂 原産地証明室

原産性を判断するための基本的考え方と 整えるべき保存書類の例示

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原産性を判断するための基本的考え方と 整えるべき保存書類の例示

2 0 1 3年 6月改訂 経 済 産 業 省 原 産 地 証 明 室

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1.はじめに

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経済連携協定(以下、EPA)には、締約国内で生産された産品の関税を削減、撤廃するメリットがあります。このメリットを享受するためには、輸出する産品がEPA締約国の産品(原産品)であることを明らかにする必要があり、このため、各EPAでは、産品が原産品であるか否かを特定するルール(原産地規則)を定めています。 原産地規則には様々なルールがありますが、その中で最も分かりやすい例は、締約国内で産出された鉄鉱石や生育された牛のように、締約国内で完全に生産されるもの(完全生産品)です。 このほか、第三国から輸入した産品を材料や部品として産品が製造される場合には、それぞれの産品ごとに定められた原産地規則に適合した実質的な生産・加工作業が必要になります。 実質的な生産・加工作業の基準として、関税番号変更基準、付加価値基準、加工工程基準がありますが、本資料では、最も利用の多い関税番号変更基準と付加価値基準の基本的な考え方、及びこれらの基準に合致していることを明らかにする資料の作成例を紹介します。 この資料が皆様の原産地証明制度に対する理解を深めるための一助となり、コンプライアンスの向上につながるとともに輸出貿易の健全な発展に寄与できれば幸いです。

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~最終産品と産品を生産するために使用した非原産「材料・部品」との間で関税分類番号が変更されている場合 (変更されるような生産・加工が行われた場合)に、当該産品を原産品であると認める基準~

2.関税番号変更基準 (CTCルール)

51.07 51.05 関税分類番号が4桁レベルで変更!

(51.05項→51.07項)

羊毛 毛糸

当該産品で求められる規則が、例えば、CTHであれば、関税分類番号が4桁レベルで変更されていれば、日本の原産品として認められる。

日本 第三国

輸入 紡績

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①「産品」とその製造に使用した全ての「材料・部品」との対比表【次頁参照】 ②対比表に記載された「材料・部品」で製造されたことを裏付ける資料

総部品表 製造工程フロー図 生産指図書 各「材料・部品」の投入記録(在庫「蔵入蔵出」記録) 等

③「原産」と扱った「材料・部品」については、その原産性を示すための根拠となる資料 国内調達「材料・部品」については、その供給者からの情報(原産品である旨の資料 P16、P17参照) 当該「材料・部品」がEPA相手国原産品である場合は、締約相手国発給のCOの写し (締約相手国原産品であれば関税番号変更の有無に関係なく使用できるので、HS番号の特定は不要)等

④CO発給を受けた輸出産品のインボイスの写し、船積書類、発給されたCOの写し

保存書類の例示

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(これらの根拠資料(名称は問わない)については、必ずしも原産地証明担当部門で保管されている必要はなく、 適宜、関係部署から得られる社内体制となっていればよい。)

基本的考え方

◎原産地証明書(CO)の発給を受ける産品の部品表等に関税分類番号(HS番 号)を振り、「産品」と使用した「材料・部品」との間でHS番号が変更され ているか否かによって原産性を判断する。

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HS番号 産品名 HS番号 部品名 単価

3917 プラスチック製管

3923 プロテクター

3926 Drive gear

4016 ワッシャー

5901 織物製テープ

7318 Receptacle

7318 Tapping screw

7318 Nut

7318 Class fuse

7318 Spounge seal

7320 Surge absorbers

7320 ばね

8310 サインプレート

8003 PB free Solders(はんだ)

8533 電気抵抗器

8534 印刷回路

8536 接続子

9607 ファスナー(留め具)

(8443) Tape cartridge 原産(マレーシア) Form AJ(マレーシア発給):累積※

(8501) モーター 原産(マレーシア) Form AJ(マレーシア発給)

(8505) フェライトコア 原産(マレーシア) Form AJ(マレーシア発給)

(8532) LED 原産(日本) サプライヤーからの資料(●●製作所△△工場)

(8544) 銅線 原産(日本) サプライヤーからの資料(○○株式会社△△工場)

原産情報等

8544.30 ワイヤーハーネス

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【対象産品】生産国:日本、製造場所:●●工場、仕向地:タイ 【協定名】日アセアン協定 【適用した原産地規則】関税番号変更基準:CTH(4桁変更)

・産品と、使用した「材 料・部品」のHS番号 が、原産地規則で求め られているレベル(こ の例では4桁)で変更 されていることを確認 できればよい。 ・非原産とした材料につ いては、取引書類も原 産性にかかる書類も必 要なし。 ・デミニマス(後述)適 用等以外にはコスト情 報は原則不要。

・原産材料については、 HS番号の記載は原則 不要。 ・原産材料であっても、 HS番号の変更が確認 できれば、非原産とみ なすことも可能。(こ の場合、サプライヤー からの資料は不要)

「原産(日本)」の部品のため、HS番号の変更は不要!

比較してHS番号が変更されていることを確認!

作成日:○年○月○日

関税番号変更基準(CTCルール)利用における対比表の例(AJCEP利用を想定)

・資料を提出したサプライ ヤーも、納入部材に関す る同様の対比表を作成す る。 ※累積とは・・・EPA締約国の原産材料Xが、日本で生産される産品Yを生産するために使

用される場合、産品Yの原産資格の判定に際して、原産材料Xも日本の原産 材料とみなすことができる規定。

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②原産性を判断するにあたり、「産品」と使用した「材料・部品」との間でHS番 号が変更されている必要があるが、使用「材料・部品」のHS番号については、 適用されるCTCルールに合わせ、必要な桁数まで確認すればよい。 (1)CTSH(6桁(号)レベルの関税番号変更基準)であれば、6桁まで (2)CTH(4桁(項)レベルの関税番号変更基準)であれば、4桁まで (3)CC(2桁(類)レベルの関税番号変更基準)であれば、2桁まで ※生産行為を経ることで完成品である「産品」と当該産品を生産するために使用した「材料・部品」との間 において、原産地規則で定められている産品ごとのHS番号の変更基準をみたしていることが確認できれ ば、当該「材料・部品」を構成する“材料・部品”にまで遡ってHS番号を確認する必要はない。

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留意事項

③使用した非原産「材料・部品」の品目数が膨大で個別の管理が困難な場合には、 生産工程等の実態に合わせ、部品一点一点ではなく、ある程度の固まりとしての 部分品として、管理できる。

①HS番号は2002年度版を使用することに留意(日ベトナム、日スイス、日イ ンド、日ペルーは2007年度版)。 なお、産品のHS番号の正確な確認のためには、輸入者、又は、輸入者を通じて 輸入締約国の税関に確認することが望ましい(最終的な産品のHS番号は輸入国 税関の判断が優先されるため)。

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④輸出産品と同一のHS番号に属する「材料・部品」について、輸出産品に適用される CTCルールに照らして生産行為を経てもCTCルールを満たさない場合には、以 下の対応が考えられる。 ・CTCルールで求められるレベルのHS番号の変更がない非原産の「材料・部品」について、 原産品である「材料・部品」を使用する ・デミニマス※規定利用の可能性を検討する ・原産地規則に「又は付加価値基準」と定められていれば付加価値基準(次項以降参照)の 利用の可能性を検討する

⑤同一産品について、継続的にEPAを利用する場合には、社内で当該産品がCTC ルールを満たすことに変更がないことを定期的に確認し、原産性を判断するための 要素に変更があった場合には、原産性の有無を再検証する必要がある。

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(※)「デミニマス(僅少)」とは、一部の非原産材料がCTCルールを満たさない場合であっても特定の割合以下(ごく僅か)であれば無視してよいというもの。 AJCEPの場合、例えば HS50~63類(繊維品)では産品の重量の10%以下、HS28~49類及びHS64~97類(その他工業品)では産品のFOB価格の10%以下などが 対象。ただし、デミニマスは協定ごとに、対象品目・割合が大きく異なることから、利用を検討する際には協定を十分に確認する必要がある。

留意事項

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~産品の生産工程で形成された“原産性があると認められる部分”を価格換算し、その価格の 割合(原産資格割合)が一定の基準を超えた場合にその産品を原産品であると認める基準~

3.付加価値基準 (VAルール)

乗用車

FOB価格=$20,000

・エンジン ・トランスミッョン ・サスペンション ・ブレーキ類 ・ベアリング ・タイヤ ・ホイール

加工・組立

総額$3,000 ・カーオーディオ ・灯火類 ・ミラー類

・その他

輸入

当該産品で求められる規則が、例えば、VA40%基準であれば、原産資格の割合が40%を超えていれば、日本の原産品として認められる。

QVC = $20,000-$3,000

$20,000 ×100 = 85% > 40%

日本

第三国

※この場合、原産資格割合は85%

加工

原産材料

非原産材料

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基本的考え方

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◎産品の生産工程により形成された「原産資格割合」(原産材料価格を 含む)を算出し、一定の基準値(「閾値(しきいち)」といわれるこ ともある)を超えるか否かによって原産性を判断する。

➣ 非原産材料を特定することで、又は、原産材料を特定しその価額合計を材料費全体 から差引くことで非原産材料価額(VNM)を求め、FOB価格に対する割合を算出 (控除方式)

➣ 原産部分(原産材料価額+生産コスト(労務費・製造経費)+利益等)を積上げた額のF OB価格に対する割合を算出(積上げ方式)

非原産材料(VNM)

原産材料

材料費

労務費 製造経費販管費等諸経費

利益

FOB価格

製造原価

原産部分

FOB―VNMFOB

VA(%) × 100=

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③「原産」と扱った「材料・部品」については、その原産性を示すための根拠となる資料 国内調達「材料・部品」については、その供給者からの情報(原産品である旨の資料 P16、P17参照) 当該「材料・部品」がEPA相手国原産である場合は、締約相手国発給のCOの写し 等

④CO発給を受けた輸出産品のインボイスの写し、船積書類、発給されたCOの写し

保存書類の例示

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①原産資格割合を示す計算ワークシート 【次頁参照】 (生産に使用した全ての「材料・部品」の単価、原産・非原産の区別、原産情報、コスト及び利益等を記載。 HS番号の記載は原則不要。)

②計算ワークシート上の数字の妥当性を示す資料及び記載された「材料・部品」で製造

されたことを裏付ける資料 総部品表 (原産・非原産を特定したもの。ただし、積上げ方式の場合、積み上げるべき原産材料を特定すれば足りる。)

製造工程フロー図 生産指図書 製品在庫(蔵入蔵出)記録 各「材料・部品」の投入記録(在庫「蔵入蔵出」記録) 等

【控除方式の場合】 非原産材料単価の算出根拠資料(帳簿、伝票、インボイス、契約書、請求書等)

【積上げ方式の場合】 製造原価計算表 積み上げるべき原産材料単価、生産コスト等の算出根拠資料 (帳簿、伝票、インボイス、契約書、請求書、支払記録等)

(これらの根拠資料(名称は問わない)については、必ずしも原産地証明担当部門で保管されている必要はなく、 適宜、関係部署から得られる社内体制となっていればよい。)

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(HS番号) 部品名 原産/非原産 単価 原産情報 価額情報

(8443) Tape cartridge 原産(マレーシア) ¥・・・ Form AJ(マレーシア発給):累積 在庫出庫記録、輸入インボイスの写し

(8501) モーター 原産(マレーシア) ¥・・・ Form AJ(マレーシア発給):累積 在庫出庫記録、輸入インボイスの写し

(8505) フェライトコア 原産(マレーシア) ¥・・・ Form AJ(マレーシア発給):累積 在庫出庫記録、輸入インボイスの写し

(8532) LED 原産(日本) ¥・・・ サプライヤー証明書(●●製作所△△工場) 在庫出庫記録、取引契約書、国内インボイス

(8544) 銅線 原産(日本) ¥・・・ サプライヤー証明書(○○株式会社△△工場) 在庫出庫記録、取引契約書、国内インボイス

原産材料価格合計 ¥1,100

(3917) プラスチック製管 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(3923) プロテクター 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(3926) Drive gear 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(4016) ワッシャー 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(5901) 織物製テープ 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(7318) Receptacle 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(7318) Tapping screw 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(7318) Nut 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(7318) Class fuse 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(7318) Spounge seal 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(7320) Surge absorbers 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(7320) ばね 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(8310) サインプレート 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(8003) はんだ 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(8533) 電気抵抗器 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(8534) 印刷回路 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(8536) 接続子 非原産 ¥・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

(9607) ファスナー(留め具) 非原産 \ ・・・ 単価算出のワークシート、数字を裏付ける台帳・伝票、購入インボイス、在庫出庫記録

非原産材料価格合計 ¥1,400

生産コスト・経費 - ¥2,700 製造原価明細

- ¥400 製造原価明細

- ¥200 製造原価明細、国内輸送取引明細、通関業者取引明細等

非材料費合計 ¥3,300

- ¥5,800 取引契約書、インボイスの写し, 工場出荷記録等

外国為替レート US$1 = ¥90 $64

FOB価格

利益

輸送コスト・チャージ

【対象産品】生産国:日本、製造場所:●●工場、仕向地:タイ 【協定名】日アセアン協定 【適用した原産地規則】付加価値基準:VA40%以上

➣原材料等の構成 (※HS番号の記載は原則不要) ・控除方式には、原産材料の価額 は出てこないので、控除方式を 用いる限り原産材料単価の根拠 を示す資料は不要。ただし、原 産材料価額を積み上げる場合に は、当該価額の根拠を示す資料 が必要。 ・控除方式or積上げ方式について は、原産/非原産材料の点数、 価格の大小等を考慮し、より簡 便な方法を自由に選択可能。

・材料単価決定方式は、各企業の 採用する会計基準に基づいて決 められる。

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・積上げ方式のうち、非材料費 (労務費、諸経費、利益等)を 付加価値分に含める場合には、 当該価額を裏付ける資料が必 要。

作成日:○年○月○日

控除方式の場合、「非原産材料」の価格1400円を特定し、FOB価格5800円から1400円を差し引いて、付加価値4400円(76%)を算出。

付加価値基準(VAルール)利用における計算ワークシートの例(AJCEP利用を想定)

積上げ方式の場合、 まず「非材料費」(①)がVA基準値を超えるか確認する。この場合、3300円のFOB価格に対する割合(約57%)を算出。この段階で基準値を超えているので、材料費を計算する必要なし。 超えない場合、「非材料費+原産材料(②)費」がVA基準値を超えるまで積み上げていくと簡便!

HS番号 産品名 FOB価格(出荷価格) FOB価格(円換算) 付加価値 非原産材料価格 原産資格割合 基準値

8544.30 ワイヤーハーネス $64 ¥5,800 ¥4,400 ¥1,400 76% 40%

Page 13: 原産性を判断するための基本的考え方と  整えるべき保存書類の例示

①自社の生産コストや利益等の非材料費だけで 原産資格割合が基準値を超える 場合、自社の内製品や他社から購入した「材料・部品」の材料は非原産とみな してよい(原産性を確認する必要なし)。

②全ての材料費を非原産とすると原産資格割合が基準値を超えない場合、自社の 内製品や原産性の判断がし易い購入「材料・部品」から原産性を確認し、原産性 が確認できた当該「材料・部品」費を加算することで基準値を超える場合には、 その他の材料は非原産とみなしてよい。

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④同一産品について、継続的にEPAを利用する場合には、為替レート、FOB 価格変更、材料価格変更等の価格変動により、原産資格割合が基準値を下回る 可能性もあるため、社内において実績単価等の変動を定期的に確認し、原産資 格割合を満たしていることを検証する必要がある。 (例:産品の原産性に影響を与え得る材料(単価の高いもの等)を重点管理する、 多少の価格変動に対応できるように原産資格割合を基準値よりも高めに積み上げておく等)

留意事項

③「材料・部品」単価は各企業の採用する会計基準に基づいて算出してよい。

Page 14: 原産性を判断するための基本的考え方と  整えるべき保存書類の例示

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4.その他参考

Page 15: 原産性を判断するための基本的考え方と  整えるべき保存書類の例示

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②原産性を示すための根拠となる資料やインボイスの写し等で、CTCルールと VAルールのそれぞれの判断の際に共通して使用する資料については、両ルー ル用にそれぞれ保存する必要はなく、1部だけ保存すれば足りる。

①CTCルールによる原産性判断の際に用いる「輸出産品とその製造に使用した 全ての『材料・部品』との対比表」とVAルールでの判断の際に用いる「原産 資格割合を示す計算ワークシート」は、別々の表でも統合した表でも構わない。

CTCルールとVAルールの両方を同時に満たす必要がある場合

Page 16: 原産性を判断するための基本的考え方と  整えるべき保存書類の例示

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原産品判定申請資格者の対象

①輸出産品の原産品判定依頼を行うことができるのは、生産者又は原産性に係る 生産情報を有する輸出者。

②生産者とは、産品又は材料の生産を行う者で、輸出しようとする物品が特定原 産品であることを明らかにする資料を提出できる者をいう。例えば、A社が生 産に係る、企画、仕様の決定、原材料の調達、支給又は指定等を行ってB社に 製造させるなど、製造全般の管理・指揮等を行っている場合には、A社とB社 のうち、当該産品が特定原産品であることを明らかにする資料を提出できる方 が申請を行うことができる。

メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、フィリピン、インド、ペルー

ブルネイ、ASEAN、スイス、ベトナム

5年 3年

◎輸出者及び生産者には、原産地証明書の発給日の翌日から以下の期間、原産 地証明書の発給を受けた物品に関する書類を保存する義務が課されている。

保存期間

Page 17: 原産性を判断するための基本的考え方と  整えるべき保存書類の例示

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・サプライヤーに対して資料の提 出を依頼する際に、原産地規則 等に関し十分な説明を行う。 ・サプライヤーへの負担を最小化 すべく、CTCルール又はVA ルールを満たすために必要最低 限の部分について調査依頼する ことが望ましい。例えば、VA ルールを採用する場合、まず自 社の付加価値分を算定し、その 上で基準を満たすのに必要最低 限の原産材料価格分を積み上げ るべく、価格が高い部品や、原 産性の判定がし易い部品から優 先して調査依頼する等も一案。

原産品であることを明らかにするサプライヤーからの資料の例

・設計・仕入先変更等により原産 性に変更があった場合には、サ プライヤーから適宜情報提供を 受けられるように、適切な連絡 体制を整えておくこと。

原産性を明らかにする資料に記載が必要な内容としては、本件資料の作成年月日、製造された物品の供給先 名、製造者の氏名又は名称、住所、担当者の氏名、所属部署名、連絡先、利用する協定名、製造された物品 が原産品であることを証明する旨の記載、製造された物品の品名(英文)、物品を特定できる情報(製造番 号、型番等)、HS番号、判定基準、生産地(工場名)が記載されていればよい。以下の様式は、上記内容 を記載した資料の一例であるが、上記の内容が記載されていれば、資料の様式は問わない。

(1)サプライヤーからの資料によって原産品であることを明らかにする場合

Page 18: 原産性を判断するための基本的考え方と  整えるべき保存書類の例示

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①当該部品の製造に係る契約書が存在する場合 (a)当該部品の製造に係る契約書の写し。ただし、当該契約書には、部品の名称や、部品を特定するために必要 な情報(型番、素材や寸法等)、発注者名、受注者名が記載されている必要があるが、当該事項が発注書や設 計図のような形であって、契約書の別紙とされていてもかまわない。 (b)当該部品及びその他の材料等と最終産品との間で、HS番号が変更されていることは、発注者である産品の 生産者がそれぞれにHS番号を付与し、確認すればよい。一方、VAルールを利用する場合には、当該契約書 の写しに、「付加価値○○%」と記載し、併せて受注者側の担当者の氏名、所属部署、連絡先も明記しておく 必要がある。 ②当該部品の製造に関する個別の契約書は存在しないが、「基本契約書」など一般的な契約を締結している場合 (a)基本契約書において「個別の発注は別途発注書による。」等の記載がある場合には、当該基本契約書の写し 及び個別の発注書の写し。ただし、発注書には、部品の名称や部品を特定するために必要な情報(型番、素材 や寸法等)発注者名、受注者名、発注番号、発注日(基本契約に基づくものか確認するため)が記載されてい る必要がある。

(b)当該部品及びその他の材料等と最終産品との間で、HS番号が変更されていることは、発注者である産品の 生産者がそれぞれにHS番号を付与し、確認すればよい。一方、VAルールを利用する場合には、当該発注書 の写しに、「付加価値○○%」と記載し、併せて受注者側の担当者の氏名、所属部署、連絡先も明記しておく 必要がある。 ③ ①及び②に共通して保有する必要のある資料 (a)当該契約書や発注書に基づいて製造され、納品された部品であることを確認する書類として納品書の写し。 納品書には部品名及び型番、個数、製造工場名、発注番号、発注日が記載されている必要がある。 (b)受注者が、さらに当該部品の使用材料を外注している場合には、生産者と受注者との間の契約書又は基本契 約書中に「外注する場合は発注者の同意を得ること。」という趣旨の条項がある場合には、受注者と外注先と の間の契約書又は基本契約書に位置づけられた発注書などにおいて、上記の必要事項が記載されているものを、 受注者が入手し、原産品であることを確認していればよい。 ※ただし、相手国税関から輸出産品の原産性に係る情報提供要請があった場合には、当該産品の輸出者・生産者に供 給した「材料・部品」の製造過程に係る説明等、当該「材料・部品」が原産性を有していることを明らかにするた めの別途の対応が求められる可能性がある。

(2)生産者が保有する資料によって原産品であることを明らかにする場合

Page 19: 原産性を判断するための基本的考え方と  整えるべき保存書類の例示

「内製品」の扱い

【基本原則】 1.輸出産品の原産性を確認するため、VAルールを利用して原産資格割合を計算す る際に、当該輸出産品を構成する「材料・部品」に内製品(自社製造品)が含まれ、 当該内製品が原産地規則を満たす場合には、当該内製品の価格を算出する根拠が明 確かつ客観的であれば、当該内製品を原産品として価格計算に含めることができる。 2.ただし、輸出産品を構成する各々の「材料・部品」を“固まりとしての部分品” として捉える場合において、それぞれの“固まりとしての部分品”としてのくくり 方が合理的である必要がある。VAルールの基準値を満たすために客観的に見て合 理的でない組合せであるとの疑義をもたれることのないよう、「材料・部品」の組 合せをどのように行って“固まりとしての部分品”と捉えるのかに注意する必要が ある。 (注)部品Aと部品Bを各々単体として原産資格割合を計算した場合、Aは原産品であり、Bは基準値を満たさな いが、AとBを(客観的に不合理であるにもかかわらず)“固まりとしての部分品”としてくくり、原産資 格割合を計算すると基準値を超えるような場合もあるため、合理性のない組合せであると判断されることの ないよう、注意が必要。 【例】 例えば、内製品の価格を算出する際に、以下のような根拠に基づいた場合は、明確かつ客観的であると考えら れる。 ・内製品を完成品の「材料・部品」としてではなく、単体で第三者向けに販売する場合の価格

(注)単体で輸出した実績がある場合には、そのFOB価格から非原産材料費を差し引いた価格がVAルールの基準値を超える

場合には原産品とみなせる。

・代替可能な同様の「材料・部品」を購入した場合の価格 ・その他第三者が判断した場合に、適正と認められる価格 (市場において適正であると評価することが可能な価格) 18

Page 20: 原産性を判断するための基本的考え方と  整えるべき保存書類の例示

機密性○ 機密性○

生産コスト・経費

利益

輸送コスト・チャージ

原産材料

産品

部品A

非原産材料

部品B

部品C

ケ ケース① ケース② 非材料費のみで基準値 を超える場合

非材料費のみで基準値 を超えない場合

非材料費(生産コスト・経費、利益、輸送コスト・チャージ)のみで基準値※を超えれば、 原産材料は、非原産材料とみなすことができる(=原産性を確認する必要なし)

非材料費(生産コスト・経費、利益、輸送コスト・チャージ)のみで基準値を超えなければ、原産性を証明しやすい原産材料を積み上げ、基準値を超えればOK! 残りの原産材料はケース①同様に非原産材料とみなすことができる。

サプライヤーから購入した部分品の扱い

部分品の取り扱いの例(VA40%基準の場合)

部品A

部品Aが、国内サプライヤーからの購入品である場合、当該部品に使用される材料や部品一点一点ではなく、生産工程等の実態に沿い、部品a、b、cのよ

うに、いわゆるサブアセンブリーのような固まりとしての部分品として管理できる。

部品a-1

部品a-2

部品c-2

部品c-1

部品b-1

部品a-1-1 部品a-1-2 部品a-2-1 部品a-2-2 部品a-2-3 部品b-1-1 部品b-1-2 部品c-1-1 部品c-1-2 部品c-2-1 部品c-2-2

※基準値については、為替などによる影響を考えて、例えば+10%程度(50%)の余裕を持って計算しておくことが望ましい。

非材料費

材料費

部品b

部品a

部品c 例:エンジンを構成する部品として、エンジン・コントロールユニット・ケース、顕微鏡であればボディ・レンズ・ステージのような固まりで管理できる。 19

Page 21: 原産性を判断するための基本的考え方と  整えるべき保存書類の例示

Step1

輸出産品の HS番号の確認

輸出産品の 原産地規則の確認

輸出産品の 原産性確認

原産地証明書の 発給申請・取得

EPAを利用するには先ず輸出産品の6桁ベースのHS番号の確認が必要。 HS番号の正確な確認のため、輸入者(場合によっては、輸入国税関) にも照会。 HS番号はHS2002年版を使用することに留意(日ベトナム、日スイス、 日インド、日ペルーはHS2007年版)。

輸出する産品の原産地規則(例えばCTCやVA)が把握できたら、 本資料を参考にしながら当該産品が原産品であるか否かを確認!

確認できたHS番号の産品のEPAを使った場合の税率を確認(現状の 関税率よりも有利なのかどうか)。 個別のEPA税率は、各協定の「品目別関税撤廃スケジュール(譲許表)」や JETROの「世界各国の関税率」で確認。

確認したHS番号の産品がEPAの特恵を受ける資格があるのかを確認 するための原産地規則を確認。 個々の輸出産品の原産地規則は、各協定の「品目別規則」で確認。

輸出する産品が原産品であることが確認できたら、日本商工会議所の HPにアクセスし、原産地証明書の発給申請手続を開始。

EPA税率 の確認

Step4

Step2

Step3

Step5

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EPAが初めての方に。 (参考)EPA原産地証明書取得までの手順

※ 協定上、相手国税関は、当省に対し、原産地証明書の内容の確認を求めることができると定められており、確認内容によっては、当省から 原産地証明書の利用者の方に別途の対応をお願いすることがあります(英語による資料の作成をお願いする場合があります)。

Page 22: 原産性を判断するための基本的考え方と  整えるべき保存書類の例示

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参考情報・資料

お問い合わせ先

✔EPAとは何か、EPA活用に必要な手順について知りたい場合には・・・・。

http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/epa_katsuyo/index.html http://www.jcci.or.jp/international/certificates-of-origin/

✔EPAの原産地証明書取得手続の詳細について知りたい場合には・・・・。 http://www.jcci.or.jp/gensanchi/flow.html http://www.jcci.or.jp/gensanchi/epa_manual.html

✔認定輸出者自己証明制度について知りたい場合には・・・・。

http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/epa_katsuyo/080616EPA_origin.html

✔本資料について(ご質問及びご意見等) ※経済産業省貿易経済協力局原産地証明室 TEL:03-3501-0539 FAX:03-3501-5896

✔EPAの原産地証明書について 日本商工会議所国際部 TEL:03-3283-7850 FAX:03-3216-6497 ※判定、発給の個別の案件については、申請先の各事務所までご連絡ください。 お問い合わせ先:http://www.jcci.or.jp/gensanchi/office_list.html

✔EPA輸出全般について JETRO東京貿易投資相談センター TEL:03-3582-5171 JETRO大阪本部貿易投資相談センター TEL:06-6447-2307