2
38 39 調調調調8読んで,かんそうをもとう 読む 2 5 10 5 10 調15 はじめ おわり まとまり(段 だん 落)に気をつけて読みましょう。 「問い」と「答え」は何か,どのように「答え」を 出したかを,読んでいきましょう。 40 41 5 10 8885 新版教科書クローズアップ! 教材 教材 10 沿「イルカのねむり方」 「ありの行列」 三部構成(はじめ・中・おわり)を 視覚的にとらえやすいよう示している。 「実験・観察」「結果」「考察」に それぞれ傍線を引き、 3・4段落以降にも同じように 線を引くよう指示を入れている。 「どんな『問い』が、 どの段落に書いてありますか」と 投げかけ、子どもに問いを 見つけるよう促している。 調14 15 報告

報告 「イルカのねむり方」 「二教材構成」のよさを生かす...39 38 イルカは、魚と同じように水の中でくらしています。ただ、 どんなねむり方をしているのでしょうか。いるときでも、いきはしなければなりません。イルカは、いつ、魚とちがって、ときどき水面に上がっていきをします。

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Page 1: 報告 「イルカのねむり方」 「二教材構成」のよさを生かす...39 38 イルカは、魚と同じように水の中でくらしています。ただ、 どんなねむり方をしているのでしょうか。いるときでも、いきはしなければなりません。イルカは、いつ、魚とちがって、ときどき水面に上がっていきをします。

3839

 イルカは、魚と同じように水の中でくらしています。ただ、

魚とちがって、ときどき水面に上がっていきをします。ねむって

いるときでも、いきはしなければなりません。イルカは、いつ、

どんなねむり方をしているのでしょうか。

 動物のことを調べている関せ

口ぐち

さんは、そのことを知りたいと

思いました。そこで、水族館に行って、一日じゅうイルカをかんさ

つすることにしました。しかし、いくら見ていても、イルカたち

はいつもおよいでいて、ほとんどじっとしていることはありませ

んでした。これでは、いつねむっているのか分かりません。

 関口さんは、およぐはやさと、水面に上がっていきつぎをする

回数を調べてみることにしました。すると、夜中には、およぐ

はやさがゆっくりとなり、いきつぎの回数も少なくなることが

分かりました。このことから、関口さんは、イルカはこの時間に

ねむっているのではないかと考えました。

 さらに、およいでいるときの動きを、昼間と夜中でくらべました。

昼間は、いろいろな方向に向かって、はやくおよいでいました。

それに対して、夜中は、プールのふかい所でむれを作り、ゆっく

りと円をかくようにおよぎつづけていました。よく見ると、この

ときは、かた目をとじたままおよいでいました。そして、ときどき、

とじる目を交代させていました。イルカは、ゆっくりおよぎなが

らねむっているにちがいありません。

 本当にねむっているかどうかは、脳の

が休んでいるかどうかを

調べないと分かりません。関口さんは、これまでに行われた、

ほかの研究を調べてみました。すると、イルカは、脳を休ませて

いるときは、目をとじていることが分かりました。かた目を

とじているときは、脳を半分休ませていることになります。

イルカは、脳の右半分と左半分をべつべつに休ませる

ことができるのです。

 イルカは、夜中に、脳を半分ずつ交代で休ませて、

ゆっくりとおよぎながらねむっているのです。

①②③④⑤⑥

方向コ

ウコ

向むむ

かう

交代タイコ

8

研ケンコ

究キュウ

コ ● 読んで,かんそうをもとう

読む

2

幸島 

司郎

 一九五五年、愛あ

知ち

県けん

生まれ。とく

に、動物の行こう

動に

ついて研究してい

る。

 関口さんは、研

究しているなかま。

段落

 文章しょうを組み立て

ているまとまり。

はじめを一字下げ

て表す。

510

510

イルカのねむり方幸こ

島しま 

司し

郎ろう

どうやって

調べたのか。

何が分かったか。

どう考えたか。

▼ 

どんな「問い」が、どの段落に

書いてありますか。

▼ 

③④の段落にも、②の段落と

同じように、線を引きましょう。

15

はじめ中おわり

まとまり(段だん

落)に気をつけて読みましょう。「問い」と「答え」は何か,どのように「答え」を

出したかを,読んでいきましょう。

4041

510

 夏になると、庭や公園のすみなどで、ありの

行列を見かけることがあります。その行列は、

ありの巣す

から、えさのある所まで、ずっとつづ

いています。ありは、ものがよく見えません。

それなのに、なぜ、ありの行列ができるので

しょうか。

 アメリカに、ウイルソンという学者がいます。

この人は、次のような実験け

をして、ありの様子

をかんさつしました。

 はじめに、ありの巣から少しはなれた所に、

ひとつまみのさとうをおきました。しばらく

すると一ぴきのありが、そのさとうを見つけま

した。これは、えさをさがすために、外に出て

いたはたらきありです。ありは、やがて、巣に

帰っていきました。すると、巣の中から、たく

さんのはたらきありが、次々と出てきました。

そして、列を作って、さとうの所まで行きまし

た。ふしぎなことに、その行列は、はじめのあり

が巣に帰るときに通った道すじから、外れて

行列レ

ツレ

8

庭にわレ

8

学者シ

ャレ

8

次つぎレ様ヨ

ウレ

子スス

5

ありの行列

大おお

滝たき 

哲てつ

也や 

内ない

藤とう 

貞さだ

夫お 

新版教科書クローズアップ!    

第 一 教材

第 二 教材

3 

指導計画(10時間扱い)

単元の構想

1 

単元名

 

読んで、かんそうをまとめよう

2 

単元の目標

○文末表現や指示語・接続語、繰り返して

出てくる言葉などに着目しながら文章

を読み、〈はじめ〉〈中〉〈おわり〉の三

部構成をとらえるとともに、文章全体に

おけるそれぞれの部分の役割を考える

ことができる。

○一つの段落には一つの事柄が書かれてい

ることの理解をもとに、段落のなかの中

心となる語や文を見つけたり段落相互

の関係を考えたりしながら文章を読み、

要点をまとめることができる。

○文章を読んで何に引きつけられたかを

はっきりさせて、感じたことや考えたこ

とを書くことができる。

 

そして〈おわり〉では、「問い」に対する「答

え」が述べられる。

 

同様の文章構成と論理の流れを取ってい

る二教材がセットになっていることのよさ

は、一つ目の教材での学習を土台にして二

つ目の教材での学習を展開し、発展させる

ことができる点にある。「何が」「どのよう

に」書かれているかを読み取ること、そし

て、文章を読んで自分なりの感想をもつこ

とがこの単元の学習内容だが、特に前者の

内容について二教材構成のメリットを生か

していきたい。

 

すなわち、「イルカのねむり方」で三部

構成のそれぞれの部分の役割や科学的な論

理に沿った文章の書かれ方についてひと通

り学んだ後、「ありの行列」では、それを「読

みの指標」としながら、自分たちの力で文

章構成をとらえたり要点をまとめたりして

いく。

「二教材構成」のよさを生かす

 「イルカのねむり方」と「ありの行列」

はともに、〈はじめ〉〈中〉〈おわり〉の三

部構成で書かれており、文章構成や論理の

流れが似通っている。〈はじめ〉では、こ

れから説明しようとする事柄が「問い」の

形で提示され、〈中〉では、その「問い」

を追究した過程が詳細に説明されている。

論理の筋道は次の通り。

「イルカのねむり方」  「ありの行列」(三上) 

                                  

秋田大学教育文化学部附属小学校教諭 

熊くま

谷がい

尚たかし

●観察や実験を通して分かったこと

  

●それに基づく仮説

  

●仮説を検証するための観察や実験

  

●その結果明らかになったこと

「イルカのねむり方」

「ありの行列」

三部構成(はじめ・中・おわり)を視覚的にとらえやすいよう示している。

「実験・観察」「結果」「考察」にそれぞれ傍線を引き、3・4段落以降にも同じように線を引くよう指示を入れている。

「どんな『問い』が、どの段落に書いてありますか」と投げかけ、子どもに問いを見つけるよう促している。

次ねらい

主な学習活動

一三部構成の説明

文の書かれ方の

よさをとらえる

ことができる。

・「イルカのねむり方」の文章構

成をとらえる。     (1)

・「イルカのねむり方」の文章の

書き方のよい所を考える。(1)

二説明文を読み、

文章構成をとら

えたり要点をま

とめたりするこ

とができる。

・「ありの行列」を読み、語句調

べをするとともに、感想を交

流する。        (1)

・〈はじめ〉と〈おわり〉をとら

え、それぞれの役割を考える。

            (1)

・〈中〉の部分を、内容を考えな

がら二つに分ける。   (1)

・〈はじめ〉〈中1〉〈中2〉〈おわり〉

に小見出しをつけ、要点をま

とめる。        (2)

三文章を読んで何

に引きつけられ

たかをはっきり

させて、感想を

書くことができ

る。

・どちらかの視点で「ありの行

列」の感想文を書き、お互い

に読み合う。      (2)

  

a 

ありが行列をつくる

   

不思議

  

b 

科学者の行動や考え方

・ほかの科学読みものを選んで

読書する。       (1)

1415

報 告

Page 2: 報告 「イルカのねむり方」 「二教材構成」のよさを生かす...39 38 イルカは、魚と同じように水の中でくらしています。ただ、 どんなねむり方をしているのでしょうか。いるときでも、いきはしなければなりません。イルカは、いつ、魚とちがって、ときどき水面に上がっていきをします。

新版教科書クローズアップ!    

 

第5時では、〈中〉の部分をさらに区切

るとすればどこで区切ったらいいかを考え

た。まずは個々に自分の考えをもつ時間を

十分に取った。その後、四人グループで意

見を交換し合う。そして、全体での話し合

いに移った。次のA・B・Cの3つの考え

に意見が分かれ、活発な討論がなされた。

・ぼくは、Aだと思います。④段落までは

実験で「分かったこと」が書いてある

けれど、⑤段落にはウイルソンの疑問

が書かれているからです。

・その疑問は観察したことから出てきた疑

問なので、④段落と⑤段落はつなげた

方がいいと思います。

・わたしはBだと思います。そのわけは、

⑤段落の「これら」は②段落から④段

落に書いてあることを指しているから

です。

・ぼくはCだと思います。なぜなら、⑦段

落の「この研究」は⑥段落より前に書

いてあること全部のことで、⑥段落ま

ではどんな研究をしてきたかが書いて

たっているかどうか気になって続きが

読みたくなる。

・題名が興味を引きつける。

 

読み手を意識した書き方の工夫について、

多数の意見が出た。さらに、ある子どもが

「段落の変え方がうまい」と発言した。ど

の段落も「調べたこと」「分かったこと」「考

えたこと」の順序で書いてあるから分かり

やすいというのだ。

実験・観察→仮説→仮説の検証という

科学的な論理の道筋に沿って文章が書き進

められていることは「ありの行列」も同様

である。第二次の「ありの行列」の読み取

りにつながっていくよい気づきだった。

      「ありの行列」

 

第4時では、全体を〈はじめ〉〈中〉〈お

わり〉の三つに分け、「問い」と「答え」

が対応していることを押さえた。

指導の実際

    「イルカのねむり方」

 

まず、前時にとらえた三部構成のそれぞ

れの部分の役割を確かめ、文末表現の違い

にも注目させた。

 

さらに、文章の書き方についてどこが上

手だと思うかを子どもたちに考えさせた。

・「問い」があるから「答え」を知りたく

なって読みたくなる。

・筆者の予想が書いてあるから、それが当

あるけれど、⑦段落からは、ありの行

列のできるわけを書いているからです。

・今の意見に反対です。⑦段落の「この

研究」は、⑥段落の「体のしくみを細

かく研究した」ことを指していると思

います。もし全部の研究を指すとしたら、

「これらの研究」 

という言い方になる

と思います。

・付け足しで、⑥段落は

体のしくみの「研究」

で、⑤段落より前は、

ありの様子の「かんさ

つ」なので、中身が違

うと思います。

・わたしは、やっぱりB

だと思います。そのわ

けは、⑤段落の「~と

考えました。」という

のは、観察して分かっ

たことからウイルソン

が予想したことで、そ

れを確かめるために⑥

段落から別の研究をし

たことが 

書いてある

からです。⑤段落まで

で区切るのがいいと思

います。

・ぼくもBに賛成です。「そこで」は、そ

れまでの観察をもとにして新しい研究

に入ったことを表しているからです。

 

文末表現、指示語や接続語、さらには、

実験・観察→仮説→仮説の検証という論理

展開のしかたなど、「イルカのねむり方」で

押さえたことが「読みの指標」となり、次

第にBの考えに収しゅう

斂れん

していった。

文章の書かれ方に目を向ける

 

文章の読解には、「何が」書いてあるか(内

容の理解)と、「どのように」書いてあるか

(表現のしかたの理解)の二つの側面がある。

「何が」書かれているかを理解するには「ど

のように」書き進めているかに着目するこ

とが必要となる。

 

子どもたちは、文章構成のしかたや論理

展開のしかたなど、「どのように」書かれて

いるかを解析する話し合いを通して、「何が」

書いてあるかを確かに読み取っていった。

そして、「どのように」書かれているかを学

んだことは、第三次で「ありの行列」の感

想文を書く際の表現のしかた・方法として

生かされていくこととなった。

第2時

第4~5時

筆者の文章の書き方の

いい点を考えよう。

内容のまとまりを考えながら、

文章の区切りを見つけよう。

〈はじめ〉 

 「問い」

~でしょうか。

〈中〉

 「調べたこと」

 「分かったこと」

 「考えたこと」

 

~をくらべました。

~を調べてみました。

~が分かりました。

~と考えました。

~にちがいありません。

〈おわり〉

 「答え」

~なのです。

〈はじめ〉 

①段落

〈中〉

②段落~⑧段落

〈おわり〉

⑨段落

②~④

⑤~⑧

②~⑤

⑥~⑧

②~⑥

⑦~⑧

児童のノート(第5時)

板書をただ写すだけでなく、自分なりの学習の足跡を残すことを大事にしてノートをまとめるように指導している。この日は、①自分の考えの根拠となる「キーワード」を抜き出す、②板書や友達の発言で大事だと思ったことを自分の言葉でメモしておく、の 2 点を助言して、授業の最後の 5 ~6分間でノートをまとめさせた。

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