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高齢者の栄養(低栄養)について 鈴鹿医療科学大学 堀田千津子 多職種連携・多施設連携 1

高齢者の栄養 低栄養 について - town.toin.lg.jp · 栄養状態と食事形態の関係 「低栄養」の者は t約50%は 特別な食事を食べている 低栄養

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高齢者の栄養(低栄養)について

鈴鹿医療科学大学 堀田千津子

多職種連携・多施設連携

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本日の内容

1.管理栄養士(在宅訪問管理栄養士)とは?

2.高齢者で問題となっている「低栄養」とは、現状は・判定は?

3.どれだけ食べたら低栄養にならないの?・・

食事摂取基準を用いて

4.支援の中で・・栄養管理

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1.管理栄養士って?・・・・・・国家資格 栄養士法

1条2項

管理栄養士とは、厚生労働大臣の免許を受けて、管理栄養士の名称を用いて、

傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導個人の身体の状況、栄養状態等に応じた高度の専門的知識及び技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導

並びに

特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設における利用者の身体の状況、栄養状態、利用の状況等に応じた特別の配慮を必要とする給食管理及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等を行うことを業とする者をいう。

備考 ①栄養士・・・養成施設(学校)卒業で取得 都道府県知事の免許、栄養士の名称を用いて栄養の指導に従事する ②「在宅訪問管理栄養士」制度が平成23(2011)年度にスタート 日本栄養士会・全国在宅訪問栄養食事指導研究会にて認定

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2-1.高齢者で問題となっている「低栄養」とは

栄養素の摂取が生体の必要量より少ないときに起こる体の状態

たんぱく質、炭水化物、脂質、鉄分、ビタミン類などが不足な状態

「PEM(Protein energy malnutriton)ペム 」

その中でも特に、たんぱく質とエネルギーが充分に摂れていない状態のこと

発展途上国における子供の低栄養状態 ・マラスムス・・・・主にエネルギー摂取不足 ・クワシオルコル・・主に重度のたんぱく質の欠乏

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②加齢に伴う身体の変化 ・噛む力が低下する ・唾液・消化液の分泌量が減少する ・腸の運動能力が低下する ・味の感覚が鈍くなる ・口の渇きを感じにくくなる ・食欲が低下する など

要因で

①疾病要因(臓器不全・悪性腫瘍・義歯・嚥下困難など)

③社会的要因(独居・貧困など)

「低栄養」の要因

体重減少 筋力衰え (サルコペニア) 風邪をひきやすい 生活自立度が低下(ロコモティブシンドローム) 寝たきり(褥瘡)↓ 要介護度が上がる ↓ 低栄養の予防必要

低栄養の人の食事は?

栄養状態と食事形態の関係 「低栄養」の者は、約50%は 特別な食事を食べている

低栄養 (n=292)

低栄養のおそれあり(n=211)

栄養状態良好 (n=252)

n % n % n %

ゼリー食 14 4.8 6 1.9 1 0.4

ペースト食 28 9.6 6 1.9 2 0.8

刻み食 45 15.4 14 4.5 9 3.6

軟食 74 25.3 74 23.8 40 15.9

常食 131 44.9 211 67.8 200 79.4

(平成24年度老人保健健康増進等事業 在宅療養患者の摂取状況・栄養状態の把握に関する調査研究報書より 農林水産省食料産業局食品製造課 男性81.1±7.9歳 女性84.7 ±78.3歳 990人 簡易栄養状態評価表

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食事の 楽しさ?

栄養状態と食事感の関係 「まったく楽しみでない」と感じている者のなかで、70%が「低栄養」の者で食事の楽しさが忘れられて

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0% 25% 50% 75% 100%

まったく楽しみでない…

あまり楽しみでない(n…

やや楽しみ(n=308)

とても楽しみ(n=333)

低栄養(0~7点) 低栄養のおそれあり(8~11点) 栄養状態良好(12~14点)

70.5%

在宅療養高齢者の栄養の課題 大塚理加より 2014年 (簡易栄養状態評価表 875人)

低栄養おそれあり 57.7%

栄養状態良好18.3%

低栄養24.0%

「気づき」⇒「発見」⇒「リスクレベルに対応食事」 ⇒重症化予防 管理栄養士はどのように栄養管理? 「栄養ケアプロセス」

栄養診断(例)・・・ SとEから 国際基準の用語マニュアルに沿って S)栄養アセスメント上のデータ、 モリタリング項目 エネルギ―摂取量が推定必要量と比較して少なく体重減少(1 か月に3%減)・みられることから E)栄養状態を悪化している原因・要因 これは、味覚異常,食欲不振などの要因による 嚥下機能低下 知識不足 行動変容の意識欠如 P)診断 エネルギ―摂取量不足 NI-4 と判定する

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2-2 判定は (栄養スクリーニング)

入院(入所)後、できるだけ早期

①急性期病院では入院後24時間以内

②療養病床、(介護)施設等では24~72時間以内(3日間)

③居宅では、初回訪問開始から24~72時間以内

※栄養マネジメント加算(14単位)では1週間以内と明記されている。

介護老人福祉施設

管理栄養士が、継続的に入所者ごとの栄養管理をした場合

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判定方法・・・主観的・客観的 (2例プリント)

①体重測定 BMI ②体重減少 ③血清アルブミン値 ④食事摂取量の減少 ⑤栄養補給法 ⑥褥瘡

判断し、 介入

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*エネルギーとたんぱく質が不足している状態(低栄養)を客観的

栄養改善マニュアル(暫定版) 介予防報酬改定に関する通知 平成24.27年度

①BMI・・・体重測定 BMI(体格指数) BMI=体重(kg)÷(身長(m))

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日本人の食事摂取基準70歳 以上 目標 (21.5~24.9) 国民健康・栄養調査結果の概要 厚生労働省 低栄養傾向 (20以下 ) 肥満学会 低体重 18.5未満

*膝高から身長を予測する方法・・・単位:cm

男性= 64.02 + 2.12 ×膝高- 0.07 ×年齢 女性= 77.88 + 1.77 ×膝高- 0.10 ×年齢 *膝高から体重を予測する方法・・・単位:kg 男性=(1.01×膝高(cm))+(上腕周囲長(cm)×2.03)+(上腕三頭筋皮下脂肪厚(mm)×0.46)+(年齢×0.01)-49.37 女性=(1.24×膝高(cm))+(上腕周囲長(cm)×1.21)+(上腕三頭筋皮下脂肪厚(mm)×0.33)+(年齢×0.07)-44.43

BMI

低リスク 18.5~29.9

中リスク 18.5未満

高リスク

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②体重変化

体重減少率

低リスク 変化なし (減少3%未満)

中リスク 1 か月に3~5%未満 3 か月に3~7.5%未満 6 か月に3~10%未満

高リスク 1 か月に5%以上 3 か月に7.5%以上 6 か月に10%以上

Aさんが、通常時体重55kg 1か月後45kgになった。 例(55kg-45kg)/55kg×100=18.18 (1 か月に5%以上を大きく上回る 高リスク) *高齢者の場合、徐々に体重が減少していくので、 経過的に今回体重、前回の体重(前回の体重-今回の体重)/前回の体重×100=体重変化

(通常時体重-実測時体重)/通常時体重×100=体重減少率

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減少体重

③血清アルブミン値(半減期が2~3週間なので、1か月以内のたんぱく質の指標) ④食事摂取量の減少(食事摂取量については通常の食事摂取量を基準としてどの程度食べたか) ⑤栄養補給法 ⑥褥瘡

血清アルブミン値 低リスク 3.6g/dl 以上

中リスク 3.0~3.5g/dl

高リスク 3.0g/dl未満

食事摂取量 低リスク 76~100%

中リスク 75%以下

高リスク

栄養補給法

低リスク

中リスク 経腸栄養法 静脈栄養法

高リスク

褥瘡 褥瘡

①判定 ・全ての項目が低リスクに該当する場合には、「低リスク」 ・高リスクに一つでも該当する項目があれば「高リスク」 ・それ以外の場合は「中リスク」また、(個人の状態等に応じて判断し「高リスク」と判断される) ・BMIなどについては、対象者個々の程度や状態等に応じて判断し、「高リスク」と判断される ②それぞれの結果に応じた対応 ・低リスク場合:セルフケアのための情報提供 ・中・高リスクの場合:低栄養改善に向けた「二次予防事業の参加」「配食サービス」 「管理栄養士・保健師等の個別指導」「医療機関への受診」など 13

簡易栄養状態評価表(プリント) スクリーニング・アセスメント MNA (mini nutritional assessment)

高齢者の栄養アセスメントに適している

①スクリーニング

6 項目の予診項目(最大14 ポイント)

「食事量の減少」「BMI」

「体重減少」「移動性(寝たきりかどうか)」

「神経・精神的問題(認知障害の有無)」など

②アセスメント 12項目の問診(最大16 ポイント)

1989年国際老年学会でツールを開発

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ポイント 判定及び栄養介入

12~14 栄養状態良好

8~11 低栄養のおそれあり (At risk) 食事内容の改善・経口補助食品400kcal/日

0~7 低栄養 食事内容の改善・経口補助食品400~600kcal/日

1.対象は健康な個人並びに集団 (保健指導レベルの高血圧、脂質異常、高血糖、腎機能低下に関するリスクを有する者まで含む) 2 .科学的根拠に基づく策定を行う(レビュー) エネルギー・栄養素

3.どれだけ食べたら低栄養にならなの?・・・ 日本人の食事摂取基準とは

・高齢者については、過栄養だけではなく、低栄養、栄養欠乏の問題の重要性を鑑み、フレイティ(虚弱)やサルコペニア(加齢に伴う筋力の減少)などとエネルギー・栄養素との関連についてレビューし、最新の知見をまとめた。

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「日本人の食事摂取基準(2015年版)」

2015年度から2019年度の5年間

性別 身体活動レベル

男性 女性

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅱ Ⅲ

30~49歳 2300 2650 3050 1750 2000 2300

50~69歳 2100 2450 2800 1650 1900 2200

70歳以上 1850 2200 2500 1500 1750 2000

推定エネルギー必要量 (kcal/日)

15~69歳 70歳以上

低い(身体活動レベルⅠ) 1.50 ふつう(身体活動レベルⅡ) 1.75 高い(身体活動レベルⅢ) 2.00

低い(身体活動レベルⅠ) 1.45 ふつう(身体活動レベルⅡ) 1.70 高い(身体活動レベルⅢ) 1.95

推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル 基礎代謝量:生命を維持するために必要なエネルギー量

例:ベッド上安静1.2

2割減

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エネルギーの指標は?

エネルギーの摂取量及び消費量のバランスの維持

「体格(BMI : body mass index)」を採用

BMI=体重(kg)÷(身長(m))2

目標とするBMIの範囲(18 歳以上)

歳 目標とするBM(kg/m2)

18~49 18.5~24.9

50~69 20.0~24.9

70 以上 21.5~24.9

日本人の食事摂取基準(2015年版)より抜粋 17

「日本人の食事摂取基準2015年版」 男性・身体活動レベル(physical activity level:PAL)Ⅱ

年齢(歳) 18~29 30~49 50~69 70以上

エネルギー(kcal) 2650 2450 2200

たんぱく質(g) %エネルギー

50(60) 13~20%(16.5)*

推定平均必要量50%(推奨量97.5%)、*目標量(中央値)

年齢(歳) 18~29 30~49 50~69 70以上

エネルギー(kcal) 1950 2000 1900 1750

たんぱく質(g) %エネルギー

40(50) 13~20%(16.5)*

女性・身体活動レベル(physical activity level:PAL)Ⅱ

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平成22,23 年国民健康・栄養調査の結果

たんぱく質摂取量の平均値 70 歳以上

男性 71.9 g/日(± 23.4 g/日)・・・・50(60) g/日

女性 61.5 g/日(± 19.9 g/日)・・・・40(50) g/日

推定平均必要量50%(推奨量:97.5%)

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平均値でみると比較的十分なたんぱく質量を摂取しているように見えるが、標準偏差が大きく、推奨量に満たない対象者が相当数いる可能性も考えられる

高齢者の低栄養の予防・・・食材を組み合わせて 肉・魚(100g中)20g 納豆15g 卵13g 豆腐5g 牛乳3g

5.支援の中で・・栄養管理

食事 ①食べる動作(身体・姿勢・咀嚼・) ②環境(食べる場所・食器) ③身体機能(摂食機能・口腔) ④必要なエネルギー量やタンパク質量 (回数 バランス 食形態)・・栄養面

①献立の内容 ②食事の買い物・・体力面 ③調理 食事の準備

①知識・技術・食への関心度 ②日常の食習慣・生活習慣 ・・意識・知識・意欲

早期に多職種連携 サポート

①後かたずけ・・体力面 など

低栄養の リスク高まる 配食サービス・筋力

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例:体力の衰え、 買い物や準備が困難になり

85歳、女性。5年前に認知症を発症し、 6か月間で体重が2.5kg減少している。 座位保持は可能であり、上肢に麻痺や拘縮はない。 食事は普通食を自力摂取しているが、摂取率は約50%で低栄養である。身長142cm 体重35kg 食事中に、ぼんやりしていることが多い。

本症例の食事中の行動について、認知症症例の食事支援という観点から、優先的に観察すべき行動である。最も適切なのはどれか。 (1)自ら食べ始めることができない。 (2)食べこぼしが多い。 (3)食事が終わったばかりなのに、また食べたがる。 (4)食事について不満を言う。 21

形態 むせる 食べにくい食品・飲みにくい食品ではないか?

1.口腔機能のチェック 2.かみやすく、飲みやすい調理の工夫 ・トマトや枝豆などの薄皮をむく ・肉類や野菜の繊維部分はたたいたり、筋切りをする ・パン、カステラなど水分の少ないものは要注意 ・魚は、塩・照り焼きより、おろし煮やあんかけなど 3.食事介助の工夫 ・何の料理かどんな食材かを本人に確認してもらう ・最初の一口は、まず水分の多い食品から始める ・おかゆなどの粘着性の高い食事の後には,水分の多いゼリー食を食べる。 ・リズム良く食べさせ、急がないように気をつける ・最後の一口も水分の多いゼリー食にする など (ゼリー食:スープ、ジュース、お茶をゼラチンでかためたもの) 22

嚥下困難 「きざみ食」の危険性

① 食形態上の危険性 「きざみ食」・・・・咀嚼困難(噛む機能の食形態) 嚥下食には不向きな食形態 口へ運びにくい、のどに残りやすい 飲み込む際に必要な「食塊」ができない ② 食品衛生上の危険性 調理済の食材をまな板の上に置いて、 包丁で細かくきざむ 食材の表面積が大きくなるため、その分細菌(食中毒)が付着

食べやすい・・・茶碗蒸しや卵豆腐 ソフト食に移行 (圧力鍋の利用) 23

誤嚥

人参と大根

いんげん

・ソフト食 【鶏肉もも煮+増粘剤(カタメリン)】

水100mLにトロメリン1.5g “ダマ”になりにくく、使いやすい! ベタつかない感じで、飲み込みやすい 味噌汁 ジュース お茶

デキストリン、グルコマンナン、増粘多糖類

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30秒~1分ほど撹拌

30分ほど置く

ペースト状になるまで撹拌

スプーンを傾けると、とろとろと流れる

・とろみの利用

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「介護食品」と呼ばれてきたものを新たな視点でとらえ直し、食品の愛称を「スマイルケア食」 配布プリント・・最新版 平成26年11月に農林水産省

柔らかさ

口やのどの働きの確認

歯の状況の確認

栄養素が低下傾向

管理栄養士

セルフケアのための情報提供

必要なエネルギー量やタンパク質量が不足? 望ましい1日量 1500 Kcal たんぱく質60g

低栄養のおそれあり *撮影・食事記録から、チェック・・・・ お昼を食べていない バランスが悪い 気づき *本人・家族の許可を得てから、冷蔵庫の中をチェックし、どんなものを食べているかを見る。 問題対応⇒食品の内容に関する情報提供 宅配弁当 スーパー 環境

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ご清聴ありがとうございました。 在宅療養患者・・・終わりの見えない 後から、あれを食べさせてあげたかった!

ご清聴ありがとうございました。

皆さんの声かけ、食べること生きること