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吉良貴之(法哲学) http://jj57010.web.fc2.com/
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自己紹介 (1) 経歴
法哲学法哲学法哲学法哲学専攻、ほか関連する憲法学・政治哲学
東京大学大学院法学政治学研究科 (指導教員: 井上達夫教授)、日本学術振興会特別研究員を経て、
現在、常磐大学嘱託研究員 (2013年3月まで)。
本発表はJST-RISTEX「不確実な科学的状況での法的意思決定」の研究成果発表の一環です。
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自己紹介 (2) 研究テーマ
1. 世代間正義論: 将来世代への配慮責務の正当化
2. 法の時間論: 法概念論における「時間」の意味
3. 法と科学技術: 科学技術の発展と法システムの相互変容
4. その他: ジェンダーと法、〈法と映画〉など法/正義と「時間」の関係を問うということで、
おおまかに一貫したことを研究。
* 3の「法と科学技術」研究で、
2012年度科学技術社会論学会記念賞を受賞。
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本発表の概要: 法哲学から
• 科学技術の将来にわたる影響の時間的延長 は、
それにかかわる正義にいかなる影響を与えるか?
• 「司法」はそこにおいていかなる役割を果たしうるか、
「現代型科学裁判」とその正統性 問題。
• 将来世代への配慮責務の正当化根拠、そしてその動機
付け問題について「世代会計」を紹介。
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導入 : 時事問題から
イタリア・ラクイラ地震判決の「衝撃」
�「地震予知失敗」の責任ではないものの…� 科学の不確実性と科学者の社会的責任
�「科学コミュニケーションの失敗」?
� 刑事/民事責任の区別
→ 法制度が各国ごとに異なることへの
意識を欠いた議論がなされてはいないか?
→ 逆に浮き彫りになる日本の司法の予見可能性
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司法の困難
• 日本でも各種「科学裁判」は目立ちつつある。
• そもそも最先端の科学技術問題を司法は扱えるか?
• 裁判官はあくまで科学技術の「素人」
⇔全米科学振興協会 (AAAS) による裁判官教育
• 「素人判断」が社会的影響力をもつことの正統性問題
• 「予防原則」的判断と既存の法原理との緊張
• 司法の役割はあくまで個別具体的ケースの解決
⇔立法の一般性、行政の機動性
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司法への期待
それでもなぜ司法に問題が持ち込まれるのか。
• 他の解決手段があまりにも信頼されていない…?ex.とりわけ強烈な科学者不信
• 司法は一般人にも(相対的に)アクセスしやすい
→ 門前払いも含め、答えが出される答えが出される答えが出される答えが出される。。。。
→ 立法資源へのアクセスはなかなか。→ 政策形成訴訟・世論喚起
最先端科学技術問題の潜在性・個別性・複合性
→ 立法・行政で対応が難しい問題領域に ex.医療過誤→ 司法の出番の増大?
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将来世代問題としての
世代間正義
いまだ生まれざる将来世代に対して現在世代は、
o 何を : 枯渇資源の保存、温暖化対策、放射性廃棄物の処理…
o どこまで : 「将来世代」はどこまで続くか?
o なぜ : 規範的正当化根拠の問題
配慮する責務を負っているのか?
それは完全なものか、不完全なものか?
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学説史状況
• John Rawls, A Theory of Justice, 1971 の
「貯蓄原理 (Saving Principle)」 あたりが端緒。
� 当該政治共同体内部での正当な貯蓄のあり方を論じるのみで、
世界正義 (global justice) には不足。
• その後、Derek Parfit, Reasons and Persons, 1984 の
「非同一性問題」「厭わしき結論」で理論的深化。
• 日本では加藤尚武による1991年の紹介をへて、
主に応用倫理学として議論される。(世代間「倫理」)
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固有の難問
1. 民主的政治過程の近視性 cf. 社会契約論の「非」歴史性
2. 将来世代の利害の不可知性 「害」はわかる?
3. 将来世代の範囲の不確定性4. 現在世代内の多様性との緊張関係
一時点でのパイを問題にする共時的な分配に比べ、
通時的な分配の正義には何重もの困難。
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エネルギー政策の今後
• 温暖化バックラッシュの「証明責任の転換」
• 京都議定書体制の崩壊
• シェールガス革命は福音たりうるか?
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世界のシェールガス分布
(画像はwikipediaより)
日本の問題状況
• 3.11以後の急速な「脱原発」 :民主政の近視性?
• 将来世代を漠然と含み込むものとしての「絆 」。
• 「脱貧困」運動との緊張 :運動「主体」の問題
• 「世界正義 (global justice)」問題としての「原発輸出」。
• 資源分配だけでなく、負担の分配も合わせて。
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技術倫理の時間的拡張
• Hans Jonas, Das Prinzip Verantwortung, 1987• ヨナスによる責任の二分類
(1) 影響力の射程にともなう責任:
科学技術はその影響力の時間的範囲を将来にわたって
延ばし続けており、用いる人々の責任も時間的に拡張。
(2) 創始者としての責任:
親子関係が責任の原型であり、存在を「生み出す」
ことによって、人々はそれを庇護する責任を負う。
「影響力」と「生む力」に相関した責任の時間的拡張
「生むからには責任をとれ」(Jonas) /「生まれたからには責任をとる」(Arendt)
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将来への責任の三類型
1. 保全
o 良好な環境の維持: 持続可能な発展
o 枯渇資源の保存: Locke 的但し書き2. 是正
o すでになされた環境破壊の回復: ex. 原発事故o 制度的加害論 (Pogge)
3. 予防
o 予防原則 (precautionary principle)
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想像力の時間的拡張
世界正義 (global justice) 論の試み
(1) リベラル・ナショナリズムの巧緻(Miller)想像力の媒介 (medium) としての国民国家 (nation-state) の両面性
(2) 制度的加害論 (Pogge)neo-Rawlsian的国際体制の構想正義の自然的義務の規範的強力さ
→ コスモポリタン/普遍主義は、
想像力の媒介、動機の獲得方法を問われる。
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責任と動機付け
• 将来世代に対して配慮する責任があるといえるとして、
それはいかにして実践されるのか?
• 将来を配慮する動機はどこにあるのか?
• 道徳的正当化と動機の内在主義/外在主義: メタ倫理
• 正義の実現可能性 (feasibility) の問題
世代「内」の分配でも大きな対立があるにもかかわらず、
将来世代を含む世代「間」の責任は動機調達がより困難
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世代会計:国内的試みの例
• 一般的定義:
現在時点での政策を所与とした場合に、過去から
将来世代にわたる各個人の、政府との関係における、
受益と負担のバランスを可視化受益と負担のバランスを可視化受益と負担のバランスを可視化受益と負担のバランスを可視化するもの。
• Laurence Kotlikoff (1991) らの研究に始まる。その後、
算出方法など精緻化。
• 日本でも内閣府や厚労省、民間シンクタンクなどが
それぞれの計算式で発表。
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世代会計の計算例
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この計算では50歳前後が
損益分岐点になる。
世代会計の国際比較
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日本の世代間不均衡は
諸外国と比べて大きい。
2つの図は、加藤久和
『世代間格差』
(筑摩書房、2011年)
より。
まとめ
世代間不均衡を可視化する意味
• メリット
o 若年世代の政治的関心を高める
o 老年世代の責任感を高める: 「逃げ切り」防止
• デメリット
o 世代間対立の激化、それにともなう無力感?
o 国単位で算出することのアンビバレンス
• 将来世代への責任の基礎としての想像力の時間的延長
• ひたすらカネの問題にひたすらカネの問題にひたすらカネの問題にひたすらカネの問題にすることすることすることすることでででで、賠償/予防の
法原理としての一元化へ?
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