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22-CICC-C04 平成 22 年度 アジア電子情報通信基盤整備に資する 我が国 IT ソリューションの導入促進に関する報告書 平成 23 年 3 月 財団法人 国際情報化協力センター この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。 http://ringring-keirin.jp

平成22年度 アジア電子情報通信基盤整備に資する …01月 13日 ネパール・カトマンズ - Mr. Mahesh Singh Kathayat, Head of Nepal Police Computer Directorate

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Page 1: 平成22年度 アジア電子情報通信基盤整備に資する …01月 13日 ネパール・カトマンズ - Mr. Mahesh Singh Kathayat, Head of Nepal Police Computer Directorate

22-CICC-C04

平成 22 年度

アジア電子情報通信基盤整備に資する

我が国ITソリューションの導入促進に関する報告書

平成 23 年 3 月

財団法人 国際情報化協力センター

この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

http://ringring-keirin.jp

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IT を活用した情報化は、社会・経済をはじめ広範な分野の高度化に寄与し、ますます重

要となっている。しかしながら、現在、情報化を推進している海外諸国においては、情報

化の基盤整備とともに IT 活用に係る多くの課題を抱えている。

これらの実情に鑑み、財団法人 国際情報化協力センター(略称 CICC)では、情報化を促

進しようとする海外諸国に対して、各種の情報化協力事業を実施している。

この報告書は、平成22年度 情報通信産業におけるアジア諸国連携強化のための調査研

究等補助事業の一環として実施した「アジア電子情報通信基盤整備に資する我が国ITソリ

ューションの導入促進」に関する事業について報告するものである。

本事業は、電子政府等社会公共情報システムの整備・普及に力を入れているアジア地域

に対し、日本企業がこれまで国内で培ってきた IT ソリューションや情報システムなどの技

術や経験を活用した協力の可能性を調査するものである。

今年度は、アジア地域のタイ、ネパールに対し、同国政府や産業界の関係者との情報交

換を通し、調査対象分野における取り組み状況や日本企業が持っている IT ソリューション

の当該国での展開の可能性等について調査するとともに、連携・協力の可能性について検討

した。

なお、この事業は、財団法人 JKA から平成 22 年度機械振興資金による補助を受けて実施

した。

事業の実施にあたってご支援、ご協力を頂いた国内外の関係官庁、関係会員ならびに直

接に労を賜った専門家各位に深く感謝の意を表するとともに、この報告書が関係方面に利

用され、情報化協力事業の円滑な推進をはかるための資となれば幸いである。

平成 23 年 3 月

財団法人 国際情報化協力センター

理事長 佐々木 元

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運 営 委 員 会 名 簿

(敬称略・委員名は五十音順)

(平成 23 年 3 月末時点)

委 員 長 荒 木 幸 治 株式会社日立製作所

委 員 池 﨑 雅 夫 パナソニック株式会社

〃 大 寺 玲 司 株式会社システムコンサルタント

〃 久 慈 正 一 株式会社日立ソリューションズ

〃 佐々木 賢 二 日本電子計算機株式会社

〃 佐 立 一 範 株式会社日立インフォメーションアカデミー

〃 菅 原 格 株式会社リコー

〃 高 井 弘 光 株式会社デンソーウェーブ

〃 立 川 明 社団法人電子情報技術産業協会

〃 種子田 暁 夫 日本電気株式会社

〃 戸 叶 秀 晴 三菱電機株式会社

〃 中 谷 淳 富士通株式会社

〃 比屋根 一 雄 株式会社三菱総合研究所

〃 平 岩 信 明 沖電気工業株式会社

〃 古 川 勝 久 株式会社富士通ラーニングメディア

〃 南 仁 シャープ株式会社

〃 宮 地 秀 親 株式会社NTTデータ

〃 室 伏 利 光 キヤノン株式会社

〃 山 崎 信 雄 株式会社SCC

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平成 22 年度

アジア電子情報通信基盤整備に資する

我が国 IT ソリューションの導入促進に関する報告書

目 次

運営委員会名簿

目次

1 事業の概要 .................................................................. 1

1-1 背景と目的 .............................................................. 1

1-2 実施概要 ................................................................ 1

2 生体認証(指紋・顔等)と各種センサー、カメラ、映像解析技術を組み合わせた統合セキ

ュリティ ...................................................................... 5

2-1 対象分野について......................................................... 5

2-2 調査結果について......................................................... 5

2-3 今後の協力の可能性...................................................... 14

3 クラウド環境における電子商取引 ............................................. 15

3-1 対象分野について........................................................ 15

3-2 調査結果について........................................................ 15

3-3 今後の協力の可能性 ...................................................... 22

4 まとめ ..................................................................... 24

4-1 今年度の応募・推進状況.................................................. 24

4-2 今年度実施結果.......................................................... 27

4-3 今後の課題 ............................................................. 27

参考資料 テーマ検討会 ........................................................ 29

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1 事業の概要

1-1 背景と目的

アジア各国では、IT 政策を国の重要な政策と位置づけ、マスタープラン等 IT 戦略を積極

的に推進しており、その中でも電子政府等の社会公共システムの情報化に重点が置かれて

いる。政治的・経済的及び社会的側面で深い関わりを持つアジア各国のこのような情報化

を通じた発展の動きは、個々の国にとどまらず、我が国を含むアジア全体の経済・社会発

展に大きく寄与するものである。

そこで我が国としても、アジア各国の情報化に積極的に寄与していくことが望まれるが、

そのためには、これまで日本企業が培ってきた電子政府等社会公共システム分野における

ソリューション経験を活かした技術協力が非常に有効であると考えられる。

また一方で、このようなアジア各国の情報化の動きにおいては、政府関連等機関の IT 市

場に占める影響が大きくなっており、我が国企業にとって新たなビジネス・チャンスとも

なっている。

このため、本調査では、我が国産業界が有する電子政府等社会公共システム分野におけ

るソリューション経験や技術のうち、海外においても有効と考え得るものを選定し、様々

な事前情報や条件から も導入の可能性が高い対象国を選定し、各国政府関係者との情報

交換等を通じて当該国におけるニーズ及びソリューションビジネスの可能性を調査する。

本調査は、アジア各国における電子政府を含む社会公共システム分野の情報化への取り

組みにおいて、我が国産業界の持つ技術による具体的な協力またはビジネスの可能性を調

査することを目的としており、この調査の結果が我が国企業と当該国の関連機関間の協

力・ビジネスに発展し、具体的成果を上げていくことが真に望まれるものであり、協力し

ていく内容がアジア各国の社会基盤の整備である場合などについては、その具体化の一つ

の方法として、日本政府の用意可能な実証実験、研究プロジェクト、技術協力などの支援

措置を活用し、実現していくということも検討の対象としていきたいと考えている。

1-2 実施概要

当財団の常設委員会である運営委員会において、平成 22 年 4 月 20 日に「平成 22 年度社

会公共システムのアジア展開事業計画及びテーマ検討・案件募集(案)」を審議し承認された。

その結果、メンバーを募集して「テーマ検討会」を設置し、5月 13 日に「テーマ検討会」

を開催して対象テーマ分野の選定を行った。

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― テーマ分野 - 電子政府、環境、エネルギー、医療、交通・地理・流通、教育、防災、産業(農業、工業な

ど)、社会情報基盤(例、クラウドコンピューティング、データセンターなど)

テーマ分野に基づき、5月 18 日から 6月 11 日まで案件を募集した結果、次の 3件の提案

があり、案件が本事業の趣旨に合致しているため、7 月 12 日に事業として検討を進めるこ

とを決定した。

案件1 1) 提案技術 「生体認証技術などを活用したパブリックセーフティソリューショ

ン」 犯罪捜査目的、市街地・重要施設監視、不審者・不審物検出に有効であ

る。 2) 対象国 カンボジア、ラオス、パキスタン、モンゴル、ネパール、バングラデ

シュ、スリランカの中から数ヵ国に絞り込む。

3) 提案企業 日本電気株式会社

案件2

1) 提案技術 「クラウド環境における電子商取引」

電子データ交換から進化したクラウド型電子商取引に関する社会イン

フラ構築の現地調査

2) 対象国 タイ

3) 提案企業 株式会社日立製作所

案件3

1) 提案技術 「ソーシャルクラウド」

社会インフラ、ITS、環境・省エネ、農業、水、医療、教育など、今後、

世界規模で拡大が想定されるこれら分野に対し、より高度な社会イン

フラ構築に貢献できるクラウドサービスの適用を調査する。

2) 対象国 中国、韓国、インド、シンガポール他アジア地域

3) 提案企業 富士通株式会社

提案企業との個別打合せを実施した結果、現地訪問先と調整がついたところから、「生体

認証技術などを活用したパブリックセーフティソリューション」と「クラウド環境におけ

る電子商取引」の現地調査を行うこととした。

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案件1の「生体認証技術などを活用したパブリックセーフティソリューション」の導入

に関する現地調査では、対象国をネパールに絞り、日程を次のとおりとして、生体認証(指

紋・顔等)と各種センサー、カメラ、映像解析技術を組み合わせた統合セキュリティシステ

ムのニーズを把握することを目的とした。

日程 国・地域 主な面談者

01 月 10 日 ネパール・カトマンズ - Mr. Er. Suresh K. Karna, President,

Computer Association of Nepal (CAN)

01 月 11 日 ネパール・カトマンズ - Mr. Rochan Lal Amatya, Manager

(Development), Nepal Telecom

- Mr. Rajan Raj Pant, Controller,

Office of the Controller of

Certification, Ministry of Science

and Technology (MOST)

- Honorable, Monohar Kumar Bhattarai

Vice Chairman, High Level Commission

for Information Technology (HLCIT)

- Federation of Nepal Chamber of

Commerce and Industry (FNCCI)

01 月 12 日 ネパール・カトマンズ - Mr. Lim Eung Soo, Expert,

e-Government Advisor of Korea

International Cooperation Agency

(KOICA), Government Integrated Data

Center (GIDC)

- Mr. Allen Bailochan Tuladhar, Member

of High Level Commission for

Information Technology, National IT

Park

- Mr. Sagar Dev Lakhe, President, ICT

Association of Nepal

01 月 13 日 ネパール・カトマンズ - Mr. Mahesh Singh Kathayat, Head of

Nepal Police Computer Directorate

- Embassy of Japan in Nepal

案件2のタイにおける「クラウド環境における電子商取引」の提案に関する現地調査で

は、クラウド型電子商取引の社会インフラとなる電子データ交換の現状調査とクラウド型

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電子商取引のニーズを目的として、次の日程でタイを訪問した。

日程 国・地域 主な面談者

11 月 29 日 タイ・バンコク - Dr. Ajin Jirachiefpattana, Executive

Director, ICT Industry Promotion Bureau,

Ministry of ICT

- Mr. Thanin Tankitibutr, General Manager,

Thai Trade Net Co., Ltd.

11 月 30 日 タイ・バンコク - Mr. Veerapol Srilert, Deputy Director,

Dept. of Industrial Promotion, Ministry of

Industry

- Mr. Charuek Hengrasmee, President,

Electrical and Electronics Institute,

Thailand

- Mr. Kovit Thanyarattakul, CEO & Acting

Managing Director, Trade Siam

- Ms. Supaporn Yeerong, Deputy Managing

Director, PCC/INFOMAX

- Ms. Chalida Chansuree, General Manager,

Soft Square

12 月 01 日 タイ・バンコク - Mr. Nipon Akarapimand, Managing Director,

Synature Technology

- Ms. Pitchiya Vajarodaya, Chief Executive

Officer, GS1

- Mr. Anusorn Lovichit, Managing Director,

TIFFA EDI Services

- Ms. Bussagorn Leejoeiwara, Vice President,

Corporate Strategy & Market Enablement, MFEC

なお、案件3の「ソーシャルクラウド」については、今後世界規模で拡大が想定される

社会インフラ分野(河川水位監視、橋の状態監視、等)/ITS 分野/環境・省エネ分野(スマ

ートグリッド、BEMS、等)/農業分野/水分野/医療分野/教育分野等を想定していたが、そ

の中でも、中国における ITS 分野のニーズ調査に焦点を絞り、詳細の調査内容を準備して

いる過程において、同社内の他部門にてすでに現地で調査を進めていることが案件採択後

に判明したため、本調査を断念することとした。

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2 生体認証(指紋・顔等)と各種センサー、カメラ、映像解析技術を組み合わせ

た統合セキュリティ

2-1 対象分野について

近年、政府や地方自治体が取り組むべき感染症などのパンデミック対策、地震・豪雨な

どの自然災害対策、環境汚染、社会保障制度などの問題への取組みに注目が集まっている。

また、テロや凶悪犯罪など公共での治安が脅かされる事件が続発し、各国で対策が急がれ

ている。

対策の一環として、安全・安心な社会生活を実現するために必要なパブリックセーフテ

ィの分野で、世界各国の政府や地方自治体に ICT を利活用したサービスやシステムの導入

が進んでいる。例として下記のものが挙げられる。

・犯罪捜査を目的とした指紋認証システム

・空港や港湾など重要施設における入退室管理システム

・不審者検知用の映像監視システム

・国民 ID システム

・電子政府システム

・パスポートを電子化し、入出国の際に顔や指紋で生体認証を行なうシステム

ただ、新興国を中心に上記のシステムが十分に整備されておらず、効果的な対策が取れ

ていない国もあるのが現状である。安全・安心な社会生活の実現に向け、国や自治体、企

業などが協調して上記システムの整備を進めていくことが必要である。

今回、調査対象国としてネパールを選定し、同国の政府機関や情報化推進団体への訪問、

ヒアリングを行ない、生体認証や国民 ID、電子政府などパブリックセーフティ分野のシス

テムに対するニーズや導入スケジュールを調査した。また、調査結果に基づき事業化の可

能性を検討した。

2-2 調査結果について

2-2-1 訪問先

出張期間: 平成 23 年 1 月 9日(日)~1月 15 日(土)計 7日間

出張先 : ネパール(カトマンズ)

調査目的: パブリックセーフティシステムのニーズ調査

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日程:

月日 訪問先

1/ 9 (日) 移動 羽田 23:50-シンガポール 06:30 (JL035)

移動 シンガポール 09:10-カトマンズ 12:05 (MI412/SQ5312) 1/10 (月)

15:00-16:00 Computer Association of Nepal (CAN)

8:30- 9:30 Nepal Telecom

11:00-12:00 Ministry of Science and Technology (MOST)

13:00-14:00 High Level Commission of Information Technology (HLCIT)

1/11(火)

15:30-16:30 Federation of Nepal Chamber of Commerce and Industry

(FNCCI)

11:00-12:00 Government Integrated Data Center (GIDC)

15:00-16:00 National Information Technology Park (NITP)

1/12(水)

18:00-19:00 ICT Association of Nepal

14:30-15:00 Nepal Police 1/13(木)

16:00-17:00 Embassy of Japan Nepal

1/14(金) 移動 カトマンズ 13:05 – シンガポール 20:15 (MI411/SQ5311)

シンガポール 22:00

1/15(土) 移動 – 羽田 05:40 (JL036)

ネパールはインド東北部に隣接する人口約 3 千万人の国で、ここ数年間で首都カトマン

ズへの人口流入が進んでいる。行政区画は、5つの開発地域(極西部、中西部、西部、中部、

東部)の下に、図表 2-1 に示す 14 の県が設置され、さらにその下に 75 の郡が設置されて

いる。今回訪問したカトマンズは中部開発地域のバグマティ県に属する。

図表 2-1 ネパールの県

出典:Wikipedia

カトマンズ

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次に、今回ネパールで訪問した主な政府機関の組織図を図表 2-2 のとおり記す。

図表 2-2 ネパールにおける主な政府機関

次に各政府機関や情報化推進団体への調査報告を示す。

2-2-2 ネパールコンピュータ協会(CAN: Computer Association of Nepal)

日時:1月 10 日(月)15:00~16:00

場所:CAN Office

面談者:Mr. Er. Suresh K. Karna, President

Mr. Kishor Panth, 1st Vice President

Mr. Amrit Pant, Secretary

Mr. Biplav Man Singh, Former President(先代の President of CAN)

CAN は IT の普及や利活用推進、IT 人材育成、IT 産業育成などを目的に活動する非営利団

体で、1992 年に設立され IT 関連企業や専門家などが加入している。今回、ネパールにおけ

る IT の活用状況や今後の推進計画をヒアリングすることを目的に面談を行なった。約 3千

万人の人口のうちインターネットユーザは約 60 万人にすぎず、PC の普及台数もアジアでは

非常に低いレベルである。CAN が今後注力するとしているのは、会員企業による CMMI

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(Capability Maturity Model Integration)の認定取得奨励と大学卒業の IT 要員の再教

育とのこと。また、政府策定の IT プロジェクト計画等への提言(特にプロジェクト実施段

階における考慮しておくべきことの提言)も業界として力を入れていきたいとのことだっ

た。

2-2-3 ネパールテレコム(Nepal Telecom)

日時:1月 11 日(火)8:30~9:30

場所:Annapurna Hotel

面談者: Mr. Lochan Lal Amatya, Manager (Development), Information Technology

Directorate(CAN の President を勤めた経験がある。)

電子政府や国民 ID など、パブリックセーフティシステムを推進するにはブロードバンド

環境が必要になるため、ネットワークの普及計画などをヒアリングするべく面談させてい

ただいた。今回お会いした Mr. Lochan は現在、Nepal Telecom のプロジェクト推進部門で

NGN (Next Generation Network) の敷設を担当されている。急速に伸びる携帯、インター

ネットの需要に応える通信インフラの需要が大きいとのことだった。

将来提供される予定の電子政府サービスのためのブロードバンドネットワークは、全土

の主要都市においては 2Mbps で敷設されているが、主要都市以外でのブロードバンド敷設

率は約 2割にとどまっている。電子政府や国民 ID システムを普及させるには、更なるブロ

ードバンドネットワークの普及が期待される。Mr. Lochan からは、パブリックセーフティ

システムを本格的に普及・推進するには各種コミュニティとの連携や、関係者を集めての

セミナーが必要とのアドバイスをいただいた。

2-2-4 科学技術省 (MOST: Ministry of Science and Technology)

日時:1月 11 日(火)11:00~12:00

場所:Singadurbar(ネパール政府諸官庁が集まる地区)内 MOST 庁舎

面談者:Mr. Rajan Raj Pant, Controller, Office of the Controller of Certification

Mr. Rajan は電子商取引や電子政府システムのベースとなる PKI (Public Key

Infrastructure) の制度づくりを担当されている。電子政府システム自体の検討・構築に

直接携わっているわけではないがアドバイスとして、同システムをスムーズに稼働させる

ためには、運用に携わる関係者へのトレーニングを綿密に実施することが必要であるとコ

メントいただいた。

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2-2-5 情報技術高等委員会(HLCIT: High Level Commission for Information Technology)

日時:1月 11 日(火)13:00~14:00

場所:Singadurbar 内 HLCIT 庁舎

面談者:Mr. Manohar K. Bhattarai, Vice Chairman

Mr. Allen Bailochan Tuladhar, Member

HLCIT は国家の ICT 政策を司る 高意思決定機関で、首相府(Prime Minister’s Office)

の直属機関である。コンサルティング会社が電子政府プロジェクトの一環としてネパール

政府に提出した、Government Enterprise Architecture という資料をもとに、電子政府シ

ステム実現のための 3 カ年中期計画を策定中とのことである。実現には省庁間の連携や法

的な整備が必要とのことで、関係省庁において実施に携わる政府職員のマインドセットの

改善、法的な障害の除去などソフト面での整備を重点的に行なっている。

電子政府システムプロジェクトはアジア開発銀行(Asia Development Bank, ADB)によ

る資金援助を受けて進行中であり、ADB、HLCIT の Web サイトからプロジェクトの概要を参

照できる。電子政府システムプロジェクトには多数のシステムが含まれるが、その代表的

なものとして国民 ID システムや運転免許システムにつきヒアリングを行なった。

国民 ID システムは内務省(Ministry of Home Affairs)が担当している。現状の選挙管理

委員会のデータを引き継いで国民 ID システムにアップグレードするプロジェクト。全体予

算の 80%が ADB から充当されている。現在プロジェクトの詳細計画を策定中で、今夏にも入

札が開始される見込みである。

運転免許システムは労働交通管理省(Ministry of Labor & Transport Management)が

担当している。入札が実施されたがどのベンダも予算をクリアできなかったため、どのよ

うなスキームで実施するかを再検討中である。Mr. Manohar からは、民間事業者が資金調達・

設計・施工と一定期間運営を行ない、その後所有権を官公庁に移転する BOT(Build Operate

Transfer)を採用したいとのご意向であった。なお電子政府プロジェクトは他に、電子調

達や電子商取引、電子医療などの各システムが含まれる。

本ヒアリングから、ネパールでは今後数年間で電子政府化の動きがますます加速してい

くことがうかがい知れた。

2-2-6 ネパール商工会議所連盟(FNCCI: Federation of Nepal Chamber of Commerce and

Industry)

日時:1月 11 日(火)15:30~16:30

場所:FNCCI Office

参加者:産業界、軍、大学関係者ら 26 名

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FNCCI は定期的に、Meeting of Minds Program と呼ばれる産業界で ICT を推進するため

のフォーラムを開催している。今回はそこにプレゼンターとしてご招待いただき、パブリ

ックセーフティシステムの紹介と質疑応答を実施した。参加者からは、

・電子政府システムの納入事例

・データ照合時間

・指紋・顔等諸認証システムのメリットとデメリット

・暗号化システム

・マーケティング戦略

などに関して質疑応答があり、高い関心を持って聞いていただいた。成果として、参加者

に本システムをアピールし、その有用性を認識いただくことができた。

写真 2-1 FNCCI セミナーの様子(1) 写真 2-2 FNCCI セミナーの様子(2)

2-2-7 国家統合データセンター(Government Integrated Data Center, GIDC)

日時:1月 12 日(水)11:00~12:00

場所:Singadurbar 内 GIDC

面 談 者 : Mr. Lim Eung Soo, Expert, e-Government Advisor, Korea International

Cooperation Agency (KOICA)

韓国政府の援助機関で海外専門家派遣機関でもある、韓国国際協力団(KOICA)から専門

家として GIDC に派遣されている Mr. Lim Eung Soo との面談を行なった。GIDC は韓国政府

の無償援助(約 4MUS ドル)で建設され 2009 年 9 月に竣工した。科学技術省の傘下にある

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国家情報技術センター(National Information Technology Center, NITC)の下部組織に

あたる。KOICA はデータセンター、国民 ID など一連の電子政府システムを構成する各種プ

ロジェクトをモンゴルでも実施した。韓国でも行政のバックオフィス業務を中心に電子政

府化が進んでおり、行政手続きについては、約 5,000 種類のうち約 800 の手続きがオンラ

イン化されている。現在ネパールでは、30 ある官公庁のうち 5 つの省庁のサーバが収容さ

れているが、今後約 10 年をかけてデータの集中管理を実現させたいとのことだった。

パブリックセーフティシステムを含む社会公共プロジェクトを実現させるためには、ADB や

世界銀行などの資金付けと、政府が認可したコンサルタントにより推進する必要があると

のアドバイスをいただいた。

写真 2-3 GIDC 外観

2-2-8 国家情報技術パーク(NITP: National Information Technology Park)

日時:1月 12 日(水)15:00~16:00

場所:NITP

面談者:Mr. Allen Bailochan Tuladhar, Member of HLCIT

HLCIT が 7 年前にカトマンズの東 30km の風光明媚な山岳地帯のふもとの広大な敷地(約

12ha)に、ビジネス棟 5 階建て(約 1800 ㎡)、管理棟 2 階建て(約 600 ㎡)、住宅棟(700

㎡)の IT パークを建設した。カトマンズと光ケーブルで直接つながっており、電源設備も

含め充分なインフラが整っている。テナントは、IBM が近くのカトマンズ大学分校と協同で

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「Open Source Technologies Resource Center」(5 名ほどの開発者)を構えるに留まって

いる。

写真 2-4 IT パーク外観 (ビジネス棟) 写真 2-5 IT パーク外観 (管理棟)

写真 2-6 IT パーク外観 (住宅棟)

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2-2-9 ネパール ICT 協会(ICT Association of Nepal)

日時:1月 12 日(水)18:00~19:00

場所:Restaurant in Nepal

面談者:Mr. Sagar Dev Lakhe, President

Mr. Roshan Bhandari, Member

Mr. Shambhu Shrestha, Member

ICT Association of Nepal は 2008 年に設立され、国内の ICT 施策の策定、地方での ICT

普及を推進することを目的とする団体で、輸入許可を持つ代理店数十社が加入している。

会合の場を設けていただき、パブリックセーフティシステムなど社会公共プロジェクトを

含め、ICT を推進するための意見交換を行なった。同団体は今年の 1月に、ICT Info-Trade

2011 という展示会を成功させており、会合には若い起業家が参加していた。

2-2-10 ネパール警察(Nepal Police)

日時:1月 13 日(木)14:30~15:00

場所:Nepal Police

面談者:Mr. Mahesh Singh Kathayat, Head of Nepal Police Computer Directorate

ネパール警察は組織上、内務省の傘下にある。カトマンズ市内はカメラによって監視さ

れており、各カメラは光ケーブルで接続されている。指令センターがこの程建設され、ネ

ットワークを用いた犯罪捜査システムを運用しているとのこと。パブリックセーフティシ

ステムには高い関心を示した。実際に、指紋認証システムはこれまで長い間導入を検討し

てきており、この程、国内の警察向け指紋認証システムの入札が開始された。カトマンズ

周辺から始め、数年のうちに全国的に導入されていく予定である。

警察は政府予算の制約もあり、パブリックセーフティシステムの推進・導入は段階的に

ならざるを得ない。また、電子政府システムなどの本格的普及には国内外からの資金援助

が不可欠であるとのコメントをいただいた。

2-2-11 在ネパール日本大使館(Embassy of Japan in Nepal)

日時:1月 13 日(木)16:00~17:00

場所:Embassy of Japan

面談者:Mr. Tomoyuki Ota, Research Officer

Page 20: 平成22年度 アジア電子情報通信基盤整備に資する …01月 13日 ネパール・カトマンズ - Mr. Mahesh Singh Kathayat, Head of Nepal Police Computer Directorate

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在ネパール日本大使館では、経済協力案件は藤倉公使、太田専門調査員の二人が対応し

ている。今回、藤倉公使は別件のアポイントメントが入っていたため、太田専門調査員と

面談を実施した。日本大使館はネパール発展のための施策として

・道路などインフラの整備

・教育の充実

・農業の振興

の 3点を挙げており、ICT 推進事業は入っていない。ICT など他の分野は、ボランティアを

含めた民間での協力スキームを活用いただきたいとのコメントをいただいた。

2-3 今後の協力の可能性

今回、ネパールで政府関係者や ICT 推進団体にヒアリングをさせていただいた。全体的

に、指紋認証や電子政府などのパブリックセーフティシステムには高い関心があるという

印象で、システムの必要性を感じている方も多く、実際に動き出している案件もある。事

実、ネパールは GDP の 30%が海外からの出稼ぎによる収入でまかなわれており、チベット・

ブータンからの難民の流入、国語として数言語の混在などの状況を鑑みると、パブリック

セーフティシステムの導入は重要であると考えられる。一方で資金調達や政府間連携とい

った課題もあり、順調にシステム導入が進んでいくかは未知数である。

韓国は、ネパールの電子政府プロジェクトに 5,500 万 US ドルを融資し推進していくとの

ことで、日本としても、韓国と同様に政府による支援が望まれる。

今後は、入札中の警察向け指紋認証システム案件をフォローするとともに、HLCIT が主体

で進めている電子政府システムなどパブリックセーフティシステムの分野で、日本ブラン

ドの認知度を高め日本の技術を現地で活かすべく、普及を目指していきたい。

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3 クラウド環境における電子商取引

3-1 対象分野について

「所有から利用へ」「Public or Private」等の概念面が先行した感があるクラウドコン

ピューティングであるが、米国 IT 調査会社である Gartner, Inc.(ガートナー)が 2010 年

10 月 22 日に全世界のクラウドサービスの売上が 2009 年の 586 億 US$から、2010 年には 683

億 US$と 16.6%増加する見通しであり、2014 年には 1,488 億 US$に到達するとの見解を発

表する等、活用段階の相を呈している。インターネットを基本構成要素とするクラウドコ

ンピューティングは、それゆえ企業あるいは個人を対象とした電子商取引の分野でも、レ

ガシーシステムに替わるシステムとして注目されている。一方、タイ王国への進出日系企

業は製造・流通・金融と多業種に亘っているが、中心となる製造業では、「生産拠点」とし

ての位置づけから、「市場」へと徐々に捉え方を変えており、今後クラウド等の先進技術を

ベースに効率化や差別化を目的としたシステム利用に進化すると考えられる。

日本における電子商取引は、社団法人流通システム開発センターが中心となり、標準化

を推進してきた経緯があり、標準化が電子商取引普及のキーワードとなる事から、タイ王

国における電子商取引データ標準化動向調査及び流通関連ソフトウェアを調査する事を主

な目的として調査を実施した。

3-2 調査結果について

3-2-1 訪問先

出張期間: 平成 22 年 11 月 28 日(日)~12 月 2 日(木)計 4日間

出張先 : タイ(バンコク)

調査目的: 電子データ交換(EDI)の実態調査

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日程:

月 日 訪問先

11/28(日) 移動 成田 10:55-バンコク 16:05 (JL717)

10:00-11:30 ICT Industry Promotion Bureau, Ministry of Information

and Communication Technology (MICT)

11/29(月)

14:00-15:30 Thai Trade Net Co., Ltd (EDI 委託 SIer)

9:00-10:00 Department of Industry Promotion, Ministry of Industry

10:30-12:00 Trade Siam(税関システム運用半官半民企業)

13:30-15:00 PCC(オンライン決裁運用企業)/INFOMAX(同 SIer)

11/30(火)

16:00-17:30 Soft Square (SIer)

10:00-11:30 Synatura Technology

13:30-15:00 GS1 / TIFFA

12/1(水)

16:00-17:30 MFEC(SIer)

12/2(木) 移動 バンコク 8:15-成田 16:05 (JL708)

3-2-2 MICT (Ministry of Information and Communication Technology)

日時:11 月 28 日(日)10:00~11:30

場所:MICT ICT Industry Promotion Bureau

面談者: Dr. Ajin Jirachiefpattana, Exective Director, ICT Industry Promotion Bureau ,

MICT

Mr. Narongrit Waraporn, Lecturer, King Mongkut’s University of Technology

Thonburi

(1) タイでは税関システムが標準化されており、EDI(Electronic Data Interchange)は B2G

(Business to Government)分野を中心に進展している。

(2) 税関システムは、ペーパーレスを目的に Rosetta Net ベースで国が開発した。

(3) 大手企業は本システムの対応が可能だが、中小は未だ紙ベースにより EDI 業者で電子化

している。

(4) B2B (Business to Business)分野では、TESCO Lotus、Tops 等のスーパーは、卸側に EDI

利用を求めているが標準化されておらず、利用は卸任せである。

(5) 有力企業が独自仕様の EDI を構築しているが、標準化は困難であり、国にも標準化推進

計画はない。

(6) EDI 促進のため、MICT の中に、National E-Government Agency 及び E-Conception

Promotion Agency を発足させることが決まり、2011 年 1 月スタートに向け、人材採用

を始めた。EDI の普及に必要なセキュリティ基準などを決めることになる。

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写真 3-1 MICT を訪問して

3-2-3 Thai Trade Net Co., LTD.(TTN:Samart Group 傘下の EDI 事業会社)

日時:11 月 29 日(月)14:00~15:30

場所:Thai Trade Net

面談者: Mr. Thanin Tankitibutr, General Manager

(1) 1995 年に設立した Samart グループ上場会社である SAMTEL 社の 100%子会社であり、売

上が 5,300 万バーツの EDI/E-ビジネスサービスプロバイダである。技術者 3名、プログ

ラマー8名、システムサポート 8名、営業 6 名で計 35 名の陣容である。システム運用・

管理業務は親会社が実施している。

(2) B2G のプロバイダは 15 社あって競合が激化してきており、TTN は B2B 分野に重点を置い

ている。

(3) Retail SCM の標準化を検討したが、デジタル署名等セキュリティの面が浸透していない。

(4) 現状 EDI は、大手企業では EDIFACT 準拠システム、中小企業では Web EDI を利用する傾

向がある。

(5) 決済は、クレジットカード、銀行決済が殆どであり、一部企業が PC によるオンライン

決済を行なえる仕組をサービスしているが普及していない。

3-2-4 Department of Industrial Promotion(DIP), Ministry of Industry

日時:11 月 30 日(水)9:00~10:00

場所:Ministry of Industry

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面談者: Mr. Veerapol Srilert, Deputy Director, Dept. of Industrial Promotion

Mr. Charuek Hengrasmee, President, Electric & Electronics Institute

Ms. Jantana Techasirinugool, Executive Vice President, Product Development,

TOT

Mr. Phakhasat Raksri, Project Manager, King Mongkut’s University of

Technology North Bangkok

(1) ECIT プロジェクト(Enhancing SMEs Competitiveness Through IT '09-'10)の説明を聴

取した。

(2) 中小企業市場での IT 利用による効率・生産性向上、特にソフトウェア企業の育成を図る

事を目的とし、

①中小企業における ERP 導入の促進

②Software Park による中小企業内の人材育成・教育

③E-Market Place (http://www.thaitechno.net/)

を支援している。

(3)DIP は、SMB 向けの電子ポータルサイトや電子カタログを推進し、買手・サプライヤー

を支援するために、E-Market Placeを2年前に立ち上げた。本プロジェクトにおいては、

業務処理を効率化するために原料の注文をリアルタイムで処理する電子ポータルサイ

ト「www.ecitthai.net」が開発されており、その取扱高は、2010 年 6,000 万バーツ、2011

年に少なくとも 2 億バーツに達する予定である。このサイトは、現在 SME1,000 社の製

品とサービスの提供を可能としている。

写真 3-2 Ministry of Industry にて

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3-2-5 Trade Siam / CAT / Net bay

日時:11 月 30 日(水)10:30~12:00

場所:Trade Siam

面談者:Mr. Kovit Thanyarattakul, CEO & Acting Managing Director, Trade Siam

Mr. Somsak Pungtamgerdpol, Vice President, CAT

Mr. Arthit Pasukyued, Chief Programmer, NETbay

(1) 上記 3社が共同で税関システムを運用管理するタイで も古い半官半民企業である。

(2) 現在では、10 数社におよぶ同業他社との競合もあり、B2B 事業の比重を増やす意向があ

る。

(3) 競合を危惧したのか、面談が困難な雰囲気のなかヒアリングを実施した。

(4) 特に税関 EDI 関係で PAA(Pan Asia Alliance。日本でも NACCS(Nippon Automated Cargo

Clearance System Operations Organization)と連携しているとのことであった。

3-2-6 PCC(Processing Center Co.,Ltd.)/INFOMAX System Solutions & Service Co.,Ltd.

日時:11 月 30 日(月)13:30~15:00

場所:PCC

面談者:Ms. Supaporn Yeerong, Deputy Managing Director

(1) インターネット経由の銀行間決済のため、Bangkok 銀行、KASIKORN 銀行、SAHA UNION

商社の 3社により 1995 年に設立された。(INFOMAX は PCC の子会社)

(2) B2G、B2B の基盤として「e-Pay」と呼ばれる銀行間決済のサービスを提供している。

(3) 銀行間では、タイ中央銀行が提供する「Bhat Net」(銀行間大口資金決済ネットワーク)

が 大のサービスであり、競合しうる。

(4) 現状では税金等わずかな銀行間 EDI 例があるのみ。

(5) 企業の既存 EDI システムと接続し、インターネット経由で PCC 出資企業間決済は可能で

ある。

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図表 3‐1 e-Pay 決裁の流れ

3-2-7 Soft Square

日時:11 月 30 日(火)16:00~17:30

場所:Soft Square

面談者:Ms. Chalida Chansuree, General Manager

(1) 流通系システムベンダであり、1988 年に設立し、社員 400 名である。

(2) IBM 他のパートナから顧客紹介を受けるビジネスモデルで、BigC、カルフールに実績あ

り。

(3) 流通業向けシステム「Pro-fit」を提供している。

(4) 大規模な流通業者では取引先数千社規模となり、約半数が EDI 対応している。

(5) 小規模流通者では ADSL ベースの VPN で EDI を利用している。

(6) タイでは B2B 分野の EDI はインフラ整備に伴い始まったばかりであるが、政府、大手、

中堅流通系企業が導入に積極的である。

3-2-8 Synature Technology / Ada Soft

日時:12 月 1 日(水)10:00~11:30

場所:Synature Technology

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面談者:Mr. Nipon Akarapimand, Managing Director, Synature Technology

Mr. Wissanupong Wongwas, Director, Business Development

(1) Ada Soft 社は 2000 年に設立され、設立後 POS 関連ソリューションで小売に特化してい

る。社員数は 52 名である。

(2) Synature Technology 社は 1999 年に設立され、レストラン・食堂向け POS に強みを持っ

ている。社員数は 30 人である。

(3) ハードメーカと協力し営業を展開している。

(4) B2B 向け EDI は電子署名に信頼性がなく市場に浸透していないという意見があった。

(5) EDI 促進の障害として、標準の不在、セキュリティ、人材不足が挙げられた。

(6) ソフトウエアパークより、IT 研修、輸出業務サポート、品質管理サポート、展示会出

展などでサポートを受けている。

3-2-9 GS1 Thailand

日時:12 月 1 日(木)10:00~11:30

場所:GS1 Thailand

面談者:Ms. Pitchiya Vajarodaya, Chief Exective Officer, GS1

Mr. Skol Ubolvivat, Senior Vice President, General Electronic Commerce

Mr. Anusorn Lovichit, Managing Director, TIFFA EDI Services

Mr. Thanin Tankitibutr, General Manager, Thai Trade Net

(1) GS1 として EDI フォーマットの標準化は実施していない。今後も計画はなく、海外大手

企業の Format にあわせるのみで、EDI 普及に向けたプロモーションも行っていない。

(2) NECTEC が 2 年前に B2B 分野で EDI フォーマット標準化を推進しようとしたが断念した。

(3) 日本のように業界毎に標準化を推進しようとする動きもない。

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写真 3-3 GS1 Thailand にて

3-2-10 MFEC Public Company Limited

日時:12 月 1 日(水)16:00~17:30

場所:MFEC

面談者:Ms. Bussagorn Leejoeiwara, Vice President, Corporate Strategy & Market

Enablement

Mr. Shimmy Thomas, Vice President, Strategic Business

Mr. Natjira Honda, Genelal Magager, PromptNow Co.,Ltd.

(1) 1997 年に設立し、社員数は 800 名である。2004 年に上場したタイ SIer の大手である。

(2) 仮想化ソフト「Parallels」のタイ国内の独占販売会社である。

(3) タイでは SI 会社が EDI 事業を行うのではなく、各々が独立する形が多い。

(4) クラウドは新しい考え方で、IaaS は簡単だが、SaaS は難しい。タイには 60~70 万社の

中小企業が存在するので SaaS は一つの考え方である。

3-3 今後の協力の可能性

タイのEDIはB2G、特に税関申告ペーパーレス化推進を目的に進展してきたようであるが、

税関の書類受付窓口は多くの人々で混雑しており、運用面での課題が垣間見えた。

国の権限で標準を決め、国が決めた仕組みに則って手続きを行なう税関申告などの EDI

化は、輸出入を行なう特定の EDI 事業者を育てることとなり、競合が激しくなるまでは一

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定の利幅が稼げる事業であったものと想像される。しかし、現在では 15 の事業者が激しく

競合することになり、多くの事業者が B2B 分野に比重を移そうとしている。

一方、B2B については、外国企業のタイ市場参入をきっかけとして広がった流通業の EDI

システムに代表されるとおり、特定企業の独自 EDI システムが現在でも主流となっており、

標準化には相当の時間をかけて参加者の理解を得る必要があると推察される。

そんな中にあって、タイ大手 IT 企業 Samart グループ傘下で、EDI 事業を専門とする Thai

Trade Net は、ジャスコ、コカコーラ、サムスンなど外資系企業の EDI 関連業務の一部を

請負っており、一定の成功を治めているようであった。また、未だ十分に活用されていな

いとのことであったが、PCC はタイ 5大銀行間の EDI 決済を実現しており、今後、さらに

タイの EDI が発展するものと思われる。

タイ政府が推進している e-Government 構想においてもクラウドコンピューティング、

EDI は重要な技術要素であり、標準化により多くの恩恵が得られると想像される。

今後 B2B の進展が見込まれる中、効率化を目指した EDI 標準化は必須となると考えられ、

(社)流通システム開発センター等と協力した更なる調査が必要と考える。

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4 まとめ

4-1 今年度の応募・推進状況

社会・公共情報システムのアジア展開事業では、わが国産業界が有する電子政府等社会

公共システム分野におけるソリューション経験や技術のうち、海外においても有効と考え

得るものを選定し、様々な事前情報や条件から も導入の可能性が高い対象国を選定し、

各国政府関係者との情報交換等を通じて当該国におけるニーズ及びソリューションビジネ

スの事業機会発掘、および新たなチャネル人材の開拓を目的とする。

本事業の全体の流れを、図表 4-1に示す。

テーマ選定

テーマ検討会 事業化評価:CICC共同

中止/再検討

事業化可否検討フェーズ

①テーマ検討会の開催とテーマ選定②案件募集及び決定③現地状況の把握とニーズ有無の確認、現地キーパーソンとの人脈構築

案件募集及び決定

現地調査

ニーズ有り

ニーズ無し

×

事業化評価:個別ビジネス機会獲得

公的資金事業応募 採択

① ②

④事業化に向けての継続調査および検討⑤公的資金事業(実証事業等)への応募⑥公的資金を活用した実証事業等の実施⑦現地ビジネスへの参入機会の獲得

事業化フェーズ

④b ⑤

・・・

現地調査

現地調査

ニーズ有り

④a

新規案件募集

図表4-1 社会公共情報システムの事業化の流れ

各ステップについては、次のとおりである。

① テーマ検討会の開催とテーマの選定

事業化可否検討フェーズにおける、社会公共システムのアジア展開事業に関し、5月 13

日に「テーマ検討会」を開催して対象テーマ分野の選定を行った結果、次のテーマにより

案件を募集する。

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― テーマ分野 -

電子政府、環境、エネルギー、医療、交通・地理・流通、教育、防災、産業(農業、工業な

ど)、社会情報基盤(例、クラウドコンピューティング、データセンターなど)

② 案件の募集及び決定

①の「テーマ検討会」で選定されたテーマ分野に基づき、案件の募集を行う。提案された案

件に対し、募集通知の「(3)案件の決定における留意事項」に基づき、当該年度の実施案件

を決定する。

③ 現地調査

・事業化マッチング

現地調査を実施するとともに、CICCが主催する他の事業(例:アジアITフォーラム(AFIT)、

アジア IT 要人招へいなど)を活用して、対象テーマ分野の具体的案件のニーズを確認する。

・人脈の形成

CICC のネットワークを駆使し、一民間企業では接触が難しい現地におけるキーパーソン

との人脈を形成する。

④ 事業化評価

現地ニーズが確認されたものについて、今後の事業化可否を検討する。④aでは、事業化

を進めるにあたり、独自に提案企業が調査を継続する。④bでは、事業化を進めるにあたり、

提案企業は CICC と合同で調査を継続する。

⑤ 公的資金事業応募

④による調査の結果、または、すでに対象国のニーズが確認されている提案を検討し、

適切な案件については、貿易投資円滑化支援事業(実証事業)等の公募に応募する。

⑥ 公的資金事業の採択

公的資金事業の公募に採択された場合、提案案件を実施する。

⑦ 現地ビジネスへの参入機会の獲得

現地調査を継続し、実証事業等の成果として、政府調達等ビジネスの具体化や、政府開発

援助(ODA)など、より規模の大きい案件へと発展させ、現地ビジネスへの参入機会を得る。

本年度は、①のステップにあるとおり、当財団の常設委員会である運営委員会のもとに

「テーマ検討会」を設置し、「テーマ検討会」で対象テーマ分野の選定を行った後に案件

を募集し、本事業の趣旨に合致している次の 3件を取上げてアジア展開を検討した。なお、

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「テーマ検討会」での検討のプロセスは、付録資料として巻末をご参照いただきたい。

図表 4-2 提案テーマ一覧

No. テーマ(システム/技術) 対象国 提案企業

1 「生体認証(指紋・顔等)と各種センサー、

カメラ、映像解析技術を組み合わせた統合

セキュリティ」

ネパール 日本電気株式会社

2 「クラウド環境における電子商取引」 タイ 株式会社日立製作所

3 「ソーシャルクラウド」 - 富士通株式会社

日本電気株式会社が提案した「生体認証(指紋・顔等)と各種センサー、カメラ、映像解

析技術を組み合わせた統合セキュリティ」に関しては、当財団が主催する国際会議「アジ

ア IT フォーラム」(AFIT)のネパール代表として出席した政府関係者を中心に、政府機関な

どの管理職となった当財団研修修了生の人的ネットワークを活用しながら、ネパールの IT

政策や電子政府の計画をヒアリングし、「生体認証(指紋・顔等)と各種センサー、カメラ、

映像解析技術を組み合わせた統合セキュリティ」システムのニーズ調査を実施した。

株式会社日立製作所が提案した「クラウド環境における電子商取引」に関しては、さる

10 月に実施したアジアにおける「政府及び産業界の要人招へい」事業で招へいしたタイの

政府と業界の要人から、タイにおける電子データ交換の概況を説明してもらい、現地調査

への協力を確認した。タイにおける調査でも、当財団の研修修了生や現地の IT 事情に詳し

いコレスポンダントなどの人的ネットワークを活用して、タイの IT 政策や電子商取引の現

状や今後の計画などを調査することができた。

一方、富士通提案の「ソーシャルクラウド」については、中国における ITS 分野のニー

ズ調査に焦点を絞り、詳細の調査内容を準備している過程において、同社内の他部門にて

すでに現地で調査を進めていることが案件採択後に判明したため、本調査を断念すること

とした。

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4-2 今年度実施結果

4-2-1 「生体認証(指紋・顔等)と各種センサー、カメラ、映像解析技術を組み合わせた統

合セキュリティ」

現地調査では、ネパールの社会公共システム導入における主な関心は電子政府システム

や警察機関などで進められる指紋認証などであることが判明し、今後センサーや映像解析

を含めた「生体認証技術などを活用したパブリックセーフティソリューション」としてニ

ーズを掘り起こしていきたい。

一方で、ネパールは約 3千万人の人口に対し、インターネットユーザは約 60 万人に過ぎ

ず、PC の普及台数も少なく、非常に低い IT インフラの導入レベルである。さらに電子政府

サービスのインフラであるブロードバンドネットワークも主要都市では 2Mbps が敷設され

ているが、主要都市以外では敷設率は 2 割程度しかない状況である。従って、ネパールで

本格的に電子政府サービスを中心としたパブリックセーフティソリューションの導入を推

進していくには、PC の普及、通信インフラの整備、現地ニーズに即したアプリケーション

やサービスの充実を共に推進していく必要があり、多大な費用と時間を要するのが現状で

ある。

この様な状況の中で、まずは個々の官庁で進められる指紋認証システムの案件や情報技

術高等委員会(HLCIT)が中心となって進めている電子政府システムなどのパブリックセー

フティ分野でのプロジェクトの進展をフォローしつつ、日本ブランドの認知度を高め、日

本の技術を現地で生かす道を探りつつ、図表 4-1 に記載の「事業化フェーズ」の方向性を

決めたい。

4-2-2 「クラウド環境における電子商取引」

タイの EDI は B2G 分野からスタートし、現在すでに B2B 分野へと普及が進んでいる。し

かし、EDI標準が確立されておらず、特定企業の独自EDIシステムが個別に運営されており、

今後 EDI がビジネスインフラとして発展していく上で大きな弊害となっている。

タイ政府は e-Government 構想を推進しており、その中でクラウドコンピューティングや

EDI も大きな柱となっている。その流れの中で、日本の EDI 標準化推進機関とも連携し、「ク

ラウド環境における電子商取引」を実現していく可能性を模索していきたい。

4-3 今後の課題

今年度の活動に関し、わが国産業界が有する電子政府等社会公共システム分野における

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ソリューション経験や技術のうち、海外においても有効と考えられるテーマが選定される

よう、「テーマ検討会」を立上げて、テーマ分野の呈示、そして案件の募集を行った。その

結果、案件が選定され、かつ図表 4-1 記載の「事業化可否検討フェーズ」の現地調査が実

施された。これらアプローチの仕方は適切であったと考える。

現地調査の結果、ネパールおける「生体認証(諮問・顔等)と各種センサー、カメラ、

映像解析を組み合わせた統合セキュリティ」及びタイにおける「クラウド環境における電

子商取引」は、ともに電子政府等社会公共システムとしての有効性が認められた。しかし

ながら、各々の国情を反映して、図表 4-1 記載の「事業化フェーズ」に直ちに入れるよう

な状況にはなく、幾つかの課題が明確になった。今後はこれら課題の解決、および事業化

に向けた努力を続け、その結果を踏まえて再度事業化の可否を検討していきたい。

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参考資料 テーマ検討会

1 案件決定までの経過

具体的な社会公共システムのテーマ分野の選定にあたっては、運営委員会において「テ

ーマ検討会」の設置を承認し、メンバーを募集して開催した。テーマ検討会にて、各国の

ニーズや取り組みを検討し、わが国が有するソリューションの海外展開の可能性に基づき、

公益性に立脚したテーマ分野の選定を行なった。 案件決定までのスケジュールは次のとおりに実施した。 4 月 20 日:第 129 回運営委員会において平成 22 年度社会公共システムのアジア展開事業計

画及びテーマ検討会の設置を承認、メンバー募集

4 月 27 日:テーマ検討会メンバー募集の締切

5 月 13 日:テーマ検討会開催

5 月中旬 :テーマ分野通知及び案件募集開始

6 月 10 日:案件応募締め切り

6 月 11 日-7月 9日:公示期間

7 月 10 日:公示期間満了後、平成 22 年度の案件決定

2 テーマ検討会委員会及び議事録

テーマ検討会のメンバーを募集し、平成 22 年 5 月 13 日(木)14:30-15:50、当財団会

議室において、委員 6名、CICC から 3名の計 9名が出席してテーマ検討会を実施した。

議事は次のとおりであった。

1) テーマ検討会及び委員

事務局より、本テーマ検討会の設立の趣旨と目的を説明した。

2) 平成 22 年度社会公共システムの展開事業計画及びテーマ検討・案件募集方法について

事務局より、社会公共システムの展開事業の概要を説明した。

3) アジア各国のニーズについて 事務局より、参考資料のとおり、2004 年から 2009 年にかけて実施した社会公共システム

の展開事業調査案件、2009 年度に開催したアジア IT フォーラム(AFIT)で得たアジア各国の

情報化ニーズ及び過去当財団が実施した調査等でとりまとめた各国の情報化政策や電子政

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府計画の重点項目を説明した。本事業の案件募集をする際のテーマを検討するにあたり、

各委員のコメントは次のとおりであった。

A 委員:各国よりニーズが高いクラウドコンピューティングは、テーマとして興味深い。

クラウドコンピューティングを適応できる分野はたくさんあるので、どのように

とらえるか。

委員長:クラウドコンピューティングのように各国横断的なテーマもありえるか。

当財団専務:可能である。クラウドコンピューティングは、社会情報基盤というカテゴ

リーとして考えてはどうか。各企業個別に調査するだけでなく、複数企業でチー

ムを組んで調査することも可能である。

T 委員:今まで欧米等で販売実績がある電子ボードなどの教育ソリューションをアジアで

展開しようと調査を行なってきた。マレーシアのスマートスクール政策に照準を

当てて、担当者につなぐところまできたが、まだまだ時間がかかるということが

わかった。政府が予算化し規模感のあるプロジェクト的なテーマが良い。

S 委員:アジアでは制度が進んでいない国が多いので、日本の法制度(例えば、車検や郵

便貯金)など展開できるものはないだろうか。

当財団専務:制度のアジア展開については、METI 技術協力課で実施しているが、なかな

かネタが無いのが現状である。

S 委員:アジアではクラウドコンピューティングや情報セキュリティにとても関心を持っ

ているが、まだ通信インフラが未整備なのでそこで話が止まってしまうのが現状

である。政府系のシステムは需要が非常に伸びているが、偽造防止などのように

新技術を活用するものは少ない。フィリピンでは、政府の基本戦略の策定は進ま

ないが、各省庁ですでに大きなプロジェクトが進んでいる。

N 委員:クラウドコンピューティングをアジアで利活用しようとすると、どんな障害があ

るのか。たとえば情報の取り扱い方や規制など。クラウドコンピューティングが

各国の電子行政に適応できるのかどうか関心がある。

当財団専務:今回のテーマ検討会では、「電子政府、環境、エネルギー、医療、交通・地

理・物流、教育、防災、産業(農業・工業など)」に加え、昨今、関心が高いクラ

ウドコンピューティングを含めた「社会情報基盤」としたい。本テーマ分野に基

づく案件募集にあたっては、一企業からの案件だけでなく、複数企業による横断

的な案件の提案も可能であることを明記しておく。 以上

次頁のとおり、2004 年から 2009 年にかけて実施した社会公共システムの展開事業調査案

件、2009 年度に開催したアジア IT フォーラム(AFIT)で得たアジア各国の情報化ニーズ、お

よび過去当財団が実施した調査等でとりまとめた各国の情報化政策や電子政府計画の重点

項目をアジア各国のニーズに関する参考資料とした。

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アジア各国のニーズ一�

参考資料 アジア各国の情報化ニーズならびに情報化政策や電子政府計画の重点項目2010/5/13現在

電子政府 環境 エネルギー 医療 交通・地理・物流 教育 防災 産業(農業、工業) 新技術 その他

中国2006-10(第11次五ヵ年計画)による政府業務情報ネットワークプラットホームの構築、次期計画で電子政府アプリケーション、サービス体系の完備へ

救急医療情報システム(09)

クラウドコンピューティング

通信ネットワークとCATV、インターネットの融合

インド

電子政府、電子商取引に必要な識別IDカード中央政府システム、州政府システム、地域システムと段階に分け着実に実施。通信インフラ整備、廉価版PCの普及促進、僻地でのリテラシ-向上など底上げを図ると同時に納税システム、入出国管理、住民台帳、年金、土地登記、職業案内など多数の具体的プロジェクト推進、実施。

IT教育ソリューション(07)新仮想PC型クライアントシステム(07)

ハイパフォーマンスコンピューティング(06-7)新仮想PC型クライアントシステム(07)バイオメトリクス(07)

インドネシア

登記システム(04)国家情報インフラの整備、関係法の整備、人材開発(ハイレベルCIOを組織)を基礎とし、2015年までにInformation Societyを実現

環境管理支援システム(05)気象情報配信システム(05)

地理情報システムGIS(05)高速道路交通システムITS(05-06)

防災情報システム(08)ICTを活用した防災

農業GIS(05) バイオメトリクス(05-6)

マレーシア

雇用情報システム(05)原産地証明システム(05)農村地域などでもアクセスできるモバイルを活用した電子政府1.電子政府プロジェクト(①電子公共サービス  ②電子調達 ③人材管理情報システム ④プロジェクトモニタリングシステム ⑤電子職業安定所 ⑥電子法廷 ⑦公共サービスポータル ⑧土地登記・管理システムなど)、2.多目的カード

環境管理支援システム(05)気象情報配信システム(05)

テレヘルス(遠隔医療)

地理情報システムGIS(05)原産地証明システム(05)

IT教育ソリューション(07)新仮想PC型クライアントシステム(07)スマートスクール

バイオメトリクス(05-6)新仮想PC型クライアントシステム(07)

フィリピン

中小企業ビジネスマッチングシステム(04)職業紹介システム(06)国民ID管理GISP 政府情報システム計画(2000-05)による、政府手続きの効率化と国民への行政サービスの提供。2005年までに全ての国民、機関、外国投資家の政府サービス情報へのオンラインアクセス、省庁間及び地方政府のDB・ネットワークの共有化。

遠隔医療システム(04)

アジア太平洋地域の安全安心向上システム(09)GPS、クラウドコンピューティング等のITを活用した災害管理システム

アジア太平洋地域の安全安心向上システム(09)

バイオメトリクス(06)

タイ

中小企業ビジネスマッチングシステム(04)税関システム(04)配電効率化支援システム(04-5)職業紹介システム(06)PCレス・オンライン申請システム(06-7)公共機関向けコールセンター(07)電子政府推進計画(2010-14)によりG2C, G2B, G2E,G2Gのサービスを5ヵ年に分けて開発、第一段階:c-Government (all governments collaboration), 第二段階:m-Government (e-service via mobile), 第三段階:u-Government (ubiquitus e-service), 第4段階:完全電子化(24時間e-Serviceの提供)

環境管理支援システム(04-5)

配電効率化支援システム(04-5)

税関システム(04)地理情報システムGIS(06)トラック輸配送効率化支援システム(06-7)

IT教育ソリューション(07)新仮想PC型クライアントシステム(07)

アジア太平洋地域の安全安心向上システム(09)

バイオメトリクス(06)新仮想PC型クライアントシステム(07)

ベトナム

中小企業ビジネスマッチングシステム(04)配電効率化支援システム(04-6)職業紹介システム(06)ボーダーコントロール(06-7)住民管理システム(06-7)公共機関向けコールセンター(07)2010-15年の省庁、産業界、省レベルにおける情報化優先プロジェクト金融情報システム、金融管理活動へのICT応用、社会経済的統計システム、国土、天然資源、環境に関する情報システム、人口・労働・身障者・社会福祉に関する情報システム、農業情報システム、法律および法律関連文書に関する情報システム、科学および情報に関する情報システム、教育・トレーニング・職業などに関する情報システム、健康および公衆衛生に関する情報システム、国内郵便および通信情報技術に関する情報システム、関税に関する情報システム、貿易およびベトナム企業に関する情報システム、IDカード管理に関する情報システム及び国民用電子IDカードの発行、ハノイ・ホーチミン・ダナン電子政府の実現、国民生活の治安維持へのICT利用、国防へのICT利用、オープンソースソフトウェアの利用

環境管理支援システム(04)

配電効率化支援システム遠隔医療システム(04)

地理情報システムGIS(04)高速道路交通システムITS(06-7)トラック輸配送効率化支援システム(06)

農業情報システムGIS(04)

バイオメトリクス(06)

下線: 2009年度のアジアITフォーラム(AFIT)出席者による情報化ニーズ斜体字: 情報化基本政策、電子政府計画から重点項目

黒字: 2004年度から2009年度までの社会公共情報システムのアジア展開のための調査事業31~32

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アジア各国のニーズ��

参考資料 アジア各国の情報化ニーズならびに情報化政策や電子政府計画の重点項目2010/5/13現在

電子政府 環境 エネルギー 医療 交通・地理・物流 教育 防災 産業(農業、工業) 新技術 その他

シンガポールiGov2010①電子サービスの内容(質・利便性)の充実、②国民の電子的手段による政策への関与の促進

IT教育ソリューション(07)

カンボジア 農村地域開発のためのIT活用地球温暖化防止のためのIT活用

クラウドコンピューティング

ラオス2006年11月から開始した中国支援による電子政府プロジェクトを核として(1)電子政府サービスのインフラ整備(2)電子政府アプリケーションの整備

グリーンITと温暖化防止

ミャンマー ICTを活用した防災

ネパール ICTインフラの整備クラウドコンピューティング、グリッドコンピューティング

パキスタン国民ID管理政府におけるインフラの整備、共通アプリケーションの適応、国民へのe-service

スリランカ行政の電子化では、現在、ePensions、eCitizen ID、eForeign Employomentなど多くのプロジェクトが計画段階を終えて、開発・実施の段階

医療の効率化と農村地域への医療アクセスを可能にする遠隔医療

農村地域でアクセス可能なデジタルラーニング、遠隔教育(大学の理工学部レベル)

クラウドコンピューティングやSAASを利用した中小企業活性化

下線: 2009年度のアジアITフォーラム(AFIT)出席者による情報化ニーズ斜体字: 情報化基本政策、電子政府計画から重点項目

黒字: 2004年度から2009年度までの社会公共情報システムのアジア展開のための調査事業

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―非 売 品―

禁無断転載

平成 22 年度

アジア電子情報通信基盤整備に資する

我が国 IT ソリューションの導入促進に関する報告書

発 行 平成 23 年 3 月

編集・発行 財団法人 国際情報化協力センター

〒110-0016

東京都台東区台東 4-18-7

電話 03-5807-5041(代表)

印刷 株式会社 宝 文 社

〒104-0032

東京都中央区八丁堀 2-1-6

この事業は、競輪の補助金を受けて

実施したものです。

http://ringring-keirin.jp

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