35
- 32 - 2.事業により整備された施設の管理状況 (1)農業用水の流れ等 曽於東部地区の農業用水は、安楽川に築造した高岡頭首工から最大0.50m /sの用水 3 を引き入れ、高岡揚水機場から石之脇調整池へ揚水し、石之脇揚水機場から中岳ダムへ 揚水しているほか、一部揚水された水は、8箇所のファームポンドへ直接送水されてお り、ファームポンドにおいて、調整池から送水された水を一時貯留し、各幹線・支線水 路(管水路)を通って、畑地まで配水している。 また、農業用水は、地域の防火用水としても利用されており、地域用水機能も有して いる。 【 曽於東部地区 農業用水の流れ 】

32...- 34 - ③ 揚水機場 名 称 高岡揚水機場 石之脇揚水機場 鹿児島県曽於市末吉町 鹿児島県曽於郡 所 在 地 南之郷字宮ノ後10998番6 計画用水量

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- 32 -

2.事業により整備された施設の管理状況

(1)農業用水の流れ等

曽於東部地区の農業用水は、安楽川に築造した高岡頭首工から最大0.50m /sの用水3

を引き入れ、高岡揚水機場から石之脇調整池へ揚水し、石之脇揚水機場から中岳ダムへ

揚水しているほか、一部揚水された水は、8箇所のファームポンドへ直接送水されてお

り、ファームポンドにおいて、調整池から送水された水を一時貯留し、各幹線・支線水

路(管水路)を通って、畑地まで配水している。

また、農業用水は、地域の防火用水としても利用されており、地域用水機能も有して

いる。

【 曽於東部地区 農業用水の流れ 】

- 33 -

(2)施設の概要

本事業で整備した施設は、中岳ダム、高岡頭首工、揚水機場(高岡、石之脇 、ファー)

ムポンド(石之脇、早馬、中園、宮田、吉原、宮谷、植木、上出水 、水管橋(高岡、早)

馬、三枝、豊留、吉原、白木八重、田之浦、船迫 、導水路(中岳 、幹線水路(石之脇、) )

志布志・松山、田之浦、宮谷、内之倉、末吉・松山、久保、松山 、支線水路(久保、祝)

、 、 、 、 、 、 、 、 、 ) 。井谷 大沢津 泰野 田之浦 尾野見 弓場ヶ尾 上豊留 前川 池野 二反野 である

① 貯水池

名 称 中岳ダム

所 在 地 鹿児島県曽於市末吉町南之郷字市林10805番1

形 式 中心遮水型ロックフィルダム

流域面積 直接 1.3k㎡、間接 25.2k㎡

3堤 体 堤高69.9m、堤長312.5m、堤体積1,420千m

3 3貯 水 量 総貯水量4,310千m 、有効貯水量4,250千m

洪 水 吐 形式 側水路型、洪水量 90m /s3

取水施設 形式 斜樋、取水量 1.31m /s3

放流施設 形式 高圧スライドゲート、放水量 7.0m /s3

付帯施設 管理棟(左岸側に築造)

② 頭首工

名 称 高岡頭首工

所 在 地 鹿児島県曽於市末吉町南之郷字宮ノ後10998番6地先

堰 体 形 式 固定堰 堤 高 2.3m 堤 長 11.6m

計画洪水量 880m /s3

諸 元 最大取水量 0.50m /s3

計画洪水量 200.10m /s3

- 34 -

③ 揚水機場

名 称 高岡揚水機場 石之脇揚水機場

鹿児島県曽於市末吉町 鹿児島県曽於郡所 在 地

南之郷字宮ノ後10998番6

計画用水量 0.50m /s 0.50m /s3 3

実 揚 程 119.4m 54.5m

全 揚 程 141.0m 59.0m

諸 元 型 式 横軸両吸込渦巻型 横軸両吸込渦巻型

φ300mm×2台口径・台数 φ350mm×2台

φ250mm×1台

原 動 機 電動機 電動機

440kw×2台動 力 220kw×2台

250kw×1台

④ ファームポンド

容 量名 称 施設構造 規 模

(m )3

石之脇 3,200 PC円筒形 φ25.0m H= 7.00m

早 馬 24,900 〃 φ50.0m H=13.20m

中 園 13,800 〃 φ40.0m H=11.50m

宮 田 26,200 〃 φ49.9m H=13.95m

吉 原 4,100 〃 φ29.0m H= 6.70m

宮 谷 14,000 〃 φ50.0m H= 7.70m

植 木 10,400 〃 φ40.0m H= 8.65m

上出水 7,000 〃 φ31.0m H= 9.87m

⑤ 水管橋

名 称 構造物 型 式 河川名

高 岡 水 管 橋 鋼管φ700mm、φ600mm パイプビーム 一級河川大淀川水系大淀川

早 馬 水 管 橋 鋼管φ700mm パイプビーム 〃

三 枝 水 管 橋 鋼管φ500mm パイプビーム 〃

豊 留 水 管 橋 鋼管φ350mm パイプビーム 二級河川菱田川水系松尾川

鋼管φ450mm×2 逆三角ワーレン吉 原 水 管 橋 二級河川安楽川水系安楽川

鋼管φ400mm トラス補鋼形

白木八重水管橋 鋼管φ300mm 〃 〃

田之浦水管橋 鋼管φ350mm 〃 〃

船 迫 水 管 橋 鋼管φ300mm パイプビーム 二級河川前川水系前川

- 35 -

⑥ 用水路

延長 最大流量名 称 構 造 備 考

(km) (m /s)3

中岳導水路 5.9 管水路

石之脇幹線水路(一号) 1.8 1.31 管水路

石之脇幹線水路(二号) 0.1 1.25 管水路

志布志・松山幹線水路 5.4 0.58 管水路

田之浦幹線水路 9.2 0.50 管水路

宮谷幹線水路 2.2 0.15 管水路

内之倉幹線水路 5.2 0.19 管水路

末吉・松山幹線水路 3.4 0.67 管水路

久保幹線水路 3.3 0.16 管水路用

松山幹線水路 5.5 0.30 管水路

久保支線水路 1.1 0.05 管水路水

祝井谷支線水路 7.1 0.24 管水路

大沢津支線水路 6.7 0.30 管水路路

泰野支線水路 6.1 0.32 管水路

田之浦支線水路 9.7 0.12 管水路

尾野見支線水路 4.5 0.22 管水路

弓場ヶ尾支線水路 10.3 0.25 管水路

上豊留支線水路 3.1 0.14 管水路

前川支線水路 5.5 0.29 管水路

池野支線水路 0.8 0.08 管水路

二反野支線水路 1.1 0.07 管水路

【中岳導水路】 【中岳導水路及び志布志松山幹線水路】

- 36 -

(3)施設の利用状況

水利使用規則に基づき、中岳ダムにおいては、貯水池から最大1.314 m /s、年間総取3

水量5,520千m 、高岡頭首工については、安楽川から最大0.500 m /s、年間総取水量8,463 3

0千m の取水規則となっている。3

河川管理者である国土交通省は、大淀川水系のダム等による用水開発計画について、

同河川下流に位置する高岡地点を管理基準点とし、その制限流量を26.0m3/sと定め、こ

れ以下の流量については取水を制限している。

このため、大淀川水系国営農業水利事業6地区(大淀川左岸地区、大淀川右岸地区、

曽於東部地区、都城盆地地区、西諸地区、曽於北部地区)における水収支計算では、高

岡地点26.0m3/sの制限を受けることとなり、26.0m3/sを超える分については、下記に示

す大淀川利用に対する優先順位(予備協議開始の順位)により、先行地区から優先的に

利用することとしている。

図 大淀川高岡基準点に関わる水系模式図

← 本庄川

← 浦之名川

境川 →

← 岩瀬川

高岡管理基準点(国交省管轄)

→大淀川

→栗谷川→

後川

日 向 灘

谷川内ダム

水ノ手橋地点

栗谷川合流地点

下堤橋地点

栗谷頭首工 田野頭首工 木之川内ダム

大 淀 川 →

→木之川内川

→庄内川

→溝之口川

→谷川内川

国営曽於北部土地改良事業

国営都城盆地土地改良事業

浜ノ瀬ダム

国営西諸土地改良事業

広沢ダム

国営大淀川左岸土地改良事業天神ダム

国営大淀川右岸土地改良事業

中岳ダム

国営曽於東部土地改良事業

岩前頭首工

← 安楽川

高岡頭首工

:正常流量地点

←大淀川

1,7,10

3,8,112

6,9

1 :番号は取水及び貯留の

優先順位。変更協議地区

は変更順位を記載。

:高岡管理基準点に係わる

取水及び貯留施設。岩前

頭首工は該当しない。

青色

凡 例

※岩前頭首工は、高岡基準点

の制限を受けない既得水利権である。

- 37 -

(4)施設の管理状況

、 、 、 ) 、本事業で造成された基幹水利施設(中岳ダム 高岡頭首工 揚水機場 水管理施設 は

から曽於市及び志布志市へ、その他の施設については、農林水産省から曽於農林水産省

東部土地改良区に管理委託され、適切に維持管理されている。

なお、基幹水利施設の操作及び保守点検は、関係市町から曽於東部土地改良区へ委託

され、適切に管理されている。

【 造成施設の管理状況 】

施 設 名 財産所有者 管 理 者

中岳ダム

高岡頭首工曽於市長及び志布志市長

高岡揚水機場

石之脇揚水機場

ファームポンド 農林水産省

水管橋

中岳導水路 曽於東部土地改良区

幹線水路

支線水路

【 曽於東部土地改良区の組織(平成27年4月時点) 】

総代会(44名)

幹事会

監事会(3名) 理事会(18名)

総括監事 理事長 専門部会監事 副理事長

総括理事 水利用防霜管理組合会計担当理事理事

事務局長

総務課(2名) 管理課(3名)

- 38 -

【 中岳ダムの管理概要及び洪水警戒体制 】

区 分 内 容

・貯留の最高限度は、洪水吐から越流に伴う水位の自然上昇を除き常時満水位(354.00m)をこえてはならない。・貯留は、中岳ダム及び国土交通省高岡観測所の基準地点におけ

平常時 る河川流量のすべてが、基準河川流量を超える場合に限り、その越える部分の最も小さいものの範囲内において行うものとする。・高岡頭首口からの集水による貯留は、高岡頭首工地点の河川流量が基準河川流量を超える場合に限り、その越える部分の最も小さいものの範囲内において行うものとする。

。・気象官署が行う気象観測の成果を的確かつ迅速に収集すること洪水時 ・九州地方整備局長及び鹿児島県知事に対し通報をすること。

・最大流入量その他流入量の時間的変化を予測すること。・洪水時におけるダムの操作に関する記録を作成すること。

・ダムに係る直接集水地域の全部又は一部を含む予報区を対象と洪水警戒体制 して大雨警報が発せられ、その他洪水が発生する恐れが大きいと

認められるに至った時から、これらの警報が解除され、又は切り替えられ、かつ洪水の発生するおそれが少ないと認められるまでの間で、洪水時を除く場合

出典:中岳ダム管理規定(平成19年10月)

本地区で造成された施設の維持管理費の推移は下表のとおりである。

維持管理費は、本格的な稼働後5年程(5か年平均76,340千円)であることから、事

業計画上の維持管理費(計画年経費 225,625千円)に対し約30%程度で推移しており、

今後、経年的に劣化が進めば維持管理費が徐々に増加してくるものと思われる。

近年においては、中岳ダム(ダム管理所機器更新、地震計修理、ダム法面補修等)や

国営幹線水路(漏水修理、畑かん修理対応等)など主に整備補修費が増加している。

【 完了後の維持管理費の推移 】

出典:曽於東部土地改良区総代会資料

単位:千円

施設名 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度

中岳ダム 21,643 25,187 23,533 24,343 47,519

高岡頭首工 881 2,725 649 611 554

揚水機場 23,885 22,030 26,426 14,186 15,304

中岳導水路 439 591 440 474 574

国営幹線水路 3,933 5,189 5,825 4,185 10,612

国営支線水路 1,819 2,448 1,821 1,962 2,376

県営施設 12,675 16,708 22,354 17,492 20,308

計 65,275 74,878 81,048 63,253 97,247

- 39 -

(5)施設利用及び管理上の課題

造成した施設については、国営造成施設機能診断調査及び広域基盤整備計画調査によ

り施設の機能診断を行って機能低下等の状況を把握しているが、代表施設の機能診断に

より、地区全体の更新整備計画を策定していることから、今後は、個別施設の機能診断

や継続的な施設監視により施設の状況を把握し、適宜、更新整備計画の見直しを行う必

要がある。

また、水管理システムや揚水機場の電気設備は、製造メーカーにしか点検整備ができ

ないことやメーカーが県外など遠方に所在し、出張経費がかかっていること等から、次

期更新にあたっては、機動的な点検整備と低コストな補修が可能となるよう地元により

近い企業への設備選定を行う必要がある。

- 40 -

3.費用対効果分析の算定基礎となった要因の変化(1)作物生産効果

作物生産効果は、事業を実施した場合(事業ありせば)を事後評価時実績とし、実施しなかった場合(事業なかりせば)を事業計画時の現況として、作物生産量の増減の比較により年効果額を算定している。

①効果算定対象面積の変化受益面積は、農地転用等により、計画時点(平成12年)の3,148haに対し、評価時点(平成

27年)は3,142haと6ha減少している これに伴い 作物生産効果の対象面積(本地面積)は3,。 、000haから2,995haに減少している

②主要作物の作付面積の変化事業計画時の営農構想は、露地野菜とかんしょ(加工 、葉たばこ、肉用牛等との複合)

経営とメロン(半促成・抑制 、ピーマン(施設)を主体とした施設経営を目指していた)が、計画時点(平成12年)の計画と評価時点(平成27年)の作物別作付状況をみると、農業用水による計画栽培が可能となったことや区画整理に伴う担い手への農地の集積・大規模化、加えて、契約栽培の進展による安定経営志向もあり、土地利用型畑作物であるかん

( ) 、 。 、 、しょ 加工 やキャベツ 茶などの作付けが計画以上に増加している 一方 その反動でメロン(半促成・抑制 、ピーマン(施設)の施設作物やさといも等の作付けが計画を大)幅に下回っている。

なお、計画作付面積には達していないものの、収益性が高いピーマン(施設 、にんじ)んは現況(平成9年)より増加しており、いちご(施設 、きく(施設)新たに作付けさ)

区   分

畑 3,148 ha 3,142 ha 6 ha

上記のうち、公共転用(道路等) 22 ha 22 ha ha

作物生産効果対象面積 3,126 ha 3,120 ha 6 ha

本地面積 3,000 ha 2,995 ha 5 ha

出典:九州農政局調べ

計画時点 評価時点 増 減

単位:ha評価時点 備考

現 況 計 画① ②

表作 かんしょ(加工) 590 450 1,470かんしょ(青果) 150 330 133葉たばこ 120 120 22芝 270 210 108かぼちゃ 120 120 17メロン(半促成) 5 100 3ピーマン(施設) 10 150 68さといも 60 240 13ごぼう 50 120 16青刈りとうもろこし 760 880 666いちご(施設) 0 0 13きく(施設) 0 0 11

裏作 メロン(抑制) 5 100 2だいこん 170 210 151にんじん 30 130 41キャベツ 90 100 281イタリアンライグラス 770 800 897

茶園

周年 茶 230 230 378

3,430 4,290 4,290出典:九州農政局調べ

合  計

計 画 時 点区分 表・裏 作 物 名

普通畑

(平成9年)(平成27年)

- 41 -

③生産量の変化計画と評価時点の単収を比較すると、かんしょ(加工)は3,475㎏/10aに対して3,812㎏

/10a(10%)、かぼちゃは2,321kg/10aに対して2,212kg/10a(5%)、ごぼうは2,333kg/10aに対して2,491kg/10a(7%)、キャベツは4,505kg/10aに対して5,619kg/10a(25%)、茶は227㎏/10aに対して276㎏/10a(22%)と、かんがい用水の活用等により高くなっている。

しかし、かんしょ(加工)、ごぼう、キャベツ、茶以外の作物は作付面積が計画面積より下回っているため生産量も計画を下回っている。

【主要品目の計画時現況・計画及び計画時点の単収比較】

出典:九州農政局調べ

2,896

1,934 1,769 1,944

5,435

3,754

201

3,475

2,321 2,388 2,333

6,250

4,505

227

3,812

2,212 1,985

2,491

5,606 5,619

276

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

5,500

6,000

6,500

7,000

かんしょ(加工) かぼちゃ さといも ごぼう だいこん キャベツ 茶

計画時現況 計画時計画 評価時点

③生産量の変化

t・千本/ha t・千本/ha t・千本/ha

かんしょ(加工) 17,086 29.0 15,638 34.8 56,039 38.1かんしょ(青果) 3,369 22.5 8,894 27.0 1,807 13.6葉たばこ 342 2.9 370 3.1 43 2.0芝 2,565 9.5 2,625 12.5 1,080 10.0かぼちゃ 2,321 19.3 2,785 23.2 376 22.1メロン(半促成) 205 40.9 4,090 40.9 69 23.1ピーマン(施設) 1,393 139.3 20,894 139.3 9,046 133.0さといも 1,061 17.7 5,731 23.9 258 19.9ごぼう 972 19.4 2,800 23.3 399 24.9青刈りとうもろこし 46,725 61.5 64,926 73.8 42,178 63.3いちご(施設) - - - - 373 28.7きく(施設) - - - - 5,075 461.3メロン(抑制) 131 26.2 2,622 26.2 37 18.5だいこん 9,240 54.4 13,125 62.5 8,465 56.1にんじん 1,121 37.4 5,681 43.7 1,370 33.4キャベツ 3,379 37.5 4,505 45.1 15,788 56.2イタリアンライグラス 61,685 80.1 76,904 96.1 67,275 75.0茶 462 2.0 522 2.3 1,043 2.8

作物名

(単位:t、千本)

現 況 計 画事業計画(平成12年)

(平成27年)評価時点

(t・千本 /ha)

- 42 -

④生産額の変化かんしょ(加工)は生産量の増加、契約栽培の単価が計画以上であること、キャベツ

は生産量の増加、青刈りとうもろこし、イタリアンライグラスは肉用牛価格の上昇に伴う単価の上昇、茶は生産量の増加により、生産額は計画を上回っている。

一方、かぼちゃは単価が上昇しているが、生産量が計画を下回っているため、その他の作物は単価の下落に加え、生産量が計画を下回っているため生産額も計画を下回っている。

【作物単価の変化】

出典:九州農政局調べ

52 124

280 255

47 101 60

1,455

55 171

112 127

20 94 43

1,078

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

かんしょ(加工) かぼちゃ さといも ごぼう だいこん にんじん キャベツ 茶

計画時点 評価時点

千円/t・千本 千円/t・千本 千円/t・千本

かんしょ(加工) 888 52 813 52 3,082 55かんしょ(青果) 505 150 1,334 150 188 104

葉たばこ 673 1,968 728 1,968 82 1,912芝 328 128 336 128 166 154

かぼちゃ 288 124 345 124 64 171メロン(半促成) 78 381 1,558 381 17 253ピーマン(施設) 493 354 7,396 354 2,904 321

さといも 297 280 1,605 280 29 112ごぼう 248 255 714 255 51 127

青刈りとうもろこし 514 11 714 11 2,235 53いちご(施設) - - - - 320 859きく(施設) - - - - 269 53メロン(抑制) 60 456 1,196 456 9 231

だいこん 434 47 617 47 169 20にんじん 113 101 574 101 129 94キャベツ 203 60 270 60 679 43

イタリアンライグラス 864 14 1,077 14 2,758 41茶 672 1,455 760 1,455 1,124 1,078計 6,658 20,037 14,275

出典:九州農政局調べ

(単位:百万円)

作物名事業計画(平成12年) 評価時点

(平成27年)現 況 計 画(平成9年)

(千円/千本・t)

- 43 -

(2)営農経費節減効果営農経費節減効果は、事業を実施した場合(事業ありせば)を事後評価時実績とし、実施

しなかった場合(事業なかりせば)を事業計画時の現況として、労働時間及び労賃等を基にした経費の増減の比較により年効果額を算定している。

①年間労働時間の変化区画整理に係わる年間労働時間を事業計画における現況及び事業計画と事後評価時点

、 、 ( )、で比較すると 計画していた栽培体系及び機械装備が実現しており かんしょ 青果用にんじん、キャベツは計画どおりに労働時間が節減されている。また、その他の作物についても事業計画時の現況時点と比べると労働時間が節減されており、作業の効率化が発現している。

【年間労働時間の比較(10a当たり 】)

出典:九州農政局調べ

②年間機械経費の変化年間機械経費の変化をみると、ごぼう以外の作物については、地区内農家の規模拡大

や大規模法人の出現等により事業計画以上に経費が縮減している。基幹労賃は、事業計画時は1,160円/hrであったのに対し、事後評価時は1,630円/hrと

、 。29%上昇しているが 機械を含めた作業体系の効率化により経費の節減に繋がっている【年間機械経費の比較(ha当たり 】)

出典:九州農政局調べ

980

1,096 1,139 1,177

1,046

926

1,171

381

272

828 773

656

375

730

295

166

429

834

375

265 265

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

かんしょ(青果) かぼちゃ さといも ごぼう だいこん にんじん キャベツ

計 画 時 現 況 計 画 時 点 評 価 時 点

1,330

2,460

2,340

710 740

1,210

1,430

1,223

2,315

1,477

427

601

1,0751,113

974

2,410

1,913

515

679 696

973

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

かんしょ(青果) かぼちゃ さといも ごぼう だいこん にんじん キャベツ

計 画 時 現 況 計 画 時 点 評 価 時 点

(ha/10a)

(千円/ha)

- 44 -

(3)維持管理費節減効果維持管理費節減効果は、事業を実施した場合(事業ありせば)を事後評価時実績(評価近年5ヶ年の平均値)とし、実施しなかった場合(事業なかりせば)は、安全管理上必要最低限の維持管理費を積み上げて、維持管理費用の増減の比較により年効果額を算定している。

①施設の維持管理費地区内で一体的に機能を発揮する土地改良施設等について、計画と評価時点の維持管

理費を比較すると、計画は256百万円(H26時点換算)を見込んでいたが、対象施設の本格稼働から時間が経過していないこと等から、事後評価時点では維持・修繕費等が少なく133百万円となっている。

【維持管理費の対比(合計値 】)

出典:九州農政局調べ(支出済換算値)

単位:千円

計 画 時 現 況 計 画 時 点

中岳ダム - 52,806 26,008高岡頭首工 - 951 1,089揚水機場 - 123,228 78,914国営幹線支線水路等 - 27,530 8,723県営施設 - 52,246 17,809その他(防霜ファン等) 94,828 - -

計 94,828 256,761 132,543出典:九州農政局調べ

事業計画時評 価 時 点区 分

94,828

256,761

132,543

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

計 画 時 現 況 計 画 時 点 評価時点

(千円)

計画時現況(平成9年) (平成27年)

- 45 -

②地域活動(多面的機能支払交付金)の取り組み本地区内では、水土里サークル活動組織として9組織があり、農地や農業用施設等の

資源の適切な保全管理を行うため、地域ぐるみでの共同活動と農業者ぐるみでの施設の長寿命化に取り組む向上活動を支援する「多面的機能支払交付金」を活用した取り組みを行っている。

(代表例)・用水路及び農地等の除草作業、泥あげ・景観活動(遊休農地に花を植栽)・小学生等を対象とした学習田の実施・地域の伝承(祭りなど)の実施など

出典:鹿児島県大隅地域振興局調べ

丸山緑牧会 114.7

早馬振興会 44.4

深川地区みどり推進会 6.2

大園地区 7.0

屋敷寺地区 12.4

八野地区環境保全協議会 8.4

潤ヶ地区環境保全協議会 13.9

水土里サークルてのもんそ会 0.3

梅崎地区環境保全会 0.7

畑協定農地面積(ha)

志布志市

市町村名 活動組織名

曽於市

- 46 -

(4)その他効果①農業労働環境改善効果

農業労働環境改善効果は、事業の実施により、営農機械化体系や施設の維持管理方法等の改善が図られることにより 農作業環境が変化し 営農に係る労働が質的に改善 労、 、 (働強度の改善、精神的疲労の軽減など)されたことに対する支払意志額を受益農家に尋

、 、ねることで その価値を直接的に評価する手法であるCVM(仮想市場法)により測定し年効果額を算定している。

本効果は計画時点では算定していなかったが、事業により営農に係る労働が質的に改善(労働強度の改善、精神的疲労の軽減)されていることから新たに算定を行った。

地区受益農家を対象としたアンケート調査において 「農業水利施設が、老朽化など、により現在の営農のような水利用ができなくなり、あなたの農地でのかん水や防除のための農業用水の確保などについて、精神的疲労(気苦労)が増えるとした場合に、その精神的疲労(気苦労)を解消するために、いくら支払っても良いか」の問に対して、支払意志額は、10,957円/年/戸となっている。

②地域経済波及効果本事業及び関連事業の実施に伴い、受益地域における農産物が増減したり、旧施設が

支えていた農産物の生産が保持されることにより 川上 農業資材関連産業 ・川下 農、 ( ) (産物需要関連産業)を含めた関連産業の生産が増減する効果を、地域経済波及効果として算定した。

本効果は計画時点では算定していなかったが、本地区で生産されるかんしょは、国内最大手の焼酎メーカーであるK酒造株式会社との契約栽培が行われおり、本地区の農業生産活動が、同社の計画的な製品製造に寄与するとともに、安定雇用など関連産業への波及が見られ産地収益力の向上が図られたことから波及効果として新たに算定を行った。

更新分新設及び機能向上

更新分新設及び機能向上

更新分新設及び機能向上

① ② ③ ④ ⑤=①×③ ⑥=②×④

10,957 10,957 120 3,000 13,148 328,710

※WTPとは、支払い意志額のことである。

労働改善に関するWTP 受益面積 CVMによる年効果額(円/10a・年) (ha) (千円)

従前の産業への波及効果

新たに生じる産業への波及効果

千円 千円

344,389 -

14,577,847 -

川下産業 11,715,901 -

川下産業の川上 2,861,946 -

14,922,236 -

出典:九州農政局調べ

部  門生産額

 川上産業

 川下産業

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4.事業効果の発現状況

事業効果の発現状況においては、本地区の事業計画上の目的を踏まえつつ、地区内で発

現している①農業生産性、②農業生産の維持、③農業経営の安定、④事業による波及的効

果、公益的・多面的機能等について、農家等アンケートを交えて評価した。

(1)農業生産性の向上

本事業及び関連事業の実施により、ダムや揚水機場等のかんがい施設が整備されたこと

により、農業用水が安定的に供給され、計画的なは種、定植及び作物の生育ステージに応

じた適期のかんがいが可能となったことから、栽培作物の収量及び品質の向上が図られて

いる。

アンケート調査においても、事業実施前と比較して80%の農家が「農産物の安定的な収

量確保ができるようになった 、78%の農家が「天候に左右されず、は種・定植ができる」

ようになった」と回答している。

また、82%の農家が「水不足による農作物の被害がなくなった」と回答しており、安定

した農業用水の供給により、用水不足に伴う被害の防止に役立っている。

【畑地かんがい施設及び区画整理により、あなたの営農は事業をするまえと比べて、どのよう

な変化がありましたか】

出典:国営土地改良事業「曽於東部地区」 完了後の評価に関するアンケート調査結果

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労働時間についてみると、畑かん施設の整備による用水の運搬や散水のための労力の減

少、区画整理による農作業の機械化や農業機械の大型化等により、各作物共に年間労働時

間は減少しているが アンケート調査においても 事業実施前と比較して85%の農家が 用、 、 「

水の運搬や散水のための労力が減った 、76%の農家が「区画整理により農作業の機械化」

や農業機械の大型化ができるようになり農作業が楽になった」と回答している。

出典:国営土地改良事業「曽於東部地区」 完了後の評価に関するアンケート調査結果

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営農事例1(JAそお鹿児島ピーマン専門部会)

畑地かんがい施設の整備を契機にピーマン産地を再興

経 営 形 態 JAそお鹿児島ピーマン専門部会

概 所 在 地 曽於市

営 農 類 型 ピーマン(施設栽培)

要 設立時点 15.2ha(平成13年)経営規模

現 在 23.4ha(平成26年)

【事業を契機とした経営転換のポイント】・昭和43年に生産者12人で施設栽培を開始。・その後、野菜指定産地に指定され、栽培面積が22.5haまで拡大。・昭和53年以降、後継者不足等により平成2年には7.5haまで減少。・平成8年国営事業によるかんがい用水の確保を契機に新規就農者の研修・農地の斡旋等を行う「農業公社」設立。・効果的なかん水方法など栽培技術の向上及び販売促進に取り組み、作付けの拡大を実現し、冬春ピーマンの野菜指定産地を再興。

【単収・品質の向上】・事業実施以前のかん水は、地下水や雨水貯留水、上水道利用。水利用に制限があり収量が低く10a当たり約9t。・平成8年の暫定通水開始から一部受益地において畑地かんがいの利用を開始、十分なかん水が可能。農業改良普及員やJAの指導、栽培技術の高位平準化により近年収量が10a当たり約12tと品質及び単収向上。・専門部会が開催する現地検討会により、水管理、温度管理、肥培管理の徹底、特に厳寒期(12月~3月)の収量確保、高位単収・安定が実現。・環境にやさしい農業の実践。有機質肥料の施用及び天敵防除による安心・安全なピーマン作り、全ての部会員が土壌分析結果に基づく施肥設計を実施、微量要素を含む適切施肥を実行。

【省力化(かん水の省力低コスト化 】)・事業実施以前は、地下水や雨水貯留水及び上水道が水源で費用を要し、圧力も低く、かん水作業に労力と時間を要す。・平成8年の暫定通水により各ほ場ごとに給水栓整備、かん水の労働時間が大幅に短縮。自動かん水器具を設置した農家は効果大。上水道を使用していた農家は費用が1/12に大幅削減。かん水施設整備時に液肥混入機を併設、肥培管理の大幅な省力化。・近年は点滴チューブを導入する農家が増加、さらなる効率化。

【担い手の育成確保】・市とJAで設立した農業公社による「就農研修事業」により、IターンやUターン 者114人のうち83人が新規就農。・同事業は、研修生が2年間の期間で1年目は農業の基本を学び、2年目は30aの施設で自ら経費を負担しピーマンの生産から販売まで経営体験。・JAと行政が一体で栽培・経営指導、地域に定着し自立できるように支援。・公社では、18期計114人の研修生を受け入れ、就農の際には、市内の農地の斡旋や農業機械の賃貸も行う。

【今後の活動方針】・平成25年度から新たにピーマン部会内に設置した土着天敵研究チーム(農家3戸、JA、畑かんセンターピーマン担当者で組織)の活動。・現在3種類の土着天敵活用技術確立に向け、ほ場内外に土着天敵を集め、維持・増殖するため多品目の植物を植栽、天敵温存ハウスを設置し、実証活動中。・これらの栽培技術を確立し、ピーマン専門部会全員に普及する。

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営農事例2(株式会社S)

経営規模の拡大と農業経営IT化により新たな農業ビジネスを展開

経 営 形 態 農業生産法人

概 所 在 地 志布志市

営 農 類 型 ピーマン、キャベツ、ケール、ばれいしょ、飼料

要 事業実施前 21.0ha経営規模

事業実施後 94.0ha

【事業を契機とした経営転換のポイント】・当初、芝の生産(21ha ・販売を中心とする経営、冬場に収益が期待できる青首だい)こんを作付も赤字。・ 農産物を高く売ろう」から 「いかに損をしないか」という考え方に変え、露地野菜「 、の契約栽培に経営を転換。・平成8年国営事業により受益地の一部で畑地かんがいの利用開始、活用。・11年ケール契約栽培、12年ばれいしょ、14年かんしょ、近年キャベツ、ピーマン追加。

、 。・17年地域の畜産農家と連携し 飼料用トウモロコシのサイレージを畜産農家へ販売開始

【単収・品質の向上】、 、 、・適期作業・適期収穫を徹底 大型・高性能機械導入 スピード化と作業効率向上を図り

品質向上。・干ばつ対策:畑地かんがいの有効活用50ha分の散水器具を常備。台風対策:40ha分の防風ネット常備。

【省力化(かん水の省力低コスト化 】)・当初、経営管理や栽培記録はノートに記録。規模拡大により膨大な情報を扱うため、データべースシステムを開発。・農業経営システムは 「ほ場管理 「作業遂行」の結果を入力、結果に基づく予測。、 」、

予測情報を社員全員で「情報共有 。これらの4つの機能を活用してPDCAサイクル」による継続的な改善を重ね、人と機械と農地の効率化を図り、リスク回避。・規模拡大と多品目生産経営。大型機械の導入、ばれいしょ等は作業の機械化とコンテナ出荷、労働時間の大幅削減。

【規模拡大・土地利用調整】・農地集積、契約野菜品目の拡大、大型機械の導入による経営規模拡大。

、 ( )。・高齢農家からの耕作要請の受け入れ 補助事業等を活用した耕作放棄地の再生 13ha・これらの取り組みが地域活動の一つとして位置づけ。

【今後の活動方針】・リスク管理、IT活用、人材育成のマネージメント機能をより強化して生産リスク軽減し、露地野菜の安定生産、地域循環型農業の拡大、露地野菜の規模拡大。・団地化による効率化・水利用と作業機械の高性能化。自然災害の影響を受けにくい栽培システムの構築、畜産農家のニーズへ対応 ・自立型スタッフの育成。、

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営農事例3(有限会社F)

整備された農地の集積によりキャベツを核とした経営を展開

経 営 形 態 農業生産法人

概 所 在 地 志布志市

キャベツ、かんしょ、にんじん等営 農 類 型

要 事業実施前 3.8ha経営規模

事業実施後 28.2ha

【事業を契機とした経営転換のポイント】・当初は葉たばこ1.8ha、かんしょ2.0ha、ブロイラー3万羽。・平成16年法人化、にんじん1.0haを追加し、葉たばこ3.2ha、かんしょ5.0ha。・就農前目標の露地野菜主体の法人経営を目指す、平成17年から焼酎原料用かんしょ主体に転換。

、 。・平成21年農家8名でキャベツ生産組合設立し キャベツを主とした露地野菜経営に転換・平成23年周辺農家2戸と新たな有限会社を設立し、市場の仲卸を中間事業者とした大型量販店との契約販売。・現在、複数の中間事業者を通してキャベツの契約取引で面積を拡大。

【単収・品質の向上】・畑地かんがいを活用し、育苗時のかん水、定植前、定植後の活着促進、生育期のかん水など生育ステージに応じた水管理と計画的な作付けを行い、収量や品質の高位平準化とともに所得向上。

【省力化(かん水の省力低コスト化 】)・平成8年から暫定通水が始まり、露地野菜の基礎水や活着水として移動式スプリンクラーによるかん水するが設置・撤去作業に時間を要する。・近年ロールカーやスマートレインを導入、かん水作業の省力化。・区画整理と畑かん施設整備済ほ場を中心に農地の集積、機械活用で病害虫防除等作業の効率化。・平成26年に作業体系やほ場を効率的に管理するため、農業生産工程管理システム導入。・作業管理やGAPの生産履歴管理に活用予定。

【 】規模拡大・土地利用調整・農地集積、契約栽培野菜拡大、大型機械の導入により経営規模の拡大。・キャベツ、にんじんの収穫時に期間雇用を行い、雇用者からの紹介が利用権設定に結びつき、円滑な農地集積。

【今後の抱負等】・キャベツ契約栽培の拡大に伴い、計画生産・計画出荷が実現可能な農業ICTの活用を図り、有利な販売に繋がるためIPMの取組を拡大。・にんじんの規模拡大とごぼうの新規導入し、農作業の効率化を図るため洗浄機の導入。・畑地かんがいを活用した収益性の高い営農を展開。・主品目であるキャベツの生産安定、農業所得の確保とキャベツ、にんじん、ごぼうによる露地野菜の輪作体系の確立。・全国的にサラダ需要が見込まれることから新たな品目としてリーフレタスの栽培。

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営農事例4(K観光農園)

いちご観光農園

経 営 形 態 個人経営

概 所 在 地 志布志市松山町

いちご、しょうが営 農 類 型

要 事業実施前 0.2ha経営規模

いちご0.3ha、しょうが0.2ha)事業実施後 0.5ha(

【事業を契機とした経営転換のポイント】

、「 」 、 、・昭和60年頃は なす を20a栽培していたが 直接消費者へ販売したいという思いから平成12年に「いちご観光農園」を開園、今年で16年目を迎える。・当初のいちごの面積は20aであったが、平成12年に30aに拡大(7連棟×2、6連棟×1 。)また、いちごの収穫期と重複しない「しょうが」の栽培を行っている。

【単収・品質の向上】・畑地かんがい用水の活用方法については、周年利用しており、育苗時期はスプリンクラーを使用、その他栽培期間はチューブかんがいにより散水している。

・畑地かんがい用水による単収や品質の向上については、いちご栽培を始めた時に、既に畑かん用水を利用していたため、単収や品質の向上についてはわからないが、水がいつでも使用できることの安心感があり、計画的な栽培管理ができる。

・その他単収や品質確保のための取り組みとして、散水チューブの目詰まりを防止するためのフィルターを設置している (水質に問題はない )。 。

・また、葉ダニの防除について、IPM(総合病害虫雑草管理)の取組みを行っている。

【省力化(かん水の省力、低コスト化 】)

・事業前からいちご栽培を行っている農家では、かん水にかかわる水代が大きく削減されたと聞いている (事業前の水道代は、6万円/月、賦課金約4千円/10a/年)。

【経営規模拡大・土地利用調整】

・経営規模拡大については、今のところ未定であるが、収量がもっと確保できれば、インターネット販売や近隣の直売所に出荷したい思いはある。

・地域の交流活動などは、幼稚園や小学校からの依頼があれば、収穫体験の受け入れは行っている。

【今後の抱負等】

・いちごの収穫期間(12月下旬~4月下旬)には、年間7千人~1万人の来場者があり、今後も集客数を維持、確保していくために、さらに品質向上や付加価値(加工販売)を付けて販売していきたい。

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営農事例5(合同会社S)

かんがい用水を活用した高品質お茶と有機発酵肥料

経 営 形 態 合同会社

概 所 在 地 志布志市松山町

茶営 農 類 型

要 事業実施前 6.0ha経営規模

事業実施後 4.0ha

【事業を契機とした経営転換のポイント】・昭和50年当初、茶6haを兄弟2人で開始。・防霜用水等の不足により、国営通水前に4haに縮小。・収量より高品質で収入増を目指し、全てを玉露として加工、生産。・平成25年度より輸出(EU、アメリカ)に取り組み。

【単収・品質の向上】・畑地かんがい用水を活用し、生育期、防除、防霜のかん水など生育ステージに応じた水管理を行い、収量や安心、安全な品質の高位平準化とともに所得向上。・自家製有機肥料を活用し、土壌改良を行い、安心、安全で高品質なお茶の生産に取り組んでいる。

【省力化(かん水の省力低コスト化 】)、 、・当初は貯水槽による水利用で電気代等が嵩んでいたが 平成8年から暫定通水が始まり

スプリンクラーによる防除、防霜の用水不足の不安がなくなる。・水があって初めて、安定した高品質のお茶生産が可能となった。

【 】規模拡大・土地利用調整・安心、安全で高品質なお茶(玉露)の生産に特化し、規模拡大ではなく、高品質なお茶の生産を行っている。

【今後の抱負等】・日本にしか出来ない安心、安全で高品質なお茶を生産し、輸出拡大の取り組み。・個々の農家ではなく地域農家が一体となって推進する。・生産者に多くが入ってくる仕組みを確立したい。・水利用の効果は無限大、十分活用し切れていない。

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(2)農業生産の維持

事業の実施により、農業用水が安定的に確保されることで、地区内の農業生産が維持

・継続されており、関連事業による区画整理等により農業生産法人等の担い手農家への

農地の集積が進み、農業生産の維持・拡大に繋がっている。

本地域の事業実施前後の主要作物の作付面積をみると、かんしょ、茶、だいこん、キ

ャベツ、果樹、はくさい、にんじんの作付が増加している。また、ピーマン(施設)に

ついては、作付面積は減少しているものの、新規就農者の栽培作物として取り組まれて

おり、野菜指定産地として維持されている。

【 主要作物の作付面積の変化 】

(3)農業経営の安定

①販売規模別農家割合の変化

本地域の事業実施前後の販売規模別農家割合をみると、500万円以上の販売農家割合

は、昭和55年451戸(6%)から平成22年484戸(22%)に増加している。また、1,000万

円以上の販売農家割合は、昭和55年89戸(2%)から平成22年277戸(13%)に増加して

おり、鹿児島県の平成22年における1,000万円以上の販売農家割合は8%であることか

ら、県全体からみても販売規模の拡大が進んでいる。

【 販売規模別農家割合の変化 】

出典:農林業センサス

(ha) (ha)

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②担い手農家への農地の利用集積と法人経営体の増加

本地域の事業実施前後の経営規模別農家数割合をみると、経営規模2.0ha以上の農家

割合は、昭和55年の526戸(7%)から平成22年の529戸(24%)と微増であるが、5.0h

a以上の農家は昭和55年の21戸(0.3%)から平成22年の158戸(7%)と7倍以上に増加

しており、鹿児島県全体の5.0ha以上の経営規模農家数の伸び率(2,710戸/408戸=6.6

倍)を上回っている。また、22年における販売農家中に占める割合も県全体を上回って

おり、経営規模の大規模化が進んでいる。

【 経営耕地規模別農家割合の変化 】

出典:農林業センサス

担い手農家として地域農業を牽引している経営体は、鹿児島県が関係市町などと設立

した曽於地域畑地かんがい営農推進本部が平成19年度に策定した「曽於地域畑地かんが

い営農ビジョン」に基づき「認定農業者等への規模拡大や法人化への誘導」を進めた結

果であり、法人経営対数は、昭和60年の6経営体から平成27年は134経営体へと20倍以

上となっており、ビジョン策定後、関連する県営事業が完了した平成24年からは本格的

な営農が受益地全域で始まったことなどから、株式会社形態を始めとした法人経営体が

急激に増加していることが特筆される。

- 58 -

、 、このような規模の拡大や経営体の法人化などは 本事業及び関連事業の実施によって

農業用水が安定的に供給され、区画整理等の基盤整備が行われ、農業生産条件が劇的に

改善されたことによるものであり、受益農家へのアンケート調査での「農地の貸し借り

がし易くなったか」という質問に対して 「そう思う 「どちらかと言えばそう思う」、 」

と69%回答していることからも裏付けられている。

【あなたの地域では、事業をする前(畑に水がくる前)と比べて、どのような変化があ

ったと思いますか?】

農地の貸し借りがしやすくなった

出典:国営土地改良事業「曽於東部地区」 完了後の評価に関するアンケート調査結果

- 59 -

(4)事業による波及的効果、公益的・多面的機能等

①波及効果の発揮

農業生産法人では、経営規模拡大の際の雇用確保にあたっては、農業経験が豊富な地

権者等を優先的に雇用するなど、円滑な農地集積における地権者の収入確保や地域雇用

に寄与している。

また、本地区で生産されるかんしょは、国内最大手の焼酎メーカーであるK酒造株式

会社(本社 宮崎県都城市)との契約栽培が行われており、同社が仕入れている原料用

かんしょの約2割が地区内の契約農家から仕入れられている。

これは、受益地内の農業生産活動が、同社の計画的な製品製造に寄与するとともに、

安定雇用など関連産業への波及効果と言え、地域経済の活性化にも寄与している。

さらに、昭和43年から始まったピーマン栽培は産地化したものの、7.5haに作付減少

したことから、志布志市農業公社(旧志布志町農業公社(H8年設立 )を設立し、全国)

、 、を対象に新規農業者の受け入れ・研修・就農支援に取組み これまで75名が新規就農し

ピーマン部会へはうち58名 部会員の約7割 が在した結果 ピーマンの作付面積は23.( ) 、

4ha(H26年)へ拡大するなど、産地再興に寄与している。

志布志市農業公社における農業後継者等育成の取組は、日本農業賞大賞の受賞(H26

年)や農業白書への掲載により全国的に注目されており、志布志市創生戦略の中核的な

取組にも位置付けられている。

なお、これらの取組による新規就農者は県外からのIターン者が7割を占めるため、

新規就農者の定住定着を支援する体制づくりや田舎ぐらしに溶け込みやすい地域環境づ

くりを醸成するとともに、就農者の地域活動への参加を通じ持続的な地域社会にも寄与

している。

②多面的機能の発揮

ア.防火用水としての利用

本事業で整備した農業水利施設は、管理を行っている曽於東部土地改良区が、関係市

消防本部と協定を結び、農業用水を防火用水として消火活動に利用しており、多面的利

用が図られている。

こうした利用について、アンケート調査では、事業実施前後と比較して85%の農家が

「畑かん用水は、地域の防火用水としても利用できるようになり安心感が向上した」と

回答している。

- 60 -

【 畑かん用水は、地域の防火用水としても利用できるようになり安心感が向上した 】

出典:国営土地改良事業「曽於東部地区」 完了後の評価に関するアンケート調査結果

イ.生涯学習の場の提供

本事業で造成された土地改良施設は、小学校や高等学校、一般団体等の施設見学会が

実施され、農業用施設の役割について学ぶ生涯学習の場として活用されている。

【 施設見学者数の推移 】

年 度 参加者数 うち学校関係者数

平成20年度 187 -

平成21年度 87 24

平成22年度 105 30

平成24年度 195 -

平成26年度 21 -

出典:曽於東部土地改良区

【 施設見学会の様子(中岳ダム水管理システム) 】

- 61 -

③耕作放棄の防止と農村景観の保全

本事業及び関連事業の実施によって、農業生産基盤が整備され生産条件が改善された

ことにより、受益地内での耕作放棄の発生が抑制され、営農が継続されていることから

農村らしい景観の維持が図られている。

アンケート結果においても、事業実施前後と比較して58%の農家が「耕作放棄地(荒

れ地)の発生を抑制した 、66%の農家が「栽培作物がつくりだす農村景観が保全され」

た(茶園など 」と回答している。)

【 耕作放棄地(荒れ地)の発生を抑制した 】

出典:国営土地改良事業「曽於東部地区」 完了後の評価に関するアンケート調査結果

【 栽培作物がつくりだす農村景観が保全された(茶園など) 】

出典:国営土地改良事業「曽於東部地区」 完了後の評価に関するアンケート調査結果

- 62 -

④地場産品の消費拡大

受益地内で生産された野菜、果樹などの農作物や農産物加工品を販売する農産物直売

所が常設6箇所、臨時1箇所の計7箇所ある。

本事業及び関連事業により、生産基盤の整備が進み、農業用水が安定確保されたこと

等から多様な農産物が生産されるとともに、効率化した営農作業の余剰労力を利用した

農産物の加工・販売など新たな取り組みは始まっている。

農産物直売所において地域で生産された農産物及び加工品の販売等が行われ、地場産

品の消費拡大に繋がっており、地域ぐるみで農産物直売所を核とした取組が進められて

いる。

区分 施設名称 住所 内容・セールスポイント

<直売>野菜,果実,花き,茶,米,黒豚肉,ソーセージ,林産物,加工品,その他<食事>レストラン(ランチバイキング,黒豚しゃぶしゃぶ<その他>農産物加工施設(豆腐,みそ,そば打ち体験等)【営業時間等:[市場]9:00~18:00,[レストラン]11:00~15:00,18:00~21:00(夜は土日・祝のみ)】

・レストラン四季祭では,ランチのバイキングメニューは大好評。毎日,多くの方が列を作っています。

<直売>スイーツ,菓子,地元野菜,果実,煎茶,粉茶,卵,米,農産加工品,その他<食事>ビッフェスタイルのバイキング<その他>[宿泊]家族棟3100円/人から,団体棟2600円/人(いずれも中学生以上,食事無)小学生以下の設定有り【営業時間等:9:00~20:00】・武者鎧の兜をモチーフにした印象的な建物です。・バイキング,スイーツなどを提供しております。

・地元野菜や菓子類等のお土産品など取り扱っており,隣接するコンビネーション遊具や,家族,団体宿泊施設も完備している多目的な道の駅です。

<直売>[大隅町物産館農土家市]野菜,果実,花き,茶,米,黒豚肉,ソーセージ,林産物,加工品,その他<食事>[やごろう亭]黒豚すき焼きセット(要予約),黒豚ヒレカツ定食,黒豚焼<その他>温泉(大人330円老人220円,小人110円),憩いの広場,水の広場,まつり館【営業時間等:9:00~20:00】《セールスポイント》・巨大な弥五郎銅像が立つ,20ヘクタールという広大な敷地にあります。

・憩いの広場,芝の広場,遊具コーナー,入浴施設完備の「健康ふれあい館」,「弥五郎まつり館」,「四季の花壇」などが整備されています。

<直売>ゆず製品,みそ,しょうゆの実,肉加工品,木工品,陶芸品<体験>特用林産園,炭焼き<その他>キャンプ場,各種スポーツ施設,交流センター【営業時間等:9:00~17:00,月曜及び第1,3火曜休み(夏休み期間は無休)】《セールスポイント》・四季を通じて山菜,薬草などが豊富で,自然豊かな場所です。・バンガローやキャンプファイヤー広場,テニスコート,照葉樹散策路など自然を満喫しながら楽しく過ごせる施設がめじろ押しです。

総合交流施設

道の駅すえよし四季祭市場

曽於市末吉町深川11051-1

道の駅 松山やっちくふるさと村

志布志市松山町新橋1526-1

道の駅おおすみ弥五郎伝説の里

曽於市大隅町岩川5718-1

花房峡憩いの森曽於市末吉町南之郷11391-1

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出典:おおすみ農山漁村ツーリズム(http://nouson-map.rosering.jp/)

区分 施設名称 住所 内容・セールスポイント

<直売>野菜,果実,花き,茶,米粉,そば粉,卵,しいたけ,ユズ加工品等<食事>レストラン(トンカツ定食,和牛ステーキ定食他)<体験>そば打ち,ソーセージ,豆腐づくり,ゆず加工等<その他>温泉(大人330円,小人220円),宿泊室8室,バンガロー2棟,多目的広場(グランドゴルフ等)【営業時間等:5:30~22:00】《セールスポイント》

・地下1,600mから湧き出るアルカリ性単純温泉で神経痛・筋肉痛などに効果があると言われています。

・施設内には,曽於市の特産品を販売する売店やごはんの厨(くりや),無料休憩所などがあります。

・バンガローなどもあり,休憩のほか宿泊も可能です。

<直売>野菜,果実,花き,米,米粉,そば粉,いも粉,林産物,水産物,加工品,その他【営業時間:9:00~18:00(日曜日,1/1~1/5休み)】《セールスポイント》

・生産者が直接新鮮な農産物や農産加工品,郷土のお菓子などを持ち込み,販売している直売所です。

・納品するとすぐに売り切れる商品もありますので,お早い時間の買い物がおすすめです。

<観光農園>いちご狩り,いちごの直売,いちご加工品の販売(お菓子等)※開園期間:12月下旬~4月下旬【営業時間:9:00~17:00】《セールスポイント》

・大切に育てられた「とよのか」「さがほのか」「さつまおとめ」「おおきみ」を楽しめる観光農園です。

・食べ放題コースは,真っ赤に色付いたジューシーなイチゴを選んで満喫していただけます。

・ 持ち帰りは別料金です。いちごソフトクリームも大人気です。

出典:鹿児島県「むらづくり」,「グリーン・ツーリズム」データーベース(平成27年3月末現在)

総合交流施設

曽於市末吉町二之方2971-1

有人直売所

農産物直売所「手作り屋」

志布志市安楽2759-9

観光農園

加世田観光農園志布志市松山町新橋1526-1

メセナ住吉交流センター

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⑤6次産業化の取組

本地区における6次産業化は、これまでは地区内における農産物直売所等を核とした

青果物販売や茶(粉茶、茶羊羹、茶石けん、茶入り菓子 、かんしょ(冷凍焼き芋、焼)

酎 、肉乳製品(ハム・ソーセージ、チーズ)等の加工品販売が行われている。)

鹿児島県においては、畑地かんがいの整備等の進展により「食の一大供給基地」とし

て発展が期待される大隅地域において、素材提供型の農業から一次加工等による高付加

価値型農業への展開を図っていく「大隅農業・加工技術研究プロジェクト」の拠点施設

として「大隅加工技術研究センター」を平成26年度に設置し、新規商品の開発・研究等

のほか、技術提携企業との連携、県等行政機関の支援を踏まえ6次産業化の推進を図る

こととしている。

【大隅加工技術研究センター】

(商品開発の例:鹿児島県産野菜「お野菜王国 )」

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(5)事後評価時点における費用対効果分析の結果

費用対効果分析は、費用対効果分析の算定基礎となった要因の変化等に基づき、評価

期間(工事期間+一定期間(40年 )において当該事業と関連事業及びその他一体的に)

効果を発現している施設の資産減価額、再整備費用の合計(総費用)と、事業効果の発

現状況を踏まえた全ての効果(総便益)から、総費用総便益比を算定した。

①算定した効果項目の比較

事後評価時点における本事業及び関連事業の実施により発現している効果を、定量化

して便益として算定した項目の一覧を事業計画時点と比較すると下表のとおりである。

効 果 項 目 事業計画時点 事後評価時点

作物生産効果 ○ ○

品質向上効果 ○ ○

営農経費節減効果 ○ ○

維持管理費節減効果 ○ ○

営農に係る走行経費節減効果 - ○

耕作放棄防止効果 - ○

災害防止効果(農業関係資産) - ○

農業労働環境改善効果 - ○

地域用水効果 - ○

一般交通経費等節減効果 ○ ○

都市・農村交流促進効果 - ○

地域経済波及効果 - ○

国産農産物安定供給効果 - ○

公共施設保全効果 ○ -

更新効果 ○ -

廃用損失額 ○ -

※1:更新効果は、総費用総便益方式では、作物生産効果を始めとする各効果に溶け込

んでいることから、事後評価時点では算定していない。

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②費用対効果分析の結果

事後評価時点における本事業及び関連事業の実施により発現している効果を定量化して総

費用総便益比方式により費用対効果分析を行うと下表のとおりであり、事後評価としての総

費用総便益比は「1.06」であった。

(単位:千円)

区 分 算定式 数 値

総費用(現在価値化) ①=②+③ 227,198,142

当該事業による整備費用 ② 142,396,572

③ 84,801,570その他費用(関連事業費+資産価額+再整備費)

評価期間(当該事業の工事期間+40年) ④ 66年

総便益額(現在価値化) ⑤ 242,043,596

総費用総便益比 ⑥=⑤÷① 1.06