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2020年1月5日 朝日新聞掲載 202015 © 朝日新聞社2020 16 50 1 2 3 4 5 47 =20点 10点×2 100点 30点 20点 10点 20点 47 *車 しゃ そう 列車、自動車などの窓 まど *Uターン 地方から都市部へ移 じゅう た者が再 ふたた び生まれた土地に戻 もど る現 げん しょう *上京 東京へ行くこと。 *なぞる さい げん する。 *胸 むね を膨 ふく らませながら 期待や希 ぼう むね がいっぱいになりながら。 *託 たく そう まか せよう。 *宮 みや ざわ けん 詩人・童話作家。 *書 しょ ひょう しゅっ ぱん された書物を読者に紹 しょう かい する文を書く人。 *定住 一定の場所に住むこと。 *投 とう えい 他の影 えい きょう が現 あらわ れ出 ること。 *ローカル線 そう りょう の少ない鉄道路 線。「ローカル」は「地方」などの意。 *定 てい せつ いっ ぱん に認められた説 せつ *大 だい たん 思い切りよくすること。 *仮 せつ せつ めい のため仮 かり に立てた説 せつ *幻 げん そう 空想。思 おも い描 えが いたこと。 *イーハトーブ みや ざわ けん の心の中に ある理 そう きょう 。賢 けん の造 ぞう

47Uターンの季① 混 こ み 合 あ った 新しん 幹かん 線せん に乗り、 東京に 戻もど った。車しゃ 窓そう から 雪ゆき 景 げ 色しき が

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Page 1: 47Uターンの季① 混 こ み 合 あ った 新しん 幹かん 線せん に乗り、 東京に 戻もど った。車しゃ 窓そう から 雪ゆき 景 げ 色しき が

①混こ

み合あ

った新

しん

幹かん

線せん

に乗り、

東京に戻

もど

った。車

しゃ

窓そう

から雪

ゆき

景げ

色しき

が失

うしな

われるあたりで、都会暮ぐ

しを始めた頃

ころ

のことを思い出

す。Uターンとは、かつての上

京の体

たい

験けん

を心でなぞることでも

あると、帰き

省せい

のたびに感じる▼胸

むね

を膨

ふく

ませながらであったり何となくであった

り。上京の時の思いは人それぞれであろ

う。自分の可か

能のう

性せい

を東京に託

たく

そうとした

のが宮

みや

沢ざわ

賢けん

治じ

だったと、書

しょ

評ひょう

家岡

おか

崎ざき

武たけ

志し

さんの﹃上京する文

ぶん

學がく

﹄で読んだ。定住

こそしなかったが、長くはない生

しょう

涯がい

に9

度、②賢

けん

治じ

は東京の地を踏ふ

んでいる▼東

北本線での片

かた

道みち

が、十数時間かかった時

代である。その列車のイメージも﹃銀

ぎん

河が

鉄道の夜﹄に投

とう

影えい

されているのではない

かと、岡

おか

崎ざき

さんは書いている。銀

ぎん

河が

鉄道

のモデルは岩手の小さなローカル線。そ

んな定

てい

説せつ

を踏ふ

まえたうえでの③

大だい

胆たん

仮か

説せつ

である▼﹁長時間の鉄道旅におい

て、読書したり、眠

ねむ

ったりした時間もあっ

たろうが、賢

けん

治じ

のことだから、さまざま

な幻

げん

想そう

にひたる時間もあったに違

ちが

いな

い﹂。ふるさと花

はな

巻まき

をイーハトーブとい

う理り

想そう

郷きょう

にしたいという思いも、行き

交っただろうか▼上京と帰き

郷きょう

。それを賢

けん

治じ

よりもたくさん繰く

り返

かえ

すのが、現

げん

代だい

帰き

省せい

者たちである。2時間や3時間の旅

であっても、④いつもと違

ちが

う思いに浸

ひた

ことはできる。ふるさとに置お

いてきたも

のの大きさ。ふるさとでまったく違

ちが

う人

生がありえた可か

能のう

性せい

。感

かん

傷しょう

が過す

ぎるか

▼きょうが最

さい

後ご

のお休みという方も多

いだろう。また始まる日

にち

常じょう

を少し違

ちが

目で見てみたい。

2020年1月5日 朝日新聞掲載

2020・1・5

© 朝日新聞社2020

合計

100点

1

2

3

4

5点×4=20点

5点×6=30点

10点×3=30点

20点

Uターンの季き

節せつ

次の意味や説せつ

明めい

を表す言葉を本文中から探さが

して書きましょう。

ふるさとに帰ること

  

        

物事に感じやすい心の傾け

向こう

 

         

ー①「混こ

み合あ

った新しん

幹かん

線せん

に乗り、東京に戻もど

った」筆者は、列車の

中で何をしていますか。簡か

単たん

に説せつ

明めい

しましょう。

(例れ

)都会暮ぐ

らしを始めた頃こ

のことを思い出し

ている。

ー②「賢けん

治じ

は東京の地を踏ふ

んでいる」とき、宮みや

沢ざわ

賢けん

治じ

はどういう

目もく

的てき

があったと、岡おか

崎ざき

武たけ

志し

さんは考えていますか。本文中から16

字で書き抜ぬ

きましょう。

                            

ー③「大だい

胆たん

な仮か

説せつ

」の内ない

容よう

を、簡かん

単たん

に説せつ

明めい

しましょう。

(例れ

)東北本線の列車のイメージが、『銀ぎ

河が

道の夜』に投と

影えい

されているのではないかとい

う仮か

説せつ

ー④「いつもと違ちが

う思い」の例れい

として、筆者はどのようなものを

考えていますか、50字程て

度ど

でまとめましょう。

(例れ

)上京することなくふるさとで生きていた

ら、今とはまったく違ち

う人生があったのでは

ないかという思い。( 字)

12345

47

=20点10点×2

100点

30点

20点

10点

20点

47

*車しゃ

窓そう

 列車、自動車などの窓まど

。*Uターン 地方から都市部へ移

住じゅう

した者が再

ふたた

び生まれた土地に戻もど

る現げん

象しょう

。*上京 東京へ行くこと。*なぞる 再

さい

現げん

する。*胸

むね

を膨ふく

らませながら 期待や希き

望ぼう

で胸むね

がいっぱいになりながら。*託たく

そう 任まか

せよう。*宮みや

沢ざわ

賢けん

治じ

 詩人・童話作家。*書

しょ

評ひょう

家 出しゅっ

版ぱん

された書物を読者に紹しょう

介かい

する文を書く人。*定住 一定の場所に住むこと。*投とう

影えい

 他の影えい

響きょう

が現あらわ

れ出で

ること。*ローカル線 輸

送そう

量りょう

の少ない鉄道路線。「ローカル」は「地方」などの意。*定てい

説せつ

 一いっ

般ぱん

に認められた説せつ

。*大だい

胆たん

 思い切りよくすること。*仮

説せつ

 説せつ

明めい

のため仮かり

に立てた説せつ

。*幻げん

想そう

 空想。思おも

い描えが

いたこと。*イーハトーブ 宮

みや

沢ざわ

賢けん

治じ

の心の中にある理

想そう

郷きょう

。賢けん

治じ

の造ぞう

語ご

JR山形駅から東京行

きの新しん

幹かん

線せん

に乗の

り込こ

む人

たち。

自分の可か

能のう

性せい

を東京に託た

そうとした

帰き

省せい

感かん

傷しょう

Page 2: 47Uターンの季① 混 こ み 合 あ った 新しん 幹かん 線せん に乗り、 東京に 戻もど った。車しゃ 窓そう から 雪ゆき 景 げ 色しき が

①混こ

み合あ

った新

しん

幹かん

線せん

に乗り、

東京に戻

もど

った。車

しゃ

窓そう

から雪

ゆき

景げ

色しき

が失

うしな

われるあたりで、都会暮ぐ

しを始めた頃

ころ

のことを思い出

す。Uターンとは、かつての上

京の体

たい

験けん

を心でなぞることでも

あると、帰き

省せい

のたびに感じる▼胸

むね

を膨

ふく

ませながらであったり何となくであった

り。上京の時の思いは人それぞれであろ

う。自分の可か

能のう

性せい

を東京に託

たく

そうとした

のが宮

みや

沢ざわ

賢けん

治じ

だったと、書

しょ

評ひょう

家岡

おか

崎ざき

武たけ

志し

さんの﹃上京する文

ぶん

學がく

﹄で読んだ。定住

こそしなかったが、長くはない生

しょう

涯がい

に9

度、②賢

けん

治じ

は東京の地を踏ふ

んでいる▼東

北本線での片

かた

道みち

が、十数時間かかった時

代である。その列車のイメージも﹃銀

ぎん

河が

鉄道の夜﹄に投

とう

影えい

されているのではない

かと、岡

おか

崎ざき

さんは書いている。銀

ぎん

河が

鉄道

のモデルは岩手の小さなローカル線。そ

んな定

てい

説せつ

を踏ふ

まえたうえでの③

大だい

胆たん

仮か

説せつ

である▼﹁長時間の鉄道旅におい

て、読書したり、眠

ねむ

ったりした時間もあっ

たろうが、賢

けん

治じ

のことだから、さまざま

な幻

げん

想そう

にひたる時間もあったに違

ちが

いな

い﹂。ふるさと花

はな

巻まき

をイーハトーブとい

う理り

想そう

郷きょう

にしたいという思いも、行き

交っただろうか▼上京と帰き

郷きょう

。それを賢

けん

治じ

よりもたくさん繰く

り返

かえ

すのが、現

げん

代だい

帰き

省せい

者たちである。2時間や3時間の旅

であっても、④いつもと違

ちが

う思いに浸

ひた

ことはできる。ふるさとに置お

いてきたも

のの大きさ。ふるさとでまったく違

ちが

う人

生がありえた可か

能のう

性せい

。感

かん

傷しょう

が過す

ぎるか

▼きょうが最

さい

後ご

のお休みという方も多

いだろう。また始まる日

にち

常じょう

を少し違

ちが

目で見てみたい。

2020年1月5日 朝日新聞掲載

2020・1・5

© 朝日新聞社2020

合計

100点

1

2

3

4

5点×4=20点

5点×6=30点

10点×3=30点

20点

Uターンの季き

節せつ

次の意味や説せつ

明めい

を表す言葉を本文中から探さが

して書きましょう。

ふるさとに帰ること

  

        

物事に感じやすい心の傾け

向こう

 

         

ー①「混こ

み合あ

った新しん

幹かん

線せん

に乗り、東京に戻もど

った」筆者は、列車の

中で何をしていますか。簡か

単たん

に説せつ

明めい

しましょう。

(例れ

)都会暮ぐ

らしを始めた頃こ

のことを思い出し

ている。

ー②「賢けん

治じ

は東京の地を踏ふ

んでいる」とき、宮みや

沢ざわ

賢けん

治じ

はどういう

目もく

的てき

があったと、岡おか

崎ざき

武たけ

志し

さんは考えていますか。本文中から16

字で書き抜ぬ

きましょう。

                            

ー③「大だい

胆たん

な仮か

説せつ

」の内ない

容よう

を、簡かん

単たん

に説せつ

明めい

しましょう。

(例れ

)東北本線の列車のイメージが、『銀ぎ

河が

道の夜』に投と

影えい

されているのではないかとい

う仮か

説せつ

ー④「いつもと違ちが

う思い」の例れい

として、筆者はどのようなものを

考えていますか、50字程て

度ど

でまとめましょう。

(例れ

)上京することなくふるさとで生きていた

ら、今とはまったく違ち

う人生があったのでは

ないかという思い。(

 字)

12345

47

=20点10点×2

100点

30点

20点

10点

20点

47

*車しゃ

窓そう

 列車、自動車などの窓まど

。*Uターン 地方から都市部へ移

住じゅう

した者が再

ふたた

び生まれた土地に戻もど

る現げん

象しょう

。*上京 東京へ行くこと。*なぞる 再

さい

現げん

する。*胸

むね

を膨ふく

らませながら 期待や希き

望ぼう

で胸むね

がいっぱいになりながら。*託たく

そう 任まか

せよう。*宮みや

沢ざわ

賢けん

治じ

 詩人・童話作家。*書

しょ

評ひょう

家 出しゅっ

版ぱん

された書物を読者に紹しょう

介かい

する文を書く人。*定住 一定の場所に住むこと。*投とう

影えい

 他の影えい

響きょう

が現あらわ

れ出で

ること。*ローカル線 輸

送そう

量りょう

の少ない鉄道路線。「ローカル」は「地方」などの意。*定てい

説せつ

 一いっ

般ぱん

に認められた説せつ

。*大だい

胆たん

 思い切りよくすること。*仮

説せつ

 説せつ

明めい

のため仮かり

に立てた説せつ

。*幻げん

想そう

 空想。思おも

い描えが

いたこと。*イーハトーブ 宮

みや

沢ざわ

賢けん

治じ

の心の中にある理

想そう

郷きょう

。賢けん

治じ

の造ぞう

語ご

JR山形駅から東京行

きの新しん

幹かん

線せん

に乗の

り込こ

む人

たち。

自分の可か

能のう

性せい

を東京に託た

そうとした

帰き

省せい

感かん

傷しょう

2020年1月5日 朝日新聞掲載

2020・1・5

© 朝日新聞社2020

解答解説

Uターンの季き

節せつ

47

1辞じ

書しょ

でも意味を確かく

認にん

しておきましょう。

2第1段だん

落らく

の内ない

容よう

から、筆者の心しん

情じょう

を読み取

ることができます。「都会暮ぐ

らしを始めた頃ころ

ことを思い出」していることが読み取れます。

 「東京の地を踏ふ

んでいる」ときの賢けん

治じ

につい

て、岡おか

崎ざき

武たけ

志し

さんがどのように考えているか、

第2〜4段だん

落らく

から読み取ることができます。

第2段だん

落らく

からは「自分の可か

能のう

性せい

を東京に託たく

うとした」と考えていることがわかります。

 「大だい

胆たん

な仮か

説せつ

」の内ない

容よう

をとらえるために、「定てい

説せつ

」の内ない

容よう

も理り

解かい

しておきましょう。「定てい

説せつ

」と

は第3段だん

落らく

の「銀ぎん

河が

鉄道のモデルは岩手の小

34

さなローカル線」であるという説せつ

です。書しょ

評ひょう

家の岡おか

崎ざき

武たけ

志し

さんは、宮みや

沢ざわ

賢けん

治じ

の東北本線で

の旅に注目し、東北本線の「その列車のイメー

ジも……ではないか」と考えています。

 「いつもと違ちが

う思い」について、第5段だん

落らく

「ふるさとに置お

いてきたものの大きさ……可か

能のう

性せい

」から、上京して生活している今とはまっ

たく違ちが

う人生について想そう

像ぞう

してみる姿すがた

を読み

取ることができます。

5