― 31 ―ヒートポンプとその応用　2005．７．No.67

―― 実施例 ――

㈱竹中工務店　広島支店　西　野　　　明

天然温泉「ほの湯」におけるCO2ヒートポンプ給湯機とエコアイスミニの導入事例

■キーワード／温浴施設・氷蓄熱・CO2給湯機・天然温泉

１．はじめに「ほの湯」は，広島港の近くで開発が著しい

宇品地域に立地するスーパー銭湯である。敷地

内に湧出する天然温泉を利用した日帰り型温浴

施設で，源泉湯から箱蒸風呂まで14種類の入

浴ができ，１階にはお食事処も併設して，165

台の駐車場を完備している。

宇品港に隣接するこの地区の歴史や特色から

「蔵」をイメージした建物デザインを採用し，

「癒し・安らぎ」をコンセプトに，非日常性と

安らぎ感を与える和風建築として，温もりと出

会いの場を提供している。

２．建物概要建物名称　宇品天然温泉　ほの湯

所 在 地　広島市南区宇品東

建 築 主　ñエネルギア不動産

構造規模　Ｓ造，地上２階，延3,589fl

設　　計　ñ玉岡設計，ñ竹中工務店

監　　理　ñエネルギア不動産，ñ玉岡設計

施　　工　ñ竹中工務店・大之木建設ñ共同企業体

空調・衛生・電気工事　ñ中電工

CO2ヒートポンプ給湯機

ñ前川製作所

工　　期　平成16年５月～平成16年11月

３．設備概要３－１　電気設備

受電設備　6.6kV高圧受電

照明設備　インバータ型電球色ランプ主

体

情報設備　CATV，有線放送

防災設備　自火報，非常照明，誘導灯，

非常放送

３－２　衛生設備

給水方式　受水槽＋加圧給水方式

給湯方式　CO2ヒートポンプ給湯機＋温

水ヒータ

（お食事処の厨房は専用電気

温水器）

消火設備　屋内消火栓（１号易操作性）

特殊設備　温泉供給（露天岩風呂に掛け流し）

浴槽循環ろ過（電解次亜塩滅菌方式）

３－３　空調設備

空調方式　氷蓄熱ヒートポンプエアコン

（エコアイスミニ）

熱源容量　冷房　298kW，暖房　238kW

写真－１　建物全館夜景（左端にCO2ヒートポンプユニットが見える）

図－１　配置図

駐車場入口�

N

駐車場（２階建）�本体建家（２階建）�

入口�

キュービクル・発電機・受水槽置場（地上）�

CO2給湯・エコアイスミニ室外ユニット設置場所（架台上）�

駐車場�出口�

駐車場階段棟�

設備架台�

ト」と「貯湯ユニット」で構

成されており，当施設では４

基を導入した。

CO2ヒートポンプ給湯機の

システムフローと給湯系統の

フローを，図－２・３に示

す。

A CO2ヒートポンプ給湯機

・使用冷媒　CO2

・加熱能力

60kW/基あたり

・温水水量

670Î/h・基あたり

B 貯湯ユニット

・タンク容量

2.5„×２缶/基あたり

・貯湯温度　90℃

・給湯温度　60℃

・タンク材質　SUS444

今回導入したCO2ヒートポンプ給湯システムは，夜間

蓄熱運転によるランニングコストの低減に加えて，給湯

負荷の変動に応じた昼間の追い炊き運転を行うため，常

に安定した出湯が可能である。

図－４に，CO2ヒートポンプ給湯システムの運転モー

ドを示す。

５．エコアイスミニの導入空調設備は全館に氷蓄熱システムを導入し，営業時間

が深夜１時までであることから，エコアイスミニを全面

的に採用した。

・氷蓄熱ヒートポンプエアコン（エコアイスミニ）

14kW型×19台，16kW型×２台

機器は，屋外の架台上にCO2ヒートポンプ給湯機と併

設し，架台下スペースの有効活用をはかっている。

館内は，換気時における給気・排気のバランスと風の

流れに配慮し，浴場に向かう気流としている。

― 32 ―ヒートポンプとその応用　2005．７．No.67

―― 実施例 ――

図－２　給湯フロー図

浴槽循環加熱熱交換器�　屋内風呂　３set　FR－１，２，３�　露天風呂　３set　FR－４，５，６�

〈C系より〉�給湯�（PW－２系）�給水�

〈露天風呂系〉�〈屋内風呂系〉�

ろ過�

HS�

HR

HB

OST

HB

温水ヒータ�　　（２回路）�　930kW　×２基�　※　22：00～1：00までHBにより対応�オイルサービスタンク�　300Î〈A重油〉�地下オイルタンク�　 20Ï�

インターロック�

A大浴場（男）�B大浴場（女）�C浴槽補湯�

１：00まで稼働�

ST

HP ST HP ST HP ST HP ST

CO2ヒートポンプ給湯機�　60kW　　×４基�　2.5„×２×４基�　※　循環ポンプは各々設置�　　　22：00～８：00まで蓄熱運転�

PW－２系統�（一般水系）�

PW－３系統�（温泉水系）�

FR－６系統�（源泉湯用）�

温泉水加熱熱交換器�　源泉湯，岩　１set　HEX－１�　※　FR－３は水風呂のため，補給水のみ�　※　FR－６は源泉水のみ�

貯湯槽�　15„�

MV－２�

MV－１�

浴槽補給�

４．CO2ヒートポンプ給湯システム当施設の給湯では，夜間電力で蓄熱運転するCO2ヒー

トポンプ給湯機からの給湯を優先的に利用し，不足分を

温水ヒータにて補う方式としている。

CO2ヒートポンプ給湯機は「CO2ヒートポンプユニッ

写真－２　アプローチ夜景

写真－３　CO2ヒートポンプ貯湯ユニット 図－３　CO2ヒートポンプ給湯機のシステムフロー

ヒートポンプ�ユニット�

給湯用混合三方弁�

給水�

消費�

貯湯槽A�2,600Î�

：�貯湯・追い炊き�　開�：�追い炊き�　開�

給湯�循環ライン�

循環槽�かくはん�ライン�

追い炊き�給水�55℃�

貯湯ﾕﾆｯﾄ�貯湯ユニット�

循環ポンプ�内蔵�

供給�55～65℃���

貯湯�MAX90℃�

貯湯槽B��2,600Î�

CO2循環槽�

１階のお食事処の厨房は電化厨房としており，換気量

の低減と作業環境の改善にも寄与している。

６．おわりに露天岩風呂に掛け流しで利用している天然温泉は，ラ

ドンを含有した含弱放射能ナトリウム・カルシウム塩化

物泉で，浴用の適応症も数多く，連日多くの入浴者で賑

わっている。

本計画にあたっては，スーパー銭湯に多くの実績を持

つñ玉岡設計からの指導・アドバイスと，建築主関係者

の方々のきめ細かい検討をいただいて，完成に至ること

ができた。計画～設計～施工の各段階において，ご指

導・ご協力をいただいた関係者各位に，厚くお礼申しあ

げます。

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―― 実施例 ――

ヒートポンプとその応用　2005．７．No.67

写真－４　露天風呂（天然温泉）

写真－５　大浴場

写真－６　１階食事処

図－４　CO2ヒートポンプ給湯システムの運転モード

蓄熱および追い炊き運転モード（給湯なし）� 蓄熱および追い炊き運転モード（給湯あり）�

循環槽加温運転モード（給湯なし）� 循環槽加温運転モード（給湯あり）�

HPから�の還り�

HPへの�往き�

給水�給湯�（還り）�

給湯�（往き）�

（還り）�（往き）�

（還り）�（往き）�

（還り）�（往き）�

T1

T2

T3

T4

T5

T6

T7T8

HPから�の還り�

HPへの�往き�

給水�給湯� 給湯�

T1

T2

T3

T4

T5

T6

T7T8

HPから�の還り�

HPへの�往き�

給水�給湯� 給湯�

T1

T2

T3

T4

T5

T6

T7T8

HPから�の還り�

HPへの�往き�

給水�給湯� 給湯�

T1

T2

T3

T4

T5

T6

T7T8

熱源ユニット入口水温�が60℃以上になると加�温を停止する。�

設定した時刻に対応す�るサーモが65℃を下回�ると追い炊き運転を開�始し，70℃にて加温を�停止する。�

熱源ユニット入口水温�が60℃以上になると加�温を停止する。�

設定した時刻に対応す�るサーモが65℃を下回�ると追い炊き運転を開�始し，70℃にて加温を�停止する。�

循環系へは３方弁にて�湯と水を混合し，65℃�にて供給。�

循環槽のサーモ位置に�て55℃を下回ると，加�温を開始し，同サーモ�が83℃にて加温を停止。�槽内循環により同サー�モが55℃以上になって�いれば，加温は終了。�

同左の状態にて，給湯�要求がある場合も２次�側循環は行わない。�かくはん後の加温運転�終了後，２次側循環を�再開する。�

２次側循環は循環槽か�くはん後の加温運転終�了間まで運転を停止。��

貯湯槽１� 貯湯槽２� 循環槽�

貯湯槽１� 貯湯槽２� 循環槽�

貯湯槽１� 貯湯槽２� 循環槽�

貯湯槽１� 貯湯槽２� 循環槽�