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子どもの変容を実感できる研究活動を目指して 北海道教育庁上川教育局 校内研究の 充実のために 校内研究の 充実のために 校内研究の 充実のために 平成18年度「ステップアップ・プロジェクト上川」指導資料

校内研究の 充実のために · 2011-03-11 · 2 1 校 内 研 究 の 基 本 的 な 考 え 方 校内研究は、学校の教育目標の具現化を目指し、教師が共同で取り組む研究活動であり、教育

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子どもの変容を実感できる研究活動を目指して

北海道教育庁上川教育局

校内研究の 充実のために 校内研究の 充実のために 校内研究の 充実のために

平成18年度「ステップアップ・プロジェクト上川」指導資料

Page 2: 校内研究の 充実のために · 2011-03-11 · 2 1 校 内 研 究 の 基 本 的 な 考 え 方 校内研究は、学校の教育目標の具現化を目指し、教師が共同で取り組む研究活動であり、教育

は じ め に

管内の各学校においては、地域の特性を生かした創意ある教育活動

の展開に努められ、全道に誇る成果をあげていただいており、関係の

皆様の御尽力に心から敬意を表し、深く感謝を申し上げます。

現在、義務教育の質の向上を図るための改革が進められる中、これ

まで以上に学校への期待が高まっており、教師には、不断の研修によ

って自己を磨き、指導力の向上を図ることが求められております。

このため、各学校においては、全ての教師が自校の教育課題に対し

て共通に取り組む自主的・創造的な校内研究を一層充実させることが

大切であります。

幸い、上川管内には、校内研究にかかわり、これまで先輩の方々が

築いてこられた貴重な財産があり、それらを時代の要請に応じて充

実・発展させながら確かに受け継ぎ、いわゆる「上川スタンダード」

として確立することが極めて重要であると考えております。

このようなことから、2年目の「ステップアップ・プロジェクト上

川」においては、校内研究にかかわる指導資料をまとめました。

本資料においては、先生方一人一人の教育実践に役立てることをね

らいとして作成した昨年度の本プロジェクト資料「学習指導の充実の

ために」の内容を踏まえ、組織としての指導力の向上を目指し 「校 、

内研究の充実のために~子どもの変容を実感できる研究活動を目指し

て~」をテーマといたしました。

本資料が各学校において有効に活用され、校内研究がより充実した

ものとなるよう願っております。

結びに、本資料の作成に当たり、お力添えいただきました審議員の

方々をはじめ関係の皆様に厚くお礼申し上げ、発刊に当たっての言葉

といたします。

平成19年3月

北海道教育庁上川教育局長

小野寺 敏 光

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目 次

はじめに

1 校内研究の基本的な考え方

(1) 校内研修と校内研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1(2) 校内研究の意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2(3) 校内研究を充実させる視点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3(4) 学び合い、高め合う校内研究  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

2 校内研究の進め方

Q1 校内研究の推進計画はどのように作成するとよいですか ・・・・・・・・・・・・・・・ 6Q2 研究の年間計画はどのように作成するとよいですか ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8Q3 研究主題はどのように設定するとよいですか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10Q4 研究仮説の設定では、どのようなことに留意するとよいですか・・・・・・・・・・・・・ 14Q5 研究仮説の検証はどのように行うとよいですか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18Q6 研究の全体構造はどのように構想するとよいですか ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20Q7 授業研究はどのように進めるとよいですか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22Q8 研究の評価はどのように行うとよいですか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

3 各教科等の研究の進め方

(1) 国語科(小学校) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33(2) 算数科(小学校) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37(3) 道徳(小学校)  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41(4) 特別活動(中学校)    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45(5) 総合的な学習の時間(中学校) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

○資料(先進的な校内研究に学ぶ) (1) 中富良野町立本幸小学校 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54(2) 旭川市立東五条小学校 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60(3) 旭川市立明星中学校 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66

○参考文献

掲載内容を補ったり、深めたりする 内容を紹介しています。

◆共同研究と個人研究のよさ … 3◆教育研究の5つの方法 …53

コラム

校内研究にかかわる今日的なテーマ や課題について掲載しています。

◆校内研究を通して同僚性を高める … 5◆ …25リレー方式による授業研究の工夫例 ◆研究成果の発信の工夫 …32

トピック

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第1章

校内研究の基本的な考え方

この章では、校内研究の充実を図るための基本的な考え方について述べています。

(1) 校内研修と校内研究 ・・・・・・・・・ 1(2) 校内研究の意義 ・・・・・・・・・・・ 2(3) 校内研究を充実させる視点 ・・・・・・・・ 3(4) 学び合い、高め合う校内研究  ・・・・・・・・ 4

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子ども一人一人がそれぞれの個性や能力を伸ばして、心豊かにたくましく生きるための基礎を 培うことは学校教育の重要な役割です。そのために教師は、絶えず研究と修養に努め、実践的な 指導力を発揮できるようにすることが大切です。

「研究」とは、次のようにおさえることができます。

研究とは、「よく調べ考えて真理を究めること」であり、教育の新しい 内容や方法等を発見し、創造することです。 教師は、子どものよりよい変容を目指した客観的、実証的な研究を進め

ていくことが大切です。

「修養」とは、次のようにおさえることができます。

修養とは、「精神を錬磨し、高度の人格を形成するよう努めること」で あり、教職に関する知識を高め、品性を磨くように努めることです。 教師は、豊かな人間性、社会性などを高めるよう、自分自身を磨く努力

をすることが大切です。

「研究」と「修養」を学校で推進するいわゆる「校内研修」には、次のような内 容が考えられます。

① 教職全般の専門的な知識・技術等(教育課程改善のねらいや学校教育の当 面する課題など)

② 各教科等の指導(計画と指導、評価の効果的な方法など) ③ 生徒指導・教育相談等(不登校、いじめへの対応など) ④ 教育研究の推進(研究実践の進め方や研究成果の活用の仕方など) ⑤ 教師の資質の向上(社会体験研修、ボランティア活動など)

「校内研究」とは、学校の実践上の教育課題を取り上げて研究主題を設定し、教 師が共同で取り組む研究活動を指します。 したがって、「校内研究」は、「校内研修」に包含されるものですが、その中核

であり、基盤であると考えることができます。

学校の全教師が共同で校内研究を進めることにより、自校の教育課題とその解決 に向けた方策などについて確かな共通理解を図り、そのことを通じて全教育活動の 活性化を促すようにすることが大切です。

校内研修と校内研究

研究と修養 とは

校内研修 とは

校内研究 とは

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1校内研究の基本的な考え方

校内研究は、学校の教育目標の具現化を目指し、教師が共同で取り組む研究活動であり、教育 課程を改善したり、子どもの望ましい発達を促したりするなどの意義を踏まえて推進することが 大切です。

校内研究には、次のような意義があります。

1 校内研究を通して、学校の教育目標の具現化を図ります。

学校におけるすべての教育活動は、学校の教育目標の具現化を目指す意図的な 営みです。 したがって、校内研究もまた、学校の教育目標を達成するためにどうすればよ

いかを全教師で追究する研究活動であると捉えることが大切です。

2 校内研究を通して、教育課程の改善を図ります。

校内研究は、日常の教育活動の中から生まれた課題を実践を通して解決してい く活動です。 「ねらいどおりに教育活動が実施されたか」「課題に対してどのような成果が

得られたか」「子どもがどのように変わったか」など、校内研究によって明らか になった成果や課題を基に指導計画等に工夫を加え、教育課程の改善を図ること が大切です。

3 校内研究を通して、子どもの望ましい発達を促します。

校内研究では、子どもに身に付けさせたい資質能力や子どもを変容させるため の指導内容・指導方法等の手だてなどを明確にすることを通して、子どもの望ま しい発達を促すことが大切です。

校内研究を通して、教師の指導力の向上を図ります。 4

校内研究は、学校のすべての教師が共通の課題の解決に向けて取り組む活動で す。 授業研究を通した校内研究を推進することにより、教師集団の実践意欲を高め

るとともに、教師一人一人が自己研修・自己変革を図り、指導力を向上させてい くことが大切です。

校内研究の意義

校内研究の 意義

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校内研究を充実させるためには、日常の子どもとのかかわりの中で生じた教育課題を的確に把 握するとともに、全教師が共通理解に立ち、教育実践を通して課題を追究・解決することが大切 です。

校内研究を充実させるためには、次のような視点に留意します。

1 日常の教育実践から課題を把握すること

課題の把握に当たっては、次のポイントを大切にします。 ○ 子どもの実態を知・徳・体などの側面から、多面的に捉えます。 ○ 年度の重点教育目標との関連を明確にします。 ○ 学校評価や諸調査等を活用し、緊要に取り組むべき課題を焦点化します。

2 全教師が共通理解に立って取り組むこと

共通理解に立って取組を進めるためには、次のポイントを大切にします。 ○ 全教師が学校としての課題を共有します。 ○ 一人一人の研究推進上の役割を明確にします。 ○ 一人一人の豊かな発想やもち味を生かします。

3 教育実践を通して課題を追究・解決すること

課題の追究・解決に当たっては、次のポイントを大切にします。 ○ 子どもの変容を長期的・継続的に捉えるようにします。 ○ 実践と理論とを結び付けながら、指導力を高めるようにします。 ○ 研究の成果を日常の子どもの指導に反映させます。

共同研究と個人研究のよさ

共 同 研 究 個 人 研 究

個人の興味・関心にあった研究が進められる。

主体的に進めることができる。

○ 教師が知恵を出し合える。 ○

○ 多面的に追究ができる。 ○

軌道修正や柔軟な対応が可能である。 ○ 資料等の情報が得やすい。 ○

場や時間の制約がない。 ○ 客観性が高まる。 ○

共同研究と個人研究を組み合わせて、学校の教育課題を解決したり、個々のライ

フステージに合わせた研修を充実させたりすることが大切です。

コ ラ ム

校内研究を充実させる視点

校内研究の 充実の視点

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1校内研究の基本的な考え方

学び合い、高め合う校内研究とするためには、教師一人一人が目指す目標を共有し、互いにコ 、 「 」 ミュニケーションを取りながら 組織体としての協働体制を確立するといった 組織マネジメント

の機能を生かすことが大切です。

学校における組織マネジメントとは、学校内外の能力・資源を開発・活用し、学 校にかかわる人たちのニーズに適応させながら、学校の教育目標を達成していく過 程(活動)を指します。 学校の教育課題の解決に向け、教師が互いに学び合い、高め合う校内研究とする

ためには、この組織マネジメントの機能を十分に生かすことが極めて重要です。

組織マネジメントには、次の機能があります。

○ 2人以上の人が共通の目標をもつ。 ○ 目標達成のためにお互いにコミュニケーションを取り合う。 ○ 目標達成のために協働体制を確立する。

組織マネジメントの機能を生かした校内研究は、次の3つの視点から進めるよう にします。

研究の過程において自由なデ ィスカッションの場を取り入れ るなど、教師相互のコミュニケ ーションを重視し、組織として の士気を高めます。

コミュニケーションの重視

役割分担の明確化や協力し合 う仕組みづくりなどを通して、 協働体制を確立し、組織的な校 内研究を推進します。

協働体制の確立

学校の教育目標や子どもの実 態等を踏まえ、全教師で研究主 題を設定するなど、目標や課題 について共有化を図り、研究へ の参画意識を高めます。

目標の共有化

学び合い、高め合う 校内研究

学び合い、高め合う校内研究

組織マネジメ

ントの機能

組織マネジメン

トの機能を生か

した校内研究

学 校 の 組織

マネジメント

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トピック

同僚性とは、同僚の教員と学び合い、高め合い、互いに成長していく職

場の人間関係を指します。

授業研究を柱とした校内研究は、この同僚性を生み出す絶好の機会です。

授業研究の楽しさを味わえるまで徹底して協議することなどを通して、

学び合い、高め合う仲間意識や連帯感を高めます。

こうした同僚性の高まりを次のチェックポイントから確認しましょう。

□ 若手教員、ベテラン教員問わず、気軽に授業研究の授業者にな

ることができる雰囲気をつくっている。

□ 授業研究の準備に学年や教科の同僚教員が進んで参加・協力す

る体制になっている。

□ 難しすぎる目標を立てず、平易な言葉で研究協議ができる雰囲

気をつくっている。

□ 研究協議の場でおざなりの賞賛や逆に一方的な批判などに終始

しないよう工夫している。

□ 授業者が自らの指導にプラスになったと実感できる研究協議に

なるよう心がけている。

□ 少人数のグループ討議や授業記録シートの活用など、多様な意

見が出るような工夫をしている。

□ 一つの授業研究の成果が次の授業研究に生きるよう工夫してい

る。

校内研究を通して「同僚性」を高める

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Q4 研究仮説の設定では、どのようなことに留意するとよいですか        14

第2章

校内研究の進め方

この章では、校内研究の具体的な進め方について述べています。

Q1 校内研究の推進計画はどのように作成するとよいですか 6Q2 研究の年間計画はどのように作成するとよいですか 8

Q5 研究仮説の検証はどのように行うとよいですか 18Q6 研究の全体構造はどのように構想するとよいですか 20Q7 授業研究はどのように進めるとよいですか 22Q8 研究の評価はどのように行うとよいですか 28

Q3 研究主題はどのように設定するとよいですか 10

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校内研究を進めるに当たっては、研究の課題を解決する期間や研究過程の各段階の手順、作業内 容などを明確にした推進計画を作成することが大切です。

校内研究の推進計画は、次の点に留意して作成します。

○ 学校の教育目標をはじめ、教育の全体計画との関連を図ること

○ 研究の推進計画と研究の年間計画との関連を明らかにするなど、具体的な見通しを

もてるようにすること

○ 計画全体について共通理解を図ることができるように整理すること

○ 必要に応じて計画の見直しができるような柔軟性があること

校内研究の推進計画は、各学校の実態に合わせて、次のような研究の手順が明ら かになるように作成します。 その際、P【計画】→D【実施】→C【点検】→A【改善】のマネジメント・サ

イクルの視点を重視します。

<3年計画の場合の推進計画モデル> 1年次 2年次 最終年度

○研究課題の把握

○研究主題の設定

○研究仮説の設定

○研究内容の具体化

○検証計画の樹立

○検証のための実践

○研究結果の整理

○初年度のまとめ

(成果の発表)

○推進計画の見直し

○研究結果の整理

○2年次のまとめ

(成果の発表)

○推進計画の見直し

○研究結果の整理

○研究全体のまとめ

研究の発表と次の研 ○

認 究の方向性の確

学校の教育目標の 具現化の状況や教 育実践の評価

学校の教育目標の 具現化の状況や教 育実践の評価

学校の教育目標の 具現化の状況や教 育実践の評価

Do

Action

Check

Plan

Action

校内研究の推進計画はどのように作成するとよいですか Q1

推進計画の 作成の仕方

推進計画作成 の 留 意 点

○研究仮説の修正

○検証計画の樹立

○検証のための実践

○研究仮説の修正

○検証計画の樹立

○検証のための実践

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2校内研究の進め方

見通しをもって進めるための研究の推進計画 実践例

○3か年の推進計画の場合

学 1年次 2年次 3年次 期 (研究計画の構想と立案) (実践研究の蓄積と検証) (実践研究の検証と発展) 1 学

・保護者、教師のアンケートによる課題の把握 ・学力調査の結果を踏まえた計画の改善 ・1年次の課題を踏まえた研究仮説の修正 期 ・学力調査による子どもの実態把握

・実態把握のまとめと分析

・2年次の課題を踏まえた研究内容の検討

・修正した仮説に基づく研究内容の具体化

・公開研究会の実施

2 学 期

・全学級での授業公開

・研究紀要の作成

・公開研究会の実施

・低・中・高のブロックごとの授業研究

・全校での授業研究

・授業記録による成果と課題の把握

・授業記録による成果と課題の把握

3 学

・学力調査による成果の把握 期

◆ 研究課題の把握

◆ 研究主題の設定

◆ 研究仮説の設定

◆ 研究内容の構想

◆ 検証計画の樹立

◆ 検証のための実践

◆ 研究結果の整理

◇ 研究仮説の修正

<研究仮説> 1 導入の工夫をすることにより、課題意識 を高めることができるだろう。 2 多様な学習活動を工夫することにより、 表現力を身に付けさせることができるだろう。 3 評価の方法を工夫することにより、振り 返る力を身に付けさせることができるだろう。

<手だての修正> 1 導入において、魅力的な教材を開 発したり、提示の仕方を工夫するこ とにより…。

2 学習過程において、多様な学習形 態や指導方法を工夫することにより …。 3 学習活動の中で、自己評価や相互 評価を工夫することにより…。

<研究内容> 1 学習意欲を高める導入の工夫 2 豊かに表現する多様な学習活動の工夫 3 学びを振り返る評価の工夫

< > 研究内容を具体化した例 1 身近な素材の教材化

具体物による問題提示の工夫 2 交流の場の設定

TTや少人数指導の効果的な活用 3 評価規準の客観性を高める工夫

自己評価、相互評価の方法の工夫

◇ 研究内容の修正

◇ 検証のための実践

◇ 研究結果の整理

□ 研究内容の修正

< > 検討により新たに付け加えた研究内容

1 課題解決への見通しをもたせる工夫 3 TT指導における評価の在り方

□ 検証のための実践

□ 研究結果の処理

□ 研究推進計画の見直し

□ 研究全体のまとめ

次の研究の方向性の確認 □

研究主題> < 自ら学び自ら進んで考える子ども の育成 ~ ~ 算数科における個に応じた指導の工夫を通して

<授業研究の計画> 授業づくりの視点 月 学年

6 1,4 仮説1に基づ く授業

9 2,5 仮説2に基づ く授業

3,6 仮説3に基づ 11く授業

action

actionaction

<公開研究会までの流れ> 月 内 容 8 ○指導案の作成 ・授業仮説の作成 ・検証内容や方法の 検討

9 ○試行授業 ・指導案の改善 ○公開研究会

action

<課題> ・授業により方向性をもたせる必要がある。 ・仮説を意識した授業づくりを行う必要がある。

<課題> ・単なる興味・関心ではなく、目標の解決に 向けた課題意識をもたせる必要がある。

・評価の客観性を高めるTTの工夫が必 要ではないか。

・研究のまとめの整理

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研究の年間計画の作成に当たっては、各教科等の年間指導計画との関連を踏まえるとともに、学 校全体や個人として「いつ」「何を」「どのように」行うのかが明確になるようにします。

1 年度末に次年度の研究の大まかな見通しを立てておくこと

2 その年の研究の重点を明確にし、具体的な目標を立てること

3 年度を大まかな段階に区切って計画を立てること

4 研究重点月間や月・週の中の研究日を設けること

5 個人として、部会として、全体として、「いつ」「何を」「どこまで」するのか

を明確にすること

6 1学期あるいは2~3か月ごとに細かな計画や見通しを示すこと

7 まとめを見通した計画を立てること

研究の年間計画はどのように作成するとよいですか Q2

研究の年間計 画作成の視点 検証のための実践の期間を十分に確保するためには、年度の早い時期に計画を

決定することが大切です。 そのため、前年度末に次年度の研究の方向性を構想しておく必要があります。

1年間の研究で何を達成しようとするのかをできるだけ具体的にし、全教職員 で確認することが大切です。

学期ごとの3段階や夏休みをはさんでの2段階などに区切り、各段階ごとに「体 制を確立する」「授業実践を通して仮説の検証をする」「研究をまとめ、次年度の 方向性を検討する」などのねらいを明確にすることが大切です。

各教科等の年間指導計画との関連を踏まえ、主な研究活動を位置付けた研究の 重点月間を設定するなどして、全校で集中して研究活動に取り組めるようにする ことが大切です。 また、月や週の中に研究日を設け、計画的に研究を推進する必要があります。

研究日の取組内容を年間計画に位置付けるとともに、日常の教育実践の中で何 をしていけばよいのかを明確にすることにより、教育実践が校内研究と結び付い ているという意識を高めることが大切です。

具体的な手順や方法、日程などを「研究だより」や「当面の研究の進め方」な どの形で示すことが大切です。

公開研究会の開催や研究紀要の作成に向けての日程など、研究のまとめを想定 して研究の年間計画を立てることが大切です。

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2校内研究の進め方

道徳に関する研究の年間計画 実践例

<研究主題>

生命を大切にし、たくましく生きる子どもの育成

~体験的な活動との関連を生かした道徳の時間の指導の工夫を通して~

関連する道徳の内容項目 月 主な研究活動 行事等 研究過程

3 ◇道徳の時間の学習過程の確認 ◇道徳の時間との関連を踏まえた 行事の見直し

4 ◇今年度の研究の方向性の確認と ・身体測定 3-(2) 共通理解 ・1年生を迎える会 2-(2) ◇低・中・高学年ごとによる授業 研究の役割分担

5 ◇理論研究 ・学級農園づくり 3-(1) ・体験を生かした道徳の時間の ・一人一鉢運動 2-(3) 指導について ・遠足

6 ◇第1次授業研究 ・宿泊学習 2-(3) <指導案作成の視点> ・獣医師を招いた全 3-(1) 体験を生かした導入の工夫 校集会

7 ◇第1次授業研究の検証 ・大掃除 1-(1) ・ ◇道徳性検査の結果を踏まえた学 ・交通安全教室 8 級の指導計画の見直し

◇理論研究 ・ 2-(2) 聾学校との交流学習 9 ・道徳的価値の内面的な自覚を ・クリーン作戦 4-(2)

深める指導の工夫について ・ボランティア体験 2-(4) ◇第2次授業研究 ・学芸会 2-(3)

10 <指導案作成の視点> ・幼稚園との交流 2-(2) 「思いやり」<2ー(2)>に ・全校歌声集会 2-(3) かかわる授業

11 ◇第2次授業研究の検証 ・全校お楽しみ集会 2-(3) ・ ◇理論研究 12 ・魅力的な教材の工夫について

◇第3次授業研究 ・いじめ防止月間 2-(3) 1 <指導案作成の視点> ・性教育週間 3-(2)

「生命尊重」<3-(2)>に かかわる授業

2 ◇道徳の年間指導計画の改善 ・野外体験 3-(1) ・ <改善の視点> ・6年生を送る会 2-(4) 3 ・豊かな体験との関連を図る ・卒業式

・生命を尊重する心の育成を重 点とする

計画の改善

研究の年間計画の

作成のポイント

○研究主題を踏まえ、 生命尊重にかかわる 行事を洗い出し、研 究計画に位置付けて います。

○第2次授業研究は、 思いやりの心の育成 を重点とし、事前・ 事後の体験との関連 を生かした授業づく りを行い、指導計画 の改善充実に生かし ます。

○1月を「命を大切に する月間」として関 連する行事を位置付 けるなど、校内研究 の充実に結び付けま す。

○第1次授業研究は、 5月に行われた行事 等での体験を生かし た導入の工夫を授業 作りの視点としてい ます。

○行事と関連する道徳 の内容項目を明確に することにより、教 育活動と校内研究の 関連を意識すること ができるようにして います。

◎各教科等の年間指導 計画と研究の年間計 画との関連を明確に することにより、研 究の推進が学校の教 育目標の達成につな がります。

体制の確立

検証計画樹立

授   業   実   践

研究の方向性検討

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研究主題の設定に当たっては、学校の教育目標との関連を踏まえ、子どもの実態や学校の教育 課題などから研究推進上の課題を焦点化するとともに、研究の目的や対象、内容・方法が明確に なるよう、表現を工夫することが大切です。

研究主題は、地域や子どもの実態、保護者や教師の願い等を踏まえるとともに、 学校の教育目標やそこから導き出された年度の重点教育目標との関連を重視して 設定することが大切です。

研究主題は、次のような手順で設定します。

① 学校評価や地域・学校・子どもの実態等から学校の教育課題を明らかにする。

② 学校の教育課題をKJ法などを用いて分類・整理し、構造的にとらえる。

③ 学校としての重要性の度合いや時代の教育課題との関連などに留意し、学校の教育

課題の焦点化を図る。

、 。 ④ 学校の教育課題の解決に向けた研究の目的などを検討し 仮の研究主題を設定する

⑤ 仮の研究主題で研究を進めた場合、どのような実践になるのか予想し、改善点を明

らかにする。

⑥ 研究の目的や対象、内容・方法が明確となるよう表現を吟味し、補足・修正を加え

て、研究主題を設定する。

研究主題は、研究の目的、対象、内容・方法の3つの要素を位置付け、端的に表 現することが大切です。

3つの要素を位置付けた研究主題は、次のようなモデルで表すことができます。

①研究の目指す姿 主 題

②研究の領域・分野等 ③研究の手だて 副題~ ~

※研究主題に3つの要素を位置付けるため、主題と副題とで研究主題を表す方法があります。

主題で研究の目指す姿を表現し、副題では対象となる研究の領域を焦点化したり、手だてを

示したりします。

①目的→研究の目指す姿

「~をめざす」「~を育てる」等 ②対象→研究の領域・分野等

「~における」「~の研究」等 ③内容・方法→研究の手だて

「~を通して」「~による」等

【 ① 目 的 】

【 ② 対 象 】 【 ③ 内 容 ・ 方 法 】

適切な研究主題

研究主題が示す3つの要素

○○における ○○を通して

○○の育成

Q3 研究主題はどのように設定するとよいですか

研究主題設 定の手順

研究主題の 表 し 方

学校の教育目 標、年度の重 点教育目標と の関連

Page 16: 校内研究の 充実のために · 2011-03-11 · 2 1 校 内 研 究 の 基 本 的 な 考 え 方 校内研究は、学校の教育目標の具現化を目指し、教師が共同で取り組む研究活動であり、教育

11

2校内研究の進め方

学校の教育課題を踏まえて設定された研究主題 実践例

1年 興味をもって話を聞ける子

2年 相手にわかるように話そうとする子

3年 話を聞いて自分の考えをもつことができる子

4年 考えの違いや共通点を考えることができる子

5年 相手の考えを大切にすることができる子

6年 相手の立場を考えながら話そうとする子

「主体的に学び、考えを 伝え合う子どもの育成」 ~国語科における言語活動の工夫を 通して~

学 校 の

教育目標

年度の重点

教 育 目 標

やさしい

子ども

かしこい

子ども

たくましい

子ども

自ら学び、

自ら考える子どもの育成

目指す子ども像

具 体 化

○学校の教育目標を年 度の重点として具体 化します。

学校の教育目標の

具体化のポイント

○研究領域・分野を踏 まえ、年度の重点教 育目標と研究主題の 一体化を図ります。

一 体 化

研究主題

学 年 目 標 ○学年の発達段階を踏 まえ、年度の重点教 育目標を学年目標と して具体化します。

具 体 化

校内研究で目指す 発達段階に応じた 子ども像

◎年度の重点教育目標 を踏まえて研究主題 を設定することによ り、学年目標が校内 研究で目指す発達段 階に応じた子ども像 につながります。

研究主題設定の

ポイント

○問題の重要性や緊急 性、学校全体の意識 の高さなどを視点に 課題の焦点化を図り ます。

○仮の研究主題で研究 を進めた場合、どの ような研究となるか 見通しを立て、問題

。 点を明らかにします

○どの領域・分野でど のような手だてで研 究をするのかを明確 にします。

一 体 化

・地域・学校・子どもの実態の把握 ・学校の教育目標・年度の重点教育目標の達成状況の把握 ・日常の教育実践を通した課題の把握

学校の教育課 題の把握

研究主題設定の手順

学校の教育課 題の整理

学校の教育課 題の焦点化

仮の研究主題 の 設 定

仮の研究主題 の 吟 味

研 究 主 題 の 設 定

・主体的に学ぶ力をはぐくむ学習指導 ・豊かな人間性や社会性をはぐくむ道徳教育 ・望ましい人間関係を醸成する教育活動

・豊かな心をはぐくむ道徳教育の充実

「豊かな心をもった子どもの育成」 ~道徳の時間における指導の工夫を通して~

・豊かな心をもった子どもとは具体的にどんな姿か ・道徳の時間にどのような工夫を行うのか

→目的、内容・方法を明確にする必要がある。

「自分をじっくり見つめ、心豊かに生きる子どもの育成」 ~体験的な活動との関連を図った道徳の時間の指導の 工夫を通して~

学校の教育目標との関連を図り設定された研究主題 実践例

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研 究 主 題 の 設 定 に 向 け た 学 校 の 教 育 課 題 の 焦 点 化

実 践 例

着 手 容 易 性 高 着 手 容 易 性 低

効 果 性 高

効 果 性 低

子 ど も 対 象 の ア ン ケ ー ト

・ 楽 し い 道 具 や 問 題 を 用 意 し て ほ し い 。

・ わ か る ま で ゆ っ く り 教 え て ほ し い 。

・ グ ル ー プ で の 勉 強 を 多 く し て ほ し い 。

・ 図 書 室 で 調 べ た り 、 実 験 し た り す る 勉 強 を 多 く し て ほ し い 。

問 題 解 決 的 な 学習の定着

1 学 校 の 教 育 目 標 の 達 成 状 況 等 の 把 握

学 校 評 価 に よ る 把 握 ( )

保 護 者 ア ン ケ ー ト か ら ・ 基 礎 ・ 基 本 を し っ か り 。

身 に 付 け さ せ て ほ し い ・ 学 校 の 教 育 目 標 で あ る 思 い や り の 心 を も っ て 仲 良 く 学 校 生 活 を 送 っ て ほ し い 。

・ 挨 拶 が し っ か り で き る よ う に な っ て ほ し い 。

教 師 に よ る 実 態 把 握

・ 自 分 の 力 で 学 習 を 進 め る こ と が 少 し ず つ で き る よ う に な っ て き て い る 。

・ 自 分 の 考 え を 人 前 で 発 表 す る こ と が 苦 手 な 子 が 多 い 。

・ 基 本 的 な 生 活 習 慣 が 身 に 付 い て い な い 。

2 K J 法 に よ る 教 育 課 題 の 分 類 ・ 整 理

3 実 効 策 検 討 シ ー ト を 活 用 し た 教 育 課 題 の 焦 点 化

主 体 的 に 学 ぶ 態度の育成

学 ぶ 意 欲 の 向 上

思 い や り の 心 の育成

生 命 を 尊 重 す る心の育成

基 礎 ・ 基 本 の 確実な定着

個 に 応 じ た 指 導の充実

表 現 力 の 育 成 基 本 的 な 生 活

習慣の定着

指 導 と 評 価 の 一体化

自 己 指 導 能 力 の育成

望 ま し い 人 間

関係の醸成

生 徒 指 導 の 機 能 を 生 か し た 授 業

学 級 経 営 の 充 実

問 題 解 決 的 な 学習の定着

主 体 的 に 学 ぶ 態度の育成

自 己 指 導 能 力 の育成

指 導 と 評 価 の 一体化

思 い や り の 心 の育成

生 命 を 尊 重 す る心の育成

基 本 的 な 生 活 習慣の定着

学 ぶ 意 欲 の 向 上

表 現 力 の 育 成

焦 点 化 し た 課 題

主体的に学ぶ態度を育成する学習指導

思いやりの心をはぐくむ道徳教育

研 究 推 進 委 員 会 で の 検 討

課 題 の 焦 点 化 の ポ イ ン ト

○ 学 校 評 価 の 結 果 を 活 用 す る な ど し て 、 学 校 の 教 育 目 標 と の 関 連 を 踏 ま え て 教 育 課 題 を 把 握 し ま す 。

○ K J 法 を 通 し て 、 教 師 一 人 一 人 の 意 見 や ア イ デ ィ ア を 全 体 の 中 に 位 置 付 け る こ と が で き ま す 。

○ 学 校 と し て の 重 要 性 の 度 合 い や 効 果 の 大 小 な ど に 留 意 し 、 課 題 を 焦 点 化 し ま す 。

◎ ワ ー ク シ ョ ッ プ な ど を 活 用 し 、 教 育 課 題 を 整 理 す る こ と に よ り 、 全 員 の 共 通 理 解 を 図 る こ と に つ な が り ま す 。

生徒指導

学習指導

道徳教育

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2校内研究の進め方

研究主題の表し方 実践例

<例1>

「主体的に学び、自分の思いを豊かに伝え合う子どもの育成」 主題 (目 的)

~国語科における言語活動の工夫を通して~ 副題 (対 象) (内容・方法)

<例2>

「自ら進んで考え、仲間と共に生き生きと学ぶ子どもの育成」 主題

(目 的)

~ ~ 副題 できる喜びを味わわせ、問題解決能力を高める算数科の指導の工夫 (内容・方法) (対 象)

<例3>

「豊かな心で人とかかわる力をはぐくむ道徳教育の充実」 主題

(目的) (対象)

~ ~ 副題 心に響く体験活動との関連を図った道徳の授業の工夫を通して (内容・方法)

<例4>

「基礎・基本の確実な定着を図る学習指導の工夫」 主題

(目的) (対象)

~個に応じた指導の充実を通して~ 副題

(内容・方法)

<例5>

「自分のよさを生かし、主体的に表現する力をはぐくむ 主題

国語科の指導の工夫」 (目的)

(対象)

1年次 ~子ども主体の言語活動の工夫を通して~ 副題

2年次 ~子どものよさを生かす指導方法の改善を通して~

3年次 ~子どものよさを生かす評価の工夫を通して~ (内容・方法)

研究主題の表し方

主題 「 目的 」 ( )

副題 ~(対象 ・ ) (内容・方法)~

主題「 目的 ・ ( ) (対象 」 )

副題 ~(内容・ 方法)~

主題 「 目的 ・ ( ) (対象 」 )

副題 ~(内容・ 方法)~

○重点的に取り組む内 容・方法を1年ごと に表し、見通しをも って研究を進めるこ とができるように工 夫しています。

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研究仮説は、校内研究の見通しや予測にあたるもので 「研究結果についてある程度の客観性 、

をもった仮の判断」です。研究の手だてや目指す子ども像について全教職員の共通理解を図るた めにも、具体的な研究仮説を設定することが大切です。

研究仮説には次の3つの機能があります。

A 研究の場や範囲を限定する。 B 研究の手だてや重点を明確にする。 C 目指す子ども像としての研究の結果を予測する。

3つの機能を生かした研究仮説は、次のようなモデルで表すことができます。

A:場、範囲 B:手だて、重点

Q4 研究仮説の設定では、どのようなことに留意するとよいですか

研究仮説の 設定の手順

研究仮説の 機 能

① 研究の成果を予測し、目指す子ども像を明確にする。 →機能のCに位置付ける

② 目指す子ども像を実現するため、教科・領域・学習過程・時期・素材など研 →機能のAに位置付ける 究の場や範囲を決定する。

③ 目指す子ども像を実現するため、どのような手だてや工夫を行うか、具体的 →機能のBに位置付ける な方法を明確にする。

○○において ○○を○○することによって ( ) ○○となる であろう

研究仮説の 構 想 の ポ イ ン ト

・各教科や領域等 ・単元、1単位時間 など

研究の場や範囲

・単元計画 ・評価の視点 ・発問内容の分析 ・教材、教具の分析 ・学習ノートや自己評価カードなどの内容構成 など

・学習過程の構成 ・学習形態の構成 ・課題提示の方法 ・発問の位置付け ・教具の提示方法 ・評価の方法 など

研究の手だて

C:目指す姿(子ども像)

研究仮説は、3つの機能を生かし、次の手順で設定します。

次のような視点から、研究の対象や手だてを具体化します。

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2校内研究の進め方

研究仮説の具体化の手順 実践例

目指す子ども

像 の 具 体 化

具体化の手順

研究の対象の

決 定

課題把握の段階 課題を追究する段階 まとめる段階 研究の範囲の

決 定

算 数 科

研究の手だて

の 明 確 化

学ぶ意欲を高

める教材開発

と問題提示

多様な学習形

態や指導方法

の工夫

自己評価や相

互評価の工夫

<研究主題> 学ぶ喜びがわかり、進んで学習する 子どもの育成

主体的に課題

を解決する子

ども

学び方を身に

付けている子

ども

考えを広げた

り深めたりす

る子ども

○目指す子ども像を踏 まえ、研究の対象を 算数科に限定してい ます。

研究仮説の

具体化のポイント

○研究の範囲を一単位 、 時間の学習過程とし

3つの目指す子ども 像に対応するように 問題解決的な学習の 流れの各段階に分け て示しています。

○研究の成果としての 目指す子ども像を具 体化します。

○目指す子ども像を実 現するため、学習過 程の各段階でどのよ うな指導の工夫が必

。 要かを明確にします

<研究仮説1>

において、 を

行うことによって、 ことができる 主体的に課題を解決する力を高める

であろう。

<研究仮説2>

において、 を 課題を追究する段階     多様な学習形態や指導方法の工夫

行うことによって、 ことができるであろう。 学び方を身に付けさせる

<研究仮説3>

において、 を行うことによ まとめる段階 自己評価や相互評価の工夫

って、 ことができるであろう。 考えを広げたり深めたりする態度を養う

、 、 ○研究の範囲 手だて 目指す子ども像をモ デルに当てはめて、 研究仮説として表し ます。

◎研究仮説を具体的に 表すことにより、研 究の手だてや目指す 子ども像の共通理解 が図られます。

課題把握の段階     学ぶ意欲を高める教材開発や問題提示

研 究 仮 説 の 設 定

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研究仮説の検討と改善 実践例

仮説の原案

具体化の手順

問題解決的な学習の指導過程を工夫することにより、

主体的に考えることができるだろう。

<目指す子ども像> ○ 問題意識をもち、自ら課題解決に取り組む子ども

○ 自分の考えをもち、互いに伝え合い深め合う子ども

○ 自信をもって学習に取り組み続ける子ども

<研究主題>

自ら考え、意欲的に追究する子どもの育成 ~算数科における問題解決的な学習の工夫を通して~

第 1 次 検 討

検討後の仮説 <研究仮説1>

算数科の指導において、問題解決的な学習の指導過程を

明確にし、問題や教材、板書などを工夫することにより、

問題意識をもち、進んで課題解決に取り組むだろう。

<研究仮説2>

算数科の指導において、交流の場面を位置付けることに

より、互いに伝え合い深め合い、自信をもって学習に取り

組むだろう。

第 2 次 検 討

再検討後の仮説

導入の場面において、課題や教材、板書などを工夫する

ことにより、問題意識をもち、進んで課題解決に取り組む

意欲を高めることができるだろう。

、 、 追究の場面において 話し合いによる交流場面を設定し

、 、 教師のかかわりを工夫することにより 自分の考えをもち

互いに伝え合い深め合う力を育てることができるだろう。

<研究仮説3>

振り返りの場面において、学びの成果を実感できる自己

評価や個に応じた指導体制を工夫することにより、自信を

もって学習に取り組む態度を養うことができるだろう。

手 だ て

手 だ て

手 だ て

目指す姿

目指す姿

目指す姿

研究仮説の

改善のポイント

○目指す3つの子ども 像を研究仮説の中に 位置付ける必要があ ります。

○「互いに伝え合い深 め合い、自信をもっ て学習に取り組む」 という目指す子ども 像へ迫るための手だ てを具体的にし、研 究の焦点化を図る必 要があります。

○研究の手だてを具体 化する必要がありま す。

◎目指す子ども像に対 応し、具体化した手 だてを位置付けた仮 説を作成することに より、研究の方向性 が明確になります。

、 、 ○研究の範囲 手だて 目指す子ども像をモ デルに当てはめ、研 究仮説として表しま す。

<研究仮説1>

<研究仮説2>

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2校内研究の進め方

研究仮説の手だてを研究内容として具体化した取組 実践例

研究主題 いきいきと学び続ける子どもの育成 ~学び方を身に付けさせる複式指導を通して~

研究内容の検討

研 究 内 容

【研究内容1】 1 見通しをもたせ る工夫 ・オリエンテーションの工夫 ・学習の過程を振り返ることができ る掲示物の工夫

2 学習の進め方を 身に付けさせる工 夫 ・ワークシートの工夫 ・掲示物の工夫

研究仮説1 導入の段階において、学習の進め方を理解させ ることにより、見通しをもって学習を進める子ど もを育てることができるだろう。

<学習の進め方を理解させるための手だて> ・導入時のオリエンテーションの工夫 ・学習の流れがわかる掲示物の工夫 ・学習の流れを示したワークシートの工夫 ・学習の進め方の掲示

具 体 化 し た 研 究 内 容

【研究内容2】 1 自力解決を支え る工夫 ・つまずきに応じる学習コーナーの工 夫 ・学習リーダーの育成 2 個に応じた指導 の工夫 ・多様な追究活動を支える教具の整備 ・習熟の程度に応じた学習プリントの

工夫

【研究内容3】 1 学習の成果を振 り返る場の工夫 ・自己評価カードの工夫 ・相互評価の場面の設定

2 教師による評価 の工夫 ・1単位時間の学習過程の効果的な

組合せ(わたり、ずらし)による 適切なかかわり

・学習状況の把握と記録の工夫

研究仮説2 自力解決において、一人一人の学習状況に応じ た手だてを講じることにより、主体的に学習を進 める子どもを育てることができるだろう。

<一人一人の学習状況に応じた手だて> ・課題選択の工夫 ・つまずきに応じる学習コーナーの整備 ・多様な追究活動を支える教具の整備 ・習熟の程度に応じた学習プリントの工夫

研究仮説3 終末において、自己の学習の進め方を振り返る 手だてを工夫することにより、次の学習への意欲 を高めることができるだろう。

<自己の学習の進め方を振り返る手だて> ・学習の過程がわかる掲示物の工夫 ・自己評価カードの工夫 ・相互評価の場面の設定 ・学習状況の把握と記録の工夫

研究内容の 具体化のポイント

○研究主題では、学び 方を身に付けさせる 複式指導が手だてと なっています。

○研究仮説1では「学 習の進め方を理解さ せる」を手だてとし て位置付けています が、さらに具体化す る必要があります。

◎研究内容の具体化を 図り、明確にするこ とにより、全員で何 を研究するとよいか 明らかになり、手だ ての検証も可能とな ります。

○授業実践の場を想定 して、研究内容を検 討します。

○研究仮説に位置付け られた手だてに基づ き、具体的な研究内 容として考えられる ものをあげます。

○同じように研究仮説 2、研究仮説3につ いて手だてを具体化 します。

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・授業のどの場面でどのような方法を用いて検証するのかを明確にします。

・集団と個の変容を同時に捉えるようにします。

・子どもの様子を教師の発言や学級の雰囲気などに照らしてとらえるようにします。

・日常の授業実践においても、研究仮説の手だてを取り入れるようにします。

研究仮説の検証に当たっては、研究仮説をより具体化した授業仮説を設定するなどして、授業を 通したデータの収集に努めたり、子どもの変容を把握する事前・事後調査等を行ったりすることが

大切です。

研究仮説の検証とは、仮説の有効性を調べることであり、講じた手だてにより、 子どもがどのように変容したのかできるだけきめ細かく調べることです。

1 研究仮説を具体化します。

授業研究において授業仮説を設定するなど、検証の場面に即して研究仮説を具体 化します。

2 事前・事後調査を活用します。

研究仮説と関連する子どもの実態や意識などを把握するために、事前・事後調査 を行います。

事前調査は、研究仮説を確認し、子どもの関心・意欲・態度、表現力など、どこ に視点を当てるのか、観点を明確にすることが大切です。 事後調査は、事前調査と同様の調査を行うことにより、両者の結果を比較・分析

し、子どもの変容を明らかにします。

3 授業を通して、データを収集します。

子どもの変容から手だての有効性を検討するためには、できるだけ授業を通して データを収集することが大切です。

4 研究仮説の有効性を検証します。

研究仮説で期待した目指す子ども像と事前・事後調査や授業を通して明らかにな った子どもの変容とを比較・検討し、講じた手だてが適切だったかなど、仮説の有 効性を検証します。

Q5 研究仮説の検証はどのように行うとよいですか

研究仮説の 検証の意義

研究仮説の 検証のポイ ント

・質問紙法 ・観察法 ・面接法

・学力検査 ・道徳性診断検査 ・性格検査 など

事前・事後調査の方法

データ収集の留意点

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2校内研究の進め方

事前・事後調査や授業を通したデータ収集 実践例

道徳ノート

○○A子

事前調査と同じ調査の実施

今までの自分を見つめて書きましょう。

5年 組( )

記入例( ) できることが多い…○できなかったりする…△できないことが多い…×

自分の様子 ふりかえること

1 時間や場所を考えて礼儀正しく人と接していますか。

2 だれに対しても思いやりの心をもって親切にしていますか。

3 友だちと学び合ったり男女仲良く協力していますか。

4 自分と違う意見でも大切にしていますか。

5 自分の命や他の人の命を大切にしていますか。

分 析 ・ 整 理

<研究仮説1> 人とのかかわりなどの豊かな体験的な活動との関連を図った道徳の時間の指導を工 夫することにより、思いやりの心をはぐくむことができるだろう。

<研究仮説2> 心を揺さぶる教材や発問などの指導方法を工夫することにより、道徳的価値の内面 的な自覚を促すことができるだろう。

<研究主題> 豊かな心をもち生き生きと活動する子どもの育成

~体験との関連を図った道徳の時間の指導を通して~

1 事前調査

質 問 紙 法 に よ る 事 前 調 査

事前調査集計(%)

他の人とのかかわり   自然や

生命 礼 親 友 謙

尊重 儀 切 情 虚

×

問 題 場 面 テ ス ト に よ る 事 前 調 査

<問> 母と一緒にバスに乗っていました。自分の座っている ところから少し離れたところにおばあさんが立っている のに気がつきました。

① そんな時、あなたならどうすると思いますか (自分に 。 もっともあてはまると思うものを一つ選んでください ) 。 ア おばあさんがこちらを向いたらかわれると思う。 イ 知らない顔をしていると思う。 ウ すぐにかわると思う。 エ 母に相談すると思う。 ② それはなぜですか (どんな心があるからですか ) 。 。 ア だれかがかわればいいから。 イ おばあさんが喜んでくれると気持ちがよいから。

分 析 ・ 整 理

2 授業を通したデータ収集

問題場面テストの分析 項 目 ア イ

45 32① 自分の行為 を振り返る

25 42② 自分の内面 を見つめる

(%)

3 事後調査

道 徳 ノ ー ト に よ る 子 ど も の 変 容 の 把 握

A子の変容 ○自分の中にある

思いやりの心を見付

け、少しずつ実践に

移そうとしている。

分 析 ・ 整 理

データ収集の

ポイント

○研究仮説に基づき、 検証の視点を明確に します。

◎事前・事後で同じ調 査を実施したり、継 続的にデータ収集を 行ったりすることに より、子どもの変容 をとらえ、研究仮説 の有効性を検証しま す。

○「目指す子ども像」 に位置付いている 「思いやりの心」に かかわる子どもの実 態を事前調査でとら えるようにします。

○実際の場面を想定し たテストを実施する などして、多面的な データ収集に努めま す。

○道徳ノートを活用す るなどして、実際の 授業の場面での子ど もの変容をとらえる ようにします。 道

徳ノート

○○A子

道徳ノート

○○A子

 この間、○○さんが一

人で遊んでいたので「い

っしょに遊ぼう」と言

ったら○○さんがうれ

しそうだった。

 体育の時間におなかが

いたくなった時に、B

ちゃんがかたづけをて

つだってくれた。うれ

しかった。

 バスでおばあさんが乗

って来たときに、席を

ゆずろうと思ったけど、

はずかしくて声をかけ

られなかった。

25

50

25

45

30

25

72

20

8

24

60

16

30

42

28

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学校の教育目標

校内研究の推進に当たっては、校内研究にかかわる要素を構造的に位置付けた全体構造図を作成 し、共通理解を図ることが大切です。

研究の全体構造図には次のような機能があります。

◇ 学校の教育目標と研究主題との関連など、研究推進の内容や背景、道筋を 構造的に表す。

◇ すべての教師が共通理解の下で研究を推進するために、研究の内容や方向 性を体系的に表す。

次の点に留意し、それぞれの構成要素の関連が 全体構造図の作成に当たっては、 明確になるようにします。

<研究の全体構造図のモデル>

※作成した全体構造図は、固定化されたものではなく、弾力性のあるものと考え、改善を

図ることが大切です

年度の重点教育目標

( 主 題 ) 研究主題 (~副 題~)

目指す子ども像1 目指す子ども像2 目指す子ども像3

研究仮説1 研究仮説2 研究仮説3

研究内容1 研究内容2 研究内容3

○ 研究主題で示された 研究の目的をもとに、 より具体的な子どもの 姿(目指す子ども像) を位置付けます。

○ 目指す子ども像に迫 、 るための手だてを考え

研究仮説を位置付けま す。

○ 研究仮説で示された 手だてを研究内容とし て具体的に位置付けま す。

○ 学校の教育目標や年 度の重点教育目標から 導き出された課題の解 決につながる研究主題 を位置付けます。

Q6 研究の全体構造はどのように構想するとよいですか

全体構造図 の 機 能

全体構造図作

成 の 留意点

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2校内研究の進め方

各構成要素の関連を明確にした研究の全体構造図 実践例

A中学校の研究の全体構造図

【年度の重点教育目標】

主体的に学ぶ生徒の育成

【学校の教育目標】

~自律心をもち、自ら学び、誠実に行動する生徒の育成~

【研究仮説1】

導入において、学

びへの必要感を高め

る事象との出会いの

場を工夫することに

より、意欲的に学習

に取り組ませること

ができるだろう。

【研究主題】

自ら課題をもち、粘り強く取り組み、ともに学び合う生徒の育成 ~各教科の指導における学習過程の工夫を通して~

【目指す生徒像】

○ 事象との出会いから課題を見いだし、意欲的に取り組む生徒 ○ 学んだ成果を共有しながら、課題解決に粘り強く取り組む生徒 ○ 分かる喜びを実感し、新たな課題意識をもつ生徒

【研究仮説2】

、 課題追究において

交流活動を工夫する

ことにより、学んだ

、 成果を共有しながら

課題解決に粘り強く

取り組ませることが

できるだろう。

【研究仮説3】

終末において、振

り返りの場面を設定

することにより、分

かる喜びを実感し、

新たな課題意識をも

たせることができる

だろう。

【研究内容1】

「学びへの意欲を高

める」導入の工夫

○期待を高める教材

・教具の工夫

○必要感を高める課

題設定の工夫

【研究内容2】

「学び合いを生み出

す」展開の工夫

○学び合う楽しさを

実感する交流活動

○互いを認め合う相

互評価の工夫

【研究内容3】

「新たな課題意識を

もたせる」終末の工夫

○学びの足跡を記録

するノートの工夫

○学びを実感する自

己評価の工夫

各構成要素の関連

○ 学校の教育目標の 「自ら学ぶ」を年度 の重点教育目標とし て設定しています。

○実態調査の結果等を 踏まえ 「主体的に 、 学ぶ生徒」を具体的 な生徒の姿として研 究主題に位置付けて います。

○研究主題で示した生 徒像を学習過程にお ける具体的な姿とし 、「 」 て 目指す生徒像

を設定しています。

○目指す生徒像に迫る ために、具体的な手 だてを検討し、研究 仮説に位置付けてい ます。

○研究仮説に位置付け た手だてをさらに具 体化し、授業実践で 取り組む研究内容を 明確にしています。

◎各構成要素の相互の 関連を明確にした全 体構造図を作成する ことにより、研究の 道筋や方向性が明確 になり、研究への共 通理解が深まります。

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授業研究を進めるに当たっては、その手順を明確にして実施するとともに、授業仮説等を位置 付けた指導計画や子どもの変容をとらえる授業記録、研究仮説の検証につながる研究協議などを 工夫することが大切です。

授業研究は、研究 次の手順で進めるようにします。 仮説に基づき、

校内研究における授業研究は、設定した研究仮説を検証するために実施するもの その際、研究仮説を授業場面に応じて具体化した授業仮説を設定することで、 です。

より具体的に子どもの姿をとらえることができます。 授業仮説を設定する際には、次の点に配慮することが大切です。

※授業仮説という言葉ではなく、「研究の視点」「研究内容とのかかわり」などとして 指導計画に示す方法もあります。

1 授業の設計

○ 場 、 範 囲 ~ 1単位時間の授業、単元 など ○ 手だて・重点 ~ 指導方法、教具、資料、機器 など ○ 目 指 す 姿 ~ 子どもの反応や変容の具体的な予測

○研究仮説の検証内容や検証方法を位置付けた指導案を作成 します。

○作成した指導案に基づき試行授業を行うなどして、指導案 を改善します。

2 授業の実施 ○研究仮説の検証に向け、具体的な観察の内容や場、方法、 分担等を決めます。 ○授業者と観察者による評価を実施したり、複数の方法を取 り入れたりするなどして、客観的・多面的な記録に努めます。

3 授業の評価 ○研究仮説に基づき、評価の視点を明確にして研究協議を行  います。

Q7 授業研究はどのように進めるとよいですか

授 業 研 究

の   手   順

授 業 仮 説 の 設 定

研究協議は、研究仮説とのかかわりを明確にした協議の柱を設定し、研究仮説の 検証につながるよう、次の点に留意して進めることが大切です。

○ 研究の年間計画を踏まえ、協議のねらいを明確にします。 ○ 研究仮説との関連を明確にした協議の柱を設定します。 ○ 授業者、観察者、子どもの評価など、多面的に収集した授業記録に基づき、子ども の状況や教師のかかわりを分析します。

○ 協議の柱に基づき、研究仮説の有効性を確かめたり、授業改善の視点を明らかにし ます。

研究協議の ポ イ ン ト

○学習活動と子どもの反応を比較しながら評価を行い、手だ ての有効性を検討します。

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2校内研究の進め方

授業仮説を位置付けた学習指導案 実践例

授業仮説を位置付けた学習指導案(小学校第5学年 国語)

1 単元名 「構成を工夫しよう」 2 単元の目標

構成を工夫して、事実をもとに意見を明確に書くことができる。 3 単元の評価規準

言語についての知識・理解・技能 国語への関心・意欲・態度 書く能力 文章全体の組立てを考えたり、効果 必要な語句について辞書 自分の考えを効果的に 的な表現を工夫したりしている。 を利用して調べている。 表そうとしている。

4 単元の指導計画(略) 5 本時の目標

自分の意見が相手に伝わるように、効果的な組立てを考えることができる。

主な学習内容・活動 教師の働きかけ 評価規準・方法 過程 1 前時の学習を振り返る。

つ か 2 意見文の効果的な書き方につ ・文章全体の組立ての効 む いて理解する。 果を考えさせる。

3 書きためたカードを疑問や事 ・カードの内容について 例、方策、意見等に分ける。 交流させ、意見をより

と 明確にしたり、事例や ◎相手や目的を意 り 4 意見を確かなものとするため 方策の具体性を高めた 識することによ く の事例や方策等であるかどうか りするよう促す。 り、意見が明確 む を確かめる。 になっている

か (観察) 。 5 カードを並べて構成表をつく ・学級新聞のコーナーと 【書く能力】 る。 して割り当てられた字 考えが効果的に

数以内の文章となるよ 伝わるようにカ うカードごとの字数を ードを並べてい 考えさせる。 る (構成表) 。

ま 6 構成表を交流し、自分の意見 ・効果的に伝わる構成表 と が学級新聞の読者に伝わるか確 とそのよさを紹介す め かめ合うことを通して、自分の る。 る 意見をより確かなものとする。

「学級新聞に掲載する意見文の構成表をつくる」という相手や目的、状 況意識を明確にした言語活動を展開することにより、進んで自分の考え を表現しようとする意欲を高めることができるだろう。

授業仮説

<学習課題> 学級新聞に掲載する意見文の構成表をつくろう。

研究主題

研究仮説

学習指導案作成の

ポイント

○検証する単元と国語 科の指導事項との関 連を明確にします。

1 各領域の指導において、 指導事項を重点化し、系統 性を踏まえた指導を行うこ とにより、確かな言語能力 を身に付けさせることがで きるだろう。

2 各領域の指導において、 相手や目的などの言語意識 を明確にした言語活動を工 夫することにより、自分の 考えを表現する力を高める ことができるだろう。

3 各領域の指導において、 言語活動の状況を適切に把 握する評価を工夫し、指導 の改善に生かすことにより、 自らを高めようとする意欲 をはぐくむことができるだ ろう。

○本時の目標を踏まえ、 研究仮説2との関連 を図りながら授業仮 説を設定します。

◎各教科等の目標を踏 まえて授業仮説を設 定するということは、 研究仮説の検証はも とより、教科の指導 目標の達成にもつな がります。

○授業仮説では、研究 仮説2を検証するた めに、相手や目的な どの言語意識を具体 的に位置付けていま す。

○授業仮説の検証の場 や観点・方法を明確 にし、指導案上に位 置付けます。

豊かに表現し合う子どもの育成 ~各領域の特性を生かした国語科の学習指導~

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研究内容を位置付けた指導計画 実践例

研究内容を位置付けた単元の指導計画(中学校第1学年 理科)

1 単元名 身の回りの物質

2 単元の目標 身の回りの物質の性質を調べる観察、実験を通して、さまざまな物質の性質に

ついて理解するとともに、物質の性質に基づいて区別する能力を身に付ける。

3 単元の評価規準 (略)

4 単元の指導計画(7時間扱い)

研究内容と 時 学習内容 主な学習活動 評価規準 のかかわり (授業づくりの視点) 関心 思考 技能 知識

○さまざまなも ・身の回りのものの性質に着目 1-① 1 のの区別の仕 し、それらを区別するための ○

方を考える。 調べ方について話し合う。 (身近な物質の教材化)

○金属と非金属 ・これまでの学習から金属と非 1-② の区別の仕方 金属の区別の仕方について考 ○ ○ 2ー②

2 について考え える。 る。 (見通しをもつ場面の発問の工

夫) ○金属同士の区 ・同じ体積の金属の質量を比較 2ー① 別の仕方を考 する。

3 える。 (実験用具の使い方のヒントカ ○ ードの活用)

○何かわからな ・3種類の白い粉末状の物質の 4 いものを調べ 区別の仕方について考える。 ・ る方法を考え ・調べた結果を基に物質を区別 ○ ○ 2ー② 、 5 区別する。 する。 3ー①

(交流活動の位置付け) ○これまでの学 ・これまでの学習を振り返り、

6 習を振り返り 体積と質量を測定して物質を ○ 3-② 、 ・ 基礎的な内容 調べる方法について発展的な 7 の定着を図る 学習や補充的な学習を行う。 。

(個に応じた課題の設定)

研究主題

研究仮説

指導計画作成の

ポイント

○単元の指導計画に「研 究内容とのかかわり」 を位置付け、授業研 究の視点を明確にし ます。

○ 教材・教具を工夫し、 課題解決への見通しをも たせる学習活動を位置付 けることにより、学習へ の意欲を高めることがで きるだろう。

○ 自分の考えをもつ場を 保証し、交流活動を適切 に位置付けることにより、 よりよい追究方法を選択 する力を高めることがで きるだろう。

○ 生徒の学習状況を適切 に把握し、理解や習熟の 程度に応じた指導を工夫 することにより、主体的 に学ぶ力を高めることが できるだろう。

○関連する研究内容を 踏まえ、授業づくり の視点を明確にしま す。

◎研究内容を位置付け た単元の指導計画を 作成することにより 手だてや方法の有効 性を検討することが できます。

研究内容 【研究内容1】 ① 日常生活との関連を図 った教材・教具の工夫

② 既習事項を生かした学 習活動の工夫

【研究内容2】 ① 自力解決の場面での手 だての工夫

② 自他の考えを深める交 流活動の位置付け

【研究内容3】 ① 評価規準、評価方法、 評価場面の工夫

② 発展的な学習や補充的 な学習の位置付け

基礎・基本を身に付け、意欲的に学習に取り組む生徒の育成 ~わかる喜びを味わわせる教科指導の工夫~

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2校内研究の進め方

リレー方式による授業研究の工夫例 トピック

「リレー方式による授業研究」とは、学年の複数の教師が

同単元(題材)の授業を連続的に展開する授業研究の手法の

1つです。

先行授業の成果や反省を受け、それぞれの教師が指導案を

再構築して、次の授業研究を行います。

教材研究の成果や事後検討会での成果を共有しながら、そ

れぞれの視点で自学級の授業を展開できるなど、日常の実践

と校内研究とを結び付けることに役立ちます。

教諭(2組) 教諭(3組) A 教諭(1組) B C

学年の事前検討(教材研究、単元構想、大まかな指導の展開など)

授業研究1 第1週

単元導入部の授業 (単元導入部の授業) ( ) 単元導入部の授業 ( )

授業研究1の事後検討会 + 授業研究2の事前検討

授業研究2 第2週

単元中間部の授業 (単元中間部の授業) ( ) ( ) 単元中間部の授業

授業研究2の事後検討会 + 授業研究3の事前検討

授業研究3 第3週

(単元終末の授業) (単元終末の授業) (単元終末の授業)

授業研究3の事後検討会 + 今後の展開

感想 一つの単元を3人で構

想することで、自分の授 業を見つめ直すよい機会 になりました。

感想 事後検討会を繰り返す

たびに課題が明確になっ てきました。焦点を絞っ た話合いになりました。

感想 自分の指導に固定観念

があることに気づかされ ました。 先生の授業の A成果を取り入れました。

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子どもの変容をとらえる授業記録と授業研究後の協議の実際 実践例

○指導計画と授業記録の実際(小学校第4学年 国語科)

<研究主題>

自ら学び、考え、表現できる 子どもの育成

~かかわり合いながら学ぶ国語 ・算数の授業づくりを通して~

<研究仮説> 1 学びの流れを重視した単元構成を工夫し、教材を吟味することにより、 学習活動への意欲を高めることができるだろう。

2 子どもの実態を踏まえた学習課題を設定し、学び合いを生み出す発問や 板書等の指導を工夫することにより、かかわりながら自分の考えを深める ことができるだろう。 3 交流の場面を位置付けたり、自己評価や相互評価を工夫したりすること により、自分を表現する力を高めることができるだろう。

○単元名 「登場人物の様子を読み、手紙を書こう (使用する教材「一つの花」) 」 ○単元の目標 場面の移り変わりや登場人物の様子を、叙述を基に想像しながら読むことができる。 ○言語活動 「読み取ったことをもとに、登場人物に手紙を書くこと」 ○単元の評価規準、単元の指導計画 (略) ○本時の目標 戦争に行く父の思いを想像することができる。 ○本時の展開(5/7時間)

主な学習活動 過程 1 前時までの学習を想起 する。

つ 2 課題を確認する。 か 「お父さんはどんなこと む を考えながらゆみ子にコ

スモスの花をあげたので しょう 」 。

3 課題について自分の考 えをもつ。

と ・叙述から様子を想像す り る。 く

、 。 む 4 考えを交流し 深める

5 読み取ったことが表れ まと るように音読する。 める

◆授業記録 教師の発問等 児童の反応 備 考 場面

・お父さんはどんなことを考え 4 ながらゆみ子にコスモスの 花をあげたのでしょう。 A:お花をあげるから泣かない

んだよ。

・Aくんは、どの部分からそう A:ゆみ子さんがおにぎりがほし ・叙述を基に考 くて「一つだけ、一つだけ」と えさせる発問 考えましたか。 言って泣いているけど、おに ぎりがないから。

・Cくんはどうですか。 B:お花を大切にしてね。

・違う考えの人はいますか。 ・Bの考えから D:この花のようにやさしく強 学び合いを く生きてほしい。 深める手だて

が必要 ・Dくんは、やさしく強く生きてほ

・そうだね、わすれさられたよう  にとも書いてあるね。

C:プラットホームのはしっぽ しいと思ったんだね。ところ A:ごみすて場のような所 ・Dの考えに関 でみんな、コスモスの花は

連する考えを どこに咲いていたのかな。 引 き出す意 図的な指名 が必要

○教師の発問と子ども の反応を比較しなが ら授業の様子を記録 します。

◆授業評価シート 観点 評 価 項 目 評 価

教 師 の 課題は適切であったか 4 3 2 1 教 授 活 発問の内容や構成は適切であったか 4 3 2 1 動 子どものつまずきへの手だては適切であったか 4 3 2 1 子 ど も 学習に意欲的に取り組んでいたか 4 3 2 1 の 学 習 自分の考えをもち、発表をしていたか 4 3 2 1 活 動 本時の学習内容を理解していたか 4 3 2 1 授 業 学習過程は適切だったか 4 3 2 1

学習内容に適した学習形態であったか 4 3 2 1 全 般 時間配分は適切であったか 4 3 2 1 研 究 と 教材は学習への意欲を高めるものとなっていたか 4 3 2 1 の か か 学び合いを生み出す発問や板書の工夫が見られたか 4 3 2 1 わ り 交流の場面は適切に位置付けられていたか 4 3 2 1

課題に対して一人一人の子どもがどのような考えをもっているか把握し、意 備 考 図的な指名ができるとよかった。

○研究とのかかわりか ら工夫点や改善点を 記述したり、研究仮 説に基づく評価項目 を設定したりします。

◎仮説の内容に基づい た授業記録を行うこ とにより、講じた手 立てによる子どもの 変容を明らかにする ことができます。

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2校内研究の進め方

○授業研究後の協議の実際

協議のねら

い の 確 認

協議の流れ

<協議の柱> ○ 本時の学習課題は、かかわり合いを生み出したり、学ぶ 楽しさを実感させたりするものだったか。 ○ 本時の発問や板書は、学び合いを生み出すために効果的 だったか。

<ねらい> ○ 第2次授業研究に向けて、仮説2にかかわる検証を重点的 に行う。

協議の柱の

確 認

授 業 者 に

よ る 評 価

◆授業記録 ○○教諭 教師の発問等 児童の反応 場面

・Bくんはどうですか。 4 B:お花を大切にしてね。

・違う考えの人はいますか。 D:この花のようにやさしく強く生 きてほしい。

・Dくんは、やさしく強く生きてほ C:プラットホームのはしっぽ しいと思ったんだね。ところ A:ごみすて場のような所 でみんな、コスモスの花は どこに咲いていた

◆授業記録 □□教諭 児童の反応

C:お花を大切にしてね。 Aが「一つだけのお花だから 大事なんだ」とつぶや いている。

D:この花のようにやさしく強く 生きてほしい。 Eは「お父さんはゆみ子にい つも笑っていてほしいと思っ ている」とノートに記述

<授業者の反省> ・課題に対していろいろな視点からの考えが出たが、学び合 いに結び付けることができなかった。 ・全体での交流でなく、グループの形態にしたほうが、考え が深まったのではないか。 授業記録に基

づく検討

<授業記録に基づく意見> □□教諭:Cくんの発言から学び合いを生み出すことができ

たのではないか。C君の考えを深めたり、似たよ うな考えをもっていたA君の意見をここで生かし たかった。

△△教諭:Dくんの発言の場面も学び合いのきっかけにでき たのではないか。

柱 に 基 づ

く 協 議

<協議の内容> ・学び合いを生み出すためには、机間指導で子どもの学習状 況を把握し、意図的な指名を行うことが大切である。 ・ 関連や関係に気付かせる発問」や「新しい視点に気付かせ 「 る発問」について工夫をする必要がある。 ・考えを比べやすくする板書を工夫する必要がある。

改 善 点 の

明 確 化

・予想される子どもの反応と発問を対応させて指導案に位置 付けること ・交流の場面での学習形態を工夫すること

○複数の教師による授 業記録を比較し、多 面的に子どもの状況 や教師のかかわりを 分析します。

○研究仮説とのかかわ りを明確にした協議 の柱を設定し、仮説 の検証につながるよ うにします。

○ねらいを明確にし、 協議の焦点化を図り ます。

○協議の柱に沿って授 業を振り返り、授業 改善に生かします。

○教師の発問と子ども の反応を対応させな がら授業記録を分析 します。

協議のポイント

◎研究仮説とのかかわ りを明確にして授業 評価を行うことによ り、研究仮説の有効 性を確かめ、授業の 改善を図ることにつ ながります。

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○実施過程の妥当性:研究仮説に基づいた授業研究の在り方等

○子どもの変容:研究前と研究後の子どもの姿等 など

校内研究の評価は、評価の項目や観点を明確にし、研究計画の段階から研究の改善の段階まで、 見通しをもって行うことが大切です。

校内研究の評価は、子どもの望ましい変容を促すために、研究の推進計画や方法が適 切だったかどうかを検討し、研究の成果と課題を明らかにすることを目的に行います。

校内研究の評価は、次の手順で進めるようにします。

1 評価の項目や観点、方法を明確にします。 校内研究の計画段階から、評価の項目や観点、方法を明確にし、年度末だけで

なく、研究推進の実践段階においても振り返るようにします。

○計画の段階:研究主題設定の在り方、研究推進計画の明確化、研究仮説の設定等

○実践の段階:研究推進の在り方、授業研究の在り方等 など

2 実践の各段階において評価の情報を収集します。 授業記録、各種調査などから、評価の情報を収集します。

3 収集した情報を整理します。 累積された授業記録や各種調査をいくつかのまとまりにして、研究の成果や子

どもの変容を整理します。

・ ○研究成果を整理する視点:どのような手だてが変容に結び付いたのか等

○子どもの変容を整理する視点:どの子がどのような変容をしたのか、どの事実か

ら言えるのか等 など

4 研究の成果と課題を明らかにします。 整理してまとめた結果を次のような視点から考察し、成果と課題を明らかにし

ます。

・子どもの変容に有効だった手だては何か ・改善を要する手だては何か

・追加することによって、一層の効果が期待できる研究の手だては何か   など

5 研究の改善に向けた方向性を明らかにします。 期待する子どもの変容が見られなかった場合は、手だてを検討したり、成果が

見られた場合は、子ども像を見直したりするなど、研究仮説を修正し、研究を継 続・発展させるための方向性を明らかにします。

評価項目の例

情報の収集の視点

研究の成果や子どもの変容を整理する視点

考察の視点

Q8 研究の評価はどのように行うとよいですか

研究の評価 の 目 的

研究の評価 の 手 順

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2校内研究の進め方

研究の過程を適切に評価する評価シート 実践例

○ ○ 小 学 校 校 内 研 究 評 価 シ ー ト (記入者 )

過 程 評価の観点 評価 自由記述欄 段階

1 研究課題 ・子どもの実態を踏まえたものとなっているか

の把握 ・前年度の研究の成果や課題を踏まえているか

・地域の実態や保護者のニーズを踏まえているか

2 研究推進 ・研究の方向性や年間の見通しが明らかになっているか

計画 ・研究の評価の時期や項目が明確になっているか

・必要に応じ、計画の見直しがなされているか 計

学校の教育目標や年度の重点教育目標との関連を図っているか 3 研究主題 ・

の設定 ・研究課題を踏まえたものとなっているか

・研究の目的や内容、方法が明確になっているか

4 研究仮説 ・研究の対象や手だてが明確になっているか

仮説が全教職員に理解され、実践に生かされるものとなっているか 画 の設定 ・

研究内容は、研究仮説の手だてを具体化したものとなっているか 5 ・ 研究の内容の具体化

6 検証計画 ・検証の方法が明確になっているか

の樹立 ・データの収集の方法が明確になっているか

・授業を通して検証できるようになっているか

研究計画に基づき、全員の共通理解の下で研究が進められたか 7 検証のた ・

研究の過程を常に評価しながら、目標に即して研究が進められたか 実

めの実践 ・

授業研究は、仮説の検証内容や方法を位置付けた指導案に基づき実施されているか ・

授業評価は、仮説に基づき、具体的な観察の内容や方法を決めて実施されているか 施

子どもがどのような条件でどのように変容したかを把握しているか 8 研究結果 ・

の整理 ・授業仮説に基づき授業の評価を行っているか 評

・事実と推測を区別して考察をしているか

9 研究のま ・解明された点と残された問題点を明らかにしているか 価

とめ ・研究記録のまとめ方は適切だったか

研究の改 ・研究の評価から具体的な改善策を明らかにしているか 10

善 ・研究の評価を仮説の修正に生かしているか 改

研究の成果と課題を、研究推進計画の見直しに生かしているか 善

( 評価欄 十分適切である 適切である 改善が必要である) A: B: C:

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評価を生かした研究の年間計画の改善 実践例

<研究主題> 確かな学力を身に付け、生き生きと学ぶ子どもの育成 ~国語科における主体的な言語活動の工夫を通して~

◆1年次の研究の年間計画 月 研究過程 主な研究活動 研究推進委員会の取組

・今日求められている国語科の指導について

評価シート 観点 項 目 評 価

2研究推進 ・研究の方向性や年間の見通しが明らかになっているか。 計画 ・研究の評価の時期や項目が明確になっているか。

・必要に応じ、計画の見直しがなされているか。

<備考欄の記述から> ・今年度の研究の重点や授業研究の視点を明確にする必要がある。

体 制 の 確 立

実 践 ・ 検 証

年間計画の

改善のポイント

○評価シートなどを活 用して、研究計画の 改善点を明確にしま す。

◆2年次の研究の年間計画 月 研究過程 主な研究活動 研究推進委員会の取組

・言語意識を明確にした言語活動を工夫した授業

・仮説2の検証を中心に授業評価を行う

・仮説3の検証を中心に授業評価を行う

◎→最重要内容 ○→重点内容 <研究内容> 研究内容 1年次 2年次 3年次 研究仮説

領域の特性を踏まえた評価方法の工夫 ・評価を生かした指導の改善 ○ ◎

※1年次は、実際に取り組んだ内容を示しています。

体 制 の 確 立

実 践 ・ 検 証

年 間 計 画 の 改 善

○1年次は、研究の方 向性や授業作りの視 点が明確でなかった ことが課題として挙 げられました。

○1年次の課題を踏ま え、それぞれの授業 研究で検証する研究 仮説を明確にし、2 年次の年間計画に位 置付けています。

○年度でどの研究内容 を重点的に扱うかを 明確にし、具体的な 目標をもって研究を 推進できるようにし ました。

◎評価に基づき研究の 計画の改善に努める ことが大切です。

A~30% B~35% C~35% A~70% B~10% C~20% A~40% B~30% C~30%

・年間指導計画の整備 ◎ ○ ・単元の配列の工夫 ◎ ・繰り返しの学習の位置付け ◎ ◎ ・言語活動例の活用 ○ ◎ ・言語意識を明確にした言語活動 ○ ◎ ○ ・日常生活との関連を図った言語活動 ◎ ・評価規準の整備 ○ ○ ・ ◎ ○

指導計画の 整   備

言語活動の 工   夫

評価の工夫

○研究協議の柱の検討

○事前研の進め方の検  討 ・「話すこと・聞くこと」の領域の評価方法

○評価方法にかかわる  理論研修の資料作成

○年間指導計画の改善  の視点の作成

○第1次授業研の検証  の視点の明確化

○1年次の評価結果を  踏まえた改善点の提  示

○1年次の成果と課題に基づく研究仮説の修正

○第1次事前研

○第2次事前研

○繰り返しの学習を位置付けた指導計画の改善

○第1次授業研

○第2次授業研

○今年度の研究計画、方向性の確認

11

10

7 8

○授業研究(4年生) ○研究協議の柱の検討

○事前研の進め方の検討

○1学期の研究推進の反  省と2学期の確認

○年間指導計画の改善の  視点の作成

○研究内容の原案作成 ○理論研修の資料作成

○今年度の計画案の作成 ○研究仮説の原案作成

○事前研(指導案検討)

○年間指導計画の改善

○理論研修

○研究主題の設定 ○研究仮説の検討

○研究仮説の設定 ○研究内容と方法の構想(ワークショップ)

7 8

10

11

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2校内研究の進め方

評価情報の活用による研究仮説の修正 実践例

1 研究仮説1にかかわって ・子どもの関心を高める体験的 な活動を取り入れる必要があ る。

・地域の教育資源の活用を積極 的に進める必要がある。

2 研究仮説3にかかわって ・学習過程に応じた教師のかか わりや評価活動を工夫する必 要がある。

<研究仮説1> ・子どもの実態や関心に応 じた学習活動を工夫する ことにより、問題解決の 力が高まるだろう。

<研究主題> 生き生きと進んで活動する子どもの育成

~育てたい力を明確にした総合的な学習の時間の展開を通して~

評価情報の収集 ◆

<研究仮説2> ・個に応じた指導を工夫 することにより、主体 的な追究が深まるだろ う。

<研究仮説3> ・評価活動を工夫するこ とにより、自分の見方 や考え方が高まるだろ う。

授 業 記 録 か ら の 情 報 収 集 自 己 評 価 カ ー ド か ら の 情 報 収 集

評価シート 観察 項 目 評 価

・研究の対象や手だてが明確になっているか。 4 研究仮 説の設定 ・仮説が全教職員に理解され、実践に生かされるものになっているか。

<備考欄の記述から> ・手だてが具体性に欠けるので、学年ごとに研究内容にばらつきがみられる。

1 問題解決の力にかかわって ・ボランティア活動を単元の始 めに位置付けることで問題解 決への意欲が高まった。

・学習の成果を地域の方に発表 する場面を設定することによ り、意欲が高まった。

2 主体的な追究にかかわって ・追究の方法を指導することに より、学び方は身に付いたが 追究活動に深まりがない。

結果の考察と研究仮説の修正 ◆

<研究仮説1> 子どもの関心に応じた価値 ・ ある体験活動を意図的に取 り入れることにより、問題 解決の力を高めることがで きるだろう。

<研究仮説2> 子どもの思考の広がりや深 ・ まりを促す指導を工夫する ことにより、主体的に追究 する意欲をはぐくむことが できるだろう。

<研究仮説3> 子どもの学習過程を踏ま ・ えた評価を工夫すること により、見通しをもって 学習を進める態度を育て ることができるろう。

・学習活動の工夫の視点

を明確にする必要があ

る。体験的な活動が手

だてとして有効。

・子どもが新たな視点に

気付いたり、考えを深

めたり出来るようなか

かわりが必要。

・学習過程に応じて、子

どもが自分の学びを振

り返ることができる評

価の工夫が必要。

考 察

修 正 し た 仮 説

評 価 シ ー ト か ら の 情 報 収 集

研究仮説の

修正のポイント

○授業記録など、実践 を通して得られた情 報をもとに評価をし ます。

○どのような手だてで 子どもがどのような 変容をしたのかを明 らかにします。

◎評価に基づき研究仮 説を修正することに より、研究の方向性 をより明らかにする ことができます。

○評価情報から研究の 成果と課題を明らか にし、研究仮説の修 正につなげます。

○評価シートから、研 究仮説の課題を明ら かにします。

A~45% B~35% C~20% A~60% B~15% C~25%

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32

研究成果の発信の工夫 トピック

1 公開研究会の工夫 公開研究会は研究の成果を公開し、他校の研究実践に役立ててもらうとともに、

自校の研究に対し意見や批評を仰ぎ、教育活動の改善を図ることが目的です。

そのため、開催に当たっては、次の5つの工夫が大切です。

公開研究会開催のねらいに基づいた「討議の柱」を設

定して研究協議を進める。

公開授業の始まる前に、授業のポイントや観察の視点

を説明する。

公開1時間目と2時間目とで、連続授業を公開する。

子どもの変容にかかわる資料を掲示する。

公開日の時間設定を工夫する。

2 研究紀要の工夫 研究紀要を作成することは、これまでの研究の成果が明らかになり、今後の実

践の改善にもつながります。また、他者からの助言や指導が得られる貴重な資料

でもあります。そのため、作成に当たっては、次の6つの工夫が大切です。

①子どもの活動が 見えるような表 現を工夫する。

②図表や写真など を効果的に活用 する。

③論旨の一貫性を 保つ。

④紙面のレイアウ トを工夫する。

⑤見出しの付け方 を工夫する。

⑥用語の統一性に 配慮する。

視覚的なわかり やすさに留意し ます。

読者を引き付け る表現の仕方を 工夫します。

供」かなど、統 一を図ります。

「子ども」か「子

子どもの変容に 着目できるよう にします。

表題を付け、図 表や写真の意味 付けをします。

研究紀要全体と しての主張を大 切にします。

Point1

Point2

Point3

Point4

Point5

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第3章

各教科等の研究の進め方

この章では、各教科等の研究の進め方について述べています。

(1) 国語科(小学校) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・33(2) 算数科(小学校) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・37(3) 道徳(小学校) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・41(4) 特別活動(中学校) ・・・・・・・・・・・・・・45(5) 総合的な学習の時間(中学校) ・・・・・・・・・・・・49

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33

国語科の研究は、国語に対する関心を高め国語を尊重する態度を育てるとともに、豊かな言語 感覚を養い、互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成することを目指して進める ことが大切です。

国語科の研究は次の視点を重視して進めることが大切です。

◇ 国語科の目標についての理解を深める。

◇ 国語科の各領域の目標や内容についての理解を深める。

◇ 国語科の各領域の特質を踏まえた指導計画の作成や指導方法、評価について の理解を深める。

国語科の研究のポイントには次のようなものがあります。

◆ 国語科の年間指導計画の作成に関する研究

◆ 国語科の各領域の指導計画の作成に関する研究

◆ 各領域の特質を生かした指導方法の工夫に関する研究

◆ 子どもの実態に応じた創意ある言語活動の工夫に関する研究

◆ 各領域の特質を踏まえた評価の在り方に関する研究

◆ 教科等や日常生活との関連を図った指導の工夫に関する研究

各 教 科 等 の 研 究 の 進 め 方 国 語 科

国 語 科 の 研究推進の 視   点

国 語 科 の 研 究 の ポ イ ン ト

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3各教科等の研究の進め方

実践例 小学校

1 研究の全体構造図

2 研究の推進計画

【研究主題】

自ら学び、進んで表現する子どもの育成

~確かな理解力と豊かな表現力を培う国語科の指導を通して~

【目指す子ども像】

確かな言語能力を身に付け、学んだことを生かして学習に取り組む子ども

主体的に学習に取り組み、課題を解決する子ども

進んで人とかかわり、自分の考えを伝えようとする子ども

【研究仮説1】

・指導内容の系統性を踏まえ

た指導計画を作成し、繰り

返しの学習を効果的に位置

付けることにより、子ども

は確かな言語能力を身に付

け、学んだことを生かして

学習に取り組むだろう。

【研究仮説2】

・日常生活との関連を図り、

言語意識を明確にした言語

活動を工夫することにより、

子どもは主体的に学習に取

り組み、課題を解決するこ

とができるだろう。

【研究仮説3】

・領域の特性を踏まえた評価

を工夫し、指導の改善に生

かすとともに、学んだ成果

を生かす場を工夫すること

により、子どもは進んで人

とかかわり、自分の考えを

伝えようとするだろう。

【研究内容1】

○ 指導計画の工夫・改善

・繰り返しの学習を位置

付けた年間指導計画の

作成

・単元の配列の工夫

・単元構成の工夫

【研究内容2】

○ 言語活動の工夫

・言語活動例の活用

・言語意識を明確にした

言語活動の具体化

・日常生活との関連を図

った言語活動の工夫

【研究内容3】

○ 他教科等との関連

・他教科等との関連を明

確にした指導の工夫

・領域の特性を踏まえた

評価の工夫

・指導と評価の一体化

年間指導計画の改善

3年計画の具体的な研究内容

1年次 2年次 3年次

・繰り返しの学習の位置付け ・領域ごとの課題を踏まえた単元 ・他教科等との関連を明確にした

○ 単元構成の工夫

・言語活動を位置付けた単元構成

○ 言語活動の工夫

・言語活動例の活用

・言語意識を明確にした言語活動

の具体化

・日常生活との関連を図った言語

活動の工夫

○ 指導と評価の一体化

○ 他教科等との関連

○ 言語活動の工夫

○ 国語科の年間指導計画の改善

配列の工夫

○ 言語活動の工夫

○ 単元の配列の工夫

○ 評価の工夫

・領域の特性を踏まえた評価 ・個に応じた指導の充実

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3 研究の実際

(1) 国語科の年間指導計画の改善(研究内容1、研究内容3にかかわって)

(2) 日常生活との関連を図り、言語意識を明確にした言語活動の工夫(研究内容2にかかわって)

第5学年 国語科年間指導計画

月 項等 言語活動 ■教科等との関連 A ア 8 話す・聞く、 伝え合う ・詩の音読を楽し ・自分の考え ○(12月)言 イ 書く、読むこ 楽しさを む。 を資料を提 語について調

B イ 5 との関心を高 味わおう ・自己アピールの 示しながら べよう C ア 2 め、よりよい スピーチをす スピーチす ○(9月)味わ

言語活動につ る。 ること いながら読も いて考えるこ ・情報収集の方法 ・自分の課題 う とができる。 を知る。 について調 ■(4月)学級

べてまとま 活動における った文章に 話合いの活動 表すこと

C ウ 6 登場人物の心 心を見つ ・叙述に即して心 ・創作日記を ○(8月)生き 言 1 情の移り変わ めよう 情を考える。 作ること 方を考えよう

りを理解する (漢字の ・優れた叙述を考 ○(10月)読 ことができる 世界) える。 書の楽しさを

交流しよう 。

B ウ 1 事実と感想、 整理して ・見学メモを活用 ・自分の課題 ○(7月)コラ エ 1 意見が明確に 書こう して構成表をつ について調 ムを書こう 言 2 なるよう、構 (和語・ くる。 べ、まとま ■(7月)社会

成を考え、効 漢語・外 ・構成表をもとに った文章に 科「私たちの 言 1 果的に書くこ 来語) 文章を書く。 表すこと くらしを支え 書 4 とができる。 (漢字の る情報」

世界) 10

イ 6 押さえながら 確に押さ ことに着目し を解決する 本語について B ア 要旨をとらえ えよう て、まんがの方 ために図鑑 考えよう オ 1 ることができ (詩) 法と効果を考え や事典など ■(6月)総合

る。 (漢字の る。 を活用して 的な学習の時 言 詩に表現され 世界) ・身近なおもしろ 必要な情報 間(情報)

た優れた叙述 さを探るために を読むこと を味わいなが 必要な資料を選 ら読むことが んで読む。 できる。

Cエ 8 事実と意見の 筆者の考 ・事実と筆者の考 ・筆者に対す ■(9月)総合 関係に気付い えをまと えの部分を明確 る自分の考 的な学習の時

書 4 て、文章構成 めよう にして、筆者の えを明らか 間(環境) を理解するこ 主張をまとめ にすること とができる。 る。

配当字数 「話すこと・聞くこと :25単位時間 「書くこと :55単位時間 書写:30単位時間 」 」

○研究仮説1と3を

踏まえ、繰り返し

の単元と他教科等

との関連が明確に

なるよう、年間指

導計画を工夫して

います。

○「話すこと・聞くこと」の領域における言語意識

言語意識 1・2年 3・4年 5・6年 ・担任の先生 ・クラスの友だち ・地域の方

相手意識 ・隣の席の友だち ・異学年の友だち ・全校児童 ・保護者や兄弟姉妹 ・自分のことを紹介する ・自分の考えを発表する ・自分の考えを提案する

目的意識 ・経験したことの中から話 ・日常生活の中で経験した したいことを話す ことの中から選んで話す

・一対一で話す ・クラス全員に話す ・ビデオレターなどの方 ・少人数で話す 法で話す

・全校集会などでマイク  を使って話す

・身振りを使って話す ・スピーチメモを使って話 ・スピーチメモを使って ・絵や写真を使って話す す 話す

・クイズなど方法を工夫し ・図や表などの資料を効 て話す 果的に用いて話す

・話に沿った質問をする ・話について感想を言う ・話を聞いて自分の話し 方を振り返る 評価意識

方法意識

場面意識

○研究仮説2を踏ま

え、日常生活との

関連を図り、2学

年ごとにどのよう

な言語意識が考え

られるのかを出し

合い、発達段階を

踏まえて一覧にま

とめています。

指導事 時数 目標 単元名 学習内容 展開する ○繰り返しの単元

C ア 内容を的確に 内容を的 ・筆者の言いたい ・自分の課題 ○(11月)日

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3各教科等の研究の進め方

4 授業研究の実際

○単元名 「朝のスピーチを使って、話したいことを友だちに伝えよう (第3学年) 」 ○単元の目標 相手や目的に応じて、話したいことを筋道を立てて話す (話す・聞く能力) 。 ○言語活動 「身近な話題についてスピーチをすること」 ○単元の指導計画

◆研究とのかかわりを位置付けた単元の指導計画

学習活動 研究とのかかわり 時 評価規準 国語への関心・意欲・態度 言語についての知識・理解・技能 話す・聞く能力

自分の考えが ・朝のスピーチを使って、もっ 付けた単元構成 友だちによく と話したいことをクラスのみ の工夫 伝わるように んなに伝える。 (研究内容1) 詳しくしたい

ところを進ん ・1分間のスピーチを3分にする で考えている ためには、どこを詳しくしたら

よいかを考える。

○ 伝えたいことを明確にする。 自分の考えの 表現するために ◎日常生活との関 ・朝のスピーチのスピーチメモを 中心となる部 必要な語句を辞 連を図った言語 作り、詳しくしたいところに話 分を決めて、 書などを使って 活動の工夫 題を書き足す。 話の内容を考 増やしている。 (研究内容2)

えている。

○ 話の組立を考える。 自分の考えの ◎日常生活との関 ・詳しくしたところを効果的に伝 中心となる部 連を図った言語 えるための順序を考え、スピー 分を伝えるた 活動の工夫 チメモを並び替える。 めの組立を考 (研究内容2)

えている。

4 ・スピーチメモをもとにペアでス を把握し、そ の音量や速さを まえた評価の工

( ) ピーチ練習をし、スピーチメモ れに合った練 意識している。 夫 研究内容3 。 を改善する。 習をしている

◆研究とのかかわりを明確にした授業の実際 ○本時の目標 効果的な組み立てについて考えることができる。 ○授業仮説 音声言語の特性を踏まえた評価方法を工夫し、指導の改善に生かすことにより、進んで

自分の考えを伝えようとする意欲を高めることができるだろう (研究仮説3との関連) 。 学習活動・内容 教師のかかわり ◆評価規準・評価方法 段階

1 前時までの学習を振り返り、本 ・詳しくした部分を効果的に 時の課題を把握する。 伝えることを確認する。

2 ペア学習の留意点を確認する。 ・ワークシートを用意し、聞 き手の留意点を示す。 「

を意識している。 うか考えさせる。 (観察)

課題 友だちの意見を聞いて、伝えたいことが効果的に伝わるスピーチにしよう。

<評価を生かした指導の工夫> ・スピーチメモを改善さ せる。

・教師が聞き役となりス ピーチ練習をする。

授 業 の 実 際

つかむ

3 ペアでスピーチ練習をし、意見 ・ 伝わったところ」と「伝 ◆ペアで話すときの音量や速さ 交換で自分の改善点を知る。 えたいところ」が同じかど

4 改善点を交流する。 ・改善点を整理し板書する。

とりくむ

まとめる

5 自分の改善点を明確にし、全体 ・ ◆自分の改善点を把握し、それ でのスピーチに向けてメモを再構 に合った練習をしている。 成する。 (スピーチメモ・観察)

○ 組立を再構成する。 自分の改善点 ペアで話すとき ◎領域の特性を踏

○ 学習の見通しをもつ ◎言語活動を位置

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算数科の研究は、数量や図形についての基礎的・基本的な知識・技能を習得し、それを基にし て多面的にものを見る力や論理的に考える力などの創造性の基礎を培うとともに、事象を数理的 に考察し、処理することのよさを知り、自ら進んでそれらを活用しようとする態度を育成するこ とを目指して進めることが大切です。

算数科の研究は次の視点を重視して進めることが大切です。

◇ 算数科の目標についての理解を深める。

◇ 算数科の領域や内容についての理解を深める。

◇ 算数的活動を取り入れた指導計画の作成や指導方法、評価についての理解 を深める。

算数科の研究のポイントには次のようなものがあります。

◆ 算数科の年間指導計画の作成に関する研究

◆ 主体的な学習を促す算数的活動に関する研究

◆ 各領域の系統性を踏まえた指導方法の工夫に関する研究

◆ 問題解決的な学習の工夫に関する研究

◆ 算数科の評価の在り方に関する研究

◆ 実生活との関連を図った指導の工夫に関する研究

算 数 科 各 教 科 等 の 研 究 の 進 め 方

算 数 科 の 研究推進の 視   点

算 数 科 の 研 究 の ポ イ ン ト

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3各教科等の研究の進め方

実践例 小学校

1 研究の全体構造図

2 研究の推進計画

【研究主題】

自ら考え、進んで学習する子どもの育成

~算数科における問題解決的な学習の工夫を通して~

【目指す子ども像】

課題意識をもち、自ら課題解決に取り組む子ども

自分の考えをもち、互いに伝え合い考えを深める子ども

自信をもって学習に取り組み、新しい課題を見付けようとする子ども

【研究仮説1】

・問題解決的な学習の学習過

、 、 程を明確にし 問題や教材

板書などを工夫することに

より、課題意識をもち、自

ら課題解決に取り組む子ど

もを育てることができるだ

ろう。

【研究仮説2】

・話し合いによる交流場面を

設定し、教師が適切にかか

わることにより、自分の考

、 、 えをもち 互いに伝え合い

考えを深める子どもを育て

ることができるだろう。

【研究仮説3】

・学習の成果を振り返る自己

評価や個に応じた指導体制

を工夫することにより、自

、 信をもって学習に取り組み

新しい課題を見付けようと

する子どもを育てることが

できるだろう。

【研究内容1】

・問題解決的な学習の学習

過程の明確化

・主体的な学習を促す問題

や教材の工夫

・思考を促し、学習の足跡

がわかる板書の工夫

【研究内容2】

・互いに伝え合い考えを深

め合う交流場面の設定

・交流活動を深める教師の

かかわりの工夫

・主体的な学習を促す算数

的活動の位置付け

【研究内容3】

学習の成果を振り返ること ・

ができる自己評価の工夫

・子どもの学習状況を的確

に見取る評価の工夫

・評価結果を生かした指導

体制の工夫

3年計画の具体的な研究内容

1年次 2年次 3年次

○ 思考を促し、学習の足跡がわか

○ 交流活動を深める教師のかかわ

○ 評価結果を生かした指導体制の

明確化と共通理解

○ 問題解決的な学習の学習過程の

○ 互いに伝え合い考えを深め合う

交流場面の設定

○ 子どもの学習状況を的確に見取

る評価の工夫

○ 主体的な学習を促す問題や教材

○ 主体的な学習を促す算数的活動

○ 学習の成果を振り返ることがで

の工夫

の位置付け

きる自己評価の工夫

る板書の工夫

りの工夫

工夫

Page 45: 校内研究の 充実のために · 2011-03-11 · 2 1 校 内 研 究 の 基 本 的 な 考 え 方 校内研究は、学校の教育目標の具現化を目指し、教師が共同で取り組む研究活動であり、教育

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3 研究の実際

(1) 問題解決的な学習の学習過程の明確化(研究内容1にかかわって)

(2) 思考を促し、学習の足跡がわかる板書の工夫(研究内容1にかかわって)

○研究仮説1を踏ま

え、問題解決的な

学習の流れや教師

の支援のポイント

を明確にし、共通

理解の下で学習指

導を行うことがで

きるようにしてい

ます。

○ 本校の問題解決的な学習の流れが一目でわかる板書構成を工夫する。

○ 文字の大きさや配色、記号、括弧、囲み、矢印などを活用し構造的に表す。

○ 子どもがノートに書くことを考慮して要約したり大切なことをまとめたりする。

○ 子ども一人一人の考えから話し合いに有効なものを選び、掲示する。

○ 子どもの発言を関連付けて板書する。

○ 全体交流の場面では、掲示された考えをもとに発表を行う。

○ 子どもの考えが多い場合や、数直線、線分図などを用いる場合は小黒板を活用する。

板 書 の ポ イ ン ト ○研究仮説1を踏ま

え、それぞれの教

師が行っている板

書の工夫を交流し

合い、共通して取

り組むことをまと

めています。

○本校の問題解決的な学習の基本形

学 習 活 動 子 ど も の 思 考 教師の支援のポイント 過程

○前時をふりかえる ・こんなことができたよ ○前時までの学習内容を提示する 出 ・新しい疑問が出てきたよ ・既習事項の掲示物などを工夫 会 する

○問題を提示する う ○問題と出会う ・何だろう、どうしてだろう ・調べてみたい やってみたい ・身近な素材 、 、 楽しそう ・興味・関心を高める きっとこうなるんじゃないかな ・

○課題をつかむ ・きょうは○○について勉強す ○課題を明らかにする、 るんだ ・学習することを考えさせ、見

つ 通しをもたせる か ○見通しをもつ ・こんな方法をやってみたい ○自分なりの見通しをもてるよう む (方法、手段、結果) ・こうしたらできるんじゃない にする

かな ・多様な発想を生かす ・こうなるんじゃないかな ・解決の方法について自己決定

させる ○見通しに基づいて解決す ・よし、やってみよう ○自力解決を支援する る ・困ったな、わからないな ・ヒントカードや具体物、半具

考 ・他にもやり方がありそう 体物などの活用を促す え 主に一人学習 ・変だな、ちがうな ・方向性を示唆する る ・前時の内容をふりかえるよう

にする ○筋道を立てて説明するよう発表 ○自分の考えを発表する ・わたしは、こう思うよ の手順を指導する ・○○なので、私はこう考えま

す ①どんな考えで 深 ②何を使って め ○意見を交流し、考えを深 ・ ③どのようにして 自分と同じ(違う)やり方だな る め合う ・もっと工夫できるかな ④どうなったか

・そのやりかたの方が簡単だ ○問題解決に向けての意見交換を 促す 主にグループや全体による学習 ・教師が中心となり話し合いを 進める

○学習をまとめる ・こんなふうにすれば解決でき ○学習内容を整理し、課題をまと まと るんだ める める

・○○の考え方がわかったよ ○疑問点の補足をする ○よりよい考え方をもとに ・もっとたくさんやりたい ○発展・補充問題により習熟を図 練習する ・できるようになっておもしろ る

いよ ・個に応じた問題を工夫する 広 ・まだ少しわからないところが ・変化のある繰り返し問題

( ) げ あるよ 徐々にレベルアップしていく ○自己評価を行う る ○自他の学習をふりかえる ・できるようになったよ

・○○さんの考えはよかった 自己評価カードやノートなどを 学習の振り返りに活用させる。

○新たな問題や残された問 ・こんな場合どうすればいいん 題を考える だろう

・ここがわからなかったよ

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40

3各教科等の研究の進め方

4 授業研究の実際

○単元名 「形に名前をつけよう」 第2学年

○単元の目標 具体物の観察や操作による形の構成などを通して、平面図形に親しみ、その理解の基礎となる 経験を豊かにするとともに、三角形や四角形の概念を理解する。

○単元の指導計画(5時間扱い)

評価規準 時 学習活動 学習のねらい 研究とのかかわり (授業づくりの視点)

・面の形や辺の数、長 ・パズルを使っていろいろ ・パズルを使っていろい ○主体的な学習を さ、頂点の数などに な形をつくる。 ろな形を作ろうとして 促す教材の工夫 着目し、三角形や四 (いろいろなパズルを用 いる (関) (研究内容1) 。 角形に親しむ。 意する)

1 ・ ・三角形や四角形を辺 ・辺の数に着目してパズル ・辺の数に着目して、図 ○算数的活動の工 2 の数をもとにして分 の仲間分けをする。 形を分類することがで 夫

類し、その定義を理 (具体的な操作活動の位 きる (考) (研究内容2) 。 解する。 置付け) ・三角形、四角形の定義

。( ) を理解している 知

・三角形や四角形の定 ・点と点を直線で結んで三 ・三角形や四角形の定義 ○評価結果を生か

義について理解を深 角形や四角形を作図する に基づいて形を分けた した指導体制の 。 める。 (学習状況を把握するTT り、格子点を結んで作 工夫

の活用) 図したりすることがで (研究内容3) きる (表) 。

・基本図形の分解や構 ・四角形を分割したり構成 ・四角形は三角形を組み ○評価結果を生か 成を通して、基本図 したりする。 合わせてできているこ した指導体制の

4 形の性質の理解を深 (コース別学習とヒントカ とを理解している。 工夫

める。 ードの活用) (知) (研究内容3)

・基本図形に対する理 ・身の回りから三角形や四 ・学習した内容を活用し ○主体的な学習を

解の習熟を図る。 角形を見付ける。 て、学習に取り組もう 促す教材の工夫 5

1 学力テストの結果から 図形領域を苦手としている子どもは20%と他の領域よ

りも少ない。 2 事前調査の結果から ・三角形の認識、頂点や辺の数についてはほぼ理解できて いる。

・四角形については個人差が多い。 ・これから学習する辺の長さについては、約半数の子ども が誤答であった。

3 昨年度の学習の様子から ・一つの直線にこだわって形合わせができない子どもがい る。 ・組み合わせのイメージがもてずに意欲的に取り組めない 子どもがいる。

事 前 調 査 等 の 結 果

○問題や教材の工夫 (研究内容1) ○具体的な操作活動の工夫 (研究内容2) ○つまずきに応じる指導体制の 工夫 (研究内容3)

本 単 元 で 重 視 す る 研 究 内 容

指 導 の 工 夫

(身の回りのものの教材化) としている。(関) (研究内容1)

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41

道徳の研究は、子ども一人一人が、未来への夢や目標を抱き、自らを律しつつ、社会や公共の ために何をなし得るかを考えることができるようになるなど、人生や社会を切り拓く実践的な力 の育成を目指して進めることが大切です。

道徳の研究は次の視点を重視して進めることが大切です。

◇ 道徳教育と道徳の時間のそれぞれの特質と関連について理解を深める。

◇ 道徳教育と道徳の時間の目標・内容について理解を深める。

◇ 子どもの道徳性の実態と道徳の指導計画について理解を深める。

◇ 道徳教育と道徳の時間の指導方法について理解を深める。

道徳の研究のポイントには次のようなものがあります。

◆ 道徳の指導計画の作成に関する研究

◆ 魅力的な教材の開発など多様な道徳の時間の指導に関する研究

◆ 道徳教育と教科等との関連についての研究

◆ 家庭・地域社会との連携を図った実践に関する研究

◆ 体験的な活動との関連を図った道徳の時間に関する研究

◆ 道徳性や道徳の指導についての評価に関する研究

道 徳 各 教 科 等 の 研 究 の 進 め 方

道徳の研究 推進の視点

道 徳 の 研 究 の ポ イ ン ト

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42

3各教科等の研究の進め方

実践例 小学校 1 研究の全体構造図

2 研究の推進計画

【研究主題】

よさや違いを認め、よく考えて行動できる子どもの育成

~体験的な活動との関連を図った道徳の時間の充実を通して~

【目指す子ども像】

自らの体験から課題を見付け、進んで考える子ども

自分なりの思いを進んで表現し、考えを深める子ども

自分自身を見つめ、よりよい生き方を目指そうとする子ども

【研究仮説1】

・体験的な活動を生かし、子

どもの実態に即した道徳の

時間の年間指導計画を工夫

することにより、自ら課題

を見付け、進んで考えよう

とする意欲を高めることが

できるだろう。

【研究仮説2】

・心を揺さぶり、心情を深め

る資料や指導の手だてを工

夫することにより、自分の

思いを進んで表現し、考え

を深めることができるだろ

う。

【研究仮説3】

・体験や実践と結び付いた

活動を工夫することによ

り、自分自身を見つめ、

よりよい生き方を目指そ

うとする実践意欲を高め

ることができるだろう。

【研究内容1】

・道徳性の実態調査

・体験的な活動との関連

を図った道徳の時間の

年間指導計画の改善

【研究内容2】

・資料分析の在り方

・発問、板書の工夫

・指導方法の工夫

【研究内容3】

・体験との関連を図る工夫

・評価の工夫

・道徳ノートの活用

評価の工夫

3年計画の具体的な研究内容

1年次 2年次 3年次

・道徳性の実態調査 ・資料分析の在り方 ・事前・事後の体験との関連を図っ

・実態調査を踏まえた指導内容の重 ・発問、板書の工夫 た道徳の時間の指導の工夫

点化 ・多様な指導方法の工夫 ・子どもの変容を長期的に把握する

<授業研究> <授業研究> <授業研究>

・2学年のブロックごとに行う ・全学級で授業を行う ・公開研究会(6月)

・体験的な活動との関連を図った道

徳の時間の年間指導計画の改善 ・道徳ノートを活用した終末の工夫

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3 研究の実際

(1) 豊かな体験活動との関連を図った道徳の時間の年間指導計画の改善(研究内容1にかかわって)

(2) 資料分析の実際 (研究内容2にかかわって)

○研究仮説1を踏 まえ、道徳の時 間を1主題ごと にカード化し、 事前・事後の体 験等との関連を 含めた指導の流 れを示した年間 指導計画を作成 しています。

4年 3学期 2月 第2週 �31

主題名 大切な心のふるさと 内容項目 4ー(5)

中心資料 「ふるさとの行事氷まつり (自作資料) 」

ねらい 郷土に住む人々の願いや思い、伝統的な行事のすばらしさを感じ取 、 。 り 自分たちの住むふるさとを大切にしていこうとする心情を育てる

・地域行事「氷まつり」の体験日記等を収集しておく。 ・学級に「氷まつり」の写真を掲示し、雰囲気づくりをする。

学習活動と主な発問(○) 指導の要点 展 開 1 地域行事「氷まつり」の思い出を ◇写真や日記を生かして、多様に思い出 の 発表し合う。 すことができるようにする。 大 2 資料を読んで話し合う。 要 ○ あやさんはどんな気持ちで毎年 ◇自分の氷まつりでの体験を重ねて考え

冬を過ごしていたのだろう。 ることができるように補助発問を工夫 ○ 時間のたつのも忘れて、その場 する。 にたたずんでいたあやさんの気持 ちを考えよう。

3 あやさんに、自分のことを手紙に ◇一人一人が生活体験を綴りたくなるよ して伝える。 うに用紙を工夫する。

4 この後の郷土の行事などに期待を ◇教師の体験も生かして話す。 もつ。

事後の体験等

事前の体験等

・学校行事「みんなの手でミニ氷まつりをしよう」を楽しむ。

他 ・社会科の郷土についての 参考事項・評価等 と 学習 の ・特別活動(学校行事) 関 ・地域行事への参加 連

○主題名「本当の思いやり」<2ー(2)思いやり・親切>(第4学年) ○資料名「せきがあいているのに (道徳副読本) 」

本文の記述

①その人は白い杖をついてい る。そして、杖の先で電車 の床をコツコツと確かめる ようにしながら、ゆっくり 乗ってきた。ぼくは心配に なって、その人の方を見て いた。

◇白い杖の人を見 、「 」 たとき ぼく

はどうしてあげ たいと思ったで しょう。

今までもっている思いや りの概念から何かをしてあ げようという気持ちからの

。 発言が出されると思われる

考えさせたい登場人物の心情 主な発問 児童の実態

○席があいているのに立った ままでいる白い杖の人に対 するぼくの気持ちを引き出 す。 ・席に座らせてあげたい。 ・教えてあげよう。 ・何とかしてあげたい。

②お父さんは、その人のそば に行くと、耳もとで何か言 った。ちょっと離れている ので聞こえなかったが、そ の人の顔はぱっと明るくな

○席があいているのに立った ままでいる白い杖の人がど ういう気持ちでいるのか考 えさせる。 ・座りたい

◇白い杖の人はど うしたいと思っ たでしょう。

総合的な学習の時間での 体験や学習から、目の不自 由な人が一人で電車に乗っ ていることの大変さを感じ ている。

、 、 、 ○仮説2を踏まえ 登場人物の心の揺れや児童の実態を踏まえた資料分析を行い 発問を工夫することにより 道徳的価値について考えようとする意欲を高めたり、考えを深めたりすることができるようにしています。

・「氷まつり集会~灯そう心の火」を実施し、参加する。

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3各教科等の研究の進め方

4 授業研究の実際

○主題名 「すなおな心で」<1-(5)正直・明朗>(第2学年) ○資料名 けいちゃんのわすれもの ○児童の実態、資料分析(略) ○本時のねらい 嘘をついたときの嫌な気持ちを改めて認識することにより、正直に行動することのよさを知

り、明るく生活しようとする心情を育てる。 導入において、事前に実施した「うそをついて困った経験」についてのアンケート結果を取り ◎授業仮説 上げ、一人一人の思いを表出させることにより 「正直」について考えることへの意識化をはか 、 ることができるだろう。(研究仮説3との関連) 展開の前半において、心情を視覚で理解できるように工夫することにより、主人公の心の動き

を明確にし、その心情に共感することができるだろう (研究仮説2との関連) 。 ○本時の展開 ○授業記録の実際

1 うそをついたことで、

入 出す。 ○うそをついてしまった ことについて思い出し てみましょう。

2 資料を読んで主人公の 。 気持ちについて話し合う

○うそをついてしまった 後どんな気持ちになっ たでしょう。

、 ◎受話器を耳に当てた時 よしおくんはどんな気

○よしおくんはここでど のように話していたら よかったでしょう。

3 「正直」について考え る。 ○「正直」についてどの

。 ように考えていますか ○授業評価の実際

4 道徳ノートに正直に言 終 おうとする心と正直に言 末 えない心についてまとめ

る。

授業記録 ◇授業記録の視点 (導入) ・アンケートの活用は有効だったか。 ・ねらいについて意識化を図ることができたか。 (展開の前半) ・主人公の心の動きを明確にすることができたか。 ・主人公の心情に共感することができたか。 ◇記録(導入)

教師の発問等 児童の発言等 備 考 ・この前みんなにうそをつ いてしまった時のことを 聞いてみました 今日は ・アンケート結果 。 、 みんなにもありそうなこ を直接提示する とをいくつかまとめてみ のではなく 「み 、 ました。 ・ わあ あ ぼくもある んなにもありそ 「 」「 、 」 (アンケート提示) などの声 うなこと」とし

・どんな嘘をついてしまっ たことにより、 たのかな。 ・やったことある。 子どもはあまり ・お母さんに「宿題やった ・ぼくも、ばれないように 反省的にならず の?」と聞かれて「やっ 夜こっそりやった。 に自分の経験を た」と答えてしまった ・ 話していた。 。

・みんなたくさんお話しし ・まずいなあ。 てくれたけど、うそをつ ・もやもやして、本当のこ いちゃった後ってどんな とを言おうか、そしたら 気持ちか教えてくれる人 怒られるからどっちにし いるかな。 ようか迷った。

・ばれたらどうしようと思 ・ということは、気持ちの った。 ・ 正直」という言 「 中がもやもやしてどうし 葉の提示

。 ようかなあってことかな ・では今日はどんなことを ・導入を展開にど 勉強するかというと うつなげるか。 ( 正直な心で」と板書) 「 読めるかな。

1 授業者の反省 ・ねらいとする価値について焦点化して考えさせようとしたので 導入で 正 、 「 直」について板書をした。自分としてはよかったと思うが、皆さんから意 見をいただきたい。

2 協議 ①導入について A教諭~子どもは正直について真剣に考えていたが、導入の役割は「価値へ

の方向付け」だと思うので、違う方法はなかったかと感じた。 B教諭~できれば、導入ではねらいについてぼやっと子どもから出てきて、

展開の追究の中でより明確になっていくほうがよいのでは。 C教諭~どの程度まで子どもが気付けばよいのかが難しい。 ………

3 次回の授業研究の視点(導入に関して) ・導入から資料につなげる発問の工夫

主な学習活動 ◎中心発問 ○基本発問

過程

持ちだったでしょう。

後で嫌な思いをしたり、 困ったりしたことを思い

展開前半

展開後半

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各 教 科 等 の 研 究 の 進 め 方

特別活動の 研究推進の 視   点

特別活動の 研 究 の ポ イ ン ト

特別活動の研究は、好ましい人間関係の醸成、基本的なモラルや社会生活上のルールの習得、 協力してよりよい生活を築こうとする自主的、実践的な態度の育成を目指して進めることが大 切です。

特別活動の研究は次の視点を重視して進めることが大切です。

◇ 特別活動の目標と特質についての理解を深める。

◇ 特別活動の各内容の目標、特質、具体的内容についての理解を深める。

◇ 特別活動の各内容に応じた指導計画の作成や指導方法についての理解を深 める。

特別活動の研究のポイントには次のようなものがあります。

◆ 特別活動の全体計画の作成に関する研究

◆ 特別活動の指導計画の作成に関する研究

◆ 特別活動の各内容に応じた指導方法に関する研究

◆ 特別活動の各内容の関連を図った指導の在り方に関する研究

◆ 特別活動の評価の在り方に関する研究

◆ 教科等との関連を図った指導の工夫に関する研究

特 別 活 動

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3各教科等の研究の進め方

実践例 中学校 1 研究の全体構造図

2 研究の推進計画

【研究主題】

主体的に考え、正しく判断する生徒の育成

~学級活動における話し合い活動の充実を通して~

【目指す生徒像】

自分たちの生活について主体的に考え、よりよく問題を解決しようとする生徒

集団の一員としての自覚をもち、自主的に活動する生徒

【研究仮説1】

・学級活動において、話し合い活動

、 を積極的に取り入れることにより

よりよく問題を解決しようとする

態度を身に付けさせることができ

るだろう。

【研究仮説2】

・学級活動において、自分たちで決

めたことを実践する場を位置付け

ることにより、集団の一員として

の自覚をもち、自主的に活動する

力を育てることができるだろう。

【研究内容1】

○ 学級活動における話し合い活動

の工夫

・話し合い活動への意欲を高める 工夫 ・話し合い活動の活性化を図る指 導の工夫 ・話し合いのよさを実感させる場 の工夫

【研究内容2】

○ 集団活動などの実践の場の工夫

・学校行事や生徒会活動との関連 を図った学級活動の指導計画の 改善 ・互いのよさを認め合う場の工夫 ・自主的・実践的な態度を高める 教師のかかわりの工夫

3年計画の具体的な研究内容

1年次 2年次 3年次

○ 話し合い活動への意欲を高める ○ 話し合い活動の活性化を図る指 ○ 話し合いのよさを実感させる場

工夫 導の工夫 の工夫

○ 学校行事や生徒会活動との関連 ・自分の考えをもつ場の工夫 ○ 自主的・実践的な態度を高める

を図った学級活動の指導計画の改 ○ 互いのよさを認め合う場の工夫 教師のかかわりの工夫

善 ・小集団による話し合いの工夫 ・評価の工夫

・生徒会活動との関連の明確化

・話し合い活動に関する実態調査 ・議事の進め方の指導 ・自己評価、相互評価の工夫

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3 研究の実際

(1) 話し合い活動に関する生徒の実態把握(研究内容1にかかわって)

(2) 学校行事や生徒会活動との関連を図った学級活動の年間指導計画(研究内容2にかかわって)

○研究仮説1を踏 まえ、話し合い 活動について 「意欲」や「参加 態度」「集団の 雰囲気」などの 観点から調査を 実施しています。

回答の状況(%) 0 50 100質 問 ① ② ③

1 あなたは話し合いが好きですか。

2 あなたは自分から話し合ってほしい 。 ことなどを提案したことがありますか

3 次の学級会活動でどんなことを話し 合うか知っていますか。 4 あなたは自分の考えをきちんともっ て学級活動に参加していますか。 5 あなたは話し合い活動で自分の意見 を自由に言えますか。 6 他の人の意見に文句をいうことがあ りますか。 7 話し合い活動で意見を言う人が決ま っていると思いますか。 8 意見を言わなかった人は、決まった ことを実行していますか。 9 話し合いで決まったことは学級でよ く守られていますか。

① ② ③

学級活動の年間指導計画(第2学年) 学校行事(◆)や生徒 月 目標 題材名 指導のねらい 活動内容 評価

規準 会活動(◇)との関連 (時数) (1) (2) (3)

○新しい学級生活の ・2年生としての自覚 ◇認証式 スタート(3) をもち、よりよい学 ◇前期委員会の ( ) 略 ・学級目標、学級 級にするための組織 発足 ◎ ○ 組織づくり や係を決めることが

できるようにする。 ○2年生としての自 ・2年生としての自覚 覚(2) を深め、学習への取

○ ◎ ・学習方法の工夫 組等を見直し、具体 ・選択教科の選択 的な目標や実践事項

を決めることができ るようにする。

○2年生の生活設計 ・将来の夢について考 ◆健康診断 (2) え、その実現に向け ◇生徒総会準備 ・自分の進路と自 て必要なことを理解

するとともに、学ぶ ◆職場見学 己理解 ○ ◎ ことや働くことの意 義を考えることがで きるようにする。

○学級生活の点検 ・学級の諸問題につい と改善(2) て解決の方策を自分 ◆宿泊学習 ・学級の諸問題 たちで考え、生活の ◇委員会活動の ◎ ○ ・学級生活の向上 向上に努めることが 充実

できるようにする。

○学級生活の充実 ・自分たちの生活をよ ◇前期の反省 (2) りよいものにするた ◇学校祭の準備

◎ ○ ・よりよい学級生 めの改善の視点を見 活のために 付け、実現に向けた

取組内容を考えるこ 。 とができるようにする

○学校生活と協力 ・学校生活の向上のた ◆学校祭

10(3) めに自分たちででき ◇生徒会役員選 ・学校生活の向上 ることを考え、実践 挙 ◎ ○ ・生徒会活動への しようとすることが ◇後期委員の選 積極的な参加 できるようにする。 出

自 治 的 組 織 の 確 立

役 割 と 責 任 の 自 覚

組 織 活 動 の 充 実

○研究仮説2を 踏まえ、学級活 動で話し合っ たことが実践 に生かされる よう、学校行事 や生徒会活動 との関連を図 った話し合い 活動を位置付 けています。

すき どちらでもない きらい

たくさんある 少しある ない

知っている 時々知っている 知らない

きちんともっている 時々もっている もっていない

言える 時々言える 言えない

言う 時々言う 言わない

決まっている どちらでもない 決まっていない

している 時々している していない

よく守られている 時々守られている 守られない

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3各教科等の研究の進め方

4 授業研究の実際

○題材名 学級生活の充実 第2学年〔 1)学級や学校の生活の充実と向上に関すること〕 ( ○題材の目標 2学期の学級の生活の充実と向上を目指し、積極的に考え、仲間と協力して活動に取り組むこ

とができる。 ○題材の評価規準、題材の指導計画 (略) ○本時の目標 議題に対する自分の考えをもち、積極的に話し合いに参加しようとしている。(関心・意欲・態度) ◎授業仮説 学級活動において、小グループによる話し合いを取り入れたり、学級活動ノートを工夫したり

することにより、自分たちの問題について積極的に考える意欲を高めることができるだろう。 (研究仮説1との関連)

○本時の展開(2/2時間) ○授業記録の実際 主な学習活動 過程

1 開会の言葉(議長) 2 議題の提案(計画委員会)

学級のみんなが仲良く できる行事を考えよう

3 協議の進め方の確認 (議長)

4 各班からの提案 ・それぞれの班からみん なで楽しめる行事につ いて提案をする。

5 提案についての協議 ・それぞれの提案内容に ついて自分の考えをも つ。

・小グループで各グルー プの意見の妥当性につ いて話し合う。

行事を決定する。

授業記録(主な発言内容と種類) 発 発言の種類 言 提 要 疑 確 賛 反 希 不

発言内容

者 案 求 問 認 成 対 望 満 (4班の話し合いを抽出)

班長 ・各班から出された意見について、 質問や意見はありませんか。

C1 ・1班の「バスケットボール大会」 ○ は、得意な人とそうでない人がい るので、やめたほうがいいと思い ます。

C2 ・ぼくもそう思います。 ○ C3 ・チーム分けを工夫したら楽しくで ○

きると思います。 C4 ・3班の「ミニバレー大会」と合わ ○

せて、どちらか好きな方を選んで やったらいいと思います。

C3 ・それだとみんなでできないのでだ ○ めだと思います。

C5 ・ぼくはスポーツが嫌いなのでどち ○ ○ らもいやです。

◆学級活動ノート

○月○日 学級活動ノート 氏名 1 それぞれの班の意見について (1) 疑問に思ったこと

(2) いいなと思ったところ

2 班の話し合いの後の自分の意見

3 今日の学級活動を振り返って (1) 自分の考えをもてましたか (ABC) (2) 班の話し合いで自分の考えを言えましたか (ABC)

◆子どもの変容を見取る継続的な評価 数値は%

評価内容 評価 第1回 第2回 第5回 第6回 考 察

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

・学級活動ノートの活用により、自分  の考えをもつことができるようにな  ってきた。 ・小グループでの発言はできるが全体  で話せない子どもがいる。

・友だちの考えと自分の考えを比べて  立場を明確にすることが不十分であ  る。 ・議題によって安易な方法を考えたり  選んだりする傾向がある。

・自分たちの生活と照らして考える力  は身に付いているが、変容があまり  みられない。

自分の考えを言 う

友だちの考えに 対する立場を明 確にする よりよい案を考 える

実際にできるか どうか考える

(6)

67 20 13 50 25 25 58 30 12 55 25 20 70 20 10

52 18 30 45 30 25 45 37 18 45 25 30 65 20 15

30 25 45 27 37 36 34 30 36 45 30 25 67 23 10

A B C A B C A B C A B C A B C

35 35 30 28 38 34 42 35 23 50 30 20 70 25 5

6 全体の意見を確認し、

7 協議のまとめ

8 自己評価

課題把握

課 題 追 究

ま と め

自分の考えをも

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各 教 科 等 の 研 究 の 進 め 方

総合的な学 習の時間の 研究推進の 視点

総合的な学 習の時間の 研究のポイ ント

総合的な学習の時間の研究は、自ら課題を見付け、自ら学び自ら考え、問題を解決する力など を育てること、また、学び方やものの考え方を身に付け、問題解決に向けての主体的、創造的な 態度を育成すること、自己の生き方について考えることができるようにすることなどを目指して 進めることが大切です。

総合的な学習の時間の研究は次の視点を重視して進めることが大切です。

◇ 総合的な学習の時間の趣旨やねらいについて理解を深める。

◇ 総合的な学習の時間の学習活動について理解を深める。

◇ 総合的な学習の時間の学校の教育活動全体の中での位置付けについて理解 を深める。

◇ 総合的な学習の時間と教科等との関連について理解を深める。

総合的な学習の時間の研究のポイントには次のようなものがあります。

◆ 総合的な学習の時間の全体計画の作成に関する研究

◆ 総合的な学習の時間の学校における目標及び内容、育てようとする資質・能

力に関する研究

◆ 総合的な学習の時間の単元構成に関する研究

◆ 体験的な学習や問題解決的な学習のを重視した学習活動に関する研究

◆ 教科等との関連を図った学習活動に関する研究

◆ 学年間や学校間の接続に関する研究

◆ 家庭・地域社会との連携を図った実践に関する研究

総 合 的 な 学 習 の 時 間

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3各教科等の研究の進め方

実践例 中学校 1 研究の全体構造図

2 研究の推進計画

【研究主題】

思いや願いをもって追究し、自分を高める生徒の育成

~よさや可能性を生かした総合的な学習の時間の工夫を通して~

【目指す子ども像】

主体的に課題を見付け、追究しようとする生徒

自分なりの方法を見付け、課題を解決しようとする生徒

自分の思いや願いを伝え合い、学び続けようとする生徒

【研究仮説1】

・教科等との関連を図った指

導計画を作成し、課題設定

を工夫することにより、自

ら課題を見付け、追究しよ

うとする意欲を高めること

ができるだろう。

【研究仮説2】

・教科等で培った力を生かす

ことができる体験的な活動

を位置付けた単元構成を工

夫することにより、自分な

りの方法を見付け、課題を

解決する力を育てることが

できるだろう。

【研究仮説3】

・評価の場面や方法を工夫

することにより、自分の

思いや願いを伝え合い、

学び続けようとする意欲

を高めることができるだ

ろう。

【研究内容1】

・身に付けさせたい資

質・能力の明確化

・各教科等との関連を図

った指導の工夫

【研究内容2】

・単元構成の工夫

・個に応じた指導の充実

・体験的な活動の工夫

【研究内容3】

・学習の経過を記録する工夫

・自己評価や相互評価の工夫

3年計画の具体的な研究内容

1年次 2年次 3年次

・総合的な学習の時間で身に付けさ

せたい資質・能力の明確化

・各教科の学習内容の共通理解

・各教科等との関連の視点の明確化

・総合的な学習の時間の全体計画の

改善

・総合的な学習の時間の単元構成に

・課題追究の充実につながる表現、

・追究活動を深める教師のかかわり

ついての共通理解

交流活動の工夫

の工夫

・学習の経過を振り返る記録の工夫

・学ぶ意欲を高める自己評価や相互

評価の工夫

・研究のまとめと次の研究への方向

付け

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(2) 単元構成の実際 (研究内容2にかかわって)

○単元構成のモデル

過 程 学 習 活 動 指 導 の 工 夫

課 題 発 見

課 題 把 握

課 題 追 究 1

課 題 の 見 直 し

課 題 追 究 2

課 題 解 決 ・ 発 展

○ オ リ エ ン テ ー シ ョ ン ○ 事 象 と の 出 会 い ○ 事 象 か ら イ メ ー ジ を 広 げ る ○ 課 題 を 見 付 け る

○ 見 付 け た 課 題 を 焦 点 化 す る ○ 課 題 を 把 握 す る ○ 解 決 へ の 見 通 し を も つ

○ 学 習 計 画 を 作 成 す る ○ 既 習 事 項 を 生 か し 、 自 分 で 考 え た 方 法 で 課 題 解 決 に 取 り 組 む

○ 中 間 交 流 会 を 行 い 、 課 題 を 見 直 し た り 、 解 決 の 方 法 を 改 善 し た り す る ○ 課 題 解 決 へ の 意 欲 を も つ

○ 課 題 に つ い て さ ら に 考 え を 広 げ た り 深 め た り す る

○ 課 題 解 決 に 必 要 な 情 報 を 取 捨 選 択 す る

○ 学 習 の 成 果 を 表 現 す る ○ 学 習 を 振 り 返 る ○ 新 た な 事 象 に 働 き か け る

◇ 他 教 科 等 の 学 習 を 生 か し た 事 象 を 提 示 す る

◇ イ メ ー ジ を 広 げ る た め ウ ェ ビ ン グ な ど を 活 用 す る

◇ ゲ ス ト テ ィ ー チ ャ ー を 活 用 し 、 課 題 に 対 す る 興 味 ・ 関 心 を 高 め る

◇ 学 習 計 画 を 交 流 す る 場 面 を 位 置 付 け 、 互 い の よ さ を 生 か す こ と が で き る よ う に す る

◇ 新 た な 課 題 に 気 付 く こ と が で き る よ う 教 師 の か か わ り を 工 夫 す る

◇ 課 題 追 究 が さ ら に 深 ま る よ う 、 地 域 と の 連 携 を 図 っ た 体 験 的 な 活 動 を 工 夫 す る

◇ 学 習 の 成 果 を 相 互 評 価 し 、 こ れ か ら の 学 習 へ の 意 欲 化 を 図 る 。

○研究仮説2を踏 まえ、学校とし ての総合的な学 習の時間の単元 構成のモデルを 作成しています。

3 研究の実際

(1) 教科等との関連を明確にした総合的な学習の時間の目標設定(研究内容1にかかわって)

○研究仮説1を踏ま え、教科等との 関連を明確にし た目標や内容を

。 設定しています

目 標 内 容 教科等との関連

「自然と人間」

年 ○ 地域の施設での体験活動を通 ◇ 自分自身のよさを知り、すべて ◇道徳 して、幼児や高齢者、障害のあ の人の存在の大切さを実感する。 2-(2)

福祉 る人たちを支える人々の思いや 「思いやり」 ・ 温かさに触れ、自分の生き方を ◇身近な福祉問題について認識を深 3ー(2) 健康 考えることができる。 め、自分たちの生活とのかかわり 「生命尊重」

○ 健康についての認識を深め、 について考える。 ◇保健体育 生命の大切さや生きていること 「健康な生活」 の素晴らしさを理解することが ◇ 福祉問題の解決について考え、 できる。 実践しようとする。

○ 勤労の尊さや意義を理解し、 ◇ 身近な職業と生活の関連につい ◇特別活動 自ら課題を見付け、自分の力で て知り、働くことの大切さを実感 学校行事

2 勤労 解決しようとする態度を身に付 する。 「勤労生産・ ・ けることができる。 奉仕的行事」

年 生産 ○ いろいろな職業に携わる人と ◇ 働くことの苦労や工夫、喜びや の交流を通して、人間としての 素晴らしさを知り、働くことの意 ◇特別活動 生き方を学び、充実した生き方 義について考える。 学級活動 を追究することができる。 「進路」

◇自己の適性や自分の将来について 考え、よりよく行動する。

学年 テーマ ○ 地域の自然と触れ合ったり、 ◇ 地域の自然と積極的にかかわ ◇道徳 自然を守り育てている方々の思 り、自然の大切さを実感する。 3-(1) いや願いを理解したりすること 「自然愛護」

自然 により、地域の自然の素晴らし ◇ 環境問題と自分たちの生活との ◇理科 ・ さや問題点に気付き、自分の生 かかわりについて認識を深め、自 第2分野 環境 き方を考えることができる。 然との共存について考える。

○ 身の回りの環境に関する課題 1 に気付き、環境問題の解決に向 ◇環境問題の解決に向けた方法を考

けて実践することができる。 え、実践しよう とする。

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3各教科等の研究の進め方

4 授業研究の実際

○子どもの変容を長期的に把握する授業記録 主な学習活動 生徒の自己評価 教師の記録 研究とのかかわり 過程

1 事象と出会う。 ◇今まで知らなかった働 ○講話を通して職業に ・単元構成の工夫 課 ・地域で働く人の講話を聞く くことの大変さを知る ついて多面的に捉え (研究内容2) 題 2 働くことについてイメージ ことができた。 ていた。 発 を広げる。 ◇働くことについていろ ●一人でウェビングを 見 ・ウェビングで、働くことに いとろ想像するのが難 行うのは難しかった

ついてイメージを広げる しかった。 ようだ。 3 課題を明確にする。 ◇自分の就きたい職業が ●道徳や特別活動との ・各教科等との関

( ) 課 ・調べてみたい職業を決める 決まっていないので、 関連を図り、働くこ 連 研究内容1 題 4 解決の見通しをもつ。 何について調べたらよ との意義などについ 把 ・他教科等との調べ学習を思 いか迷った。 て学習する機会が必 握 いだし、職業について調べ 要である。

る方法を考える 課 5 学習計画を立てる。 ◇ ○学習計画を交流する ・単元構成の工夫 A君は仕事をしている人にア 題 ・課題追究の方法を明確にし ことにより、自分の (研究内容2) ンケートをお願いする計画を 追 た学習計画を立てる 指導計画の改善に生 立てていた。インターネット 究 6 自分なりの方法で課題追究 かそうとしていた。 や本だけでなく実際の声を聞

くのがいいと思った。 1 に取り組む。 課 7 職業について追究したこと ◇Bさんは、調べたこと ●調べたことをただ模 ・単元構成の工夫 題 を交流する。 について事実と意見に 造紙に写しただけの (研究内容2) の 8 新たな課題を見付け、職場 分けて発表していた。 発表になってしまっ ・個に応じた指導 見 体験への意欲をもつ。 た。 の工夫 直(研究内容2) し 課 9 職場体験に向けて、新たな ◇調べてもわからなかっ ○課題追究1の学習を ・学習の記録化 題 課題を見付ける。 たことを体験先で実際 生かして新たな課題 (研究内容3) 追 ・職業について知りたいこと に聞いて解決したいと を見付けようとして 究 を明確にする 思う。 いた。 2 10 職場体験の準備を行う。

・体験先に依頼文を書く

○評価結果の考察と研究内容の見直し

評価結果の考察 <成果> ・課題発見の場面で、ゲストティーチャーによる講話やイメー ジを広げる活動を位置付けることにより、課題設定の充実に つながる。

・調べ学習の結果だけでなく、設定した課題や作成した学習計 画を交流する場面を位置付けることにより、よりよい方法で 課題を解決しようとする意欲が高まった。

<課題> ・収集した情報の中から必要なものを選択し、まとめとして再 構成する力が全体的に身に付いていない。

<考察> ○学習過程の各段階での工夫について、研究内容に位置付ける 必要がある。

○学習過程の各段階のねらいに応じた教師のかかわりを工夫す る必要がある。

研 究 内 容 の 見 直 し

【研究内容2】 ・単元構成の工夫 ・個に応じた指導の充実 ・体験的な活動の工夫

1年 次 に 設 定 し た 研 究 内 容

【研究内容2】 ・課題意識を高める工夫 ・追究活動を充実させる表現、 交流活動の位置付け

・学習過程の各段階に応じた教 師のかかわりの工夫

・地域とのかかわりを深める体 験的な活動の工夫

改 善 し た 研 究 内 容

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53

教 育 研 究 の 5 つ 方 法 コ ラ ム

教 育 研 究 を 大 別 す る と 、 次 の 5 つ の 方 法 に 分 け る こ と が で き ま す 。 特 に 授 業 研 究 は 、 授 業 そ の も の を 対 象 に し て い る た め 、 子 ど も に 密 着 した研究を進めることができ、校内研究において重要な役割を果たします。

研 究 方 法 特 徴

教 育 理 論 を 裏 付 け る た め に 、 文 献 を 基 理 論 的 研 究 に し て ま と め る 研 究 の 方 法

教 育 実 践 に 役 立 つ 教 材 や 教 具 の 開 発 を 教 材 開 発 研 究 行 う 研 究 の 方 法

調 査 を 実 施 し 、 そ の 結 果 を 分 析 ・ 考 察 調 査 研 究 す る 研 究 の 方 法

収 集 し た 資 料 を 基 に 因 果 関 係 を 追 究 し 、 事 例 研 究 指導方法や課題解決の手立てを検討する方法

仮 説 を 立 て 、 授 業 実 践 を 通 し て 検 証 し 、 授 業 研 究 授 業 改 善 の 方 策 を 導 き 出 す 方 法

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資 料

先進的な校内研究に学ぶ

中富良野町立本幸小学校 ・・・・・・・54

旭川市立東五条小学校 ・・・・・・・60

旭川市立明星中学校 ・・・・・・・66

平成18年度 北海道公立学校教育課程実践研究成果報告集

全文掲載校の実践から

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54

中富良野町立 本幸小学校

複式学級を有する小規模校の実践

校内研究を通して、教育課程の改善充実に 取り組んでいます。

研究内容が具体化されているため、講じた 手だてや工夫も検証可能です。

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55

めざす子ども

学習指導

自ら考え 自らの学びを 深め高めていく子どもの育成 ~確かな書写力を培い、生活に生かす書写活動のあり方を求めて~

中富良野町立本幸小学校 学 級 数 3

(校長 小原 正作)

Ⅰ�研究主題設定の理由 今、学校教育では、「心の教育」や「確かな学力」の充実を図るとともに21世紀をたくましく生き抜

くことのできる児童の育成が求められている。そのためには、基礎的・基本的な内容を厳選し、個に応じ

たきめ細やかな指導や、内容の理解を確実にするための環境や場を設定する必要がある。

本校では、過去3年間、「仲良く助け合い、進んで生き生きと活動する子供の育成」をテーマに「特別

活動」を窓口に研究を進めてきたその結果様々な体験活動を通して児童の他を優しく思いやる心

「自然を大切にする心」、「進んで実践する態度」が育ってきた。

しかし、各教科においては、与えられた課題には取り組むが、自ら課題を見付ける力、自分の思いや考 、。 えを生かし創意工夫を凝らして課題解決に努める意欲や能力が十分に育っていないという現状があった

そこで、国語科「書写」を窓口にして教科の研究に取り組み、上記の課題を解決することを目指して本

研究主題を設定した。

Ⅱ�研究の全体構造

研究内容1

評価を生かした指導の工夫

し方

(3)児童による評価と指導への生か

し方

研究内容2

学びを深める学習活動

(1)課題解決的学習の工夫

(2)複式の書写指導における学習

過程の工夫

研究内容3

生活に生かす書写

(1)硬筆・毛筆の関連を図る工夫

(2)書写と他教科・他領域との関連

を図る工夫

(3)書写を生活に生かす環境の工夫

仮説1

評価を生かす指導を工夫すること

により,自ら課題を持ち意欲的に取

り組む子になるだろう

自 ら 考 え 自 ら 学 び を 深 め 高 め て い く 子 ど も の 育 成

~確かな書写力を培い,生活に生かす書写活動のあり方を求めて~ 研 究 主 題

学校の教育目標 総括目標 自 分 も 人 も 大 切 に す る 本 幸 の 子 の 育 成

*明るく思いやりのある子(徳育) 具体目標

*よく考え,進んでやりぬく子(知育)

*たくましく元気な子(体育)

仮説2

学習活動を工夫することにより,

自分の考えを持ち,学習を深め高め

ていける子になるだろう

仮説3

生活に生かす場を工夫することに

より,学習の成果を日常に役立てよ

うとする子になるだろう

自ら課題をもち、意欲的に

取り組む子

自分の考えをもち、深め高

めていける子

書写の学習成果を日常に役

立てようとする子

中富良野町立本幸小学校

研究仮説に位置付け

た手だてをさらに具体

化し、全員が共通に取

り組む内容を明確にし

P17 ています。

(1)各学年における指導事項の明確化

(2)教師による評価と指導への生か

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56

中富良野町立本幸小学校

校内研究を通して、

国語科書写における指

導計画の改善・充実を

図っています。

P2

校内研究の取組その

ものが、教科の目標達

成に結び付くようにし

ています。

P23

Ⅲ�研究の概要 1 評価を生かした指導の工夫(研究内容1) (1)各学年における指導事項の明確化

本校では2学年ごとに示されている書写に関する指導事項を具体化するとともに、各学年の配当漢

字や文字の特徴を踏まえて扱う文字(題材)を検討し、指導事項の系統表を作成した。

○指導事項 ・具体化した指導事項 ( )題材 【実践例1】指導事項と題材の系統表 低学年 中学年 高学年

書写全体の内容

○姿勢や用具の持ち方を正しくして丁寧

に書くこと。

・よい姿勢、よい持ち方

○点画の長短、接し方や交わり方などに

注意して、筆順に従って文字を正しく

書くこと。

・画の長短(「土」「小」「夕」等)

・画の方向(「円」「白」「色」等)

・書き出すところ(「千」「水」等)

・文字の形(「田」「二」「目」等)

○毛筆を使用して点画の筆使いや文字の ○毛筆を使用して、点画の筆使いや文字  の組立て方を理解しながら、文字の形  を整えて書くこと。

・筆順や字形(成長) ・文字の組立て方(左右の組立て「土  地」、上下の組立て「岩山」、 ・文字の大きさ(「会う」「日記」) ・字配り(「考える子」「しらかば」「温  かい心」「わき水」「思いやり」「羽

組立て方に注意しながら文字の形を整

えて書くこと。

・基本的な筆使い(横画「一二」、縦  画「土」、はらい「人」、折れとはね  「力」、平仮名「つり」、片仮名「ビ  ル」、結び「はす」) ・画の長短(「里」) ・画の付き方・交わり方(「作文」)

(2)書写の年間指導計画の改善

作成した指導事項の系統表を踏まえて、書写の年間指導計画を改善した。このことを通して指導事

項をバランスよく取り上げたり、他教科等との関連を図り、書写の能力を日常生活に生かす視点を明

確にして指導を行ったりすることにつながった。

【実践例2】他教科等との関連を図った書写の年間指導計画の作成 ○第5学年書写の年間指導計画

時 ○単 元 名 月 評 価 規 準

指導 題 材

数 事項 ・目   標

4 1

ア ○学んだことを確かめよう よい姿勢やよい持ち方で書こう (関) ・よい姿勢やよい持ち方を意 としている。 識して、正しく書こうとす ることができる。

○文字の形を整えて書こう 「成長」 筆順や文字の組立て方を理解し 運動会のテーマ看 (関) ・正しい筆順と点画の接し方 ようとしている。 板をつくろう。 の関係を理解して字形を整 正しい筆順と点画の接し方に注 (特別活動) (言) えて書くことができる。 意して書いている。 ○文字を調和させて書こう 「会う」 漢字と平仮名の形や大きさの違 老人クラブの方に (関) ・漢字と平仮名の大きさの違 いや余白の取り方などに注意し お礼の手紙を書こ いを理解して、文字の中心 て書こうとしている。 う。 をそろえて書くことができ 字と平仮名の大きさの違いを理 (総合的な学習の (言) る。 解して、文字の中心をそろえて 時間) ○文字を調和させて書こう 考える子 毛筆の学習を生かし硬筆で字 朝日小学校のお友 「 」 (関) ・漢字と平仮名の大きさの違 配りよく書こうとしている。 だちに手紙を書こ いや行の中心と行間の取り 漢字と平仮名の字形や大きさの う(国語) (言) 方に気を付けて書くことが 違いを理解し字配りよく書いて できる。 いる。 ○学んだことを生かそう ポスター 相手に読みやすい書き方を工 卒業式の取組 「 」 (関) ・様式に合わせて字配りよ 作文用紙 夫しようとしている。 (特別活動) 「 」 く書くことができる。 「罫紙」 様式に合わせて書いている。 (言)

系統表を作成することにより、指導事 項を明確にして単元を構成したり、前 学年までの学習を生かして指導を行っ たりすることにつながった。

他教科等との関連を明確にし、 書写で学んだことを教科の学習 や日常生活に生かすことができ るように工夫しています。

指導事項の具体化に当たっては、 児童にも学習課題として示すこと ができるように分かりやすい言葉 で表すように工夫した。

「文字の配列」の指導に当たって は、様式を多様にすることによ り、日常生活に書写力を生かすこ とができるように工夫した。

他教科等との 関    連

指導事項を踏 まえて、「国 語への関心・ 意欲・態度」 「言語につい ての知識・理 解・技能」の 2観点につい て評価規準を 設定していま す。

身に付けさせたい力を明確にするため に、指導事項の欄を設けています。

読みやすく書くこと。 ・行の中心や字間・行間・余白に気を 付け、字配りよく、いろいろな形式 で書く(ポスター、詩、寄せ書き等)

・文字の組立て方(「板」「国 」等) ・筆順(中が先「氷」、外が先「間」、 つらぬく縦画は最後「申」等)

○文字の組立て方に注意して、文字の形 を整えて書くこと。

○文字の形、大きさ、配列などを理解し、

○文字の大きさや配列に注意して書くこ と。

・漢字と漢字、漢字と仮名、仮名と。 仮名の相互のつり合い

主として硬筆の内容

5 3 イ

9 4

2 3

ア ウ

3 2 ア イ ウ

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57

中富良野町立本幸小学校

授業中の評価ととも

に事前・事後の評価を

通して、研究仮説の検

証を進めています。

P19

研究内容を位置付け

た指導計画を作成し、

研究内容を踏まえて授

業づくりを行っていま

P24 す。

◆自己評価◆ ワークシートを 工夫し、学んだ成 果を実感できるよ うにしています。

(3)指導に生かす評価の工夫

本校では、指導事項を踏まえて授業前の評価を充実させ、指導内容や指導方法の改善に生かすよう

にした。また、授業前の評価結果から指導のポイントを明らかにし、課題解決の見通しの場面で意識

させることにより、目的をもって学習を進めたり、本時の目標に対する学習状況を児童自身が振り返

ったりすることができるように工夫した。

【実践例3】第4学年「文字の形を整えて書こう」 題材「左右」

2 学びを深める学習活動(研究内容2) (1)課題解決的学習の工夫

本校では、書写の授業においても、児童が見通しをもって言語活動に取り組み、学んだ実感を味わ

うことができるよう、課題解決的な学習を取り入れている。

【実践例4】第5学年 ○単元名文字を調和させて書こう ○単元の目標漢字と平仮名の形や大きさの違いや余白の取り方などに注意して書くことができる。

(国語への関心・意欲・態度) 漢字と平仮名の大きさの違いを理解して、文字の中心をそろえて書くことができる。 (言語についての知識・理解・技能)

○単元の指導計画(4時間扱い)

評 価 規 準 時 学 習 活 動

言語についての知識・理解・技能 国語への関心・意欲・態度

文字の形の特徴を生かして書こ 1 ○漢字と平仮名の大きさの違いに気を付けて毛筆で

うとしている。 「考える子」を書く。

漢字よりも平仮名を小さく書いたり、中心に気を付け 2 ○漢字と平仮名の大きさの違いや行の中心に気を付 漢字と平仮名の大きさを考えて

たりしながら書いている。 けて毛筆で「考える子」を書く。 書こうとしている。

行の中心を考えて書こうとして 文字相互の大きさに気を付けて書

行の中心をそろえて書いている。

文字の形を理解して書いている。

いている。 3 ○文字の大きさや形に気を付けて硬筆で詩を書く。

いる。

用紙の特徴を生かして書こうと 4 ○文字の大きさや文字の形、配列に気を付けてポス

している。 ターを書く。

・「左」と「右」の筆順の違いは理解している。

・「左」の一画目は長すぎで「右」の二画目は短い。

・文字の中心がずれている。

・文字の外形を意識していない。

指 導 の 工 夫

○評価を生かした指導の工夫

児童の学習活動 教師の働きかけ 過程 解 ○解決の見通しをもつ。

通 ●様々な形の枠を用意し、外 。 し 形を意識できるようにする

○ 「 左 」 と 「 右 」 の 外 形 の 違 い ( 縦 長 と 横 長 ) に 注 目 す る 。 ○ 文 字 の 中 心 に 気 を 付 け て 書 く 。 ○ 始筆の位置に注目する。

授業中の評価

授業前の評価 児童による評価

○課題解決のポイント ・正しい筆順と点画の長さを意識する。 ・文字の外形と中心に気を付けて書く。 ・長さを意識して「はらい」の運筆を行う。

授 業 前 の 評 価 に つ い て は 、 児 童 の 日 常 の ノ ー ト や 事 前 調 査 か ら 、 単 元 の 指 導 事 項 や 扱 う 文 字 に つ い て ど の よ う な 課 題 が あ る の か を 明 確 に し て い ま す 。

授 業 前 の 評 価 を 踏 ま え 、 児 童 に 具 体 的 に 課 題 と し て 示 す ポ イ ン ト を 明 確 に す る と と も に 、 ワ ー ク シ ー ト の 工 夫 や 外 部 講 師 の 活 用 な ど 指 導 方 法 に つ い て も 検 討 し て い ま す 。

授 業 中 の 評 価 に つ い て は 、 評 価 規 準 に 基 づ き 行 う が 、 児 童 に 課 題 解 決 の ポ イ ン ト を 示 し 、 自 己 評 価 や 相 互 評 価 に 生 か す こ と が で き る よ う に 工 夫 し て い ま す 。

◆相互評価◆ 黒板に学習の過程を 掲示し、互いのよさに 気付くことができるよ うにしています。

単 元 の ま と め の 段 階 で は 、 学 ん だ こ と を 実 際 の 場 面 で 生 か す こ と が で き る 言 語 活 動 を 位 置 付 け る よ う に し て い ま す 。

Page 66: 校内研究の 充実のために · 2011-03-11 · 2 1 校 内 研 究 の 基 本 的 な 考 え 方 校内研究は、学校の教育目標の具現化を目指し、教師が共同で取り組む研究活動であり、教育

58

めの見通し(具体的な指導事項)に気付 くことができるようにする。

識をもちながら練習できるようにする。 ●書いた作品を黒板に掲示し、常に課題意

●見通しで確認をした指導事項を基に評価

するよう視点を明確にする。

中富良野町立本幸小学校

研究内容に沿った授

業づくりを通して、教

師一人一人の工夫や新

たな手だてが共有化さ

P21 れています。

指導案の本時の展開

に、研究内容の手だて

を位置付け、授業研究

を進めています。

P23

○本時の展開(2/4時間)

過程 課 題 把 握

見 通 し

課 題 解 決 ●指導事項を踏まえて、教材等を工夫する。

練習に取り組む。 漢字よりも平仮名を小さく書 □ いたり、中心に気を付けたり

ま ○毛筆でまとめ書きをする。

○課題解決に向けて、自分に合った方法で

○自己評価、相互評価をする。 と

(2)複式の書写指導における工夫

① 学習過程の工夫

本校は、各学年の児童が1~2名の複式学級である。学習過程の中に、交流の場面を意図的に設定

することにより、友だちの書き表し方のよさを知り、認める姿勢を育て、自分とは違ったよさを感じ

ることができるように学習過程を工夫している。

5年生 6年生 過程 ○提示された文字から課題を見付ける。 ○提示された文字から課題を見付ける。

課 題 把 握 ○解決の見通しをもつ。 ○解決の見通しをもつ。

○相互評価をする。 ○相互評価をする。 ま と め る

②学びを深める学習コーナーの工夫

課題解決の場面で児童が自らの課題に応じた練習方法を選択し、学習を進めることができるよう、

ワークシートやパソコンなどを活用した学習コーナーを設けた。また、地域の協力を得て、「名人コ

ーナー」を設け、可能な限り実際の運筆などを見ることができるようにした。

会 う

い温

心か

文字の大きさに気を付け

て,書けるようになろう

漢字とひらがなの大きさ

に気を付けて,字配りよ

く書けるようになろう

名人コーナー 半紙コーナー パソコンコーナー

「 は ね 」 が う ま く

で き な い の で 教 え

て く だ さ い 。

は ね る 前 に 一

度 止 め て み よ

う ね 。

ぼ く は 書 き 出 し の 位 置 に 気 を 付 け

て 書 け る よ う に 練 習 す る よ 。

パ ソ コ ン で ノ ー ト の 字 を 大 き く し

て 見 て み よ う 。

課 題 把 握 の 場 面 で 2 学 年 の 交 流 を 位 置 付 け 、 上 学 年 の 児 童 が こ れ ま で の 学 習 を 想 起 し な が ら 課 題 解 決 へ の 見 通 し を も っ た り 、 下 学 年 の 児 童 が 上 学 年 の 児 童 の 発 言 か ら 課 題 を 見 つ け た り す る こ と が で き る よ う に 工 夫 し て い ま す 。

ま と め の 段 階 で 相 互 評 価 を 行 っ て か ら 硬 筆 に よ る ま と め 書 き を 行 う こ と で 、 毛 筆 で 学 ん だ こ と を 硬 筆 に 生 か そ う と す る 意 欲 を 高 め る よ う 工 夫 し て い ま す 。

漢 字 は ひ ら が な よ り 大 き く 書 く よ 。

「 温 」 や 「 か 」 は 正 方 形 の 形 に 書 く よ 。

「 会 」 と 「 う 」 は ど っ ち を 大 き く 書 い た ら い い か な 。

「 う 」 は 長 方 形 だ け ど 「 会 」 は ど う か な 。

「 か 」 と 「 い 」 は 横 長 長 方 形 に 書 け て い る ね 。

「 会 」 を 「 う 」 よ り 大 き く 書 け て い る よ 。

課 題 把 握 の 場 面 で は 、 授 業 前 の 評 価 を 生 か し 、 意 図 的 に 指 導 事 項 を 踏 ま え て い な い 文 字 を 提 示 し 、 課 題 に 気 付 く こ と が で き る よ う に 工 夫 し て い ま す 。 文 字 の 大 き さ や 行 の 中 心 に 気 を 付 け て 書 こ う

漢 字 は 平 仮 名 よ り 大 き く 書 く

文 字 の 中 心 に 気 を 付 け て 書 く

見 通 し の 場 面 で 、 具 体 化 し た 指 導 事 項 に 気 付 く こ と が で き る よ う に し ま す 。

○ 中 心 を 意 識 で き る 罫 線 を 入 れ た 練 習 用 紙 ○ 文 字 の 外 形 を 意 識 で き る 練 習 用 紙 ○ 運 筆 を 意 識 で き る パ ソ コ ン コ ー ナ ー な ど

板 書 や 教 材 を 工 夫 し 、 児 童 が 常 に 課 題 を 意 識 し な が ら 練 習 を 行 う こ と が で き る よ う に し ま す 。

児 童 に よ る 評 価 は 、 見 通 し で 確 認 し た こ と を 「 い く つ 」 達 成 で き た か で 行 い 、 学 習 の 成 果 と 課 題 が 明 確 に な る よ う に し て い ま す 。

○児童の学習活動 ●教師の働きかけ ■留意点、□評価

しながら書いている。

○硬筆でまとめ書きをする。

●手本と提示した文字を比べて、解決のた

●題材を提示する。

●課題が達成されていない文字を提示し、

○毛筆で課題を意識して書く。 ○硬筆でためし書きをする。

○課題解決の見通しをもつ。

○課題を見付ける。

○これまでの学習を基に平仮名の特徴を思 課題に気付くことができるようにする。 い出す。

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59

中富良野町立本幸小学校

授業記録やアンケー

トを整理し子どもの変

容を明らかにし、校内

研究の評価につなげて

P28 います。

3 生活に生かす書写(研究内容3) (1)硬筆・毛筆の関連を図る工夫

本校は、毛筆学習の中に必ず硬筆で書く場面を設定している。毛筆で書かれた文字が硬筆にも生き

るようにと考えている。また、硬筆学習の時でも、課題提示を毛筆で書いた文字を活用したり、水書

板に毛筆で書いて練習したりするなどの場面を設定している。

児童の自己評価カードに、「(毛筆では)浅く付くことができた。硬筆の時は、付く位置(始筆 の位置)と深く付く(深く接する)をできるようになりたい」と書かれていた。毛筆で学習し たことを硬筆にも生かそうとする児童の意識が育ってきた。

(2)書写と他教科・他領域との関連を図る工夫

書写の学習と他教科・他領域との関連を図り、学んだことが生かされるように工夫をしている「相

手意識「目的意識」「場面意識」「方法意識」を明確にして書く活動を取り入れることにより、実際

的な書写力の育成を図ることができると考える。

運動会のテーマ看板作りでは、書写の学習の身に付けた「文字の中心」 「点画の長短」などに気を付けながら「遠くの人にも見やすく」「外でも目 立つように」などの相手意識や目的意識を明確にして書いていた。

本校では、ラベンダーの花束を観光客にプレゼントし、交通安全を呼びか けている。花束に添えるカードを「文字の配列」「文字の大きさ」などに気 を付けながら、ドライバーが読みやすいようにと心を込めて書いていた。

国語科の「書くこと」の単元で、敬老の日に祖父母に手紙を書く言語活動を位 置付けた。「祖父母に自分の様子を知らせたり、感謝の気持ちを伝えると」いう相 手や目的意識を明確にすることで「行の中心に文字の中心をそろえるように書く」

子どもの姿が見られた。

(3)書写を生活に生かす環境の工夫

書写の授業で書いた作品や学習の流れを教室や廊下に掲示し、学んだこ

とを他の学習や生活の中で文字を書くとき振り返ることができるようにし

ている。

また、授業においては「ためし書き」と「まとめ書き」を並べて掲示し、

学習の成果が見て分かるようにしている。学んだ実感を味わうことにより、

成果を硬筆にも生かそうとする意識が高まると考えた。

Ⅴ 成果と課題 ○ 授業前の評価をすることにより、効果的な指導内容や方法を考えることができた。

○ 授業の最初に課題解決の見通しを明確にすることにより、児童は課題解決に向けて意欲的に学習をす

るようになった。

○ 学習コーナーで外部講師を招聘したり、個の技能課題を解決する学習プリントを作成したことにより、

児童は進んで書写学習に取り組み、指導事項を確実に身に付けることにつながった。

● 培った書写力を日常生活に生かすことができるよう、年間指導計画の改善に継続して取り組む必要が

ある。

◆運動会の看板をつくろう(特別活動)◆

◆交通安全を呼びかけるカードをつくろう(総合的な学習の時間)◆

◆おじいちゃんやおばあちゃんに手紙を書こう(国語科)◆

取 組 に よ る 児 童 の 変 容

取 組 に よ る 児 童 の 変 容

4年生毛筆『作文』「点画の付き方・交わり方に気を付けて書けるようになろう」の授業では

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60

旭川市立 東五条小学校

中規模小学校における実践

様々な調査と授業の観察や授業後の変容の 把握などを実施し、短期的・長期的な視野 から校内研究の検証に取り組んでいます。

研究内容が明確になっているため、全教師 が共通理解の下、授業改善を進めることが できます。

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61

旭川市立東五条小学校

諸調査、アンケート

などを通して、自校の

課題や子どもの実態を

明らかにしています。

P10

研究の範囲や手立て

など、研究仮説の「3

つの機能」が生かされ

ています。

P12

道 徳

学 ぶ 喜 び が わ か る 子 の 育 成 ~ 命を大切にする心や思いやる心をはぐくむ道徳教育の充実~

旭川市立東五条小学校 学 級 数 13 (校長 松倉 康夫)

Ⅰ 主題設定の理由

急激に変化する社会にあって 、 児童生徒 を取り巻く環境も大きく変化してきている おり 、 生命を大切に

する心 、 美しいものに感動する心 、 思いやりの心 、 公共心 、 規範意識などの豊かな心の育成が強く求めら

れている。また 、 学校教育だけでなく 家庭や地域の教育力の向上 も これまで以上に強く 叫ばれている。

本校は 、 平成12年度からの4年間にわたり 、 道徳 の時間の指導の在り方に関する実践研究に取り組ん

できた。その結果 、 指導過程の改善や 教 材開発 、 見取りの 充実 等を通して 、 児童の道徳性の育成 に努めて

きた 。 とりわけ 、 指導過程に沿った指導 や 道徳ノート 等 の工夫により 、 総体的な道徳性の向上が見られた。 しかしながら 、 児童の道徳性検査や教師の感想 、 保護者からのアンケート結果からは 、 授業での道徳的

な考え方と日常の行動の不一致 、 自己中心的な判断傾向などの 実態が明らかとなり 、 自他 の生命や 動植物

への思い 、 思いやりや他者理解等での重点指導が一層必要であるとの課題が残された。

そこで 、 今後は 、 各教科等との関連や学校と家庭 、 地域社会との連携を図った道徳教育の展開を通して 、

児童一人一人に生命の大切さ や思いやりの心 を内面化させ道徳的実践力を 一層 高め ること を 重視し 、体

感・実感しながら自ら獲得した学びから生まれる喜び 、すなわち 「学ぶ喜び」がわかる 児童 の育成を目指

して 本主題を設定した。

Ⅱ 研究の全体構造

学校の教育目標 日本の力となる子供の育成「かしこさ ゆたかさ たくましさ」

本年度の重点目標 豊かに表現し、ひびき合いを求める子の育成

研究主題 「学ぶ喜びがわかる子の育成」

自らの体験から課題を発見し、理 決の見通しをもって取り組む子

自分なりの思いを進んで表現し、 共感的に受け止める子

自分自身を見つめ、よりよい生き 方をめざそうとする子

〈仮説・研究内容〉 〈仮説1〉

各教科、領域等における体験的な 活動等と関連付けた年間指導計 画を工夫し、道徳の時間と連動し た道徳教育を推進することによ り、児童の心を耕し、豊かな道徳 性を育てることができるであろ う。

〈研究内容1〉 ○各教科等における体験的な活 動等と関連付けた道徳の時間 の指導の工夫と指導計画の改 善 ・児童の実態と指導内容の重点化 ・各教科等における体験を生か した導入等の工夫 ・各教科等との連携を図った道 徳教育の全体計画と年間指導 計画の改善

〈仮説2〉

して、心に響く道徳の時間の指導 を展開することにより、人々の生

け止める児童を育てることがで きるであろう。

〈研究内容2〉

る指導の工夫 ・学習過程の定着・改善

・教材の開発・選択、提示の工

・地域素材、人材の効果的な活用

・学習活動の工夫

〈仮説3〉 自己との対話の手立てを工夫し て道徳的価値を内面化させ、日常 への実践意欲を喚起する指導・評 価を工夫することにより、自分自 身を見つめ、よりよい生き方を目 指そうとする児童を育てること ができるであろう。

〈研究内容3〉

児童の実態

保護者の願い

教師の願い

〈目指す児童像〉

○道徳的価値を内面化させ、道徳 性の変容をとらえる評価の工

・道徳的価値を内面化させる指 導の工夫 ・道徳的実践意欲を高める終末 の工夫 ・道徳性の変容をとらえる評価 の工夫

・資料分析による展開等の工夫

○心に響く道徳の時間を展開す

き方や道徳的価値を共感的に受

教材の工夫や人材の活用等を通

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旭川市立東五条小学校

研究仮説の検証に向

けて、事前の調査や授

業後のデータ収集に取

り組んでいます。

P16

� Ⅲ 研究の概要

1 各教科等における体験的な活動等と関連付けた道徳の時間の指導の工夫と指導計画の改善(研究内容1) (1)児童の実態把握と指導内容の重点化

道徳教育や 道徳の時間の指導の計画を 改善・ 立案する

ためには 、 児童の道徳性の実態や日常生活の状況を的確

に把握することが重要である。

そのためには 、 客観的な検査方法である道徳性検査 、

教師アンケート 、 保護者アンケート 、 質問紙法による調

査 、 道徳の時間 の 「道徳ノート」や「心のノート」の記

述の蓄積 、 日常における行動観察の蓄積による長期的な

見取りなどから児童の道徳性の状況を分析し 、 的確にと

らえる必要がある。

これらの実態調査から 、 全校的に自

然や生命へのかかわり 、 多様な人々 へ

の思いやりの面に関す る指導に力点を

置く必要があることが明らかになった。

(2)重点とした指導内容の系統化 重点とする「生命を大切する心」「思いやり」など4つの指導内容について、学年の発達段階を踏ま

え系統化し、年間指導計画に位置付けた。

《命を大切にする心を育てる指導内容の系統(抜粋)》

(3)指導内容を重点化した年間指導計画 学級における道徳教育の指導計画や年間指導計画の作成に当たって、本校では、重点とする指導内

容についての各教科等での関連事項や体験などを表記し、道徳の時間とのつながりや道徳的実践の場

との関連を表すように工夫している。

◆ 児童の実態把握 ○道徳性検査 ○教師アンケートや保護者アンケート ○学習するねらいに対する児童の意識 や考え方をとらえる質問紙での 調査 ○道徳の時間における「道徳ノート」や 「心のノート」の記述の蓄積 ○日常における行動観察等の蓄積によ る長期的な見取りなど

◆重点とする指導内容 ○身 近な自然に親しみ 動植物に優し い気持ちで接する。 ○生きることを喜び 、 生命を大切にする心をもつ。 ○多様な人々に温かい気持ちで接し 、 親切にする。 ○友達と仲良くし 、 助け合う。

大切な命 ○一つ しかない 大切なもの 。 ○みんな生きて いる。

生きる喜び ○元気でいる。 ○ できるようにな ったこと、大き くなったこと 。

支えられている命 ○ 大事にされてい る。 ○ 守られている。 ○心配してくれる。

まわりの人 ○身近な幼い人 や高齢者に温 かい心で親切 にする。

なかよく ○ 身近な友達と 仲よく活動し 、 助け合う。

たった一つの命 ○一つだけの宝物 ○いつかなくなる。 ○ 生まれてよかっ た 。

今を大事に生きる ○思いっきり学 び遊ぶ。 ○目標をもつ。

支え合う命 ○ 助け合う 。 ○互いに思いやる。 ○守り守られて いる。

相手の気持ち ○相手のことを 考えて親切に する。

わかりあって ○ 友達と互いに よく理解 し合 う。

尊い命 ○一番大切なもの ○失ったらとりもど せないもの 。 ○生まれて 、 そし て死んでいく。

よりよく生きる ○楽しく学び遊 ぶ 。 ○一生懸命 に取り 組む。 ○夢をもつこと。

つながっている命 ○助け合い,励ま し合う。 ○受け継がれる。 ○生き物全体でつ ながっている 。

相手のために ○ 相手の立場に 立ち 、 相手のた めになる親切 な行い をする。

みがきあう ○ 互いに磨きあ う真の友情 。 ○異性に対する 正しい理解と 友情 。

内容視点3 ◎生命尊重 ◎動植物愛護 ・自然愛、環境保全 ・敬けん

内容視点2 ◎思いやり、親切 ◎信頼、友情、助け合い ・礼儀 ・寛容、謙虚 ・尊敬、感謝

生命への畏敬の念 人間尊重 命を大切にする心

低学年 中学年

高学年

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旭川市立東五条小学校

校内研究の取組と各

教科や特別活動の実践

とを結び付け、教育課

程の改善に生かしてい

ます。 P1

研究仮説に位置付け

た手だてさらに具体化

し、全員が共通に取り

組む内容を明確にして

います。 P19

《学級における道徳の年間指導計画 3学年 内容項目3-(2)を中心としたプログラム》

2 心に響く道徳の時間を展開する指導の工夫(研究内容2) 児童自らが道徳的な価値を探し自分を見つめる学習を展開するた

めに、児童の琴線に響き心を揺さぶるような教材・人材の活用、学

習活動の工夫、評価の工夫等に取り組んできた。

(1) 魅力的な教材の開発・選択、提示の工夫 児童が道徳的価値の把握や内面的な自覚を深めるための手がか

りとしての教材は、児童の実態に即したもの、共感できるものなどの条件が必要である。本校では、

次のような視点から教材を開発・選択したり、提示の仕方を工夫したりして実践を進めている。

◆道徳の時間の授業で用いる教材の条件

○ねらいとする道徳的価値を達成するのにふさわしく、児童の実態に応じている。

○人間尊重の精神にかなうもので、特定の価値観に偏らず、多様な価値観が引き出される。

○人間の弱さやもろさに向き合い、よりよく生きることの意味や喜びや勇気を与えられる

○日常生活や体験などを振り返ることができたり、次の道徳的実践に関連させたりする。

○季節の自然環境や行事などと関連がある。

◆提示の工夫 ○挿絵を使ったり紙芝居にしたり、読み聞かせの会等の協力など音読提示の方法を工夫する。

○日常の生活と関連させながら音読する。

○実物提示や体験を伴った提示など、出会わせ方を工夫する。

《実践例》価値内容の焦点化のための教材 2年生 主題名「いのちをまもる」〈生命尊重3-②〉 段階 主な学習活動や教師の働きかけ 児童の反応 道徳的価値の把握・追求

○さるたちがうさぎへ食べ物を贈ったわけを、贈 り物箱への名前付けを通して考えさせる。

・贈り物をしたのはどうしてでしょう。 ・贈り物の箱に名前を付けるとしたらどのような 名前にするでしょうか?

○助けようとした心情を考え、 箱の名前をカードに書く。 ・「心の贈り物」 ・「命の箱」 ・「命の贈り物」 ・「命のお守り」

自分だけでなく みんなの命も大切だな

読み聞かせの会の協力(教

材提示の工夫)

関連を意図して 年間での成長・変容

関連を意図して 道徳的実践の場

学校行事等や生活目標など、

学校・学級の1年間のプログ

ラム概要

道徳の時間の主題や主題どう

しの関連、各教科等との関連

各教科、特別活動、総合的な学

習の時間などの活動計画(関連 する道徳の主題に関するもの)

□考察□ プレゼント箱を提示し、その箱の名前をカードに記入する活動は、「命のプ

レゼント」などの考えが生まれ、価値内容を焦点化する方法として効果的であった。

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◆資料分析の視点 ○粗筋にそって主人公の言動と心の動 きを対比する。

○児童の実態を踏まえ,基本発問,中心 発問を設定する。

※他の教材や教具との併用はできない か。

※資料のよさを生かす資料提示の方法 を考える。

(2) 資料分析による展開・発問の工夫 《実践例》資料分析による発問の吟味 5年生「命のつながり」 児童が道徳的価値を的確に把握し、

心情を深めたり、考えを深め学び合

ったりするためには、資料を有効に

活用していくことが大切である。そ

こで本校では、資料分析を通して、

資料のどこに着目し、児童の実態と

どう結び付け、どう発問構成してい

くかを吟味している。

(3) 地域素材、人材の効果的な活用 本校の児童は、社会体験、人的体験、自然体験の個人差が大きい。そこで、学校教育の中で意図的・

計画的に様々な体験的な活動を実践している。

この体験等を道徳の時間と関連させることで実感を伴う学習展開を工夫している。また、道徳的実

践の場としての地域や家庭との指導連携が一層拡がることを意図して、家庭や地域と積極的に連携し

た指導を展開している。

《実践例》 動物園職員の協力による5学年道徳「命のつながり」

《ゲストティーチャーの動物園職員》 (4) 学習活動の工夫

一人一人の実態に応じて道徳的な見方・考え方・感じ方を深めさせるため

に、動作化等の活動や話し合い活動などの学習活動の工夫に取り組んできた。

◆多様な学習活動の工夫 ○動作化や役割演技による価値把握な どの工夫 ○ペープサートや劇化等の活用と内容の工夫

○追体験、擬似体験、実物体験などの工夫

教師の働きかけ 段階 発問・児童の意識

1 総合的な学習の時間 を想起させ、本時の 学習を方向付ける。

○「旭山動物園の秘密をさぐる」の活動体験の想起から 動物たちの餌と命の問題に関心をもたせる。 ・飼育の仕方 ・餌のあげ方

道徳的値の把握・追

道徳的価値の

方向付け

求 2 「えさのひよこ」につ いて奥山さんに話し ていただく。

※外部講師の協力と実 物提示

3 グループに分かれて 考えを交流させる。

○ 奥山さんの話「ひよこを餌としてホッキョクぎつねに 食べさせる動物園の人たちの世話」から、動物の命に ついての自分の考えをもつ。 ・奥山さんはどんな気持ちで餌を与えているのだろ う? ◎もっと奥山さんの気持ちをさぐってみるために、2つ の考えに分かれて話し合ってみよう。

《5学年 総合的な学習の時間》 「旭川動物園の秘密をさぐろう」

命のつながりについて考えよう □考察□

動物園職員の協力、総

合的な学習の時間との関

連によって、体験したこ

とから実感をもって考え

る児童の姿が見られた。

関連指導

□考察□ 本事例では、ゲストティーチャーの講話を中心資料としているが、読み物資料もほぼ同様の手順で分

析をしており、要点場面の行為や心情、児童の実態や予想される反応から発問を吟味し授業の構造化を 図ることができた。

旭川市立東五条小学校

研究内容を本時にお

ける具体的な指導に取

り入れ、研究仮説の検

証に結び付けていま

す。 P22

子どもの姿から授業

を振り返り、研究仮説

や内容の有用性を確か

め、授業改善につなげ

ています。 P24

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《価値の内面化や自己理解の様相》 道徳的価値の把握・追求 道徳的価値の内面化

低・中・高

資料を離れ自分の行為 や心情を考える。

資料の人物等を通して自分を 考えたり表現したりする。

◆話し合い活動の工夫 《役割演技を通した価値追求 3学年 本当の友達》 ○全体やグループ等の交流形態の工夫

○観点別グループでの交流活動

○バズセッション、ディベート、ブレイン

ストーミング、パネルディスカッション

3 道徳的価値を内面化させる指導や道徳性の変容をとらえる評価の工夫(研究内容3) (1) 道徳的価値を内面化させる工夫

価値の内面化の段階では、児童が把握した道徳

的価値について、資料から離れて「自分はどうで

あったのか」じっくりと自分を見つめ直すことが

できるように、次のような工夫を講じている。

◆内面化を促す手立て

(2) 道徳性の変容をとらえる評価の工夫 道徳教育における評価は、児童がよりよい人間

として生きようとする姿を評価し援助するもので

ある。したがって道徳性の実態を把握するととも

に、学習後における道徳的実践の様子や道徳性の

変容の評価が重要である。本校では、次のような

手立てで評価の工夫に取り組んできた。

◆本校での道徳性の変容を見取る評価 ○道徳性検査の活用 ・児童の状況や学級・学校の傾向を客観的に把握し、

個々への指導や年間指導計画改善に活用する。

○授業構想前の実態調査

○授業直前の追加調査 ・授業展開にかかわる情報が不足したとき

(質問紙や口頭で質問、会話や対話など)

○長期的見取りによる変容の把握や援助

Ⅳ 研究の成果と課題 ○各教科等と道徳の時間とを関連付けた年間指導計画や授業実践を通じて、自分の思いや行いと重ねなが

ら命の存在や大切さを見出す児童の姿が見られるようになってきた。

○学習活動や評価の工夫・活用、地域や家庭との連携など、多様な指導方法で児童の変容を目指す教師の

取組が活性化したり、家庭・地域・学校が一体となって指導する体制が充実したりしてきた。

○今後、評価活動や評価方法の一層の改善、他の道徳的価値の指導について研究を拡大することによって、

全人格的な道徳教育の充実が一層図られると思われる。

〈診断的評価を 生かした指導〉 発問内容などの 吟味や個への対 応に活用

〈診断的評価〉 対象となる価値内容 に関する意識,生活実 態,体験内容など(質 問紙法による調査)

・道徳ノートファイルや心のノート ・日常の行動観察や作文、家庭連絡帳等

蓄積

全 教育活 動での変 容の現れ の把握と 援助・賞賛

心のノートを内面化

の糸口に

□考察□ 心のノートか

ら気付かなかった自分や

友のよさを発見できた

《道徳ノートによる評価》5学年「精いっぱい生きる」

□考察□

役割演技を通した交流

で、「心のつながりのある

友達」について考える児童

の姿が多く見られた。

旭川市立東五条小学校

短期的、長期的な子

どもの変容の把握を通

して、研究の評価を深

めています。

P26

□考察□ 消極的な傾向のある児童

であるが、今後の実践に向かう気持

ちが伺える。学級での活動等で見守

り励ます視点が把握できた。

児童の実態の

把握・理解

○心のノートや道徳ノートの工夫と活用

○発達段階に応じた交流活動との関連付け

○相談等を通した個への対応

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旭川市立 明星中学校

中規模中学校における実践

様々な機会において子どもの声を把握し、 研究仮説の検証に取り組んでいます。

各教科に共通する研究内容を設定している ため、共同研究として一人一人の教師の創 意工夫が生まれます。

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旭川市立明星中学校

研究内容の具体化を

図り、何を研究するの

か、各教科に共通する

手だてを明らかにして

P15 います。

学習指導

学びを楽しむ自分の創造 ~自ら課題をもち、共に学び合い、新たな自分を創り出す生徒の育成~

旭川市立明星中学校 学 級 数 12

(校長 上田 英明)

Ⅰ 主題設定の理由 「確かな学力」向上のための教育内容の改善充実が求められる中、学習を進める上では、知的好奇心を

働かせることや学ぶことの楽しさを味わうことを基本とし、学習目標を設定してその実現のために忍耐力

をもって粘り強く取り組むことが大切とされている。

本校では、これらの今日的な課題やこれまでの研究の成果と課題、生徒の実態などから、生徒が、課題

をもって意欲的に学習し、仲間と共に学習を楽しみながら互いに高め合い、課題解決に向け粘り強く学習

に取り組むことが必要とされていることが明らかになった。

そこで、指導計画を見直し、単元の導入・展開・終末の各場面において、学習材や学習形態などを工夫

することにより、学びに期待や必然性を感じ、学ぶことの楽しさを仲間と共に味わい、粘り強く課題を解

決し、以前よりも高まった新たな自分を創り出す生徒を育成できると考え、本研究主題を設定した。

Ⅱ 研究の全体構想

研 究 の 仮 説 と 研 究 内 容

学 び と の 出 会 い か ら 課 題 を

見 い 出 し 、 意 欲 的 に 取 り 組

む 生 徒 学 び の 楽 し さ を 仲 間 と 共 有

し 、 共 に 学 び 、 高 め 合 う 生 徒

前 向 き に 粘 り 強 く 取 り 組

み 、 新 た な 自 分 を 創 り 出 す

生 徒

め ざ す 生 徒 像 知 和

粘 り

< 研 究 内 容 1 >

「 意 欲 的 に 学 び を 進 め る 」 導 入 の 工 夫

○ 期 待 が 高 ま る 学 び と の 出 会 い

○ 学 び の 必 然 性 が 高 ま る 課 題 づ く り

< 研 究 内 容 2 >

「 学 び を 楽 し む 」 展 開 の 工 夫

○ 仲 間 と 学 び を 共 有 す る 交 流 活 動

< 研 究 内 容 3 >

「 新 た な 自 分 を 創 り 出 す 」 終 末 の 工 夫

○ 学 び の 履 歴 ノ ー ト に よ る ふ り 返 り

< 仮 説 1 >

学 び の 期 待 が 高 ま る 出 会 い を 位 置 付

け た 指 導 計 画 を 作 成 し 、 生 徒 が 学 び の

必 然 性 を 感 じ る 課 題 追 究 に 取 り 組 む こ

と に よ り 、 学 び を 意 欲 的 に 進 め る 生 徒

を 育 成 す る こ と が で き る 。

< 仮 説 2 >

伝 え 合 い 、 認 め 合 い 、 協 同 す る

交 流 活 動 を 充 実 さ せ る こ と に よ り

学 び の 楽 し さ を 仲 間 と 共 有 し 、 共

に 高 め 合 う 生 徒 を 育 成 す る こ と が

で き る 。

< 仮 説 3 >

学 び を 履 歴 し 、 学 び を ふ り 返 り な が

ら 学 習 を 進 め る こ と に よ り 、 最 後 ま で

あ き ら め ず 粘 り 強 く 課 題 を 解 決 し 、

「 新 た な 自 分 」 を 創 り 出 す 生 徒 を 育 成

す る こ と が で き る 。

~ 自 ら 課 題 を も ち 、 共 に 学 び 合 い 、 新 た な 自 分 を 創 り 出 す 生 徒 の 育 成 ~

研 究 主 題

「 知 と 和 と 粘 り 」

本 校 の 教 育 目 標

学びを楽しむ自分の創造

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旭川市立明星中学校

学習活動と子どもの

授業後の反応を比較

し、手だてや方法の有

効性を検討していま

P20 す。

社会科として研究内

容を具体化し、共同研

究としての授業実践を

展開しています。

P19

Ⅲ�研究の概要 1 「意欲的に学びを進める」導入の工夫 (1)期待が高まる学びとの出会い

生徒が意欲的に学びを進めるためには、新たな学びによって「新たな自分」(今の自分よりも高ま

った自分)に変容していることを実感しながら学びに取り組むことが大切である。特に、新たな学び

と出会う場面では、学びへの期待感を与え、学びを終えたときの新たな自分を予感させる学習活動が

必要であると考えた。

そこで、生徒の知的好奇心を高め、単元の学習を見通すことができる学習材や学習課題を単元の導

入に位置付けた指導計画を作成し、導入の授業では試行活動や体験的な活動を取り入れ、より効果的

に学びへの期待感が高まるよう工夫した。

【実践例1】社会科第2学年年間指導計画「世界と日本の産業」

章・節名 評価

3 世界と日本の産業(14)

★オリエンテーション(2)

関心

A: 「旭山動物園リゾート計画」は進めるべきか!(2) ①旭山動物園リゾート化という架空の計画について、賛成か反

対か自分の考えをまとめる。

②賛成派と反対派に分かれて、班、学級で交流し、自分の考え

をまとめる。

画を

ける 生 徒 に と っ て 身 近 で あ る 旭 山 動 物 園 を 学 習 材 と し て 取 り 上 げ た 。 旭 山 動 物 園 と そ の 周 辺 地 域 の リ ゾ ー ト 化 ( 架 空 の 計 画 ) を 考 え る と い う 課 題 を 設 定 し 、 そ の 賛 否 を 産 業 と 環 境 と い う 視 点 で 考 え る 試 行 活 動 を 行 い 、 章 の 学 習 へ の 期 待 感 を 高 め た 。

「 周 辺 は 農 家 も 多 い か ら 環 境 を 守 る た め に リ ゾ ー ト に は 反 対 。 動 物 園 は 園 内 で の 工 夫 を す べ き 。 」

「 賛 成 で す 。 観 光 客 を も っ と 増 や す た め に ホ テ ル や 大 型 遊 具 を 周 辺 地 域 に 備 え た ほ う が い い 。 」

ニ ー ト の 雇 用 が 増 え る か ら リ ゾ ー ト 賛 成 、 周 辺 道 路 が 渋 滞 し て 生 活 に 支 障 が 出 て る か ら 反 対 な ど も 意 見 と し て あ る よ 。 1 つ の 考 え だ け で こ の 大 き な 計 画 を 決 め て 大 丈 夫 ?

学 び と の 出 会 い ( 地 域 の 施 設 を 学 習 材 と し た 試 行 活 動 )

旭 山 動 物 園 を 学 習 材 と し た 学 び と の 出 会 い に よ り 、 産 業 と 環 境 の あ り 方 を 多 面 的 に 考 え る こ と の 必 要 性 や そ の た め に は 他 者 と 交 流 し 多 く の 考 え に ふ れ る こ と の 大 切 さ を 実 感 す る 生 徒 が 多 く 見 ら れ た 。 そ の 後 の 「 世 界 と 日 本 の 産 業 」 の 学 習 で は 、 産 業 を い ろ い ろ な 視 点 か ら 見 る こ と に 楽 し さ を 感 じ な が ら 意 欲 的 に 学 ぶ 姿 が 見 ら れ た 。

旭川 是非

B:

旭川

学 習 内 容 ・ 活 動

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(2)学びの必然性が高まる課題づくり 学びに期待感をもつことで高められた意欲を学びの過程でも持続させるためには、生徒一人ひとりが学

びの必然性を感じながら学習を進めることが大切である。

そこで、学習する内容がどうして必要なのか、どのように役立つのかなどの視点による体験的な活動や

交流活動を単元の導入で行い、学びの必然性を要素としてふくむ単元課題を生徒に設定させ、その後の学

習で課題解決を図らせた。

【実践例2】理科第2学年指導計画「天気とその変化」

章・節名 学 習 内 容 ・ 活 動 評価

単元のオリエン ①近年、北海道でおきた気象災害のビデオを

テーション 視聴して、感じたことを交流する。

(2)

る日常生活での影響を話し合う。

③「天気とその変化」の単元課題を作成する。

②これまでの経験をもとに、天気の変化によ 積極 A:

関心

B:

課題

観測 A:

技能 1節 気象観測

をしよう(4)

②校庭などで気象観測を行い、観測結果をグ

①気象観測の機器と観測のしかたについて、 説明を聞き、操作の練習をする。

「 大 雨 で 川 が 氾 濫 し て 線 路 が の み 込 ま れ て い た 。 も し 、 電 車 に 乗 っ て い た ら と 考 え る と と て も 怖 い 。 天 気 予 報 の 大 切 さ を あ ら た め て 考 え た 。 」

生 徒 A : 「 こ の 間 、 朝 晴 れ て い た か ら 自 転 車 で 登 校 し た ら 帰 り は ず ぶ 濡 れ に な っ ち ゃ っ た 。 」 生 徒 B : 「 小 四 の 時 、 も の す ご い 吹 雪 で 前 が 見 え な い 日 が あ っ た 。 北 海 道 が い や に な っ た 。 」 生 徒 C : 「 晴 れ て い る の に 雨 が 降 っ た こ と が あ っ た わ 。 」

学 び の 必 然 性 を 感 じ さ せ る 活 動

「 天 気 の 影 響 の す ご さ に 驚 い た 。 あ ん な に す ご い 雨 が 降 っ た ら 人 間 な ん て ま っ た く 何 も で き な い と 思 っ た 。 」

こ の 生 徒 は 、 明 日 の 天 気 を 家 族 に 言 え る く ら い 理 解 し た い と い う 願 い が 「 学 び の 必 然 性 」 と な っ て い た 。 そ の た め 、 「 1 日 の 天 気 変 化 の 原 因 の 究 明 」 を 単 元 課 題 と し た 。 学 習 後 の ま と め に は 、 学 習 で 得 た 知 識 を 家 族 に 伝 え る 様 子 が 感 じ ら れ る な ど 、 課 題 解 決 の 状 況 が 具 体 的 に 記 さ れ 、 単 元 の 学 習 に お い て 「 学 び の 必 然 性 」 を 感 じ な が ら 学 習 し た 成 果 が 見 ら れ た 。

単元の学習前のプリント

単元の学習後のプリント

旭川市立明星中学校

事前調査から、研究

内容にかかわる要素を

見つけ出し、子どもの

変容の把握に努めてい

P16 ます。

事後調査を実施し、

研究仮説で期待した目

指す子ども像にどこま

で近づいたのか把握し

P10 ています。

生徒の単元課題

学びの必然性

学びの成果

単元課題の解決

Page 78: 校内研究の 充実のために · 2011-03-11 · 2 1 校 内 研 究 の 基 本 的 な 考 え 方 校内研究は、学校の教育目標の具現化を目指し、教師が共同で取り組む研究活動であり、教育

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旭川市立明星中学校

教科の目標を踏まえ

て、技術・家庭科とし

て研究内容を具体化し

ています。

P21

授業後の子どもの声

の継続的な把握が、授

業評価に結び付きま

す。

P20

2 「学びを楽しむ」展開の工夫 (1)仲間と学びを共有する交流活動

学びを楽しむ授業を目指すとき、生徒が学ぶ楽しさを仲間と味わい、その楽しさを共有し、共に高め

合う交流活動を充実させることが大切である。

そこで、生徒の思いや考えが認められ多様に広がったり、生徒が協同的に活動したりする「伝え合い、

認め合い、協同する交流活動」の充実に向け、学習形態や相互評価の工夫を図った学習を展開した。

【実践例3】技術・家庭科第1学年「のこぎり引き」診断カードを活用した活動

3 「新たな自分を創り出す」終末の工夫 (1) 学びの履歴ノートによるふり返り

生徒が学びを履歴しながら学習を進めることで、継続的に自らの内面に目を向けながら、その変容を

自分なりに実感し学びを広げ深め、「新たな自分」を創り出すことができると考えた。加えて、生徒の

学びを継続的に支援し、その変容を見取る指導と評価の一体化も図ることができると考えた。

そこで、生徒が自己の学びの過程を大切にしながら「新たな自分」を創り出すことができ、生徒の学

びを継続的に支援することができる学びの履歴ノートを活用し、単元の終末でふり返りの場面を設定す

ることで「新たな自分」への変容を確かなものとする工夫を図った。

【実践例4】理科第2学年「動物の世界」学びの履歴ノート

【 B 君 の ア ド バ イ ス 】 「 目 の 位 置 を の こ ぎ り の 真 上 に し て 切 断 線 上 で ひ じ を 動 か し た ら い い よ 。 」

仲 間 に よ る 診 断 ( ペ ア 同 士 に よ る 相 互 評 価 )

【 B 君 の 診 断 】 「 A 君 は 診 断 カ ー ド の ③ 視 点 の 位 置 と ④ ひ じ の 動 か し 方 が C だ よ 。 」

何 度 や っ て も 切 断 線 か ら ず れ て し ま い 、 あ き ら め か け て い た A 君 に B 君 が ア ド バ イ ス を す る 。 A 君 の 感 想 に は 「 だ め と 言 わ れ た の で 次 は B君 に よ く 見 て も ら っ て 直 し な が ら 切 る 。 ひ じ を 見 て も ら っ た ら 線 ど お り に う ま く 動 か せ た 。 」 と 記 さ れ た 。 ペ ア リ ン グ に よ る 協 同 的 な 活 動 と 具 体 的 に 改 善 点 を ア ド バ イ ス し 合 う こ と が で き る 「 診 断 カ ー ド 」 ( 相 互 評 価 ) に よ り 、 A君 、 B君 と も に の こ ぎ り 引 き の 技 能 が 向 上 し た 。

学 び の 履 歴 の 記 入 欄

学 習 中 に わ か っ た こ と や 考 え た こ と 、 感 じ た こ と 、 仲 間 の 考 え な ど の 学 び の 履 歴 を 継 続 し て 自 由 に 記 入 さ せ た 。 生 徒 の 負 担 加 重 に な ら な い よ う 、 ノ ー ト の 右 側 を 仕 切 っ た ス ペ ー ス を 活 用 し て い る 。

A 君 の 授 業 後 の 感 想

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旭川市立明星中学校

授業評価そのものが

研究仮説の検証につな

がり、さらに次時の授

業改善へ結び付けてい

P22 ます。

【実践例5】理科第2学年「動物の世界」指導計画と学びの履歴、学びのつながり

月 章・節名 学 習 内 容

( )4 3 動 物 の 世 界 2 7 時 間

オリエンテーション(2)

①人体に関するビデオを視聴する。

②人体の疑問点などを班で交流する。

②単元課題を作成する。

5 2節 刺激は ①ヒトが外界からの刺激に反応するようすを

観察し、感覚器官で受け入れられた刺激が

脳や脊髄に伝えられ、反応が起こるしくみ

に起こる行動について、その経路の違いを

を理解する。

②実験を行い、意識して起こす行動と無意識

どこを伝わ

っていくの

か ( )2

調べる。

②日常を振り返り、意識して起こす反応と無

①単元の「学びの履歴をノートでふり返り

理解が不十分なところや疑問点をもとに課

意識に起こる反応について考える。

6 ●単元のまと

め  (3)

、 。 題を設定し補充的・発展的な学習を行う

②③課題解決を行い、班や学級内で発表交流

を行う。

Ⅳ�研究の成果と課題 1 成果 ○ 導入において、知的好奇心を高める学習材の活用や学びの必然性を高める学習課題による試行活動

や体験的な活動を行うことで、新たな学びに期待感をもち、学びの必然性を感じながら、意欲的に取

り組もうとする生徒が増えた。

○ 「伝え合い、認め合い、協同する交流活動」の充実を目指し、学習形態や相互評価を工夫したこと

で、生徒の考えや表現が認められ学びが多様に広がったり、生徒の協同的な考えや表現により課題解

決が進められたりするなど、仲間と学びを楽しみながら学習に取り組む生徒が増えた。

○ ノートを活用して学びを履歴することで「こんな力が身に付いた「こんなことができる(わか 、 。」、

る)ようになった」など、学習後の新たな自分を実感する生徒が増えた。また、学びの思いや考え 。

が履歴により継続されることで、単元の週末まで粘り強く課題解決に取り組む生徒が増えた。

2 課題 ○ 生徒の意欲を単元の展開や終末においても維持するため、それらの場面に適する学びへの期待感や

必然性が高まる学習材や課題を指導計画へ位置付け、その効果的な活用の工夫を図る必要がある。

○ 「伝え合い、認め合い、協同する交流活動」では、一層の人間関係の向上を教育活動全体で図る必

要がある。

【オリエンテーション1/27時間】  単元の学習前のこの履歴では、学びの 必要性は感じているようだが、学習によ せる思いはまだ漠然としている。

終 末 に 学 び の 履 歴 を ふ り 返 る こ と で 、 学 習 前 の 漠 然 と し た 思 い を 深 め 広 げ て 学 習 を 終 え る こ と が で き た 。 生 徒 は 達 成 感 を 得 る と と も に 、 学 習 で 得 た 成 果 を 日 常 生 活 に 生 か す こ と が で き る 「 新 た な 自 分 」 を 実 感 し た 。

学 び の 履 歴 を 活 用 す る こ と で 、 生 徒 の 変 容 を 見 取 り な が ら 学 習 を 柔 軟 に 進 め る こ と が で き た り 、 単 元 の 終 末 で は 生 徒 の 思 い に 応 え る 発 展 的 な 学 習 を 効 果 的 に 構 築 し た り す る な ど 、 指 導 と 評 価 の 一 体 化 を 図 る こ と が で き た 。

【1章2節 11/27時間】

 学習でわかったことを履歴している。 これが次の履歴へとつながっている。

【1章2節 11/27時間】

 オリエンテーションでは漠然とし ていた思いが、学びを履歴した過程 で「部活動の大会などで緊張しやす く力を発揮できない自分を改善したい」 という具体的な思いへと変容している。  この履歴が単元のまとめの発展的な学 習の課題となった。

【単元のまとめ26/27時間】

 発展的な学習の場面で、緊張しないた めの改善法としてメンタルトレーニング が効果的であることを見つけた。

【単元のまとめ26/27時間】

 学びを履歴することで学習に広がりや 深まりを与えた。新たな知識を獲得し、 そのことが日常生活に役立つこと(学び の必然性)を実感していた。

【学びの履歴を活   用した支援】  他の生徒の履歴 も発展的な扱いと なっているものが 多かったため、単 元のまとめとして 3時間を配当し、 発展的な学習の場 面を設定した。

学びの履歴とつながり

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参 考 文 献

「小学校学習指導要領」 文部科学省 平成15年

「小学校学習指導要領解説 総則編」 文部科学省 平成16年

「小学校学習指導要領解説」(各教科等) 文部省 平成11年

「中学校学習指導要領」 文部科学省 平成15年

「中学校学習指導要領解説 総則編」 文部科学省 平成16年

「中学校学習指導要領解説」(各教科等) 文部省 平成11年

「小学校 心に響き、共に未来を拓く道徳教育の展開」 文部科学省

「小学校教育課程改善の手引」(平成11年度~平成18年度) 北海道教育委員会

「中学校教育課程改善の手引」(平成11年度~平成18年度) 北海道教育委員会

「北海道公立学校教育課程実践研究成果報告集」(平成15年度~平成17年度)

北海道教育委員会

「上川管内学校教育推進の重点 資料編 未来をひらく研修を求めて」

北海道教育庁上川教育局・上川管内教育委員会連合会 平成 8年

「新訂校内研究のすすめ方 福岡県教育研究所連盟編」 第一法規 平成 3年

「改訂新版実践的研究のすすめ方 創意工夫を生かした教育を求めて 群馬県教育研究所連盟編」

東洋館出版社 平成13年

「新版校内研究辞典」 尾木 和英 ぎょうせい 平成11年

「チェックポイント・学校評価 No.1 これからの学校と組織マネジメント」

木岡 一明 教育開発研究所 平成15年

「教職研修総合特集 学校の組織マネジメント」 高階 玲治 教育開発研究所 平成13年

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■平成18年度 「ステップアップ・プロジェクト上川」■

<審議委員> 上川管内教育研究会 会長 金 子 俊 明

(上富良野町立上富良野小学校長) 旭川市教育研究会 会長 石 田 渡 志

(旭川市立青雲小学校長) 上川教育研修センター 所長 三 浦 直 昭

副所長 安 藤 達 雄

北海道教育大学旭川校 教授 笠 井 稔 雄 助教授 久 保 良 宏

北海道教育大学附属旭川小学校 副校長 新 重 和 幸

北海道教育大学附属旭川中学校 副校長 中 山 雅 文

旭川市教育委員会 主幹     小 谷  要 次

北海道教育庁上川教育局生涯学習課長 小 野 浩 一

<編集委員> 北海道教育庁上川教育局生涯学習課

義務教育指導班主査 中川 晃尚 指導主事 川端 香代子

齋藤 克幸 佐藤 潤一 工藤 雅人 久保 了乙 米津 理臣 田中 孝二

校内研究の充実のために

編集・発行者 北海道教育庁上川教育局

TELFAX

発 行 平成 1 9年 3月 社会福祉法人 北海道リハビリー 印 刷

〒 0166-46-4951・49470166-46-5242

079-8612 北海道旭川市永山6条19丁目1-1

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子どもの変容を実感できる研究活動を目指して

北海道教育庁上川教育局

校内研究の 充実のために 校内研究の 充実のために 校内研究の 充実のために

平成18年度「ステップアップ・プロジェクト上川」指導資料