10
福島の進路 2020. 3 4 調 査 <要 旨> 1.女性の減少が目立つ本県の人口推移 本県では「福島県人口ビジョン」が策定された2015年以降も毎年1%程度の減少が続いており、男 性よりも女性の減少率が上回っている。 2.自然動態のマイナスが拡大、社会動態も進学・就職等による転出超過が続く 自然動態は2015年より1万人以上のマイナスが続き、さらに拡大が続く。一方、一時縮小した社 会動態のマイナスも15~34歳を中心に女性の転出が目立っている。 3.合計特殊出生率は「西高東低」 本県の合計特殊出生率は2000年に全国4位の高水準であったが、2018年は20位と大きく低下して いる。東北・北海道は全般的に低く、「西高東低」の傾向がみられる。 4.出生数の増減は合計特殊出生率よりも女性人口の動向が大きく影響 本県における近年の出生数の減少は、合計特殊出生率の低下よりも女性人口の減少や女性の年齢 構成の変化による影響が目立つ。復興需要の終息による県内景気の足踏み感は出産・子育てへの不 安を高めることにつながっており、県内経済活性化へのさらなる取り組みが求められる。 福島県内の合計特殊出生率 ~全国を上回るも次第に低下~ はじめに 2015年度より始まった地方創生の取り組みは、 概ね第1期の5年間が経過し、次のステージに進 もうとしている。この間、東京一極集中の是正が 最重要課題として挙げられたが、現時点でその流 れは変わらず、加速している状況にある。本県に おいては、震災後の避難による人口流出に目が行 きがちであるが、直近においては自然減の拡大も 目立っている。さらに、県の人口ビジョンにおけ る社会動態±ゼロの目標時期も先送りされるなど、 本県の人口動向は厳しさを増している。 本稿では、本県の強みであった合計特殊出生率 の高さについて、市町村別に直近の動向を試算す るとともに、人口減少の要因について考察してみ た。 1.福島県の人口推移 ⑴ 減少が続く本県の人口 福島県「福島県の推計人口」をみると、2010年 以降における10月1日現在の本県の総人口は一貫 して減少している。人口減少問題へ本腰を入れた 取り組みである「福島県人口ビジョン」が策定さ れた2015年以降も1%程度の減少が続いている (図表1)。 男女別に見ると、女性の減少率が男性よりもや や高い。2015年に特に女性の減少率が高くなって いるのは、震災後に住民票の異動を伴わない県外 への転出が増加したことが国勢調査により確認さ れた結果とみられる(図表2)。

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福島の進路 2020.34

調 査

<要 旨>1.女性の減少が目立つ本県の人口推移 本県では「福島県人口ビジョン」が策定された2015年以降も毎年1%程度の減少が続いており、男性よりも女性の減少率が上回っている。

2.自然動態のマイナスが拡大、社会動態も進学・就職等による転出超過が続く 自然動態は2015年より1万人以上のマイナスが続き、さらに拡大が続く。一方、一時縮小した社会動態のマイナスも15~34歳を中心に女性の転出が目立っている。

3.合計特殊出生率は「西高東低」 本県の合計特殊出生率は2000年に全国4位の高水準であったが、2018年は20位と大きく低下している。東北・北海道は全般的に低く、「西高東低」の傾向がみられる。

4.出生数の増減は合計特殊出生率よりも女性人口の動向が大きく影響 本県における近年の出生数の減少は、合計特殊出生率の低下よりも女性人口の減少や女性の年齢構成の変化による影響が目立つ。復興需要の終息による県内景気の足踏み感は出産・子育てへの不安を高めることにつながっており、県内経済活性化へのさらなる取り組みが求められる。

福島県内の合計特殊出生率~全国を上回るも次第に低下~

はじめに 2015年度より始まった地方創生の取り組みは、概ね第1期の5年間が経過し、次のステージに進もうとしている。この間、東京一極集中の是正が最重要課題として挙げられたが、現時点でその流れは変わらず、加速している状況にある。本県においては、震災後の避難による人口流出に目が行きがちであるが、直近においては自然減の拡大も目立っている。さらに、県の人口ビジョンにおける社会動態±ゼロの目標時期も先送りされるなど、本県の人口動向は厳しさを増している。 本稿では、本県の強みであった合計特殊出生率の高さについて、市町村別に直近の動向を試算するとともに、人口減少の要因について考察してみた。

1.福島県の人口推移

⑴ 減少が続く本県の人口 福島県「福島県の推計人口」をみると、2010年以降における10月1日現在の本県の総人口は一貫して減少している。人口減少問題へ本腰を入れた取り組みである「福島県人口ビジョン」が策定された2015年以降も1%程度の減少が続いている(図表1)。 男女別に見ると、女性の減少率が男性よりもやや高い。2015年に特に女性の減少率が高くなっているのは、震災後に住民票の異動を伴わない県外への転出が増加したことが国勢調査により確認された結果とみられる(図表2)。

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福島の進路 2020.3 5

調 査

⑵ 人口の自然動態 本県の人口減少を自然動態と社会動態にわけてみると、自然動態は2015年より1万人以上のマイナスが続き、さらに拡大が続いている。特に出生

数は2010年と比較し2019年は4,500人以上減少しており、自然減の要因は死亡数の増加よりも出生数の減少が大きいことが影響している(図表3)。

図表1 福島県の人口推移

資料:福島県「福島県の推計人口」 各年10月1日現在 2010年及び2015年は国勢調査人口

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年0

500

1,000

1,500

2,000

2,500千人 男性 女性 人口増減率(右軸)

△2.5

△2.0

△1.5

△1.0

△0.5

0.0%

985985967967

954954 948948 945945 946946 940940 931931 922922 913913

1,0441,044 1,0221,022 1,0081,008 999999 992992968968

960960 950950 941941 931931

2,0292,029 1,9891,989 1,9621,962 1,9481,948 1,9371,937 1,9141,914 1,9001,900 1,8811,881 1,8631,863 1,8441,844

△△ 2.02.0

△△ 1.31.3

△△ 0.80.8

△△ 0.60.6

△△ 1.21.2

△△ 0.70.7△△ 1.01.0 △△ 1.01.0 △△ 1.01.0

図表2 福島県の男女別人口前年比増減率

資料:図表1より算出

△3.0

△2.5

△2.0

△1.5

△1.0

△0.5

0.0

0.5

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

△1.8

△1.3

△ 0.6△0.4

0.1

△0.6

△1.0 △1.0 △0.9

△2.1

△1.4

△ 0.9 △0.7

△ 2.4

△0.9 △1.0 △1.0 △1.1

男性女性

図表3 福島県人口の自然動態

資料:福島県「福島県の推計人口」 2018年までは年報、2019年は1~12月の累計により作成

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年△ 30,000

△ 25,000

△ 20,000

△ 15,000

△ 10,000

△5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000人 出生数 死亡数 自然動態

16,16916,169 15,19015,190 13,79913,799 14,47614,476 14,54114,541 14,25214,252 13,75313,753 13,33113,331 12,57012,570 11,59511,595

△△ 22,76922,769△△ 26,17726,177

△△ 23,46423,464 △△ 23,54723,547 △△ 23,38423,384 △△ 24,26424,264 △△ 24,16624,166 △△ 24,80524,805 △△ 24,71324,713 △△ 24,94924,949

△△ 6,6006,600

△△ 10,98710,987 △△ 9,6659,665 △△ 9,0719,071 △△ 8,8438,843 △△ 10,01210,012 △△ 10,41310,413 △△ 11,47411,474 △△ 12,14312,143 △△ 13,35413,354

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福島の進路 2020.36

調 査

⑶ 人口の社会動態 本県人口の社会動態は、震災のあった2011年に△33,160人となった後、揺り戻しにより2014年と2015年はマイナスが2,000人を下回ったが、その後は再び増加し、直近では5,000人を超えるマイナスとなっている(図表4)。

⑷ 性別・年齢別にみた社会動態 2015~2018年の社会動態の累計を性別・年齢別でみると、男女ともに15~34歳の転出超過が目立っている。進学や就職などで転出が多くなる年代であるが、特に女性の20~24歳が突出しており、就職の他に女性は婚姻により県外へ転出するケースが多いことも含まれると考えられる。(図表5)。

⑸� 県の人口ビジョンでは社会動態目標を先送り

 本県の人口ビジョンにおいても2020年に社会動態±ゼロを目指すことが掲げられたが、昨年12月に公表された更新案では目標時期が2030年に先送りされている。しかし、2030年の時期についても見通しは不透明であり、社会動態±ゼロの達成が現実的には極めて厳しいものであると言わざるを得ない。そこで、本県としては自然動態への取り組みがさらに重要になると考えられ、次に出生の動向について見てみる。

2.福島県の合計特殊出生率 厚生労働省が公表する合計特殊出生率は「15歳

図表4 福島県人口の社会動態

資料:福島県「福島県の推計人口」 2018年までは年報、2019年は1~12月の累計により作成

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年△100,000

△ 80,000

△ 60,000

△ 40,000

△ 20,000

0

20,000

40,000

60,000

80,000人 転入数 転出数 社会動態

57,59357,593 52,48652,486 51,09151,091 54,22754,227 56,45756,457 59,45459,454 57,44657,446 57,03957,039 56,56356,563 56,89856,898

△△ 64,22064,220

△ 85,646

△△ 64,77364,773 △△ 59,01259,012 △△ 58,26058,260 △△ 61,08561,085 △△ 62,20862,208 △△ 64,44764,447 △△ 63,07663,076 △△ 62,62562,625

△△ 6,6276,627

△△ 33,16033,160

△△ 13,68213,682△△ 4,7854,785 △△ 1,8031,803 △△ 1,6311,631 △△ 4,7624,762 △△ 7,4087,408 △△ 6,5136,513 △△ 5,7275,727

図表5  性別・年齢別にみた福島県人口の社会動態(2015~2018年累計)

資料:総務省「住民基本台帳人口移動報告」

△9,000△8,000△7,000△6,000△5,000△4,000△3,000△2,000△1,000

01,000人

男性女性

0~4歳

5~910~14

15~19

20~24

25~29

30~34

35~39

40~44

45~49

50~54

55~59

65~69

70~74

75~79

80~84

85~89

90歳以上

60~64

△ 215

△ 3,502

△△5,1345,134

△ 921 △ 306

△186

△ 3,342

△ 8,132

△ 1,160

△ 171

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福島の進路 2020.3 7

調 査

図表6 合計特殊出生率の推移

資料:厚生労働省「人口動態調査」

全国4位 全国20位1.651.6

1.571.54

1.51 1.49 1.49 1.491.52

1.491.52

1.481.41

1.531.58 1.58 1.59 1.57

1.53

1.361.33 1.32

1.29 1.291.26

1.32 1.341.37 1.37 1.39 1.39 1.41 1.43 1.42

1.45 1.44 1.43 1.42

1.00

1.10

1.20

1.30

1.40

1.50

1.60

1.70

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018年

福島県全国

図表7 都道府県別の合計特殊出生率

福島県 1.79

全国 1.54

福島県 1.53

全国 1.42

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福島の進路 2020.38

調 査

 東北や北海道で低く、九州・沖縄などで高い水準にあることついて、明確な理由はわかっていないが、一般的に子育てにおける家族の支援や出産に対する価値観など、地域性の違いがあるものと考えられる。

⑶ 合計特殊出生率と人口減少のアンバランス 2010年と2018年の15~49歳女性人口を比較した増減率と2018年の合計特殊出生率の関係を都道府県別にみると、東北各県は宮城県を除き全般的に減少率が高い。その中でも本県は、合計特殊出生率が1.5を超える一方で減少率が突出している(図表8)。本県の合計特殊出生率は2010年の1.52をわずかに上回る水準を維持しているが、出生を取り巻く環境は大きく様変わりしている。

⑷ 市町村別の動向 厚生労働省「人口動態統計」において公表される市町村別の合計特殊出生率は5年平均値であり、現在公表されているのは2008~2012年平均とやや古いデータである。そこで、直近の2014~2018年平均の合計特殊出生率を試算してみた。 合計特殊出生率の試算には、母の年齢が15~49歳の出生数と15~49歳の5歳区分でみた女性人口を使用する。出生数は「人口動態統計」、15~49歳女性人口は福島県「福島県現住人口調査」のデータを引用した。 公表済の2008~2012年平均はベイズ推定値※1であるのに対し、今回の試算はやや粗いことから直接比較はできないが、2008~2012年平均と比較すると、多くの自治体で2014~2018年平均の合計特殊出生率が上回っており、震災前後の水準から見劣りしていないことがわかる。なお、現住人口が公表されていない相双地域の自治体は今回試算の対象から除いている。また、広野町や川内村などでか

から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」と定義される。1人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当し、次の2つの種類がある。A 期間合計特殊出生率 ある期間(1年間)の出生状況に着目したもので、その年における各年齢(15~49歳)の女性の出生率を合計したもの。女性人口の年齢構成の違いを除いた「その年の合計特殊出生率」であり、年次比較、国際比較、地域比較に用いられている。B コーホート合計特殊出生率 ある世代の出生状況に着目したもので、同一世代生まれ(コーホート)の女性の各年齢(15~49歳)の出生率を過去から積み上げたもの。「その世代の合計特殊出生率」である。

 実際に「1人の女性が一生の間に生む子どもの数」はBのコーホート合計特殊出生率であるが、この値はその世代が50歳に到達するまで得られないため、それに相当するものとしてAの期間合計特殊出生率が一般に用いられており、本稿で述べている合計特殊出生率も期間合計特殊出生率を指している。

⑴ 本県の合計特殊出生率 従来、本県の合計特殊出生率は高水準で、震災後の2012年を除き全国平均を上回り推移してきた。一方、直近では2016年の1.59から2年連続で低下しており、全国順位は2000年の4位から、2018年は20位とかなり後退している(図表6)。

⑵ 合計特殊出生率は「西高東低」 都道府県別にみると、合計特殊出生率が1.5を下回っているのは1990年には7都道府県のみであったが、2018年には21都道府県まで増加するなど、全国的に低下している。また、合計特殊出生率は全体的に「西高東低」の傾向が強まっており、2018年に北海道、東北、関東で1.5を超えているのは本県のみとなっている。また、東京圏などの大規模都市圏は全般的に低い傾向にある(図表7)。

—————————————————————————※1� 出生数が少ない小さな自治体の場合、偶然変動の

影響を受け、数値が不安定な動きを示すことがあるため、分子分母にあらかじめ一定の数字を加えておくベイズ統計学の手法を用いることにより、偶然変動の影響を減少させた推計値。

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福島の進路 2020.3 9

調 査

図表8 女性人口の増減と合計特殊出生率

北海道

青森県岩手県

宮城県秋田県

山形県福島県

茨城県栃木県

群馬県

埼玉県千葉県

東京都

神奈川県

新潟県

富山県石川県

福井県

山梨県長野県

岐阜県 静岡県愛知県三重県 滋賀県

京都府

大阪府

兵庫県

奈良県

和歌山県

鳥取県

島根県

岡山県広島県山口県

徳島県

香川県愛媛県

高知県福岡県

佐賀県長崎県 熊本県

大分県

宮崎県鹿児島県

沖縄県

1.01.01.0

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

1.7

1.8

1.9

2.0

△20 △15 △10 △5 0 5

15~49歳女性人口増減率(%)(2010年→2018年)

合計特殊出生率(人)(2018年)合計特殊出生率は高いが女性

人口流出がそれ以上に目立つ 合計特殊出生率は高いが女性人口流出がそれ以上に目立つ

合計特殊出生率は低いが女性人口流出は抑制合計特殊出生率は低いが女性人口流出は抑制

唯一人口が増加唯一人口が増加

2008~� 2012年平均

2014~� 2018年平均

2008~�  2012年比

福 島 市 1.35 1.47 0.12二 本 松 市 1.39 1.41 0.02伊 達 市 1.28 1.29 0.01本 宮 市 1.43 1.47 0.04桑 折 町 1.29 1.34 0.05国 見 町 1.36 1.13 △�0.23川 俣 町 1.40 1.27 △�0.13大 玉 村 1.49 1.69 0.20郡 山 市 1.43 1.52 0.09須 賀 川 市 1.49 1.53 0.04田 村 市 1.51 1.60 0.09鏡 石 町 1.50 1.67 0.17天 栄 村 1.49 1.36 △�0.13石 川 町 1.46 1.30 △�0.16玉 川 村 1.48 1.55 0.07平 田 村 1.75 1.39 △�0.36浅 川 町 1.61 1.62 0.01古 殿 町 1.64 1.52 △�0.12三 春 町 1.40 1.33 △�0.07小 野 町 1.54 1.52 △�0.02白 河 市 1.55 1.64 0.09西 郷 村 1.62 1.63 0.01泉 崎 村 1.44 1.42 △�0.02中 島 村 1.49 1.53 0.04矢 吹 町 1.60 1.78 0.18棚 倉 町 1.67 1.67 0.00矢 祭 町 1.69 2.13 0.44塙 町  1.63 1.68 0.05鮫 川 村 1.61 2.00 0.39

2008~� 2012年平均

2014~� 2018年平均

2008~�  2012年比

会津若松市 1.59 1.58 △�0.01喜 多 方 市 1.61 1.80 0.19北 塩 原 村 1.59 1.59 0.00西 会 津 町 1.66 1.86 0.20磐 梯 町 1.55 1.77 0.22猪 苗 代 町 1.60 1.73 0.13会津坂下町 1.51 1.54 0.03湯 川 村 1.47 1.68 0.21柳 津 町 1.48 1.90 0.42三 島 町 1.45 2.19 0.74金 山 町 1.46 1.88 0.42昭 和 村 1.46 1.46 △�0.00会津美里町 1.52 1.54 0.02下 郷 町 1.58 1.63 0.05檜 枝 岐 村 1.43 1.90 0.47只 見 町 1.58 1.74 0.16南 会 津 町 1.73 1.75 0.02相 馬 市 1.63 1.71 0.08南 相 馬 市 1.56 2.01 0.45広 野 町 1.48 2.81 1.33楢 葉 町 1.48 - -富 岡 町 1.49 - -川 内 村 1.47 2.29 0.82大 熊 町 1.77 - -双 葉 町 1.53 - -浪 江 町 1.59 - -葛 尾 村 1.51 - -新 地 町 1.47 1.63 0.16飯 舘 村 1.78 - -い わ き 市 1.49 1.54 0.05

図表9 市町村別合計特殊出生率

資料:厚生労働省「人口動態統計」、福島県「福島県現住人口調査」より作成   相双地域で現住人口データがない自治体は試算を行っていない

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福島の進路 2020.310

調 査

なり高水準となっているのは、女性人口が大幅に減少していることが影響している(図表9、10)。 地域別では県北地域でやや低い傾向がみられる。

県北地域は仙台都市圏と交通で密接に結ばれており、移動のしやすさが結婚・出産の行動に影響していることが窺える。

図表10 市町村別合計特殊出生率(2014~2018年平均)

2014~2018年平均

白色は試算していない自治体

2008~ 2012年計

2014~ 2018年計

2008~ 2012年比 増減率

福 島 市 11,358 10,420 △�938 △�8.3二 本 松 市 2,085 1,744 △�341 △�16.4伊 達 市 1,937 1,602 △�335 △�17.3本 宮 市 1,267 1,136 △�131 △�10.3桑 折 町 356 336 △�20 △�5.6国 見 町 261 189 △�72 △�27.6川 俣 町 421 278 △�143 △�34.0大 玉 村 373 390 17 4.6郡 山 市 14,875 13,322 △�1,553 △�10.4須 賀 川 市 3,255 2,855 △�400 △�12.3田 村 市 1,326 1,171 △�155 △�11.7鏡 石 町 547 514 △�33 △�6.0天 栄 村 227 155 △�72 △�31.7石 川 町 606 397 △�209 △�34.5玉 川 村 269 224 △�45 △�16.7平 田 村 281 159 △�122 △�43.4浅 川 町 262 194 △�68 △�26.0古 殿 町 201 120 △�81 △�40.3三 春 町 614 493 △�121 △�19.7小 野 町 394 292 △�102 △�25.9白 河 市 2,699 2,354 △�345 △�12.8西 郷 村 928 849 △�79 △�8.5泉 崎 村 249 200 △�49 △�19.7中 島 村 201 174 △�27 △�13.4矢 吹 町 775 683 △�92 △�11.9棚 倉 町 647 498 △�149 △�23.0矢 祭 町 225 214 △�11 △�4.9塙 町  328 264 △�64 △�19.5鮫 川 村 149 108 △�41 △�27.5

2008~ 2012年計

2014~ 2018年計

2008~ 2012年比 増減率

会津若松市 5,111 4,520 △�591 △�11.6喜 多 方 市 1,791 1,694 △�97 △�5.4北 塩 原 村 125 75 △�50 △�40.0西 会 津 町 181 145 △�36 △�19.9磐 梯 町 119 122 3 2.5猪 苗 代 町 570 478 △�92 △�16.1会津坂下町 583 491 △�92 △�15.8湯 川 村 123 104 △�19 △�15.4柳 津 町 116 105 △�11 △�9.5三 島 町 31 42 11 35.5金 山 町 26 27 1 3.8昭 和 村 29 21 △�8 △�27.6会津美里町 699 586 △�113 △�16.2下 郷 町 193 125 △�68 △�35.2檜 枝 岐 村 20 22 2 10.0只 見 町 140 102 △�38 △�27.1南 会 津 町 558 391 △�167 △�29.9相 馬 市 1,549 1,365 △�184 △�11.9南 相 馬 市 2,621 1,841 △�780 △�29.8広 野 町 191 142 △�49 △�25.7楢 葉 町 259 246 △�13 △�5.0富 岡 町 611 502 △�109 △�17.8川 内 村 62 51 △�11 △�17.7大 熊 町 607 472 △�135 △�22.2双 葉 町 264 188 △�76 △�28.8浪 江 町 781 593 △�188 △�24.1葛 尾 村 33 52 19 57.6新 地 町 271 286 15 5.5飯 舘 村 215 257 42 19.5い わ き 市 13,180 11,784 △�1,396 △�10.6

図表11 市町村別出生数

資料:福島県「福島県現住人口調査」   出生届に記載された子の住所地でカウントしている

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福島の進路 2020.3 11

調 査

 また、2008~2012年と2014~2018年における出生数の累計を比較すると、8つの自治体で増加しているが、市部で増加した自治体はなかった(図表11)。

3.出生数増減の要因

⑴ 出生数を構成する3つの要素 年間出生数は、「15~49歳女性人口」(女性人口)、「合計特殊出生率」及び「15~49歳女性人口における年齢構成の違い」(年齢構成の違い)の3要素に分解することができる。このため、年間出生

数の動向は、「合計特殊出生率」だけではなく、「女性人口」と「年齢構成の違い」の動向にも影響を受けることとなる(図表12)。

⑵ 本県の出生数の減少要因 本県の年間出生数(母の年齢が15~49歳)は5年連続で減少しており、減少率は拡大傾向にある(図表13)。出生数の減少要因を3要素でみると、合計特殊出生率が上昇している2014年と2016年も出生数は減少している。また、2015年と2017年の合計特殊出生率の減少率は1%に満たず、2018年を除き出生数減少への影響は限定的となっている。

※2� (期間)合計特殊出生率は15歳から49歳までの35個の年齢別出生率を加えたものであるため、15~49歳女性人口に乗じて年間出生数となるように35で除している。

※3� 「年齢構成の違い」は、「女性人口」×「合計特殊出生率」/35が「15~49歳のどの年齢の女性の人数も同じとした場合に当該合計特殊出生率で見込まれる出生数」となることから、「実際の年齢構成がどの年齢の女性の人数も同じという年齢構成とどのくらい違うかを示すもの」である。出生率の高い年齢層に女性の人数が相対的に多くなっている場合には、「年齢構成の違い」は概ね1より大きくなる。

図表12 出生数の構成要素

 年間出生数 = 15~49歳 女性人口 × 合計特殊出生率 

× 15~49歳女性人口における 

年齢構成の違い※335※2

図表13 本県の年間出生数と前年比増減率

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年年間出生数(人) 14,543 14,517 14,192 13,744 13,216 12,495年間出生数前年比(%) 5.6 △�0.2 △�2.2 △�3.2 △�3.8 △�5.5資料:厚生労働省「人口動態統計」

図表14 出生数と構成要素の前年比2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

A.年間出生数(人) 14,543 14,517 14,192 13,744 13,216 12,495構成要素

B.15~49歳女性人口(人) 352,678 347,656 334,703 330,824 324,366 317,843C.期間合計特殊出生率/35 0.045 0.046 0.046 0.046 0.045 0.044D.15~49歳女性人口における年齢構成の違い 0.922 0.910 0.931 0.907 0.897 0.890

前年比 (%)

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年A.年間出生数 5.6 △�0.2 △�2.2 △�3.2 △�3.8 △�5.5構成要素

B.15~49歳女性人口 △�1.6 △�1.4 △�3.7 △�1.2 △�2.0 △�2.0C.期間合計特殊出生率/35 7.8 2.6 △�0.8 0.6 △�0.9 △�2.7D.15~49歳女性人口における年齢構成の違い △�0.4 △�1.3 2.4 △�2.6 △�1.0 △�0.8

資料:厚生労働省「人口動態統計」、福島県「福島県現住人口調査」より作成   出生数は母の年齢が15~49歳のみ集計

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福島の進路 2020.312

調 査

一方、15~49歳女性人口の減少率は他の要素に比べ高めで、出生数減少に大きな影響を与えている。また、「15~49歳女性人口における年齢構成の違い」は1を下回り、次第に小さくなっている。これは、出生率の高い20~30代の女性の人数が相対的に少なく、さらにその傾向が強まっていることを意味する(図表14)。 本県の出生数の減少要因は合計特殊出生率のみならず、15~49歳、特に20~30代の女性人口の減少が大きく影響していることが確認できる。

⑶ 初婚年齢の上昇 従来、本県における妻の初婚年齢は全国一若い水準で推移してきた。直近の2018年は28.8歳で第3位であるが、それでも全国上位を保っており、このことが高い合計特殊出生率を維持してきた一因であったと言える。但し、平均初婚年齢は男女ともに全国的に上昇しており、女性人口流出の流れに歯止めをかけなければ、今後の合計特殊出生率

がさらに抑制されることが懸念される(図表15)。

4.経済的な安定から出生数増加に

⑴ 県内総生産との関係 本県の合計特殊出生率の推移をみると、県内総生産の推移と概ね近い動きをしていることがわかる(図表16)。県内の経済動向は出産・子育ての意向に大きな影響を与えていることが窺える。震災後の復興特需により回復が続いてきた県内経済も現在は足踏み状態となっており、今後の県内経済の動向が大きな障壁になることも懸念される。

⑵ 雇用の不安は出生率の低下に 2015年の国勢調査における完全失業率を年齢別にみると、15~64歳(生産年齢人口)の未婚男性では30代以降すべての年代で10%を超えており、就業・収入の有無と配偶関係には密接な結びつきがあるとみられる(図表17)。また、福島県人口

図表15 本県の性別初婚年齢

資料:厚生労働省「人口動態統計」

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018年

夫 妻

24

25

26

27

28

29

30

31歳

27.527.527.927.9 27.827.8

28.128.1 28.228.2 28.428.4 28.628.6 28.728.7 28.628.6 28.828.8

29.429.429.729.7 29.629.6

29.929.9 29.829.830.230.2 30.330.3 30.530.5 30.530.5 30.630.6

図表16 合計特殊出生率と県内総生産の推移

資料:厚生労働省「人口動態統計」、福島県「福島県県民経済計算」

0100200300400500600700800900

1.30

1.35

1.40

1.45

1.50

1.55

1.60

1.65

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018年

百億円

合計特殊出生率 県内総生産(右軸)両者の相関係数 0.83両者の相関係数 0.83

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ビジョンの県民アンケートでは、子どもを持ちやすくなる環境として子供のいない家庭の46.6%が「雇用の安定」を挙げており、経済的な理由で結婚、そして出産・子育てに踏み切れない人は多いものとみられる。県内の有効求人倍率は今もなお1.5倍前後で推移するなど、雇用動向は引き続き高水準を維持しているが、出生数の増加を期待するには現在及び将来の経済的な不安を払拭することが必要となる。

⑶� 県内の取り組み発信強化で強烈なイメージを

 経済面における負のイメージは県民生活全体に停滞感を与え、出産・子育ての意欲の低下につながることが懸念される。本県では、イノベーションコースト構想やロボット・航空宇宙産業、医療産業集積など、様々な取り組みが行われているが、その内容について知らない県民が多いものと思われる。本県における成長産業について「見える化」をさらに進めることで、対外的に強烈なイメージを発信することができる。経済的に活気づけることができれば、さらに産業の集積と相乗効果が生まれ、県内の停滞感払拭につながるものと期待される。 現時点では、経済的な不安に伴う少子化が固定

されている感があり、まずは本県が経済的に活気づくよう、官民のさらなる協力が求められる。

5.おわりに 地方創生への取り組みとして2015年度に始まった国の第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、重要課題のひとつとして東京一極集中の是正が掲げられた。しかし、昨年12月に公表された第2期案(2020~2024年度)では、東京一極集中を是正する時期を2020年から2024年度に先送りされるなど、地方における転出超過の流れは変わっていないのが現状である。 東京一極集中が是正されない中、若年層の流出や合計特殊出生率の低下は県内の活力を失うことにつながる。各自治体が社会動態の改善に重きを置く動きは、単に近隣の県や市町村との人口の奪い合いに終始することにつながり、本来目指すべき地域経済縮小の克服という方向とかけ離れてしまうことが危惧される。従来、合計特殊出生率が全国上位であった本県は「子育てしやすい県」であったはずである。第2期創生戦略は若者が活気を取り戻す効果的な政策となることを期待したい。� (担当:木村正昭)

図表17 本県の性別・配偶関係別完全失業率(2015年)男性(%) 女性(%)

未婚 有配偶 未婚 有配偶15~19歳 8.5 12.4 8.1 16.820~24歳 9.0 3.6 7.6 4.825~29歳 9.0 1.9 7.4 2.730~34歳 10.7 1.6 7.5 2.235~39歳 10.7 1.2 7.1 2.040~44歳 11.2 1.3 7.8 1.845~49歳 11.7 1.6 7.2 1.650~54歳 12.5 1.7 7.5 1.655~59歳 12.8 2.4 7.0 1.560~64歳 14.2 4.1 7.5 1.765~69歳 11.5 3.9 4.3 1.070~74歳 10.6 2.8 3.1 1.075~79歳 6.7 2.1 2.8 0.980~84歳 16.0 1.7 1.5 0.785歳以上 12.9 1.5 2.8 0.9合 計 10.6 2.3 7.4 1.7

資料:総務省「国勢調査」(2015年)より作成