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植物代謝生理学研究室 Laboratory of Plant Physiology and Metabolism 白岩善博 教授 鈴木石根 教授 円石藻のユニークな脂質アルケノンの代謝解析 円石藻Emiliania huxleyi Emiliania huxleyi homepage http://www.soes.soton.ac.uk/staff/tt/eh/satbloompics.html Canada 円石藻の初期代謝産物の解析 円石藻のセレン代謝機構の解析 黄色:Nile Redによる中性脂質の染色 赤色:クロロフィルの自家蛍光 協力:東京大学 河野重行研究室 陸上植物の様にセレンを無毒化して蓄積。また、それ らセレン含有化合物からセレノプロテインを合成する。 他にも、亜セレン酸に特異的な取り込み機構を持つ。 Lipid Bodyのショ糖密度勾配法による単離 Lipid Body アルケノンは直鎖の不 飽和ケトンであり、低 温ストレスによりその 不飽和度を増す。 多糖(β-グルカン)ではなく、アルケノ ンや低分子化合物を蓄積する。 円石藻エミリアニアは、海洋に生息する単細胞藻類です。円石藻は生 育にともない、光合成と石灰化により海洋のCO 2 を固定します。また、 “ブルーム(水の華)“と呼ばれる大規模増殖を引き起こします。その ため、地球規模の炭素循環に大きな影響を及ぼす重要な生物です。 また、円石藻は二回の細胞共生を経て生まれた植物であり、緑色植 物とは異なる細胞構造や代謝経路を持ちます。しかし、光合成炭素 固定をはじめ、円石藻の代謝機構はほとんど明らかになっていませんそこで、私たちは円石藻の様々な代謝経路の解析を行っています。 基礎:藻類の光合成炭素代謝・栄養塩吸収機構・環境応答機構の解明 応用:藻類を利用した物質生産の向上・バイオ燃料の生産 円石藻は、陸上植物が持たない代謝経路を持つ。 (葉緑体エノラーゼやピルビン酸カルボキシラーゼなど)

植物代謝生理学研究室 - 筑波大学plmet.biol.tsukuba.ac.jp/figs/poster.pdfラン藻の環境応答・シグナル伝達系の研究 ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803 ラン藻は地球史上で初めて、酸素発生型光合成を行った生物であり、植

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Page 1: 植物代謝生理学研究室 - 筑波大学plmet.biol.tsukuba.ac.jp/figs/poster.pdfラン藻の環境応答・シグナル伝達系の研究 ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803 ラン藻は地球史上で初めて、酸素発生型光合成を行った生物であり、植

植物代謝生理学研究室Laboratory of Plant Physiology and Metabolism

白岩善博 教授 鈴木石根 教授

円石藻のユニークな脂質アルケノンの代謝解析

円石藻Emiliania huxleyi

Emiliania huxleyi homepagehttp://www.soes.soton.ac.uk/staff/tt/eh/satbloompics.html

Canada

円石藻の初期代謝産物の解析 円石藻のセレン代謝機構の解析

黄色:Nile Redによる中性脂質の染色赤色:クロロフィルの自家蛍光

協力:東京大学 河野重行研究室

陸上植物の様にセレンを無毒化して蓄積。また、それらセレン含有化合物からセレノプロテインを合成する。他にも、亜セレン酸に特異的な取り込み機構を持つ。

Lipid Bodyのショ糖密度勾配法による単離

Lipid Body

アルケノンは直鎖の不飽和ケトンであり、低温ストレスによりその不飽和度を増す。

多糖(β-グルカン)ではなく、アルケノンや低分子化合物を蓄積する。

円石藻エミリアニアは、海洋に生息する単細胞藻類です。円石藻は生

育にともない、光合成と石灰化により海洋のCO2を固定します。また、

“ブルーム(水の華)“と呼ばれる大規模増殖を引き起こします。その

ため、地球規模の炭素循環に大きな影響を及ぼす重要な生物です。

また、円石藻は二回の細胞共生を経て生まれた植物であり、緑色植

物とは異なる細胞構造や代謝経路を持ちます。しかし、光合成炭素

固定をはじめ、円石藻の代謝機構はほとんど明らかになっていません。

そこで、私たちは円石藻の様々な代謝経路の解析を行っています。

基礎:藻類の光合成炭素代謝・栄養塩吸収機構・環境応答機構の解明

応用:藻類を利用した物質生産の向上・バイオ燃料の生産

円石藻は、陸上植物が持たない代謝経路を持つ。(葉緑体エノラーゼやピルビン酸カルボキシラーゼなど)

Page 2: 植物代謝生理学研究室 - 筑波大学plmet.biol.tsukuba.ac.jp/figs/poster.pdfラン藻の環境応答・シグナル伝達系の研究 ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803 ラン藻は地球史上で初めて、酸素発生型光合成を行った生物であり、植

ラン藻の環境応答・シグナル伝達系の研究

ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803

ラン藻は地球史上で初めて、酸素発生型光合成を行った生物であり、植

物がもつ葉緑体の起源となった生物である。私たちはラン藻がもつ環境シグ

ナル伝達系である「二成分制御系」についての研究や、二成分制御系を

利用したラン藻の代謝経路の改変などを行っています。

シグナル検知ドメイン

ヒスチジンキナーゼドメイン

レシーバードメイン アウトプットドメイン

転写調節

環境シグナル

リン酸基転移

ヒスチジンキナーゼ

レスポンスレギュレータ

二成分制御系の環境ストレスセンサーであるヒスチジンキナーゼの機能解析を行っています。

二成分制御系を改変して、有用物質生産・回収のための代謝経路のON/OFFスイッチの構築を試みています。

二成分制御系の模式図

任意のシグナル

改変ヒスチジンキナーゼ

改変レスポンスレギュレータ

遺伝子発現調節

有用物質生産

物質の排出・回収

シグナル受容ドメインを他のヒスチジンキナーゼのものと入れ替えたキメラセンサーを作成して、シグナル受容の分子メカニズムの解明や、機能未知なヒスチジンキナーゼの解析を進めています。

藻類を用いた炭化水素生産の実証研究

ラビリンチュラ類Aurantiochytrium

オーランチオキトリウムとは、無色ストラメノパイルであるラビリン

チュラの1種である。従属栄養性生物であり、光合成は行わず、

有機物を分解してオイルを生産する高密度培養ができる。

『東北復興次世代エネルギープロジェクト』廃棄有機物(4億トン/年)を優先的に活用して炭化水素(石油系オイル)を生産、さらに高増殖藻類で生産したバイオマスを有機物資源として供給、20%を炭化水素に変換する

オーランチオキトリウム明視野(左);オイル染色像(右)

排水中の有機成分を微細藻類を用いて燃料用炭化水素に変換するシステムの開発を推進 一次

処理水最初沈 殿池

活性汚泥槽

 二次 処理水

余剰有機   汚泥

年間4億トン(国内)を焼却処分

無機態の 窒素・リン

水域の 富栄養化

炭化水素生産

亜臨界水可溶化処理炭化水素生産

オーランチオキ トリウム培養槽

ボトリオコッカス 培養フィールド

放流

不溶性有機物

CO2

残渣残渣

CO2

不溶性物質 (燃料化)

光合成藻類(Botryococcus braunii等)と従属栄養 藻類(Aurantiochytrium sp.等)の併用により 炭化水素生産の効率を上げる。

有機排水

温水供給(寒冷期)

焼却炉CO2

可溶化

想定されるパイロット施設規模ボトリオコッカス:200m2 (培養フィールド)オーランチオキトリウム:360L(90L培養槽×4基)

実証農地  ・・筑波大学

つくば市概略

『つくば国際戦略総合特区』つくば市内の耕作放棄地の転用等によりボトリオコッカス大量生産大規模実証実験を実施。大学構内に設置されたプラントでオーランチオキトリウムの大量培養を実施

ラン藻培養株