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海外投資収益の還流について 国際課税委員会メンバー限り 経済産業省 貿易経済協力局 貿易振興課 平成23年10月

経済産業省 貿易経済協力局 貿易振興課 平成23年10月 · )により、国内還流した配当金は 08年の 2.4兆円から、09 ... タックスヘイブン税制(22fy・23fy

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海外投資収益の還流について

国際課税委員会メンバー限り

経済産業省

貿易経済協力局 貿易振興課

平成23年10月

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6

国内還流した配当金の推移

•外国子会社から受け取る配当を原則非課税にする「外国子会社配当益金不算入制度」 の導入(2009年4月より施行。次ページ参照。)により、国内還流した配当金は08年の2.4兆円から、09年は3.0兆円と約2割強の増加。

•世界経済が減速し収益が減少する中、 2010年以降においても国内還流した配当金は安定的に推移。

対外直接投資収益と配当金の推移(単位:兆円)

1.05 0.97 0.921.33

1.802.07

2.882.42

3.03 3.13

2.380.85 1.03

0.53

0.64

1.46

1.91

2.30

2.50 1.16

0.15

0.67

0

1

2

3

4

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

1資料:財務省・日銀「国際収支統計」から作成。

国内還流した配当金等

海外での内部留保(再投資収益)

(年)(1月~8月)

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外国子会社配当益金不算入制度の導入(平成21年度税制改正)

• 外国子会社からの配当について、外国税額控除制度に代えて、益金不算入制度を恒久措置として導入。

海外(税率30%の場合) 国内(税率40%)

配当

配当

配当

海外(税率30%の場合) 国内(税率40%)

配当配当

改正前:外国税額控除制度(全世界所得方式)改正前:外国税額控除制度(全世界所得方式) 改正後:益金不算入制度改正後:益金不算入制度

2

○企業の経営戦略・配当政策に関する制度的障害の除去(中立性確保)○制度の簡素化・事務負担の大幅軽減

(税額控除)

国内所得100国外所得100国外所得100

配当に対応する現地での税額

国外所得100

30% 40

10%分の追加的課税分が発生。

30%

国内所得100

現地で課税されるのみ

40%配当に対応する

現地での税額

海外子会社からの配当(95%)は、国内では益金に算入しない。海外子会社からの配当は国内税率で課税した上で、外国で納めた税額を控除する。

<二重課税排除方法を変更>

※日本より低税率の国から戻すと追加的課税分が発生するため、海外に留保する傾向。

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配当還元に対する税制改正の影響及び配当金の用途

• アンケート調査では、我が国への配当還元をすると回答した企業が、外国子会社配当益金不算入制度の導入により、4割強から7割弱まで上昇。

• 現地法人からの配当金の用途について「研究開発・設備投資」と回答した企業が4割強で最大。「雇用関係支出」と回答した企業も1割強。

43 648.5

0 20 40 60

現地で利益を再投資

(%)44.1%

39.3%

35 0%

40.0%

45.0%

50.0%(複数回答:N=1,887)

現地法人から還流させた配当金の用途外国子会社配当益金不算入制度の配当還元に対する影響

3

1.1

69.5

29.1

43.6

1.8

41.9

50.7

その他

本邦への配当還元

現地で利益を留保

制度導入前(n=270)

制度導入後(n=275)

資料:財団法人国際経済交流財団「競争環境の変化に対応した我が国産業の競争力強化に関する調査研究」から作成。

16.1%

2.3%

19.3%

1.0%

26.1%

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

資料:経産省「海外事業活動基本調査」から作成。

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•我が国の配当金の直接投資収益に占める割合は約6割と国際的に見ても遜色ない水準。

各国の配当金の対直接投資比(配当性向)

56%58%

68%

60%

70%

80%

配当金/直接投資収益(02-09年の平均)

4

56%

42%46%

40% 41%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

日本 米国 英国 ドイツ フランス カナダ イタリア

(出所)IMF Balance of Payments Statistics Yearbook 2010、IMF World Economic Outlook Database, April 2011より作成。

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○日本の産業政策は、グローバル展開する体力のある企業が海外で稼ぎ、その利益を国内に還流して投資することで、国内の産業基盤を維持・強化する戦略に転換。

=「アジアの活力を取り込む」

○税制も、海外からの利益還流を円滑化し、それを原資に国内への投資を促進する方向で整備してきている。

空洞化懸念の解消

日本の産業政策の戦略転換

<国内への投資促進>◇法人税率5%引下げ◇アジア拠点化の推進◇ R&D税制など雇用・投資促進税制

国内投資

海外展開

海外での成長

利益還流

<海外資金還流の円滑化>◇外国子会社配当益金不算入制度(21FY)

◇新興国における課税紛争の防止◇租税条約ネットワークの拡充

<課税ベース維持>◆移転価格税制(22FY・23FY)◆タックスヘイブン税制(22FY・23FY)◆本社移転による租税回避を防止するためのインバージョン対策税制

還流障壁の除去

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海外投資収益の国内還流の障壁と対応

•ロイヤリティ料率の上限や契約期間の規制等により、相手国企業等に供与した技術の対価を十分に回収できない。

•当局の事前許可・金額制限等により、自由で迅速な送金ができない。

送金規制(ロイヤリティ規制など)、為替管理

課税制度の恣意的運用

ルール整備

WTO、EPA、投資協定、租税条約

日本政府の対応

•新興国では、産業育成や外貨獲得のため、自国企業に有利な条件での技術導入や、収益の国内再投資を外資に求めることが少なくない。

•特に新興国において、外資企業を狙い打ちにした徴税が現場レベルで発生。

課税制度の恣意的運用

•各種規制により相手国に資金が滞留する結果、相手国と我が国の当局による二重課税が発生。租税条約が存在しても、相互協議の結果等により、税還付されないことがある。

国際的二重課税の発生

• インフラ事業等において支払遅延や契約再交渉の強制が発生。•特に資源分野において、国有化等が発生。

外国政府の契約不履行、投資財産の収用

投資協定、租税条約

二国間協議税務当局による協議

現地大使館、JETROとの連携ビジネス環境整備小委員会

不公正貿易報告書

紛争処理

WTO、国際投資仲裁

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《アジア》モンゴル〔02〕ラオス〔08〕カンボジア〔08〕パプアニューギニア〔11〕

《南米》チリ〔07〕

ペルー〔09〕コロンビア〔11〕

投資協定

《東欧・中央アジア》キルギス〔93〕グルジア〔94〕

(投資協定締結済)

(租税条約締結済)(租税条約未締結)

【7ヶ国】

【20ヶ国】

【47ヶ国】《ヨーロッパ》ルクセンブルク〔10改正署名〕

★[交渉中]

《アジア》台湾、ソロモン諸島

《中南米》ブラジル 〔77〕★バハマ(*) (11)

《アジア》韓国〔99/03〕★

香港 〔11/97〕マレーシア 〔11/06〕

フィリピン〔08/08〕★[予備協議中]インド 〔06/11〕★[交渉中]パキスタン〔08/02〕ブルネイ〔09/08〕

《ヨーロッパ》スイス〔10署名/09〕★

《アジア》

タイ〔90/07〕バングラデシュ〔91/99〕

シンガポール〔10/02〕ベトナム〔95/04〕

《中南米》メキシコ〔96/05〕

《中近東》トルコ〔94/93〕

《アジア》スリランカ〔68/82〕インドネシア〔82/08〕中国〔84/89〕★[予備協議中]

《中近東》エジプト〔69/78〕

《東欧・中央アジア》

ロシア〔86/00〕ウズベキスタン〔94/09〕

《アジア》

《北米》

租税条約※投資章を有するEPAを含む

租税条約・投資協定※・社会保障協定の締結国及び交渉国

7

グルジア〔94〕タジキスタン〔94〕トルクメニスタン〔95〕ウクライナ〔95/交渉準備中〕アルメニア〔96〕ベラルーシ〔97〕モルドヴァ〔98〕アゼルバイジャン〔05〕ルーマニア〔78〕ハンガリー〔80〕★[交渉中]ポーランド〔82〕チェコ〔94〕★スロバキア〔94〕★ [予備協議中]

《アフリカ》ザンビア〔71〕

(投資協定未締結)★:社会保障協定の締結国

★[交渉中]ノルウェー〔92〕スウェーデン〔99〕

★[予備協議中]

《アフリカ》南アフリカ 〔97〕

《東欧・中央アジア》ブルガリア〔91〕

《中近東》イスラエル〔93〕

《中近東》UAE(租:交渉中)カタール(投:交渉準備中)

ヨルダン、オマーン、バーレーン

《中南米》アルゼンチンベネズエラ、ボリビア、パナマ

《アフリカ》アルジェリア(投:交渉準備中)

タンザニア、ナイジェリア、ガーナ、マダガスカルアンゴラ(投:大筋合意)

《欧州》 ポルトガル(交渉中)等

ケイマン島(*)(11署名)

《大洋州》ニュージーランド〔67〕フィジー〔70〕

《ヨーロッパ》オーストリア〔63〕★[予備協議中]デンマーク 〔68〕アイルランド〔74〕★スペイン〔74〕★イタリア〔82〕★ドイツ〔84〕★ベルギー[10改正署名]★フィンランド〔91〕バーミューダ(*)〔10〕マン島(*)(11)ジャージー(*)11基本合意)ガーンジー (*)(11基本合意) <対応的調整×

更正処分期間制限×>

<移転価格関連規定○または日米条約以降>

《北米》

カナダ〔00〕★アメリカ〔04(11改正交渉中)〕★

《大洋州》

オーストラリア〔08/交渉中〕★

《ヨーロッパ》

イギリス〔06〕★フランス〔07〕★

オランダ〔10改正署名〕★

《東欧・中央アジア》

カザフスタン〔09/交渉中〕

《中近東》サウジアラビア〔11/実質合意〕

クウェート〔10署名/実質合意〕

<対応的調整○更正処分期間制限×>*情報交換規定を主体とした租税協定

赤字:産業界の関心国

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<海外における課税問題の解決手法>

1.現地税務当局との対話

○現地の税務担当官との対話

○現地 異議申立 服審査 税務裁判等

• 最も確実な現地税務当局との対話のみならず、現地大使館・JETRO、バイ・マルチの外交枠組み、不公正貿易報告書等をフルに活用し、海外における課税問題の解決にあたることが重要。

• 企業の無用な負担を防ぎ、問題解決につなげるためには、産業界・政府における対応マニュアルの整備・普及、情報提供の推進が重要。経産省内に海外での課税問題に関する駆け込み寺的なスキームの確立を目指す。

海外における課税問題の解決手法①

○現地での異議申立て・不服審査・税務裁判等

○二国間の国税当局による相互協議(租税条約締結国のみ)

2.現地大使館・JETRO等との連携

○現地商工会議所等を通じ現地企業の要望をとりまとめ、現地税務当局等に申し入れ

○口上書等書面による要望の伝達及び質問の発出、書面による回答要請8

地方税務署のみの判断である場合もある。例)インドの子会社PE認定→高等裁判所に提訴したことにより、納税者が勝訴

両国間の交渉により二重課税状態については軽減あるいは解消されうる。今後、仲裁制度が導入される条約が増えれば有効性はますます高まる。→相互協議処理件数は、平成22事務年度で164件(うち事前確認事案が128件)。

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3.二国間協議等における問題提起

○政府間(ハイレベル)で投資環境整備を要請し、相手国執行当局に対し、トップダウンでプレッシャーをかける

海外における課税問題の解決手法②

現地税務当局や相互協議により解決が図られない制度上の問題が国際標準から外れている場合には有効。(最終的な処理は税務当局マターとなるため、税務当局を飛び越したアクションは、税務当局同士のルートを切ることにもなるので進行中の事案に影響を与えないよう見極めは必要。)例)中国、インドネシア、ブラジルなどはバイ会談や二国間協議の場で要請を継続。

4.マルチの枠組みを通じた投資環境整備

○同業他社や他国からの進出企業等と横の連携をとり、現地進出企業に共通の課題として、問題を一般化できるか否かがポイント

5.企業サイドでの取組

○欧米韓に比べて、日本の企業は現地国税制への対応が一部で遅れているとの指摘もあり。税務当局への根拠説明を文書化する等問題のある課税に対しては徹底的な対策が必要。

9

APECの投資官民対話等の場で民側からの問題意識を各国政府に提示し、同様の問題を抱える国との連携を図り、紛争を未然に防止することが理想。

企業が自主的に取りうる方策をマニュアルとして整理し、周知を図る。(マニュアルの作成は今年度委託事業にて対応予定)

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○1993年以前、「技術導入契約の締結及び審査許可の指導原則」が、純販売額を基準とした場合のロイヤリティ料率の上限を5%と規定していた。

○当該規定は廃止済みではあるが、合弁企業設立時の審査において、行政指導として執行されているという事例がある。

○結果として利益が現地に滞留し、十分な技術対価を回収することができず、日本税務当局からの利益を不当に海外に寄せて租税回避をしているとして、移転価格課税を受けた事例がある。

○本事案については、日中両国税務当局の相互協議により解決が図られたが、実質的なロイヤリティ規制については、日中経済パートナーシップ協議等を活用して改善を申し入れるも、進展なし。

《納税者の主張》○ロイヤリティ料率を5%以上に設定しようとしたが、現地政府から上限は3%との行政指導を受け 対価の回収が

【中国】事実上のロイヤリティ規制

ライセンス規制

ロイヤリティ規制

送金規制

移転価格課税

(国際的二重課税)

税還付せず

結果的に、相手国企業への無償技術供与に

⑤相互協議の実施日本税務当局(国税庁)

政府から上限は3%との行政指導を受け、対価の回収ができていない。

《日本の国税当局の見解》

○ロイヤリティ料率が低すぎる。適切な技術対価を徴収すべき。→平成22年度税制改正において、移転価格課税の際に考慮される「相手国政府の規制」には、行政指導等法令で明示されていない事実上の規制も含まれる旨、通達で明確化

《中国商務部の見解》

ロイヤリティ規制に関する法律はないが、行政指導によりほとんどの契約は3%となっている。

10中国地方政府

①ロイヤリティを上限3%に行政指導

中国国内企業(合弁、技術提携)

日本企業

①製造技術のライセンス契約

②中国地方政府の行政指導により、ロイヤリティは3%のみ送金

中国税務当局

③移転価格課税④相互協議の

申立

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○技術ライセンス契約に基づき、日本親会社から中国の合弁企業に対して出張者を派遣して、補助的・補完的な技術支援を行っている事例。

○この技術支援の対価については、使用料として10%の源泉税を納付していたところ。○中国の国家税務総局は、ロイヤリティの定義及び範囲を明確化するとともに、技術ライセンス契約に基づく生産準備支援として、補助的・補完的な技術支援や役務提供を行う短期出張者についても、海外親会社が中国に設立した一定の場所を通じてサービス提供する場合又はこれらのサービス提供期間が租税条約に定める期間(日中租税条約では6ヶ月)を超える場合にPE認定するとの通達を発効させている。「国税函[2009]507号」(09年10月) 「国税発[2010]75号」(10年7月)

「国税発[2010]75号」 第5条第3項(2)5 PEの解釈

シンガポール企業が中国の顧客企業に技術使用権を譲渡する際、同時に中国国内に人員を派遣し、当該技術の使用に関連する支援、指導等サービスを提供しかつサービス報酬を受け取る場合に、(略)当該サ ビス報酬はロイヤリティとみなし 租税条約第12条の

【中国】PE認定の強化 ①技術支援派遣

本社社員(技術支援派遣)技術ライセンス契約に基づく生産準備支 (略)当該サービス報酬はロイヤリティとみなし、租税条約第12条の

ロイヤリティ条項の規定を適用する。

(略)次の場合には、本条項の規定により、恒久的施設を形成するものとみなし、恒久的施設に帰属する部分のサービス所得に対して租税条約第7条の規定を執行する。

すなわち、当該シンガポール企業が中国で設立した一定の場所を通じて、上述の人員がサービス提供する場合、またはその他の場所であっても、サービス期間が租税条約に規定された恒久的施設の期間基準に達する場合である。

(この解釈はその他の国との租税条約にも同様に適用されることが規定されている。)

11

中国国内企業(合弁、技術提携)

日本親会社

製造技術のライセンス契約

中国税務当局

技術支援の期間が6ヶ月を超える場合にはサービスPEと認定し、法人所得税課税

技術ライセンス契約に基づく生産準備支援として、補助的・補完的な技術支援

ロイヤリティの支払い技術支援の対価を含め、日中租税条約12条に定める「使用料」として処理。10%の源泉税納付。

ルール変更

※滞在期間に応じ出向者へ個人所得税賦課

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○親会社がその社員を、海外子会社に対して出向という形態で派遣することは従来から行われている一般的な形態。○この場合、社会保険制度等に引き続き加入するため等の理由から、出向元の親会社に引き続き籍を置きながら、出向先の子会社との間で雇用契約を締結していることが多い。

○中国税務当局は、出向者の真の雇用主を出向元企業であり、出向者業務の最大の受益者は出向元企業であると判断した場合で、出向者が企業所得税法と租税条約に定める期間(日中租税条約では6ヶ月)を超える場合にPE認定するとの通達を発効させている。 「国税発[2010]75号」(10年7月)

「国税発[2010]75号」 第5条第7項(略)

(二)親会社が子会社へ派遣する人員が、親会社のために働く場合、本条第一項または第三項の規定に従い、親会社が子会社所在国で恒久的施設を形成するか判断する。

【中国】PE認定の強化 ②出向者

設を形成するか判断する。

以下の基準のいずれかに該当する場合に、関連人員は親会社のために働いているものと判断する。

1.親会社が上述の人員に対して指揮権を有し、かつ関連のリスク及び責任を負担する。

2.子会社へ派遣する人数及び基準を親会社が決定する。3.上述人員の給与を親会社が負担する。

4.親会社が子会社へ人員を派遣し活動させることにより、子会社から利益を獲得する。

(略)

一方、上述の活動により親会社が子会社所在国において恒久的施設を形成する場合、租税条約第七条の規定に従い、子会社所在国は、親会社が子会社から受け取る対価に対し、企業所得税を課すことができる。

12中国子会社

日本親会社

雇用契約(籍)を残したまま(社会保険制度等のため便宜的に)

中国税務当局

一定の要件を満たす場合には当該出向者をPEと認定し、親会社が子会社から受け取る対価に対し企業所得税を課税

出向者派遣

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第5条 恒久的施設

1.この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所をいう。(77年改正)

2.「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。

a)事業の管理の場所 b)支 店 c)事務所 d)工 場 e)作業場

f)鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所

3.建築工事現場又は建設若しくは据付けの工事については、これらの工事現場又は工事が12箇月を超える期間存続する場合には、恒久的施設を構成するものとする。

7.一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人若しくは他方の締約国内において事業(恒久的施設を通じて行われるものであるか否かを問わない。)を行う法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによっては、いずれの一方の法人も、他方の法人の恒久的施設とはされない。

(参考)恒久的施設(PE)に関する条約の規定等

OECDモデル租税条約

13

ex)日中租税条約第5条第5項

OECDモデル租税条約の基本的な考えとしては、1項・2項のような固定施設と3項の一定期間を超える建設工事現場等固定的施設を対象に恒久的施設(PE)として取り扱っている。

しかしながら、源泉地国に支店等を設置せずとも、社員を派遣して役務提供を行うことにより、利益を上げることも可能であり、このような状況の中、主に新興国からの要請によって、一定の役務提供(※)に対して課税権確保を求めるものとして、サービスPEの考え方がある。

(※役務提供者が年間183日以上源泉地国に滞在し、源泉地国内で第三者に役務提供を行う場合/(個人事業主の場合、かつ当該期間の収益の50%以上が役務提供によるものである場合))

一方、日中租税条約の第5条第5項においては以下のとおり、サービスPE(役務提供をPEとして認定するもの)が規定されている。

第5条 (恒久的施設)

5 一方の締約国の企業が他方の締約国内において使用人その他の職員(7の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)を通じてコンサルタントの役務を提供する場合には、このような活動が単一の工事又は複数の関連工事について12箇月の間に合計6箇月を超える期間行われるときに限り、当該企業は、当該他方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされる。

�工事におけるコンサルタントの役務に限定されている。

�一方の締約国の企業がその使用人等を通じて他方の締約国の企業で行う役務とされている。

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中国に対する取組状況

ロイヤリティ規制

-2008年10月26日 第7回日中経済パートナーシップ協議(次官級)

-2009年5月25日 日中貿易投資関連法制度セミナー(官民)

-2009年6月7日 第2回日中ハイレベル経済対話(閣僚級)

-2010年11月30日 租税特別措置法通達の改正(日本国内における改善):移転価格課税の際に考慮される「相手国政府の規制」には、行政指導等法令で明示されていない事実上の規制も含まれる旨、通達で明確化

14

化。(比較対象取引の選定に当たって検討すべき諸要素)66の4(2)-3 措置法第66条の4の規定の適用上、比較対象取引に該当するか否かについては、例えば、次に掲げる諸要素の類似性に基づき判断することに留意する。(1)~(10) 略(11) 政府の規制政策(法令、行政処分、行政指導その他の行政上の行為による価格に対する規制、金利に対する規制、使用料等の支払に対する規制、補助金の交付、ダンピングを防止するための課税、外国為替の管理等の政策をいう。)の影響

PE認定問題

-2010年6月3日、在広州日本総領事館から口上書発出:PEに係る税務上の取扱いについて、関係企業等からの疑問点をとりまとめ、広州市人民政府外事弁公室にあて(※)発出。書面による回答を要請。

-2010年7月12日、日中経済パートナーシップ協議・次官級会合

〔2010年度後半、外資系企業への積極的な課税が沈静化したと思われるが、2011年度以降も注意が必要〕

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○金融危機後の税収減を背景に、徴税ノルマを負った税務担当官が、移転価格課税を口実に、ロイヤリティ支払が全額否認された事例。また、他国企業の異なった車種の利益率により売上高を修正して課税する事例もあった。○日本側からの累次の申し入れ(次ページ参照)に対し、執行の適正化と執行体制の強化、移転価格ガイドラインの見直しがなされ(2010年9月)、相互協議規則(2010年10月)、事前確認規則(2010年12月)がそれぞれ公表された。○これらの規定はおおむねOECDガイドラインに沿ったものとなっており、現在は小康状態との見方もあるが、今後の動向については引き続き注視が必要。

日本企業

【インドネシア】ロイヤリティ否認

ライセンス規制

ロイヤリティ規制

送金規制

移転価格課税

(国際的二重課税)

税還付せず

結果的に、相手国企業への無償技術供与に

○インドネシアの移転価格税制2010年9月6日、インドネシアで移転価格税制に関するガイドラインが発出された。同ガイドラインは、インドネシア財務省国税総局による税務調査において移転価格税制を適用する際の指針をまとめ

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インドネシア国内企業(技術提携)

製造技術のライセンス契約

部品・完成品の対価

ロイヤリティ支払い

ロイヤリティを全額否認

インドネシア税務担当官

他国企業の異なった車種の利益率をそのまま、みなし利益マージン率として課税

税務調 移転価格税 を す 際 指針をたものであるが、運用細則等が盛り込まれていないことから、引き続き予見可能性の向上が必要。

税務調査において請求された全ての書類は要請日から1ヶ月以内に用意しなければならず、税務調査時に提出されなかった書類は異議申し立てプロセスで考慮されない等企業にとって負担の大きいものとなっている。

○インドネシアとの相互協議インドネシアとの租税条約には対応的調整規定が盛り込まれておらず、租税条約に対応的調整規定が無い場合には、相互協議の申請を却下できる規則となっている。

移転価格事案も含め税務調査について1年以内に結論を出す必要があるとの国内法により、相互協議の活用は難しい。また、国内救済手続きとの併用ができなく、相互協議の申請をした場合には、国内の異議申し立てを取り下げなければならない。

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○2010年5月以降、経済産業大臣、外務大臣、駐尼大使等から関係大臣等らに累次善処を要請

○2010年9月 移転価格税制ガイドライン公表

○2010年10月 相互協議規則公表

○2010年12月 事前確認規則公表

⇒移転価格、相互協議、事前確認の諸制度はOECDガイドラインにおおむね沿っており、これらが整備されたことで今後本格的な移転価格調査が開始することが予想される。税務署の組織再編等も行っており、今後の移転価格課税については引き続き予断を許さない状況

インドネシアに対する取組状況

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き予断を許さない状況。

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○ブラジル政府のロイヤリティ額・送金額の上限規制等により、利益が現地に滞留し、日本の税務当局から、利益を不当に海外に寄せて租税回避をしているとの指摘をうけた事例。○相互協議は2006年に打ち切られ、現在日本国内で課税処分の適法性について裁判で係争中。

○また、ブラジル国内の移転価格税制については、みなしマージン比率により課税されている。

《日本の国税当局の主張》

料率が低すぎ 適 な技術日本税務当局

【ブラジル】ロイヤリティ規制・移転価格税制

ライセンス規制

ロイヤリティ規制

送金規制

移転価格課税

(国際的二重課税)

税還付せず

結果的に、相手国企業への無償技術供与に

相互協議の実施→打ち切り

十分なロイヤリティを回収できない。

○ロイヤリティ料率が低すぎる。適切な技術対価を徴収すべき。

《ブラジル側の問題点》○ロイヤリティ契約の有効期間は5年で、売上高の5%が上限。○技術・ノウハウ供与期間を5年が上限。○ノウハウのライセンス制限。

○ブラジル税法に規定がないため、一度納付された税金は還付できない。ブラジル国内企業

(技術提携)

日本企業

登録

国立工業所有権院(INPI)

ブラジル中央銀行

(BACEN)

移転価格課税

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ブラジル税務当局

部品・完成品の対価

現在、移転価格税制の改正法案を審議中であるが、みなし利益マージン率で移転価格税制を打たれる。製造技術の

ライセンス契約

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○日伯貿易投資促進合同委員会とは:日伯両国でWin-Winの戦略的経済関係を構築すべく、 2008年7月、甘利経済産業大臣訪伯時に、日本経済産業省と伯開発商工省との間で、設置に合意。:次官レベルの合同委員会と、4つのWG(貿易投資促進、ビジネス円滑化、度量衡、知的財産権)を設置し、ブラジルにおけるビジネス上の改善要望事項、今後の貿易投資促進のための協力事項を網羅的に議論。これまで、2009年2月、2009年9月、2010年4月、2010年11月、2011年8月と、5回開催。

○日伯貿易投資促進合同委員会における議論の状況

ブラジルに対する取組状況

日伯貿易投資促進合同委員会での申入れ

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○日伯貿易投資促進合同委員会における議論の状況

技術移転 :参加企業からブラジル政府に対し、技術移転契約に関する問題点(契約期間、守秘義務期間、ロイヤリティの上限)を具体的に提起するとともに、改善を要請。

移転価格 :移転価格税制の改正法案(みなしマージン率を35%を上限に3つの率を設定するというもの)を検討中であることを確認、また国内での税還付や租税条約の改正について改正を要請してきているところ。

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米上院の超党派議員、企業の海外利益に対する減税措置を提案

2011年 10月 7日 12:30 JST

[ワシントン 6日 ロイター] 米上院のヘイガン議員(民主党)とマケイン議員(共和党)は6日、多国籍企業が海外で稼いだ利益を本国へ送金した際の税を減免する法案を明らかにした。

現在、大手企業が海外の利益を本国へ送金した場合、海外所得に対する税率は35%。今回ヘイガン議員とマケイン議員が提出した法案では、現行税率を8.75%に引き下げるほか、新規採用を行った企業にはさらに低い5.25%の税率を適用する。

マケイン議員は、ヘイガン議員との共同記者会見で、減税措置により500億─800億の税収が見込めるほか、200万の新規雇用が期待できる、との見方を示した。

この法案が個別の法案として可決される可能性は低いが、議会と政府が赤字削減や税制改革、雇用問題に取り組む中で、交渉の重要な切り札となり得る。

WINアメリカのキャンペーンディレクター、カレン・オリック氏は、この法案を「米経済の活性化に向け重要な措置」と評価し、最大1兆ドルの資金が米国に還流する との見方を示した

(参考)米国における資金還流を巡る最近の動向

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金が米国に還流する、との見方を示した。

WINアメリカは、アップル(AAPL.O: 株価, 企業情報, レポート)、シスコ・システムズ、オラクル、マイクロソフトなど大手多国籍企業で構成する団体で、税優遇措置を求めロビー活動を行っている。

ブッシュ前政権が2004─2005年に5.25%の税率で導入した企業の利益送金税減税では、843の企業が3620億ドルの資金を本国に還流させた。

米企業の海外利益に対する減税措置、景気効果見込めず=フィッチ

2011年 10月 7日 13:09 JST

[ワシントン 6日 ロイター] 格付け会社のフィッチ・レーティングスは6日、米上院の超党派議員が提案した企業の海外利益に対する減税措置について、景気や雇用支援効果は見込めない、との見方を示した。(中略)

フィッチは声明で「米企業が海外で稼いだ利益の本国への還流時に減税措置を適用する法案は、仮に可決されても、成長を目的とした米企業の投資を支援する可能性は低い」と指摘。「今回提案された本国送還時の減税措置の恩恵を受ける大半の企業は、恐らくハイテクや医薬品業界の大手多国籍企業だが、こうした企業は、手元資金が潤沢で設備投資の先行きが一段と不透明になっている環境では、自社株買いを優先するだろう」との見方を示した。