41
Connecting Markets East & West 株式会社野村資本市場研究所 2016119シニアフェロー 中国経済の「新常態」

中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

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Page 1: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

Connecting Markets East & West

株式会社野村資本市場研究所 2016年1月19日

シニアフェロー 関 志 雄

中国経済の「新常態」

Page 2: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

1

中国経済は、労働力不足に伴う潜在成長率の低下をきっかけに、過去30年余りの高度成長期と異なる「新常態」に入ってい

ると見られる。 四つの特徴

1. 減速する経済成長

2. 改善する経済構造 − 縮小する所得格差

− 需要面では、主役は投資から消費へ

− 産業面では、主役は工業からサービス業へ

3. 顕在化する金融リスク − 株価の急落

− 住宅バブルの行方

− 人民元の切り下げ

4. 成長エンジンとして重要性増すイノベーション 「新常態」下の経済政策

– 軸となる「供給側改革」

– 「中所得の罠」と「体制移行の罠」を乗り越えられるか

中国経済の「新常態」

Page 3: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

中国における実質GDP成長率の推移

2

(出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より野村資本市場研究所作成

0

2

4

6

8

10

12

14

16 1

979

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

(%)

(年)

平均:10.0%

平均:7.8%

新常態高度成長期

Page 4: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

景気変動Vs.潜在成長率の変化

3

成長率

潜在成長率

の低下

景気変動に伴う成長率の

潜在成長率からの乖離

(好況)

時間

景気変動に伴う成長率の

潜在成長率からの乖離

(不況)

潜在成長率の低下に伴う

成長率の低下

潜在成長率の低下に伴う

成長率の低下

成長率

(出所)野村資本市場研究所作成

Page 5: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

労働力過剰から不足へ

4

(出所)野村資本市場研究所作成

農村から都市部への

人口移動

1980年代初に採った

一人っ子政策

生産年齢人口減少(人口ボーナスが人口オーナスへ)

発展過程における

完全雇用の達成(ルイス転換点の到来)

労働力過剰から不足へ

少子高齢化農業部門における余剰労働力の解消

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中国における年齢別人口の推移 -日本との比較-

5

(出所) United Nations, World Population Prospects: The 2015 Revisionより野村資本市場研究所作成

0123456789

10

1950

1955

1960

1965

1970

1975

1980

1985

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2020

2025

2030

2035

2040

2045

2050

(億人)

(年)

予測

生産年齢人口

(15-59歳)

老齢人口

(60歳以上)

年少人口

(0-14歳)

中国

0.00.10.20.30.40.50.60.70.80.9

1950

1955

1960

1965

1970

1975

1980

1985

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2020

2025

2030

2035

2040

2045

2050

(億人)

(年)

予測

生産年齢人口

(15-59歳)

老齢人口

(60歳以上)

年少人口

(0-14歳)

日本

Page 7: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

0.600.650.700.750.800.850.900.951.001.051.101.151.20

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

Q1 Q4

2001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

(年、四半期)

(倍)(前年比、%)

↑都市部の求人倍率

(右軸)

実質GDP成長率

労働力過剰 労働力不足

ルイス転換点

潜在成長率の低下を示唆する労働市場の変化

6

(注)中国の都市部の求人倍率は、約100都市の公共就業サービス機構に登録されている求人数/求職者数によって計算される。 (出所)中国国家統計局、人力資源・社会保障部より野村資本市場研究所作成

経済成長率が大幅に低下しているにもかかわらず、労働の需給がタイトになっている

求人倍率は2009年以降上昇傾向をたどっており、いまなお高水準を維持している

2011年以降、求人倍率と経済成長率が大幅に乖離しており、このことは中国が農村部における余剰労働力の枯渇を意味するルイス転換点を過ぎたことを示唆している

生産年齢人口の減少も加わり、潜在成長率が大幅に低下している。

経済成長率と都市部の求人倍率の推移

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全要素生産性

(TFP)の上昇

(3.7%) (注1)

資本投入量

の拡大

(5.3%)

←労働投入量の拡大

投入量の拡大

(寄与度)

潜在成長率

(9.9%)

(0.7%)

中国の潜在成長率を低下させる要因

7

(注1)全要素生産性の上昇には人的資本の向上を含む。 (注2)各寄与度の合計が潜在成長率と一致していないのは四捨五入によるものである。 (出所)Kuijs, Louis, “China’s Economic Growth Pattern and Strategy,” Paper prepared for the Nomura Foundation Macro Research Conference on “China’s Transition and the Global Economy,” November 13, 2012, Tokyoより野村資本市場研究所作成

労働投入量の拡大による寄与度は、生産年齢人口の減少と農村部における余剰労働力の解消でマイナスへ

資本投入量の拡大による寄与度は、貯蓄率の低下によって抑えられる

一人っ子政策が緩和されたが、効果が小さいと思われる

投入量の拡大による成長が持続不可能となり、生産性の上昇による成長への転換(「経済発展パターンの転換」)が求められる

経済政策の最優先課題は雇用創出から生産性の向上へ

潜在成長率の要因分解(1995-2011年)

Page 9: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

4.8

5.0

5.2

5.4

5.6

5.8

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

(倍)

(年)

縮小に向かう所得格差

8

都市部の農村部に対する一人当たり所得の比率の推移 都市部の高所得層の低所得層に対する一人当たり所得の比率の推移

東部の中西部に対する一人当たりGDP比率の推移 ジニ係数の推移

(注)都市は1人当たり可処分所得、農村は2012年までは1人当たり純所得、2013年からは1人当たり可処分所得。 (出所)中国国家統計局より野村資本市場研究所作成

(注)高所得層は家計の一人当たり所得順の上位20%の世帯、低所得層は下位20%の世帯を対象としている。 (出所)中国国家統計局『中国統計摘要』2014より野村資本市場研究所作成

(注)一人当たりGDPは名目値。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より野村資本市場研究所作成

(注)ジニ係数の範囲は0から1で、係数の値が0に近いほど格差が少ない状態で、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味する。 (出所)中国国家統計局より野村資本市場研究所作成

0.455

0.460

0.465

0.470

0.475

0.480

0.485

0.490

0.495

200

3

200

4

200

5

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6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

(年)

2.6

2.7

2.8

2.9

3.0

3.1

3.2

3.3

3.4

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

(倍)

(年)

1.6

1.7

1.8

1.9

2.0

2.1

2.2

2.3

2.4

199

6

199

7

199

8

199

9

200

0

200

1

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

(倍)

(年)

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0

5

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15

20197

9198

0198

1198

2198

3198

4198

5198

6198

7198

8198

9199

0199

1199

2199

3199

4199

5199

6199

7199

8199

9200

0200

1200

2200

3200

4200

5200

6200

7200

8200

9201

0201

1201

2201

3201

4

(前年比、%)

(年)

東部

中西部

「西高東低型」成長

東部と中西部の経済成長率の推移

9

(注)各地域の実質GDP成長率は、それぞれを構成する省、直轄市、自治区の実質GDP成長率を2014年の名目GDPの構成比で加重平均したもの。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より作成

Page 11: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

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0

5

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2002

2003

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2005

2006

2007

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2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

最終消費 資本形成 外需 GDP成長率

)年(

(1-

9月)

(前年比、%)

投資に取って代わって成長のエンジンとなった消費

10

(出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より野村資本市場研究所作成

GDP成長率の需要項目別寄与度の推移

(注)都市部と農村部の各階級はいずれも家計の一人当たり所得順による5階級分類(上位、中上位、中位、中下位、下位、それぞれ都市部または農村部の世帯数の20%を占める)。 (出所)中国国家統計局『中国統計摘要』2013より野村資本市場研究所作成

所得水準と反比例する消費性向(2012年)

5060708090

100110120130140150160170

1000 10000 100000

農村部

都市部

(%)

(元)2000 3000 20000 30000

所得

消費性向

○上位△中上位□中位◇中下位━下位

81.7

61.4

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0

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40

50

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2000

2001

2002

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2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

(シェア、%)

(年)

第一次産業

第二次産業

第三次産業

産業の中心は第二次産業から第三次産業へ

11

(出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より野村資本市場研究所作成

産業別のGDP構成の推移 産業別PMIの推移

(注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より野村資本市場研究所作成

35

40

45

50

55

60

65

1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 12

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

非製造業

全産業

製造業

(年、月)

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株価急落のマクロ経済への影響は限定的

12

社会融資総量(残高ベース、2014年末)

(出所)CEICデータベースより野村資本市場研究所作成

人民元建て

融資, 81.4, (66.3%)

外貨建て融

資, 3.5, (2.8%)

委託貸付, 9.3, (7.6%)

信託貸付, 5.4, (4.4%)

銀行引受手

形, 6.8, (5.5%)

社債, 11.7, (9.5%)

株式, 3.8, (3.1%)

その他, 1.0, (0.8%)

(単位:兆元)

株価との相関が薄い消費

(出所)CEICデータベースより野村資本市場研究所作成

-10

-5

0

5

10

15

20

25

30

-100

-50

0

50

100

150

200

250

300

1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 12

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

上海総合指数

社会消費品小売売上(右軸)

(前年比、%)

(年月)

(前年比、%)

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90

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110

120

130

140

150

160

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10

2011 2012 2013 2014 2015

上海総合指数

新築商品住宅価格指数:全国(右軸)

新築商品住宅価格指数:一線都市(右軸)

(2010年=100)(1990/12/19=100)

(年月)

中国では、投資手段が限られていることを

反映して、住宅価格は、株価と逆相関する

ケースが多い。

今回も、株価が急落する中で、これまで調

整局面にあった住宅価格はむしろ上昇に転

じている。この傾向が今後も続くかどうかは、

景気の行方を占う上で重要なポイントとなる。

株価の低下にもかかわらず回復に向かう住宅価格

13

上海総合指数と住宅価格指数

(注)住宅価格指数の全国は70都市の平均、一線都市は北京、上海、广州、深圳の平均。 (出所)CEICデータベースより野村資本市場研究所作成

Page 15: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

中国の主要都市における住宅価格/世帯所得比(2014年)

14

(注)低所得者向け保障性住宅を除く。世帯所得は年間値。 (出所)上海易居房地産研究院「全国35の大中都市における所得に対する住宅価格の倍率ランキング2015」(2015年5月)より野村資本市場研究所作成

0

5

10

15

20

深圳北京上海福州厦門太原広州杭州海口天津南京南昌ウルムチ

大連鄭州蘭州寧波ハルビン

南寧合肥石家庄

重慶西寧昆明武漢青島瀋陽成都長春済南貴陽銀川西安フフホト

長沙

(倍)

Page 16: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

中国の主要都市における家賃Vs.住宅購入価格(2015年9月)

15

(出所)禧泰房産データ(http://data.cityhouse.cn/)より野村資本市場研究所作成

(a)家賃

(年換算、元/m2)

(b)住宅購入価格

(元/m2)

家賃/住宅購入価格比((a)/(b)、%)

北京 794.9 36,924 2.2

上海 757.9 34,177 2.2

深圳 783.6 38,314 2.0

厦門 454.2 24,054 1.9

広州 534.2 19,930 2.7

三亜 496.2 17,170 2.9

南京 411.4 17,248 2.4

杭州 492.8 17,906 2.8

温州 376.0 17,009 2.2

天津 358.0 15,325 2.3

Page 17: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

-10

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5

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20

25

10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015(年、月)

(前年比、%)

70大中都市北京→

上海→

新築住宅販売価格の推移(前年比)

16

(注)2010年12月までは新築住宅販売価格指数。2011年1月からは新築商品住宅販売価格指数、70大中都市は各都市の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より野村資本市場研究所作成

Page 18: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

住宅販売価格の先行指標としての販売面積

17

(注)販売価格は70大中都市の単純平均で、2010年12月までは新築住宅販売価格指数、2011年1月からは新築商品住宅販売価格指数。販売面積は商品住宅。販売面積の各年の1月と2月のデータは2ヶ月まとめた形でしか発表されないため、図の作成に当たり、同じ計数を使用した。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より野村資本市場研究所作成

-10

-5

0

5

10

15

20

25

-40

-20

0

20

40

60

80

100

10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

(年、月)

(前年比、%)

←販売価格(右軸)

←販売面積

(前年比、%)

Page 19: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

金額(億元) 対GDP比(%)

不動産開発投資 95,036 14.9

 うち住宅 64,352 10.1

不動産販売額 76,292 12.0

 うち住宅 62,396 9.8

金融機関の不動産融資額 173,700 27.3

 うち個人向け住宅ローン 115,200 18.1

土地譲渡金 42,606 6.7

不動産関連税収 約20,000 約3.1

参考

GDP 636,463 -

金融機関の融資総額 816,800 128.3

全国財政総収入(政府性基金収入を含む) 194,443 30.6

中国における不動産業の規模(2014年)

18

(出所)中国国家統計局、財政部、中国人民銀行のデータより野村資本市場研究所作成

Page 20: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

中国における業種別鋼材消費量(2015年)

19

(注)推計・予測 (出所)冶金工業規画研究院「2016年我が国鋼鉄需要予測成果」(2015年12月7日)より野村資本市場研究所作成

消費量(億トン) シェア(%)

建設 3.5 52.2

機械 1.2 17.9

自動車 0.5 7.5

エネルギー 0.3 4.5

造船 0.1 1.5

家電 0.1 1.5

合計(その他を含む) 6.7 100.0

Page 21: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

中国における鉄鋼需要の低下によるグローバルデフレ効果

20

(出所)IMF, Primary Commodity Pricesより野村資本市場研究所作成

(出所)Bloombergより野村資本市場研究所作成 (出所)Bloombergより野村資本市場研究所作成

(出所)CEICデータベース(原データは中国鉄鋼工業協会)より野村資本市場研究所作成

鋼材価格

鉄鉱石価格

石炭価格

バルチック海運指数

30

50

70

90

110

130

150

170

1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11

2012 2013 2014 2015

(ドル/乾量メートルトン)

(年、月)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11

2012 2013 2014 2015

(1985年1月4日=1000)

(年、月)

50

60

70

80

90

100

110

120

130

1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11

2012 2013 2014 2015

(ドル/トン)

(年、月)

50

60

70

80

90

100

110

120

130

2012

/01

/06

2012

/03

/02

2012

/04

/20

2012

/06

/08

2012

/07

/27

2012

/09

/14

2012

/11

/09

2012

/12

/28

2013

/02

/22

2013

/04

/12

2013

/05

/31

2013

/07

/19

2013

/09

/06

2013

/11

/01

2013

/12

/20

2014

/02

/14

2014

/04

/04

2014

/05

/23

2014

/07

/11

201

4/8

/29

201

4/1

0/2

4 2

014

/12

/12

2015

/02

/06

2015

/04

/03

2015

/05

/22

2015

/07

/10

2015

/08

/28

2015

/10

/23

2015

/12

/11

(1994年12月=100)

Page 22: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

割高となった人民元レート

21

主要通貨に対する人民元レートの変動 人民元の対ドルレートと外貨準備の変化(月次)

(注)実効レートは月次データ(2014年8月=100) (出所)人民元の対各通貨レートは中国外為管理局、実効レートはBISの統計より野村資本市場研究所作成

(出所)CEICデータベース(原データは中国国家外為管理局および中国人民銀行)より野村資本市場研究所作成

90

100

110

120

130

2014

年8月

2014

年9月

2014

年10

2014

年11

2014

年12

2015

年1月

2015

年2月

2015

年3月

2015

年4月

2015

年5月

2015

年6月

2015

年7月

2015

年8月

2015

年9月

2015

年10

2015

年11

2015

年12

2016

年1月

(2014年8月11日=100)

↓対ユーロ

対円↓

←対ドル

実効レート↓

元高

-1,500

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 12

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

(億ドル)

(年月)

ドル買い・

人民元売り介入

ドル売り・

人民元買い介入

6.0

6.5

7.0

7.5

8.0

8.51 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 12

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

(元/ドル)

(年月)

元高

元/ドルレート

外貨準備の変化分(前月比)

Page 23: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

22

2015年8月以来の切り下げを経ても、人民元の割高感が十分解消されない。 三つの選択肢

1. 人民元買い・ドル売り介入で現在のレートを維持 − 外貨準備が減り続ける − 資本入出に対する制限の強化

2. 変動相場制へ移行 − 介入を止め、外貨準備を維持 − オーバーシュートする可能性、市場の反応は予測できない

3. ダーティーフロート − 通貨バスケット+α方式か − αの部分は従来の物価安定重視から国際収支重視へ

人民元の行方

Page 24: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

23

イノベーションの 三つのタイプ ① 独創的イノベーション(基礎的または中核的技術の発明とその応用) ② 技術統合によるイノベーション(既存の技術を有機的に組み合わせて、新しい製品や管理方式を生み出

すこと) ③ 導入・消化・吸収・改良

これまで、中国では、イノベーションは、②と③を中心に行われており、①は今後の課題として残っている。 技術革新だけでなく、製品、サービス、組織、ビジネスモデル、デザインの革新も、広い意味においてイノベー

ションの一部と見なされている。

中国でいうイノベーション(中国語は「創新」)とは

Page 25: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

24

中国は、先進国と比べて発展段階において遅れており、後発の優位性が依然として大きく残っている。このことは、単に技術

進歩の余地が大きいことだけでなく、技術を獲得するために、自らコストをかけ、リスクを負って研究開発に取り組まなくても、

海外から安く導入できることを意味する。 中国は対外開放を積極的に進めており、主に以下のルートを通じて海外の技術を導入し、吸収している。特に、外資企業に

よる直接投資が果たしてきた役割が大きい。

① 技術を体化した資本財の輸入

② リバース・エンジニアリング(機械を分解したり、製品の動作を観察したり、ソフトウェアの動作を解析するなどして、製品の

構造を分析し、そこから製造方法や動作原理、設計図、ソースコードなどを調査すること)

③ 外資企業による直接投資

④ ライセンシング(特許権者が特許発明を実施する権利を第三者へ供与することにより、その対価を得ること)

⑤ OEM(発注元企業のブランドで販売される製品を製造すること)

⑥ 企業間の技術者の移動

⑦ 海外での研究開発 中国は人口が多い上、高成長が30数年にわたって続いているため、市場としての魅力が増している。

– 国内市場と海外の技術との交換 教育制度の充実化、中でも大学教育の普及により、イノベーションに必要な大量の科学技術関連人材が育成されている。

イノベーションの有利な条件

Page 26: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

25

知的財産権の保護が依然として不十分である。 中国の国有企業は、人材や資金力などの面において恵まれているのに、イノベーションにおいてこれらの優位

性を十分に発揮できていない。 – 国有企業は国内の市場を独占しており、競争圧力にさらされていないゆえに、中小企業、民営企業と比べ

て、研究開発の効率が低い。 中国のイノベーション企業とハイテク企業を支援するベンチャーキャピタル業界は資金も経験も不足している。 活発なアイディア市場が欠如している。

– 「中国は市場転換によって財・サービス市場が急速に発展し、製造業で国際市場の主要国になれた一方で、

活発なアイデア市場をまだ生み出せてはいない。それどころか、教育制度からメディアまで、アイデアを創り

出し、広め、消費する全プロセスは、厳しい思想統制と国家の監視下に置かれてきた」。これにより、「アイデ

アを生み出すことを著しく抑制してしまった」のである。(ロナルド・コース、王寧著、栗原百代訳「中国共産党

と資本主義」日経BP社、2013年 )

イノベーションの阻害要因

Page 27: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

26

長い間、中国は技術の大半を海外からの輸入に頼っており、イノベーションとは無縁であると思われていた。しかし、2012年以降の中国の特許の出願件数が世界一となっていることに象徴されるように、このような状況は大きく変わってきている。一

部ハイテク産業と企業の躍進も加わり、中国におけるイノベーションに対する国際的評価は急速に高まってきている。 国全体のレベル: 米コーネル大学、仏INSEAD、WIPOが共同で発表した「グローバル・イノベーション・インデックス2015」において、中国は、対象となる141ヵ国・地域の中で第29位となっている(スイス第1位、イギリス第2位、スウェーデン第3位、米

国第5位、日本第19位、ロシア第48位、インド第81位)。 産業のレベル:米フォーブス誌(電子版)は、中国が世界をリードしている八つの産業を挙げている。

① マイクロペイメント(少額決済サービス)

② 電子商取引 (2014年の中国のネット販売額は4,560億ドル、小売売上の10.7%。米国のネット販売額は3,039億ド

ル、小売売上の6.5%)

③ 宅配

④ オンライン投資商品

⑤ 格安スマホ

⑥ 水力発電

⑦ DNAシーケンス

⑧ 高速鉄道

高まる中国におけるイノベーションへの評価①

Page 28: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

中国におけるインターネット通販の販売額の推移 -米国との比較-

27

(出所)U.S. Department of Commerce、中国国家統計局、中国インターネット情報センター(CNNIC)のデータより野村資本市場研究所作成

0

2

4

6

8

10

12(%)

↑米国

中国↓

05001,0001,5002,0002,5003,0003,5004,0004,5005,000

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

(億ドル)

(年)

中国→

米国

a) 小売販売総額に占める割合

b) 金額

Page 29: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

高速鉄道網の中心となる「四縦四横」

28 (出所)「中長期鉄道網計画」(2008年改訂)より野村資本市場研究所作成

縦③北京-ハルビン

縦①北京-上海

縦④上海-深圳

縦②北京-深圳

横③青島-太原

横①徐州-蘭州

横④南京-成都

横②杭州-昆明

チチハル

ハルビン

牡丹江

長春吉林

丹東

大連

瀋陽

天津

北京

石家庄

済南

徐州

青島

鄭州洛陽西安

蘭州

南京上海

寧波

温州

福州

杭州

厦門

深圳

広州

珠海

仏山

柳州

南寧

南昌

九江

長沙

昆明

合肥武漢

重慶

綿陽

成都

楽山

太原

蚌埠

貴陽

営口

錦州

徳州

都江堰

横①

横②

横③

横④

縦①

縦②

縦③

縦④

Page 30: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

世界上位10ヵ国・地域の高速鉄道の総延長距離 (2014年9月1日現在)

29

(注)順位は運転中の総延長距離に基づく (出所)International Union of Railwaysより野村資本市場研究所作成

(単位:km)

順位 国・地域 営業運転中 建設中 計画中 合計

1 中国 11,132 7,571 3,777 22,481

2 日本 2,664 779 179 3,622

3 スペイン 2,515 1,308 1,702 5,525

4 フランス 2,036 757 2,407 5,200

5 ドイツ 1,352 466 324 2,142

6 イタリア 923 125 221 1,269

7 トルコ 688 469 1,758 2,915

8 韓国 412 247 49 708

9 米国 362 0 777 1,139

10 台湾 345 9 0 354

- 世界 22,954 12,754 18,841 54,550

Page 31: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

主役となる民営企業

− イノベーションへの取り組みを基準に選ばれたこれらの

企業は、すべて民営企業である。これは、売上を基準と

する米経済誌『Fortune』の「Global 500」にランクされて

いる中国企業(2015年には、台湾と香港を除くと94社)

の大半が国有企業であることとは対照的である。イノ

ベーションが企業の成長のカギであることを考えれば、

民営企業が国有企業にとって代わって中国経済の主役

になる日はもはやそう遠くない。

高まる中国におけるイノベーションへの評価②

30

2015年イノベーション企業ランキング・トップ50

(出所)Boston Consulting Group, ”BCG Blobal Innovation Survey, 2015”より野村資本市場研究所作成

順位 企業名 国名 順位 企業名 国名

1 Apple 米 26 Tata Motors 印

2 Google 米 27 General Electric 米

3 Tesla Motors 米 28 Facebook 米

4 Microsoft 米 29 BASF 独

5 Samsung Group 韓 30 Siemens 独

6 トヨタ自動車 日 31 Cisco Systems 米

7 BMW 独 32 Dow Chemical Company 米

8 Gilead Sciences 米 33 Renault 仏

9 Amazon 米 34 Fidelity Investments 米

10 Daimler 独 35 Volkswagen 独

11 Bayer 独 36 Visa 米

12 テンセント 中 37 DuPont 米

13 IBM 米 38 日立 日

14 ソフトバンク 日 39 Roche スイス

15 ファーストリテイリング 日 40 3M 米

16 Yahoo! 米 41 NEC 日

17 Biogen 米 42 Medtronic 米

18 The Walt Disney Company 米 43 JPMorgan Chase 米

19 Marriott International 米 44 Pfizer 米

20 Johnson & Johnson 米 45 華為技術 中

21 Netflix 米 46 Nike 米

22 AXA 仏 47 BT Group 英

23 Hewlett-Packard 米 48 MasterCard 米

24 Amgen 米 49 Salesforce.com 米

25 Allianz 独 50 レノボ 中

Page 32: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

31

インターネットによる経済効果は、膨大なコストをかけてその技術を開発した先進国にとどまらず、安いコスト

でこれを利用できる途上国にも及んでいる。

中国も、後発の優位性を生かしながら、インターネットの普及の恩恵を存分に受けている。情報通信技術の

発達により先進国と途上国の間の格差が一層広がるという「デジタル・デバイド」論が盛んだが、中国の経験

はそれを否定するものである。

マッキンゼー・グローバル研究所によると、中国のインターネット経済(iGDP)の対GDP比は、2010年の時点

では3.3%と多くの先進国に後れを取っていたが、2013年に4.4%に上昇し、先進国並みの水準に達し、米

国、フランス、ドイツなどを抜いた。同研究所は、「インターネットは2013年から2025年の間に、中国経済の年

間成長率を0.3~1.0%押し上げる」と予測している。

急成長する中国におけるインターネット産業

Page 33: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

32

インターネット産業の更なる発展を目指すべく、2015年3月に開催された第12期全国人民代表大会第3回会

議の「政府活動報告」において、李克強首相は、「『インターネット・プラス』行動計画を策定し、モバイルイン

ターネット、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、モノのインターネット(Internet of Things、IoT)などと現

代製造業との結合を推進し、電子商取引、工業インターネット、インターネット金融の健全な発展を促進し、イ

ンターネット企業を国際市場の開拓・拡大へと導く。」という方針を明らかにした。

「インターネット・プラス」は、元々インターネット大手のテンセントのCEOで、全国人民代表大会の代表でもあ

る馬化騰氏が提唱した概念で、インターネットと従来型産業との融合である。 – たとえば、「インターネット+小売」は「ネット通販」となる。インターネットの普及はかつての電気のように、多

くの産業に革命的変化をもたらしている。その対象は、小売、家電、通信、メディアにとどまらず、金融、交

通、医療、教育、環境保護といった分野にも広がりつつある。各産業とインターネットの融合とそれに伴うイ

ノベーションは、産業の高度化に寄与するだけでなく、大衆による起業を促し、国民の生活をより便利なも

のにしている。

『インターネット・プラス』行動計画

Page 34: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

世界のインターネット企業の時価総額の上位10社(2015年末)

33

0 100 200 300 400 500 600

Google

Amazon.com

Facebook

アリババ

テンセント

百度

Priceline.com

Salesforce.com

Netflix

京東集団

(10億ドル)

(出所)Bloombergデータより野村資本市場研究所作成

Page 35: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

34

「インターネット・プラス」行動計画に加え、その「インターネット+工業版」ともいうべき「メイド・イン・チャイナ

2025」計画においても、インターネットを中心とする情報通信技術に大きな期待が寄せられている。

「イノベーション主導、スマート化へのモデルチェンジ、基礎の強化、(環境に配慮した)グリーンな発展を堅持

しつつ、製造業大国から強国への転換を加速していく」ことを目指して、「工業化と情報化の深いレベルの融

合を促進し、ネットワーク化、デジタル化、スマート化などの技術を駆使し、重要分野で機先を制し、飛躍を実

現すべく尽力する」ことが強調されている(2015年3月、全人代における「政府活動報告」)

「メイド・イン・チャイナ2025」計画

Page 36: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

35

次期五ヵ年計画への提案を検討する五中全会(2015年10月)で強調された「供給側改革」

– 中高速成長(年率6.5%以上)を達成するために、「労働力、資本、土地、技術、経営管理などの要素分配を最適化し、イノ

ベーションと起業の活力を奮い立たせ、大衆による起業・万人によるイノベーションを促進し、新たな需要を引き出し、新た

な供給を生み出し、新技術・新産業・新業態を大きく発展させ、原動力の転換を急ぐ」必要がある。

– 「五つの発展理念」(「イノベーションによる発展」は、「協調的発展」、「グリーンな発展(環境重視)」、「開放的発展」、「分か

ち合える発展」)の内、「イノベーションによる発展」が首位に位置づけられる。

– 一人っ子政策が廃止された。 中央経済工作会議(2015年12月)で提示された五つの優先課題

1. 過剰な生産能力の解消

2. 企業のコスト削減

3. 不動産在庫の解消

4. 需要に見合った供給の拡大

5. 金融リスクの予防・解消 市場改革加速のきっかけになるか

– 注目される民営企業の発展と国有企業改革の行方

「新常態」における経済政策の軸となる「供給側改革」

Page 37: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

民営企業の台頭

36

所有制別工業企業主営業務収入構成の推移

(出所)CEICデータベース(原データは国家統計局)より野村資本市場研究所作成

所有制別輸出構成の推移

(注1)「その他」には民営企業が含まれている。 (注2)2015年は1~11月のみ。 (出所)CEICデータベースより資本市場研究所作成

0

10

20

30

40

50

60

70

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

(シェア、%)

その他

外資系企業国有企業

民営企業

(年)0

10

20

30

40

50

60

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014 (年)

(シェア、%)

↓国有及び国有資本支配企業

民営企業

外資系企業↑

その他

Page 38: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

37

第15期四中全会(1999年9月)の決定で示された「国有経済の戦略的再編」という方針 – 「国有経済の戦略的再編」方針に基づき、国有経済が主導すべき産業は主に以下4分野に限定される。 ① 国家の安全に関わる産業 ② 自然独占および寡占産業 ③ 重要な公共財を提供する産業 ④ 基幹産業とハイテク産業における中核企業 – この方針に従えば、上記の分野以外の国有企業は民営化の対象となったはずだが、実際、民営化の対象

は中小国有企業にとどまった。 「ポスト18期三中全会(2013年11月)の国有企業改革」への疑念

– 国有企業の独占力強化Vs.市場競争 – 国進民退Vs.国退民進 – 党の指導Vs.コーポレート・ガバナンス

遅れた国有企業改革

Page 39: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

工業を中心とする

計画経済(国有企業)

工業とサービス業を中心とする

現代的市場経済(非国有企業)

農業を中心とする

自給自足経済(人民公社)

成長率の低下と社会不安

中所得の罠 体制移行の罠

余剰労働力の解消

(ルイス転換点の到来)

後発の優位性の低下

(イノベーション能力の欠如)

体制移行(市場化)

経済発展(工業化)

所得格差の拡大

環境問題の深刻化

官僚の腐敗

政府の役割転換の遅れ

国有企業改革の遅れ

中国が直面する「二つの罠」

38

(出所)野村資本市場研究所作成

Page 40: 中国経済の「新常態」PMI の推移 (注)全産業は製造業と非製造業の単純平均。 (出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より

略歴 関志雄(かんしゆう) 野村資本市場研究所 シニアフェロー

学歴・職歴 1957 香港生まれ 1979 香港中文大学経済学科卒 1986 東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、東京大学経済学博士(1996年) 1986 香港上海銀行(Hong Kong & Shanghai Bank)入社、本社経済調査部エコノミスト 1987 野村総合研究所入社、経済調査部主任研究員、経済調査部アジア調査室室長など (1999.9~2000.6 ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センター客員研究員) 2001 独立行政法人 経済産業研究所 上席研究員 2004 野村資本市場研究所 シニアフェロー

日本政府委員 経済審議会21世紀世界経済委員会委員(1996-97年) 財務省関税・外国為替等審議会専門委員(1997-99年、2003年-2010年) 内閣府「日本21世紀ビジョン」に関する専門調査会 グローバル化WG委員(2004年 )

主な著書・論文 『円圏の経済学』、日本経済新聞社、1995年(アジア・太平洋賞特別賞受賞) 『日本人のための中国経済再入門』、東洋経済新報社、2002年 『中国 未完の経済改革』、樊綱著・関志雄訳、岩波書店、2003年(アジア・太平洋賞特別賞受賞) 『人民元切り上げ論争』、編著、東洋経済新報社、2004年 『共存共栄の日中経済』、東洋経済新報社、2005年 『中国経済革命最終章』、日本経済新聞社、2005年 『中国経済のジレンマ』、筑摩書房、2005年 『中国を動かす経済学者たち』、東洋経済新報社、2007年(第三回樫山純三賞受賞) 『チャイナ・アズ・ナンバーワン』、東洋経済新報社、2009年 『中国 二つの罠』、日本経済新聞出版社、2013年 『中国 「新常態」の経済』、日本経済新聞出版社、2015年

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