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疑問 CQ8-1 敗血症性ショックの初期蘇生において 赤血球輸血はどのように行うか?? 集団: 敗血症性ショック 介入: ヘモグロビン値 7g/dL 未満で赤血球輸血を行う 比較対照: ヘモグロビン値 10g/dL 未満で赤血球輸血を行う 主要なアウトカム: 90 日死亡、虚血性臓器障害 セッティング: 初期蘇生の段階(救急外来および集中治療室) 視点: 個人の患者の視点 背景: 敗血症性ショック期には、組織の低酸素血症や心筋障害を考慮し、より高いヘモグロビン値により組織に十分な酸素を供給し た方が良いという考えもある。一方、日本版敗血症ガイドライン初版および 2016 では、敗血症性ショックの初期蘇生におい て、ヘモグロビン値 7g/dL 未満で赤血球輸血を開始することを推奨している。また、厚生労働省の「血液製剤の使用指針」平 29 年版および SSCG2016 ではショック期あるいはショック離脱後などの病態への言及はないが、引用文献よりショック期 に関するものと推測される。そこでもヘモグロビン値 7g/dL 未満での輸血開始を推奨している。一方で、ヘモグロビン値が不 十分な場合に生ずると考えられる組織の低酸素血症による虚血性臓器障害のリスクも考慮する必要もある。以上より、敗血症 性ショック患者の初期蘇生における赤血球輸血の開始時期は重要な臨床上の課題であり、本ガイドラインにおいて、再度クリ ニカルクエスチョンとして取り上げた。 評価 問題 この問題は優先事項ですか? 判断 リサーチエビデンス いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない 敗血症性ショック患者に対する赤血球輸血の開始基準やヘモグロビンの目標値につ いて、これまではヘモグロビン値 7g/dL 未満で赤血球輸血を開始することを推奨さ れてきた。しかし、ヘモグロビン値が不十分な場合に生ずると考えられる組織の低 酸素血症による虚血性臓器障害のリスクも重要であり、有効性と有害性のバランス を再度検討する必要がある。よって、本 CQ の優先度は高いと考える。 望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか? 判断 リサーチエビデンス わずか 小さい 大きい さまざま 分からない システマティックレビューにより対象となった RCT は 1 つだけだった。この RCT(N=998)における 90 日死亡に関する効果推定値とその信頼区間は、1000 人辺り 18 人の死亡減少(76 人減少から 45 人増加)であり、ヘモグロビン値 7g/dL 未満で 赤血球輸血を開始することによる望ましい効果は限定的である。 望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか? 判断 リサーチエビデンス パブリックコメント用 パブリックコメント用

CQ8-1 敗血症性ショックの初期蘇生において 赤血球輸血はどの ... · 2020-03-15 · 疑問 CQ8-1 敗血症性ショックの初期蘇生において 赤血球輸血はどのように行うか?

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疑問 CQ8-1 敗血症性ショックの初期蘇生において 赤血球輸血はどのように行うか?? 集団: 敗血症性ショック

介入: ヘモグロビン値 7g/dL 未満で赤血球輸血を行う

比較対照: ヘモグロビン値 10g/dL 未満で赤血球輸血を行う

主要なアウトカム: 90 日死亡、虚血性臓器障害

セッティング: 初期蘇生の段階(救急外来および集中治療室)

視点: 個人の患者の視点

背景: 敗血症性ショック期には、組織の低酸素血症や心筋障害を考慮し、より高いヘモグロビン値により組織に十分な酸素を供給し

た方が良いという考えもある。一方、日本版敗血症ガイドライン初版および 2016 では、敗血症性ショックの初期蘇生におい

て、ヘモグロビン値 7g/dL 未満で赤血球輸血を開始することを推奨している。また、厚生労働省の「血液製剤の使用指針」平

成 29 年版および SSCG2016 ではショック期あるいはショック離脱後などの病態への言及はないが、引用文献よりショック期

に関するものと推測される。そこでもヘモグロビン値 7g/dL 未満での輸血開始を推奨している。一方で、ヘモグロビン値が不

十分な場合に生ずると考えられる組織の低酸素血症による虚血性臓器障害のリスクも考慮する必要もある。以上より、敗血症

性ショック患者の初期蘇生における赤血球輸血の開始時期は重要な臨床上の課題であり、本ガイドラインにおいて、再度クリ

ニカルクエスチョンとして取り上げた。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症性ショック患者に対する赤血球輸血の開始基準やヘモグロビンの目標値につ

いて、これまではヘモグロビン値 7g/dL 未満で赤血球輸血を開始することを推奨さ

れてきた。しかし、ヘモグロビン値が不十分な場合に生ずると考えられる組織の低

酸素血症による虚血性臓器障害のリスクも重要であり、有効性と有害性のバランス

を再度検討する必要がある。よって、本 CQ の優先度は高いと考える。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

システマティックレビューにより対象となった RCT は 1 つだけだった。この

RCT(N=998)における 90 日死亡に関する効果推定値とその信頼区間は、1000 人辺り

18 人の死亡減少(76 人減少から 45 人増加)であり、ヘモグロビン値 7g/dL 未満で

赤血球輸血を開始することによる望ましい効果は限定的である。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

パブリックコメント用

パブリックコメント用

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

システマティックレビューにより対象となった RCT は 1 つだけだった。この

RCT(N=977)における虚血性イベントに関する効果推定値とその信頼区間は、1000人

辺り 8 人の虚血イベント減少(33 人減少から 31 人増加)であり、ヘモグロビン値

7g/dL 未満で赤血球輸血を開始することによる望ましくない効果は増えない可能性

がある。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

システマティックレビューにより対象となった RCT は 1 つだけだった。2 つのアウ

トカム(90 日死亡および虚血性イベント)のエビデンスの確実性は「低」であ

る。2つのアウトカムの方向性(効果なし)は同一方向であるため、アウトカムの

中で最も高い確実性を全体として採用し「低」とした。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

輸血に対する考え方は個人によりさまざまであり,宗教上などの理由により輸血を

拒む患者・家族もいるが、必要最小限の輸血を行い、輸血の合併症を避けること

は、患者・家族は一般的に重視すると考えられる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

1 つの RCT では、赤血球輸血の開始をヘモグロビン 7.0g/dL に制限することが、ア

ウトカム(90日死亡および虚血性イベント)に対して効果なしを示す結果であった

ため、その効果のバランスは介入あるいは比較対象のいずれも支持しない。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

赤血球輸血のためには施設と地域の体制整備が必要である。また、血液型判定や投

与までの管理など、輸血を行うことによる医療従事者の仕事量は増加することが予

想される。また、赤血球輸血は,2019 年現在, 約 8,400 円/血液 200mL 相当に由

来する赤血球(140mL)であり、赤血球輸血を行うことにより医療コストが増加す

る。このため赤血球輸血の開始をヘモグロビン 7.0g/dL に制限することは、これら

の負荷を軽減することになる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい

赤血球輸血は供給体制の整備が必要であるが、ほぼすべての集中治療室において利

用可能であると考えられる。赤血球輸血の開始をヘモグロビン 7.0g/dL に制限する

ことは可能であるが、急な出血や貧血が進行した場合に、夜間・休日の緊急輸血が

パブリックコメント用

パブリックコメント用

さまざま 分からない

困難な医療機関や地域では、ヘモグロビン 7.0g/dL 以上でも赤血球輸血を開始する

ことが必要かもしれない。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 敗血症性ショック患者の初期蘇生において、赤血球輸血はヘモグロビン値 7 g/dL 未満で開始することを弱く推奨す

る。(GRADE 2C:エビデンスの確実性「低」)

正当性 赤血球輸血の開始をヘモグロビン 7.0g/dL による望ましい効果はわずかであるが、望ましくない効果もわずかである。

アウトカムにおけるエビデンスの確実性は「低」である。ヘモグロビン 7.0g/dL に制限することにより輸血使用量の減

少や輸血による合併症の減少に繋がると考えられ、益が害を上回るものと考えられる。それらを総合的に判断し、条件

付きの推奨とした。

サブグループに関する検討事項 基礎疾患で虚血性心疾患がある場合や心機能が低下した患者においては、赤血球輸血による益と害のバランスが異なる

可能性がある。

実施にかかわる検討事項 推奨の実施においては、虚血性合併症の有無を評価することが望まれる。

監視と評価 輸血による呼吸・循環動態の変化、合併症の出現について、モニタリングと評価を必要とする。

研究上の優先事項 敗血症性ショック患者に対する赤血球輸血に関する有効性を評価した RCT が 1 つのみであることが明らかとなった。

敗血症性ショック患者に対する赤血球輸血の有効性や有害事象などを検証するさらなる RCT の実施が望まれる。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ8-2 敗血症で循環動態が安定している場合に赤血球輸血はどのように行うか? 集団: 敗血症患者(敗血症性ショックの患者は除外)

介入: ヘモグロビン値 7g/dL 未満で赤血球輸血を行う。

比較対照: ヘモグロビン値 10g/dL 未満で赤血球輸血を行う。

主要なアウトカム: 病院死亡,ICU 治療期間,感染性合併症,輸血関連肺障害やアナフィラキシーなどを含むあらゆる重篤な副作用

セッティング: 集中治療

視点: 個人の患者の視点

背景: 貧血に伴う組織の低酸素障害は、臨床的に重要な問題となることがある。赤血球輸血は、これらへの対応と予防のために行うが、必要以上の輸血は血液製剤投与に伴うアレルギーや感染症のリスクを高める。さらに血液製剤投与に伴う循環への負荷、TRALI の発症(赤血球輸血による致死的 TRALI の頻度;1:25,002,000 products)(Blood 2011;117:1463-71.)などの危険性もある。このため、貧血に伴う障害を防ぐ最小限の輸血を行うことが重要と考えられる。 循環動態が安定した敗血症患者に対する赤血球輸血開始基準について、日本版敗血症ガイドライン初版および SSCG2012 では、ヘモグロビン値 7g/dL 未満での輸血開始を推奨した。しかし、この当時は敗血症に対象を限定した臨床研究がなかったため、集中治療を要する患者全体を対象とした研究結果を参考に推奨度を決定した。その後の日本版敗血症ガイドライン 2016 では、循環動態が安定した状態における赤血球輸血は一定のコンセンサスが得られていると判断し、クリニカルクエスチョンとして取り上げなかったが、敗血症性ショックの患者に対する赤血球輸血の開始基準を示し、循環動態が安定した敗血症患者に対する基準を示していないことに対する疑問も出されていた。赤血球輸血の開始基準について、循環動態が安定した状態における開始基準も明確にすることは重要な臨床課題と考え、今回の敗血症診療ガイドラインで取り上げた。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

循環動態が安定した敗血症患者に対する赤血球輸血の開始基準やヘモグロビンの目標値については明確な基準がなく、有効性や有害性の評価も定まっていないため、本 CQ の優先度は高いと考える。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中

貧血に伴う組織の低酸素障害は、臨床的に重要な問題となることがあり、赤血球輸血は、これらへの対応と予防のために行うが、必要以上の輸血は輸血に伴う合併症

パブリックコメント用

パブリックコメント用

大きい さまざま 分からない

のリスクを高める。貧血に伴う障害を防ぐ最小限の輸血を行うことは輸血の効果を得ながら合併症を最小限に抑えることになり、患者に益する可能性が高いと考える。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

赤血球輸血の開始をヘモグロビン値 7.0g/dL に制限することは、虚血性心疾患や心不全を有する一部の患者には、より心臓への負荷を増し有害となる可能性がある。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

Systematic review を行ったが PICO に合致する RCT は存在しなかった。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

輸血に対する考え方は個人によりさまざまであり,宗教上などの理由により輸血を拒む患者・家族もいるが、必要最小限の輸血を行い、輸血の合併症を避けることは、患者・家族は一般的に重視すると考えられる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

PICO に合致する RCT は存在せず不明であるが、患者の状態によってそのバランスは異なると考えられる。高度の心不全や虚血性心疾患がなければ、赤血球輸血の開始をヘモグロビン 7.0g/dL に制限することは、益が害を上回るものと考えられる。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

赤血球輸血のためには施設と地域の体制整備が必要である。また、血液型判定や投与までの管理など、輸血を行うことによる医療従事者の仕事量は増加することが予想される。また、赤血球輸血は,2019 年現在, 約 8,400 円/血液 200mL 相当に由来する赤血球(140mL)であり、赤血球輸血を行うことにより医療コストが増加す

パブリックコメント用

パブリックコメント用

る。このため赤血球輸血の開始をヘモグロビン 7.0g/dL に制限することは、これらの負荷を軽減することになる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

赤血球輸血は供給体制の整備が必要であるが、ほぼすべての集中治療室において利用可能であると考えられる。赤血球輸血の開始をヘモグロビン 7.0g/dL に制限することは可能であるが、急な出血や貧血が進行した場合に、夜間・休日の緊急輸血が困難な医療機関や地域では、ヘモグロビン 7.0g/dL 以上でも赤血球輸血を開始することが必要かもしれない。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 循環動態が安定している敗血症患者において、赤血球輸血はヘモグロビン値 7 g/dL 未満で開始することを弱く推奨する。(エキスパートコンセンサス:エビデンス不十分)

正当性 RCT がなく益と害のバランスは不確実である。しかし,貧血に伴う虚血性合併症を回避する益、および輸血そのものによる害を考慮すると,ヘモグロビン値が 7g/dL 未満で輸血する方が 10g/dL 未満で輸血するより害が少なく、益が害を上回るものと考える。

サブグループに関する検討事項 基礎疾患で虚血性心疾患がある場合や心機能が低下した患者においては、赤血球輸血による益と害のバランスが異なる可能性がある。

実施にかかわる検討事項 推奨の実施においては、虚血性合併症の有無を評価することが望まれる。

監視と評価 輸血による呼吸・循環動態の変化、合併症の出現について、モニタリングと評価を必要とする。

研究上の優先事項 循環動態が安定した敗血症患者に対する赤血球輸血に関する有効性を評価した RCT がないことが明らかとなり,循環動態が安定した状態における赤血球輸血の有効性や有害事象などを検証する RCT の実施が望まれる。

パブリックコメント用

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疑問 CQ8-3 敗血症に対して新鮮凍結血漿の投与はどのように行うか? 集団: 敗血症患者

介入: あらゆる新鮮凍結血漿の投与(投与開始値、目標値、投与量、タイミングなどの制限はない)

比較対照: 非介入

主要なアウトカム: 病院死亡,ICU 治療期間,感染性合併症,輸血関連肺障害やアナフィラキシーなどを含むあらゆる重篤な副作用

セッティング: 集中治療

視点: 個人の患者の視点

背景: 敗血症患者において、出血傾向がある、または外科的処置が必要な場合、凝固異常の改善を目的として新鮮凍結血漿の投与が行われることがあるが、観血的処置時を含めて、新鮮凍結血漿の有用性は明らかではない(Transfusion. 2010;50(6):1370-1383、Transfusion. 2012;52(8):1673-1686)。敗血症患者に対する凝固異常の改善を目的とした新鮮凍結血漿の有効性、有害性の評価は定まっておらず、臨床現場でもその投与判断には多様性がある。以上により、敗血症診療ガイドラインに取り上げるべき重要臨床課題であると考えた。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症患者において凝固障害は高率に合併し、凝固障害を合併した敗血症患者の予後は不良であるとの報告がある。凝固障害を伴う敗血症患者に対して、新鮮凍結血漿をどのように投与するべきかは重要な問題と考えられるが,新鮮凍結血漿の開始基準、目標値とともに、その有効性,有害性の評価は定まっておらず,本 CQ の優先度は高いと考える。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

凝固障害に伴う出血症状や、凝固障害が存在する状態で行う侵襲的介入に伴う出血は、臨床的に重要な問題となることがある。これらへの対応と予防をするために新鮮凍結血漿の投与を行うことは患者に益する可能性が高いと考える。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

パブリックコメント用

パブリックコメント用

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

出血傾向がなく外科的処置も要しない場合に,新鮮凍結血漿を投与することの害は証明されていないが,血液製剤投与に伴うアレルギーや感染症のリスクは高まる。血液製剤投与に伴い循環への負荷、TRALI の発症(新鮮凍結血漿による致死的TRALI の頻度;1:2-300,000 products)(Blood 2011;117:1463-71.)などの危険性がある。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

Systematic review を行ったが PICO に合致する RCT は存在しなかった。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

死亡率が低下することは患者・家族は一般的に重視すると考えられる。しかし、輸血に対する考え方は個人によりさまざまであり,宗教上などの理由により輸血を拒む患者・家族もいる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

PICO に合致する RCT は存在せず不明であるが、患者の状態によってそのバランスは異なると考えられる。少なくとも高度の凝固障害による出血症状を伴う場合や侵襲的介入による出血が予想される場合は,新鮮凍結血漿の投与に伴う益が害を上回るものと考えられる。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

新鮮凍結血漿の投与のためには施設と地域の体制整備が必要である。また、血液型判定や投与までの管理など、医療従事者の仕事量が増加することが予想されるが、その影響は小さいと考えられる。また、新鮮凍結血漿製剤は,2019 年現在, 約9,000 円/血液 200mL 相当に由来する血漿(120 mL)である。出血傾向がなく外科的処置も要しない場合に,新鮮凍結血漿を投与することにより医療コストが増加する。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

パブリックコメント用

パブリックコメント用

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

新鮮凍結血漿は供給体制の整備が必要であるが、ほぼすべての集中治療室において利用可能であると考えられる。しかし,夜間・休日の緊急輸血が困難な医療機関や地域もある。また,実施に際しては献血由来であることを考慮する必要がある。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 敗血症患者で、出血傾向を認める,あるいは外科的・侵襲的処置を要するときには PT,APTT の延長(PT は INR 2.0 以上または活性値 30%以下,APTT は各医療機関における基準の上限の 2 倍以上または活性値 25%以下)やフィブリノゲン値 100 mg/dL 未満の場合に,新鮮凍結血漿を投与することを弱く推奨する。(エキスパートコンセンサス:エビデンス不十分)

正当性 敗血症に関する RCT がなく益と害のバランスは不確実である。しかし,凝固障害に伴う出血のリスクと侵襲的介入に伴う出血リスクの低減などによる益、および、輸血そのものによる害を考慮すると,益が害を上回るものと考える。そこで厚生労働省の「血液製剤の使用指針」に準拠し、「出血傾向を認める,あるいは外科的・侵襲的処置を要するとき」という条件のもとでの本介入を弱く推奨することとした。

サブグループに関する検討事項 出血傾向を認めず、外科的・侵襲的処置を必要としないときには、一般的に、新鮮凍結血漿を投与する必要性はないと考えられている。

実施にかかわる検討事項 凝固障害の重症度とこれに伴う症状の重篤度により、新鮮凍結血漿の投与による益と害のバランスが異なる可能性がある。

監視と評価 輸血による呼吸・循環動態の変化、合併症の出現について、モニタリングと評価を必要とする。

研究上の優先事項 敗血症患者に対する新鮮凍結血漿の投与に関する有効性を評価した RCT がないことが明らかとなり,新鮮凍結血漿が死亡率に与える影響,出血症状への影響、有害事象などを検証する RCT の早期実施が望まれる。

パブリックコメント用

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疑問 CQ8-4 敗血症に対して血小板輸血はどのように行うか? 集団: 敗血症患者

介入: あらゆる血小板輸血(投与開始値、目標値、投与量、タイミングなどの制限はない)

比較対照: 非介入

主要なアウトカム: 病院死亡,ICU 治療期間,感染性合併症,輸血関連肺障害やアナフィラキシーなどを含むあらゆる重篤な副作用

セッティング: 集中治療

視点: 個人の患者の視点

背景: 血小板減少は敗血症患者に高率に合併し、SOFA スコアにも含まれる臓器障害のひとつである。血小板低下を呈した敗血症患者は、ショック、急性腎障害、出血性有害イベントの合併が高率であり、予後は不良であるとの報告がある(J Infection 2017:75;473-485)(J Infect 2019 ;78:323-337)。日本における敗血症患者を対象とした前向き研究においても、血小板減少(<100,000/μL)を 345/1184 例 (29.1%)に認めている(Crit Care 2018;22:322.)。一方,血小板を投与することによる害としては,TRALI の発症(血小板による致死的 TRALI の頻度;1:3~400,000 products )(Blood 2011;117:1463-71.)などの危険性がある。 本邦では,敗血症患者の治療において出血傾向がある,または外科的処置が必要な場合に血小板の投与が行われていることが多いが,血小板輸血の敗血症患者に対する有用性は明らかではない。以上より、敗血症患者に対する血小板投与は敗血症診療ガイドラインに取り上げるべき重要な臨床課題であると考えた。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

前述のように血小板減少は敗血症患者に高率に合併し、SOFA スコアにも含まれる臓器障害のひとつである。また、血小板減少を呈した敗血症患者の予後は不良である。血小板減少に伴う出血症状の改善と予防、侵襲的介入に伴う出血の回避のために、血小板減少を伴う敗血症患者に対して血小板輸血をどのようにするべきかは重要な問題と考えられるが,血小板輸血の開始基準、目標値とともに、その有効性,有害性の評価は定まっておらず,血小板輸血に関する本 CQ の優先度は高いと考える。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい

血小板減少に伴う出血症状や血小板減少時における侵襲的介入に伴う出血は、臨床的に重大な問題となることがある。これらへの対応と予防をするために血小板輸血

パブリックコメント用

パブリックコメント用

さまざま 分からない

を行うことは患者に益する可能性が高いと考える。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

出血傾向がなく外科的処置も要しない場合に,血小板を投与することの害は証明されていないが,血液製剤投与に伴うアレルギーや感染症のリスクは高まる。他の血液製剤と異なり、室温(20~24)で保存されており,細菌混入による感染症等に留意する必要がある。また、血液製剤投与に伴い循環への負荷、TRALI の発症(血小板による致死的 TRALI の頻度;1:3~400,000 products )(Blood 2011;117:1463-71.)などの危険性がある。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

Systematic review を行ったが PICO に合致する RCT は存在しなかった。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

死亡率が低下することは患者・家族は一般的に重視すると考えられる。しかし、輸血に対する考え方は個人によりさまざまであり,宗教上などの理由により輸血を拒む患者・家族もいる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

PICO に合致する RCT は存在せず不明であるが、患者の状態によってそのバランスは異なると考えられる。少なくとも高度血小板数低下による出血症状を伴う場合や侵襲的介入による出血が予想される場合は,血小板輸血に伴う益が害を上回るものと考えられる。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま

血小板輸血のためには施設と地域の体制整備が必要である。また、血液型判定や交差適合試験、投与までの管理など、医療従事者の仕事量が増加することが予想されるが、その影響は小さいと考えられる。また、血小板輸血製剤は,2019 年現在,

パブリックコメント用

パブリックコメント用

分からない 約 80,000 円/10 単位(200 mL)である。出血傾向がなく外科的処置も要しない場合に,血小板を投与することにより医療コストが増加する。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

血小板輸血は供給体制の整備が必要であるが、ほぼすべての集中治療室において利用可能であると考えられる。しかし,夜間・休日の緊急輸血が困難な医療機関や地域もある。また,実施に際しては献血由来であるとともに、使用期限が短期間の限られた製剤であることを考慮する必要がある。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 敗血症患者で、血小板数 1 万/μL 未満のとき、あるいは出血症状を伴う血小板数 5 万/μL 未満のときには血小板輸血を行うことを弱く推奨する。活動性出血を認める、あるいは外科的・侵襲的処置を要するときには、血小板数 5 万/μL 以上を維持するように血小板輸血を行うことを弱く推奨する。(エキスパートコンセンサス:エビデンス不十分)

正当性 敗血症に関する RCT がなく益と害のバランスは不確実である。しかし,血小板減少に伴う出血のリスクと侵襲的介入に伴う出血リスクの低減などによる益、および、輸血そのものによる害を考慮すると,益が害を上回るものと考える。そこで,厚生労働省の「血液製剤の使用指針」に準拠し、血小板減少を認めるときや出血症状を伴うときという条件のもとでの本介入を弱く推奨することとした。

サブグループに関する検討事項 血小板数 5 万/μL 以上で、活動性出血がなく、外科的・侵襲的処置を必要としないときには、一般的に、血小板輸血を行う必要性はないと考えられている。

実施にかかわる検討事項 血小板減少の重症度とこれに伴う症状の重篤度により、血小板輸血による益と害のバランスが異なる可能性がある。

監視と評価 輸血による呼吸・循環動態の変化、合併症の出現について、モニタリングと評価を必要とする。

研究上の優先事項 血小板輸血の有効性を評価する敗血症患者に関する RCT がないことが明らかとなり,血小板輸血が死亡率に与える影響,出血症状への影響、有害事象などを検証する RCT の早期実施が望まれる。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ9-1 成人敗血症患者の呼吸管理において目標 SPO2をどの範囲にするか? 集団: 成人敗血症患者

介入: 目標 SPO2を高めに設定する

比較対照: 目標 SPO2を低めに設定する

主要なアウトカム: 死亡率、臓器障害、術後感染

セッティング: 16 歳以上、人工呼吸管理を必要とする患者

視点: 個人の患者の視点

背景: 成人敗血症患者では高率に ARDS をきたし酸素療法や人工呼吸管理を必要とする。心筋梗塞や脳卒中では高濃度の酸素投与に

否定的な研究成果が集積されてきているが、敗血症においては至適な動脈血酸素飽和度について明確にされていない。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

成人敗血症患者では高率に ARDS をきたし酸素療法や人工呼吸管理を必要とする。心筋梗塞や脳卒中で

は高濃度の酸素投与に否定的な研究成果が集積されてきているが、敗血症においても至適な動脈血酸素

飽和度について明確にされていない。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

呼吸状態悪化時や気管吸引の際などに低酸素の程度や頻度を少なくできるかもしれないがそのようなア

ウトカムを検討した報告はないため「分からない」とした。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

短期死亡(3RCT:N=673)に関する効果推定値は,目標 SPO2を高めに設定することにより RD 42 多い

/1000(95%CI: 38 少ない~ 156 多い)と示されている。また、高い SPO2を目標とすることにより、低

い SPO2 を目標とすることに比べて、臓器障害(1RCT:N=434)に関する効果推定値は RD 66 多い

/1,000(95%CI: 11 少ない~ 175 多い)、感染症発生(1RCT:N=434)に関する効果推定値は RD 49 多

い/1,000(95%CI: 22 少ない~ 153 多い)と示されている。エビデンスの確実性はどれも「中」であっ

た。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

エビデンスの確実性は全てのアウトカムについて「中」であった。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

敗血症患者の目標SpO2において、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデータはない。一般

的に、死亡アウトカムに対しておく相対的価値は高く、そのばらつきは少ないことが予想される

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

検討した全てのアウトカムについて介入を支持しない方向であったので、おそらく対照が優位とした

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

SPO2 を低めに管理することは多くの医療者に受け入れ可能と考えられるが、突然の気道トラブルや循環

の変動を理由に SPO2 を低く管理することに対して拒否的な意見が出るかもしれない。酸素流量や FIO2

の調節のために仕事量が若干増えるかもしれない。酸素使用量が減るため酸素にかかるコストは減るで

あろう。アラームを適切に設定しSPO2低下に対処することで、患者や家族の受け入れには影響は最小限

であると考えられる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

吸入気酸素濃度を微調整することにより可能

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者の呼吸管理において目標 SPO2を高め(98〜100%)に設定しないことを弱く推奨する。(GRADE 2B:エビデンスの確実性「中」)

正当性 目標 SPO2を高くすることの望ましい効果は「分からない」、望ましくない効果は「中」であり、アウトカム全般にわたるエビデンスの確実性は

「中」であった。高い SpO2 を目標にすることで、研究次第では、短期死亡率が増加する可能性があり、加えて感染発生率も臓器不全の発生頻度も

増加する可能性が示されている。症例数も論文数も少ないため、これらを総合的に判断し条件付きの弱い推奨とした。

サブグループに関する検討事項 重症度の高いグループ、低いグループで、介入による効果の違いがある可能性があるが、重症度によるサブグループの検討はできていない。

実施にかかわる検討事項 避けるべき高い SPO2が具体的にどの程度高い値と解釈するかは個人によって様々であるため、推奨には高めのSPO2を敢えて具体的な数値として 98~100%と記した。しかし、どの程度高い SPO2 がアウトカムに悪影響を及ぼしているのかを検討した報告はなく、適切な目標 SPO2 の範囲に関して

は今後の更なる検討が必要である。また、低酸素血症に至る頻度に関しては、報告されている研究がなかったため検討できておらず、こちらに関し

ても今後の更なる検討が必要である。現代の集中治療室ではほぼルチーンに SPO2 が測定されているため、その値を指標に投与酸素流量や FIO2 を調

整することは比較的容易である。ただし、敗血症性ショックの状態や感染症による代謝の亢進などで酸素需給バランスが変化している可能性がある

ため注意が必要である。また SPO2 値に影響を与える病態や干渉物質がいくつか存在するため、連続モニターされている SPO2 が正しく PaO2 を反映

しているかどうかを確認する必要がある。

監視と評価 重大な低酸素症をきたす危険を回避するために常に SPO2 をモニターすることが必要である。現代の医療の現場では非侵襲的な連続モニターである

パルスオキシメータがほぼルチーンに使用されている。また、酸素の過不足の結果を表す血液中の乳酸値の推移や臓器障害の有無なども評価が必要

である。

研究上の優先事項 今回のメタ解析では十分な数の RCT がなく、合計のサンプル数も足りなかった。同様のリサーチクエスチョンの研究がさらに必要である。また、

重症度別やリスク別の検討が合わせて必要と思われる。

パブリックコメント用

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疑問 CQ9-2 成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して非侵襲的人工呼吸(NIV)または経鼻高流量療

法 (NHFT)を行うか? 集団: 成人敗血症患者

介入: 急性低酸素性呼吸不全患者に以下の呼吸管理デバイスのいずれかを使用

1. NIV:マスク、モード、NIV 時間、weaning 方法は問わない

2. NHFT:流量、FIO2 は問わない

3. COT (conventional oxygen therapy):カニュラ、マスク、ベンチュリーマスク:流量は問わない

比較対照:

主要なアウトカム: 短期死亡 (ICU 死亡 or 院内死亡 or 研究終了 or 90 日以内死亡。最大のものを採択);気管挿管率;挿管までの時間(hour);感

染;インターフェイスによる皮膚障害;不快感

セッティング: 16 歳以上、急性低酸素性呼吸不全を呈した患者

視点: 個人の患者の視点

背景: 種々の原因疾患に伴う急性呼吸不全に対して、非侵襲的人工呼吸(NIV)や経鼻高流量療法 (NHFT)を適用することは世界中で

広く行われているが、敗血症患者における有効性は十分に解明されていない。敗血症患者の初期の呼吸管理では、酸素化の改

善、特に酸素需給バランスの崩れを補う酸素化の維持、分時換気量増加に伴う呼吸仕事量の負担軽減などが、人工呼吸を適用

する目的となり得る。NIV や NHFT を適用すれば、挿管に伴う不利益を回避出来ることから、患者の予後改善につながる可能

性がある点で、NIV や NHFT を行うかどうかは重要な臨床課題と考える。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

種々の原因疾患に伴う急性呼吸不全に対して、非侵襲的人工呼吸(NIV)や経鼻高流量療法 (NHFT)を適

用することは世界中で広く行われているが、敗血症患者における有効性は十分に解明されていない

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

本 CQは NMAを用いて検討した。短期死亡に関するネットワーク効果推定値は,COTと比べて、NHFTで RD 65 少ない/1000 (95% CI 95 少ない 28 多い)[エビデンスの確実性は中] (5 RCT, n=1453)、NIV で RD 30 少ない/1000 (95% CI 60 少ない〜3 多い) [エビデンスの確実性は低] (14 RCT, n=2359)、そして NHFTと比べて、NIV で RD 8 少ない/1000 (95% CI 35 少ない〜25 多い) [エビデンスの確実性は低]であった(3 RCT, n=338)。気管挿管に関するネットワーク効果推定値は,COT と比べて、NHFT で RD 65 少ない

/1000 (95% CI 95 少ない〜28 少ない) [エビデンスの確実性は中] (6 RCT, n=1563, NIV で RD 60 少ない

/1000 (95% CI 92 少ない〜29 少ない) [エビデンスの確実性は低] (17 RCT, n=2506)、そして NHFT と比

べて、NIV で RD 5 多い/1000 (95% CI 32 少ない〜46 多い) [エビデンスの確実性は低]であった(5 RCT, n=1584)。気管挿管までの時間に関するネットワーク効果推定値は,COT と比べて、NHFT で MD 1.15高い/1000 (95% CI 0.21 低い 2.09 高い)[エビデンスの確実性は高] (1 RCT, n=200)、NIV で MD 0.53 高い

/1000 (95% CI 0.27 低い〜0.80 高い) [エビデンスの確実性は高] (2 RCT, n=284)、そして NHFT と比べ

て、NIV で RD 0.62 低い/1000 (95% CI 1.52 低い〜0.28 高い) [エビデンスの確実性は中]であった(2 RCT,

パブリックコメント用

パブリックコメント用

n=432)。 また、短期死亡における SUCRA は NIV 77.3, NHFT 64.4, COT 8.3 であり、気管挿管における SUCRAは NIV 74.5, NHFT 74.7, COT 0.8 であり、気管挿管までの時間における SUCRA は NIV 40.3, NHFT 85.2, COT 24.5 であった。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

今回の検討では望ましくない効果として検討したアウトカムは全て「重要」であり、本 EtD tableには含

まれなかった。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

エビデンスの方向性としては、全ての比較群において短期死亡と気管挿管までの時間では有意差を示し

ておらず気管挿管のアウトカムにおいてのみ COT に対して NIV と NHFT において気管挿管を減少させ

る方向であった。望ましくない効果に関しては評価できていない。よって、NIV と NHFT に優劣はつけ

られず、両者を合わせて推奨する方針とした。そのような状況においては、SUCRA の数値を参考にエ

ビデンスの方向性を判断すると COT と NIV または NHFT の 2 群においてエビデンスの方向性は一致し

ていると判断し、エビデンスの確実性は「重大なアウトカムに関するエビデンスの確実性の中で最も高

いグレード」を全体的なエビデンスの確実性とした。アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は

「高」と判断した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

敗血症患者に対する NIV や NHFT における、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデータは

ない。一般的に、死亡アウトカムに対して置く相対的価値は高く、そのばらつきは少ないことが予想さ

れる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

NIV や NHFT を適用すれば、挿管に伴う不利益は回避出来る。 しかし望ましくない効果に関しては検討できていない。「不快感」などの望ましくない効果が可能性と

して挙げられるが、重要度は低いために、効果バランスは介入群優位と考える。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい

呼吸管理に必要な要素は、デバイス有無、デバイスや酸素のコスト、デバイスに対する容認性が挙げら

れる。NIV, NHFT, COT は一般的な呼吸管理デバイスであり、どの病院においてもすでに導入されている

ことが多く新たなコストは発生しないことが予想される。しかし、デバイスに関わる消耗品に関しては

NIV と NHFT に使用される回路費用として約 5000円/個必要となるために、医療経済においては COT の

方がコストを抑えられると考えられる。また、医療従事者の仕事量に関しては、COT に比して NHFT、

パブリックコメント用

パブリックコメント用

さまざま 分からない

NHFT に比して NIV においてその管理のために増大すると考えられる。さらに、デバイスの容認性に関

しては皮膚トラブルや患者不快感が関与すると考えられるが、どちらも今回の検討では重大なアウトカ

ムとしては評価できておらず、結論には至っていない。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

人工呼吸管理が可能な病院であれば一般的な呼吸管理方法であり,どの病院においても実行可能性は高

いといえる。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者の初期の呼吸不全に対して通常の酸素療法よりは非侵襲的人工呼吸(NIV)もしくは経鼻高流量療法 (NHFT)を行うことを弱く推奨する。(GRADE 2A:エビデンスの確実性=「高」)

正当性 本 CQ は NMA を用いて検討した。通常酸素療法(COT), 経鼻高流量療法 (NHFT), 非侵襲的人工呼吸(NIV)のそれぞ

れの比較において検討したアウトカムでは、望ましいアウトカムである短期死亡および気管挿管までの時間においては

効果の差を認めなかったが、気管挿管率においては COT に比して NIV または NHFT で減少し、NIV または NHFT で気

管挿管を回避できる可能性がある。よって、NIV と NHFT を合わせて推奨することとした。望ましくない効果は検討で

きていないが、望ましい効果のエビデンスレベルは「高」であり、よって、それらを総合的に判断し、条件付きの弱い

推奨とした。

サブグループに関する検討事項 重症度の高いグループ、低いグループで介入による効果の違いがある可能性があるが、重症度によるサブグループの検

討はできていない。

実施にかかわる検討事項 急性呼吸不全患者の初期呼吸管理として呼吸不全に至った原因ごとに最適な酸素療法デバイスは異なる可能性がある

が、本検討では原因別、重症度別の検討ができていない。実臨床では、それらを加味して症例に応じた適宜判断するの

が良い。

監視と評価 患者の呼吸様式、バイタルサイン、血液ガス所見などをモニタリングし、選択した酸素療法デバイスの判断が正しかっ

たのかをしっかりとモニタリングし、必要があればその他の酸素療法デバイスに変更する必要がある。

研究上の優先事項 今後、重症度・気管挿管のリスク・呼吸不全の原因別に関する検討を行うことが望まれる。

パブリックコメント用

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疑問 CQ9-3 成人敗血症患者の人工呼吸管理において肺保護換気戦略を行うか? 集団: 成人敗血症患者

介入: 肺保護換気 (低一回換気量もしくは低プラトー圧、もしくはその両者によりプラトー圧がある基準未満となった場合で、PEEPは問わない。Day 1 のみ:1回換気量はおおよそ 4-8ml/kg IBW)

比較対照: Conventinal (上記以外、プラトー圧がある基準以上となっている場合で、PEEP は問わない:1 回換気量はおおよそ 8 ml/kg IBW より多い)

主要なアウトカム: 短期死亡 (ICU 死亡 or 院内死亡 or 研究終了 or 90 日以内死亡。最大のものを採択)、 VFD (28 日以内)、圧損傷(各論文の定義

に従う、気胸も含む。両者がある場合は発生数が多い方を採択)、VAP(各論文の定義に従う)

セッティング: 16 歳以上、人工呼吸管理を必要とする患者

視点: 個人の患者の視点

背景: 重症患者における人工呼吸管理において、人工呼吸関連肺障害を来さないような人工呼吸管理は患者予後改善のために必須で

ある。人工呼吸関連肺障害を引き起こす可能性のある因子として、一回換気量とプラトー圧が示唆されており、それらをある

一定基準以内に抑えて呼吸管理を行う肺保護換気の重要性が示唆されている。それらの目標値を具体的に検討することは、敗

血症診療の専門家だけでなく、非専門家にとっても重要な臨床課題となると考える。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

重症患者における人工呼吸管理において、人工呼吸関連肺障害を来さないような人工呼吸管理は患者予

後改善のために必須である。肺傷害を軽減するための肺保護換気として一回換気量を制限し、プラトー

圧を制限するような換気戦略に関して研究が進められ広く行われているが、成人敗血症患者における有

効性は十分に解明されていない。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

短期死亡(9RCT:N=2422)に関する効果推定値は、Conventional と比較し、肺保護換気で RD 36 少ない

/1000(95%CI:88 少ない~24 多い/1000)であった。VFD(3RCT:N=1911)に関しては MD 1.79(95%CI:-0.62~+4.20)であった。短期死亡のエビデンスの確実性は「中」、VFD のエビデンスの確

実性は「非常に低」であった。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

圧損傷(7 RCT:N=2182)に関する効果推定値は、Conventional と比較し、肺保護換気で RD 8 少ない

/1000(95%CI:31 少ない~28 多い/1000)であった。結果の確実性は「非常に低」であった。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

全ての望ましい効果、望ましくない効果の方向性は一致しており、確実性は「中」あるいは「非常に低」で

あった。アウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は「中」と判断した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

敗血症患者に対して肺保護換気における、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデータはな

い。一般的に、死亡アウトカムに対して置く相対的価値は高く、そのばらつきは少ないことが予想され

る。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

肺保護換気は VFD に関しては同等、死亡及び圧損傷に関しても減少する傾向を示し、検討したアウトカ

ムについて介入を支持する方向であったので、おそらく介入が優位とした。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

一般的な人工呼吸管理の設定の違いであり、全ての人工呼吸器で実践できるため、新たな資源は必要と

しない。コストは増加しなく、患者・家族の個人の視点からおそらく許容できると判断した。 また、医療従事者にとっても肺保護換気は人工呼吸器設定の重要な要素であり、大きく仕事量が増加す

ることもないため、おそらく容認できると判断した。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

肺保護換気は人工呼吸器で一般的に設定できる項目であり、多くの医療施設において実行可能である。

新たに人工呼吸器を購入しなければならない医療施設においては実行可能性のハードルが上がる可能性

がある。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者の人工呼吸管理において肺保護換気戦略を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B:エビデンスの確実

性=「中」)

正当性 望ましい効果は「小さい」、望ましくない効果は「わずか」であり、アウトカム全般にわたるエビデンスの確実性は

「中」である。肺保護戦略を行うことで重大なアウトカムである死亡率を減らす傾向と VFD を増やす傾向の両者が示

されている。有害事象としての圧損傷の発生には差が無かった。それらを総合的に判断し、条件付きの弱い推奨とし

た。

サブグループに関する検討事項 重症度の高いグループ、低いグループで介入による効果の違いがある可能性があるが、重症度によるサブグループの検

討はできていない。 また、PEEP でしっかりと肺胞リクルートメントを行っているか否かも結果に影響を与える可能性があるが、同様に本

メタ解析では検討できていない。

実施にかかわる検討事項 今回はプラトー圧と1回換気量に関して検討を行ったが、近年では駆動圧や経肺圧もアウトカムに影響をきたすことが

示されている。しかし、本メタ解析ではそれらの圧に関しては検討できていないため、自発呼吸を伴う患者や胸郭コン

プライアンスが高い患者においては十分に検討できていないことに注意を要する。

監視と評価 肺保護換気を行うことで1回換気量の減少による呼吸数増加や PaCO2 上昇などが生じ、auto-PEEP など余計な肺胞障

害につながる可能性があり、人工呼吸器パラメータのモニタリングが必要である。 また、肺保護換気を行わない場合、気道内圧上昇や 1 回換気量低下につながる可能性があり、換気様式に応じて身体所

見・バイタルサイン・人工呼吸器パラメータのモニタリングが必要である。

研究上の優先事項

近年ではプラトー圧のみならず、駆動圧や経肺圧も加味した検討が必要である。

パブリックコメント用

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疑問 CQ9-4 成人敗血症患者の人工呼吸管理において高 PEEP 設定を行うか?

集団: 敗血症で人工呼吸管理を必要とする重症患者

介入: 高 PEEP 設定

比較対照: 低 PEEP 設定

主要なアウトカム: 短期死亡 (ICU 死亡 or 院内死亡 or 研究終了 or 90 日以内死亡),VFD (28 日以内), 圧損傷, PaO2/FIO2 (day 1-3 の最大値), PEEP による循環不全

セッティング: ICU において呼吸管理が必要な患者

視点: 個人の患者の視点

背景: 重症患者における人工呼吸管理において、人工呼吸関連肺障害を来さないような人工呼吸管理は患者予後改善のために必須である。人工呼吸関連肺障害を引き起こす可能性のある因子として、一回換気量とプラトー圧の他に、無気肺も示唆されており、無気肺を改善、つまり機能的残機量を上昇させるだけの PEEP が患者予後改善に寄与することが示唆されている。しかしPEEP は気胸や循環抑制などの有害事象も来すため、PEEP は本当に予後改善に寄与するのか、人工呼吸管理の初期にどれくらいの PEEP が適切なのかを知ることは重要な臨床課題と考えられる。

評価

問題

この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症の重症患者における人工呼吸管理において、PEEP が患者予後改善に寄与することが示唆されている。しかし PEEP は気胸や循環抑制などの有害事象も来すため、PEEP は本当に予後改善に寄与するのか、人工呼吸管理の初期にどれくらいの PEEP が適切なのかを知ることは重要な臨床課題と考えられる。

望ましい効果

予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい

短期死亡(7 RCT: N=3,657)に関する効果推定値とその信頼区間は低い PEEP と比べて高 PEEP では RD 8少ない/1000 (95% CI 54 少ない~47 多い)であった。一方、VFD (3 RCT: N=1,654)に関する効果推定値はMD 0.45 高/1000 (95% CI 2.02 低~2.92 高)であった。短期死亡のエビデンスの確実性は「中」、VFD のエビデンスの確実性は「非常に低」であった。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

さまざま 分からない

望ましくない効果

予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

圧損傷発生率(6 RCT: N=3,457)に関する効果推定値は低 PEEP と比べて高 PEEP では RD 5 多い/1000 (95% CI 23 少ない~53 多い)であった。また、循環不全発生(1 RCT: N=1,010)に対する効果推定値は高PEEP で RD 65 多い/1000 (95% CI 6 多い~133 多い)であった。圧損傷発生のエビデンスの確実性は「非常に低」、循環不全発生のエビデンスの確実性は「低」であった。

エビデンスの確実性

効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

望ましい効果の程度は「わずか」、望ましくない効果の程度は「小さい」であり、各アウトカムが異なる方向を示すため、エビデンスの確実性は「重大なアウトカムに関するエビデンスの確実性の中で“最も低い”グレード」を全体的なエビデンスの確実性とした。各アウトカムに対する確実性は「非常に低」2、「低」1、「中」1 でありアウトカム全体にわたるエビデンスの確実性は「非常に低」と判断した。

価値観

人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

敗血症患者での人工呼吸に関する各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデータはない。一般的に、望ましい効果として死亡アウトカムや VFD に対して置く相対的価値は高く、そのばらつきは少ないことが予想される。また、望ましくない効果として一般的に圧外傷に対して置く相対価値も高く、特に循環不全に関しては敗血症性ショックを呈する可能性があり、相対的価値は高い。

効果のバランス

望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位

望ましい効果として、短期死亡と VFD の点推定値と 95%信頼区間は RR 0.98 (95% CI 0.86-1.12)およびMD 0.45 (95% CI -2.02-2.92)であった。一方、望ましくない効果として、圧損傷と循環不全の点推定値と95%信頼区間は RR 1.08 (95% CI 0.61-1.91)および RR 1.23 (95% CI -1.02-1.47)であった。循環不全の点推定値は 1.23 で 95%信頼区間の下限が 1 を超えているが、その値は 1.02 であり RD も 6 多い/1000 である。1 論文しか対象となっていない循環不全発生のアウトカムの結果だけを持って比較対象が優位とは断

パブリックコメント用

パブリックコメント用

さまざま 分からない

定できない。望ましくない効果は望ましい効果よりも若干大きいと判断できる。なおエビデンスにおける不正確さは圧損傷においては非常に深刻であったが、そのほかの重大なアウトカムでは深刻ではなかった。 以上より、効果バランスは比較対照がおそらく優位であると判断した。

容認性

この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

人工呼吸器において PEEP を調整することによるコストの増加はなく、患者・家族の個人および病院経営者や医療政策に関わる人々の視点からおそらく許容できると判断した。 また、医療従事者にとっても PEEP は酸素化に関わる重要な要素であり、仕事量が増加することもないため、おそらく容認できると判断した。

実行可能性

その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

PEEP は人工呼吸器で一般的に設定できる項目であり、多くの医療施設において実行可能である。新たに人工呼吸器を購入しなければならない医療施設においては実行可能性のハードルが上がる可能性がある。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約

判断 問題 いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性またはばらつき

あり

重要な不確実性またはばらつきの可

能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそら

く優位

介入も比較対象もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ

当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付きの推奨

当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論

推奨

成人敗血症患者の人工呼吸管理の初期においては高 PEEP 設定(PEEP12cmH2O 以上)を用いないことを弱く推奨する。

(GRADE 2D:エビデンスの確実性「非常に低」)

正当性 望ましい効果が「わずか」と望ましくない効果は「小さい」であり、アウトカム全般にわたるエビデンスの確実性は「非常に低」であった。高 PEEP

は短期死亡と VFD に関しては望ましい効果はわすかであった。望ましくない効果としての Barotrauma 発生率の RD は 5 少ない/1000 (95% CI 23 少ない

〜53 多い)であったが、高 PEEP の RD は 65 多い/1000 (95% CI 6 多い〜133 多い)で循環不全を助長する傾向を示した。評価対象となった論文の対象患

者の全てが moderate ARDS 患者であり、循環不全を伴うリスクを抱えていた可能性がある。本 CQ の対象患者は肺の重症度が高くなく、循環不全を伴

わない患者であり、それらを総合的に判断し、条件付きの弱い推奨とした。

サブグループに関する検討事項 重症度の高いグループ (ARDS など)、低いグループで介入による効果の違いがある可能性があるが、重症度によるサブグループの検討はできていな

い。

実施にかかわる検討事項 PEEP の効果は重症度により異なる可能性があるが、重症度の低い患者における高 PEEP の有効性と害に関しては検討できていない。よって、ARDS に陥

った場合には重症度に応じて PEEP を上げることを検討する必要がある。

敗血症性ショック時には、高 PEEP の循環抑制が強調されると思われるので、循環不全を伴う患者では注意が必要である。

また、呼吸不全に至ってから介入までの時間も PEEP による効果と害に影響を与えることが考えられ、実際に本推奨を患者に適用する際には注意する

必要がある。

監視と評価 PEEP により気道内圧、肺胞内圧が上昇することになるので、人工呼吸器パラメータのモニタリングを行う必要がある。また、呼吸・循環のバイタルサ

インにも影響を与える可能性があるため、患者呼吸様式とともに呼吸循環指標をモニタリングの上、必要であれば変更や介入を行う必要がある。

研究上の優先事項 単なる PEEP の高低のみならず、PEEP 付加の様式(APRV など)や リクルートメント手技併用の有無がアウトカムに影響する可能性もある。

用語と略語は別に定める用語集に則って統一した。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ9-5 人工呼吸管理となった成人敗血症患者に対して抜管前に SBT を行うか? 集団: 人工呼吸管理を必要とする患者

介入: プロトコール化されたウィーニング(SBT を含んだウィーニング)

比較対照: プロトコール化されていないウィーニング (SBT 実施なし)

主要なアウトカム: 短期死亡 (ICU 死亡 or 院内死亡 or 研究終了 or 90 日以内死亡。最大のものを採択) ; 再挿管率(抜管後 48-72 時間以内、NIV 装

着も含む); VFD (28 日以内) ; ICU 滞在日数

セッティング: 16 歳以上、人工呼吸管理を必要とする患者

視点:

背景: 重症患者における人工呼吸管理において、人工呼吸器関連肺炎や人工呼吸関連肺障害を来さないよう早期に離脱することが重

要である。臨床医は患者の抜管後の呼吸状態を過小評価しがちであり、主観的な方法では離脱が遅れる可能性がある。日々の

自発呼吸トライアル(SBT)の実施が、人工呼吸器の設定を徐々に変更するよりも抜管までの期間を短縮することが示されて

いる。人工呼吸器装着期間の短縮は、患者予後改善のために重要である。SBT を含めた人工呼吸器からのウィーニングのプロ

トコルの有用性や具体的な方法を検討することは、敗血症診療の専門家だけでなく、非専門家にとっても重要な臨床課題にな

ると考える。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症患者の致死率は依然として高く、治療成績を向上させる介入法の確立は急務である。現状では、

SBT を含めた人工呼吸器からのウィーニングのプロトコルの有効性・有害性の評価は定まっておらず、

臨床現場でもその投与判断については多様性がある。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

短期死亡に関する効果推定値は、プロトコルなしと比べて、プロトコルありで RD 10 少ない/1000 (95% CI 52 少ない〜45 多い)であった(8RCT, n=1282)。 VFD については該当文献が無かった。 再挿管率に関する効果推定値は、プロトコルなしと比べて、プロトコルありで RD 24 少ない/1000 (95% CI 61 少ない〜41 多い)であった(7RCT, n=1081)。 短期死亡、再挿管率のエビデンスの確実性は「非常に低」であった。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

パブリックコメント用

パブリックコメント用

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

該当するアウトカムはなかった。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

全ての望ましい効果の方向性は一致しており、確実性は「非常に低」であった。以上より、アウトカム全

体にわたるエビデンスの確実性は「非常に低」と判断した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

敗血症患者での SBT を含めた人工呼吸器からのウィーニングのプロトコルによる、各アウトカムに置く

患者・家族の価値観に関するデータはない。一般的に、死亡アウトカムに対して置く相対的価値は高

く、そのばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

SBT を含めた人工呼吸器からのウィーニングのプロトコルは短期死亡、再挿管率に関して減少させる方

向性を示したが、望ましくない効果については評価できていない。 効果バランスはおそらく介入が優位と判断した。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

抜管前の非侵襲的な試験を行うかどうかであり、全ての挿管患者で抜管前に実践できる試験であるた

め、新たな資源は必要としない。呼吸器設定の変更という単純かつ簡単な介入のため、看護師や医師の

労力は増加しない。コストは増加しないので患者・家族の個人の視点からもおそらく許容できる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい

介入は多くの医療施設において実行可能である。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

さまざま 分からない

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 人工呼吸管理となった成人敗血症患者に対して抜管前に SBT を含めた人工呼吸器からのウィーニングのプロトコルを用

いることを弱く推奨する(GRADE 2D:エビデンスの確実性=「非常に低」)

正当性 SBT を含めた人工呼吸器からのウィーニングのプロトコルを用いることで、短期死亡および再挿管率などの望ましい効

果が「わずか」にあるが、望ましくない効果については「わからない」であり、アウトカム全般にわたるエビデンスの

確実性は「非常に低」である。それらを総合的に判断し、条件付きの弱い推奨とした。

サブグループに関する検討事項 重症度の高いグループ、低いグループで介入による効果の違いがある可能性があるが、重症度によるサブグループの検

討はできていない。 また、抜管後呼吸不全をきたすリスク別評価も本メタ解析では検討できていない。

実施にかかわる検討事項 今回は初回の SBT を含めた人工呼吸器からのウィーニングに関して検討を行った。よって SBT を複数回失敗する患者

に対しては本メタ解析では検討できていないことに注意を要する。また、抜管後呼吸不全をきたすリスクなどでの層別

解析もできていないことから、全ての患者において本推奨を適用できるかは慎重に判断する必要がある。

監視と評価 人工呼吸器離脱時においては、SBT を含めた人工呼吸器からのウィーニングのプロトコル実施の有無に関わらず、患者

の呼吸様式、バイタルサイン、血液ガス所見などを評価する必要がある。

研究上の優先事項 今後、患者の重症度別、抜管後呼吸不全をきたすリスク別、病態別の SBT を含めた人工呼吸器からのウィーニングのプ

ロトコルの効果を検討する必要がある。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問

CQ9-6 人工呼吸管理となった成人敗血症患者に対して抜管後に予防的な非侵襲的人工呼吸

(NIV)または経鼻高流量療法 (NHFT)を行うか?

集団: 急性呼吸不全で人工呼吸管理を 12 時間以上必要とし、SBT をクリアした患者

介入: 抜管直後に予防的に以下の呼吸管理デバイスのいずれかを使用

1. NIV:マスク、モード、NIV 時間、weaning 方法は問わない

2. NHFT:流量、FIO2 は問わない

3. COT (conventional oxygen therapy):カニュラ、マスク、ベンチュリーマスク:流量は問わない

比較対照:

主要なアウトカム: 再挿管率(24-72 時間以内の再挿管), 短期死亡 (ICU 死亡 or 院内死亡 or 研究終了 or 90 日以内死亡。最大のものを採択), 有害事象(抜管後呼吸不全:各文献ごとの定義), 有害事象(皮膚トラブル), 有害事象(機器による違和感), 有害事象(乾燥

による違和感)

セッティング: 集中治療患者

視点: 個人の患者の視点

背景: 抜管後の呼吸不全の原因には、上気道閉塞や不十分な気道浄化や過剰な気道分泌物や肺水腫や心不全などがある。こういっ

た抜管後の呼吸不全では、再挿管を要する可能性がある。抜管後呼吸不全による再挿管では、緊急気管挿管による誤嚥性肺

炎の発症や再鎮静による影響などの合併症が生じる可能性があり、また、人工呼吸期間や ICU 滞在期間の延長を引き起こす

ため、抜管後の呼吸不全を予防する必要がある。抜管後の呼吸不全の予防のためには、NIV や NHFT などの使用が知られて

いる。抜管後の呼吸不全予防のための呼吸管理を明らかにすることは、敗血症診療の専門家のみならず、非専門家にとって

も重要な臨床課題だと考えられる。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

抜管後の呼吸不全予防のための呼吸管理を明らかにすることは、敗血症診療の専門家のみならず、非専

門家にとっても重要な臨床課題である。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

本 CQは NMAを用いて検討した。短期死亡に関するネットワーク効果推定値は,COTと比べて、NHFTで RD 12 少ない/1000 (95% CI 32 少ない 16 多い)[エビデンスの確実性は中] (4 RCT, n=802)、NIV で RD 31 少ない/1000 (95% CI 53 少ない〜1 多い) [エビデンスの確実性は中] (5 RCT, n=784)、そして NHFT と

比べて、NIV で RD 43 少ない/1000 (95% CI 102 少ない〜32 多い) [エビデンスの確実性は中]であった(1 RCT, n=604)。再挿管率に関するネットワーク効果推定値は,COT と比べて、NHFT で RD 69 少ない

/1000 (95% CI 99 少ない〜12 少ない) [エビデンスの確実性は低] (5 RCT, n=862), NIV で RD 66 少ない

/1000 (95% CI 99 少ない〜1 少ない) [エビデンスの確実性は中] (4 RCT, n=664)、そして NHFT と比べ

て、NIV で RD 16 多い/1000 (95% CI 109 少ない〜271 多い) [エビデンスの確実性は非常に低]であった(1 RCT, n=604)。 また、短期死亡における SUCRA は NIV 91.8, NHFT 46.3, COT 11.8 であり、再挿管における SUCRA は

NIV 69.8, NHFT 77.8, COT 2.8 であった。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

パブリックコメント用

パブリックコメント用

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

今回の検討では望ましくない効果として検討したアウトカムは全て「重要」であり、本 EtD tableには含

まれなかった。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

エビデンスの方向性としては、気管挿管のアウトカムにおいてのみ COT に対して NIV と NHFT におい

て再挿管を減少させる方向であった。望ましくない効果に関しては評価できていない。よって、NIV と

NHFT に優劣はつけられず、両者を合わせて推奨する方針とした。そのような状況においては、SUCRAの数値を参考にエビデンスの方向性を判断すると COT と NIV または NHFT の 2 群においてエビデンス

の方向性は一致していると判断し、エビデンスの確実性は「重大なアウトカムに関するエビデンスの確

実性の中で最も高いグレード」を全体的なエビデンスの確実性とした。アウトカム全体にわたるエビデ

ンスの確実性は「中」と判断した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

抜管後の呼吸管理デバイスにおけるアウトカムに関する,価値観についてのデータはない。しかし一般

的には死亡や再挿管に対して置く相対的価値は高く,そのばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

NIV や NHFT を適用すれば、挿管に伴う不利益は回避出来る。 しかし望ましくない効果に関しては検討できていない。「不快感」などの望ましくない効果が可能性と

して挙げられるが、重要度は低いために、効果バランスは介入群優位と考える。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

呼吸管理に必要な要素は、デバイス有無、デバイスや酸素のコスト、デバイスに対する容認性が挙げら

れる。NIV, NHFT, COT は一般的な呼吸管理デバイスであり、どの病院においてもすでに導入されている

ことが多く新たなコストは発生しないことが予想される。しかし、デバイスに関わる消耗品に関しては

NIV と NHFT に使用される回路費用として約 5000円/個必要となるために、医療経済においては COT の

方がコストを抑えられると考えられる。また、医療従事者の仕事量に関しては、COT に比して NHFT、NHFT に比して NIV においてその管理のために増大すると考えられる。さらに、デバイスの容認性に関

しては皮膚トラブルや患者不快感が関与すると考えられるが、どちらも今回の検討では重大なアウトカ

ムとしては評価できておらず、結論には至っていない。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ

人工呼吸管理が可能な病院であれば一般的な呼吸管理方法であり,どの病院においても実行可能性は高

いといえる。しかし、デバイスがない施設では実施できない。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

おそらく、はい はい さまざま 分からない

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実

性またはばら

つきはなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入

が優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

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結論 推奨 人工呼吸管理となった成人敗血症患者に対して抜管後に通常の酸素療法よりは予防的な非侵襲的人工呼吸(NIV)もし

くは経鼻高流量療法 (NHFT)を行うことを弱く推奨する。(GRADE 2B:エビデンスの確実性=「中」)。

正当性 本 CQ は NMA を用いて検討した。通常酸素療法(COT), 経鼻高流量療法 (NHFT), 非侵襲的人工呼吸(NIV)のそれぞ

れの比較において検討したアウトカムでは、望ましいアウトカムである短期死亡においては効果の差を認めなかった

が、再挿管率においては COT に比して NIV または NHFT で減少し、NIV または NHFT で再挿管を回避できる可能性が

ある。よって、NIV と NHFT を合わせて推奨を行うこととした。望ましくない効果は検討できていないが、望ましい効

果のエビデンスレベルは「中」でありよって、それらを総合的に判断し、条件付きの弱い推奨とした。

サブグループに関する検討事項 重症度の高いグループ、低いグループおよび呼吸不全の原因疾患毎で介入による効果の違いがある可能性があるが、重

症度によるサブグループの検討はできていない。また、抜管後呼吸不全・再挿管のリスク別の検討ができていないた

め、リスクに応じた判断が必要となるが、今回の検討では十分に検証できていない。

実施にかかわる検討事項 抜管後にルーティンにどのような酸素療法デバイスを使用するかに関しては、患者の年齢・重症度・再挿管リスクの有

無も影響する。抜管後呼吸不全・再挿管のリスク別の検討は十分になされていない。実臨床ではそれらを加味して慎重

に判断することが望まれる。

監視と評価 抜管後は患者の呼吸様式、バイタルサイン、血液ガス所見などをモニタリングし、選択した酸素療法デバイスの判断が

正しかったのかをしっかりとモニタリングし、必要があればその他の酸素療法デバイスに変更する必要がある。

研究上の優先事項 今後,抜管後呼吸不全・再挿管のリスク・呼吸不全の原因別に関する検討が行われることが望まれる。

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疑問 CQ10-1 人工呼吸中の成人敗血症患者に対して鎮痛優先のプロトコルに基づく管理を行うか? 集団: 敗血症,呼吸不全,心不全,熱傷,大侵襲手術後など

介入: 鎮痛優先のプロトコル管理

比較対照: プロトコル化されていない従来の管理 or 催眠優先のプロトコル管理

主要なアウトカム: 全原因死亡率,人工呼吸期間,ICU 滞在期間,重症合併症の発生割合,せん妄の発生割合,不穏の発生割合

セッティング: 18 歳以上の ICU 入室の成人重症患者

視点: 個人の患者の視点

背景: 重症患者において不適切な鎮痛管理は患者に負の影響を与えることが分かっている。評価ツールを利用したプロトコルによる

鎮痛管理は ICU アウトカムおよび臨床アウトカムを改善する可能性が示唆されている。鎮痛による利益とリスクのバランスを

とる上でもプロトコル管理は有用であり,敗血症診療ガイドラインでも取り上げるべき重要臨床課題と考える。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

ICU にて重症患者を治療する際,苦痛,不快感,精神的ストレスを患者が許容する範囲まで軽減するこ

とが重要で有ることは明白であり,敗血症症例においても例外ではない。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

鎮痛優先のプロトコル管理により全原因死亡率(5RCT:N=1012)は 1000 人あたり 18 人減少(63 人減少

~35 人増加)と臨床的な差はなかった。しかし人工呼吸期間(6RCT:N=1090)は MD 8.99 時間短縮(20.66時間短縮~2.68 時間延長)、28 日間の人工呼吸器非使用日数(1RCT:N=113)は MD 4.2 日延長(0.32 日延

長~8.03 日延長)、ICU 滞在期間(6RCT:N=1090)は MD 15.15 時間短縮(26.08 時間短縮~4.22 時間短縮)と介入群が有利と判定できる。鎮痛優先のプロトコル管理は望ましい効果を期待することができるが、

死亡率まで改善しないので「中」と判定した。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

鎮痛優先のプロトコル管理により重症合併症(7RCT:N=1296)は 1000 人あたり 13 人減少(36 人減少~

19 人増加)、せん妄発生(1RCT:N=79 )は 1000 人あたり 55 人減少(159 人減少~194 人増加)と臨床的に

差を認めなかった。望ましくない効果は限定的であり、「わずか」と判定した。

エビデンスの確実性

パブリックコメント用

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効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

今回採用したすべてのアウトカムの効果推定値の方向性は介入群優位で一致しているため,一番高いエ

ビデンスの確実性「低」を採用した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

敗血症患者に対する鎮痛優先のプロトコルに基づく管理における,各アウトカムに係る患者・家族の価

値観に関するデータはない。一般的に,死亡,ICU 滞在期間,人工呼吸期間に対する相対的価値は高

く,そのばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対照もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

本 CQ において,望ましい効果として死亡率、ICU 滞在期間、人工呼吸期間、28 日間の人工呼吸器非使

用日数のいずれも介入が優位であった。一方,望ましくない効果の発現頻度に関してもせん妄発生は、

介入によって減少する可能性があった。効果のバランスとしてはおそらく介入が優位と判断する。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

鎮痛薬の増量と催眠薬の削減とによりコストは相殺され,個人負担額への影響は容認できる程度であ

る。プロトコル管理により医療者の負担は増加する可能性があるが、こちらも敗血症の鎮痛鎮静管理と

して望まれる水準の医療であり、ある程度は容認可能である。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

介入は多くの医療施設において実行可能である。

パブリックコメント用

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判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

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結論 推奨 人工呼吸中の成人敗血症患者に対して鎮痛優先のプロトコルに基づく管理を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの

確実性「低」)。

正当性 望ましい効果は中程度,望ましくない効果はわずかであり,アウトカム全般にわたるエビデンスの確実性は「低」である。それら

を総合的に判断し,条件付の推奨とした。

サブグループに関する検討事項 術後患者を含んでいるため痛みの性質が異なる可能性があるが、敗血症患者に限定した研究は存在せずサブグループ解析は実施で

きていない(そのため患者の非直接性をグレードダウンして対応した)。

実施にかかわる検討事項 プロトコルの内容に関して明確な提示はできず、各施設の実情に合わせたプロトコルを作成する必要がある。

監視と評価 プロトコルの内容により異なるが、患者のバイタルサインなど基本的なモニタリングは必要である。

研究上の優先事項 以下の内容に関する検討が求められるだろう。 ・鎮痛優先のプロトコルによりアウトカムが改善する病態,重症度の検証。 ・鎮痛優先のプロトコルに適した鎮痛薬,鎮静薬の検証。

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疑問 CQ10-3 人工呼吸中の成人敗血症患者の鎮静薬として、ベンゾジアゼピンよりもプロポフォール

やデクスメデトミジンを優先的に投与するか? 集団: 人工呼吸管理中の 18 歳以上の成人

介入: プロポフォール、デクスメデトミジンによる鎮静

比較対照: ベンゾジアゼピン系鎮静薬

主要なアウトカム: 不穏発症の割合、人工呼吸管理期間、ICU 滞在期間、死亡率、計画外抜管

セッティング: ICU 入室患者

視点: 個人の患者の視点

背景: 不穏の予防は、人工呼吸管理期間や ICU滞在期間の短縮という点で非常に重要である。鎮静薬の選択によって、不穏の発症頻

度に差があることが報告されている。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

不穏の軽減が患者予後の改善につながる可能性が高いことを考慮すれば、いかに不穏の発症割合を抑制

できるかは、敗血症患者管理において重要であると考える。また、人工呼吸管理期間や ICU 滞在期間の

短縮もまた患者予後に直結する。選択する鎮静薬の種類によってこれらのリスクに違いがあるのであれ

ば、鎮静薬の選択ならびに投与方法を確立することによって、敗血症予後改善に向けて一歩前進できる

ものと確信する。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡率(10RCT:N=1573)には差がないものの 1000 人あたり 4 人多い(32 人少ない~ 50 人多い)が、

不穏発症割合(2RCT:N=632)はどちらかといえば介入の効果を支持するものである(1000 人あたり 66 人少ない[119 人少ない~ 3 人多い])。また人工呼吸管理期間(7RCT:N=1214)(MD 1.56 日短い

[2.46日短い~0.67日短い]と ICU滞在期間(11RCT:N=1514)(MD 2.06日短い [2.72日短い~1.39日短い])は、介入により短縮している。以上より、望ましい効果は「中」とした。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

計画外抜管(3RCT:N=359)のみの評価であるものの、その頻度には差がなく(1000人あたり 31人多

い[22 人少ない~ 128 人多い])、望ましくない効果はわずかといえる。

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エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

不穏の発症割合、人工呼吸管理期間、ICU 滞在日数については介入を支持する方向で一致している。死

亡率はわずかに増加、計画外抜管は増加する傾向であり、各アウトカムが異なる方向を示しているた

め、各アウトカムのエビデンスの確実性の中で最も低い「非常に低」とする。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

人工呼吸管理中の鎮静薬の選択に対する、患者・家族の価値観に対するデータはないが、不穏の発症割

合、死亡率、人工呼吸管理期間や ICU 滞在期間は、患者予後に直結するアウトカムであることから、そ

の価値観は高く、ばらつきは少ないものと推察できる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

死亡率に関しては差がないものの、不穏発症、人工呼吸管理期間、ICU 滞在期間においては、介入で有

益な効果が示されており、好ましくない効果である、計画外抜管には差がないことから、おそらく介入

が優位と判断する。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

介入における鎮静薬は、比較対象となる鎮静薬よりもコストは高いものの(デクスメデトミジン:

1821~4890 円/1V・プロポフォール:770-1668 円/1V)、不穏発症の軽減、人工呼吸管理期間や ICU 滞在

日数の短縮によって、おそらく相殺されることを考慮すれば、患者・家族の視点からおそらく許容され

るものと推察できる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

既に多くの患者に対して頻繁に使用されている鎮静薬であり、どの医療施設においても実行可能と判断

される。

パブリックコメント用

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判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

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結論 推奨 敗血症患者における人工呼吸管理中の鎮静薬として、ベンゾジアゼピンよりもプロポフォールやデクスメデトミジンを使用することを弱く推奨す

る。(GRADE 2D:エビデンスの確実性「非常に低」)

正当性 死亡率については差がないものの、望ましくない効果に差がなく、不穏の発症割合、人工呼吸管理期間、ICU 滞在期間については、プロポフォール

ならびにデクスメデトミジンの投与を支持する結果であったことから、条件付きの推奨とした。

サブグループに関する検討事項 これまでの臨床研究は、ICU 入室中の重症患者を対象としたものが大部分を占めるため、今後は敗血症患者のみを対象とした効果の検討が望まれ

る。

実施にかかわる検討事項 鎮静薬を選択する際に、プロポフォールとデクスメデトミジンのどちらを優先して使用するのか、併用するほうが良いのか、について常に検討して

いく必要がある。デクスメデトミジンの血圧低下、徐脈などの循環器系副作用の発現と対応についても検討していく必要がある。またプロポフォー

ルについても血圧低下、PRIS (propofol infusion syndrome)などの副作用の発現と対応について検討していく必要がある。

監視と評価 なし。

研究上の優先事項 今後は以下の検討が必要であろう。 ・敗血症患者のみを対象として、どの鎮静薬を優先的に使用すべきかに関する検討 ・プロポフォール単独、デクスメデトミジン単独、両薬剤の併用、のなかではどの鎮静方法が最も良いのか、併用する場合にはどちらの薬剤を主と

して使用するのが良いのか、に関する検討

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疑問 CQ10-4 人工呼吸中の敗血症患者の鎮静薬調整において、1 日 1 回の鎮静薬中止やプロトコール

を用いた鎮静薬の調整による light sedation を行うか? 集団: 人工呼吸管理中の 18 歳以上の成人

介入: Light sedation(1 日 1 回の鎮静薬の中断またはプロトコールによる鎮静薬の調整、RASS -2 以上を(もしくはそれに相当す

る)鎮静深度を目標とした管理)

比較対照: Deep sedation

主要なアウトカム: 人工呼吸管理期間、ICU 滞在日数、死亡率、計画外抜管

セッティング: ICU 入室患者

視点: 個人の患者の視点

背景: Light sedation の実践は、人工呼吸管理期間や ICU 滞在期間の短縮につながるとされている。また、意識レベルの確認や不穏

の早期発見という観点からも重要である。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

Light sedationの実践は、人工呼吸管理期間や ICU滞在日数の短縮につながることがこれまで報告されて

いることから、敗血症患者において検討することは非常に重要である。また、意識レベルの確認や不穏

の早期発見の点から考えても優先されるべき検討課題と考える。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡率に関しては差がないものの(1000 人あたり 57 少ない[135 人 少ない~ 60 人多い])、人工呼吸

管理期間(MD 2.49 日短い[4.43 日短い~0.54 日短い])、ICU 滞在期間(MD 3.34 日短い[6.09 日短い

~0.6 日短い])については、いずれも短縮されており、light sedation の実践を支持するものであると考

え、望ましい効果は「中」とした。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

懸念される望ましくない効果である、計画外抜管の頻度には差がなく(1000 人あたり 37 人少ない[61 人少ない~ 88 人多い])、望ましくない効果はわずかと判断する。

パブリックコメント用

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エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

死亡率と計画外抜管は減少する方向で、人工呼吸管理期間と ICU 滞在日数は有意差を持って介入を支持

する方向で一致している。各アウトカムに対する確実性は「低」から「非常に低」であり、全体的なエ

ビデンスの確実性は、その中で高いほうの「低」とした。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

Light sedation の実践に対する患者・家族の価値観に対するデータはない。しかしながら、死亡率や人工

呼吸管理期間、ICU 滞在期間は、患者予後に直結するアウトカムであり、light sedation により患者意識

が確認できれば、家族にとっては大きなメリットになることを考えれば、その価値は高く、ばらつきは

少ないものと考えられる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

死亡率に関しては差がないものの、人工呼吸管理期間、ICU 滞在期間においては、介入によって有益な

効果が示されており、好ましくない効果である、計画外抜管も減少傾向であることから、おそらく介入

が優位と判断する。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

Light sedation の実践は、担当看護師の負担が増える可能性は否定できないものの、計画外抜管といった

望ましくない効果を増やすことなく、患者意識を確認することができ、かつ人工呼吸管理期間や ICU 滞

在期間を短縮するものであれば、おそらく患者・家族から許容されるものと判断できる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

Light sedation の実践により、鎮静薬の調節や意識のある患者に対する対応などで、人工呼吸管理中から

のリハビリテーションの実践が標準的治療になりつつあることを考えれば、負担になるとは考えにく

く、計画外抜管などの望ましくない効果にも影響のないことから、実行は可能であると推察できる。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 敗血症患者の人工呼吸管理中の鎮静薬調整において、1 日 1 回の鎮静薬中止やプロトコールを用いた鎮静薬の調整によって light sedation を行うこ

とを弱く推奨する。(GRADE 2C:エビデンスの確実性「低」)

正当性 死亡率については差がないものの、望ましくない効果にも差がなく、人工呼吸管理期間、ICU 滞在期間については、light sedation を支持する結果

である。さらに、現在の ICU 管理の現状を考えれば、実行の可能性も容認できる。しかし、エビデンスの確実性が低いため、条件付きの推奨とし

た。

サブグループに関する検討事項 これまでの臨床研究は、ICU 入室中の重症患者を対象としたものが大部分を占めるため、今後は敗血症患者のみを対象とした効果の検討が望まれ

る。

実施にかかわる検討事項 1 日 1 回の鎮静薬中断とプロトコールによる鎮静薬の調整では、どちらが有効でかつ安全に施行できるのか、鎮静のレベルについては鎮静スコアリ

ングを用いてどのレベルを目標とすべきなのか、について常に検討していく必要がある。

監視と評価 なし。

研究上の優先事項 今後は以下の検討が必要であろう。 ・敗血症患者のみを対象とした light sedation に対する有効性・安全性に関する検討 ・1 日 1 回の鎮静薬の中断とプロトコールによる鎮静薬の調整では、どちらが有効かつ安全に実践できるかに関する検討 ・RASS -2 以上のなかで、どの鎮静レベルが最も有効かつ安全であるのかに対する検討

パブリックコメント用

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疑問 CQ10-5 成人敗血症患者のせん妄予防に、薬物療法を行うか? 集団: 敗血症、呼吸不全、心不全、熱傷、術後患者など

介入: デクスメデトミジン投与

比較対照: プラセボ投与

主要なアウトカム: 死亡率、ICU 退室後の認知機能障害、せん妄日数、せん妄発生割合(報告がない薬剤は、せん妄フリーデイズ)、ICU 滞在期間、

重症有害事象の発生割合

セッティング: 18 歳以上の ICU 入室の重症患者

視点: 個人の患者の視点

背景: ICU でのせん妄の持続日数の長さと ICU 退室後 3 か月と 12か月の認知機能障害が関連することが知られている。敗血症患者で

せん妄を予防する薬物があれば患者の集中治療後症候群(PICS)を軽減するため重要である。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症患者の中枢神経系臓器障害の表現型のひとつがせん妄である。せん妄を予防することは臨床上有

用である。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡率(4RCT:N=1061)は 1000 人あたり 28 人減少(74 人減少〜28 人増加)と差はなかった。ICU 退室後

の認知機能障害(1RCT:N=434)は TICS-m スコア(高いほど認知機能低下なし)が MD 4.7 増加(3.78 増加

~5.62 増加)と効果を認めた。またせん妄発生割合(7RCT:N=1658)についても 1000 人あたり 155 減少

(203 人減少~83 人減少)と効果を認めた。ICU 滞在期間(5RCT:N=1141)は MD 1.55 日短縮(3.82 日短縮

〜0.72 日延長)と差を認めなかったが、術後患者のみの研究を除外したサブグループ解析(4RCT:N=441)では MD 2.46 日短縮(3.80 日短縮〜1.13 日短縮)と臨床的に効果を認めた。以上より、望ましい効

果は「中」と判定した。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

重症な有害事象は 1000 人あたり 53 人減少(69 人減少~8 人増加)と差を認めなかった。望ましくない効

果はわずかだと考えられる。

エビデンスの確実性

パブリックコメント用

パブリックコメント用

効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

デクスメデトミジンは益と害の各アウトカム同じ方向性を示しているため,最も高いエビデンスである

「低」を採用した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

成人敗血症患者のせん妄予防の薬物療法に対する、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデ

ータはない。一般的に、死亡率、せん妄日数、せん妄発生割合などの臨床アウトカムに対して置く相対

的価値は高く、ばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

望ましくない効果発生に差はなく、ICU 退室後の認知機能障害とせん妄発生割合について効果を認める

ため、おそらく介入が優位と判断した。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

デクスメデトミジン(200µg/50mL シリンジ価格 4,886 円)は集中治療における人工呼吸中及び離脱後

の鎮静薬として広く使用されており、患者・家族の個人的な負担を大きく増加するものではない。医療

者の仕事量に関しても、集中治療管理として薬剤の持続投与は一般的な内容であり、容認可能である。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症を管理可能な医療施設であれば、介入は問題なく実行可能である。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者のせん妄予防にデクスメデトミジンを投与することを弱く推奨する(GRADE 2C:エビデンスの確実性「低」)。

鎮静が不必要な患者にデクスメデトミジンのルーチン投与を推奨するものではない。

正当性 望ましい効果である ICU 退室後の認知機能障害とせん妄発生割合に効果を認め、望ましくない効果発生は限定的であるため、介入

が優位と判断した。

サブグループに関する検討事項 術後患者が含まれる研究を除外したサブグループ解析を実施した。結果として、ICU 滞在期間は術後患者を除外した場合、介入群で

MD 2.46 日短縮(3.80 日短縮〜1.13 日短縮)と臨床的に効果を認めた。他のアウトカムに関しては、主解析と同様であった。

実施にかかわる検討事項 薬剤をルーチンに使用するかについては、患者の年齢・重症度・合併症も考慮する必要がある。デクスメデトミジンは国内で認可

された投与量が海外の投与量と異なり(デクスメデトミジンの維持量 0.2〜0.7μg/kg/min は海外より少ない)、本邦での有効性も検

討することが望まれる。

監視と評価 デクスメデトミジンの副作用として低血圧、高血圧、徐脈、心室細動等が報告されており、患者の呼吸状態、循環動態等の全身状

態を注意深く継続的に監視する必要がある。

研究上の優先事項 今回含まれる研究は ICU の重症患者が対象となっているため、今後は患者を敗血症に限定したせん妄予防研究も考慮する。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ10-5 成人敗血症患者のせん妄予防に、薬物療法を行うか? 集団: 敗血症、呼吸不全、心不全、熱傷、術後患者など

介入: ハロペリドール投与

比較対照: プラセボ投与

主要なアウトカム: 死亡率、ICU 退室後の認知機能障害、せん妄日数、せん妄発生割合(報告がない薬剤はせん妄フリーデイズ)、ICU 滞在期間、重

症な有害事象の発生割合

セッティング: 18 歳以上の ICU 入室の重症患者

視点: 個人の患者の視点

背景: ICU でのせん妄持続日数の長さと ICU 退室後 3か月と 12か月の認知機能障害が関連することが知られている。敗血症患者でせ

ん妄を予防する薬物があれば患者の集中治療後症候群(PICS)を軽減するため重要である。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症患者の中枢神経系臓器障害の表現型のひとつがせん妄である。せん妄を予防することは臨床上有

用である。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡率(7RCT:N=2371)は 1000 人あたり 5 人減少(31 人減少〜26 人増加)、せん妄日数(3RCT:N=347)は MD0.02 日延長(0.23 日短縮〜0.27 日延長)、せん妄 free days (2RCT:N=1580)は MD0.66 日短縮(1.42日短縮〜0.11 日延長)、せん妄発生割合(5RCT:N=2159)は 1000 人あたり 34 人減少(92 人減少~42 人増

加)、ICU 滞在期間(7RCT:N=2333)は MD 0.07 日短縮(0.26 日短縮〜0.11 日延長)と臨床的に差を認めな

かった。ICU 退室後の認知機能障害は報告がなかった。以上より、効果は限定的である。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

重症な有害事象の発生割合(2RCT:N=1580)は 1000 人あたり 2 人減少(6 人減少~13 人増加)と差を認め

なかった。望ましくない効果も限定的である可能性が高い。

エビデンスの確実性

パブリックコメント用

パブリックコメント用

効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

益と害の各アウトカム同じ方向性を示しているため,最も高いエビデンスである「中」を採用した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

成人敗血症患者のせん妄予防の薬物療法に対する、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデ

ータはない。一般的に、死亡率、せん妄日数、せん妄発生割合などの臨床アウトカムに対して置く相対

的価値は高く、ばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対照もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

望ましい効果は限定的であり、望ましくない効果も増えない可能性が高い。以上より、介入も比較対照

のいずれも優位でない判断した。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

ハロペリドールは価格 5.7 円~2572 円とバラツキがあるが、患者負担から考えて薬剤コストは容認でき

る。また、薬剤内服は医療者への負担も限定的である。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症を管理可能な医療施設であれば、介入は問題なく実行可能である。ただし、ハロペリドールをせ

ん妄予防に使用する際は、保険適応外の診療となる。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者のせん妄予防にハロペリドールを投与しないことを弱く推奨する。(GRADE 2B:エビデンスの確実性「中」)

正当性 望ましい効果である死亡率、せん妄日数、せん妄フリーデイズ、せん妄発生割合ともに臨床的な差はない。望ましくない効果もな

いが、効果のバランスから考えて介入に反対する条件付きの推奨と判断した。

サブグループに関する検討事項 術後患者が含まれる研究を除外したサブグループ解析を実施した。また感度分析として、せん妄予防と治療の区別が難しい研究を

除外して検討した。サブグループ解析と感度解析の結果は、主解析と同様であった。

実施にかかわる検討事項 なし。

監視と評価 なし。

研究上の優先事項 今回含まれる研究は ICU の重症患者が対象となっているため、今後は患者を敗血症に限定したせん妄予防研究も考慮する。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ10-5 成人敗血症患者のせん妄予防に、薬物療法を行うか? 集団: 敗血症、呼吸不全、心不全、熱傷、術後患者など

介入: 非定型抗精神病薬投与

比較対照: プラセボ投与

主要なアウトカム: 死亡率、ICU 退室後の認知機能障害、せん妄日数、せん妄発生割合(報告がない薬剤は、せん妄フリーデイズ)、ICU 滞在期間、

重症有害事象の発生割合

セッティング: 18 歳以上の ICU 入室の重症患者

視点: 個人の患者の視点

背景: ICU でのせん妄の持続日数の長さと ICU 退室後 3 か月と 12か月の認知機能障害が関連することが知られている。敗血症患者で

せん妄を予防する薬物があれば患者の集中治療後症候群(PICS)を軽減するため重要である。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症患者の中枢神経系臓器障害の表現型のひとつがせん妄である。せん妄を予防することは臨床上有

用である。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡率(1RCT:N=66)は 1000 人あたり 33 人減少(125 人減少〜262 人増加)、せん妄日数(2RCT:N=90)は MD0.01 延長(1.13 短縮〜1.16 延長)と差はなかった。せん妄 free days (1RCT:N=66)は MD3.73 延長

(1.01 短縮〜8.47 延長)と長くなる傾向だった。せん妄発生割合(2RCT:N=227)は 1000 人あたり 203 人

減少(225 人減少~111 人減少)と効果を認めたが、術後患者のみを対象とした研究であった。ICU 滞在期

間(3RCT:N=216)は MD 0.03 日短縮(0.67 日短縮〜0.61日延長)と差はなかった。また ICU 退室後の認知

機能障害は報告がなかった。以上より、敗血症に対する望ましい効果はわずかと判定した。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

望ましくない効果と設定したアウトカムである、重症な有害事象を調べた研究はなかった。

エビデンスの確実性

パブリックコメント用

パブリックコメント用

効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

益と害の各アウトカム同じ方向性を示しているため,最も高いエビデンスである「低」を採用した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

成人敗血症患者のせん妄予防の薬物療法に対する、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデ

ータはない。一般的に、死亡率、せん妄日数、せん妄発生割合などの臨床アウトカムに対して置く相対

的価値は高く、ばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対照もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

非定型抗精神病薬はせん妄発生を低下させたが術後患者のみであり、望ましい効果はわずかである。ま

た、望ましくない効果は不明である。以上より敗血症患者に推奨するにはエビデンスが不足しており、

介入も比較対照もいずれも優位でないと判断した。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

非定型抗精神病薬は薬剤価格が比較的安価(リスペリドン 10.1~215.3円、クエチアピン 10.6~68.6円)

であり、おそらく容認できる。また薬剤投与による医療関係者への負担も十分容認できる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症を管理可能な医療施設であれば、介入は問題なく実行可能である。ただし、非定型抗精神病薬を

せん妄予防に対して使用する際は、保険適応外の診療となる。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者のせん妄予防に非定型抗精神病薬を投与しないことを弱く推奨する。(GRADE 2C:エビデンスの確実性「低」)

正当性 非定型抗精神病薬はせん妄発生を低下させたが術後患者のみであり、望ましくない効果は不明である。以上より敗血症患者のせん

妄予防に推奨するにはエビデンスが不足しており、介入も比較対照もいずれも優位でないと判断した。使用する場合には保険適応

外の診療となることも踏まえ、比較対照がおそらく優位と判断した。

サブグループに関する検討事項 術後患者が含まれる研究を除外したサブグループ解析を実施した。また感度分析として、せん妄予防と治療の区別が難しい研究を

除外して検討した。サブグループ解析、感度解析ともに主解析と同様の結果であった。

実施にかかわる検討事項 なし。

監視と評価 なし。

研究上の優先事項 今回含まれる研究は ICU の重症患者が対象となっているため、今後は患者を敗血症に限定したせん妄予防研究も考慮する。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ10-5 成人敗血症患者のせん妄予防に、薬物療法を行うか? 集団: 敗血症、呼吸不全、心不全、熱傷、術後患者など

介入: スタチン投与

比較対照: プラセボ投与

主要なアウトカム: 死亡率、ICU 退室後の認知機能障害、せん妄日数、せん妄発生割合(報告がない薬剤は、せん妄フリーデイズ)、ICU 滞在期間、

重症な有害事象の発生割合

セッティング: 18 歳以上の ICU 入室の重症患者

視点: 個人の患者の視点

背景: ICU でのせん妄の持続日数の長さと ICU 退室後 3 か月と 12か月の認知機能障害が関連することが知られている。敗血症患者で

せん妄を予防する薬物があれば患者の集中治療後症候群(PICS)を軽減するため重要である。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症患者の中枢神経系臓器障害の表現型のひとつがせん妄である。せん妄を予防することは臨床上有

用である。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡率(1RCT:N=142)は 1000 人あたり 112 人増加(37 人減少〜347 人増加)、ICU 退室後の認知機能障

害(1RCT:N=130)は 1000 人あたり 19 人減少 (151 人減少〜192 人増加)、せん妄 free days (1RCT:N=142)は MD1.1 日短縮(4.74日短縮〜2.54延長)、せん妄発生割合(1RCT:N=142)は 1000 人あたり 9 人

減少(94 人減少~66 人増加)、ICU 滞在期間(1RCT:N=329)は MD 1 日延長(0.84 日短縮〜2.84 日延長)と差を認めなかった。以上より、効果は限定的である。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

重症な有害事象の発生に関して 1RCT (N=142)で調査されたが、介入群・対照群ともに有害事象の発生

はなく効果推定値を提示できなかった。望ましくない効果も増えない可能性が高い。

エビデンスの確実性

パブリックコメント用

パブリックコメント用

効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

スタチンは死亡率が高くなる方向であり、益と害のアウトカムが逆方向を示すと考えて最も低いエビデ

ンスである「非常に低」を採用した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

成人敗血症患者のせん妄予防の薬物療法に対する、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデ

ータはない。一般的に、死亡率、せん妄日数、せん妄発生割合などの臨床アウトカムに対して置く相対

的価値は高く、ばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

望ましい効果は限定的で、望ましくない効果もわずかである。バランスとしては、介入も比較対象も有

意でないと判断した。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

スタチンは先発品とジェネリックを合わせると多数の種類があり、価格も 10.1 円~328.4 円とさまざま

である。しかし高額な薬剤ではないため、患者にとっては容認可能である、また、薬剤内服は医療者へ

の負担も限定的である。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症を管理可能な医療施設であれば、介入は問題なく実行可能である。ただし、スタチンをせん妄予

防に使用する際は、保険適応外の診療となる。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者のせん妄予防にスタチンを投与しないことを弱く推奨する。(GRADE 2D:エビデンスの確実性「非常に低」)

正当性 望ましい効果に有意差なく、望ましくない効果の報告がないため、比較対照がおそらく優位と判断した。

サブグループに関する検討事項 なし。

実施にかかわる検討事項 なし。

監視と評価 なし。

研究上の優先事項 今回含まれる研究は ICU の重症患者が対象となっているため、今後は患者を敗血症に限定したせん妄予防研究も考慮する。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ10-6 成人敗血症患者のせん妄治療に、薬物療法を行うか? 集団: 敗血症、呼吸不全、心不全、熱傷、術後患者など

介入: デクスメデトミジンを投与

比較対照: プラセボを投与

主要なアウトカム: 死亡率、ICU 退室後の認知機能障害、せん妄日数、せん妄発生割合、ICU 滞在期間、重症な有害事象の発生割合

セッティング: 18 歳以上の ICU 入室の重症患者

視点: 個人の患者の視点

背景: ICU でのせん妄の持続日数の長さと ICU 退室後 3 か月と 12か月の認知機能障害が関連することが知られている。敗血症患者で

せん妄を治療する薬物があれば患者の集中治療後症候群(PICS)を軽減するため重要である。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症患者の中枢神経系臓器障害の表現型のひとつがせん妄である。せん妄を治療することは臨床上有

用である。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡率(1RCT:N=71)の効果推定値とその 95%信頼区間は、1000人あたり 0人の死亡減少(0人減少

~0 人増加)、ICU 滞在期間(1RCT:N=71)は 1.37 日短い(95%信頼区間 3.82 日短い〜1.08 日長い)

と差を認めなかった。また ICU 退室後の認知機能障害、せん妄日数、せん妄フリーデイズの報告はなか

った。以上より効果は限定的である。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

重症な有害事象をアウトカムとして報告した研究がなかった。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

死亡率が高くなる方向性、ICU 滞在期間が短くなる方向性であり、益と害のアウトカムが逆方向を示す

と考えて最も低いエビデンスである「非常に低」を採用した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

成人敗血症患者のせん妄治療の薬物療法に対する、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデ

ータはない。一般的に、死亡率、せん妄日数、せん妄発生割合などの臨床アウトカムに対して置く相対

的価値は高く、ばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対照もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

望ましい効果はわずかであり、望ましくない効果は不明である。効果のバランスは、介入も比較対照も

いずれも優位でないと考えられる。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

デクスメデトミジン(200µg/50mL シリンジ価格 4,886 円)は集中治療における人工呼吸中及び離脱後

の鎮静薬として広く使用されており、患者・家族の個人的な負担を大きく増加するものではない。医療

者の仕事量に関しても、集中治療管理として薬剤の持続投与は一般的な内容であり、容認可能である

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症を管理するレベルの集中治療室に準じる部屋をもつ医療施設であれば、介入は問題なく実行可能

である。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者のせん妄治療にデクスメデトミジンを投与しないことを弱く推奨する(GRADE2D:エビデンスの確実性「非常に

低」)。ただし、過活動型せん妄のため患者の生命または身体が危険にさらされると判断した場合、鎮静目的の使用を妨げるもので

はない。

正当性 望ましい効果と望ましくない効果のバランス、医療コストも勘案して総合的に判断し、上記の推奨とした。

サブグループに関する検討事項 なし。

実施にかかわる検討事項 薬剤使用に関しては、患者の年齢・重症度・合併症も考慮する必要がある。デクスメデトミジンは国内で認可された投与量が海外

の投与量と異なり(デクスメデトミジンの維持量 0.2〜0.7μg/kg/min は海外より少ない)、本邦での有効性も検討することが望まれ

る。

監視と評価 デクスメデトミジンの副作用として低血圧、高血圧、徐脈、心室細動等が報告されており、患者の呼吸状態、循環動態等の全身状

態を注意深く継続的に監視する必要がある。

研究上の優先事項 今回含まれる研究は ICU の重症患者が対象となっているため、今後は患者を敗血症に限定したせん妄予防研究も考慮する。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ10-6 成人敗血症患者のせん妄治療に、薬物療法を行うか? 集団: 敗血症、呼吸不全、心不全、熱傷、術後患者など

介入: ハロペリドールを投与

比較対照: プラセボを投与

主要なアウトカム: 死亡率、ICU 退室後の認知機能障害、せん妄日数、せん妄発生割合、ICU 滞在期間、重症な有害事象の発生割合

セッティング: 18 歳以上の ICU 入室の重症患者

視点: 個人の患者の視点

背景: ICU でのせん妄の持続日数の長さと ICU 退室後 3 か月と 12か月の認知機能障害が関連することが知られている。敗血症患者で

せん妄を治療する薬物があれば患者の集中治療後症候群(PICS)を軽減するため重要である。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症患者の中枢神経系臓器障害の表現型のひとつがせん妄である。せん妄を治療することは臨床上有

用である。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡率(1RCT:N=376)の効果推定値とその 95%信頼区間は、1000 人あたり 38 人の死亡増加(51 人

減少~154 人増加)、せん妄日数(1RCT:N=376)は、0.34 日短い(95%信頼区間 1.18 日短い〜0.5 日

長い)、ICU 滞在期間(1RCT:N=376)は、0.33 日短い(95%信頼区間 1.92 日短い〜1.26 日長い)と

差を認めない。以上より効果は限定的である。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

重症な有害事象をアウトカムとして報告した研究がなかった。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

死亡率の効果推定値が高くなる方向性、せん妄日数とせん妄フリーデイズ、ICU 滞在期間は益となる方

向性を持つため、最も低いエビデンスである「低」を採用した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

成人敗血症患者のせん妄治療の薬物療法に対する、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデ

ータはない。一般的に、死亡率、せん妄日数、せん妄発生割合などの臨床アウトカムに対して置く相対

的価値は高く、ばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対照もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

望ましい効果はわずかであり、望ましくない効果は報告がない。効果のバランスから、介入も比較対照

もいずれも優位でないと判定した。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

ハロペリドールは価格 5.7 円~2572 円とバラツキがあるが、患者負担から考えて薬剤コストは容認でき

る。また、薬剤投与は医療者への負担も限定的である。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症を管理するレベルの集中治療室に準じる部屋をもつ医療施設であれば、介入は問題なく実行可能

である。ただし、ハロペリドールをせん妄治療に使用する際は、保険適応外の診療となる。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者のせん妄治療にハロペリドールを投与しないことを弱く推奨する。(GRADE 2C:エビデンスの確実性「低」) ただし、過活動型せん妄のため患者の生命または身体が危険にさらされると判断した場合、その使用を妨げるものではない。

正当性 望ましい効果と望ましくない効果のバランス、医療コストも勘案して総合的に判断し、上記の推奨とした。

サブグループに関する検討事項 なし

実施にかかわる検討事項 なし。

監視と評価 なし。

研究上の優先事項 今回含まれる研究は ICU の重症患者が対象となっているため、今後は患者を敗血症に限定したせん妄予防研究も考慮する。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ10-6 成人敗血症患者のせん妄治療に、薬物療法を行うか? 集団: 敗血症、呼吸不全、心不全、熱傷、術後患者など

介入: 非定型抗精神病薬を投与

比較対照: プラセボを投与

主要なアウトカム: 死亡率、ICU 退室後の認知機能障害、せん妄日数、せん妄発生割合、ICU 滞在期間、重症な有害事象の発生割合

セッティング: 18 歳以上の ICU 入室の重症患者

視点: 個人の患者の視点

背景: ICU でのせん妄の持続日数の長さと ICU 退室後 3 か月と 12か月の認知機能障害が関連することが知られている。敗血症患者で

せん妄を治療する薬物があれば患者の集中治療後症候群(PICS)を軽減するため重要である。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症患者の中枢神経系臓器障害の表現型のひとつがせん妄である。せん妄を治療することは臨床上有

用である。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡率(2RCT:N=410)の効果推定値とその 95%信頼区間は、1000 人あたり 3 人の死亡減少(82 人

減少~98 人増加)、せん妄日数(2RCT:N=410)は、1.75 日短い(95%信頼区間 4.31 日短い〜0.81 日

長い)、ICU 滞在期間(2RCT:N=410)は、1.1 日短い(95%信頼区間 2.48 日短い〜0.28 日長い)と差

を認めない。以上より効果は限定的である。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

重症な有害事象をアウトカムとして報告した研究がなかった。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

全てのアウトカムが患者の益となる方向性を示しているため,最も高いエビデンスである「中」を採用

した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

成人敗血症患者のせん妄治療の薬物療法に対する、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関するデ

ータはない。一般的に、死亡率、せん妄日数、せん妄発生割合などの臨床アウトカムに対して置く相対

的価値は高く、ばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

望ましい効果はわずかであり、望ましくない効果は不明である。効果のバランスは、介入も比較対照も

いずれも優位でないと考えられる。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

非定型抗精神病薬は薬剤価格が比較的安価(リスペリドン 10.1~215.3円、クエチアピン 10.6~68.6円)

であり、おそらく容認できる。また薬剤投与による医療関係者への負担も十分容認できる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症を管理するレベルの集中治療室に準じる部屋をもつ医療施設であれば、介入は問題なく実行可能

である。ただし、非定型抗精神病薬をせん妄治療に対して使用する際は、保険適応外の診療となる。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者のせん妄治療に非定型抗精神病薬を投与しないことを弱く推奨する。(GRADE 2B:エビデンスの確実性「中」) ただし、過活動型せん妄のため患者の生命または身体が危険にさらされると判断した場合、その使用を妨げるものではない。

正当性 望ましい効果と望ましくない効果のバランス、医療コストも勘案して総合的に判断し、上記の推奨とした。

サブグループに関する検討事項 なし。

実施にかかわる検討事項 なし。

監視と評価 なし。

研究上の優先事項 今回含まれる研究は ICU の重症患者が対象となっているため、今後は患者を敗血症に限定したせん妄予防研究も考慮する。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ10-7 成人敗血症患者のせん妄予防に、非薬物療法を行うか? 集団: 敗血症、呼吸不全、心不全、熱傷、術後患者など

介入: 睡眠の改善(アイマスク、耳栓、概日リズムの改善など)、覚醒の促進(眼鏡、補聴器、見当識改善など)、リラクゼーショ

ン(リハビリテーション医療を除く)のいずれか

比較対照: 非介入

主要なアウトカム: 死亡率、ICU 退室後の認知機能障害、せん妄日数、せん妄発生割合、ICU 滞在期間、重症な有害事象の発生割合

セッティング: 18 歳以上の ICU 入室の重症患者

視点: 個人の患者の視点

背景: ICU でのせん妄の持続日数の長さと ICU 退室後 3 か月と 12か月の認知機能障害が関連することが知られている。敗血症患者で

せん妄を予防する非薬物療法があれば患者の集中治療後症候群(PICS)を軽減するため重要である。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症患者の中枢神経系臓器障害の表現型のひとつがせん妄である。せん妄を予防することは臨床上有

用である。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡率(4RCT:N=884)の効果推定値とその 95%信頼区間は、1000 人あたり 15 人の死亡減少(57 人

減少~42 人増加)、ICU 退室後の認知機能障害(MMSE)(1RCT:N=32)は 0.2 点高い(95%信頼区間

1.27 点低い〜1.67 点高い)、せん妄 free days(2RCT:N=799)は 0.01 日長い(95%信頼区間 1.22 日短

い〜1.24 長い)と差を認めない。しかし、せん妄発生割合(6RCT:N=1028)は、1000 人あたり 44 人

の減少(149 人減少〜131 人増加)、ICU 滞在期間(5RCT:N=904)は 0.14 日短い(95%信頼区間 1.06短い〜0.79 長い)と介入の効果を支持する方向である。以上より小さい効果を認める。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

重症な有害事象を報告した研究がなかった。

エビデンスの確実性

パブリックコメント用

パブリックコメント用

効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

介入に関する効果推定値は死亡を減少、ICU 退室後の認知機能障害スコアを増加、など益と害の方向性

は一致している。全体的なエビデンスの確実性は、最も高い「低」と判定した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

成人敗血症患者のせん妄予防の非薬物療法に対する、各アウトカムに置く患者・家族の価値観に関する

データはない。一般的に死亡アウトカムに対して置く相対的価値は高く、ばらつきは少ないことが予想

される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対照もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

望ましい効果は小さく、望ましくない効果は不明である。しかし、介入内容から推測される望ましくな

い効果はほとんどないと考えられる。以上より、おそらく介入が優位と判断する。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

非薬物療法として実施される睡眠の改善(アイマスク、耳栓、概日リズムの改善など)、覚醒の促進

(眼鏡、補聴器、見当識改善など)、リラクゼーション(リハビリテーション医療を除く)は患者・家

族の個人的な負担を増強するものではないが、医療者の仕事量は増加させる可能性がある。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

睡眠の改善(アイマスク、耳栓、概日リズムの改善など)、覚醒の促進(眼鏡、補聴器、見当識改善な

ど)、リラクゼーション(リハビリテーション医療を除く)は介入として難しいことはなく、問題なく

実行可能である。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 成人敗血症患者のせん妄予防に非薬物療法を行うことを弱く推奨する(GRADE2C:エビデンスの確実性「低」)。

正当性 小さい効果を認め、望ましくない効果は不明である。ただし、臨床的には想定される有害事象はほとんどないと考えられる。よっ

て効果のバランスを勘案して上記の推奨とした。

サブグループに関する検討事項 術後患者ではせん妄発生の低下が認めたが、術後患者を除くサブグループ解析では差を認めなかった。

実施にかかわる検討事項 非薬物療法として、睡眠の改善・覚醒の促進・認知療法は重症患者においても安全に実施できる可能性が示唆されている。

監視と評価 なし。

研究上の優先事項 個別の介入に関して別個に有効性を検討することが望まれる。同時に、ABCDEF バンドルケアに代表される複合的非薬物療法に関し

て、今後考慮していく必要がある。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ11-1 敗血症性 AKI に対する腎代替療法では持続的治療を行うか? 集団: 敗血症性 AKI

介入: CRRT

比較対照: IRRT (SLEDなど 24 時間持続で治療を行っていないものをすべて含む)

主要なアウトカム: 死亡、透析依存、両者の複合アウトカム

セッティング: 「敗血症患者 OR 重症患者(ただし心臓外科患者がエントリー基準になっている RCT は除く) OR 入院患者(ただし化療・膵

炎など非敗血症の特定の疾患に限定した RCT は除く)」として、その後敗血症のサブグループ解析をすることで、敗血症に限

った効果を検討するか、敗血症に限った効果検証がされていない場合には一般論として推奨を出す

視点: 個人の患者の視点

背景: 敗血症性 AKI が高度に進展した場合の生命維持において腎代替療法は必要不可欠な治療方法である。治療時間に関する分類と

して持続的あるいは間欠的な腎代替療法があるが、どちらを敗血症性 AKI に対して用いるのか判断することは、病態のみなら

ず治療施設における経験や診療体制にも依存し、したがって臨床的に重要な選択である。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

RRT を必要とする敗血症性 AKI を合併した患者の院内死亡率は 50%程度と報告されており、敗血症性

AKI に対する腎代替療法のモダリティを決めることは重要である。一方、施設や症例において個別的な

判断がなされており、その臨床判断の振れ幅は大きいと思われる。したがって、この問題の優先度は高

い。実際の臨床の現場では、循環が不安定な状態においては持続的な腎代替療法が選択される傾向にあ

ることが観察研究では報告されている。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

死亡アウトカムの効果推定値(4RCT, N=838)は 1000 人あたり 6 人減る(95%信頼区間 69 人減る~63 人

増える)、透析依存アウトカム(2RCT, N=201)は 1000 人あたり 28 人減る(95%信頼区間 61 人減る~68人増える)、透析依存と死亡の複合アウトカム(1RCT, N=125)は 1000 人あたり 42 人減る(95%信頼区

間 185 人減る~158 増える)であった。したがって、CRRTによる望ましい効果はわずかであると判断さ

れる。出血合併症(2RCT, N=609)は 1000 人あたり 3 人減る(95%信頼区間 29 人減る~46 人増える)で

あった。 CRRT は IRRT と比較して循環動態への影響を最小限にして緩徐な除水が可能であり、集中治療を必要と

する重症例においては体液管理に関して有利である。従って、循環動態が不安定な症例においては、

CRRT を行うことが望ましいと考えられる。しかし、循環動態が不安定な患者を対象として、CRRT と

IRRTを比較した RCTは存在しなかった。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

パブリックコメント用

パブリックコメント用

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

出血性合併症については前述の通りであり、現時点で望ましくない効果は不明である。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

総てのアウトカムにおいて CRRT の効果はわずかであると判断でき、相反するものはなかったため、全

体的なエビデンスの確実性は「低」と判断した。 なお、ランダム化割り付け後の重症度(APACHE II および III スコア、肝不全有無、不全臓器数)に有意

差を認めた RCT が一つあった。この RCT を含めた5RCT におけるエビデンスの確実性は“非常に低”

であり、このRCTを除いた4RCTにおけるエビデンスの確実性は“低”であったため、今回は4RCTに

よる解析結果を用いた。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそら

くなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

患者および家族の価値観に関するデータはなく、死亡という重大なアウトカムにおいては個々人の価値

観のばらつきは小さいと考えられる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

総てのアウトカムにおいて CRRT の望ましい効果はわずかであるが、望ましくない効果として検討した

出血性合併症も増加しないため、おそらく介入が優位と判断される。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

CRRT という介入の費用負担は IRRT と比較すると高いと考えられる。日本における保険診療において実

際に検討した研究はないが、患者・家族の視点からは容認できる範囲であると思われる。しかし、抗凝

固薬の調整などで対応は可能であるが、回路凝固などの管理面で医療従事者の負担増大となりうる。

CRRT 施行に際しては医療スタッフの業務負荷が IRRT よりも増加することは明らかであり、望ましい

効果が乏しい不必要な施行は容認しがたいものとなりうる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい

日本における急性期病院での観察研究の結果からは、ICU において CRRT を行うことはほぼ可能である

と考えられる。非 ICU環境においては、回路の管理上困難であると考えられる。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

はい さまざま 分からない

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位で

ない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 敗血症性 AKI に対する血液浄化療法は、持続的治療・間欠的治療のどちらを選択しても構わない(GRADE 2C, エビデンスの確実性=低)。 ただし、循環動態が不安定な症例については持続的治療を選択する(GPS)。

正当性 望ましい効果がわずかであり望ましくない効果が分からない。アウトカム全般における確実性は「低」、容認性についてはおそらく、いいえである

と判断した。以上から、持続的治療と間欠的治療のどちらも他方よりも勝るという結論は得られない。

サブグループに関する検討事項 敗血症性 AKI に限定した検討が望まれる。

実施にかかわる検討事項 循環動態が不安定な症例においては CRRT を選択することが望ましい。観察研究においても循環動態が不安定な症例では、CRRT が選択されている

ことが報告されており、すでに標準治療となっていると思われる。

監視と評価 なし

研究上の優先事項 費用対効果における検討

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ11-2 敗血症性 AKI に対して早期の腎代替療法を行うか? Stage 2 vs Stage3 または古典的

絶対適応 集団: 敗血症性 AKI

介入: RIFLE/AKIN/KDIGO Stage 2 で RRT 施行

比較対照: Stage 3 または古典的な絶対適応 で RRT 施行

主要なアウトカム: 死亡、透析依存、両者の複合アウトカム

セッティング: 「敗血症患者 OR 重症患者(ただし心臓外科患者がエントリー基準になっている RCT は除く) OR 入院患者(ただし化療・膵

炎など非敗血症の特定の疾患に限定した RCT は除く)」として、その後敗血症のサブグループ解析をすることで、敗血症に限

った効果を検討するか、敗血症に限った効果検証がされていない場合には一般論として推奨を出す

視点: 個人の患者の視点

背景: AKI を合併した敗血症患者に対して、いつ腎代替療法を開始すべきか、臨床現場では判断に悩むことが多い。多くの臨床医が

古典的な緊急透析の適応を満たす前に腎代替療法を開始していることが、複数の疫学研究で示されているが、不要な介入を行

うことは患者を合併症のリスクに余計にさらす可能性も孕んでいる。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

本邦における敗血症性 AKI の院内死亡率は 30%程度と報告されており、敗血症性 AKI に対する腎代替療

法を至適な時期に開始することは重要である。さらに、近年まで依拠するエビデンスが欠如していたた

め、臨床判断の振れ幅は大きいと思われる。したがって、この問題の優先度は高い。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

Stage 2 での開始と Stage 3 または古典的絶対適応での開始を比較した RCT は 1 つあり、Stage 2 での

開始の効果は、死亡については RR 0.72 (0.58 to 0.90), 1000 人あたり 195 人減る(95%信頼区間 293 人

減る〜70 人減る)であった。死亡または透析依存の複合アウトカムについては、RR 0.74 (0.60 to 0.91), 1000 人あたり 190 人減る(95%信頼区間 292 人減る〜66 人減る)であった。 したがって、Stage 2 における RRT の開始における望ましい効果は中と判断される。 この望ましい効果は、一施設で実施された1つの RCT から得られた結果であり一般化可能性・結果の頑

健性に乏しい。本研究結果を検証する大規模多施設研究が 2020 年 2 月の時点で完了しており、その結

果によりこの望ましい効果が否定される可能性も存在する。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

パブリックコメント用

パブリックコメント用

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

採用された 1 つの RCT では出血合併症について報告されていない。 早期に腎代替療法を開始すればブラッドアクセス挿入によるカテーテル感染が増加することが別の RCTで報告されているが、本 SR において Outcome に設定されておらず、対象となった RCT でも Outcomeには含まれていない。

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

Stage 2 vs Stage3 または古典的絶対適応の比較において、1 つの RCT で評価された2つの重大なアウト

カムである、死亡率と死亡または透析依存の複合エンドポイントはともに Stage 2 での開始の効果があ

ることを示したが、エビデンスの確実性は「低」と判断されている。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

患者および家族の価値観に関するデータはなく、死亡という重大なアウトカムにおいては個々人の価値

観のばらつきは小さいと考えられる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

Stage 2 における RRT の開始の望ましい効果は中であり、おそらく介入が優位と判断される。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

早期に腎代替療法を開始すれば、カテーテル感染や出血合併症の増加が懸念される。明確な利益が確定

していなければ、患者家族にとって斯様な侵襲的処置の施行に関する容認性は低いと思われる。早期の

腎代替療法の実施に際しては医療スタッフの業務負荷は増加するため、望ましい効果が確定的でなけれ

ばその施行は容認しがたいものとなりうる。 また、その実施における費用は施行しない場合と比較すると高い。本邦において腎代替療法は保険診療

として用いられている治療であり、患者・家族の視点からは費用負担は容認できる範囲であると思われ

る。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ 腎代替療法を早期に開始すると、腎代替療法を受ける患者数が増える可能性があるため、早期開始の妨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

げとなる要因は設備および人的資源である。 設備や人的資源が潤沢な施設や敗血症診療の頻度が低い施設では、その実行可能性は“おそらく、は

い”である。しかし、設備や人的資源が限られている施設や敗血症診療の頻度が高い施設では、その実

行可能性は“おそらく、いいえ”である。 本ガイドラインは一般診療を対象としたガイドラインであるため、設備や人的資源が潤沢ではない施設

での状況を鑑み、実行可能性は“おそらく、いいえ”とした。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 敗血症性 AKI に対して Stage 2 での早期の腎代替療法を行うか否かについて本ガイドラインでは推奨を提示しない。

正当性 本介入の望ましい効果は中である。この望ましい効果は、一施設で実施された1つの RCT から得られた結果であり一般化可能性は低い。本研究結

果に関連する大規模多施設研究が 2020 年 2 月の時点で完了している。その結果により望ましい効果が変わる可能性も存在する。 本 SR において Outcome に設定していないが、早期に腎代替療法を開始すればカテーテル感染が増加する可能性は考慮すべきである。このことに

より、容認性および実行可能性は“おそらく、いいえ”であると考えた。 敗血症性 AKI に対して Stage 2 での早期の腎代替療法を行うことの望ましい効果がより明確になれば、この容認性はより改善するものと考える。 1 施設 RCT で得られた結果、現在の敗血症診療における容認性、実行可能性および近日中に関連する大規模多施設 RCT が施行中であることを鑑

み、本ガイドラインにおいては、敗血症性 AKI に対して Stage 2 での早期の腎代替療法を行うか否かについて推奨を提示しないこととした。

サブグループに関する検討事項 敗血症に限定したサブグループのデータは報告がないため、サブグループ 解析は行っていない。したがって敗血症性 AKI に限定した解析が必要であ

る。 非早期開始群における緊急的な RRT を害として評価する必要がある。

実施にかかわる検討事項 なし

監視と評価 なし

研究上の優先事項 費用対効果における検討

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ11-2 敗血症性 AKI に対して早期の腎代替療法を行うか? Stage 3 vs 古典的絶対適応 集団: 敗血症性 AKI

介入: RIFLE/AKIN/KDIGO Stage 3 で RRT 施行

比較対照: 古典的な絶対適応 で RRT 施行

主要なアウトカム: 死亡、透析依存、両者の複合アウトカム

セッティング: 「敗血症患者 OR 重症患者(ただし心臓外科患者がエントリー基準になっている RCT は除く) OR 入院患者(ただし化療・膵

炎など非敗血症の特定の疾患に限定した RCT は除く)」として、その後敗血症のサブグループ解析をすることで、敗血症に限

った効果を検討するか、敗血症に限った効果検証がされていない場合には一般論として推奨を出す

視点: 個人の患者の視点

背景: AKI を合併した敗血症患者に対して、いつ腎代替療法を開始すべきか、臨床現場では判断に悩むことが多い。多くの臨床医が

古典的な緊急透析の適応を満たす前に腎代替療法を開始していることが、複数の疫学研究で示されているが、不要な介入を行

うことは患者を合併症のリスクに余計にさらす可能性も孕んでいる。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

本邦における敗血症性 AKI の院内死亡率は 30%程度と報告されており、敗血症性 AKI に対する腎代替療

法を至適な時期に開始することは重要である。さらに、近年まで依拠するエビデンスが欠如していたた

め、臨床判断の振れ幅は大きいと思われる。したがって、この問題の優先度は高い。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

Stage 3 と古典的絶対適応での開始を比較した 2 つの RCT で抗凝固薬投与による出血が害として報告さ

れている。出血のリスクは RR 0.76 (0.51 to 1.13), 1000 人あたり 22 人減る (95%信頼区間, 45 人減る 〜 12 人増える)であり、観察された点推定値が 1 を下回っているということのみに基づいて、出血リスク

が下がることを「望ましい効果」と評価した場合に、その効果はわずかであると判断される。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

Stage 3 での開始と古典的絶対適応での開始を比較し、死亡をアウトカムとした 2 つの RCT において

は、Stage 3 での開始の効果は RR 1.02 (95% CI, 0.91 to 1.14), 1000 人あたり 11 人増える (95%信頼区

間, 48 人減る 〜 74 人増える)であった。死亡または透析依存の複合アウトカムについては、RR 1.00 (0.89 to 1.13), 1000 人あたり 0 人の増減(95%信頼区間, 59 人減る〜70 人増える)であった。 したがって、Stage 3 における RRT の開始における望ましくない効果はわずかであると判断される。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

重大なアウトカムである死亡と出血合併症のアウトカムが異なる方向性を示しており、出血合併症に関

する確実性は「非常に低い」と評価されていることから、全体的な確実性を「非常に低い」とする。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

患者および家族の価値観に関するデータはなく、死亡という重大なアウトカムにおいては個々人の価値

観のばらつきは小さいと考えられる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

Stage 3 における RRT の開始の望ましい効果も望ましくない効果もいずれかを支持するほどには示され

ていない。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

RRT という介入の費用負担は施行しない場合と比較すると当然高い。しかし、日本において RRT は保

険診療として用いられている治療であり、患者・家族の視点からは費用負担は容認できる範囲であると

思われる。一方、RRT 施行に際しては医療スタッフの業務負荷は増加するため、不必要な施行は容認し

がたいものとなりうるが、望ましい効果が明らかではないため、重要な利害関係者にとって妥当なもの

であるかどうか評価するに至っていない。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

RRT を早期に開始するに伴い、RRTを受ける患者数が増える可能性があるため、早期開始の妨げとなる

要因は設備および人的資源である。臓器障害を伴う敗血症患者の診療にあたる施設における、患者数の

増加に対応する RRT 実施体制についてのリサーチエビデンスはないため、本 CQ での介入について実行

可能性の評価は困難である。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 敗血症性 AKI に対して Stage 3 での早期の腎代替療法を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2D, エビデンスの確実性=低)。

正当性 望ましい効果と望ましくない効果があったとしてもともにわずかであり、容認性に関する不確実さも考慮した場合、Stage 3 での早期の腎代替療法

に効果があるという結論は得られない。

サブグループに関する検討事項 敗血症性 AKI に限定した解析が必要である。

実施にかかわる検討事項 なし

監視と評価 なし

研究上の優先事項 費用対効果における検討

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ11-3 敗血症性 AKI に対する腎代替療法において血液浄化量の増加を行うか? 集団: 敗血症性 AKI

介入: 高用量での RRT

比較対照: 標準量での RRT

主要なアウトカム: 死亡、透析依存、両者の複合アウトカム

セッティング: 「敗血症患者 OR 重症患者(ただし心臓外科患者がエントリー基準になっている RCT は除く) OR 入院患者(ただし化療・膵

炎など非敗血症の特定の疾患に限定した RCT は除く)」として、その後敗血症のサブグループ解析をすることで、敗血症に限

った効果を検討するか、敗血症に限った効果検証がされていない場合には一般論として推奨を出す

視点: 個人の患者の視点

背景: 敗血症性 AKI 患者に腎代替療法を施行する際に、クリアランスを上げることで予後が改善することを期待し、透析量・濾過量

を増やすことが検討される。日本の保険診療では 15mL/kg/hr 程度の処方量が標準とされているが、国外では 25mL/kg/hr 程度

が標準的な処方量とされている。敗血症性 AKI に対して最も治療効果の高い処方量を設定することは予後改善において重要で

ある。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症性 AKI に対する腎代替療法の浄化量は、日本における保険診療の制限があるものの、施設や症例

において個別的な判断がなされている。したがって、この問題の優先度は高い。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま

死亡アウトカム(3 RCT, N= 2,789)の効果推定値は 1000人あたり 22 人増加(95%信頼区間 13 人減少~

58 人増加であった。透析依存アウトカム(3 RCT, N=2,096)、透析依存と死亡複合アウトカム(3 RCT, N=2,786)はそれぞれ 1000 人あたり 22 人増加(95%信頼区間 9 人減少~57 人増加)、1000 人あたり 12人増加(95%信頼区間 12 人減少~43 人増加)であった。望ましくない効果は「わずか」であると判断

した。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

分からない

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

すべての重大なアウトカムにおいて「低」と評価されており、方向性が同じであるため、全体的なエビ

デンスの確実性も「低」とした。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそら

くなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

患者および家族の価値観に関するデータはなく、死亡という重大なアウトカムにおいては個々人の価値

観のばらつきは小さいと考えられる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

望ましい効果は「分からない」であり、望ましくない効果は「わずか」と判断された。したがって、効

果のバランスは比較対象がおそらく優位とした。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

高用量 RRT という介入の費用負担は標準量よりも当然高いが、透析液および置換液の費用負担は比較的

安価であり、患者・家族の視点からは容認できる範囲であると思われる。しかし、頻回の透析液・置換

液の交換や血液濾過量を増加させた場合における頻回のフィルターおよび回路凝固は医療従事者の労力

増加につながる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい

技術的には抗凝固薬の調整やフィルターの選択を工夫することで高用量 RRTは実行可能である。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

さまざま 分からない

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 敗血症性 AKI に対して血液浄化量を標準量よりも増やさないことを弱く推奨する(GRADE 2C, エビデンスの確実性=低)。

正当性 望ましい効果が分からない一方、望ましくない効果がわずかと評価された。実行可能性は技術的な問題において解決可能であるが、容認性について

は医療従事者の業務負荷が増加することが懸念される。以上より、腎代替療法の血液浄化量を増やすことに効果があるという結論は得られない。な

お、3 つの RCT において超高用量(50ml/kg/hr~)と高用量(30~35ml/kg/hr)での RRT の比較検討が行われており、エビデンスの確実性は「非常

に低」というなかで、望ましい効果も望ましくない効果も「わずか」と判断され、介入も比較対象もいずれも優位でない結果が得られている。超高

用量は日本における診療においては現実的にほぼ用いられていない治療量であることに加え、超高用量が高用量よりも優れている結果が得られてい

ないことから、標準量からの増量が効果が得られるとは考えにくい。

サブグループに関する検討事項 標準的な治療量と日本における保険診療での治療量に乖離がある。 敗血症性 AKI に限定した解析が必要である。 低リン血症を合併しなかった群での解析が必要である。

実施にかかわる検討事項 海外における血液浄化量の標準量は 20~25ml/kg/hr であるが、日本における保険適用量は 10~15ml/kg/hr であり乖離がある。

監視と評価 なし

研究上の優先事項 標準量に対する日本国外での差異をうめるような介入研究。 費用対効果における検討

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ11-4 敗血症性ショックに PMX-DHP を行うか? 集団: 敗血症性ショックの患者

介入: PMX-DHP

比較対照: usual care または sham 手技

主要なアウトカム: 死亡(最長観察期間)、副作用(患者単位)、臓器障害スコア(72 時間)、昇圧薬不使用日数

セッティング: 18 歳以上

視点: 患者個人の視点

背景: 敗血症に対してエンドトキシンの吸着を目的としてポリミキシン B 固定化カラムを用いた血液浄化療法が広く用いられてい

る。特に本邦で開発された技術であるため、国内での注目度・浸透度は高い。しかし、不要な介入を行うことは患者を合併症

のリスクに余計にさらす可能性も孕んでいる。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

PMX-DHP は敗血症性ショックといった致死的病態の著明な改善が期待できる治療という位置づけであ

り、実際に効果があるか否かが敗血症診療に大きく影響するため。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

最長観察期間での全死亡率は、3 つの RCT で 1000 人あたり 12 人増える(95%信頼区間 123 人減る〜

223人増える)である。臨床試験で定められた何らかの副作用は、二つの RCT で 1000人あたり 17人増

える(95%信頼区間 19 人減る〜58 人増える)である。

エビデンスの確実性

パブリックコメント用

パブリックコメント用

効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

2 つの重大なアウトカムの方向性は同じであり、最も高い確実性を採用して「中」とした。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

患者および家族の価値観に関するデータはなく、死亡という重大なアウトカムにおいては個々人の価値

観のばらつきは小さいと考えられる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

望ましい効果は分からず、望ましくない効果がわずかであると判断した。したがって、比較対照がおそ

らく優位と考えられる。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

吸着カラムの価格 約 30 万円/回、診療報酬 2000 点(平成 30 年)と非常に高額である。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症性ショックの患者診療にあたる施設では、血液浄化装置を配備していることが想定され、PMX-DHP 施行は十分可能であると思われるが、評価するためのリサーチエビデンスはなく、これ以上の評価

は困難である。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 敗血症性ショックの患者に対して、PMX-DHP を行わないことを弱く推奨する(GRADE 2B, エビデンスの確実性=中)。

正当性 効果のバランスは望ましくない効果がわずかであり、望ましい効果は分からないため、比較対照がおそらく優位と結論した。医療コストが高い介入

であり容認性が低いため、本介入については非推奨とする。

サブグループに関する検討事項 なし

実施にかかわる検討事項 なし

監視と評価 なし

研究上の優先事項 既存の研究から提案されている仮説:臓器障害スコアの高い患者(MODS >9)に対する有効性、エンドトキシン活性が高い患者での有効性

パブリックコメント用

パブリックコメント用

疑問 CQ11-5 敗血症性 AKI の予防・治療目的にフロセミドの投与は行うか? 集団: 敗血症性 AKI

介入: フロセミド投与

比較対照: プラセボ投与、標準的治療、治療なし

主要なアウトカム: 死亡、腎代替療法、AKI からの回復、AKI 罹患期間

セッティング: 「敗血症患者 OR 重症患者(ただし心臓外科患者がエントリー基準になっている RCT は除く) OR 入院患者(ただし化療・膵

炎など非敗血症の特定の疾患に限定した RCT は除く)」として、その後敗血症のサブグループ解析をすることで、敗血症に限

った効果を検討するか、敗血症に限った効果検証がされていない場合には一般論として推奨を出す

視点: 個人の患者の視点

背景: ループ利尿薬は、尿量の維持によって脱落した尿細管上皮細胞による尿細管の閉塞を予防し、また尿細管の酸素消費能を低下

させることで腎障害に対して有益に働きうるという理論的背景がある。こういった背景から 1980年代から臨床研究が行われて

いるが、残念ながらこれらの結果の多くは、有効性を示さなかった。しかしながら、敗血症診療の体液管理において広く汎用

されていることから、敗血症性ガイドラインで引き続き取り上げられるべきと考えられた。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症性 AKI に限らず AKI 全般に対してフロセミドは体液管理目的に数多く使用されている。しかし、

AKI の予防あるいは治療としてのフロセミドの効果はいまだ不明である。敗血症性 AKI の死亡率が 30%程度と高い。したがって、この問題の優先度は高い。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま

院内死亡(6RCT: N=649)の効果推定値は、1000人あたり39人の増加(95%信頼区間:26人減少から122人増加)、腎代替療法の導入(3RCT: N=206)の効果推定値は、1000 人あたり 40 人の増加(95%信頼区

間:103 人減少から 299 人増加)であった。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

分からない

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

重大なアウトカムにおいて、効果推定値の方向性は一致している。そのため、一番高いアウトカムの確

実性を全体としては採用した。アウトカム全体におけるエビデンスの確実性は「低」である。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

患者および家族の価値観に関するデータはなく、死亡という重大なアウトカムにおいては個々人の価値

観のばらつきは小さいと考えられる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

院内死亡、腎代替療法の導入などの重大なアウトカムに対して明らかな投与の有益性を示さなかった。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

フロセミドの投与は、1 日あたり最大 1000mg まで保険診療として認められている。フロセミド(20mg) 1 アンプルの薬価は約 60 円であり、フロセミドによる1日あたりの最大コストは約 3000 円である。 個人負担額を考えると、患者・家族の個人の視点からは許容範囲内と考えられる。医療従事者に対する

業務負荷量はわずかと考えられる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい

フロセミド投与において実行は容易である。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

さまざま 分からない

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

パブリックコメント用

結論 推奨 敗血症性 AKI に対して予防あるいは治療の目的としてフロセミドを投与しないことを弱く推奨する(GRADE 2C エビデンスの確実性「低」)。

正当性 望ましい効果が「分からない」である一方、望ましくない効果は「わずか」と評価された。アウトカム全般における確実性は「低」であり、フロセ

ミド投与の妥当性はない。しかし、実臨床において体液量の補正目的に広く用いられている薬剤であり、循環動態および血管内容量を評価した上で

体液量の補正目的の同薬投与を否定するものではない。

サブグループに関する検討事項 敗血症性 AKI を対象とした治療効果の RCT は抽出されたが、敗血症性 AKI 予防目的の RCT は抽出されなかった。

実施にかかわる検討事項 なし

監視と評価 なし

研究上の優先事項 体液量、血管内容量といった患者条件の評価を正確に行う必要がある。 フロセミドに対する反応性に基づいた介入研究。

パブリックコメント用

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疑問 CQ11-6 敗血症 AKI 予防・治療目的に心房性ナトリウム利尿ペプチドの投与は行うか? 集団: 敗血症性 AKI または敗血症性 AKI のリスクが高い患者

介入: 心房性ナトリウム利尿ペプチド投与

比較対照: プラセボ投与、標準的治療、治療なし

主要なアウトカム: 死亡、腎代替療法、AKI からの回復、合併症

セッティング: 「敗血症患者 OR 重症患者(ただし心臓外科患者がエントリー基準になっている RCT は除く) OR 入院患者(ただし化療・膵

炎など非敗血症の特定の疾患に限定した RCT は除く)」として、その後敗血症のサブグループ解析をすることで、敗血症に限

った効果を検討するか、敗血症に限った効果検証がされていない場合には一般論として推奨を出す

視点: 個人の患者の視点

背景: 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、本邦では急性心不全に対する治療薬として承認されており、循環器関連の AKI を中心に使用されることがある。同薬は、尿細管でのナトリウム再吸収を抑制し、輸入細動脈の拡張及び輸出細動脈の収縮を促

すことで、糸球体濾過量を増加させることから、AKI に対して保護的に作用する可能性がこれまでの基礎実験から示唆されて

いるが、一方で低血圧などの有害事象も起こしうる。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

心臓血管外科術後 AKI の予防や治療に対して、本薬剤の効果は検討されてきたが、敗血症性 AKI に対す

る治療効果については明らかにはされていない。敗血症性 AKI の高い死亡率(30%程度)を考慮すれ

ば、本薬剤による敗血症性 AKI の治療効果が認められれば、患者予後を改善する可能性があり、重要な

問題事項と考えられる。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

腎代替療法の導入(3RCT: N=779)の効果推定値とその信頼区間は、1000 人あたり 58 人の減少(95%信

頼区間:157 人減少から 73 人増加)であった。望ましい効果はわずかと考えられる。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま

死亡アウトカム(3RCT: N=779)の効果推定値は、1000 人あたり 18 人の増加(95%信頼区間:57 人減少

から 110 人増加)であった。望ましくない効果はわずかと考えられる。

パブリックコメント用

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分からない

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

今回検討されたアウトカムでは、本薬剤投与による望ましい効果、望ましくない効果の方向性は一致し

ておらず、一番低いアウトカムの確実性を全体として採用した。アウトカム全体におけるエビデンスの

確実性は「低」である。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

各アウトカムに対する患者・家族の価値観に関するデータはない。一般的に、死亡や腎代替療法の導入

に対して置く相対的価値は高く、そのばらつきは少ないことが予想される。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

本薬剤の投与によって、死亡、腎代替療法などの重大なアウトカムでは望ましい効果と望ましくない効

果のバランスは同等と考えられた。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

体重 50kg の患者に対して 0.1μg/kg/min で投与された場合、介入に伴う 1 日あたりのコストは、14,544円(1,888 円/バイアル×8 バイアル)である。個人負担額を考えると、患者・家族の個人の視点からは許容

範囲内と考えられる。投与に際しては精密投与が必要かつ、配合禁忌の多い薬剤であり、医療従事者の

負荷にはなりうる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい

本薬剤は、急性心不全に対する治療薬としては保険収載されているが、腎障害に対する薬剤としては承

認されていない。腎障害の予防もしくは治療を目的として同薬を投与することは、適応外使用である。

パブリックコメント用

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さまざま 分からない

パブリックコメント用

パブリックコメント用

判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

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結論 推奨 敗血症性 AKI に対して予防あるいは治療の目的として、心房性ナトリウム利尿ペプチドを投与しないことを弱く推奨

する(GRADE 2D, エビデンスの確実性=非常に低)。

正当性 望ましい効果が「わずか」である一方で、望ましくない効果も「わずか」であり、アウトカム全般にわたるエビデンス

の確実性は「非常に低」である。標準的治療として同薬を投与することは、明らかに有益であるとは言えない。重大な

アウトカムに設定した低血圧の有害事象が起こらない症例では、同薬の投与が有益性をもたらす可能性はあるが、重症

敗血症では血圧が低下することが多く、その有益性は限定的と考えられる。そのため条件付きの非推奨とする。

サブグループに関する検討事項 敗血症性 AKI を対象とした治療効果の RCT は抽出されたが、敗血症性 AKI 予防目的の RCT は抽出されなかった。

実施にかかわる検討事項 本薬剤の投与にあたっては、血圧低下のリスクを十分に評価した上で投与を検討することが望まれる。

監視と評価 なし

研究上の優先事項 今後の検討事項 ・敗血症性 AKI に限定した検討 ・低用量 ANP(≦0.05μg/kg/min)の有効性

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疑問 CQ11-5 敗血症性 AKI の予防・治療目的にドパミンの投与は行うか? 集団: 敗血症性 AKI

介入: ドパミン投与

比較対照: ドパミン投与、標準的治療、治療なし

主要なアウトカム: 死亡、腎代替療法、AKI からの回復、AKI 罹患期間

セッティング: 「敗血症患者 OR 重症患者(ただし心臓外科患者がエントリー基準になっている RCT は除く) OR 入院患者(ただし化療・膵

炎など非敗血症の特定の疾患に限定した RCT は除く)」として、その後敗血症のサブグループ解析をすることで、敗血症に限

った効果を検討するか、敗血症に限った効果検証がされていない場合には一般論として推奨を出す

視点: 個人の患者の視点

背景: ドパミンは健常人に対して 1-3 μg/kg/min の低用量で投与すると、腎血管拡張、糸球体濾過量増加、ナトリウム利尿作用が得

られることにより、腎保護性の昇圧剤として使用されてきたが、2000 年代に報告された RCT を中心にその有益性はすでに否

定されている。しかしながら、renal dose という呼称のもと長く使用されてきた歴史的経緯から、引き続き重要臨床課題とし

て取り上げられるべきと考えられた。

評価 問題 この問題は優先事項ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

敗血症性 AKIの死亡率は 30%前後と高い。敗血症性 AKI に限らず AKI 全般に対して低用量ドパミン投与

が教科書的な治療法であった時期から、種々のガイドラインで否定されるようになり 10年程度が経過し

ている。観察研究においてもドパミンの使用頻度が減少している状況であり、この問題の優先度は医療

従事者によりさまざまと考えられる。

望ましい効果 予期される望ましい効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

RCT が1つ抽出された。1000 人あたりの効果推定値(95%信頼区間)は死亡(ICU 退室時)で 25 人減

少(114 減少から 89 増加)、腎代替療法への移行で 27 人減少(98 減少から 79 増加)であった。ドパミ

ンの望ましい効果はわずかであると判断される。

望ましくない効果 予期される望ましくない効果はどの程度のものですか?

判断 リサーチエビデンス

大きい 中 小さい わずか さまざま

RCT が1つ抽出された。1000 人あたりの効果推定値(95%信頼区間)は、死亡(退院時)で 24 人増加

(73 減少から 150 増加)、ドパミンの望ましくない効果はわずかであると判断される。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

分からない

エビデンスの確実性 効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス

非常に低 低 中 高 採用研究なし

望ましい効果と望ましくない効果の方向性が一致しておらず、全体的なエビデンスの確実性は「低」と

した。

価値観 人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス

重要な不確実性またはばらつきあり 重要な不確実性またはばらつきの可能

性あり 重要な不確実性またはばらつきはおそ

らくなし 重要な不確実性またはばらつきはなし

患者および家族の価値観に関するデータはなく、死亡という重大なアウトカムにおいては個々人の価値

観のばらつきは小さいと考えられる。

効果のバランス 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしく比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス

比較対照が優位 比較対照がおそらく優位 介入も比較対象もいずれも優位でない おそらく介入が優位 介入が優位 さまざま 分からない

ドパミンの望ましい効果、望ましくないはいずれもわずかである。

容認性 この選択肢は重要な利害関係者にとって妥当なものですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい さまざま 分からない

ドパミンのコストは安価であり、患者・家族の視点からは容認できる範囲であると思われる。

実行可能性 その介入は実行可能ですか?

判断 リサーチエビデンス

いいえ おそらく、いいえ おそらく、はい はい

ドパミン投与において実行は容易である。

パブリックコメント用

パブリックコメント用

さまざま 分からない

パブリックコメント用

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判断の要約 判断

問題 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

望ましい効果 わずか 小さい 中 大きい さまざま 分からない

望ましくない効果 大きい 中 小さい わずか さまざま 分からない

エビデンスの確実性 非常に低 低 中 高 採用研究なし

価値観 重要な不確実性

またはばらつき

あり

重要な不確実性

またはばらつき

の可能性あり

重要な不確実性

またはばらつき

はおそらくなし

重要な不確実性

またはばらつき

はなし

効果のバランス 比較対照が優位 比較対照がおそ

らく優位

介入も比較対象

もいずれも優位

でない

おそらく介入が

優位 介入が優位 さまざま 分からない

容認性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

実行可能性 いいえ おそらく、いい

え おそらく、はい はい さまざま 分からない

推奨のタイプ 当該介入に反対する強い推奨 当該介入に反対する条件付き

の推奨 当該介入または比較対照のい

ずれかについての条件付きの

推奨

当該介入の条件付きの推奨 当該介入の強い推奨

パブリックコメント用

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結論 推奨 敗血症性 AKI に対して予防あるいは治療の目的としてドパミンを投与しないことを弱く推奨する(GRADE 2C, エビデンスの確実性=低)。

正当性 望ましい効果がわずかである一方、望ましくない効果もわずかと評価された。アウトカム全般における確実性は「低」であり、ドパミン投与あるい

は非投与の妥当性はない。重大なアウトカムとして院内死亡と ICU 死亡の二つを採用したが、方向性が異なる結果が得られた。院内死亡がより患者

中心のアウトカムと判断し、こちらを重要視してドパミンを投与しないことを弱く推奨することとした。ただし、一つの RCT に基づく推奨である

ことを強調する必要がある。

サブグループに関する検討事項 今回の SR では敗血症性 AKI のみに限定した RCT は抽出されなかった。また、敗血症性 AKI 予防目的の RCT は抽出されなかった。 今後、敗血症性 AKI のみに限定した RCT が研究上の優先事項である。

実施にかかわる検討事項 なし

監視と評価 なし

研究上の優先事項 なし

パブリックコメント用

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