54
6.8-55 d-12 ハヤブサ ○重要性 種の保存法:国内 環境省 RDL:絶滅危惧Ⅱ類(VU) 福岡県 RDB:絶滅危惧Ⅱ類(VU) ○生態・分布 35 )、 36 )、 37 本種は海岸の断崖や、海岸近くの山中にある岩壁や、近海の小島の断崖の棚ま たは岩穴で繁殖している。繁殖に適した崖の有無と餌生物の豊貧によって繁殖分 布は不規則になり、ある地方に集中することがある。また、繁殖期には九州以北 の主に崖のある海岸で見られ、冬季には全国の崖のある海岸や海沿いの農耕地等 で見られる。餌はほとんどがヒヨドリ級の鳥類で、まれに地上でネズミやウサギ を捕える。 日本では、繁殖する個体のほとんどが留鳥で、北海道から九州北西部の島嶼に 至るまで広く分布する。福岡県では、宗像市、新宮町、福岡市、糸島市の島嶼で 繁殖が確認されており、内陸の採石場跡や山地の崖(添田町)、建造物で営巣があ ると考えられる。北九州市周辺では、曽根、響灘埋立地でほぼ1年中確認される。 ○生息の状況及び生息環境の状況 本種は、現地調査では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 5 箇所に分布 していた。確認された時期は、繁殖期以外の秋季と冬季であった。 本種は、冬季には崖のある海岸や海沿いの農耕地を生息環境としており、調査 範囲内には本種の生息環境となる崖のある海岸や農耕地はない。調査範囲周辺は、 本種の餌となるヒヨドリ級の鳥類の生息場と考えられ、餌を探しながら一時的に 上空を通過したものと推定される。 35 「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック2001-」(福岡県、平成13年) 36 「福岡県レッドデータブック 2011 福岡県の希少野生生物 -植物群落・植物・哺乳類・鳥 類-」(福岡県、平成 23 年) 37 「原色 日本野鳥生態図鑑(陸鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年) (受注者提供)

d 12 ハヤブサ - Kitakyushu6.8-55 d-12 ハヤブサ 重要性 種の保存法: 国内 環境省RDL :絶滅危惧 Ⅱ類(VU) 福岡県RDB : 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 生態・分布

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6.8-55

d-12 ハヤブサ

○重要性

種の保存法:国内

環境省 RDL:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

福岡県 RDB:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

○生態・分布 35)、 36)、 37)

本種は海岸の断崖や、海岸近くの山中にある岩壁や、近海の小島の断崖の棚ま

たは岩穴で繁殖している。繁殖に適した崖の有無と餌生物の豊貧によって繁殖分

布は不規則になり、ある地方に集中することがある。また、繁殖期には九州以北

の主に崖のある海岸で見られ、冬季には全国の崖のある海岸や海沿いの農耕地等

で見られる。餌はほとんどがヒヨドリ級の鳥類で、まれに地上でネズミやウサギ

を捕える。

日本では、繁殖する個体のほとんどが留鳥で、北海道から九州北西部の島嶼に

至るまで広く分布する。福岡県では、宗像市、新宮町、福岡市、糸島市の島嶼で

繁殖が確認されており、内陸の採石場跡や山地の崖(添田町)、建造物で営巣があ

ると考えられる。北九州市周辺では、曽根、響灘埋立地でほぼ 1 年中確認される。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 5 箇所に分布

していた。確認された時期は、繁殖期以外の秋季と冬季であった。

本種は、冬季には崖のある海岸や海沿いの農耕地を生息環境としており、調査

範囲内には本種の生息環境となる崖のある海岸や農耕地はない。調査範囲周辺は、

本種の餌となるヒヨドリ級の鳥類の生息場と考えられ、餌を探しながら一時的に

上空を通過したものと推定される。

35)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 36)「福岡県レッドデータブック 2011 福岡県の希少野生生物 -植物群落・植物・哺乳類・鳥

類-」(福岡県、平成 23 年) 37)「原色 日本野鳥生態図鑑(陸鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年)

(受注者提供)

6.8-56

図 6.8-18 ハヤブサの確認地点

6.8-57

d-13 ヒクイナ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:準絶滅危惧(NT)

福岡県 RDB:準絶滅危惧(NT)

○生態・分布 38)、 39)

本種は、平地から低山の湖沼、河川、水田等の水辺の湿地の草むらや、ヨシや

マコモが密生する場所に生息し、湖沼、河川、水田の水辺やヨシ原等の湿地、低

木の低い枝に巣をつくり、繁殖する。餌は、動物質のくも、カエル、エビ、小魚

や植物質のタデ科、イネ科、キク科等の草の種子である。

日本では、夏鳥として渡来し、ほぼ全国的に繁殖する。福岡県では、全域の平野

部から丘陵地の河川、ため池、水田地帯等の水辺に分布している。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 2 箇所に分布

していた。確認地点の環境は、ヨシやヒメガマが生育する水辺や開放水面であっ

た。

本種は、水辺の湿地の草むらやヨシ原、湿地を利用するとされている。文献そ

の他の資料調査においても、ヨシやヒメガマが生育する水辺や、開放水面で分布

が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺や開放水面と推定される。

38)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 39)「原色 日本野鳥生態図鑑(水鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年)

(北九州市提供)

6.8-58

図 6.8-19 ヒクイナの確認地点と推定される生息環境

6.8-59

d-14 シロチドリ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

福岡県 RDB:準絶滅危惧(NT)

○生態・分布 40)、 41)

本種は、河川敷、砂浜海岸等で繁殖する。特に近年、埋立地での繁殖場所が大

きなコロニーとなることが多い。営巣場所としての埋立地は一時的に形成される

ことが多いため、年による個体数の変動が大きい。繁殖期は 4 月から 7 月で、荒

地の地面を軽くへこませ小石を敷いただけの簡単な巣に産卵する。採食場所は主

に干潟、海岸、湿地で水田や川筋でも行う。餌は主に水生昆虫、ミミズ等の小動

物である。

日本では、広く分布し繁殖する。福岡県では、福岡市海の中道、アイランドシ

ティ埋立地、和白干潟、筑後川河川敷等に分布している。北九州市周辺では、響

灘埋立地、新北九州空港埋立地、曽根干潟等に分布している。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 4 箇所、文献その他の資料調査範囲の 4 箇所に分布し

ていた。確認地点の環境は、人工裸地や造成地であった。

本種は、河川敷や砂浜海岸、埋立地を利用するとされている。本調査において

も、造成地で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境は造成地と推定される。

40)「福岡県レッドデータブック 2011 福岡県の希少野生生物 -植物群落・植物・哺乳類・

鳥類-」(福岡県、平成 23 年) 41)「日本動物大百科 第 3 巻 鳥類Ⅰ」(日高敏隆監修、平凡社、 1996 年)

(現地調査で撮影)

6.8-60

図 6.8-20 シロチドリの確認地点と推定される生息環境

6.8-61

d-15 タゲリ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:-

福岡県 RDB:準絶滅危惧(NT)

○生態・分布 42)、 43)

本種は、水田、湿地、干潟、河原や湖沼の水辺、湿っぽい畑地、水溜りのある

荒れ地等に生息し、巣は地上の草むらの中に窪みをつくり、草の葉・茎を集めて、

皿形にする。餌は、地上の昆虫やその幼虫等、無脊椎動物をついばむ。

日本では、本州、四国、九州等の各地に冬鳥として渡来する。福岡県では、福岡

市瑞梅寺川河口周辺、有明海沿岸の干拓地や筑後川河川敷で見られる。北九州市

周辺では、曽根新田で見られる。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 1 箇所に分布

していた。確認された環境は、ヨシやヒメガマが生育する水辺に隣接した人工裸

地であった。

本種は、水田、湿地等の水辺や湿っぽい畑地を利用するとされている。文献そ

の他の資料調査においても、ヨシやヒメガマが生育する水辺に隣接した場所で分

布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

42)「福岡県レッドデータブック 2011 福岡県の希少野生生物 -植物群落・植物・哺乳類・

鳥類-」(福岡県、平成 23 年) 43)「原色 日本野鳥生態図鑑(水鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年)

(受注者提供)

6.8-62

図 6.8-21 タゲリの確認地点と推定される生息環境

6.8-63

d-16 タカブシギ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

福岡県 RDB:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

○生態・分布 44)、 45)、 46)

本種は、越冬地では干潟、河川や河口の砂泥地、水田、溝、湖沼岸の砂泥地等、

泥の多い水辺に生息する。繁殖地では森林地帯の中の開けた湿地、樹木が疎らで

湿っぽい荒れ地草原、洪水地帯等に生息する。餌は、昆虫の成虫・幼虫、甲殻類

等の小動物を食べる。

日本では、各地に旅鳥としてふつうに見られ、越冬記録もある。福岡県では、

宗像市曲、福津市津屋崎、福岡市瑞梅寺川河口周辺、柳川市大和干拓、橋本干拓

等に分布している。北九州市周辺では、曽根新田、吉田等に分布し、曽根干潟で

は定期的に越冬する。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 1 箇所に分布

していた。確認地点の環境は、ヨシが生育する水辺であった。

本種は、水田、湿地を利用するとされている。文献その他の資料調査において

も、ヨシが生育する水辺で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

44)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 45)「福岡県レッドデータブック 2011 福岡県の希少野生生物 -植物群落・植物・哺乳類・

鳥類-」(福岡県、平成 23 年) 46)「原色 日本野鳥生態図鑑(水鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年)

(北九州市提供)

6.8-64

図 6.8-22 タカブシギの確認地点と推定される生息環境

6.8-65

d-17 ホウロクシギ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

福岡県 RDB:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

○生態・分布 47)、 48)

本種は、海岸の砂浜、入り江の干潟、河口の砂泥地等で見られ、ときとして水

田に入ってくることもある。繁殖地では、蘚類のピート湿原、ヨシ原、湿地草原、

灌木が散在する湿った荒れ地等に営巣する。平坦な砂泥地で、長くて下湾したく

ちばしを深く差し込み、探りを入れてゴカイやカニ類を取り出して食べる。

日本では、春秋の旅鳥として全国的に飛来し、8~10 月と 3~6 月に見られる。福

岡県では、福津市津屋崎干潟、福岡市和白干潟、多々良川河口、瑞梅寺川河口、

糸島市泉川河口、柳川市筑後川河口・矢部川河口に定期的に飛来している。北九

州市周辺では、曽根干潟に定期的に飛来している。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 1 箇所に分布

していた。確認地点の環境は、ヨシが生育する水辺で、確認された時期は本種の

渡りの時期である春季であった。

本種は、渡りの途中においては干潟や砂浜を生息環境としており、調査範囲内

には本種の生息環境となる干潟、砂浜はない。確認時期が本種の渡りの時期であ

ることから、渡りの時期に一時的に立ち寄ったものと推定される。

47)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 48)「原色 日本野鳥生態図鑑(水鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年)

(北九州市提供)

6.8-66

図 6.8-23 ホウロクシギの確認地点

6.8-67

d-18 オオジシギ

○重要性

種の保存法: -

環境省 RDL:準絶滅危惧(NT)

福岡県 RDB: -

○生態・分布 49)、 50)

本種は、低地から標高 1,400mぐらいの高原までに現れ、比較的広々とした草

原や荒れ地上の灌木草原、湿原、河川敷に生息する。餌は、昆虫の幼虫やミミズ

等、50~60%は動物質を食べる。植物質としては草の種子、草の葉・根等を食べ

る。

日本では、北海道から本州中部までに夏鳥として繁殖し、渡り期には本州以南

の各地で見られる。福岡県内での確実な記録は、ほかのシギ類との野外識別が困

難なため皆無に等しいが、旅鳥として春(4 月)・秋(8~9 月)に稀ならず渡来し

ていると思われる。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 3 箇所に分布

していた。確認地点の環境はヨシが生育する水辺であった。

本種は、湿原や河川敷を利用するとされている。文献その他の資料調査におい

ても、ヨシが生育する水辺で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

49)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 50)「原色 日本野鳥生態図鑑(水鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年)

(北九州市提供)

6.8-68

図 6.8-24 オオジシギの確認地点と推定される生息環境

6.8-69

d-19 セイタカシギ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

福岡県 RDB:-

○生態・分布 51)

本種は、熱帯から温帯にかけて、降雨林から砂漠地帯に至るまで幅広く生息し、

浅い淡水・塩水の湖沼、河川とそのふちの湿地帯で繁殖する。巣は、乾いて開け

た場所の草が疎らな砂泥地の浅い窪みにつくり、小石や植物片等で内張りをする。

餌は、双翅類等の昆虫の幼虫や小さい甲殻類、小魚やオタマジャクシ等を食べる。

日本では、ほぼ全土の各地に稀に現れ、個体数は少ないが比較的頻繁に見られ

る。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 1 箇所に分布

していた。確認地点の環境は、ヨシが生育する水辺であった。

本種は、浅い水辺や湿地帯を利用するとされている。文献その他の資料調査に

おいても、ヨシが生育する水辺で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

51)「原色 日本野鳥生態図鑑(水鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年)

(北九州市提供)

6.8-70

図 6.8-25 セイタカシギの確認地点と推定される生息環境

6.8-71

d-20 ズグロカモメ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

福岡県 RDB:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

○生態・分布 52)、 53)、 54)、 55)

本種は、海岸、河口の干潟に生息し、その上を飛んで餌を探し、みつけると降

りて地上でカニ、ゴカイ、貝類等を捕る(山口県 RDB)。越冬地では、内湾や入り

江の干潟の水辺を往復飛翔して餌を探す。正確な繁殖地、繁殖地の環境、繁殖生

態等はまだわかっていないが、繁殖地は、おそらく内陸の水域であると考えられ

ている。

日本では、冬鳥として北海道から沖縄県までの沿岸各地に少数現れ、主に九州、

四国、沖縄の干潟で越冬する。福岡県では、福岡市瑞梅寺川河口、筑後川・矢部

川河口域で定期的に越冬しており、苅田町、福岡市東区、糸島市等でも少数越冬

している。博多湾には比較的よく渡来し、毎年見られる。北九州市周辺では、曽

根干潟で定期的に越冬している。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 1 箇所に分布していた。確認地点の環境は、造成地で

あった。

本種は、海岸や河口の干潟を利用し、内湾や入り江の干潟の水辺を往復飛翔し

て餌を探すとされており、本調査では内陸から海域方面への飛翔が確認された。

調査範囲内には本種の生息環境となる海岸や干潟はなく、採餌のための移動経路

として、一時的に上空を通過したものと推定される。

52)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 53)「福岡県レッドデータブック 2011 福岡県の希少野生生物 -植物群落・植物・哺乳類・

鳥類-」(福岡県、平成 23 年) 54)「原色 日本野鳥生態図鑑(水鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年) 55)「レッドデータブックやまぐち 山口県の絶滅のおそれのある野生生物」(山口県、平成 14 年)

(受注者提供)

6.8-72

図 6.8-26 ズグロカモメの確認地点

6.8-73

d-21 コアジサシ

○重要性

種の保存法:国際

環境省 RDL:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

福岡県 RDB:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

○生態・分布 56)、 57)

本種は、湖沼、河川、河口等の大きい水系のある河原、砂州、砂浜やその上空

でみられ、5~7 月に海岸や河口、河川の中洲、埋立地等の砂礫地で集団繁殖する。

近年、自然環境下での繁殖は少なくなり、埋立地等の人工環境で繁殖する例が多

くなっている。餌は小型の魚類であり、水中に急降下して捕食する。

日本では、夏鳥として本州以南の各地で繁殖する。福岡県では、福岡市博多湾

東部、筑後川中流(朝倉市)、大牟田市三池島に分布している。北九州市周辺では、

響灘埋立地、新北九州空港(苅田町)に分布している。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲周辺の 1 箇所に分布していた。確認地点は、沿岸の海域

であった。

本種は、埋立地等の人工環境を利用するとされている。本調査においても、周

辺海域で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境は沿岸の海域と推定される。

56)「福岡県レッドデータブック 2011 福岡県の希少野生生物 -植物群落・植物・哺乳類・

鳥類-」(福岡県、平成 23 年) 57)「原色 日本野鳥生態図鑑(水鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年)

(受注者提供)

6.8-74

図 6.8-27 コアジサシの確認地点と推定される生息環境

6.8-75

d-22 オオヨシキリ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:-

福岡県 RDB:準絶滅危惧(NT)

○生態・分布 58)、 59)、 60)、 61)

本種は、営巣地として群落高、密度が共に高いヨシの純群落を好み、ヨシ以外

の種が混じる群落は営巣地として好まない。繁殖期は 5 月~8 月で、広いヨシ群

落のある海岸、河川敷、湖沼畔等にヨシ等のイネ科の植物を用いて巣をつくる。

雄は縄張りをもち、その大きさは 450~2,000 ㎡、平均 850~1,000 ㎡とされてい

る。主に昆虫を捕食する。

日本では、夏鳥で 4 月下旬から 5 月中旬までに飛来し、9 月上旬から下旬にか

けて東南アジアやインドに渡る。本州以南、沖縄諸島、先島諸島の各地で繁殖が

確認されている。福岡県では、福岡市博多湾埋立地、福岡空港北側遊水池、室見

川中流、瑞梅寺川河口、遠賀川中流域、彦山川流域、小竹町ため池、筑後川流域、

有明海沿岸部等に分布している。北九州市周辺では、響灘埋立地、曽根新田、平

尾台に分布している。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲、文献その他の資料調査範囲に広く分布し、特に文献そ

の他の資料調査範囲でまとまった分布が確認された。確認地点の環境は、ヨシが

生育する水辺であった。

本種は、ヨシ群落を利用するとされている。本調査においても、ヨシが生育す

る水辺で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境は、ヨシ群落が成立する水

辺と推定される。

58)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 59)「福岡県レッドデータブック 2011 福岡県の希少野生生物 -植物群落・植物・哺乳類・

鳥類-」(福岡県、平成 23 年) 60)「日本動物大百科 第 4 巻 鳥類Ⅱ」(日高敏隆監修、平凡社、 1997 年) 61)「オオヨシキリの生活史に関する研究Ⅱ Polygny and territory」(羽田健三、寺西けさ

い、日本生態学会誌 Vol.18、No.5、1968 年)

(北九州市提供)

6.8-76

図 6.8-28 オオヨシキリの確認地点と推定される生息環境

6.8-77

d-23 ツリスガラ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:-

福岡県 RDB:準絶滅危惧(NT)

○生態・分布 62)、 63)

本種は、川辺や湖沼縁のヨシやガマの草原、あるいはちょっとしたヨシ原で生

息し、繁殖地では河川、湖沼縁のヤナギ等の樹木の多いヨシ原に生息する。巣は、

水面上に垂れている樹木の枝先に吊るされた見事な袋状で、上の方にチューブの

出入り口がついている。餌は、昆虫やくも類が主要食で、冬には種子も食べる。

日本では、本州、四国、九州の主として海岸地方に冬鳥として渡来するが、渡

来数は年変化が大きい。福岡県では、各地のため池や河川のヨシ原で見られる。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 1 箇所に分布していた。文献その他の資料調査範囲で

は、確認記録があるものの、位置情報の記録はない。現地調査範囲での確認地点

の環境は、ヨシが生育する水辺であった。

本種は、ヨシ原を利用するとされている。本調査においても、ヨシが生育する

水辺で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境は、ヨシ群落が成立する水

辺と推定される。

62)「福岡県レッドデータブック 2011 福岡県の希少野生生物 -植物群落・植物・哺乳類・

鳥類-」(福岡県、平成 23 年) 63)「原色 日本野鳥生態図鑑(陸鳥編)」(中村登流、中村雅彦、株式会社保育社、平成 7 年)

(受注者提供)

6.8-78

図 6.8-29 ツリスガラの確認地点と推定される生息環境

6.8-79

e.昆虫類

e-1 ベニイトトンボ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:準絶滅危惧(NT)

福岡県 RDB:-

○生態・分布 64)、 65)、 66)

本種は、平地の抽水植物や浮葉植物の豊富な池沼、ため池、湿地に生息するが、

生息地は局所的である。未熟個体は付近の林縁で見られ、幼虫は水中の沈水植物

や浮葉植物の葉裏につかまっている。

日本では、本州から九州に分布する。福岡県での成虫は、5 月中旬から 10 月中

旬に現れ、県内では広く分布し個体数も多い。響灘ビオトープでは、かなり少な

い。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 1 箇所に

分布していた。確認地点の環境は、ヨシ、ヒメガマの抽水植物が生育する水辺で

あった。

本種は、植物の豊富な湿地を利用するとされている。本調査においても、ヨシ

やヒメガマ等の水辺に生育する植物が優占する場所で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

64)「レッドデータブックやまぐち 山口県の絶滅のおそれのある野生生物」(山口県、平成 14 年) 65)「日本のトンボ」(尾園暁、川島逸郎、二橋亮著、文一総合出版、 2012 年) 66)「響灘ビオトープの水辺の生き物」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、

2013 年)

(北九州市提供)

6.8-80

e-2 アオヤンマ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:準絶滅危惧(NT)

福岡県 RDB:情報不足(DD)

○生態・分布 67)、 68)、 69)、 70)

本種は、ため池、河川の淀み、ヨシ、マコモ等背丈の高い抽水植物が茂った湿

地に生息し、未熟個体は付近の草地で見られる。羽化はヨシの茎等に止まって行

われ、幼虫は水中に沈んだヨシ等の沈積物間に潜んでいることが多い。

日本では、北海道から九州北部に分布する。福岡県での成虫は 4 月下旬から 7

月中旬に現れ、県内では海岸沿いの池や沼に産地が点在しており、内陸部ではほ

とんど確認されていない。響灘ビオトープでは、ふつうにみられる。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 3 箇所、文献その他の資料調査範囲の 1 箇所に分布し

ていた。確認地点の環境は、ヨシが生育する水辺であった。

本種は、ヨシ等の植物が茂った湿地を利用するとされている。本調査において

も、ヨシ等の水辺に生育する植物が優占する場所を中心に分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

67)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 68)「土佐のトンボ」(浜田康、高知新聞社、平成 3 年) 69)「日本のトンボ」(尾園暁、川島逸郎、二橋亮著、文一総合出版、 2012 年) 70)「響灘ビオトープの水辺の生き物」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、

2013 年)

(北九州市提供)

6.8-81

e-3 ベッコウトンボ

○重要性

種の保存法:国内

環境省 RDL:絶滅危惧ⅠA 類(CR)

福岡県 RDB:絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

○生態・分布 71)、 72)、 73)、 74)

本種は、平地のヨシやヒメガマ等の抽水植物が茂った池や沼に生息し、福岡県

での成虫は 4 月上旬から 6 月中旬に現れる。本種は未熟期間をチガヤ草地等で過

ごすため、本種の生息には周囲に草原があることが必要である。幼虫は水中の沈

水植物の根際や泥、落葉の間に潜んでいる。

日本では、本州から九州まで分布する。福岡県では、産地が局限され、現在も

確実に知られているのは福岡市、苅田市、北九州市のみである。響灘ビオトープ

では、とても多くみられる。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲、文献その他の資料調査範囲のそれぞれに分布し、特に

文献その他の資料調査範囲の東側でまとまった分布が確認された。確認地点の環

境は、ヨシ、ヒメガマの抽水植物が生育する水辺であった。

本種は、ヨシやヒメガマ等の抽水植物が茂った池や沼を利用するとされている。

本調査においても、ヨシやヒメガマ等の水辺に生育する植物が優占する場所を中

心に分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

71)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 72)「土佐のトンボ」(浜田康、高知新聞社、平成 3 年) 73)「日本のトンボ」(尾園暁、川島逸郎、二橋亮著、文一総合出版、 2012 年) 74)「響灘ビオトープの水辺の生き物」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、

2013 年)

(北九州市提供)

6.8-82

e-4 コオイムシ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:準絶滅危惧(NT)

福岡県 RDB:準絶滅危惧(NT)

○生態・分布 75)、 76)、 77)

本種は、水生植物が豊富な池沼や用水路、ため池、河川、水田等に生息し、成

虫は水辺まで数mの枯れ葉の下等で越冬する。繁殖期は早く、3 月中旬には卵を

背負った雄をみかけ、卵がふ化するまで過ごす。小型の昆虫類やオタマジャクシ、

モノアラガイ等を捕食する。

日本では、北海道から九州まで分布する。北九州市内でも数十年間記録なかっ

たが、近年増加しているようで各所で見られる。響灘ビオトープでは、とても多

くみられる。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲、文献その他の資料調査範囲のそれぞれに分布し、特に

文献その他の資料調査範囲でまとまった分布が確認された。確認地点の環境は、

ヨシ、ヒメガマの抽水植物が生育する水辺であった。

本種は、ヨシ等の水生植物が豊富な池沼、水田等を利用するとされている。本

調査においても、ヨシやヒメガマ等の水辺に生育する植物が優占する場所を中心

に分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

75)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 76)「レッドデータブックやまぐち 山口県の絶滅のおそれのある野生生物」(山口県、平成 14 年) 77)「響灘ビオトープの水辺の生き物」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、

2013 年)

(北九州市提供)

6.8-83

e-5 ハマベゴミムシ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:準絶滅危惧(NT)

福岡県 RDB:-

○生態・分布 78)、 79)、 80)

本種は、汽水域の湿地、潮間帯の芦原に生息し、水路の周りの粘土質の裸地を

走り回り、小昆虫等を捕食していると考えられる。初夏に潮間帯に打ち上げられ

た藻類の下等で発見される他、灯火に飛来する。

日本では、本州と四国に分布し、山口県が分布南西限地とされている。本種と

同じ海浜性ゴミムシの稀種であるドウイロハマベゴミムシは、局地的に産すると

され、福岡県では糸島で確認されている。福岡県や響灘ビオトープでの本種の分

布は不明である。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 1 箇所に分布していた。確認地点の環境は、ヨシが生

育する水辺であった。

本種は、海浜性のゴミムシで、汽水域の湿地や潮間帯のヨシ原を利用するとさ

れている。本調査においても、ヨシやヒメガマ等の水辺に生育する植物が優占す

る場所で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

78)「レッドデータブックやまぐち 山口県の絶滅のおそれのある野生生物」(山口県、平成 14 年) 79)「岡山県版レッドデータブック 2009 絶滅のおそれのある野生生物」(岡山県、平成 22 年) 80)「レッドデータブックあいち 2009 動物編」(愛知県、平成 21 年)

(北九州市提供)

6.8-84

e-6 オオサカアオゴミムシ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:情報不足(DD)

福岡県 RDB:-

○生態・分布 81)

本種は、水辺の湿地に生息し、成虫も幼虫もともに肉食性であり、昆虫類、ミ

ミズ等を採餌する。越冬は成虫態で、ほどほどの湿度を保った砂壌質の土中に潜っ

て行う。

日本では、本州、四国、九州に分布する。福岡県での分布は不明であるが、関

東地方以外ではいずれの地域でも激減しているようである。生息地は局地的で、

しかも、生息適地の湿地が減少傾向にあり、絶滅地が増えている。響灘ビオトー

プでの分布も不明である。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 2 箇所に分布していた。確認地点の環境は、ヨシ群落

に隣接する造成地であった。

本種は、昆虫類やミミズ等の餌生物が豊富な水辺の湿地を利用するとされてい

る。本調査においても、ヨシやヒメガマ等の水辺に生育する植物が優占する場所

の周辺で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

81)「岡山県版レッドデータブック 2009 絶滅のおそれのある野生生物」(岡山県、平成 22 年)

(北九州市提供)

6.8-85

e-7 マダラコガシラミズムシ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

福岡県 RDB:-

○生態・分布 82)

本種は、ため池や水田、水たまりに生息する。浅い湿地環境を好むようだが、

恒常的な生息場所は不明である。

日本では、北海道から九州まで分布する。福岡県では極めて少なく、響灘ビオ

トープでもとても少ないが、周囲の水たまりでは複数個体が得られたことがある。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 9 箇所に

分布していた。確認地点の環境は、ヨシ、ヒメガマの抽水植物が生育する水辺で

あった。

本種は、浅い湿地環境を利用するとされている。本調査においても、ヨシやヒ

メガマ等の水辺に生育する植物が優占する場所を中心に分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

82)「響灘ビオトープの水辺の生き物」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、

2013 年)

(北九州市提供)

6.8-86

e-8 オオマルケシゲンゴロウ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:-

福岡県 RDB:準絶滅危惧(NT)

○生態・分布 83)、 84)

本種は、池沼、休耕田、湿地、ため池等の止水域で、水草等の多い浅い所に生

息している。冬季も水中で採集されることから、水中越冬すると考えられる。

日本では、本州中部から南西諸島まで分布する。福岡県では 1994 年の初記録以

来、記録に途絶えていたが、北九州市若松区に多産する池があることが分かって

いる。響灘ビオトープでは、ふつうにみられる。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 3 箇所に

分布していた。確認地点の環境は、ヨシ、ヒメガマの抽水植物が生育する水辺や

その周辺であった。

本種は、水草が多い湿地を利用するとされている。本調査においても、ヨシや

ヒメガマ等の水辺に生育する植物が優占する場所やその周辺で分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

83)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 84)「響灘ビオトープの水辺の生き物」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、

2013 年)

(北九州市提供)

6.8-87

e-9 ケシゲンゴロウ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:準絶滅危惧(NT)

福岡県 RDB: -

○生態・分布 85)

本種は、池や水路に生息し、夏には多くいるものの、冬には突如姿を消してし

まうので、どんな場所で越冬するのかまだ把握できていない。

日本では、北海道から南西諸島まで分布する。近年、全国的に減少傾向にあり、

福岡県でもそれほど多くはない。響灘ビオトープではとても多くみられ、特に植

物の豊富な浅い場所に多い。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 8 箇所に分布していた。確認地点の環境は、ヨシが生

育する水辺であった。

本種は、植物の豊富な浅い水域を利用するとされている。本調査においても、

ヨシやヒメガマ等の水辺に生育する植物が優占する場所を中心に分布が確認され

た。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

85)「響灘ビオトープの水辺の生き物」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、

2013 年)

(北九州市提供)

6.8-88

e-10 キベリクロヒメゲンゴロウ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:準絶滅危惧(NT)

福岡県 RDB:-

○生態・分布 86)

本種は、ため池や、植生の豊富なある程度自然度の高い池に生息している。冬

季は水中から姿を消すが、どこで越冬しているか、まだ把握できていない。

日本では、北海道からトカラ列島まで分布する。福岡県では志摩町、北九州市、

上毛町等沿岸部の池に分布する。響灘ビオトープでは、とても多くみられる。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 7 箇所に分布していた。確認地点の環境は、ヨシが生

育する水辺であった。

本種は、植物の豊富な自然度の高い池を利用するとされている。本調査におい

ても、ヨシやヒメガマ等の水辺に生育する植物が優占する場所を中心に分布が確

認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

86)「響灘ビオトープの水辺の生き物」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、

2013 年)

(北九州市提供)

6.8-89

e-11 コガタノゲンゴロウ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

福岡県 RDB:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

○生態・分布 87)、 88)、 89)

本種は、ため池や河川、水草の多い池沼、水田、休耕田や湿地に生息する。成

虫で越冬し、産卵は水草の茎に穴を開けて行う。

日本では、本州から南西諸島まで分布する。福岡県では福岡地方の田園地帯に

ある程度の生息地がまとまって残っていることが確認されているが、市街地化や

開発により本種の将来は危惧される。響灘ビオトープでは、ふつうにみられる。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 2 箇所、文献その他の資料調査範囲の 7 箇所に分布し

ていた。確認地点の環境は、ヨシが生育する水辺やその周辺であった。

本種は、湿地を利用し、産卵には水草が必要とされている。本調査においても、

ヨシやヒメガマ等の水辺に生育する植物が優占する場所を中心に分布が確認され

た。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

87)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年) 88)「響灘ビオトープの水辺の生き物」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、

2013 年) 89)「福岡県の水生昆虫図鑑」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、 2009 年)

(北九州市提供)

6.8-90

e-12 コガムシ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:情報不足(DD)

福岡県 RDB:-

○生態・分布 90)、 91)

本種は、植物の豊富なため池や水田、水たまり等に生息し、水深が浅い湿地的

な場所を好む。農薬使用の抑えられた水田や自然度が高く浅瀬が多いため池等で

多く見られる。卵のうを水面近くの水草に産み付けて繁殖する。

日本では、北海道から九州まで分布し、福岡県内では少ない。響灘ビオトープ

では、とても多くみられる。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 16 箇所に分布していた。確認地点の環境は、ヨシが生

育する水辺であった。

本種は、植物の豊富な湿地を利用するとされている。本調査においても、ヨシ

やヒメガマ等の水辺に生育する植物が優占する場所を中心に分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境はヨシ群落、ヒメガマ群落

が成立する水辺と推定される。

90)「響灘ビオトープの水辺の生き物」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、

2013 年) 91)「福岡県の水生昆虫図鑑」(井上大輔ほか編、福岡県立北九州高等学校魚部、 2009 年)

(北九州市提供)

6.8-91

e-13 ジュウサンホシテントウ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:-

福岡県 RDB:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

○生態・分布 92)

本種は、海岸、河口、湖や池の岸等、ヨシ群落に局地的に生息し、成虫は 5 月

頃から現れ、河口付近のヨシ群落等で採集されることが多い。モモコフキアブラ

ムシやイネマダラヨコバイを捕食する。

日本では、北海道から九州まで分布する。福岡県では久留米市、行橋市、北九

州市若松区有毛、福岡市能古島、同東区多の津からだけ記録されている。響灘ビ

オトープでの分布は不明である。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲では確認されず、文献その他の資料調査範囲の 4 箇所に

分布していた。確認地点の環境は、ヨシが生育する水辺であった。

本種は、ヨシ群落を利用するとされている。本調査においても、ヨシが優占す

る場所に分布が確認された。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境は、ヨシ群落が成立する水

辺と推定される。

92)「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック 2001-」(福岡県、平成 13 年)

(北九州市提供)

6.8-92

e-14 オオツノハネカクシ

○重要性

種の保存法:-

環境省 RDL:情報不足(DD)

福岡県 RDB:-

○生態・分布 93)、 94)

本種は、かつては塩田に生息し、塩田の粘土層に多数の穴を空ける害虫として

知られていたが、塩田による製塩が衰退し、ほとんどの産地で姿を消した。塩田

が衰退した現在では干拓地の堰堤や海岸から離れた内陸部でも、粘土質の土壌を

利用して生息範囲を広げている。地表ではその姿はほとんど見られないが、灯火

には多数が飛来する。昼間は粘土層に掘った穴の中に隠れていると考えられる。

日本では、本州、四国、九州に分布し、福岡県内や響灘ビオトープでの分布は

不明である。

○生息の状況及び生息環境の状況

本種は、現地調査範囲の 4 箇所に分布していた。確認地点の環境は造成地であっ

た。

本種は、干拓地等塩水を含む粘土質の土壌を利用するとされ、塩田が衰退した

現在は埋立地や海岸から離れた内陸でもみられるようになっている。調査範囲は

「第3章 対象事業が実施されるべき区域及びその周囲の概況」にあるように、

海底土砂による埋立地であるため、本種の生息に適しており、造成地を中心に確

認されたものと考えられる。

このように、調査範囲における本種の主な生息環境は、海底土砂により埋立て

られた造成地であると推定される。

93)「レッドデータブックやまぐち 山口県の絶滅のおそれのある野生生物」(山口県、平成 14 年) 94)「岡山県版レッドデータブック 2009 絶滅のおそれのある野生生物」(岡山県、平成 22 年)

(北九州市提供)

6.8-93

6.8.2 予測の結果

(1)予測の手法

工事の実施時は、造成等による一時的な影響により、水の濁りが発生し、海域

に関わる重要な種に影響を及ぼすおそれがあるため、これらに対する影響を予測

した。

土地又は工作物の供用時は、施設の稼働に伴い発生する排水及び温排水により、

放流口前面の海域に関わる重要な種に影響を及ぼすおそれがあるため、これらに

対する影響を予測した。底質については、「6.5 水質」で底質に巻き上げ等の変

化をもたらす程の流況の変化がないことが予測されているため、予測の対象とし

なかった。

また、施設の存在に伴う土地の改変が、陸域に関わる重要な種に影響を及ぼす

おそれがあるため、これらに対する影響を予測した。

なお、予測は各予測対象種の生態及び生息環境を考慮して類型化したグループ

ごとに行った。

1)予測の基本的な手法

①工事の実施による影響

造成等の施工による一時的な影響の予測は、事業計画と重要な種の分布、生息

環境の状況を踏まえ、「6.5 水質」で求めた海域の水質(SS)の変化をもとに、

生息環境の改変の程度から環境影響を把握した。

予測対象とする種は、表 6.8-16 に示す種のうち、「砂質や砂泥質に生息する種」

としてサクラガイ、ウズザクラガイ、バラフマテガイ、「魚類を餌とする種」とし

てカンムリカイツブリ、ヒメウ、クロサギ、ミサゴ、コアジサシの計 8 種とした。

②土地又は工作物の存在及び供用

施設の稼働に伴い発生する排水及び温排水の影響の予測は、事業計画と重要な

種の分布、生息環境の状況を踏まえ、「6.5 水質」で求めた海域の水質(COD、T-

N、T-P)、水温の変化をもとに、生息環境の改変の程度から環境影響を把握した。

予測対象とする種は、表 6.8-16 に示す種のうち、「砂質や砂泥質に生息する種」

としてサクラガイ、ウズザクラガイ、バラフマテガイ、「魚類を餌とする種」とし

てカンムリカイツブリ、ヒメウ、クロサギ、ミサゴ、コアジサシの計 8 種とした。

施設の存在による影響の予測は事業計画と重要な種の分布、生息環境の状況を

踏まえ、重要な種の生息環境の改変の程度から、環境影響を把握した。予測対象

とする種は、表 6.8-16 に示す種のうち、「湿地に生息する種」としてトノサマガ

エル、チュウサギ、ヒクイナ、タゲリ、タカブシギ、オオジシギ、セイタカシギ、

6.8-94

ベニイトトンボ、アオヤンマ、ベッコウトンボ、コオイムシ、ハマベゴミムシ、

オオサカアオゴミムシ、マダラコガシラミズムシ、オオマルケシゲンゴロウ、ケ

シゲンゴロウ、キベリクロヒメゲンゴロウ、コガタノゲンゴロウ、コガムシ、「ヨ

シ群落に生息する種」としてツリスガラ、ジュウサンホシテントウ、「ヨシ群落、

チガヤ群落等の草地に生息する種」としてハイイロチュウヒ、「ヨシ群落、チガヤ

群落、造成地等の広い範囲に生息する種」としてハイタカ、ハヤブサ、「造成地に

生息する種」として、シロチドリ、オオツノハネカクシの計 27 種とした。

なお、陸域の一部を周年または一時的に利用するズグロカモメ、渡りで上空を

通過するオシドリ、ハチクマ、サシバ、ホウロクシギについては予測地域に生息

環境がなく、事業による影響が想定されないことから、予測の対象としなかった。

また、「6.9 生態系」の生態系注目種であるカヤネズミ、チュウヒ、オオヨシキ

リについては、「6.9 生態系」で予測を行った。

6.8-95

表 6.8-16 予測対象とする動物の重要な種

影響要因

予測対象種

工事の 実施

土地又は工作物の存在及び供用

造成等の施工による一時的な影響

施設の 存在

施設の稼働

排水 温排水

砂質や砂泥質に生息する種

底生 生物

サクラガイ ○ - ○ ○

ウズザクラガイ ○ - ○ ○

バラフマテガイ ○ - ○ ○

魚類を 餌とする種

鳥類

カンムリカイツブリ ○ - ○ ○

ヒメウ ○ - ○ ○

クロサギ ○ - ○ ○

ミサゴ ○ - ○ ○

コアジサシ ○ - ○ ○

湿地に 生息する種

両生類 トノサマガエル - ○ - -

鳥類

チュウサギ - ○ - -

ヒクイナ - ○ - -

タゲリ - ○ - -

タカブシギ - ○ - -

オオジシギ - ○ - -

セイタカシギ - ○ - -

昆虫類

ベニイトトンボ - ○ - -

アオヤンマ - ○ - -

ベッコウトンボ - ○ - -

コオイムシ - ○ - -

ハマベゴミムシ - ○ - -

オオサカアオゴミムシ - ○ - -

マダラコガシラミズムシ - ○ - -

オオマルケシゲンゴロウ - ○ - -

ケシゲンゴロウ - ○ - -

キベリクロヒメゲンゴロウ - ○ - -

コガタノゲンゴロウ - ○ - -

コガムシ - ○ - -

ヨシ群落に 生息する種

鳥類 ツリスガラ - ○ - -

昆虫類 ジュウサンホシテントウ - ○ - -

ヨシ群落、チガヤ群落等の草地に生息する種

鳥類 ハイイロチュウヒ - ○ - -

ヨシ群落、チガヤ群落、造成地等の広い範囲に生息する種

鳥類

ハイタカ - ○ - -

ハヤブサ - ○ - -

造成地に 生息する種

鳥類 シロチドリ - ○ - -

昆虫類 オオツノハネカクシ - ○ - -

6.8-96

2)予測地域・予測地点

予測地域は、調査地域と同様とした(図 6.8-1~図 6.8-2)。

3)予測対象時期等

予測対象時期は、重要な種に係る環境影響を把握できる時期とした。

造成等による一時的な影響については、造成等による工事期間中において、水

の濁りに係る環境影響が最大となる時期とした。

施設の稼働による排水・温排水の影響については、操業の状態が定常となる時

期とした。施設の存在による土地の改変の影響については、施設完成時とした。

4)予測条件

造成等による一時的な影響については、「6.5 水質」における工事の実施時の

予測結果を用いた。

施設の稼働時の排水及び温排水の影響については、「6.5 水質」における環境

保全措置を実施した場合の予測結果を用いた。施設の存在に伴う土地の改変の影

響については、事業実施区域の草地及び湿地等の全て(95,100 ㎡)が改変される

ものとした。

6.8-97

(2)予測結果

1)砂質や砂泥質に生息する種

(底生生物:サクラガイ、ウズザクラガイ、バラフマテガイ)

①工事の実施による影響

工事の実施に伴い、海域の水の濁り(SS)が変化すると、これらの種の生息環

境に変化が生じると考えられる。

水質の予測結果によると、造成工事等に伴う排水は、貯水槽に一旦貯め、必要

に応じて濁水処理(砂ろ過等)をしたのち、事業実施区域の南側の排水口から共

通排水溝に流し込むことにしており、事業実施区域及びその周辺海域の水質に及

ぼす影響は小さいものと予測されている。

以上より、工事の実施によるこれらの種の生息環境の変化は小さく、これらの

種の生息は維持されると考えられる。

②土地又は工作物の存在及び供用

施設の稼働に伴い排水・温排水が海域へと流入することにより、海域の水質(COD、

T-N、T-P)や水温が変化すると、これらの種の生息環境に変化が生じると考えら

れる。

水質の予測結果によると、放流口に最も近い一般測定点(H4)で、COD は現況、

将来ともに 1.5mg/L、T-N は現況、将来ともに 0.29mg/L、T-P は現況が 0.019mg/L

に対して将来は 0.020mg/L と、将来と現況の差濃度はごく小さい。また、水温の

予測結果によると、施設の稼動に伴い生じる水温差は、最大で 0.02℃とごく小さ

い。このように、排水・温排水による生息環境の変化はほとんど生じず、これら

の種への影響は小さいと考えられる。

以上より、施設の稼働によるこれらの種の生息環境の変化は小さく、これらの

種の生息は維持されると考えられる。

6.8-98

備考)COD の変化の範囲をみるため、COD の値が検出できる値

よりも低い差濃度でも図示している。

図 6.8-30 COD の差濃度(第 1 層)

図 6.8-31 T-N の差濃度(第 1 層)

H L

H:高濃度域

L:低濃度域

H

L

H:高濃度域

L:低濃度域

6.8-99

図 6.8-32 T-P の差濃度(第 1 層)

備考)図中には水温差を示している。

図 6.8-33 温排水の拡散予測結果

H

L

H:高濃度域

L:低濃度域

6.8-100

2)魚類を餌とする種

(鳥類:カンムリカイツブリ、ヒメウ、クロサギ、ミサゴ、コアジサシ)

①工事の実施による影響

工事の実施に伴い、海域の水の濁り(SS)が変化すると、餌生物である魚類が

周辺域へと分散する等してこれら魚類を餌とする種の採餌環境に変化が生じると

考えられる。

水質の予測結果によると、造成工事等に伴う排水は、貯水槽に一旦貯め、必要

に応じて濁水処理(砂ろ過等)をしたのち、事業実施区域の南側の排水口から共

通排水溝に流し込むことにしており、事業実施区域及びその周辺海域の水質に及

ぼす影響は小さいものと予測されている。

以上より、工事の実施によるこれらの種の生息環境の変化は小さく、これらの

種の生息は維持されると考えられる。

②土地又は工作物の存在及び供用

施設の稼働に伴い排水・温排水が海域へと流入することにより、海域の水質(COD、

T-N、T-P)や水温が変化すると、餌生物である魚類が周辺域へと分散する等して

これら魚類を餌とする種の採餌環境に変化が生じると考えられる。

水質の予測結果によると、放流口に最も近い一般測定点(H4)で、COD は現況、

将来ともに 1.5mg/L、T-N は現況、将来ともに 0.29mg/L、T-P は現況が 0.019mg/L

に対して将来は 0.020mg/L と、将来と現況の差濃度はごく小さい。また、水温の

予測結果によると、施設の稼動に伴い生じる水温差は、最大で 0.02℃とごく小さ

い。このように、排水・温排水による魚類の生息状況の変化はほとんど生じず、

これら魚類を餌とする種の採餌環境への影響は小さいと考えられる。

以上より、施設の稼働によるこれらの種の生息環境の変化は小さく、これらの

種の生息は維持されると考えられる。

6.8-101

3)湿地に生息する種

(・両生類:トノサマガエル

・鳥 類:チュウサギ、ヒクイナ、タゲリ、タカブシギ、オオジシギ、

セイタカシギ

・昆虫類:ベニイトトンボ、アオヤンマ、ベッコウトンボ、コオイムシ、

ハマベゴミムシ、オオサカアオゴミムシ、マダラコガシラミズ

ムシ、オオマルケシゲンゴロウ、ケシゲンゴロウ、キベリクロ

ヒメゲンゴロウ、コガタノゲンゴロウ、コガムシ)

①土地又は工作物の存在及び供用

これらの種が主な生息環境としているヨシ群落、ヒメガマ群落が成立する水辺

は、施設の存在によって消失・改変され、生息環境が変化することが想定される。

ヨシ群落、ヒメガマ群落、開放水面と事業計画との重ね合わせ結果によると、

予測地域全体に占めるヨシ群落、ヒメガマ群落、開放水面の消失・改変割合は

3.7%と小さい。また、消失・改変区域の周辺には、これらの種の生息環境である

ヨシ群落、ヒメガマ群落、開放水面がまとまりをもって残存する。さらに、これ

らの種の主な生息場は、調査範囲で安定した湿地環境となっている響灘ビオトー

プであると考えられる。

以上より、施設の存在によるこれらの種の生息環境の変化は小さく、これらの

種の生息は維持されると考えられる。

表 6.8-17 生息環境(ヨシ群落、ヒメガマ群落等)の 消失・改変面積と割合

生息環境 面 積(ha) 消失・改変

割合(%) 現 況 消失・改変

ヨシ群落 30.48 1.29 4.2

ヒメガマ群落 1.19 0.00 0.0

開放水面 3.34 0.00 0.0

合 計 35.01 1.29 3.7

備考)消失・改変割合(%)は、消失・改変の面積 /現況で算出しており、

小数第 2 位で四捨五入している。

6.8-102

4)ヨシ群落に生息する種

(鳥類:ツリスガラ、昆虫類:ジュウサンホシテントウ)

①土地又は工作物の存在及び供用

これらの種が主な生息環境としているヨシ群落が成立する水辺は、施設の存在

によって消失・改変され、生息環境が変化することが想定される。

ヨシ群落と事業計画との重ね合わせ結果によると、予測地域全体に占めるヨシ

群落の消失・改変割合は、4.2%と小さい。また、消失・改変区域の周辺には、こ

れらの種の生息環境であるヨシ群落がまとまりをもって残存する。さらに、これ

らの種の主な生息場は、調査範囲で安定した湿地環境となっている響灘ビオトー

プであると考えられる。

以上より、施設の存在によるこれらの種の生息環境の変化は小さく、これらの

種の利用は維持されると考えられる。

表 6.8-18 生息環境(ヨシ群落)の消失・改変面積と割合

生息環境 面 積(ha) 消失・改変

割合(%) 現 況 消失・改変

ヨシ群落 30.48 1.29 4.2

備考)消失・改変割合(%)は、消失・改変の面積 /現況で算出してお

り、小数第 2 位で四捨五入している。

6.8-103

5)ヨシ群落、チガヤ群落等の草地に生息する種(鳥類:ハイイロチュウヒ)

①土地又は工作物の存在及び供用

本種が主な生息環境としているヨシ群落が成立する水辺や、チガヤ群落等が成

立する草原は、施設の存在によって消失・改変され、生息環境が変化することが

想定される。

ヨシ群落、チガヤ群落等の草地と事業計画との重ね合わせ結果によると、予測

地域全体に占めるヨシ群落、チガヤ群落等の草地の群落の消失・改変割合は、6.0%

と小さい。また、消失・改変区域の周辺には、本種の生息環境であるヨシ群落、

チガヤ群落等の草地がまとまりをもって残存する。さらに、これらの種の主な生

息場は、調査範囲で安定した湿地環境となっている響灘ビオトープであると考え

られる。

以上より、施設の存在による本種の生息環境の変化は小さく、本種の利用は維

持されると考えられる。

表 6.8-19 生息環境(ヨシ群落、チガヤ群落等の草地)の 消失・改変面積と割合

生息環境 面 積(ha) 消失・改変

割合(%) 現況 消失・改変

ヨシ群落 30.48 1.29 4.2

ヒメガマ群落 1.19 0.00 0.0

キシュウスズメノヒエ群落 0.13 0.07 53.8

イソヤマテンツキ群落 1.14 0.06 5.3

クズ群落 1.02 0.00 0.0

ススキ群落 0.02 0.02 100.0

チガヤ群落 78.44 3.52 4.5

セイタカアワダチソウ群落 5.62 0.00 0.0

アレチハナガサ群落 4.70 0.35 7.4

タチスズメノヒエ群落 1.96 0.00 0.0

ギョウギシバ群落 5.48 2.07 37.8

オオクサキビ群落 6.32 0.87 13.8

ヒメムカシヨモギ群落 0.66 0.00 0.0

合 計 137.16 8.25 6.0

備考)消失・改変割合(%)は、消失・改変の面積 /現況で算出しており、小数

第 2 位で四捨五入している。

6.8-104

6)ヨシ群落、チガヤ群落、造成地等の広い範囲に生息する種

(鳥類:ハイタカ、ハヤブサ)

①土地又は工作物の存在及び供用

これらの種が主な生息環境としている崖のある海岸や農耕地は、予測地域内に

はなく、生息環境が変化することは想定されない。しかし、餌となる渡り鳥等の

生息環境である草地、湿地、造成地等の予測地域全体に広がる環境は、施設の存

在によって消失・改変され、生息環境が変化することが想定される。

これらの種の餌生物の生息環境と事業計画との重ね合わせ結果によると、予測

地域全体に占める消失・改変割合は、4.0%と小さい。また、消失・改変区域の周

辺には、これらの種の餌生物の生息環境がまとまりをもって残存する。

以上より、施設の存在によるこれらの種の餌生物の生息環境の変化は小さく、

これらの種の利用は維持されると考えられる。

表 6.8-20 餌生物の生息環境の消失・改変面積と割合

面 積(ha) 消失・改変

割合(%) 調査地域全体

(予測地域)

事業実施区域内

(消失・改変区域)

235.95 9.51 4.0

備考)消失・改変割合(%)は、消失・改変の面積 /現況で算出しており、小数第

2 位で四捨五入している。

6.8-105

7)造成地に生息する種(鳥類:シロチドリ、昆虫類:オオツノハネカクシ)

①土地又は工作物の存在及び供用

これらの種が主な生息環境としている造成地は、施設の存在によって消失・改

変され、生息環境が変化することが想定される。

造成地と事業計画との重ね合わせ結果によると、予測地域全体に占める造成地

の消失・改変割合は、2.4%と小さい。また、消失・改変区域の周辺には、これら

の種の生息環境である造成地がまとまりをもって残存する。

以上より、施設の存在によるこれらの種の生息環境の変化は小さく、これらの

種の利用は維持されると考えられる。

表 6.8-21 生息環境(造成地)の消失・改変面積と割合

生息環境 面 積(ha) 消失・改変

割合(%) 現 況 消失・改変

造成地 53.06 1.26 2.4

備考)消失・改変割合(%)は、消失・改変の面積 /現況で算出して

おり、小数第 2 位で四捨五入している。

6.8-106

6.8.3 環境保全措置の検討

工事の実施については、造成等による一時的な水の濁りについて予測を行った。

予測の結果、動物の重要な種の生息環境に与える影響は極めて小さく、これらの

種の生息は維持されると判断されたことから、予測結果を踏まえた環境保全措置

の検討は行わない。

土地又は工作物の存在及び供用については、施設の稼働による排水・温排水に

よる影響、施設の存在による土地の改変について予測を行った。予測の結果、動

物の重要な種の生息環境に与える影響は極めて小さく、これらの種の生息は維持

されると判断されたことから、予測結果を踏まえた環境保全措置の検討は行わな

い(表 6.8-22)。

表 6.8-22(1) 予測結果の概要及び環境保全措置

項 目 予測結果の概要 環境保全

措置の検討

砂 質 や 砂 泥

質 に 生 息 す

る種

サクラガイ

ウズザクラガイ

バラフマテガイ

工事の実施

土地又は工作

物の存在及び

供用

造成時に発生する濁水による

サクラガイ、ウズザクラガイ、

バラフマテガイの生息環境の変

化は小さく、これらの種の生息

は維持されると考えられる。

施 設 の 稼 働 に よ る サ ク ラ ガ

イ、ウズザクラガイ、バラフマ

テガイの生息環境の変化は小さ

く、これらの種の生息は維持さ

れると考えられる。

魚 類 を 餌 と

する種

カンムリカイツブリ

ヒメウ

クロサギ

ミサゴ

コアジサシ

工事の実施

土地又は工作

物の存在及び

供用

造成時に発生する濁水による

カンムリカイツブリ、ヒメウ、

クロサギ、ミサゴ、コアジサシ

の生息環境の変化は小さく、こ

れらの種の生息は維持されると

考えられる。

施設の稼働によるカンムリカ

イツブリ、ヒメウ、クロサギ、ミ

サゴ、コアジサシの生息環境の

変化は小さく、これらの種の生

息は維持されると考えられる。

6.8-107

表 6.8-22(2) 予測結果の概要及び環境保全措置

項 目 予測結果の概要 環境保全

措置の検討

湿 地 に 生 息

する種

トノサマガエル

チュウサギ

ヒクイナ

タゲリ

タカブシギ

オオジシギ

セイタカシギ

ベニイトトンボ

アオヤンマ

ベッコウトンボ

コオイムシ

ハマベゴミムシ

オオサカアオゴミムシ

マダラコガシラミズムシ

オオマルケシゲンゴロウ

ケシゲンゴロウ

キベリクロヒメゲンゴロウ

コガタノゲンゴロウ

コガムシ

土地又は工作

物の存在及び

供用

施設の存在がトノサマ

ガエル、チュウサギ、ヒク

イナ、タゲリ、タカブシギ、

オオジシギ、セイタカシ

ギ、ベニイトトンボ、アオ

ヤンマ、ベッコウトンボ、

コオイムシ、ハマベゴミム

シ、オオサカアオゴミム

シ、マダラコガシラミズム

シ、オオマルケシゲンゴロ

ウ、ケシゲンゴロウ、キベ

リクロヒメゲンゴロウ、コ

ガタノゲンゴロウ、コガム

シの生息環境に与える変

化は小さく、これらの種の

生息は維持されると考え

られる。

ヨ シ 群 落 に

生息する種

ツリスガラ

ジュウサンホシテントウ

土地又は工作

物の存在及び

供用

施設の存在によるツリ

スガラ、ジュウサンホシテ

ントウの生息環境に与え

る変化は小さく、これらの

種の生息は維持されると

考えられる。

ヨシ群落、チ

ガ ヤ 群 落 等

の 草 地 に 生

息する種

ハイイロチュウヒ

土地又は工作

物の存在及び

供用

施設の存在がハイイロ

チュウヒの生息環境に与

える変化は小さく、本種の

生息は維持されると考え

られる。

ヨシ群落、チ

ガヤ群落、造

成 地 等 の 広

い 範 囲 に 生

息する種

ハイタカ

ハヤブサ

土地又は工作

物の存在及び

供用

施設の存在がハイタカ、

ハヤブサの生息環境に与

える変化は小さく、これら

の種の生息は維持される

と考えられる。

造 成 地 に 生

息する種

シロチドリ

オオツノハネカクシ

土地又は工作

物の存在及び

供用

施設の存在がシロチド

リ、オオツノハネカクシの

生息環境に与える変化は

小さく、これらの種の生息

は維持されると考えられ

る。

6.8-108

6.8.4 評価の結果

動物の重要な種の予測結果では、工事の実施、施設の存在及び供用に伴う影響

は極めて小さく、重要な種の保全の観点においても生息環境の改変量を極力抑え

ている計画であることが示唆された。

したがって、環境への影響は事業者の実行可能な範囲内で、できる限り回避ま

たは低減が図られているものと評価する。