48

２－５．その他貴重な自然環境の分布

（１）天然記念物（国指定）

平成 20 年１月１日現在、国指定の特別天然記念物は 72 件、天然記念物は 936 件で、そのうち

近畿圏に立地するものは特別天然記念物が２件、天然記念物は 78 件である。

「長岡のゲンジボタルおよびその発生地（滋賀県）」と「春日山原始林（奈良県）」が特別天然

記念物に指定されている。天然記念物は兵庫県の 18 件に次いで、奈良県、和歌山県が 17 件と多

く、大阪府が５件と最も少ない。（表エラー! 指定したスタイルは使われていません。-1,表エラ

ー! 指定したスタイルは使われていません。-2,図エラー! 指定したスタイルは使われていませ

ん。-1）

表エラー! 指定したスタイルは使われていません。-1：府県別 天然記念物指定件数

府県 特別天然

記念物 天然記念物 計

滋賀県 1 12 13

京都府 - 9 9

大阪府 - 5 5

兵庫県 - 18 18

奈良県 1 17 18

和歌山県 - 17 17

計 2 78 80

出典：文化庁資料、府県資料

表エラー! 指定したスタイルは使われていません。-2：近畿圏の特別天然記念物

長岡のゲンジボタルおよびその発生地（滋賀県米原市）

ともに石灰岩質の鈴鹿山地と伊吹山地を源頭に琵琶湖に注ぐ

天野川のゲンジボタル大発生地。餌のカワニナの生育に適した川

であったせいもあり，古くから近畿圏有数の名所として著名。

近時，河床の土砂堆積や水質汚染など生息環境の劣化対策が施

されつつある。昭和 19 年に天然記念物に指定され、昭和 27 年に

特別天然記念物に指定された。

春日山原始林（奈良県奈良市）

春日大社の山として神聖視され、樹木伐採が長らく禁じられて

きたため、市街地に近接しているにも関わらず、自然林が存在す

る珍しい事例である。

カシ、シイ類を主体とした常緑広葉樹林の原始林で、モリアオ

ガエル、ヒメハルゼミ、カスミサンショウウオなども生息してい

る。昭和 30 年に特別天然記念物に指定され、平成 10 年に世界遺

産に登録された。

出典：府県、市町資料等

49

（２）絶滅危惧種

環境省では日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリストを作成・公表するとともに、日

本の絶滅のおそれのある野生生物の種についてそれらの生息状況等を取りまとめたレッドデー

タブックを刊行している。平成 18 年度までに刊行されている掲載種数は、絶滅種 49 種、絶滅

のおそれのある野生生物種 1,384 種にのぼる。（表エラー! 指定したスタイルは使われていませ

ん。-3）

レッドデータブックは地方公共団体や研究団体等でも作成されており、レッドデータブック

近畿研究会」が編著した「改訂・近畿地方の保護上重要な植物-レッドデータブック近畿 2001-」

には保護上重要な植物種が 940 種掲載されている。絶滅危惧種 A（近い将来における絶滅の危

険性が高い種）が 315 種（33.5%）と最も多く、絶滅危惧種 C（絶滅の危険性が高くなりつつあ

る種）が 299 種（31.8%）と続く。

また、絶滅危惧種が集中的に分布するなど、植物相保護の観点から重要と考えられる地域を

「保護上重要な地域」として 115 箇所（三重県を含む）選定している。（図エラー! 指定したス

タイルは使われていません。-1）

府県が作成したレッドデータブックの中で最も掲載数が多いのは兵庫県で、野生動植物1,375

種、植物群落 409 種、地形・地質・自然景観 459 種の計 2,243 種が掲載されている。全国的価

値に相当するAランクは510種(22.7%)、都道府県的価値に相当するBランクは652種(29.0%)、

市町村的価値に相当する Cランクは 819 種(36.5%)となっている。

50

表エラー! 指定したスタイルは使われていません。-3：近畿圏の主なレッドデータブック一覧

地域刊行物名称（作成主体）

刊行年

動物種

哺乳類・両生類爬虫類・鳥類・汽水魚類淡水魚類・昆虫類・甲殻類等・陸産貝類・淡水産貝類・クモ形類多足類等

絶滅（ＥＸ）

野生絶滅（ＥＷ）

絶滅危惧I類

（ＣＲ＋ＥＮ）

絶滅危惧II類（ＶＵ）

準絶滅危惧（ＮＴ）

絶滅のおそれのある地域個体群（Ｌ

Ｐ）

情報不足（ＤＤ）

計

植物種 維管束植物・維管束植物以外 47 2 303 365 451 40 225 1433

絶滅種絶滅危惧種A

絶滅危惧種B

絶滅危惧種C

準絶滅危惧種

計

30 315 170 299 126 940

絶滅種絶滅危惧種

絶滅危機増大

種希少種

要注目種

分布上重要種

その他重要種

保全すべき群衆・群落､個体群

郷土種 計

7 151 142 390 242 184 103 37 14 1270

絶滅種絶滅寸前種

絶滅危惧種

準絶滅危惧種

要注目種

計

100 393 415 353 335 1596

消滅消滅寸前(地質)

消滅危惧

要注意要継続保護(地

形)

(自然現象)

計

11 30 27 76 32 37 213

(植物群落)

計

36 36

絶滅絶滅危惧Ｉ類

絶滅危惧ＩＩ類

準絶滅危惧

情報不足

要注目 計

102 187 161 267 78 101 896

今見られない

Ａランク Ｂランク Ｃランク 要注目地域限

定要調査 計

28 403 364 394 66 28 92 1375

Ａランク Ｂランク Ｃランク 要注目 計

56 115 205 33 409

Ａランク Ｂランク Ｃランク 要注目 計

51 173 220 15 459

絶滅種絶滅寸前種

絶滅危惧種

希少種情報不足種

注目種 郷土種 計

2 17 48 69 22 8 4 170

絶滅絶滅危惧１類

※

絶滅危惧２類

※

準絶滅危惧

情報不足

学術的重要

絶滅のおそれのある地域個体群

計

35 316 192 196 33 84 2 858

１(良好)２(やや

良)３(不良) ４(劣悪) ５(壊滅) 計

94 32 7 2 1 136

Ａランク Ｂランク Ｃランク Ｄランク 計

3 15 38 232 288

掲載種数

保護上重要な植物種

平成13年

和歌山県 保全上重要なわかやまの自然（和歌山県）

地形・地質

植物群落

平成13年

対象

哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,魚類

野生動植物

哺乳類，鳥類，爬虫類・両生類，淡水魚類，昆虫類，陸産貝類・淡水産貝類，植物

地形・地質・自然景観

脊椎動物

改訂・兵庫の貴重な自然（兵庫県）

兵庫県

自然生態系

地域生態系,生息・生育地,人間－環境系の歴史的側面

陸産・淡水産の野生動植物

動物[哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,淡水魚類,昆虫類,陸産貝類,淡水産貝類]，植物[シダ植物,種子植物]

平成12年

奈良県

野生動植物

哺乳類,鳥類,は虫類,両生類,魚類,昆虫類,クモ類,貝類,その他の無脊椎動物,シダ植物,維管束植物,蘚苔類,淡水産藻類

大切にしたい奈良県の野生動植物　脊椎動物編（奈良県）

平成15年

平成18年

植物群落

大阪府 大阪府における保護上重要な野生生物（大阪府）

植物,ほ乳類,鳥類,両生類,は虫類,昆虫類,魚類,貝類,その他無脊椎動物,菌類

哺乳類,鳥類,は虫類,両生類,淡水魚類,昆虫類,クモ類,甲殻類,陸産貝類,淡水産貝類,甲殻類およびその他の淡水産無脊椎動物,コケ植物,シダ植物,種子植物,菌類

地形・地質・自然現象

地形,基盤地質・鉱物,被覆層・化石,自然現象

野生動植物

野生生物種

京都府 京都府レッドデータブック（京都府）

平成14年

平成18年

滋賀県 滋賀県で大切にすべき野生生物（滋賀県）

平成12～18

年

全国日本の絶滅のおそれのある野生生物（環境省）

近畿 改訂・近畿地方の保護上重要な植物（レッドデータブック近畿研究会）

出典：環境省資料、府県資料

51

図エラー! 指定したスタイルは使われていません。-1：天然記念物（国指定）および近畿地方の

52

植物保護上重要な地域

２－６．里地里山環境の特性

（１）里地里山環境の分布

里地里山は、奥山の自然地域と都市地域の間の幅広い中間地域に位置し、集落とそれを取り

巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原等で構成され、人為による適度な攪乱によ

って里地里山特有の環境が形成・維持され、固有種を含む多くの野生生物を育む地域となって

いる。1

とりわけ近畿圏においては、薪炭林あるいは農用林として古くから人々の生活に関わってき

た集落周辺などの林や、潅漑を目的とした多数のため池など、長い歴史の中でのさまざまな人

間の働きかけを通じた、自然環境と一体となった農地・里地里山が各地に分布している。

植生区分に基づく里地里山環境を抽出した場合、近畿圏においては総面積の約 53.7％と過半

数を超える。うち二次林が約 35.1％と最も割合が高く、二次草原約 1.9％、二次林・ため池が

混在する農地約 16.7％となっている。※（図エラー! 指定したスタイルは使われていません。-2）

二次林や水田、水路、ため池などが混在する里地里山環境はまた、絶滅危惧種を含む多様な

生物の生息・生育空間となっている。近畿圏における希少種（動物・植物）の分布状況を見る

と、琵琶湖沿岸部から京都盆地・奈良盆地にかけての一帯や、また播磨平野一帯や紀ノ川下流

域といった人間の生活・生産活動の場でもある二次林や農地に、確認希少種数の多い地域が分

布していることが分かる。（エラー! 参照元が見つかりません。）

※GIS による概算値

1第三次生物多様性国家戦略（平成 19年 11 月 27 日閣議決定）,環境省自然環境局

里地里山～古くて新しいいちばん近くにある自然～, 平成 16 年 9 月,環境省自然環境局

53

図エラー! 指定したスタイルは使われていません。-2：里地里山環境の分布