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資料4 9

資料 - 文部科学省ホームページ · きた」,「1人でプレゼンできた」,「積極的に発言ができた」,「初対面の人と臆することなく意見

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資料4

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長方形
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 初年次学生の多くは,教科書や黒板に書かれたことを暗記し,テストで良い点数を取ることが勉強であると考えています。そのような学生たちが,主体性を持って,自ら課題を決め,自ら情報収集を行い,レポート発表したり,グループの一員として協働し発表したりすることにより,「大学生になった!」という高等学校との違いの実感や自ら学び発表することで得た充実感や満足感,発表のプレッシャーを乗り越えたときの達成感などを得ることが,大学生への第一歩となります。さらに,学生は,授業に参加している中で「自分の考えは間違っているのではないか」,「この場にこの発言は不適切なのではないか」などの不安を必ず抱えています。この全学共通初年次教育科目を通じ,そのような不安をできるだけ取り除き,学生が主体的に授業へ参加できる雰囲気をつくることも求められます。 “自信は学生を成長させる”この全学共通初年次教育科目を通じて,「レポートを書くことができた」,「1人でプレゼンできた」,「積極的に発言ができた」,「初対面の人と臆することなく意見交換ができた」など様々な自信を学生に与え,本学が育成を目指している“自主創造型パーソン”として,一人ひとりの学生が「はじめの一歩」を踏み出せるよう,最大限支援することが求められます。 この全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」は,全学的に共通した教育方針の下,教職員一人ひとりの意欲と情熱によって実施すべきものであり,教職員の指導の在り方によって,学生の成長度が左右されるものであると言っても過言ではありません。全学共通初年次教育科目を真に実質的かつ効果的に実施するためには,従来の授業形態にとらわれず,それぞれの現場で教育に当たる教職員の創意工夫を生かして,学生たちと「自主創造」を実践する面白さを共有し,「学生の魂に訴えていく」ことが重要です。 「より良い学生を育てたい」「すべては学生のために」 この思いを共有したい。 改めて,ここに,全学共通初年次教育科目の展開に関し,教職員一人ひとりの御理解と御協力をお願いいたします。

全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」を展開するに当たって

日 本 大 学 学 長大 塚  𠮷 兵 衛

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日本大学全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」ガイドライン

目 次

〇 担当教員の方々へ………………………………………………………………………………………  2  ―全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」の趣旨 …………………………………………  2  ―「ガイドライン」の活用方法 ………………………………………………………………………  2

○ 学びのねらいと期待される効果………………………………………………………………………  3

○ 教育目的・学修教育目標………………………………………………………………………………  3

〇 授業の進め方……………………………………………………………………………………………  4

〇 指導方法…………………………………………………………………………………………………  6

〇 全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」Q & A集 ………………………………………  9

〇 全学共通内容:概要一覧……………………………………………………………………………… 15

〇 全学共通内容:授業実践要領………………………………………………………………………… 19  第1週 スタートアップ ………………………………………………………………… 19  第2週 大学で学ぶとは 反転授業の実践 …………………………………………… 26   反転授業シナリオ…………………………………………………………………………………… 29  第3週 コミュニケーション …………………………………………………………… 38  第4週 プレゼンテーションの方法 …………………………………………………… 46  第5週 プレゼンテーションの実践 …………………………………………………… 49  第6週 グループワーク~グループテーマの決定~ ………………………………… 51  第7週 グループ発表,討論 …………………………………………………………… 54  第8週~第14週 各学部等独自の内容  第15週(最終週) 総括~振り返り~ ……………………………………………………………… 57

〇 「自主創造の基礎1」関連用語集 …………………………………………………………………… 66

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○ 担当教員の方々へ

―全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」の趣旨 高等教育におけるユニバーサル化,グローバル化に伴う大学生の変容や多様化,大学改革が求められる現在において,日本大学は「日本一教育力のある大学」を目指し,真に教育効果を提示できる学士課程教育の構築など,教育を重視する大学へと変革を進めています。 その中に“自主創造型パーソン”の育成があります。その育成には,初年次から基礎学力をつけさせ,学修の習慣づけや学修への動機づけなどを確実にする必要があります。そのための教育プログラムが初年次教育です。 日本大学では,その教育プログラムの一つに全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」を下記のようなフローチャートをイメージして学士課程教育に設置します。

【全学共通初年次教育科目のフローチャート】

(出所)日本大学教学戦略委員会答申書(第 2次中間答申)平成 24 年 9 月 25 日 4 ページ

―「ガイドライン」の活用方法 「ガイドライン」は,各学部等及び担当教員が「自主創造の基礎1」の教育内容や方法等について,一定の“共通性”を担保しながら,“自主創造型パーソン”を育成するための第一歩として質の保証を鑑みつつ,教育課程編成上や実際の授業展開の事例として参考にしていただけるよう,企画・編集されています。 この「ガイドライン」は,「全学共通内容」と「各学部等内容」などで構成しています。特に,「全学共通内容:授業実践要領」及び「各学部等内容:授業実践例」は,シラバスや授業計画に相当する事例で,第 1週から第 15 週(最終週)までの授業展開例を一般目標,行動目標,使用教材,授業展開,評価などの項目を設けて示しています。また,学修の方法としてアクティブ・ラーニング,反転授業の事例や,「授業の進め方」や「指導方法」,「用語集」なども掲載しています。ぜひ,本「ガイドライン」を参考にしていただき,全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」の成功に向けて御活用いただきたく存じます。

1  

年  

2年次〜

教 

養 

教 

一般教育(外国語・コンピュータリテラジー)

前学期

後学期

専 

門 

基 

個人ワーク 学びの基礎

グループワーク

チームワーク

自学部 他学部外部有識者

振り返り

振り返り・結果の継承

専門教育(ゼミ・研究)

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 なお,現在,本学における全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」の導入は初期段階であり,本「ガイドライン」も今後の授業実践や大学改革,社会状況の中で,より有効な教育プログラムとして外的にも評価されるよう,常に改善する必要があります。

○ 学びのねらいと期待される効果

1 大学入学までの学習(受動的な知)から大学における学修(能動的な知)への転換を図る。2  レポートの作成方法,プレゼンテーションの方法など,大学で学ぶための基本的な学修スキルを修得させる。3  課題を自ら設定して,データや情報を収集し,他者との意見交換を行い,論点を整理して成果を発表することによる主体的な学びの体験を通じて,大学生としての自覚と自信の涵養をもたらす。4  多様な学生との触れ合いやグループワークにおける協働によるコミュニケーション力の向上を図るとともに,対話を通じての主体的な授業参加による授業への積極的参加姿勢を育成する。5 学修意欲を向上させることにより脱落防止を促進する。

○ 教育目的・学修教育目標

「自主」性の涵養

【教育目的】(一般目標:General Instructional Objective(GIO))

 大学入学までの受動的な学習からの転換を図り,「自ら考え,行動し,創り上げる」大学生としての能動的な学修を導く。

【学修教育目標】(行動目標:Specifi c Behavioral Objectives(SBOs))

1 学ぶ意味に気付くことができる。2 主体的に学ぶ喜びを意識することができる。3 積極的に参加する姿勢を持つことができる。4 日本大学と所属学部について説明することができる。

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○ 授業の進め方

1 授業の目標

 「自主創造の基礎1」では,大学生としての基本的な資質を育成することを教育目標とします。 この授業科目は,いわゆる専門教育の前段となる基礎教育ではなく,社会人として学修することの意義やその在り方について授業を通じて理解し,“自主創造型パーソン”の育成のための基礎教育に位置付けられます。

2 授業の形態

 ① 授業展開

  ・本授業科目では,アクティブ・ラーニングの授業形態を採ります。そのため,双方向かつ対話型で行う「学生参加型」の授業を実践し,学生が恐れずに積極的に発言できる雰囲気を担当教員自らが作るとともに,そうした姿勢を学生に修得させることを目的の一つとします。

  ・本授業科目では,知識を“覚える”ことのみに終始するのではなく,“自ら考え行動する”ことに主眼を置いています。そのため,基本的には,「個人ワーク」,「グループワーク」,「発表・共有」の繰り返しにより,授業を展開します。

  ・本授業科目では,「グループワーク」に先立ち,学生のグループ分け作業が行われます。教科担当者が事前に組合せを決めておく,あるいは,学生間の話合い,くじ引きなどの様々な方法があります。各学部等においては,担当教員及び学生数の割合により,1グループ 6~ 7名から,20 名など,教員によって担当する学生数は異なりますが,少人数である程,評価基準を客観的に設定できます。   グループワークでは,チームワークが重要ですから,なるべく当初のメンバーを改変しないことが望ましいでしょう。

 ② 成績評価

  ・本授業科目では,学生としての学修への気付き,それに伴う学修スキル修得を評価対象とします。例えば,成績評価の根拠となる資料としては,毎回の振り返りシートからは自主的な学修姿勢などの態度・習慣,レポートからは,情報収集,分析,解釈,問題解決などの知識,プレゼンテーションからは,コミュニケーション技能などが挙げられます。このように知識,態度・習慣及び技能の各領域(3 domains)から総合的に評価します(参考:教育目標分類学)。  ・成績はS,A,B,C,Dで評価し,本授業科目の性格に鑑みGPA算出の対象外とします。

 (例示) 成績評価:課題設定,問題探求,グループ内における議論,成果のまとめなどを総合的に判断して評価を行う。本授業科目の最終評価は,評価基礎点に基づき,成績評価表示(S,A,B,C,D)で判定する。各授業週におけるプロダクトやレポートなどを成績評価対象とする。

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3 授業のポイント

  ・担当教員は,学生が主体的に行動できるような雰囲気作りを心がけてください。例えば,学生に授業内容を伝達する際は,具体的な授業内容やねらい,各週における到達目標をシラバスに明示するとともに,各週の授業時においても学生に対し具体的に説明してください。

  ・担当教員は,様々な協働的な作業を通じて,学生同士あるいは担当教員との触れ合いの機会を積極的に設けるように留意してください。

  ・担当教員は,大学で全体に共通する学修スキルの向上を目指します。したがって,授業内容や題材は,各学部等の教育分野や担当教員の専門性に偏らないように注意してください。

  ・担当教員は,学生の目線に立った教育を行うことはいうまでもないことですが,“教える”のではなく,学生が自ら気付き学び行動することができるように“導く”役割を担う「ファシリテーター」に徹してください。

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○ 指導方法

1 担当教員が持つべきスタンス

 「○ 授業の進め方」にも記載されているように,アクティブ・ラーニングにおける「学生参加型」授業を実施する際の担当教員や指導者は,学生が自ら気付き学び行動することができるように “導く”ファシリテーター(促進者)としてのスタンスで授業を展開するように心がけてください。

 ① ファシリテーターとは   「学生参加型」授業におけるグループワークなどで,学修者が持っている知識や経験,個性や能力を引き出し,相互の意見交流や相互理解を促進させて,学修がスムーズに進行するように支援や補助を行います。また,新たな気付きや学びが生まれるような環境を整える役目も担います。ファシリテーションにおいて,「○○の場合は,××をすればよい。」などの絶対的な問題解決方法はありません。それぞれのグループにおいて,その状態・状況に応じ,適宜対応をしてください。

 ② ファシリテーターの人的資源   ファシリテーターの人的資源は,原則,担当教員です。本授業は,複数の教員によって実施されますが,各教員は,ファシリテーターの役割をあらかじめ良く理解して授業に臨む必要があります。   学部等によっては,学生数の関係でグループの数が多いケースや担当教員の人数が限られているケースも考えられ,そのために担当教員だけでは十分なファシリテーションができないことも想定されます。このような場合には,TA(又はSA)をサブ・ファシリテーターとして任用し,ファシリテーターとサブ・ファシリテーターで,複数のグループを受け持つことも可能です。TAによるサブ・ファシリテーターの役割は,ファシリテーターに準ずるものとなりますので,学部等ごとに授業の開始までにファシリテーションに関する十分な教育を行う必要があります。

 ③ ファシリテーターの役割

  (1)授業全体の責任者(担当者)としての役割   ア.授業内容を展開させるための管理・運営      必要に応じて,授業の開始前や終了後に,ファシリテーター全員で話し合いの時間を持ち,

授業の進め方やルールに関する共通認識を持つことが大切です。   イ.授業のスケジュール管理   ウ.講義・実習のインストラクション

  (2)グループワークのプロセスの観察者・援助者としての役割   ア.ルールを徹底させる。一度出した指示は,ファシリテーター自身も必ず徹底する。   イ.全体の流れを常にチェックする。   ウ. グループワークにおいて,テーマに沿って,ワーク,実習,演習が効果的に進められるよ

う援助する。

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   エ. 議論の内容がテーマから逸脱したり,議論がうまく進まないような場合は,適度に介入して軌道修正を図る。

   オ.学生の意見に良く耳を傾け,持ち味や能力を引き出す。   カ.話合いの論点を時折確認し,必要に応じて振り返りの時間を作る。   キ.打ち解けた,発言しやすい雰囲気作りに気を配る。

  (3)グループへの介入の仕方    ファシリテーターは,必要と思われる場面でグループワークに介入します。介入のタイミングや仕方は,グループワークに大きな影響を与えます。介入に関しては,次の点を心がけてください。

   〔介入するタイミング〕    ア.受持ちグループを活性化させたい時    イ.気になる学生(無言,ルール無視等)がいる時    ウ.議論がうまく進まない状況で,きっかけが必要だと感じた時    エ.極端にテーマから逸脱した話題で話合いが進行している時    オ.終了時間を意識させたい時    カ.その他,介入が必要だと感じた時

   〔介入時に心がけること〕    ア.「待ち」の姿勢を心がけ,介入しすぎない。    イ.出しゃばらない。    ウ.持論を押しつけない。    エ.恥をかかせたり,懲罰的にならない。

2 学生との関わり方

 ①  常に参加者である学生を主体として考え,学生との触れ合いの機会を大切にして授業を進めてください。

 ②  特定の学生との議論は避けてください。また,特定のメンバーをひいきしたり,特別扱いをしないでください。

 ③  グループの中で,気になる学生(無言,ルール無視等)がいた場合には,適正な環境作りに配慮してください。

    例えば,全く発言しない(できない)学生に対して発言を促すのは,本来,司会進行役の学生の役割ですが,どうしてもうまく発言が導けない場合には,その学生が発言できるような機会作りをしてください。「ところで,今の発言について,~さんはどう思いますか?」

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3 グループへの関わり方

 ①  場の雰囲気を大切にし,常にリラックスした話しやすい雰囲気を作れるように配慮してください。ファシリテーターの振舞いも,その場の雰囲気に大きく影響します。

 ②  グループの「和」を重んじるあまり,反対意見を封じ込めることや,常に多数意見に従うことを強要したりしないでください。

 ③ 指導者ではなく,伴走者としてのスタンスを保つように心掛けてください。

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○ 全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」Q&A集(平成28年4月版)

1 授業の概要について

① 「自主創造の基礎1」の科目種別について 本学部では,「自主創造の基礎1」の科目種別について教養教育科目なのか専門教育科目なのか意見が担当する教員によって分かれています。改めて「自主創造の基礎1」はどのような性質を持った科目なのでしょうか?

⬇⬇回答: 全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」は,学生の学びの姿勢を大学入学までの受動的な態度(学習)から能動的な態度(学修)へ転換させることを狙いとしています。もちろん初年次教育は教養教育及び専門教育から切り離されるものではなく,相互にかかわりや接続をもっており,連動するものです。しかし,全学共通初年次教育はあくまで専門教育科目の前段となる基礎教育ではなく,『大学生としての基本的な学びの態度と技能』を育成することを目的として設計された教養教育科目になります。このことはガイドラインの 2ページ及び 3ページに記載されていますので確認してください。

② 学部独自の授業週における専門教育の基礎となる内容の取扱いについて ガイドラインには専門教育への基礎となる内容の記載がないが,第 8週から第 14週において学部で対応してもよいでしょうか?

⬇⬇回答: 質問①に対する回答で説明しているとおり,「自主創造の基礎1」は専門教育科目の前提となる基礎科目ではなく,大学生としての基本的な学びの態度と技能を修得するための教養科目であることが基本です。本ガイドラインでは入学した学部等にかかわらず日本大学に入学した学生が共通して修得すべき態度とスキルが全学共通項目として 8回分にまとめられています。レポートの書き方,テキストの読み方,ノートの取り方,図書検索の方法なども大学生としての基本的な学びのスキルですので,「自主創造の基礎1」で取り扱うべきかどうか検討しました。しかし,これらのスキルは専門分野による特異性がかなり強く,全学共通で扱うことはむしろふさわしくないと判断しています。 したがって,学部等に独自内容で授業をデザインすることが委ねられている第 8週から第 14 週については,本ガイドラインがカバーしていないレポートの書き方等の上記スキルについて,まずは触れていただくのが望ましいと考えます。

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2 授業の進め方について

③ 「自主創造の基礎1」の教育内容の時間配分について 「自主創造の基礎1」ガイドラインでは,各週の授業を 90分で行うことになっています。ところが本学部では,学生数,教員数及び講堂の収容人員などの関係で全ての内容を 90分で行うのが難しい状況です。ガイドラインは自由度が少ないように思いますがどうすればよいでしょうか?

⬇⬇回答: ガイドラインに記載されている時間配分は,あくまでも目安です。各学部の教育環境に応じて授業回数や授業手順を弾力的に決めることができます。ただし,「自主創造の基礎 1」は全学共通であることがこの科目の設置の基本的考え方ですので,一般目標(GIO),行動目標(SBOs)及び授業内容(方略と評価)についてはガイドラインを遵守して実施してください。このことはガイドラインの「ガイドラインの活用方法(2ページ)」に記載されていますので確認してください。

④ 学部独自の初年次教育の教科書や映像教材等の使用について 本学部では,「自主創造の基礎1」より先んじて学部独自で入学生の初年次教育に取り組んでおり,そのための教科書も学部で作成し授業で使用しています。「自主創造の基礎1」でも学部独自の初年次教育に関する教科書を使用してもよいでしょうか?

⬇⬇回答: 「自主創造の基礎1」の “全学共通部分 ”に関しては基本的にガイドラインに沿って実施することが求められます。学部独自に作成した教科書や映像教材等を使用するのは原則として第 8週から第 14週の学部独自部分の授業週に限られることを御理解願います。 なお,「自主創造の基礎1」の全学共通部分(すなわちガイドラインの内容)に関する各種質問や御相談には,学務委員会全学共通初年次教育検討ワーキンググループで対応させていただきます。

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⑤ 第2週「反転授業」の予習動画の視聴について 予習動画を視聴してこない学生が多く見られ,授業の進行に支障をきたすことが多々ありました。予習動画を視聴してこなかった学生に対しては,どのように対応すればよろしいでしょうか?

⬇⬇回答: まずは予習動画を視聴してくるよう学生に事前に周知徹底をしてください。未視聴の学生は授業でのディスカッションに参加できないことが想定されますが,このことは大学の学修における予習行動の必要性を学生自身に理解させる機会となり,さらに,それが第2週の行動目標の1つとなっています。なお,第 2週では副読本としてFD推進センターが発行している『日本大学 FDガイドブック- “ 自主創造 ” のための Learning Guide』を使用してもよいこととなっています。また,このことはガイドラインの「第2週 大学で学ぶとは反転授業の実践 2.日本大学で学ぶことの意味・意義,大学とは何か【このセッションの進め方の例】①(27 ページ)」に記載されていますので確認してください。

⑥ 「自主創造の基礎1」担当教員間の技能や認識の格差について 初年次教育を専門とする教員がいないため,教員の分野やスキル,意識にバラつきがあるが,どのようにしたらよろしいでしょうか? 担当教員同士の打合せなど改善に向けたコツが知りたいです。

⬇⬇回答: 「自主創造の基礎 1」は全学共通教育であるため,教員のスキルや意識は可能な限り等しく高いことが理想的であるといえます。しかし,我が国の高等教育界に初年次教育の専門家はいるようでいないのが現実ですので,専門家に頼ることはできません。むしろ,こうした科目を担当している教員はワークショップに参加したり,授業実践例からスキルやノウハウを習得したりすることによって,自らの授業をデザインする能力を高めようと努力しています。したがって,これまでに本部で開催した全学共通初年次教育セミナーに参加した教職員を中心に,各学部において定期的にワークショップやセミナーを開催するなどして対応していただくのが望ましいといえます。 なお,各学部でワークショップやセミナーを開催する際に学務委員会全学共通初年次教育検討ワーキンググループメンバーが支援・協力することも可能ですので事前に学務部学務課まで御相談ください。

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⑦ 自学部の学問分野と反転授業の予習動画との内容のギャップについて 反転授業の予習動画の卒業生インタビュー等の内容が自学部の分野に合っていないのですが,どのように取り扱ったらよいでしょうか?

⬇⬇回答: 新入生には日本大学○○学部に入学したということではなく,日本大学に入学したという大学への帰属意識を持ってもらいたいという意図が,全学共通初年次教育科目の設置に込められています。したがって,入学後の早い段階で,自学部にとどまらず自分とは異なる学部等の卒業生を知ることによって,日本大学のスケールの大きさや多様な価値観及び考え方の違いなどを知ることが重要であることを,この予習動画から読み取ってもらいたいと考えています。貴学部と異なる分野との対比なども意識して指導に当たっていただくと学生の視野が広がり,教育効果が期待されます。

⑧ 学生間のモチベーション格差とモチベーションが低い学生への対応について 学生の中で授業に対するモチベーションに大きなギャップがある。授業をどのレベルの学生に焦点を合わせたらよいのか分からない。

⬇⬇回答: モチベーションが低い学生は,中途退学や進級不可,卒業延期などの問題を生じる可能性が高いといえます。「自主創造の基礎 1」を実施するか否かにかかわらず,大学はこうした学生を早期に発見し,対処しなければなりません。したがって,少人数での初年次教育を行うことにより一人一人の学生に目が届くことから,早期にこうした学生を発見できることは逆にメリットといえます。 なお,対処法を考えるには,なぜ特定の学生はモチベーションが低いかという理由を理解しなければなりません。したがって,まずはそうした学生とよく話をして相手を十分に理解した上で具体的な方法を考えるという慎重な姿勢を持つことが大切です。あるいは,メンタルな側面が影響を及ぼしていることも考えられますので,学生相談室の手助けを得るのが必要な場合もあります。 また,アクティブラーニングを有効に授業に取り入れることにより,学生のモチベーションを高めるきっかけを作ることができます。

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⑨ 授業の少人数対応について 10名程度の少人数で実施するのが望ましいことは理解しているが,学部の規模により1クラス40名程度で実施せざるを得ない。また,一人の教員で学生一人一人の理解度を確認しながら授業を進行することが難しいがどうすればよいでしょうか?

⬇⬇回答: ある大規模文系学部では,1クラス最高 20 名で初年次教育を実施していますので,実例に照らすと,学部の規模が大きいからできないということはいえません。また,小教室がないことから少人数でのクラス分けができないということもいえません。この場合には,大教室に複数のクラスが同時に初年次教育を実施することで対応可能です(実際に,このようにして実施している小規模学部があります)。この方法は互いのグループの進捗状況が分かることにより,学生間で授業へのモチベーションを高めるという副次的効果が見込まれます。

⑩ 担当教員ごとの授業内容の違いについて 全学共通の内容を担保するためにガイドラインはあるものの,教員ごとに専門分野や取組も異なり,学生側からすれば授業内容が違うことが学生間で共有されてしまう。担当教員同士の打合せなど改善に向けたコツが知りたいです。

⬇⬇回答: これは初年次教育を全学共通で行うことの難しさの一つといえます。例えば,授業のヒントを得るために授業実践例の報告会を FD活動の一環として実施する。そうすることにより,ノウハウやスキルを担当者間で共有することができます。また,ワークショップ形式で,学部等の教員が一堂に会する場を設けて課題を浮き彫りにし,改善策を検討し合う機会を設けるのも効果的です。要するに,全学共通初年次教育を実施する際に出てくる諸問題を,個人で抱えるのではなく,みんなで改善策を考えるというオープンな姿勢で臨むことが肝要であるといえます。

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⑪ 第4週プレゼンテーションの資料提供について ガイドライン 48ページの5.模造紙を用いた視覚資料の作成方法の進め方の例として記載のある良い例と悪い例を学部で作成するのが難しい。良い例と悪い例を各2~3点提供していただけると助かります。

⬇⬇回答: 「自主創造の基礎1」では,全学共通のポスターの善し悪しの条件は規定してはいません。各学部でポスターの例示をお願いいたします。 この週では,ポスターを視覚資料としたプレゼンテーションの方法を修得します。とりわけ学生は,プレゼンテーションに用いられるポスター作成の在り方について体験から学ぶことになります。すなわち学生が自主的に資料作成を行い,グループ討議や振り返りを通じて,ポスターに求められる条件を考えます。その際に,各学部の教育方針に沿ったアドバイスやポスターの例示をしていただき,専門教育に接続する環境を整えていただければと思います。

3 授業の評価について

⑫ 成績評価について 学期末の成績評価の方法について知りたい。週ごとに点数を積み上げるのか,学期末に試験を課すのか,出席点での評価なのか。授業への参加態度も学生の性格によって分かりにくい。各週評価のポイントの項目があるが,元から優れている学生もいれば,成果物の質は低くても成長を感じられる学生もいる。

⬇⬇回答: 本教科では,週ごとの点数の積み上げや定期試験では評価できません。個々の学生の授業への積極的参加姿勢を最重要視します。それにはレポート発表やグループ発表の評価のみならず,意見発表の回数や関与の度合いも評価の対象とすることが行われます。これらの評価には必ず根拠資料が求められます。そこでガイドラインでは,学生としての学修への気づき,それに伴う学修スキル修得を評価対象とすることを以下のように提案しています。 「成績評価の根拠となる資料としては,毎回の振り返りシートからは自主的な学修姿勢などの態度・習慣,レポートからは,情報収集,分析,解釈,問題解決などの知識,プレゼンテーションからは,コミュニケーション技能などが挙げられます。このように知識,態度・習慣及び技能の各領域(3 domains)から総合的に評価します。なお,成績はS,A,B,C,Dで評価し,本授業科目の性格に鑑みGPA算出の対象外とします。」 いずれにしても,教員間での意見交換や適正な評価方法のすり合わせが必要であり,各学部において詳細な評価基準や評価マニュアルについて一任しています。

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○ 全学共通内容:概要一覧

第1週 スタートアップ P19

一 般 目 標 日本大学における全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」を受講するための知識,技能,態度を身に付ける。

行 動 目 標

1.「自主創造の基礎1」の学修教育目標を説明することができる。2.グループ学修の意義について説明することができる。3.コミュニケーションの必要性を説明することができる。4.コミュニケーション(情報提供・情報共有)をとることができる。

内 容

1.初年次教育とは何か2.全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」とは何か3.担当教員の自己紹介,学生の自己紹介4.学生の成長を測る評価5.次週授業案内

使用教材等

・『日本大学FDガイドブック-“自主創造”のための Learning Guide -』・反転授業オンデマンド教材「自主創造の基礎1」・参加シート・振り返りシート

第2週 大学で学ぶとは  反転授業の実践 P26

一 般 目 標  日本大学で学ぶための知識,技能,態度を身に付ける。

行 動 目 標1.大学の学びに予習行動が重要であることを理解できる。2.日本大学の教育理念・目的,日本大学の歴史を説明することができる。3.自分の“自主創造型パーソン”像をイメージすることができる。

内   容

1.導入2.日本大学で学ぶことの意味・意義,大学とは何か3.日本大学の教育理念・目的,“自主創造型パーソン”及び○○学部で学ぶことの意味・意義4.振り返り5.次週の授業案内

使用教材等・『日本大学FDガイドブック-“自主創造”のための Learning Guide -』・反転授業オンデマンド教材「自主創造の基礎1」

第3週 コミュニケーション P38

一 般 目 標 相手や状況に合ったコミュニケーションの手段を学び,人と関わるための聴く力を身に付けるとともに,自分と他人の見え方の違いに気付き,相手と共同して推論する知識・技能・態度を身に付ける。

行 動 目 標

1.コミュニケーションの基本要素を列挙し説明できる。2.相手の話し方の特徴に注意しながら聴くことができる。3.コミュニケーションにおける自分と相手の行動特性の違いを認識できる。 4.自分自身のコミュニケーションの傾向に気付くことができる。

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内 容

1.ワーク「相手の話を聴いて確認する」2.小講義「コミュニケーションの基本要素」3.振り返り4.次週授業案内(必要に応じて実施)

使用教材等

・ワーク配付資料(各セッションのねらいと進め方の例に記載のもの)・コミュニケーションの観察表,振り返りシート・メモ用紙・小講義用パワーポイント資料(コミュニケーションの基本要素)

第4週 プレゼンテーションの方法 P46

一 般 目 標 プレゼンテーションの意味を理解し,自らの意見,報告,理論等を積極的に発信し,相手に理解してもらえるプレゼンテーションの方法を身に付ける。

行 動 目 標

1.プレゼンテーションの意味と意義を説明できる。2. 用意された幾つかの課題の中から,話合いによって,グループごとにプレゼンテーション

の発表課題を決定する。3.プレゼンテーションの内容をレジュメに要約できる。4.プレゼンテーション用のポスター等の視覚資料を作成することができる。5.ポスターによるプレゼンテーションの方法を修得できる。

内 容

1.プレゼンテーションの意味と意義2.プレゼンテーションの題目の決定3.レジュメの書き方4.レジュメの作成5.模造紙を用いたポスター等の視覚資料の作成方法6.次週発表について

使用教材等  一般的なプレゼンテーションの書籍(抜粋)

第5週 プレゼンテーションの実践 P49

一 般 目 標 プレゼンテーションを実際に行うことで,相手に理解しやすいプレゼンテーション方法と効果的なポスターの作成方法を身に付ける。

行 動 目 標

1.プレゼンテーションに則したポスターを作成する。2.相手にわかりやすい話し方で,プレゼンテーションができる。3.自分の主張や考え方を,順序立てて説明することができる。4.相手にわかりやすいプレゼンテーションの仕方を修得できる。5.プレゼンテーションを正しく評価することができる。

内 容1.プレゼンテーションの例2.プレゼンテーションの実践3.プレゼンテーションの評価と採点集計

使用教材等  ―

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第6週 グループワーク~グループテーマの決定~ P51

一 般 目 標  グループワークの参加に必要な基本的な知識,技能,態度を身に付ける。

行 動 目 標

1.グループワークの手順を述べることができる。2.グループワークの役割を述べることができる。3.グループワークでの討議を行うことができる。4.グループワークの情報共有を行うことができる。5.グループワークの意義について説明できる。

内 容

1.グループワークについて2.グループ分け3.グループテーマの決定4.グループテーマの意見交換・討議5.レポートの作成

使用教材等  『日本大学FDガイドブック-“自主創造”のための Learning Guide -』

第7週 グループ発表,討論 P54

一 般 目 標  グループ発表での討論に参加する知識,技能,態度を身に付ける。

行 動 目 標

1.グループ発表資料を準備することができる。2.グループ発表の環境を説明することができる。3.グループ発表を行うことができる。4.グループ発表で質疑応答を行うことができる。5.グループ発表を評価することができる。

内 容

1.グループワークの発表,討論資料の事前準備2.グループ発表,討論環境の準備3.グループ発表4.グループ討論5.グループ討論の評価

使用教材等  『日本大学FDガイドブック-“自主創造”のための Learning Guide -』

第8週~第 14週:各学部等独自の内容

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第 15週(最終週) 総括~振り返り~ P57

一 般 目 標これまでの授業を振り返り,「自主創造の基礎1」で身に付けるべき知識,技能,態度の習熟度を確認することによって,「自主創造型パーソン(自ら求めて学び,問題を解決できる学生)」として自立した学生になる。

行 動 目 標

1.「自主創造の基礎1」の意義について説明することができる。2.修得した知識,技能,態度について適切に自己評価することができる。3.同僚が修得した能力を適切に評価することができる。4.学修は目標を設定して計画的に進めることが重要であることを説明することができる。5.カリキュラム作成手法を応用して自分の学修計画を立てることができる。

内 容

1.自己評価及び同僚評価2.自己評価に基づく議論3.カリキュラム作成手法に関する講義4.在学期間中の学修計画の立案

使用教材等

・「参加シート」(第 1週に記入したものと今回記入するもの)・プロダクト(個人ないしグループで作成したもの)・「自己評価点数記入表」・「同僚評価(ピア評価)シート」・「学修計画立案シート」

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○ 全学共通内容:授業実践要領

第1週 スタートアップ 年  月  日(  )

一般目標(GIO)

 日本大学における全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」を受講するための知識,技能,態度を身に付ける。

行動目標(SBOs)

1.「自主創造の基礎1」の学修教育目標を説明することができる。2.グループ学修の意義について説明することができる。3.コミュニケーションの必要性を説明することができる。4.コミュニケーション(情報提供・情報共有)をとることができる。

使用教材(参考文献)使用資材

・『日本大学 FDガイドブック-“自主創造”のための Learning Guide -』・反転授業オンデマンド教材「自主創造の基礎1」・参加シート・振り返りシート

時間 内容 方法 備考(教材等)

1.初年次教育とは何か ① 担当教員から開講の挨拶 ② 大学教育について簡単なアンケートを行う ③  なぜ,大学で初年次教育が必要なのかについ

て,アンケートの設問を使いながら解説する。

講義(10分)

『Learning Guide』を参考にしてから設問を作成。

30分

2. 全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」とは何か

 ①  配付資料又は動画教材を通じて,学長のメッセージ(本学の教育の特徴や意義)を伝える。

 ②  配付資料又は動画教材を通じて,日本大学の歴史について伝える。

 ③  本学における全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」の意義について解説する。

 ④ 学修方法の事例としてKJ法を紹介する。

講義(20分)

3.担当教員の自己紹介,学生の自己紹介 ①  担当教員から,まず,自己紹介の時間である

ことを説明する。 ②  担当教員が手始めに自己紹介した後,学生に

順次自己紹介をさせる。 ③ 挨拶で締めくくる。

演習(10分)

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60 分

4.学生の成長を測る評価 ① 個人の振り返り(参加シート) (1) 担当教員は,授業開始に当たり,参加シー

トを配付する (2) 学生は,参加シートに自分の考えや意見を

記入する。 (3)担当教員は,参加シートを回収する。 ② グループ学修の振り返り (1)「大学での学び」について意見交換を行う。 (2) 学生間で「大学での学び」について問題点

と問題解決について討議を行う。 (3)討論した結果をプロダクトにまとめる。 (4) 担当教員又は他のグループ参加者にプロダ

クトについて説明する。 (5)担当教員は,振り返りシートを配付する。 (6) 学生は,振り返りシートに意見や感想を記

入する。 (7)担当教員は,振り返りシートを回収する。

演習(40分)

90分

5.次週授業案内 ① 「反転授業」とは何か (1)反転授業の概要について説明を行う。 (2)視聴覚教材の使用方法を説明する。 ② 課題の提示 (1)次週の学修内容について説明する。 (2)次週の授業のため視聴する課題を提示する。

講義(10分)

□各セッションのねらいと進め方の例1.初年次教育とは何か

【このセッションのねらい】 大学における教育と高等学校までの教育との相違点を理解して,大学での学びは,社会人としての自主的な学修姿勢が必要であることに気付く。その上で,全学共通初年次教育科目の履修を通じて,学修技法を学ぶことの意義を理解する。

【このセッションの進め方の例】1. 大学教育における学修(目標,教授方法や成績評価等の用語)に関するアンケート用紙を机上に配付する。

  ※アンケートは,セッションのねらいなどを踏まえ,各学部等により作成しておく。2.学生に対し,アンケートに5分間で回答させる(無記名)。3.担当教員は,アンケートの結果について,学生から挙手あるいは発言させながら,解説を行う。4. 大学における教育には,社会人としての経験や知識が求められることを解説する。   高等学校までの教育との違い,大学における教育では課題探求プロセスを重視することを強調する。

  ※成人学習理論,デールの学習円錐などをスライド等で必要に応じて提示する。5.アンケート用紙を回収し,集計した結果は,次週の授業時に学生に対し配付する。

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2.全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」とは何か

【このセッションのねらい】 日本大学における全学共通初年次教育科目である「自主創造の基礎1」のラーニング・アウトカムについて理解する。 「自主創造の基礎1」における主な学修の技法として,小グループによる討論を通じ,課題探求を行うことの意義を説明する。

【このセッションの進め方の例】 講義として,日本大学における全学共通初年次教育科目の特徴であるグループ研修について説明を行い,後半では研修の標準的アプローチを紹介する(KJ法等)。

1. 『Learning Guide』又は反転授業用動画教材を用いて,日本大学に関する学長のメッセージを伝達することにより,現在の日本大学についての理解を深める。

2. 『Learning Guide』又は反転授業用動画教材を用いて,本学の歴史を学び,本学の教育理念・目的についての理解を深める。

3. 上記1と2から,日本大学における全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」では,“自主創造型パーソン”を育成するのに資する教育方針の下で行われることを解説する。

4. 「自主創造の基礎1」では,主にグループ学修を通じて,問題抽出・問題解決を図る作業が行われる。そこで,グループの意見集約・情報共有に用いられるKJ法について解説する。

 ※ KJ法の概要は,次のとおりである。   KJ法とは:川喜田二郎氏の考案による小集団で思考をまとめる方法   人数:6,7人から 10,11人程度

〔準備するもの(例)〕 ①  カード(あまり硬くない紙質のもの,大きさは適宜。裏に糊つきのラベルも川喜田研修所で

発売している。付箋紙を使用してもよい。)    1グループ 50枚程度。3枚つづり・ミシン目入りを用いる場合もあり,通常,これを人数

程度準備する。   文殊カード(中川米造氏考案)と称される。 ② フェルトペン(マジックインキ)  1グループ 3色セット人数分 ③ 模造紙(全紙大)           1グループ 2枚

〔会場設営〕 グループが作業机を囲んで討議できる場所であればよい。

 小集団の各参加メンバーが,課題に関する問題点(意見)をカードに記入して,集めた内容から概念グループごとに意見を集め,プロダクトを作成する手法である。

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3.担当教員の自己紹介,学生の自己紹介

【このセッションのねらい】 担当教員及び学生が相互に自己紹介及び他己紹介することを通じて,コミュニケーションを密に図り,緊張を解きほぐして活発に発言することができる。

【このセッションの進め方の例】1.討議しやすい机・椅子の配置を行う。2.ネームプレートに氏名を記入して胸のポケット等につける。3.担当教員から,まず,自己紹介の時間であること説明する。4.各自の自己アピールも含めて「30秒」など紹介時間を決める。5.担当教員から手始めに自己紹介を開始し,学生に順次紹介させる。6.「これからよろしくお願いします」と一同で挨拶する。7.次のグループ学修をするため,司会者,記録係,発表者などの各役割分担を決める。

4.学生の成長を測る評価

【このセッションのねらい】 「自主創造の基礎1」では,ラーニング・アウトカムの指標として,個人学修とグループ学修,それぞれの学びを通じた学生の成長を測ることが求められる。学生は,社会人の学びの習熟度として,実際に振り返り(リフレクション)シートを記入することで学修の実感を得ることを体験する。

【このセッションの進め方の例】1.個人の振り返り(初回の週と最終週のみ)   学生は,参加シートに「自主創造の基礎1」に参加するに当たり,どのような自分であるのか自己理解を行う(プレテスト)。   なお,第 15週の授業終了時に同じシートを記入することで,自分自身の成長を実感する(ポストテスト)。2.グループ学修の振り返り   スタートアップとして,グループ学修後の振り返りを行う。   その前提となる少人数でのグループ討議を行う過程で,問題点の抽出と解決方法の具体的な体験を通じて,コミュニケーション,グループ学修の方法を体験する。   初日では,前半に扱った日本大学の学修における全学共通初年次教育のニードをべースにして,例えば,「自主創造の基礎1を学ぶには」というテーマをKJ 法で取り組むなどのプログラムが考えられる。

〔手順〕KJ法 ①  設定されたテーマについて各自が思い付いたことをカードに書く。簡潔に,そして,分かる

よう書くように気を付ける。 ②  適当な数のカードができたら,それを分類する。この際,できるだけ既成の概念に従わない

ようにするため,KJ法では「島」を作るという。各自の前に並べたカードを,司会が一枚あて,読み上げるカードの内容に似ていると感じるカード(これを「志」を同じくするものという)を前に集める。

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 ③ まとまったカード群に,相談しながら,それらを最も適切に表現できるタイトルを付ける。   (これを「名札」という)どの「島」にも入れられなかった「孤独な」カードは重要である。 ④  名札の付いた「島」を模造紙上にそれぞれの相互関係を考慮しながら空間配慮し,貼り付ける。

この際,「孤独な」カードを忘れないように注意する。 ⑤ 多少遠くからでも分かるように,フェルトペンを使って説明やイラストを付けるとよい。 ⑥  模造紙に書かれた成果物について,発表を行い,担当教員又は他のグループからの質疑応答

を受ける。注意:できるだけ全員が討議に参加できるよう,司会者は配慮することが創造性を高める。

〔振り返り〕 ① 振り返りシートを配付する。 ② 学生は,授業を通じての振り返りを記入する。 ③  担当教員は,振り返りシートを回収して,コピー後に学生に返す(必要に応じて別の対応を

しても良い)。

5.次週の授業案内

【このセッションのねらい】 ここでは,反転授業の概要を理解するとともに,次週の授業の予習として,予習動画教材の学内での視聴方法を修得する。

【このセッションの進め方の例】1.スライドを使用し,反転授業における動画視聴による予習の意義について説明する。  ※各学部等において,スライドを作成しておく。2.実際にスクリーンに予習用動画のコンテンツの「目次について」を表示し,解説する。3.学内外における予習用動画の視聴方法について説明する。4.次週の授業内容を説明するとともに,第2週授業の予習として視聴するよう指示する。

■評価のポイント

 スタートアップとして,「自主創造の基礎1」の教育ニーズに対する気付きがあったのか,振り返り用紙の記載内容から評価する(参加シートも参考にする)。

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 「自主創造の基礎1」を学修するに当たり,社会人である自分を振り返りましょう。どのような意見や考えでも結構です。各設問の回答は,箇条書きでお願いします。

1 日本大学を希望した理由は何ですか。

2 今後,この授業がどのように役立つと思いますか。

3 あなたの良い点は何ですか。

4 学業以外で力を入れてきたことは何ですか。

5 卒業したらどのような社会人になりたいと思いますか。

日付        学生番号         氏名                    

「自主創造の基礎1」の参加シート (参考)

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 本日の授業は,ここで終了します。グループ学修に取り組んで,どのような感想や考えを持ちましたか。自身の振り返りのために,以下の設問に回答してください。 なお,回答は箇条書きでお願いします。

1 グループ学修の開始に当たり,どのようなことを考えましたか。

2 グループ学修を通じて,気が付いたことは何でしたか。

3 グループ学修の活動に貢献できたことは何でしたか。

4 グループ学修で難しかったと感じたことは何でしたか。

5 こうしたらよかったと思うことはありますか。

6 次週の授業では,どのように取り組もうと考えていますか。

日付        学生番号         氏名                    

グループ学修 振り返りシート(参考)

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第2週 大学で学ぶとは 反転授業の実践 年  月  日(  )

一般目標(GIO)

 日本大学で学ぶための知識,技能,態度を身に付ける。

行動目標(SBOs)

1.大学の学びに予習行動が重要であることを理解できる。2.日本大学の教育理念・目的,日本大学の歴史を説明することができる。3.自分の“自主創造型パーソン”像をイメージすることができる。

使用教材(参考文献)使用資材

・『日本大学FDガイドブック-“自主創造”のための Learning Guide -』・反転授業オンデマンド教材「自主創造の基礎1」

時間 内容 方法 備考(教材等)

5分

1.導入 ① グループ編成 ② あいさつ ③ 出欠確認 ④ 第1週授業内容の復習 ⑤ 今回の授業内容の説明

講義(5分)

25分

2.日本大学で学ぶことの意味・意義,大学とは何か ① 予習動画の視聴確認 ② 「参加シート」の配布,記入【項目 1.2】 ③ グループ内で議論し,意見を共有する。

演習グループ(20分)

65分

3. 日本大学の教育理念・目的,“自主創造型パーソン”及び○○学部で学ぶことの意味・意義

 ① 「参加シート」の記入【項目 3.4.5】 ② グループ内で議論し,意見を共有する。 ③  教室全体(グループ単位)で議論し,意見を共有する。

演習グループ(40分)

80分

4.振り返り ① 「振り返りシート」の記入 ② 「振り返りシート」の回収

演習(15分)

90分

5.次週の授業案内 ① 「コミュニケーション」の授業説明 ② 必要に応じて,次週授業の課題を提示

講義(10分)

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□各セッションのねらいと進め方の例1.導入

【このセッションのねらい】 グループによる学修技法を理解する。能動的な学修姿勢や態度を身に付ける。

【このセッションの進め方の例】 ①  学生は机・椅子を移動させて,グループごとに着席する。前の週に作成した名札をつけ,お互いに挨拶をし,グループ学修の準備をする。その際,教員は各学生の状態を観察し,必要に応じた指示をする。

 ② 教員は第1週の授業を振り返る(復習)。 ③ 教員は第2週の授業概要を説明し,学生が授業に積極的に参加しやすい雰囲気を作る。

2.日本大学で学ぶことの意味・意義,大学とは何か。

【このセッションのねらい】 ・日本大学の現在と歴史を知る。 ・日本大学で学ぶことの意味や意義を理解する。 ・大学とは何かを理解する。 ・グループ内でコミュニケーションが取れる。

【このセッションの進め方の例】 ① 教員は反転授業用予習動画の視聴確認を学生に対して行う。    本講義では,事前に予習動画を視聴してくることが前提である。未視聴の学生がいる場合は,『日本大学FDガイドブック-“自主創造”のための Learning Guide -』を参考にするよう,教員は学生に指示する。また,その機会を活用して,教員は大学での学修における予習(予習行動)の必要性も学生に理解させる。

 ② 教員は「参加シート」を配布し,【項目 1・2】を 5分間で学生に記入させる。 ③  学生は,記入した「参加シート」を用いて,日本大学の学生としてどのように活動したいかについて各グループ内で発表し,意見を共有する。

 ④  同様に,学生は,日本大学の歴史を知って発見したことについて,各グループ内で発表し,意見を共有する。

 ⑤  教員はグループ間を巡回し,グループ内での発表や質疑応答を活発化させるために,必要に応じて介入する。

 ⑥ 教員は日本大学の現在と歴史について解説する。

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3.日本大学の教育理念・目的,“自主創造型パーソン”及び○○学部で学ぶことの意味・意義

【このセッションのねらい】 ・教育理念である「自主創造」を理解する。 ・自らの“自主創造型パーソン”像をイメージできる。 ・日本大学での自分の学修を考える。 ・個人学修とグループ学修を通し,学修の実感を体験する。

【このセッションの進め方の例】 ① 学生は配布された「参加シート」の【項目 3・4・5】を 5分間で記入する。 ②  記入した内容は,最終的に教室全体でグループごとに発表するので,まずはグループ内で意見を共有しグループの意見をまとめるように,教員は学生に対して説明する(例えば,グループ内で司会役と記録役をそれぞれ1人決めて,グループ内での議論がしやすくなるように促す)。

 ③  教室全体でのグループ単位の発表は,「参加シート」の【項目 3・4・5】をひとつずつ取り上げても良いし,すべてを一括して取り上げても良い。各グループ内での議論の進捗状況や時間配分を踏まえて,教員が臨機応変に対応する。

4.振り返り

【このセッションのねらい】 反転授業の実践により,予習行動の必要性を理解する。

【このセッションの進め方の例】 ① 教員は「振り返りシート」を配布する。 ② 学生は今回の授業を振り返ってシートに記入する。 ③  教員は「参加シート」と「振り返りシート」を回収して複写保存し,学生に返却する(必要に応じて別の対応をしても良い)。

5.次週の授業案内

【このセッションのねらい】 次週の授業におけるコミュニケーションの進め方について理解する。必要に応じて,予習に必要な方法を説明する。

【このセッションの進め方の例】 担当教員は,次週の授業内容を説明する。

■評価のポイント

 反転授業の視聴(予習行動)の有無,「参加シート」や「振り返りシート」の記述内容から,「自主創造」や“自主創造型パーソン”について気づきがあったかについて評価する。

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反転授業シナリオ

Ⅰ 概要

1.はじめに 「自主創造の基礎 1」という授業の意義と目的について知る。

2.自主創造とは 自主創造の概念を,学祖・山田顕義を通じて学ぶ。

3.校友に見る自主創造の実践 自主創造の実践を,卒業生を通じて学ぶ。そして,自分が在学中にどのように過ごしていくかについて考えるヒントを得る。

4.日本大学の発展の軌跡と未来 学祖をはじめ,100 万人の卒業生による自主創造の実践の結果として,日本大学はめざましい発展を遂げ,現在に至っていることを把握する。

5.おわりに

Ⅱ 「2.自主創造とは」のシナリオ

1.自主創造のコンセプト

 まず,自主創造とはいかなる概念であるか。

 自主創造とは「自ら考え,自ら学び,自ら道を拓く精神」のことである。   ↓ 日本大学は,自分から積極的に社会に関わり,かつ,自主創造の精神を実践に移すことができる活力ある人間を育成するために,教育にとり組んでいる。

2.山田顕義と足跡

 次に,日本大学の学祖である山田顕義の足跡を振り返ることによって,自主創造について一歩踏み込んで考えてみる。

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(1)学祖の山田顕義とはどのような人物か―生い立ちと功績―

 学祖・山田顕義の生い立ちと功績はいかなるものであろうか。

 ・1844 年,長州藩(現,山口県)の藩士の長男として誕生。 ・藩士の子弟を教育する藩校明

めいりんかん

倫館に 13 歳の時入学。 ・ 1867 年,長州藩総隊長として長州・三田尻を出発し,1868 年の鳥羽伏見の戦いで指揮官として参戦,1868 年の明治維新の実現に大いに貢献した。

 ・ 引き続き新政府軍の海陸軍参謀として,1869 年に函館の五稜郭を攻め,戊辰戦争で功績を挙げた。

    ↓ ・ 1871 年 11 月,山田は理事官として岩倉使節団に加わり,欧米諸国へ派遣された(帰国は1873 年 6 月)。

 ・ 使節団派遣の目的は,諸外国の優れた制度を見聞・調査し,近代国家日本の建設に役立てること。

 ・ 特命全権大使の岩いわくらとも

倉具視み

を筆頭に,理事官,書記官,随行員,留学生など総勢 100 名を超える規模であった。

 ・ 使節団には,大日本帝国憲法を起草し,初代内閣総理大臣などの要職を歴任することになる伊藤博文,伊藤と共に憲法を起草し,後に初代日本法律学校校長に就任する金子堅太郎,新政府の参議として国家の建設と運営に尽力した木

き ど

戸孝たかよし

允など近代日本をリードするそうそうたるメンバーがいた。

 ・1885 年,内閣制度の発足に伴い成立した第 1次伊藤博文内閣で,初代司法大臣に就任。 ・1889 年に設立された日本法律学校の創立を主導した。

(2)山田をここまで駆り立てた動機は何であったか

 学業に優れ,武勇に秀でた山田は,幕末期に軍人として活躍しただけでなく,明治維新後の新政府では要職を歴任し,近代国家日本の建設に欠くことのできない人材となり,数々の功績をこの世に残してきた。何が山田をここまで駆り立てることになったのか。

 ・ 山田は藩校明倫館で学ぶことに加えて,14 歳の時に松下村塾に入門した。ここで,山田は吉よし

田だ

松しょういん

陰の薫陶を受けた。    ↓ ・ 吉田松陰は,攘夷派でもあり,開国派でもあった。しかし,異国好きではない。すなわち,精神的により優秀な者が,より劣等な野蛮人に負けるいわれはないという信念を堅持した上で,優れた武器を持っている野蛮人の長所は学ぶが,精神的に夷人である彼らを教化することが必要であるとして,国禁を犯して海外渡航を企てた。

  (出所)山岡荘八(1987)『吉田松陰[I],[II]』講談社    ↓ ・この企ては失敗し,国(長州)へ返され,投獄された。

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 ・ しかし,これで終わりではなかった。むしろ,ここからが教育者としての吉田松陰の始まりであった。

    ↓ ・松下村塾で教えた期間は 2年あまりのわずかな期間でしかなかった。

  (吉田松陰の教え) ・松陰は村塾の来塾者には,読書人ではなく実践家たることを強く求めた。  (出所)海原徹(1990)『吉田松陰と松下村塾』ミネルヴァ書房,161 頁 ・そのため,「志を立てて以て万事の源と為す」というように,志の重要性を塾生に説いた。 ・ 山田が 15 歳のときに,松陰は人生の教訓を記した扇を贈った。その冒頭には,やはり志を立てることの重要性が記されていた。

  →扇に書かれた教訓

 このように,志を立てるならば,人とは異なる高い志を立てよという松陰の教えは,独自性,自主性を尊ぶ自主創造の気風の原点といえる。    ↓ ・ 吉田松陰の薫陶を受けた者の多くが明治維新の実現に献身的に貢献したか,あるいは,近代国家の国造りのための要職に就いた。

 ・ 例えば,久く

坂さか

玄げんずい

瑞(吉田松陰に長州一の俊才と言われたが,禁門の変で自刃),高杉晋作(幕府による長州征討に打ち勝ち,大政奉還を決定づけた立役者),伊藤博文(大日本帝国憲法を起草,初代内閣総理大臣,初代枢密院議長,初代貴族院議長などを歴任),山

やまがたありとも

県有朋(内閣総理大臣,内務大臣,司法大臣(第 7代)を歴任)など明治維新の実現や新政府の黎明期に必要不可欠な働きをした者が少なくない。

 ・山田顕義も松陰の薫陶を受け,献身的に国造りに邁進した。    ↓ 要するに,山田を含めた吉田松陰の門下生は,1859 年に松陰が処刑された後も,彼の分身として高い志を持って活躍し続けた。それが近代国家日本の成立として結実した。

3.山田顕義に見る自主創造

 幕末から新政府の黎明期にわたる時期の山田の活躍を通じて,彼の行動のどこに自主創造の精神を見ることができるのか。

立志は特異を尚たっと

ぶ俗ぞくりゅう

流ともに議ぎ

し難がた

し身しん

後ご

の業ごう

を思わず且しばら

く目前の安きを偸ぬす

む百年は一瞬のみ君子素

餐さん

する勿なか

志を立てるなら人と異なることを恐れるな。世俗の意見に惑わされてもならない。死んだ後のことを思い煩うな。目先の安楽は一時しのぎと知れ。百年は一瞬に過ぎない。君たちはいたずらに時を過ごすことがないように。

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(1)欧米諸国歴訪を通じて新生日本が補強すべき課題を察知した ・ 近代国家はどうあるべきか,欧米諸国を歴訪することによって,それを自分の目で確かめようとした。1873 年 6 月の帰国後,「建白書」を太政官(新政府の最高行政機関)に提出し,日本の将来に必要なことは何かについて,いち早く提言した。

 ・ その建白書には,①敵兵よりも知識において優れた人民(兵卒)を育成することが重要であるとして教育の重要性を指摘し,②欧米諸国の法律と我が国人民の慣習の法とを斟酌した上で,国法の条目を審議する必要があるとし,法律制定の必要性を説いた。

 ・ さらに,この建白書には,近代化を推し進めるあまり,日本の古来の伝統や風習が軽んじられている現状に警鐘を鳴らしている。このような日本の伝統・文化などを重要視する考え方は,その後も変わることなく,日本法律学校創立という形で開花することとなる。

  →「建白書」には次のように記されている。

     「祖宗千年ノ国典ヲ改革シ古来慣習ノ礼節ヲ廃止シ事物道理ノ其当否ヲ知ラスシテ妄ニ之ヲ興廃スル等,又中外古今未曾有ノ珍事ニシテ萬国挙テ怪視スル所ナリ」

    (出所)「山田顕義建白書」

(2)司法省幹部そして初代司法大臣として法典編纂に尽力し,近代日本の建設を主導した ・ 1874 年には司法省幹部である司法大

たいふ

輔(次官)に,1883 年に司しほうきょう

法卿(長官)にそれぞれ就任し,1885 年に初代司法大臣に就任した。

 ・ 1887 年に山田は法律取調委員会委員長を兼務し,自ら民法,商法,民事訴訟法などの草案審議にあたった。建白書で力説した法律制定について,最高責任者として献身的に関わった。その取り組みは並大抵のものではなく,公務終了後も夕食を取りながら職務に没頭するほどの情熱の込めようであった。

(3) 日本の伝統と尊厳をたっとぶ近代日本の礎となる有為な人材を継続して輩出するための教育機関として日本法律学校の設立に尽力した

 ・ 諸法律の整備を急いでいた当時の日本では,民法はフランス人のボアソナードが,商法はドイツ人のロエスレルがそれぞれ原案起草にあたった。1889 年になると,大日本帝国憲法が整備され,民法や商法も翌年の公布に向けて整備が進められていた。

 ・ この時,山田顕義らは,日本に諸法典が整備された今日,海外の法律だけではなく,日本の伝統・文化・慣習などを踏まえた日本法律を教授する学校の創立を計画した。そこで,この趣旨に共鳴する何人かの同志と共に,1889 年に日本法律学校を創立した。

 ・ これは,欧米の新たな考え方を学ぶことの必要性は認めつつも,それに盲従しない,日本の伝統と尊厳をたっとぶことの重要性を教育面から実現したいという強い意志の現れであった。

    ↓ 山田のこうした足跡を振り返ると,近代日本としてなすべき喫緊の課題として,欧米視察からの帰国後に提出した建白書に自らが記した二大事項(すなわち,教育の重要性と法律制定の必要性)を,山田は 49 年の生涯の中で着実かつ確実に実現させた。 近代日本が必要なものは何かを欧米視察の中で考え,帰国後その経験と体験に基づいて日本

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がとり組むべき施策として具体的に提言し,自らそれを実践した。本学の教育理念である自主創造を真っ先に実践したのはまさに学祖である山田顕義自身であった。 我々はここに自主創造の真髄を見ることができる。   ↓ この自主創造の精神は,学祖である山田顕義に留まらず,歴代校長や総長も実践してきた。 ・ 初代校長の金

かね

子こ

堅けん

太た

郎ろう

は,大日本帝国憲法の起草を初代内閣総理大臣の伊藤博文らと共に行った。さらに,1904 年に勃発した日露戦争では,日本に有利になるように戦争を終結させるために当時の米大統領のルーズベルトに働きかけた。これらは,日本が国際社会で認知され,欧米諸国と対等に扱われるための下地作りとして極めて大きな貢献であった。

 ・ 第 2 代校長・初代総長である松まつおかやすこわ

岡康毅は,山田顕義急逝後に廃校の危機に瀕していた日本法律学校を,大学令によって大学として設置認可を受けることができるまで再興させた。そして,第 3代総長の山

やまおかまん

岡萬之の

助すけ

は,1899 年に日本法律学校を卒業し,1906 年にドイツに留学し,刑事訴訟法の研究に従事した。帰国後は本学の教授に就任し,教育研究に尽力した。

    ↓ このように,本学関係者も,近代国家の建設のために自ら参画するか,あるいは,そのために求められる有為な人材を育成するために,確固たる信念を持って教育に当たった。こうして,学祖・山田顕義の遺志は現在に至るまで脈々と受け継がれているのである。 次に,インタビューを通じて,自主創造の実践を最近の本学卒業生に見ていく。

Ⅲ 「3.校友に見る自主創造の実践」の質問項目

 自主創造の実践を,卒業生を通じて学ぶ。そして,自分が在学中にどのように過ごしていくかについて考えるヒントを得る。

1.基本的な質問事項

 ・入学時,何か明確な目的意識がありましたか。 ・いつ現在の職に就こうと思いましたか。 ・そう思うようになったきっかけは何ですか。 ・何のためにそれをしようと思いましたか。 ・その職の意義は何ですか。 ・ その職に就こうと思った時,ご自身に足りないもの(たとえば能力やスキルなど)はありましたか。

 ・自分に足りないものを補うために,どのような取り組みをしましたか。 ・その職にはスムーズにつくことができましたか。 ・目的実現まで気力を維持することができた原動力は何ですか。 ・ 現在の職についてから,何らかの困難に直面したことはありますか。もしあったならば,それをどのように克服しましたか。

 ・現在の目標は何ですか。それについて何らかの取り組みをしていますか。

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2.質問の趣旨

 インタビューでは,いくつかの要素に分解した自主創造の概念に基づいて,校友(卒業生)はいかに考え,行動したのかについて浮き彫りにしようと努めている。

Ⅳ 「4.日本大学の発展の軌跡と未来」のシナリオ

 一時は廃校の危機に瀕した日本法律学校が,我が国屈指の総合大学に発展した経緯を簡単に振り返ってみる。

 ・大日本帝国憲法が発布された 1889 年に,日本法律学校(現,法学部)が創立された。 ・1892 年,学祖山田顕義死去 ・1893 年,第 1回卒業式。廃校問題が浮上。 ・1896 年に東京の神田三崎町に校舎が建設された ・1901 年,高等師範科が設置される(→現,文理学部) ・1903 年,日本大学と改称する ・1904 年,商科が設置される(→現,経済学部ならびに商学部)    ↓  こうして,明治期に本学は総合大学への第一歩を踏み出した。

 ・1920 年,「大学令」による大学として設置認可を受ける ・同年,高等工学校が設置される(→現,理工学部) ・1921 年,美学科が設置される(→現,芸術学部) ・同年,東洋歯科医学専門学校を合併し,専門部歯科を設置(→現,歯学部) ・1925 年,専門部医学科が設置される(→現,医学部) ・同年,日本大学専門学校を大阪に設置(→現,近畿大学) ・ 1943 年,農学部が設置される(→ 1951 年に東京獣医畜産大学を合併して,農獣医学部(1995年,生物資源科学部に改称)となる。)

    ↓  こうして,本学は 1945 年の終戦前に既に私立屈指の総合大学として発展していた。

 ・1946 年,専門部工科を福島県へ移転(→現,工学部) ・1948 年,通信教育部が設置される ・1950 年,短期大学が設置される(→現,短期大学部) ・1952 年,工学部に薬学科,工業経営学科を増設(→薬学科は現,薬学部,工業経営学科は現,生産工学部としてそれぞれ発展) ・1971 年,日本大学松戸歯科大学が設置される(→現,松戸歯学部) ・1978 年,国際関係学部が設置される

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 ・1987 年,薬学部が設置される(→理工学部薬学科から独立) ・2016 年,危機管理学部とスポーツ科学部が設置される    ↓  このように,日本大学は学問の発展と社会の要請に従って拡大してきた。 ・教育組織:16 学部 87 科,短期大学部 5学科,通信教育部等 ・教職員数:7000 名以上 ・学生数(学部,大学院,短期大学等):約 8万人     ↓ これまでの日本大学の発展は,学祖・山田顕義をはじめとした本学関係者の自主創造の賜であった。 日本大学の未来は,このビデオを視聴している 1年生の自主創造の実践にかかっている。

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授業参加シート(例)

年   月   日

学生番号 氏 名

1 あなたは日本大学の学生としてどのような学生生活を送りたいですか(学業,課外活動等)。

2 日本大学の歴史を知って,あなたに何か新しい発見がありましたか。

3  あなたのこれからの大学での学びと日本大学の教育理念・目的には,何らかの関わりが出てくると思いますか。

4 もしあるとするならば,これまでのあなたの「自主創造」的な活動はどのようなものでしたか。

5 あなたは,在学期間中や卒業後,どのような“自主創造型パーソン”になることをめざしますか。

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振り返りシート(例)

年   月   日

学生番号 氏 名

1  反転授業(事前に視聴した予習動画に基づくグループ学修)に取り組んでみた感想はどのようなものですか。

2 グループ学修で自分の考えを十分に伝えられましたか。

3 グループ学修で他者の意見を的確に理解できましたか。

4 今回の授業を受けることによって,どのようなことに気付くことができましたか。

5 次回の授業では,どのように取り組もうと思いますか。

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第3週 コミュニケーション 年  月  日(  )

一般目標(GIO)

 相手や状況に合ったコミュニケーションの手段を学び,人と関わるための聴く力を身に付けるとともに,自分と他人の見え方の違いに気付き,相手と共同して推論する知識・技能・態度を身に付ける。

行動目標(SBOs)

1.コミュニケーションの基本要素を列挙し説明できる。2.相手の話し方の特徴に注意しながら聴くことができる。 3.コミュニケーションにおける自分と相手の行動特性の違いを認識できる。 4.自分自身のコミュニケーションの傾向に気付くことができる。

使用教材(参考文献)使用資材

・ワーク説明配付資料(セッションのねらいと進め方を記載したもの)・コミュニケーションの観察表,振り返りシート・メモ用紙・小講義用パワーポイント資料(コミュニケーションの基本要素)

時間 内容 方法 備考(教材等)

40分

1.ワーク「相手の話を聴いて確認する」 ① グループ分けと概要・ルール説明 ② A,B話合い,C,D観察 話合いの 2人は,あるテーマについてルールに従って話をする。観察者は,話し合っている 2人を観察し,観察項目に沿ってシートに記入する。 指示があったら,話と観察をやめて,今の体験を振り返り,気付いたことをメモする。メモと観察記録に基づいて,4人で話し合う。 ③ C,D話合い,A,B観察 話合いの 2人は,あるテーマについてルールに従って話をする。観察者は,話し合っている 2人を観察し,観察項目に沿ってシートに記入する。 指示があったら,話と観察をやめて,今の体験を振り返り,気付いたことをメモする。メモと観察記録に基づいて 4人で話し合う。

ワーク(10分)

(15分)

(15分)

(15分)

(15分)

4名ずつのグループ編成ワーク説明配付資料観察表メモ用紙

70分 2.小講義「コミュニケーションの基本要素」 言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション,傾聴とは(「聞く」と「聴く」の違い)など。

講義(10分)

パワーポイント資料+ハンドアウト

3.振り返り 振り返りシートで自己評価を実施する。

(10分)振り返りシート

90分 4.次週授業案内(必要に応じて実施) (0分)

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□各セッションのねらいと進め方の例1.ワーク「相手の話を聴いて確認する」

【このセッションのねらい】 対面での話合いを通して,コミュニケーションにおける聴くことの重要性に気付く。相手の話し方の特徴に注意しながら聴く力を養うとともに,観察者のフィードバック等により,自分自身のコミュニケーションの傾向に気付かせる。

【このセッションの進め方の例】ワークの実施 ※話し合いのテーマについては,各学部等であらかじめ決定しておく。〔手順〕 ① 4人ずつのグループに分ける。話し合う人(A,B),観察する人(C,D)を決める。 ②  A,Bは,あるテーマについて,下に記載したルールに従い話をする。C,Dは,A,Bの

様子を観察し,観察用シートに記入する。ルールが守られているかどうかについてもチェックする。

 ③ 指示があったら,話と観察をやめて,今の体験を振り返り,気付いたことをメモする。 ④ メモを基にして,気付いたこと,今のワークの中で起こっていたことを 4人で話し合う。   話合いのスタートはCから。 ⑤ 話し合う人(C,D)と観察する人(A,B)を交代して,上記手順②~④までを行う。   ※発言のテーマについては,各学部等で決定する。

〔ルール〕 ①  最初,AさんがBさんに対してテーマについて言いたいと思うことを話す。 ②  Aさんの話が終わったら,聴き手のBさんは,Aさんが言わんとしたことを,なるべく自分

の言葉に置き換えて,「Aさんは・・・・ということを言いたいのですか?」というように,Aさんに対し確認する。(CさんとDさんは,評価表を基に観察する)

   ※ 確認する際には「Aさんは,・・・・と言われたんですね。」「Aさんは,・・・ということを聴きたいのですか?」というように,相手の名前をつけながら,また,その相手が言いたいことなのか,質問したいことなのか,についても明確にする。

 ③  BさんがAさんに確認したら,Aさんは,Bさんの確認した内容が自分の言いたかったことと一致しているときは「はい」と言い,違うときは「いいえ」と言う。

   ※ これは妥協せず,少しでも言いたかったことと違っていたら,思い切って「いいえ」と言うこと。Yes,No の意思表示がはっきりすることで,話し手の問題も,聞き手の問題も明確になっていく。

 ④ Aさんが「はい」と言ったら,今度はBさんが自分の言いたいことをAさんに話す。 ⑤  Aさんが「いいえ」と言ったら,Bさんはもう一度言い直してみる。そこで,Aさんが「はい」

と言えば,Bさんに発言権が移り,Bさんが自分の言いたいことをAさんに話す。   ※ しかし,Aさんにもう一度「いいえ」と言われた場合は,Aさんが自分の言いたいことを

もう一度Bさんに話してからでないと,Bさんに発言権が移らない。   ※ つまり,Aさんが「はい」と言ってはじめてBさんは発言権を得ることになる。ただし,

2回「いいえ」と言われた場合は,Aさんに再度話してもらった上で,Bさんに発言権が移る。

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2.小講義「コミュニケーションの基本要素」

【このセッションのねらい】 コミュニケーションの基本要素に関する知識を修得し,ワークで得たコミュニケーション力を知識の面から支える。

【このセッションの進め方の例】 パワーポイント教材を用いて小講義を実施する。

3.振り返り

【このセッションのねらい】 振り返りシートにより,コミュニケーションにおける聴くことの重要性をどの程度認識できたか(評定尺度),観察者のフィードバック等により,自分自身および相手のコミュニケーションの傾向に気付いたか,今後の課題を認識できたか(自由記述)を確認する。

【このセッションの進め方の例】 振り返りシートを用いて,自己評価を実施する。

■評価のポイント

 ①自分と相手のコミュニケーションにおける特性の違いを認識できたか。 ②自分自身のコミュニケーションの傾向について,気付くことができたか。 (振り返り評価表を用いて評価する)

    発言権をもらったBさんは,Aさんに対してテーマについて言いたいと思うことを話し,それに対して,Aさんがルールどおりに確認していく。

 ⑥  AさんとBさんのセッションが終り,4人での話し合いが終わったら,今度はCさんとDさんが同じセッションを行い,AさんとBさんは,評価表を基にそれを観察する。

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コミュニケーションの観察表

名 前

(1)目の動き  (まなざしの方向等)

(2)声の調子や話す速さなど

(3)姿勢や表情など

(4)ジェスチャー  (身振り,手振りなど)

(5) 感情(気持ち)の表現

(6)雰囲気  (緊張,堅さ,解放,  なれなれしさなど)

(7)その他

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相手の話を聞いて確認する 振り返り

1 今日のワークの中で,あなたは,

 ① どのくらい相手の話に集中できましたか?

 ② どのくらい相手の話し方に注意して聴くことができましたか?

 ③ 相手が伝えたいことを,どれくらい自分の言葉に置き換えて確認できましたか?

2  今の授業のコミュニケーションにおいて,自分と相手とではどのような特徴(特性)の違いがありましたか?

3 他者と話合いをする場面で,今後の課題としたいことは何ですか?

1 2 3 4 5

できなかった 十分できた

1 2 3 4 5

できなかった 十分できた

1 2 3 4 5

できなかった 十分できた

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《担当教員用参考資料》

1 コミュニケーションの定義

 2名以上の人間の間で,言語,準言語,非言語を媒体として,少なくとも1名が意識的にあるいは無意識的に何らかの働きかけをしているか,あるいは,他の人から影響を受けている状況(準言語:声の大きさ,イントネーション,言葉の明瞭さ)。

 非言語的コミュニケーションとは?:   人間は,言葉を使い互いの感情や意思を伝えあってもいるが,「目は口ほどにものをいう」といった諺にも示されているように,視線,身振り手振り,顔の表情などのほうがより重要な役割を担っていることもある。言語によらないコミュニケーション全般を非言語コミュニケーションという。具体的には,身振り手振り,視線,ジェスチャー,身に付けているもの,髪型,人との距離,うなずき,あいづち,目線,姿勢など。

2 「聞く」と「聴く」の違い:「聴く」ってどういうこと?

 聞く:入ってきた音を感じ取る。英語の hear に相当。 聴く:意図的に注意を向けて聞く。英語の listen に相当。

 傾聴とは  人の話をただ聞くのではなく,注意を払って,より深く,丁寧に耳を傾けること。  相手の言葉を耳で聴くのではなく,相手のこころをしっかり受け止める。

 ① 傾聴のポイント  ・相手が話しやすいような聴き方を心掛ける。  ・相手の意見を丁寧に集中して聴く。  ・相手の隠れた思いを聴く。  ・「でも・・・」などと,話の腰を折ったり,思い込みや先走り批判をしない。  ・相手の言い足りない部分を理解するように努力してみる。  ・相手の話し方の特徴に注意しながら聴いてみる。  ・ 「間をおく」「うなづく」「顔や目の表情」で聴いていることを伝え,相手の感情を受け止めよ

うとして聴く。

 ② 傾聴の要素  共感:話し手の感情に関心を持って受け止め,きちんと反応する (同情とは違う) 。  受容:ありのままを受け入れる。相手の価値観や人生観を大切にする。     自分の考えやアドバイスを控える。  支持:悩みや不安に 「誰でもそうですよ」 などと支持することで,勇気を与える。

「自主創造の基礎1」 第3週 コミュニケーション 授業内容

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 傾聴力は経済産業省が“職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事する上で必要な基礎的な能力”として提言している「社会人基礎力」の要素も含まれている。

3 『閉じた質問法』と『開いた質問法』とは。

 相手に質問をする方法としては,『閉じた質問法』と『開いた質問法』の 2つがある。 コミュニケーションにおいては,『閉じた質問』と『開いた質問』では得られる内容や情報量も違うので,使い分ける事が重要である。

閉じた質問:「はい」「いいえ」や「限定された答え」が返ってくるような質問。【特徴】 ① 話の苦手な人でも,答えやすい。 ② 誰にでも出来,日常的にもよく使われる。 ③ 質問の仕方で答えが変わってくる。 ④ 一方的で話のキャッチボールはむずかしい。 ⑤ 事務的になりがちで感情が伴わない。 ⑥ 相手の気持ちを深く知るのは困難である。

開いた質問 :「どうして/どのように/どんな~」など相手に自由な応答を促す質問。【特徴】 ① 話したいと思うことを自由に話せるので,話を聴いてもらったという実感が得られる。 ② 自分で気付いていない気持ちや感情に気づく事ができる。 ③ 話を要約する,要点を掴むなど,話し手も聴き手もある程度のスキルが必要である。 ④ 話が苦手な人には答えにくい。 ⑤ 信頼関係が出来ていないと話したいことが何だったのか見えないまま終わってしまうこともある。

4 確認―効果的な繰り返しを実践してみよう

 繰り返しの重要性  ミラーリング効果:話を整理して繰り返し,それを鏡のように確認してもらう。  「あなたの考えは~なのですね?」

       ↓   「そうか,こんなことが言いたかったのか」「そうだ,こんな気持ちがあったんだ」と話し手が気付く。 ちゃんと聴いてくれていたのだという安心感が沸いてくる。

  自分の話が伝わっているなと思うと,いきいきと明るく,嬉しそうな表情になる。

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5 まとめ―コミュニケーションはどのようなことに繋がるのか。

 ① 一人一人が自分らしさに気付いていく。 ② 「自分が自分であっていいんだ」と感じることができるようになる。   =他の人もあるがままであっていいという他者の尊重。 ③ 「いま,自分はこうありたい」を感じ取り,自分らしく成長していく。 ④ 自分と他者を尊重する関係作りと協働を実現する。 ⑤ 他の人が体験から学ぶことを支援する。

 コミュニケーションでは,傾聴的な態度を心がけ,相手を言語的,非言語的によく観察したポイントに焦点を当てながら聴くことを心掛ける。

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第4週 プレゼンテーションの方法 年  月  日(  )

一般目標(GIO)

 プレゼンテーションの意味を理解し,自らの意見,報告,理論等を積極的に発信し,相手に理解してもらえるプレゼンテーションの方法を身に付ける。

行動目標(SBOs)

1.プレゼンテーションの意味と意義を説明できる。2. 用意された幾つかの課題の中から,話合いによって,グループごとに発表課題を決定する。

3.プレゼンテーションの内容をレジュメに要約できる。4.プレゼンテーション用のポスター等の視覚資料を作成することができる。5.ポスター等の視覚資料によるプレゼンテーションの方法を修得できる。

使用教材(参考文献)使用資材

 一般的なプレゼンテーションの書籍(抜粋)

時間 内容 方法 備考(教材等)

10分

1.プレゼンテーションの意味と意義 担当教員がプレゼンテーションの意味と意義について講義する。

講義(10分)

20分

2.プレゼンテーションの題目の決定 グループ内での役割を決める。決まらない場合にはファシリテーターがフォローする。

 グループごとに,そのグループの共通題目を話合いによって,次から選ぶ。プレゼンテーションの題目: ・大学で学問以外で学びたいこと ・○○学科を選んだ理由 ・卒業後に就きたい職業 各自が共通して持つ関心事を選ぶ。または,各グループで,全員が興味を持ち,学科に関係なく議論できるテーマを決めても良い。

グループワーク(10分)

35分

3.レジュメの書き方 担当教員がプレゼンテーションの内容を要約するレジュメの書き方を講義する。

講義(15分)

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60 分

4.レジュメの作成 各学生がそのグループで選んだ題目に従って,自分のプレゼンテーションの内容を A4用紙 1枚のレジュメにまとめる。

個人ワーク(25分)

80分

5. 模造紙等を用いたポスター等の視覚資料の作成方法

 担当教員が模造紙等を用いたポスター等の視覚資料の作成方法のポイントを解説する。

講義(20分)

90分

6.次週発表について グループで,司会,発表順番を決定する。 各学生は,次週までにポスター等の視覚資料(A2用紙 1枚程度)を作成する。

グループワーク(10分)

□各セッションのねらいと進め方の例1.プレゼンテーションの意味と意義

【このセッションのねらい】 プレゼンテーションとは,発表,報告,提案等を口頭で発表し,相手に伝えることであり,自分の意見や主張,研究成果を相手に理解してもらうことが目的であることを理解する。

【このセッションの進め方の例】 学会等での自分のプレゼンテーションでの経験や普段行っている講義など,プレゼンテーションの実際を織り交ぜながら,学生にプレゼンテーションの意味・意義や重要性を教授する。

2.プレゼンテーションの題目の決定

【このセッションのねらい】 話合いによってプレゼンテーションの題目を決めることで,コミュニケーションの実践を経験し,議論へ積極的に参加する姿勢と,グループとしての結論へ導く過程を身に付ける。

【このセッションの進め方の例】 各グループの学生が積極的に発言し,また,学生全員が発言するように促す。プレゼンテーションの題目の決定に対してある程度のヒント等を与えるなどして,時間内に題目が決まるように導く。

3.レジュメの書き方

【このセッションのねらい】 プレゼンテーションの内容を簡潔に分かりやすくまとめる方法を理解する。また,レジュメを作成することで,自分の考えをまとめ,分かりやすいプレゼンテーションの流れを把握する。

【このセッションの進め方の例】 講演会や学会発表等のために自分で作成した実際のレジュメを配付し,理解されやすいレジュメの流れを説明し,自分の考え方をまとめ,簡潔な文章にまとめる方法を指導する。

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4.レジュメの作成

【このセッションのねらい】 プレゼンテーションの題目に従ってレジュメを作成できるようにする。また,プレゼンテーションの流れに沿って,自分の考え方を簡潔にまとめる能力を身に付ける。

【このセッションの進め方の例】 各学生がプレゼンテーションの題目に従ってレジュメを作成できるよう,個別に進捗を把握する。遅い学生に対して題目に対する考え方を聞くなどして,学生の考えがまとまるよう個別に指導する。

5.模造紙等を用いた視覚資料の作成方法

【このセッションのねらい】 ただ見せるだけのポスターとは異なり,プレゼンテーションを行うために効果的な視覚資料の作成方法を学び,一人で視覚資料を作成できるようにする。

【このセッションの進め方の例】 模造紙を用いた視覚資料の例を2~3点見せることで,見やすく,分かりやすい視覚資料の書き方を指導する。また,悪い例を見せることで,効果的な視覚資料とは何かを理解させる。

6.次回発表について

【このセッションのねらい】 学生同士の話合いによって司会を決定し,発表順序を決めることで,コミュニケーションの実践を経験し,積極的に議論に参加する態度を身に付ける。

【このセッションの進め方の例】 各グループの学生が積極的に発言し,学生全員が発言するように促す。司会者が決まらない場合は,積極的な学生が担当するように促す。発表順が決まらない場合は,学生番号順とする。

■評価のポイント

 レジュメが順序立って分かりやすくまとめられているか。レジュメが正しい日本語で書かれているか。グループワークにおいて,積極的に発言し,グループの意見を結論に導くことに貢献したか。

■留意点 1 プレゼンテーションの課題については,事前に調べておくよう学生に指示する。 2 終了しない場合には,2週(回)にわたって実施することも可。 3 受講者数が多い場合には,サブファシリテーターなどを手当てする。

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第5週 プレゼンテーションの実践 年  月  日(  )

一般目標(GIO)

 プレゼンテーションを実際に行うことで,相手に理解しやすいプレゼンテーション方法と効果的なポスターの作成方法を身に付ける。

行動目標(SBOs)

1.プレゼンテーションに則したポスターを作成する。2.相手に分かりやすい話し方で,プレゼンテーションができる。3.自分の主張や考え方を,順序立てて説明することができる。4.相手に分かりやすいプレゼンテーションの仕方を修得する。5.プレゼンテーションを正しく評価することができる。

使用教材(参考文献)使用資材

 ―

時間 内容 方法 備考(教材等)

10分

1.プレゼンテーションの例 担当教員が学生全員に対して,パワーポイント等を用いて自分の研究内容について 5分程度のプレゼンテーションを行う。 学生は,担当教員のプレゼンテーションを聴講し,終了後,1,2名程度の短い質疑応答を行う。

講義 4週目に例にしたプレゼンテーションの良い例と悪い例を提示する。(4回目の学生のプレゼンテーションと質が異なる)

60分

2.プレゼンテーションの実践・ グループごとに,司会の学生がプレゼンテーションを発表順序に従って進行する。・ 各学生のプレゼンテーションでは,その学生が作成したポスター等の視覚資料を,グループ全体の学生が見られるように掲示する。・ プレゼンテーションでは,1名○分間の発表と○分間の質疑を行う。・ 聴講している学生は,ポスターの見やすさ,プレゼンテーションの声の大きさ,内容,話し方についてプレゼンテーションを採点する。・ 聴講している学生はプレゼンテーションとポスター等の視覚資料の良い点と改善すべき点及び質問事項や疑問点のメモを取る。

グループワーク

共通の教材を導入する

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90 分

3.プレゼンテーションの評価と採点集計・ 発表順に,各学生の採点結果を発表者に公表する。また,各学生のプレゼンテーションとポスター等の視覚資料の良い点と改善すべき点を述べる。・ 学生の相互評価の採点結果を集計し,担当教員に報告する。

グループワーク

□各セッションのねらいと進め方の例1.プレゼンテーションの例

【このセッションのねらい】 担当教員のプレゼンテーションを聴講し,質疑を行うことで,学生にプレゼンテーションを例示し,正しいプレゼンテーションの方法を認識する。特に,相手にわかりやすい話し方を理解する。

【このセッションの進め方の例】 担当教員が,パワーポイントを用いて研究内容を学生に分かりやすくプレゼンテーションする。なお,学生に,プレゼンテーションの間に質問事項や疑問点をメモするように促す。

2.プレゼンテーションの実践

【このセッションのねらい】 ポスター等の視覚資料の掲示とプレゼンテーションを実践することで,自分の考え方を相手に理解させるための有効なプレゼンテーションの仕方とポスター等の視覚資料の作成方法を修得する。

【このセッションの進め方の例】 プレゼンテーションの際にポスター等の視覚資料を有効に使うように指導する。 なお,司会には,時間どおりプレゼンテーションを進めるように指示し,遅れている場合は,時間どおり進めるように促す。 ※採点表等を各学部等により作成しておく。

3.プレゼンテーションの評価

【このセッションのねらい】 他の学生が作成したポスター等の視覚資料を閲覧し,プレゼンテーションを聴講することで,相手の発表を評価する能力を身に付け,また,自分の発表やポスター等の視覚資料の改善点を見出す。

【このセッションの進め方の例】 各グループの学生が積極的に発言し,また,学生全員が発言するように促す。ただし,各学生のプレゼンテーションとポスター等の視覚資料への評価が,批判や非難にならないように注意する。

■評価のポイント

 ポスター等の視覚資料が題目に従って書かれているか,また,考え方が順序立って書かれているか。 ポスター等の視覚資料の見やすさ,プレゼンテーションの声の大きさ,内容,話し方を,学生が相互評価する。

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第6週 グループワーク~グループテーマの決定~ 年  月  日(  )

一般目標(GIO)

 グループワークの参加に必要な基本的な知識,技能,態度を身に付ける。

行動目標(SBOs)

1.グループワークの手順を述べることができる。2.グループワークの役割を述べることができる。3.グループワークでの討議を行うことができる。4.グループワークの情報共有を行うことができる。5.グループワークの意義について説明できる。

使用教材(参考文献)使用資材

 『日本大学 FDガイドブック-“自主創造”のための Learning Guide -』

時間 内容 方法 備考(教材等)

1.グループワークについて グループワークの進め方について解説を行う。

講義(10分)

配付資料スライド(パワーポイント)プロジェクター

15分

2.グループ分け 小グループ編成を行い,各グループで役割分担(司会進行,記録,報告者等)を決める。

演習(5分)

配付資料

3.グループテーマの決定 グループとして取り組むテーマのアイデアを出し,テーマを決定する。

演習(20分)

配付資料メモ用紙持参したノート

70分

4.グループテーマの意見交換・討議 グループテーマの持つメッセージに関して意見交換・討論を行い,テーマ報告についてコンセンサスを深める。

演習(35分)

90分

5.レポートの作成 グループテーマの持つメッセージに関するレポートを作成する。

演習(20分)

配付資料レポート用紙メモ用紙持参したノート

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□各セッションのねらいと進め方の例1.グループワークについて

【このセッションのねらい】 グループワークがなぜ必要なのか,グループワークの進め方などについて解説を行い,学修の手順を周知する。

【このセッションの進め方の例】 スライド講義による解説を行う。1.グループワークの到達目標の提示2.グループワークの進行順序の説明3.最終プロダクトについての周知 ※ 全て決められた時間内で行うなど,時間厳守であることを注意する。

2.グループ分け

【このセッションのねらい】 参加学生がグループ編成を行い,参加者による自己紹介,アイスブレーキングの方法などを通じて,グループ学修のための環境整備を学ぶ。

【このセッションの進め方の例】1.各学生は,提示されたグループに移動する。2. 学修グループは,あらかじめ学生番号の順序で編成あるいは各学生の希望調査で編成するなどの準備を行う。

3.グループ作業の人数としては,1グループを6~7名程度が適切である。4.学生は,テーブルを囲むように着席させる。5.自己紹介を行う。6.アイスブレーキングを行う。

3.グループテーマの決定

【このセッションのねらい】 参加者間がそれぞれ関心のある事例を挙げて,グループテーマを探求することで,発表の目的についてコンセンサスを深める。

【このセッションの進め方の例】1.各グループのメンバーは,司会進行,記録,発表の3役を決める。2.司会進行のもとで,受講学生はグループテーマについてのアイデアを考える。3.受講学生は,いくつかのテーマのアイデア(複数)を白紙に記入する。4.受講学生は,自らの提案するテーマについて順次説明を行う。5.受講学生間で,複数提示されたテーマからグループテーマを決定する。(備考) 「自主創造の基礎1」では,グループ課題の内容は各学部の専門的な課題ではなく,社会的に関心のあるような課題を選択するように助言する(例,地球温暖化,少子高齢化等)。 既に解答のあるような課題よりも,むしろ,多様な問題解決が求められる課題であれば,参加者からの討論を活発にすることが期待できる。

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4.グループテーマの意見交換・討議

【このセッションのねらい】 グループテーマを報告することを視野に,テーマの持つメッセージなどについて意見交換を行い,情報共有する。

【このセッションの進め方の例】1.司会進行は,受講学生にグループテーマの選択理由やメッセージについて意見を述べてもらう。2.受講学生は,各々自由に発言を行う。3.記録係は,受講学生からの意見をホワイトボードに記録する。4.受講学生は,ホワイトボード上の記載内容を分類し,さらに,キーワードを見出す。5.司会進行は,ここまでの討論をまとめて受講学生に提示する。6.全員で,グループテーマに関する合意形成を確認する。7.全員で,グループテーマに関する意見・交換,合意事項についてメモやノートを作成する。(備考)1. 受講学生間で自由な意見交換を行い,課題についての多様な考え方や問題認識を理解するように議論を行うことが望ましい。そのため,担当教員は,ファシリテーターとして,学生の議論を促進するように務める。

2. 担当教員は,適宜,ホワイトボードに議論に出された意見に対し質問して,議論の進行状況が学生間で共有できるように支援する。

3.このセッションでは,KJ法やマインドマップなどの方法も用いても良い。

5.レポートの作成

【このセッションのねらい】 グループテーマで,述べられた内容についてレポートの作成を各自が行うことにより,グループ学修での振り返りを行う。

【このセッションの進め方の例】1.担当教員は,レポートの書式について説明を行う。2.参加者は,メモやノートをもとにレポートを作成する。3.次週,参加者相互でレポートを読み,意見交換を行う。4.レポート内容に修正・加筆を行い,担当教員に提出する。5.全員で振り返り用紙に意見・感想を記入する。(備考) レポートの書式については,各学部等の教育内容に準じて行う。

■評価のポイント

 各学生の学びの姿勢,提出レポートや振り返りシートから,グループ学修の参加スキルを評価する。

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第7週 グループ発表,討論 年  月  日(  )

一般目標(GIO)

 グループ発表での討論に参加する知識,技能,態度を身に付ける。

行動目標(SBOs)

1.グループ発表資料を準備することができる。2.グループ発表の環境を説明することができる。3.グループ発表を行うことができる。4.グループ発表の質疑応答を行うことができる。5.グループ発表を評価することができる。

使用教材(参考文献)使用資材

 『日本大学 FDガイドブック-“自主創造”のための Learning Guide』

時間 内容 方法 備考(教材等)

1.グループワークの発表,討論資料の事前準備 グループ発表のため,グループ討議の結果をスライドとレジュメにまとめておく。

演習 配付資料,レジュメ,パワーポイント

2.グループ発表,討論環境の準備 グループ発表を行うプロジェクターなどの設営や資料配付を行う。

演習 配付資料,レジュメ,パワーポイント

30分 3.グループ発表 発表者は登壇し,スライドを使用して,所定の時間内に発表する。

演習 配付資料,レジュメ,パワーポイント

4.グループ討論 参加者と発表者と発表内容に関する質疑応答を行う。

演習 配付資料,レジュメ,パワーポイント

60分

90分

5.グループ討論の評価 発表終了後,学生は,グループ討論に関する評価をシートに記載する。

演習(SGD)

アンケート用紙振り返りシート

※ 時間配分は,各学部等における学生数や施設などに応じて,授業の範囲内で決めてください。

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□各セッションのねらいと進め方の例1.グループワークの発表,討論資料の事前準備

【このセッションのねらい】 発表に必要な資料を作成することにより,他者への情報提供に求められる媒体の条件や提示方法に関する知識と技能を身に付ける。

【このセッションの進め方の例】1.発表内容のコンテンツについて検討する。2.パワーポイント(スライド)のデザインや文言,図表を決定する。3.発表内容から説明用資料(レジュメ)を作成する。4.完成したスライドを用いて,発表の練習を行う(予演会)。5.グループ内の意見を基に,発表方法と資料の改善を行う。6.発表資料を担当教員に提出する。

2.グループ発表,討論環境の準備

【このセッションのねらい】 発表に必要な環境を準備することにより,発表の準備や設営に関する基礎知識を身に付ける。

【このセッションの進め方の例】1.スライド投影のプロジェクターの設置を行う。2.スライドの試写を行い,プロジェクターの調整を行う。3.発表におけるコンピュータ操作の準備を行う。4.レジュメや資料を参加者に配付する。5.発表の司会進行の準備を行う。

3.グループ発表

【このセッションのねらい】 他の受講学生(質問者)に理解されやすいプレゼンテーションでの基本的な技法(話し方,スライドの見せ方)を身に付ける(前回の復習)。

【このセッションの進め方の例】 発表者の効果的な口頭発表方法(プレゼンテーション)を身に付ける。1.発表前に聴衆(聴いている他の受講学生)に語りかけるなど関心を持たせる。2.配付資料を用いて,発表内容の概要を説明する。3.スライドを効果的に使い,メッセージを伝達する。4.発表内容を簡潔にまとめる。5.聴衆からの質問を受け付ける。※ 発表者は,決められた発表時間内でプレゼンテーションを終了するように指導する。

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4.グループ討論

【このセッションのねらい】 受講学生(聴衆)に相応しいグループ発表に関する質問や意見の述べ方について,基本的な技能と態度を身に付ける。

【このセッションの進め方の例】 質問者の質疑応答における基本的な討論方法を身に付ける。1.発表者の発表内容の要点をまとめる。2.配付資料内容(文言,図表等)を理解する。3.発表内容の解釈を述べる。4.発表内容の疑問点を述べる。5.発表者の意見を傾聴する。6.発表者の意見に反駁する。7.発表者の意見の一致点を見出す。

〔発表者と聴講者の双方の討論のポイント〕・相手側の論拠をきちんと受け止めて反論していること(相手の話を聴いている)。・論題に対するメリット・デメリットとともに,しっかりした論拠を出していること。 ※ 担当教員は,上記の項目について双方を評価して,適宜,フィードバックを行う。

5.グループ討論の評価

【このセッションのねらい】 受講学生がグループ討論について評価を行うことで,グループ討論の方法について理解を深める。

【このセッションの進め方の例】 グループ討論のセッション終了時において,特定の課題についてではなく,全課題の評価として,アンケート用紙の記載を行う。

〔手順〕1.受講学生に発表のアンケートを配付する。2.受講学生はアンケートの設問に回答する。3.担当教員は記入されたアンケートを回収する。4.後日,アンケート調査結果について発表する。5.全受講学生(発表者と聴講者)で,発表のポイントについて各グループ内で討議を行う。6.各グループは,発表のポイントをプロダクトとして提出する。

(参考)グループ討論の評価項目① 発表者のメッセージ,② 主張の根拠の有無,③ 事例やデータの引用,④ 主張・反論の強さ,⑤ 発表者又は質問者の判定

■評価のポイント

 発表者・聴講者の振り返りシート及び演習プロダクトから,総合的に評価を行う。

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第 15週(最終週) 総括~振り返り~ 年  月  日(  )

一般目標(GIO)

 これまでの授業を振り返り,「自主創造の基礎1」で身に付ける知識,技能,態度の習熟度を確認することによって,「自主創造型パーソン(自ら求めて学び,問題を解決できる学生)」として自立した学生になる。

行動目標(SBOs)

1.「自主創造の基礎1」の意義について説明することができる。2.修得した知識,技能,態度について適切に自己評価することができる。3.同僚が修得した能力を適切に評価することができる。4. 学修は目標を設定して計画的に進めることが重要であることを説明することができる。

5.カリキュラム作成手法を応用して自分の学修計画を立てることができる。

使用教材(参考文献)使用資材

・「参加シート」(第 1週に記入したものと今回記入するもの)・プロダクト(個人ないしグループで作成したもの)・「自己評価点数記入表」・「同僚評価(ピア評価)シート」・「学修計画立案シート」

時間 内容 方法 備考(教材等)

15分

1.自己評価及び同僚評価 この授業で身に付けた知識や能力について,参加記録やプロダクトなどを参照して,自己評価を行う。その後,同僚評価を行う。

実習(15分)

「参加シート」,プロダクト,「自己評価点数記入表」,「同僚評価(ピア評価)シート」

45分

2.自己評価に基づく議論 第 1週と今回それぞれ記入した「参加シート」の内容の変化及び自己評価点数を踏まえて,気づいたことを発表し,議論する。同僚の指摘を自己理解の深化につなげる。

実習(30分)

3.カリキュラム作成手法に関する講義 在学期間中の学修計画を立てるために,カリキュラム作成手法の一端を学ぶ。

講義(15分)

60分

90分

4.在学期間中の学修計画の立案 カリキュラム作成手法を応用して,在学中の自分の学修計画を立てる。

実習(30分)

「学修計画立案シート」

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□各セッションのねらいと進め方の例1.自己評価及び他者評価

【このセッションのねらい】 自己評価と同僚評価を行うことによって,この授業で学んだ知識や技能について振り返る。

【このセッションの進め方の例】1 自己評価 ①  全 14週の授業を振り返るために,第 1週に記入した「参加シート」(プリテスト)とこれまでに個人やグループで作成したプロダクトを準備する。教員は「自己評価点数記入表」を配布する。

 ② 学生は,第 1週と同じ「参加シート」に記入し(ポストテスト),自分自身の成長を振り返る。 ③  学生は,第 1週に記入した「参加シート」( プリテスト ) と今回記入した「参加シート」( ポストテスト ) の内容を比較して,この授業で得られた知識,技能,態度の習熟度について考える。

 ④  学生は,自分の知識,技能,態度の習熟度を数値化して評価する。基準を 10点として,自分の習熟度が平均を上回ると思う場合には 10点より高い点数(上限は 20点),下回ると思う場合には 10点より低い点数をつけるように,教員は学生に指示する。

 ⑤ 教員は「自己評価点数記入表」を回収する。 ⑥ 同僚評価に移る。2 同僚評価 ① 教員は「同僚評価(ピア評価)シート」を学生に配布する。 ②  学生が点数を付ける際に,友人と相談せず,自分の判断で行うように,教員は学生に対して注意を促す。また,教員は評価表を他人に見せてはならないと注意する。

 ③ 教員は「同僚評価(ピア評価)」を回収する。授業終了後,教員は各学生の平均点を算出する。 ④  後日,教員は,自己評価点数とともに,同僚評価(ピア評価)の平均点を各学生にフィードバックする(必要に応じて別の対応をしても良い)。

2.自己評価に基づく議論

【このセッションのねらい】 参加者との議論を通じて,自己を評価することの難しさやその適切な考え方について理解を深める。

【このセッションの進め方の例】1 ディスカッション ①  学生は自己評価点数を明らかにした上で,なぜ,その点数を付けたのかに関する理由と改善すべき点,伸ばすべき点を簡潔に発言する。

 ② 全ての参加学生が上記①を繰り返す。2 議論のまとめ ① 教員は学生の意見を踏まえて,共通点や相違点などをまとめる。 ②  まとめを踏まえて,全体での議論を行い,さらなる自己理解の深化を,教員は学生に対して促す。

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3.カリキュラム作成手法に関する講義

【このセッションのねらい】 在学期間中の学修計画を立てるために,カリキュラム作成手法の一端を学ぶ。

【このセッションの進め方の例】1 講義 ①  教員は,大学での学びが専門的かつ体系的であり,その学びが系統的で順次的であるように在学期間中の学びの過程を定めたものがカリキュラムであることを説明する(後掲の担当教員用参考資料を参照のこと)。

 ②  教員は,カリキュラム作成手法を学生に対して説明することによって,体系的かつ順次的な学びの計画の立て方を具体的に示す。

 ③  このカリキュラム作成手法を応用して在学期間中の自分の学修計画を立てれば,配置された科目を体系的に,かつ,秩序だって段階的に学ぶことができる。そして,その結果として身につくと期待される知識 ・能力 ・態度に関する自分なりのガイドラインを作成することができる。これは能動的な学修態度を実践する 1つの有効な方法であることを,教員は学生に対して説明(あるいは強調)する。

2 留意点   このセッションでは,カリキュラム作成手法を学生の学修計画の立案に応用して,学生に自分の学修目標を立てさせることに主眼が置かれている。それらの目標を実現する方法(方略に相当する)の主なものは正規の授業であり,授業の成果は原則として教員によって評価されるものである。したがって,後掲の参考資料では,教員の判断に委ねられる方略と評価に関する説明は割愛されている。   なお,正課以外の課題活動や留学等で目標の一端を実現したいという学生にとっては,その場合の方略や評価は学生自身が考えることになる。しかし,このセッションでは,計画を立てて学修を進めることの意義を強調したいため,方略と評価よりも目標の設定(学修計画の立案)を重視している。

4.在学期間中の学修計画の設計

【このセッションのねらい】 「自主創造型パーソン(自ら求めて学び,問題を解決できる学生)」として自立した学生となるために,在学期間中の学修計画を立てる。

【このセッションの進め方の例】 ① 教員は「学修計画立案シート」を配布する。 ②  学生は,入学の動機や在学期間中にやりたいこと(学業,課外活動,留学等),さらに自分の将来目標に照らして,GIO と SBOs を決定する。考えがまとまり次第,シートに記入する。

 ③ 下書きが完成したら,学生は担当教員にシートを見せ,フィードバックを得ながら完成する。 ④  学生はシートが完成したら提出する。これは,学生ポートフォリオとして保管する(必要に応じて別の対応をしても良い)。

■評価のポイント

 自己評価,同僚評価(ピア評価),学修計画設計シートの記載内容から評価する。

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自己評価点数記入表

学生番号 氏  名 自己評価点数

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チーム番号        学生番号         氏名                 

 自分以外のチームメンバーのチーム学修とチームのパフォーマンスへの貢献度について,あなたが実際どのように感じたかを正直に点数に配分してください。 これは,あなたのためによく働いたチームメンバーに報いることができる唯一の機会です(注:全員にほとんど同じ点数をつければ,最もよく働いたメンバーを傷つけ,最も貢献度の低いメンバーを助けることになります)。

同僚評価(ピア評価)シート

指示:下欄でチームの“自分以外”のメンバーそれぞれを段階評価してください。   各メンバーのピア評価点は,“他の”チームメンバーが付けた点数の平均点になります。   評価を記入する際には,次のことを守ってください:   1.各メンバーの名前を名字の五十音順に並べる。   2. 平均点 10点になるように自分以外の各メンバーに点数を配分する(例えば,6人のチー

ムの場合 50点を,7人のチームの場合 60点を配分する)。   3. 評価段階には,多少とも差を付ける:例えば,少なくとも1人には11点以上(最高15点),

少なくとも 1人に 9点以下の点数を付けること。

追加的なフィードバック: 下欄に最も高い評価と最も低い評価をした理由を簡潔に説明してください。  このコメントは,自分へのフィードバックを知りたいと思うメンバーに開示されることがあります(ただし,匿名で開示します)。

 【最高点/最低点の理由】

チームメンバー点数

学生番号 氏 名

1)

2)

3)

4)

5)

6)

7)

8)

9)

10)

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学修計画立案シート

学  科 学生番号 氏  名

一般目標(GIO)

個別行動目標(SBOs) 領域

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1 カリキュラムの定義

 カリキュラムとは,学則に定められた教育研究上の目的を達成するために専門性と体系性ならびに順次性を踏まえて編成された教育課程のことである。いわば,大学での学びの計画書というべき存在である。これが定まって初めて学生は教育目標へ向かって学びを開始することができる大学教育における基盤の 1つといえる。

2 学力の三要素

 ブルーム・タキソノミー(教育目標分類学)や文部科学省による目標・方略・評価に関する包括的な検討 2)によると,教育目標は認知領域,精神運動領域,情意領域の 3つに分類できる。それらは簡略化して表現するとそれぞれ①知識,②技能,③態度・習慣に相当するものといえる。知識とは「何を知っているか」,技能とは「知っていることをどう使うか」,態度・習慣とは「どのように社会や世界と関わっていくか」ということなどを主に意味している。 これらの 3つの領域はいわば学力の三要素と位置づけることができる。

3 カリキュラムの構成要素

 カリキュラムは,①目標(教育目標),②方略(教育方法),③評価の 3つの要素から構成されている。 目標には,一般目標(General Instructional Objective,GIO)と個別行動目標(Specifi c Behavioral Objectives,SBOs)の 2つの側面がある。GIOは学修によって到達できる状態であり,学修成果を包括的に表現したものである。GIOは学力の三要素を網羅していることが望ましい。 SBOs は学生が GIO を達成した結果として何ができるようになったかを明らかにしたものである。逆に言うと,学生がすべての SBOs を実現できたら,その学生はGIOを達成したということができる。

 ① GIOの設定上の留意点  ・学修成果を包括的に表すものであること。  ・ 学修目標の到達度を多面的に表すのに適切な動詞を用いて表現するのが望ましく,簡単な行動

を示す動詞は用いない(動詞の具体例は下記を参照)。  ・知識,技能,態度(習慣)の学力の三要素を網羅することが望ましい。  ・学生が主語で表記されていること。

 ② SBOs の設定上の留意点  ・学修の結果,学生は何ができるかを表したものであること。  ・学生が主語で表記されていること。  ・1つの GIOに対して,数個から十数個の SBOs が作成されること。

「自主創造の基礎1」 第15週 カリキュラム作成手法 1)講義内容《担当教員用参考資料》

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  ・ SBOs として挙げられた具体的行動は,学生が行動で表すことができるような観察可能なものであること。

  ・個々の SBOs を学生が獲得できたかどうかについて試験で評価することができること。  ・SBOs とそれを評価する試験はGIOと明瞭に関連づけられていること。

4 目標を表現するための動詞の使用例

 下記はあくまでも例示である。GIOおよび SBOs の設定上の留意点を踏まえてさらに適切な表現を用いてもよい。

5 GIOおよびSBOsを設定する際の5原則

 GIOおよび SBOs を設定する際には,下記の 5つの原則を踏まえることが望ましい。これらの原則は頭文字を取ってRUMBA(ルンバ)の法則と呼ばれている。

GIO表記のための動詞例

知る,認識する,理解する,感じる,判断する,価値を認める,評価する,位置づける,考察する,使用する,実施する,適用する,示す,創造する,身につける,修得する,

SBOs 表記のための表記例

知識 列挙する,述べる,記述する,説明する,分類する,比較する,対比する,類別する,指摘する,関係づける,判断する,予測する,選択する,特定する,識別する,推論する,公式化する,一般化する,使用する,応用する,適用する,演繹する,結論する,批判する,評価する,

態度・習慣

尋ねる,助ける,コミュニケートする,討議する,寄与する,協調する,示す,表現する,感じる,始める,相互に作用する,系統立てる,参加する,反応する,応える,配慮する,相談する,

技能 感じる,始める,模倣する,熟練する,工夫する,実施する,創造する,操作する,動かす,準備する,測定する,解剖する,注射する,挿入する,触診する,手術する,聴診する,打診する,

原 則原則が適用される目標

Real:教育目標は現実的であること ・教育目標は学生のニーズを反映していること。 ・教育目標は学生に前もって理解されていること。 ・教育目標は学生のモチベーションを刺激するものであること。

GIOSBOs

Understandable:教育目標は理解可能であること。 ・教育目標は互いに関連していること。

GIOSBOs

Measurable:教育目標は測定可能であること。 ・ 教育目標は観察ないし測定可能な行動用語(前掲の動詞を参照のこと)で述べられていること。

 ・教育目標は目標の達成度合い(レベル)や制約条件について考慮されていること。

SBOs

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1)上記の内容は日本大学FD推進センター主催「全学FDワークショップ」配付資料等を参考にして作成されている。

2)文部科学省「教育目標 ・内容と学習 ・指導方法,学習評価の在り方に関する補足資料 ver.5」平成 27 年 3 月 26 日

Behavioral:教育目標は行動的であること。 ・教育目標は学生の行動を表す用語で具体的に示されていること。 ・教育目標は学力の三要素を含んでいること。

SBOs

Achievable:教育目標は達成可能であること。 ・ 教育目標は達成可能な最低レベルを示すものであること。すなわち,画餅ではいけない。

 ・教育目標は人的資源や物的資源を踏まえた上で設定されること。

GIOSBOs

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○ 初年次教育

 1年次生を対象に,レポート作成や資料収集など,大学における学修に必要な基本的な知識・技能・態度を伝える教育。

(『日本大学FDガイドブック-“自主創造”のための Learning Guide -』)

 高等学校から大学への円滑な移行を図り,大学での学問的・社会的な諸経験を“成功”させるべく,主として大学新入生を対象に作られた総合的教育プログラム。高等学校までに習得しておくべき基礎学力の補完を目的とする補習教育とは異なり,新入生に最初に提供されることが強く意識されたもので,1970 年代にアメリカで始められ,国際的には「First Year Experience(初年次体験)」と呼ばれている。具体的内容としては,(大学における学習スキルも含めた)学問的・知的能力の発達,人間関係の確立と維持,アイデンティティの発達,キャリアと人生設計,肉体的・精神的健康の保持,人生観の確立など,大学における教育上の目標と学生の個人的目標の両者の実現を目指したものになっている。

(文部科学省中央教育審議会「学士課程教育の構築に向けて(答申)」用語解説 p.3.)

 主に,大学新入生を対象として,大学での学習及び生活を円滑に開始することを目的とした導入プログラムのことを指す。具体的には,担当教員やメンター等から,レポートや論文の作成方法等の学習技術の習得や,履修登録や図書館の利用方法,さらには対人関係の在り方など,大学生活で必要となる汎用的知識を主として学ぶ。

(大学行政管理学会学事研究会 編『職員による職員のための-大学用語集』p.21.)

○ アクティブ・ラーニング

 アクティブ・ラーニングは,教員による一方的な講義形式の教育とは異なり,学修者が主体的に講義に参加する教授法である。ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の講義がテレビで紹介され,日本でも広く認知されるようになった。対話形式以外でも,教室内のグループ・ディスカッション,グループワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの手法である。

(『日本大学FDガイドブック-“自主創造”のためのTeaching Guide -』)

 教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって,認知的,倫理的,社会的能力,教養,知識,経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習,問題解決学習,体験学習,調査学習等が含まれるが,教室内でのグループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。

「自主創造の基礎1」関連用語集

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(文部科学省中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」〔平成 24 年 8 月 28 日〕p.37.)

○ 反転授業

 反転授業(Flipped Classroom)とは,従来の学校教育において教室で行っていた「講義」をICTの利用により「宿題」に,宿題の主流であった「演習」を「授業」で行う教授法である。米国では,中学校・高校を中心に 2010 年ごろから広がりをはじめ,「学修時間の増加」「出席率・落第率の改善」など,定量的効果もすでに報告されている。 日本でもテレビや新聞にて,近畿大学付属高等学校の実践や,佐賀県武雄市の小学校での導入が報道された結果,2013 年 11 月現在,多くの注目を集めつつある。 限られた授業時間に,「講義」と「演習」,両方のフェーズをすべて収めることはできない。従来の学校教育では「知識習得」の前提となる「情報提供」,すなわち「講義」を授業で集中的に行い,宿題で「知識習得」に励むようなカリキュラムが主流であった。 ICTの進化によって,どちらのフェーズも宿題にできる環境が整った結果,概ね単方向で成り立つ「講義」を宿題にして,双方向性が精度を高める「演習」を授業に割く,合理的な教授法―「反転授業」が米国の現場で広まったのは,時代の必然である。 「講義」と「演習」いずれも ICTで履修可能な時代に,そもそも学校空間は必要だろうか。「なぜ反転するのか」を反問し続けると,同じ時間,同じ空間への参画を強いる「対面授業」の必然性を問い直さざるを得なくなる。反転授業の可能性の追求は,「教授法」や「教育制度」に留まらず,学校空間のあるべき姿を追求する「教育哲学」にほぼ等しい。

―反転授業のタイプ

 日米で実践されている反転授業を類型化すると,「個別指導型」と「能動的学習支援型」に大別できる。教授法や学部環境要因(トリガー,追い風)は共通だが,教育者のニーズや学習者のメリットの差異が2つのタイプを生じている。 従来の講義型授業では難しかった個別指導を実現するのが「個別指導型」である。このタイプの成績評価対象は「正解を最短で導く能力」であり,これ自体は従来の講義型授業と変わらないため,反転授業導入前後でその導入効果を比較できる。 一方,「能動的学習支援型」は,正解のない解を創造的に導く能力の向上を目的とし,思考力・表現力を育成するタイプである。このタイプを実践するには,新たな成績評価基準の策定や,教員の能力開発,特にファシリテーション能力を高める教員養成制度を実行しなければならない。 クリステンセンのイノベーション理論に倣えば,従来の学校教育において「個別指導型」は持続的イノベーション,「能動的学習支援型」は破壊的イノベーションに該当する。(e-Learning 教育学会 『e-Learning 教育研究』第 8巻抜粋 宿題動画の魅力に頼らない反転授業 pp.1-3.)

 ※  反転授業については,ジョナサン・バーグマン,アーロン・サムズ著,上原裕美子訳,山内祐平・大浦弘樹序文・監修,『反転授業-基本を宿題で学んでから,授業で応用力を身につける』オデッセイコミュニケーションズ,2014.に詳述されているので,参考にされたい。

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○ アイスブレーキング(アイスブレイク)

 参加者の互いの緊張や警戒を解き,コミュニケーションをスムーズにするための導入アクティビティー。研修・セミナー・ワークショップ・会議・体験学習などの場面でよく使われる。

(『日本大学FDガイドブック-“自主創造”のためのTeaching Guide -』)

 文字通り氷のように冷たくて硬い雰囲気を和やかにする働きをする。グループワークで進行するワークショップでは,チーム意識の醸成を加速させるのに欠かせない手法である。

 授業開始時には,参加者は次のような未知への不快感や緊張感を持っている。 ①内容は理解できるだろうか。②恥をかくことはないだろうか。③講師や他の参加者はどのような人だろうか。 同時に,受講者は受身で,次のような潜在的なフラストレーションを持っている。 緊張感を解除しリラックスさせる目的で,丸く輪になって座り,お互いの顔がよく見え,話す人は相手の表情や反応を見ながら話せるインタラクティブな場で,自己紹介,他己紹介,いくつかのゲームなどで開始されることが多い。アイスブレーキングにより,初期の段階で緊張を解きほぐすことは,後の成長過程で有意義な対人関係や相互作用を創り上げるのに役立つ。

(日本大学FD推進センター「平成 25 年度全学 FDワークショップ・テキスト」)

○ グループ学修

 教員が一方的に話すのではなく,学生同士が議論する形式を取り入れることができれば,学生同士が学びあい,学習への意欲を盛りたてることができます。とは言っても,学生は大学に入るまで,あまり議論をした経験はないでしょう。授業の中で議論を成立させるためには,議論の前提となる基本的な知識が必要ですので,学生に事前学習を求めるとともに,教員側でも十分な準備をしておく必要があります。 専門外の予期せぬ質問が出た場合でも,その場の議論が中断しないように誘導しながら,学生の疑問に的確に答えるようにしましょう。教員の技量が問われるところです。(京都FD開発推進センター 『まんが,おしえて!FDマン FDハンドブック【新任教員編】』p.39.)

【事前準備】1. 議論のテーマを明確に設定する。できるだけ具体的で2つか3つに意見が限定されるテーマが望ましい。

2.学生が事前学習をできるように資料や文献リストを配付する。3.当日の時間配分を明示し,グループ分け,役割分担を行う。【授業中】1.教員は基本的に交通整理,進行役に徹する。2.議論が滞ったときに,議論の端緒となるヒントを与える。3.議論の結果,自分がどう考えたか,どのように考えが変わったかを書かせて提出させる。(京都FD開発推進センター『まんが,おしえて!FDマン FDハンドブック【新任教員編】』p.39.)

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○ KJ法

 KJ 法というのは,あらゆる雑多な概念を論理的にまとめて図式化する手法のひとつである。レポートや論文,プレゼンテーションなどを作成する際に,雑多な情報を取捨選択し,アウトラインをつくるときにこの方法は非常に役に立つ。これは川喜田二郎という文化人類学者が提唱したやり方なので,そのイニシャルを取ってKJ法と呼ばれる。

(『アカデミック・スキルズ大学生のための知的技法入門 第2版』p.110.)

―KJ法の進め方

(用意するもの)付箋紙または文殊カード・模造紙・マジック

(手順)① キーワードを集める。 ひとつのラベルにひとつの単語や短い一文を記載し,模造紙にランダムに貼り付けいていく。この際,重要なことは思いついたことを率直に記入し,なるべく多くのラベルを作成することを意識する。

② 関連するキーワード等のグループ化 ラベルごとに内容を吟味してグループ化する。必ずしも全てのラベルがグループに所属するとは限らない。また,グループの大小は,グループの重要性とは無関係である。一枚残ったラベルが新たなアイデアとなることも少なくない。

③ グループ化したキーワードに見出しを付ける グループ内のラベルの関連性を検討・整理しつつ,グループ内容を端的に表現する見出しを付ける。

④ グループ間の関連性を検討してまとめる グループごとの関連性を検討し,全体的な位置関係を整理する。なお,グループ間の関連性などを矢印や記号を用いて体系化などをしてまとめる。

 以上の手順によりできあがったエッセンスを文章やパワーポイントなどにまとめ,その後のプレゼンテーションなどに役立てることができる。

○ ブレインストーミング

 ブレインストーミングは,参加者全員でたくさんの意見やアイデアを出しあい,そこから“何か”を見つけていくための手法である。手法としては非常に単純だが,「全員が参加する」「一人一人の意見やアイデアを尊重する」「出された意見やアイデアを次へつなげる」という点で,この手法は,数あるアクティビティーの基本であるといってもよいかもしれない。ブレインストーミングをうまくリードできる進行役は,きっと他のアクティビティーも上手な人ではないかと思う。

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―「ブレインストーミング」の進め方

 示された1つのテーマについて,参加者全員が自由に意見やアイデアを述べ,進行役(または記録係)が,黒板や模造紙にそれをすべて書き出していく。 発言は,思いついた人から自由に発言する方法でも,進行役が順に当てていく方法でもかまわないが,前者の場合,進行役は,うまく発言できない参加者に気を配る必要がある。はじめは順に当てる方法でスタートし,2~3巡して,ペースが落ちてきたら,あとは自由に発言するという進め方も有効だ。  通常,ブレインストーミングには,「質より量」「自由奔放(何を言ってもかまわない)」「批判厳禁」「結合改善(人の意見を組み合わせたり改良したりしてもよい)」の4つのルールがあるといわれるが,始める時点で次の3つを参加者全員で確認しておけば,あとは発言を重ねていきながら,必要に応じて進行役が助言すればよいと思う。

① 質より量 あまり難しく考えず,とにかくたくさんの意見やアイデアを出すこと。

② 批判厳禁 人の意見にケチをつけないこと。「エェ~ッ」という声を出したり,(バカにしたように)笑ったりということも控えること。同様に,自分自身の意見にも批判を加えないこと。ためらったり恥ずかしがったりせず,思いついたらそのまま口に出してみること。これは,発想を広げていく上で,とても大切なことだ。 逆に,ほめることは,雰囲気を盛り上げる有効な手段である。ただし,特定の意見をほめることによって,それと異なる意見が言いづらくなってしまっては意味がないので,「なるほど」「いいですね」「うまいなぁ」といった“合いの手”くらいにしておこう。(※)

 ※ すべての意見を平等に扱うために,批判と同様,ほめることもしてはならないという人もいるが,開発教育のワークショップでは,発想を広げることの方が大事なので,あまりこだわる必要はないと思う。

③ 演説禁止 意見は簡潔に。一人で長々と演説しないこと。また,原則として,発言の理由について説明を求める必要はない。

「ブレインストーミング」の効果•漠然とした考えを言葉(キーワード)にすることで,考えをまとめていく•他の参加者が何を考えているのか(自分と共通する点,違う点)が見えてくる•自分の先入観や情報の片寄り,情報不足に気付く•思いもかけなかった新しいアイデア(解決策)を見いだす

(開発教育協会HP http://www.dear.or.jp/activity/menu02.html)

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○ 学習成果(ラーニング・アウトカム)

 「学習成果」は,プログラムやコースなど,一定の学習期間終了時に,学習者が知り,理解し,行い,実演できることを期待される内容を言明したもの。「学習成果」は,多くの場合,学習者が獲得すべき知識,スキル,態度などとして示される。また,それぞれの学習成果は,具体的で,一定の期間内で達成可能であり,学習者にとって意味のある内容で,測定や評価が可能なものでなければならない。学習成果を中心にして教育プログラムを構築することにより,次のような効果が期待される。 ・従来の教員中心のアプローチから,学生(学習者)中心のアプローチへと転換できること。 ・学生にとっては,到達目標が明確で学習への動機付けが高まること。 ・ プログラムレベルでの学習成果の達成には,カリキュラム・マップの作成が不可欠となり,そのため,教員同士のコミュニケーションと教育への組織的取組が促進されること

 ・ 「学習成果」の評価(アセスメント)と結果の公表を通じて,大学のアカウンタビリティが高まること。

(文部科学省中央教育審議会「学士課程教育の構築に向けて(答申)」用語解説 p.2.)

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【企画・編集】 日本大学学務委員会全学共通初年次教育検討ワーキンググループ  リーダー 永塚 史孝(国際関係学部学務担当,教授)  メンバー 佐渡友 哲(法学部教授)       辻  忠博(FD推進センター副センター長,経済学部学務担当,教授)       吉田 幸司(理工学部教授)       角田 和彦(生産工学部学務担当,教授)       中島 一郎(歯学部教授)       伊藤 芳久(薬学部教授)       筒井  仁(学務部特任事務長)       八町  斉(学務部学務課長)       後藤 裕哉(学務部学務課課長補佐)       友寄 秀俊(学務部学務課主任)       五十嵐 亮(学務部学務課)

※本書に記載した役職,資格等については,平成 28(2016)年 3月現在のものです。

本書に関する新たなアイデアや御意見などがありましたら,学務委員会全学共通初年次教育検討ワーキンググループ([email protected])へお寄せください。

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日本大学全学共通初年次教育科目「自主創造の基礎1」ガイドライン

発   行 平成 28 年 3 月 2 日 第 2版発 行 者 日本大学 学長 大塚𠮷兵衛企画・編集 日本大学学務委員会全学共通初年次教育検討ワーキンググループ      〒 102-8275 東京都千代田区九段南 4-8-24      日本大学会館 4階 日本大学本部学務部学務課      電話:03-5275-8314 FAX:03-5275-8315      E-mail:[email protected]

印刷:蓼科印刷株式会社

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