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側鎖結晶性ブロック共重合体を用いた ポリテトラフルオロエチレンの化学的改質法 福岡大学 工学部 化学システム工学科 助教 中野涼子 福岡大学 工学部 化学システム工学科 教授 八尾

側鎖結晶性ブロック共重合体を用いた ポリ ......DFA DEEA PTFEの親水性改質効果 水接触角測定結果 試料 改質方法 接触角 改質なし ― 101.2

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側鎖結晶性ブロック共重合体を用いたポリテトラフルオロエチレンの化学的改質法

側鎖結晶性ブロック共重合体を用いたポリテトラフルオロエチレンの化学的改質法

福岡大学 工学部 化学システム工学科

助教 中野涼子

福岡大学 工学部 化学システム工学科

教授 八尾 滋

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従来技術とその問題点①

• ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの結晶性高分子

⇒耐溶剤性に優れている

⇒接着性・表面改質性に乏しい

• 従来の改質法:プラズマ照射等の物理的手法

⇒煩雑でコストがかかる

⇒基本的に分子鎖切断を伴う

力学的強度低下をもたらすものであり、薄膜への適用には不向き

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従来技術とその問題点②

• 結晶性高分子の多孔膜の表面改質

⇒プラズマなどが当たらない影となる部分は改質が不可能

⇒複雑な形状の成形品には不適

⇒多孔膜細孔内改質も困難であり、高機能化が望めない

一度改質した面は元に戻すことが不可能でありリサイクル性に乏しい

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結晶化超分子間力による結晶性高分子の表面改質

側鎖結晶性ブロック共重合体で見いだされた機能

⇒長鎖アルカン鎖部位を持つ高分子が、ポリエチレン表面と、非常に強い相互作用力を示す現象

側鎖結晶性ブロック共重合体(Side Chain Crystalline Block Co-polymer: SCCBC) の典型例および模式図

OO

OO

n

mn-BA

STA

Side chain crystalline Unit

Functional Unit

PE Surface

ファンデルワールス(Van der Waals)力が面で作用する⇒非常に強力な接着相互作用力を発揮

4

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(a) (b)

例-1 SCCBC添加前後のポリエチレン粒子表面の変化

SCCBC添加後のPE粒子表面がSCCBCで覆われている

10nm 10nm

SCCBC添加前のPE粒子 SCCBC添加後のPE粒子

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例-2 SCCBCを用いたフィルムおよび多孔膜の表面改質

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低濃度(~1wt%程度)のSCCBC溶液を調製

a) 溶液に浸漬させる方法 (Dipping)b) アプリケータで膜引きする方法 (Coating)

非常に簡便であり、コストも低い

(a)

(b)

PE or PTFE film or porous membrane

Dipped in SCCBC solution Modified film or porous membrane

Modified film or porous membrane

PE or PTFE film or porous membrane Coated with SCCBC solution

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SCCBC/PE接着断面TEMイメージ

100nm

SCCBC PE

@東ソー分析センター

良い界面接着性を示す7

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エポキシ樹脂による接着特性比較

PE表面に非常に強い接着性を付与

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a) 非改質サンプル

b) SCCBCによる改質サンプル

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温度での接着性能制御

温水に浸漬することで、接着部を破損することなく、容易に剥離可能

両ポリエチレン部とSCCBC+接着剤部の3つに分離

少量で、何回でも、かつ容易に、

ポリエチレンの表面改質⇔非改質を繰り返すことが可能

省エネルギー、かつ環境に優しい新規表面改質法

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(a):非改質膜(b):改質膜 (Dipping)

(a)

(b)

単純な操作で容易に多孔膜細孔内まで改質可能

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例-3 多孔膜の細孔内改質

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-4.0

-3.8

-3.6

-3.4

-3.2

-3.0

2.8 2.9 3.0 3.1 3.2 3.3

Modified Membrane with SCCBCUnmodified Membrane

Log

(S・

cm-1

)

1000 K/T

・低温で高伝導率を示す・温度依存性が乏しい (安定した伝導率を保つ)・高温で伝導率が低下

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改質されたPE多孔膜が示す機能性リチウム二次電池セパレータ特性

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テトラフルオロエチレン(PTFE)改質機能を示すSCCBCの創製

フッ素系側鎖結晶性ブロック共重合体の重合と機能評価

今回重合を試みた側鎖結晶性ブロック共重合体の化学構造と重合された高分子の外観

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O

F2CCF2

F2CCF2

O

F2CF

F

O

O

O

O

n mDFA DEEA

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PTFEの親水性改質効果

水接触角測定結果

試料 改質方法 接触角

改質なし ― 101.2°

0.1wt%Dipping 59.4°Coating 68.5°

1.0wt%Dipping 68.5°Coating 61.0°

5.0wt%Dipping 59.9°Coating 54.8°

(a) 改質なし (c) Coating (5wt%)(b) Dipping (5wt%)

F-SCCBCによりPTFE表面が親水化

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剥離試験概要

剥離試験片の概要図 (JIS K 6854-3ハンドブックより作図)14

25±0.5 mm

Min. 50 mm

Min. 50 mm

tensile direction

tensile direction

Min. 150 mm(adhesion site) Min. 150 mm

Min. 200 mm

JIS K 6854-3 T型剥離企画の1/2寸法で実施

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接着剥離性評価

降伏荷重 [N] 剥離強度[N/m]

剥離エネルギー[10-3・J]

改質なし 0.11 2.2 2.6

Dipping 0.31 8.9 12

Coating 0.18 2.6 1.7

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00.050.1

0.150.2

0.250.3

0.350.4

0 20 40 60 80 100 120 140

Load

(荷重

) [N

]

Stroke (変位) [mm]

改質なし Dipping Coating

F-SCCBCにより接着性を付与

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PTFE多孔膜改質効果水接触角測定結果

(a) 改質なし (b) Dipping (5wt%)

水接触角測定時の様子

試料 改質方法 接触角

Original ― 131.8°

0.1wt%Dipping 133.5°Coating 134.4°

1.0wt%Dipping 132.8°Coating 130.4°

5.0wt%Dipping 測定不可

Coating 測定不可

水の透過を確認 (5wt%)⇒多孔膜細孔内部まで親水性に改質された

(c) Coating (5wt%)

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想定される用途 ①

• PE改質機能を持つSCCBCを利用した系では、

現在複数の企業で製品化に向けた研究が遂行されている。

• PE微粒子分散系で発言される熱レオロジー

流体機能は、現在肝臓がん治療のための動脈塞栓材料としての研究が、滋賀医科大学と共同で進んでいる。(平成24年度厚生労働省の革新的がん医療実用化研究事業に採択)

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想定される用途 ②

• PE及びPTFE多孔膜による、リチウム2次電池

および燃料電池の機能性部材など、エネルギー分野

• 分離膜・フィルターなど、環境分野

• 高絶縁性あるいは高誘電率機能を利用した、電子材料分野

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実用化に向けた課題

使用目的に応じたSCCBCの設計指針の確立

• 目的用途に応じた、SCCBCの接着性側鎖結晶性部位の構造の最適化および多様化

• 目的用途に応じたSCCBCの機能性部位の化学構造の最適化および多様化

• SCCBC全体の分子量および分子構造の最適化

• SCCBC重合方法の多様化

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企業への期待

当該SCCBCを用いた技術は、幅広い分野に適

用が可能と考えられ、以下のようなニーズやシーズを持つ企業の積極的な参画が望まれる。

① 表面あるいは界面の改質による接着性などを探索している企業

② 多孔膜の機能化を探索している企業

③ 微粒子の分散性などを探索している企業

④ エネルギー・医療用途で新機能性材料を探索している企業

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本技術に関する知的財産権

発明の名称: 共重合体およびフッ素樹脂改質剤、フッ素樹脂改質方法、ならびにフッ素樹脂改質用の共重合体の製造方法

出願番号:特願2014-214700出願人 :福岡大学

発明者 :八尾滋、中野涼子、前田愛

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産学連携の経歴

2011年-2015年 複数企業との受託・共同研究実施・継続中

2014年-2015年 厚生労働省の革新的がん医療実用化研究事業に採択・継続中

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お問い合わせ先

福岡大学 研究推進部 産学官連携センタ—

担当コーディネーター 大田 修明

TEL 092-871-6631(内線 2803)

FAX 092-866-2308

e-mail [email protected]

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