12
Vol.28 No.145 t 包波研究所季報 March 1982 pp.135-146 研究 衛星通信用 MCPC 方式及び端局装置 猿渡岱繭* 山田勝啓* 高橋鉄雄キ 磯部俊吉林 井口政昭**大橋 一**西山 厳紳土屋 茂料 (昭和 56 8 17 日受理) MCPC SYSTEMA N DTERMINALEQUIPMENTFOR SATELLITE COMMUNICATION By TaijiSARUWATARI,KatsuhiroYAMADA,TetsuoTAKAHASHI,SyunkichiISOBE, MasaakiIGUCHI, HajimeOHASHI, IwaoNISHIYAMAandSigeruTSUCHIYA In a domesticsatellitecommunication system, thesmall capacity communicationlinksusing small-sizedearthstationsarerequiredforthinroutes. AtRadioResearchLaboratories,intheCS(MediumCapacityCommunications Satellite for Ex- perimentalPurposes)experimentalproject,MCPC(Multi-ChannelPerCarrier),oneofsmall capa citysatellitecommunicationsystems,hasbeenproposedanddevelopedsuccessfully. TheoperationoftheMCPCsystemissimilartotheoperationoftheconventionalSCPCsystem. TheMCPCsystemisoneofTDM-PSK-FDMAsystemsandcontainsa multiplexmessage. Tele- phonesignalsdigitizedbyDeltamodulationaswellasdigitaldatasignalsareefficiently transmitt- ed. Thecapacity ofthissystemisofninechannelsoftelephoneorofa combined signals which consists of telephones and data. For the telephonetransmission,asimplesmall-capacitydigital speechinterpolationsystem(DSI)isemployed. ].まえがき 多様化する通信形態及び増大する通信需要に対処する 手段として,衛星通信系の導入が世界的i ζ進められてい る。我が国でも,園内衛星通信方式を実現するために, 昭和 56 12 月に打ち上げられた実験用中容量静止通信 衛星“さくら”(CS: MediumCapacityCommunica- tions Satellitefor ExperimentalPurposes )を用い て,各稀の衛星通信方式に関する実験が行われている川 (2) (3) 電波研究所においては,大容量多A 接続ブ j 式としての TDMA方式(TimeDivisionMultipleAccess :時分 割多元接続)及び FDMA方式(F quencyDivision Multiple Access:周波数分割多元接続), 1J 、容量多元 $衛星通信部第一衛星通信研究室 **鹿島文所第二宇宙通信研究室 135 接続方式としての SSRA 方式(Spread Spectrum RandomAccess )及び SCPC方式(SingleChannel PerCarrier )等の実験が行われている ω 国内衛星通信系では,小形地球局を用いる小容量通信 の需要が多いと考えられる。日本国内において,小形地 球局を用いる場合,既存の地上系との干渉問題を考える と,マイクロ波帯(6/4GHz 帯)で通信系を構成するこ とは困難である。適用通信方式,置局条件等IC ,比較的 に制限が少ない準ミリ波帯(30/20GHz 帯)で,ノ j 、形地 球局による小容量衛}i !通信系を構成することが有利であ る。 1 ~数チャネル程度の電話を伝送する小容量衛星通信 方式として, SCPC方式又は SSMA方式(Spread SpectrumMultipleAccess :スペクトル拡散多元接 続)が利用され,通信容量の変動l 揺の大きい系では,デ マンド・アサイン TDMA方式も有効である問。

衛星通信用 MCPC方式及び端局装置 - NICT...Vol. 28 No. 145 t包波研究所季報 March 1982 pp.135-146 研究 衛星通信用MCPC方式及び端局装置 猿渡岱繭*

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Vol. 28 No. 145 t包波研究所季報 March 1982 pp.135-146

研究

衛星通信用 MCPC方式及び端局装置

猿渡岱繭* 山田勝啓* 高橋鉄雄キ 磯部俊吉林

井口政昭**大橋 一**西山 厳紳土屋 茂料

(昭和56年8月17日受理)

MCPC SYSTEM AND TERMINAL EQUIPMENT FOR

SATELLITE COMMUNICATION

By

Taiji SARUWATARI, Katsuhiro YAMADA, Tetsuo TAKAHASHI, Syunkichi ISOBE,

Masaaki IGUCHI, Hajime OHASHI, Iwao NISHIYAMA and Sigeru TSUCHIYA

In a domestic satellite communication system, the small capacity communication links using

small-sized earth stations are required for thin routes.

At Radio Research Laboratories, in the CS (Medium Capacity Communications Satellite for Ex-

perimental Purposes) experimental project, MCPC (Multi-Channel Per Carrier), one of small capa・

city satellite communication systems, has been proposed and developed successfully.

The operation of the MCPC system is similar to the operation of the conventional SCPC system.

The MCPC system is one of TDM-PSK-FDMA systems and contains a multiplex message. Tele-

phone signals digitized by Delta modulation as well as digital data signals are efficiently transmitt-

ed. The capacity of this system is of nine channels of telephone or of a combined signals which

consists of telephones and data. For the telephone transmission, a simple small-capacity digital

speech interpolation system (DSI) is employed.

]. まえがき

多様化する通信形態及び増大する通信需要に対処する

手段として,衛星通信系の導入が世界的iζ進められてい

る。我が国でも,園内衛星通信方式を実現するために,

昭和56年12月に打ち上げられた実験用中容量静止通信

衛星“さくら”(CS: Medium Capacity Communica-

tions Satellite for Experimental Purposes)を用い

て,各稀の衛星通信方式に関する実験が行われている川

(2) (3) 。電波研究所においては,大容量多A接続ブj式としての

TDMA方式(TimeDivision Multiple Access :時分

割多元接続)及び FDMA方式(F民 quencyDivision

Multiple Access:周波数分割多元接続), 1J、容量多元

$衛星通信部第一衛星通信研究室**鹿島文所第二宇宙通信研究室

135

接続方式としての SSRA 方式(Spread Spectrum

Random Access)及び SCPC方式(SingleChannel

Per Carrier)等の実験が行われているω。

国内衛星通信系では,小形地球局を用いる小容量通信

の需要が多いと考えられる。日本国内において,小形地

球局を用いる場合,既存の地上系との干渉問題を考える

と,マイクロ波帯(6/4GHz帯)で通信系を構成するこ

とは困難である。適用通信方式,置局条件等IC,比較的

に制限が少ない準ミリ波帯(30/20GHz帯)で,ノj、形地

球局による小容量衛}i!通信系を構成することが有利であ

る。

1~数チャネル程度の電話を伝送する小容量衛星通信

方式として, SCPC方式又は SSMA方式(Spread

Spectrum Multiple Access :スペクトル拡散多元接

続)が利用され,通信容量の変動l揺の大きい系では,デ

マンド・アサイン TDMA方式も有効である問。

Page 2: 衛星通信用 MCPC方式及び端局装置 - NICT...Vol. 28 No. 145 t包波研究所季報 March 1982 pp.135-146 研究 衛星通信用MCPC方式及び端局装置 猿渡岱繭*

136

小形地球局において,定常的IC,電話数チャネJレ相当

の需要が,存在する場合,乙れに適した小容量衛星通信

方式を開発する必要がある。乙 ζでは,その一方式とし

て MCPC方式(Multi-ChannelPer Carrier)を提案

し,システムの検討を行い,実験システムの試作を行い

所期の特性が得られた刷。

MCPC方式とは,小容量の電話(12チャネ Jレ程度以

下)を多重化して,一つの搬送波で伝送する方式であ

り, SCPC方式と同様K,搬送波チャネル・スロットの

割当てを行うもので, SCPC方式との混在が可能であ

る。

SCPC方式や SSMA方式によって,多チャネル化を

行う場合に比較して,次の利点を有する。

(1) 搬送波が1波であるので,相互変調積の発生を遊

けるために,送信機の出力パックオフを必要としな

い。したがって,電力を有効に利用できる。

(2) 高速ディジタノレ・データの伝送が可能である。

(3)変復調器が1式で済み,コストを低くできる。

MCPC方式の実現には,アナログ的に行う FDM-FM

(Frequency Division Multiplex Frequency Modula-

ti on)方式と,ディジタル的に行う TDM-PSK(Time

Division Multiplex Phase Shift Keying)がある。こ

こでは,音声及びテ’ィジタル・データを効率的iζ伝送で

きる TDM-PSK方式を適用している。音声の符号化に

は,簡易化のために,適応型デ Jレタ変調(ADM:

Adaptive Delta Modulation)を用い,小容量で電話

伝送の多重度を増すために,簡易な DSI(Digital Spe-

ech Interpolation)機能を付与し,データ伝送に対し

ては,誤り訂正符号を適用している。

本文では, cs準ミリ波中継器を対象として,既iζ開発

されている準ミリ波帯小形地球局{引に適合する MCPC

方式の検討,試作した実験システムの構成,機能,特性

等について述べる。

2. MCPC方式

2. 1 小容量衛星通信方式

準ミリ波幕小形地球局(アンテナ直後3m以下で,設

置・保守運用が比較的に容易なもの)による小容量衛星

通信方式を実現する方法として,次の諸方式がある。

① FM-SCPC方式

② PSK-SCPC方式

③ SSMA方式

④ TDMA方式

⑤ FDM-FM-MCPC方式

⑥ TDM-PSK-MCPC方式

各方式は,それぞれ長所及び短所を有し,目的及び用途

電波研究所季報

に応じて適用領域が異なる。

SCPC方式は,最も簡易な小容量方式であり,電話1

チャネル単位で多元接続が可能である。 7 イクロ波帯で

は,既に,インテルサット衛星系や一部の園内通信衛星

で利用されている。準ミリ波帯においても,周波数安定

度の高い送信機(1x10-7以下)及びノfイロット信号に

よる AFC(自動周波数制御)機構を適用するととによ

って,安定な多元接続を実現できることが, cs実験で

確認されている附則刷。電話及び9600bps以下のデー

タの伝送を主とする場合には音節コンパンダを用いる

FM-SCPC方式が有効であり,ディジタル・データ伝

送が多い場合ICは,電話伝送との共存性がよい PSK-

SCPC方式が有利である。

チャネル・ユニットを必要に応じて増設することによ

って,容易に,多チャネノレ運用を行うことができる。こ

の場合,地球局送信機で共通増幅を行う必要があり,相

互変調積の発生を許容値以下にするために,出力パック

オフ(飽和出力からの低下量)を必要とする。したがっ

て,小形地球局の送信篭力の利用効率が低下する欠点、が

ある。

SSMA方式では,電話1チャネル相当の狭帯域信号

を,固有の拡散符号でスベクトルを拡散し,共通の周波

数帯域で多元接続を行う。各信号が固有のアドレスを有

しているので,ランダムアクセスが可能である。狭帯域

による妨害に強く,他への単位周波数当たりの干渉が小

さい利点を有する。しかし,拡散符号が,完全に直交し

ていないため, 1システム内のアクセス数が多くなる

と,拡散復調後の C!N(搬送波電力対雑音電力比)が

低下し,通話品質が劣化する欠点がある。多チャネル化

に関しては, SCPCと同様の欠点、がある。しかし,地球

局送信電力を有効に利用するための多重化がなされ, csによる実験が行われている(!!)(!剖{問。

TDMA方式は,一般的に,大容量通信系を構成する

のに有利であるが,各地球局の容量を比較的自由に設定

できるので,小容量局からのアクセスも可能である。し

かしながら,高電力送信機を必要とするため,小形地球

局iζ不向きである。 cs実験において, 小容量方式iζ適

用できる TDMA方式が検討されている刷。

FDM-FM-MCPC方式では,搬送多重電話の基礎前

群(BPG:3チャネル)~基礎群(BG:12チャネル)

相当を FM変調し,各局のスペクトルが一つの中継器

で,重ならないように配列する方式である。既存の地上

系システムとの相互接続が容易である。コンパンダやス

ピーチ・インタポレーションを適用して,伝送容量を大

きくする乙とが可能である (15)。高速データ伝送が困難

であり,端局コストが向くなる欠点がある。

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Vol. 28 No. 145 March 1982

MCPC~Jl/,,)

百~ l l'~I MCPC 通信システム桃成の慨時

TDM-PSK-MCPC方式では,アナログ信号をディジ

タル化し,他のディジタル情報とともに多重化し, PSK

変調を行い, SCPC方式と同様に,衛展中継器で共通増

幅をして多元接続を行う。通話品質は AID変換の特性

及び伝送路の符号誤り率(BER)で決定される。音声通

話に対して, DSI機能を適用する乙とによって,実効的

~C,同時通話チャネル数を多くすることが可能である。

更に,ディジタル化により,高速データの伝送が容易で

ある。

以上の検討をもとに, cs実験を目的として,既設の

小形地球局の送信電力で容易に実現が可能な TDM-

PSK-MCPC方式牢がよいと考えられる。本方式は,既

設の SCPC方式と混在して利用でき,将来,実用化さ

れる場合に,両方式を同一多元接続システム内に収容で

きる利点、がある。

2.2 MCPC通信システムの概要

MCPC方式を用いる MCPC通信システムは,大形

地球局による MCPC親局及び小形地球局による MCPC

子局で構成され,親局は必要に応じて後数局震かれ,子

局は多数置かれる。通信回線は,原則として,親局・子

局聞に形成される。必要に応じて,子局相互間lζも形成

できる。第1図に,通信システム構成の概略を示す。

親局は,直径IOm程度又はそれ以上のアンテナ,高

出力の電力増幅器を有する送信機(多数の子局への信号

を共通増悩するために,数lOOW程度〉,パラメトリッ

ク低雑音受信機及び多数の MCPC信号を発生できる

MCPC端局を有する。子局は,直径 2m程度のアンテ

ナ, 2~20Wの小出力の送信機, FET低雑音受信機及

び MCPC端局を有する。

2.3 MCPCシステムのパラメータ

2.3.1 適用衛星及び関連地球局

本以下, I仰ζMCPC方式という

137

(1)適用衛星

我が国における,近い将来の国内衛星通信、ンステムを

忽定し,現在実験に用いられている csKよって, シ

ステムを構成する。準ミリ波帯中継器を用い,主なパラ

メータとして,次の値を用いる。ただし, 乙れらの値

は,各種の cs実験をもとに推定したものである。

衛星受信アンテナ利得 : 36dB

衛星受信システム雑音温度: 5500 K

衛星送信アンテナ利得 : 36dB

送信機出力/受信機入力 : 106dB

(2) 関連地球局

MCPC親局として,鹿島 cs主局の準ミリ波帯用地

球局システム附を用い,子局として, SCPC方式用に

用意された直径2mのアンテナを有する地球局を用い

るm。各地球局の主なパラメータは次のとおりである。

(同親局

69. 5dB 送信アンテナ利得

送信電力

受信アンテナ利得

500W (最大)

66.5dB

受信システム雑音温度: 165 K

(アンテナ雑音温度を含む)

(b) 子局

*! 地球局送信機出力(dBm) 33.0 27.0

地球局送信アンテナ手IH(}(dB) 53.3 69. 5

地球局 EIRP(dBm) 86. 3 96. 5

伝倣損失(dB)** 214.1 214.1

1平il是受信アンテナ利得(dB) 36.0 36.0

Vii!呈受信機入力(dBm) -91.8 -81. 6

衛星受信システム雑音(d活B力m密/H度z) 161.1 -161.1

tり回線 C/No(dB・Hz〕 69. 3 79. 5

術足送信機出)J(dBm) 14.2 24.4

ifli IT:送信アンテナ利/'.}( dB) 36.0 36.0

i:!i!ll EIRP (dBm) 50.2 60.4

{ム搬倒火(dB〕柿 210. 5 210.5

地球1;;:,受信アンテナ平!Jiリ(dB) 66. 5 50.3

j也f:)(局受伝機入)J(dBm〕 93.8 -99.8

受f,\システム.i1Hf,益)(Jf~m交/Hz) -176. 3 -170.0

下り回線 C/No(dB・Hz) 82. 5 70.2

総合 C/N0(dB•Hz) 69.1 69.5

本子},,)母親局の C/Noとli.i],lj,になるように設定料大気損失を含む

33.0

53.3

86. 3

214.1

36.0

-91.8

-161.1

69. 3

14. 2

36.0

50. 2

210.5

50. 3

110.0

-170.0

60.0

59.5

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電波研究所季報

2.3.2 MCPC方式の諸元

(1)変調方式及び伝送速度

PSK変調方式として, CPSK(Coherent PSK)及び

DPSK (Differential PSK)がある。多重化されたディ

ジタル信号には,周期信号等の固有な信号が含まれてい

るので,復調時の位相不確定除去を受信側で,論理的に

行える。したがって,良好な BER特性が得られる

CPSKを適用できる。また, SCPC方式と混在したと

きに,チャネル・スロット数を多くするために, 4相方

式とする。

2.3.1で得られた C/N。及び, cs実験で得られてい

る C/N。対BER特性聞をもとに, C/No=69.1dB・ Hz

のときに伝送可能な伝送速度と BERとの関係を第2図

に示す。 4相 CPSKを用い,誤り訂正方式としては,

レイト 3/4畳み込み方式を適用している。理論値からの

劣化原因は,ハードウェア上の要因と伝送系の要因があ

り, cs準ミリ波帯では,衛星のスピン運動に起因する

ものが大きい。

デルタ変調による電話伝送時の許容 BERを1×10-3

位とし,データ伝送時のそれを 1×10-e以下(誤り訂正

機能を付加する)として,降雨マージンとして 5dBを

考慮すると, 200~300kbpsの伝送速度が許容される。

晴天時運用における BERは,電話伝送IC対して1x10-

程度,データ伝送に対して1×10-10以下が得られる。

ここでは, 200kbpsで4相 CPSK方式とし,受信は

同期検波方式とする。

(2)音声符号化方式

装置の簡易化,耐ビット誤り特性, DSI機構の簡易

化等を考慮すれば, ADM方式を適用する乙とが有利で

ある。通話品質は,標本化周波数に比例するが,回線の

誤り率との関係から上限が定まる。専用回線や災害時通

信用を考えると, 28~・40kHz程度が適当である。 200

kbpsの伝送速度から, 32kbpsとし, 6チャネル分を

伝送する。 ADMの通話品質として, 25dB以上の Sf

Nq (信号対量子化雑音比)が可能である。

(3) DSI方式

従来, DSI機能は, 96チャネルや64チャネルのよう

に,比較的容量の大きい PCM方式に用いられてい

る081。PCM方式では,通話音声検出装置が複雑とな

り,小容量系では,単位チャネル当たりのコストが大き

くなる。ここでは, ADM信号の性質を利用した簡易な

音声検出法による DSI機能を提案する。

DSIを用いる場合,入力チャネル数 Ntiζ対して,

伝送路チャネJレ数 Ntが小さい。したがって, 同時入

力チャネル数が Ntより多くなると, Ntを超えた部分

が伝送されずに,締め出しを受ける。締出し率0.5.$ぢを

138

送信アンテナ利得 : 53.3dB

送信電力 : 2W

受信アンテナ利得 : 50.3dB

受信システム雑音温度: 650 K

地球局の条件として,パイロット信号による受信AFC

機能及び1×10-1以下の送信周波数安定度が要求され,

上述の地球局は,これらの要求を満足している。

(3) 回線パラメータ

衛星及び地球局のパラメータをもとに,親局から子局

への回線及び逆方向の回線の特性を第1表に示す。ま

た,子局聞の特性も,参考のために同表に示す。

子局から親局方向の C/No(搬送波電力対雑音電力密

度比)は69.1dB•Hz である。一方,逆方向の C/No を

同等iとする場合の親局送信電力は0.5Wでよいととがわ

かる。衛星上での電力比はlOdBとなり,衛星電力はほ

とんど,親局から子局方向の送信iζ配分される。子局間

の CfNoは60dB•Hz 以下であるが, cs 実験結果によ

れば,更に数dB程度大きい値が得られている川。乙れ

らの C/N。をもとに, MCPC方式の諸元を決定でき

る。

第2図

誤り訂正吾LF一一...A..一一「

2M lOOk 200k 500k 伝送速度(bps)

ピット誤り率と伝送速度の関係

IM

4相C!".SK・同期検波C/N, : 69. !dB・ Hz

50k

l

l

10-’

10-•

io-•

10-•

- 向。1

10-• 配宵

P岡崎占

hM

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Vol. 28 No. 145 March 1982

断順位b引 術

1

2 N N Y l前フー締出ール

3 y y y 通話チャネJレに割当て

4 N y y

5 y y N 無通話チャネル割当て

6 N Y N (前フレーム割当てチャネル優

7 Y N N 先〕

8 N N N

Y: Yes N: No

許容するときI山, 619の圧縮率 (Ni/Ni)が得られる。

ADM信号を一定間隔(5~100ms)のフレームIt:区

切り,各チャネルごとに音声の有無の判定を行う。音声

の存在するチャネル数が6以下のとき,それらのチャネ

ルIL伝送路を割り当てる。音声の存在するチャネル数が

7~9のとき,一定の法則によって,そのうちの6チャ

ネルにのみ伝送路を割り当て,残りのチャネJレを締め出

す。乙の場合,締出しの公平化,特定チャネルのみが劣

イじしないようにする。フレームごとに,チャネル割当符

号を同時に伝送し,受信銀ijでは,苦手l当符号iζ従って, 9

チャネルに分配を行う。

音声検出方法として, ADM信号の0101010・・…パタ

ーンを検出し, 1フレームにわたって,乙のパターンが

検出されるとき,乙のフレームをポーズ(音声が存在し

ない状態)と判定する。

チャネル割当ては,各チャネルの状態変化をもとに行

われ,前フレームで締め出されたチャネルに優先的It:苦手l

り当て,不要な不連続音を避ける割当てを次に行ってい

る。チャネル状態として,

A:前フレームは会話中であったか?

B:前フレームは割当てられたか?

C:現フレームは会話中か?

の三通りがある。割当ては第2表の状態組合せどとに,

優先順位を定めている。通話中であるかぎり, 2フレー

ム連続して締出しを受けないようにしている。また,締

出しを受けた区間(前区間まで伝送されていて,割当て

を受けない区間)に対して,受信側で, 1回だけ直前区

間と同一情報を再生し,締出しを受けた場合の不自然さ

を解消している。

フレーム長として, 20ms(640ピット)を適用して

第3表 MCPC端局装置の主要諸元

139

音声入出力郎

インタフェース | 4線式, 6000平衡

入力レベル I-SdBm

出力レベル IOdBm

周波数帯域 I300~3400Hz

ADM変復調部

通過帯域 I300~3400Hz (IC化フィルタ)

変調方式|適応型デルタ変調(CVSD方式)

正伸方式|テ・ィジタノレ汗:11~

根本化周波数 I32kHz

DS I部

圧縮率 I6/ ポーズ検出フレーム長

締出し率

締出しフレーム処理方法

データ入出力部

インタフェース

データ速度及び同期方式

20ms

0.5%以下(目標値),連続締出しはない

受信側で直前フレームを1図だけ再生

ド単

一Z

H

2

h

h

仙)T

L化

S

れ、-zrrE、rE、r‘、

)期;期

H

H

一日下-

J

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u

b

u品

babu品

fLAU

O自

δ

。L

TAAU

-a4nwu

wjnLAwd

A

司Ea

唱E

--

誤り訂正符号復号部スクランプラ・デスクランプラ

訂正符号化方式

拘束長

訂正能力

V.35準拠,自己周期方式

レイト 3/4畳み込み

80ピット

2ピット

多重分離部

入力データ

出力データ

付加データ

192kbps

200kbps

同期信号, DSI割当て情報

PS K変復調部

変調方式

復調方式

搬送波周波数

安定度

出 力 レ ベ ル

入力レベノレ

出力帯域外スプリアス強度

占有帯域幅

等価雑音帯域幅

ピットレイト

ピット誤り率

4相CPSK

同期検波70 MHz±lO MHzで45kHzごとに設定可能

土250Hz/月以内

OdBm/750

-30±15 dBm/750

-40dB以下(基本波出力lζ対して)

140kHz

120kHz

200 kbps

1×10-4以下 (C/N=I3.5dB)

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140

48kbps 48kbps 9. 6kbps 1200bps

9ch 6ch

幸市

’h I92kbps I 開店

;'fli

電波研究所季報

I延{以{.\ ;;·11'.’ I:;~:

茸~3 阿 MCPC制局袋内全体!tYIJi.¥'.:

ITT 4医lMCPC制局袋町外側

いる。

(4) データ伝送モード

本 MCPC方式では,電話とともに, ディジタノレ ・デ

ータを同時に伝送できる。伝送可能なデ ータとして,

1200 bps以下の非同期 デー タ,9.6 kbps及び48kbps

の同期データとし,電話伝送を2チャネノレに減じ, 4チ

ャネJレ相当分(128kbps〕によって伝送する。基本的iζ

は,レイト 3/4畳み込み誤り訂正符号を付加した 48

kbpsのデータを 2チャ ネJレ伝送できる。 その内の 1チ

ャネノレの代わりに, 9.6 kbps及び1200bpsのデータ伝

送を行う。

3. MCPC端局装置の構成

3. l 装置の概要

2. 3の検討をもとに,MCPC端局装置を構成し,主

な諸元を第3表lζ示す。全体構成図を第3図K示し,そ

の外線図会第4区IK示す。

本装置は, 9チャネノレ分の音声入出力部, ADM変復

調部,圧縮率6/9の DSI部,データ入出力部, 誤り訂

正事i号復号部,多ill分離部, PSK変復調部及び擬似信

号発生部から情成される。

伝送モードは, DSIモード及びデータ伝送モードがあ

る。 DSI モードでは,~{!:話専用であり , DSI を用いて,

9チャネノレのHJ:話を6チャネJレの伝送践で伝送する。デ

ータ伝送モードでは,電話2チャネJレとデータの共用モ

ードである。データに対してのみ,誤り訂正符号を適用

して,屯訴とデータ伝送の品質のバランスを図っている。

多重分離部では,同期信号,DSI割当信号等の付与及

び分離を行う。受信側では,復調信号の位相不確定除去

を行っている。

PSK変復調印iの搬送周校数は,70MHz,併であり,

周波数シンセサイザ方式によって,45kHz間隔 で, 任

意の880波のうち 1波に設定される。擬似信号発生部

は, PN(Pseudo Noise)コー ド発生器と PSK変調器

から構成され,多チャネノレ伝送の模擬及び干渉特性の実

験IL用いられる。

AFC機能は, 地球局の中間周波数共通部lζ付属し,

本装置では不要である。 AGC(自動利得倍lj街])機能は

PSK復調探のチャネノレユニットどとに付加される。衛

星への送信周波数は,地球局と一体となって決定される

が,70MHz布ーで,250Hz/月以下の安定度を目標と し

ている。

3. 2 装置各部の構成と機能

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Vol. 28 No. 145 March 1982

1£@--][ クロック 1

古語;←][クロック 1

クロック 2

クロァク 2

クロック 1: 1. 544MHz クロック 2: 32kHz

141

茸\ 5図 ADM 変復調珂~tNil戊|司

3.2. 1 音声入出力部

実験通話用ハン ドセット又は線路とのインタフェ ース

であり,モニタ ・スピーカ用の増幅器を有する。

ハンドセットに直流パイアスを印加し, 送話出力-8

dBm (600n平衡)を得て, ADM変復調部へ供給し,

ADM変復調部からの出力を, OdBmとして受話探へ

供給する。線路入出力は,架上端子から,ハンドセット

と同一レベノレでインタフェ ースされる。実験f!J試験信号

の入出力は前面から行われる構造である。

すべて, 4線方式で構成されている。したがって, 2

線方式へ接続する場合Kは,衛星通信lζ適合したエコー

防止対策が必要であり,本システムには含まれなていな

3.2.2 ADM変復調部

ADM変復調部の構成を第5図IC示す。 ADM変復調

部は減衰i*CATT),低域フィノレタ(LPF),ADM変調

器及び ADM復調寝から構成される。送信側の ATT

は, ADM入力レベJレ調整用 で あり,受信側の ATT

は,ハン ドセットの音量調整用である。低域フィ Jレタの

遮断周波数は4kHzであり,本フィ Jレタは,1.544 MHz

の矩形ク ロックパルスで駆動されるスイッチド ・キャパ

シタを用いて,IC化されている。

ADM変調器 ・復調器は,局部復号器をテ’ィジタノレ的

lζ制御する CVSD (Continuously Variable Slope

Delta Modulation〕方式を適用し,圧伸のステップ ・

サイズが連続的K変化する方式である。標本化周波数は

32kHzであり,圧伸パラメ ータは, 乙の周波数IC対し

て,最適になるように設定さる。

本部の外観を第6図lζ示す。 1シート IC2チャネJレ分

が実装されている。

3. 2. 3 DSI部

DSI部は,本 MCPC端局装置の主要部分で あり,

DSJ再j) ADM変復調告JI

賀l61究lADM&'.復調郊 /DSIffll外/!JI

AD~ lf,.\;}11\)J

2

(a)送C(lf!IJ

(b)受f,.lfl¥lj

>rn図 DSI部精 j戊図

9チャネJレの電話信号を6チャネJレの伝送路Iζ割り当て

る機能を有する。第7図lζ構成を示し,第6図IC外観を

示す。送信側は,ADM信号検出回路,優先順位設定回

路,チャネノレ割当符号出力回路, ADM信号遅延回路及

び DSI信号出力回路から構成され, 受信側は, DSI信

号入力回路,チャネノレ割当符号入力回路,ADM信号出

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142 電波研究所季報

繰り訂正符号復号部データ入出力t'lll

is同:kb期>PSデータ)

is閑:kb鯛PSデータ)

協ーペー|叫1=1・同6k期bpデsータ) 路

標(9本.化6kbパpsル)ス

48kbos (同期データ)

48kb s (同期データ)

1200bos (非同|データ)

9.6kb四S(同期データ)

第8図データ入出力部及び誤り訂正符号復号部構成図

力回路及び ADM信号遅延回路から構成される。

ADM信号は, ADM信号検出回路及び ADM信号

遅延回路に入力される。 ADM信号検出回路へ入力され

た ADM信号は,フレームどと(20msで640ピット)

のポーズの有無を判定され,その情報は優先順位設定回

路へ入力される。乙こでは,前フレームの割当て状態を

記憶しているので,第2表の規則に従って,現フレーム

の割当てを行い,その結果をチャネル割当符号出力回路

へ供給する。との出力によって, 9チャネルの ADM

信号入力のうち,伝送すべき6チャネルを, DSI信号出

力回路で選択して多重分綾部へ出力する。チャネル割当

てに関する情報も多重分離部へ出力する。 ADM信号遅

延回路は剖Oピットのディジタル遅延回路で, 1フレー

ム中の全チャネルのポーズの判定及び,割当てチャネル

の決定に要する時間だけ, ADM信号を遅延する。

受信側では, 6チャネルの DSI信号とチャネル割当

符号をもとに, 9チャネルの ADM信号出力回路へ割

り当てる。 ADM信号出力回路では, DSI信号入力回

路から入力があったとき,乙のフレームを ADM信号

として出力し,割当てがない場合は,ポーズに対応する

010101……パターンを出力する。ただし,前フレームに

出力があり,現フレームに割当てがない場合には,締出

しと判定し,前フレームの内容を ADM信号遅延回路

から受けて出力する。

3.2.4 データ入出力部及び誤り訂正符号復号部

データ入出力部及び誤り訂正符号復号部の構成を第8

図に示す。

(1) データ入出力部

データ入出力部は, 48kbps及び9.6kbpsの周期デ

ータ(ST2モード)及び, 1200bps以下の非同期デー

タを, 2系列の48kbpsディジタル信号として,誤り訂

正符号復号部へ出力する。一方の48kbps系は直接出力

される。他方の48kbps系には多重回路が含まれ, 48

kbpsデータ又は, 9.6 kbps及び1200bpsデータの一方

が選ばれる。 1200bps以下の非同期データは, 9.6kb戸

で単純標本化され, 9.6kbpsデータとして取り扱われ

る。受信側の1200bpsデータは, 9.6kbpsの標本化パ

ルス列のまま出力され,使用される端末機器の低域ろ波

器によって補聞を行う。

(2) 誤り訂正符号復号部

48kbpsディジタル信号2系列を受け, CCITTV.35

に準拠したスクランプラを通り,レイト 3/4畳み込み誤

り訂正符号化を行い, 32kbps4系列として出力する。

受信側では逆の操作が行われる。スクランプラ及びデス

クランプラは ON/OFF機能を有し,誤り訂正能力は,

拘束長80ピットに対して, 2ピットの誤りまでである。

スクランプラからの48kbpsのディジタル信号は, 3

ピットどとに区切り,過去20フレームの状態をもとに,

Iピットのパリティピットを付加する。 ζれを 32kbps

2系列として PSK変復調部へ出力する。復号回路で

は, 32kbps2系列のディジタル信号を4ピットどと

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Vol. 28 No. 145 March 1982

96kbp尽× 2 IOllkhp只ノ z

データ192kbps

第9図多重分離部構成図

5ms

チャドレA I 同期~1.7'} I ASS I デrー州-A

チャネルB I 醐~'t*I ASS I データ部ーB

IOOkbps x 2

ト10 ピ y ト+10 ピ y 時一一一 4~0 ピ y トー←ー→ASS:チベネル1訓当符号 ASS: ASSの反転

第10図伝送フレームフォーマット

Ir,パリティチェックを行い,誤りの有無を判定し,必

要に応じて訂正を行う。パリティピットを除去して, 48

kbps直列信号としてデスクランプラへ与える。

Aチャネル

lOOkbps

搬送波

45.9875MHz

Bチヘネ jレ

lOOkbps

!OOkbpsX 2

A

B

200kHz

受信f!liJ

143

3.2.5 多重分離部

第9図IC,多重分離部の構成を示す。 DSIモード,

データ伝送モード及び192kbpsデータモードの選択を

行い,それぞれのモードに応じて,付加ビットを挿入し

て, 100kbps 2系列のディジタル信号として, PSK変

復調部へインタフェースする。

送信側では, DSI!データ選択回路でモードを選択し,

32 kbpsディジタル信号6系列を多重回路 (I)へ出力

し,ここで96kbps信号2系列IC変換する。速度変換回

路及びフレーム同期信号・チャネル割当符号挿入回路に

よって, lOOkbps2系列に変換される。また,本部で

は192kbpsデータを直接入出力できる。ただし,誤り

訂正は行われない。 5msを1フレームとして,第10図

IC示す伝送フォーマットで伝送される。 96kbpsデータ

1系列の5ms分480ピットを1フレームとし,これに,

同期信号10ビット及び DSI用のチャネ Jレ割当符号10

ビットを挿入し, Smsの1フレーム当たり, 500ピッ

トとする。同期信号-A及びーBは,受信側での,フレー

ム周期及び位相不確定除去に用いられる。チャネル割当

符号(ASS)は,第1ビット~9ビットが, DSI部の

ADM信号入力9チャネルに対応し,伝送される 6チャ

ネJレ分を7 ーク(状態“1っとする。マーク数は常に6

であるので,受信側で定マーク検定が可能であり, 1ピ

ット誤りを検出する。チャネルBIζ,ASSの反転符号

(ASS)を挿入し,反転2連続照会によって, 2ビット

誤り検出を行う。 DSI信号の 1フレーム長は20msであ

5. Q.15Ml-lz 27Ml-lz・:

mn図 PSK変復調部構成図

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~/

144

るので, 4フレーム続けて,同ーの ASS及び互否きが

挿入される。

受信側では,周期信号を検出し,とれに基づいて,位

相不確定除去を行う。チャネル割当符号検出回路で,

ASS及び ASS信号から,チャネJレ割当符号を検出し,

DSI部へ出力する。データ部は96kbps 2系列IC::変換さ

れ,更に 32kbps6系列に分離される。

3.2.6 PSK変復調部

PSK変復調部の構成を第11図に示す。 lOOkb戸 2

系列のテ’イジタル信号でそれぞれ, 90°位相が異なる搬

送波を2相 PSK変調する。乙れらの2信号を合成し

て, 4相 PSK信号とする。搬送周波数は,周波数シン

セサイザによって, 45kHz間隔で,任意IC::設定される。

出力信号は70MHz帯で,地球局中間周波数共通部へ

供給される。

送信側では,ディジタル入力は,遮断周波数70kHz

の4次パタワース形の低域フィルタで帯域制限され,更

に, 4次の遅延等化が行われる。帯域制限された信号

で, 45.9875MHzの搬送波を位相変調して,各出力を

合成する。周波数シンセサイザ出力を用いて70MHz

帯iζ周波数変換する。

受信側では, 3段の周波数変換を行い, 200kHz帯に

変換し,ロールオフ・フィルタ(75%ロールオフ特性)

によって帯域制限を行う。復調器は,周期検波方式によ

る4相位相復調器である。

3.2.7 その他

擬似信号発生部は, 200kbpsの PN符号発生器と

3.2.6変調部から構成される。

以上のほかに,各部へ基準周波数やクロックパルスを

供給するための基準信号発生部がある。

原本化周波数: 32kHz信号周波数: 8口OHz

。りー

E国』)『h

-20

-30 -20 ー10入力(dBm)

第 12図 ADMの入出カ特性

電波研究所季報

門帆沼

-20

標本化周波数: 32kHz

100 200 500 lk 2k

周波数(Hz)

第 13図 ADMの振幅周波数特性

5k

50 標本化周波紋: 32kHz入力信号周波数: 800Hz

SIN

30 40

30 AU

。4

(国司)ロ+

Z\出

(回目M)

Z\凶

10 20

30 -20 -10 入力(dBm)

第 14図 ADMの信号対雑音比特性

4. 装置の特性

4. I 音声伝送系の特性

伝送路に誤りがない場合について ADM系の各種の

測定を行い,特性を把握した。試作装置は, 18の送信側

ユニット及び同数の受信側ユニットを有し,すべての組

合せについて測定するととは困難であるので,代表的な

経路について測定を行った。 9測定例のうち,代表的な

入出力特性,振幅周波数特性及び信号対雑音比特性を,

第12.13及び14図に示す。音声通話に対しては,十分

に機能することがわかった。 ADM変調器に市販の IC

モジュールを用いているので,回路のパラメータを任意

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Vol. 28 No. 145 March 1982 145

正誤り訂正なし希望波/F渉泌

o o'rlり訂正付加l・oodB。

日dBロ-5dBt.-!OdB

\\ ¥ ¥¥_' チャ干、 lし間l同 135kHz

10 '

10‘

でホ

出凶伺

10 5

ょメ

10・'""

10’

10-・

60 65 C/N, (dB・Hヌ)

第15関 C/No対 BER特性

に調整できないので, 32kHz標本化の ADMとして

は,十分な特性とは考えられない。特にS/N+D(信号

対量子化雑音及びひずみ雑音)特性を更に改善する必要

があろう。

DSI機能について,一つのチャネルにニュース音声を

挿入し,他のチャネルfC,擬似的IC各種のポーズ率の信

号を入れて聴取した結果,満足できる評価が得られ,締

出しの影響は少ない。また,最悪の締出し率3396のと

き,多少の不自然さは存在するが,通話の了解性は損な

われないことがわかった。

4.2 PSK伝送系の特性

70MHz帯の中間周波数で折り返し,途中で人工的に

雑音を付加し,等価的に C/Noを変えながら, BERを

測定した特性を第15図に示す。理論値からの劣化は1.5

dB (BER=lXlO-つであり,十分に実験IC利用できる

特性である。誤り訂正符号 lとより,等価的lζ2.7dB

(BER=l×10-6)の C/Noの改善が得られた。

1チャネル (135kHz)離れたスロットに擬似信号

(PN符号で変調した4相 PSK信号)を印加したとき

10・l:i:: 与1∞

nu l

10 ,,

10

10

60 65 C/N。(dB・Hz)

第 16図 隣接チャネノレ干渉特性

の,隣接チャネル干渉特性を第16図に示す。また,入

力範囲30dBK対して, AGC回路出力のレベル偏差は

O. ldB以内である。

s.むすび

園内衛星通信方式の一方式として,小容量通信方式に

ついて検討を行い, ADM-TDM-PSK-FDMA方式に

よる MCPC通信方式を提案した。本方式を,小形地球

局及び cs相当の衛星を用いて実現する場合の可能性

及びパラメータについて検討を行った。これらの検討結

果をもとに, MCPC端局装置の試作を行い, 所期の性

能が得られた。今後, cs実験の一環として,衛星回線

を構成した場合の特性を明らかにして行く予定である。

終わりに, cs実験実施に協力いただいている関係の

方々に謝意を表す。

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