高齢者のヘルスリテラシー向上のための教材開発と教育方法の提案

三輪眞木子（放送大学）

佐藤正惠（千葉県済生会習志野病院）

山下ユミ（京都府立図書館）

磯部ゆき江（日本図書館協会）

阿部由美子（放送大学）

アウトライン

•研究の動機

•概念枠組

•調査方法

•先行研究レビュー• 年齢によるデジタルデバイド

• 高齢者のヘルスリテラシー

• 健康寿命

•今後の予定

•まとめ

研究の動機

医療情報の媒体と品質

• 紙媒体の医療情報とWeb上の情報：タイムラグ

• Web上の医療情報：玉石混交

• Web上の医療情報の信頼性判定：経験値が必要

高齢者のヘルスリテラシーの必要性

• 医療情報のアクセス：ヘルスリテラシーが必要

• 高齢者：年齢によるデジタルデバイドにより情報検索スキルが低い

• 高齢者は若年者より病気にかかる確率が高い

⇒高齢者のヘルスリテラシー教育が必要

概念枠組

• ヘルスリテラシー：医療情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力で、それによって日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて判断し意思決定をして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの(Sørensen, 2012)

• デジタルデバイド：コンピュータやインターネットやオンライン情報へのアクセス手段を持つ者の集団と持たざる者の集団の間にある格差で、地域による格差と個人間の格差がある(Warchauer, 2007)

• 健康寿命：日常生活に制限のない期間

調査方法

2019

• 先行研究レビュー

• 医療関係者インタビュー

2020

• 患者・家族インタビュー

• 高齢患者の学習モデル構築

• 学習目標・チェックリスト作成

2021

• 教材開発

• 教材利用

• 学習モデル検証

•先行研究レビュー年齢によるデジタルデバイド

•各年齢層が好むメディア：青少年期に習得したもの⇒高齢者のICT利用が乏しいのは当然（ Schaffer, 2007）

•年齢によるデジタルデバイドの要因（Johns & Baven, 1998; Naumanen&Tukiane,2010）• 認知的制約（短期記憶､推論､空間認知､処理速度）• 処理資源の制約（注意力､作業記憶）• ノイズ情報の識別力低減• 視聴覚等の感覚の劣化• コンピュータ自己効力感低下､コンピュータ不安増加（Charness, et al., 2006）

•先行研究レビュー高齢者のヘルスリテラシー

•後期高齢者は前期高齢者より医療にかかわる意思決定での専門職や公的機関への依存度が高い（善生, 2015）

•後期高齢者は前期高齢者より健康悪化におけるインターネット検索の利用率が低い：前期7.8%後期2.1%（善生, 2015）

•ヨーロッパ8か国調査では、ほとんどの国で高齢者のヘルスリテラシーが低かったが、日本とオランダでは年齢と正の相関を示した（Nakayama, et al., 2015）

ヘルスリテラシー評価尺度ヘルスリテラシーを多次元でとらえる尺度

名称 領域 目的

European Health Literacy Survey Questionnaire (HLS－EU-Q47) Sorensen, et al., (2013)

･アクセス･理解･評価･医療情報の適用

国民のヘルスリテラシーを比較

Health Literacy Questionnaire (HLQ). Osborne, et al., (2013)

･医療提供者からの支援･自分の健康管理の情報･積極的な健康管理･健康の評価･正しい医療情報を得る･医療情報を理解し行動

個人・集団・国民のヘルスリテラシーのニーズとアウェアネスとアウトカムに関する情報を提供

Chinese Resident Health Literacy Scale (Shen, et al., 2015)

･知識と態度･行動とライフスタイル･医療に関するスキル

共同体の医療に関する知識の理解をガイド

Nakayama, et al., 2015より

•先行研究レビュー健康寿命

•健康寿命はWHO加盟191か国中で日本が世界一長い（Mathers, 2001）

• 2001年から2009年の平均寿命と健康寿命の延び：健康な期間だけでなく健康でない期間も延長（厚生労働省､2011）

2001 2009

平均寿命 男性 78.07 79.55

女性 84.93 86.30

健康寿命 男性 69.40 70.42

女性 72.65 73.62

今後の調査予定

•先行研究レビューの継続

•先行研究レビューに基づく「医療従事者への患者のヘルスリテラシーに関するインタビュー」ガイド作成

•「医療従事者への患者のヘルスリテラシーに関するインタビュー」実施

まとめ

高齢者のヘルスリテラシー向上のための教材開発に向けて、以下を実施した

•先行研究レビュー• 年齢によるデジタルデバイド

• 高齢者のヘルスリテラシー

• 健康寿命

•先行研究レビュー結果に基づき「医療従事者への患者のヘルスリテラシーに関するインタビュー」を実施する予定

謝辞

本研究は、

科学研究費基盤C「高齢者のヘルスリテラシー向上のための教材開発と教育方法の提案」の補助金により実施しています。

先行研究文献デジタルデバイド

• Schaffer, B. (2007) The digital Literacy of seniors. Research in Comparative and International Education, 2(1), 29-42.

• Charness, N., Czaja, S. J., Fisk, A. D., Hertzog, C., Nair, S. N., Rogers, W. A., & Sharit, J. (2005) Predicting the use of technology: Findings from the center for research and education on aging and technology enhancement (CREATE). Gerontechnology, 3(4), 230.

• Jones, B.D. & Bayen, U.J. (1998) Teaching older adults to use computers: recommendations based on cognitive aging research. Educational Gerontoloty, 24(7), 675-689.

• Naumanen, M., & Tukiainen, M. (2010). Practices in old age ICT education. In Learning and instruction in the digital age (pp. 273-288). Springer US.

先行研究文献高齢者のヘルスリテラシー

•善生まり子, 久保田亮, 菅野康二, & 戸田肇. (2015). 高齢者における地域医療サービスに係る意識調査: 家族構成, 性別, 年齢から見えてくる相違点. 保健医療福祉科学= Journal of human care sciences, 5, 1-10.

• Nakayama, K., Osaka, W., Togari, T., Ishikawa, H., Yonekura, Y., Sekido, A., & Matsumoto, M. (2015). Comprehensive health literacy in Japan is lower than in Europe: a validated Japanese-language assessment of health literacy. BMC public health, 15(1), 505.

先行研究文献ヘルスリテラシーを多次元でとらえる尺度

• Sørensen, K., Pelikan, J. M., Röthlin, F., Ganahl, K., Slonska, Z., Doyle, G., ... & Falcon, M. (2015). Health literacy in Europe: comparative results of the European health literacy survey (HLS-EU). European journal of public health, 25(6), 1053-1058.

• Osborne, R. H., Batterham, R. W., Elsworth, G. R., Hawkins, M., & Buchbinder, R. (2013). The grounded psychometric development and initial validation of the Health Literacy Questionnaire (HLQ). BMC public health, 13(1), 658.

先行研究文献ヘルスリテラシーを多次元でとらえる尺度

• Mathers, C. D., Sadana, R., Salomon, J. A., Murray, C. J., & Lopez, A. D. (2001). Healthy life expectancy in 191 countries, 1999. The Lancet, 357(9269), 1685-1691.

•厚生労働省. (2011) 平均寿命と健康寿命をみるhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/chiiki-gyousei_03_02.pdf