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子し、アが術ンか網の 平成15年度採択分(研究終了)
脳の機能発達と学習メカニズムの解明
研究総括 津本 忠治((独)理化学研究所脳科学総合研究センター
シニアチームリーダー)
本研究領域は、脳を育み、ヒトの一生を通しての学習を促進するという視点に、社会的な観点も融合した新たな視点から、健康で活力にあふれた脳を発達、成長させ、さらに維持するメカニズムの解明をめざす研究を対象とするものです。具体的には、感覚・運動・認知・行動系を含めた学習に関与する脳機能や言語などヒトに特有な高次脳機能の発達メカニズムの解明、及びそれらの臨界期(感受性期)の有無や時期の解明、発達脳における神経回路網可塑性に関する研究、高次脳機能発達における遺伝因子と環境因子の相互作用の解明、健やかな脳機能の保持を目指した研究、精神・神経の障害の機序解明と機能回復方法の研究、社会的な環境の変化が脳機能に及ぼす影響に関する研究等が含まれます。
小脳による学習機構についての包括的研究
平野 丈夫(京都大学大学院理学研究科 教授)
本研究では、小脳シナプス可塑性について、発現・維持・制御の分子機構、また、各シナプス可塑性の神経回路活動への作用、個体の学習・行動に与える影響を解明することを目指します。分子・細胞レベル、組織・個体レベルの双方から研究を進め、包括的な理解を得ることを図ります。これにより、小脳による学習機構の解明が進み、ヒトの学習障害の克服や学習方法の改善・改良にとって有用な知見を提供することが期待できます。
幼児脳の発達過程における学習の性質とその重要性の解明
杉田 陽一((独)産業技術総合研究所脳神経情報研究部門 グループ長)
本研究では、幼児期の学習の性質及びその重要性の神経学的基盤の解明を実現しました。視覚体験の効果を明らかにするために、実験動物の幼児期に特殊な視覚体験をさせて、その後の発達経過を心理学的方法で検討しました。また、視覚体験の効果を生理心理学的に解明するために、単一細胞活動記録及び組織学的方法で線維投射様式を明らかにしました。これらの成果は、生物学的な基盤に立った教育システムの開発に多くを資することが期待されます。
高齢脳の学習能力と可塑性のBMI法による解明
櫻井 芳雄(京都大学大学院文学研究科 教授)
行動を制御する覚醒脳のレベルでは、高齢脳の学習能力と可塑性の実態はこれまで不明でした。そこで本研究は、高齢脳が本来備えている学習能力と可塑性を引き出し明らかにすることを目指しました。そのため、脳の神経活動が機械を直接操作する動物用のBMI(Brain-MachineInterface)をまず構築しました。そして、そのBMIにより高齢動物の衰えた運動出力系を機械出力系に置き換えたところ、高齢動物の脳も通常の脳と同じように働くことがわかりました。本研究の成果は、高齢化社会における教育の意義や、脳の機能回復を目指すリハビリテーション医学に新たな視点を与えるものと思われます。
言語の脳機能に基づく獲得メカニズムの解明
酒井 邦嘉(東京大学大学院総合文化研究科 准教授)
本研究では、言語の脳機能に焦点を当て、言語獲得のメカニズムの解明を行いました。第一に母語と第二言語の獲得メカニズムの解明、第二に脳機能に基づく言語獲得の感受性期と、獲得過程における遺伝因子と環境因子の影響の解明、第三に言語教育による脳の可塑性の可視化が実現しました。これにより、精神疾患の発症機構の解明と、脳機能に基づく適切な教育方法の提案を行い、脳科学の成果を広く教育へ応用することが可能になりました。
コミュニケーション機能の発達における「身体性」の役割
中村 克樹(国立精神・神経センター神経研究所 部長)
本研究では、コミュニケーション機能の発達における「身体性」に焦点を当て、脳機能画像研究、臨床神経心理学研究、認知心理学研究、神経生理学研究、神経生物学研究、行動科学研究、情報工学研究を組み合わせ、その発達メカニズムの解明を目指します。これにより、子供のコミュニケーション障害の理解が深まることが期待されます。また、コミュニケーションの発達支援のプログラム開発や、障害児を対象としたリハビリテーション研究に発展させ、高次機能障害の霊長類モデルの作成を試みます。
乳児における発達脳科学研究
多賀 厳太郎(東京大学大学院教育学研究科 教授)
本研究では、乳児期初期の大脳皮質の機能的発達と学習の機構を明らかにすることを目指しました。新生児から1歳までの、異種感覚、音声言語知覚、運動による外界との相互作用、馴化や学習等に焦点を当て、行動計測及び脳機能計測を行いました。これによって、乳児期初期の発達に関わる大脳皮質の機能分化の様子が初めて明らかにされました。ヒトの初期発達に関する知見は、人間の捉え方、ひいては教育のあり方に影響をもたらすと期待されます。
教育における課題を踏まえた、人の生涯に亘る学習メカニズムの脳科学等による解明
研究代表者の所属機関・役職名は研究終了時点のものです。
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脳の機能発達と学習メカニズムの解明
研究進行領域
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平成16年度採択分(研究修了)
教育における課題を踏まえた、人の生涯に亘る学習メカニズムの脳科学等による解明
脳の機能発達と学習メカニズムの解明
研究代表者の所属機関・役職名は研究終了時点のものです。
神経回路網における損傷後の機能代償機構
伊佐 正(自然科学研究機構生理学研究所 教授)
神経回路が損傷を受けた場合、残存する回路により機能代償が行われることは経験的に知られていますが、そのメカニズムは明確ではありませんでした。本研究では、霊長類モデルを用いて、脊髄レベルでの錐体路の損傷後に生ずる手指の運動機能障害から回復する過程において、初期の段階では損傷反対側の一次運動野に加えて同側の一次運動野が、そして3か月経過して回復が安定する段階においては反対側の一次運動野の広汎な領域が活性化するとともに両側の運動前野が機能回復に関与する、というように時期に応じて機能回復にかかわる脳部位が異なること、そしてそれにあわせてこれらの大脳皮質領域において機能回復にかかわる遺伝子の発現が変化することを明らかにしました。それに対して一次運動野の損傷後の初期には両側の運動前野腹側部と一次、二次体性感覚野が、安定期には損傷同側の運動前野腹側部と一次、二次体性感覚野が機能代償にかかわることを明らかにしました。また、大脳一次視覚野の破壊後には、一時的に反対側の障害視野の視覚刺激に対して眼を向ける能力は失われますが、それも訓練によって2カ月程度で回復すること、さらにその回復には中脳の上丘が関与することを明らかにしました。これらの成果はリハビリテーションにおいて新しい方策の開発に繋がるものと期待されます。
ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明
大隅 典子(東北大学大学院医学系研究科 教授)
本研究では、胎児期から成人に至る脳の発生・発達過程におけるニューロンの新生に影響を与える遺伝的因子及び環境因子を、分子・細胞レベルから個体レベルまで階層的に解明することを目指して行われた。また、その成果を統合失調症などの精神疾患の遺伝学的情報と統合し、ニューロン新生と精神疾患との関連について解析を試みた。これらの研究によって、脳の健やかな発達に必要な遺伝的・環境的因子の一端を明らかにした。
発達期および障害回復期における神経回路の再編成機構
鍋倉 淳一(自然科学研究機構生理学研究所 教授)
脳損傷後の回復期において機能的神経回路の広範な再編成が生じます。この過程は発達期における回路網の再編成と類似するものがあります。本研究では、発達期における再編成のメカニズムの理解を更に深めるとともに、急性脳障害後の機能回復期におこる回路再編成機構を明らかにすることを目的としました。ヒトの脳梗塞後には障害部位周囲などが代償的に活動することが明らかになった。また、脳梗塞モデル動物を用いた実験によって、リハビリの機能回復への有効性が示唆される結果をえた。梗塞周囲ではミクログリアによるシナプス監視が正常脳より著明な延長が確認され、しばしばその後シナプスの除去を引き起こすことが、改良した多光子顕微鏡による生体イメージング法によって明らかとなった。また、梗塞の対側大脳皮質半球では、シナプスの再編がおこり障害された機能代償を担う用になることが明らかになった。
情動発達とその障害発症機構の解明
西条 寿夫(富山大学大学院医学薬学研究部 教授)
情動はヒトの行動に強い影響を及ぼし、またその異常は深刻な社会問題となっているが、情動発達の脳内機構についてはその多くが解明されていない。そこで本研究では、情動の発達及びその障害発症機構を、基礎医学と臨床医学の両面から、遺伝子、分子、細胞及び行動レベルで総合的に解明することを目指した。その結果、ヒトの健常者では、側頭葉内側部(扁桃体、海馬体)の体積が思春期に増大するが、統合失調症やうつ病では、これらの領域を含む皮質下領域の脳発達が障害されていることが示唆された。一方、動物を用いた神経生理学的研究により、上丘→視床枕→扁桃体からなる膝状体外視覚系は、社会的刺激の検出および社会行動の発現に重要な役割を果たしていることが明らかになった。さらに、遺伝子工学的研究により、PDGF (血小板由来成長因子)受容体、DNAメチル化に関与するATRX (X連鎖αサラセミア)タンパク、 および神経系の代表的なアクチン結合蛋白であるドレブリンなどが、これらの領域で、脳発達に重要な役割を果たしていることが明らかになった。以上の結果は、情動障害の発症機構の解明やその治療法の開発に繋がると期待される。
臨界期機構の脳内イメージングによる解析と統合的解明
ヘンシュ 貴雄((独)理化学研究所脳科学総合研究センター チームリーダー)
発達脳における学習のメカニズムを理解するためには、発達期神経回路網の可塑性に関する知識、脳の種々の機能発達における臨界期(感受性期)の正確な理解と臨界期が終了するメカニズムの解明が必要です。本研究では新しい方法を使い、生きている脳で臨界期の終了過程に生じる神経回路の再編成過程を可視化することを目指します。これによって、発達脳の学習メカニズム、さらには成人における学習促進方策の解明が期待されます。
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脳の機能発達と学習メカニズムの解明
研究進行領域
- 2 -
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脳発達を支える母子間バイオコミュニケーション
和田 圭司((独)国立精神・神経医療研究センター神経研究所 部長)
本研究では、母体由来の生理活性物質を介した母子間のコミュニケーションが胎児・乳児の脳に作用してその健やかな発達を促し、生後の適正な行動の獲得などに寄与するという新しい視点に立って、母子間の物質的コミュニケーションの存在を動物・ヒトで実証し、さらに母体側因子の変動が子供の脳発達に与える影響を解明することを目指します。これらの成果は、脳発達障害の病因の解明やその予防法の開発に繋がることが期待されます。
ドーパミンによる行動の発達と発現の制御機構
小林 和人(福島県立医科大学医学部附属生体情報伝達研究所 教授)
ドーパミン神経系は、行動の学習や発達にきわめて重要な役割を果たしていますが、その脳内機構については未だ明らかになっていません。本研究課題では、広くげっ歯類から霊長類までを対象にした総合的研究をとおして、ドーパミンによる脳機能発達と行動制御の仕組みを解明することを目指します。本研究の成果は、現在深刻な社会問題となっている統合失調症や注意欠陥多動性障害など、ドーパミン神経系の異常に起因すると考えられる発達障害の機構解明に貢献できると期待されます。
平成17年度採択分
応用行動分析による発達促進のメカニズムの解明
北澤 茂(順天堂大学医学部 教授)
自閉症に対して、応用行動分析を用いて早期集中介入を行うと、通常の社会生活ができる迄に「回復」する症例が報告され、注目を集めています。本研究では、応用行動分析による自閉症治療法を脳科学的に検証する一方、同じ手法を適用したサルに生理学的研究を行い、応用行動分析による発達促進の脳内メカニズム解明を目指します。その成果は、自閉症の効果的な治療法、更にはより一般的な発達障害予防法の開発に繋がることが期待されます。
大脳皮質視覚連合野の機能構築とその生後発達
藤田 一郎(大阪大学大学院生命機能研究科 教授)
ヒトを含む霊長類の大脳皮質連合野は、種々の高次脳機能において重要な役割を果たしていますが、その生後発達過程はほとんど解明されていません。本研究では、霊長類の視覚連合野において、高次情報処理機能がどのような神経回路によって担われているのか、またこれらの神経回路機能が、生後どのように発達するのかの解明を目指します。その成果は、高次脳機能の発達や学習に伴う変化のメカニズム解明に貢献することが期待できます。
脳の機能発達と学習メカニズムの解明
研究進行領域
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60
精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出本研究領域は、少子化・高齢化・ストレス社会を迎えたわが国において社会的要請の強い認知・情動などをはじめとする高次脳機能の障害による精神・神経疾患に対して、脳科学の基礎的な知見を活用し予防・診断・治療法等における新技術の創出を目指すものです。具体的には、高次脳機能障害を呈する精神・神経疾患の分子病態理解を基盤として、その知見に基づく客観的な診断及び根本治療に向けた研究を対象とします。例えば、生化学的もしくは分子遺伝学的観点から客観的な指標として利用可能な分子マーカーあるいは非侵襲的イメージング技術など機能マーカーを用いた診断法の開発、遺伝子変異や環境変化などを再現した疾患モデル動物の解析、根本治療を実現するための創薬に向けた標的分子の探索・同定などが研究対象となります。なおこれらの研究を進めていく上では、疾患を対象とした臨床研究と脳科学などの基礎研究、精神疾患研究と神経疾患研究、脳画像などの中間表現型解析研究と遺伝子解析研究など、異なる研究分野や研究手法の有機的な融合をはかる研究を重視するものです。
研究総括 樋口 輝彦(国立精神・神経センター 総長)
平成19年度採択分
恐怖記憶制御の分子機構の理解に基づいたPTSDの根本的予防法・治療法の創出井ノ口 馨(富山大学大学院医学薬学研究部 教授)
本研究は、トラウマ記憶そのものを減弱・消去させることにより、外傷後ストレス障害(PTSD)の根本的な予防・治療法の開発のための基盤構築をはかるものです。動物モデルを用いて恐怖記憶の制御の分子機構を明らかにし、その知見から得られる動物モデル・トラウマ体験者・PTSD患者まで一貫した理論的根拠を基にしたPTSDの新規かつ根本的な予防法と治療法の創出を目指します。
アルツハイマー病根本治療薬創出のための統合的研究
岩坪 威(東京大学大学院医学系研究科 教授)
本研究は、アルツハイマー病(AD)の分子病態を、病因タンパク質βアミロイド(Aβ)の産生、凝集、クリアランスの分子機構に着目して解明し、各段階を改善する新機軸の治療方策を創出するものです。Aβ産生についてはγセクレターゼ、Aβの毒性機構についてはシナプスや樹状突起などの障害を標的として、Aβ排出促進療法にも着目します。さらにADの初期病態を反映するバイオマーカーについて、実験動物とAD患者を対比・検証し、新規治療法の実現につなげます。
神経発達関連因子を標的とした統合失調症の分子病態解明
貝淵 弘三(名古屋大学大学院医学系研究科 教授)
統合失調症の発症には、遺伝因子と環境因子が関与すると考えられています。発症脆弱性遺伝子が複数報告されていますが、発症機構は今なお不明です。本研究では統合失調症の分子病態を理解するため、発症脆弱性因子に結合する分子を同定し、その生理機能や遺伝学的な関与を明らかにします。さらに、発症脆弱性遺伝子の変異マウスを作成し、病態生理学的、行動学的な解析を行い、新たな予防法・治療法へと繋げることを目標とします。
パーキンソン病遺伝子ネットワーク解明と新規治療戦略
高橋 良輔(京都大学大学院医学研究科 教授)
ドーパミン神経の選択的変性を特徴とするパーキンソン病(PD)は、わが国で10万人以上の患者数を数える重篤な神経変性疾患であり、治療に向けた病因解明は急務です。本研究は、単一および多重遺伝子変異をもつPDモデル系(細胞株・メダカ・マウス)を樹立し、小胞体、ミトコンドリア、タンパク質分解系の複合病態を解明するもので、モデル系を治療の標的分子や神経保護性低分子化合物の探索に利用して、新規治療法の開発を目指します。
私ほ成スをさ精
精神・神経疾患の診断・治療法開発に向けた高次脳機能解明によるイノベーション創出
精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出
研究進行領域
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彦長)
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マウスを活用した精神疾患の中間表現型の解明
宮川 剛(藤田保健衛生大学総合医科学研究所 教授)
私たちはこれまでに「マウスの精神疾患」と呼んでも過言ではないほどの顕著な行動異常を示す系統のマウスを複数同定することに成功してきました。本研究では、このような精神疾患モデルマウスの脳について、各種先端技術を活用した網羅的・多角的な解析を行い、生理学的、生化学的、形態学的特徴の抽出を進めます。さらに、これらのデータをヒトの解析に応用することによって、精神疾患における本質的な脳内中間表現型の解明を目指します。
研究進行領域
精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出
- 5 -
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平成20年度採択分
脊髄外傷および障害脳における神経回路構築による治療法の開発~インテリジェント・ナノ構造物と高磁場による神経機能再生~
小野寺 宏(国立病院機構西多賀病院 副院長)
急速に発展する幹細胞・iPS細胞技術を用いた脳脊髄疾患の移植医療に期待が集まっていますが、現行技術では阻害因子に邪魔されて移植細胞が神経線維を伸ばせず、病気で損なわれた機能を回復できません。そこで本研究では、脊髄外傷、パーキンソン病、脳卒中などの疾患を対象として、神経接着分子や栄養因子を結合したインテリジェント・ナノ磁性体を脳脊髄の目的部位に正確に配置し、それを足場に神経回路を再構築するという新しい治療技術の開発を目指します。
社会行動関連分子機構の解明に基づく自閉症の根本的治療法創出加藤 進昌(昭和大学医学部 教授)
自閉症の社会相互性の障害は、当事者の社会適応を妨げる最大要因といえるものですが、現在のところこの障害に直接有効な薬物療法はありません。本計画では、自閉症をできるだけ早期に診断し、オキシトシンもしくは関連物質の早期投与による、この社会相互性障害の根本的治療方法の創出を目指します。そのために、末梢血および臍帯血中のオキシトシン関連物質の濃度や遺伝子の解析、動物実験、成人および幼児での臨床試験と脳画像解析を連携して行います。
孤発性ALSのモデル動物作成を通じた分子標的治療開発
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科 教授)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)はその90%以上が孤発例ですが、病態の大部分は解明されておらず、根本治療は見出されていません。本研究では、これまでに孤発性ALS患者の病変組織で見出されてきた分子イベントを再現する動物モデルを開発し、運動ニューロン変性をもたらす分子病態およびそれを担う標的分子を明らかにします。そして、これらの病態関連分子を標的とする病態抑止治療法を開発して、その臨床応用を目指します。
BDNF機能障害仮説に基づいた難治性うつ病の診断・治療法の創出
小島 正己((独)産業技術総合研究所セルエンジニアリング研究部門 研究グループ長)
抗うつ薬は脳由来神経栄養因子(BDNF)機能亢進作用により治療効果を示すと考えられていますが、抗うつ薬抵抗性を示す難治性うつ病の病態は不明です。本研究では、BDNFの前駆体から成熟体へのプロセッシング障害および分泌障害がうつ病の難治化を引き起こすと想定し、その仮説に基づいたうつ病の分子病態の解明、血中バイオマーカー検索と脳画像診断法などを用いた難治性うつ病の診断・治療法の創出を目指します。
本解A副ににモ引と
本つな天モの子進
こ新スすムに発
精神・神経疾患の診断・治療法開発に向けた高次脳機能解明によるイノベーション創出
精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出
精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出
研究進行領域
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病。れーか止
療性熟引、つ
平成21年度採択分
分子的理解に基づく抗アミロイドおよび抗タウ療法の開発
井原 康夫(同志社大学 生命医科学部 教授)
本研究は、アミロイド仮説にそってアルツハイマー病の分子的理解を進めるとともに、それに基づく治療法開発に取り組みます。Aβたんぱく質産生の抑止に関しては、基質特異的な阻害による、副作用の少ない阻害剤の開発を目指します。また、わが国で新たに発見されたAβ変異を詳細に研究することで、Aβオリゴマーに関連する病理カスケードの分析を可能とします。さらに、線虫モデルを用いてチューブリンとタウのアンバランスが神経変性を引き起こすという仮説を検証し、抗タウ療法開発の基盤とすることを目指します。
統合失調症のシナプス‒グリア系病態の評価・修復法創出
西川 徹(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 教授)
高い発症率と難治性を示す統合失調症では、グルタミン酸シナプスの機能異常の関与が推測されています。本研究は、従来のニューロン中心の視点に加え、グリア-シナプス相互作用にも注目し、グルタミン酸シナプス修飾因子のD-セリンがグリア-ニューロン間で機能する分子細胞メカニズムと統合失調症における病態を解明します。さらに、その評価法と修復法を創出することにより、新たな診断・治療法への展開を目指します。
ポリグルタミン病の包括的治療法の開発
貫名 信行((独)理化学研究所 構造神経病理研究チーム チームリーダー)
本質的な治療法のない遺伝性神経変性疾患のポリグルタミン病について、異常たんぱく質凝集の抑制・分解過程の制御、転写異常などの病態過程の制御の観点からの治療法の開発を目指します。天然物スクリーニングや化合物ライブラリースクリーニングを、モデル細胞、モデル動物を効率よく利用して行うとともに、効果のある化合物をもとにケミカルジェネティクスによりその標的分子を同定し、さらにこれを制御する薬物・遺伝子治療法の開発を進めます。
プルキンエ細胞変性の分子病態に基づく診断・治療の開発
水澤 英洋(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 教授)
小脳プルキンエ細胞(PC)の障害は小脳性運動失調症(SCA)を惹起しますが、いまだその治療法は確立していません。本研究では、ほぼ純粋にPCの変性をきたす遺伝性SCAを対象として疾患モデルを開発し、オミックス・ケミカルバイオロジーの手法を駆使して、RNA分子発現の異常から個体での発症に至る病態経路を解明し、治療戦略を確立します。そして、PC障害や小脳失調全般に適用しうる治療法・診断マーカーの創出を目指します。
精神の表出系としての行動異常の統合的研究
内匠 透(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授)
こころの問題はしばしば行動の異常として現れます。私たちが最新の染色体工学的手法を用いて開発した自閉症ヒト型モデルマウスは、従来のモデルとは一線を画すユニークな世界初のモデルです。本研究では、本モデルをはじめとする発達障害モデルやリズム障害モデルを通して病態解明を行うとともに、数理モデル解析に基づく非侵襲診断法の開発、環境要因を含めた治療法の基盤開発など、精神行動異常疾患の統合研究を目指します。
研究進行領域
精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出
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