55
2013 年度(平成 25 年度)調査研究レポート 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて 平成 26 年3月 広島経済同友会 地域経済委員会 本調査研究レポートは,広島経済同友会からの依頼により, 中国電力株式会社エネルギア総合研究所が作成したものです

高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

2013 年度(平成 25 年度)調査研究レポート

高齢化社会に対応した

「生活関連産業」の拡充に向けて

平成 26 年3月

広島経済同友会

地域経済委員会

本調査研究レポートは,広島経済同友会からの依頼により,

中国電力株式会社エネルギア総合研究所が作成したものです

Page 2: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国
Page 3: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

目 次

はじめに ........................................................................ 1

本レポート作成までの委員会における活動内容 ...................................... 2

第1章 既往調査からみた高齢者市場の概況 ........................................ 3

1.全国の高齢者市場規模 ...................................................... 3

2.全国の生活関連産業分野の市場規模 .......................................... 4

第2章 高齢者市場の特性分析 .................................................... 6

1.調査の概要 ................................................................ 6

2.集計・分析結果のまとめ .................................................... 8

3.集計・分析 ................................................................ 9

第3章 高齢者市場へ展開するための企業側からの分析 ............................. 21

1.企業による生活関連産業分野でのアプローチ ................................. 21

2.企業の取り組み事例分析 ................................................... 23

3.広島経済同友会会員アンケート調査の結果 ................................... 33

第4章 高齢化社会に対応した「生活関連産業」の拡充に対する提言 ................. 42

1.「シニア」世代の多様性に関する考察 ........................................ 42

2.生活関連産業を拡充していくための提言 ..................................... 43

おわりに ....................................................................... 48

Page 4: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国
Page 5: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-1-

はじめに

終戦直後の 1947(昭和 22)年から 49(昭和 24)年に生まれた「団塊の世代」が定年を迎え,

65 歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

の社会構造を大きく変化させつつあります。

こうした中,数十兆円ともいわれる高齢者の消費市場に対する関心がますます高まって

いますが,高度成長期の大量消費を経験・牽引し,様々な消費ブームやヒット商品を生み

出してきた「団塊の世代」は,従来の高齢者のイメージとは異なった消費性向や消費行動

をみせるものと考えられ,このような高齢者市場の変化に的確に対応していくことが,地

域の事業者のビジネス展開の成否のみならず,地域の活性化をも左右する状況になってい

くものと見込まれます。

特に,高齢者市場における「生活関連産業」の拡充は,高齢者が活動しやすい社会の実

現やサービス業を中心とする幅広い地域産業の振興に寄与することが期待されていますが,

広島県は,自動車や造船などの輸送用機械を中心に,鉄鋼,食品,電気機械など様々な製

造業,生活関連産業の全国有数の企業が集積している地域であり,また,286 万人の人口

を擁し,今後,高齢者市場の消費が逐次拡大していくことから,こうした幅広い産業活動

を新たな高齢者ニーズに上手くマッチングさせることができれば,広島県内産業の発展と

地域振興を実現する大きなチャンスがもたらされるのは間違いありません。

本委員会では,種々の先行調査等からみた高齢者市場の整理を行い,そこから得られた

仮説を,他地域の先進的取り組み事例の調査や高齢者・地域企業を対象としたアンケート

調査等によって補足・確認・検証したうえで,高齢者市場の「特性把握」とそれを踏まえ

た事業展開のための「つかみ所」の検討を加え,高齢化社会に対応した生活関連産業の拡

充に資する諸方策として提言することとしました。

今回の調査に関して,委員会等にお招きした講師の皆様,取り組み事例視察でご訪問さ

せていただいた皆様,アンケート調査にご協力いただいた皆様に深く感謝申し上げます。

Page 6: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-2-

本レポート作成までの委員会における活動内容

○第1回委員会(2013 年 5 月 30 日)

・勉強会「高齢者市場の中期展望-生活産業分野の視点から-」

講師 株式会社みずほコーポレート銀行(現,みずほ銀行)

産業調査部流通・生活チーム次長 中川 隆義 氏

○第2回委員会(2013 年 7 月 30 日)

・勉強会「~シニア世代を狙え!~クラブツーリズムのファンづくり」

講師 クラブツーリズム株式会社 執行役員総務部長 真柄 徹 氏

○第3回委員会(2013 年 10 月 24 日)

・勉強会「イズミにおける高齢者マーケットへの対応について」

講師 株式会社イズミ 取締役営業企画部部長 中村 豊三 氏

○先進地視察会(2013 年 11 月 25 日~26 日)

・福岡県久留米市 : 株式会社アサヒコーポレーション

・福岡県福岡市 : 九州市民大学,九州旅客鉄道株式会社

○第4回委員会(2013 年 12 月 19 日)

・先進地視察会の報告

・アンケート結果の概要報告

・報告書骨子(案)の検討

○第5回委員会(2014 年 2 月 25 日)

・報告書(案)の検討

Page 7: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-3-

第1章 既往調査からみた高齢者市場の概況

本報告書で検討する,生活関連産業とは,概ね以下の商品・サービス分野とし,医療・

介護分野は含まないものとする。

なお,本章での市場規模は,株式会社みずほコーポレート銀行(現,みずほ銀行)に

よる結果を援用している。

1.全国の高齢者市場規模

(1)高齢者市場の捉え方

高齢者市場は,65 歳以上の高齢者の家計支出と公的支出で構成され,市場を構成する

主な産業分野としては,「医療・医薬」「介護」「生活」が挙げられる。

このうち,「生活産業」(本報告書では,「生活関連産業」とした。)として,食料,家

具・家事用品,被服・履物,交通・通信,教養・娯楽が示されている。

図表 1-1 高齢者市場の捉え方

【生活関連産業の対象分野】

食料(飲食,外食),住宅・生活(家具・家事用品,リフォーム,家事サービス),

衣服(被服・履物,ファッション),運輸・通信(交通・通信,防犯,移動,マイ

カー),教養・娯楽(旅行・宿泊,レジャー,映画,スポーツ),健康(ヘルスケア,

フィットネス)など

高齢者市場の定義

実収入

年金

医療・医薬産業

介護産業

■食料(食料品製造業,飲食店他)

■家具・家事用品(製造業,卸・小売業

他)

■被服・履物(繊維業他)

■交通・通信(運輸業,情報通信業他)

■教養・娯楽(教育,サービス業他) 他

医療費

社会保障給付

生活産業

政府

関連産業分野 当該分野の主な構成要素 公的支出

「高齢者市場」の範囲

■在宅介護(訪問/通所サービス,介

護予防支援,福祉用具)

■居住系介護(短期入所サービス,グ

ループホーム)

■介護施設(介護サービス,入居費

用・施設関連費用)

■サービス(医師等人件費,調剤報酬)

■器具(診断機器,処理/手術器具)

■医薬(治療薬,診断薬,予防薬)

■施設関連費用(入院費用)

高齢者

(65 歳以上)

実収入

金融資産地

介護保険

消費支出

Page 8: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-4-

(2)高齢者市場の将来推計

医療・医薬産業,介護産業,生活産業で構成される高齢者市場全体では,高齢者人口

の変化に応じた需要増加に伴い,2025 年には 101.3 兆円規模(2007 年対比 161%)に成

長し,国内需要を牽引する市場になると見込まれている。

そのうち,医療・医薬産業,介護産業はあわせて約 50 兆円規模に拡大することが見込

まれている。

図表 1-2 高齢者市場の規模

資料:みずほコーポレート銀行(現,みずほ銀行)産業調査部作成。

2.全国の生活関連産業分野の市場規模

(1)生活関連産業全体の市場規模

食品や被服等を中心とする「生活産業」は,2025 年には 51.1 兆円規模(2007 年対比

127%)に成長し,医療・医薬産業,介護産業に並ぶ市場規模となる見込みである。医療・

医薬,介護と同様に大きなビジネスチャンスがある市場と考えられる。

なお,こうした試算は,人口の年齢構成の変化のみで推計されており,現在の 70 歳と

10年後の70歳など高齢者の年齢の違いによる生活の仕方,消費行動の変化によっては,

高齢者市場が一層拡大する可能性もある。

(2)産業分野別の市場規模

生活関連産業の産業分野別内訳をみると,2025 年には「食料」20.1 兆円,「教養・娯

楽」16.6 兆円などとなっており,2007 年に比べて市場規模が大きく拡大することが見込

まれている。

62.9 兆円 高齢者市場の規模

医療・医薬

産業

40.3

高齢者市場の規模 101.3 兆円(61.0%↑)

51.1

6.4

16.2

40.3

35.0

(116.0%↑)

介護産業

生活産業

公的支出

19.8

消費支出

2.8

公的支出

44.0

消費支出

6.2

市場規模(2007 年)

単位:兆円

単位:兆円

()内は 2007 年

対比成長率

市場規模(2025 年)

介護産業

生活産業

医療・医薬

産業

15.2

(137.5%↑)

51.1

(26.8%↑)

Page 9: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-5-

図表 1-3 生活産業分野における市場規模の推移 2007 年 2025 年

世帯数 (単位:万)

高齢者世帯 1,453 1,901

全世帯 4,961 4,984

生活産業における支出総額(単位:兆円)

高齢者世帯 40.3 51.1

全世帯 160.9 155.7

(産業分野別内訳) (単位:兆円)

食料

高齢者世帯 16.2 20.1

全世帯 63.9 61.6

家具・家事用品

高齢者世帯 4.0 5.0

生活産業分野

全世帯 14.7 14.3

被服・履物

高齢者世帯 3.5 4.3

全世帯 17.1 15.9

交通・通信

高齢者世帯 4.0 5.1

全世帯 20.8 19.7

教養・娯楽など

高齢者世帯 12.6 16.6

全世帯 44.4 44.2資料:国立社会保障・人口問題研究所資料,総務省「家計調査」,経済産業省「サービス産業動向調査」,食

の安心安全財団統計をもとに,みずほコーポレート銀行(現,みずほ銀行)産業調査部作成。

Page 10: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-6-

第2章 高齢者市場の特性分析

高齢者の消費行動や消費の価値観に関するアンケート調査

1.調査の概要

(1)調査のねらい

目的

・今後,一層拡大すると予測される高齢者市場を的確に捉え,その特性を踏まえた地域企

業の事業展開のための基礎資料を得る。

基本的な問題意識

・「高齢者」と一括りで捉えるのではなく,高齢者は多様であり,市場への対応にはきめ細

かなセグメンテーションが必要であると考えられる。

・そこで,高齢者市場の多様性を理解するため,その多様性の内容を明らかにする。

(2)調査の方法と対象

調査方法

ウェブアンケート調査(楽天リサーチ)

調査対象の抽出方法

図表 2-1 回答者の抽出方法

サンプルの構成

図表 2-2 サンプルの構成

区分 サンプル数

大都市圏 600 人

地方圏 600 人

合計 1,200 人(注)大都市圏は,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,愛知県,三重県,岐阜県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県で

あり,地方圏は大都市圏を除く道県である。

20歳以上65歳未満の楽天会員

65歳以上の高齢者と同居している

スクリーニング

同居している高齢者自身が回答

Page 11: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-7-

(3)調査内容

高齢者の消費行動や価値観における特性の把握

(質問内容)

・心身の健康

・他者との関わり方

・こだわりと価格に対する考え方

・時間の使い方 等

(質問方法)

・着眼点ごとに質問を設け,「非常にそう思う」から「そう思う」「どちらかといえばそう思

う」「どちらでもない」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」「まったくそう

思わない」までの7段階評価で回答を得た。

・それぞれ7点から1点を割り当て,数値(回答点数)による分析が可能となるようにした。

消費実態と消費意欲の把握

・過去2~3年に購入した経験がある商品・サービス

・今後,購入したいと思う商品・サービス

属性の把握

・性,年齢,所得,家族構成,職業,住居,要介護認定

・生活の満足度,豊かさの実感,経済的なゆとり,時間的なゆとり等

(4)調査の実施時期

2013 年 11 月 21 日(木)~2013 年 11 月 25日(月)

Page 12: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-8-

2.集計・分析結果のまとめ

○高齢者市場の特性を把握する 10 の切り口が把握された

・高齢者の消費行動や価値観を数量化し,統計的分析を加えた結果,「挑戦・教養」,「関係性」,

「健康・生活の不安」,「自信・努力」,「個性」,「口コミ・体験」,「消費不安」,「自由・孤

独」,「低価格」,「利便性」といった 10 の切り口が現れた(図表 2-4)。

・10 の切り口は回答の傾向が似た質問をまとめたものであるが,言い換えれば,それぞれの

切り口は高齢者の回答の傾向を独立的に説明している。

○性・年齢で回答に大きな差が現れる

・「健康・生活の不安」や「消費不安」,「挑戦・教養」等の切り口では,性・年齢により顕著

な差異がみられた(図表 2-5)。

・健康状態や新しいことに取り組む意欲等に性・年齢によって差異があるのは高齢者の大き

な特徴であり,高齢者市場は性別・年齢別で分けて捉えることが基本と考えられる。

○高齢者の特性に基づく6つのカテゴリーが出現した

(抽出された6カテゴリー)

・10 の切り口により回答が似た高齢者をまとめると,「スーパーアクティブシニア」,「孤高

型シニア」,「不安先行型シニア」,「好奇心型アクティブシニア」,「後期高齢型シニア」,「不

活発型シニア」と名前を付けることができる6つのカテゴリーが現れた(図表 2-6,図表

2-7)。

(高齢者市場の牽引役)

・6つのカテゴリーのうち,「スーパーアクティブシニア」は活動力や消費水準の高さなどで,

「好奇心型アクティブシニア」は口コミ・体験を重視する特性により,高齢者市場の牽引

役として位置づけることができると考えられる。これらのカテゴリーは消費行動を通じて

自らのニーズを満たし,生活の満足感を実現していることも注目される。

(不安の解消と安心の形成)

・「不安先行型シニア」など商品・サービスの購買率が低いグループは,健康や日常生活,あ

るいは消費に対する不安感が強い。これらの問題の解消そのものがニーズを形成すると考

えられると同時に,不安の解消と安心の形成が消費の活発化につながるという仮説も設定

可能である。

(特性に応じた市場アプローチと無関心層への対応)

・「孤高型シニア」は価値観,「後期高齢型シニア」は年齢層としての特徴がみられ,その特

性に応じた市場アプローチが重要と考えられる。一方で,何事にもあまり関心を示さない

「不活発型シニア」は高齢者の4分の1以上を占めており,高齢者市場を取り込む上での

課題の一つと考えられる。

Page 13: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-9-

3.集計・分析

(1)消費行動や価値観に対する質問の単純集計

図表 2-3 では,「非常にそう思う」から「そう思う」「どちらかといえばそう思う」までの

回答を合計した。およその回答の傾向は以下の通りである。

(60%以上)

・60%を超える回答のほとんどが心身の健康に関わる質問であった。また,「日常生活のこと

は何であれ手早くすませたい」が 61.3%となっている。

(50%以上 60%未満)

・「買い物は近くの店で簡単にすませたい」が 58.3%であり,上記の「日常生活のことは何

であれ手早くすませたい」も含め,生活の利便性に関わる質問の回答率が高い。

・この他,「円満な近所づきあいを重視している」など,他者との関わりに関する質問が目立

つ。

(40%以上 50%未満)

・「悩み事を相談できる相手がいる」といった他者との関わりの質問が多い。

・また,「何か思い出や心に残ることをしたい」,「日本一周の旅を実現したいと思う」といっ

た時間消費の豊かさに関わる質問が多く含まれている。

・この他,「十分使えるものであれば価格や品質にこだわりはない」,「値段が高くても,気に

入れば買う」といった価格とこだわりに関する質問も含まれる。

(30%以上 40%未満)

・各分野の質問が含まれているが,「インターネットに情報が移行して情報収集がしにくい」,

「強引な勧誘にうまく対応できるか不安である」といった消費生活の不安に関する質問が

含まれている。

(30%未満)

・「品揃えがよい店までわざわざ行くことが多い」,「着るものは他人と違って個性的である方

がいい」といった強いこだわりを示す質問は回答が多くなかった。

・また,「趣味やスポーツの全国大会等に参加してみたい」,「取得してみたい資格がある」と

いった新たな挑戦に関わる質問も回答が限られている。

Page 14: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-10-

図表 2-3 消費行動や価値観に対する質問の単純集計

(注)「非常にそう思う」から「そう思う」「どちらかといえばそう思う」までの回答を合計した

(注)「非常にそう思う」から「そう思う」「どちらかといえばそう思う」までの回答を合計した。

13.018.5

22.322.623.524.925.826.826.828.028.428.829.330.6

33.033.033.534.835.035.836.136.337.537.737.837.838.038.338.538.638.639.039.339.639.940.340.540.7

43.844.244.444.745.946.347.348.849.350.452.3

56.256.556.857.957.958.358.558.7

61.365.5

69.270.8

81.1

大学で学位をとってみたい

取得してみたい資格がある

趣味やスポーツの全国大会等に参加してみたい

お試しセットや体験サービスを重視する

他の人がしない個性的な趣味を持ちたい

着るものを決めるときは細かく注文を言う

着るものは他人と違って個性的である方がいい

店員との親密な関係は面倒だと思う

衝動買いをすることがよくある

自分を人生の経験者,人生の上達者であると思う

環境保護のためには消費や便利さをがまんできる

品揃えがよい店までわざわざ行くことが多い

若者よりも判断力や洞察力に自信があると思う

買い物では口コミや他者の経験談を重視する

叶えたい願い,実現したい夢がある

生涯現役で,働いていたいと思う

価格が安いことを最優先にする

商品購入やサービス利用は,自分のこだわりがある

人づきあいは面倒くさいと思う

誰とでも友人になれる方だ

スーパーのレジで待たされるとすぐにイライラする

だまされて,財産を失うことが不安である

自分が社会に役立つことがしたい

家族以外に相談したい悩みやストレスがある

世界中を旅行したいと思う

自分の嗜好にこだわりはあるが,価格を優先したい

強引な勧誘にうまく対応できるか不安である

信頼できる友人は多い

共通の趣味やスポーツをする友人がほしい

社会人講座など,気軽に学べる場があるとよい

インターネットに情報が移行して情報収集がしにくい

一人で外食することに抵抗感はない

自分がよいと思った商品は他の人に伝えたい

ものを定価で買うのはばかげていると思う

自分の経験や知識を誰かに教える機会があればよい

知識や教養を高めるために読書をよくする

日本一周の旅を実現したいと思う

趣味や社会活動のグループには積極的に参加する

友人や仲間は多ければ多いほどよい

値段が高くても,気に入れば買う

十分使えるものであれば価格や品質にこだわりはない

自由な時間は一人で過ごしたいと思う

他人との関係を気にせずに,外出できる所がほしい

身体の健康のため努力を惜しまない方だ

今,気持ちが前向きで,心に張りがあると思う

悩み事を相談できる相手がいる

何か思い出や心に残ることをしたい

家族や友人には,毎日のように連絡している

自分の心の年齢は,同年代よりも若いと思う

いくつになっても学びたいことがある

お店の親身になってくれる店員は重要だと思う

商品の表示や説明がわかりにくいと思うことがある

人と話すのが好きである

円満な近所づきあいを重視している

買い物は近くの店で簡単にすませたい

気がかりなこと,不安に思うことがある

運動を心掛けている

日常生活のことは何であれ手早くすませたい

介護状態になることに不安感を持っている

食事に気をつかっている

現在,健康に不安なことがある

体力の衰えを感じるようになった

消費に対する不安

心身の健康

生活の利便性

他者との関わり

学習意欲,夢の実現

価格とこだわり

60%以上

50%以上60%未満

40%以上50%未満

30%以上40%未満

20%未満

20%以上30%未満

(%)

Page 15: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-11-

(2)回答の多様性を把握する分析

回答のばらつき方に着目した質問のグループ化

(分析方法)

・回答者による回答のばらつきを分析して,ばらつき方の傾向が似た質問をまとめた。図表

2-4 が分析の結果であり,例えば,「社会人講座など,気軽に学べる場があるとよい」に「そ

う思う」と回答した人は,「自分の経験や知識を誰かに教える機会があればよい」にも「そ

う思う」と回答する傾向がある。

・図表 2-4 で質問グループが違うと,回答者における回答のばらつき方の傾向も異なる。こ

のため,各質問グループは高齢者の消費行動や価値観を独立して説明する要因であり,質

問グループが多くできると回答に多様性があると理解できる。

・図表 2-4 では数字が大きいほど,その質問が質問グループの中で典型的なばらつき方をし

ていることを示している。

(分析結果)

点は回答者を示す。

性別・年齢別の特徴

・回答のばらつきの中で回答者の回答がどこにあるか質問グループごとにみると,多くの質

問で女性の回答点数が高い(図表 2-5)。

・また,「挑戦・教養」,「健康・生活の不安」,「消費不安」,「利便性」等の質問グループでは,

年齢別で大きな差異がみられる。

質問A

質問B

•••

••••

•••••

••

••

• ••

• •

••

••

••

•回答のばらつき方が似た質問Aと質問Bを同じグループにまとめる

・分析の結果,10 の質問グループが抽出され,それ

ぞれに「挑戦・教養」,「関係性」,「健康・生活の

不安」,「自信・努力」,「個性」,「口コミ・体験」,

「消費不安」,「自由・孤独」,「低価格」,「利便性」

と名前を付けた。

・これらは,高齢者市場の多様性を分析する切り口

として捉えることができる。

Page 16: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-12-

図表 2-4 回答のばらつき方に基づく質問のグループ化

0.41 0.39 0.39

0.41 0.62

0.84

0.42 0.50

0.54 0.69

0.40 0.57

0.82

0.44 0.50

0.68 0.73

0.45 0.64

0.69 0.92

0.64 0.67

0.73 0.81

0.49 0.67

0.71 0.74 0.74

0.37 0.48

0.53 0.57

0.64 0.73

0.85 0.87

0.27 0.49 0.49

0.53 0.56

0.66 0.66 0.66 0.69 0.71

0.76 0.77

0.82

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

お店の親身になってくれる店員は重要だと思う日常生活のことは何であれ手早くすませたい

買い物は近くの店で簡単にすませたい

ものを定価で買うのはばかげていると思う自分の嗜好にこだわりはあるが,価格を優先したい

価格が安いことを最優先にする

店員との親密な関係は面倒だと思う他人との関係を気にせずに,外出できる所がほしい

人づきあいは面倒くさいと思う自由な時間は一人で過ごしたいと思う

だまされて,財産を失うことが不安であるインターネットに情報が移行して情報収集がしにくい商品の表示や説明がわかりにくいと思うことがある

自分がよいと思った商品は他の人に伝えたい買い物では口コミや他者の経験談を重視する

衝動買いをすることがよくあるお試しセットや体験サービスを重視する

値段が高くても,気に入れば買う着るものは他人と違って個性的である方がいい品揃えがよい店までわざわざ行くことが多い着るものを決めるときは細かく注文を言う

運動を心掛けている身体の健康のため努力を惜しまない方だ

今,気持ちが前向きで,心に張りがあると思う自分の心の年齢は,同年代よりも若いと思う

食事に気をつかっている家族以外に相談したい悩みやストレスがある

気がかりなこと,不安に思うことがある現在,健康に不安なことがある

介護状態になることに不安感を持っている

誰とでも友人になれる方だ趣味や社会活動のグループには積極的に参加する

家族や友人には,毎日のように連絡している人と話すのが好きである

友人や仲間は多ければ多いほどよい円満な近所づきあいを重視している

悩み事を相談できる相手がいる信頼できる友人は多い

環境保護のためには消費や便利さをがまんできる生涯現役で,働いていたいと思う

自分を人生の経験者,人生の上達者であると思う叶えたい願い,実現したい夢がある自分が社会に役立つことがしたい日本一周の旅を実現したいと思う

共通の趣味やスポーツをする友人がほしいいくつになっても学びたいことがある

知識や教養を高めるために読書をよくする趣味やスポーツの全国大会等に参加してみたい

取得してみたい資格がある自分の経験や知識を誰かに教える機会があればよい

社会人講座など,気軽に学べる場があるとよい

挑戦・教養

関係性

健康・生活の不安

自信・努力

個性

口コミ・体験

消費不安

自由・孤独

低価格

利便性

質問のグループ化

(数字はグループの中でのばらつき方の典型度)

Page 17: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-13-

図表 2-5 性別・年齢別でみた回答点数の平均値

(男性)

(女性)

(注)1.図中の数値は,回答点数を質問グループのばらつきを基に相対化して,性別・年齢別に平均値を算出したものである。

2.矢印は年齢による傾向,楕円は性別による特徴を示す。

-0.30-0.25-0.20-0.15-0.10-0.050.000.050.100.150.200.25

挑戦・

教養

関係性

健康・生活の不安

自信・

努力

個性

口コミ・体験

消費不安

自由・孤独

低価格

利便性

65歳~69歳 70歳-74歳 75歳以上

-0.30-0.25-0.20-0.15-0.10-0.050.000.050.100.150.200.25

挑戦・

教養

関係性

健康・生活の不安

自信・

努力

個性

口コミ・体験

消費不安

自由・孤独

低価格

利便性

65歳~69歳 70歳-74歳 75歳以上

Page 18: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-14-

(3)回答者のセグメンテーション

・図表 2-4 の分析によって得られた 10 の切り口に基づき,回答が似ている高齢者をまとめる

セグメンテーションを行った。抽出されたグループは6つであり,図表 2-7 などにより特

性を分析してグループに名前を付けた。

図表 2-6 回答者のセグメンテーション結果

セグメンテー

ション 質問グループによる特徴

カテゴリー1

スーパーアク

ティブシニア

・ カテゴリー1は,健康や生活の不安感が小さい一方で,挑戦・教養への志向が強

く,他者との関係性を重視し,利便性を追求するグループである(図表 2-7)。

・ 経済的なゆとり,生活時間のゆとりという点で最も恵まれており,ほとんどの人

が生活の満足感を実現している(図表 2-8~図表 2-10)。

・ 各分野の商品・サービスの購入経験が豊富であり,今後の消費意欲も高い(図表

2-11,図表 2-14)。全体の 10.5%であるが,消費水準という点で高齢者市場をリ

ードするグループと考えられる。

カテゴリー2

孤高型シニア

・ カテゴリー1に対置する二つのグループがあり,その一つがカテゴリー2である。

・ 不安感が小さいという点はカテゴリー1と共通する。比較的,経済的なゆとりが

あり,生活満足度も高いこともカテゴリー1と似る。しかし,カテゴリー1に対

して挑戦・教養,関係性が極端に低く,反対に自由・孤独への志向が飛び抜けて

高い。最も少数派で全体の 6.4%を占める。

・ 射倖性のあるギャンブルの他,自動車,バイク,高級自転車,釣り,カメラ等の

趣味の高額商品,一人で楽しむ音響機器,映画といった消費に特徴がある。

カテゴリー3

不安先行型

シニア

・ カテゴリー1と対置するもう一つのグループであり,健康・生活,消費に対して

強い不安感を抱えていることが特徴である。カテゴリー1に対して挑戦・教養や

関係性に対する志向が弱い。

・ 最も経済的・時間的なゆとりがないグループであり,生活の満足度も低い。低価

格志向が強く,自由・孤独を志向する面もある。全体の 12.2%を占めている。

・ 購入経験は,「医療保険が適用されない高額の健康診断」等が特徴である。

カテゴリー4

好奇心型アク

ティブシニア

・ すべての質問グループに対する回答点数が高くまとまっていることが特徴であ

る。比較的,経済的・時間的ゆとりがあり,生活の満足度も高い。また,カテゴ

リー1に次いで商品・サービスの購入経験が多い。

・ 特に,好奇心の強さや新しもの好きの性質を示すと考えられる「口コミ・体験」

の点数が高いことが特徴であり,24.3%を占める規模の大きなグループである。

このため,カテゴリー1とともに消費のリーダーと考えることもできる。

カテゴリー5

後期高齢型

シニア

・ このカテゴリーの特徴は 75 歳以上の高齢者が半数近くを占めることである(図表

2-13)。

・ カテゴリー1に次いで,経済的・時間的ゆとりが大きく,生活の満足度も高い。

挑戦・教養への志向は弱いが,他者との関わりと生活の利便性を重視している。

・ 商品・サービスの購入経験は比較的多く,全体の 18.3%を占める。

カテゴリー6

不活発型

シニア

・ このカテゴリーの特徴は,経済的ゆとり,時間的ゆとり,生活の満足感に対して

「どちらでもない」という回答がとても多いことである。

・ 商品・サービスの購入経験は少なく,特徴のある消費はパチンコや盛り場での飲

食程度である。10 の切り口でみても全体に特徴に乏しい。

Page 19: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-15-

図表 2-7 各カテゴリーの回答点数の平均値

質問グループ カテゴリー1 カテゴリー2 カテゴリー3 カテゴリー4 カテゴリー5 カテゴリー6

挑戦・教養 0.644 -0.995 -0.995 0.517 -0.430 -0.012

関係性 1.078 -1.159 -0.757 0.230 0.271 -0.329

健康・生活の不安 -0.447 -0.499 0.583 0.377 0.141 -0.487

自信・努力 1.010 -0.278 -0.843 0.345 0.065 -0.432

個性 0.418 -0.806 -0.811 0.400 -0.370 0.036

口コミ・体験 -0.579 -1.143 -0.153 0.450 -0.494 0.197

消費不安 -0.467 -1.280 0.644 0.257 0.306 -0.307

自由・孤独 -0.699 0.600 0.356 0.241 -0.320 -0.164

低価格 -0.471 -0.421 0.577 0.289 -0.496 -0.052

利便性 0.731 -0.287 -0.169 -0.004 0.540 -0.539

回答者数 116 71 135 269 202 312

構成比 10.5% 6.4% 12.2% 24.3% 18.3% 28.2%(注)1.数値は,回答点数を質問グループのばらつきを基に相対化して,カテゴリー別に平均値を算出したものである。

2.表中の網掛けは,相対化した回答点数が 0.2 以上のカテゴリーである。

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

挑戦・教養

関係性

健康・生活の不安

自信・努力

個性

口コミ・体験

消費不安

自由・孤独

低価格

利便性

カテゴリー1

カテゴリー4カテゴリー3

カテゴリー2

カテゴリー5

カテゴリー6

Page 20: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-16-

図表 2-8 経済的にゆとりがある

図 経済的にゆとりがある

図表 2-9 時間的にゆとりがある

図表 2-10 日常生活に満足している

2.2

1.4

9.5

4.2

9.9

8.6

3.7

11.3

25.0

12.2

29.2

26.0

8.9

15.5

27.6

62.8

21.8

34.6

23.7

29.6

19.8

13.1

23.3

15.6

18.5

18.3

8.6

4.8

10.4

8.2

20.0

8.5

6.0

2.2

4.5

4.8

24.4

15.5

3.4

カテゴリー6

カテゴリー5

カテゴリー4

カテゴリー3

カテゴリー2

カテゴリー1

(%)

3.5

1.5

5.2

9.9

15.5

3.2

21.8

13.4

11.9

14.1

34.5

25.3

46.5

45.4

34.1

36.6

29.3

58.0

15.8

25.3

20.7

14.1

13.8

9.9

7.4

10.0

11.1

9.9

3.4

2.9

4.0

2.2

7.4

8.5

3.4

2.2

9.6

7.0

0 20 40 60 80 100

カテゴリー6

カテゴリー5

カテゴリー4

カテゴリー3

カテゴリー2

カテゴリー1

(%)

0.6

3.5

1.9

2.8

17.2

5.1

20.3

14.9

5.9

19.7

43.1

35.9

48.5

48.0

23.7

33.8

36.2

49.0

15.8

23.4

27.4

16.9

2.6

7.4

8.4

8.6

17.0

15.5

1.9

2.0

1.9

16.3

5.6

8.1

5.6

0 20 40 60 80 100

カテゴリー6

カテゴリー5

カテゴリー4

カテゴリー3

カテゴリー2

カテゴリー1

(%)

Page 21: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-17-

図表 2-11 商品・サービスの購入経験と今後の購入意向

(注)今回のアンケート調査で尋ねた 65 の商品・サービスの平均値である。

図表 2-12 各カテゴリーの性別構成

区分 回答者数 男性 女性

全体 1,200 46.9 53.1

カテゴリー1 116 45.7 54.3

カテゴリー2 71 59.2 40.8

カテゴリー3 135 34.1 65.9

カテゴリー4 269 45.7 54.3

カテゴリー5 202 34.2 65.8

カテゴリー6 312 58.0 42.0

図表 2-13 各カテゴリーの年齢構成

区分 回答者数 65歳~69歳 70歳~74歳 75歳~79歳

全体 1,200 41.8 29.0 29.3

カテゴリー1 116 44.0 31.9 24.1

カテゴリー2 71 42.3 33.8 23.9

カテゴリー3 135 31.9 25.9 42.2

カテゴリー4 269 44.6 27.9 27.5

カテゴリー5 202 29.7 24.3 46.0

カテゴリー6 312 49.0 29.5 21.5

15.9

6.3 6.6

13.0

11.0

6.8

13.9

5.35.9

12.3

9.4

5.9

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

カテゴリー1

カテゴリー2

カテゴリー3

カテゴリー4

カテゴリー5

カテゴリー6

過去に購入・利用したことがある 今後,購入・利用してみたい(%)

Page 22: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-18-

図表 2-14 カテゴリー別にみた特徴のある商品・サービスの購入経験

カテゴリー1 カテゴリー2 カテゴリー3

商品・サービス 係数 商品・サービス 係数 商品・サービス 係数

市民大学,社会人大学院等での継続的な受講 4.84

射倖性のあるギャンブル(馬券,舟券等) 1.81

医療保険が適用されない高額の健康診断(PET,CT 等) 1.37

フィットネスやスポーツクラブ 2.67屋外の活動的な趣味に関する高額商品 1.69

コンビニエンスストアにある小分けされた魚,惣菜等 1.11

ファッション性の高い高額の衣服 2.28

一人で音楽やビデオを楽しむための音響機器 1.39

ペットを飼う,又は飼うためのえさ,備品等 1.03

テーマ性のある観光旅行 2.19 映画 1.28 健康維持のために摂取する機能性食品,サプリメント

1.03

ファッション性の高い高額の身の回り品,宝飾品

2.11 パチンコ 1.19 民間が提供する食事の宅配サービス

1.00

決まった友人・仲間同士での定例の食事会

2.10 ペットを飼う,又は飼うためのえさ,備品等

1.18

大勢の前で発表・披露するためのサービス 2.05 孫との高額な食事代 1.00

盛り場での飲食 2.04

友人同士で楽しむカラオケ代 2.02

スポーツウェア,スポーツシューズ等の運動用品

1.99

日常的に連絡を取るための情報通信機器

1.99

大衆演劇やコンサート,落語等 1.90

高額の長期旅行 1.88

地域や隣近所への寄付 1.81

映画 1.73

孫との高額な食事代 1.71

産地にこだわった農産品,加工食品

1.68

通信販売による家電商品・便利商品

1.62

孫の教育・勉強のための高額商品 1.60

株式等の財テク投資 1.60

自宅で楽しむ高級酒 1.59

医療保険が適用されない高額の健康診断(PET,CT 等)

1.58

一人で音楽やビデオを楽しむための音響機器

1.58

孫の趣味等のための高額商品 1.56

整体や鍼灸,マッサージ 1.53

新たに趣味や特技を身につける自己投資 1.53

多額の宝くじ 1.51

地産地消の野菜や惣菜 1.50

屋外の活動的な趣味に関する高額商品

1.49

健康維持のため毎日食べる食品 1.42

高額の冠婚葬祭費用やお中元・お歳暮 1.38

通信販売による健康食品・飲料 1.37

体力維持のための運動器具 1.36

ペット(犬,猫,鳥など)を飼う,又は飼うためのえさ,備品等

1.33

健康器具 1.30

Page 23: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-19-

(つづき)

カテゴリー4 カテゴリー5 カテゴリー6

商品・サービス 係数 商品・サービス 係数 商品・サービス 係数

銀行,証券会社が提供する老後資産保全等に関する相談サービス 1.97

大勢の前で発表・披露するためのサービス 1.68 パチンコ 1.36

民間が提供する食事の宅配サービス 1.69

家族や友人から紹介された化粧品・健康食品 1.44 盛り場での飲食 1.06

日常的に連絡を取るための情報通信機器 1.53

地域や隣近所への寄付(神社,祭り,町内会等への高額の寄付) 1.43

株式等の財テク投資 1.06

新たに趣味や特技を身につける自己投資

1.50 大衆演劇やコンサート,落語等 1.42

外出して一人でゆったりくつろぐための消費

1.47 ペット(犬,猫,鳥など)を飼う,又は飼うためのえさ,備品等

1.42

体力維持のための運動器具 1.44 コンビニエンスストアにある小分けされた魚,惣菜等

1.41

スポーツウェア,スポーツシューズ等の運動用品 1.44

決まった友人・仲間同士での定例の食事会 1.37

家族や友人から紹介された化粧品・健康食品 1.39

高額の冠婚葬祭費用やお中元・お歳暮 1.35

屋外の活動的な趣味に関する高額商品 1.39

二世帯住宅等の三世代が暮らす住宅(新築・改造・模様替え等) 1.34

健康器具(マッサージ器,健康計測器等)

1.38 地産地消の野菜や惣菜 1.27

自宅で楽しむ高級酒 1.37 健康維持のために摂取する機能性食品,サプリメント

1.19

テーマ性のある観光旅行 1.36 通信販売による健康食品・飲料(青汁,ハチミツ等)

1.17

健康維持のため毎日食べる食品 1.33 テーマ性のある観光旅行 1.15

しわや美白に効果がある化粧品 1.32産地にこだわった農産品,加工食品 1.14

産地にこだわった農産品,加工食品 1.30

通信販売による家電商品・便利商品(掃除機,生活雑貨等) 1.12

整体や鍼灸,マッサージ 1.29 友人同士で楽しむカラオケ代 1.12

高額の冠婚葬祭費用やお中元・お歳暮

1.27 孫の趣味等のための高額商品(自動車,洋服,贅沢品等)

1.09

二世帯住宅等の三世代が暮らす住宅(新築・改造・模様替え等)

1.27 健康器具(マッサージ器,健康計測器等)

1.08

友人同士で楽しむカラオケ代 1.27孫との高額な食事代(デパート,専門店等での食事代) 1.06

大衆演劇やコンサート,落語等 1.26孫の教育・勉強のための高額商品(ランドセル,学習机等) 1.05

通信販売による健康食品・飲料(青汁,ハチミツ等) 1.25 しわや美白に効果がある化粧品 1.02

通信販売による家電商品・便利商品(掃除機,生活雑貨等)

1.25 整体や鍼灸,マッサージ 1.01

地産地消の野菜や惣菜 1.24 民間が提供する食事の宅配サービス

1.00

孫の趣味等のための高額商品(自動車,洋服,贅沢品等)

1.24

多額の宝くじ 1.24

映画 1.23

フィットネスやスポーツクラブ 1.22

地域や隣近所への寄付(神社,祭り,町内会等への高額の寄付)

1.21

(注)1.特化係数(回答者全体の購買率を1としたときの各カテゴリーの購買率)が 1.0 以上(カテゴリー1は 1.3 以上,カ

テゴリー4は 1.2 以上),かつ各カテゴリーで 5.0%以上の購入経験がある商品・サービスを抽出した。

2.表中の数字は特化係数であり,係数の大きな順に商品・サービスを並べた。

Page 24: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-20-

図表 2-15 性別のカテゴリー構成

図表 2-16 年齢別のカテゴリー構成

図表 2-17 地域別のカテゴリー構成

(注)大都市圏は,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,愛知県,三重県,岐阜県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県であり,

地方圏は大都市圏を除く道県である。

10.7

10.3

4.9

8.2

15.1

8.9

24.7

23.9

22.5

13.4

22.2

35.2

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

女性

男性

カテゴリー1 カテゴリー2 カテゴリー3 カテゴリー4 カテゴリー5 カテゴリー6

(%)

8.3

11.9

11.2

5.1

7.7

6.6

17.0

11.2

9.4

22.0

24.0

26.3

27.7

15.7

13.1

19.9

29.5

33.5

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

75歳~79歳

70歳~74歳

65歳~69歳

カテゴリー1 カテゴリー2 カテゴリー3 カテゴリー4 カテゴリー5 カテゴリー6

(%)

10.4

10.6

5.9

6.9

11.8

12.6

24.4

24.3

18.9

17.7

28.5

27.9

0 20 40 60 80 100

地方圏

大都市圏

カテゴリー1 カテゴリー2 カテゴリー3 カテゴリー4 カテゴリー5 カテゴリー6

(%)

Page 25: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-21-

第3章 高齢者市場へ展開するための企業側からの分析

1.企業による生活関連産業分野でのアプローチ

本節での分析は,株式会社みずほコーポレート銀行(現,みずほ銀行)による結果を

援用している。

(1)高齢者市場の特徴

高齢者市場では,介護・医療サービスの対象者ではない「アクティブシニア」と呼ば

れる高齢者が多く存在しており,65歳以上の高齢者の 83%を占めている。生活関連産業

ではアクティブシニアを対象とすることが必要である。

高齢者は加齢により生活行動様式が変化し,求められるサービスも変化するため,加

齢に伴う健康状態と生活行動様式の変化に合わせた「次のサービス」を効果的に提供し

ていくことが重要である。こうしたサービスが,現在から将来にわたり切れ目無くシー

ムレスに提供できることが求められる。

一方で,高齢者側に高齢者向けサービスに対する強い抵抗感が存在するため,快適さ

や自然さ,使いやすさを示すなど,高齢者へのアピール方法を考える必要がある。

現在,生活関連産業の各分野における高齢者向けサービス事業は市場黎明期であり,

個別のサービスごとに個別の事業者が存在しているため,現状のままでは高齢者に対し

て的確なサービスが提供できないことが問題点となっている。

(2)高齢者市場へのアプローチ方法

高齢者市場にアプローチするための方法としては,高齢者側からみて,①信頼感(親

しみやすさ),②拠点の近さ,③多様なサービス,が必要である。一定の信頼感がある事

業者が,高齢者の日常生活内の拠点・接点の近さを活かして,高齢者ごとに異なる様々

なニーズに対して適切で多様な商品・サービスを提供することが求められる。

次に,こうした商品・サービスが事業者によって高齢者の健康状態やライフスタイル

の変化に合わせて,連続的かつシームレスに提供されること,即ち「高齢化チェーン」

を構築することが必要である(図表 3-1)。流通サービス,配食サービス,生活支援サー

ビス,介護,医療などすべてを提供する事業者の存在と,様々なサービスを行っている

事業者とで協力体制を確立していくことが求められている。また,「高齢化チェーン」を

構築していく上で,高齢者と各種サービスをつなぐ,ワンストップでの総合窓口,調整

機能を担うコーディネーターの存在が重要である。

Page 26: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-22-

(3)地方における多様な主体連携によるサービス提供

地方においては,サービス提供主体やそのための人材が限られるため,「高齢化チェー

ン」の中で,コーディネーター役が少ないのが特徴である。このため,信頼感があり身

近な存在である,地域を代表する鉄道事業者,バス会社,小売事業者等が「高齢化チェ

ーン」のコーディネーター役を担っていくことが考えられる。さらには,相乗効果を高

めるため,地方公共団体,地元有力企業,地元専門サービス事業者との連携によって地

域全体の活性化,地域のまちづくりの一環として取り組むことが不可欠である。

図表 3-1 高齢化チェーンのイメージ

(4)高齢者関係のビッグデータ活用によるサービス提供

高齢者市場は充分には捉えられていないため,高齢者が消費や活動を行う様々な情報

(ビッグデータ)を整備・活用していくとともに,組織的・構造的に整理されていない

様々な情報を分析し,新しいビジネスにつなげていくことが重要である。

例えば,アクティブシニアを細分化したものとして,その一つがメザニンシニア(※

メザニン:中二階)であり,アクティブシニアと要支援・要介護高齢者の中間的な領域

に該当する。こうした高齢者はアクティブシニアの3~4割占めるとの試算もあり,今

後,高齢者全体をセグメントした上で,きめ細かく,シームレスなサービス提供につな

げていくことが必要である。

③サービス

生活支援

サービス

コーディネーター 配食サービス

流通サービス

介護

医療

②近さ

①信頼感

高齢者

Page 27: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-23-

2.企業の取り組み事例分析

(1)旅行会社における取り組み事例:クラブツーリズムにみるファンづくり

①会社の概要

クラブツーリズム株式会社(本社,東京都新宿区)は,気軽なバス旅行から実現間近

といわれる宇宙旅行まで取り扱う旅行会社で,その他にも,旅行関連商品として観光土

産品,食料品,旅行用品,健康食品等の販売・斡旋等を行っている。

年間売上高 1,495 億円(2013 年3月期),従業員数 2,127 名(2013 年4月1日現在)

で,近畿日本ツーリストも同じグループであるKNT-CTホールディングス株式会社

傘下の事業会社として,営業展開を行っている。

②取り組みの概要と特徴

【旅行を通じた仲間づくり】

60 歳を過ぎてから新たな学びや発見を目的に大学やカルチャースクールに行く人が

増えている中,同じ興味,テーマについて一緒に共感・共有する仲間づくりの輪を広げ

ようと,「旅」という機会を通じてのコミュニティや自己実現の「場」を,おもにシニア

世代をターゲットにして,数多く提供することに取り組んでいる。

【エリアとテーマを絞った旅の提案】

戦略として二つが展開されている。エリア戦略として,顧客の居住地域ごとにセグメ

ントし,住まいの近くから気軽に参加できるバス旅行等の旅行商品の販売,「クラブツー

リズムカフェ」(旅行相談や受付,演奏会や講座開催等を実施)運営にも取り組んでいる。

次に,テーマ戦略として,興味や関心事を主題とした旅行商品をそれぞれのテーマ志向

の顧客群に提供している。特に,異業種との連携によって旅の専門性を深めたり,地元

の祭り・イベントへの協賛などを通じて話題性の創出,地域振興にも努めている。また,

テーマ志向の強いシニア層への情報提供の「場」となる「クラブツーリズム文化祭」を

年に2回程度大規模に実施し,旅行需要につなげている。

旅行商品以外では,「学べば旅が楽しくなる」をコンセプトにした「旅の文化カレッジ」

講座や同じ旅行参加者同士の交流会も開催している。旅行自体ももちろん楽しいが,旅

行のための準備の時間や,旅行後の思い出話や写真,土産品の整理なども楽しいもので,

こうした旅行事前講座や交流会によっても旅仲間の輪を広げている。

【テーマ性の高いツアーが人気で旅仲間の輪を広げる】

近年はテーマ性の高いツアーの人気が高まっているが,テーマ旅行では,同一テーマ

の連続するシリーズに同じメンバーが参加することで旅仲間の意識も強まっていく。こ

うしたことは,顧客の継続購買すなわちリピーター化にも大きく貢献している。

【高齢者からの旅行ニーズの収集】

クラブツーリズムの旅行情報誌「旅の友」を配布している人達を「エコースタッフ」

と呼び,お客さまから募集し,現在全国に約 7,000 人を数える。配布を通じ顧客と直接

触れ合うことでニーズを収集し会社へ報告するという流れである。また,日帰り旅行を

中心に添乗業務を行うスタッフの一部もお客さまから募集しており,「フェローフレンド

Page 28: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-24-

リースタッフ」と呼ばれる。添乗資格を取得してもらった上で,本来の旅程管理(添乗)

業務に加え,シニア世代のツアー参加者と年代も近いことから,旅というコミュニティ

における仲間づくりのリーダー役として好評であり,現在は約 700 名を数える。この他,

バリアフリー旅行において参加者の支援を行う「トラベルサポーター」や,各種テーマ

旅行の講師でも,顧客から志望者を募る顧客参画の仕組みを取り入れている。こうした

スタッフによるお客さまとの交流を通じた高齢者旅行ニーズの収集が商品企画の貴重な

情報源となっている。

シニアなどのマーケットリサーチは非常に難しく,最初の取り込み方が難しい。当社

は 1980 年代から添乗員がアンケートを取っており,データを収集してきた。ニーズが多

いところからテーマを区切って冊子をつくるといった取り組みも行ってきた。この他,

お客さま相談センターを通じて意見をもらっているなど,スタッフからの提案も広く収

集しており,それらを商品企画に活かしている。お客さまから直接に意見をもらえる様々

なチャンネルづくりの取り組みを行っている。

【信頼感や安心感,家族や孫からの支持,一人旅ニーズなど多様性にも配慮】

ガイドや添乗員が同行することは,家族から安心して送り出してもらえることにつな

がる。これは旅行会社としての大きな存在価値であるため,添乗員同行ツアーを強くア

ピールするとともに,ゆったりしたシートや高齢者のニーズが高いハイグレードなトイ

レを設置した特別仕様の専用バスも導入している。また,三世代旅行をPRしたテレビ

CMに大きな反響があった。孫との学びや体験を共有できる三世代旅行はシニア世代か

らは支持を集めやすく,今後も注力していくこととしている。

近年の特徴として,参加者全員が「一人」単位である「おひとり参加限定のツアー」

は,参加者同士での適度な距離感,全員が一人参加という安心感から,需要が急激に伸

びている。

③成功のポイント

まず,「緩やかで心地のよい人間関係」が重要で,そのためにはツアーの企画者や添乗

員,参加者が同じ価値観を共有し共感しあうことが必要である。次に「知的好奇心や学

び欲求を刺激するもの」であること,そして「コミュニティだからこその特別感や付加

価値(個人ではなしえないこと)」の存在である。その上で「安心感・信頼感(顔の見え

る関係)」が求められる。進化する情報技術はいまやシニア層にも及んでいるとはいえ,

直接顔を合わせたり,会話するというリアルなコミュニケーションの重要性はまだまだ

高い。最後には,旅を通じての何らかの「達成感」(充実感)を得ることが鍵となる。

④今後の課題

シニアをメインターゲットにしているが,今後 60~70 歳になる若い世代(ネクストシ

ニア)をどう取り込むかが課題である。インターネットやWEB媒体に慣れ親しんでい

る世代でもあることから新たな手法が求められる。また,「もみもみトントン健康サービ

ス」というマッサージ業では視覚障がい者のマッサージ師を採用し,障がい者雇用を展

開している。さらには,「協働の森づくり事業」(高知県津野町)などエコツーリズムに

関する取り組みも行っており,こうした,旅行に留まらず,健康産業をはじめシニアの

生活や地域活性化を支援できるような多様な事業展開が課題である。

Page 29: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-25-

(2)小売業者による取り組み事例:イズミにおける高齢者マーケットへの対応

①会社の概要

株式会社イズミ(本社,広島市東区)は,ショッピングセンター「ゆめタウン」,スー

パーマーケット「ゆめマート」など計 102店舗を持つ,小売業を展開する会社である。

店舗は,広島県をはじめ,中国地域,四国,九州,兵庫県など,西日本が中心である。

1961 年創業,現在売上高約 5,000 億円,従業員数は正社員約 2,400 人を含め計約 8,000

人である。

関連企業が,小売業の他に,外食,卸売業,カード事業,食品加工業,不動産業など

を展開している。

②取り組みの概要と特徴

【高齢者の購買動向の最近の特徴】

シニアを対象としたアンケート調査結果をみると,「何に一番お金を使うか」という質

問に対して,「旅行」「子どもや孫のため」が上位となっており,「大人の旅」という旅行を

意識した形でチラシを作成している。旅行関係の商品は売上げが伸びている。また,ア

クティブシニアでは,ブランド品を購入する傾向が強いことも指摘できる。

【孫向けのランドセル消費の拡大,三世代での買い物を意識した店舗づくり】

新小学生向けのランドセルの売上げは,1999 年に制定された孫の日(10 月第3日曜日)

以降,業界全体でのピークは1月1週目,第2ピークは孫の日である。イズミの場合も

今年は孫の日が従来の第2ピークの 12 月を上回る勢いとなっており,シニア(祖父母)

が購入している。特に,早い時期では客単価が高く,6~7万円のランドセルの売れ行

きが良いといった特徴がある。

併せて,三世代のお客さまが楽しく買い物できるような店舗づくりを展開している。

【電子マネーの導入】

買い物時に利用できるカードを導入しており,現在会員数は,「ゆめカード」が 430

万人,そのうちクレジット機能付きカードが 110 万人である。さらに,電子マネー「ゆ

めか」を発行しており,「ゆめか」単独又はクレジット機能付きを用意している。60 歳

以上の高齢者に対して,「ゆめかプラス」というカードを発行している。このカードを使

用すると,5の付く日はいつもポイントが5倍になるメリットがある。

電子マネー「ゆめか」での決済率はスタート時点が 13%だったが,現在は 30%と伸び

ている。電子マネーが普及する理由は,現金を出すのが面倒で,素早くレジを済ませた

いということと,家族が高齢者の方に現金での買い物ではなく,事前に現金をチャージ

した電子マネーを渡して買い物に行ってもらうようにしていることが指摘できる。

【交通アクセスの向上】

高齢者の交通の便を確保するため,行政とバス会社と一緒になって,バス停の引き込

みを行っている。マイカーを利用しないアクティブシニアの来店を促す取り組みを展開

している。

【きめ細かな高齢者ニーズへの対応】

店舗内での陳列棚のカートに拡大鏡を付ける取り組みも進めている。ラベルを見る時

Page 30: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-26-

などにはっきり見えるようになっているため,消費者は中国産か国内産かなど産地を確

認するとき等に使用し,とても評判がよい。

購入商品の配送として,購入した商品を 105 円で当日配達するサービスをしている。

現在,おむつの売上げでは子ども用をお年寄り用が抜いており,シニア用のおむつは

これから伸びるマーケットと捉えている。

【安心,安全の確保】

食の安全を確保するため,健康,安全,安心の観点から,購入販促物を設けるなど,

見やすいよう配慮している。

【時間消費型消費の拡大】

一般的に高齢者の来店時間帯は午前中が多いものの,最近の元気な高齢者は午前中だ

けではなく,夕方や夜にも来店し,時間帯にほぼ偏りはない。また,ゲームセンターに

高齢者が多くなっている傾向がある。現実に,シニア向けのゲームコーナー設置予定の

店舗もある。

このように,高齢者向け市場は,生活関連産業分野ではゲーム,旅行といった時間を

費やす分野にシフトしていると考えられる。

Page 31: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-27-

(3)製造業における取り組み事例:アサヒコーポレーションによる市場開拓

①会社の概要

株式会社アサヒコーポレーション(本社,福岡県久留米市)は,ゴム履物・革靴の製

造,販売を展開する会社である。1892 年創業,従業員数 780 名(2012 年 12 月現在,国

内のみ),年商 139 億円(2012 年 12 月期)である。

1922 年,貼付式地下足袋を発明し,三池炭鉱労働者に試し履きさせたことで発展し,

1955 年から子供の足と健康を守る「学校履」の開発にいち早く取り組み,「アサヒシュ

ーズ」が学校でのトップシェアを確立した。1988 年,社名を株式会社アサヒコーポレー

ションに変更し,商品名「快歩主義」「通勤快足」「アサヒメディカルウォーク」を発売

するなどシニアやビジネスマン向け市場を開拓,拡大させている。

図表 3-2 株式会社アサヒコーポレーションの主要ブランド

②取り組みの概要と特徴

【健康,快適,信頼をキーワードに開発に着手】

加硫製法(バルカナイズ製法)という高度な製法技術を活用するとともに,ゴム部分

やアッパー縫製において国内生産,内製化を貫いている。

「快歩主義」は,福祉関係の講演会で,「21 世紀は共用品(健常者・非健常者共に使

える商品)の時代」というコンセプトを示され,「健康」「快適」「信頼」の3つのキーワ

累計販売数630万足

Page 32: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-28-

ードをもとに,高齢化社会に即した健康シューズとして,開発を始めたものである。

「快歩主義」は,軽さ,つまずきにくい,着脱が簡単など,高齢者の靴選びのポイン

トをおさえた設計を行っている。ターゲットは 60 歳以上の男女で,利用者のほとんどは

後期高齢者より上の世代となっており,本人に加え子どもや孫が購入する場合も多い。

【医療と連携するなど,安心感の確保】

1999 年当時,松波総合病院リハビリテーション科室長だった酒向俊治理学博士(現,

名古屋医専教授)と出会ったことを機に研究開発がスタートした。酒向氏と意見交換し

ながら製品化に取り組み,2000 年 6 月に発売が開始された。開発当初は高齢化社会に目

を向けた商品展開はされておらず,市場も確立されていなかった。2012 年の年商 139 億

円のうち,高齢者向け商品の売り上げは 15%を占め,今後の伸びが期待されている。

【流通業者との連携】

販路は,ディスカウントを除き全方位で確保しており,介護福祉系店,靴専門店,総

合スーパーでの売り上げが多く,高齢者に身近な方法で販売を展開している。

また,増大するシューズ需要に対応するため,国内生産を強化する中で,鮮度の高い

商品を短期間で納品する体制の構築を目指している。販売価格帯は通常より高いものの,

リアルな店舗や具体的な売り場づくりなど,流通を巻き込む形で展開し,受け入れられ

ている。病院や福祉施設,百貨店や総合スーパーの店頭などでの啓発活動を重視し,「足

と靴と健康」というテーマで,ユーザーや流通に対しいかに歩くことが大切かをPRし

ている。

【高付加価値化でリピート客の確保】

他社から同じカテゴリーの靴が安く売られているものの,デザイン性にも工夫するな

ど価格帯を維持している。

特徴として,健常者,非健常者双方のニーズに対応している点に加えて,医学的見地

に基づいた機能性,ファッション性に富んだ商品として他社商品と差別化している。利

用者アンケートでは約8割が商品に満足しており,リピーター率は通常数%であるが,

15%と高くなっている。

③成功のポイント

快歩主義が成功した要因は,①開発段階から医療専門家の意見や顧客ニーズを積極的

かつ迅速に取入れる現場主義,②介護・医療施設ルートという新たな販売チャネルの開

拓,③販売店に商品の優れた機能を浸透させるため 1,000 回以上行われた講演会・説明

会,国際福祉機器展への出品等による徹底した差別化戦略,④商品にかける企画・開発・

販売担当者の熱意等が挙げられる。

④今後の課題

アクティブシニア層が増加することで市場が変化することが見込まれるため,今後は,

スポーティータイプやウォーキングタイプ,ビジネスタイプといった種類の増加や,リ

タイアした団塊世代の男性向けや多趣味の高齢者に向けたデザインや色に凝ったものな

ど,多様な商品の展開が必要と考えている。

Page 33: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-29-

(4)高齢者向け文化活動事業者による取り組み事例:九州市民大学によるアクティ

ブシニアの拠点整備

①市民大学の概要

九州市民大学(事務局,福岡市中央区)は,市民に生涯学習機会を提供し,文化交流

やふれあいを通じて生きがい創造に寄与し,未来社会への文化形成に貢献することを目

的に,1987 年開学した,任意の市民大学講座である。理事長・学長は,福岡女子大学理

事長・学長,前九州大学総長,梶山千里氏で,講演会会場は福岡市中央区のアクロス福

岡内福岡シンフォニーホールである。過去27年間で計312回の講演会が開催されている。

なお,広島地域では,広島市民文化大学,広島市民大学等の取り組みがある。

図表 3-3 講演会の様子

資料:九州市民大学ウェブページ

②取り組みの概要と特徴

【講演会等の開催】

大学の募集人員は昼夜ともに 1,800 人で,参加資格は年齢・学歴・性別を問わない。

講演会として,昼夜2部制で主に土曜日に開催している。ただし,講師の都合により

金曜日,または日曜日に行うこともある。毎年,1月にスタートし,毎月1回の年 12

回講演である。学識経験者・文化芸能人・各分野の著名人などを講師としており,年間

2~3回は公開講座として会員受講生以外にも開放している。

講演会以外に,特別事業として,野外研修ツアーがあり,近隣各地の名所旧跡・景勝

地・文化遺産などを訪問する取り組みを行っている。春は日帰り,秋は1泊2日の行程

で,毎回 100~200 名が参加している。

特別講座として,会員受講生から希望者を募り,100~200 名を対象として地域の学識

経験者を講師に迎え,講師との対話を重視したスクール形式を行っている。年に1~2

回実施している。

サマースクール集中講義として,夏に,大学の授業を模した集中講義を行っている。

さらに,機関紙の発行として,毎月1回,学生だより「四季」の発行を行っている。

【運営の状況】

事業主体は,地域住民,企業,団体などの有志ボランティアによる任意団体となって

Page 34: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-30-

おり,理事長・評議員会の承認を得て運営委員会(32 人)を中心に運営を行っている。

毎年,福岡県・福岡市ならびに県教育委員会・市教育委員会・福岡市文化芸術振興財団

の名義「後援」を受けている。

運営は受講生からの受講料のみで行っており,受講料(年間費)は,個人1人 23,000

円,夫婦・家族(同居家族に限る)は1人 21,000 円である。年間受講生は約3千人であ

り,開校以来,延べ 72万人の市民が参加している。

このように,受講生からの受講料収入だけで運営し,行政や特定の業界・企業などに

は依存していないことが受講生からの信頼感につながっている。

【参加者の属性】

受講者の年齢は 20~80 歳代までと幅広いが,60 歳以上が 84%を占め,男女別では女

性が 77%と圧倒的である。昼夜別では高齢者の受講生が多いため,昼の部が約 70%とな

っている。一般受講料を払っている受講生が約 70%で,夫婦・家族参加は約 30%にとど

まっている。また,受講生の約 75%が継続受講者である。残りの新規申込者の主な動機

は,知人の紹介,民間百貨店のDMやチラシ折り込み,西日本新聞をはじめとした新聞

各紙の記事などとなっている。

参加者の住所は,福岡市及び周辺市町が約 80%を占め,筑後・筑豊・北九州など県内

遠隔地や佐賀県・大分県・熊本県などからの参加者もみられる。

③成功のポイント

高齢化の進展や余暇時間の増加に伴い,生きがいやうるおい,安らぎなど心の豊かさ

を求めて,文化活動や生涯学習などへの関心が高まる中,九州市民大学の事業は地域の

人々のニーズに応えるものとして認知されている。

シニアの中には,講演会を街なかに出てくるきっかけにしている場合も多いと聞いて

いる。会場が都心にあることがポイントであり,講演会の前後に食事や買い物を楽しん

でいる状況となっている。

④今後の課題

講義後のスキルアップの取り組みは特に行っていない。参加者が趣味の会などをつく

り,独自に行っている場合はあるようであるが,既に実施している特別講座,サマース

クール集中講座等を実施しており,事務局として関わっていない。今後の講座以外のス

キルアップのための取り組みが課題である。

会員がシニア中心であるため,講演会会場がアクロス福岡と便利な場所にある一方で,

アクロス福岡内に階段が多く,トイレがある階と講演会場の間に階段があるため,高齢

者からの苦情もみられる。野外研修ツアー等でもコース設定に無理がないように気を遣

う必要があり,バリアフリーや快適性など,高齢者視点からの配慮も実施している。

Page 35: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-31-

(5)鉄道会社による取り組み事例:九州旅客鉄道株式会社による高齢利用者の取り

込み

①会社の概要

九州旅客鉄道株式会社(本社,福岡市)は,1987 年,旧国鉄から鉄道事業を引き継ぎ

発足した旅客鉄道会社の一つで,九州地域と山口県の一部の鉄道路線を管理運営してい

る旅客鉄道事業者である。他に,貨物鉄道事業,海上運送事業,旅客自動車運送事業,

旅行業なども展開している。売上高は 1,930 億円(2013 年3月期),社員数は 9,390 人

(2013 年4月1日現在)である。

②ななつ星のクルーズトレイン事業

【ななつ星の概要】

九州地域を日本だけでなく世界にPRし,九州にある鉄道網全体の発展が地域発展に

つながること,ななつ星の事業を通じてJR九州の発展につながることを目的として導

入されたクルーズトレインである。特に,海外の九州に対する認知度が低いため,九州

を1周する豪華列車を走らせることで,ユーザーに「ななつ星が走っている九州に行っ

てみたい」と意識付けし,九州への誘客をしていくことを狙っている。

乗客定員数 30 名(他に乗務員数 25 名)で,スイートルーム,デラックススイートル

ーム,ラウンジカー,ダイニングカー等が装備されている。2013 年 10 月 15 日に運行開

始された。ラウンジカーには,故・酒井田柿右衛門氏の調度品が飾られている。スイー

トルーム(一般乗客用)は,一両に3室が整備され,ツイン,各室シャワー・トイレ・

空調等が整備されている。

現在は,3泊4日コース(火曜日~金曜日,九州全体を一周するコース)と,1泊2

日コース(土曜日~日曜日,北九州を回るコース)で,特別列車として運行されている。

【シニア層に配慮したこだわり】

ソファをベッドにした際,寝たまま車窓が楽しめるよう敢えて長方形と正方形の2種

類の窓を採用し,位置も全体的に低くするなど,きめ細かな点に気を遣うとともに,時

間消費型観光ニーズに対応した造作となっている。また,全室の洗面鉢は,柿右衛門氏

デザインを採用し,その他,ななつ星専用の車いす,オリジナルロゴ入りグラスや有田

焼「清六窯」の食器を採用するといったななつ星ならではのこだわりをちりばめている。

著名飲食店の料理人が直接乗り込み料理を振る舞ったり,降車地では特別な飲食店や

宿泊施設を用意したりと,工夫が凝らされている。

図表 3-4 クルーズトレイン「ななつ星」の全景

資料:九州旅客鉄道株式会社ウェブページ

【乗客の特徴】

ななつ星の乗客は,60 歳代が最も多く,乗車客平均年齢は 68 歳で,関東,九州,関

Page 36: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-32-

西地域からの予約が多い(中国地域は全体の約7%である)。インバウンドでは,アジア,

アメリカ,オーストラリアなどからの予約客が多くみられる。

③シニア向け会員の組織化の取り組み

【JR九州ジパング倶楽部】

JRグループ全体で展開している会員組織で,入会資格は,女性満 60歳以上,男性満

65 歳以上で,夫婦どちらかが満 65 歳以上なら2人とも入会可能である。年会費は,個

人会員 3,670 円,夫婦会員 6,120 円(2人)で,会員数は,5.3 万人(2013 年現在)と

なっている。特典としては,①全国のJR運賃・料金が割引になること(1~3回目は

20%,4回目以降 30%(のぞみ・みずほ特急料金は対象外)),②旅の情報が詰まった会

員誌「ジパング倶楽部」の送付(月刊誌),③JR九州マイ・ウェイ・クラブに無料入会

可能,④「会員の集い」「旅行説明会」などイベントへの優待参加が可能となっている。

【JR九州マイ・ウェイ・クラブ】

JR九州独自で展開している会員組織で,入会資格は,女性満 50 歳以上,男性満 60

歳以上で,夫婦どちらかが満 60 歳以上なら2人とも入会可能となっている。年会費は個

人会員 1,500 円,夫婦会員 2,000 円で,会員数は 4.8 万人(2013 年現在)となっている。

特典としては,①運賃・料金の割引(九州新幹線は 20%,九州内在来線は 40%割引),

②JR九州の旅行商品の割引(例:2万~5万円商品は 1,000 円割引),③JR九州グル

ープの各種施設の割引(駅レンタカー特別料金,食事施設・グリーンエクスプレスゴル

フクラブ割引),④会員制旅行誌「旅三昧」を毎月送付などとなっている。

特に,「旅三昧」という 25 名以下でのゆったりとした旅行を掲載した会員制旅行誌を

発行しており,扱う旅行は,一人参加も可能,全食事付き,ベテラン添乗員が同行,休

憩の頻度や時間に配慮するなど,高齢者に気を配った内容となっている。

【会員の特徴】

平均年齢 71 歳(ジパング倶楽部 72 歳,マイ・ウェイ・クラブ 67 歳)となっており,

女性 63%,男性 37%であり,女性同士,女性一人参加が多く,80 歳以上に限ると男性

の一人参加も見受けられる。ジパング倶楽部会員は,継続することで割引が継続できる

ため,会員の約8割が継続会員である。マイ・ウェイ・クラブは特に継続特典がないた

め,現在の継続者は会員の2~3割程度となっている。

④今後の課題

現在,駅を核とした会員組織づくり,シニア手帳で割引を受けられるといった会員特

典の拡大も検討している。今後,シニア会員組織をより強化していくこと,マイ・ウェ

イ・クラブをはじめ,プラチナエイジへの拡大が課題である。

また,旅行商品「旅三昧」をユーザーの声に基づき改善していく必要がある。例えば,

年齢層に合った昼食の導入といったユーザー目線に立ったきめ細かい改善や,インター

ネットでの販路拡大といった販売チャンネルの拡大も課題となっている。

高齢者を一括りにせず,細かな年齢層や性別に応じた企画を打つことが事業拡大の鍵

と捉えている。そのために,ユーザーに直接会って声を聞く取り組みや,九州各地に「お

客様委員」を配置して,ニーズを吸い上げる取り組みが必要である。

Page 37: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-33-

3.広島経済同友会会員アンケート調査の結果

(1)調査の概要

①調査のねらい

・会員企業における高齢者市場の拡大に対応する取り組み実態を把握するとともに,高齢者

アンケート調査に基づく高齢者市場の特性分析の結果と,高齢者市場の企業の捉え方の差

異を分析する。また,高齢化社会に対応した生活関連産業の拡充に向けた取り組み課題を

把握する。

②調査の方法と対象

調査方法

郵送による調査票の配布・回収

調査の対象

広島経済同友会会員が所属する企業・事業所

③調査の内容

高齢者市場の拡大に対応する取り組み

・高齢者市場拡大の企業活動への影響

・影響の内容

・高齢者市場拡大に対応するために必要なこと

・高齢者市場拡大への対応の難しさ

・高齢者市場の拡大に対応するために取り組んでいること

・高齢者市場の拡大に対応するに当たっての他企業等との連携

・影響がないと考える理由 等

高齢者市場の特性

・注目する高齢者市場の特性

・対応可能な高齢者のニーズ

・高齢者のニーズに対応して提供している商品・サービス

高齢化社会に対応した生活関連産業の拡充に向けた課題

・課題の内容

Page 38: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-34-

④調査の実施時期

2014 年1月 17 日(金)~2014 年 1 月 29 日(水)

⑤回収結果と業種

■回収結果

発送数 679 件,回収数 173 件,回収率 25.5%

■回答企業の業種

図表 3-5 回答企業の業種

業種 実数 構成比

製造業 42 24.9

建設業 27 16.0

卸売業,小売業 21 12.4

サービス業(他に分類されないもの) 14 8.3

運輸業,郵便業 9 5.3

電気・ガス・熱供給・水道業 8 4.7

金融業,保険業 8 4.7

情報通信業 7 4.1

学術研究,専門・技術サービス業 7 4.1

宿泊業,飲食サービス業 4 2.4

不動産業,物品賃貸業 3 1.8

農業・林業 2 1.2

教育,学習支援業 2 1.2

複合サービス業 2 1.2

生活関連サービス業,娯楽業 1 0.6

医療,福祉 1 0.6

漁業 0 0.0

鉱業,採石業,砂利採取業 0 0.0

その他 11 6.5

不明 4 2.3

合計 173 100.0

Page 39: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-35-

(2)集計・分析結果のまとめ

○高齢者市場の拡大は企業活動にプラス・マイナスの両面で大きなインパクトを持つ

(企業活動へ広範かつ強い影響)

・高齢者市場は,予測される市場規模の大きさや高い成長率から国内の経済や産業活動に対

して大きな影響を与えると考えられる。

・実際,会員アンケート調査では,消費者市場の拡大が企業活動に影響を与えるとする企業

が 72.8%(「大きな影響がある」は 31.2%)に上り,個々の企業の活動に対して広範かつ

強いインパクトを持つことがわかった。

(機会と脅威の両方の捉え方)

・業種によって,影響ありとする企業の割合に差異がみられるが,高齢者市場の拡大を機会

と捉えるか脅威と捉えるかにも違いがある。

○高齢者市場の多様性への対応が最も大きな課題となっている

・高齢者市場拡大への対応の難しさについて「ニーズが多様」とする企業が最も多く,高齢

者の特性を示す 10 もの切り口が抽出された高齢者市場の分析と合致する結果となった。

・こうした高齢者市場の拡大に対しては「商品・サービスの開発」に取り組む必要があると

する企業が多い。このことを裏返せば,既存商品だけでは高齢者の多様なニーズに十分に

は応えられないことを示している。

○高齢者市場の分析結果と企業の捉え方にズレがみられる

・多様な特性を持つ高齢者市場について「健康・生活の不安」に注目する企業が半数に達す

る。高齢者市場の分析では「健康・生活の不安」が中心的特性を形成する「不安先行型シ

ニア」は全体の 12.2%であり,市場特性の実態と企業の捉え方にズレがみられる。

・また,高齢者市場では,「消費生活の不安」,「利便性重視」等の特性も一定の大きさを持っ

ているにも関わらず,これらの特性に注目する企業はほとんどなく,企業の高齢者市場の

捉え方はやや幅が狭い。

○個別の企業だけでは対応が難しい課題も浮かび上がった

・高齢者市場に対応するための課題として,企業間連携等の取り組みが多い商品・サービス

の開発を進めることの他,医療・福祉との産業間連携や,行政との連携が必要になるまち

づくりの問題を指摘する企業が多かった。

・会員アンケート調査では,企業間,産業間,さらには行政を含め,個別の企業だけでは対

応が難しい課題が浮かび上がったと考えられる。

Page 40: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-36-

(3)集計・分析

①高齢者市場拡大の影響

・消費者市場の高齢化が及ぼす企業活動への影響を尋ねたところ,「大きな影響がある」が

31.2%,「いくらか影響がある」が 41.6%であり,合計 72.8%の企業が,影響があると回

答している。

・業種別に詳しくみると,卸売業・小売業とサービス産業で「大きな影響がある」と回答し

た企業が多い。

図表 3-6 消費者市場の高齢化が及ぼす企業活動への影響

図表 3-7 消費者市場の高齢化が及ぼす企業活動への影響(業種別)

(%)

合計 大きな影響がある

いくらか影響がある

あまり影響はない

ほとんど影響はない

現時点では判断できない

全体 100.0 31.2 41.6 10.4 10.4 6.4

製造業 100.0 16.7 45.2 19.0 16.7 2.4

建設業 100.0 22.2 51.9 11.1 7.4 7.4

卸売業・小売業 100.0 42.9 42.9 4.8 4.8 4.8

サービス産業 100.0 43.1 36.2 6.9 5.2 8.6

その他 100.0 33.3 33.3 4.8 23.8 4.8

(注)サービス産業は,第三次産業のうち卸売業・小売業を除く業種である(以下,同様)。

31.2

41.6

10.4

10.4

6.4 ほとんど影響はない

(%)N=173

現時点では判断できない

あまり影響はない

大きな影響がある

いくらか影響がある

Page 41: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-37-

・影響の内容は,「自社が展開している既存領域の拡大」(44.8%),「自社が進出できる新し

い高齢者市場の出現」(28.8%)のように「機会」とみる企業と,「高齢者を除く世代の減

少による自社が展開している既存領域の縮小」(39.2%),「高齢者ニーズに対応するための

新たな企業間競争の発生」(21.6%)といった「脅威」とみる企業が,ほぼ拮抗した。

・製造業は「新しい市場の出現」,建設業とサービス産業では「既存領域の拡大」という機会

の見方が最も多い。一方,卸売業・小売業では「既存領域の縮小」と回答した企業が最も

多かった。

図表 3-8 影響の内容

図表 3-9 影響の内容(業種別)

(%)

合計

自社が進出できる新しい高齢者市場の出現

自社が展開している既存領域の拡大

直接,高齢者市場向け商品・サービスを取り扱っていないが,顧客企業への提案チャンスの拡大

高齢者ニーズに対応するための新たな企業間競争の発生

(高齢者を除く世代の減少による)自社が展開している既存領域の縮小

その他

全体 100.0 28.8 44.8 20.8 21.6 39.2 6.4

製造業 100.0 46.2 30.8 19.2 19.2 38.5 7.7

建設業 100.0 20.0 45.0 25.0 25.0 15.0 -

卸売業・小売業 100.0 11.1 38.9 5.6 22.2 50.0 5.6

サービス産業 100.0 35.6 55.6 28.9 20.0 44.4 4.4

その他 100.0 14.3 42.9 14.3 28.6 42.9 21.4

6.4

20.8

21.6

28.8

39.2

44.8

その他

直接,高齢者市場向け商品・サービスを取り扱っていないが,

顧客企業への提案チャンスの拡大

高齢者ニーズに対応するための新たな企業間競争の発生

自社が進出できる新しい高齢者市場の出現

高齢者を除く世代の減少による自社が展開している既存領域の

縮小

自社が展開している既存領域の拡大

(%)

N=125

Page 42: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-38-

②高齢者市場拡大への対応の難しさ

・高齢者市場の拡大に対応するためにどのような難しさがあるかを尋ねたところ,半数近く

の企業が「高齢者は年代,性別,所得等でニーズが多様であり,きめ細かな対応が難しい」

(46.2%)と回答した。

・これに次いで,「ニーズを把握しても,ターゲットを絞って効果的にアプローチすることが

難しい」(38.5%)とする企業が多くなっている。

図表 3-10 高齢者市場拡大への対応の難しさ

・こうした難しさがある中で,高齢者市場拡大に対応するために必要なことについて,「既存

の商品・サービスにおける高齢者向け商品・サービスの開発」(55.8%)と「高齢者向け商

品・サービスの新規分野の開拓」(51.7%)の二つが半数を上回る。商品・サービスの開発

により高齢者のニーズに対応していく必要があると考えている企業が多い。

図表 3-11 高齢者市場の拡大に対応するために必要なこと

12.8

10.3

23.1

38.5

46.2

0 10 20 30 40 50

特に難しさはない

その他

高齢者のニーズの把握が難しい

ニーズを把握しても,ターゲットを絞って効果的にアプ

ローチすることが難しい

高齢者は年代,性別,所得等でニーズが多様であり,きめ

細かな対応が難しい

(%)

N=117

10.8

1.7

15.0

20.8

20.8

27.5

31.7

38.3

51.7

55.8

0 20 40 60

影響はあると考えているが,現状では特に課題はない

その他

店舗展開やインターネットの利用等,販売体制の見直し

広告等,販売促進方法の見直し

これから高齢者となる50歳代等へのアプローチの強化

高齢者市場に関する調査や情報収集

高齢者向け商品・サービスの拡充のための顧客企業に対する提案

の強化

商品・サービス構成の見直し

高齢者向け商品・サービスの新規分野の開拓

既存の商品・サービスにおける高齢者向け商品・サービスの開発

(%)

N=120

Page 43: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-39-

③企業が注目している高齢者の特性

・第2章高齢者アンケート調査による高齢者市場の分析で抽出された 10の特性を挙げて,ど

れに注目するかを企業に尋ねた。その結果,「健康や寝たきりへの不安,生活上の悩み等,

日常生活に強い不安・悩みを持っている層が存在する(健康・生活への不安)」が 49.3%

とほぼ半数の企業の回答が集まった。

・他方,「消費生活においてインターネット販売の拡大や悪質商法等に強い不安感を感じてい

る層が存在する(消費生活の不安)」(10.3%),あるいは「日常生活のことは何であれ手早

くすませたいと思っている層が存在する(利便性重視)」(6.6%)などに注目する企業はほ

とんどない。

図表 3-12 保有する商品・サービスや技術等を活用する上で注目される高齢者市場の特性

6.6

10.3

10.3

11.0

20.6

22.1

27.2

27.2

32.4

49.3

0 20 40 60

日常生活のことは何であれ手早くすませたいと思っている層が

存在する

消費生活においてインターネット販売の拡大や悪質商法等に強

い不安を感じている層が存在する

人づきあいが面倒で,一人で豊かな時間の過ごし方をしたいと

強く考える層が存在する

自分の嗜好やこだわりよりも価格が安いことを何より重視する

層が存在する

着るものや趣味等で細かな注文があったり,品揃えを重視する

など,自分の個性に強くこだわる層が存在する

目新しい商品・サービスに強い関心を持ち,口コミや体験をと

ても重視している層が存在する

新しいことへの挑戦や学習・教養に対して強い意欲を持ってい

る層が存在する

友人関係や近所づきあいなど,他者との関わりをとても重視し

ている層が存在する

気持ちが若くて自分に自信を持ち,健康や運動に対して努力を

惜しまない層が存在する

健康や寝たきりへの不安,生活上の悩み等,日常生活に強い不

安・悩みを持っている層が存在する

(%)

N=136

Page 44: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-40-

④企業間・産業間の連携

・高齢者市場に対する取り組みを行っている企業に対して,取り組みに当たって外部との連

携を行っているかを尋ねたところ,「外部との連携は行ったことはない(行っていない)」

とする企業は 42.0%であった。反対に,残り 58.0%の企業は,他企業等の連携を実施して

いる。

図表 3-13 高齢者市場の拡大に対応するための他企業や研究機関等との連携

⑤生活関連産業の拡充に向けた課題

・アンケート調査の最後で,高齢化社会に対応した生活関連産業の拡充に向けた課題につい

て回答を求めた。その結果,「高齢者ニーズに対応した商品・サービス」(43.8%)を課題

として挙げる企業が最も多かったが,これに次いで,行政との連携が必要になる「高齢者

が外出しやすいまちづくり」(38.6%)が二番目の課題になったことも注目される。

・また,三番目に「福祉,医療との連携」(35.9%)を挙げる企業が多く,企業連携に加えて,

福祉,医療との産業間連携も必要とされている。

42.0

6.2

16.0

19.8

38.3

0 10 20 30 40 50

外部との連携は行ったことはない(行っていない)

その他の連携先があった(連携先がある)

大学や研究機関と連携を行った(行っている)

医療機関,介護・健康関連事業所と連携を行った(行ってい

る)

他の企業と連携を行った(行っている)

(%)

N=81

Page 45: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-41-

図表 3-14 高齢化社会に対応した生活関連産業の拡充に向けた課題

5.2

4.6

2.0

4.6

5.9

9.8

15.7

17.6

19.6

19.6

20.9

21.6

22.2

30.1

35.9

38.6

43.8

0 10 20 30 40 50

わからない

特に課題はない

その他

高齢者から信頼を得て事業を推進するリーダー企業の存在

他地域から高齢者の来訪を受け入れて産業振興を図る気運の醸成

部品・部材・原材料等の供給企業を含めた産業間の連携

小売,運輸,関連サービス等,高齢者市場を取り巻く各分野の企業

チェーンの構築

各分野で保有されている高齢者市場に関わるデータの共有・利用

福祉やまちづくり等の社会活動を担当する自治体部門との連携

他地域から高齢者の来訪を受け入れるための条件整備(交通機関,

観光振興,広域拠点整備等)

ターゲットを絞って高齢者市場にアプローチする手法の獲得・開発

高齢者の活動をサポートする地域の拠点づくり(学習,レジャー,

健康づくり等)

地域に密着した事業活動を行っている近隣商業・サービスとの連携

高齢者のニーズを把握するマーケティング手法の獲得・開発

福祉,医療との連携

高齢者が外出しやすいまちづくり(地域内交通機関,ユニバーサル

デザイン等)

高齢者のニーズに対応した商品・サービスの開発

(%)

N=153

Page 46: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-42-

第4章 高齢化社会に対応した「生活関連産業」の拡充に対する提言

今回の調査においては,既往調査から高齢者市場(特に生活関連産業分野)の市場規模等

を整理したうえで,高齢者市場の特性や実際に商品・サービスを提供する企業側の高齢者市

場に対する認識について,アンケート調査等を踏まえ分析してきた。本章では,これまでの

分析結果を踏まえ多様な高齢者市場について,主なターゲットである「シニア」世代の多様

性を考察したうえで,生活関連産業を拡充していくための提言をとりまとめた。

1.「シニア」世代の多様性に関する考察

高齢者市場とは,以下のように重層的で多様性を示すものである。その中で,生活関連産

業を拡充していくためには,こうした特性にマッチした新たなアプローチを多面的に展開し

ていくことが求められている。

(1)可処分所得と可処分時間の増大

①相当額の年金収入が期待できる一方,子供の養育費や住宅ローン支払いが不要となる。

すなわち,生活の中で「消費」に振り向けるフリーマネーが増え,「可処分所得」が増

大していく。

②仕事・家事・育児から解放され,自由に使える時間が大幅に増加する。すなわち,生

活の中でフリータイムが増え,「可処分時間」が増大していく。

(2)消費行動の拡大

高齢者市場においては,「商品(モノ)消費」や「サービス(コト)消費」にとどまら

ず,消費の対象が,高齢者ならではの長いフリータイムを心地よく過ごすことを目的と

した「時間(トキ)消費」や,自分にとって価値のある人とコミュニケーションするこ

とを目的とした「交わり(ヒト)消費」にまで「ストレッチ」しているという様相が顕

在化している。

(3)重層的で多様な価値観

体力が衰えても気力のあるうちは「ミドル」だと自認する「シニア」が多いとの調査

もあり,「シニア」世代は,「体力」と「気力」がゆるやかな低下傾向にある「ミドル」

世代と見てもよいのではなかろうか。そうであれば,実態としての「シニア」世代の消

費セグメントは,「ミドル」⇒「ミドル気取」⇒「シニア」と年齢につれて変化していく

と考えるべきであろう。つまり,高齢者市場とは,年齢的下限が,「ミドル」との境界が

判然としない連続性の中にある一方,年齢的上限は,「要支援・介護」の状態には至って

ない「後期高齢者」にまで幅広く「ストレッチ」しており,消費に対する重層的で多様

な価値観を持ったものといえよう。

Page 47: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-43-

(4)セグメンテーション

上記のような観点から,第2章で述べた6つのセグメンテーションを再整理してみる

と,以下の特性が浮かび上がる。

①「スーパーアクティブシニア」:「ハレの日」が続く「豊かな人生」を実現したいとい

う欲求が強く,幅広い選択肢から自分の求める「モノ消費」・「コト消費」・「トキ消費」・

「ヒト消費」を折々に選択していく狩人型消費者。

②「孤高型シニア」:自分のライフスタイルや嗜好に合った消費を求めて積極的に動き,

「モノ消費」・「コト消費」・「トキ消費」を好むが,コミュニケーションへの忌避感が

強く,「ヒト消費」には消極的で,その量より質を重視する傾向が顕著な一人旅型消費

者。

③「不安先行型シニア」:様々な理由でフリーマネーとフリータイムに制約があり,最低

限の「クオリティ・オブ・ライフ」を維持するための消費(「アメの日消費」)を中心

とせざるを得ない雨宿り型消費者。

④「好奇心型アクティブシニア」:「ハレの日」が続く「豊かな人生」を実現したいとい

う欲求が強く,「モノ消費」・「コト消費」・「トキ消費」に積極的で,消費の際の,自分

に役立つコミュニケーション(「ヒト消費」)を好む多次元交流型消費者。

⑤「後期高齢者型シニア」:加齢による体力と気力の衰えを自覚して,「クオリティ・オ

ブ・ライフ」を維持するための「ヒト消費」への強いニーズが顕在化した中二階・終

活準備型消費者。

⑥「不活発型シニア」:「ハレの日消費」に向かう好奇心やコミュニケーションの機会(「ヒ

ト消費」)が少なく,長くなじんだ習慣依存・反復継続的な「モノ消費」・「コト消費」・

「トキ消費」(「クモリの日消費」)を続ける農耕型消費者。

2.生活関連産業を拡充していくための提言

(1)「シニア」世代の多様な消費ニーズに対応する企業のマーケティング力の強化

本調査の結果,高齢者市場には,特性として 10の切り口があり,さらに,大きく6類

型に分類できることがわかった。そして,個々の価値観や行動様式はどの類型に属する

かにより大きく異なることがわかった。また,企業側の高齢者市場の捉え方は必ずしも

こうした高齢者市場の特性を踏まえていないことも明らかになった。

こうした事実を踏まえると,高齢者市場を開拓するためには,高齢者市場の中でどの

市場をターゲットとするのかを明確化し,ターゲットを絞った商品・サービスの開発,

および的確なマーケティングが必要である。

①「シニア」世代に現れる「小さな差異」にさりげなく配慮した商品・サービスの提供

高齢者消費を,あたかも人々がある日突然高齢者となって発生するようにみることは

誤りを招くと考えられる。高齢者の消費を「シニア」消費と表現すると,「シニア」消費

Page 48: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-44-

は「ミドル(大人)」消費が持つ特徴や行動様式が緩やかな時間的変化の中で現れるもの

とみる方が自然である。

例えば,今回の特性分析で抽出された「スーパーアクティブシニア」「好奇心型アクテ

ィブシニア」のセグメントは,高齢者であることに拒否感を持つ,あるいは,高齢者に

カテゴライズされることに違和感を持つミドル消費セグメントの延長と捉える方が適切

であると考えられる。

このため,「ミドル」と「シニア」との間の差異を強調した商品・サービスより,身体

の衰え等,「ミドル」から「シニア」に移行するときに徐々に起こり,意識せざるを得な

くなる「小さな差異」に配慮していることをさりげなくアピールした商品・サービスの

方が選択される可能性が高い。

この考え方に基づけば,「高齢者向け商品・サービス」をつくるのでなく,既存商品の

量・質の選択肢を増やすことの方が効果的であると考えられる。例えば,①少人数世帯

での消費にマッチするよう内容量の少容量化を図る,②少容量化による価格低下を,高

品質化・高付加価値化で補う「プレミアム」化を図る,等である。

②「シニア」世代に特化しない「誰もが受け入れる」商品・サービスの提供

一般的に,消費者が使い慣れた好みの商品・サービスやブランドから,特別な理由も

なく突然に離れていくことはないであろう。高齢者市場も同様であり,徐々に訪れる消

費者自身の高齢化が,使い慣れた商品・サービスの利用を突然やめる特別なきっかけに

なるとは考えにくい。つまり,現役時代のライフスタイルに基づく消費志向が急変する

ことはないと考えられる。また,「シニア」においては現役志向がみられるとともに,「若

く見られたい」という気持ちが鮮明化し,家電品等に対して高齢者向けの機能簡素化よ

りユニバーサルデザイン化の方が高く評価されるといった傾向も指摘されている。

一方,今回の高齢者市場の特性分析では,「シニア」世代でも性別が高齢者の消費行動

の差異要因として強く影響していることがわかった。しかし,企業側には,高齢になる

ほどその消費行動はモノセクシャル化するという強い思い込みもみられる。

このような視点からみれば,先入観に基づくステレオタイプな高齢者消費観に依存し

て,「高齢者向け商品・サービス」を開発・販売してしまうことの方が,むしろ消費誘因

を阻害する結果になる可能性もある。つまり,商品・サービスの特性や機能を,「誰でも

使いやすい」「誰でも利用しやすい」という視点で突き詰めたり,「年齢」より「性別」

に着目した商品・サービスを提案する方が,結果としてより多くの「シニア」世代を含

む形で消費者から受け入れられることになると考えられる。

高齢者市場に特化した商品・サービスを多品種少量で生産することは,むしろ高コス

ト化をもたらし,コストパフォーマンスに敏感な高齢者から忌避される可能性も生じる

のではないか。

③「シニア」世代の「他人ゴト」消費へ対応した商品・サービスの提供

「友達親子」や「親子の近居志向」は 1990 年代後半から顕著となった新たな親子・家

族関係の形態である。「三世代消費」は,「高齢化した親」+「親になった子」+「その

子どもである孫」という「友達親子」「近居家族」の中で生まれた新しい消費トレンドで

Page 49: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-45-

あると解釈することもできる。この顕著な形が,祖父母による孫のランドセル購入や孫

の誕生日などの家族イベント消費といった,いわゆる「ハレの日消費」である。また,

「三世代消費」は,東日本大震災以降に顕在化した家族や親しい人とのつながりを大切

にするための消費活動,いわゆる「きずな消費」の一形態とみることも可能ではないだ

ろうか。

これらは,別の視点からみると「商品やサービスを利用する人」=「費用を負担する

人」というこれまでの消費行動が希薄化していることを表している。すなわち「商品や

サービスを利用する人」≠「費用を負担する人」という新たな消費行動に対応した提案

が求められていると考えられる。「利用する人」が非「シニア」世代でも「負担する人」

が「シニア」世代ならば,提案も負担する「シニア」世代を意識する必要がある。例え

ば,商品広告の文字の見難さを改善したり,品質や機能の説明を高齢者へ伝えやすい内

容に見直すという改善も図られるべきであろう。

また,「シニア」世代による「自分ゴト」消費のみならず,近親者や友人などに対して

行う「他人ゴト」消費に着目し,こうした需要をさらに喚起する「買い回り」や「つい

で買い」の提案にも積極的に取り組むべきである。

(2)「シニア」世代の多様な消費ニーズに対応するための新たな「企業間・産業間連携」の

仕掛づくり

多様な特性を有する高齢者市場の拡大に対応するには,既存商品を再構成するだけで

なく,高齢者のニーズに対応した商品・サービスの開発や新規分野の開拓が必要とされ

ている。一方で,商品・サービスの開発のためには,企業単独の取り組みでは限界があ

り,複数の企業が一緒になって高齢者市場を開拓・創出するという視点が求められる。

特に,健康・生活面に不安がある高齢者層のニーズに対応しようとすれば,医療・福祉

との連携は不可欠である。なお,企業・産業連携の視点としては,広島の強みである製

造業集積の活用等が重要である。

①新たな商品・サービスの開発のための「製造」=「販売」協力体制の構築

取り組み事例調査で取り上げたアサヒコーポレーションの成功の鍵として,①開発段

階から医療専門家の意見や顧客ニーズを積極的かつ迅速に取り入れる「現場主義」,②介

護・医療施設ルートという新たな「販売チャネル」の開拓,③販売店に商品の優れた機

能を浸透させるため 1,000 回以上行われた講演会・説明会等による徹底した「差別化戦

略」,④商品にかける企画・開発・販売担当者の「熱意」等が挙げられる。つまり,「商

品」の特性にマッチした「販売チャネル」を含めた「商品+販売チャネル+販売ノウハ

ウ」をワンパッケージとした新しい「商品開発」の在り方が成功を生んでいる。

ビジネスにおける「現場主義」の本質とは,消費の現場に身をおいて利用者の本音を

「見える化」することであろう。「高齢者が便利で使いやすいものを開発する」というと

き,その「便利」や「使いやすい」という表現について具体的な深堀りがないまま,作

り手の一方的な思い込みが優先されがちと思われる。

高齢者市場の特性やニーズの見えにくさを「見える化」する具体的な取り組みとして,

Page 50: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-46-

市場縮小の「危機感」を持つ「販売」セクターの事業者と,間接的・概念的な思い込み

に走りがちだが高齢化を市場拡大の「機会」とみる「製造」セクターの事業者が,「販売」

の「現場」を利用して「商品+販売チャネル+販売ノウハウ」をワンパッケージとした

「商品開発」につなげる「製造」=「販売」協力の仕掛け・枠組みを創ってはどうだろ

うか。具体的には,新たに開発された商品の試験販売やお客さまの声のモニタリングな

ども有望であろう。高齢者市場をターゲットとした新たな商品・サービスの開発を目的

に特化した「製造」=「販売」事業者間での「ビジネスマッチングビューロー」や「製

造」=「販売」間の相互開発支援を促進する「コンサルティングミーティング制度」の

創設などを検討してはどうだろうか。

②医療・福祉との連携を含む高齢者を取り巻く企業ネットワークの構築

「不安先行型シニア」は漫然とした「不安」を抱えている高齢者であり,消費意欲も

それほど高くない。こうした市場に対しては,「高齢化チェーン」の考え方にもみられる

ように,複数の異業種企業が連携をとり同時的に市場にアプローチすることが有効であ

ると考えられる。このためには,核となるコーディネーター企業の役割とともに,特に

医療・福祉や近隣サービス等とのネットワークが重要である。

(3)多様な高齢者の活動志向に応じた環境整備

開発した商品・サービスを高齢者市場に提供するためには,高齢者が消費を行う「場」

をうまく捉える必要がある。例えば,活動的な高齢者のニーズに応える商品・サービス

を提供しようとすれば,高度な活動メニューを提供できる都心において高齢者が集う「場」

を創出することが有効である。一方,生活や健康に不安や制約を抱える高齢者について

は家庭が主な消費の「場」になると捉え,訪問が中心的な市場アプローチになるであろ

う。また,高齢者の中にはあまり社交的でなく手近な利便性を求める層があり,こうし

た高齢者では近隣地域が主な消費の「場」になると考えられる。このように,高齢者向

けの商品・サービスの提供に当たっては,高齢者が消費を行う「場」とその環境を踏ま

え,高齢者市場に対して効果的にアプローチすることが必要になっている。

例えば,外出志向の高齢者ニーズに対しては行政等と連携した都心の拠点づくりが重

要である。また,身近な利便性へのニーズがある高齢者には「トキ消費」も含めた近隣

地域での消費スポットの提供といったように,多様な高齢者がそれぞれに商品・サービ

スを利用しやすい環境整備を行政等と連携して進めるといった方向が考えられる。

①「ハレの日消費」を拡大するための都市施設整備

九州市民大学は,「シニア」世代を中心とした地域の人々に生涯を通じた定期的な学習

機会を提供しているが,受講者の中には毎月開催される講演会を街なかに外出するきっ

かけとしている場合も多い。施設(「福岡シンフォニーホール」)自体が各種交通機関の

ハブ施設に近接しており,地下街への直通通路もあって,「シニア」世代の会員にとって

「ハレの日」である講演会前後の都心回遊型消費拡大にも大きく寄与しているとみられ

る。一方で,施設がバリアフリー非対応のため,3階まである観客席と地下トイレへの

Page 51: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-47-

アクセスが階段だけであったり,音響が良すぎてかえって講師の話が聞きづらいなど施

設の改善に対する「シニア」世代ならではの要望・苦情も多いと聞く。

こうしたことから,「シニア」世代の「ハレの日消費」を拡大するためには,周辺地域

から都市中心部へのローカル交通機関等によるアクセスの容易性を確保することは無論

のこと,都心における「シニア」世代の長時間にわたる回遊型消費活動のベースとなる

「居心地の良い」場所での「心地よい」時間を提供するための都市・施設整備を官民の

連携によって実現していくことが必要である。例えば,高齢者が長時間一人でいても落

ち着けたり楽しめるオープンなパブリックスペースや飲食施設,また,バリアフリー型

多目的公共トイレ等を都心エリアの要所要所に計画的に設置してはどうだろか。

②「クモリの日消費」・「アメの日消費」の晴れ間を拡げる「場」の提供

「シニア」世代の4分の1以上を占めている「不活発型シニア」や「不安先行型シニ

ア」は,それぞれに持つ理由から,従来からなじんだ習慣依存・反復継続的な「モノ消

費」・「コト消費」・「トキ消費」を続ける「クモリの日消費」・「アメの日消費」に終始し

ており,自ら積極的に「ハレの日消費」に向かう機会を逸しているとみられる。しかし,

「シニア」世代ならではのフリータイムの増加は,なじみの「場」での滞留時間の増加

の可能性を高めるものでもあり,なじみの「場」において「居心地の良さ」と「心地よ

い」時間を提供できれば,滞留時間(=フリータイム)の増加による新たな「モノ消費」

(例えば,SCフードコートでの軽食型外食)や「コト消費」(例えば,「シニア」世代

向けのゲームセンター)の可能性は十分ありそうである。更に,そうした「場」に行き

交う「シニア」世代による新たなコミュニケーション(「ヒト消費」)が実現すれば,「好

奇心型シニア」への転換による消費行動の拡大も期待できるとも考えられ,こうした新

たな「提案」=チャレンジがあってもよいのではなかろうか。

Page 52: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

-48-

おわりに

~ 重層的で多様性を持つ高齢者市場での「生活関連産業」の拡充に向けて ~

今回行った高齢者アンケートによれば,高齢者全体のうち,高額商品消費を牽引する「ス

ーパーアクティブシニア」は 10.5%と少なく,実は,「好奇心型アクティブシニア」が 24.3%

を占めるなど,一般の認知度の高い「アクティブシニア」と称されるセグメントも重層的

な構造を持つものであることが判りました。また,「不安先行型シニア」が 12.2%,「後期

高齢型シニア」が 18.3%など,生活への不安や健康への関心が強い高齢者が多く存在する

ことも明らかになりました。このように,思いの外様々なカテゴリーから構成される多様

性が高齢者市場の特徴と言えましょう。今,高齢者市場が巨大な消費市場として注目を浴

びていますが,今回明らかとなったこうした多様性に地域企業がしっかりと対応すること

が求められています。

本委員会では,シニアビジネスの専門家や実践者を講師とする勉強会の開催の他,福岡

市,久留米市など主に九州地域における先進的取り組みの視察,全国の高齢者の消費行動

と価値観の因子分析,広島県における生活関連産業のポテンシャルや取り組みの問題点・

課題などについて調査・分析を行い,3つの方向性から広島県において,今後,「生活関連

産業」を拡充していくための諸方策を提言として取りまとめました。本報告書が,広島県

において「シニア向けの生活関連産業」に取り組まれている関係者の皆さまのご参考とな

り,ひいては広島県経済の活性化の一助になることを期待いたします。

最後に,高齢者市場は,今後も大きく変貌し続ける,大きな可能性を秘めた一大消費市

場であることに間違いありません。特に,新たに高齢者市場に仲間入りした「団塊の世代」

は,これまでの高齢者市場の常識を覆す可能性を持っています。「団塊の世代」がこれまで

経てきた各時代において見せた際立った世代的特性は,従来からの慣習・常識や価値観へ

の強い破壊衝動であり,新たな価値観や社会的枠組みを創りあげることにはいささか不熱

心・不得手であったように感じます。このような「団塊の世代」が今後,高齢者市場に対

してどのような変化を与える可能性があるのでしょうか。例えば,大量の「モンスターシ

ニア」の誕生によって,高齢者市場の常識をもまた破壊することになってしまうのでしょ

うか。あるいは,人生の終活活動期に達し,後世代に良き社会的遺産を残すという世代的

決断を下すに至るのでしょうか。

いずれにせよ,今後も絶え間なく変化を続ける高齢者市場に対し,将来にわたる継続的

なウォッチ&レビューが必要です。なかでも,高齢者の経年的な価値観の変化や,「団塊の

世代」のもつ購買傾向の固有性などを観察するために,定期的な高齢者市場調査を継続し

ていくことや,高齢者予備軍ともいえる「プラチナエイジ」市場に関する調査・研究を行

うことがとりわけ重要であると考えられ,本委員会においても,引き続き機会を捉えてそ

うした取り組みを実践していく所存です。

Page 53: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

地域経済委員会

(委員長)

伊 藤 豪 朗 中国電力㈱ 執行役員

(副委員長)

田 中 信治朗 ㈱電通西日本広島支社 常務取締役

友 則 和 寿 ㈱エディオン 取締役副会長

三 田 周 作 ㈱近畿日本ツーリスト中国四国 代表取締役社長

山 西 泰 明 ㈱イズミ 代表取締役社長

(運営委員)

青 井 康 文 三井住友海上火災保険㈱中国本部 執行役員中国本部長

池 田 賀津彦 (公社)中国地方総合研究センター 常務理事

内 海 誠 志 ㈱三井住友銀行広島法人営業部 広島法人営業部長

遠 藤 毅 ポッカサッポロフード&ビバレッジ㈱中四国支社 支社長

大 方 幸一郎 ㈱大方工業所 代表取締役

鎌 倉 秀 章 中国経済連合会 専務理事

茅 田 善 心 サッポロビール㈱中四国本部 本部長

川 平 伴 勅 (一財)ひろぎん経済研究所 理事長

黒 田 強 西松建設㈱中国支店 支店長

佐 上 芳 春 佐上公認会計士事務所 所長

篠 原 敦 子 ㈱合同総研 代表取締役

柴 田 良 智 有限責任監査法人トーマツ広島事務所 広島事務所長 パートナー

角 田 直 行 西日本高速道路㈱中国支社 執行役員中国支社長

畝 川 寛 中国企業㈱ 取締役社長

瀬 川 光 俊 広島信用金庫 常勤理事

寒 川 起 佳 ㈱紀陽 代表取締役社長

田 尾 勝 ㈱原色美術印刷社 取締役会長

竹 内 徳 將 キリン木材㈱ 代表取締役社長

建 守 洋 一 あいおいニッセイ同和損害保険㈱広島支店 部長

千 代 英 一 ㈱新生銀行広島支店 支店長

津 山 直 登 広島県信用保証協会 会長

徳 永 徹 ㈱山口銀行広島支店 常務取締役支店長

冨 山 次 朗 ㈱冨山学園 専務取締役

中 尾 建 三 ㈱中尾鉄工所 代表取締役

中 川 玲 子 中川玲子社会保険労務士事務所 所長

西 澤 正 弥 野村證券㈱広島支店 支店長

西 前 寛 丈 三井住友信託銀行㈱広島中央支店 支店長

Page 54: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国

林 正 史 ㈱山崎本社 代表取締役会長

藤 田 謙 戸田建設㈱広島支店 支店長

藤 田 敏 郎 ㈱竹中工務店広島支店 支店長

前 田 昭 ㈱広島銀行 総合企画部長

松 永 祐 幸 三菱UFJ信託銀行㈱広島支店 支店長

三 島 久 範 ㈱GKデザイン総研広島 取締役都市建築デザイン部長

三 宅 恭 次 ㈱バルコム 顧問

本 幡 克 哉 日本銀行広島支店 支店長

森 山 博 行 ㈱フジ 上席執行役員広島運営事業部長

山 田 顕 彦 東芝ソリューション㈱中国支社 支社長

山 本 茂 樹 ㈱大進本店 代表取締役

横 川 慶 治 ㈱テレビ新広島 経営管理部マネージャー

宇都宮 公 徳 ㈱ユニックス 代表取締役社長 ( 呉 )

赤 利 俊 彦 ㈱アカリ工業 代表取締役 (三原)

松 下 雅 人 ㈱リビンズ藤井 代表取締役 (尾道)

有 木 敏 雄 ㈱広島銀行福山営業本部 執行役員福山営業本部本部長(福山)

佐々木 満 西田産業㈱ 代表取締役社長 (備北)

村 上 尚 裕 広島綜合警備保障㈱東広島支社 支社長 (広島中央)

※ 調査・分析 中国電力(株)エネルギア総合研究所,(公社)中国地方総合研究センター

Page 55: 高齢化社会に対応した 「生活関連産業」の拡充に向けて · 65歳以上の高齢者となりつつあるなど,世界中でも過去に例のない高齢化の進展が我が国