3
東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 初澤研究室 題目:-チオール結合を用いたDNAの選択的位置決め手法の研究 分野:バイオNEMS 種別:平成26年度修士論文 概要:DNAの塩基対合性を応用して特定の位置にDNA短鎖を 位置決めする技術で,ナノ配線への応用が目標です. TTAA 5’-P AGCT 5’-P 共通アンカー カプラ1 カプラ2 1 背景:DNAと基板上での固定化技術 Guan H. W. et al., Key Eng. Mater., 523, 604 (2012) AFM陽極酸化技術を利用した ナノドットへのDNA架橋 予め基板上に作製した足場にDNAを結合させることが可能 2 ・直径約2 nm ・塩基の相補性による 精密な連結 ・化学的な修飾が可能 Braun E. et al., Nature, 391, 775 (1998) DNA 新たな電子デバイスへの応用が期待 DNAの導電化処理 Gold islands EB描画により作製した 金ドットへのDNA架橋 Baoquan Ding. et al.,Nano lett, 10, 5065-5069 (2010) 1背景:塩基の相補性を用いた選択的固定 Dip-pen nanolithographyを用いて DNAを固定した後ハイブリダイゼーション APTESで作製した足場にDNAを固定し た後,ハイブリダイゼーション Andrew J. S et al, ACS NANO, 3,2394-2302(2009) Guo-Jun Zhang et al, Sensors and actuators, 93,243-248(2004) 基板上に固定したプローブDNAに相補的なターゲットDNA をハイブリダイズさせることが可能 特定の足場へ選択的に特定の塩基配列を持つ DNAを結合させる手法を提案 3 2 提案手法の原理 4 1000塩基対の長鎖DNAを用いてナノワイヤとして応用 10塩基対のDNAを用いてDNAチップ等で利用されている

背景 塩基の相補性を用いた選択的固定 2 提案手法の原理...3 実験概要 異なる末端塩基配列を持つ2種類の DNAを用いて塩基の相補性によるナノワイヤDNA

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 背景 塩基の相補性を用いた選択的固定 2 提案手法の原理...3 実験概要 異なる末端塩基配列を持つ2種類の DNAを用いて塩基の相補性によるナノワイヤDNA

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 初澤研究室

題目:金-チオール結合を用いたDNAの選択的位置決め手法の研究

分野:バイオNEMS

種別:平成26年度修士論文

概要:DNAの塩基対合性を応用して特定の位置にDNA短鎖を

位置決めする技術で,ナノ配線への応用が目標です.TT

AA5’

-P

AGCT

5’-P

共通アンカー

カプラ1 カプラ2

1 背景:DNAと基板上での固定化技術

Guan H. W. et al., Key Eng. Mater., 523, 604 (2012)

AFM陽極酸化技術を利用したナノドットへのDNA架橋

予め基板上に作製した足場にDNAを結合させることが可能 2

・直径約2 nm

・塩基の相補性による精密な連結

・化学的な修飾が可能Braun E. et al., Nature, 391, 775 (1998)

DNA

新たな電子デバイスへの応用が期待

DNAの導電化処理

Gold islands

EB描画により作製した金ドットへのDNA架橋

Baoquan Ding. et al.,Nano lett, 10, 5065-5069 (2010)

1背景:塩基の相補性を用いた選択的固定Dip-pen nanolithographyを用いて

DNAを固定した後ハイブリダイゼーションAPTESで作製した足場にDNAを固定し

た後,ハイブリダイゼーション

Andrew J. S et al, ACS NANO, 3,2394-2302(2009) Guo-Jun Zhang et al, Sensors and actuators, 93,243-248(2004)

基板上に固定したプローブDNAに相補的なターゲットDNAをハイブリダイズさせることが可能

特定の足場へ選択的に特定の塩基配列を持つDNAを結合させる手法を提案 3

2 提案手法の原理

4数1000塩基対の長鎖DNAを用いてナノワイヤとして応用

数10塩基対のDNAを用いてDNAチップ等で利用されている

Page 2: 背景 塩基の相補性を用いた選択的固定 2 提案手法の原理...3 実験概要 異なる末端塩基配列を持つ2種類の DNAを用いて塩基の相補性によるナノワイヤDNA

3 実験概要

異なる末端塩基配列を持つ2種類のDNAを用いて塩基の相補性によるナノワイヤDNA

の選択的位置決めを確認する 5

3 DNA足場構造の作製ZEP520-22

シリコン基板

Ⅰ Ⅱ

Ⅲ Ⅳ

4[μm] 2[μm] 1[μm] 500[nm]

基板上に直径0.5~4 μm,高さ約60 nmのディスク状足場構造(金アンカー)を作製

(Ⅰ)レジストをスピンコート

(Ⅱ)EB描画によるリソグラフィ

(Ⅲ)Ti(7 nm),Au(50 nm)を成膜

(Ⅳ) リフトオフ

6

3 アンカーDNAとナノワイヤDNAの結合手法

・アンカーDNAの末端に修飾されたチオール基は金アンカーと結合・アンカー1,2とナノワイヤ1,2はそれぞれ末端の4塩基の相補性により結合・アンカーDNAの5’末端とナノワイヤDNAの3’末端をライゲーションして補強・ナノワイヤDNAはそれぞれCy3,Fluoresceinにより標識

ナノワイヤ DNA ナノワイヤ DNA

7

3 ナノワイヤDNAの作製手法制限酵素の認識配列

2種の制限酵素を用いてpBR322から二種のナノワイヤDNAを作製

・CIAP(脱リン酸化酵素)を用いてナノワイヤDNAの5’末端のリン酸基を分解・リガーゼの働きによるセルフライゲーションの防止

・環状プラスミドDNA・4361 bp・長さ約1.5 μm

pBR322

8

EcoRⅠ SalⅠ

アンカーDNAとのみライゲーションが可能

Page 3: 背景 塩基の相補性を用いた選択的固定 2 提案手法の原理...3 実験概要 異なる末端塩基配列を持つ2種類の DNAを用いて塩基の相補性によるナノワイヤDNA

3 DNAナノワイヤの作製と確認

1. pBR3222. pBR322, SalⅠ, CIAP3. pBR322, SalⅠ4. pBR322, EcoRⅠ, CIAP5. pBR322, EcoRⅠセルフライゲーションの

防止を確認

スピンカラムを用いて酵素反応液をOD 260/280≧1.8になるよう精製

・Mirus Bio社,Label IT Fluorescein Nucleic Acid Labeling Kit・Mirus Bio社,Label IT Cy3 Nucleic Acid Labeling Kit

・20~60塩基につき一個の蛍光物質が結合

・エタノール沈殿を用いて未標識の蛍光色素を除去

Cy3, Fluoresceinでそれぞれ標識されたナノワイヤ1,ナノワイヤ2を作製 9

Ligation Kit 混合

(1)DNAの酵素反応 (2)DNAの精製 (3)DNAの蛍光標識

3 アンカーDNAの作製手法

一本鎖DNA同士をそれぞれハイブリダイゼーションさせ二種のアンカーDNAを作製

10

TTAA

5’-P

AGCT

5’-P

共通アンカー

カプラ1 カプラ2

3 アンカーDNAの位置決め(1)

滴下前 滴下後 洗浄後

金-チオール結合によりDNAが金アンカーに結合

10μm10μm10μm

10μm10μm10μm

11

・DNA濃度 6 pmon/μl (Cy3 標識)

・DNA濃度 6 pmol/μl (Cy3 標識)

4 まとめと今後の課題

・シリコン基板上にリソグラフィを用いて金アンカーを作製した

・金-チオール結合を用いてシリコン基板上に作製した金アンカーにアンカーDNAを固定した.

・蛍光色素で標識したナノワイヤDNAをアンカーDNAが固定された基板上に滴下し観察した

まとめ

今後の課題

・撮影時間の短縮,蛍光強度の増強等,実験条件の最適化・分子コーミング法等を用いた金アンカー間での架橋

12