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地形・景観・奇岩�地形地形・景観景観・奇岩奇岩�地形・景観・奇岩� 島根県地学会会誌 20. 6(2005年 3月)
隠岐島後の特異地形-油井の池-
“油井の池”は島後の西南西の海岸近くに位置して
おり,島後の玄関口である西郷港から車で約 40分で
行けます.この池は葦や蒲の生い茂った長径約 150 m
の楕円形の沼沢となっています.
油井の池は特異な地形の中に存在します.池は径
300 mの円い窪地の中央にあり,さらにその窪地は西
に開いた馬蹄形の急崖に取り囲まれています.このよ
うに池のまわりの地形は三重構造になっているのです.
池は円い窪地の中にあること,窪地の周辺には大小
不揃いの礫が厚く堆積していること,そして急崖をつ
くる岩石が火山岩(後期中新世のアルカリ流紋岩)で
あることから,円い地形は「爆裂火口」と考える説が
多く,ほかに隕石衝突でできた「クレータ」という説
もあります.
最新の調査によると,不揃いの礫を含む地層は鮮新
世の海成堆積物(向ヶ丘層**)であることが分かって
きました.このことにより,島後は鮮新世前期に沈降
(最大 400 m程度)し,向ヶ丘層の堆積後,鮮新世後期
から更新世初期にかけて広域的に隆起したとされまし
た.これと照らし合わせると,油井の池周辺の急崖は,
沈降時に波浪で形成された海食崖であり,隆起時に地
すべりが発生して堆積物が急崖と分離したため,現在
の特異な地形が偶然形成されたものと考えられます
(村上久*).* 譁コスモ建設コンサルタント** 山内ほか,2005:隠岐・島後で新たに発見された
海成鮮新統“向ヶ丘層”,地球科学第 59巻 1号
図 1 油井の池を西側から望む
油井の池
図 2 地形図国土地理院発行の 5万分の 1地形図「西郷」を使用
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