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アラメ クロメ 0 40 80 120 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 15℃以下 14℃以下 13℃以下 カジメ類の分布域においては夏季の高 水温による急激かつ大規模なカジメ場 の消失に警戒が必要です。 成体の消失後も幼体の加入は期待で きるので、 、幼体の早めの保護に取り 組むことが必要です。 普及・社会実装への道筋 カジメ類とは? 2013年と2016年の状況 水温と成体・幼体の密度との関係 1 2 3 壱岐市沿岸におけるカジメ類の消失と水温との関係 水産機構 西海区水産研究所 気候変動対策プロジェクト研究成果発表会(平成30214日) 17 水産 問い合わせ先:水産機構 西海区水産研究所 清本節夫 [email protected] 壱岐市郷ノ浦町地先では 2010 2013 2016 年の夏季の高水温により、カジメ 類が大きく減少しました。20112014年には多数の次世代(幼体)が確認され、 藻場が回復しましたが、2017 年には幼体がわずかしか見られず藻場が消失し ました。この差異には冬季の水温が関与していると考えられます。 カジメ類は、アラメ、カジメ、クロメなどを指し、温 帯域における重要な藻場構成種です。カジメ類 はアワビ、サザエ、ウニ類の主要な餌料となり、 また、カジメ類の藻場はイセエビや魚類のすみ 場ともなります。 2013年と2016年には夏季の水温が30を越え ました。これはカジメ類の生理的な限界を超える 水温です。このため、2013年には倒伏するもの が多数みられ、その後、成体は消失しました。 2016年は10月までは大きな影響は見られませ んでしたが、11月には茎と根のみとなりました。 過去、11年間で顕著な高水温が3回観測され、 翌年の成体の密度が大きく減少しました。このう 2回は翌年に幼体が多数みられ、藻場が回復 しましたが、2017年は幼体がほとんど見られま せんでした。2017年冬季は水温が高かったこと が一因と考えられますが詳細は不明です。 2013/8/26 2013/8/26 2013/8/26 2016/11/22 2016/10/18 2016/9/26 2013/7/13 0 1000 2000 3000 4000 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 幼体 成体 200m×1mの範囲で 見られた本数 0 20 40 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 28℃以上 29℃以上 30℃以上 日平均水温が各水温 以上の日数 日平均水温が各水温 以下の日数 2017/2/1 カジメ類の幼体(芽) カジメ類は秋に成熟し、種に相当するものを放出します。茎から 離れて葉の部分だけになっても成熟は可能です。 (右)葉に採食痕が見られることもあります。

壱岐市沿岸におけるカジメ類の消失と水温との関係...類が大きく減少しました。2011、2014年には多数の次世代(幼体)が確認され、 藻場が回復しましたが、2017年には幼体がわずかしか見られず藻場が消失し

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Page 1: 壱岐市沿岸におけるカジメ類の消失と水温との関係...類が大きく減少しました。2011、2014年には多数の次世代(幼体)が確認され、 藻場が回復しましたが、2017年には幼体がわずかしか見られず藻場が消失し

アラメ

クロメ

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2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

15℃以下 14℃以下 13℃以下

カジメ類の分布域においては夏季の高水温による急激かつ大規模なカジメ場の消失に警戒が必要です。

成体の消失後も幼体の加入は期待できるので、 、幼体の早めの保護に取り組むことが必要です。

普及・社会実装への道筋

カジメ類とは? 2013年と2016年の状況

水温と成体・幼体の密度との関係

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3

壱岐市沿岸におけるカジメ類の消失と水温との関係

水産機構 西海区水産研究所

気候変動対策プロジェクト研究成果発表会(平成30年2月14日)17 水産

問い合わせ先:水産機構 西海区水産研究所 清本節夫 [email protected]

壱岐市郷ノ浦町地先では2010、2013、2016年の夏季の高水温により、カジメ類が大きく減少しました。2011、2014年には多数の次世代(幼体)が確認され、藻場が回復しましたが、2017年には幼体がわずかしか見られず藻場が消失しました。この差異には冬季の水温が関与していると考えられます。

カジメ類は、アラメ、カジメ、クロメなどを指し、温帯域における重要な藻場構成種です。カジメ類はアワビ、サザエ、ウニ類の主要な餌料となり、また、カジメ類の藻場はイセエビや魚類のすみ場ともなります。

2013年と2016年には夏季の水温が30℃を越え

ました。これはカジメ類の生理的な限界を超える水温です。このため、2013年には倒伏するもの

が多数みられ、その後、成体は消失しました。2016年は10月までは大きな影響は見られませんでしたが、11月には茎と根のみとなりました。

過去、11年間で顕著な高水温が3回観測され、

翌年の成体の密度が大きく減少しました。このうち2回は翌年に幼体が多数みられ、藻場が回復しましたが、2017年は幼体がほとんど見られませんでした。2017年冬季は水温が高かったことが一因と考えられますが詳細は不明です。

2013/8/26 2013/8/26 2013/8/26

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日平均水温が各水温

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2017/2/1 カジメ類の幼体(芽)

カジメ類は秋に成熟し、種に相当するものを放出します。茎から離れて葉の部分だけになっても成熟は可能です。(右)葉に採食痕が見られることもあります。