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2018 年度前期 マクロ経済学 1 5 1 マクロ経済のデータ 新聞やニュースを見てみると,「景気が後退した」とか「好景気が続いている」,「経済成長が続 いている」など経済に対するさまざまな情報が伝えられる.これらの経済に対する評価にはなん らかの基準が存在する.経済全体の動きを監視するために,経済学者や政策立案者はこれらの基 準に基づきデータを集め,経済に対する評価を与えている. マクロ経済学では,このような一国経済全体の動きを統計的に測る基準(指標)として国民経 済計算(SNASystem of National Accountsが用いられる.本章では,その代表的な指 標である国内総生産(GDPGross Domestic Productについて考察する.GDP は一国 の総所得を測る尺度であり,最も厳密に観察される経済統計である.なぜならば,GDP は社会 の経済厚生を測定する単一の尺度として最善のものとして考えられているからである. 1.1 経済活動の価値の測定:国内総生産 (GDP) 1.1.1 国民経済計算 一国の経済全体の動きを統計的に測る代表的な指標が,国民経済計算 (SNA) である.国民経 済計算は,一定期間(四半期 * 1 1 * 2 )と特定の時点に関する国民経済の循環の構造(生産,分 配,支出,資本蓄積といったフロー面と資産,負債といったストック面 * 3 )をマクロ的に特徴付 けられたさまざまな集計量によって,包括的かつ体系的に記録する方法である.国連がこの国際 標準を提示し,加盟国に採用を働きかけている.日本では内閣府経済社会総合研究所 * 4 が作成し ている.最新の国際基準は 2008 年に国連で採択された 2008SNA である.日本は 2016 年(平 28 年)12 月より 2008SNA を採用している * 5 * 6 国民経済計算では,一定期間に経済に現れる有形の(自動車や家電,半導体など)と無形の サービス(散髪や教育など)の価値を集計することによって,生産,分配,支出といった面から GDP を測ることができる.ここでいう価値とは, 価値 = 数量 × 価格 で表される.通常日本では,価値は円で表される.価格は例えば 1 個あたりの値段,1kg あたり の値段などのこと. これらの価値を集計することによって一国の経済活動を測ることができるが,集計には注意 が必要である.各財・サービスの価格には原材料として使われた他の生産物の価格が重複して含 * 1 四半期1 年を半分にしたものは半期であるが,四半期とは半期をさらに半分にした 3 ヶ月のこと.例えば,1 から 3 月を第 1 四半期,10 月から 12 月を第 4 四半期などという. * 2 通常,その年の 1 1 日から 12 31 日までの暦年か 4 1 日から翌年 3 31 日の年度が用いられる. * 3 フローとストックの説明は後で行う. * 4 URL: http://www.esri.go.jp/index.html * 5 それまでは,1993 年に国連で採択された 93SNA 2000 年に採用していた.最新のトピックであるので,少し 古い経済学のテキストではまだ 93SNA と説明されているものもあるので注意が必要. * 6 どのような変更が行われたかは後述する.

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2018 年度前期 マクロ経済学 1 5

1 マクロ経済のデータ新聞やニュースを見てみると,「景気が後退した」とか「好景気が続いている」,「経済成長が続いている」など経済に対するさまざまな情報が伝えられる.これらの経済に対する評価にはなんらかの基準が存在する.経済全体の動きを監視するために,経済学者や政策立案者はこれらの基準に基づきデータを集め,経済に対する評価を与えている.マクロ経済学では,このような一国経済全体の動きを統計的に測る基準(指標)として国民経済計算(SNA:System of National Accounts)が用いられる.本章では,その代表的な指標である国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)について考察する.GDPは一国の総所得を測る尺度であり,最も厳密に観察される経済統計である.なぜならば,GDPは社会の経済厚生を測定する単一の尺度として最善のものとして考えられているからである.

1.1 経済活動の価値の測定:国内総生産 (GDP)

1.1.1 国民経済計算一国の経済全体の動きを統計的に測る代表的な指標が,国民経済計算 (SNA)である.国民経済計算は,一定期間(四半期*1や 1年*2)と特定の時点に関する国民経済の循環の構造(生産,分配,支出,資本蓄積といったフロー面と資産,負債といったストック面*3)をマクロ的に特徴付けられたさまざまな集計量によって,包括的かつ体系的に記録する方法である.国連がこの国際標準を提示し,加盟国に採用を働きかけている.日本では内閣府経済社会総合研究所*4が作成している.最新の国際基準は 2008年に国連で採択された 2008SNAである.日本は 2016年(平成 28年)12月より 2008SNAを採用している*5*6.国民経済計算では,一定期間に経済に現れる有形の財(自動車や家電,半導体など)と無形のサービス(散髪や教育など)の価値を集計することによって,生産,分配,支出といった面からGDPを測ることができる.ここでいう価値とは,

価値 = 数量×価格

で表される.通常日本では,価値は円で表される.価格は例えば 1個あたりの値段,1kgあたりの値段などのこと.これらの価値を集計することによって一国の経済活動を測ることができるが,集計には注意が必要である.各財・サービスの価格には原材料として使われた他の生産物の価格が重複して含

*1 四半期:1年を半分にしたものは半期であるが,四半期とは半期をさらに半分にした 3ヶ月のこと.例えば,1月から 3月を第 1四半期,10月から 12月を第 4四半期などという.

*2 通常,その年の 1月 1日から 12月 31日までの暦年か 4月 1日から翌年 3月 31日の年度が用いられる.*3 フローとストックの説明は後で行う.*4 URL: http://www.esri.go.jp/index.html*5 それまでは,1993年に国連で採択された 93SNAを 2000年に採用していた.最新のトピックであるので,少し古い経済学のテキストではまだ 93SNAと説明されているものもあるので注意が必要.

*6 どのような変更が行われたかは後述する.

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まれていることが多いからである.例えば,部品メーカーが半導体を生産し,それを用いて PC

メーカーが PCを生産する場合を考えてみよう.このとき部品としての半導体を中間生産物(中間財)と呼び,PCを最終生産物(最終財)と呼ぶ.その理由は,中間生産物である半導体の価値はすでに最終生産物である PCの価格に含まれているからである.つまり,中間生産物とは別の財・サービスを生産する際に部品として使用されるものであり,最終生産物とは中間生産物として使用されない財・サービスである.したがって,半導体の価値を PCの価値に加えることは,半導体の価値を 2度計算しているという二重計算になる.二重計算が生じると,経済活動を正しく測定することができない.二重計算の問題を避けるために現在用いられている方法が,各生産者が新たに付け加えた生産物の価値である(粗)付加価値のみを計上する方法である.付加価値は次のように計算される.

(粗)付加価値 = 最終生産物価値−中間生産物価値

1.1.2 国内総生産(GDP)国民経済計算の代表的な指標が,国内総生産(GDP)である.GDPは,一国内で一定期間に行われた生産活動に関する指標である.生産活動は新たに財・サービスが生み出されることを意味するが,これは経済に新たに生産物の価値が生み出されるということもできる.したがって,GDPとは,

定義 1.1 (GDP). 一定期間中に一国の国内で生産された全ての(粗)付加価値を市場価格で評価して合計した金額である.

「国内」というのは,例えば日本を考えると,日本の企業であれ海外企業であれ日本国内で新たに生産された財・サービスのみを対象としていることを意味する*7.したがって海外で生産され,日本に輸入された財・サービスは GDPには含まない.

例 1.1. GDPの概念を理解するために,国内企業として小麦を生産する農家,それを小麦粉にする製粉会社と小麦粉からパンを生産するパン屋という三種の企業と燃料を提供する外国の石油企業のみからなる経済を考えてみよう.ある 1年間の各生産者の生産総額,中間投入財の購入額と海外からの購入としての石油輸入額は次の表 1.1でまとめられている.

生産主体 生産総額 中間投入(国内) 中間投入(海外) 付加価値小麦農家 15兆円 0兆円 5兆円 10兆円製粉会社 35兆円 15兆円 8兆円 12兆円パン屋 50兆円 35兆円 5兆円 10兆円計 100兆円 50兆円 18兆円 32兆円

表 1.1 GDP計算の例

*7 国内の正確の意味は 1.4節で扱う.

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小麦農家の生産総額は 15兆円で,中間投入として国内からの購入は 0円,海外からの石油購入は 5兆円である.したがって,生産総額から中間投入物の購入額を引いて得られる小麦農家の付加価値は,10兆円である.同様にして,製粉会社とパン屋の付加価値はそれぞれ,12兆円と 10

兆円である(図 1.1参照).

生産工程の流れ

小麦農家

15兆円

石油5兆円

付加価値

10兆円 小麦購入

15兆円

石油8兆円

製粉会社

35兆円

パン屋

50兆円

付加価値

12兆円

石油5兆円

小麦粉購入

35兆円

付加価値

10兆円

原材料 最終生産物

図 1.1 付加価値と最終生産物

定義 1.1にしたがって,GDPを計算しよう.定義より GDPは,一定期間に一国内で生産された全ての付加価値の総額なので,

付加価値の合計 = 小麦農家の付加価値+製粉会社の付加価値+パン屋の付加価値= 10 + 12 + 10 = 32(兆円)

から,GDPは 32兆円となる.ただし石油の生産は外国企業が行うため,一国内の GDPの計算には含めないことに注意しよう.

また,GDPは最終生産物の生産額のみを合計しても導出することができる.例 1.1の場合では,小麦と小麦粉は全て中間投入物であり,パンのみが最終生産物である.パンの最終生産物価値は 50 兆円だが,この価値には海外から購入した石油の生産物価値が含まれているので GDP

を求めるためには,その価値を除かなければならない.海外からの石油購入は合計で 18兆円であるので,パンの最終財生産物価値から石油購入額を引いた 32兆円が GDPである.まとめる

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2018 年度前期 マクロ経済学 1 8

と,以下のようになる.

GDP = 最終生産物価値−海外から購入した中間投入物価値

1.1.3 フロー (flow)とストック (stock)の区別経済指標(変数)の多くは,GDPや貨幣量のような何らかの経済活動の価値を測るものである.経済学において,価値に関する指標は,フロー (flow)とストック (stock)という 2種類に分類される.それぞれの定義は以下の通りである.

• フロー:ある期間に行われた経済活動の成果としての価値• ストック:ある特定の時点ですでに達成されている経済活動の成果としての価値

例 1.1 をもう一度見てみよう.そこでは,ある 1 年間に行われた経済活動が生産であり,その成果が付加価値や付加価値の合計としての GDPで表現された.これらの付加価値と GDPはフローの指標(変数)である.ただし,小麦農家や製粉会社,パン屋はそれぞれの製品を労働だけを用いて生産するのは不可能である.通常,建物や工場,機械,工具といった資本と呼ばれるものが必要である.これらの資本は通常数年にわたって生産活動に用いられる.例 1.1では,分析対象としたある 1年より以前に生産され,経済にすでに存在している資本として水が 10L存在している.したがって,資本はすでに達成されている経済活動の成果といえ,ストックの指標(変数)である.次の図 1.2で描かれた水槽は,フローとストックの説明としてよく用いられる.経済は 0時点から始まっている.0時点で水槽の水はすでに 10L溜まっており,これが 0時点におけるストックである.

10L

5L

15L

0時点 1時点

10L:ストック 0から1時点に流れた

5L:フロー

15L:ストック

図 1.2 フローとストック

次に 0時点から 1時点という期間に,蛇口から水を流して水槽に水をためるという活動を考えよう.その結果,0時点から 1時点の期間に新たに 5Lの水を水槽に流すことができた.この新たに生み出された活動の成果としての水 5L はフローである.水を水槽に流して溜めた結果,1

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時点で水槽の水は 15Lになっている.これが 1時点におけるストックである.

1.1.4 グロス(Gross)とネット(Net)の区別ここで,国内総生産で出てきた「総(グロス,Gross)」の意味を考えてみよう.Gross とは,

「なんらかの控除をする前の総体(全体)」という意味を持っている.したがって,GDPはなんらかの控除そする前の総体として,一定期間に新たに国内で行われた生産を表している.では,GDPは何を控除する前の指標なのであろうか.それは,固定資本減耗と呼ばれるものを控除する前の指標である.ある年にある国で新たに生産された最終生産物としての財・サービスは,投資財(資本)と消費財に分けることができる*8.投資財とはさまざまな財を生産するための建物や工場,機械,工具などのことで,資本とも呼ばれる.消費財とは家計が購入する食料品や衣料などのことである.中間財として使用される財はその年のみ使用されるのに対し,資本はその年だけでなく何年に渡って使用することが可能だと考えられる.しかし,資本は使用するにつれて消耗・磨耗し,その資本の価値は減少する.その価値の減少分を固定資本減耗と呼ぶ.グロスの指標から何らかの控除を行うと,ネット (Net)の使用となる.Netとは,「純(正価,正味)」という意味を持っている.国民経済計算では,何らかの指標から固定資本減耗を控除したものは,ネットの指標として扱われる.これから,GDPから固定資本減耗を控除した指標は国内純正産(NDP:Net Domestic Product)と呼ばれる.

NDP = GDP−固定資本減耗

固定資本減耗は生産活動のコストと考えられており,これを考慮することによって生産の過大評価を防ぐ目的がある.したがって,固定資本減耗を正確に捉えことができれば,NDPは GDPより適切な生産の概念である.しかし,固定資本減耗を正確に把握することは実際にはきわめて難しいことが知られており,現在の国民経済計算では GDPと NDPの両方が用いられている.

1.2 三面等価の原則

GDPは生産活動に注目してマクロ経済を評価する指標であり,付加価値を合計したものとして定義された(定義 1.1*9).この付加価値の合計は,分配(所得)面と支出面から見ても等しいことが知られている.

定義 1.2 (三面等価の原則). 生産,分配(所得),そして支出のどの面から一国の付加価値の合計を測定しても,その 3つの価値は等しい.

以下で,分配面から見た GDPと支出面から見た GDPをそれぞれ説明する.

*8 投資財と資本は同じ意味で用いられる.今後は,文脈によって言葉を使い分けることがあるがどちらでも意味することは同じである.

*9 GDPは付加価値を合計する評価法だけでなく,最終生産物の価値を合計する評価法がある.後者の評価法は,定義 1.6で扱う.

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1.2.1 分配面から見た GDP

一国の生産活動は,生産活動に参加した経済主体に対する分配という観点から捉えることもできる.分配面から見た GDPの基本的な構造は以下の通りである.企業が生産した財・サービスは販売され,その売上が企業の収入となる.その収入から生産活動に従事した対価として労働賃金が分配され,残りが企業の利潤として分配される.また,土地や資本の賃貸料や利子などの報酬がサービスという生産活動への対価として分配される.これらの生産活動への報酬として支払われた所得は要素所得と呼ばれる.労働や土地,資本は財・サービスの生産に必要な要素(部分)であるとの理由から生産要素と呼ばれる.このことから,生産要素に対する報酬を要素所得と呼ぶのである.要素所得は,雇用者報酬と営業余剰・混合所得から構成される.それぞれの説明は以下のとおり.

• 雇用者報酬:労働に対する報酬のこと.賃金・俸給など.• 営業余剰:法人企業の利潤,支払利子,賃貸料などが一括して含まれる.• 混合所得:個人企業の利潤,支払利子,賃貸料などが一括して含まれる.

これらを用いると,分配面からGDPを表すことができ,特に国内総所得(GDI:Gross Domestic

Income)と呼ばれる.

GDI = 雇用者報酬+営業余剰・混合所得+ (生産・輸入品に課される税金−補助金) +固定資本減耗

(1.1)

生産・輸入品に課される税には,消費税,関税,酒税等の国内消費税,不動産取得税,印紙税等の取引税,固定資産税,企業の支払う自動車税などがあげられる.これらの税は,財・サービスを購入するときに,購入者が購入価格に上乗せして販売者に支払う税金で,販売者が納税する.しかし,これらの税は購入者がお金を負担しているため,間接的に税金を払っていると捉えることができる.そのため生産・輸入品に課される税を間接税と表現することも多い.補助金は企業の経常費用を賄い,財・サービスの市場価格を低下させる目的で企業に交付される.固定資本減耗は,生産に使用した資本の消耗・摩耗による資本価値の減少分を表している.ここで,「生産・輸入品に課される税金 − 補助金」は,生産活動に対する報酬ではないが,政府部門への付加価値の分配となるため,分配面からみた GDPの構成項目になる.

1.2.2 支出面から見た GDP

分配された総生産物価値は,それがどのように使われるかという観点から支出としても捉えることができる.これを国内総支出(GDE:Gross Domestic Expenditure)と呼ぶ.国内総支出は,民間最終消費支出 (C:Consumption),政府最終消費支出 (G:Government),国内総固定資本形成(I:Investment),在庫品増加(N:iNventory),財・サービスの輸出(X:eXport),そして財・サービスの輸入(M:iMport)の諸項目によって構成される.

GDE = C +G+ I +N +X −M (1.2)

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(1.2)式の左辺の記号は,各項目の英語表記の頭文字もしくは 2文字目が用いられている.2文字目が用いられるのは,1文字目に来る文字がすでに他の表記で用いられているからである*10.下の図 1.3は,生産,分配,支出という三面から見て等価である GDPを,マクロ経済の循環構造としてみたものである.

国内総生産

(GDP)

雇用者所得営業余剰・

 混合所得固定資本減耗

生産・輸入品に課

される税 補助金−

国内総所得

政府企業家計

民間消費

国内総支出

(GDE)

輸入

輸出

海外

所得税

法人税

最終生産物

の総供給

政府消費総資本形成

企業

利子・配当

民間国内消費

在庫品

増加

総固定資本形成

最終生産物

の総需要

中間生産物

図 1.3 国民経済計算で見たマクロ経済の循環

GDPは一国の生産活動の成果としての最終財生産の生産額の合計である.それは,主として家計部門と企業部門に生産活動の報酬である雇用者報酬と営業余剰・混合所得として分配される.さらに,このような各経済部門に分配された所得は,民間消費,政府消費,国内総資本形成などのために支出される.そして,これらの国内総支出の構成項目が,最終生産物に対する需要を形成する.三面等価の原則より,国内総生産 = 国内総所得 = 国内総支出(GDP = GDI = GDE)であるから (1.2)式は,

GDP = C +G+ I +N +X −M (1.3)

*10 テキストによって用いられる記号は異なる場合がある.例えば,財・サービスの輸出と輸入は,それぞれ EX とIM などと表記されることもある.また,分析・考察の対象が異なる場合に,ここで用いられているのと同じ記号が用いられる.例えば,ミクロ経済学の消費者理論では,I が消費者の所得(Income)として表記される場合がある.同じ記号が色々な場面で異なる意味を持ちうるので,読者を混乱させることを防ぐために,記号を用いる場合は最初にどの記号が何を表しているかを説明することがマナーである.

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と表すことができる.左辺は最終生産物としての財・サービスが市場にどれだけ供給されるかを表しており,総供給と考えられる.右辺は最終生産物としての財・サービスに対しどれだけ支出されたか,つまりどれだけ市場で需要されたかを表しており,総需要と考えることができる.したがって,この式は一国における一定期間の生産活動の結果,総供給と総需要は一致することを意味する.また,表現の簡単化のため輸出から輸入を引いたもの(X −M)は,純輸出(net

export)と呼ばれる.

1.2.3 日本の 2016年暦年データからみた三面等価の原則ここでは,実際のデータを用いて,生産,分配(所得),そして支出の 3つのどの面から一国の付加価値の合計を測定してもその価値は等しい,という三面等価の原則が成立していることを確認する.下の表 1.2は 2016年暦年の日本の名目 GDPデータである(単位は兆円).

生産面(制度部門別所得支出勘定)非金融法人企業 80.8

産業 金融機関 53.2

家計(個人企業含む) 333.9

政府サービス生産者 49.4

対家計民間非営利サービス生産者 0.3

調整項目 20.9

国内総生産 538.5

分配面雇用者報酬 269.0

営業余剰・混合所得 105.3

固定資本減耗 120.0

生産・輸入品に課される税 45.2

(控除)補助金 3.3

統計上の不突合 2.3

国内総生産 538.5

支出面民間最終消費支出 299.9

政府最終消費支出 106.5

総固定資本形成 126.8

在庫品増加 0.1

財・サービスの輸出 86.8

(控除)財・サービスの輸入 81.6

国内総支出 538.5

この表は,荒井一博, 花井敏, (2002), 『経済学入門―ミクロ&マクロ』, 中央経済社の p.139 にある「日本の 2000 年度

の GDP」の表を基にして,内閣府発表の 2016 年度国民経済計算(2011 年基準・2008SNA)を参考として数値を更新

したものである.(控除)という項目はその値を引くことを意味する.

表 1.2 三面等価の原則:日本の 2016年暦年 GDPデータ(単位:兆円)

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2016年の日本の名目 GDPは 538.5兆円であった*11.2015年の日本の名目 GDPは 532.0兆円であったので,2015 年から 2016 年にかけて 6.5 兆円ほど GDP が増加している.2016 年のGDP538.5 兆円は分配面から見ても支出面から見ても同じであることが表から確認できる*12.ただし,厳密に言えばこれらの数値を推計する方法は異なるため,実際には数値のずれが生じており,一致していない.これを統計上の不突合と呼び,表 1.2では調整項目と表記されている箇所もある.GDPは理論上,生産面,分配面,そして支出面から捉えることができるのだが,実際には事後的にこれらの 3つが等しくなるように調整が行われている.

1.3 GDP算出上のルール

GDPは一国の生産活動の指標であるので,できる限り多くの生産活動を含めることが望ましい.市場で取引された財・サービスは,原則として全て市場価格で評価されて GDPの中に含まれるが,これにはいろいろなルールが存在する.まず,中古品の取り扱いについて.中古品がしばしば取引される財の例として,自動車を考えてみよう.これらが新たに 1台生産され 250万円で販売されたとき,一国の GDPは 250万円増加する.この所有者が他の人にその自動車を 100万円で売った場合は,GDPは増加するだろうか.このとき 100万円は GDPには含まれない.GDPは一定期間に生産された財・サービスの付加価値を測るが,この自動車(中古車)の場合は車の所有者が移転しただけで,経済全体の生産が増えたわけでないない.したがって,中古品の販売額はGDPには含まれない.ただし,中古品販売の場合に業者に仲介手数料などを支払うことがあるが,この手数料は新たに生産されるサービスになるので GDPに含まれる.第 2に,在庫品の取扱いについて.パンを生産する経済において企業が雇用と生産を増やし,賃金(雇用者報酬)を支払った後で,パンの増産分が売れ残った場合を考えてみよう.この取引が GDP に含まれるかどうかは,売れ残ったパンがどうなったかに依存する.パンが腐ってしまった場合は,企業の売り上げは全く増えていないが賃金を多く支払ってしまったので,賃金の増加分だけ企業の利潤(営業余剰・混合所得)が減少する.誰もパンの購入を増やしていないので,経済の総支出は変わらない.賃金が増えて利潤が減り,所得配分は変化するが,経済全体の総所得は変化しない.この取引によって支出も所得も変化しないので,GDPも変化しない.次に,後日販売するためにパンを在庫として保存しておけるものとしよう.この場合は,企業の所有者は在庫用にパンを「購入」したとみなされ,賃金が増加しても利潤は減少しない.賃金の増加により総所得が増え,在庫の積増し(在庫品増加)によって総支出も増えるので,GDPは

*11 国民経済計算におけるマクロ経済データは多くの場合,1年毎のデータが公表されている.一定期間としての 1年のデータには 2 種類ある.それは暦年データと年度データである.暦年データは,1 月から 12 月までの期間のデータをひとまとまりとしたものであり,年度データは 4月から翌年 3月までの期間のデータをひとまとまりとしたものである.暦年データを用いるか,年度データを用いるかで,その期間のマクロ経済データの値は異なるが,それほど大きく異なることはない.

*12 この表は,荒井一博, 花井敏, (2002),『経済学入門―ミクロ&マクロ』, 中央経済社の p.139にある「日本の 2000

年度の GDP」の表を基にして,内閣府発表の 2015年度国民経済計算(2011年基準・2008SNA)を参考として数値を更新したものである.

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増加する.在庫品としてのパンが後日販売された場合は,中古品販売の場合と似ている.パンの消費者の支出は増加するが,一方で企業による在庫品の取崩しが生じている.企業のマイナスの支出が消費者のプラスの支出を相殺するので,在庫品の販売は GDPに影響を与えない.一般的なルールでは,企業が生産物の在庫を増やしたときには,その在庫投資は企業の所有者の支出として計算される.したがって,在庫増のための生産も,最終販売のための生産と全く同じようにGDPを増加させる.しかし,在庫の販売はプラスの支出(購入)とマイナスの支出(在庫の取崩し)との組み合わせであり,GDPを変化させない.在庫をこのように扱うことで,財・サービスの生産された期間の GDPを変化させることが保証される.第 3に,帰属価値について.多くの財・サービスは市場価格でその価値を測ることができるが,いくつかの財・サービスは市場で販売されていないため市場価格がない.GDP にそうした財・サービスの価値を参入するためには,それらの価値を推定しなければならない.そうした推定値は帰属価値(imputed value)と呼ばれる.特に重要なのが住宅サービスと農家の自己消費である.借家に住む人は住宅サービスを購入しており,家賃は家主の所得になっている.家賃は借家人の支出として,また家主の所得としてGDPに参入されている.しかし,持ち家に住んでいる人は多い.持ち家の人は家賃を支払っていないが,住宅サービスを享受している点は借家人と変わらないので GDPに含めることが望ましい.そこで持ち家が借家であった場合にどれだけの家賃を支払うかを帰属家賃として推定し,GDPに含める.この帰属家賃は持ち家の所有者の支出と所得の双方に加えられる.農家は生産した野菜や米などを市場で販売することで所得を得ている.その一方で,一部は市場で販売せずに農家が自分の家でそれらの生産物を消費する.農家は生産物を購入しているわけではないが,一般の消費者と同じように野菜や米を消費しているのは変わらない.そこで農家が自己消費した野菜や米などを市場価格として推定し,評価した生産額を GDPに含めている.帰属価格が推定されているその他の分野として,行政(公共)サービスが挙げられる.例えば,警官,消防士,国会議員といった人々は,一般の人々にサービスを提供している.そうしたサービスは市場で販売されていないために市場価格が存在せず,その価値を測ることは難しい.そこで国民経済計算では,それらの価値を費用で測り GDPに加えている.つまり,公務員の賃金が生産するサービスの価値の尺度として使用される.GDPは一国の生産活動の指標であるので,できる限り多くの生産活動を含めることが望ましいが,GDPに含まれないものも多い.例えば,消費者が保有する自動車や宝石などの複数年にわたって使用可能な耐久消費財の帰属借用料は含まれない.また,地下経済,親からの遺産,失業保険,株式や土地などの資産価格の変化,家事労働,日曜大工やボランティア活動なども GDP

には含まれない.GDPの計算に使用される帰属価値は不完全なものであるし,重要であるにもかかわらず多くの財・サービスの価値が排除されているため,GDPは経済活動水準の尺度として最善のものとは言えず不完全である.しかし,現状これより望ましい経済活動水準の尺度がないことと,不完全性の程度が時間を通じてあまり変化がないのであれば,GDPは経済活動の年次の変化を調べ

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2018 年度前期 マクロ経済学 1 15

るのには有用であるので用いられている.

1.4 「国内」の概念と「国民」の概念

国民経済計算の指標では,「国内」と「国民」の概念を分けて考える.生産を表す指標として国内総生産を既に紹介したが,国民総生産(GNP:Gross National Product)という概念も存在する.大雑把な区別として日本であれば,国内総生産は日本人によるものであれ外国人によるものであれ,とにかく日本国内で生産された価値の総計のことを指すのに対し,国民は生産される場所が国内であれ国外であれ,日本人の所得として計上される全ての価値の総計を指す.多くのテキストでこのような説明が行われているが,ここでは内閣府の定義に従ってもう少し詳細な区分を紹介する*13.

• 国内(domestic):その国の領土*14を指す.– 外国企業の日本子会社は,日本国内領土で生産活動を行っているので,日本の居住者たる生産者として国内に含まれる.

– 日本企業の海外支店は含まれない.– 外国人が日本国内で行った生産活動は含まれるが,日本人が海外で行った生産活動は含まれない.

• 国民(national):その国の居住者を対象とする.– 居住者とは,企業,一般政府,対家計民間非営利団体および個人を指す.– 居住者たる個人とは,その領土内に 6 ヶ月以上の期間居住している全ての個人をいい,国籍は問わない.

– 一般に,国外に 2年以上居住する個人は非居住者とされる.

これらの区別を元に,GNPの定義を紹介しておこう.

定義 1.3 (GNP). 一定期間中に(居住者としての)国民が生産してた全ての付加価値を市場価格で評価して合計した金額である.

国民経済計算において,国内総生産(GDP)と国民総生産(GNP)には,以下のようの関係式が成立する.

GNP = GDP+海外からの所得−海外への所得 (1.4)

海外からの所得から海外への所得を引いたものは,海外からの純所得(受取)と呼ばれる.国民が海外から受け取る所得(要素所得ともいう)を海外からの所得,外国人が日本での生産活動を

*13 詳細な説明は内閣府 HPの用語解説(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference4/yougo_top.html#ka)

や内閣府 HPの国民経済計算(GDP統計)にあるよくある質問(FAQ)(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/otoiawase/faq/qa14.html)

などを参照のこと.*14 領土とは,国土に自国の在外公館などを加え,自国にある外国の公館や駐在外国軍隊などを除くもの.

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2018 年度前期 マクロ経済学 1 16

行い日本から外国に送られる所得は海外への所得として計上される.例えば,アメリカ国民が大阪でマンション経営をしているとしよう.このアメリカ国民が得る家賃は,日本国内で稼得されたものであるので日本の GDPである.しかし,家賃は海外への所得支払いにあたるので,日本の GNPにはならない.従来は,生産活動の指標として GNPが用いられていた.しかし,最近では海外における日本人や日本企業の所得の把握が必ずしも簡単でないこと,また国内景気の動向を見るのであれば,当該国の国民であれ外国人であれ,国内における全ての経済主体による経済活動を対象にしたほうが好都合なことが多いため,GDPが重視されている.また,定義 1.3を見ると,GNPを得るために GDPに加える「海外からの純所得」は,国民が海外で生産した財の価値ではなく,国民が海外から受け取る所得である.93SNA 以降では,生産よりも所得の側面を強調して,国民総生産(GNP)に相当する概念は,国民総所得(Gross

National Income:GNI)と呼ばれている*15.すなわち,国民総所得は,当該国の生産から生じた所得ではなく,当該国の国民が最終的に手にした所得を指していることになる.

GNI = GDP+海外からの所得−海外への所得

GNI(GNP)から固定資本減耗を除いたものを,単に国民所得(National Income:NI),あるいは国民純生産(Net National Income:NNI)と呼ばれている.分配面から見た GDPにも関係のある注意点として,財価格には間接税と補助金が反映されているために,生産で生じた付加価値の全てが要素所得として分配されるわけではないということが挙げられる.例 1.1における付加価値の中には,財・サービスを販売した時に企業が受け取る間接税(ここでは消費税)が含まれている.まずは,この間接税分を政府に納めなければならない.残りの部分を,雇用者報酬と営業余剰・混合所得に配分するのである.したがって,間接税分だけ実際に企業が生産した価値は減少すると考えることができる.一方で,補助金は間接税と全く逆の効果を持つ.例 1.1においてパン屋に補助金が与えられて売り上げが 55兆円になったとしよう.小麦粉購入額と石油購入額は変わらないが,間接税の支払いが 2兆円とすると,パン屋の付加価値相当額は 13 兆円になる.この 13 兆円を雇用者報酬と営業余剰・混合所得に配分するので補助金分だけ実際に企業が生産した価値相当分は増加すると考えることができる.ただし,雇用者報酬と営業余剰・混合所得は補助金分増えるかもしれないが,補助金は純粋に生産活動によって生み出されるものではないため,分配面から見た GDP全体から補助金分を差し引く必要がある.間接税から補助金を引いたものを純間接税と呼ぶ.純間接税を控除した国民純生産は,生産要素提供者に分配される正味の生産分という意味で要素費用表示の国民純生産(国民所得)と呼ばれる.また,純間接税控除前の国民純生産は,間接税と補助金を反映した市場価格で評価されていると言う意味で市場価格表示の国民純生産(国民所得)と呼ばれる.

*15 両者は同じ概念として現在では用いられている.日本の経済学者が書いたマクロ経済学のテキストでは,GNI が用いられることが多いが,マンキューの教科書など海外の経済学者が書いたテキストでは GNPが用いられていることが多い.

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2018 年度前期 マクロ経済学 1 17

定義 1.4 (市場価格表示の NNI (NI)).

市場価格表示の NI(NNI) = GNI(GNP)−固定資本減耗. (1.5)

定義 1.5 (要素費用表示の NNI (NI)).

要素費用表示の NI(NNI) = 市場価格表示の NI(NNI)− (間接税−補助金). (1.6)

実際の国民経済計算においては,国内総生産から海外からの所得の純受け取りと純間接税を控除した「要素費用表示の国民純生産」のレベルで,生産と所得が初めて一致することになる.

1.5 名目値と実質値

価値は数量と価格を掛け合わせたものとして定義された.この価値の測り方は大きく分けて 2

種類あり,名目と実質に区分される.GDPを用いてこれらの概念を考えてみよう.名目GDP(nominal GDP)は,ある年の GDPを計算する場合に,その年の市場価格を用いて GDPを評価する.価格と数量は毎年変動するため,当然のように価値も変動する.両方が変動すれば,価値変動は何が原因で生じているかわからない.つまり,名目 GDPの推移を見てもその変化分の中に価格の変化分も含むことになり,純粋な生産活動の指標として用いられるはずの GDPの概念とずれてしまう.そのため,どちらかを固定したほうがより適切に生産活動を評価できるだろう.数量を固定するのは,社会主義国における計画経済でもない限り現実的には不可能であるし,価格の変動に左右されずに経済の財・サービスの生産を測ることができるほうが良い尺度であると考えられているので,価格を固定する.価格を固定して測った数値を実質値と呼ぶ.実質GDP(real GDP)は,ある年を基準年として固定し,基準年の価格水準で全ての GDPを評価する.つまり,純粋な生産活動を評価するために価格変化の要因を取り除いたものが,実質GDPである.国民経済計算では,この実質 GDPのほうが重視されている.実質 GDPと名目 GDPの関係を理解するには,GDPの別の定義が必要となる.GDPの計算は定義 1.1のように付加価値を集計するだけでなく,以下のように最終生産物の価値を集計しても求めることができる.

定義 1.6 (GDP). GDPは最終生産物価値を全て集計したものから,海外の中間財購入(輸入)を除いたものとして求めることができる*16.

GDP = 最終生産物価値−海外から購入した中間投入物価値

この GDPの計算方法を用いて,次の簡単な経済を考えよう.

例 1.2. 名目 GDPと実質 GDPの概念を理解するために,米と小麦のみを最終的に消費する最終財として生産する国を考えてみよう.このとき,2014年と 2015年の米と小麦の生産量と価格は以下の表 1.3のように集計されたとしよう.

*16 1.1.2「国内総生産(GDP)」も参照せよ.

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2018 年度前期 マクロ経済学 1 18

数量(トン) 価格(万円/トン) 生産総額2014年 米 1,000 10 1億円

小麦 500 5 2,500万円2015年 米 500 10 5,000万円

小麦 1,000 10 1億円

表 1.3 名目 GDPと実質 GDPの計算例

各年の名目 GDPは,その年の価格で計算すればよい.

2014年の名目 GDP = 1000(トン)× 10(万円/トン)+ 500(トン)× 5(万円/トン)= 12, 500(万円)

2015年の名目 GDP = 500(トン)× 10(万円/トン)+ 1000(トン)× 10(万円/トン)= 15, 000(万円)

よって,2014年の名目 GDPは 1億 2, 500万円であり,2015年の名目 GDPは 1億 5, 000万円である.名目 GDP を比較すると,2015 年のほうが生産の規模(価値)が大きいことが確認できる.次に実質 GDPを求めてみよう.ここでは基準年を 2014年とする.各年の実質 GDPは基準年である 2014年の価格で計算すればよい.

2014年の実質 GDP = 1000(トン)× 10(万円/トン)+ 500(トン)× 5(万円/トン)= 12, 500(万円)

2015年の実質 GDP = 500(トン)× 10(万円/トン)+ 1000(トン)× 5(万円/トン)= 10, 000(万円)

よって,2014年の実質 GDPは 1億 2, 500万円であり,2015年の実質 GDPは 1億円である.価格の影響を取り除いた実質 GDPで比較すると,2014年のほうが生産規模(価値)が大きいことが確認できる.

国民経済計算の GDP計算は,基準年価格が 5年ごと*17に変更される基準年方式によって行われている*18.上の例でもわかるように,基準年では用いられる価格は名目値でも実質値でも同じであるので,基準年の名目 GDPと実質 GDPは一致する.また,価格が基準年水準に固定されているので,実質 GDPが変動するのは生産量が変化したときだけである.図 1.4は,日本の 1994年から 2013年の名目 GDPと実質 GDPの暦年データの推移をグラフにしたものである.縦軸に GDPをとっており,その単位は 10億円である.横軸に年をとっている.基準年は 2005年であり,名目 GDPと実質 GDPは一致しているのが確認できる.

*17 「産業連関表」,「国勢統計」,「住宅・土地統計」など経済・社会の構造を把握するため約 5年ごとに作成される大規模かつ詳細な基礎統計の最新版を取り込み過去の計数を再推計している.このため約 5年ごとに実施している.

*18 最近では,連鎖方式と呼ばれる計算方法も用いられている.説明は省略するが,連鎖方式で計算された実質 GDP

の変遷が図 1.5で示されている.

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2018 年度前期 マクロ経済学 1 19

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0000

5500

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1995 2000 2005 2010 2015year

real gdp nominal gdp

内閣府経済社会総合研究所『国民経済計算(93SNA)』より作成

図 1.4 日本の名目 GDPと実質 GDP

2016 年末に 2008SNA に移行したことにより,基準年も 2011 年*19に変更されている.ただし,実質GDPの基準年データはまだ公表されていないようであるので,基準年方式の実質GDP

の説明では 93SNAのデータを用いた.以下のグラフは,連鎖方式の実質 GDPと名目 GDPを描いたものを参考までに載せている.

4000

0045

0000

5000

0055

0000

1995 2000 2005 2010 2015year

real gdp nominal gdp

内閣府経済社会総合研究所『国民経済計算(2008SNA)』より作成

図 1.5 日本の名目 GDPと実質 GDP:連鎖方式

*19 本来であれば基準年は 2010 年になるはずであるが,2011 年が基準年となっている.これは国民経済計算の作成に利用する産業連関表が,重要な基礎資料である経済センサスの作成が遅れたことから,2010年ではなく 2011年を対象年としているためである.

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2018 年度前期 マクロ経済学 1 20

1.6 GDPデフレーター

名目 GDPと実質 GDPからもう 1つの統計量であるGDPデフレーター(GDP deflator)を計算することができる.GDP デフレーターは GDP のインプリシット価格デフレーター(implicit price deflator for GDP)とも呼ばれ,名目 GDPの実質 GDPに対する比率として定義される.

GDPデフレーター =名目 GDP

実質 GDP

価格水準が上昇した場合,名目 GDPの値は上昇するが,実質 GDPの値は生産量の値が変化しない限り不変であるので,GDPデフレーターは経済全体でどれくらい価格が上昇しているかを表している.言い換えると,GDPデフレーターは一般物価水準に何が起きているのかを示しており,1つの重要な指標である.また,GDPデフレーターは同じ価格が用いられる基準年では必ず 1となる*20.93SNA では 2005 年が基準年であったので GDP デフレーターは 2005 年で 1 となっている.

2008SNAでは 2011年が基準であるので GDPデフレーターは 2011年で 1となっている.

1.7 93SNAから 2008SNAへの大きな変更点

名目 GDP は計測する年の価格を用いるため基本的に変化はないはずであるが,図 1.4 と図1.5を見ると,名目 GDPの値が異なっていることが見て取れる*21.例えば 1994年を見てみると,93SNA では GDP が 500 兆円を下回っているのに対し,2008SNA では 500 兆円を上回っている.また,2010 年を見てみると,93SNA では 500 兆円を大きく下回っているのに対し,2008SNAではおよそ 500兆円となっている.これは 93SNAから 2008SNAに移行される際に,さまざまな変更が行われたことにより,名目 GDPの計測にも影響が出たためである.2008SNAは, 1⃝ ストック関連, 2⃝ 金融関連, 3⃝ グローバル化への対応, 4⃝ 一般政府と公共部門の見直しなどの側面でいくつかの重要な変更を行っている.もっとも重要な変更点は,知的財産による生産活動への貢献の重要性を踏まえて資本形成の概念を拡張しているところである.93SNAまでは,企業の研究開発に伴う支出は,中間投入として取り扱われていたために,GDP

を構成する付加価値に含まれなかった.一方,2008SNAでは,企業の研究開発支出をまさに研究開発投資として取り扱い,資本形成の一要素となった.すなわち,企業の研究開発支出は,企業の設備投資に含まれることになった.また,防衛装備品(艦艇,戦車など)も,固定資本形成や在庫として計上されることになる.そ

*20 国民経済計算において GDPデフレーターは上の定義式に 100をかけたもの,つまり,

GDPデフレーター =名目 GDP

実質 GDP× 100

で計算がされている.そのため,基準年において必ず 100 となる.本講義では基準年では 1 となるような計算式を用いるので,実際の統計データを読み取る際は注意すること.

*21 縦軸の大きさが異なるため注意が必要である.

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2018 年度前期 マクロ経済学 1 21

の結果,93SNA から 2008SNA に移行したことで,名目 GDP は数パーセント単位で増加している.実際のデータを用いて名目 GDPの変化を見てみよう.以下の名目 GDPに関するデータは内閣府経済社会総合研究所 (2017)により計算されているものである.図 1.7は,2008SNAへの移行に際し行われた変更項目が名目 GDPに対してどのように影響しているかを示している.▲がついている数字はマイナスの値であり,それがついていない値はプラスの値である.

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内閣府経済社会総合研究所 (2017)より抜粋

図 1.6 基準改定の要因別にみた名目 GDP 水準の改定状況(年度)

変化の少ない 1994年で 6.8兆円,もっとも変化の大きい 2015年で 31.6兆円の名目 GDPの押し上げが見られる.名目 GDPを押し上げるもっとも大きな要因が企業の研究開発支出を企業の設備投資としたことであることが読み取れる.次の図も名目 GDPの変化を示したものであるが,今度は変更された項目ではなく,支出面から見た GDPの項目ごとの名目値の変化を表している*22.概ねどの項目も名目 GDPを押し上げることに寄与しているが,もっとも大きく貢献しているのが民間企業設備という項目である.これは,企業の設備投資のことで,ここでも企業の研究開発支出を企業の設備投資としたことが大きく影響をしていることが読み取れる.

*22 (1.2)式の項目に比べ投資に関してより細かい項目に分けられていることに注意せよ.

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2018 年度前期 マクロ経済学 1 22

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内閣府経済社会総合研究所 (2017)より抜粋

図 1.7 需要項目別にみた名目 GDP水準の改定状況 (年度)

参考文献[1] Mankiw, G. N. (2016), Macroeconomics 9th ed, Worth Publishers, New York. 足立英之,

地主敏樹, 中谷武, 柳川隆, (2017),『マンキューマクロ経済学 I 入門編 第 4版』, 東洋経済新報社.

[2] Mankiw, G. N. (2012), Principles of Economics 6th ed, South-Western, Engage Learning.

足立英之, 石川城太, 小川英治, 地主敏樹, 中馬宏之, 柳川隆, (2014),『マンキュー経済学 II マクロ編』, 東洋経済新報社.

[3] 齊藤誠, 岩本康志, 太田聰一, 柴田章久, (2016), 『マクロ経済学 新版』, 有斐閣.

[4] 内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部, (2017), 「平成 27 年度国民経済計算年次推計の概要について」, 内閣府経済社会総合研究所「季刊国民経済計算」第 161号.

[5] 中谷巌, (2000), 『入門マクロ経済学 第 4版』, 日本評論社.

[6] 福田慎一, 照山博司, (2016), 『マクロ経済学・入門 第 5版』, 有斐閣アルマ.