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2012/10/4
1
今、新たな肥料の夜明け
2012年7月発行 2012年5月Vol 1のみ発行
東京農業大学 客員教授 渡辺 和彦
1
本日の講演内容
「今、あらたな肥料の夜明け」に至る道
1 日本国内での人間での亜鉛欠乏症の発見
2 硝酸塩の歴史は世界的規模での間違い
3 ホウ素とケイ素も人間の健康に必須
4 ケイ素とマグネシウムの基礎研究が高温障害対策
への疑問を解消
5 マグネシウムは人間の健康にも大切
結論:肥料を農家に届けることは、作物だけでなく、 人間の命の源を届けること
2
214頁
日本国内で亜鉛欠乏症 の人が多数存在
亜鉛欠乏症と考えられる症例は多く
の医師が考えているよりもはるかに
多く存在し、その症状は味覚障害、
舌痛、口内炎様症状、食欲不振、
褥瘡(じょくそう、床ずれのこと)
の発症・増悪や難治性皮膚症状、
さらには元気のなさ等の精神的状況
にも及ぶ多彩なものである。
3
原図:倉澤隆平
4
原図:倉澤隆平
5
年齢
午後回帰曲線
倉澤隆平 ら:日本微量要素学会誌 (2005)
血清亜鉛値(μ
g/dL)
年齢と血清亜鉛値(午前、午後)
0 20 40 60 80 100
午前回帰曲線 午前
午後 1431名
旧北御牧村での調査 6
2012/10/4
2
2005年4月11日 2005年9月7日
亜鉛1日34mg投与で、皮膚障害の改善
(倉澤隆平 原図)
2006年12月11日 2007年10月31日
7
膿疱性乾癬の疑い?? (+口唇、口角炎 舌痛 味覚障害)
2006.01.04. Zn:74 Al-p:253 Alb:4.2 Hb:12.3
2006.01.24
8
2006.07.30.最終受診時の皮膚状況
2006.07.12.
Zn:71 Al-p:250
2006.05.30
9
長野県 篠ノ井総合病院
リウマチ科 小野静一 先生
患者さんのために、 亜鉛は、必須です
農学専門家とお話ができ、
少しは肩の荷が 軽くなりました
初診時 6ヶ月後
名古屋市
星ヶ丘診療所
有沢祥子先生
10
土壌中リン酸含有率の経年変化
大島宏行・後藤逸男より 11
亜鉛はリンと結合しやすい y = 0 .0652x + 73 .494
R2 = 0 .6595
0
1 00
2 00
3 00
4 00
5 00
0 1 00 0 2 00 0 3 00 0 4 00 0 50 00
土 壌 中 の 全 リ ン 酸量
土壌
中の
全Zn濃
度
施設土壌作土中の全リン酸と全亜鉛との相関性
後藤逸男ら(2003) 12
2012/10/4
3
化学肥料
1* 0.5 1 3 0.5 1 3
タマネギの亜鉛 41 11 13 21 17 17 34
土壌の全亜鉛 78 78 82 97 87 100 135
土壌の可溶性亜鉛 7 9 13 26 15 30 81
土壌の可溶性亜鉛は、0.1M塩酸抽出。
注:*17作までダイコン、以降エダマメとタマネギの交互作。堆肥毎作施用。化学肥料はN=18kg/10a 堆肥はT-N相当量 0.5:半量区 3:3倍量区 牛糞:稲わら牛ふん堆肥 豚糞:おがくず豚ぷん 亜鉛の単位はppm マルチ栽培。
堀兼明ら:近中四農研、4,109、2005
稲わら牛糞堆肥 おがくず豚糞堆肥
家畜ふん堆肥19作連用試験圃場のタマネギ球部亜鉛含量は化成区より低い
212頁 13
204頁 207頁
有機物施用でMnもCuも不可給化
兵庫県での発見 中央農研、木村武による再確認 14
本日の講演内容
「今、あらたな肥料の夜明け」に至る道
1 日本国内での人間での亜鉛欠乏症の発見
2 硝酸塩の歴史は世界的規模での間違い
3 ホウ素とケイ素も人間の健康に必須
4 ケイ素とマグネシウムの基礎研究が高温障害対策
への疑問を解消
5 マグネシウムは人間の健康にも大切
結論:肥料を農家に届けることは、作物だけでなく、 人間の命の源を届けること
15
180頁 181頁
硝酸イオンのシグナル作用
硝酸塩、亜硝酸塩はがんを減らす
16
硝酸はピロリ菌を
抑制して
胃ガン防止作用が
あることが
分かっていますよ
2000年9月、 山中正仁君と
ハイファケミカルの ウジーさんから
イスラエルにて 17
171頁:結論として、硝酸塩の歴史は、50年以上も続いた 世界的規模での科学の誤りである。 今こそこの遺憾な、そして高くついた誤解を正すときである。
硝酸塩は人体内で恒常的に
生産されている。
乳幼児以外の人は亜硝酸塩を
処理する能力を持っている。
硝酸塩摂取をガン発生の原因に
導く証拠はない。
2006年発行 18
2012/10/4
4
硝酸イオン、一酸化窒素のシグナル作用
人体ではNOより硝酸ができる 植物では硝酸からNOができる
イグナロ、ファーチゴット、ムラドの3名 一酸化窒素(NO)研究で、1998年ノーベル賞
(2001) (2007) (2007)
19 人体におけるNO(一酸化窒素)の生成と代謝
NO
COOH
H2NCH
(CH2)3
NH
C=NH
NH2
C=O
COOH
H2NCH
(CH2)3
NH
NH2
タンパク質リン酸化酵素の活性化
サイクリックGMP
GTP(グアノシン3 リン酸)
NO合成酵素
Ca2+
O2 NADPH
ニトログリセリン (代謝)
血小板凝集抑制
平滑筋弛緩作用
(血管拡張)
L-アルギニン L-シトルリン
血管内皮細胞・神経細胞
平滑筋
血液
ヘモグロビン-NO NO2 NO3 (腎臓、消化管) 排泄
+
、
「栄養機能化学」(朝倉書店)から引用
グアニル酸シクラーゼ
の活性化
20
NOS
NR
NADPH
酸化酵素
NO O2
O2
-
ONOO -
Ca2+ Ca2+
亜硝酸は酸性下では非酵素的にNOに変換
体液に入った硝酸イオンは唾液で口中細菌により亜硝酸イオン
になる。→虫歯予防
胃酸のような低pH下では亜硝酸は非酵素的にNOに変換。
NOは、胃内の平滑筋に作用し、潰瘍を治癒
ピロリ菌周辺に発生した活性酸素と反応し、過酸化亜硝酸を生成
ピロリ菌の呼吸を非可逆的に阻害。
過酸化亜硝酸
21
Maekawa et al . (1982)
性別 月齢 C L H C L H C L H C L H C L H C L H C L H
雄 13-15
16-18 2 1 1 1
19-21 3 4 3 1 1
22-24 11 7 3 3 1 4 1 1 1 4 1 1 1 1
25-27 13 8 10 3 2 5 6 3 4 1 2 1 1 2 1 1 1
28- 17 26 32 3 22 9 5 1 1 2 1 1 4 8 5 3 3 7 3 2
雌 13-15
16-18
19-21 1 1 1 1 2 1 2 2
22-24 1 1 2 1 2 1 1 1 2 1 1 2 1 1
25-27 5 2 10 3 1 6 3 3 3 4 4 1 1 1 1
28- 2 6 2 13 18 10 4 2 10 6 7 1 2 2 1 2 3 2
注: C=コントロール L=低量投与(飲水中0.125%) H=多量投与(飲水中0.25%)
甲状腺は子宮
発がん組織精巣また
乳腺 造血器官 脳下垂体 副腎 肝臓
亜硝酸ナトリウムの飲水投与と発がん性の関係
20ml/日
N換算すると(NO2×0.3045=N)上記は0.038%(380mg/L)と0.076%(760mg/L)
水道水水質基準項目と基準値は、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素:10mg/L以下
〃 水質管理目標設定項目と目標値は、亜硝酸性窒素:0.05mg/L以下(暫定値)
22
Maekawa et al . (1982)
性別 月齢 C L H C L H C L H C L H C L H C L H C L H
雄 13-15
16-18 1 1 1
19-21 1 1 2 1 1 1
22-24 10 5 7 4 2 4 1 1 2 3 1 2
25-27 13 12 5 3 3 1 9 1 1 3 6 2 1 1 2
28- 19 31 27 8 6 8 3 1 2 2 2 4 8 7 5 6 3 4 4
雌 13-15 1
16-18 2 1 1 1 1 1 2
19-21 1 1 1 1 3 1 1 1
22-24 2 1 5 1 3 6 7 2 2 2
25-27 1 5 1 2 3 3 2 2 1
28- 8 5 8 18 6 3 1 6 10 6 1 5 4 1
注:
肝臓 甲状腺は子宮
C=コントロール L=低量投与(食餌中2.5%:経口投与量200mgNO 3-/日相当) H=多量
発がん組織精巣また
乳腺 造血器官 脳下垂体 副腎
造血器官における腫瘍(ほとんどは、単核細胞白血病)が有意に減少(32%→2%)
N換算(NO3×0.2259)=N:45mgと104mg/日
硝酸塩のADI=3.7mg/日/kg体重(硝酸イオンとしてで、N換算だと0.836mg)
23
性 濃度 80週 100週 120週
0 16 32 760.13 6 30 52*0.25 4* 12* 42**
0 2 14 540.13 4 14 460.25 8 16 48
性 濃度 80週 100週 123週
0 6 20 802.5 0 8 52**5 8 24 62*0 12 38 72
2.5 6 20 46**5 12 24 50*
注: 表の単位は投与濃度、累積死亡率とも%
雌
Maekawa et al . (1982)
亜硝酸ナトリウム飲水実験
雄
雌
硝酸ナトリウム食餌実験
雄
亜硝酸飲水、硝酸食餌とラットの累積死亡率
飲水
食餌
182頁
24
2012/10/4
5
野菜の硝酸イオンに関する国の見解
FAO/WHO合同食品添加物専門家会合(JECFA)の報告
書でも「硝酸塩の摂取は主に野菜に寄与している。しかし
ながら、野菜を摂取することの利点はよく知られており、
(中略)野菜から摂取する硝酸塩の量をADIと直接比較す
ることや、野菜中の硝酸塩量を限定することは適切でない
」とされています。
農林水産省もこの報告書を引用し支持しています。
消費安全局農産安全管理課肥料検査指導班
ダイヤルイン:03-3502-5968
FAX:03-3580-8592
農林水産省ホームページ 「野菜中の硝酸塩に関する情報」より
★お問い合わせ先
25
培養液の中で生育する金魚
岡 准慈 (2011)
3年前から実施、 0.5 dS/m 26
本日の講演内容
「今、あらたな肥料の夜明け」に至る道
1 日本国内での人間での亜鉛欠乏症の発見
2 硝酸塩の歴史は世界的規模での間違い
3 ホウ素とケイ素も人間の健康に必須
4 ケイ素とマグネシウムの基礎研究が高温障害対策
への疑問を解消
5 マグネシウムは人間の健康にも大切
結論:肥料を農家に届けることは、作物だけでなく、 人間の命の源を届けること
27
ヒ ト(生体)
植物体(乾物)
N 30000 15000 0.50Ca 15000 5000 0.33P 10000 2000 0.20S 2500 1000 0.40K 2000 10000 5.00Na 1500 10 0.01Cl 1500 100 0.07Mg 500 2000 4.00Fe 87.5 100 1.14F 42.8 ー ーSi 28.5 1000 35.09Zn 28.5 20 0.70Mn 1.43 50 34.97Cu 1.14 6 5.26Se 0.171 ー ーI 0.157 ー ー
Mo 0.143 0.1 0.70Ni 0.143 0.05 0.35B 0.143 20 139.86Cr 0.0285 ー ーCo 0.0214 0.1 4.67
元素植物/ヒト
比ppm
ヒトと作物体の
元素濃度比
ホウ素(B)の必須性の歴史
1998年 アフリカツメガエルなどの実験 動物にもホウ素は必須
2002年 藤原徹らの生物界ではじめて、
ホウ素トランスポーターの同定
2004年 同種の遺伝子がヒトでも存在
・・・・ヒトでもホウ素は必須
1923年 Waringtonが植物における ホウ素の必須性を確立
農産物ミネラル、 ホウ素(B)とケイ素(Si)
長い間、ホウ素は植物のみ
に必須と考えられていた
28
Na K Ca Mg P Fe Zn Cu Mn玄米 15.5 1 230 9 110 290 2.1 1.8 0.27 2.05
精白米 15.5 1 88 5 23 94 0.8 1.4 0.22 0.80だいず 12.5 1 1900 240 220 580 9.4 3.2 0.98 1.90
ほうれんそう 92.4 16 690 49 69 47 2.0 0.7 0.11 0.32りんご 84.9 Tr 110 3 3 10 Tr Tr 0.04 0.03わかめ 89.0 610 730 100 110 36 0.7 0.3 0.02 0.05
きはだまぐろ 74.0 43 450 5 37 290 2.0 0.5 0.06 0.01ぶたロース 60.4 42 310 4 22 180 0.3 1.6 0.05 0.01
Al As B Cr Mo Ni Li Se Si玄米 16.4 110 4 140 19 120 14 0/ 9 4700
精白米 11.6 110 1 34 9 66 27 0 4 450だいず 12.1 580 28 1500 26 200 590 0 6 1100
ほうれんそう 92.7 970 5 160 11 8 0 0 0 670りんご 86.1 21 > 160 3 0 0 0 0 32わかめ 92.2 2300 360 200 10 0/ 0 0 4 1900
きはだまぐろ 74.3 79 130 0 13 0 0 0 81 170ぶたロース 53.0 160 40 0 36 0 0 0 37 310
食品名 水分mg/100g 文部科学省(2005)
食品名 水分μ g/100g 鈴木泰夫(1993)
食品のミネラル含有率
39頁
29
三輪京子ら、蛋白質核酸酵素(2008)
Si
B
B
216頁
2002年発見
2006年発見 30
2012/10/4
6
三輪京子ら、蛋白質核酸酵素(2008)
シロイヌナズナ(At、7つ)
イネ(Os、4つ)
ヒメツリガネゴケ(P.patens、2つ)
クラミドモナス(C.reinhardtii)
コムギ(Ta )
BOR1 相同遺伝子の系統樹
ヒト(Hs )
出芽酵母(S. cerevisiae )
オオムギ(Hv )
Park et al., Mol. Cell (2004)
31
ホウ素 投与量と
その他 処理 Al+ Mg+ Al+Mg+ Al+Mg+
Ca mg/日 124 109 125 127 90 81
Mg mg/日 89 94 79 95 74 54
女性ホルモン pg/ml 12 15 27 13 36 38
男性ホルモン pg/ml 0.3 0.3 0.3 0.3 0.7 0.6
尿
血清
高ホウ素 低ホウ素
その他 ホウ素が、骨形成に関与
アメリカ農務省の研究 Nielsen et al. (1987)
女性ホルモンは、エストラジオール、男性ホルモンは、テストステロン
被験者は、48~82歳の閉経後の女性13名で、試験期間中の167日間は、管理された 代謝ユニット生活。低ホウ素食事は野菜、果物摂取量をわずかにした牛肉、豚肉、米、 パン、ミルクを含む通常の食事で、ホウ素摂取量:0.25mg/日、ホウ素以外の不足する ミネラル、ビタミン類はサプリメントで補充。追加ホウ素はホウ酸ナトリウムで3.25mg/日。
32
0.25 3.25 0.25 3.25 0.25 3.25記号認識テスト
2.3 2.23 2.14 1.88 2.27 1.98
言語認識テスト 2.46 2.33 試験せず 試験せず
ホウ素摂取量mg/日
反応時間秒
反応時間秒
実験Ⅰ 実験Ⅱ 実験Ⅲ13人(50~78歳) 15人(44~69歳) 15人(49~61歳)
ホウ素は、高齢者の脳を活性化
アメリカ農務省の研究 Penland (1994)
実験Ⅰは、21日間のB低食事後、42日間0mgB (プラシーボ)と3mg Bサプリメント処理。
実験Ⅱ、Ⅲは、14日間のB低食事後、49日間の上記処理。
33 ホウ素摂取量と脳波 Penland (1994)
低Bでは 眼が開いていても
寝ている状態
ねむり まどろみ 落ち着き 興奮
ホウ素が十分あれば
落ち着いている
上段:眼を閉じた状態
下段:眼を開けた状態
B 摂取量 mg/日
34
男性
閉経前女性
閉経後女性
20 10 30 40 50 0.84
0.92
1.00
1.08 骨密度(骨盤・大腿骨部)
(g/cm2)
ケイ素摂取量(mg/日)
Jugdaohsingh et al. (2004)
骨粗しょう対策にはCaよりSiが大きく関与
肥満と心臓病の関係を明らかにした
「フラミンガム子孫研究」からの発表
30~87歳の男性1251名、女性1596名。ケイ素摂取量は 1991~1999年、骨密度は1996~2001年の調査による。
49頁
35
ケイ素は骨芽細胞での
コラーゲンタイプ1の合成を促進
ケイ素は、骨の非コラーゲン性 タンパク質であるオステオカルシン
のmRNA合成能も高める。
ケイ素濃度(μ M)
コラーゲンタイプ1の合成(%)
0 10 20 50
(ribosomal RNA)
ケイ素濃度(μ M)
Reffitt et al. (2003)
血漿中のSi濃度は、絶食時 2~10μ M、食事後 20~30μ M 36
2012/10/4
7
◎
0 10
バナナ
シリアル(ブランフレーク)
穀物パン
干しブドウ
ミネラルウオーター(高Si)
緑豆
ニンジン
ホールミールパン
玄米
ミネラルウオーター
ホワイトパン
ビスケット
白米
コーンフレーク クロワッサン
パスタ
レタス
ポテトワッフル
オレンジ
イチゴ
水
ミルク
ジャガイモ
8
0
2
4
6
ケイ素摂取量(mg)
尿中ケイ素含有量(
/6時間)
2 4 6 8 12 14
mg
250g
200g 100g
500ml 400ml
1000ml
210g 摂取量
Siを食事で1日13.15mg 供試した8名の平均値
ケイ素摂取量と尿中ケイ素含有量
Jugdaohsingh et al. 2002より作図
37
成人の骨は約3年で全て入れ替わり
深川 ら (2006)
38
本日の講演内容
「今、あらたな肥料の夜明け」に至る道
1 日本国内での人間での亜鉛欠乏症の発見
2 硝酸塩の歴史は世界的規模での間違い
3 ホウ素とケイ素も人間の健康に必須
4 ケイ素とマグネシウムの基礎研究が高温障害対策 への疑問を解消
5 マグネシウムは人間の健康にも大切
結論:肥料を農家に届けることは、作物だけでなく、 人間の命の源を届けること
39
平成22年
ネイグル新潟
清田政也さんの
指導による
高温障害に
勝った
新潟県
山波農場
40
中国語版 ネパール語版
①1986年発行 ② 1983年 2002年 再発行
③2006年発行
④2009年発行
⑤2010年発行
渡辺和彦の図書
⑥2011年発行
清田(せいだ)さん推薦
無料
41
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
0 2 4 6 8 10 12 14
Week after transplanting
Ro
ot re
lative
exp
ressio
n
Lsi1
Lsi2
Yamaji and Ma, Plant Physiol. (2007)
216頁
イネの登塾期は多くのケイ素を
必要とするためLsi1遺伝子が
多く発現する。
42
2012/10/4
8
△△肥料区 対 照 区
試験地:大分県日田市
△△肥料出穂40日前に施用 2袋/反
水稲の倒伏に対する△△肥料の施用効果
品種:ヒノヒカリ 田植日:6月6日 調査日:10月5日
流し込み用 △△肥料 もある 43
高温登塾障害を克服する技術
(森田2010より作成)
【穂の温度を低下】 【栽植方法】
出穂期を遅らせ涼しくなって登熟 疎植
(遅植え、晩生品種、直播) 【品種】
【気温が高くても穂の温度を低下】 高温耐性品種
葉が大きく穂の温度が下がる品種 【土壌管理】
田の配置 地力向上、深耕、基肥の量・タイプの選択
(夕方、日陰になる所等) 【水管理】
分げつ期の深水管理で籾数を抑制
【水管理】 【土壌管理】
穂肥の量・タイプの選択
【水管理】
登塾期の水管理の選択で耐性強化
【収穫・乾燥】
適期収穫
過乾燥の回避
高温回避技術
登熟期の掛け流し灌漑や落水時期延長で穂の温度を低下
治療的技術
高温耐性強化技術
予防的技術
肥料の種類
44
無施用区(左)とケイ酸施用区(右)
自根キュウリで観察されるケイ酸の効果
4つのポイント
:品種(北進)
土壌
施肥量
資材施用量
52頁
前川和正
45
46
○○肥料区 対 照 区
水稲の根張りに対する○○肥料の施用効果
試験地:新潟県 品種:コシヒカリ ○○肥料元肥に2袋/反
47
米の食味に対する△△肥料の施用効果(平成23年産)
株式会社ニレコ社製米品質分析計にて分析
試験地 品 種 区 分 粘 り 蛋白質 SHON 食味値
北海道 ななつぼし 対照区 -0.49 7.81 74.3
施用区 -0.34 7.47 79.4
埼玉県 コシヒカリ 対照区 0.27 5.40 73.6
施用区 0.30 5.18 76.4
千葉県 コシヒカリ 対照区 0.32 5.68 76.5
施用区 0.44 5.54 80.5
新潟県 コシヒカリ 対照区 0.18 6.11 82.3
施用区 0.45 5.69 86.5
平 均 値 対照区 0.07 6.25 76.7
施用区 0.21 5.97 80.7 48
2012/10/4
9
Hermans C. et al. (2006)
10cm
新鮮重(g)
シロイヌナズナにおけるN、 P、 K、 Mg欠如の糖転流などへの影響
N欠とP欠で 根が伸びる ことに注目
MgとKが 根に糖を 転流させる
ため
糖がないと 根は伸びない
CCC, Inc.の許可を受けて引用掲載
188頁
49
光合成
糖の 転流
ミネラル吸収
葉肉 師管
柔細胞
伴 細胞 師部
導管 師管
伴 細胞
従属栄養
細胞
作物体内における糖転流の仕組み Hermans C. et al. (2006)
糖の転流は 伴細胞における KとMgによって 制御されている
伴細胞に 注目
糖が師管に入るのに
ATPすなわちMg が必要。
ここの
Kトランスポータ が欠損すると、 ショ糖輸送量が 1/2になる
CCC, Inc.の許可を受けて引用掲載
ポンプの役割
188頁
50
グルコース換算 mg/g新鮮重
葉中ショ糖濃度
ショ糖転流量
日数
日数
対照
K欠乏
P欠乏
Mg欠乏
要素欠如と葉中ショ糖濃度と篩菅への転流量 Cakmak I. et al. (2008)
糖が転流 しない
糖が葉に たまる
191頁
51
Mg欠乏 対照
根
地上部
日数
(g/個体)
乾物重
Mg欠乏の地上部と根部乾物重への影響 Cakmak I. et al. (2008)
根が伸びない 191頁
52
本日の講演内容
「今、あらたな肥料の夜明け」に至る道
1 日本国内での人間での亜鉛欠乏症の発見
2 硝酸塩の歴史は世界的規模での間違い
3 ホウ素とケイ素も人間の健康に必須
4 ケイ素とマグネシウムの基礎研究が高温障害対策
への疑問を解消
5 マグネシウムは人間の健康にも大切
結論:肥料を農家に届けることは、作物だけでなく、 人間の命の源を届けること
53
192頁 193頁
54
2012/10/4
10
日本人の食事摂取基準(2010年版)より抜粋
推定平均必要量
推奨量 目安量 目標量耐容
上限量推奨量、目標量との比
ナトリウム (mg/日) 600(1.5)* 3600(9未満)* ( 10.2 ) 1 .13
カリウム (mg/日) 2,500 2,900(3,500)** 2018 0.70(0 .58)
リン (mg/日) 1,000 3,000 823 0.82
カルシウム (mg/日) 550 650 2,300 447 0.69
マグネシウム (mg/日) 310 370 *** 223 0.60
亜鉛 (mg/日) 10 12 45 8.0 0.67
鉄 (mg/日) 6.5 7.5 55 7.3 0.97
マンガン (mg/日) 4.0 11 -
銅 (mg/日) 0.7 0.9 10 1.08 1.20
ヨウ素 (μ g/日) 95 130 2,200 -
クロム (μ g/日) 35 40 -
モリブデン (μ g/日) 25 30 600 -
セレン (μ g/日) 25 30 300 -
*( )内は食塩相当量(g/日)
**( )内は高血圧予防のための望ましい摂取量
***通常の食事からはよいがサプリメントからの摂取上限量は、成人の場合350mg/日
注:実際の摂取量は、厚生労働省平成24年1月31日公表の平成22年国民健康・栄養調査結果による
30~49歳(男性)の例30~39歳
(男女)の実際の摂取量
多量ミネラル
微量ミネラル
55
マグネシウムは
白化を防止
簡単な 実験で確認 できる
1 0.5 0.1M 渡辺和彦 原図
各肥料成分溶液を入れたシャーレにトマトの葉 を浸し、太陽下に約2時間放置後、写真撮影 56
Kiss ら (2003)
測定項目 無処理 1%MgSO4・7H2O
タンパク質、mg/g 23.25 24.79過酸化脂質(LPO)、nM MDA/mg 3.75 2.08水酸化ラジカル(OH・)、nM MDA/mg 34.5 18.5
グルタチオン(GSH)、mM/mg/10-2 5.67 2.55
カタラーゼ(Catalase)、E/mg/10-4 0.972 0.316
FRAP値、(μ M Fe(Ⅱ)/L 266 200
(注)GSHは抗酸化剤の一種、FRAPはFe(Ⅲ)の還元能を用いた抗酸化能測定法。MDAはマロンジアルデヒドの略、蛍光物質で過酸化脂質などの測定 に用いられる。
トウモロコシ幼植物へのマグネシウムの影響
Mgで過酸化脂質、水酸化ラジカルが低下
57
動物でもMgは虚血後再潅流時の活性酸素発生を抑制
23~27kgのイヌに虚血処理5分前に4gのMgを静脈注射、n=18(半数は対照区)
In vivo、real-time での最初の実験
Garcia et al. (1998)
AFR:アスコルビン酸
フリーラジカル、
生体内の
酸化ストレスの
総合指標
再環流後の時間(分)
Mg 投与
コントロール
Mgの機序はよく
分かっていない。
直接的な消去作
用でなく、発生
抑制作用と推測。
*:P<0.05
活性酸素発生量
58
軟水の地方で脳卒中(脳梗塞、脳出血)
が多い。
小林純(1952)
小林純の研究に
Schroederらが注目
アメリカ、カナダ、
イギリスで追試
Mgがポイント
日本の生活用水の硬度分布
沖縄はMgが多く、最も長寿
Mgが少ない
1970年頃、世界最長寿 2007年現在、日本国内
男性26位 女性1位 若年男性の不慮死増加 59 厚生労働省(2005)
男 女
80
79
78
77
87
86
85
84
歳 歳
地域別平均寿命
60
2012/10/4
11
300
400
500
0 100 200 300
Schroeder HA:J Am Med Ass., 172, 1902 (1960)
飲料水中硬度(ppm)
循環器疾患訂正死亡率
水の硬度と循環器疾患死亡率の関係
(人/10万人)
61
0 5 10 15 0
5
10
15
20
25
Luoma H. et al. J Clin Lab Invest. 32, 217(1973)
有病率(%)
飲料水中Mg濃度(mg/L)
飲料水中マグネシウム濃度と
循環器疾患有症率の関係 (フインランドにおける疫学成績)
62
60
50
40
30
20
259 307 359 425
空腹時インスリン濃度
総マグネシウム摂取量
(mg/日)
(pmol/L)
肥満女性(BMI≧25) 非肥満女性(BMI<25)
Song et al. (2004)
BMI(Body Mass Index)、肥満度判定の1つで体重/身長2、22が標準、 25以上が肥満
マグネシウム摂取量別血中インスリン濃度
45歳以上の女性 39,345人の1993年 から6年間の食事
摂取量の追跡調査。
そのうち、349人の 健康なヒトの血液
検査よりとりまとめ。
63
国立がん研究センター
多目的コホート研究
140巻779-785(2010)
64
1 2 16 wks 0
5 6 20 wks 4 Age (wks)
Exp. wks
AOM (10 mg/kg bw, sc) アゾキシメタン (発ガン物質)
X
G6 None (CRF-1) X
G1 X
Sacrifice, Histopathology, Biochemical analysis
G2-4 Organic magnesium (7, 35 or 175 ppm in drinking water)
X
7 ppm, 35 ppm or 175 ppm oragnic magnesium (Tateho Chem. Ltd.) in drinking water
G5 Organic magnesium (175 ppm in drinking water)
X
98 male ICR mice
16
16
6
6
4
8
X
X
X
X
4
4
3
3
3
7
1.5% DSS in drinking water デキストラン硫酸ナトリウム (発ガン物質)
実験プロトコール
2011年
10月4日
岐阜大学
久野先生
発表
日本癌学会学術総会
65
Group 1 (AOM+DSS群)
岐阜大学久野壽也先生とタテホ化学工業(株)との共同研究(2011)
66
2012/10/4
12
Group 2 (AOM+DSS+7 ppm 有機Mg群)
岐阜大学久野壽也先生とタテホ化学工業(株)との共同研究 67
Group 3 (AOM+DSS+35 ppm 有機Mg群)
岐阜大学久野壽也先生とタテホ化学工業(株)との共同研究 68
Group 4 (AOM+DSS+175 ppm 有機Mg群)
岐阜大学久野壽也先生とタテホ化学工業(株)との共同研究 69
Dysplastic crypts (no./colon) 異形成陰窩(前がん状態)
0
1
2
3
4
5
6
7
G1 G2 G3 G4
AOM + + + +
DSS + + + +
Mg - 7 ppm 35 ppm 175 ppm
p<0.05 p<0.01
3.75±2.14
2.67±1.63
2.00±1.59 1.53±1.46
岐阜大学久野壽也先生とタテホ化学工業(株)との共同研究 70
今、新たな肥料の夜明け
肥料を農家に届けることは、作物だけでなく 人間の命の源を届けること
ご静聴ありがとうございました
結論
2012年7月発行 2012年5月Vol 1のみ発行
71