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January/February 2007Strength & Conditioning 38 レベルが高いバレーボールの試合は、身体要求が厳しい。レ ベルが高い試合で選手が自分の能力を存分に発揮するために は、試合の要求に応えられるように、身体的な準備を十分整 えておく必要がある。本稿では、バレーボールの試合におけ る身体的な必要条件を示し、トレーニングプログラムを作成 する際に、その特異性を強調することの必要性について説明 する。また、U.S. Air Force Academy (米国空軍士官学校)バ レーボールチームで、実際に行っているストレングス&コン ディショニングプログラムを紹介する。 試合の動作 バレーボールは、スピードが速く、爆発的でパワフルなス ポーツである。バレーボールの試合は、最大か、最大に近い 垂直跳びの繰り返し、頻繁に方向を変えるスプリント、ボー ルを拾うためのダイブ、スパイクやブロック時のオーバーヘ ッド動作の繰り返しなどから成り立っている(1,4)。ブロック やスパイクをするためには、下肢と股関節から体幹を通り上 肢へと、決まった順序に従って筋を連続的に働かせる必要が ある(2)。さらに、スパイクやアプローチジャンプのときには 大きな力を発揮し、ダイビングや着地、またはブロックの際 には、多くの力を吸収しなければならない。これらの身体的 要求を満たすためには、極めて高いレベルの身体コンディシ ョニングが必要である(4)。 また、適切に計画されたストレングス&コンディショニン グプログラムは、傷害の危険性を低減する上でも重要な役割 を果たす。高度な力の発揮と吸収が必要なスポーツでは、特 に傷害発生率が高い。レジスタンストレーニング(以下、RTの一番の利点は、筋と腱が強化されることと、筋の動員とコ ーディネーションの向上による運動感覚の獲得によって、傷 害発生率が低減する可能性があるということである(9)。これ らすべての要因が、コートでのパフォーマンスを向上させる と思われる。 傷害を受けやすい部位 バレーボール選手に最もよく見られる傷害発生部位は肩で ある。肩とローテーターカフの筋群は、肩の安定化という役 割と、スパイクやブロックで発揮される大きな力のために、最 も傷害が懸念される(4)。肩関節とローテーターカフを強化し 保護するために、様々なローテーターカフのエクササイズを 行うことができる。 ジャンプと着地では大きな力が発揮されるため、膝と足関 節にも傷害が発生しやすい。これらの関節を保護するために は、RT、プライオメトリクス、そして柔軟性トレーニングを 組み合わせた包括的なプログラムを実施することが最適であ る。 エネルギー要求 バレーボールの平均的なプレーは、1回につき6秒程度続 き、選手交代やタイムアウト以外の平均休息時間は、およそ 14 秒である(4)。この運動‐休息比は、バレーボール選手が、 ©NSCA JAPAN Volume 14, Number 1, pages 38-52 Training for High Level Performance in the Sport of Volleyball バレーボールで高度なパフォーマンスを 発揮するためのトレーニング Allen Hedrick, MA, CSCS,*D, Coach Practitioner Head Strength and Conditioning Coach U.S. Air Force Academy Special Feature Article

バレーボールで高度なパフォーマンスを 発揮するた …1)38-52.pdf38 January/February 2007•Strength & Conditioning レベルが高いバレーボールの試合は、身体要求が厳しい。レ

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January/February 2007•Strength & Conditioning38

レベルが高いバレーボールの試合は、身体要求が厳しい。レ

ベルが高い試合で選手が自分の能力を存分に発揮するために

は、試合の要求に応えられるように、身体的な準備を十分整

えておく必要がある。本稿では、バレーボールの試合におけ

る身体的な必要条件を示し、トレーニングプログラムを作成

する際に、その特異性を強調することの必要性について説明

する。また、U.S. Air Force Academy(米国空軍士官学校)バ

レーボールチームで、実際に行っているストレングス&コン

ディショニングプログラムを紹介する。

試合の動作

バレーボールは、スピードが速く、爆発的でパワフルなス

ポーツである。バレーボールの試合は、最大か、最大に近い

垂直跳びの繰り返し、頻繁に方向を変えるスプリント、ボー

ルを拾うためのダイブ、スパイクやブロック時のオーバーヘ

ッド動作の繰り返しなどから成り立っている(1,4)。ブロック

やスパイクをするためには、下肢と股関節から体幹を通り上

肢へと、決まった順序に従って筋を連続的に働かせる必要が

ある(2)。さらに、スパイクやアプローチジャンプのときには

大きな力を発揮し、ダイビングや着地、またはブロックの際

には、多くの力を吸収しなければならない。これらの身体的

要求を満たすためには、極めて高いレベルの身体コンディシ

ョニングが必要である(4)。

また、適切に計画されたストレングス&コンディショニン

グプログラムは、傷害の危険性を低減する上でも重要な役割

を果たす。高度な力の発揮と吸収が必要なスポーツでは、特

に傷害発生率が高い。レジスタンストレーニング(以下、RT)

の一番の利点は、筋と腱が強化されることと、筋の動員とコ

ーディネーションの向上による運動感覚の獲得によって、傷

害発生率が低減する可能性があるということである(9)。これ

らすべての要因が、コートでのパフォーマンスを向上させる

と思われる。

傷害を受けやすい部位

バレーボール選手に最もよく見られる傷害発生部位は肩で

ある。肩とローテーターカフの筋群は、肩の安定化という役

割と、スパイクやブロックで発揮される大きな力のために、最

も傷害が懸念される(4)。肩関節とローテーターカフを強化し

保護するために、様々なローテーターカフのエクササイズを

行うことができる。

ジャンプと着地では大きな力が発揮されるため、膝と足関

節にも傷害が発生しやすい。これらの関節を保護するために

は、RT、プライオメトリクス、そして柔軟性トレーニングを

組み合わせた包括的なプログラムを実施することが最適であ

る。

エネルギー要求

バレーボールの平均的なプレーは、1回につき6秒程度続

き、選手交代やタイムアウト以外の平均休息時間は、およそ

14秒である(4)。この運動‐休息比は、バレーボール選手が、

©NSCA JAPANVolume 14, Number 1, pages 38-52

Training for High Level Performance in the Sport of Volleyball

バレーボールで高度なパフォーマンスを発揮するためのトレーニング

Allen Hedrick, MA, CSCS,*D, Coach PractitionerHead Strength and Conditioning CoachU.S. Air Force Academy

Special Feature Article

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39January/February 2007•Strength & Conditioning

主としてATP-PC系を利用することを示唆している。

バレーボールに特異的な要求を確認するいくつかの方法が

ある。最も優れた方法の1つは、時間‐動作分析である。こ

れは、ポジション毎に、サーブ、パス、セット、スパイク、ブ

ロック、ダッシュ、あるいはダイブなどの動作数を、時間特

性(ラリーの持続時間、プレーの停止、ゲーム数、試合数など)

とともに記録する方法である(1)。

トレーニングの特異性

スポーツ競技において身体パフォーマンスを最大限に向上

させるためには、特異性と過負荷の原則の適用が必要である。

特異性とは、簡単に言うとコンディショニングプログラムに

おいて、可能な限り試合の動作を模倣することを意味する。過

負荷とは、トレーニングにおいて、選手が通常よりも大きな

努力を要求される刺激(重量、スピード、高さ、持続時間)を

提供しなければならないことを意味する(1)。

それを実現する最も効果的な方法は、実際の試合動作に極

めて類似しており、しかも、身体能力の改善を強いる適切な

過負荷を与えるエクササイズを行うことである。そのためト

レーニングでは、疲労によるパフォーマンスの低下を最小限

に保ちながら、高くジャンプし、短距離をダッシュし、ダイ

ブし、素早い方向転換をする能力を開発しなければならない

(1)。しかし、プログラムデザインと同様、エクササイズの選

択は「一般的」な種目から「特異的」な種目へと漸進させる

ことは覚えておく必要がある。トレーニングが進むにつれて、

試合中の動作に特異的なエクササイズへと変えていく(7)。最

大の力発揮を獲得するためには、バレーボールという競技を

構成している動きに類似した、動作パターン、速度、筋の収

縮様式および収縮力でトレーニングを行い、試合動作を模倣

する必要がある(1)。

その結果、動員される筋群ではなく、動作に基づいてエク

ササイズが選択されるということになる。トレーニングが競

技動作に類似していれば、ウェイトルームから試合にもたら

される利益は一層大きくなる(7)。例えば、レッグエクステン

ションとレッグプレスは、大腿四頭筋のサイズと筋力を向上

させる上で効果的である。しかし、これらのエクササイズで

は、バレーボールに特異的ではない動作パターンで筋力を向

上させていることになる。そのため、バレーボール選手がこ

れらのエクササイズを行うことの価値は、疑問視せざるをえ

ない。

対照的に、スクワットやランジなどのエクササイズは(他の

筋群も含め)、大腿四頭筋の筋力レベルを高める上で同じよう

に効果的であり、バレーボールで見られる動作に類似した動

作パターンで行われる。そのため、スクワットとランジは、バ

レーボール選手にとって、レッグエクステンションあるいは

レッグプレスよりも良い選択である(7)。

立位で行うフリーウェイト・エクササイズを強調すること

も重要である。ほとんどのスポーツ動作は立位姿勢で行われ、

その大部分が多関節動作を含んでいる。トレーニングが試合

の要求に特異的であれば、それだけトレーニング効果がパフ

ォーマンスへ大きく転移する。

しかし、例外として重要な事項がある。傷害発生率の低減、

あるいは筋バランスの維持のためにプログラムに組み込まれ

るエクササイズである。例えば、ローテーターカフ・エクサ

サイズには、側臥位で、単関節動作で行う種目がある。その

他、プルダウンあるいはシーティッドロウなどは、座位で行

われるのが一般的である。この種のエクササイズは例外であ

る(7)。

エネルギー要求

バレーボールでは、大部分のラリーが10秒以下であり、1

ゲーム当たり約50回のラリーがある(1)。そのため、バレー

ボールのためのエネルギー供給機構のトレーニングは、5~

10秒持続する50回以上の反復から成り立っている必要がある。

頻繁な方向転換を伴うジャンプ、ランニング、ダイブで構成

されている必要があり、10~15秒の休息がこれに続く(1)。

ラリーの10%は15秒を超えて続く。その10%に対する準

備を整えるために、いくつかのエクササイズは20~45秒続け

て行う必要がある。例えば、サイドアタッカーのためのドリ

ルは、ブロックジャンプ、4mのバックペダル、素早いアプ

ローチ(助走)からのスパイクジャンプで構成できるだろう。

バックラインの選手のためのドリルは、3mの側方移動、ダ

イブから回転、スタートポジションへのバックペダルで構成

される。セッターには、バックラインのポジションからネット

までダッシュ、ジャンプセット、ブロックジャンプ、スタート

ポジションまでダッシュで戻ることがトレーニングとなる(1)。

トレーニングの強度、持続時間、および回復時間は、解糖

系を強調しすぎないよう適切にコントロールすべきである。解

糖系ではなく、ATP-PC系と有酸素系に負荷をかけ、乳酸の

過度の蓄積を避けるために、セット間に十分な休息をとり、適

切なレップ数で行うことが必要である(1)。

トレーニングが、試合でのエネルギー供給機構に特異的で

あり、さらに動作も特異的であれば、神経‐筋系に過負荷を

かけることが可能である。それにより選手は、より高く跳び、

Special Feature Article

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January/February 2007•Strength & Conditioning40

より速く走り、より素早く方向を変えるトレーニングができ

る。これは、通常よりさらに身体要求が厳しい状況でのトレ

ーニングで達成できるだろう。例えば、上り坂でのスプリン

ト、抵抗に逆らったジャンプ、あるいは、高所からのドロッ

プジャンプなどである。このようなトレーニングによって、よ

り大きなパワーでパフォーマンスを発揮し、疲労によるパフ

ォーマンスの低下を最小限に抑え、効率良く試合に特異的な

スキルを練習することができる(1)。

垂直跳びを改善するトレーニング

垂直跳びの能力は、バレーボールでの成功を決定的に左右

する(10)。ジャンプ力は、ジャンプセット、ジャンプサーブ、

ブロック、スパイクなどで重要である。垂直跳びのパフォー

マンス改善は、バレーボールのトレーニングプログラムの中

でも特に重要な部分となる。

ジャンプ力はパワーの産生と関係がある。パワーに対する

筋力とスピードの効果は相乗的であり、筋力とスピードの両

方が向上したときに、パワーが最大に向上する。従って、筋

力あるいはスピードのどちらか一方だけに重点を置くことは、

パワーの向上を制限することになる。高いパワー発揮を必要

とするスポーツでは、トレーニングの早い段階において、筋

力を最大限に高めることに重点を置くべきである。筋力を重

点的に強化する期間の後、パワーとスピードの強化に移る(10)。

垂直跳びの離陸速度の平均10%は、両腕の力によることが

明らかになっているため、トレーニングを下半身に限定すべ

きではない(10)。しかし、ジャンプパフォーマンスは、股関

節、膝、および足関節によって産み出される力に大きく依存

している。結果として、脚部、股関節、さらに腕の爆発的筋

力を向上させることが、垂直跳びのパフォーマンス向上をも

たらす。大多数のアスリートにとって、筋パワーの向上が主

な目標となる。もちろん、特異的な生理的要求は種目によっ

て異なる。例えば、フットボールでは力発揮に対する要求が

高く、レスリングでは筋持久力により重点を置くことが必要

であろう。一方、バレーボールでは、スピードの要素が大き

な比重を占めると思われる。しかし、最適なパフォーマンス

のためにパワーが重要であることは、これら3つの競技に共

通である。筋力とパワーは関係があるが、単に最大筋力をト

レーニングするだけでは最大限のパワー向上には結びつかな

い。パワーは独立した要素であるため、プログラムは筋力の

強化からパワーの強化へと重点を移すように調節しなければ

ならない(10)。

垂直跳びのパフォーマンスとスクワット

ウェイトトレーニングを行うことによって、垂直跳びのパ

フォーマンスが向上することがいくつかの研究から明らかに

なっている。適切に計画されたトレーニングプログラムによ

って、より大きな力を発揮することが可能となる(6)。期分け

された7週間のパラレルスクワットのプログラムは、臀部と

大腿部のパワーを有意に向上させることが明らかにされてい

る。週2回、7週間スクワットを行ったところ、被験者は垂

直跳びが平均3.3cm向上した。パラレルスクワットはダイナ

ミックなエクササイズであり、伸張反射などの神経筋の効率

を促進するため(6)、スクワット系エクササイズによる垂直跳

びの向上は想定の範囲内である。

ところが別の証拠が、下半身のパワー改善のためにスクワ

ットを主要なエクササイズとしているプログラムは、理想的

ではない適応をもたらす場合があることを示唆している。数

週間から数カ月にわたる、単調で少レップ高重量のトレーニ

ング(パワーリフティング)プログラムは、オーバートレーニ

ングをもたらす可能性がある。パワーリフティングの問題の

ひとつは、パフォーマンスが向上するにつれてパワー発揮が

減少することである。パワー発揮が低下する理由は、1RMは

増加するが、動作速度がかなり減少するためである。パワー

リフティングにおいて、動作スピードはリフトの成功に何の

役割も果たさない。このタイプのトレーニングでは、非常に

重いウェイトを扱うことができる。ところが、パワーリフテ

ィングの動作には、多くのスポーツで一般的に見られる爆発

的動作が欠如している(6)。

垂直跳びのパフォーマンスとウェイトリフティング

パワーリフティングとは対照的に、ウェイトリフティング

の動作(クリーン、ジャーク、スナッチ、および関連するエク

ササイズ)は、まさしく爆発的なエクササイズである。クリー

ン&ジャークとスナッチでは、リフトを成功させるために素

早く動作を完了する必要がある。さらに、ウェイトリフティ

ングも、ウェイトが 1RMに近付くにつれてパワーは減少する

が、その程度ははるかに小さい。ウェイトが95% 1RMから

最大重量まで上昇しても、動作スピードはわずかに減少する

だけである(6)。

ウェイトリフティングでは、動作スピードを維持する必要

があるため、機械的なパワー発揮が非常に大きくなる傾向が

ある。研究によると、スナッチまたはクリーンにおけるセカ

ンドプルのパワー発揮は、スクワットあるいはデッドリフト

におけるパワー発揮よりも4~5倍大きく、ベンチプレスよ

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り11~15倍も大きい(6)。

ウェイトリフティングの動作は、スピード、パ

ワー、さらに上半身と下半身のコーディネーショ

ンと運動感覚への気づきにとって理想的である(2)。

ウェイトリフティングの動作は、多くのスポーツ

で必要な速度と同じスピードで、また同じ順序で

筋を強化できる。実際の動作では、ある筋が単独

で動員されることはない。このため、個々に筋を

強化するエクササイズは、競技パフォーマンスを

多少なりとも制限することになる(2)。ウェイトリ

フティングを取り入れた様々なプログラムは、特

に運動感覚、柔軟性、バランスと爆発力に及ぼす

効果が大きい(2)。

スクワットとクリーンの1RMの向上が

ジャンプパフォーマンスに及ぼす効果

U.S. Air Force Academyのフットボール選手を対象に、スク

ワットの 1RM、クリーンの 1RM、および垂直跳びの測定結

果を評価した。この調査結果は、垂直跳びのパフォーマンス

改善のために、トレーニングの一部にスクワットとクリーン

を取り入れることの価値を裏付けている。表1と表2に、本

研究の結果を示す(6)。

垂直跳びのパフォーマンスとプライオメトリクス

垂直跳びのパフォーマンス改善に有益なもう1つのトレー

ニング方法が、プライオメトリクスである(4,10)。いくつかの

研究が、プライオメトリクスが垂直跳びに特異的な、股関節

と大腿部のパワー向上にプラスの効果を持つことを明らかに

している。プライオメトリクスは、筋力とスピードの間のギ

ャップを埋め合わせる。伸張‐短縮サイクルをトレーニング

することで、力の立ち上がり速度とパワー出力を向上させる

ことができる(6)。

下半身のパワー改善に対するプライオメトリクスの効果は、

研究ですでに証明されている。週2回、6週間にわたり3種

類のプライオメトリックドリルを行ったところ、6週間後に

垂直跳びが平均3.81cm増加していた(6)。

レジスタンストレーニングとプライオメトリクスの

複合効果

RTとプライオメトリクスは、単独で垂直跳びのパフォーマ

ンス改善に効果があることが示されているが、両方のトレー

ニング様式を合わせると効果が最大限に高められる可能性が

ある。パワー系競技のパフォーマンス向上を目的とする場合、

エキセントリック筋活動からコンセントリック筋活動に切り

返される際のエネルギーの伝達を最適化することが必要であ

る。この特徴をトレーニングするには、RTとプライオメトリ

クスを合わせた複合プログラムが必要である(6)。

スクワットあるいはプライオメトリクスを単独に用いたと

ころ、垂直跳びのパフォーマンスをそれぞれ3.3cm、3.81cm

改善した。一方、スクワットとプライオメトリクスを組み合

わせて週2回のトレーニングを行ったところ、垂直跳びのパ

フォーマンスが平均10.67cm改善した(6)。

RTとプライオメトリクスの組み合わせが、より優れた結果

をもたらすという事実は驚くべきことではない。一般に選手

は、プライオメトリクスを始める前に、4~6週間のウェイ

トトレーニング・プログラムに参加することが推奨されてい

る。これは、プライオメトリクスの大きなストレスによって、

傷害を負う危険性を低減するためである。さらに、筋力レベ

ルが向上するにつれて、他のプライオメトリックドリルや類

似の活動を行う能力も、強化される可能性があることが確認

されている(6)。

トレーニングプログラム

前述の情報に基づいて、U.S. Air Force Academyのバレーボ

ール選手のために、以下のトレーニングプログラムが開発さ

れた。大学では、バレーボールは秋季スポーツである。練習

は8月初旬に始まり、11月から12月にかけて試合が行われ、

勝利チームはNCAAプレーオフへと進む。

Special Feature Article

表1 スクワットの1RMの増加と垂直跳び(VJ)のパフォーマンス

スクワットの1RMが0~23kg増加(n=19名)= VJが平均4cm向上

スクワットの1RMが23~45kg増加(n=16名)= VJが平均6.35cm向上

スクワットの1RMが45~59kg増加(n=5名)= VJが平均6.6cm向上

スクワットの1RMが59kg以上増加(n=5名)= VJが平均10.41cm向上

表2 クリーンの1RMの増加と垂直跳び(VJ)のパフォーマンス

クリーンの1RMが0~9kg増加(n=9名)= VJが平均3.66cm向上

クリーンの1RMが9~20kg増加(n=15名)= VJが平均3.89cm向上

クリーンの1RMが20~27kg増加(n=10名)= VJが平均6.5cm向上

クリーンの1RMが27kg以上増加(n=11名)=VJが平均9.5cm向上

両方のケース(スクワットおよびクリーンの1RMのパフォーマンスの向上)で見られるように、1RMの増加が大きければ大きいほど、結果的に、垂直跳びの向上も大きい。

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January/February 2007•Strength & Conditioning42

表3 筋肥大/筋力サイクルⅠ

期日‥1月9日~2月12日

サイクル‥筋力 I

目標‥筋のサイズ、筋力、およびパワーには正の相関があるため、筋サイズと筋力を増大させる

期間‥5週間

強度‥適切なフォームで、各セット全レップを完了できたら負荷を増やす

ペース‥全身のエクササイズはできるだけ爆発的に行う。他のエクササイズはできるだけ爆発的に行い、3秒で下ろす

休息‥全身エクササイズ間は2:00、その他のセット間とエクササイズ間は1:30

セット数/レップ数‥

スキーム1(セット×レップ) スキーム2(セット×レップ)

1/9~1/15‥ TB=3×6, CL=3×10, AL=3×10 TB=3×4, CL=3×6, AL=3×6

1/16~1/22‥ TB=3×4, CL=3×8, AL=3×10 TB=3×2, CL=3×4, AL=3×6

1/23~1/29‥ TB=4×6, CL=4×10, AL=3×10 TB=4×4, CL=4×6, AL=3×6

1/30~2/5‥ TB=4×4, CL=4×8, AL=3×10 TB=4×2, CL=4×4, AL=3×6

2/6~2/12‥ TB=4×6, CL=4×10, AL=3×10 TB=4×4, CL=4×6, AL=3×6

月曜(スキーム1)

・全身スクワット、クリーン、TB

・下半身スクワット(チェーン1+3)、CLSLDL、CL

・体幹WTクランチ 3×20

・上背部ベントロウ、CL

・ローテーターカフエンプティカン 2×12DBショルダーデセレレーション* 2×12

*両手にダンベルを持ち、肘を伸ばして大腿の前に構える。肘を伸ばしたまま肩関節を外転していき、ダンベルが肩の真上に来るまで持ち上げる。スタート位置までゆっくりとダンベルを戻していく

水曜(スキーム2)

・全身DBプッシュプレス、TB

・下半身ケッグランジ、CLレッグカール、AL40秒スタビライゼーション

・体幹トランクツイスト 3×20WTバックエクステンション 3×12

・上半身ケッグ・ベンチプレス、CLMBプルオーバー 2×8

・ローテーターカフインターナルローテーション2×12

金曜(スキーム1)

・全身スプリットAlt Ftスナッチ(床から)、TB

・胸ベンチ、CL

・体幹WTシーティッドツイスト 3×20WTツイスト・バックエクステンション3×12

・肩ショルダープレス、CL

・ローテーターカフファンクショナルローテーション2×8

表4 省略記号の説明

TB=全身。全身エクササイズは、いずれかのオリンピックリフトとその関連エクササイズを指すCL=コアエクササイズ。スクワット、ベンチプレスなどの多関節エクササイズAL=補助エクササイズ。レッグエクステンションやバイセップスカールなどの単関節エクササイズDB=ダンベルWT=ウェイト、抵抗を加えて行うエクササイズスタビライゼーション=閉眼片脚立ちの姿勢をとる。パートナーが選手を押し、押された選手は軽く跳ねて再び姿勢を立て直し、できるだけ早く

バランスを回復するSLDL=ストレートレッグ・デッドリフトALT=左右の上肢または下肢を交互に使って行うエクササイズMB=メディシンボールを使って行うエクササイズFt=フット(足)

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43January/February 2007•Strength & Conditioning

オフシーズンのトレーニングは、1月初旬に筋肥大/筋力

のコンビネーションサイクルとして始まる(表3)。ワークア

ウトの表に使われている省略記号の解説は、表4に示す。

選手はシーズン終了以来、体系的なトレーニングには参加

していないため、このサイクルでは筋力レベルを向上させつ

つ、要求の厳しいプログラムへの緩やかな移行を意図してい

る。激しいトレーニング量への移行を助けるために、トレー

ニングプログラムの最初の2週間は量を抑え(すべてのエクサ

サイズを3セットずつ)、第3週以降にトレーニング量を増加

させる(全身とコアのエクササイズを各4セット)。

2つの異なるスキームが各サイクルで使われている。スキ

ーム1は、月曜と金曜のワークアウトで用いられるが、これ

は、このサイクルの目標である生理学的適応をもたらすこと

が目的である。例えば、筋肥大/筋力サイクルⅠの目標は、筋

サイズを増大させることであるが、それは、筋サイズと筋力

の間に正の相関関係があるためである。従ってスキーム1で

は、筋サイズと筋力を同時に増大させる中程度の量と強度を

用いている。対照的に、スキーム2は、低量高強度で筋力の

向上を目的としている。2つの別々の生理学的要素(スキーム

1の筋サイズ/筋力、スキーム2の筋力)を同時にトレーニン

グすることは、身体パフォーマンスの向上をもたらす上で有

利である(3)。

このサイクルは5週間である。セット数、レップ数、エクサ

サイズとともに、プログラムの目標、サイクルの長さ、強度、

動作スピード、および休息時間が、すべて設定されている。

上半身の筋力の必要性

脚部と股関節の筋力/パワーは明らかに必要であるが、そ

の他に、バレーボールで成功するための重要な要因の1つが、

上半身の筋力である。これには2つの理由がある。1つはパ

フォーマンスに関するものであり[スパイクの速度における

重要な要因の1つは、高速での肩の伸展筋力であり(1)、また

すでに述べたように、離陸速度の10%は腕の力による]、もう

1つは傷害の予防である。肩関節の筋組織とローテーターカ

フの筋群は、肩のスタビライゼーションと、スパイクやブロ

ックで発揮される大きな力のために、最も損傷が懸念される

部位である(4)。事実、最も頻繁な傷害はローテーターカフの

損傷である。

ローテーターカフ・エクササイズは、ゆっくりと制御して、

12レップ×2セット行う。このエクササイズでは、エラステ

ィックバンドあるいは軽いダンベルを使用する(4)。

次の筋肥大/筋力サイクルは、筋力サイクルⅡ(表5)であ

る。このサイクルの目的は、さらなる筋力の向上である。筋

力とパワーには正の相関があるため、トレーニングの最終目

標が最大パワーの強化である場合、最初に筋力レベルを増や

すと有利である(6)。

筋力レベル向上のために、スキーム1のレップ数は少なく

なり、休息時間は延長している。スキーム2では、爆発的動

作の反復に必要な筋持久力を高める一方、筋肥大を維持する

ことを意図して作成されている。過度の疲労を避けるために、

春季練習の始まりと同時に、サイクルの途中でトレーニング

量を減少させている。

少なくとも1種目のオリンピックスタイル・エクササイズ

(以下、OSE)を行う。OSEは、筋力、パワー、コーディネー

ションが組み合わされたエクササイズである。これらのエク

ササイズの動作パターンは、多くのスポーツで見られる動作

パターン(バレーボールのジャンプなど)に類似しているため、

プログラムにおいてOSEを優先的に行うことは有意義である

(9)。

他のRTを行う前に、最初にOSEを行うことが重要である。

OSEを正確に行うためには、速いスピードとコーディネーシ

ョンが要求される。従って、疲労していない状態で行うこと

が適切である。

側方への動作

トレーニングプログラムにおいて強調すべきもうひとつの

分野は、側方動作のためのトレーニングである。大部分のウ

ェイトトレーニングの動作は、矢状面で起こる。例えば、ク

リーン、スクワット、フォワードランジのようなエクササイズ

は、すべてこの平面で行われる。しかしながら、バレーボー

ルを含め、大抵のスポーツは、前後の動作と側方への動作の

混合である。バレーボールにおける横の動作の例としては、ブ

ロックをするために中央のブロッカーが横へスライドする動

作、あるいはリベロがレシーブのために側方へダイブする動

作などがある。矢状面のみのトレーニングでは、側方へ動く

ための能力を十分に身に付けることができない。側方動作に

対応するためには、ウェイトルームにおいても、またプライ

オメトリック/アジリティトレーニングにおいても、様々な

側方への動作を行う必要がある。試合での動作を、ウェイト

ルームで安全にトレーニングできるのであれば、是非ともワ

ークアウトに取り入れるべきである。側方へのトレーニング

を無視することは、選手にとって不利である(8)。

Special Feature Article

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January/February 2007•Strength & Conditioning44

表5 筋力サイクルⅡ

期日‥2月13日~3月26日

サイクル‥筋力Ⅱ

目標‥筋力とパワーには正の相関があるため、筋力を増大させる

期間‥6週間

強度‥最初のセットにおいて、適切なフォームで全レップを完了できたら負荷を増やす

ペース‥全身エクササイズはできるだけ爆発的に行う。他のエクササイズはできるだけ爆発的に行い、2秒で下ろす

休息‥全身エクササイズのセット間とエクササイズ間は2:30、その他のセット間とエクササイズ間は2:00

セット数/レップ数‥

スキーム1(セット×レップ) スキーム2(セット×レップ)

2/13~2/19‥ TB=4×3, CL=4×3, AL=3×6 TB=4×4, CL=4×10, AL=3×12

2/20~2/26‥ TB=4×5, CL=4×5, AL=3×6 TB=4×6, CL=4×12, AL=3×12

2/27~3/5‥ TB=4×3, CL=4×3, AL=3×6 TB=4×4, CL=4×10, AL=3×12

3/6~3/12‥ TB=3×5, CL=3×5, AL=3×6 TB=3×6, CL=3×12, AL=3×12

3/13~3/19‥ TB=3×3, CL=3×3, AL=3×6 TB=3×4, CL=3×10, AL=3×12

3/20~3/26‥ TB=3×5, CL=3×5, AL=3×6 TB=3×6, CL=3×12, AL=3×12

3/27~4/2‥ 春休み

月曜(スキーム1)

・全身スプリットAlt Ftジャーク、TB

・胸ベンチ、CL

・体幹WTトウタッチ 3×15WTグルートハム 3×10

・肩ショルダープレス、CL

・ローテーターカフファンクショナルローテーション 2×12DBデセレレーション 2×12

水曜(スキーム2)

・全身DBスプリットAlt Ftスナッチ、TB

・下半身カイザースクワット、CLケッグ・アーチランジ、CL

・体幹WTパートナーツイスト 3×15

・上半身ケッグベンチ、CLDBロウ、CL

・ローテーターカフインターナルローテーション2×12

金曜(スキーム1)

・全身スクワットクリーン、TB

・下半身スクワット、CLラテラルスクワット、CL50秒スタビライゼーション

・体幹WTデクライン・ツイストクランチ 3×15WTツイスト・バックエクステンション 3×10

・肩DBプルオーバー、CL

・ローテーターカフエクスターナルローテーション2×12

写真1 ケッグアーチランジ(前) 写真2 ケッグアーチランジ(斜め) 写真3 ケッグアーチランジ(横)

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45January/February 2007•Strength & Conditioning

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表6 筋力サイクルⅢ

期日‥4月3日~4月23日

サイクル‥筋力Ⅲ

目標‥筋力とパワーには正の相関があるため、筋力を向上させる

期間‥3週間

強度‥適切なフォームで、各セット全レップを完了できたら負荷を増やす

ペース‥全身エクササイズは、できるだけ爆発的に行う。他のエクササイズはできるだけ爆発的に行い、2秒で下ろす

休息‥全身エクササイズのセット間およびエクササイズ間は2:30、その他のセット間およびエクササイズ間は2:00

セット数/レップ数‥

スキーム1(セット×レップ) スキーム2(セット×レップ)

4/3~4/9‥ TB=3×4, CL=3×4, AL=3×8 TB=3×6, CL=3×9, AL=3×10

4/10~4/16‥ TB=3×2, CL=3×3, AL=3×8 TB=3×4, CL=3×7, AL=3×10

4/17~4/23‥ TB=3×4, CL=3×3, AL=3×8 TB=3×6, CL=3×9, AL=3×10

月曜(スキーム1)

・全身ハング・スクワットクリーン、TB

・下半身スクワット、CLSLDL、CL60秒スタビライゼーション

・体幹WTプレスクランチ 3×12WTツイスト・プレスクランチ 3×12

・上背部DBロウ、CL

・ローテーターカフエンプティカン 2×12DBショルダーデセレレーション 2×12

水曜(スキーム2)

・全身DB Altプッシュプレス、TB

・下半身カイザースクワット、CLケッグ・ウォーキングランジ、CL

・体幹2-ハンド・バー・ツイスト 3×12WTグルートハム 3×10

・上半身DB Altベンチプレス、CLDBプルオーバー、CL

・ローテーターカフインターナルローテーション 2×12

金曜(スキーム1)

・全身ハングAlt Ftスプリットスナッチ、TB

・胸ベンチプレス、CL

・体幹MBオフセンタースロー 3×12WTツイスト・グルートハム 3×10

・肩ショルダープレス、CLフロントレイズ、AL

・ローテーターカフファンクショナルローテーション 2×12

写真4 スクワットクリーン(開始姿勢) 写真5 スクワットクリーン(ボトムポジション) 写真6 WTプレスクランチ

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January/February 2007•Strength & Conditioning46

ダンベルトレーニングの重要性

ここで紹介するプログラムでは、毎週水曜日のワークアウ

トにおいて、ダンベルエクササイズに重点を置いている。プ

ログラムの目標が競技パフォーマンスの向上であるならば、プ

ログラムのかなりの部分をダンベルエクササイズで構成する

必要がある。ダンベルエクササイズを実行するためには、極

めて高いバランス能力とボディコントロールが必要とされる

ため、ダンベルは、アスリートのトレーニングにおいて適切

な選択である。これらの要素が、バレーボールの試合の要求

に十分に反映される(8)。

もうひとつのダンベルの利点は、腕を左右交互に用いた上

半身のエクササイズ(オルタネイト・ダンベルクリーン、オル

タネイト・ダンベル・ベンチプレスなど)を行えることである。

当然であるが、このタイプのトレーニングをバーベルで行う

ことはできない。左右交互のダンベルエクササイズは、より

競技特異的なトレーニング様式を提供することができる。サ

ーブやスパイクは、片腕で行う動作の例である。ダンベルを

用いた左右交互のエクササイズは、筋力サイクルⅡの期間中

に開始し、トレーニングの進行につれてより広範に取り入れ

る。

筋力サイクルⅡが終了したら、パワーサイクルⅠの前に筋

力レベルをピークまで高めるために、短期間の第3の筋力サ

表7 パワーサイクルⅠ

期日‥4月24日~5月21日

サイクル‥パワーⅠ

目標‥パワーとパフォーマンスには正の相関があるため、パワーを向上させる

期間‥4週間

強度‥適切なフォームで、各セットの全レップを完了できたら負荷を増やす

ペース‥全身エクササイズはできるだけ爆発的に行う。タイムドリフトは、制限時間内に指定されたレップ数を完了できるペースで行う。

休息‥全身エクササイズのセット間とエクササイズ間は3:00、その他のセット間とエクササイズ間は2:30

セット数/レップ数‥

スキーム1(セット×レップ、@:全レップを設定時間内に行う) スキーム2

4/24~4/30‥ TB=4×4, TL=4×6@9秒(1.5sec/rep) TB=4×5, TL=4×8@16秒(2sec/rep)

5/1~5/7‥ TB=4×2, TL=4×4@8秒(2sec/rep) TB=4×3, TL=4×10@17秒(1.7sec/rep)

5/8~5/14‥ TB=4×4, TL=4×6@9秒(1.5sec/rep) TB=4×5, TL=4×8@16秒(2sec/rep)

5/15~5/21‥ TB=4×2, TL=4×4@8秒(2sec/rep) TB=4×3, TL=4×10@17秒(1.7sec/rep)

月曜(スキーム1)

・全身スクープ・スクワットクリーン、TBハング・スクワットクリーン、TB

・下半身スクワット、CLジャンプスクワット、TLサイドランジ、TL

・体幹1-ハンド・バー・ツイスト 3×10WTバックエクステンション 3×8

・上背部ベントロウ、TL

・ローテーターカフインターナルローテーション 2×12

水曜(スキーム2)

・全身DBスプリットAlt Ft Altスナッチバランス*、TBDB ハングスプリットAlt Ft Altスナッチ、TB

・下半身カイザースクワット、TLケッグ・アーチランジ、TL60秒スタビライゼーション

・体幹MBアンクルチョップ 3×10WTツイスト・バックエクステンション 3×8

・胸/肩DB Alt ベンチプレス、TL

・ローテーターカフエンプティカン 2×10

*両手にダンベルを持ち、肩の上に構えて直立する。その姿勢から一気に腰を落とし、両足を前後に広げると同時に片腕を頭上に突き上げる。足の前後と左右の腕の組み合わせを、それぞれ変えて行う

金曜(スキーム1)

・全身スプリット Alt Ft スナッチバランススクープ・アバブ・スプリットAlt Ft スナッチ、TB

・胸ベンチプレス、CLケッグ・ベンチプレス、TLDBプルオーバー、TL

・体幹MBデクライン2-ハンドスロー 3×10

・肩ショルダープレス、TL

・ローテーターカフファンクショナルローテーション 2×12MBオーバーヘッドスロー 2×6

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47January/February 2007•Strength & Conditioning

イクル(筋力サイクルⅢ、表6)を続けて行う。レップ数を減

少させ休息時間を長く取ることで、強度を高めて筋力をピー

クに到達させることができる。スキーム2のレップ数は依然

多く保たれているが、これは、筋サイズと筋力を維持するこ

とに重点を置いているためである。

体幹のトレーニング

体幹のトレーニングには、年間を通じて重点を置くべきで

ある。選手の筋力とパワーの潜在能力を十分に開発するため

には、体幹のトレーニングを特に重視しなければならない。あ

らゆる動作は体幹から始まるか、あるいは体幹を通して連動

しているため、体幹の筋力は極めて重要である(5)。体幹のト

レーニングの結果として起こるパワーの増大は、ジャンプや

スパイクを含む様々な活動に転移する。体幹を強くすること

で、課題を行うために上半身と下半身両方の筋組織を活用す

る能力が高まる(5)。

体幹のトレーニングを、単なる腹部のトレーニングと捉え

ている人は少なくない。腹部のトレーニングが体幹のトレー

ニングの重要な側面であることは確かだが、強い下背部も競

技パフォーマンスにとって重要である(5)。捻り、ジャンプ、

ランニングなどの競技パフォーマンスは、すべて背中に大き

なストレスがかかる。背部のトレーニングが不足していると、

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表8 パワーサイクルⅡ

期日‥5月22日~6月18日

サイクル‥パワーⅡ

目標‥筋パワーとパフォーマンスには正の相関があるため、筋パワーをさらに増大させる

期間‥5週間

強度‥適切なフォームで、各セットの全レップを完了できたら負荷を増やす

ペース‥全身エクササイズはできるだけ爆発的に行う。タイムドリフトは、制限時間内に指定されたレップを完了できるペースで行う

休息‥全身エクササイズのセット間とエクササイズ間は3:00、その他のセット間とエクササイズ間は2:30

セット数/レップ数‥

スキーム1(セット×レップ、@:全レップを設定時間内に行う) スキーム2

5/22~5/28‥ TB=4×3, TL=4×5@6秒(1.2sec/rep) TB=4×6, TL=4×10@12秒(1.2sec/rep)

5/29~6/4‥ TB=4×2, TL=4×3@5秒(1.6sec/rep) TB=4×4, TL=4×8@12秒(1.5sec/rep)

6/5~6/11‥ TB=4×3, TL=4×5@6秒(1.2sec/rep) TB=4×6, TL=4×10@12秒(1.2sec/rep)

6/12~6/18‥ TB=4×2, TL=4×3@5秒(1.6sec/rep) TB=4×4, TL=4×8@12秒(1.5sec/rep)

6/19~6/25‥ TB=4×3, TL=4×5@6秒(1.2sec/rep) TB=4×6, TL=4×10@12秒(1.2sec/rep)

月曜(スキーム1)

・全身スクープ・パワークリーン、TBハング・スクワットクリーン、TB

・下半身スクワット、CLジャンプスクワット、TLサイドランジ、TL

・コア1-ハンド・バー・ツイスト 3×10WTグルートハム 3×8

・ローテーターカフインターナルローテーション 2×12

水曜(スキーム2)

・全身DBパワースナッチ、TBDBハングスプリットAlt Ft Altスナッチ

・下半身カイザースクワット、CL60秒スタビライゼーション

・コアMBアンクルチョップ/ツイスト 3×10WTツイスト・グルートハム 3×8

・胸/肩DB Altベンチプレス、TL

・ローテーターカフエンプティカン 2×12

金曜(スキーム1)

・全身パワージャーク、TBスプリット Alt Ftパワージャーク、TB・胸ベンチプレス、CLベンチプレス、TLDBプルオーバー、TL・コアMBデクライン2-ハンドスロー 3×10・ローテーターカフファンクショナルローテーション 2×12MBオーバーヘッドスロー 2×12

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January/February 2007•Strength & Conditioning48

表9 パワーサイクルⅢ

期日‥6月26日~7月30日

サイクル‥パワーⅢ

目標‥筋パワーとパフォーマンスには正の相関があるため、筋パワーをさらに増大させる

期間‥5週間

強度‥適切なフォームで、各セットの全レップを完了できたら負荷を増やす

ペース‥全身エクササイズはできるだけ爆発的に行う。タイムドリフトは、制限時間内に指定されたレップを完了できるペースで行う。

休息‥全身エクササイズのセット間とエクササイズ間は3:00、他のすべてのセット間とエクササイズ間は2:30

セット数/レップ数‥

スキーム1(セット×レップ、@:全レップを設定時間内に行う) スキーム2

6/26~7/2‥ TB=4×2, TL=4×3@4秒(1.3sec/rep) TB=4×5, TL=4×10@10秒(1sec/rep)

7/3~7/9‥ TB=4×3, TL=4×4@4秒(1sec/rep) TB=4×4, TL=4×8@10秒(1.2sec/rep)

7/10~7/16‥ TB=4×2, TL=4×3@4秒(1.3sec/rep) TB=4×5, TL=4×10@10秒(1sec/rep)

7/17~7/23‥ TB=4×3, TL=4×4@4秒(1sec/rep) TB=4×4, TL=4×8@10秒(1.2sec/rep)

7/24~7/30‥ TB=4×3, TL=4×4@4秒(1sec/rep) TB=4×5, TL=4×10@10秒(1sec/rep)

月曜(スキーム1)

・全身スクープ・パワークリーン、TBハング・スクワットクリーン、TB

・胸ベンチプレス、CLベンチプレス、TLDBプルオーバー、TL

・コアバスドライバー 3×10WTツイスト・バックエクステンション 3×8

・ローテーターカフエクスターナルローテーション 2×10MBオーバーヘッドスロー 2×6

水曜(スキーム2)

・全身DB Altパワースナッチ、TBDBスプリットAlt Ft Altスナッチ、TB

・下半身カイザースクワットケッグ・サイドランジ、TL

・コアMBフォワードスタンド・ツイストスロー 3×10

・胸/肩DB Altベンチプレス、TL

・ローテーターカフエンプティカン 2×10

金曜(スキーム1)

・全身スプリットAlt Ftスナッチバランス、TBスクープ・アバブ・スプリットAlt Ftスナッチ、TB

・下半身スクワット、CLジャンプスクワット、TLケッグ・アーチランジ、TL60秒スタビライゼーション

・コアMBオフセンタースロー 3×10WTバックエクステンション 3×8

・ローテーターカフファンクショナルローテーション 2×10

写真7 バスドライバー(開始姿勢) 写真8 バスドライバー(ボトムポジション)

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49January/February 2007•Strength & Conditioning

運動能力に弱点と欠陥が生じる。やがてそれは、競技パフォ

ーマンスの低下、傷害、痛みにつながる。

残念なことに、体幹をトレーニングするとき、機能的なト

レーニングがしばしば無視され、外見の改善を目的としたプ

ログラムやエクササイズのみが重視されがちである。クロー

ズドキネティックチェーン・エクササイズは、典型的な「シ

ックスパックの腹筋」を作るエクササイズよりも、バランス

とコーディネーションを必要とするためより競技特異的であ

る。筋ではなく動作をトレーニングすることで、機能的な筋

力を発達させることに重点を置かなければならない。実際の

試合は立位姿勢で行うため、体幹のエクササイズの一部は立

位で行うことが重要である。立位での腹部のエクササイズは、

単に体幹を鍛えるだけではなく、身体の安定に関わるその他

のあらゆる筋をトレーニングすることになる(5)。

外見のためのトレーニングは、ゆっくりとコントロールし

て行うべきであるが、スポーツのために行う体幹のエクササ

イズは、素早く、爆発的な動作を伴う。スポーツ動作では、一

般に爆発的、バリスティックで、十分に調整された筋活動が

必要なためである。筋力と外見のためのエクササイズは、大

抵ゆっくりと行われる。一方、パワーエクササイズは、スピ

ードに特異的な適応のために、より高速で行われる(5)。

回旋動作

バレーボールでは、体幹の回旋動作が多い。しかし、多く

のプログラムで回旋トレーニングが疎かにされている傾向が

ある。回旋動作は試合で必要な動作であるため、ウェイトル

ームやプライオメトリック/アジリティトレーニングでも、回

旋動作をトレーニングすることが重要である(8)。バレーボー

ルでの回旋動作として、サーブやスパイクが挙げられる。選

手はこの回旋に備えたトレーニングを行う必要がある。トレ

ーニングで回旋動作を強調することで、初めてその準備が可

能となる。

パワーのためのトレーニング

3つの連続した筋力サイクルの後、パワーサイクルⅠ(表7)

を導入することで、筋力からパワーへと重点が移る。前述し

たように、バレーボールはパワースポーツである。筋力とパ

ワーの間には相関関係があるので、最初に筋力レベルを高め

ることは意味がある。しかし、ここからは、パワーと競技パ

フォーマンスの向上に重点が置かれる。スキーム2は、パワ

ー/持久力を強化する一方、筋肥大も維持するという目的で

計画されている。

筋力からパワーの向上へと重点を移すために、次のような

調整が行われている。

・全身エクササイズが追加されているため、各ワークアウト

で2種目のOSEを行う。前述したように、OSEはパワー発

揮にプラスの影響を与える。

・タイムドリフトが追加されている。タイムドリフトでは、指

定された時間内に、必要なレップ数を完了しなければなら

ない。すなわち、トレーニングの重点が、どれほどの重量

を挙上できるかということから、どれほど速く動作を行う

ことができるかに移っている。

・セット間とエクササイズ間に、確実に回復するよう休息時

間を長くとり、高いレベルのパワーを発揮できる可能性を

高めている。

・ジャンプスクワットが追加されている。ジャンプスクワッ

トがパワーにプラスの影響を与えることは、すでに明らか

にされている。

タイムドリフト

タイムドリフトとは、必要なレップ数を完了するまでの、具

体的な時間が指定されているエクササイズである。選手は、指

定された制限時間内に必要なレップ数を完了できる範囲で、可

能な限り重いウェイトを用いるよう指示される。このプロト

コルでは、どれだけの重さを挙上できるかよりも、どれだけ

速く挙上できるかに重点が移っている。実際のエクササイズ

のスピードは、特に速いとは言えないかもしれない。しかし、

可能な限り速く動かそうとする意識は常に強調される(8)。実

際の動作スピードは、過度に速くはないと思われるので、高

速エクササイズで一般に見られるように、選手がバーやダン

ベルを下ろす際、関節可動域の大部分で速度を遅くするよう

強制されることはない。

パワーサイクルⅡとⅢ(表8、9)でも、引き続きパワーの

向上に重点を置いている。OSEが引き続き強調され、タイム

ドリフトがプロトコルの一部であることも変わりがない。ま

た休息時間は、セット間とエクササイズ間での完全な回復を

意図している。パワーサイクルがⅠ、Ⅱ、そしてⅢへと進む

につれて、全身エクササイズもタイムドリフトも、レップ数

が減少していく。さらに、各レップの完了に与えられる時間

[各タイムドリフトの( )内の数字]も次第に短縮される。タ

イムドリフトを行っている間は、さらに速い動作を行うよう

強く要求する。スキーム2は、筋サイズとパワー/持久力の

維持に引き続き重点を置いている。

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January/February 2007•Strength & Conditioning50

表10 プライオメトリクス

1~2週

火曜(セット×レップ)

1.ボックスジャンプ 3×62.アンクルポップ 3×63.ドロップジャンプto「スティックポジション」* 3×64.ニータック 3×65.シーティッド・ツイスティングスロー 3×6

*スティックポジション…パワーポジション。体重が母趾球にかかり、膝はつま先の上。下背部を真っ直ぐかやや反らし、顔を上げる。ジャンプの着地の際に、スティックポジションで一時停止する

木曜(セット×レップ)

1.ラテラル・ボックスジャンプ 3×62.サイドtoサイド・アンクルホップ 3×63.ラテラル・ドロップジャンプto「スティックポジション」3×64.ラテラル・ニータック 3×65.シーティッド・ツイスティングスロー 3×6

3~4週

火曜(セット×レップ)

1.ステップtoボックスジャンプ 3×72.ピラミッド・ボックスジャンプ* 3×43.バーティカルジャンプ(垂直跳び) 3×74.バックワードシャフルtoバーティカルジャンプ 3×45.ローテーションスロー 3×7

*4台程度の高さの異なるジャンプ用ボックスを、低いものから高いものへと順番に並べて次々飛び乗っていく

木曜(セット×レップ)

1.ステップtoラテラル・ボックスジャンプ 3×72.ラテラル・ピラミッド・ボックスジャンプ 3×43.スライドボード 3×84.オープンステップ/クロスオーバー/バーティカルジャンプ 3×55.シーティッド・ツイスティングスロー 3×8

5~6週

火曜(セット×レップ)

1.ドロップジャンプtoダブル・バーティカルジャンプ 3×82.ドロップジャンプtoダブル・ボックスジャンプ 3×83.バーティカル・ブロックジャンプ 3×84.ステアホップ 3セット*

5.ローテーションスロー 3×8*階段の下から一番上まで上って1セットとする

木曜(セット×レップ)

1.オープンステップ/クロスオーバー/ブロックジャンプ 3×82.ラテラル・ドロップtoラテラル・ボックスジャンプ 3×83.スライドボード 3×84.ラテラルスライド 3×85.ニーリング・ツイスティングスロー 3×8

7~8週:(春季練習)

火曜(セット×レップ)

1.ボックスジャンプ/ドロップジャンプ/ボックスジャンプ 3×62.ボックスジャンプ/ブロックジャンプ 3×63.ドロップジャンプ・オーバーバリア 3×64.ダブルレッグ・ホップ・アップ・ヒル 3×65.アプローチジャンプ 3×4

木曜(セット×レップ)

1.ラテラル・ボックスジャンプ/ドロップジャンプ/ボックスジャンプ 3×62.スライドボード 3×83.ラテラル・ハードルホップto 3ヤード・ラテラルスライド 3×64.ブロックジャンプ/ラテラルスライド/ブロックジャンプ 3×65.ニーリング・ツイスティングスロー 3×5(片側ずつ)

9~10週:(春季練習)

火曜(セット×レップ)

1.ピラミッド・ボックスジャンプ 3×52.ロングジャンプtoブロックジャンプ 3×63.ドロップジャンプ/マックス・ボックスジャンプ 3×64.ステアホップ 3セット5.ローテーションスロー 3×6

木曜(セット×レップ)

1.オープンステップ/クロスオーバー/プラントジャンプ 3×62.ロングジャンプto 3ヤード・ラテラルスライド 3×63.スライドボード 3×84.ラテラル・ピラミッド・ボックスジャンプ 3×55.スタンディング・ツイストスロー 3×6(片側ずつ)

11~12週

火曜(セット×レップ)

1.アプローチ・バーティカルジャンプ 3×82.ドロップジャンプ/ボックスジャンプ 3×83.マックス・ボックスジャンプ 3×84.マックス・バーティカルジャンプ(2回1組) 3×85.オフセンター・ツイストスロー 3×8

木曜(セット×レップ)

1.3ヤード・ラテラルスライドtoブロックジャンプ 3×82.ラテラル・ドロップジャンプ/ボックスジャンプ 3×83.マックス・ラテラル・ボックスジャンプ 3×84.ラットホップtoブロックジャンプ 3×85.スライドボード 3×8

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51January/February 2007•Strength & Conditioning

プライオメトリクス

前述したように、目標がパワーの向上である場合、プライ

オメトリクスも重視される。RTと同様、スポーツ動作との類

似性に基づいて、動作特異的なドリルを選択することが重要

である。それによって、向上した筋力を運動能力に結びつけ

るためにプライオメトリクスを活用できる。トレーニングの

結果、試合中に選手が効果的に動けていれば、そのプログラ

ムは最適なパフォーマンス発揮に効果を上げたと考えられる。

プライオメトリクスは、RTを行わない曜日(火曜と木曜)

に行う。火曜には垂直方向のドリルが強調され、木曜には側

方へのドリルを行うように体系化されている(表10)。RTと

同様、時間の経過とともに、より複雑なドリルが選択されて

いる。

結論

バレーボールは、高速のパワースポーツである。選手はク

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表10の続き

13~14週

火曜(セット×レップ)

1.ドロップジャンプ/ブロックジャンプ 3×82.ロングジャンプ/ブロックジャンプ 3×83.ドロップジャンプ/バリアジャンプ 3×84.アプローチジャンプ 3×85.スピ-ド・ローテーション 3×8

木曜(セット×レップ)

1.3ヤード・ラテラルスライドtoボックスジャンプ 3×82.ロングジャンプtoラテラルスライド 3×83.ラテラル・アップ・ザ・ヒル・スライド 3×84.スライドボード 3×85.MBバックtoバック・パス 3×8

15~16週

火曜(セット×レップ)

1.1ステップtoマックス・ボックスジャンプ 3×82.ブロックジャンプ/オープンステップ/クロスオーバー/ブロック 3×83.バリアジャンプtoブロックジャンプ 3×84.ドロップジャンプ/ブロックジャンプ 3×85.MBフォワードスタンド・ツイストスロー 3×8

木曜(セット×レップ)

1.ラテラルステップtoラテラル・ボックスジャンプ 3×82.ブロックジャンプ/オープンステップ/クロスオーバー/ウォールジャンプ 3×83.ラテラル・バリアジャンプtoバーティカルジャンプ 3×84.ラテラル・ドロップジャンプ/ブロックジャンプ 3×85.MBフォワードスタンド・ツイストスロー 3×8

17~18週

火曜(セット×レップ)

1.リピート・ブロックジャンプ 3×92.ピラミッド・ボックスジャンプ 3×83.ラテラル・ハードルホップ(ハードル1台) 3×84.MBローテーションスロー 3×85.ドロップジャンプtoボックスジャンプ 3×8

木曜(セット×レップ)

1.リピート・ラテラル・ブロックジャンプ 3×82.ラテラル・ピラミッド・ボックスジャンプ 3×83.スライドボード 3×84.MBスタンド・ツイストスロー 3×85.ドロップジャンプtoラテラル・ボックスジャンプ 3×8

19~20週

火曜(セット×レップ)

1.ドロップジャンプtoマックス・ボックスジャンプ 3×82.ボックスジャンプ(ボックス3台) 3×83.アプローチジャンプ 3×84.MBフォワードスタンド・ツイストスロー 3×l05.リピート・ブロックジャンプ 3×9

木曜(セット×レップ)

1.ドロップジャンプ(12インチ)toマックス・ラテラル・ボックスジャンプ 3×82.ラテラル・ボックスジャンプ 3×83.3ヤード・ラテラルスライド toリピート・バーティカル・ブロックジャンプ 3×94.MBオフセンター・ツイストスロー 3×l05.リピート・ラテラル・ブロックジャンプ 3×9

21~22週

火曜(セット×レップ)

1.1-ステップ・アプローチtoマックス・ボックスジャンプ 3×102.バーティカル・アプローチジャンプ 3×103.ボックスジャンプ/ドロップジャンプ/ボックスジャンプ 3×104.MBローテーションスロー 3×105.リピート・ブロックジャンプ 3×9

木曜(セット×レップ)

1.1-ステップ・アプローチtoマックス・ラテラル・ボックスジャンプ 3×102.スライドボード 3×103.ボックスジャンプ/ドロップジャンプ/ラテラル・ボックスジャンプ 3×104.リピート・ラテラル・ボックスジャンプ 3×105.MBスタンディング・オフセンター・ツイストスロー 3×10

Page 15: バレーボールで高度なパフォーマンスを 発揮するた …1)38-52.pdf38 January/February 2007•Strength & Conditioning レベルが高いバレーボールの試合は、身体要求が厳しい。レ

Special Feature Article

January/February 2007•Strength & Conditioning52

イックネスと垂直跳び能力を備え、しかも素早い方向転換が

できなければならない。これらの特性を高いレベルまで向上

させるためには、パワーの改善に重点を置いて作成されたRT

プログラムと、垂直跳び、側方への動作、素早い方向転換の

能力改善を目的に作成されたプライオメトリクスを組み合わ

せた、複合的なトレーニングが必要である。本稿で紹介した

プログラムは、そのような複合プログラムの一例であり、バ

レーボールにおける高度なパフォーマンスの達成を可能にす

るだろう。◆

References1. Black, B. Conditioning for volleyball. 17(6): 53-55. 1995. 2. Cross, T. Rationale and coaching points for Olympic style lifting to enhance

volleyball performance. National Strength and Conditioning Association

Journal. 15(6): 59-61. 1993. 3. Fleck, S. Non-linear periodization: use for sports with long seasons.

Presentation at the National Strength and Conditioning Association's NationalConference July 6-9, 2005.

4. Gadeken, S.B. Off-season strength, power, and plyometric training for KansasState volleyball. Strength and Conditioning Journal. 21(6): 49-55. 1999.

5. Hedrick, A. Training the trunk for improved athletic performance. Strength

and Conditioning Journal. 22(4): 50-61. 2000. 6. Hedrick, A. The vertical jump: a review of the literature and a team case

study. Strength and Conditioning. 18(7): 7-12. 1996.

information

カテゴリーE(実技)講習会スケジュール(2007年)

2005年の資格認定者を対象としたカテゴリーE(実技)講習会を以下の日程で実施します。

日 付  地区・会場(定員) ★スケジュール変更の可能性あり

<2007年>●全12回開催(東北1回、関東4回、北信越1回、東海2回、関西2回、

中四国1回、九州1回)

3 月21日(祝)* 東京・ウイダー・トレーニングラボ(30名)

4 月22日(日) 関西・ウイダー・トレーニングラボ(20名)

5 月 6 日(日)東京・ウイダー・トレーニングラボ(30名)

7 月予定 東海(会場未定)

8 月予定 東京・ウイダー・トレーニングラボ(30名)

9 月予定 北信越(会場未定)

10月予定 東京・ウイダー・トレーニングラボ(30名)

11月予定 東北(会場未定)、東海(会場未定)、関西(会場未定)

12月予定 中四国(会場未定)、九州(会場未定)

NSCA ジャパン 事務局Tel: 03-3452-1684 http://www.nsca-japan.com

Category A, E

CEU0.7~1.0CEU0.7~1.0

●必ず受講しなければならない方:2005年のNSCA認定資格取得者で、

これまでにカテゴリーE講習会を未受講の方。

● 参 加 費:3,150円(税込)

● お申し込み方法:電話にて事務局までご予約ください。開催日の2カ

月前より受け付け開始します。

※ 会場によっては一般受講者も受け付けています。すでに1度受講されている方が再受講した場合のCEU付与は0.7(カテゴリーA)となります。

※ 当日は、NSCAジャパンの会員証、トレーニングウェア、室内用シューズ、昼食をご持参ください。

※それぞれ定員になり次第、締め切ります。※お申し込み後の変更は、開催日2週間前までであれば次回分1回のみ変更が可能です。

※お申し込み後のキャンセルは、開催日2週間前までであれば手数料525円を差し引いて全額返金いたします。開催日13日前以降は返金できません。

※スケジュールは変更の可能性があります。変更の際は、協会誌およびウェブサイトでご案内します。

*3月の開催日程が変更になりました。ご注意ください。

7. Hedrick, A. Designing effective resistance training programs. A practicalexample. Strength and Conditioning Journal. 24(6): 7-15. 2002.

8. Hedrick, A. Manipulating strength and conditioning programs to improve ath-leticism. Strength and Conditioning Journal. 24(4): 71-74. 2002.

9. Piper, T.J. In-season strength/power mesocycle for women's collegiate volley-ball. Strength and Conditioning. 19(4): 21-25. 1997.

10. Powers, M.E. Vertical jump training for volleyball. Strength and

Conditioning. 18(1): 18-23. 1996.

著者紹介

Allen Hedrick:U.S. Air Force Academyのヘッド・ストレングス&コンディショニングコーチ。米国NSCA理事。NSCA機関誌『Strength andConditioning Journal』のCollage Coaches Cornerのコラム編集者を務める。