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インドネシア最新鉱業事情
－ 新鉱業法施行状況他 －
平成23年11月25日
ジャカルタ事務所 次長
高橋健一
（1）鉱業概況
（2）新鉱業法
（3）関連政令の制定状況
（4）関連大臣令の制定状況
（5）鉱物資源高付加価値義務化
(6)その他の懸案事項・課題
(7)まとめ
1
目 次
2 （1）鉱業概況・埋蔵量、鉱山・製錬所
PT. Free Port Indonesia
Grasberg 銅・金山
PT. Newmont Nusa Tenggara
Batu Hijau 銅・金山
PT. Timah
Kundur 錫製錬所
Mentok 錫製錬所
PT. Antam
Pomalaa Ni鉱山・FeNi 製錬所
PT. Inco
Sorowako Ni 鉱山・ﾏｯﾄ製錬所
PT. Smelting
Gresik 銅製錬所
PT. Indonesia Asahan Aluminium
Asahan アルミ製錬所
出典：エネルギー鉱物資源省地質庁資料に加筆
（単位：千ｔ）
鉱種 埋蔵量 世界合計 シェア ランク
錫 800 5,200 15.4% 2
銅 30,000 635,000 4.7% 6
ニッケル 3,900 76,000 5.1% 6出展：Mineral Commodity Summaries 2011
3 （1）鉱業概況・主要鉱山、製錬所生産量
鉱山・企業名 生産物 2008年 2009年 2010年 対前年同期比
増減率
Grasberg 銅・金山 銅精鉱（純分千ｔ） 503 744 603 -19.0%
金（純分ｔ） 36.1 92.8 55.7 -40.0
Batu Hijau 銅・金山 銅精鉱（純分千ｔ） 129 224 245.9 9.8
金（純分ｔ） 8.4 17.4 20.9 20.1
PT. Inco ニッケルマット（純分千ｔ） 72.4 67.3 76.0 12.9
PT. Antam
フェロニッケル（純分千t） 17.6 12.6 18.7 48.4
ニッケル鉱石（マテリアル量千ｔ） 6,572 5,851.3 7,040.5 20.3
Ni品位2％超 4,028 3,249.4 3.617.6 11.3
Ni品位2％以下 2,544 2,601.9 3,422.9 31.6
PT. Timah 錫地金（千t） 49 45.1 40.1 -11.1
（出典：各社年次報告書）
4 （1）鉱業概況・日本への輸出状況
鉱種 2008年 2009年 2010年 対前年比 増減率
2010年 輸入総計
構成比 世界 ランク
銅精鉱(千ｔ） 740.9 983.7 1,173.2 19.3% 5,355.1 21.9% 2
ニッケル鉱石(千ｔ） 2,269.5 2,140.0 2,390.5 11.7% 4,518.7 52.9% 1
ボーキサイト(千ｔ） 756.5 216.8 104.8 -51.7% 1,158.1 9.1% 3
フェロニッケル(t) 852.7 404.8 754.6 86.4% 47,550.4 1.6% 3
銅地金(t) 1,484.7 1,246.3 288.8 -76.8% 45,910.0 0.6% 6
ニッケルマット(千t) 96,4 85.6 92.9 8.5% 110.8 83.9% 1
アルミニウム(千t) 150.7 148.6 148.5 -0.1% 1,716,2 8.7% 6
錫地金(千t) 11.9 13.5 16.3 20.7% 35.3 37.7% 1
（出典：貿易月表（2010.12））
＜2009年1月鉱物石炭鉱業法（以下「新鉱業法」）公布、施行＞
「国家利益の最大化、国民福祉向上」
①鉱業権は鉱業事業許可制度に一本化（国又は地方政府から発給）
②外国投資に活用されてきた鉱業事業契約（Contract of Work: COW)制度は廃止
③鉱業事業許可（IUP）と特別鉱業事業許可（IUPK）に分類。更に、探鉱許可と生産許可の2段階制。
④許可取得可能者はインドネシア法人（内国資本、外国資本の差別無し）又は自然人。ただし、外資法人には、生産開始5年後に国、地方政府、インドネシア民間企業等に一部資本委譲義務 ⇒ 政令により最低２０％
5 （2）新鉱業法
6
⑤IUP取得に入札制導入。IUPKは国営企業等に優先付与
⑥国内での生産物高付加価値化義務（精製・製錬）を新たに追加。既存COWにより生産を行っている者も、5年以内に国内高付加価値化を実施義務
⑦政府に生産量、輸出量をコントロールする権限を付与
⑧国内鉱業サービス会社使用義務
⑨既存COWは契約期限内有効。ただし、1年以内に新法に適合
⑩関連政省令は1年以内に制定
（2）新鉱業法
7 （３）関連政令の制定状況
予定していた４政令が2010年に全て制定済み。
①鉱業事業活動に関する政令（2010年政令第22号）
②鉱業区域に関する政令（2010年政令第23号）
③管理、指導監督に関する政令（2010年政令第55号）
④鉱業後処理に関する政令（2010年政令第78号）
ただし、詳細内容に関しては更に下位のエネルギー鉱物資源大臣令委任
予定していた４政令が2010年に全て制定済み。
①鉱業事業活動に関する政令（2010年政令第22号）
②鉱業区域に関する政令（2010年政令第23号）
③管理、指導監督に関する政令（2010年政令第55号）
④鉱業後処理に関する政令（2010年政令第78号）
ただし、詳細内容に関しては更に下位のエネルギー鉱物資源大臣令委任
8 （４）関連大臣令の制定状況
現在まで４大臣令が制定済み。
①鉱物・石炭鉱業サービス事業の運営（2009年第28号）
②鉱物・石炭の国内需給優先 （2010年第23号）
③鉱物・石炭販売標準価格決定手順 （2010年第17号）
④鉱業事業区域（WUP）の規定手順（2011年第12号）
しかしながら、予定されている半数以上となる、ライセンス関連、IUP保有者の義務、監理・指導監督、鉱業後処理に関する大臣令が未制定 ⇒ 今後、9件の大臣令が制定される予定
9 （４）関連大臣令の制定状況
制定予定の大臣令 ライセンス関連
①入札・保証金に関する詳細規定
②生産IUPに関する詳細規定
③非金属鉱物・岩石に関するIUPに関する詳細規定
④鉱業事業区域（WUP）の決定に関する詳細規定
IUP保有者義務関連
⑤資本移譲に関する詳細規定
⑥鉱物資源高付加価値化に関する詳細規定
⑦鉱業地域の社会・経済開発等に関する詳細規定
監理・指導監督関連
⑧労働者・資本財に関する詳細規定
鉱業後処理関連
⑨鉱業後処理に関する詳細規定 【出典：エネルギー鉱物資源省資料】
10 （5）鉱物資源高付加価値義務化
新鉱業法の鉱物資源高付加価値義務に関する規定 第102条
IUP及びIUPK保有者は、鉱物と石炭の採掘、加工・精錬、利用の実行にあたっては、鉱物・石炭資源の付加価値を高めなければならない。
第103条
(1)生産IUP及び生産IUPK保有者は、採掘物の加工・精錬を国内で行わなければならない。
(2)第(1)項で述べたIUP及びIUPK保有者は、他のIUP及びIUPK保有者に採掘物の加工・精錬を行わさせることができる。
(3)第102条で述べた付加価値の向上及び第(2)項で述べた加工・精錬に関する詳細規定は、別途政府規定にて定められる。
第170条
鉱業事業契約締結者で既に生産を開始している者は、本法律の制定後5年以内に、第103条第(1)項で述べた精錬を行わなければならない。
2010年政令第23号第93条～第96条、第112条に規定 第96条 ⇒ 大臣令に詳細規定を委任
第112条 ⇒ 5年以内での実施を規定
11 （5）鉱物資源高付加価値義務化
現在、エネルギー鉱物資源省のHPでドラフトを公開
同ドラフトでの最低基準の主なものは以下のとおり。
鉱種 国外向け販売の 最低製品基準
銅 製錬プロセス：銅カソード> 99,9% Cu リーチング・プロセス：Cu >99%
ニッケル
製錬プロセス： Ni マット > 70% Ni、FeNi（サプロライト） > 16% Ni、FeNi（リモナイト・混合） > 10% 、ニッケル銑鉄> 6% Ni
リーチング・プロセス： MHP (混合水酸化物) > 25% Ni、MSP (混合硫化物) >45% Ni等
還元プロセス： 海綿FeNi> 4% Ni
ボーキサイト スメルターグレードアルミナ > 99% Al2O3 ケミカルグレードアルミナ > 99% Al2O3等
2014年1月以降、左記基準を満たさないものは輸出禁止 政府は年内制定を目指し、タスクフォースを立ち上げ、現在業界を始めとする関係者と最終調整中
12 （5）鉱物資源高付加価値義務化
高付加価値義務化を取り巻く動向
経済開発加速化・拡充マスタープラン：MP3EI 2011年5月、大統領直接指揮の下、経済開発加速化・拡充マスタープラン（MP3EI：
PERCEPATAN DAN PERLUASAN PEMBANGUNAN EKONOMI INDONESIA）を制定
2011～2025年の長期開発計画の核を成し、2025年までに世界第12位の高所得国（GDP/人：US$13,000以上）入りを目指す戦略的プラン
各産業セクターの共通事項として、高付加価値化、人材開発などのテーマを持つ
国内を6つの回廊に分け、役割・重点産業の位置付けを行い、回廊内及び回廊間の開発を促進
カリマンタン、スラウェシ、パプア・マルク諸島の３回廊では鉱物資源が重点産業
国会の動き 国会第７委員会（エネルギー・鉱物資源・技術・環境等担当）の委員長は、新鉱業法に規定さ
れた目標を達成するために、本政策の実施動向に関し、監視を継続する方針 －政府は、法に規定された2014年までに最大限努力をすべし－
製錬所建設プロジェクト 金属関連では、国営Antamや中国企業などによる製錬所建設プロジェクトが多数計画
13 （5）鉱物資源高付加価値義務化
Sumatera
Corridor
Kalimantan Corridor
Sulawesi Corridor
Java Corridor
Bali - Nusa
Tenggara Corridor
Papua –
Maluku Island Corridors 国家鉱業・ サービス促進
観光ゲートウェイ・ 国家食糧供給
農水産業・ニッケル鉱産物加工センター
天然資源生産加工センター、エネルギー供給基地
鉱物資源生産加工センター、エネルギー供給基地
食糧、漁業、エネルギー、鉱業促進セン
ター
出典：経済調整大臣府資料
MP3EI ６経済回廊・役割
14 （5）鉱物資源高付加価値義務化
主な製錬所建設計画
区分 企業 場所 計画の概要
ニッケル Antam ハルマヘラ FeNi年産能力27千ｔ、投資額US$16億、2014年操業開始
ニッケル Antam Pomalaa・スラウェシ 年産能力120千ｔ、投資額US$4.9億、2014年操業開始
ニッケル Antam Mandiodo・スラウェシ NPI年産能力120千ｔ、投資額US$4億、2014年操業開始 （印Jindal Stainless 、2008年参入、2009年撤退）
ニッケル
PT Barong Baragas Energy、中国・金川集団
スラウェシ南東部 詳細不明
ニッケル PT Billy Indonesia、中国・吉林昊融有色金属集団公司
Kendal・南東スラウェシ州 ニッケル年産10万t規模
ニッケル 露・Solway Group East Halmahera・北マルク州
FeNi年産能力40万ｔ（将来的には80万ｔまで拡張）、投資額US$30億
ニッケル
中国・Risingsun Mining & Mineral 南東スラウェシ州 FeNi生産、2014年建設着手
ニッケル
中国・吉林Jienニッケル 詳細不明 低品位Niマット（Ni15%）年産能力16万ｔ、建設期間３年
ニッケル
中国・Dafeng Port Group Co.Ltd 南カリマンタン州コタバル FeNi生産、投資額2.4憶US$。他150MWの石炭発電プラント建設。
15
区分 企業 場所 計画の概要
銅 PT Nusantara Smelting Bontang・カリマンタン Cuカソード年産能力20万ｔ、2014年操業開始、投資額：700百万US$
銅 PT Grobal Investindo Timika・パプア Cu年産能力40万ｔ
銅 PT Indo Smelting Maros・スラウェシ Cuカソード年産能力10万ｔ
ボーキサイト Antam Mempawah・西カリマンタン
スメルター・グレード・アルミナ生産、投資額10億US$。中国Hangzhou Jinjiang Group（杭州錦江集団）が撤退（2011/7月）
出典：エネルギー鉱物資源省資料及び報道をベースに作成
現在も他の計画が持ち上がってきている状況
（5）鉱物資源高付加価値義務化
16 （6）その他の懸案事項・課題
既存鉱業事業契約（COW）の再交渉 政府による、新鉱業法の内容に適合させるため、過去に締結された鉱業事業契約（COW）条
件に関し、企業側との再交渉が進行中。
COW37件を対象とし、主に、鉱区面積、契約期間、ロイヤルティ、資本移譲、高付加価値化、国内品・サービスの使用義務の６項目の条件変更が内容
政府の発表では、全項目合意が11件、一部合意が21件、全項目未合意が5件（10月時点）。全項目未合意の中には、FCX社のGrasberg銅・金鉱山も含まれる
大統領が10月の改造後内閣に示した7つの重要課題の一つであり、エネルギー・鉱物資源省としても、年内に決着を図りたい意向
ローカル資本化拡大の動き インドネシアへの資本移譲20％を51％とする検討を実施中（鉱業区域に関する政令（2010年
政令第23号）の改正）
探鉱投資の低迷 インドネシア鉱業協会等業界団体は、過去10年間の探鉱投資の年平均額が1千万US$と低迷
しており、将来的な埋蔵鉱石量の減少を指摘。
17 （6）まとめ – 今後の注目される動き
高付加価値化義務大臣令、COWの再交渉など、重要事項の年内の進展
中国企業を中心とした製錬所建設計画
未制定となっている新鉱業法関連の詳細規定の制定の動き・内容
国全体として、鉱物資源分野でのナショナリズム色が強くなる傾向
