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ロームが様々なセンサに使えるAFEを開発、 「トリリオンセンサ構想」が抱える課題を解決へ

ロームが様々なセンサに使えるAFEを開発、 · 様々なセンサに適用できるアナログ・フロント・エンド(AFE)IC White Paper 2 回路ブロックの設定には、ロームが提供するGUIツール「RapidMakerⓇ」を使う。

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ロームが様々なセンサに使えるAFEを開発、

「トリリオンセンサ構想」が抱える課題を解決へ

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様々なセンサに適用できるアナログ・フロント・エンド(AFE)IC White Paper

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はじめに

毎年 1 兆個を上回るセンサを世界中に取り付け、それらで検出したデータを有効活用することで地球規模

の社会問題を解決する・・・。いわゆる「トリリオンセンサ構想」である。現在、世界中のたくさんの企業がこの構

想の実現に向けて、取り組みを強化しているところだ。

AFE の設計難易度は高い

トリリオンセンサ構想を実現するには、様々な電子機器にセンサを搭載する必要がある。スマートフォンやタブ

レット端末、ウエアラブル機器、民生機器や FA 機器、医療機器、電力グリッド機器、自動車などに載せる必

要があるだろう。さらに、データの取得を目的とした IoT(Internet of Things)端末にもセンサを組み込む

必要がある。

ここで問題になるのは、このセンサを電子機器に載せる設計作業である。一般に、センサの出力は微小な

アナログ信号だ。それは圧力センサも、温度センサも、加速度センサも、光センサも、磁気センサも同じだ。従っ

て、いずれのセンサも、出力をそのままマイコンにつなげない。センサの出力をオペアンプなどで増幅し、フィルター

で波形を整えて、A-D 変換器でデジタル信号に変換してからマイコンに送る必要がある。こうした回路を「アナロ

グ・フロント・エンド(AFE)」と呼ぶ。

このアナログ・フロント・エンドの設計は一筋縄ではいかない。搭載するセンサの特性を把握し、それに最適

なアンプ IC やフィルターIC、A-D 変換器 IC などを選択して回路全体の構成を決め、プリント基板のレイアウト

を設計して組み立てて、最後に設計を検証する必要がある。希望する特性が得られなければ、最初から設計

を見直さなければならない。

しかもセンサから出力されるアナログ信号は、その種類で異なる。電圧振幅が違えば、周波数特性や雑音

特性、出力インピーダンスなども違う。センサによっては、アナログ電圧出力ではなく、アナログ電流出力のものも

ある。AFE の設計者は、こうした出力特性を十二分に把握する必要がある。設計難易度は非常に高い。

問題は、設計難易度だけではない。そもそも AFE を設計できるアナログ回路設計者が社内にいないという

企業も少なくない。電子機器のデジタル化に伴い、アナログ回路設計者が業界で激減しているからだ。

1 つの IC で様々なセンサに対応

こうした問題を解決しなくては、トリリオンセンサ構想はいずれ暗礁へと乗り上げてしまうだろう。そこでロームは、

この問題の解決策として、様々なセンサに適用できるアナログ・フロント・エンド(AFE)IC「センサ AFE

FlexiblePlatformⓇ」を開発した。IC の型番は「BD40002TL」である。

この IC は、計装アンプやオペアンプ、A-D/D-A 変換器、コンパレータなどのアナログ回路ブロックに加えて、測

定結果の平均化処理や温度補正といった数値演算を受け持つマイコンや FPGA などのデジタル回路ブロック

を集積したもの。使用するセンサに合わせて、アナログ回路ブロックの組み合わせを自由に選択できる。つまり、

電圧振幅や周波数特性、雑音特性、出力インピーダンスなどの特性が違うセンサでも、この IC 一つで対応で

きる。例えば、出力電圧の振幅は 0〜+5V に対応する。ただし、対応するセンサはアナログ電圧出力品に限

られる。アナログ電流出力品には使えないため、IC 外部で電流電圧変換して接続する必要がある。

今回の IC を採用した際に得られる最大の効果は、開発期間の短縮にある。アナログ回路ブロックやデジタル

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回路ブロックの設定には、ロームが提供する GUI ツール「RapidMakerⓇ」を使う。この IC と GUI ツールを使

えば、ディスクリート部品を使って構成した場合よりも、開発期間を大幅に短縮することができる。

このほか実装面積の大幅な削減も可能だ。ディスクリート部品を使う場合に比べて、実装面積も大きく減ら

せる。また、コストについては、単純に部品コストだけで比べれば増えてしまうが、設計コストや人件費などを考

慮すれば、非常に大きなメリットを提供できる。

最大の違いは、アナログ性能の高さ

プログラマブルなアナログ回路ブロックやデジタル回路ブロックを集積したセンサ AFE と称する IC は、これまで

も競合する半導体ベンダーから製品化されている。まったく新しい概念の IC ではない。こうした競合品と比較し

た際のメリットは何なのか。それは、そもそもアナログ回路ブロックの特性がまったく異なり、開発した IC のアナログ

特性が、各ブロックとも極めて高い点である。さらに、デジタル回路ブロックについても、フラッシュマイコンや FPGA、

DSP などを集積しており、競合品と遜色ないレベルにある(図 1)。

図 1. プログラマブルなアナログ・デジタル回路ブロック

搭載した主なアナログ回路ブロックとその性能は以下の通りだ。3 つのオペアンプで構成する計装アンプを集積

した。入力信号帯域幅は 1MHz で、入力換算雑音電圧密度は 14nV/√Hz と低い。低雑音アンプは、出

力雑音が 25μV で入力換算雑音電圧密度が 14nV/√Hz。高速アンプも搭載しており、入力信号帯域幅

は 150MHz。A-D 変換器は 2 つ搭載した。1 つは、高精度用途に向けた最大 48k サンプル/秒の ΔΣ(デ

ルタシグマ)型 16 ビット A-D 変換器。もう 1 つは、高速用途に向けた最大 1M サンプル/秒の逐次比較

(SAR)型 12 ビット A-D 変換器である。このほか、12 ビット D-A 変換器や 8 ビット D-A 変換器、コンパ

レータ、バンドギャップ基準電圧源、温度センサ、5V 入力/2.5V 出力電源なども搭載した。

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デジタル回路ブロックは、英 Arm 社の Cortex-M0 コア、FPGA、24 ビット固定小数点 DSP、36K バイト

のフラッシュメモリー、12K バイト RAM、除算器、PWM 発生器、24MHz 出力の Si 発振器、

100kHz/33kHz 出力の Si 発振器、各種の入出力インターフェースなどを搭載した。インターフェースの中に

は、自動車に搭載されるセンサから ECU への通信に用いられる SENT も選択することができる。

セミカスタム化にも対応へ

どのようなセンサーシステムを構成できるのか。具体例を 1 つ挙げよう。渦電流式変位センサを使って距離を

測定するシステムである。渦電流式変位センサとは、コイルに高周波電流を供給して、高周波磁界を発生さ

せる。この磁界の中に金属の被測定物が入ると、その表面に渦電流が流れ、その結果としてコイルのインピーダ

ンスが変化する。この変化を検出して距離を測定する。

図 2 は、設計したセンサーシステムである。高周波電流による駆動(送波部)は、12 ビット D-A 変換器と

高速アンプを使うことで 100kHz 超の周波数での駆動を可能にした。渦電流式変位センサの出力は、計装ア

ンプで受信し、その後に SAR 型の 12 ビット A-D 変換器でデジタル信号に変換する。さらに内蔵した温度セン

サを使い、測定結果に対して温度補正を掛ける処理も盛り込んだ。

図 2. 渦電流式変位センサの場合

この設計で注目すべきは、パソコンから即座に構成・設定を変更でき、実機確認ができる点にある。実際に

センサをつなげば、その場で AFE の仕様を確定できる。従って、設計に問題点があれば、すぐに再検討を始め

られる(図 3)。その結果、設計に費やす期間を大幅に短縮できるわけだ。

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図 3. 開発効率が向上

※従来の場合は、設計時に手戻りが発生するため、設計期間は短くても 1 年程度かかっていた。一方、開発した IC を使えば、パ

ソコンから即座に構成・設定を変更でき、実機確認ができるため手戻りはほぼ発生しない。開発期間は半年程度に抑えられる。

今回開発した「BD40002TL」は、多くのアナログ/デジタル回路ブロックを搭載しているため、用途によっては

使用しない回路ブロックが多く出てくる可能性がある。そうした場合については、購入数量にも依存するが、セミ

カスタム IC での対応を開始している。今後さらにブラッシュアップを重ねることで標準品として市場に投入する予

定である。

(2019 年 1 月 9 日 電波新聞 新年電子部品総合特集 掲載)

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本資料に記載されている内容はロームの製品(以下 「ローム製品」 といいます)のご紹介を目的としています。 ローム製品のご使用にあたりましては、 別途最新の仕様書およびデータシートを必ずご確認ください。 本資料に記載されております情報は、 何ら保証なく提供されるものです。 万が一、 当該情報の誤りまたは使用に起因する損害がお客様または第三者に生じた場合においても、 ロームは一切の責任を負うものではありません。 本資料に記載されておりますローム製品に関する代表的動作および応用回路例は、 一例を示したものであり、 これらに関する第三者の知的財産権およびその他の権利について権利侵害がないことを保証するものではありません。 上記技術情報の使用に起因して紛争が発生した場合、 ロームはその責任を負うものではありません。 ロームは、 ロームまたは他社の知的財産権その他のあらゆる権利について明示的にも黙示的にも、 その実施または利用を許諾するものではありません。 本資料に記載されております製品および技術のうち、「外国為替及び外国貿易法」 その他の輸出規制に該当する製品または技術を輸出する場合、 または国外に提供する場合には、 同法に基づく許可が必要です。 本資料の記載内容は 2019年 1月 現在のものであり、 予告なく変更することがあります。

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