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自然数の総和 ラマヌジャン

ラマヌジャン と 自然数の総和...ラマヌジャン総和法は、級数の部分和に対するオイラー=マクローリンの公式の定数項だけを 分離する方法である。函数

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自然数の総和

ラマヌジャン と

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"Dear Sir, I am very much gratified on perusing your letter of the 8th February 1913. I was expecting a reply from you similar to the one which a Mathematics Professor at London wrote asking me to study carefully Bromwich's Infinite Series and not fall into the pitfalls of divergent series. … I told him that the sum of an infinite number of terms of the series: 1 + 2 + 3 + 4 + … = −1/12 under my theory. If I tell you this you will at once point out to me the lunatic asylum as my goal. I dilate on this simply to convince you that you will not be able to follow my methods of proof if I indicate the lines on which I proceed in a single letter. …"

やあ先生、1913年2月8日付の手紙を熟読してすごく満足したよ。僕は、ロンドンのどこかの数学教授と同じように先生も「ブロムウィッチの『無限級数』を用心深く学んで、発散級数の落とし穴に嵌らないようにしなさい」なんて返事すると思ってたんだ。……無限個の項を持つ数列の和:1 + 2 + 3 + 4 + … が僕の理論では −1/12 になると言ったときのように。こんなことを僕が言い出したら、先生はすぐ僕に精神病院送りになるぞと忠告するだろう。僕がこれを書くのは単に、一通の手紙に書けるだけの証明では先生が僕の方法を追えないかもしれないってことを、先生に納得してもらうためです。…

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経験に基づいた証明

無限級数、特に発散級数を有限和と同様のものであるかのように扱うことは危険である 例えば発散級数に対してその任意の位置に無数の 0 を挿入することでさえ、自己矛盾した結果を導き得る

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両辺を −3 で割れば、ζ(−1) = −1/12 を得る

ラマヌジャン総和法は、級数の部分和に対するオイラー=マクローリンの公式の定数項だけを分離する方法である。函数 f に対して、級数 の古典ラマヌジャン和 (classical Ramanujan sum) は

で定義される。ここで f (2k−1) は f の (2k − 1)-階導函数で B2k は 2k-番目のベルヌーイ数である (B2 = 1/6, B4 = −1/30 …) f(x) = x とすれば f の一階導函数が f (1) = 1 で残りはすべて消えるから、

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の経験的な証明

(1−1+1−1+…)2 = 1−2+3−4+…, 1−1+1−1+… = 1/2 であることを利用して 1−2+3−4+… = 1/4 を証明する 1−1+1−1+… は公式

この式の両辺を x で微分して −1 をかけると、

さらに、x = 1とすると、上式が得られる

Q.E.D.

現代的な証明は、ディリクレのイータ関数から

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は、 に置き換え正規化

リーマンゼータ ζ(s) のグラフ s > 1 で級数は収斂し ζ(s) > 1 であることがわかる 極 s = 1 の周りでの解析接続によって負の領域まで延長すれば ζ(−1) = −1/12 などの場合も含まれる

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数の不思議

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数の不思議

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おまけ

ラマヌジャンのタクシー数

1729 = 12^3 + 1^3 = 10^3 + 9^3

ラマヌジャンの逸話として有名なものの一つに次のものがある。

1918年2月ごろ、ラマヌジャンは療養所に入っており、見舞いに来たハーディは次のようなことを言った。 「乗ってきたタクシーのナンバーは1729だった。さして特徴のない数字だったよ」 これを聞いたラマヌジャンは、すぐさま次のように言った。 「そんなことはありません。とても興味深い数字です。 それは2通りの2つの立方数の和で表せる最小の数です」

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ラマヌジャンの τ 関数

ラマヌジャンは、現在ラマヌジャンのデルタと呼ばれている次の保型形式を計算した

彼は x のべきの係数τ(n)が乗法的な関数であることを見抜き、

を考えて、そのオイラー積表示を与えた

τ(n)

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ライプニッツの公式

※ 4とπに秘密の関係

4 = (実数世界での円の長さ) x (2進整数の世界での円の長さ) x

(3進整数の世界での円の長さ) x (5進整数の世界での円の長さ) x

(7進整数の世界での円の長さ) x . . . .    素数の世界とつながっている

なぜかというと、 オイラー積の形に変形すると...

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この式の右辺は   (1+1/3)^-1(1-1/5)^-1(1+1/7)^-1(1+1/11)^-1(1-1/13)^-1・・・

と書き直すことができる. すなわち,4で割って3余る素数のところに   (1+1/p)^-1 4で割って1余る素数のところに    (1-1/p)^-1 とおくと,   4=2π・1/2・(1+1/3)(1-1/5)(1+1/7)(1+1/11)(1-1/13)・・・

ライプニッツ級数のオイラー積を求める

円周率を素数たちが生み出している

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∞ 調和級数

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調和級数は発散する

積分判定法

Improper integral (広義積分)

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調和数列の有限和

nが大きくなると、nの自然対数との誤差が一定値に近くなる nが1000なら、In 999 = 6.906754779だから、H999 ≒ 7.48

(オイラー定数)

= 0.57721. . . . .

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等比数列の和

r を 1 と異なる定数とするとき

Q.E.D

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等比数列の和

Q.E.D

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等比数列の公式から

Q.E.D

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ちょっと、おまけ

フィボナッチ螺旋

対数螺旋、等角螺旋logarithmic spiral

Fibonacci spiral

対数螺旋とフィボナッチ螺旋を混同していることが少なくない

黄金比(1+√5)/2

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p進数の世界素数 p=2のとき

2, 4, 8, 12, . . . 2^n. . . という数列は 0 に近づいていく

また、ちょっと、おまけ

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p進数

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p進数は,2進数,3進数,5進数,…と素数ごとに決まる数の概念である。素数pをひとつとると,正の整数は必ず0以上p -1以下の整数からなる有限列a0,a1,…,aNを用いてa0+a1p+a2p2+…+aNpNと書ける(p進法表示)

この和が無限に続いているものも考え,さらに有限個のpの負冪も許して得られる数,

a-Mp-M+a-M+1p-M+1+…+a0+a1p+a2p2+…+anpn+…. がp進数である。

p進数ではNが大きいほどpNは「小さい」とみなして上の無限和を正当化する.

(p進数は,1変数代数関数の冪級数展開の類似として1897年K. Henselにより導入され,有理数係数のn次方程式やその解で定義される代数体の判別式研究に応用された. その後2次形式論や類体論などに応用され,現在では数論のひじょうに多くの分野において用いられているきわめて基礎的で不可欠な概念である)

p進数では極限操作が許されるため逐次近似が可能で,有理数よりも方程式の扱いがはるかにやさしくなる.

方程式の有理数解の存在の問題が,p進数と実数での解の存在の問題に完全に帰着できるとき,ハッセ原理が成り立つといい,2次形式の零点についてはこの原理が成り立つ. しかし例えば、平面上の滑らかな3次曲線では成り立たない。この成り立たなさの様子は,楕円曲線に伴うテイト・シャファレビッチ群とよばれる群と関係し,この群は数論における興味深い研究対象のひとつとなっている。クレイ数学研究所による懸賞金がかけられた問題のひとつBSD予想にもこの群が関係する.

有理数体の絶対ガロア群(有理数係数のすべての代数方程式を統制するような巨大な群)が作用するp進数係数の線形空間はp進ガロア表現とよばれ,数論的対象をそれに伴うp進ガロア表現を通して研究することがしばしばある。たとえばフェルマー予想の証明は,最終的に楕円曲線に伴うp進Tate加群とよばれるp進ガロア表現の研究に帰着された. p進ガロア表現の素数pでの分岐の様子はとくに複雑で,その構造の解明にはp進数の概念だけでは不十分であり,p進数をさらに拡張した数の概念を用いて研究されている.

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