9
International Organization for Standardization BIBC II, Chemin de Blandonnet 8 , CP 401, 1214 Vernier, Geneva , Switzerland Tel: +41 22 749 01 11, Web: www.iso.org ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ 本誌の目的 ISO 90012015でのプロセスアプローチを説明することが本誌の目的である。プロセスアプロ ーチは、種類、規模もしくは複雑さに関係なく、いかなる組織にも、そしていかなる品質マ ネジメントシステムにも適用できる。 プロセスアプローチとは何か? すべての組織は、その目的を果たすためにプロセスを利用している。 プロセスは: 意図された結果を産出するためにインプットを使用する相互に関連し、あるい は相互に作用する活動の組み合わせである。 NOTE注記: インプットおよびアウトプットは、有形で可視できるものであることも、 (たとえば、材料、部品、あるいは機器)、あるいは可視できないものもある(たと えば、データ、情報、あるいは知識)。 プロセスアプローチは、統合し完全なシステムとして運用するための組織のプロセス を構築することを含む。 マネジメントシステムは、目的を達成するためにプロセスと対策を集約する。 プロセスは、意図されたアウトプットを産出するために相互に関連した活動と チェック機能を明らかにする。 詳細な計画策定と管理は、組織のコンテキストに依存しながら、必要に応じて 明確にされ文書化される。 リスクベースの考え方、PDCA、そしてプロセスアプローチ ISO/TC 176/SC 2/N1274 www.iso.org/tc176/sc02/public

ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ“れらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成してい る。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによっ

  • Upload
    dinhtu

  • View
    217

  • Download
    1

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ“れらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成してい る。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによっ

International Organization for Standardization BIBC II, Chemin de Blandonnet 8 , CP 401, 1214 Vernier, Geneva , Switzerland Tel: +41 22 749 01 11, Web: www.iso.org

ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ

本誌の目的

ISO 90012015でのプロセスアプローチを説明することが本誌の目的である。プロセスアプローチは、種類、規模もしくは複雑さに関係なく、いかなる組織にも、そしていかなる品質マネジメントシステムにも適用できる。

プロセスアプローチとは何か?

すべての組織は、その目的を果たすためにプロセスを利用している。

プロセスは:

• 意図された結果を産出するためにインプットを使用する相互に関連し、あるいは相互に作用する活動の組み合わせである。

NOTE注記: インプットおよびアウトプットは、有形で可視できるものであることも、(たとえば、材料、部品、あるいは機器)、あるいは可視できないものもある(たとえば、データ、情報、あるいは知識)。

プロセスアプローチは、統合し完全なシステムとして運用するための組織のプロセスを構築することを含む。

• マネジメントシステムは、目的を達成するためにプロセスと対策を集約する。 • プロセスは、意図されたアウトプットを産出するために相互に関連した活動とチェック機能を明らかにする。

• 詳細な計画策定と管理は、組織のコンテキストに依存しながら、必要に応じて明確にされ文書化される。

リスクベースの考え方、PDCA、そしてプロセスアプローチ

ISO/TC 176/SC 2/N1274 www.iso.org/tc176/sc02/public

Page 2: ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ“れらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成してい る。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによっ

これらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成している。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによって対処されねばならない。リスクベースの考え方は、次のために、プロセスアプローチを通じて利用されている:

• プロセスのアウトプットを改善し、望ましくない結果を防止するためのプロセスを確立する際に、リスク(正と負)をいかにして対処するかを決める、

• (リスクに基づいて)プロセスの計画策定と管理の程度・範囲を明確にする、 • 品質マネジメントシステムの有効さを向上する、 • 本質的にリスクに対処し、目標を満たすシステムを維持し管理する。

PDCA は、プロセスとシステムを管理するために利用できるツールである。PDCAは、次のことを表す:

P Plan: 結果(”行わねばならないことは何か”、そして”それをいかにして行うか”)を産出するためのシステムとプロセスの目的を設定すること、

D Do: 計画されたことを実践し管理すること、

C Check:プロセス、方針、目標および要求に対する結果をモニターし測定すること、および結果を報告すること、

A Act: プロセスのパーフォマンスを向上するために活動を実行すること。

PDCA は、各々の段階でリスクベースと考え方を取り入れて、継続的改善のサイクルとして運用する。

可能性のある利点は何か?

• より重要な(”ハイ・リスク”)プロセスとそのアウトプットに焦点を当てる

• 相互に依存するプロセスをよりよく理解し、明確にし、統合できる • プロセスの計画策定、実践、チェック、改善を体系的にマネジメントし、全体としてのマネジメントシステム(を構築・運用できる)

• 資源の利用をより良好に行い、説明責任を高められる • 方針、目的、意図された結果および全体的なパーフォマンスをより以上に一貫して達成する

• プロセスアプローチは、いかなるマネジメントシステムの実践を可能にさせることができる

• 顧客の要求事項を満たすことにより顧客満足を高められる • 組織内の信頼感を高めることができる。

ISO9001:2015でのプロセスアプローチで使われている実務的なステップは、付属書A

で説明されている。

ISO/TC 176/SC 2/N1274 www.iso.org/tc176/sc02/public

Page 3: ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ“れらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成してい る。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによっ

その他の有益な文書

ISO 9001:2015 プロセスアプローチ ー パワーポイントプレゼンテーション

ISO/TC 176/SC 2/N1274 www.iso.org/tc176/sc02/public

Page 4: ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ“れらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成してい る。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによっ

付属書 A

ISO 9001:2015のプロセスアプローチ

ISO9001の要求事項に一致させて、 以下の一連の活動は、品質マネジメントシステムのプロセスを構築し管理することを組織が選択することができる方法の事例を提示している。パーフォマンスは、 Plan-Do-Check-Act (PDCA) サイクルを適用することにより管理し改善される。これは、システム全体にも、個別のプロセスにも、また業務運用活動にも適用できる。

プロセスアプローチのステップ

何を行うのか? ガイダンス

PLAN

組織のコンテキストの明確化

組織は、組織の責任、関連する利害関係者、また組織の意図した目的を定めるために利害関係者に関連する要求事項、ニーズと期待を明らかにしなければならない。

関連する利害関係者の関連する要求事項、ニーズと期待を充たすために組織の外部的および内部的な責任を収集し、分析し、決めなければならない。要求事項、ニーズと期待を継続的に理解すること確実にするために頻繁にモニターしコミュニケーションを行うこと。

組織の適用範囲、目的と方針を明確に定める

要求事項、ニーズと期待の分析に基づいて、組織の品質マネジメントシステムに適切な適用範囲、目的および方針を定めること

組織は、内部的および外部的なコンテキストと利害関係者の要求事項を考慮に入れて、マネジメントシステムの適用範囲、境界および適用性を明確にしなければならない。組織が対応しなければならない市場を決定すること。その上で、トップマネジメントは望ましい成果に関する目標と方針を策定しなければならない。

ISO/TC 176/SC 2/N1274 www.iso.org/tc176/sc02/public

Page 5: ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ“れらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成してい る。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによっ

組織内でのプロセスを決める

目標と方針を達成し、意図されたアウトプットを産出するために必要な

プロセスを明らかに決める

マネジメントは、意図されたアウトプットを達成するために必要なプロセスを決めなければならない。これらのプロセスには、マネジメント、資源、運用、測定、分析および改善が含まれる。

プロセスの流れを決める

プロセスがどのような順序で流れ、相互に関係しているかを決める。

プロセスのネットワークと相互作用を記述する。次のことを考慮する:

• 個々のプロセスのインプットとアウトプット(内部的もしくは外部的なものであり得る)

• プロセスが依存し、あるいは使えるように相互作用と接点

• 流れの有効さと効率の最適化

• プロセスの相互作用の有効さに対するリスク

注記: 事例として、実現化プロセス(顧客に納入する製品またはサービスを提供するために必要なプロセスのような)は他のプロセス(マネジメント、測定、資源の提供に於ける調達のような)と相互に作用する。

プロセスの流れおよび相互作用は、モデリンング、図表、マトリックスおよびフローチャートのようなツールを使用して作成されるかもしれない。

ISO/TC 176/SC 2/N1274 www.iso.org/tc176/sc02/public

Page 6: ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ“れらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成してい る。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによっ

プロセスの所有者であること、もしくは報告義務のある人々、もしくは委託権限を明らかにする

個々のプロセスに対しての責任と権限を任命する

トップマネジメントには、所有者、報告義務、個々人の役割、責任、共同作業者、委託権限、承認権限を組織化し明確にすることが望まれ、個々のプロセスとその相互作用を効果のある明確化、実践、維持管理および改善するために求められる力量を確保することが望まれる。そのような個人、もしくは委託権限は通常プロセスオーナーに与えられる。

プロセスの相互作用を管理するためには、すべてのプロセスを横断的に見渡すことを行い、そして相互に作用するプロセスと部門から代表者から構成されるマネジメントシステムチームを立ち上げることも役立つかもしれない。

文書化された情報の必要性を明らかにする

正式に明確化しなければならないプロセスを決めて、それらをいかにして文書化するのかを決定する

プロセスは、組織の中に存在する。それらは公式であるか、あるいは非公式であるかもしれない。正式に明確に定めなければならにプロセスの目録またはリストはない。組織は、リスクベースの考え方に基づいていずれのプロセスが文書化されなければならないかを決定しなければならない。この決定には、たとえば、以下のことが含まれる: • 組織の規模と活動の種類 • プロセスとその相互作用の複雑さ • プロセスの緊急度 • パーフォマンスの公式の報告義務の必要性

プロセスは、図形とシステム図を含めて、図式表現、ユーザーの物語、記述された説明書、チェックリスト、フローチャート、視覚媒体または電子方法のようないくつかの方法を使用して正式に文書化することができる。しかしながら、選択される手段や技術は、目的ではない。目的を果たすための手段としてプロセスを記述するのにこれらを使うことができる。効果的に構成されたプロセスは、一貫して責任のある業務運用および望ましい目的および結果を産出させることができる。しかも、目的と結果を向上させることもできる。

注記: さらなる指針として、ISO9000 導入と支援パッケージモジュールのISO9001:2015の文書化された情報に関するガイドラインを参照のこと。

ISO/TC 176/SC 2/N1274 www.iso.org/tc176/sc02/public

Page 7: ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ“れらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成してい る。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによっ

プロセス内の接点、リスクと活動を明確にする

プロセスの意図されたアウトプットを達成し、意図されないアウトプットに対応するために必要となる活動を決定しなければならない。

求められるプロセスのアウトプットとインプットを明らかにする。

製品とサービスの適合性へのリスク、および意図されないアウトプットが産出された場合の顧客満足へのリスクを明確にする。

インプットを望ましいアウトプットに変換するために必要な活動、測定および本質的な管理を決めること。

プロセス内での活動の流れと相互作用を決定し定める。

個々の活動がどのように実行されるかを決定する。

マネジメントシステムが全体として組織と利用者に対する重大なリスクに対処していることを確実にすること。

注記: ある場合、顧客はアウチプットのみならずプロセスの実現に関する要求事項を指定するかもしれない。

要求事項のモニタリングと測定の明確化

モニタリングと測定をどこでどのように利用するかを決める。これは、プロセスの管理と意図されたプロセスの結果の改善の両方に対して行われなくはならない。

結果の記録に関する必要性を明らかにする。

プロセスとシステムの有効さと効率を確実にするために必要となる妥当性確認を明確にする。次のような要因を考慮する:Take into account such factors as:

• モニタリングと測定の基準 • パーフォマンスのレビュー • 利害関係者の満足 • 供給者のパーフォマンス • 時間どうりの納品とリードタイム • 障害とムダ • プロセスコスト • 事故の頻度 • 要求事項への適合性に関するその他の対応

DO

実施する 計画された活動と結果を達成するために必要な処置を実施する

組織は、計画された結果を達成するために必要となる定められたプロセスおよび手順(自動化されることもある)、アウトソーシングおよびその他の手段を実行し、モニタリングし、測定し、管理しなければならない。

ISO/TC 176/SC 2/N1274 www.iso.org/tc176/sc02/public

Page 8: ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ“れらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成してい る。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによっ

必要な資源を明らかにする

個々のプロセスの効果的な運用のために必要となる資源を決定する

資源の事例には次のものが含まれる:

• 人的資源 • インフラストラクチャ • 環境 • 情報 • 自然の資源 (知識も含む). • 原材料 • 財務的な資源

CHECK

計画された目標に対してプロセスを検証する

プロセスが効果的であること、およびプロセスの特性が組織の目的に一致していることを確認する

組織は、すべての要求事項が満たされていることを検証するために目標に対してアウトプットを比較するしなければならない。

プロセスには、データを収集することが求められる。事例には、測定、モニタリング、レビュー、監査およびパーフォマンス分析が含まれる。

ACT

ISO/TC 176/SC 2/N1274 www.iso.org/tc176/sc02/public

Page 9: ISO 9001:2015でのプロセスアプローチ“れらの三つの概念は、お互いにISO 9001:2015のなくてはならない部分を形成してい る。目的と結果に影響を及ぼすかもしれないリスクは、マネジメントシステムによっ

改善 プロセスが意図された結果を絶えることなく産出することを確実にするためにプロセスを変更する

プロセスの有効性改善を確実のするための調査結果に対して処置を実行する (注記: 組織は、プロセスの効率も改善したいと望むかもしれないが、それを行うことはISO9001の要求事項ではない。)(訳者注:プロセスの効率改善はISO9004で取り扱われる)

プロセスの障害に基づいた是正処置には、問題の根本的原因の明確化と除去を含めるべきである。”システムシンキング” では、一つのプロセスでの出来事は、依存しているプロセスの中に原因があるか、あるいは他のプロセスに影響を与えることとして認識されている。原因と影響は、必ずしも同じプロセスには存在しない。

問題解決と改善法は典型的に次の重要なステップに従って行われる:

• 問題もしくは目的を明確にする • 問題とそれに関わるプロセスについてのデータを収集し分析する

• 好適な解決策を選択し実行する • 解決策の効果を評価する

解決策を通常業務に組み入れる。

計画されたプロセス結果が達成され、要求事項が充足されている場合にあっても、組織は、プロセスのパーフォマンス、顧客満足および評判を改善することを追求しなければならない。たとえば、継続的な小さな改善ステップ(改善)、現状打破の改善、もしくは革新によってこれを達成することが可能となる。

ISO/TC 176/SC 2/N1274 www.iso.org/tc176/sc02/public