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和音に関して保育科学生が起こし易い間違い 和音に関して保育科学生が起こし易い間違い 黒瀬久了一 1. はしがき 保育科学生222名に対して第1学年の最後の授業時間または第2学年の最初の授業時間にお いてハ長調・卜長調・二長調・へ長調および変ロ長調の5つの調それぞれの音階・調号・主 要三和音(1・W・V>・属七和音および移調に関して行った基礎的なテストの結果から. 音 階と調号に関する解答の間違いを取りだし. それらの間違いに関する分析結果を先に報告し だ}. 同じ資料を用いて引き続き和音の間違いに関する分析を行い次のような結果を得た: (1間違いはケースバイケースで変化に富むがt47の型にまとめられる. {2〕複数の和音に対する 間違いが見られる各学生では. 同じ種類の和音または同じ調の異なる和音に対して1判じ型の間 違いをする傾向が強い{3)和音の基礎として音階および調号が不可欠であるが. 和音に関する 間違いの大部分はそれら以外、特に楽譜としての基礎的な事項についての間違いによる. (4湘 音そのものに関する理解に起因すると考えられる間違いは同じ学生では主にV7と次いでV に集中して見られた. すなわち遮音に対する解答の間違いはそれぞれの学生によって異なる 1つか2つの勘違い特に楽譜としての最も基礎的な事項に関する不注意と和音に関する理解 に厳密さを欠くためである. したがってそれぞれの点に対して指導すれば大幅の向上が望ま れることが分かったのでその実態に関して報告する. 2. 材料および方法 資料の収集方法は前出に記したのて省略する. 5つの調のそれぞれに4種類の和音すなわち延べ20の和音に対し. 平成4年度入学塩では 105名中21名が全問正解22名は無解答12名は正解または無解答で間違いを含まなかった. 平成5年度入学生では117名中このような人数はそれぞれ31名. 4名および18名であった. こ れらの学生はこの分析の対象に含まれない. 全問無解答であった学生と間違いを含まないが 大部分の設問に対して解答をしなかった学生の数は無視できない. このような(間違いを含ま ない)学生が解答をしなかった理由の迫求は重大な問題であるがその手がかりはテストの結 果には見られなかった. ほとんど理解できなかった学生は解答をしないか、理解が不完全な学 生が解答をしそれが間違っていたとすれば本報における結果は限定された階層の学生に 93

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和音に関して保育科学生が起こし易い間違い

和音に関して保育科学生が起こし易い間違い

黒瀬久了一

1. はしがき

保育科学生222名に対して第1学年の最後の授業時間または第2学年の最初の授業時間にお

いてハ長調・卜長調・二長調・へ長調および変ロ長調の5つの調それぞれの音階・調号・主

要三和音(1・W・V>・属七和音および移調に関して行った基礎的なテストの結果から. 音

階と調号に関する解答の間違いを取りだし. それらの間違いに関する分析結果を先に報告し

だ}. 同じ資料を用いて引き続き和音の間違いに関する分析を行い次のような結果を得た:

(1間違いはケースバイケースで変化に富むがt47の型にまとめられる. {2〕複数の和音に対する

間違いが見られる各学生では. 同じ種類の和音または同じ調の異なる和音に対して1判じ型の間

違いをする傾向が強い{3)和音の基礎として音階および調号が不可欠であるが. 和音に関する

間違いの大部分はそれら以外、特に楽譜としての基礎的な事項についての間違いによる. (4湘

音そのものに関する理解に起因すると考えられる間違いは同じ学生では主にV7と次いでV

に集中して見られた. すなわち遮音に対する解答の間違いはそれぞれの学生によって異なる

1つか2つの勘違い特に楽譜としての最も基礎的な事項に関する不注意と和音に関する理解

に厳密さを欠くためである. したがってそれぞれの点に対して指導すれば大幅の向上が望ま

れることが分かったのでその実態に関して報告する.

2. 材料および方法

資料の収集方法は前出に記したのて省略する.

5つの調のそれぞれに4種類の和音すなわち延べ20の和音に対し. 平成4年度入学塩では

105名中21名が全問正解22名は無解答12名は正解または無解答で間違いを含まなかった.

平成5年度入学生では117名中このような人数はそれぞれ31名. 4名および18名であった. こ

れらの学生はこの分析の対象に含まれない. 全問無解答であった学生と間違いを含まないが

大部分の設問に対して解答をしなかった学生の数は無視できない. このような(間違いを含ま

ない)学生が解答をしなかった理由の迫求は重大な問題であるがその手がかりはテストの結

果には見られなかった. ほとんど理解できなかった学生は解答をしないか、理解が不完全な学

生が解答をしそれが間違っていたとすれば本報における結果は限定された階層の学生に

93

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黒瀬久子

表1. 平成4年度入学生の和音に関する解答の間違いとその類型

学生 ハ長調 ト長調 二長劃 へ長調 変口長珊

番号 1 N V V7 I N V V7 1 N V VI 1 卿 V V7 I iV V Vフ

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記田 解不 鵤不 解由 解不 戸口 解不記欠 記欠 目引 記欠 記欠 ** **

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* * * *

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#4 #4 #a #4調欠 調欠 調欠 調欠** 零* ** ホ*

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〇 〇 一 P P P一 一 解不 P 一 一

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カデンツを賞いている19

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4444444

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基 牽k1 転1和音 和音 和音

和音和音和音

和音 和音 和音 和音 和音 一 一和音 和音 和音 和音 和音 和音 和音

和音 和音和音和音和音 和音和音5省 8和 8和 8和 瞬n 8和 e和転2 和音 和音 和音 和音 和音 和音和音 和音 和音 和音 和音 一 一和音 ・ 一. ・

和音 和音 和音 和音 湘音 和音 #3拳口音 季口音 #6

e和 8和 e和和音 基 #6

#6

8和#6

#6 #6 和音8和 8和 6和#6 #6 和音

#3 #3 #3和音 和音 和音8ネロ 8和 8手n

和音 和音 和白

基本型しか書いてない

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音音省音音音

115111

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一〇〇〇〇

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胡基基基一基海

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畑舶ト団一こ口

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その他の悶違いが見られる4一 27

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#j一#6 一・一

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カデンツ1. 'r昴tt号と糊号かなくイニ嘆立}とみなされる

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基 ……Sill … 一・

基卜・一

戦2……

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基本聖1だけしか記入してい'ttい音階. しに. :. 誓EI. 膏を記入

基本醐および第1転回第211+filiilを試人

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. 1. 高記・号

… 1㍉1しロ As……tNs{恥r

……n鱈号として壽己人したbの故.

一 9tl 一

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和音に関して保育科学生が起こし. 易い間違セ

表2. 平成5年度入学生の和音に関する解答の間違いとその類型

変口長調へ長二長調卜長調ハ長調

V7V一V7V四1V」V四1V7V1V7V麗1

生 号

学 番

漱歌瞥

調欠激綴瞥

徽搬警

一叢簸瞥

漱激田歌四目激懸

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鵡川藪激散激動

糾再

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bl解不

調欠

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bl解不

調欠

a

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韻#H調調調

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音音

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和音 和音和音和音和音和音

和音 和音 和盲 和音和音 狛音 和音 和音

和音 和音 杓音 和音和音 祁音 和音 和音

カデンツを書いている

5-48 和音 和音 和音 和音5-104 和音 和音 和合 和音

一音音音一

1 1 一

暗O()OO

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その他5一 34

5-10ア

S-116

5-IU

S一 16

5一 2e

S一 47

5一 82

5一 n

S一 97

5一フ8

5一 eo

S一 12

0一一 53

音階__Fl;FI・で答えArけIL:Xtvらないところを背臨で若ええ

臨1庁……臨ドき記. SJ・をつ1「ている.

・……窒奄V己は正解でS・るカ㍉凋. }. 1. が天けている

L':裟……2音欠:tる ;ド・・…:! m. . 11

その他は. 表11:tsけると同じ

一95一

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黒瀬久子

見られる考え違いのパターンということになる.

3. 結 果

3・1 間違いの類型

平成4年度入学生105名のうち50名には計541問平成5年度入学生l17名のうち64名には計

463問に間違いが見られた. これはそれぞれ平均10. 8問と7. 2間を間違ったことになる. それぞ

れの学生の解答に見られる問違いは個人によって異なるが各学生を取り上げると設問が異

なっても間違いに共通性が見られるのでその型によって類型化して表1と2に示した. それ

ぞれの類型に該当する延べ設問数は次の通りである(カッコ内は人数である. それぞれの類型

略号の意味は表1と2に示した):

入学年度(平成) 4 5 4 5

音階

ト音譜表上に記入

2a. 1)

8{1)

調号か欠けている・その他の間違いがある

#1

#3

#5

blb3b5カデンツ

基本型だけを記入

転回の順序の間違い

第1転回を記入

1音の間違い

5音が欠ける

17

Nv

wn 7

F dur

臨時

解釈ができない間違い

艶麗漏湘繁錨留稗壷川竺㈱

器舶究鰻=郵愚驚誰囎品

音部記号が欠けている

調号が欠けている

#2

#4

#6

b2b4b6P

音階上に三和音を記入

基本型および第1転回

第2転回を記入

2音が欠けるI

llM7N7V7

d moll

As dur

a

船舶幽如帥卿一的加脚鵬即

エし01

節醐如}印

画細囎姻解

14・11225

2ΩU1173(b

アメ

2〔フ

一 96

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和音に関して保育科学生か起こし易い鮒違い

和音に関する延べ20の設問に対する解答の正・誤・無解答の組み合わせば多く(3σ)20乗通

り). しかも間違いには種類が多い. しかし表1と2からわかるように各類型にはその現れ

方に次のような特徴か見られる:

1. 特定の調または和音に集中して見られる類型 なし

2. 特定の門生に集中的に見られる類型

次の]oの類型がこれに属す:音階・カデンツ・基本*・音階上に7三和爵を記入

・基本型および第1転回㌦第1転「llを記入'b2音が欠ける*・V・V・解釈

ができない間違い

3. 特定の学生かすべての調の特定の和音について間違う類型(1つの調だけに関する

例外を含む. 複数の調に関して下記の間途いが見られる場合は他の調に関して無解

答の場合も同じ間違いであるとみなした)

b2の2名はともに調号に関する設問では問違っているにもかかわらず. 和音

1とIVに関しては正解 VとV、に関してはこのように間違っていた、した

がってtこれらの2名は考察から除いた方がよいと考えられる.

和音 I N V V7

b2P*

基本

第2転回を記入*

1音の間違い*

1ア

n

m

N7vaア

2

2 2

1 {1 」i

@7 1

(2) [2)

e1)

(2)

3

t3)

)

(1)

なお. カッコの外は平成4年度人学生内は5年度人学生に

関する結果である. *を付けた類型は. 各学生に分けて考え

た場合大部分の間違いはその類型に属すが少数の例外を

含むことを意味する. 各調に関する4種類の和音のうちの2

種類各和音に関する5つの調のうちの2つあるいは3つに

関する問違いに共遁性が見られる学生が多いがそれらはこ

の分類の際には取. . ltげなかった.

一9. 7・一

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黒瀬久子

「基本」と類型化される間違いは平成4年度入学生16名に見られる. これらの学

生は和音に関する延べ20の設問のすべてに関して正解をしていない. 本報では和音

を扱うので次に示す4とみなした方がよいと考えられる. ただし4の表には含

めていない.

4. 特定の学生が特定の調のすべての和音に関して間違う(1つの和音だけに関する例

外を含む. 複数の和音に関して同じ間違いが見られる場合は無解答も同じ間違いで

あるとみなした. なおカッコの外は平成4年度入学生内は5年度入学生に関す

る人数である. )

周こ3口

ハ ト ニ へ 変ロ

音部記号が欠けている

ト音譜表上に記入

調号が欠けその他の間違いがある

調号が欠けている*

#1

#2*

#3

#4

#5

#6

bl

b2b3b4bsb6P

基本*

転回の順序の間違い*

d moll

F dur

As dur

a

3 2

(1)

3(16)

つ」-

(3}

(1}

2 1(1>

12 72

o}

1

2

2{18)

1

t2)

{1)

1 O)

1

1

2(15}

1 (3)

1 (3)

1

{1)

1 (1)

6(5]

1

(1)

2U> 2(2)

10 3

1

4

6211112121

133 11311 1 31

11

(2)

一98一

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和者に間して保育科学生が起こし易い岡違い

表3. 音階または調号の間違いによると考えられる和音の間違いと いずれにもよらない和音の間違い(平成4年度入学生)

播号 得点 和 音 原 因 いずれにも

言fl 無 音階 調号 ようない

無解答を含めそれらが纂中する和音・潤または頻型

1 複数の調のすべての和音 r間違う

Ll 異なる調でも同じ間連いをするel日O

le1

65es19

4ア

8787εP98

DOO8083

22212

00ハ∪20う6りも

0004000

D4司4800

2Uρ92う侮88

111 1

各調全問基ハ・卜・二・へ1いずれも和音}ハ・卜・二・変ロ{いずれも和音}ハ・ト・二{いずれも基〕ハ・ト・二;:いずれも主に基

ハ・ト{いずれも和音}ハ・ト{いずれも和膏}

1. 2 同じ調でCS 1司じ間遵いをするが間違う型は調に二よリ異なる29T3U6U9W3

<ナ961044田2393734584

339. 55日7044858785

1

20Q0Q0

Q0Q0Q0P9

P9

P6

P6

Q0

P9

P5

P2

R20

DOOOOO100401572D

000DDOOOOOOOOOOO

00000DDDOO440002

20Q0Q0Q0Q0

チ191916161615151288

各贋(調により巽なる}

各調(醐により異なる〕各醐(主に調によリ異なる1各掴(調により異なる)各潤(調により異なる)ト・二・へ・変口{いずれも8和〕・ハ住に基)ト・二(いずれも醐欠)・へ・蛮ロ{いずれも**)二{基}・他は基1ト・二(いずれも解不)・へt*)・変ロ{**}ハ・ト・二〔いずれも記欠}・へ(*〕ハ・ト・二・牽ロ(Strxq;rより異なる〉ハ・ト・二・へ(調により巽なる}

ハ・ト・二・へ1調により異なる}ハ(順序}・ト(解不}・変口::P)

ハ1基)・卜{誠欠)

ハ〔P)・ト1腿欠

2 異なる調の同じ和音を問違う2. 1 異なる調でも同じ間遼いをする

82 2q48 2589 1600 14

s o o4 0 0

11 O 02 13 e

22 調により間違う型が異なる

33 13 6 10 34 14 5 10 15 15 4 10

000

OOOOO000

54326=コ4

V7(暗)V7(1音)

V7(1音)V7(1音)

V71ハとトii 1'9・二と変口は解不)

V7〔調により翼なる)VT{ハとトは5省・二と変口は1盲う

3 1つの鯛のすべての和音に対しτ同じ間遮いをする

27140りOPO

ρ009ア7

61

132ρ0聰8匠」

0438286

2

0673ア05

1 1 1

000DO40

ハDOO」『D司3

4434243

4 間違いは1つの和音に集中するが型に胴によって異なる 11 16 5 A O O 5

5 間違いは1つの稠に集中するが型は和音によっτ異なる 27 6 3 17 O O 3 5 62 1fi OO 2

ハ{基)

ハ(和音}

ハ{P)二{d)ト1:解不)

変ロ〔F)

変口{P)[へは謂号を間違うが正解あり1

主にV7

、、

6 間違いは1つだけで調に関する特徴か和音に関する結微のいずれとも判断できない54 8 1 1ア 0

13 12 1 14 036 フ 1 16 0

67 23 1 4 O7 間違Lljすべて調号に起因する

85 1ヨ 4 9 00 24 4 0 10u 24 4 e

ODD

O I ハのV(皿〕O I ハのVl{転1:;a I トの]{P)O I への】〔P)

444

DOO8 間違いには異鳶る礪の同じ和音と阿じ調の巽なる和音に共通性が見bれる

87 3 12 863 6 14 6gq 9 6 レ1

o q sO B 60 0 6

ハ(和音により異なる ・二{PJ・・1 ‘基:}

変ロ{讃欠) ・I l基}

ハ(一月}・1(基またけ基1}

注 原P:1 それぞれの鱗咽のため;. 二三遵ウた. 『日背の妄曳であるtt.

蟻増する. 佃疏または調の欄は主な愈而向を示したカ. ・コ内1訓F町哩いの. 並な丙iである. 、. 少故の洲外を長示できみL/tこヒけ. 避けられない.

一so一

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黒瀬久子

表4. 音階または調号の閻違いによると考えられる和音の間違いと いずれにもよらない和音の間違い(平成5年度入学生)

番号 得点 和 音 原 因 いずれにも

無 音階 調号 よらない

無解答を含めそれらか集中する和音・訓または類型

ロのお

複 34041648446960175290437193

「口8155卿引320522648483927803102526η809756659981

2卸

Qノハ044

4317

2 1

2

15777田116問68聞476728問4188825376閻69刀86曜076189DO751224

1 1

3 4 5 6 7 8

複数の調のすべての和音を間違う 興なる訓でも同じ間違いをする

同じ調では同じ闘遭いをするが問違う型は調により舞なる

11 9 2 9 14 0 7 7 5

異なる隅の同じ和音を間遣う 異なる鯛でも同じ闘違いをする

O O 9{〕 ア ア

O O 3

調により問遭う型が異なる

15 12 O D 4 14 7 0 0 a 7 6 13 O e v q 2 0 0

1つの調のすべての和音に対して同じ間違いをする 11 9 5 0 A tg 3 0 e 0 10 5 S O 3 8 2 11 O 0 2q 4 0 0 2間違いは1つの和音に集中するが型は調によって異なる

13 13 O O 10聞遺いは1つの訥に集中するが型は和音によっτ異なる 4 4 16 O 0 17 5 4 0 2 6 3 13 O O

各調全問{音階〕

各訓全問{和音}

1・IV・V・Vフ〔いずれも一過〕ハ・ト・二・へ(いずれも和音}ト・二・へ・変口{いずれも調欠〕ト・二・へ・変ロ{L・ずれも調欠〕

ト・二・へ・変口{いずれも調欠}ト・二・へ{いずれも主に調欠)ト・二・へ〔いずれも主に誠欠)ト・;・へ{いずれも調欠)

ト・二・へ(いずれも調欠}ト・二・へ(いずれも胴欠}ト・二・へ(いずれも調欠}

ト・二・へ(いずれも調欠)

二{調欠}・変ロ〔解不}ト・二・へ{いずれも鯛欠)

・変口(解不〕

・変ロ{e)

rv (田} ・V (N} 曾V7 (麗フ)

lV(#をつける〕 ・V7〔P)

rv(鵬N(皿)

N{田)[二の和育Vは正解】

N佃)N (W)

U IYI}

Vフ〔暗}

V7{暗}V7〔1音}V7 (1 1>V7 (1 ))

V7(NフV7(冊フ

V7(Wフ〕V!(冊7〕

Vフ(鯛欠)

ト1:F〕・変ロ〔解不〕

へ・甘口(a}ハ(転1:。・ト{解不)

ハ(珊7)・ト(1音)・変口(誤欠}

二(鵬欠〕

変口(訓欠)二{調欠}

へ・迎口脇口(解不)

V7〔ハとへでしt皿・トでは1琶}

主にトハ[への和音1・『Vは正解1ハ.

問違いは1つだけで調に関する騎徴か和音に関する特徴のいずれとも判働できない

q 1 14 D 5 1 16 0 17 4 5 0 12 1 14 0 24 1 4 e間遵いはすべτ調号に起因する 18 8 D O 19 8 O D 23 4 1 0 24 q o o

0 1 トのV{調欠}0 1 二の1〔調欠)3 1 へのN(曲D I ハのV(P llD 1 ハのV7〔1音)

8 0s o両 04 0

へ{堀)・他の調のN・V・V7(いずれも転t)二・へ・変域(いずれも調欠}・V7(1音〕ト・二・へ〔いずれも調欠〕・N(皿::

へ〔#・V〔1)薫1ロ ::b3} ・!V CI音}

へ(P}・V7(i 7)

】V・V7・変量{#2;

注は表3におけると同1二.

一 IOO 一

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和音に関して保育科学生が起こし易い間違い

5. 少数の学生が特定の調の特定の和音だけについて間違う

P'・転回の順序の間違いt■第1転回を記入x■第2転回を記入巾・臨時

3は特定の和音に関して間違って覚えたために起こり4は特定の調に関して間違って覚え

たために起こった間違いであると推定される. 5は不注意による記入の間違いと理解が不十分

のまま正解かも知れないことを期侍して記入したと考えられるので考察から除いた方がよい.

もし全く不規則な間違いをしたとすれば、適切な指導方法は見いだせない. またかなり

多数の学生に共通した傾向が見られればそれはカリキュラムの重点の置き方によってある程

度の教育効果を向上できると考えられる. しかし。個人によって異なるパターンの間違いをす

る傾向が見られたのでそのパターンに応じて個人ごとにヒントを指示しなければならないこ

とが分かった.

3・2音階および調号に対する解答の正誤との関係

和音に関する解答の止:誤は和音そのものに関する知識だけてなく音階および調号に関する

知識にもよるのでこのいずれかが間違えは和音に関する正解は得られない. 該当する調に関

する音階あるいは調号にれらには無解答を含む)と和音でともに1司じ間違いをしている場合

には和音に関する間違いは音階あるいは調号によるとみなし音階と調号かともに正解である

が和音に関して間違っている場合にはいずれにもよらないとみなすと表3と4が得られる.

なお. これらの表には参考のために総合得点(5つσ)調の音階ハ長調を除く4つの調に関す

る調号5つの調に関する空な4種類の和音のそれぞれに対する正解を1点とする. 最高は29)

と和音に関する無解答の設問数をこれらの表に付記した. 和音に関して間違った設問数だけで

は多くの和音に関しては正解であったかここで指摘した設問数だけを間違ったか. あるいは

ほとんどの設問に対しては無解答であったかによって評価が異なり不十分なので無解答の

数を付記した. 20から誤解答と無解答の数を引いた値が正解の数である. また例えば4-66の

学生ではすべての和音を間違ったのでこれは調を主体として表示できるが飛報では和音を

扱うのて. 和音として表示した.

これらの表によれば次のことがわかる:

1. 音階と調号か基本であるにもかかわらずtこれらの間違いガ直接原因となった和音の間違

いは少ない. これはいずれか一t方または両方を間違ったかまたは解答をしなかった学生の

多くは和音に対して解答をせす. したがって間違いがないのでこの段階の分析の対象に

できなかったためである.

2. 明らかに音階の間違いによるとみなせる和音の間違いは. 極めて少なく. 平成4年度入学

生では2名(それぞれ牛田長調の4問ずつ)だけで平成5年度人学生には見られなかっ

一 101 一

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黒民心チ

た.

3. 明らかに調号の間違いによるとみなせる和音の間違いは平成4年度入学牛:では17名平成

5年度入学生では22名に見られる. その内訳は次の通りである(カッコ内は平成5年度入

学生の人数である):

調 延べ人数 延べ和音数

ト長調

二長調

へ長調

毒口長調

4(3}

3(4}

1ql 1}

8(111

158)

1Zl 5)

4et37>

3Z34}

調号を間違ったために和音を間違うとすれば延べ和音数は延べ人数の4倍になるはず

である. その値からの差は無解答のためである. 調号および(または)和音に対して解答

した人数は調によって異なりこの表に示した順に少なくなる1・'. しかし調号のために

和音を間違った人数は. 身近かでIE解が多かった#の系統の調では少なく子供の歌とし

て少なく一したがって教材として接する機会が少なく一正解が少なかったb系統の調では

多かった.

4. 大部分の問違いは音階と調号のいずれにもよらない. すなわち平成4年度入学生では

541問の間違いのうちの44〔〕問(81. 3%)平成5年度入学生では463問の間違いのうちの

357問(771%)に関する間違いが楽譜として不可欠な基礎的要素を欠くか和音そのもの

の理解が不十分であったことに起因するとみなせる

5しかしさきの表に示すように平成4年度人学生と平成5年度入学生の問では各型に

分けられる人数が異なる.

6. 平成4年度入学生では間違いの73. 6%(398/541)は複数の調に関して同じ調のすべ

ての和音を間違った学生(無解答を含む. 表3と4では1に分類される)による. これに

分類される学生は和音に対してほとんど正解を示さなかった、そのうちt最も多かったの

は調によって異なる型の間違いをした学生である. しかし. 調と間違いの型の関係は学生

によって異なり間違った原因について共通性を見いだすことは困難てあった. 異なる調

でも同じ間違いをした学生は. 間違って和音(カデンツ)で解答したか基本型だけを解

答した. すなわち. ある程度理解をしていたがそれが不十分であったために大きな失点

になったと考えられる.

平成5年度入学生では調によって異なった型の間違いをした学生は少なく. そのために

1に分類される間違いはいずれにもよらない間違いの36. 8%に過ぎなかった. 同じ調

のすべての和音を間違う学生が和音に対してほとんど正解を示さなかった点は平成4年度

入学生と同じであるがt内容が異なり13名のうち9名は調号を記入しなかったためであ

一102一

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和音に関して保育科学生が起こし易い間違い

り和音そのものは理解したが楽譜としての基本的な必要条件を欠いたことによる

7. 次に多かったのは1司じ種類の和音について調が異なっても同じ間違いをした学生である

(表3と4では2」に分類される). この傾向は'ド成5年度入学生で特に著しいtここに見

られた学生のほとんどは合計得点が高かった. これらの間違いの大部分はVに関するも

のでこれには2つの型がある. そのiつの型は3音しか記上しなかった間違いで実用

面では1音を省略することが多いのてそのように考えた可能性と他の和音は3音よりな

るので3音しか記人しなかった可能性の両方が考えられる. もう1つの型ではVを他の

「」系の和音と間違った. この型の間違いはVアが4音で構成されることまでは覚えてい

ても正確さを欠いたためと考えられる.

そのほかに平成5年度入学生の数人に見られるのはIVをmで解答した間違いである.

これは隣の和音と勘違いをして解答した可能性が強いがlnの和音は設問に含まれないの

で. この点は確かめられない.

8. 表3と4では8つの型に分けて示したがこれら以外の各型は人数が少なく. しかもそれ

ぞれ聞違いの内容が異なるので論究できない.

すなわち和卉そのものに対する理解に起因する間違いの大部分は6と7に示したように

和音に対してある程度理解をしていた形跡は認められるか理解が不正確であったために大き

な失点となったものであと僅かの指導で大きく向上する可能性が高いと考えられる.

4考 察

先に記したように和音に関する間違いは平成4年度入学生105名のうち50名に計541問. 平

成5年度入学生l17名のうち64名に計463問と約半数の学生について見られ約1/2から1/3

の設問に及んだ. しかも、それらの間違いの3/4以上が和音の基礎となる音階および調号と

同じ間違いでなくt楽譜として不可欠な基礎的要素を欠いた問違いか利音たけに見られる間

違いてあることがわかった. これが前半:一't)に記した音階・調号および和音に関するテストに

おいて得点が中程度の学生が少なく学生が高得点と低得点の2極に分離した原因の一つであ

ると考えられる. 学報では和音の間違いを取り上げ表1・2および結果(3. Dに示すよ

うにこれらの間違いが17に類型化されることが分かった. しかしこれら47の類型はそれら

の共通性により. 次に示す・1群にまとめられる(類型名の後には間違った延べ設問数カッコ

内は学生数である. また群の後には記載の便宜上キーワードを付記した):

1. 楽譜として最も基本的な要素の欠落または問違い(基本)

一 103 一

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黒瀬久子

音1階 20(D 音部記号が欠けている

ト音譜下上に記入 8〈】) 調号が欠けている

調号が欠けている・その他の間違いがある

* 16( 4)

24( 3)

142(33)

24( 4)

2. 調. 号に関連する間違い(調号)

#1一#6 165 (46)

dmoll 4〈 1) Fdur 8( 2)

P 35(lt・1)

bl-b6

a

As dur

臨時

50(14)

7( 2)

4( 1)

1( ])

3. 和音の基本に関する理解の不正確(和音)

基本型だけを記入 85(16)

第2転回を記入 5(2)

転回の順序の間違い 4(2)

5音が欠ける 3(2)

カデンツ 103(10)

解釈ができない間違い 78(17)

ag '1転回を記入

基本型および第1転回

1音の間違い

2音が欠ける

音階上に3和音を記入

20( 6)

20( 3)

51 (18)

2( 1>

16( 1)

4. 和音番号のずれ(番号)

1 8( 4) ・ ll 2( 2) ・M 36 (15) ・ i 4( 4) ・V 1( 1)・ VI 6( 4) ・ Vll 14〈 9)

1? 14(4)。 Inア 1(1)・IV 7(2)・Vア 3(2)・ V皿ア 13(7)

「基本」は楽譜の基本的要素を欠くか関連する間違いでこれが欠けることは普通では考え

られない.

しかし. 学生は楽譜に接する機会があっても五線以外のすべてを白分で書く機会は少なくし

かもテスト等で音符を記入する機会はあっても音部記号と調号まで書く機会はさらに少ない

と考えられる. したがってこれらの基本的要素は五線と同様に与えられるものであると無意

識のうちに習慣付けられているとすればあえて書かなくても解答になると考え違いをしてし

まった可能性が考えられる. すなわち. 基本的要素を含め楽譜を白分の手で書く機会を増やし.

このような基本的過ぎるような事項の徹底を図れば間違いの23. 3%(234/1004)のうちのか

なりの部分が防止できるであろう.

「調号」に関する間違いは計274問で全体の27. 3%を占めた. これらの多くは全く関係のな

一 104 一

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和看『に関して保育黍}学生が起こし易い閲違い

い調と間違ったためでなくt「嬰」あるいは「変」のつく同じ名前の調あるいは長調を短調

と間違ったためである. また#に関する間違いかbに関する間違いの3倍見られる. これは学

生が接する楽譜の多くはト長調と二長調でありへ長調に接する機会が少なかったことによる

1丁能性が考えられる. すなわち調号に関する間違いの多くはある程度の知識は備わっていて

も正確さを欠くためでありこれらの関係を徹底させれば教育効果は向上すると考えられる.

「和音」に分類した間違いは計387問で全体の38. 5%を占めた. しかしこれらの大部分も

全く関連のない間違いではなく、簡単に考え1つの和音だけを解答すればよいかあるいはH常

に多く使われる3音だけでよいと短絡的に考えた可能性のある間違いである. すなわち. 基礎

はわかっているが一部正確さを欠くためと考えられる.

「番号」に分類した問違いは計lo9問(10. gcra>で1Vの利音をmの和音と間違った場合が

多い. このような言違いをした学:生は. 調が異なっても同じ間違いをし他の和音はほとんど

間違っていない. したがって和音番号のかぞえそこないと考えにくい. 強いて考えるとすれ

ば他の主要和音が奇数番であるのでこの和音の番号も奇数番てあると取り違った可能性で

ある. また. Vの和音をら」系の他の和音と問違って解答した学生がある. このような間違

いをした学生は異なる調に対しても同じ間違いをする. Vの「?」0)意味は理解しても. 理解

に正確さを欠いたために起こった間違いであると考えられる. すなわちいずれも利音に関し

てかなりの知識を持っているが…歩正確さを欠いたために起こった間違いであると考えられ

る.

5. 結論

以上をまとめ次のように結論される:和音に関する間違いの約レ4は和音そのものに関す

る知1識の不足でなく楽譜の最も基礎的な要素は必ず必要であるという認識の不足による. そ

れ以外の間違いの多くは和音を全く理解していないためではなく. 知識が不完全なために起

こったと考えられる. すなわち知識を確実にするためにあともう一歩の努力をするように学

生を指導すれば. 大幅な向しが期侍できる.

6. 要約

保育科学生222名に対して第1学年の最後の授業時問または第2学年の最初の授業時間におい

て. ハ長調・ト長調・二長調・へ長調および変ロ長調の5つの調の主要E和音(レ[V・V)

および属七和音に関する基礎的なテストから解答の間違いを取りだし次のような結果が得

られた:

一 105 一

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黒瀬久子

1. 5つの調のそれぞれに4種類の和音すなわち延べ20の和音に対し. 平成4年度入学生105

名のうち50名には計541問平成5年度人学生l17名のうち64名には計463問の問違いが見

られた. これはそれぞれ平均10. 8問と7. 2問を間違ったことになる.

2. 間違いには共通性がみられるのでそれを47に類型化し. 表1と2に示した.

3. 各類型の間違いの現れ方には{D特定の学生に集巾して見られる型②特定の学生がすべ

ての調の特定の和音について間違う型およ翻3〕特定の学生が特定の調のすべての和音に

ついて間違う型がある.

4. 和音の基礎として音階と調号が不可欠であるので. 和音に見られる間違いとそれらの関係

を表3と4に示した. これらの表によれば. 間違いの3/4以. ヒはそれらのいずれにもよら

ない.

5間違いに関する47の類型はその原因により次の4群に分けられる:}楽譜としても最も

基本的な要素の欠落またはそれに関連する間違い(基本23. 1%). 〔2)調号に関連する間違

い(調号23. 3%)(3}禾ll音の基本に関する理解の不正確(和音. 38. 5%)および(4)和音番

号のずれ(番号10. %)

6. それぞれの群の引違いが起こる機構について考察を加え. 次の結論を得た:和音に関する

問違いの約レ・1は和音そのものに関する知識の不足ではなく楽譜の最も基礎的な要素は

必ず必要であるという認識の不足による. それ以外の1司違いの多くは和音を理解してい

ないためではなく知識が不完全なことによると考えられる. すなわち. 知識を確実にす

るためにあともう一歩の努力をするように学生を指導すれば大幅な向上が期待できる.

本研究にあたり. 種々のご指導を賜った水産大学校名誉教授 前田 弘博士に厚く謝意を表

します.

文 献

1)黒瀬久子:音階と調号に関して保育科学生か起こし易い闘違い下関女子短期大学紀要. 第14号8】・91

Q{ 96)

2)黒瀬久子:保育科学生の伴奏に関する基礎的理解一1. 調と和音. 下関女子燈期大学紀要. 第12号

73-89 (]993>

3)黒瀬久子:傑育科学生の伴奏に関する基礎的理解一. 移調下関女子短期大学紀要1第12号91・105

(1993>

4)黒瀬久子:保育科学生の伴奏に関する基礎的理解一m. 学生の類型化、全国大学音楽教育学会研究紀要.

第6号・79、91(1995}

一 106 一