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腹膜透析 ガイドライン 日本透析医学会ブックシリーズ1 腹膜透析 ガイドライン改訂 ワーキンググループ 一般社団法人日本透析医学会 2019

日本透析医学会ブックシリーズ1 腹膜透析 ガイドライン...腹膜透析ガイドライン改訂にあたって 腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

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腹膜透析ガイドライン

腹膜透析ガイドライン

日本透析医学会ブックシリーズ1

2019 JSDT“Guidelines for Peritoneal Dialysis”

腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループ

腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループ

一般社団法人日本透析医学会

20192019

腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループ

一般社団法人日本透析医学会

腹膜透析ガイドライン

2019 JSDT“Guidelines for Peritoneal Dialysis”

2019

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

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Part1

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって⿎⿎背景と経緯

2009年に「腹膜透析ガイドライン」(中山昌明委員長)が策定されて,約10年が経過した。この間に前回のガイド

ラインでは記載されていない多くのエビデンスが報告されている。被囊性腹膜硬化症に関する本邦のNext

Peritoneal Dialysis(PD)試験,アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI), アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の

意義,イコデキストリン液の意義,腹膜病理の新しい展開,そして世界では新しい出口部管理の提唱が推奨されてい

る。当然のことながら,前回のガイドラインではこれらの事項は入っていない。このような新しい情報を診療に取り

入れていくことはきわめて重要といえる。

一方で,『診療ガイドライン』作成作業は,今日までの『診療ガイド』作成と異なり,世界的にも大きく変化した。

日本透析医学会はこれまでに14 の診療ガイドライン(clinical practice guideline: CPG)とその改訂版を学会単独あ

るいは他学会等との協力,連携の下で作成し,日本語および英文にて公表してきた。これらは,比較的使用勝手がよ

い形となり,広く透析医療者に使用されてきた。しかしながら近年CPG の定義や作成プロセスが厳格化し,従来の

作成方法や体裁ではその流れに沿わなくなってきた。これに対して,日本透析医学会は,ガイドラインのあり方,作

成方法を根本的に見直すため日本透析医学会ガイドライン(CPG)作成指針を2016年に発表し,今後はこの指針に則

り作成,改訂をする方針とした。本CPG作成指針は,信頼されるガイドラインを国内外へ発信するために,GRADE

ワーキンググループによる方法論に準拠してCPG を作成する方向性を打ち出している。新しいCPG 策定のために,

システマティックレビューによるエビデンス評価を実施,それにもとづく推奨度の決定システムの構築,conflict of

interest(COI)の取り扱いなどこれまでにない新たな対応を今回のガイドライン作成では行っていく方針となった。

⿎⿎腹膜透析ガイドライン改訂作業今回の腹膜透析ガイドライン改訂は,2016年秋から始まった。今日,腹膜透析療法の評価がPeritoneal Dialysis

Outcomes and Practice Patterns Study(PDOPPS)という形で世界の中で進み,腹膜炎発症率,離脱率を含めた質

の差が施設間で大きいことが明らかとなり問題として取りあげられた(Nephrol Dial Transplant. 2018 Jul 23. doi:

10.1093/ndt/gfy204)。今回のガイドライン改訂では,世界標準の方法でシステマティックレビューを行うに留まら

ず,学会員が広く使用でき多くの患者の診療の参考になるものが望ましいという意見に従い2部構成をとることとな

った。Part 1を従来の記述的なものとし,Part 2でClinical Question(CQ)を立ててシステマティックレビューの形

をとることにワーキンググループ会議で決まった。これに従い,Part 1は広くPDをカバーすることで学会員のニー

ズにあうよう配慮した。

まず10名の腹膜透析ガイドライン改訂ワーキングコアメンバーが決まり,2016年11月にキックオフミーティン

グが開催された。今回のGRADEシステムに則ったガイドライン作成は日本透析医学会で初めての試みであることよ

り,学術委員会からも全面的な支援をいただくことが約束され,作成されたロードマップ,予定表に沿って進めるこ

とも承認された。Systematic review(SR)メンバーは,評議員からの推薦を経て本人承認後,GRADE システムを学

ぶためのワークショップに参加し,その後,COI提出,COI委員会承認,理事会承認というプロセスで最終的に27

名が決まった。以後,ガイドラインに関わるメンバーはすべてこの手順で決められた。メンバーが,GRADE システ

ムに精通していないことより,外部委員としてGRADE システムの専門の先生に就任していただき指導を仰ぐこと

になった。

⿎⿎本ガイドライン作成の基本指針目的

本診療ガイドラインの目的は,腹膜透析患者の予後を改善させるために,適切な管理・治療を行うための情報・推

P a r t 1

ii

奨を提供することにある。

本診療ガイドラインの対象(利用者)

本診療ガイドラインの使用者として想定しているのは,腹膜透析を診療する専門医,非専門医(総合診療医,家庭

医,一般医,他領域専門医など),看護師,薬剤師,臨床工学技士,管理栄養士などの医療従事者である。

本ガイドラインで扱う対象患者

本ガイドラインの対象とする患者は,腹膜透析を受ける患者であり小児から高齢者までを対象としている。

取り扱う臨床上の課題

腹膜透析診療における重要臨床課題『本邦の腹膜炎治療はいかにあるべきか。』『本邦における腹膜透析患者の出口

部感染予防はどうあるべきか。』『腹膜透析カテーテル挿入術において望ましい手術方法は何か。』『腹膜透析患者の残

腎機能保持にACEI, ARBは有効といえるか。』『イコデキストリン液使用は,腹膜透析患者の体液管理に有用か。』

『糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか?』を取りあげ,可能なCQをた

てPart 2を作成した。

Part 1の内容は,2009年の内容である第五章に加え,PD関連感染症とPDカテーテル関連の2項目を追加し以下

のような形となった。

第一章 導入

第二章 適正透析

第三章 栄養管理

第四章 腹膜機能

第五章 被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件

第六章 腹膜炎管理

第七章 カテーテル・出口部管理

2009年ガイドラインの記述を基本とし,2009年から2017年12月までの文献をPubMedで検索し,追記,改変

する形をとった。本邦に特色がある点に関しては,日本語の文献も取り入れて記載した。Part 1の記載メンバーは総

勢18名となり,また内容の客観性,文献選択の適正を確認するためにワーキンググループ内での査読とは別に3名

の査読者を置き審査を受けた。その後,学術委員会,理事会の査読も受けた。パブリックコメントをもとに一部訂正

作業を行った。最終的に理事会の承認をもって最終の形とした。

Part 2における6つのCQは,ワーキングメンバーとSRメンバーの議論のもとに決定した。その内容は,

CQ1:腹膜透析患者に,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)(ACEI, ARB)の内服は有用か?

CQ2:腹膜透析患者に,イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用のどちらが有用か?

CQ3: 腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗生剤軟膏塗布なしのどれが

よいか?

CQ4: 腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入のど

ちらが有用か?

CQ5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は,経静脈投与か,腹腔内投与のどちらがよいか?

CQ6:糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか?

当初CQ6は,『腹膜炎を併発した腹膜透析患者において,初回腹腔洗浄を実施することは,腹膜炎治療において有効

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

iii

Part1

か?』で進められたが,十分なエビデンスがなく断念し,上記CQ6となった。詳細はPart 2参照。

SRの推奨文,推奨度を決定するパネル会議メンバーとして,専門医4名,在宅でPDに関わっている医師2名,

PDに精通した看護師3名,患者代表として2名を選出した。推奨文と,推奨度をそれぞれ決めるパネル会議の開催

を準備段階の会議(CQに対する説明会)を含めて計3回実施した。推奨度決定は,投票者の70%以上の合意で決定と

した。

⿎⿎ガイドライン策定までの過程第1回ワーキング委員会   2016年11月3日

第2回ワーキング委員会(合同)2017年3月19日

第3回ワーキング委員会(合同)2017年6月17日

第4回ワーキング委員会(合同)2019年4月20日

第1回Part 1委員会(合同) 2017年3月19日

第2回Part 1委員会 2018年4月13日

第3回Part 1委員会 2018年7月30日

第1回Systematic review委員会(合同)2017年3月19日(ワークショップ)

第2回Systematic review委員会(合同)2017年6月17日

第3回Systematic review委員会   2018年4月14日

第4回Systematic review委員会   2018年4月29日

第5回Systematic review委員会   2018年6月30日

各CQで小会議を適宜開催した。また,web会議,メール会議もCQごとで開催した。

第1回パネル会議   2017年12月24日

第2回パネル会議   2018年 8 月19日

第3回パネル会議   2018年12月23日

メーリングリストを1)ワーキングメンバー・Part 1メンバーで,2)Systematic reviewメンバー・ワーキングメン

バーで,3)パネルメンバー・ワーキングメンバーで3つのメーリングリストを立ちあげ活用した。

査読委員による査読(2019年1月10日終了)

学術委員会による査読(2019年2月26日終了)

ガイドラインPart 1案を日本透析医学会ホームページに掲載パブリックコメントを求める。

2019年4月3日

ガイドラインPart 2案を日本透析医学会ホームページに掲載パブリックコメントを求める。

2019年4月3日

ガイドラインPart 2案に対する公聴会 2019年4月20日

日本透析医学会理事会にて最終承認 2019年5月31日

外部評価 2019年6月

P a r t 1

iv

⿎⿎学会報告第62回日本透析医学会学術集会・総会シンポジウム

『新CAPDガイドラインを考える思案』2017年6月17日横浜

第63回日本透析医学会学術集会・総会シンポジウム

『改訂腹膜透析ガイドラインの目指すもの』2018年6月30日神戸

⿎⿎腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループ委員長    伊藤恭彦 愛知医科大学腎臓・リウマチ膠原病内科(腎臓内科医)

副委員長   竜崎崇和 東京都済生会中央病院腎臓内科(腎臓内科医)

委員     石川祐一 茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科(管理栄養士)

委員     伊丹儀友 伊丹腎クリニック(腎臓内科医)

委員     伊東 稔 矢吹病院腎臓内科(腎臓内科医)

委員     植田敦志 日立総合病院腎臓内科腎臓病・生活習慣病センター(腎臓内科医)

委員     金澤良枝 東京家政学院大学現代生活部健康栄養学科(管理栄養士)

委員     川西秀樹 土谷総合病院外科(外科)

委員     菅野義彦 東京医科大学腎臓内科学(腎臓内科医)

委員     杉山 斉  岡山大学大学院医歯薬学総合研究科血液浄化療法人材育成システム開発学(腎臓内科医)

委員     鶴屋和彦 奈良県立医科大学腎臓内科学(腎臓内科医)

委員     寺脇博之 帝京大学ちば総合医療センター腎臓内科(腎臓内科医)

委員     友 雅司 大分大学医学部附属臨床医工学センター(腎臓内科医)

委員     中元秀友 埼玉医科大学医学部総合診療内科(総合内科/腎臓内科医)

委員     深澤瑞也 山梨大学医学部附属病院血液浄化療法部泌尿器科(泌尿器科医)

委員     山下明泰 法政大学生命科学部環境応用化学科

委員     横井秀基 京都大学大学院医学研究科腎臓内科(腎臓内科医)

委員(日本腹膜透析医学会)

       中山昌明 聖路加国際病院腎臓内科(腎臓内科医)

外部委員   湯浅秀道 豊橋医療センター歯科口腔外科(口腔外科医/方法論の専門家)

Part 1 執筆者

Part 1委員  石川祐一* 

Part 1委員  伊丹儀友*

Part 1委員  伊東 稔*

Part 1委員  伊藤恭彦*

Part 1委員  植田敦志*

Part 1委員  金澤良枝*

Part 1委員  川西秀樹* 

Part 1委員  菅野義彦*

Part 1委員  杉山 斉* 

Part 1委員  鶴屋和彦*

Part 1委員  寺脇博之* 

Part 1委員  友 雅司* 

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

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Part1

Part 1委員  中倉兵庫  有澤総合病院血液浄化センター血液透析内科(腎臓内科医)

Part 1委員  中元秀友* 

Part 1委員  中山昌明* 

Part 1委員  西山 慶  九州大学病院小児科(腎臓小児科医)

Part 1委員  幡谷浩史  東京都立小児総合医療センター腎臓内科(腎臓小児科医)

Part 1委員  濱田 陸  東京都立小児総合医療センター腎臓内科(腎臓小児科医)

Part 1委員  深澤瑞也* 

Part 1委員  三浦健一郎 東京女子医科大学医学部腎臓小児科(腎臓小児科医)

Part 1委員  山下明泰* 

Part 1委員  横井秀基* 

Part 1委員  竜崎崇和*

*ワーキンググループメンバー

Part 1 査読委員

査読委員   金井英俊  小倉記念病院腎臓内科(腎臓内科医)

査読委員   田村雅仁  産業医科大学医学部第二内科(腎臓内科医)

査読委員   服部元史  東京女子医科大学医学部腎臓小児科(腎臓小児科医)

査読委員   山本裕康  慈恵大学参事(腎臓内科医)

Systematic review(SR)メンバー

SR 委員    井尾浩章  順天堂大学医学部附属練馬病院腎・高血圧内科(腎臓内科医)

SR 委員    伊東 稔*

SR 委員    植田敦志*

SR 委員    内山清貴  慶應義塾大学病院腎臓内分泌代謝内科(腎臓内科医)

SR 委員    小畑陽子  長崎大学病院第二内科(腎臓内科医)

SR 委員    葛西貴広  国際医療福祉大学病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    菅野厚博  JCHO仙台病院腎センター(腎臓内科医)

SR 委員    黒木祐介  福岡赤十字病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    小向大輔  川崎幸病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    坂 洋祐  春日井市民病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    櫻田 勉  聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科(腎臓内科医)

SR 委員    田川美穂  奈良県立医科大学附属病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    辻本 啓  京都大学iPS細胞研究所(CIRA)増殖分化機構研究部門(腎臓内科医)

SR 委員    辻本 康  協立病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    辻本吉広  井上病院内科(腎臓内科医)

SR 委員    寺脇博之*

SR 委員    戸田尚宏  関西電力病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    藤井隆之  聖隷佐倉市民病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    藤倉恵美  東北大学病院血液浄化療法部(腎臓内科医)

SR 委員    樋口千惠子 東京女子医科大学東医療センター内科(腎臓内科医)

SR 委員    丸山之雄  東京慈恵会医科大学附属病院腎臓・高血圧内科(腎臓内科医)

P a r t 1

vi

SR 委員    森本耕吉  慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科(腎臓内科医)

SR 委員    安田 香  増子記念病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    山本脩人  和歌山県立医科大学医学部腎臓内科学講座(腎臓内科医)

SR 委員    若林啓一  順天堂大学医学部附属静岡病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    鷲田直輝  国際医療福祉大学病院腎臓内科(腎臓内科医)

SR 委員    渡邉公雄  朝日病院腎臓内科(腎臓内科医)

*ワーキンググループメンバー

パネル会議メンバー

パネル委員  田村雅仁  産業医科大学医学部第二内科

パネル委員  友 雅司*

パネル委員  中元秀友*

パネル委員  古薗 勉  近畿大学生物理工学部医用工学科

パネル委員  政金生人  本町矢吹クリニック腎臓内科

パネル委員  正木浩哉  正木医院内科

パネル委員  松村満美子 NPO法人腎臓サポート協会

パネル委員  宮崎正信  宮崎内科医院内科

外部委員   徳元しのぶ 聖路加国際病院

外部委員   野上昌代  小倉記念病院

外部委員   三上裕子  岡山済生会総合病院

*ワーキンググループメンバー

外部評価委員

評価委員   豊島義博   医療機能評価機構Minds 診療ガイドライン作成支援専門部会

委員 鶴見大学歯学部探索歯学講座

       南郷栄秀  東京北医療センター総合診療科医長 東京医科歯科大学医学部

文献検索

委員     阿部信一(日本医学図書館協会,東京慈恵会医科大学学術情報センター)

委員     石原千尋(日本医学図書館協会,名古屋大学附属図書館医学部分館)

委員     星 佳芳(北里大学医学部衛生学講座) 

委員     三谷三恵子(日本医学図書館協会,慶應義塾大学信濃町メディアセンター)

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

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Part1

⿎⿎利益相反情報に関しての開示一般社団法人日本透析医学会は,今後,本学会が作成する臨床ガイドラインについては,作成ワーキンググループ

等のメンバーが中立性と公明性をもって作成業務を遂行するために,実際または予想されうる問題となる利益相反状

態を避けることに最大限の努力をはらっている*)。

すべてのワーキンググループ等のメンバーは可能性としてまたは実際に生じる利益相反情報の開示を行う書類(署

名済み)を提出し,この書類は毎年更新され,情報は状況に応じて適宜変更される。これらのすべての情報は,以下

のように「利益相反情報についての開示」に記載し,これを裏付けるすべての情報は日本透析医学会事務局が保管し

ている。

文献 

*)日本透析医学会:日本透析医学会における医学研究の利益相反(COI)に関する指針.2011:http://www.jsdt.or.jp/jsdt/1236.html

利益相反情報についての開示

伊藤恭彦  バクスター(株)(透析製品,血漿たん白製剤,薬剤投与システムの輸入,製造,販売の会社),中外製薬

(株)(医療用医薬品の製造・販売および輸出入の会社),協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および

販売の会社),ノバルティスファーマ(株)(医薬品の開発,輸入,製造,販売の会社),帝人ファーマ(株)

(医薬品・医療機器の研究開発,製造,販売の会社)から研究補助金および講演等の謝礼を受領しおよび寄

附講座に所属している。

竜崎崇和 オムロン(株)(制御機器等の製造・販売の会社)学会参加等の旅費を受領している。

伊丹儀友  協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),キッセイ薬品工業(株)(医薬品の研究,開

発,製造,販売の会社),大塚製薬(株)(医薬品・臨床検査・医療機器・食料品の製造,製造販売,販売,

輸出ならびに輸入の会社)から講演等の謝金を受領している。

川西秀樹  バイエル薬品(株)(医薬品,医療機器,動物用医薬品の開発・輸入・製造および販売の会社),キッセイ薬

品工業(株)(医薬品の研究,開発,製造,販売の会社),テルモ(株)(医療機器・医薬品の製造販売の会

社),協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),ニプロ(株)(医療機器,医薬品の製

造,販売の会社),中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売および輸出入の会社)から講演等の謝金を受

領している。

菅野義彦  協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売

および輸出入の会社),富士製薬工業(医薬品の開発,製造,販売の会社),キッセイ薬品工業(株)(医薬品

の研究,開発,製造,販売の会社),鳥居薬品(株)(医薬品の製造・販売の会社),大日本住友製薬(株)(医

療用医薬品,診断薬等の製造および販売の会社),MSD(株)(医薬品,ワクチン,医療機器の開発,輸入,

製造,販売の会社),(株)医学書院(医学の専門書籍,雑誌,電子媒体の出版の会社)から研究補助金,講演

の謝金および執筆等の原稿料を受領している。

杉山 斉  大日本住友製薬(株)(医療用医薬品,診断薬等の製造および販売の会社),ジェンザイム・ジャパン(株)

(医薬品の輸入,製造,販売の会社),バイエル薬品(株)(医薬品,医療機器,動物用医薬品の開発・輸

入・製造および販売の会社)研究補助金を受領している。

鶴屋和彦  中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売および輸出入の会社),協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製

造および販売の会社),鳥居薬品(株)(医薬品の製造・販売の会社),バクスター(株)(透析製品,血漿たん

白製剤,薬剤投与システムの輸入,製造,販売の会社),サノフィ(株)(医薬品および医療機器の製造販

売・輸入等の会社),武田薬品工業(株)(医薬品,医薬部外品等の製造・販売・輸出入の会社)から研究補

助金,講演等の謝金および寄附講座に所属している。

P a r t 1

viii

寺脇博之 (株)三和化学研究所(医薬品,診断薬等の研究開発と製造販売等の会社)から研究補助金を受領している。

中元秀友  東レ(株)(医薬品,医療製品の製造および販売の会社),キッセイ薬品工業(株)(医薬品の研究,開発,製

造,販売の会社),ベーリンガーインゲルハイム(株)(医薬品の製造,販売および輸入等の会社),テルモ

(株)(医療機器・医薬品の製造販売の会社),アステラス製薬(株)(医薬品の製造・販売および輸出入の会

社),JCRファーマ(株)(医薬品の原料の製造,売買ならびに輸出入医療用機器の会社),協和発酵キリン

(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売および輸出入の

会社)から研究補助金,講演等の謝礼,執筆等の原稿料を受領している。

深澤瑞也  ニプロ(株)(医療機器,医薬品の製造,販売の会社),バクスター(株)(透析製品,血漿たん白製剤薬剤投

与システムの輸入,製造,販売の会社),日機装(株)(血液透析装置,ダイアライザー,透析用血液回路セ

ット,人工腎臓透析用剤,人工膵臓などの製造および販売,腹膜透析関連製品販売の会社),テルモ(株)

(医療機器・医薬品の製造販売の会社)から研究補助金を受領している。

山下明泰  日機装(株)(血液透析装置,ダイアライザー,透析用血液回路セット,人工腎臓透析用剤,人工膵臓など

の製造および販売,腹膜透析関連製品販売の会社),旭化成メディカル(株)(医療機器の開発,製造,販売

の会社),ニプロ(株)(医療機器,医薬品の製造,販売の会社)から研究補助金,学会等の旅費および顧問

として報酬を受領している。

横井秀基  第一三共(株)(医療用医薬品の研究開発・製造および販売の会社),バクスター(株)(透析製品,血漿たん

白製剤,薬剤投与システムの輸入,製造,販売の会社),田辺三菱製薬(株)(医療用医薬品を中心とする医

薬品の製造・販売の会社)から研究補助金を受領している。

中山昌明  鳥居薬品(株)(医薬品の製造・販売の会社),(株)ピュアロンジャパン(精密機器・電子機器の設計,製造,

販売の会社),アルファ電子(株)(医療機器の開発および生産の会社),日本たばこ産業(株)(タバコ,医

薬,食品,飲料の製造および販売の会社),日機装(株)(血液透析装置,ダイアライザー,透析用血液回路

セット,人工腎臓透析用剤,人工膵臓などの製造および販売,腹膜透析関連製品販売の会社),鳥居薬品

(株)(医薬品の製造・販売の会社),バクスター(株)(透析製品,血漿たん白製剤,薬剤投与システムの輸

入,製造,販売の会社),中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売および輸出入の会社),(株)日本トリム

(医療用整水器の開発および販売の会社)研究補助金,講演料等の謝金,執筆等の原稿料および顧問の報酬

を受領し寄附講座に所属している。

金井英俊  バクスター(株)(透析製品,血漿たん白製剤,薬剤投与システムの輸入,製造,販売の会社),協和発酵キ

リン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),田辺三菱製薬(株)(医療用医薬品を中心とする医薬品

の製造・販売の会社),グラクソ・スミスクライン(株)(医療用医薬品,一般用医薬品等の研究開発,輸

入,製造および販売の会社),日本たばこ産業(株)(タバコ,医薬,食品,飲料の製造および販売の会社),

バイエル薬品(株)(医薬品,医療機器,動物用医薬品の開発・輸入・製造および販売の会社),テルモ(株)

(医療機器・医薬品の製造販売の会社),キリンホールディングス(株)(経営戦略策定および経営管理の会

社)から研究補助および講演謝金を受領している。

田村雅仁  バクスター(株)(透析製品,血漿たん白製剤,薬剤投与システムの輸入,製造,販売の会社),大塚製薬

(株)(医薬品・臨床検査・医療機器・食料品の製造,製造販売,販売,輸出ならびに輸入の会社)から研究

補助金および講演等の謝金を受領している。

山本裕康  協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売

および輸出入の会社)から講演等の謝金を受領している。

井尾浩章  武田薬品工業(株)(医薬品,医薬部外品等の製造・販売・輸出入の会社),エーザイ(株)(医薬品,医薬部

外品の製造販売),小野薬品工業(株)(医療用医薬品を主体とする各種医薬品の研究,開発,製造,仕入お

よび販売の会社),大日本住友製薬(株)(医療用医薬品,診断薬等の製造および販売の会社),大塚製薬

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

腹膜透析ガイドライン改訂にあたって

ix

Part1

(株)(医薬品・臨床検査・医療機器・食料品の製造,製造販売,販売,輸出ならびに輸入の会社),旭化成

ファーマ(株)(医療用医薬品,診断薬用酵素,診断薬,流動食の製造・販売の会社),持田製薬(株)(医薬

品の研究開発,製造および販売の会社),第一三共(株)(医療用医薬品の研究開発・製造および販売の会

社),塩野義製薬(株)(医薬品,診断薬などの製造・販売の会社),(株)三和化学研究所(医薬品,診断薬等

の研究開発と製造販売等の会社),協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),興和創

薬(株)(医薬品,医療機器,医療消耗品の販売),田辺三菱製薬(株)(医療用医薬品を中心とする医薬品の

製造・販売の会社),ノバルティスファーマ(株)(医薬品の開発,輸入,製造,販売の会社),ゼリア新薬

工業(株)(医療用医薬品・一般用医薬品を製造および販売の会社),日本ベーリンガーインゲルハイム(株)

(医薬品の研究開発,輸入,製造,販売の会社),鳥居薬品(株)(医薬品の製造・販売の会社),アステラス

製薬(株)(医薬品の製造・販売および輸出入の会社),ファイザー(株)(医薬品の開発の会社),中外製薬

(株)(医療用医薬品の製造・販売および輸出入の会社),MSD(株)(医療用医薬品,医療機器の開発・輸

入・製造および販売の会社),サンスター(株)(歯磨,歯ブラシ,デンタルリンス等の製造販売の会社)か

ら研究補助金の受領および寄附講座に所属している。

小畑陽子  大塚製薬(株)(医薬品・臨床検査・医療機器・食料品の製造,製造販売,販売,輸出ならびに輸入の会

社),協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),第一三共(株)(医療用医薬品の研究開

発・製造および販売の会社),中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売および輸出入の会社),バクス

ター(株)(透析製品,血漿たん白製剤,薬剤投与システムの輸入,製造,販売の会社),(株)カネカメディ

ックス(医療機器の製造・販売の会社)から研究補助金を受領している。

櫻田 勉  アストラゼネカ(株)(医療用医薬品の創薬,開発,製造および販売の会社),塩野義製薬(株)(医薬品,診

断薬などの製造・販売の会社),バクスター(株)(透析製品,血漿たん白製剤,薬剤投与システムの輸入,

製造,販売の会社),アステラス製薬(株)(医薬品の製造・販売および輸出入の会社),協和発酵キリン

(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),武田薬品工業(株)(医薬品,医薬部外品等の製造・販売・

輸出入の会社),帝人ファーマ(株)(医薬品・医療機器の研究開発,製造,販売の会社),小野薬品工業

(株)(医療用医薬品を主体とする各種医薬品の研究,開発,製造,仕入および販売の会社)から研究補助金

を受領している。

辻本 啓  大塚製薬(株)(医薬品・臨床検査・医療機器・食料品の製造,製造販売,販売,輸出ならびに輸入の会

社),アステラス製薬(株)(医薬品の製造・販売および輸出入の会社),武田薬品工業(株)(医薬品,医薬部

外品等の製造・販売・輸出入の会社),(株)iPSポータル(iPSテクノロジーの事業化に関する会社),日機

装(株)(血液透析装置,ダイアライザー,透析用血液回路セット,人工腎臓透析用剤,人工膵臓などの製

造および販売,腹膜透析関連製品販売の会社),武田薬品工業(株)(医薬品,医薬部外品等の製造・販売・

輸出入の会社)から所属する講座が研究補助金を受領している。

辻本 康  協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),(株)データホライゾン(医療関連情報サービ

スの開発および提供に関する会社)から所属する講座が研究補助金を受領している。

戸田尚宏  バクスター(株)(透析製品,血漿たん白製剤,薬剤投与システムの輸入,製造,販売の会社),第一三共

(株)(医療用医薬品の研究開発・製造および販売の会社),田辺三菱製薬(株)(医療用医薬品を中心とする

医薬品の製造・販売の会社)から研究補助金を受領している。

丸山之雄 テルモ(株)(医療機器・医薬品の製造販売の会社)から研究補助金を受領している。

森本耕吉  バクスター(株)(透析製品,血漿たん白製剤,薬剤投与システムの輸入,製造,販売の会社)から講演謝金

を受領し,寄附講座に所属している。

鷲田直輝  バクスター(株)(透析製品,血漿たん白製剤,薬剤投与システムの輸入,製造,販売の会社)からの寄附講

座に所属している。

P a r t 1

x

渡邉公雄 (株)日本トリム(医療用整水器の開発および販売の会社)から顧問の報酬を受領している。

古薗 勉  (株)ソフセラ(医療機器,医療デバイスの開発,開発協力の会社)から研究補助金を受領し技術顧問として

所属している。

政金生人  中外製薬(株)(医療用医薬品の製造・販売および輸出入の会社),鳥居薬品(株)(医薬品の製造・販売の会

社),協和発酵キリン(株)(医療用医薬品の製造および販売の会社),東レ・メディカル(株)(医療機器・医

療関連製品・医薬品の製造,販売および輸出入の会社),ニプロ(株)(医療機器,医薬品の製造,販売の会

社)から研究補助金および講演等の謝金を受領している。

(順不同)

(ここにあげられていない委員には利益相反の事項は発生していない。)

伊藤委員長は,寄附講座によるCOIにてSR, パネル会議の議論には参加せず,竜崎副委員長が担当した。

本ガイドラインのPart 1の文章の多くは,Part 2のようなシステマティックレビューを実施することができない。

または,できていない事項が多く入っている。この理由より推奨度はつけず,ポイントという形でまとめた委員会オ

ピニオンとなっている。透析,腹膜透析の分野では,RCTを含めたエビデンスが不足している。今後,広くエビデ

ンスの構築がなされ,より科学的妥当性の検証が行われたガイドラインに発展することを期待している。

次回の改訂は,5年をめどに準備を進める予定である。

今回,日本透析医学会にとって初めてのGRADEシステムを取り入れたガイドライン作成に取り組んだ。外部委員

の先生のご指導のもと進めたが,経験が浅く改善の余地が残るものであった。しかしながら,可能な限りSRメン

バーはエビデンスをしっかり評価し,パネル会議においても望ましいメンバーに集まっていただき推奨度の決定を行

った。COI 開示から透明性の高いガイドライン作りを心がけ進め作成した。腹膜透析の診療に役に立ち,予後改善

に結びつけば幸いである。学術委員含め総勢83名が本ガイドライン改訂に参加していただいた。多くの時間を費や

していただいた委員の各位に謝意を表する。

腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループ

委員長  伊藤恭彦

副委員長 竜崎崇和

xi

目  次腹膜透析ガイドライン改訂にあたって ⅰ

略語一覧 xvii

第一章 導入

1.情報の提供と同意 4

2.導入前教育と計画的な導入 4

3.透析導入時期 5

4.糸球体濾過量6.0 mL/min/1.73 m2未満の例 5

⿎⿎小児患者の導入 8

1.導入の準備 8

2.腎機能評価法と適応 8

3.絶対的適応と相対的適応 9

第二章 適正透析

1. 物質除去や除水からみた適正透析(β2-MG,酸塩基状態を含む) 11

1-1.腹膜での物質交換 11

1-2.溶質除去とクリアランス 12

1-3.水分除去 14

1-4.酸・塩基平衡 15

2.循環動態からみた適正透析 16

2-1.血圧管理 16

2-2.�体液量管理(適正体重�“ドライウェイト”�の維持) 19

3.併用療法における適正透析(PD+HD併用療法) 19

3-1.PD+HD併用療法(定義,現状,目的) 20

3-2.PD+HD併用療法における溶質除去量の計算 21

3-3.PD+HD併用療法の効果 22

3-4.PD+HD併用療法での適正透析 24

3-5.PD+HD併用療法による腹膜保護効果 25

3-6.PD+HD併用療法において留意すべき点 26

⿎⿎小児患者の適正透析 30

1.物質除去や除水からみた適正透析 30

2.循環動態からみた適正透析 30

Part 1

xii

3.併用療法における適正透析(PD+HD併用療法) 31

第三章 栄養管理

1.腹膜透析患者の栄養障害 33

2.腹膜透析患者の栄養管理 34

2-1.総摂取エネルギー 34

2-2.たんぱく質摂取量 35

2-3.食塩摂取量 35

3.評価と指導介入 36

3-1.栄養状態の評価 36

3-2.栄養介入 38

⿎⿎小児患者の栄養管理 42

1.小児腹膜透析患者の栄養管理の基本 42

2.小児腹膜透析患者の栄養評価 42

3.小児腹膜透析患者の栄養管理 43

3-1.総摂取エネルギー 43

3-2.たんぱく質 43

3-3.食塩 43

第四章 腹膜機能

1.腹膜平衡試験について 45

2.腹膜平衡試験の結果をもとにした研究 46

3.排液中バイオマーカーの研究 47

⿎⿎小児患者の腹膜機能 50

1.小児のPET標準化と実施法 50

2.PETに基づいた腹膜機能の研究 50

2-1.年齢,透析期間,腹膜炎と腹膜機能の関係 50

2-2.中性化透析液の腹膜機能への影響 51

第五章 被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件

1.被囊性腹膜硬化症と腹膜劣化 53

1-1.�酸性透析液の疫学 53

1-2.�中性化透析液の影響と現在の課題 54

2.腹膜劣化の判断法と課題 54

2-1.腹膜劣化 54

2-2.EPSと腹膜劣化 54

3.EPSの認識と現状 55

3-1.発症様式 55

xiii

3-2.治療 56

3-3.EPSの今後 56

⿎⿎小児患者のEPS回避のための中止条件 59

1.腹膜透析期間 59

2.透析液の種類 59

3.除水不良,PETカテゴリー 59

4.腹膜炎 60

5.発症時期 60

6.予測因子 60

7.生命予後 60

第六章 腹膜炎管理

1.腹膜透析関連腹膜炎の疫学,発症率 61

1-1.感染の原因と腹膜炎の定義 61

1-2.発症率 62

1-3.危険因子 63

1-4.起因菌 63

2.腹膜透析関連腹膜炎の症状と診断 63

2-1.腹膜炎の症状 63

2-2.腹膜炎の診断 64

2-3.起因菌の検査方法 65

2-4.新規検査法について 66

3.腹膜透析関連腹膜炎の治療 66

4.起因菌別による治療 69

4-1.コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 69

4-2.黄色ブドウ球菌 69

4-3.腸球菌 70

4-4.連鎖球菌 70

4-5.コリネバクテリウム 71

4-6.緑膿菌 71

4-7.その他のグラム陰性菌 72

4-8.複数菌による腹膜炎 72

4-9.培養陰性腹膜炎 73

4-10.真菌性腹膜炎 74

4-11.結核性腹膜炎 75

4-12.非結核性マイコバクテリアによる腹膜炎 75

4-13.カテーテル抜去と再挿入 76

5.腹膜炎の予防 77

5-1.カテーテル留置 77

5-2.カテーテルデザイン 78

xiv

5-3.教育プログラム 78

5-4.透析液 79

5-5.腸管と婦人科的原因に由来する感染 79

5-6.その他の修正可能な要因 80

5-7.二次予防について 80

⿎⿎小児患者の腹膜炎管理 89

1.小児PD患者におけるPD関連感染性腹膜炎 89

2.小児PD関連感染性腹膜炎の診断・治療 89

第七章 カテーテル・出口部管理

1.腹膜透析カテーテル挿入術 93

1-1.周術期管理 93

まとめ 99

2.通常の出口部および皮下トンネル管理 100

2-1.カテーテル関連感染症の臨床的意義と定義(診断) 100

2-2.カテーテル関連感染に関する疫学 100

2-3.外来時における観察の必要性 101

2-4.出口部感染の予防 101

2-5.被覆の有無,被覆の方法 102

3.出口部・皮下トンネル感染に対する非観血的治療 103

3-1.非観血的治療の適応と限界 103

3-2.培養検体の採取 103

3-3.抗菌薬の選択原則 103

3-4.投与量,投与期間 104

4.出口部・皮下トンネル感染に対する観血的対応 104

4-1.Unroofi�ng法(±cuff��shaving法) 104

4-2.出口部変更術(subcutaneous�pathway�diversion:�SPD) 105

4-3.カテーテル入れ替え術 106

⿎⿎小児患者のカテーテル・出口部管理 110

1.カテーテル挿入 110

2.出口部・皮下トンネル管理 111

xv

Part 2はじめに 115

1.推奨文のサマリー 116

2.方法 116

2-1.診療ガイドライン作成方法について 116

2-2.腹膜透析ガイドラインの対象について 117

3.結果・推奨 117

3-1.�CQ1:腹膜透析患者に,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)(ACEI,�ARB)の内服は有

用か? 117

3-2.�CQ2:腹膜透析患者に,イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用のど

ちらが有用か? 120

3-3.�CQ3:腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗生剤軟膏

塗布なしのどれがよいか? 121

3-4.�CQ4:腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカ

テーテル挿入のどちらが有用か? 123

3-5.�CQ5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は,経静脈投与か,腹腔内投与のどちらがよいか? �

125

3-6.CQ6:糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか? 126

⿎⿎付録

1.診療ガイドラインについて 131

2.資金調達 131

3.クリニカルクエスチョン(CQ)・システマティックレビュー(SR)について 131

3-1.Analytic�framework 131

3-2.クリニカルクエスチョン(CQ) 131

3-3.CQとSRの関係 132

4.アウトカムについて 133

4-1.アウトカム一覧 133

4-2.各アウトカムの詳細な定義(定義が研究によって異なる場合は,厳密に従ってない場合もある) 134

5.検索式と解析方法 135

5-1.疾患(腹膜透析)について 135

5-2.研究デザインについて 135

xvi

5-3.データベース 135

5-4.データ抽出と分析 135

5-5.バイアスリスク 135

5-6.治療効果の評価 136

6.Evidence-to-decision(EtD)frameworks(EtD表)と基になるシステマティックレビュー 136

6-1.��CQ1:腹膜透析患者に,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)(ACEI,�ARB)の内服は有

用か? <SR1:腹膜透析患者における,SR1.1.�ACEIまたはARBと他の薬剤の比較とSR1.2.�ACEI

とARBの比較> 136

6-2.��CQ2:腹膜透析患者に,イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用のどち�

らが有用か? <SR2:腹膜透析患者に対する,イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ

糖)透析液単独使用の比較> 149

6-3.��CQ3:腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗生剤軟膏塗

布なしのどれがよいか? <SR3:腹膜透析患者の出口部への塗布としてSR3.1.�ムピロシン軟膏と

対照の比較,SR3.2.�ムピロシン軟膏とゲンタマイシン軟膏の比較> 158

6-4.��CQ4:腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカ�

テーテル挿入のどちらが有用か? <SR4:腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術

のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入の比較> 167

6-5.��CQ5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は,経静脈投与か,腹腔内投与のどちらがよいか? 

<SR5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者に対して,SR5.1.抗菌薬の経静脈投与と抗菌薬の持続的腹腔

内投与の比較,SR5.2.抗菌薬の経静脈投与と抗菌薬の間欠的腹腔内投与の比較> 176

6-6.�CQ6:糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか?

<SR6:糖尿病性腎症の患者への透析療法に対して,腹膜透析開始と血液透析開始の比較> 180

6-7.��CQ7(取り下げ:経過報告):腹膜炎を併発した腹膜透析患者において,初回腹腔洗浄を実施すること

は,腹膜炎治療において有効か? 187

索引 189

xvii

略語一覧

% CGR % creatininegenerationrate(%クレアチニン産生速度)

ABPM ambulatorybloodpressuremonitoring(自由行動下血圧測定)

AC armcircumference(上腕周囲長)

ACEI angiotensin-converting-enzymeinhibitor(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)

AMA armmusclearea(上腕筋面積)

AMC armmusclecircumference(上腕筋囲長)

ANP atrialnatriureticpeptide(心房性ナトリウム利尿ペプチド)

ARB angiotensinⅡreceptorblocker(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)

β2-MG β2-microglobulin(β2-ミクログロブリン)

BIA bioelectricimpedanceanalysis(生体インピーダンス法)

BMI BodyMassIndex(体格指数)

CAPD continuousambulatoryperitonealdialysis(連続携行式腹膜透析)

Ccr creatinineclearance(クレアチニンクリアランス)

CKD chronickidneydisease(慢性腎臓病)

CNS coagulase-negative staphylococci(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)

COI conflictofinterest(利益相反)

CPG clinicalpracticeguideline(診療ガイドライン)

CQ clinicalquestion(クリニカルクエスチョン・臨床疑問)

CRP C-reactiveprotein(C反応性蛋白)

DEXA dual-energyX-rayabsorptiometry(二重エネルギー X線吸収測定法)

EAPOS EuropeanAutomatedPeritonealDialysisOutcomeStudy

ECF extracellularfluid(細胞外液)

eGFR estimatedglemerularfiltrationrate(推算糸球体濾過値)

EKR equivalenturearenalclearance(腎相当尿素クリアランス)

EPDWG EuropeanPaediatricDialysisWorkingGroup

EPS encapsulationperitonealsclerosis(被囊性腹膜硬化症)

ERA-EDTA EuropeanRenalAssociation-EuropeanDialysisandTransplantAssociation(ヨーロッパ腎臓学会)

ESA erythropoiesisstimulatingagent(赤血球造血刺激因子製剤)

ESBLs extended-spectrumβ-lactamases(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)

ESH EuropeanSocietyofHypertension(ヨーロッパ高血圧学会)

FastPET frequentlyandshorttimeperitonealequilibrationtest(簡易腹膜平衡試験)

GDPs glucosedegradationproducts(ブドウ糖分解物質)

GFR glomerularfiltrationrate(糸球体濾過量)

GNRI geriatricnutritionalriskindex(栄養関連指標)

GRADE GradingofRecommendations,Assessment,DevelopmentandEvaluation

HD hemodialysis(血液透析)

ICF intracellularfluid(細胞内液)

IL-6 interleukin-6(インターロイキン-6)

xviii

IPPR TheInternationalPediatricPeritonitisRegistry(国際小児腹膜炎レジストリ)

ISPD InternationalSocietyforPeritonealDialysis(国際腹膜透析学会)

JSDT TheJapaneseSocietyforDialysisTherapy(日本透析医学会)

K/DOQI KidneyDiseaseOutcomesQualityInitiative

LBM LeanBodyMass(除脂肪体重)

LVMI leftventricularmassindex(左室心筋重量係数)

MD meandifference(平均値差,統計量平均値差)

MNA mininutritionalassessment(簡易栄養状態評価表)

MRSA Methicillin-resistantStaphylococcus aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)

MTAC over-allmasstransferareacoefficient(総括物質移動・膜面積係数)

MUST malnutritionuniversalscreeningtool

NAPRTCS NorthAmericanPediatricRenalTrialsandCollaborativeStudies

NECOSAD NetherlandsCooperativeStudyontheAdequacyofDialysis

NICE-GL NationalInstituteforHealthandCareExcellence-Guideline

nPCR normalizedproteincatabolicrate(標準化蛋白異化率)

nPNA normalizedproteinnitrogenappearance(標準化蛋白窒素出現量)

PCR proteincatabolicrate(蛋白異化率)

PD peritonealdialysis(腹膜透析)

PDOPPS PeritonealDialysisOutcomesandPracticePatternsStudy(腹膜透析アウトカムと実践パターン研究)

PET peritonealequilibrationtest(腹膜平衡試験)

PWAT peritonealwallanchortechnique(腹膜壁アンカー技術)

QOL qualityoflife(生活の質)

RCT randomizedcontrolledtrial(無作為化比較試験)

RRF residualrenalfunction(残存腎機能)

SGA subjectiveglobalassessment(主観的包括的評価)

SMAP法 StepwiseinitiationofperitonealdialysisusingMoncriefandPopovichtechnique

(段階的腹膜透析導入法)

SMD standardizedmeandifference(標準化平均値差,統計量標準化平均値差)

SR systematicreview(システマティックレビュー)

TSF tricepsskinfoldthickness(上腕三頭筋皮下脂肪厚)

VEGF vascularendothelialgrowthfactor(血管内皮増殖因子)

VRE vancomycin-resistant Enterococci(バンコマイシン耐性腸球菌)

Part1導入第一章

適正透析第二章

栄養管理第三章

腹膜機能第四章

被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件

第五章

腹膜炎管理第六章

カテーテル・出口部管理第七章

第一章 導入

3

Part1

2009年版日本透析医学会「腹膜透析ガイドライン」では,導入項目に指針として上記4点を提示した 1)。今回も

同様のポイントの提示を行う。

(注1) 2009年版日本透析医学会「腹膜透析ガイドライン」に関するアンケート調査が2011年に行われた 2)。導入

前の療法選択の情報提供に関して,血液透析,腹膜透析,腎移植の全て行っている64%,患者によって情報

を選別している23%,全ては行っていない13%であり,患者毎に提供する情報に関してバイアスが存在し

ていることが示唆された。

(注2) 腎代替療法に関する情報提供について,日本透析医学会「維持血液透析ガイドライン:血液透析導入」

(2013年)(ステートメント3)3),日本医療研究開発機構委託研究「CKDステージG3b~5診療ガイドライン

2017(2015追補版)」(CQ1)4)において,同様の推奨がなされている。

(注3) 保存的治療に抵抗性の臨床症状とは,腎機能低下に伴って出現する次の諸症状を指す。体液貯留(浮腫,胸

水,腹水),栄養障害,循環器症状(呼吸困難,息切れ,心不全,高血圧),腎性貧血,電解質異常(低カルシ

ウム血症,高カリウム血症,低ナトリウム血症,高リン血症),酸塩基平衡異常(代謝性アシドーシス),消

化器症状(吐き気,嘔吐,食欲不振),神経症状(意識障害,けいれん,しびれ)。

導入時期の判断について,日本透析医学会「維持血液透析ガイドライン:血液透析導入」(2013年)(ステー

トメント6)で,糸球体濾過量 15.0 mL/min/1.73 ㎡未満になった時点で,導入を判断する必要性が生じて

くる,とされている3)。

安定した時期の腎機能の評価は血清クレアチニン値,年齢・性別を用いた推算糸球体濾過量(eGFR)を用い

て行う。また CKD ステージ 4(糸球体濾過量 30.0 mL/min/1.73 ㎡未満,15.0 mL/min/1.73 ㎡以上),ス

テージ5(GFR 15.0 mL/min/1.73 ㎡未満)の判定はeGFRにて行う(附則1)。

透析導入にあたっては,可能な限り24時間蓄尿によるGFR の測定を行う(附則2)。

(注4) 透析導入のタイミングについて,日本透析医学会「維持血液透析ガイドライン:血液透析導入」(2013年)

██ ポイント1.⿎ 腹膜透析の導入に際しては,血液透析,腹膜透析,さらに腎移植に関する十分な情報を患者

に提供し,同意を得たうえで決定する。患者によって提供する情報の選別は行わない(注1)。

2.⿎ 腹膜透析の有用性を生かすために,適切な患者教育を行い,計画的に導入する。慢性の腎機能低下に伴い,CKD ステージ 4(糸球体濾過量 30.0 mL/min/1.73 ㎡未満,15.0 mL/min/1.73 ㎡以上)に至った時点で,腎代替療法に関する情報を提供する(注2)。

3.⿎ CKD ステージ 5(糸球体濾過量 15.0 mL/min/1.73 ㎡未満)の患者で,保存的治療に抵抗性の臨床症状が出現した場合に,透析導入を考慮する(注3)。

4.⿎ 糸球体濾過量が6.0 mL/min/1.73 ㎡未満の場合には,透析導入を考慮する(注4)。

導入第一章

P a r t 1

4

(ステートメント7)では,「腎不全症候がみられても,GFR<8 mL/min/1.73 ㎡まで保存的治療での経過観

察が可能であれば,血液透析導入後の生命予後は良好であった。ただし腎不全症候がなくとも,透析後の生

命予後の観点からGFR 2 mL/min/1.73 ㎡までには血液透析を導入することが望ましい。」と推奨されてい

る3)。

また,日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」(透析治療導入まで,CQ2)でもほ

ぼ同様に,「尿毒症症状の出現のないeGFR 8~14 mL/分/1.73 ㎡程度での早期導入は,透析導入後の予後

改善に寄与しない。一方で,症状がなくともeGFR 2 mL/分/1.73 ㎡までに導入しないと生命予後が悪化す

る可能性がある。」とされている5)。

腹膜透析では,残腎機能がその治療継続に重要な位置を占める。そのため残腎機能の維持が期待される腹膜

透析では,無症状であっても残腎機能の残された時期での導入が必要である。

解 説2009年版日本透析医学会「腹膜透析ガイドライン」に関するアンケート調査が2011年に発表された。腎代替療

法に関する情報提供の説明資料の共有や標準化が行われていること,医師以外のスタッフ,特に看護師がすでに大き

な役割を果たしていること,9割の施設で導入時のeGFR算出が行われている現状,などが確認された2)。

そのため本項では2009年版「腹膜透析ガイドライン」を基本とし,それ以降のエビデンスや情報を加えて解説を

行う。

情報の提供と同意透析導入にあたっては,適切な医療情報の提供を患者本人,また,必要に応じてその患者家族,保護者や介護者に

対して行う。情報の提供と同意にあたっては医師,看護師,医療ソーシャルワーカー,さらには臨床工学技士などを

含めたチームで行うことが望ましい。透析導入時の情報の提供と同意にあたっては,末期腎不全の腎代替療法として

血液透析,腹膜透析,さらに腎移植の三つの療法があること,さらにそれぞれの療法の利点,欠点を説明し,患者の

十分な理解と,透析療法の選択を促すように指導する(附則3)。現在,わが国での末期腎不全の治療法に関する情報

の提供は十分とはいえず,腹膜透析に関する情報提供は,腹膜透析を施行している施設に限られる傾向が強い6)。情

報は偏らずに提供されるべきであり,そのうえで,腹膜透析治療を行えない施設の患者が腹膜透析導入を希望する場

合には,本療法が可能な透析施設との医療連携を積極的に図る。

平成30年度の診療報酬改定において,腹膜透析の推進に資する取組みや実績等が評価されることとなった。すな

わち,関連学会の作成資料やそれを参考に作成した資料に基づき,腎代替療法について,患者に十分な説明を行った

場合に導入期加算が算定され,腹膜透析の指導管理に係わる実績,および腎移植の推進に係わる取組みの実績を有す

る場合に加算が算定される。

なお,終末期における透析の非導入,見合わせについては,維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセス

についての提言が2014年に出されているが7),腹膜透析に関する提言はなされていない。腎代替療法以外の保存的

治療を行うこともある。

導入前教育と計画的な導入腹膜透析の導入にあたっては,導入前患者教育を行い計画的に導入する。特に腹膜透析への導入は,残存腎機能の

維持される時期に計画的に導入することが,導入時期の合併症の回避,患者生命予後に重要であることが確認されて

いる8)。専門医への積極的な紹介,外来での腎不全教育は,適切な時期での計画的な透析導入を促すことより,その

意義は大きい9~12)。

1

2

第一章 導入

第一章 導入

5

Part1

早期に専門医へ紹介された患者(おおむね導入の6か月以上前)は,直前に紹介された患者と比較して,腹膜透析を

最初の腎代替療法として開始する傾向を有する13,14)。また導入前の患者教育への介入と腹膜透析の選択との間に強い

関連がみられることが報告されている15)。

計画的な導入にあたっては,特に,カテーテル埋め込み術に関する入院や手術に伴う潜在的な合併症が問題とな

る。これらの課題に対する試みとして,わが国では段階的な腹膜透析導入方法が実践されている。これは臨床症状が

出現する以前に,腹膜透析カテーテルの挿入と埋め込みを行い,時機を逸さずに腹膜透析治療を開始するやり方

(SMAP法:Stepwise initiation of PD using Moncrief and Popovich technique)である16,17)。

透析導入時期現在のところ十分なエビデンスに基づく透析の導入基準は策定されていない。それは末期腎不全患者の病態が,原

疾患,年齢,栄養状態,合併症などの因子に強く影響されるためと思われる。現在,わが国で広く受け入れられてい

る透析導入基準は,1991年に厚生科学研究腎不全医療研究事業により策定された基準である18)。腎機能と臨床症状,

日常生活の障害程度を基に総合的に評価するものであり,この基準案の妥当性は透析導入後2年間の生命予後や合併

症の追跡調査などにより検証されている18)。さらに,高齢者や小児への配慮もなされた基準となっている。しかし

ながら,この導入基準は血液透析導入を想定したものであり,腹膜透析での検証はなされていない。一方,米国の導

入基準は血液透析,腹膜透析を問わず CKD ステージ 5(GFR が 15 mL/min/1.73 ㎡以下)を目安としている19)。欧

州でも同様に,CKD ステージ5 を基準にして,アクセス手術の準備を推奨し,さらに腎不全の臨床症状の出現,栄

養状態の悪化した時点で透析導入を行うよう推奨している20)。現在の世界の導入基準をふまえて,わが国において

も腎機能の評価法としてはGFR を基準とすることを推奨する。そして,良好な栄養状態や高い生活の質(Quality of

Life: QOL)を維持,確保するために適切な時期に導入する21~24)。治療抵抗性の臨床症状が出現した場合は,患者生

命予後の観点から透析導入を遅らせるべきではない25)。

糸球体濾過量6.0 mL/min/1.73 ㎡未満の例腹膜透析の持つ医学的利点として,残存腎機能の保持 26,27),良好なQOL の維持や高い満足度28,29)などが指摘され

ている(附則4)。一方,腎不全の臨床症状を呈さずに適切に管理されている例において,腎機能の観点のみから導入

基準を設ける医学的な根拠は必ずしも十分ではない30~32)。しかしながら,腎機能の低下と栄養状態悪化とは強い関

連性があること33,34),また腹膜透析導入後に残存腎機能が患者予後に与える影響は大きいことから 35,36),腹膜透析導

入が予定されている例では,少なくとも晩期まで導入を待機すべきではない。自他覚症状が認められない場合でも,

GFR が 6.0 mL/min/1.73 ㎡未満の場合は導入を考慮する。

前向き観察研究において,eGFRが5.0~10.0 mL/min/1.73 ㎡でPDに導入された患者群は,5 mL/min/1.73 ㎡

未満での導入群や10 mL/min/1.73 ㎡以上での導入群に比較して有意に生命予後が良好であった37)。一方,ランダ

ム化比較試験で,計画的に腹膜透析に導入された患者においては,早期開始群(eGFR 10~14 mL/min/1.73 ㎡)と

晩期開始群(eGFR 5~7 mL/min/1.73 ㎡)で生命予後に有意な差を認めなかったとの報告がある38)。

附則1

日本人の推定式については日本腎臓学会の推算式に準ずる39)。小児の腎機能評価にこの式は使用しない(小児患者

の導入を参照)。

附則2

透析導入時に,上記のeGFR で評価する妥当性に関しての十分なエビデンスは現在のところはない。透析導入に

あたっては,できる限り実測GFR の評価を行う。透析導入時の正確な腎機能評価について,日本透析医学会「維持

血液透析ガイドライン:血液透析導入」(2013年)(ステートメント2)では,イヌリンクリアランス試験,24時間蓄

3

4

P a r t 1

6

尿によるクレアチニンクリアランス,クレアチニンクリアランスと尿素クリアランスの和(Ccr+Curea)/2など,実

測法による評価が勧められている3)。

なお,腎臓機能障害に関する身体障害者手帳の認定基準においては,血清クレアチニン値または内因性クレアチニ

ンクリアランスが用いられ,2018年4月より3級,4級の判定にはeGFRも適用可能となった。

附則3

末期腎不全の腎代替療法を説明する資料として,日本腎臓学会,日本透析医学会,日本移植学会,日本臨床腎移植

学会,日本腹膜透析医学会の5学会合同の説明書がある(「腎不全治療選択とその実際(2018年版)」)。

附則4

腹膜透析の利点に注目して,腹膜透析を末期腎不全治療の第一選択とするPD ファーストの概念が提唱されてい

る40)。当委員会では,わが国の実情を鑑み,この概念を「腹膜透析の利点を十分に生かすために,残存腎機能を有

する患者で腹膜透析への導入を優先的に考慮する考え方」と定義する。

残存腎機能とは透析導入後の腎機能を指す。一日尿量100 mL 以上を残存腎機能ありと定義する。

引用文献

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第一章 導入

第一章 導入

7

Part1

24) Paniagua R, Amato D, Vonesh E, Guo A, Mujais S; Mexican Nephrology Collaborative Study Group. Healthrelated quality of life predicts outcomes but is not affected by peritoneal clearance: The ADEMEX trial. Kidney Int 2005; 67: 1093-104.

25) Bargman JM. Timing of Initiation of RRT and Modality Selection. Clin J Am Soc Nephrol 2015; 10: 1072-7.26) Berlanga JR, Marron B, Caramelo C, Ortiz A. Peritoneal dialysis retardation of progression of advanced renal failure.

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rate of decline of residual renal function in incident dialysis patients. Kidney Int 2002; 62: 1046-53.28) Kirchgessner J, Perera-Chang M, Klinkner G, et al. Satisfaction with care in peritoneal dialysis patients. Kidney Int 2006;

70: 1325-31.29) Kutner NG, Zhang R, Barnhart H, Collins AJ. Health status and quality of life reported by incident patients after 1 year

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2000; 58: 1381-8.34) Misra M, Nolph KD, Khanna R, Prowant BF, Moore HL. Retrospective evaluation of renal kt/V(urea) at the initiation of

long-term peritoneal dialysis at the University of Missouri: relationships to longitudinal nutritional status on peritoneal dialysis. ASAIO J 2003; 49: 91-102.

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37) Kim HW, Kim SH, Kim YO, et al. The Impact of Timing of Dialysis Initiation on Mortality in Patients with Peritoneal Dialysis. Perit Dial Int 2015; 35: 703-11.

38) Johnson DW, Wong MG, Cooper BA, et al. Effect of timing of dialysis commencement on clinical outcomes of patients with planned initiation of peritoneal dialysis in the IDEAL trial. Perit Dial Int 2012; 32: 595-604.

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P a r t 1

8

⿎⿎小児患者の導入

解 説

導入の準備小児における透析導入においても成人と同様の情報提供と同意が必要である。成人では,いろいろな合併症が生じ

始める時点であるCKD-3(eGFR 30~60 mL/min/1.73㎡),遅くともeGFR 30 mL/min/1.73 ㎡には専門医療施設

に紹介することが提案されており1),小児でも同様の時期には,腹膜透析,血液透析,腎移植について,十分な知識

を有する医療チームが対応し,十分な時間を掛けて治療方針を決定すべきである。腎臓とともに他の重篤な疾患を合

併する場合には,「重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン」2)や「維持血液透析の開始と継

続に関する意思決定プロセスについての提言」3)を参考にして,患者・家族とともに多くの職種を交え,患者・家族

にとって何がベストであるかを検討することが大切である。

小児の導入時期の決定には,成長や社会性の発達など,後に取り戻せない合併症への影響も考慮する。腎移植も含

めた長期にわたる生涯治療を考慮し,早期に小児腎臓病専門医への紹介が重要である。社会性の獲得に必須である在

宅環境での治療,成長に不可欠な栄養の摂取・体液量の余裕度のなさに対する連日透析,就学・課外活動などを可能

にする夜間透析など,腹膜透析療法が有する多くの利点から小児では腹膜透析が選択されることが多く4),4歳以下

の腎不全児では87%が腎代替療法として腹膜透析で開始5)しているように,低体重児の透析療法は腹膜透析がほぼ

唯一の治療法である。

腎機能評価法と適応小児において,腎機能の評価は小児用のGFR推算式(eGFR)を用いる。小児のeGFRには,Cr6~8),CysC9),

β2MG10)の3つの式があり,対象年齢や体格などに注意を要する(付記)。

腎機能による小児の適切な腹膜透析療法開始時期の絶対的なコンセンサスはなく11,12),本邦のエビデンスに基づく

CKD診療ガイドライン2013および2018では導入基準についてのCQはなく,維持血液透析ガイドラインの小児の

項13)では,無症候であったとしてもGFR <10 mL/min/1.73 ㎡に低下したら透析導入を考慮すると記載されている。

一方,海外の小児導入基準については,K/DOQI(Kidney Disease Outcomes Quality Initiative)には eGFR 9~14

mL/min/1.73 ㎡で検討し,8 mL/min/1.73 ㎡には開始すべきとし14),栄養不良や成長障害,内科的コントロールが

できない合併症があればより高いeGFRでも透析導入が推奨され14),European paediatric peritoneal dialysis

working groupでは症状がないのであれば,10~15 mL/min/1.73 ㎡で始めるべき15)としている。一般に成人の基

準に比較して,合併症などを考慮してより早期に導入することが多い。

1

2

██ ポイント1.⿎ 小児においても,腎代替療法を開始する際には腹膜透析,血液透析,腎移植に関する十分な

情報を患者・家族に提供し,専門医療施設への紹介も含め,時間を掛けて治療方針を決定する。

2.⿎ 導入時期の目安の一つである腎機能の評価には,小児の推算式(eGFR)を用いる。

3.⿎ eGFR 10~15 mL/min/1.73 ㎡ぐらいを導入の目途にするが,成長障害や運動発達遅滞などの症状も合わせて導入時期を決定する。

第一章 導入

第一章 導入

9

Part1

絶対的適応と相対的適応透析の絶対的適応は,重症の尿毒症症状であり,神経学的合併症,降圧薬などでコントロールが不可能な高血圧,

利尿薬に反応しない体液過剰による肺水腫,心膜炎,出血性合併症,難治性の嘔気・嘔吐などがあげられる 11)。絶

対的な透析適応症がない場合,小児における腎機能による適切な開始時期のコンセンサスはなく11,12),腎機能と腎不

全の臨床症状を基に総合的に評価する。相対的適応としては,より軽症の尿毒症症状である易疲労,認知機能低下,

学校生活の質の低下などや,高カリウム血症,高リン血症,栄養不良,成長障害などがあげられ,小児の特徴として

は成長障害も臨床症状の重要な項目として判断基準に加わる。乳児では,腎機能よりも成長・発達が重視される16)。

付記

日本人小児のGFR推算式

Cr(mg/dL),CysC(mg/L), β2MG(mg/L), 身長(m)から求める式がある。体格の指標として身長を用いるCr eGFR

は標準の筋肉量から大きく異なる場合に,CysC eGFRは甲状腺機能障害,ステロイド治療などの時に,β2MG

eGFRは炎症疾患の罹患時には不正確な数字になることに注意する。

Cr eGFR6~8)

eGFRCr(mL/分/1.73㎡)=(10.2 × 標準Cr / 患者Cr + 2.93)× R

*標準Cr(mg/dL)

男児:標準Cr

= -1.259×身長5 + 7.815×身長4-18.57×身長3 + 21.39×身長2-11.71×身長+ 2.628

女児:標準Cr

= -4.536×身長5 + 27.16×身長4-63.47×身長3 +72.43×身長2-40.06×身長+ 8.778

*R:2歳以上…R=1,生後3か月から23か月まで…R = 0.107×In(月齢)+ 0.656

CysC eGFR9)

eGFRCys(mL/分/1.73㎡)= 104.1/Cys-C-7.8

β2MG eGFR10)

eGFRβ2MG (mL/分/1.73㎡)= 149.0×1/β2MG + 9.15

引用文献

1) 平成27 ~ 29年度日本医療研究開発機構委託研究「慢性腎臓病(CKD)進行例の実態把握と透析導入回避のための有効な指針の作成に関する研究」CKDステージG3b ~ 5診療ガイドライン2017(2015追補版).日腎会誌2017; 59: 1093-216.

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3) 日本透析医学会血液透析療法ガイドライン作成ワーキンググループ, 透析非導入と継続中止を検討するサブグループ.維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言.透析会誌 2014; 47: 269-85.

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9) Uemura O, Nagai T, Ishikura K, et al. Cystatin C-based equation to estimate glomerular filtration rate in Japanese

3

P a r t 1

10

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第二章 適正透析

11

Part1

解 説適正透析の明確な定義は現在のところ確立されていないため,本ガイドラインでは,①物質除去や除水からみた適

正透析,②循環動態からみた適正透析,③併用療法における適正透析の3つに分け,それぞれの考え方を概説する。

物質除去や除水からみた適正透析(β2-MG,酸塩基状態を含む)

⿎⿎1-1.腹膜での物質交換

解 説腹膜透析(peritoneal dialysis: PD)では臓側腹膜および壁側腹膜の毛細血管が半透膜の役割を担い,血液透析

(hemodialysis: HD)で使用するダイアライザの中空糸に相当する1)。

1

██ ポイント1.⿎ 腹膜透析(PD)の適正透析に関する明確な定義は確立されていない。

2.⿎ 溶質除去に関しては尿素を指標として,残存腎機能を含めた総Kt/V≧1.7が推奨されてきたが,全身状態を考慮せずに小分子溶質の除去効率だけを増加しても,死亡リスクを低減できるわけではない。

3.⿎ 生命予後規定因子としては,残存腎機能が重要である。また無尿のPD患者では,限外濾過不全と死亡率の増加との間には強い相関が指摘されており,体液量の適切な管理が重要である。

4.⿎ β2-ミクログロブリン(β2-MG)は生命予後に強いインパクトを与えるが,その濃度レベルは残存腎機能と相関し,PDの処方でこれを調節することは困難である。

5.⿎ β2-MG以上の大きさの溶質を除去するには,PD + 血液透析(HD)併用療法が有用である。

適正透析第二章

██ ポイント1.⿎ PDは分子拡散による物質の交換,および浸透流による余剰水分の除去を主なメカニズムと

している。

2.⿎ PDの解析のために多様な数理モデルが駆使され,メカニズムが明らかにされてきた。

P a r t 1

12

1-1-1.腹膜における拡散・浸透・対流

半透膜が溶媒(水)のみを通し,溶質を透過させない場合,時間経過とともに低濃度側流体が高濃度側流体へと浸透

する。この現象を阻止するのに必要な最小の圧力を浸透圧という。半透膜が溶質分子をある程度透過させる場合に

は,高濃度側から低濃度側に濃度勾配に基づく分子拡散が生じる。このとき高濃度側流体に陽圧,または低濃度側流

体に陰圧をかけることで,分子拡散と同じ方向に水分を移動させることができる。この水の移動は溶質を同伴し,一

般に濾過という。流体の流れに伴う移動現象を対流というが,膜を介した濾過もこの対流の一種である。

HDでは透析液側に陰圧をかけることで濾過(除水)を行うが,PDでは体液よりも高張な透析液を使用し,浸透圧

差で除水を行う。このため腹膜透析では浸透圧が異なる数種類の透析液が用意されている。リンパ管を介して透析液

が体内に再吸収されるルートもあるが,量的にはきわめてわずかである。腹膜の透過性を評価するために,これまで

に種々の数理モデルが提案されてきた。

1-1-2.古典的モデルとthree poreモデル

Hendersonの最初のPDモデルでは,腹膜は均質であり,そこでは分子拡散のみが生じると仮定した2)。この古典

的なモデルに従い,腹膜が1種類の細孔(pore)からなると考えると,β2-MG大の溶質までの透過は説明できるもの

の,アルブミン(分子量66,000)を超える巨大分子は全く透過しないことになる。そこでRippeらは腹膜に2種類の

細孔が存在するという two pore モデルを考案した3,4)。ところがこのモデルでは除水のメカニズムを説明できない

ことが後に判明した。そこでRippeらはthree poreモデル4)を提案し,新たに水分透過のみを担当する第3の細孔

(ultra-small pore)の存在を仮定した。このultra-small poreは細胞を透過する水分の経路(アクアポリン15))を模式

化したものであるため,cell poreの名称もある。

⿎⿎1-2.溶質除去とクリアランス

解 説PDにおける溶質の除去は主として分子拡散である。Continuous ambulatory peritoneal dialysis(CAPD)が提案

された1970年代後半,HDでは分子量3,000程度の溶質までしか除去できなかった。したがってPDにおける中・大

分子溶質の除去能は注目に値した。しかし現在,わが国で90%以上の患者に使用されているスーパーハイフラック

ス(旧Ⅳ型,旧Ⅴ型)ダイアライザは,4時間のHDでβ2-MGを200~300 mg除去できる。これに対して通常の

CAPDにおけるβ2-MGの除去量は1日30 mg程度であり,1週間で比較するとHDのほうが4倍高効率である。した

がって,PDが中・大分子溶質の除去に優れるという認識は,現在のわが国にはない。

生体腎クリアランスの定義を転用することで,PDのクリアランスKPは

   KP=CD × VD

CP × t・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

██ ポイント1.⿎ PDにおける溶質の除去は主として分子拡散である。

2.⿎ PDの透析量は,総週間尿素Kt/V≧1.7が現実的な値として推奨されているが,この値だけを変化させても,生命予後は変わらない。

第二章 適正透析

第二章 適正透析

13

Part1

と書ける。ここにCDは透析液中濃度[mg/mL],CPは血漿中濃度[mg/mL],VDは透析液排液量[mL],tは透析液貯留

時間[min]である。右辺の4つの因子はいずれも時間とともに変化するため,KP自体も時間に対して大きく変化する。

1-2-1.適正透析の重要性

十分な透析量が確保されているかどうかについての判断は,

  ①治療(透析)に関連した合併症の発症がないこと

  ②全身状態が良好に保たれていること

  ③生命予後の判定指標が良好な範囲に入っていること

などによる。しかし,見かけ上①~③が満足されていても,長期にPDを続けることで腹膜の劣化が進行し,PDを

中止した後に被囊性腹膜硬化症(encapsulation peritoneal sclerosis: EPS)を発症することもある。すなわちPDを

無理に継続することは禁物である。適正透析を明確に定義できないのは,上述の事情による。

PD患者では残存腎機能とβ2-MGの血中濃度との間に,強い逆相関がある。すなわちβ2-MGを超える大分子溶質

の除去は残存腎機能に依存し,PDでの除去は困難である。そこで残存腎機能の消失を境に,PDからHDなどへの療

法変更を考慮する必要がある。

1-2-1-1.週間尿素Kt/V(Kt/V)

Kt/Vは尿素クリアランスKと治療時間tの積を,患者の総体液量Vで除した形を持つ無次元の透析量である。

CANUSA研究の結果より残存腎機能と腹膜の両方を合わせた総週間尿素Kt/Vを2.0~2.1とすることが推奨され

た6,7)。尿素では通常,4時間以上の透析液貯留を行えばCD/CP ≈ 1.0となる。このとき無尿であれば,(1)式のKに

PDのクリアランスKPを用いて,

   KP∙ t≈VD・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

は自明である。通常VD ≈ 9.0 L/day ≈ 63.0 L/week程度であるから,体重が60 kgの患者の体液量をV ≈ 36.0 Lと

すれば,1週間当たりのKPt/Vは,

   KPtV

=VD

V≈(63.0)(36.0)

=1.75・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

となる。すなわち,PDだけでKt/V≧2.0を満足することは難しい。加えてKt/Vを人為的に増加しても生命予後に変

化がなかったとするADEMEX 研究8)や,Kt/V≦2.0であっても予後の良好な例を報告したHong Kong研究9)により,

現在では総Kt/V≧1.7が現実的な値として推奨されている10~12)。

1-2-1-2.週間クレアチニンクリアランス(Ccr)

クレアチニンクリアランス(creatinine clearance: Ccr)を世界的な標準値と比較する場合,欧米人の体表面積(腹

膜面積)1.73 ㎡で正規化する。PDではCcr=60 L/wk/1.73 ㎡が目標値とされていたが6),その後の検討ではそれ以

前よりいわれていた45 L/wk/1.73 ㎡が支持されるようになった13)。しかし一般に,筋肉量が確保された患者ではク

レアチニン濃度も高い。事実,日本透析医学会(JSDT)の統計を4年分調査してみると,死亡リスクとクレアチニン

濃度との間には,逆相関がみられる14)。このような事実から現在のガイドラインには,Ccrを至適透析の指標とする

記述はみられない。

1-2-2.Kt/Vと生命予後

HDではKt/Vの増大とともに死亡リスクの低下が報告されている15)。しかし2002年に発表されたHEMO研究16)

ではシングルプールKt/Vが1.32および1.71の群間で,生命予後に有意差は認められなかった。PDでは965名の患

者を,K/DOQIガイドラインの目標値7)であるCcr=60 L/wk/1.73 ㎡を目標にした群(総Kt/V=2.13)と,Ccr=45 L/

wk/1.73 ㎡に保持した群(総Kt/V=1.62)において,2年間生存率を比較したところ,両群間に有意差を認めなかった

(ADEMEX研究8))。すなわちHDでもPDでも,患者の全身状態を考慮せずに小分子溶質の除去効率だけを増加して

P a r t 1

14

も,死亡のリスクを低減できるわけではない。

その他の生命予後規定因子としては,Netherlands Cooperative Study on the Adequacy of Dialysis(NECOSAD)

研究17)で明らかとなった残存腎機能が重要である。また無尿のAPDの患者を対象に行われたEuropean Automated

Peritoneal Dialysis Outcome Study(EAPOS)研究18)では,限外濾過不全と死亡率の増加との間には強い相関が指摘

されている。

1-2-3.透析量の増加法

PDでの中・大分子溶質の除去効率は,使用する透析液量にほとんど関係なく,残存腎機能に依存する。これらの

溶質の除去効率を改善するには,PDにHDを併用する方法(PD+HD併用療法)を行うことが効果的である。小分子

溶質の透析量は透析液を増量することで増加できるが,日中の透析液交換回数を増加することは現実的ではなく,夜

間就寝時に積極的に透析液を交換するAPDが唯一の方法である。

⿎⿎1-3.水分除去

解 説1-3-1.除水と透析液の選択

PDでは透析液と体液(血液)との間に有効な浸透圧差を確保することで除水が行われる。浸透圧物質としては,安

価で血中における生理的濃度範囲では生体毒性がなく,吸収された後もエネルギー源となるブドウ糖(グルコース)が

用いられている。PDの透析液はK+を含まないこと,緩衝剤が乳酸である(最近は重炭酸も使用されている)ことを除

けば,HD用の透析液の組成と大きな違いはないが,浸透圧差により除水を行うため,いずれの透析液メーカーも糖

濃度が異なる3種類ほどの透析液を用意している。これらの浸透圧はおよそ460,400,360 mOsm/kgであり,こ

こではこれらを「高濃度液」,「中濃度液」,「低濃度液」と記す。その用途から明らかなように「低濃度液」といえど

も体液(およそ300 mOsm/kg)よりも高張である。腹膜が連続してブドウ糖に曝露されると腹膜の劣化が進む。これ

は糖濃度が高いほど顕著に進行するため,現在,わが国では高濃度液は使用されておらず,中濃度液の使用もできる

だけ控えるように処方されている。

透析液を中性で調製すると,熱滅菌に伴いブドウ糖がカラメル化を起こすとともに,ブドウ糖の分解物質

(Glucose Degradation Products: GDPs)を生成する。この分解反応を回避するために,以前は透析液のpHを5.0~

5.5前後に調製した酸性液が使用されていた。しかしGDPsの毒性とともに,低pHによる非生理性が疑問視され,

現在わが国で使用されているのは,GDPsの含有量が少ない中性化透析液である。

1-3-2.除水不良の原因と対策

除水不良はカテーテルに異常がある場合と,腹膜の透過性亢進に基づく場合とがある。

██ ポイント1.⿎ PDでは透析液と体液(血液)との間に有効な浸透圧差を確保することで除水が行われる。

2.⿎ 除水不良はカテーテルに異常がある場合と,腹膜の透過性亢進に基づく場合とがある。また,高分子デキストリン(イコデキストリン)を浸透圧物質とした透析液で,除水を劇的に改善できることも多い。

第二章 適正透析

第二章 適正透析

15

Part1

前者の場合には,

 ①カテーテルの位置不良

 ②サイドホールへの大網などの絡みつき

 ③腹壁でのカテーテル縫合の締め過ぎ

 ④カテーテル(または接続チューブ)のキンキング

などの理由が考えられるので,これらを修正する。

後者の場合には,

 ①より高濃度の透析液を使用する

 ②透析液を頻繁に交換することで,透析液交換直後の除水を稼ぐ

 ③高分子デキストリン(イコデキストリン)製剤を使用する

 ④腹膜休息(短期,中期,長期)を実施する

などの対処法が考えられる。実際には①では,腹膜に対するブドウ糖の曝露量が増加し,腹膜の透過性をさらに亢進

させてしまう可能性がある。②はAPDサイクラーを利用して,夜間に短時間で透析液を交換すれば,奏効すること

も多い。③は特定の透析液メーカーに限定されるので,すべての患者に対して利用できるわけではない。また,イコ

デキストリン透析液(1日当たり1回のみの使用に制限されている)を長期に使用することで,次第に除水が得られな

くなった症例も報告されている19)のでやはり注意が必要である。④もすべての患者に有効であるわけではないが,

古くは1990年代から多数の報告がある20~25)。

⿎⿎1-4.酸・塩基平衡

解 説1-4-1.透析液のpHと緩衝剤(アルカリ化剤)

前述のように,以前は酸性熱滅菌透析液が使用されていた。ところがpH 5.2の透析液を腹腔内に貯留しても,15

分以内にpH 6.5以上になることが報告されている26)。これは交換時に排液されなかった残液の影響を受けること,

および透析液が2 Lであるのに対して,体液が30 L以上あるためである。しかし,わずかな時間とはいえ注液のた

びに腹膜が非生理的なpHの透析液に晒されることで,腹膜の劣化が懸念されていた。わが国では2000年に中性化

透析液が上市されて以来,その使用率は急速に拡大し,現在,一部のイコデキストリン透析液を除き,低GDPの中

性化透析液が使用されている。中性化透析液を評価した多施設共同研究では,腹膜の線維化マーカーに変化はなかっ

たものの,中皮細胞マーカーは改善したとしている27)。また,中性化液の使用によりペントシジンは低下するが,

その有効な除去には時間がかかることから,導入初期からの使用が望ましいとされている。これらのことより,PD

を長期継続するうえで中性化液の必要性は,国際的には証明されてはいないが,わが国発の知見として推奨されるべ

きである。

多くの腹膜透析液には,緩衝剤として乳酸塩が使用されているが,高濃度の乳酸塩も非生理的と考えられてきた。

██ ポイント1.⿎ わが国では,主として中性化透析液が使用されている。

2.⿎ CAPDでは治療中pHが大きく変動することはなく,比較的正常に近い領域で一定となる。

P a r t 1

16

また,PD患者の中には経年的に血漿中重炭酸(HCO3-)濃度が上昇し,アシドーシスの過剰是正やアルカローシスに

よる血管石灰化リスクの増加が懸念されることもある。これらのことから,乳酸塩の使用量を低減し,重炭酸塩を用

いた中性化透析液も開発されている。

1-4-2.体液の酸・塩基平衡是正

腎不全の病態は代謝性アシドーシスであるから,アルカリ化剤(乳酸)によるアシドーシスの是正が必須である。

HDのような間欠治療ではpHが大きく変動するのに較べ,CAPDの場合,pHが大きく変動することはなく,比較的

正常に近い領域で一定となる。体液のpHが酸性域では,肝臓におけるアミノ酸からのアルブミン合成が抑制され

る。CAPDの優れた特性として,酸・塩基平衡の是正効果を指摘する臨床家も多い28,29)。

循環動態からみた適正透析

⿎⿎2-1.血圧管理

解 説2-1-1.疫学と病態

2016年度の日本透析医学会の統計では,透析患者の死亡原因は,心不全,脳血管障害,心筋梗塞などの心血管系

障害が36.1%と多数を占める30)。その原因である動脈硬化の重要な危険因子である高血圧は,透析導入時での頻度

は80~90%に達し,それゆえ,透析患者の生命予後と密接に関連していると考えられる。PD患者はHD患者と比べ,

高血圧や左室肥大の頻度が少なく,その結果として重症不整脈も少ないことが報告されている31)。しかし,HD患者

における高血圧の成因には,①体液量(細胞外液量)過剰,②renin-angiotensin system系の異常(容量負荷に対する

不適切なアンジオテンシンⅡの反応性),③交感神経活性の亢進,④内皮依存性血管拡張の障害,⑤尿毒素,⑥遺伝

因子,⑦エリスロポエチン,などの関与が指摘されている。特に,体液量過剰は主因として寄与し,その是正によっ

て60%以上の患者で血圧を正常化できることが報告されている6,32~34)。すなわち,PD患者を含む透析患者における

降圧治療の原則は適正体重 “ドライウェイト” の適正化が最も重要で,その達成と維持によっても降圧が不十分な場

合に降圧薬投与が有効となる。

PD患者において,高血圧は69~88%の有病率で認められるとされるが,高血圧の定義は種々存在するため,それ

2

██ ポイント1.⿎⿎降圧治療の原則は適正体重 “ドライウェイト” の適正化が最も重要で,その達成と維持によ

っても降圧が不十分な場合に降圧薬投与を考慮する。

2.⿎⿎血圧と生命予後との関係はいわゆる「reverse epidemiology」を呈するが,観察研究による結果であり,介入によるエビデンスではないため注意を要する。

3.⿎⿎血圧管理は収縮期140 mmHg未満かつ拡張期90 mmHg未満にすることを目標とする。また,収縮期血圧110 mmHg未満の過降圧にも注意する。

4.⿎ 高血圧の原因として,体液量(細胞外液量)過剰が最も重要な原因である。

5.⿎ 降圧薬治療はレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬やループ利尿薬などを考慮する。

6.⿎ 日内,週間,季節変動などを考慮し,家庭血圧などを指標として血圧を管理する。

第二章 適正透析

第二章 適正透析

17

Part1

らの文献の定義を解説する。88%とした定義は収縮期血圧(SBP)>140 mmHg または拡張期血圧(DBP)>90 mmHg

または降圧薬服用となっている35)。69%とした場合は,24時間ambulatory blood pressure monitoring(ABPM)で

日中140/90 mmHg以上の値が30%以上または,夜間120/80 mmHg以上の値が30%以上という定義を用いてい

た36)。

PD患者の血圧レベルによる予後は図二-1のようにいわゆる「reverse epidemiology」を呈しており37),

SBP 111~120 mmHgを対照として,これより低下すると全死亡率は有意に上昇するが,対照以上にSBPが上昇し

ても,全死亡率は有意な悪化を認めなかった。これはHD患者でもほぼ同様である38)。

2-1-2.治療

2-1-2-1.降圧目標値

高血圧が心血管合併症を介して予後不良に導くことは一般住民や慢性腎臓病では明らかであるが,PD患者の血圧

レベルによる予後は図二-1のように「reverse epidemiology」を呈する37)。また,死亡率と血圧との関係はPD導

入初期(1年以内)では血圧が高いほど予後が良いが,腎臓移植を待機中で,かつ,導入後6か月以内の患者はこの関

係が消失した39)。また,同研究では,導入後6年以上経つと血圧が高いほど予後が悪くなるという37)。これらの観

察研究から,目標血圧を定めることは困難である。

実際に,PD患者において降圧療法で直接予後改善を示した研究はない。しかし,一般住民や,慢性腎臓病では明

らかに降圧療法が予後を改善しており40),それらから類推して常に血圧をSBP 140 mmHg未満かつDBP 90 mmHg

未満にすることを目標としたい。これらは,ヨーロッパ腎臓学会(European Renal Association-European Dialysis

and Transplant Association: ERA-EDTA)とヨーロッパ高血圧学会(European Society of Hypertension: ESH)の共

同フルレビュー 41)や,国際腹膜透析学会(International Society for Peritoneal Dialysis: ISPD)42)でも同様に推奨さ

れている。

また,前述の観察研究37)では収縮期血圧110 mmHg以下は予後が悪化しており,わが国で施行された慢性腎臓病

2.5

2.0

1.5

1.0

0.5

収縮期血圧(mmHg)

<100 100-110 111-120 121-130 131-140 141-160 161-180 >180

p=0.906

p<0.001

p=0.300

p=0.742

p=0.870

p=0.327

p<0.05全死亡ハザード比

収縮期血圧111~120mmHgを対照として、全死亡のハザード比を収縮期ごとに比較した。110以下の群で有意に死亡が増加しており、対照以上の群では有意なリスクの増加や減少は認められなかった。図二-1 慢性腹膜透析患者における血圧と死亡の関係

収縮期血圧111~120 mmHgを対照として,全死亡のハザード比を収縮期ごとに比較した。110以下の群で有意に死亡が増加しており,対照以上の群では有意なリスクの増加や減少は認められなかった。

P a r t 1

18

を対象とする研究においても,収縮期血圧110 mmHg未満では心血管イベントの増加と生命予後が悪化することも

知られており43),PD患者でも同様と考えられ,過降圧には注意を要する。

2-1-2-2.適正体重 “ドライウェイト” 管理

PD患者の高血圧の原因として,体液量(細胞外液量)過剰が最も重要な原因である44,45)。Bioelectric impedance

analysis (BIA)法を用いた体液分析にて,ドライウェイトを計測し,全死亡や血圧との関係をみたシステマティック

レビューでは,全死亡率の改善はなかったものの,収縮期血圧の良好なコントロールが有意に得られた46)。

また,体液量過剰は一過性であろうが,常にあろうが,残存腎機能(residual renal function: RRF)の低下が早い

ことが報告されている47)。RRF低下からさらに体液量過剰となり,高血圧に至りやすくなることが想像される。

腹膜機能がhigh transport(腹膜透過性が亢進している)であると,高血圧と関連するという報告もある。これは,

high transportから除水不全となり,結果として体液量過剰となり,日中も夜間も高血圧の頻度が増し,左室心筋重

量係数(left ventricular mass index: LVMI)の増加をきたしたものと考えられている48)。体液過剰の頻度はPD患者

ではHD患者に比べ多く,その結果,降圧薬服用頻度もPD患者で多い49)。また,PD期間が長くなると,除水不全

から体液過剰となり,血圧コントロールも悪化する50,51)。

2-1-2-3.降圧薬の選択

RRFがあるPD患者では,尿量を維持することが血圧管理の面からは重要である。フロセミド使用群は非使用群と

比較し,RRF保持には差を認めなかったが,尿量,尿中Na排泄量が高値であった52)。トルバプタンにて尿量のみな

らず,尿中Na排泄量の増加,さらにはRRFの改善が得られたとの報告もある53)。心不全を伴うPD患者でもやはり

RRFの改善と,細胞外液(extracellular fluid: ECF)と細胞内液(intracellular fluid: ICF)の両者ともに減少を認め,

低ナトリウム血症にもなりにくく,体液コントロールでの有益性が高いという報告もある54)。同じく利尿薬でスピ

ロノラクトンなどのミネラロコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)では,左室駆出率の低下や心肥大を防ぐ効果が

報告されている55)。

RRF保持はPD患者の予後を考えるうえで重要である。レニン・アンジオテンシン阻害薬については,アンジオテ

ンシン変換酵素阻害薬(angiotensin-converting-enzyme inhibitor: ACEI)のラミプリル56)と,アンジオテンシンⅡ

受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker: ARB)のバルサルタン投与57)により,降圧効果はプラセボ群と変化

がなかったが,RRFは有意に保持されていたという報告があった。しかし,ACEIもARBもRRFの保持効果および

無尿に至るまでの時間経過に,差を認めなかったという報告もあり58),今後の研究が待たれる。

従来は,体液量過剰状態では,高濃度ブドウ糖PD液の注液で除水をしていたが,被囊性腹膜硬化症の発症危険性

が高まるため,わが国では高濃度のブドウ糖液は使用せず,イコデキストリンを使用し,体外にNaを排泄して体液

量過剰を是正している。中濃度ブドウ糖液からイコデキストリンに変更したところ,血圧は収縮期も拡張期も有意に

低下を認めた59)。

2-1-2-4.血圧変動性

PD患者は夜間高血圧のnon-dipper型血圧変動を呈することが多く 60,61),早朝高血圧の頻度も高い62)。これらは

体液量増加が一つの原因で,除水とともに血圧は低下する59)。

血圧週間変動の観点ではPD患者では,定期的に短時間で除水をするHDと比較して週間変動が少ないことは自明

であるが,実際のデータでは少人数での証明があるのみである63)。HD患者では,透析2日空きの透析前の早朝血圧

はかなり高く,その時点で死亡率の悪化がみられるが,連続透析のPDではそのような変化はほぼみられない64,65)。

季節変動では,気温が上がる時期に血圧は低く,気温が下がる時期に血圧の上昇がみられる66)。

このように,日内,週間,季節変動などを考慮し,家庭血圧などの指標を用いて血圧をコントロールすることによ

り,心血管病発症予防に努めなければならない。

第二章 適正透析

第二章 適正透析

19

Part1

⿎⿎2-2.体液量管理(適正体重 “ドライウェイト” の維持)

解 説NECOSAD研究で明らかなように,残存腎機能は生命予後を規定する重要な因子である17)。また,無尿のAPDの

患者を対象に行われたEAPOS研究18)では,限外濾過不全と死亡率の増加との間には強い相関が指摘されており,ド

ライウェイトの重要性は明らかである。

2-2-1.評価方法

上記のようにPD患者でも適正体重は重要であるが,先の報告と同様にわが国でも体液過剰の患者が30%以上の症

例で認められた67)。ドライウェイトを求めるにはBIAはよい指標ではあるが46),現在,すべての施設で用いられて

いるわけではない。また,機械により異なる周波数帯を用いる場合もあり,ICFなどは消耗によっても変動を示し,

絶対値評価がそのまま臨床に適合するかどうか,症例を重ねないと評価は定まらない。経時的変化を参考にする程度

と考えられる68)。

従来のドライウェイトの決め方はHDでは確立したものがあるが32),PDでは以下の評価で臨床的に決定されてい

る。①理学的所見で末梢に浮腫がない,②胸部X線で胸水や肺うっ血がなく,心胸比が50%未満(女性では53%未

満),③血液中心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide: ANP)濃度50~100 pg/mL,④下大静脈

径と呼吸性変動{安静呼気時最大径(IVCe)と安静吸気時最小径(IVCi)で評価する。IVCeが14~20 mm で

collapsibility index =(IVCe-IVCi)/ IVCe≧0.5が正常}などが参考になるが,これもやはり経時的に変化をみなが

ら運用する69)。

2-2-2.治療法

PD患者で特異的な体液量管理治療法はない。上記の「2-1. 血圧管理」の項を参考に管理されたい。ただし,日本腎

臓学会から塩分摂取量の目標は,腹膜透析除水量や尿量をもとに[除水量(L)×7.5 g]+[残存腎尿量100 mL につき

0.5 g]を目安にするが,尿量の測定困難な場合には0.15 g/kg/日で7.5 gを上限としてもよいとしている70)。詳細は

「第三章 栄養管理」の項を参照していただきたい。

併用療法における適正透析(PD+HD併用療法)3

██ ポイント 体液量(細胞外液量)過剰を避け,適正体重 “ドライウェイト” を維持することが重要であ

る。

██ ポイント⿎ 併用療法はPD単独治療における透析不足(溶質除去不足,水分過剰状態)を改善する治療法

である。

P a r t 1

20

⿎⿎3-1.PD+HD併用療法(定義,現状,目的)

解 説3-1-1.定義と現状

PD+HD併用療法とはPD療法施行中にHDを定期的に追加する治療方法であり,週に1度ないしは2週に1度の

スケジュールでHDを施行するのが,一般的な「PD+HD併用療法」であると考えられる71)。

PD+HD併用療法は1990年代より施行されていたが,当時はHDの手技料等の請求が認められておらず,広く行

われることはなかった72)。2010年4月より,腹膜透析療法(PD)施行症例において週1回の人工腎臓(HD,血液濾過,

血液透析濾過)の算定・請求が承認されたことより,PD+HD併用療法施行症例数は増加し,2016年の日本透析医

学会の統計調査では PD+HD併用療法施行症例は1,831名でPD症例全体の20%強(全PD患者数:9,021名)までと

なっている。現状において,PD+HD併用療法は一つの治療方法としての地位を確立していると思われる。PD歴別

の併用状況をみると,PD歴2年未満では3.4%なのに対し8年以上で53.1%となっており,PD歴の長期化に伴い併

用療法の割合が高くなっている。この要因としてPD継続期間の長期化に伴う残存腎機能(RRF)の低下・喪失と腹膜

機能劣化による溶質除去量および水分除去量の減少が推測される。なお,HDの併用に関しては週1回が8割以上と

大多数を占めている30)。

3-1-2.併用療法の目的

PD+HD併用療法の目的はPDにおける溶質除去不足と水分過剰を改善すること,および腹膜を休息させる効果で

ある。PDは腹腔内に透析液を貯留し,拡散による溶質除去と浸透による除水により腎不全患者の体液の組成と量の

異常を補正する腎代替療法であるが,腹腔内に貯留できる透析液の量と1日(24時間)に貯留できる時間と回数には

限界があり,尿毒症性溶質の除去にも限界がある。これらの理由より,溶質除去量を十分に確保するためにRRFが

存在する時点からのPD療法の開始が推奨されている10)。RRF存在下での PD療法における溶質除去・水分除去は

PDによるものとRRFの総和によるものであるが,PD治療開始後,数年の経過にてRRFが低下・消失するにつれて

溶質除去はPD療法単独によるものとなり,溶質除去量は減少していく。RRF喪失時から開始されたPD療法,PD治

療期間の長期化に伴いRRFが喪失した場合等の溶質除去不足の補完としてHDを併用することは有効な方策となり

うる。2006年12月31日時点でのわが国におけるPD療法離脱の原因としては単独では腹膜炎が27.7%と最多であ

ったが,限外濾過不全(15.5%)および透析不足(13%)を合わせると28.5%であり,溶質除去不足と限外濾過不全は

PD療法離脱の原因として最多を占めていた。この調査結果からもPD離脱予防の方策として,HD併用による限外濾

過不全と溶質除去不足の補完の重要性が確認できる73)。

██ ポイント1.⿎ PD+HD併用療法とは1週間ないし2週間に1度HDを併用する治療法である。

2.⿎ 2016年12月31日現在,わが国において2割強のPD患者が併用療法を施行している。

3.⿎ PD単独療法で溶質除去不足,水分過剰の症例においてHD療法による補完は重要である。

第二章 適正透析

第二章 適正透析

21

Part1

⿎⿎3-2.PD+HD併用療法における溶質除去量の計算

解 説3-2-1.PD+HD併用療法での溶質除去量の算出

PD+HD併用療法は溶質除去不足の補完が目的の一つであることを前述したが,PD+HD併用療法においての至適

透析量を論じる際には,溶質除去量の算出が重要となる。RRF存在下でのPD施行症例においてPDは持続的治療で

あるため,RRFによるクレアチニンクリアランス(Ccr),尿素クリアランス(CUn)とPDによるCcrとCUnを単純に

加算することは可能である。一方,間欠的治療であるHDのCcrとCUnをRRFおよびPDによるCcrとCUnに単純

に加算することはできない。このため,持続的治療であるPDと間欠的治療のHDを併用した場合の溶質除去量を他

の治療モード(PD単独,HD単独)と比較検討することを可能とすべく,PD+HD併用療法における透析量についての

評価,溶質除去の算出についての試みがなされている。KawanishiらはPD排液とHD排液による溶質除去量を測

定74),またequivalent urea renal clearance(EKR)等の計算式を用いてPD+HD併用療法の溶質除去量の算出を行

っている75)。EKRによる算出は,排液等を採取しないため簡便であるが,項目が限られる点が問題となる。また,

症例によっては過剰評価となる可能性も指摘されている75)。YamashitaらはPD排液,HD排液,24時間尿を貯留し,

これらの溶質濃度より算出される浄化空間(クリアスペース)という概念がPD+HD併用療法の溶質除去の指標,他の

治療方法との比較に有用であるとしている76)。

以上のように,PD+HD併用療法における透析量の算出法については議論のあるところであり,統一された見解も

存在しない。しかし,PD+HD併用療法の透析量算出法の標準化なくして,PD+HD併用療法の目標透析量に関して

の議論を行うことは不可能であり,また種々の臨床研究による検証も不可能である。今後,PD+HD併用療法での溶

質除去量の算出法についての見解が統一されることが期待される。

██ ポイント⿎ 併用療法における溶質除去において統一された算出法はない。

P a r t 1

22

⿎⿎3-3.PD+HD併用療法の効果

解 説3-3-1.PD+HD併用療法における体液・循環動態管理

PD症例において水分除去は腹膜よりの限外濾過とRRFが存在する場合は尿量に依存するため体液管理はHDに比

較して不安定である。PD症例においては限外濾過不全を呈しやすいhigh transporterの死亡率が高いとの報告があ

り77),加えてわが国のPD患者におけるPD離脱理由の55%は体液コントロール不良であるとされている78)。このよ

うな限外濾過不全・体液過剰状態に対して,HDの併用は除水を確実なものとし,浮腫・高血圧等が存在しない適切

な体液状態の維持に有用となる。MatsuoらはPD単独療法からPD+HD併用療法に移行した53例を解析し,

PD+HD併用療法移行により体重の減少(p<0.01),収縮期血圧の低下(p=0.03)降圧剤内服量の減少(p<0.01),血液

中心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の減少が得られたことを報告しており,HDの併用が体液量のコントロール

に有用であるとしている79)。また,HDによる限外濾過による水分除去のみならずPDによる排液量も増加するとの

報告もある。SuzukiらはPDに週1回のHDを併用した7例の検討において排液量は平均で890 mL/日から1,150

mL/日に増加したことを報告している80)。PDによる排液量がHDの併用により改善した機序は明らかではないが,

PD+HD併用療法により体液・循環動態の管理が容易になることが想定される。

PD+HD併用療法の特筆すべき点として,血液透析施行時にドライウェイトまでの確実な除水によりPD単独療法

では困難であったドライウェイトの達成が可能となることがあげられる。しかしながら,このドライウェイトの達成

はHD施行時の1日のみであり,長期的な臨床効果については不明である。

3-3-2.PD+HD併用療法の効果

PD+HD併用療法の効果として報告されているものをポイントにあげた79~81)。循環動態の改善としては前述のよう

に,体重の減少(水分過剰の改善による?)・収縮期血圧の改善・降圧剤の服用の減少・血液中ANP濃度の低下が報

告されている。溶質除去に関してMatsuoらは血清β2-MG濃度の低下・血清クレアチニン濃度の低下を報告してい

██ ポイント1.⿎⿎併用療法により循環動態の改善を図ることができる。

⿎ 適正体重 “ドライウェイト” の達成が可能となる。

2.⿎ 併用療法の効果として

⿎ ・血圧の改善

⿎ ・血清β2-MG濃度の低下

⿎ ・血清クレアチニン濃度の低下

⿎ ・貧血の改善

⿎ ・血中CRP濃度の低下

⿎ ・PDによる限外濾過の増加,Ccrの増加

⿎ ・血清アルブミン濃度の維持

⿎ が報告されている。

第二章 適正透析

第二章 適正透析

23

Part1

る79)。2006年のダイアライザの機能分類が施行されて以来,β2-MGの除去性能が高いダイアライザ(血流量200

mL/minにおけるβ2-MGのクリアランスが50 mL/min以上のもの)が多く使用されるようになり82),HD併用によ

るβ2-MGの除去増加の効果と思われる。加えて,ヘモグロビン濃度の上昇(平均値で8.2 g/dLから10.7 g/dLへの上

昇)・エリスロポエチン使用量の減少(平均値で5,800単位/週から4,556単位/週に減少)がMatsuoらにより報告さ

れている79)。2009年の日本透析医学会による統計調査での「HD(F)単独」「HD(F)単独-PDカテあり」「PD単独」

「PD+HD併用」の4治療法別ヘモグロビン値の比較でも,男性・女性とも「PD+HD併用療法」群においてヘモグ

ロビン値が最も高かったこと(男性平均値で10.8 g/dL,女性平均値で10.5 g/dL)が記されており15),PD+HD併用

療法での貧血改善効果を支持するものとなっている。PD+HD併用療法におけるエリスロポエチン使用量の減少や

Hb値の上昇の機序は明確ではないが,要因としてHDを併用することによる溶質除去増加が推測される 83)。炎症の

マーカーとして「CRPの上昇」は透析関連合併症の悪化・栄養不良の危険因子とされているがPD+HD併用療法に

よるCRP濃度の低下(平均値で0.5 mg/dLから0.2 mg/dL)も報告されており79),動脈硬化等の合併症の進展予防,

栄養状態の改善が期待される。HD併用に伴うPDの限外濾過の増加がSuzukiら 80),およびKawanishiら81)により報

告され,PDによるCcrの増加がSuzukiらにより報告されている80)。限外濾過の増加は腹膜透過性亢進の改善による

ものと推測される。一般的に腹膜透過性亢進が改善(抑制)されれば溶質透過性も抑制され溶質除去は低下すると考え

られるが,「1-2.溶質除去とクリアランス」の項でも記されているように,PD療法のクリアランスKpはCD(透析液

中溶質濃度)とVD(透析液排液量)の積に規定される.したがって,腹膜の溶質透過性低下を限外濾過の増加で補完す

ること,すなわちCDが低下してもVDが増加することによりKPが増加することもあり得る。Suzukiらにより報告さ

れた PDのCcr増加は,腹膜透過性亢進の改善による限外濾過量(VD)増加が,腹膜透過性亢進の改善(低下)による

PD排液中クレアチニン濃度(クレアチニンCD)の低下を補完したものと推測される。このほかに,Uedaらは透析導

入時よりのPD+HD併用療法施行症例の検討において,PD+HD併用療法ではPD単独症例よりも血清アルブミン濃

度が有意に高い濃度で維持できたことを報告している。PD単独療法において血清アルブミンが低下する(低下傾向に

ある)症例においては,PD+HD併用への移行もひとつの方策となるかもしれない84)。

PD+HD併用療法の効果について解説した。PD+HD併用療法によりPD症例に望ましい効果が多く報告されて

いる。残念ながら,これらの効果については比較的少数例の研究報告ばかりであり,今後の多数例での前向き観察研

究,無作為化比較対照研究による検討・検証が望まれる。

P a r t 1

24

⿎⿎3-4.PD+HD併用療法での適正透析

解 説3-4-1.PD+HD併用療法における適正透析指標

透析療法で適正透析を議論する場合,第一にPD+HD併用療法での溶質除去量,溶質除去効率等が論じられるべき

であるが,前述したようにわが国および海外において併用療法においての溶質除去量の算出法が標準化されていな

い。したがって,PD+HD併用療法の適正透析は本治療法により達成される臨床検査値,理学所見より論じることし

かできない。2009年に発刊された日本透析医学会の腹膜透析ガイドラインにおける適正透析の章では透析量に関し

ては,「一週間当たりの尿素Kt/Vで残存腎機能とあわせて1.7 の維持」が推奨されている。そして「適正透析(Kt/V

1.7が維持されている状態)が実施されているにもかかわらず腎不全症候や低栄養が出現する場合には処方の変更や

他の治療法への変更」が推奨されている10)。すなわち「尿素の週当たり総Kt/V 1.7」は必要条件であり,「腎不全症

候がないこと・低栄養状態がないこと等」が十分条件と考えられる。透析量のみならず,臨床検査値・理学所見も併

せて重要であり,PD単独療法・HD単独療法と同様にPD+HD併用療法においても,現在までに出版された日本透

析医学会の診療ガイドラインにおいて適正透析の指標として提唱されている臨床検査値,理学所見を「適正な

PD+HD併用療法の透析指標」に設定するべきと思われる。PD+HD併用療法の適正透析の指標として以下に示す理

学所見,検査値を維持すべくPD単独療法からPD+HD併用療法への移行,またはPD+HD療法の処方内容の変更

等が検討されるべきである。

3-4-1-1.浮腫,高血圧等がなく適切な体液状態が維持されている 10,85 ,86)。

高血圧がない(血圧140/90 mmHg未満程度)。

胸部X線にて肺うっ血がない。

心胸郭比が50%以下

PD+HD併用療法はPDにおける溶質除去不足と水分過剰を改善することを目的として行われる。したがって,

PD単独療法およびHD単独療法において適正とされる体液状態の理学所見,目標血圧がPD+HD併用療法施行時に

██ ポイント1.⿎⿎併用療法においての溶質除去量の設定は現状において困難である。

2.⿎⿎検査所見,臨床所見より適正透析を判断すべきである。

3.⿎⿎循環動態としては

⿎ 浮腫,高血圧等がなく適切な体液状態が維持されている。

⿎ 高血圧がない(血圧140/90 mmHg未満程度)。

⿎ 胸部X線にて肺うっ血がない。

⿎ 心胸郭比が50%以下

4.⿎⿎検査所見として

⿎ Hb濃度で10 g/dL以上12 g/dL未満を維持する。

⿎ 血清β2-MG 30 mg/L以下を維持する。

5.⿎⿎低栄養,食欲不振等の腎不全症候がない。

第二章 適正透析

第二章 適正透析

25

Part1

おいても達成すべき指標となる。日本透析医学会「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイド

ライン」において,「安定した慢性維持透析患者における降圧目標値は,週初めの透析前血圧で140/90 mmHg 未満

とする」とされていること,「2-1. 血圧管理」の項においても「140/90 mmHg未満」を目標値としていることよ

り,PD+HD併用療法施行症例においても「140/90 mmHg未満」が目標値になると考えられる。また,PD+HD

併用療法施行症例においてHD前が最も水分過剰となっていることが多く,PD施行時と同様にHD前においての血

圧も「140/90 mmHg未満」に管理する。なお,体液状態・血圧の管理においては適切な塩分および水分摂取を基本

とし,HD施行時の限外濾過に大きく依存することは避けるべきであり,1回のHDにおいての限外濾過速度につい

ても15 mL/kg/hrを上限とすることが望ましく,急激な限外濾過による体液過剰の是正は行うべきではない。

3-4-1-2.血液透析前 Hb 濃度で10 g/dL以上12 g/dL未満を維持する。

2015 年版 日本透析医学会 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドラインにおいて「成人の腹膜透析(PD)

患者の場合,維持すべき目標Hb 値は11 g/dL 以上13 g/dL 未満」と推奨されているが,PD+HD併用療法での目

標Hb値は記されていない。PD+HD併用療法においてはHD施行時に限外濾過による血液濃縮が生ずること,HD

単独療法症例ではHb値11~12 g/dLにおいて生命予後が最良であり,12 g/dL以上にて死亡のリスクが上昇したこ

と等より10 g/dL以上~12 g/dL未満とした87)。PD単独療法において残存腎機能とPD療法の総Kt/Vが1.7以上を

維持している状態で週当たりrHuEPO 6,000単位の投与またはdarbepoietin 60 μgの投与にて目標ヘモグロビン濃

度が達成されない場合をerythropoiesis stimulating agent(ESA)低反応性と定義されているが88),このような低反

応性においてはPD+HD併用療法も考慮されるべきであり,併用療法の施行により目標ヘモグロビン値の達成・維持

が望まれる。PD+HD併用療法施行中においても週当たりrHuEPO 6,000単位の投与またはdarbepoietin 60 μg

の投与にて目標ヘモグロビン濃度が達成されない場合,鉄欠乏状態の有無・炎症の有無について検索するとともに,

HDの透析処方内容についての検討を行う。

3-4-1-3.血液透析前血清β2 -MG 30mg/L以下を維持する。

血清β2-MGは透析アミロイドーシスの原因物質の一つである。β2-MGのPDにおいての除去量には限界がある

が,HDを併用することで劇的に増加する。血清β2-MG濃度は中分子量溶質除去の状態をある程度反映すると考え

られ,血清β2-MGを30 mg/L以下に維持することによる生命予後の改善も報告されている 76,85,89)。PD+HD併用療

法施行症例においては,血清β2-MG濃度について注意を払い,血清β2-MG濃度の上昇が認められる場合等は併用す

るHD療法の処方内容等について検討すべきである。

3-4-1-4.低栄養,食欲不振等の腎不全症候がない。

PD+HD併用療法は溶質除去不足を補完するために行われるので,溶質除去不足による食欲不振等の腎不全症候の

消失を目指すのは当然のことであり,これらの腎不全症候がみられたら,PD+HD併用療法施行時においてもHDに

よる透析量の増加等により症候の改善を図る10,85)。また,PD単独療法において血清アルブミン濃度の低下がみられ

た場合において血清アルブミン濃度の維持を目的としてPD+HD併用療法への移行も考慮する84)。

⿎⿎3-5.PD+HD併用療法による腹膜保護効果

██ ポイント⿎ 併用療法により腹膜機能が改善する可能性が報告されているが,確固たるエビデンスはな

い。

P a r t 1

26

解 説従来より,腹膜が透析液に曝露されない期間が透析膜としての腹膜機能に影響を与えることが想定されており,長

期間にわたり腹膜が透析液に曝露されない期間,いわゆる腹膜休息を設けることで腹膜機能が改善することも報告さ

れている90)。

PD+HD併用療法ではHD療法を週に1回または2週間に1回施行するが,このHD施行日にはPDの施行は健康保

険上認められていない。PD+HD併用療法においてはPD療法を休止する期間,つまり,腹膜がPD液に曝露されない

1日ないし2日弱の期間が存在する。Matsuoらは併用療法施行開始1年後に腹膜透過性の指標であるD/P Crが有意

に低下したことを報告しており79),MoriishiらはPD+HD併用症例にてhigh average群の腹膜機能のグループは

D/P Crが有意に低下し,low,low average群では低下の傾向がみられたと報告している 91)。Tomoらは,ヒト腹膜

中皮細胞を用いての腹膜休息モデルでの細胞活性を比較検討し,24時間の腹膜休息で腹膜中皮細胞活性が改善する

ことを確認しており,1日ないし2日弱のPD休止期間による腹膜組織への影響も否定できないと思われる92)。

しかし,これらの臨床例の検討においてもD/P Crの検討のみであり,その測定方法もそれぞれの報告でまちまち

であり組織学的検討もなされていない。基礎研究においても動物モデル等の構築はなされていない。

PD+HD併用療法における1週間に1日程度の腹膜休息が腹膜機能を改善するかについての一定の見解は得られて

おらず,今後の重要な検討課題である。

⿎⿎3-6.PD+HD併用療法において留意すべき点

解 説PD+HD併用療法においてはHDをいかに施行するかがきわめて重要である。PD+HD併用療法はRRFの低下,消

失した症例において溶質除去・水分除去の補完を目的として施行されることが多いが,残存腎機能が比較的保持され

ている症例において,より多くの溶質除去を目的に施行されることもある。このようなRRFの保持されている症例

では,RRFの保持・尿量の維持に努めるべきであり,HDによる急激な限外濾過等は行わず,血圧低下等にも留意す

べきである。また,わが国のHDにおいてはハイパフォーマンス透析器の使用が一般的であり,「日本透析医学会 維

持血液透析ガイドライン:血液透析処方」においてもハイパフォーマンス透析器の使用が推奨されている85)。PD+

HD併用療法においてもハイパフォーマンス透析器を使用すべきである。なお,このハイパフォーマンス透析器の使

用下では透析液の血液中への流入(逆濾過)は必須であり,透析液が生物学的に汚染している場合は逆濾過によるパイ

ロジェンの血液への流入が起こるとともに炎症を惹起してRRFの低下を起こす。清浄化された透析液によるHDを

行い,RRFの保持に留意しなければならない93~95)。

██ ポイント1.⿎ 併用療法においてはHDの質の維持が重要となる。

2.⿎ HDによる過剰な限外濾過を回避する。

3.⿎ ハイパフォーマンスメンブレン透析器を使用する。

4.⿎ 清浄化透析液を使用する。

第二章 適正透析

第二章 適正透析

27

Part1

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第二章 適正透析

第二章 適正透析

29

Part1

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P a r t 1

30

⿎⿎小児患者の適正透析

解 説

物質除去や除水からみた適正透析小児の腹膜透析においても適正透析に関する明確な定義は確立されていないが,成人同様の生存率や腎不全合併

症,QOLに加え小児特有のoutcomeとして成長と発達への影響を考慮する必要がある。また,小児では成長のため

に必要な体重当たりの蛋白摂取量が多く窒素動態が重要視されているため,小分子溶質除去の指標としては総週間尿

素Kt/Vが用いられてきた。血液透析においては,上記の観点から小児は成人で推奨される透析量以上を目標として

おり,小児の透析においては成人以上の小分子物質除去が必要であるということに異論はない1)。しかし,総週間尿

素Kt/Vの明確な目標値は明らかにされていない。本邦の小児PD研究会(現 日本小児PD・HD研究会)では小児の腹

膜透析における目標総週間尿素Kt/Vを2.5(乳幼児では3.0)としており2),K/DOQIでは残腎機能と合わせて1.8を

提示している3)。これらの目標値の妥当性について,小児の腹膜透析患者では死亡率が成人と比して低いこと,腎移

植に移行する症例が多いことから成人同様の死亡や心血管イベントをoutcomeとする大規模研究は困難である。一

方で心機能,Ca・P値,貧血,FGF23と総週間尿素Kt/Vとの相関があるとする報告4~6)があるが,症例数は少なく

十分なevidenceとはなり得ていない。成長については総週間尿素Kt/Vよりも残腎機能のほうが重要と報告されてお

り7,8),小児についても残存腎機能の影響は大きい。現時点では小分子溶質除去が増えれば予後が改善するという明

確な証拠はなく,総週間尿素Kt/Vの目標値は治療最小目標であり,適正透析の指標のうちの一つでしかないと捉え

るべきである。

循環動態からみた適正透析本邦の腹膜透析小児の死亡原因の38%は心血管系疾患であり,腹膜透析から血液透析への治療変更の原因の21%

は除水不全である9)。このため循環動態の適正化は小児においても重要である。体液量の適正化のためには,血圧,

心胸比,エコーでの下大静脈径,バイオインピーダンスによる体組成測定, ANP・BNPをもとに,血液透析同様の

ドライウェイト設定を行う。この際に小児の血圧や心胸比,体水分量は年齢によって異なるため年齢や体格を考慮し

て評価する必要がある1)。高血圧は体液過剰を示唆する重要な所見であり,小児での死亡率や心血管イベントを

outcomeとした大規模研究こそないが,左室肥大や内頚動脈内膜中膜複合体肥厚を中間outcomeとした報告はみら

れる。小児腹膜透析および血液透析患者において高血圧はLVHの独立した予測因子であった10~12)。また,小児腹膜

透析患者の拡張期血圧高値は内頚動脈内膜中膜複合体肥厚の独立した予測因子でもあった13)。高血圧治療の重要性

が認識されるものの,小児の腹膜透析患者における降圧目標は定まっておらず,現時点では日本高血圧治療ガイドラ

1

2

██ ポイント1.⿎ 小児の透析量は成人で推奨される透析量以上を目標とする。

2.⿎ 心血管予後ならびに長期生命予後改善には適正な体液管理が重要である。

3.⿎ 小児ではドライウェイト設定および高血圧基準値の判断のために年齢,性別,体格を考慮する必要がある。

4.⿎ 小児におけるPD+HD併用療法の有効性は明らかになっていない。

第二章 適正透析

第二章 適正透析

31

Part1

イン14)の小児高血圧判定基準以下を目標とする。

併用療法における適正透析(PD+HD併用療法)小児でのPD+HD併用療法についてまとまった報告はない。低体重児では血液透析のために必要なバスキュラーア

クセスの確保と維持が困難である。思春期以降の症例については今後症例の集積が待たれる。

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3

第三章 栄養管理

33

Part1

腹膜透析患者の栄養障害

解 説血液透析および腹膜透析患者を含む維持透析患者における栄養障害は,生命予後やQOLに深く影響を与える因子

である。栄養障害の頻度は,重症が数%〜10%,軽度〜中等度が30〜60%に対して,正常域は約30%程度と考え

られている1〜5)。さらに慢性腎臓病患者の栄養障害には,たんぱく質からのエネルギー摂取不足に起因するものと,

慢性の炎症に起因するものがあるが,多くは両者が混在する6,7)。現在,血液透析患者を含む慢性腎臓病患者では,

栄養に関するシステマティックレビューに基づいたガイドラインが作成され栄養管理の方向性が明らかになってきた

が8),腹膜透析患者の栄養に関するシステマティックレビューは報告がない。

腹膜透析患者の1/3 には顕性・不顕性の体液過剰状態があると認識されており 9),体液過剰状態そのものが栄養障

害を惹起すると考えられている10,11)。また,血中から腹膜透析液へのたんぱく質の漏出は異化を亢進させ,低栄養状

態をきたす要因と考えられる。一般的に透析患者の肥満は生命予後に悪影響を及ぼすと考えられてきたが,腹膜透析

患者では,体重減少やるい痩をきたしている状態が予後不良であると報告されている12)。最近話題になっているサ

ルコペニア・フレイルについて腹膜透析患者における報告はまだ十分ではないが,血液透析患者と同様に予後や

QOLに大きく影響すると考えられる13,14)。また,腹膜透析が長期間に及ぶと残存腎機能が消失し,腹膜透析単独の

治療では透析不足により栄養状態がさらに悪化することも知られており 15〜17),体重の推移や残腎機能を含めた透析

効率にも注意すべきである。

1

栄養管理第三章

██ ポイント1.⿎ 維持透析患者における栄養障害は生命予後やQOLにも影響を与える因子である。

2.⿎ 現在,腹膜透析患者の栄養に関するシステマティックレビューは報告がない。

3.⿎ 腹膜透析患者は体液過剰状態に陥りやすく,栄養障害をきたしやすい。

4.⿎ 透析液への蛋白喪失による異化亢進を招き低栄養状態をきたしやすい。

5.⿎ 腹膜透析患者の栄養管理では,体重減少やるい痩に注意し,残存腎機能低下による透析不足に陥らないようにする。

P a r t 1

34

腹膜透析患者の栄養管理

⿎⿎2-1.総摂取エネルギー

解 説総摂取エネルギー量(食事摂取エネルギー量+腹膜吸収エネルギー量)を算定する場合は,Body Mass Index(BMI)

が22 となる標準体重を用いる。

標準体重(kg)=身長(m)2 × 22

総摂取エネルギーは標準体重当たり30〜35 kcal/kg/日を目安にする。年齢,性別,身体活動レベルを参考にして

患者個別に設定する18)。腹膜透析患者の総エネルギー量は食事から摂取するエネルギー量+腹膜から吸収されるエ

ネルギー量と考えられる。腹膜からの吸収エネルギー量は,透析液のブドウ糖濃度,総使用液量,貯留時間,腹膜機

能などの影響を受けるが,概ね1.5%ブドウ糖濃度液2 L 4 時間貯留では約70 kcal,2.5%ブドウ糖濃度液2 L 4 時

間貯留では約120 kcal,4.25%ブドウ糖濃度液2 L 4 時間貯留では約220 kcalの腹膜吸収エネルギー量と考えられ

る19)。また,持続的なブドウ糖の負荷により,中性脂肪の上昇とHDLコレステロールの低下を呈し,体脂肪の増

加,心循環器合併症のリスクになると報告されている20〜22)。また近年糖尿病性腎症患者が増加しており,これらの

症例においては 35 kcal/kg/日の摂取エネルギー量では肥満傾向が生じる場合もあり30〜32 kcal/kg/日が適当23)と

考えられるが,個別に患者の栄養状態を評価し適正エネルギー量を設定するのが望ましい。

現在では,ブドウ糖を浸透圧物質とした透析液に加えて,icodextrinを使用した製剤が上市されている。

Icodextrinはトウモロコシのでん粉の加水分解により製造,精製され,構造上はブドウ糖の重合体である。腹膜透析

には分子量がブドウ糖の数十倍から数百倍の範囲のものが使用される。その分子量ゆえに体内へは主にリンパ系を介

し吸収されるため,8時間貯留で約20%,12時間貯留で約34%の吸収にとどまり,長時間貯留でも浸透圧勾配が保

たれる。計算値では8時間貯留のときのicodextrin 2 Lで150 kcalのエネルギー吸収になる24)。このように従来の

ブドウ糖透析液に比べて除水能に優れ,ブドウ糖を負荷しない点においても糖尿病患者への有効性が期待される。本

透析液を夜間貯留液として使用した前向き検討試験では,糖負荷軽減による脂質代謝への改善効果が指摘されてい

る25)。

2

██ ポイント1.⿎ 総摂取エネルギーは標準体重当たり30〜35 kcal/kg/日を目安にして,年齢,性別,身体

活動レベルを参考にして患者個別に設定する。

2.⿎ 腹膜透析患者の総エネルギー量は,食事から摂取するエネルギー量に加えて,腹膜から吸収されるエネルギー量を考慮する。

3.⿎ 持続的なブドウ糖の負荷により,中性脂肪の上昇とHDLコレステロールの低下をきたしやすく,体脂肪の増加や心循環器合併症の発症に留意すべきである。

4.⿎ 糖尿病性腎症患者では,30〜32 kcal/kg/日が適当と考えられるが,個別に患者の栄養状態を評価し適正エネルギー量を設定するのが望ましい。

第三章 栄養管理

第三章 栄養管理

35

Part1

⿎⿎2-2.たんぱく質摂取量

解 説腹膜透析における透析液への蛋白喪失は,1 日10 g程度,アルブミンは2〜4 g程度とされるが,腹膜透析処方に

より喪失量は影響を受け,交換する液量が増えると蛋白,アミノ酸の損失は増加する26,27)。これを補充する意味でた

んぱく質摂取量は標準体重当たり1.2 g/kg/日以上を目標とすることが提唱されてきたが28,29),残存腎に対する負荷

を考慮する必要があるという考え方もあり,すべての症例に適応できる基準量は明らかにされていない。わが国の腹

膜透析患者100 例のたんぱく質摂取量に関するデータでは標準化蛋白窒素出現量(normalized protein nitrogen

appearance: nPNA)と体筋肉成分の指標である%クレアチニン産生速度(% creatinine generation rate: %CGR)と

の回帰直線において,nPNA 0.9 g/kg/日と%CGR 100%に交点がある30)。これは,わが国では,栄養状態が良好に

維持されている腹膜透析患者のたんぱく質摂取量は 0.9 g/kg/日であることを示している。この検討では nPNA 1.2

g/kg/日以上の症例は 1 例のみで,わが国の腹膜透析患者のたんぱく質摂取量は諸外国とは大きく違っていると想定

される。たんぱく質摂取量の多寡が生命予後,心血管イベントの発生に関連するという報告はあり 31,32),0.8g/kg/日

未満がリスクを上昇させるとされているが,摂取量が直接影響するというよりは,摂取したたんぱく質がきちんと吸

収され体蛋白となって同化することが良好な生命予後に影響していると思われる。その意味では,たんぱく質摂取量

だけを食事指導の根拠とするのではなく,血清アルブミン値,Lean Body Mass(除脂肪体重)とともにスコア化した

Protein Index33)など複数の指標で評価して用いるのが有用である。以上より,わが国の腹膜透析患者のたんぱく質

摂取量は,適正なエネルギー摂取を前提として,0.9〜1.2 g/kg/日が望ましいと考えられるが,複数の栄養指標で

評価した結果に応じて調整する必要がある。

⿎⿎2-3.食塩摂取量

██ ポイント1.⿎ 透析液への蛋白喪失は,1 日10 g程度,アルブミンは2〜4g程度とされる。

2.⿎ たんぱく質摂取量の多寡が生命予後,心血管イベントの発生に関連すると考えられる。たんぱく質摂取量は,適正なエネルギー摂取を前提として,0.9〜1.2 g/kg/日が望ましいと考えられるが,複数の栄養指標で評価し調整する必要がある。

██ ポイント1.⿎ 体液過剰をきたしやすい腹膜透析患者において,塩分摂取の管理は重要である。

2.⿎ 塩分摂取量の目標は,腹膜透析除水量や尿量をもとに[除水量(L)×7.5 g]+[残存腎尿量100 mL につき0.5 g]を目安にするが,実臨床においては0.15g/kg/日で7.5 gを上限として考慮すべきである。

P a r t 1

36

解 説腹膜透析患者は30%以上の症例において顕性・不顕性の体液過剰状態にあることが知られており34),食塩・水分

の過剰摂取による体液過剰状態は高血圧を惹起し心血管系合併症の発症リスクとなるため,食塩摂取量指導の重要性

は認識されている35)。また潜在的な体液過剰はたんぱく質摂取量の不足を招き,栄養障害の促進因子になると認識

されている36〜38)。腹膜透析患者の塩分摂取量は,日本腎臓学会のガイドラインによれば,[除水量(L)×7.5 g]+[残

存腎尿量100 mL につき0.5 g] としているが39),これは除去量とのバランスを基に推奨しているものである。した

がって,残存腎機能廃絶例では,1 L の腹膜透析除水では一日7.5 g 程度までの食塩摂取が上限量となる。なお実臨

床においては,食塩摂取目標量を0.15 g/kg体重として上限を7.5 gと考えるのも指導の目安として考慮すべきであ

る。高血圧を呈する場合には一日6 g未満が目標となるが,それが低栄養の原因となりうる場合には適宜調整する。

下限量に関してはDongらが一日食塩摂取量1.93 gから14.1 gの腹膜透析患者305名に対して行った後ろ向き研究

の報告がある40)。三分位した低摂取量(平均3.58 g/日)群での総死亡,心血管死亡が有意に多かったことから,一日

3 g以上の摂取は必要と思われる。欧州における自動腹膜透析の研究では無尿の患者においては750 mL 以上の除水

量の予後がよいと報告されており41),これは塩分摂取量として5.6 g に相当する。しかし自動腹膜透析器を用いた頻

回の交換では,ナトリウム除去が不良となっている場合があるのでナトリウム除去量の実測が望ましい42)。以上の

ように食塩摂取量の指導は個々の尿量,除水量を勘案して行うことが必要である。

評価と指導介入

⿎⿎3-1.栄養状態の評価

解 説腹膜透析患者の生存率,予後と腹膜透析開始時,透析施行中の栄養状態との間には強い正の相関があることが指摘

されている43,44)。したがって栄養状態の評価は,主観的栄養評価,身体計測,体成分分析,血液生化学的所見を総合

して判断するべきである。栄養状態の評価に際して,経時的に筋肉量が減少しないことが重要となる。K/DOQI 45)

により評価項目と頻度が示されているが,貧血の有無,カリウム,カルシウム,リン等の評価も重要である。しかし

ながら,これらの報告の多くは血液透析患者を対象にしており,腹膜透析患者を対象にしたものは少ない。また,

24時間の腹膜透析排液および蓄尿を用いた定期的な透析量の評価は,腹膜透析患者の栄養状態評価に必要な検査で

ある。定期的に行う身体計測と体成分分析も有効であり,過去の経時的変化を見ながら,最低6か月に一度は栄養学

的評価を行うべきである。

3

██ ポイント1.⿎ 患者の栄養状態の評価は,栄養ケアマネジメントの手法を用い,栄養スクリーニング,栄養

アセスメント,栄養ケア計画から適正な栄養量を決定し,実行,再評価するのが望ましい。

2.⿎ 栄養学的評価は,定期的な透析量の評価とともに患者個々の状態を判断し,適宜実施するのが望ましい。

第三章 栄養管理

第三章 栄養管理

37

Part1

3-1-1.栄養スクリーニング

3-1-1-1.主観的包括的評価:Subjective Global Assessment(SGA)

嘔気,嘔吐,食欲不振,下痢などの消化器症状の有無,体重の変化,食事摂取の状況などはSGA として体系的に

スコア化されており,腹膜透析患者の栄養管理においてもその有効性が報告されている46~49)。

3-1-1-2.その他スクリーニング法

その他スクリーニング法にはMUST(malnutrition universal screening tool),MNA(mini nutritional assessment)

などの評価法もあるが,その施設の特性に合わせ活用する。

3-1-2.栄養アセスメント

3-1-2-1.身体計測

栄養状態の評価に身体計測は重要であり,身長,体重,BMI の変化のほか,上腕周囲長(arm circumference:

AC)と上腕三頭筋皮下脂肪厚(triceps skinfold thickness: TSF)の測定を定期的に行い上腕筋囲長(armmuscle

circumference: AMC),上腕筋面積(armmuscle area: AMA)を算出し栄養状態の指標とする。これらの指標は簡便

で安価に間接的に体筋肉量,体脂肪量を推定する方法であるが50),細胞外液量に影響される点に注意する。また近

年,筋力測定が筋肉量だけでなく,全身の栄養状態や予後とも関連する指標として捉えられている41〜52)。

3-1-2-2.体成分分析法

現在最も再現性があり腹膜透析患者の体蛋白量の評価に有効と認識されている体成分分析はdual-energy X-ray

absorptiometry(DEXA)53,54),bioelectric impedance analysis(BIA)である55,56)。AMCやTSF はこれらの結果とあ

る程度相関することが知られている54)。BIA は排液を行った状態で計測する。

3-1-2-3.血液生化学検査

栄養状態を評価する血液生化学検査には血清アルブミン,プレアルブミンがある。血清アルブミン値は末期腎不全

患者における代表的な生命予後規定因子である55)。しかし腹膜透析患者において血清アルブミン値に影響を与える

因子は炎症,透析液への喪失,体液管理状況など多岐にわたり,血清アルブミン値が体蛋白量や栄養状態の指標とは

いえない51,58,59)。このため血液透析患者では頻用されているgeriatric nutritional risk index(GNRI)60)は,腹膜透析

患者においてスクリーニングツールとしての有用性は低い61)。アルブミンは急性期反応蛋白の血中濃度と弱い負の

相関を有することが知られている62)。プレアルブミンについても同様のことが報告されており,腹膜透析患者の栄

養状態を評価するための適した生化学的指標は明らかでない。腎不全患者にみられる栄養障害の一つのパターンに,

炎症に伴う低栄養状態があり,C反応性蛋白(C-reactive protein: CRP)は栄養障害の原因検索のために重要である。

CRP は腹膜透析患者において死亡リスクの予測因子と認識されている63,64)。

3-1-2-4.たんぱく質摂取量からの評価

個々の患者の食事内容ならびに摂取量を詳細に記録し正確に分析するには相当の熟練を要する。そのため蓄尿およ

び全排液から計算するRandersonの式などによるPCR(protein catabolic rate: 蛋白異化率)が用いられている。さ

らにそれを各患者の体重で標準化したnormalized PCR(nPCR)は患者の栄養状態の評価法としての有用性が報告さ

れている65)。

3-1-2-5.透析量の評価

透析不足により生じる栄養障害の発見のために,定期的な腹膜透析効率,残存腎機能および腹膜機能評価の実施が

望ましい。

P a r t 1

38

⿎⿎3-2.栄養介入

解 説腹膜透析患者の栄養障害の原因には,栄養摂取不足,透析液への栄養素の喪失,慢性炎症,透析不足による尿毒症

の増悪などが関与する。栄養障害の進行を認めた場合,速やかにその原因を究明し対策を講じる必要がある。栄養摂

取不足型の栄養障害の基本的病態はエネルギー摂取不足にあるので,適切な栄養指導が重要である66)。重篤な栄養

障害例では経口の高エネルギー流動食等が有効である。炎症を伴う栄養障害では,栄養学的に介入しても効果が低い

と考えられ,炎症を伴う原疾患の治療が優先される。一方,透析患者の高齢化とともに前述のようにサルコペニアが

課題となってきており,栄養管理のうえからも適切な運動療法が必要である。栄養介入においては,これらの背景や

透析医療の特殊性も考慮して,より効率的に栄養を評価し介入するシステムを構築すべきである。血液透析患者に対

しては,すでに栄養管理,栄養指導の方策が示されているが 67),腹膜透析に関しては,十分な報告がないため,血

液透析例を参考に腹膜透析患者に対する栄養介入方法を提示する。

3-2-1.透析導入時

3-2-1-1.徹底した初期段階での栄養教育

安定した透析生活をおくるためには,透析導入期の栄養教育は重要である。保存期腎不全期と食事内容が変化する

ため,適正な塩分,たんぱく質コントロール,エネルギー摂取を目的に栄養指導を実施し,注意すべき食品の選び方

のポイントおよび栄養摂取量の確保の仕方などの栄養管理および食事療法の重要性を認識してもらう。カリウムに関

しては,腹膜透析によりカリウムが排出されるため低カリウム血症に留意する必要がある。

3-2-1-2.体組成計測,残存腎機能および腹膜機能評価

腹膜透析患者は,血液透析患者のドライウェイトに相当する適正体重が決められていないことが多い。体液バラン

スを評価し適切に保つために,体重や理学所見,画像所見のチェックだけでなく定期的に体組成を計測することも有

効である。明らかな体液過剰を認めた場合には,塩分摂取量の評価と指導を行い,内服治療,透析処方の変更を検討

する。また,蓄尿による残存腎機能の評価や腹膜平衡試験による腹膜機能を評価することは,適切な透析効率を知る

うえで必要であり定期的な実施が望ましい。透析効率の低下により栄養障害が増悪していると考えられる場合は,腹

膜透析の処方や透析方法の変更も検討すべきである。

3-2-2.透析維持期

3-2-2-1.継続的な栄養指導によるセルフモニタリングの推奨

栄養スクリーニング,アセスメント,栄養計画を作成,実施後は,定期的な再評価を行い異常値に対する問題点を

抽出し,改善のため計画立案し改善をきたすまで継続した指導を行う。食事習慣の改善には,家庭環境,就業など日

常生活の背景因子を把握し行動変容を目指した指導が必要である。

██ ポイント1.⿎ 栄養障害の進行を認めた場合,速やかにその原因を究明し対策を講じる必要がある。

2.⿎ 栄養介入方法は,多職種によるチーム医療の実践が有効である。

第三章 栄養管理

第三章 栄養管理

39

Part1

3-2-2-2.定期的な透析医療チームでの包括的栄養管理

栄養評価と指導の実践は,医師,看護師,管理栄養士,臨床工学技士,理学療法士,心理士,ソーシャルワーカー

など多職種からなるチームを編成し,チーム医療として実践することが効果的である。

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第三章 栄養管理

第三章 栄養管理

41

Part1

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P a r t 1

42

⿎⿎小児患者の栄養管理

解 説

小児腹膜透析患者の栄養管理の基本小児腹膜透析患者において,栄養状態の評価は非常に重要であり,低栄養は成長や神経発達に重大な影響を及ぼ

す1,2)。成長障害は単に標準的な最終身長を獲得できないというだけでなく,死亡の独立した危険因子となることが

報告されている3,4)。特に乳児期は一生のうちで最も成長速度が大きい時期であり,この時期に成長障害が顕著にな

るとその後のキャッチアップはきわめて困難になる。また,乳児期の成長は他の時期に比べて成長ホルモンへの依存

度が低く,早い段階から適切な栄養管理を行うことが重要である5)。

一方,小児腹膜透析患者では食欲低下や嘔吐がみられ,しばしば十分な栄養摂取を行うことが困難である。この要

因として,消化管運動の低下,胃食道逆流,末期腎不全に伴うサイトカインの産生,そして透析液貯留による腹腔内

圧上昇があげられる6,7)。したがって,特に2歳以下の患者における摂食障害に対しては,強制的な栄養,すなわち

経鼻胃管あるいは胃瘻による経腸栄養を積極的に考慮する必要がある。経口摂取,経鼻胃管,胃瘻による栄養管理を

比較した国際小児腹膜透析ネットワークレジストリーの報告では,胃瘻管理の期間が有意に成長獲得と関連すること

が示された8)。腹膜透析導入後の胃瘻造設は腹膜炎や手術合併症のリスクがあり,腹膜透析導入前か同時に造設する

のが望ましいとされるが9〜11),腹膜透析導入後でも合併症は増加しないとする報告もある12)。

小児腹膜透析患者の栄養評価小児における適正な栄養状態は,適切な種類と量の食事を摂取し正常な成長が保たれている状態と定義され

る5,13)。KDOQIガイドラインでは,透析患者を含むすべてのCKD患者で食事内容と身長,成長速度,体重,BMI,

頭囲(3歳以下)のSDスコアを定期的に評価することを推奨しており(表三-1),小児腎疾患の栄養に精通した管理栄

養士の主導により患者,両親等の養育者,および小児腎疾患診療に携わる多職種チーム(医師,看護師,社会福祉士

等)が協力しながら栄養管理を行うことが望ましい2)。

1

2

██ ポイント1.⿎ 小児腹膜透析患者において,低栄養は成長や神経発達に重大な影響を及ぼす。

2.⿎ 2歳以下の患者における摂食障害に対しては,経鼻胃管または胃瘻による経腸栄養を積極的に考慮する。

3.⿎ 定期的に食事内容および身長,成長速度を含む身体計測値を評価すべきであり,小児腎疾患の栄養に精通した管理栄養士の介入が望ましい。

4.⿎ エネルギー摂取推奨量は健常児と同等であり,「日本人の食事摂取基準」に準じる。

5.⿎ たんぱく質は,リンの過剰摂取に留意しながら,腹膜透析で失われる量を含めて適切に摂取する必要がある。

6.⿎ 先天性腎尿路異常等でナトリウムが尿中に失われる場合や,乳幼児等で体重に比して多量の除水を要し排液中にナトリウムが失われる場合,食塩の補充が必要になる。

第三章 栄養管理

第三章 栄養管理

43

Part1

小児腹膜透析患者の栄養管理⿎⿎3-1.総摂取エネルギー

腹膜透析患者においても他のCKDステージの患者と同様,健常児と同等の十分なエネルギーを摂取することが必

要である2,14)。摂取量は厚生労働省により5年ごとに改訂されている「日本人の食事摂取基準」に準じる(表三-2)14,15)。実際には,体格相当年齢のエネルギー摂取から開始し,十分な成長が得られない場合に徐々に摂取量を増

加させる14)。なお,腹膜透析液に含まれるブドウ糖の吸収によるエネルギー付加は8〜12 kcal/kg/日とされる5)。実

際には腹膜透過性の影響を受けるため,定期的なブドウ糖吸収量の評価も重要である。

⿎⿎3-2.たんぱく質たんぱく質についても食事摂取基準量を摂取する必要がある。これに腹膜透析で失われる量を補う必要があり,小

児PD研究会(現 日本小児PD・HD研究会)から腹膜透析中の小児におけるたんぱく質摂取推奨量が示されている(表三-3)16)。同時にリンの過剰負荷にならないよう留意する必要があり,腎不全児の経腸栄養として低カリウム・中リ

ンフォーミュラ(明治8806H®)が有用である14)。

⿎⿎3-3.食塩小児腹膜透析患者では,特に先天性腎尿路異常を原疾患とする場合など,自尿が保たれ尿中にナトリウム(Na)が

喪失される傾向にあり,食塩の補充が必要である。また,無尿でも乳児等で体重に比して多くの除水量を必要とする

場合,限外濾過によりNaが喪失され,容易に低ナトリウム血症をきたすため,食塩の補充が必要である17)。ただ

し,貯留時間によってNa除去量が異なることに留意する必要がある18)。母乳や普通ミルクはNa濃度が低く(6〜8

3

表三-1 小児腹膜透析患者において推奨される栄養評価項目と評価の間隔

(文献 2より引用改変)

評価項目評価の間隔(月)

0歳 1-3歳 >3歳栄養摂取量 0.5-2 1-3 3-4

身長 0.5-1 1 1-3成長速度 0.5-1 1-2 6

Dry weight 0.25-1 0.5-1 1-3BMI 0.5-1 1 1-3頭囲 0.5-1 1-2 推奨なし

表三-2 推定エネルギー必要量(kcal/日)

男性 女性0~5か月 550 5006~8か月 650 6009~11か月 700 650

1~2歳 950 9003~5歳 1,300 1,2506~7歳 1,550 1,4508~9歳 1,850 1,700

10~11歳 2,250 2,10012~14歳 2,600 2,40015~17歳 2,850 2,300

注:身体活動レベルII(ふつう)として記載(文献15より引用抜粋)

年齢 蛋白摂取推奨量0~1歳 3.0 g/kg/日2~5歳 2.5 g/kg/日6~10歳 2.0 g/kg/日11~15歳 1.5 g/kg/日

表三-3 小児腹膜透析患者におけるたんぱく質摂取推奨量

(文献16より引用)

P a r t 1

44

mEq/L),Na補充の意味でも明治8806Hミルク(標準濃度15%でNa 27 mEq/L)が有用である。一方,溢水や高血

圧を認める場合はNa制限を検討する必要がある14)。

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第四章 腹膜機能

45

Part1

解 説

腹膜平衡試験について腹膜透析は腹膜という臓器の生理的・解剖学的性質を利用し血液浄化を行う治療であるが,腹膜透析における腹膜

機能とは透析を行ううえでの患者ごとの腹膜の状態を意味する。ある組成の腹膜透析液を腹腔内に一定時間貯留した

後に排液をした際,排液量や排液中の溶質組成は個人によって異なる。これは個々の腹膜の溶質透過性や水透過性に

特徴があることによる。ここでは腹膜の溶質透過性能・水透過性を総称して腹膜機能と定義する。患者個々の腹膜機

能を評価し理解することは,貯留時間,交換回数,PD液濃度・量の決定など適正な腹膜透析処方を行ううえで,非

常に重要である。また腹膜機能は透析の継続によって経時的に変化していく1,2)。

腹膜機能を評価するための確立された方法として次の3つがあげられる。①腹膜平衡試験(peritoneal

equilibration test: PET)3),②総括物質移動・膜面積係数(over-all mass transfer area coeffi cient: MTAC)4,5),③

腹膜機能解析専用ソフトウェア6)。それぞれの方法に特徴があり有用であるが,どの方法が腹膜透析患者のマネジメ

ントに最も優れているかを較べた臨床試験はない。したがって各施設の状況に応じて腹膜評価法を選択し継続し検討

していくことになる。最も広く行われている腹膜機能評価法は PETであり,PETを用いた臨床研究報告は非常に多

い。

PETの原法はTwardowskiら3)によって提案され全世界で利用されている。特別な装置やソフトウェアを必要とせ

ず,過去のデータとの比較や患者間での比較が可能であるのが特徴的である。ブドウ糖濃度2.5%透析液(または同

等の浸透圧透析液)2.0 Lを4時間貯留し,注液2時間目,4時間目における透析液中クレアチニン濃度(D)と血液中

クレアチニン濃度(P)の比(D/P Cr),および透析液中ブドウ糖濃度(D)とその初期濃度(D0)の比(D/D0 Glu)を測定し

前者で小分子物質の除去効率,後者で除水効率を評価する。PETの結果を標準曲線にプロットすることによって患

者は次の4つのカテゴリーに分類される。透過性の高い順に「High」,「High average」,「Low average」,「Low」

というカテゴリーとなる。この結果をもとに透析処方を検討することができる。欧州では「high」を高溶質除去と

1

██ ポイント1.⿎ 腹膜機能評価法にはいくつかの確立された方法がありそれぞれに特徴がある。なかでも腹膜

平衡試験(PET)が最も広く行われている。

2.⿎ 腹膜機能評価のため腹膜平衡試験(PET)の標準法または簡便法(fastPET)による腹膜機能の評価を定期的に行うことが望ましい。

3.⿎ 腹膜の状態を知るための排液中バイオマーカーの研究が広く行われるようになった。今後,PETとともに新たな腹膜機能評価法となることが期待される。

腹膜機能第四章

P a r t 1

46

間違えやすいとしてfast transporterと呼び,「low」をslow transporterと呼ぶほうが相応しいとしている7)。また

他の測定可能な物質のD/P比を測定することにより,その分子量の物質透過性を評価することもできる。PETには

いくつかの変法がある。標準的PETの4時間目のデータだけで評価する方法を簡易腹膜機能平衡試験(frequently

and short time peritoneal equilibration test: Fast PET)という8)。検体採取の回数が少ないことから簡易な評価が

可能であるが,その結果には原法と差異が生じることがあり注意を要する9)。また,2.5%ブドウ糖液の代わりに

4.25%ブドウ糖液を用いたPETは除水不全の診断やNa-sieving(ナトリウム篩効果)の評価に有効である10,11)(PET,

MTACの方法については付記を参照)。PETは定期的に行うべきであり,少なくても1年に1回は検査を行い腹膜機

能の推移を把握することが望まれる。

日本透析医学会による2016年の報告12)によれば,わが国の腹膜透析患者(併用療法を除く)のFast PETを含む

PET施行割合は64%ほどであった。D/P Cr比は,男性で平均0.67,女性は0.65と性差はなく年齢が高くなるとD/

P Cr比は上昇する傾向を示した。主要原疾患別のD/P Cr比をみると,糖尿病性腎症と腎硬化症が他疾患に較べ高い

傾向であった。

腹膜平衡試験の結果をもとにした研究PETの結果に影響を与える因子について多くの報告がある。カテーテル留置直後は腹腔内のサイトカイン産生,

腹膜血管分布,血流状態が変化し腹膜透過性が安定しないと考えられ,実際のデータも導入後1か月までは変動が認

められる13)。これらの理由で米国やカナダのガイドラインでは透析導入後の初回PETは導入後1か月以降に行うこ

とが勧められている14,15)。CAPD関連腹膜炎は腹膜における炎症であり腹膜透過性に大きく影響する。結果として透

過性が亢進し除水能が低下するが16),これらの変化は一過性であり腹膜炎治癒後1か月までに回復すると考えられて

いる17,18)。一方で,長期にわたり腹膜の炎症が続くと血管新生,線維化が進行し腹膜透過性への影響が出ると考えら

れる19)。また,透析期間の長期化とともに徐々に腹膜透過性(D/P Cr)は亢進し除水性能は低下することが示されて

おり,その変化は導入早期からの高ブドウ糖液への曝露で加速される20)。わが国の腹膜生検所見の結果から腹膜透

析の長期化とともに腹膜肥厚と血管障害の程度が進行しており,除水性能が低下した群でより腹膜肥厚の程度が強い

ことが示され21),腹膜機能の低下と腹膜の構造変化には密接な関係があることが示唆される。

イコデキストリンの腹膜機能への影響については,グルコース液のみを使用している群との比較で差がないとする

報告22,23)がある一方で,腹膜機能を悪化させる可能性を指摘する報告もあり24),さらなる研究を要する。中性化透

析液と酸性透析液によるPETの結果の違いを解析した研究では,小分子透過性と除水能には差は認められないとの

報告が多く25,26),中性液では3年以上にわたり腹膜透過性とともに腹膜形態への影響が少ないことも示されてい

る27)。しかし一方では中性液によって除水能が低下するという報告28,29)がありその効果は一定していない。透析液

の生体適合性が腹膜機能に何らかの影響を及ぼすことが示唆されている。わが国では腹膜透析と血液透析の併用療法

が一般的であるが,併用療法によって腹膜機能が変化することが報告されており30,31),併用療法開始後,D/P Crが

低下する傾向がある。

腹膜機能と予後との関連を解析した研究は多数認められる。腹膜透過性が亢進し除水性能が低下している群の患

者,つまりPETでHighのカテゴリーに入る患者群では予後が悪い傾向がある32~35)。一般的に腹膜透過性の亢進は

透析期間に依存するが,透析導入初期からすでに腹膜透過性が亢進している患者が存在する。導入時の腹膜生検所見

の検討で,マクロファージの浸潤の程度が腹膜透過性と有意に相関が示されている36)。ベースラインの腹膜透過性

には腹膜局所の炎症,人種,加齢,性差,残腎機能,糖尿病や低アルブミン血症など多くの因子が関与している可能

性がある20,37,38)。最近の研究では血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF),インターロイキ

ン-6(interleukin-6: IL-6),内皮型一酸化窒素合成酵素,終末糖化産物受容体,RAS遺伝子などの遺伝子多型と腹膜

機能の関連が報告されており37,39),遺伝子レベルから腹膜透析の適応や患者の予後についての理解が進む可能性があ

る。

2

第四章 腹膜機能

第四章 腹膜機能

47

Part1

排液中バイオマーカーの研究排液中のバイオマーカーに関する研究が行われており,PETとともに腹膜機能を検討する材料となっている。特

に癌抗原125(CA125)とIL-6は測定が容易であることから従来から腹膜の評価に使用されてきた。CA125は220

kDaの糖タンパク質であり腹膜中皮細胞で産生され,その排液中濃度は腹膜中皮細胞の量を反映すると考えられてい

る40)。PETを行う際にCA125出現率を測定し中皮細胞量を評価することが可能である41)。一般に透析期間とともに

排液中CA125出現率は低下傾向を示すことが多く,実際の形態学的所見と一致すると報告されている41)。排液

CA125測定をルーティンに行う施設もあり,被囊性腹膜硬化症発症予測因子,予後予測因子となるか今後も評価が

必要である。

IL-6はT細胞や活性化マクロファージ/単球,血管内皮細胞など多くの種類の細胞から産生される多面的なサイト

カインである。排液中のIL-6濃度は炎症状態や前炎症状態を反映すると考えられるが,腹膜透過性への影響42)や経

時的変化について43,44)多くの報告がされているが,臨床での応用についてはさらなる研究が必要である。

他にも腹膜血管新生に関するマーカー(VEGF,形質転換成長因子β,腫瘍壊死因子α),血管内皮機能マーカー

(E-セレクチン,血管細胞接着因子-1),線維化マーカー(Ⅳ型コラーゲン,プラスミノーゲン活性化抑制因子-1,

CCケモカインリガンド-18),組織リモデリングマーカー(マトリックスメタロプロテアーゼ-2,ヒアルロン酸)など

の研究が行われており,これらが今後より正確な腹膜機能の評価に活用されることが期待される45~47)。

付記

A.腹膜平衡試験:標準法(PET)

1.2.5%ブドウ糖透析液(あるいは,これに準じる液)2,000 mLを注液する。

2.注液後,ただちに透析液のサンプルを採取する(=CD(0))。

3.注液2時間後,透析液のサンプル(=CD(120))および血液サンプル(=CB)を採取する。

4.注液4時間後,透析液のサンプル(=CD(240))を採取し,全量を排液する。

5.クレアチニンについて,CD(0)/CB,CD(120)/CB,CD(240)/CB の3点を標準曲線上にプロットする。

6. ブドウ糖について,1.0,CD(120)/CD(0),CD(240)/CD(0) の3点を標準曲線上にプロットする(CD(0) は理論

値2.27 g/dLとしてもよい)(図四-1)。

7.クレアチニンとブドウ糖による判定結果が異なる場合には,クレアチニンの結果を優先する。

B.腹膜平衡試験:簡便法(Fast PET)

1.2.5%ブドウ糖透析液(あるいは,これに準じる液)2,000 mLを注液する。

2.注液4時間後,透析液のサンプル(=CD(240))および血液サンプル(=CB)を採取し,全量を排液する。

3.クレアチニンについて,CD(240)/CBを標準曲線上にプロットする。

4. ブドウ糖について,CD(240)/CD(0) を標準曲線上にプロットする(CD(0) は理論値2.27 g/dLとしてもよい)

(図四-1)。

5.クレアチニンとブドウ糖による判定結果が異なる場合には,クレアチニンの結果を優先する。

C. 総括物質移動・膜面積係数(MTAC)を算出する場合

以下には上述した「腹膜平衡試験:標準法」(2.5%ブドウ糖透析液)を利用する場合について記す。したがって算出

されるMTACは,2.5%ブドウ糖透析液を用いた4時間貯留の場合の結果である。他の透析液を使用する場合,貯留

時間が異なる場合のMTACも同様に算出できる。

1.2.5%ブドウ糖透析液(あるいは,これに準じる液)2,000mLを注液する。この際に注液量VD(0) を記録する。

2.通常の腹膜平衡試験:標準法を行う(上記「A-1」~「A-4」参照)。

3.排液時に排液量VD(t) を記録する。

3

P a r t 1

48

4.t=240 min,平均透析液量VD=VD(t) を仮定して,MTACを算出する4,5)。

MTAC=K0A=-V-D

t ln VD(t)VD(0)

1 ⁄2CD(t)-C-B

CD(O)-C-B

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1.11.00.90.80.70.60.50.40.30.20.1

00 1 2 3 4

1.03

0.61

0.81

0.65

0.50

0.34

1.0

0.9

0.8

0.7

0.6

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

00 1 2 3 4

クレアチニンD/P

High (H)

ブドウ糖D/D0

0.49

0.38

0.26

0.12

high-average (HA) low-average (LA) low (L)

L

L

LA

LAHA

HA

H

H

図四-1 腹膜平衡試験標準曲線(文献48,49より引用,改変)

第四章 腹膜機能

第四章 腹膜機能

49

Part1

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P a r t 1

50

⿎⿎小児患者の腹膜機能

解 説

小児のPET標準化と実施法小児患者においても腹膜機能の評価のためにPETが広く活用されている。1996年にWaradyらにより小児のPET

実施法が標準化された1)。成人では2 Lの注液を行うことから(Twardowskiら2)),体表面積を考慮してこれに相当

する小児の注液量を1,100 mL/㎡とした。結果,年齢によるクレアチニン,ブドウ糖の透過性にほとんど差はなく,

成人と同様のカテゴリー分類がなされた1)。本邦ではKakuらにより175名の患者データをもとにPETが標準化さ

れ,TwardowskiらおよびWaradyらの報告とほぼ同等のカテゴリー分類となった3)。本邦小児におけるPETの評価

基準(240分貯留時の値)を表四-1,表四-2に示す3,4)。PETの方法は成人に準じるが,本邦小児における標準化PET

の方法の詳細は「小児PD治療マニュアル」のPETの項を参照されたい4)。なお,PETは4時間という長い時間を要

することから,透析液濃度(2.5%)と注液量はそのままで貯留時間を2時間としたshort PETが提唱されている。こ

れらの報告では2時間貯留と4時間貯留で同じカテゴリーに分類される結果となっており,その有用性も示唆されて

いる5,6)。

PETに基づいた腹膜機能の研究⿎⿎2-1.年齢,透析期間,腹膜炎と腹膜機能の関係

PETを経時的に施行した報告では,腹膜透析開始からおよそ2年まではPETカテゴリーは変化しないが 7,8),2年

を超えるとD/P Cr比が上昇しD/D0 Gluが低下するという報告がある9)。岩田らは20例93回のPETを解析し,腹膜

透析期間とD/P Cr比およびD/D0 Gluにそれぞれ正と負の相関関係があり,それぞれの回帰直線が約6年でPETの

「High」カテゴリーに入ると報告した10)。年齢に関しては,乳児では腹膜透過性が高い傾向にある1,11)。また,腹膜

炎の既往があると腹膜透過性が高まり,PETカテゴリーが高くなると報告されている8,12)。腹膜透過性の亢進は除水

不全に関連し,除水不全は被囊性腹膜硬化症で高率にみられる重要な症候であることから13,14),PETによる腹膜機能

評価を定期的に行うことが望ましい。

1

2

██ ポイント1.⿎ 本邦小児におけるPETが標準化されており,小児用の評価基準が設けられている。

2.⿎ PETの方法は成人と同様であるが,注液量が1,100mL/㎡である点が異なる。

3.⿎ PETによる腹膜機能評価を定期的に行うことが望ましい。

D/D0-Glu比 PETカテゴリー0.51-0.76 Low0.42-0.51 Low average0.32-0.42 High average0.13-0.32 High

表四-1 小児のPET 評価基準(D/D0-Glu比)

(文献4より引用)

D/P-Cr比 PETカテゴリー0.77-1.00 High0.64-0.77 High average0.51-0.64 Low average0.25-0.52 Low

表四-2 小児のPET 評価基準(D/P-Cr比)

(文献4より引用)

第四章 腹膜機能

第四章 腹膜機能

51

Part1

⿎⿎2-2. 中性化透析液の腹膜機能への影響2-1の記載は酸性透析液での評価であるが,中性化透析液に関しては,小児領域においてもPETへの明らかな影響

は報告されていない。しかし,重炭酸を用いた中性化透析液と乳酸を用いた酸性透析液を比較した検討では,PET

の結果には差がないものの,前者のほうが血清重炭酸濃度は有意に高く,腹膜中皮細胞の量を反映する排液中の

CA125濃度は後者の2倍であった15)。また,中性化透析液のほうが自由水除去量は多いという報告16)や,同じ中性

化透析液でも乳酸ではなく重炭酸を含む製剤のほうが除水量は多かったとする報告17)もあり,今後も知見を集積し

ていく必要がある。

引用文献

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第五章 被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件

53

Part1

2009年版日本透析医学会腹膜透析ガイドライン(GL)では被囊性腹膜硬化症(EPS)回避のための中止条件として以

上の2点を提示した1)。改訂GLにても同様の提示を行う。

腹膜劣化とは,腹膜機能の低下と腹膜形態変化を包括する概念である。腹膜機能低下は,限外濾過不全と腹膜透過

性の亢進が特徴的である。腹膜の形態変化とは,腹腔鏡所見,腹膜病理組織所見,排液中の中皮細胞診などで確認さ

れる所見を指す。

2009年版腹膜透析ガイドライン1)発刊後,2011年にGL普及のアンケートを行ったが,PETは9割以上の施設で

行われており,さらにPD中止の参考としている施設が8割以上であり,広くEPSに関するGLが認識されているこ

とが判明した2)。そのため本項では2009年版PD-GLを基本とし,それ以降のエビデンスを加えて解説する。

被囊性腹膜硬化症と腹膜劣化

解 説⿎⿎1-1.酸性透析液の疫学

わが国の腹膜透析患者におけるEPSの発症頻度は 0.9~2.4%と報告されており 3~6),これを回避することは,腹

膜透析を行っていくうえできわめて重要である。EPS の発症には,腹膜の劣化状態が基本的に関わっていると捉え

られている。腹膜劣化の成因には,糖尿病などの基礎疾患,加齢,尿毒素,薬剤,腹膜炎,腹膜透析治療システムに

内在する種々の生体刺激因子などが関与し,その程度は,一般に腹膜透析施行期間の延長とともに増強すると考えら

れている。この中で,特に腹膜炎と腹膜透析液の生体非適合性による影響が重要視されている。後者の要因には酸

性,高乳酸濃度,高浸透圧,高ブドウ糖濃度,ブドウ糖分解物などが含まれる7,8)。

厚生省長期慢性疾患総合研究事業慢性腎不全研究班(CAPD 療法の評価と適応に関する研究班)は 1997 年,「硬化

性被囊性腹膜炎(sclerosing encapsulating peritonitis: SEP)診断・治療指針(案)」の中で,「SEP(EPS)予防のため

の CAPD 中止基準指針」を示し9),その中で,腹膜機能低下(除水不全),腹膜炎,透析期間(8 年以上)などを SEP

(EPS)危険兆候の一つとしてあげている。これを基に国際腹膜透析学会(ISPD)では国際的な定義を示し,同時に

SEPとの用語は腹膜炎を必須とするとの誤解を招くためEPSに変更した7)。その後,わが国で行われた酸性液を用い

たPD患者での前向き観察研究でEPS発症頻度は2.5%,3.18/1,000患者・年で,腹膜透析施行期間が 3 年,5 年,

1

██ ポイント1.⿎ 長期腹膜透析例あるいは腹膜炎罹患後の例で腹膜劣化の進行が疑われる場合,被囊性腹膜硬

化症の危険性を考慮して腹膜透析の中止を検討する。

2.⿎ 腹膜劣化を判断するための基本的な検査として,腹膜平衡試験(PET)を定期的に行うことを提案する。

被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件第五章

P a r t 1

54

8 年,10 年,15 年,15 年以上の群での,EPS 発症頻度は,それぞれ 0%,0.7%,2.1%,5.9%,5.8%,17.2%

と透析期間に連動して増加する事実が確認された5)。またScottish Renal Registry では発症率は中央値5年で2.8%,

13.6/1,000患者・年でわが国に比べて早期より発症した症例が多くみられた10,11)。以上より,治療期間が EPS 発症

リスクに関連していることは明らかであるが,治療期間を限定しても EPS 発症を完全に回避することは困難と考え

られる。

⿎⿎1-2.中性化透析液の影響と現在の課題現在,わが国では透析液が改良され,ブドウ糖分解物を減じた中性化透析液が標準的に使用されているが,これに

よりEPS 発症が低減したとの観察研究が報告された6)。これは先に述べた酸性液での前向き観察研究5)とほぼ同様の

プロトコールで行われ,中性化透析液使用下ではEPS発症頻度は1.0%,2.3/1,000患者・年と低下し,さらに臨床

症状の軽度な症例が大半であった。また,後ろ向き研究ではあるが壁側腹膜生検組織の検討では,中性化透析液群で

腹膜血管変性が少ないことが確認された12~14)。これらの報告からは中性化透析液でのEPS発症リスクが低減してい

る可能性が推測される。EPS を回避することを目的に腹膜透析施行期間を区切ることが施設により実施されている。

しかし,この設定期間は,酸性液使用の患者群における経験則により導かれたものである。このため,中性化透析液

の治療例を同様に取り扱うことに関する医学的根拠はない。一方, EPS 発症と腹膜炎との関連は大きいと考えられる

が3),その影響は短期施行例と長期施行例とで同じとはいえず,長期例では単回の腹膜炎であってもそれが発症の契

機となっている可能性もある15,16)。加えて,腹膜機能低下,腹膜透析期間,腹膜炎回数はいずれも相互に関連してお

り,それぞれの発症リスクに対する独立性に関しては十分な検討結果は示されていない17)。また,腎移植の影響に

関して,腎移植後のEPS発症例が欧州から報告されている18,19)一方,免疫抑制薬の使用にてEPSが緩解したとする

報告もある20)。現時点では,腎移植とEPS発症リスクについて明言することはできない。以上より,EPS 発症を回

避するためには,発症の素因となるリスクの程度を個々の患者で経時的に把握・推測することが肝要と考えられる。

腹膜劣化の判断法と課題

解 説⿎⿎2-1.腹膜劣化

腹膜劣化とはPD治療によって惹起される腹膜機能と腹膜形態の変化を包含する概念である21)。腹膜機能低下の特

徴は,限外濾過不全と腹膜透過性の亢進である。限外濾過不全の判定として 4.25%デキストロース透析液(3.86%ブ

ドウ糖液)による限外濾過量や Na 濃度比(Na sieving)の確認が推奨されているが,わが国では,2.5%デキストロー

ス透析液(2 L)を一日4回使用しても除水量が 500 mL 未満を臨床的な目安としている9)。腹膜透過性は,PET で算

出される D/P クレアチニン比(D/P Cr)の増高で確認できる。腹膜の形態評価のために,腹腔鏡検査22~24),(壁側)腹

膜生検検査14,25),排液中の中皮細胞診26)などが行われている。また,腹膜劣化のマーカーとして排液中の液性因子

-癌抗原125(CA125),ヒアルロン酸,マトリックスメタプロテアーゼ 2(MMP-2),インターロイキン6(IL-6),血

管内皮細胞増殖因子,凝固線溶因子,Na sieving消失などの有用性が報告され27~32),さらに,血中β2ミクログロブ

リンの上昇33)や糖化蛋白受容体の遺伝子多型34)がEPS発症に関与しているとの報告もある。ただし,これらのサロ

ゲートは独立したものではなく,いくつかの報告で,組織学的変化,中皮細胞診,D/P Cr,液性因子との間の相互

関連が示されている35~39)。

⿎⿎2-2.EPSと腹膜劣化現在までの多数例での検討で,EPS 発症との関連が示唆されているものには D/P Cr40~43),中皮細胞面積43),排

2

第五章 被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件

第五章 被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件

55

Part1

液 MMP-229,44),排液IL-645),などがある。

ISPD-Position Paper 46)では,PETを中心とする腹膜透過性を検討した研究を列記しているが,この中で,EPS

の多くは腹膜透過性亢進状態であるものの,長期PD患者でも透過性は亢進しておりEPS予測因子としての特異性は

ないとしている。しかし,腹膜透過性を評価する方法として確立したものはPETであり,基本的な定期検査として

PETを少なくとも年に一度は行い,D/P Crの推移を把握することが望ましい。PETによる腹膜機能判定は,非侵襲

的であることに加え,客観性,簡便性,経済性に優れるためである。D/P Crは単回の検査だけでEPS発症を予測す

るには十分とはいえないのは明らかだが,経時的な変化を観察する意味は大きい41,42)。D/P Cr が経時的に上昇し,

「High」が12か月以上持続する例では,高度の腹膜の劣化が進行していると判断して腹膜透析の中止を検討するべ

きである。またPETでの除水量(UF capacity)の変化が有用であるとの報告も認められる42)。

一方,中皮細胞診は,EPS発症リスクと関連していることが確認され,その臨床的有用性が示唆されているが43),

予知因子としての感度,特異度の面で課題がある。排液マーカーにおいても同様である。このように,一つの検査の

みでEPSに繋がる腹膜劣化を判定することは難しく,それぞれ単独で絶対的な診断方法とはなりえていないのが現

状である。このため,複数の所見を基に総合的に判断することが必要である。

酸性液時代のわが国のEPS例の70%はPD離脱後に発症していることより5),PD離脱後の腹腔内の変化を観察す

ることは臨床的に重要と考えられる。腹膜劣化が疑われる長期施行例においては,腹膜透析カテーテルをPD離脱後

も一定期間留置し,排液の性状や腹膜機能の推移を観察することは,EPS 発症ハイリスク例を判断するうえで意義

があるかもしれない。さらに定期的な腹腔鏡検査もEPS発症を確認するのに有効である。ただし,これらの操作は,

感染性腹膜炎の危険性を勘案して行うべきである。またカテーテル留置を利用して行ういわゆる腹腔洗浄がEPS発

症抑制面で臨床的に有用かについての結論は得られていない43,47,48)。したがって,本操作も臨床上のリスクを勘案し

て実施すべきである。

EPSの認識と現状

解 説⿎⿎3-1.発症様式

長期にPD液に曝露されることにより腹膜中皮細胞が剥離・消失すると線維化が進行し腹膜肥厚(劣化)が起こる。

さらに腹膜細血管の変性(硝子様変性と内腔狭小化)が起こり腹膜透過性が変化する(first hit)。この状態に何らかの

炎症状態(second hit,多くは細菌性腹膜炎,その他不明な因子)が加わると腹膜細血管が新生・増生しさらに透過性

が高まるとともに,アルブミン/フィブリンなどの大分子物質の透過が亢進し,肥厚線維化した腹膜表面にフィブリ

ンの膜が形成される(two hit theory)49,50)。この所見は腹膜組織の検討にても示されている14,51)。

フィブリン膜がさらに変性硬化し腸管全域を圧迫することにより症状が発する。フィブリン膜は壁側腹膜から臓側

腹膜に連続しており,時に内部に腹水が貯留することにより腹部CTなどによる診断が容易となる。腹膜劣化と被膜

形成は必ずしも相関するものではなく,症例によって異なる。腹膜劣化が高度であれば,軽度の炎症でも被膜は形成

され,逆に高度の炎症では腹膜劣化が軽度であってもEPSとなりうる。この劣化と炎症のバランスは重要であり,

これが比較的短期のPD症例でもEPSが発症する所以である。さらに,線維化が重篤な例,二次性副甲状腺機能亢進

症例では被膜と変性腹膜の間にびまん性に石灰沈着が起こり,腸閉塞症状が進行する例もある。

診断:EPSの定義は1997年にすでに示されている。「び漫性に肥厚した腹膜の広範な癒着により,持続的,間欠的

あるいは反復性にイレウス症状を呈する症候群」9)とされる。腸閉塞症状は被膜が形成され腸管を圧迫することより

発生するが,そのため腸閉塞症状が起こるが一時的な絶食で改善,しかし数か月を経て再燃,この再燃までの期間が

徐々に短くなればEPSと確診される。補助診断として腹部CT検査が推奨される52,53)。このように,EPSとは臨床的

3

P a r t 1

56

に固定・確立した病状に対してなされる診断名である。この意味で,EPS発症の前段階とする「Pre-EPS」という診

断名を用いることは推奨できない。

⿎⿎3-2.治療EPSの治療として,現在,薬物治療(副腎皮質ステロイド,Tamoxifen)と外科治療が行われている。

薬物治療に関しては,わが国では副腎皮質ステロイドがEPS発症後の第一選択として用いられている 54)。本剤の

効果は炎症を抑制することにより,腹水とフィブリン析出を防止する点にあると考えられる。このため,治療開始時

期として発症直後からの投与が必要であり,また効果発現後の減量法も重要となる。しかし,海外での報告検討は限

られ,副腎皮質ステロイド薬の選択するコンセンサスは得られていないのが現状である46)。一方,エストロゲン受

容体調節薬であるTamoxifenはわが国での使用報告はないが,ヨーロッパを中心に広く使用されている。本剤は,

線維化促進因子の遺伝子発現抑制,中皮細胞の間質細胞の形質転換抑制,変性コラーゲンの除去促進などの機序を介

して,腹膜劣化を防止すると考えられる55,56)。オランダEPSレジストリー研究ではTamoxifen使用群での有意な生

存率向上が報告されている57)。この結果を受けてオランダのEPS-GLでは,薬物療法(ステロイド,Tamoxifen)の使

用方法,手術療法へのタイミングなど治療アルゴリズムを示している58)。しかしながら,薬物療法についての検討

は,ケースシリーズまたは小規模な症例対象研究であり,その最終的な臨床効果に関して,現時点では明確に結論づ

けることはできない。英国National Institute for Health and Care Excellence(NICE)-GL59)では薬物療法の有用性

に関しては明確な証拠はないとし,その使用に関しては医師の判断に任せるとしている。

外科治療に関しては当初は禁忌とされていたが60),わが国から腸管癒着剥離術の良好な成績が報告された49,61,62)。

NICE-GLでは確立したEPSに対しては早期に外科治療を考慮すべきであり,経験を積んだチームによって加療され

るべきとしている。日本透析医学会統計調査(JRDS)でもEPS既往歴のある患者の79.5%に何らかの外科治療が行わ

れていた54)。日本62),英国63),ドイツ64),オランダ65)からの報告では死亡率は32~35%であり,保存的療法の成

績57,66,67)より良好であった。EPSを熟知した外科チームによる加療は医学的妥当性があると考えられる。

⿎⿎3-3.EPSの今後わが国においては,中性化透析液の導入によりEPS発症率は低下し過去の合併症となってきている。しかし,時

に比較的短いPD期間でのEPS症例もみられ,その多くには腹膜炎の関与が推察される。今後,より一層のEPS抑制

を図るためには,PD療法の基本である腹膜炎予防と炎症を遷延させない治療フローの徹底,そして,EPS発症進展

の病態理解に基づいた予防・治療法の確立が重要であることは言うまでもない。

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第五章 被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件

第五章 被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件

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第五章 被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件

第五章 被囊性腹膜硬化症回避のための中止条件

59

Part1

⿎⿎小児患者のEPS回避のための中止条件

解 説腹膜透析(PD)が小児期腎代替療法の中心であり,被囊性腹膜硬化症の危険性を十分に考慮する必要がある。

腹膜透析期間小児の3つのレジストリーでは,PD期間が長いほどEPSを発症しやすいと報告されている。レジストリーとして

最も早く報告された本邦のデータ(1981年から1999年,843症例)では17症例のEPS(有病率2.0%)が報告されてお

り,この当時の成人の発症率とほぼ同等だった1,2)。PDの治療期間で解析すると,5年以上で6.6%,8年以上

12.0%,10年以上で22%と経年的に増加を認めた1,2)。ヨーロッパの14の小児透析施設のレジストリー(European

Paediatric Dialysis Working Group: EPDWG)3)では,2001年から2010年までの10年間に1,472症例中22症例が

EPSを発症(有病率1.5%,8.7/1,000人年)した。PD治療期間はEPS症例が平均5.9年(1.6~10.2)に対し,非EPS症

例1.7年(0.7~7.7)と有意(p<0.00001)に長かった3)。1986年から2011年のイタリアのレジストリー 4)では,712

症例中14症例がEPSを発症(有病率1.9%)し,内11症例が5年以上PD治療を受けていた。これら3つのレジスト

リーから,1.5~2.0%の有病率を示し,PD治療期間が長くなるほどEPSのリスクが高くなると考えられる。

透析液の種類本邦成人のNEXT-PD studyのデータでは,中性化透析液によりEPS発症が減少したと報告されている5)。本邦小

児のレジストリーは全例が酸性透析液の時代で比較ができない。EPDWGではEPS症例22症例中5症例がPD治療全

期間にわたって中性化液を利用しており,透析液の差(酸性透析液と中性化透析液)によるEPS発症の頻度について

検討しているが,差はなかった(p=0.8)と結論しており3),中性化透析液による発症頻度減少は,少なくとも小児で

は確認されていない。

除水不良,PETカテゴリーEPS症例では,EPS発症時には除水不良を高頻度(本邦76% 1),ヨーロッパ88%3))に認め,PETでも全例がhigh3)

だった。除水不良の有無などの腹膜機能の評価には定期的にPETを行うことが望ましい。一方,EPS発症前に複数

回PETを行った症例でhighを示したものは本邦6例中3例1),ヨーロッパレジストリー 3例中0例3),イタリアレジ

ストリー全4例4)だった。直前のPETでhigh transporterでなくてもEPSを発症することが示されており,注意を要

する。

1

2

3

██ ポイント1.⿎ 長期間の腹膜透析治療はEPSのリスクであるため,治療継続についてはリスクとベネフィ

ットを検討し,漫然とした治療継続を避ける。

2.⿎ 腹膜機能を評価するために,PETは定期的に行うことが望ましい。

3.⿎ PDからHD,移植に治療変更後にもEPSは発症するため,EPSの腹部症状に注意をして経過観察する必要がある。

P a r t 1

60

腹膜炎EPDWGでは,EPS症例が平均1.9(0.9~3.1)回/年に対し非EPS症例が0.72(0.3~1.2)回/年であり,EPS症例で

腹膜炎罹患が有意に多い(p=0.02)3)と報告しているが,本邦(EPS症例0.44回/年,非EPS症例0.42回/年)1)・イタ

リア(EPS症例0.45回/年,非EPS症例0.42回/年)4)の両レジストリーでは差がなかった。しかし,本邦EPS 17症

例中9例が腹膜炎直後にEPSを発症していた2)ことや,EPDWGのEPS症例の腹膜炎頻度は他のレジストリーに比較

して4倍に及ぶことから,腹膜炎が高頻度にある場合や,頻度が高くなくても長期間PDで腹膜が劣化しているとき

に腹膜炎に罹患した場合には,EPSを発症することが考えられる。

発症時期EPSの発症時期は,PD治療中(64~77%)1,3,4)が多いが,血液透析に移行後(14~29%)2~4)や移植後(9~21%)3,4)に

もEPSを発症している。移行後1年目に発症することが多い4)が,移植8年後に発症した小児症例も報告されてい

る6)ため,PD治療終了後も,EPSを疑わせる臨床症状には注意を払う必要がある。

予測因子臨床症状を呈する前に診断することは難しい。PETデータについては上述したが,CT scanについても成人データ

ではあるが,1年以内のCT所見が正常にもかかわらずEPSが発症する7)ため,スクリーニングとしてのCTは適応で

はない8)。PD治療継続の可否を判断するために,腹膜生検所見で検討した報告では,PD治療期間が5年以上もしく

は臨床的にEPSを疑わせる症例を対象に行った腹膜生検で,腹膜中皮剥離と細小動脈内腔狭窄がなければ,EPSの症

候を伴わない症例は無治療での経過観察が可能である9)としているが,治療継続のルーチン検査として行うことは難

しい8)かもしれない。

生命予後死亡率は,本邦17% 2),EPDWG13%(診断後平均4.8年)3),イタリア43%4)である。本邦の報告がイタリアに比

較して低いのは,より重篤な予後を取りやすい移植症例を本邦例が含まないからと考察されている4)が,イタリアレ

ジストリーと他の予後の違いの正確な理由は不明である。本邦やEPDWGの報告では小児EPS症例の生命予後は成

人症例に比べて良好である3)。

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4

5

6

7

第六章 腹膜炎管理

61

Part1

腹膜透析関連腹膜炎の疫学,発症率

⿎⿎1-1. 感染の原因と腹膜炎の定義

解 説腹膜透析患者においてPD関連腹膜炎は,除水能の低下や腹膜機能障害をきたし,カテーテル抜去や血液透析移

行,EPSへの進展,死亡の原因となるためきわめて大きな問題で,予防・早期治療が重要である1~5)。感染経路はさ

まざまで,以下のように分類できる。

Ⅰ.外因性感染

 ①経カテーテル:バッグ交換手技,操作上のミスによるもの

 ②傍カテーテル:出口部感染,皮下トンネル感染からの波及

 ③カテーテル挿入時のカテーテル感染

Ⅱ.内因性感染

 ①経腸管感染:憩室炎などからの菌の移行

 ②血行性感染

 ③経膣感染

 ④その他:腹腔内膿瘍など

タッチコンタミネーションや,出口部・トンネル感染からの波及が一般的で,その他,内因性感染として腸管感染

(胆囊炎,虫垂炎,憩室破裂,重度の下痢,腸管穿孔,腸閉塞,ヘルニア陥頓)からの波及および血行性感染があ

る6~11)。

腹膜炎には再発性腹膜炎,再燃性腹膜炎,反復性腹膜炎,難治性腹膜炎,カテーテル関連腹膜炎があり,以下のよ

うに定義されている12)。

・�再発性(recurrent):前回の腹膜炎の治療完了後約4週間以内に発症する腹膜炎で,病原微生物が前回と異なっ

1

██ ポイント1.⿎ PD関連腹膜炎は,腹膜機能低下,カテーテル抜去や血液透析への移行,EPSへの進展,死

亡の原因となるため,予防・早期治療が重要である。

2.⿎ 原因(感染経路)によって外因性感染と内因性感染に分類される。

3.⿎ 腹膜炎が治癒した後に再度発症した場合,治癒からの期間が4週以内で病原微生物が異なっていれば再発性腹膜炎,病原微生物が同じであれば再燃性腹膜炎,4週以上で病原微生物が同じであれば反復性腹膜炎と定義されている。

腹膜炎管理第六章

P a r t 1

62

ているもの

・�再燃性(relapsing):前回の腹膜炎の治療完了後約4週間以内に発症する腹膜炎で,病原微生物が前回と同一か,

もしくは菌が検出できない場合

・�反復性(repeat):前回の腹膜炎の治療完了後約4週間以上経過した後に発症した腹膜炎で,病原微生物が前回と

同じ微生物である場合

・�難治性(refractory):適切な抗菌薬を投与しているにもかかわらず,5日間経過した後でも排液の混濁が消失し

ない場合

・�カテーテル関連腹膜炎:腹膜炎の原因菌と同じ微生物が検出される出口部感染またはトンネル感染を合併する腹

膜炎と定義されるが,出口部から微生物が検出できない場合もある。

⿎⿎1-2.発症率

解 説腹膜炎発症率は,患者月数について1例として表す方法が一般的に使用されているが,国際腹膜透析学会(ISPD)

委員会では1年当たりの例数として経年的に示すのが好ましいと推奨している12)。注意すべき点としてはPD練習開

始初日(PD開始時)よりカウントを行うこと,再燃性腹膜炎(腹膜炎治療終了4週以内に発症した同一菌による腹膜

炎)は1回としてカウントすること,また,入院中,医療者が交換を行っている際の腹膜炎もカウントすることであ

る。

全腹膜炎発症率の算出に加えて,起因菌別,薬剤感受性についての統計も取っておく必要がある 8)。施設ごとに起

因菌の傾向が異なる可能性があり,発症率が高い場合に対策を講ずる必要があるため,自施設の感染傾向を知ること

は重要である12)。ISPDガイドラインは,2010年までは目標腹膜炎発症率を0.67/患者・年を超えないように勧告し,

0.36/患者・年以下が望ましいとしていた13)が,2016年の勧告では0.5/患者・年を超えるべきではないと記載して

いる12)。

近年の腹膜炎の発症率の報告はさまざまであるが,0.18~0.5/患者・年程度の報告が多い 14~29)。原疾患別には差

がなく,ループス腎炎や多発性嚢胞腎であっても他の原疾患と発症率に差はないと報告されている30,31)。わが国の腹

膜炎発症率については,1996年の後ろ向き調査では0.23/患者・年であった 32)。また,日本透析医学会が集計した

2012~2015年の報告では0.21~0.24/患者・年で,大きな変動はみられず管理は良好といえる。2015年の集計で

は腹膜炎発症率を男女別,年齢層別に算出され,男性で発症率がやや高く,年齢層が高くなるにつれて発症率が増加

する傾向が示されている。また,腹膜炎の発症と透析歴には関連性は認められていない。主要原疾患別の腹膜炎発症

率では,腎硬化症や糖尿病性腎症において腹膜炎の発症率が高い傾向であったことが報告されている。

このように,わが国の腹膜炎の発症率は低く管理されているが,腹膜炎は依然としてPD離脱の主因であり,今後

も継続的な予防策の開発が望まれる2)。

██ ポイント⿎ 腹膜炎発症率は1年当たりの例数として表すほうが望ましい。

⿎ わが国の腹膜炎発症率は0.21~0.24/患者・年で,低い頻度を維持している。

第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

63

Part1

██ ポイント⿎ 腹膜炎の主な症状は腹痛と排液混濁である。

⿎ 腹痛を伴わずに排液混濁のみをきたす場合もあり,日常での排液の観察が大切である。

⿎⿎1-3.危険因子

解 説PD関連腹膜炎の危険因子としては,糖尿病,肥満,人種,気候,うつ病などが報告されている33)。また,PDカ

テーテルの形態やYバッグによってPD腹膜炎の発症率を抑えられたことも報告されている 34,35)。APDとCAPDでは

腹膜炎の発症率に差は認められていない36)。

⿎⿎1-4.起因菌

解 説起因菌で最も多いのはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌である29)。わが国の報告では,グラム陽性球菌が42.7%,う

ちStaphylococcus属が21.5%と最多とされている4)。オーストラリアの調査では,2003~2009年で6,639人を調査

した研究においてグラム陽性菌が53.4%,グラム陰性菌が23.6%であった。マイコバクテリウム属や真菌感染はま

れであったが,嫌気性菌と併せてカテーテル抜去率が高かったと報告されている37)。各施設により起因菌はさまざ

まなので,自施設の傾向を知ることが重要である12)。

腹膜透析関連腹膜炎の症状と診断

⿎⿎2-1.腹膜炎の症状

2

██ ポイント⿎ 腹膜炎の危険因子には糖尿病や肥満があげられるが,透析法による影響は明らかではない。

██ ポイント1.⿎ 起因菌は,わが国ではグラム陽性球菌(特にコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が多い)が多い。

2.⿎ マイコバクテリウム属・真菌・嫌気性菌による腹膜炎は難治性で,カテーテル抜去率が高い。

P a r t 1

64

解 説腹膜炎の多くは腹痛と排液混濁が認められ,腹痛が80%,37.5℃以上の発熱が30%,嘔気・嘔吐が50%,排液混

濁が80%,低血圧が20%程度と報告されている9)。腹痛と反跳痛を呈するが板状硬を呈することは少ない。腹痛と

排液混濁は必ずしも同時に発症するわけではなく,腹痛がなく排液混濁のみのこともあれば,遅れて排液混濁をきた

すこともある。排液混濁には腹膜炎以外にも鑑別すべき疾患が多いが,PD関連腹膜炎であることが多い38)。腹痛が

なく排液混濁に気づかない場合,診断が大幅に遅れることがあり,日常での排液の観察が大切である。

⿎⿎2-2.腹膜炎の診断

解 説腹膜炎が疑われる場合には透析液を排液させ,排液外観を注意深く観察した後,分画を含めた細胞数,グラム染

色,培養検査へ提出する39)。ISPDガイドラインでは,排液混濁を呈したPD患者は腹膜炎であると考え,診断が確

定するまで,もしくは除外されるまで腹膜炎治療を継続することを推奨している12)。

2016年にISPDから提唱され12),現在,世界的に使用されている腹膜炎の診断基準は以下のとおりである40,41)。

以下の臨床所見のうち少なくとも2つを満たすことで診断することが推奨されている12)。

 ①腹膜炎の臨床徴候である腹痛および透析排液混濁,またはいずれか一方

 ②�透析排液中の白血球数が100/μL以上または0.1×109/L以上(最低2時間の貯留後)で,多核白血球が50%以

上42)

 ③透析排液培養陽性

病歴を聴取する際には,症状とともに最近のPD液交換手技時の汚染の有無,予想外のPD接続不良・チューブの

切断など菌の混入する機会の有無,上・下部内視鏡や婦人科的処置,さらに下痢や便秘の有無,腹膜炎の既往,出口

部感染の既往・現状などについて丁寧に聴取する。カテーテルのトンネル部位や出口部を注意深く観察し,出口部か

らの排膿を積極的に探索し培養を提出する。

典型的な身体所見として,腹部の圧痛は腹部全体に及び,時に筋性防御を伴う。内因性腹膜炎の患者では敗血症の

全身症状を呈することが多く,限局性の疼痛・圧痛を認めた場合・透析液内に排膿を認めることがある場合は,腹腔

内膿瘍などの外科的な病因が存在することを念頭に入れる必要がある。腹部X線や血液培養は通常のPD関連腹膜炎

であれば必須ではないが,上記のような臨床症状などから内因性感染による敗血症症状を疑えば行うべきである。

一方,APDの患者では,排液中の白血球数はある程度貯留時間の影響を受けるため排液混濁に気づきにくいこと

が多い。そのため,高頻度サイクルのAPDの患者において腹膜炎を診断する際には,腹膜混濁の所見確認とともに

██ ポイント⿎ 腹膜炎は,①腹痛あるいは透析排液混濁,②透析排液中の白血球数が100/μL以上または

0.1×109/L以上(最低2時間の貯留後)で多核白血球が50%以上,③透析排液培養陽性のうちの少なくとも2つを満たす場合に診断する。

⿎ APDの患者では,好中球の比率が50%以上であれば,たとえ白血球数が100/μL以下であっても腹膜炎と診断する。

第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

65

Part1

白血球の絶対数より好中球の比率を用いる。そして,好中球の比率が50%以上であれば,たとえ白血球数が100/

μL以下であっても腹膜炎と診断する42)。昼間にPD液を貯留していないAPDの患者では,1�Lの透析液を注入し,

1~2時間貯留して排液し,同様に診断に用いる。

腹膜炎と診断した後,今回のエピソードが再発性,再燃性,反復性に該当するか確認する必要がある。なぜなら,

再発性,再燃性の腹膜炎はそれぞれ14%,5%程度存在するといわれており,どちらもカテーテル抜去や血液透析移

行のリスクとされている43)。反復性腹膜炎は10%程度の頻度で起こり,前回の抗菌薬治療が治癒して2か月以内の

発症が最も多い44,45)。

⿎⿎2-3.起因菌の検査方法

解 説起因菌の同定について,ISPDガイドライン12)では以下のように推奨している。

・PD排液の細菌培養には血液培養ボトルを使うことを推奨する。

・培養陰性率が15%以上の場合,検体採取方法と培養方法を見直し,改善することを推奨する。

PD排液の培養は原因菌を同定し,抗菌薬の感受性を調べることによって,適切な抗菌薬が選択できるため,最も

重要な検査方法である。また,同定された原因菌によっては特定の感染源を示唆することがある。PD排液のグラム

染色は陰性になることが多いが,陽性時の初期抗菌薬投与への寄与を考慮し施行すべきである46)。50�mLの透析液

を3,000�gで15分間遠心分離し,3~5�mLの滅菌した生理食塩水で沈殿物を再懸濁して,固形培地や標準血液培地

に植えつけることで,グラム染色陽性率は5~10倍上昇する47)。

血液培養ボトル(好気性・嫌気性)に5~10�mLのPD排液を注入する方法は感度が良好で,この方法を用いた場合,

培養陰性率は通常10~20%程度である48,49)。水で溶解する方法と,Tween-80やTriton-Xなどの界面活性剤を添加

し,血液寒天培地に培養する方法はそれぞれ特異的に検出できる菌種が異なっており,両者を組み合わせることでよ

り陽性率が上昇すると報告されている50)。検体は6時間以内に検査室に届けることが理想的であるが,困難であれ

ば,PD排液を注入した血液培養ボトルを37℃で培養する。固形培地は好気性,微好気性,嫌気性条件下それぞれで

培養を行う。

原因菌を同定するまでの速さは非常に重要である。前述の遠心沈殿処理は,細菌検出率を高めるだけではなく培養

陽性までの時間を短縮させる。75%以上の症例で3日以内に微生物学的診断が確定する。培養を開始し3~5日経過

しても培養陰性であるならばPD排液の細胞数,分画を再度測定し,治療反応性を確認するとともに真菌・抗酸菌培

養を行う。さらに3~4日間の好気性,嫌気性,微好気性培養条件下での継代培養を行うことによって,自動培養シ

ステムでは検出できない遅発育菌や酵母が同定できることがある。

██ ポイント⿎ 起因菌の同定は,感染原因の推測,抗菌薬の選択,その後の予防法対策においてきわめて重

要である。

⿎ PD排液の細菌培養には血液培養ボトルを使うことが望ましい。

⿎ 透析液を遠心分離した後に培養すれば,細菌検出率を高めるだけではなく培養陽性までの時間を短縮しうる。

P a r t 1

66

⿎⿎2-4.新規検査法について

解 説現在,さまざまな早期診断方法が提案されている。2000年代は白血球エステラーゼ試験紙51),バイオマーカーア

ッセイ52),細菌由来DNAフラグメントのPCR解析53,54)などが提唱された。2010年代になると,細菌の16S�rRNA

遺伝子配列解析55),マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOF)56),病原体特異

的免疫フィンガープリント法57,58)を使用した報告が認められる。しかしながら,これらの検査において従来の方法よ

り優れていることは証明されていない。

腹膜透析関連腹膜炎の治療

解 説腹膜炎治療に対する抗菌薬治療は検体採取後できる限り早く治療を開始することにより重症化や腹膜機能への影響

を減らすことができる。起因菌が判明する前の経験的治療としてグラム陽性菌とグラム陰性菌をカバーする抗菌薬を

選択する必要がある。第1世代セファロスポリン単独治療やキノロン単独治療での有効率は70%以下であった59)。

グラム陽性菌に対する抗菌薬として第1世代セファロスポリンもしくはグリコペプチド系(バンコマイシンもしく

はテイコプラニン)が用いられる。第1世代セファロスポリンとバンコマイシンの比較ではバンコマイシンのほうが

腹膜炎治癒率,入院率,菌交代において優れていたという報告もあるが60),治癒率に有意差がなかったという報告

もされている61)。メタアナリシスを行うとグリコペプチド系が第1世代セファロスポリンに優ることになるが,グリ

コペプチドが有利とした前者の論文60)では使用されたセファゾリンの容量が十分でなかった影響が大きいとされて

いる33)。ISPDガイドラインではメチシリン耐性菌の検出率が高い施設においてはバンコマイシンを選択することが

推奨されているが12,62),わが国ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant�Staphylococcus aureus:�

MRSA)感染症にのみ保険適応があることから,MRSA感染症に対して使用する。

3

██ ポイント⿎ さまざまな早期診断法が報告されているが,従来の方法より明らかに優れている方法は確立

していない。

██ ポイント1.⿎⿎起因菌同定のための検体を採取したら速やかに抗菌薬の経験的治療を開始する。

2.⿎⿎経験的治療ではグラム陽性菌に対する第1世代セファロスポリンとグラム陰性菌に対する第3世代セファロスポリンもしくはアミノグリコシドを投与する。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染に対してはバンコマイシンを投与する。

3.⿎⿎培養結果と感受性が判明したのちは,適切な抗菌薬に変更して適切な治療期間を行う。

第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

67

Part1

グラム陰性菌に対する抗菌薬として第3世代セファロスポリンもしくはアミノグリコシドが有効である。その他に

セフェピムやカルバペネムも有効である。キノロンは耐性化が進んでいない地域において有効である。

これまでにさまざまな組み合わせの報告がある。セフタジジム+セファゾリン併用とアミノグリコシド(ネチルマ

イシン)+セファゾリン併用を比較した研究では有効性に差はなかった63)。セファゾリン+アミノグリコシド(ネチ

ルマイシン)併用とバンコマイシン+セフタジジム併用においても有効性に差はなかった64)。セフェピム単独治療と

バンコマイシン+アミノグリコシド(ネチルマイシン)併用療法の比較においても反応性と治癒率に差はなかった65)。

カルバペネム(メロペネム)+アミノグリコシド(トブラマイシン)とカルバペネム(メロペネム)+バンコマイシンの

比較では反応性に差はなかった66)。セフタジジム+セファゾリンの併用とカルバペネム(イミペネム/シラスチン)の

単独治療においても有効性に差はなかった67)。キノロンに関しても有効性が報告されている。キノロン(オフロキサ

表六-1 腹膜炎治療で推奨される腹腔内への抗菌薬の投与量

(文献12より引用,改変)

間欠(1日1回) 連続(すべての交換毎)アミノグリコシド

アミカシン 2 mg/kg/day LD 25 mg/L, MD 12 mg/Lゲンタマイシン 0.6 mg/kg/dayトブラマイシン 0.6 mg/kg/day

セファロスポリンセファゾリン 15-20 mg/kg/day LD 500 mg/L, MD 125 mg/Lセフェピム 1,000 mg/day LD 250-500 mg/L, MD 100-125 mg/Lセフォペラゾン データなし LD 500 mg/L, MD 62.5-125 mg/Lセフォタキシム 500-1,000 mg/day データなしセフタジジム 1,000-1,500 mg/day LD 500 mg/L, MD 125 mg/Lセフトリアキソン 1,000 mg/day データなし

ペニシリンペニシリンG データなし LD 50,000 unit/L, MD 25,000 unit/Lアモキシシリン データなし MD 150 mg/Lアンピシリン データなし MD 125 mg/Lアンピシリン/スルバクタム 2 g/1 gを12時間毎 LD 750-100 mg/L, MD 100 mg/Lピペラシリン/タゾバクタム データなし LD 4 g/0.5 g, MD 1 g/0.125 g

その他アズトレオナム 2 g/day LD 1,000 mg/L, MD 250 mg/Lシプロフロキサシン データなし MD 50 mg/Lクリンダマイシン データなし MD 600 mg/バッグダプトマイシン データなし LD 100 mg/L, MD 20 mg/Lイミペネム/シラスタチン LD 250 mg/L, MD 50 mg/Lオフロキサシン データなし LD 200 mg, MD 25 mg/LポリミキシンB データなし MD 300,000 unit(30 mg)/バッグキヌプリスチン/ダルホプリスチン バッグ交換する毎に25 mg/La データなしメロペネム 1 g/day データなしテイコプラニン 15 mg/kgを5日毎 LD 400 mg/バッグ,MD 20 mg/バッグバンコマイシン 15-30 mg/kgを5-7日毎 b LD 30 mg/kg, MD 1.5 mg/kg/バッグ

抗真菌薬フルコナゾール IP 200 mgを24-48時間毎 データなしボリコナゾール IP 2.5 mg/kg/day データなし

LD:初回(負荷)投与量,MD:維持投与量,IP:腹腔内,APD:自動腹膜透析a. 1日2回500 mgを静脈内投与と併せて実施。b. APD患者では補助投与量が必要かもしれない。

P a r t 1

68

シン)単独とセファロチン+アミノグリコシド(トブラマイシン)併用においても有効性で劣らなかった68)。しかしな

がらキノロン(シプロフロキサシン)単独治療では黄色ブドウ球菌の消失が遅いと報告されている 69)。キノロン(ペフ

ロキサシン)+バンコマイシン併用とアミノグリコシド(ゲンタマイシン)+バンコマイシン併用では有効性に差はな

かった70)。キノロン(レボフロキサシン)+バンコマイシン併用とアミノグリコシド(ネチルマイシン)+バンコマイ

シン併用では有効性に差はなかった71)。バンコマイシンとキノロン(シプロフロキサシン)併用 72),セファゾリンと

キノロン(シプロフロキサシン)併用73)も有効である。またセファロスポリンに対するアレルギーがある場合はアズ

トレオナムを代替薬として使用することができる。アズトレオナム+セフロキシムの併用は有用であった74)。短期

間のアミノグリコシド治療であれば残存腎機能を低下させるという報告はないが75,76),長期間(3週間以上)や繰り返

しの使用により聴力障害が起こる危険性が高まるため避けるべきである77)。

抗菌薬の投与経路としては,静脈内投与に比べ腹腔内投与では腹腔内濃度が高くなるためISPDガイドラインでは

後者が勧められている。また,今回のシステマティックレビューの結果はCQ5に示すとおりである(注意:現在,腹

腔内投与については保険適用がない)。セファゾリンは6時間の腹腔内貯留にて,24時間適切な血中,腹腔内濃度が

保たれることが報告されている78)。近年の報告で,メロペネムを経静脈投与と腹腔内投与した詳細な検討がある。

これによれば,血中濃度は同等であったが,透析液中濃度は経静脈投与で明らかに低いことが示されている79)。腹

腔内抗菌薬は連続投与と間欠投与(1日1回)があるが,通常後者が行われる。間欠投与では十分に吸収するためには

少なくとも6時間以上腹腔内に貯留させなければならない 80)。バンコマイシン,アミノグリコシド,セファロスポリ

ンは同一透析液へ添加することができるが,アミノグリコシドとペニシリン系は配合禁忌であるため添加することは

できない81)。�

抗菌薬の投与量は,表六-1,�表六-2を参考にされたい。�

抗生剤の透析液における抗菌薬の安定性も検討されている。ブドウ糖含有腹膜透析液,イコデキストリン透析液と

もにセファゾリンとセフタジジムの併用は37℃で24時間,4℃では7日間までは安定であったとされ82),別の報告

では4℃では14日間までは安定であったと報告されている83)。このように1日以上保存するのであれば4℃が望まし

いことが示されている。

APDで治療している患者ではサイクラーによる頻回の交換のため抗菌薬腹腔内濃度が不十分になる可能性があり,

表六-2 腹膜炎治療で推奨される抗菌薬の全身投与量

薬剤 投与量抗菌薬

シプロフロキサシン 経口250 mgを1日2回 a

レボフロキサシン 経口250 mg/dayリネゾリド IVもしくは経口600 mgを1日2回モキシフロキサシン 経口400 mg/dayリファンピシン 体重50 kg未満:450 mg/day;体重50 kg以上:600 mg/dayトリメトプリム/スルファメトキサゾール 経口160 mg/800 mgを1日2回

抗真菌薬

アムホテリシン開始用量:IVテスト量1 mg;開始6時間後から:0.1 mg/kg/day;維持用量まで増加するために4日目から:0.75-1.0 mg/kg/day

カスポファンギン 開始用量:IV 70 ng,その後50 mg/dayフルコナゾール 開始用量:経口200 mg,その後50-100 mg/dayフルシトシン 経口1 g/dayボリコナゾール 経口200 mgを12時間毎

IV:静脈内投与a. GFR 5 mL/min以上の残腎機能があれば,シプロフロキサシン500 mgを1日2回とする。

第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

69

Part1

一時的にAPDからCAPDへ変更することも検討する。APDとCAPDにて腹膜炎を治療した結果の比較では再発率,

死亡率,カテーテル抜去において差はなかったが,白血球数の上昇している期間や抗菌薬治療期間がAPDで長くな

ると報告がある84)。

一般的に腹膜炎に対して経験的治療を行うと48時間以内で多くの症例で臨床的改善を認める。改善がみられない

場合は排液中の細胞数と細菌培養の再検を行う必要がある。治療3日目の排液白血球数が1,090/mm3以上であると

治療失敗の独立した予測因子であるとの報告がある85)。

起因菌別による治療

⿎⿎4 -1.コアグラーゼ陰性ブドウ球菌

解 説コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci:�CNS)は表皮ブドウ球菌を含む皮膚常在菌であ

り,多くの場合タッチコンタミネーションが原因とされている。一般的に症状はあまり激しくなく,抗菌薬への反応

は良好である86)。メチシリンに対して耐性のある場合はバンコマイシンを選択する。232件のCNSによる腹膜炎を

検討した報告では初期反応率は香港の病院では95.3%であり,メチシリン耐性菌は49.5%を占めていた87)。また65

件のCNSによる腹膜炎を検討した報告では58.5%がセファロスポリン耐性であった88)。これらの報告では一般的に

2週間の有効な抗菌薬治療で十分であった。メチシリン耐性菌であること,耐性菌に対するバンコマイシン使用が予

後決定因子であった89)。PDカテーテルにバイオフィルムを形成し再燃性腹膜炎を引き起こす場合があり,この場合

はカテーテルの入れ替えが必要となる89)。�

⿎⿎4 -2.黄色ブドウ球菌

解 説黄色ブドウ球菌による腹膜炎はタッチコンタミネーション,出口部感染症,トンネル感染に伴い発症することが多

い。感受性があれば第1世代セファロスポリンを選択し,MRSAであればバンコマイシンの腹腔内投与を選択する。

初期治療としてセファゾリンとバンコマイシンを投与した503件の黄色ブドウ球菌による腹膜炎を比較した報告に

おいて,両群間の治癒率に有意差はなかった90)。MRSAが検出された場合はHDへの移行の独立した危険因子であっ

4

██ ポイント⿎ セファロスポリン系抗菌薬,耐性菌の際にはバンコマイシンを2週間腹腔内投与する。

██ ポイント⿎ 有効な抗菌薬を3週間投与する。

P a r t 1

70

た89)。同様に245件の黄色ブドウ球菌の比較においても治癒率に有意差はなかった91)。この報告ではリファンピシ

ンの併用療法により再燃,再発性腹膜炎のリスクを減少させたと報告されているが,長期間投与により耐性菌や薬物

相互作用に注意が必要である90)。代替薬としてテイコプラニンやダプトマイシンの投与も有効であったと報告され

ている92,93)。�治療期間に関しては3週間が望ましい�90,91)。またカテーテル感染に伴う黄色ブドウ球菌による腹膜炎

は難治性であり,カテーテル抜去を要する場合が多い94)。

⿎⿎4 -3.腸球菌

解 説腸球菌による腹膜炎では強い腹痛を伴い重症化することが多い。腸球菌は腸管内常在菌であり,腹膜炎の原因がタ

ッチコンタミネーションやカテーテル関連感染症のみならず,腹腔由来であることを検討する必要がある。116件の

腸球菌による腹膜炎を検討した報告では複数菌が検出されるとカテーテル抜去,HDへの移行,死亡率が上昇し

た95)。また1週間以内にカテーテル抜去を行うことによりHDへの移行を減らすことができたと報告している。腸球

菌は通常セファロスポリン耐性であるが,小児の研究では初期治療としてのセファロスポリンは有効であったとの報

告もある96)。バンコマイシンへの感受性があればバンコマイシンの腹腔内投与が勧められる。重症例ではアミノグ

リコシド系抗菌薬の追加投与を検討する。バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant Enterococci:�VRE)に

対してはアンピシリン感受性があればアンピシリンの腹腔内投与を行う。アンピシリン耐性菌であればリネゾリド97),

キヌプリスチン/ダルホポリスチン98),ダプトマイシン99)が有効であると報告されている。�

⿎⿎4 -4.連鎖球菌

解 説連鎖球菌では口腔内由来が多く,抗菌薬への反応は良好であるといわれている。256件の連鎖球菌性腹膜炎を検討

したところ,第1世代セファロスポリンまたはバンコマイシンの腹腔内投与2週間にて他の菌種に比し再発,カテー

テル抜去,死亡率は低かった100)。口腔内常在菌であるStreptococcus viridansでは抗菌薬への反応は鈍く,高い再

発率であると報告されている101,102)。

██ ポイント⿎ バンコマイシンを3週間腹腔内投与する。重症例ではアミノグリコシド系抗菌薬の追加投与

を検討する。

██ ポイント⿎ 有効な抗菌薬を2週間継続投与する。

第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

71

Part1

⿎⿎4 -5.コリネバクテリウム

解 説コリネバクテリウムは皮膚常在菌であるが,この菌による腹膜炎はまれである。27件のコリネバクテリウム腹膜

炎の検討では13件で再発し,再発した8件はバンコマイシン3週間投与にて治癒したと報告している103)。82件のコ

リネバクテリウムによる腹膜炎の検討では,バンコマイシンの2週間治療により再燃(18%)や再発(15%),カテー

テル抜去(21%),HDへの移行(15%),死亡(2%)であった�104)。

⿎⿎4 -6.緑膿菌

解 説緑膿菌による腹膜炎は重篤であり,カテーテル感染に伴う場合にはカテーテル抜去が必要となることが多い105)。

104件の緑膿菌による腹膜炎の検討では45.2%で出口部感染を伴っており初期反応率は60.6%,完全治癒率は

22.1%であった。また第3世代セファロスポリンを使用した群はアミノグリコシドよりも有意に反応性がよかっ

た106)。191件の緑膿菌による腹膜炎の検討では他の菌種に比べてカテーテル抜去,血液透析への移行が高かっ

た107)。また経験的治療による結果では差はなかったが,その後の緑膿菌に対する2種類の抗菌薬の使用により血液

透析への移行を下げることができ,抗菌薬単剤治療よりもカテーテル抜去のほうが死亡率は低かった105)。�

治療薬として作用機序の違う2種類の抗菌薬を選択する必要がある。ゲンタマイシンの腹腔内投与またはシプロフ

ロキサシンによる経口投与とセフタジジムまたはセフェピムの腹腔内投与の併用を行う。セファロスポリンや緑膿菌

に対して有効なペニシリン系に対して耐性がある場合はカルバペネム系が有効である12)。�

██ ポイント⿎ 2種類の機序の違う抗菌薬で3週間治療を行う。カテーテル感染に伴う場合にはカテーテル

抜去が必要になることが多い。

██ ポイント⿎ 有効な抗菌薬で3週間治療を行う。

P a r t 1

72

⿎⿎4 -7.その他のグラム陰性菌

解 説非緑膿菌性グラム陰性菌の原因はタッチコンタミネーション,出口部感染,また便秘や大腸炎などが原因であると

考えられる。単独で検出された場合は感受性,安全性,簡便性に基づいて抗菌薬の選択を行う。オーストラリアの検

討では非緑膿菌性グラム陰性菌は全腹膜炎の23.3%を占めており最も多かったのが大腸菌であったが,クレブシエ

ラ,エンテロバクター,セラチア,アシネトバクター,プロテウス,シトロバクターが含まれ,4分の1で複数の細

菌が同定された108)。210件の腸内細菌による腹膜炎を検討した報告では111件が大腸菌であり,初期反応率は

84.8%,治癒率は58.1%であった。39%がin vitroにて感受性が認められる単剤の抗菌薬治療に反応せず,2剤目の

抗菌薬を追加した。�2剤の抗菌薬では単剤の抗菌薬で治療した場合よりわずかに再燃,再発リスクは低かった 109)。

バイオフィルムを形成している場合には,感受性があっても有効でない場合がある110)。�

近年extended-spectrum�β-lactamases(ESBLs)が増加している111)。ESBLsはすべてのセファロスポリン系抗菌

薬に耐性があるが,通常はカルバペネム系抗菌薬に感受性がある111,112)。またカルバペネム耐性腸内細菌も増加して

いる。通常βラクタム系のすべての抗菌薬およびフルオロキノロンに耐性を示すが,アミノグリコシド系への感受性

はさまざまで,ポリミキシン,コリスチンには感受性を示す112,�113)。�

まれではあるがステノトロホモナスはわずかな抗菌薬にしか感受性はない114)。ステノトロホモナスによる腹膜炎

は改善が認められても感受性のある2種類の抗菌薬で3~4週間治療すると報告されている。トリメトプリル/スル

ファメトキサゾール(ST合剤)の経口投与,チゲサイクリン,ポリミキシンB,コリスチンが治療薬として有効であ

る。�

⿎⿎4 -8.複数菌による腹膜炎

解 説複 数 菌 に よ る 腹 膜 炎 の 菌 種 群 は,Staphylococcus epidermidisと 他 の コ ア グ ラ ー ゼ 陰 性Staphylococci種,�

Klebsiella�種とEnterococci種,�Escherichia coliとKlebsiella種の組み合わせが報告されている。�複数菌感染は単一

菌感染に比べて慢性呼吸器疾患が多く,入院,カテーテル抜去,血液透析への移行,死亡のリスクが高かっ

██ ポイント1.⿎ 複数の腸内細菌が検出された場合は,外科的処置の必要性を速やかに評価する。

2.⿎ 複数のグラム陽性菌が検出された場合は,抗菌薬治療を3週間継続する。

██ ポイント⿎ 有効な抗菌薬で3週間治療を行う。

第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

73

Part1

た95,115~117)。わが国において140件の腹膜炎を検討したところ19例(13.5%)が複数菌感染であった15)。�

抗菌薬治療は,Enterococci種を含む複数菌による腹膜炎では,第一レジメとしてセファゾリン,バンコマイシン,�

ゲンタマイシン,セフタジジムが多く,第二レジメとしてバンコマイシン,ゲンタマイシンに加え,第3世代セフェ

ム系や抗真菌薬の追加が多かった95)。腹膜炎の腸管由来細菌についてのプロトコールの有用性を調べたところ,複

数菌は20~24.9%に認められ,①カテーテル抜去を行わず1週間の腹膜透析の中断,②メロペネムの静脈注射

(0.5g/日),③カテーテル内をメロペネムで貯留(0.125�gを25�mLの生理食塩水に希釈して貯留)という3つを行う

ことで,ゲンタマイシン(20�mg/L,1日1回)およびリファンピシン(50�mg/L,毎回)腹腔内投与という治療に比べ,

特に複数菌感染に有用であったという観察研究もある11,118)。ただし,わが国でのリファンピシン腹腔内投与は一般

的ではない。わが国での腹膜炎の抗菌薬第一レジメはセファゾリンおよびセフタジジムが多く,75%は2種の抗菌薬

治療を受けている119)。�

以上よりわが国では,各施設で設定された第一レジメで治療を開始し,細菌同定や感受性の結果をもとにバンコマ

イシン,アミノグリコシド,ニューキノロン,抗真菌薬の追加が望ましい。抗菌薬治療は3週間行う。�

複数の腸内細菌がPD排液から培養された場合には腹腔内に原因がある可能性を考慮する。低血圧や敗血症,乳酸

アシドーシス,または排液中アミラーゼ濃度の上昇を認めた場合には腹腔内に重大な異変が起こっている可能性が高

まる120,121)。CTを含む画像検査を直ちに行い,外科医と試験開腹を含めた外科処置治療の必要性について協議すべ

きである。抗菌薬は,嫌気性菌までのカバーが必要になる。一方,腹膜炎の原因が複数のグラム陽性菌である場合に

は良好な経過をとる115,122)。�

⿎⿎4 -9.培養陰性腹膜炎

解 説ISPDガイドライン2016では培養陰性腹膜炎は15%以下にすべきと勧告されている 12)。培養陰性腹膜炎は糖尿病

女性患者やPD開始3か月以内の患者に多く,培養陽性腹膜炎に比べてエピソード前に抗菌薬使用が多い報告があ

る123,124)。培養陰性腹膜炎は,抗菌薬治療のみで治癒が期待でき,入院,カテーテル抜去,血液透析への移行,死亡

が少ないが123),再発性の培養陰性腹膜炎はカテーテル抜去が多い123)。� 培養陰性率の報告は10~32%であ

る1,8,15,125~127)。カテーテル抜去は808名の培養陰性腹膜炎患者の内,103名であった37)。Biocompatible中性腹膜透

析液での培養陰性腹膜炎率は従来の透析液と同様であった128)。2013年1年間のわが国のPD関連腹膜炎を解析し,

培養陰性率は23.4%である119)。培養陰性腹膜炎120例の内,15例はPD中止となっている119)。濃縮培養法は他の方

法に比べ培養陰性率は低かった129)。PD腹膜炎で初回培養陰性であっても,Paracoccus yeei� やMycobacterium

abscessusの例も報告されており,非典型的微生物の可能性も考え,複数回培養を提出することが必要である130,131)。�

培養陰性腹膜炎はゲンタマイシンに加えバンコマイシンかセファゾリンで治療を行った報告が多い132,133)。培養陰

性腹膜炎は初期治療の抗菌薬を14日間使用する134,135)。わが国の第一レジメとしての抗菌薬はセファゾリンおよび

██ ポイント1.⿎ ISPDガイドライン2016では培養陰性腹膜炎は15%以下にすべきと勧告されている。

2.⿎ 抗菌薬治療を行って5日が経過しても,十分な効果が得られないのであればカテーテル抜去を積極的に考慮すべきである。

P a r t 1

74

セフタジジムが多く,75%は2種の抗菌薬治療を受けている119)。経験的な抗菌薬治療を行って5日が経過しても,

十分な効果が得られないのであればカテーテル抜去を積極的に考慮すべきである。�

⿎⿎4 -10.真菌性腹膜炎

解 説真菌性腹膜炎はカテーテル抜去,HDへの移行,死亡のリスクが高い重篤な合併症である37,136)。真菌性腹膜炎は

PD関連腹膜炎の中ではまれであり,2.6~3.1%と報告されている 37,117)。熱帯地方や夏と秋に真菌性腹膜炎が多い報

告がある40,137,138)。�

初期治療は一般的にはアムホテリシンBとフルシトシンの併用を行う。しかし,アムホテリシンBの腹腔内投与は

化学的刺激による腹膜炎と疼痛の原因になる。その一方で静脈内投与は腹膜への移行がよくない。もし,フルシトシ

ンを使用する場合には定期的な血中濃度のモニタリングが骨髄抑制を避けるために必須である。血清フルシトシン濃

度のピークは経口投与後1~2時間で測定され,25~50�μg/mLにコントロールされるべきである139)。非カンジダ

真菌性腹膜炎の症例10例中9例がカテーテル抜去し,フルコナゾールもしくはイトラコナゾールの治療を受け

た140)。抗真菌薬の予防投薬は有用である可能性が示唆されている141~143)。その他の抗真菌薬の選択として,フルコ

ナゾール,エキノカンジン系抗真菌薬,ポサコナゾールやボリコナゾールがある。フルコナゾールは広く使用されて

いるが,アゾール系抗真菌薬に抵抗性の症例が増えている144)。フルコナゾールはカンジダ種とクリプトコッカスの

みに有効である。エキノカンジン系抗真菌薬はアスペルギルス種やCandida albicans以外のカンジダ種による真菌

性腹膜炎の治療に有効である。または,他の抗真菌薬治療に反応しない患者に投与を考慮する 145~147)。�カスポファ

ンギンは単剤治療,もしくはアムホテリシンとの併用において有効である145,146)。ポサコナゾールとボリコナゾール

は糸状菌による腹膜炎の治療に有効である148~150)。ボリコナゾールがクリプトコッカス種に有効な例もある151)。

Candida albicans腹膜炎にミカファンギン,ボリコナゾール,アムホテリシンB,フルシトシンの4剤併用例も報告

されている152)。�

観察研究から抗真菌薬の選択に関係なく速やかなカテーテル抜去を行うことはおそらく転帰を改善し死亡率を低下

させることが示唆される147,149,150,153~155)。抗真菌薬はカテーテル抜去後最低2週間継続すべきである。最近の研究成

果では約1/3の患者でPDに戻すことができたと報告されている156)。�

 

██ ポイント1.⿎ 真菌性腹膜炎ではカテーテルを速やかに抜去する。

2.⿎ 抗真菌薬はカテーテル抜去後2週間継続する。

第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

75

Part1

⿎⿎4 -11.結核性腹膜炎

解 説培養陰性の難治性腹膜炎や再燃性腹膜炎を示すすべての患者について結核性腹膜炎を考慮すべきである。�細菌性

腹膜炎に類似して,ほとんどの結核性腹膜炎症例で初期所見としてPD排液に多核白血球がみられる。しかし,通

常,透析排液中のリンパ球増多が後に明らかになる。PD排液のチールニールセン染色はしばしば陰性になり,一般

的な培養方法では発育が遅く陽性率も十分にあるわけではない。陽性培養結果を得るまでの時間は液状培地によりか

なり短縮することができる。診断全般にいえることであるが,大量の排液(50~100�mL)を遠心分離して得ることの

できる沈殿物を固形培地と液状培地により培養することで陽性率を改善できた。別の方法として,抗酸菌DNA�PCR

検査を排液で行うことができるが疑陽性もめずらしくない157)。もし,その疑いが高い場合は腹腔鏡下の腹膜生検や

大網生検も迅速診断のために施行することが望ましい�158)。�

結核性腹膜炎患者は,イソニアジド,リファンピシン,エタンブトール,ピラジナマイドの4剤の治療が基本であ

り,ピラジナマイドが使用できない場合は3剤で治療する159,160)。オフロキサシンを追加するプロトコールも一般的

である。既報でPD排液中のリファンピシン濃度がしばしば低いことが示された161)。このため,ISPDガイドライン

では腹腔内リファンピシン投与が推奨されている国もあるが,わが国では一般的ではない。一般的にはピラジナマイ

ド,エタンブトールやオフロキサシンは2か月後に中止することができ,一方リファンピシンとイソニアジドは

12~18か月の間は投与を継続すべきである159,161~167)。ピリドキシン(50~100�mg/日)はイソニアジドによる神経

毒性を避ける目的で投与されるべきだろう。一方で,高用量(例えば200�mg/日)でピリドキシンを長期間投与する

と,これによっても神経毒性が出現するので避けるべきである。ストレプトマイシンは減量して使用した場合であっ

ても,長期間使用すると聴神経毒性の原因となる可能性があるので避けるべきである。エタンブトールは透析患者で

は高リスクで視神経炎を合併する。このため,適切な投与量の減量を行って用いなければならない。これまでの報告

から,48時間毎,または週3回15�mg/kgで2か月間は投与を行うことが望ましい�68)。�

カテーテルは抜去しないで治療するケースもあるが,半数以上がカテーテル抜去している37,161~164)。�

⿎⿎4 -12.非結核性マイコバクテリアによる腹膜炎

██ ポイント⿎ イソニアジド,リファンピシン,エタンブトール,ピラジナマイドの4剤での治療が基本である。

██ ポイント⿎ 非結核性マイコバクテリアによる腹膜炎はアミカシンやクラリスロマイシンを含んだ複数の

抗菌薬で治療する。

P a r t 1

76

解 説Mycobacterium腹膜炎は腹膜炎の0.3~1.3%に認められる37,117)。�治療としてはクラリスロマイシンおよびアミカ

シンが選択されるケースが多い169)。M. fortuitum,�M. chelonae,�M. abscessusが多い170,171)。アジアではM.

abscessusが多く,アミカシン,クラリスロマイシンに加えてメロペネムもしくはセフメタゾールの報告があ

る131,172,173)。M. iranicumに対してレボフロキサシン,クラリスロマイシン,イミペネム,ミノサイクリンの使用報

告がある174)。出口部感染症への局所ゲンタマイシン軟膏使用が広く行われていることは患者の出口部に非結核性マ

イコバクテリアによる感染を罹患しやすくしているかもしれない175)。非結核性マイコバクテリアに対する治療レジ

メは十分に確立されていないので,感受性試験の結果をもとに個々のプロトコールが必要になる。治療期間について

も定まったものはないが,6週から52週とばらつきがみられる173,175)。カテーテル抜去が通常必要であり,非抜去で

行われた治療報告は限られている170,172)。�

⿎⿎4 -13.カテーテル抜去と再挿入

解 説カテーテル抜去の適応を表六-3に要約する。難治性腹膜炎や真菌性腹膜炎に対して,新しいPDカテーテルの再挿

入をカテーテル抜去に続けて行うことは望ましくない。患者は一時的にHDで管理すべきである。観察研究から難治

性腹膜炎のためにカテーテル抜去後,有効な抗菌薬を少なくとも2週間は継続すべきといえる176,177)。重篤な腹膜炎

発症後でも約50%の患者がPDに戻すことが可能であるとみなされた176~178)。腹膜炎によるカテーテル抜去と新しい

カテーテル再挿入を行うまでの至適期間に関するデータはほとんどない。観察研究では最低2~3週間おくこと

を176,177,179,180),真菌性腹膜炎の症例では再挿入までの期間をさらに長くとることが望ましい147,153)。

██ ポイント1.⿎ 難治性,再燃性,真菌性腹膜炎の場合に,もし臨床的に禁忌でなければPDカテーテルを抜

去する。 基本は,カテーテルの温存ではなく“腹膜をいかに護る” かである。

2.⿎ 難治性,再燃性,真菌性腹膜炎によりPDカテーテル抜去が行われた後に新しいPDカテーテルの再挿入を考えるのであれば,カテーテルを抜去し,腹膜炎に伴う症状が完全に回復してから少なくとも2週間の間隔をあけて行うことが望ましい。

・難治性腹膜炎・再燃性腹膜炎・難治性ESI,および難治性トンネル感染・真菌性腹膜炎・以下の病態についてはカテーテル抜去も考慮 -反復性腹膜炎 -マイコバクテリアによる腹膜炎 -複数の腸内細菌による腹膜炎

表六-3 カテーテル抜去の適応

第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

77

Part1

腹膜炎の予防

⿎⿎5-1.カテーテル留置

解 説カテーテル留置に関して腹膜炎予防目的にて,抗菌薬全身投与を行う 181,182)。現在までに術前にセフロキシム183),

ゲンタマイシン184,185),バンコマイシン6),セファゾリン6,185)の静脈投与を行う群と無治療の群と比較した4件の無

作為化比較試験(randomized�controlled�trial:�RCT)がある。その4件のRCTの中で3件は,抗菌薬の術前投与は早

期の腹膜炎発症率を低減するというものであった6,184,185)。一方,セファゾリンとゲンタマイシンの使用は何の有用

性も認めなかったという報告もある185)。バンコマイシンとセファゾリンを1対1で比較した1件の研究がある6)。そ

こではバンコマイシンはセファゾリンよりも有効であることが示されている。周術期における抗菌薬の予防的静脈注

射の有用性については,上に述べた4件の試験についてシステマティックレビューとして示されている 143)。第1世

代のセファロスポリンはバンコマイシンよりもわずかに効果は劣るが,バンコマイシン耐性を憂慮することから現在

でもセファロスポリンが一般的に使用されている。各施設における抗菌薬抵抗性の細菌群の存在状態に照らし合わせ

て,PDプログラムごとに予防的抗菌薬を使用すべきである。カテーテル挿入前に黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌の有

無について所定の検査と除菌処置(例:ムピロシン鼻腔内投与)は出口部感染およびトンネル感染予防に有用であると

いうデータはあるが,腹膜炎予防に有用であるというデータはない143)。�

予防的抗菌薬投与のほかにはカテーテル留置に関するさまざまな手法が試みられている。腹腔鏡使用による留置と

従来行われている開腹による留置を比較した4件のRCTがある186~189)。その1件の試験は腹腔鏡を用いた留置での

早期の腹膜炎発症率が有意に少なかったとしているが186),他の3件の試験ではそのような結果ではないとしてい

る187~189)。システマティックレビューでは上に述べた留置法について腹膜炎の発症率に有意差は認められなかった

と結論している190)。正中と側腹切開からの挿入について比較した2件の報告がある 191,192)。しかし,いずれも腹膜炎

発症率に差はなかったとしている。カテーテルを4~6週間皮下に埋没しておく方法についていくつかの研究が行わ

れている193~195)。最初に行われた前向き試験では従来の方法に比較して腹膜炎発症率の低下がみられたと報告され

ている193)。次に行われた2件のRCTのうち1件は埋没法のほうが腹膜炎発症率は低かったとしている194)。しかし他

の1件は差がなかったとしている195)。胸骨前部と腹壁に埋没したスワンネックカテーテルについて1件の後ろ向き

試験があるが腹膜炎発症率に差は認められなかったとしている196)。まとめると,あらかじめ埋没させておく留置法

が腹膜炎発症率を低下させるという明確なデータはないといえる。�

5

██ ポイント⿎ カテーテル留置を行う直前に腹膜炎予防目的で抗菌薬の全身投与を行うことを勧める。

P a r t 1

78

⿎⿎5-2.カテーテルデザイン

解 説カテーテルデザインと形状が腹膜炎発症のリスクについて言及した適切と思えるデータはない。2件のシステマ

ティックレビューでも直線状とコイル状のPDカテーテルで腹膜炎発症率に差がないという結論であった 34,190)。単一

カフと2つのカフを有するカテーテルの比較では,2つのカフを有するカテーテルのほうが腹膜炎発症率を下げると

いう結果を示したいくつかの後ろ向き検討がある197~200)。しかしこの2つのカテーテルを比較した唯一のRCTでは

腹膜炎発症リスクに差は認められなかった201)。下向きに皮下トンネル出口部を作製することは理論的にはカテーテ

ル関連の腹膜炎発症予防効果があると考えられ,このことがしばしば強調されているがこれを証明するデータは少な

い。�

⿎⿎5-3.教育プログラム

解 説教育の方法はPD関連感染症発症に重大な影響を持つ。ISPDの教育プログラムを参照する202)。PD関連感染症を減

らすためのPD技術に関する最善の患者教育については多くの研究が必要である。しかしながら,「どのように」,

「いつ」,「どこで」,「だれが」PD教育を行うかについて主導する高レベルのエビデンスはない203)。すべてのPD教

育担当ナースは「教える」ための適切な教育を受け,最新の知識を習得し,教育技術についても研鑽を積むことが必

要である。個々の教育プログラムは患者にPDの理論と技術を教えた経験を基盤としてさらに充実されたものを作成

することを目指すべきである。患者教育の終了時に技術習得の評価を行うことは必須の事項である。�

PD教育が終了し,患者が実際に家でPDを開始した後にも,PDナースが患者宅を訪問しバッグ交換に問題はない

か,決められた治療計画を順守しているか,腹膜炎発症の危険に関連するかもしれない家庭環境や日常生活上のその

他の問題などについて検討することはしばしば有用である204,205)。

教育専門家の意見によれば初期教育に加え,再教育を行うことは「間違いを減らす」という観点から重要であ

る206)。複数の試験でバッグ交換の手技の順守は腹膜炎発症率と有意に相関すると報告している206,�207)。別の報告で

██ ポイント⿎ カテーテルのデザインが腹膜炎予防に関与するかという点については特別な勧告を述べるこ

とはない。

██ ポイント1.⿎ PD患者教育,治療スタッフの教育について最新のISPD勧告を順守することが望ましい。

2.⿎ PDの教育は一定の能力と経験を有するナースにより主導されることが望ましい。

第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

79

Part1

は,PD開始後6か月でほとんどの患者は手間を省き,標準的な交換手法を変更し,無菌操作を順守していなかった

ということを報告している208)。この点から再教育は腹膜炎発症の危険性を低減させる可能性があるが,実際には2

件の少数患者について検討したデータがあるにすぎない206,209)。�したがって現時点では再教育の適用,適切な実施時

期,その内容について明確な定義はない。PDナースによる家庭訪問はどの患者に再教育が必要か見極めるのによい

手段であるといえよう206)。その他再教育を行うべき状況は表六-4に示した202,210)。�

⿎⿎5-4.透析液

解 説6件のRCTについてのメタ解析では試験の質が低く,各試験間のばらつきが多いため,中性で低GDPであるPD

液の腹膜炎発症率に関する効果は正確に示されなかった211)。現時点では腹膜炎リスクという観点から透析液の選択

を行うべきではない。�

⿎⿎5-5.腸管と婦人科的原因に由来する感染

解 説PD関連腹膜炎は侵襲的処置の後にしばしば発症する(例:大腸内視鏡,子宮内視鏡,胆囊切除術)212~216)。ある1

施設の検討では77症例のCAPD患者に97回の大腸内視鏡を行ったところ,抗菌薬の予防投与を行わずに大腸内視鏡

を施行した79回において5例(6.3%)に腹膜炎が発症し,有意差はないものの抗菌薬を予防的に投与した18例で1例

も腹膜炎を発症しなかった213)。他の小規模の後ろ向き観察試験では,ほとんどの内視鏡操作,上部消化管内視鏡を

除いて,大腸内視鏡,S状結腸鏡,膀胱鏡,子宮内視鏡による子宮内器具の装着または除去を施行する前の予防的抗

██ ポイント⿎ 腹膜炎発症予防という観点から透析液選択について特別な勧告は行わない。

██ ポイント⿎ 大腸内視鏡と侵襲的婦人科関連手技に先立ち予防的抗菌薬投与が望ましい。

・入院が長期化した時・腹膜炎および/またはカテーテル感染があった時・手指の細かい動き・視力などの変化および精神的混乱があった時・PD関連機器の取り扱い会社が変更された,または接続方式の変更があった時・何らかの理由でPD中断が行われた後

表六-4 再教育の適応

P a r t 1

80

菌薬投与は腹膜炎発症率を低下させた報告がある217)。使用された抗菌薬はさまざまであるが,大腸内視鏡前にセフ

トリアキソン1�gを投与した患者で腹膜炎を発症した患者はなく,婦人科的処置前にクリンダマイシンと第1世代の

セファロスポリンを投与した患者で腹膜炎を発症した患者はいなかった217)。しかし,適切な抗菌療法についてはい

ずれの臨床試験でも決定的なことは明らかにされていない。�

便秘,腸炎など消化管に関する問題は腸内細菌による腹膜炎と関連していると報告されている218)。低カリウム血

症は腸管由来の腹膜炎のリスクを増大するといういくつかの研究報告がある219~221)。しかしながらPD患者にとって

は日常的な問題である低カリウム血症,便秘,胃腸炎の治療が腹膜炎発症率を減少させるという確かな証拠は今日ま

で得られていない。ラクチュロースをルーチンに使用することで腹膜炎発症率を低下させる可能性があるという観察

研究はある222)。

⿎⿎5-6.その他の修正可能な要因

解 説前述以外にPD腹膜炎に関して数多くの修正可能な要因が報告されている。女性における膣瘻,リーク223,224)と同

様に子宮鏡を用いた生検後の腹膜炎が報告されている225)。13例の婦人科的処置に関する後ろ向き試験において予防

的に抗菌薬を使用することで有意ではないが腹膜炎発症を減らす傾向にあったという報告がある217)。歯科的処置の

後に一過性の菌血症が起こることはよく知られているが,腹膜炎に至る可能性もある101,226)。広範な歯科的処置を行

う前に予防的に抗菌薬使用(例えばアモキシシリンの単回経口投与)を行うことは理に適っているであろう。�

コンタミネーションの可能性があるとき,予防的に抗菌薬を投与することは一般的に望ましい。例えば汚染された

可能性のある透析液を注入してしまった場合やカテーテルがオープンな状態に置かれた場合である210)。�

その他多くの修正可能な腹膜炎の危険因子についての報告227)があり,特に低アルブミン血症228,229),うつ状態230),

動くことができなくなった状態231)については繰り返し重大な危険因子として報告されているが,そのような状態に

対処することで腹膜炎発症率を低下させたかどうかについて論文化された報告は見当たらない。同様に住居内で飼育

している動物との接触ももう1つの危険因子である232,233)。PD操作を行う場所から動物は排除されなければならな

い233)。ビタミンDの経口投与が腹膜炎発症率を有意に低下させたことを示す2件の観察研究 234,235)があるが,この結

果を確認するためには前向きRCTが必要である。�

⿎⿎5-7.二次予防について真菌性腹膜炎の事例の多くは先行した抗菌薬治療に続いて起こる236,237)。多くの観察試験やRCTで,抗菌薬治療期

間における経口ナイスタチンまたはフルコナゾールのいずれかの予防的投与について検討している141,142,238~240)。2

件のRCT141,142)と1件のシステマティックレビュー 143)は有意な有用性を示している。観察研究データと1件のRCT

によるとフルコナゾールの予防投与が有効であることが示された142)。しかしながら,フルコナゾールの予防投与に

も考慮すべき潜在的な問題がある。�

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第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

87

Part1

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P a r t 1

88

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第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

89

Part1

⿎⿎小児患者の腹膜炎管理

解 説

小児PD患者におけるPD関連感染性腹膜炎小児でもPD関連感染性腹膜炎は,PD離脱(透析方法変更)の主要因である。国際レジストリーであるThe�

International�Pediatric�Peritonitis�Registry(IPPR)1)からは,全腹膜炎罹患の10.5%でPD離脱が必要であった(一時

的2.5%,永続的8.0%)と報告され,北米レジストリーであるNAPRTCS2)からは,PD離脱患者の離脱要因の30.5%

がPD関連感染症であったとの報告がある。

小児では,体格などの問題から末期腎不全におけるPDでの管理頻度が高く(初回腎代替療法選択において全世界

で50%3),北米で27%4),日本で61%5)),PD離脱はバスキュラーアクセスカテーテルを用いた血液透析による長期

入院管理を余儀なくされる場合があり,その予防・管理は非常に重要である。これまでに小児腹膜炎管理に関して

は,2005年に本邦の小児PD研究会(現�日本小児PD・HD研究会)6)から,2012年にISPD7)から指針が出されている。

小児PD患者における腹膜炎発症率は,乳幼児期の皮膚脆弱性,オムツ使用(テンコフカテーテル出口部がオムツ

内となるリスク),体格により十分な皮下トンネル長の確保が困難,発達段階の免疫システムなどの理由により成人

より高頻度であり7),低年齢であるほど腹膜炎罹患リスクが上昇することが知られている2,7~9)。2011~2014年の米

国調査 8)では,全年齢罹患率�0.46�回/患者・年に対し,2歳未満�0.62回/患者・年,2~5歳�0.50回/患者・年,

6~12歳�0.38回/患者・年,13~17歳�0.37回/患者・年であった.本邦小児からは1999~2003年の調査で,全年

齢罹患率�0.17�回/患者・年に対し,6歳未満�0.24回/患者・年,6歳以上0.11回/患者・年と,良好な管理が報告9)

されている。

小児PD関連感染性腹膜炎の診断・治療小児腹膜炎診断基準は成人と同様である。�

治療は,成人同様にempiric� therapyで開始し,起炎菌判明後に感受性のある抗菌薬に変更する。基礎疾患を有す

る患者の透析導入が増加しており,empiric� therapyの薬剤選択のために,施設ごとの起炎菌および抗菌薬感受性の

サーベイランスが重要と考えられる。小児PD患者における腹膜炎治療時の抗菌薬投与量を表六-5に示す。注意が必

要な点を以下に記載する。

*貯留時間:持続投与では初回loadingは3~6�時間,間欠投与では6時間以上を推奨する。

*アミノグリコシドとペニシリンの混合は,不活化される可能性があるので行わない。

*�残腎機能のある患者のグリコペプチド間欠投与時は,必ず血中濃度モニタリングを行い,バンコマイシン�<�15�

mg/L,テイコプラニン�<�8�mg/L�の時に再投与する。血中濃度モニタリングが行えない状況では,残腎機能を

有する患者へのグリコペプチド間欠投与は避ける。

*�使用透析液量:持続投与では1,100�mL/㎡での濃度設定がなされている。注液量が�1,100�mL/㎡未満の際は投

1

2

██ ポイント1.⿎ 小児でもPD関連感染性腹膜炎は,PD離脱(透析方法変更)の主要因である。

2.⿎ 小児PD患者における腹膜炎発症率は成人より高頻度で,低年齢であるほどリスクが上昇する。

P a r t 1

90

与量が不足する可能性があり,注液量に応じた濃度調整により,使用抗菌薬総量が�1,100�mL/㎡の際と同一に

なるようにする。

例)�セファゾリン持続投与を�800�mL/㎡の1回注液量で行う場合

 1,100�mL/㎡で�125�mg/L�の推奨なので,125×1.1÷0.8�≒�170�mg/L�の濃度で調製する。

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表六-5 小児PD関連腹膜炎治療で使用される抗菌薬および投与量

(文献7より引用,改変)

連続投与 間欠投与抗菌薬種別 初回(負荷)量 維持投与量アミノグリコシド(IP) 残腎機能なし 残腎機能あり

ゲンタマイシン 8 mg/L 4 mg/L 0.6 mg/kg 0.75 mg/kgネチルマイシン 8 mg/L 4 mg/L 0.6 mg/kg 0.75 mg/kgトブラマイシン 8 mg/L 4 mg/L 0.6 mg/kg 0.75 mg/kgアミカシン 25 mg/L 25 mg/L 0.6 mg/kg 0.75 mg/kg

セファロスポリン(IP)セファゾリン 500 mg/L 125 mg/L 20 mg/kgセフェピム 500 mg/L 125 mg/L 15 mg/kgセフォタキシム 500 mg/L 250 mg/L 30 mg/kgセフタジジム 500 mg/L 125 mg/L 20 mg/kg

グリコペプチド(IP)

バンコマイシン 1,000 mg/L 25 mg/L初回30 mg/kg

以後15 mg/kgを3-5日毎テイコプラニン 400 mg/L 20 mg/L 15 mg/kgを5-7日毎

ペニシリン(IP)アンピシリン データなし 125 mg/L データなし

キノロン(IP)シプロフロキサシン 50 mg/L 25 mg/L データなし

その他アズトレオナム(IP) 1,000 mg/L 250 mg/L データなしクリンダマイシン(IP) 300 mg/L 150 mg/L データなしイミペネム/シラスタチン(IP) 250 mg/L 50 mg/L データなし

リネゾリド(PO)<5歳:30 mg/kg/日 分35-11歳:20 mg/kg/日 分2

12歳≦:600 mg/回 1日2回メトロニダゾール(PO) 30 mg/kg/日 分3(最大1,200 mg/日)リファンピシン(PO) 10-20 mg/kg/日 分2(最大600 mg/日)

抗真菌薬フルコナゾール(IP, IV, PO) 6-12 mg/kg/回 24-48時間毎(最大400 mg/日)

カスポファンギン(IV)初回:70 mg/m2/日(最大70 mg/日)以後:50 mg/m2/日(最大50 mg/日)

IP:腹腔内投与,IV:経静脈投与,PO:経口投与

第六章 腹膜炎管理

第六章 腹膜炎管理

91

Part1

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第七章 カテーテル・出口部管理

93

Part1

腹膜透析カテーテル挿入術

解 説すべての外科手技に共通する事項として,外科手技のみならず周術期管理は非常に重要となる。特に腹膜透析

(PD)カテーテル挿入に際しては,無菌である腹腔内に異物であるカテーテルを挿入するので清潔操作はきわめて重

要である。安定したPDの継続のためにも理にかなったカテーテル挿入術を行うことが重要となる。

⿎⿎1-1.周術期管理1-1-1.術前準備

術前に確認すべき項目を表七-1に記載する。一部はアメリカCDCガイドラインを参考1)とした。術野にかかる感

染創がある場合,当然のことながら事前に可及的に治癒を目指す。もしくは術創の位置を変更する(挿入位置,出口

部の変更など)ことも検討する。MRSA保菌者の場合,その後の出口部感染症の発症を考えて術前に除菌することも

各施設の基準に沿って検討すべき項目となる。また周術期の安定のためには糖尿病患者の血糖管理の厳密化,喫煙者

1

カテーテル・出口部管理第七章

██ ポイント1.⿎ 腹膜アクセス手術の善し悪しがその後のPD管理に直結する重要な因子となる。

2.⿎ 術前準備,手術,術後ケアが揃って良い手技となる。

3.⿎ カテーテル位置異常は挿入術時の工夫で減らすことができる。

4.⿎ 留置法の優劣を示すエビデンスとなるRCTはない。

術創近傍の感染あれば治療常在菌の確認(鼻腔,臍の細菌培養検査)ならびに必要に応じて除菌糖尿病患者の場合:血糖の管理喫煙者の場合:可及的に禁煙の指示腹部手術既往の確認出口部作製位置の決定体毛の処理術創部の術前洗浄腹腔内容量の保持のための処置(浣腸,膀胱空虚化)

表七-1 PDカテーテル挿入術前の確認事項

(アメリカCDCガイドラインより一部参照)

P a r t 1

94

の術前の禁煙等も厳しく指導する。特に喫煙は種々の周術期合併症を増加させ,術後の回復が遅延することが日本麻

酔科学会2)からも指摘されており,PDカテーテル挿入術に限らず術前においては禁煙するよう指導する。

既往の腹部手術は,基本的にはPDの除外因子とはならない。ただし既往が腹腔鏡手術であれ,開腹手術であれ,

腹膜の切開部には腹腔内容の癒着の可能性があることに留意する必要がある。そして手術によって腹腔内の癒着が想

定される場合には,挿入位置や挿入方法の検討が必要となる。通常のリスクのない症例に対して腹腔鏡下挿入術の必

要性は高くないが,癒着の可能性などがある場合には,ダグラス窩へのカテーテル挿入や癒着の剥離などを行うこと

が可能なので有用かもしれない。また出口部はわが国では65 cmや80 cmといった長いカテーテルが使用できるた

め自由な出口部形成術が可能である。このためどこを出口に設定するかの検討も術前にしておくことが望ましい。特

に腹部出口の場合には,ベルトラインなどの衣類の圧迫部位には外部カフや出口部は形成しないほうが望ましい。

手術当日の注意点としては,術野の体毛処理と汚れに注意が必要である。体毛に関しては手術に支障がなければ処

理の必要はない。過去に施行されていたカミソリによる剃毛は術創感染のリスクが上昇するため施行してはならな

い1)。必要に応じてsurgical clipperを使用し,皮膚に微細損傷すら起こさせないことが重要である。また皮膚に残

存する古い角質化した皮膚やタンパク汚れは綿球による消毒では除去できないために,消毒前に柔らかいブラシなど

でポピドンヨードソープなどを用いて可及的に除去する。また本手術においては異物であるカテーテルを体内に,し

かも腹腔内と体外を貫くように配置するものであり,感染を起こさないように行うことは重要である。このため

ISPDガイドラインでも推奨3)している予防抗菌薬は,術中に十分な血中濃度を維持するように手術直前投与を行う。

PDカテーテルはダグラス窩に先端を挿入するため,骨盤内のスペースが広く空いていることが重要であり,大便

による直腸の充満や膀胱内貯留の尿は挿入の妨げになるので必ず処理が必要である。特に高齢者の場合,排尿困難の

訴えがなくても残尿が多く存在することもあり,残尿の確認ならびに必要に応じての術直前の導尿は必要と考える。

1-1-2.カテーテル挿入術

術前の確認事項を徹底したのちに挿入術に至る。麻酔法に関しては各施設の考え方,挿入術の種類によって最適な

方法をとる。ただし患者に侵襲を感じさせるような麻酔方法は避けるように注意する。留置術には下記に示すごとく

多くの方法が報告されているが,現時点では留置法の優位を示すエビデンスとなるRCTはない3,4)。今回本ガイドラ

イン改訂委員会では新規にシステマティックレビューを行い,この件に関して議論されている(Part 2参照)。術式の

相違より,最終的なカテーテルの挿入方法(挿入角度やカフの固定など)が少なくとも術後の位置異常などには大きく

左右するものと考えるため,カテーテル挿入のデザインは重要と考えられる。しかし腹部手術の既往のある患者な

ど,注意を要する患者では,腹腔鏡を用いるか,開腹により挿入部位を直視できる方法を用いる5)ことを検討する。

1-1-2-1.開腹手術

開腹手術は,本ガイドラインが作成された時点において,最も標準的な腹膜透析カテーテル挿入術式である。麻酔

は局所麻酔,腰椎麻酔,硬膜外麻酔,全身麻酔,神経ブロック(transversus abdominis plane block: TAPB)など各

施設の判断となるが,局所麻酔では急激な腹圧上昇などにより腹腔内容の脱出などが危惧されるので,術前の食止め

や手術前の排便促進など十分な配慮を行う必要がある。

#皮膚切開から腹腔内に至るまで

図七-1にカテーテル挿入部位を示す。腹腔内に外科的に入るためには,通常の外科手術での開腹術では腹部正中

切開により白線直上を切開して入ることが多い。これは筋肉や下腹壁動静脈に触れずに手術ができるからであるが,

PDカテーテル挿入に際しては経腹直筋切開での挿入術が望ましい。根拠は2つある。一つ目は後に記述するカテー

テルを腹壁に寝かせて挿入するためにカテーテルを腹直筋前鞘の下に挿入することが重要であるが,これは経腹直筋

切開でしかできないこと,二つ目に皮下トンネル感染症が生じた際に血流が豊富な腹直筋内部を貫いている場合,感

染防御の因子(白血球やグロブリン,抗生剤など)が供給されやすく,感染に強いことが期待できると考えるからであ

る。しかし経腹直筋法の場合,下腹壁動静脈に遭遇することがあり,この点は十分な注意が必要である。

第七章 カテーテル・出口部管理

第七章 カテーテル・出口部管理

95

Part1

皮膚の切開に関しては術者の技量によってサイズを決めればよいのであって,小さいから良いとか大きいから悪い

ということはない。図七-2に示すごとく,皮下脂肪を展開することにより腹直筋前鞘を広く観察することができる。

このことは後述するカテーテルの位置異常の防止に大きく関与する。次に腹直筋前鞘を頭側に可及的に長く切開す

る。腹直筋は縦方向の線維のために筋鈎で左右に鈍的に剥離することで容易に腹直筋後鞘に達する。徐々に創が深く

なり視野が悪くなるので,ここで後鞘に1対の牽引糸を尾側にかける。この際,腹腔内に針が出ることは腹腔内臓器

の損傷をきたす可能性があるために十分注意して浅く運針することが重要である。これを挙上することにより視野が

浅く確保でき,その後の操作が容易になる。挙上させ後鞘がテント状になることを確認し腹腔内容が巻き込まれてい

ないことを十分に確認する。確認ができたところで,後鞘をメスでゆっくり線維を切るイメージで切開すると,裏打

ちする腹膜も一緒に切れ,腹腔内に到達する。ここで鋏を使用すると,もし下層に腹腔内臓器が癒着している場合に

はその損傷につながるので使用しないほうがよい。肥満の患者においては腹膜前脂肪が厚く存在し,あたかも腸間膜

や大網といった組織との判別ができずに難渋することもある。この際には,先細の鑷子などで少しずつ脂肪を除去す

ることで腹膜は下層に薄い膜として認知される。この際に血管に遭遇した場合には,癒着した大網や腸間膜の可能性

が高いために損傷をきたさぬようにし他の部位からの挿入に切り替えたほうがよい。

腹膜を切開し腹腔内に至った後,腹腔内容に損傷をきたさぬように四方向に牽引糸をかける(これは後に内部カフ

傍腹直筋切開

白線

腹直筋

経腹直筋切開

正中切開

図七-1 カテーテル挿入部位

皮膚

尾側 頭側

皮下脂肪

腹直筋前鞘

腹直筋

腹膜腹膜前脂肪腹直筋後鞘

図七-2 皮膚切開と皮下脂肪展開のイメージ皮膚切開層が小さくても,皮下脂肪を広く展開すれば,腹直筋~腹膜の十分な観察が可能となる。

P a r t 1

96

の固定に用いる)。この時,腹膜のみをかけると術後のリークの原因やヘルニアになる可能性があるために腹直筋後

鞘と一緒に運針する。四方向に掛けたのち,これを挙上すると腹腔内容から距離が取れ安全となるので,ここで巾着

縫合(タバコ縫合)をかける。この際,6時方向からかけるとその後の操作が行いやすい。巾着縫合は時に縫合時に切

れてしまうこともあるので,適宜2周かけることもある。

#カテーテル挿入

現在わが国では80 cmなどの長いカテーテルが上市されており,出口部の位置などに合わせて選択が可能である。

各施設で使い勝手のよいカテーテルを選択し使用するのがよい。この選択の際に,後々のカテーテル位置異常の防止

のために,内部カフ部を肉厚にして自己復帰を高めたカテーテルの使用も検討すべき項目と考える。不適切な長さの

カテーテルは腹痛や機能不全を生ずることがあるため6,7),長さを評価する必要がある。腹腔内にカテーテルを挿入

するにあたり,スタイレットを用いた標準的な挿入法を記述する。スタイレットを用いない方法に関しては後述す

る。

カテーテル内に滅菌グリセリンや生理的食塩液を注入しスタイレットとカテーテルの滑りをよくした後,スタイレ

ットの先端を若干曲げる。これを腹腔内に挿入し,腹壁前壁を滑らすように挿入する。腹腔内においては抵抗があっ

た際に力を入れての操作は腹腔内容の損傷をきたす可能性があり,決して行ってはならない。よい間隙に挿入してい

る場合にはほとんど抵抗はない。挿入すると恥骨後面において膀胱に当たり抵抗が生じる。ここで膀胱壁の丸みをイ

メージして若干カテーテルを戻すのと同時に,スタイレットをゆっくり120°ほど回転させながら起こす。本操作で

膀胱外壁を滑るように回転しながらダグラス窩に先端は向かうことになる。前述のとおり,この間に抵抗があれば腸

などの腹腔内容に邪魔されているものと考え再度施行する。腹腔内脂肪の多い患者などでは間隙が少なく挿入しにく

い人もいるが,その際にはベッドを若干ヘッドダウンし筋鈎などで腹壁を持ち上げるようにすることでダグラス窩へ

の道が開くことも多い。この際にX線透視での確認は特に必須ではない。挿入できたら,スタイレットをカテーテル

が跳ねないように配慮しながら抜去する。ここで生食を60 mLほど注入し注液に抵抗のないこと,体壁側のカテー

テルを体より低い位置にした際にサイフォンの原理で連続した水流として排出できるかを確認する。ここで連続した

水流でない排液の場合,良い位置に挿入されていない可能性が高いため,何度でも再挿入を行い確認する。この操作

中も,助手はカテーテルが位置異常を起こさないように保持し続けることが重要である。

注排液が良好であることが確認できた後,カフの固定に入る。ここでの注意点として,内部カフは必ず腹腔外に配

置することに留意する。これには3つの理由があげられる。一つ目は内部カフが部分的に腹腔内にある場合,カフが

線維性に被覆されるまでの間,毛細管現象で透析液が腹腔外に漏出し皮下トンネルや術創からリークする可能性があ

る。このことは皮下トンネル感染症発症のリスクも踏まえよくない。二つ目は,同じような理由で腹腔内容がカフに

癒着する可能性があること,三つ目は術直後に腹膜炎を発症した際にダクロン繊維に菌が固着し再燃性腹膜炎を繰り

返し,カテーテル抜去を余儀なくされる可能性が高いことになるからである。このことを遵守するためにはカフの下

端に運針することが重要となる。この操作で気をつけなければならないことは,12時方向の運針をする際に,不用

意にカテーテルを立てるとその時点で位置異常を引き起こす可能性があるので,注意深く助手と協力しカテーテルを

立てないように運針することが重要である。次に巾着縫合を完成させる。この際に,前述のとおり,カフの下方で縫

合するように気をつけることが重要となる。

#皮下トンネル作製から閉創まで

次に皮下トンネルの作製に至る。外部カフは正しい位置で筋膜の上に固着が必要であり,このためには筋膜直上ま

での剥離が必要となる。内部カフ挿入の創から頭側に剥離を追加してもよいし,新たに皮膚切開を置いても構わな

い。創傷治癒の過程で自然と固着するため,筋膜への縫合は必須ではないが必ず筋膜直上に配置することが重要とな

る。ここで脂肪内にカフを配置した場合,固定されないために時とともに外部カフの脱出のリスクは高まる。またこ

の時にカフの位置が尾側すぎる場合,カテーテルが屈曲することがあり十分注意する。臥位では何とか開通性を担保

できても座位ではカテーテルが屈曲し,注排液ができなくなる可能性がある。

第七章 カテーテル・出口部管理

第七章 カテーテル・出口部管理

97

Part1

ここでトンネラーを用いて出口部を形成する。外部カフから2~5 cm離して形成8~10)する。

次に挿入部位の筋膜の修復に入る。ここで注意すべき点は,腹壁に沿ってカテーテルがなだらかにダグラス窩に向

かうことが重要であり,カテーテルを可及的に腹直筋前鞘の深層を通すことで,これは容易に達成できる 11)(図七-3)。図七-3aのように修復した場合,カフが縦方向に腹腔内に入ることから位置異常をきたしやすくなる。また図七-3bのように挿入した場合位置異常予防のみならず,副次的効果として前述のとおり,筋肉内を通過することから

皮下トンネル感染症が発症した際に白血球や免疫因子の動員により免疫性が強くなることも期待できる。

その後,必要に応じて皮下を吸収糸で寄せたのち,皮膚を縫合して終了とする。

1-1-2-2.�腹腔鏡下手術(※本術式は現時点で保険収載されておらず,施行にあたっては各施設での審査・判断が

必要となる)

腹腔内癒着のない症例まで全例に腹腔鏡を用いる必要があるかに関しては議論の分かれるところではあるが,癒着

の可能性がある症例においては検討すべき手術法12~15)となる。本術式のメリットとしては,必要に応じて癒着を剥

離し挿入することで確実にダグラス窩に先端を挿入することが可能なこと,術創が小さいので低侵襲であること,な

どがあげられている16)。一方デメリットとしては,全身麻酔や一定の設備が必要となること,気腹特有の合併症(皮

下気腫,肩部放散痛など),腹腔内の傷(トロッカー挿入部)に新たな癒着が生じる可能性,などが考えられる。

カテーテル挿入部にあたる部位以外に1~3本のトロッカーを挿入し気腹で確保した間隙を介してカテーテル先端

をダグラス窩に挿入する。その際にカテーテル位置異常を減じるために腹膜下トンネルを形成する方法も報告されて

いる17,18)(図七-4a)。

なお開腹術と腹腔鏡下手術とを比較した際のさまざまな視点からの優劣については,本ガイドラインのクリニカル

クエスチョンで検討し,CQ4に記載されている。

1-1-2-3.ノンスタイレット法

腹腔内にカテーテルを挿入する際にスタイレットを用いない方法が報告19)されている。この方法は金属性のスタイ

レットを用いないために,腹腔内臓器の損傷のリスクがなく安全な方法として紹介されている。一方内臓脂肪の多い

症例や皮下脂肪の多い症例などでは挿入が困難な場合もあり,スタイレットを用いた方法も習得しておく必要はあ

る。

a)

b)

図七-3 内部カフの角度と腹直筋内におけるカテーテルの走行a)は悪い例,b)は良い例内部カフを寝かせて,さらに腹直筋前鞘縫合を極力中枢まで行うことで,カフは自然に腹壁に沿う。

a)

b)

図七-4 カテーテル位置異常を減じるための工夫a)腹腔鏡下手術における腹膜下トンネル法,b)PWAT

P a r t 1

98

通常の挿入手技と同様に腹膜に小孔を開ける。ここで6時方向の腹壁を筋鈎やペアンなどで挙上させる。この挙上

が非常に重要であり,ダグラス窩方向に間隙を作ることができる。次に12時方向からカテーテルを体表に沿わすよ

うに腹腔内に挿入を行う。カテーテルは腹腔内で腹壁に沿うように骨盤底に向かい,膀胱壁に沿ってダグラス窩に挿

入することができる。本方法で使用するカテーテルはある程度の硬性を出すために内部カフ部分の肉厚補強したカ

テーテルが挿入しやすい。良い位置に入ったか否かは,通常法と同様にシリンジでの生食注入の抵抗のなさ,そして

連続した排液の水流によって容易に確認が可能である。

1-1-2-4.カテーテルの腹壁前壁固定法

わが国において報告されperitoneal wall anchor technique: PWATと称される20,21)。

カテーテルの位置異常を防止するための一手段であり(図七-4b),先ほど提示した腹膜下トンネル法と非常にコン

セプトが似ていることがわかる(図七-4a)。カテーテルを腹壁に強制的に添わせることにより先端をダグラス窩方向

に向ける方法となる。この方法は腹腔鏡や腎盂鏡を用いる方法(原法)20)とPWATアプリケーターを用いた方法21),

胃壁固定具を用いた方法22,23),切開創を大きくとり同一視野で固定を行う方法24)などのさまざまな工夫が報告され

ている。施行症例が多くなく定まった見解はないが,通常挿入方法と比較してカテーテル生存率が良好であったとす

る報告25)もあり,今後の検討が必要と考える。

この手技を行ううえで重要なことは「カテーテルが前腹壁に “係留されている”」ことであって,しっかりと固着

していることではない。むしろしっかりと縫合してしまった場合には下記の二点で問題が生じる可能性がある。一つ

目は咳などで下腹壁が収縮した際に固定したカテーテルの切断の危険性,二つ目は内部カフ挿入部とPWAT固定部

の間のカテーテルにおいて,腹壁とに間に腸管が迷入した場合に腸閉塞を起こす可能性が危惧される点である。もし

このような場合緩く固定してあれば,腸管が迷入してもカテーテルをPWAT固定部から外して合併症に至ることは

なく,50例の検討で大きな合併症なく経過したとの報告26)がある。

1-1-2-5�.Embedded�catheter�implantation(わが国ではStepwise�Initiation�of�peritoneal�dialysis�using�

Moncrief�and�Popovich’s�Technique:�SMAP)

腹膜カテーテル感染症の予防を目的に考案された “MoncriefとPopovichのカテーテル挿入法”25)は窪田によりわ

が国に紹介導入され,その後多くの利点を有することが報告された26)。血液透析希望患者に対して “予め内シャン

トを導入の前に作製し,必要時に機を逸することなく導入する” ことと同じ発想である。

#SMAP挿入術

通常の手術同様にカテーテルを挿入し外部カフを筋膜上に配置する。原法ではトンネラーを用いてカテーテルを皮

膚に導出せず皮下に埋没させる27)。これによってカテーテル埋没期間中はカテーテルが皮下で動かないために,カ

フならびにカテーテルと皮下組織が線維状に固着が早く完成することとなる。またその創傷治癒の間,外気に接触し

ないために感染の防御にも優れる。一方,この方法では腹水のある症例では皮下に腹水が漏出する可能性が考えら

れ,窪田は下記のような工夫を凝らした。カテーテルの将来の出口部になる部分にタイバンドを2本絡ませて装着

し,ヘパリン原液をカテーテル内に注入しながらタイバンドを締めあげる。この操作でカテーテル内にヘパリンが充

填され腹水の皮下流出は防止できる。その後トンネラーを用いて皮下にカテーテルを埋没させる28)(※タイバンド

は,材質は手術に使用するナイロン糸と同じ6-6ナイロンであるが,医療用として認可されておらず,その使用は

各施設の倫理委員会などの判断に委ねられる。本項では手術術式の紹介であり,推奨するものではない)。

この状態で保存期の管理を受けることになる。その後の管理によって埋没期間が長期に及ぶこともある。

#出口部形成術

導入が必要な時期に至った後,カテーテルを掘り起こす手術が必要となる。埋没期間が長期に及んだとの報告は散

見されるが,そのこと自体が大きな問題になることはないと考えられる。

カテーテル走行を触診や超音波検査などによって把握した後,出口部予定部に局所麻酔を施す。カテーテル直上に

小切開を置き,カテーテルを損傷しないように注意しながら皮下組織の剥離切開を行う。続いて,やはり損傷をおこ

第七章 カテーテル・出口部管理

第七章 カテーテル・出口部管理

99

Part1

さないように注意しながら愛護的にカテーテルを引き出す。生食を注排液することでカテーテル機能を確認する。こ

の際,閉塞期間などによってカテーテル内に凝固塊などが生じることがあるが,多くの場合生食の注排液で開通性が

改善することが多い。窪田の初期の報告では,17例中6例に凝固塊を認めたがシリンジによって容易に除去できた

と報告している28)。また,埋没期間内に大網巻絡が1例において認められたとしている。一方Moncriefは腹腔内に

透析液がない状況では大網巻絡は生じないと述べている29)。

#SMAP法の利点と欠点

窪田がまとめた利点と欠点を表七-2に示す28)。

1-1-2-6.�経皮的挿入法(※本術式は現時点で保険収載されておらず,施行にあたっては各施設での審査・判断が

必要となる)

新しい腹膜透析カテーテル挿入法も海外を中心に施行されている。皮膚に小切開を置き,ここからSeldinger法に

よるカテーテル挿入法となる30)。本方法は外科医による手術枠の確保が困難な状況の回避目的に海外で広まった30)。

鎮静剤投与下における局所麻酔での施行が多く報告されている30~32)。腹部手術既往のない症例に対して,下腹部

の経正中ないしは2~3 cm外側に数cmの皮膚切開を置く。腹直筋まで鈍的に剥離した後に骨盤に向けて角度をつけ

て穿刺針を穿刺し腹腔内に至る。この際に生食を注入することで確認する方法31),X線透視下に造影剤を注入し確認

する方法32)が報告されている。その後にガイドワイヤーを腹腔内に挿入し,これをダイレーターで拡張した後に腹

膜透析カテーテルを挿入する。この際に内部カフが腹腔内に突出しないように注意する。

開腹での挿入方法との比較が検討されており,primary failureと出口部よりの透析液リークが経皮的挿入群で多

いものの,出口部感染症・腹膜炎の頻度が開腹群より少なかったと報告されている33)。またメタ解析の結果では,

カテーテル1年開存率,出口部からの透析液リーク,カテーテル機能不全に関して開腹群と経皮的挿入群に有意差が

なかったとしている。一方,腹膜炎の発症頻度はincidence rate ration(IRR)= 0.77; 95%CI 0.62-0.96, p=0.02で

経皮的挿入群で少なかったと報告されている34)。しかし各々において発表者間での相違が大きく,各施設における

手技の相違が大きく反映していることが原因かもしれない。少なくとも両者の優劣を判断するRCTはない。

⿎⿎まとめ先に述べたように,PDカテーテル挿入術は機能を “作る” 手術であり,機能を “奪う” 切除術などとは性格が異

利点1.腹膜透析の計画的な導入が可能となる2.カテーテルを埋没するのでカテーテル管理の必要がない3.カテーテルの種類を選ばない4.カテーテルの留置・埋没は容易・安全である5.長期間のカテーテル埋没も可能である6.集中的な十分な患者教育が計画可能である7.適正な時期に腹膜透析が開始できる8.腹膜透析が迅速に開始できる9.十分な量の透析量が短時間に得られる

10.透析液のリークの危険性がない11.カテーテル感染症が少ない12.入院期間が短い欠点1.カテーテル埋没後の腹腔内情報が得られない2.2回の手術が必要3.埋没後および出口形成術後の創管理が在宅で必要4.留置術後の際に身体障害者1級が通りにくい可能性がある

表七-2 SMAP 法の利点と欠点

P a r t 1

100

なることより,基本ならびにそのコンセプトをしっかりと考えて行う必要がある。しっかりとしたトレーニングを踏

まずに行う手術ではないことを理解することが重要である。カテーテルの安定は導入後のPDの安定に深く関与する

ために,患者のためにも,安定した医療者側の管理のためにもアクセスの重要性を認識する必要がある。なお現時点

では各種の挿入法の違いによる有意差はRCTで認められていない3,4,34)。

通常の出口部および皮下トンネル管理

解 説⿎⿎2-1.カテーテル関連感染症の臨床的意義と定義(診断)

出口部管理を行う目的はカテーテル関連感染症の回避である。カテーテル感染症は進展すればカテーテル抜去,さ

らに致死的な難治性腹膜炎につながるため,可及的な予防と早期対応が重要である。

カテーテル関連感染症は,

「腹膜透析カテーテルの組織通過部分の外周囲における病原体感染」

と定義される。

臨床的な診断基準について,ISPDより発表されたガイドライン35)では以下のように記載されている。

・出口部感染:皮膚発赤の有無にかかわらず出口からの膿性浸出液が認められる状況

・ 皮下トンネル感染:皮下トンネル部に沿って臨床的な炎症所見あるいは超音波検査における液貯留所見が認められ

る状況

カテーテル関連感染症が維持期の腹膜透析患者に発症する場合,その病原体感染経路は原則として(Grade A)出口

部→(Grade B)皮下トンネル周囲→(Grade C)外部カフ→(Grade D)内部カフと考えられ,感染が内部カフに至った

場合には腹膜炎に進展する(図七-5)。なお,皮下トンネル付近の掻破創からカテーテル周囲への感染波及など,出

口部感染を経ない感染進展も起こり得る。

上記のGradingを行ううえで,超音波検査の所見はきわめて重要である。また次項2-2で述べるように,カテーテ

ル関連感染症の起因菌はきわめて多岐にわたるため,浸出液は培養検体として採取し,検体量が許せば塗抹のうえグ

ラム染色を行う。 

⿎⿎2-2.カテーテル関連感染に関する疫学代表的な皮膚常在菌である表皮ブドウ球菌に限らず,グラム陽性球菌からグラム陰性桿菌,コリネバクテリウム,

ジフテロイド,迅速発育抗酸菌,真菌に至るまで,さまざまな病原体がカテーテル関連感染の原因となり得る。わが

国において小児PD例を対象にした施設横断的なアンケート調査36)によると,出口部・皮下トンネル感染の起因菌の

うち59%が黄色ブドウ球菌(20%がMRSA)であり,MRSA腹膜炎の55%に皮下トンネル感染を伴っていたと報告さ

れている。また緑膿菌によるカテーテル関連感染も腹膜炎への進展リスクが高いことが知られている37)。したがっ

2

██ ポイント1.⿎ カテーテル感染症は進展すればカテーテル抜去,さらに致死的な難治性腹膜炎につながるた

め,可及的な予防と早期対応が重要である。

2.⿎ 定時的な出口部および皮下トンネル部分のモニタリングは,カテーテル関連感染症の早期発見の観点で有用である。

第七章 カテーテル・出口部管理

第七章 カテーテル・出口部管理

101

Part1

て,黄色ブドウ球菌と緑膿菌によるカテーテル感染症には特段の注意が払われるべきである。

一方,起因菌として近年その報告例が増加しているのが,迅速発育抗酸菌である。これらによる感染例の報告が増

加している背景は不明であるが,迅速発育抗酸菌は土壌内や一般水系における常在菌であること,また過去の報告か

ら免疫能が低下した状態での感染例が多いと推察される38)ことより,その感染報告例の増加には透析導入患者の免疫

力低下と関連した何らかの背景(高齢化など)が一部寄与しているのかもしれない。

⿎⿎2-3.外来時における観察の必要性定時外来の際に出口部および皮下トンネル部分をモニタリングすることは,カテーテル関連感染症の早期発見の観

点で有用であり,本ガイドラインでは外来時における出口部および皮下トンネル部分に関する状況の記録を推奨す

る。

出口部の状況に関しては,客観性を確保する観点より,何らかのスコアリングシステムに基づいた記録が望ましい

と考えられる。しかしながら現時点において,特定のスコアリングシステムが客観的に有効といった見解は(少なく

とも成人例においては)示されていない。

⿎⿎2-4.出口部感染の予防1996年に施行された日本と北米の施設を対象としたアンケート調査によると,日本ではほぼ100%の施設でポピ

ドンヨード消毒を連日施行する一方で,北米ではポピドンヨード消毒は約半数の施設にとどまり半数が石鹸洗浄のみ

との回答であった。さらに北米施設の2割で過酸化水素水での出口部ケアが施行されていた 39)。なおわが国における

ポピドンヨード消毒の頻度であるが,近年においては1996年当時と比較して減少し,各国の腹膜透析状況に関する

横断的検討であるPDOPPS研究によると約30%であるとの報告がなされている40)。石鹸洗浄の効果については,カ

テーテル関連感染の発症頻度を比較した国内での検討において,施行なし0.91回/患者・年に対して施行あり0.09

回/患者・年と有意差があったことが示されており41),少なくとも石鹸洗浄を避ける根拠はないと考えられる。なお

先述のわが国における検討41)の中で,ポピドンヨード消毒の有無はカテーテル関連感染の発症頻度と関連しなかっ

Grade A

Grade B

Grade C

Grade D

Grade A

Grade B

Grade C

Grade D

Grade A

Grade B

Grade C

Grade D

Grade A

Grade B

Grade C

Grade D

カテーテル関連感染の進展網掛け部分(  )は感染組織を示す。Grade A:感染組織が出口部周辺に限局する。Grade B:感染組織が外部カフより遠位の皮下トンネルに広がっているが,外部カフには及んでいない。Grade C:感染組織が外部カフより遠位の皮下トンネルに広がり,外部カフに及んでいる。Grade D:感染組織が外部カフより近位の皮下トンネルに広がり,内部カフに及んでいる。上記のgradingは,超音波所見に基づき行うことにより,より正確性が高くなる。

Grade A

Grade B

Grade C

Grade D

図七-5

P a r t 1

102

たことが報告されている。さらに消毒薬間の比較,消毒薬使用有無の比較については,諸家より相反する結果が報告

されており42~49),総じて消毒薬を用いることの明確な優位性は確認されないと考えられる。ISPDガイドラインのス

テートメントにおいても「カテーテル関連感染の予防の観点において優れている洗浄剤(注:わが国でいう消毒薬が

これに該当)は存在しない」と述べられている。いずれにせよ,消毒の要否および優劣については明確なエビデンス

に乏しく,推奨するべき方法は現時点では確立されていない。なお,消毒薬の使用に伴い出口部周辺皮膚において表

皮剥離やびらん(いわゆる皮膚荒れ)を生じる場合には,皮膚バリア機能を温存する観点から,当該消毒薬の使用を中

止すべきと考えられる。

シャワー・入浴における水質については,わが国での検討において水道水には菌が検出されない一方で井戸水・湧

水では菌検出が必発であること50),迅速発育抗酸菌による出口部感染の原因菌(Micobacterium forfuitum)が出口部

ケアに用いていた湧水からの検出菌と一致したとの症例報告51)の存在などを勘案すると,シャワーおよび入浴に使

用する水質については,可能な限り水道水を用いるのが望ましいと考えられる。

抗菌薬ないし抗菌性物質の局所への塗布について,ISPDガイドライン35)のステートメントでは「何らかの抗菌軟

膏ないし抗菌クリームを連日塗布することを推奨する」と述べられている。同様の推奨はISPDより2016年に上梓

された腹膜炎の予防と治療に関するガイドラインでも,ステートメント「抗菌薬(ムピロシンないしゲンタマイシン)

を含むクリーム・軟膏の連日局所塗布を推奨する」の形で述べられている52)。かかるステートメントは,鼻腔内に

おける黄色ブドウ球菌の常在がカテーテル関連感染症のリスクであるとの知見53),ムピロシン鼻腔塗布により黄色

ブドウ球菌による出口部感染を減少せしめたとの知見54),ゲンタマイシンの出口部への塗布が出口部感染・腹膜炎

の両者の発症頻度を減じせしめたとの知見55)など,諸外国から報告された複数の検討結果を背景としている。しか

しながら,ムピロシンないしゲンタマイシンを含有する軟膏・クリームの継続使用に関しては,耐性菌出現の誘因と

なる可能性が諸家から報告されている56~60)。一方,ムピロシンとゲンタマイシンの交互塗布がゲンタマイシン連日

塗布よりも真菌性腹膜炎のリスクを上昇させるとの報告もある61)。この点に関しては,本ガイドラインにおいてシ

ステマティックレビュー(CQ3:腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗

生剤軟膏塗布なしのどれがよいか?)が行われている。なおわが国ではムピロシンはMRSAの鼻腔除菌の適応のみと

なっており,諸外国ですでに広く行われている抗菌軟膏・抗菌クリームの連日塗布をわが国に外挿できるかどうか

は,今後の課題と考えられる。

⿎⿎2-5.被覆の有無,被覆の方法出口部のガーゼやドレッシングフィルムなどを用いた被覆についての明確な必要性は明らかではない。わが国にお

いて東京地域の施設を対象としたアンケート調査では,95%の施設で出口部保護が指導されている(そのうち97%は

被覆材としてガーゼを指示)62)。一方,前述の日米施設を対象としたアンケート調査によると,わが国では被覆を行

う施設が一般的であるが,北米では3割強の施設で被覆が行われないとされている 38)。近年,マレーシアより,被覆

の有無でカテーテル関連感染症の発症率には有意差がないとの無作為割り付け試験の結果が報告された63)が,これ

をわが国に外挿しうるかどうか現時点では不明である。

第七章 カテーテル・出口部管理

第七章 カテーテル・出口部管理

103

Part1

出口部・皮下トンネル感染に対する非観血的治療

解 説⿎⿎3-1.非観血的治療の適応と限界

出口部・皮下トンネル感染に対する非観血的治療としては,抗菌薬の全身あるいは局所投与(あるいはその両方)が

その軸である。なお観血的治療としては,アンルーフィング・出口部変更術・カテーテル抜去(+再挿入)があげられ

る。

ISPDガイドライン35)では,3週間の抗菌薬投与によっても治癒が得られないカテーテル関連感染を「難治性感染」

と定義し,その場合に観血的治療に移行することを推奨している。しかしながら,感染がカフにまで及んだ場合には

治癒の可能性が格段に低下することを勘案すると,本ガイドラインでは身体所見ないし画像所見によって感染が外部

カフに及んでいることが確認ないし推定されている患者では,原則として観血的治療への移行を考慮するとともに,

非観血的治療の継続を選択した場合にはきわめて注意深い経過観察を行うことを推奨する。

⿎⿎3-2.培養検体の採取解説2-2で述べたように,カテーテル関連感染症の起因菌はきわめて多岐にわたるため,治療の開始に先立って浸

出液は培養検体として採取し,検体量が許せば塗抹のうえグラム染色を行う。抗菌薬レジメンの修正は,実際の起因

菌に基づいてなされるべきであり,その意味で培養検体を採取することはきわめて重要である。抗菌薬の投与を行っ

た後の培養検体における陽性率は著しく低下することより,培養検体の採取は可能な限り抗菌薬の投与に先立って行

うべきと考えられる。

⿎⿎3-3.抗菌薬の選択原則出口部および皮下トンネル部分に発赤・腫脹といった明確な炎症所見が確認される場合には,抗菌薬の投与を行う

べきと考えられる。投与する抗菌薬は,黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対して感受性を有するものを選択する。抗菌

薬の投与経路は,過去の豊富な治療経験から,現時点では経口が推奨される。過去における出口部培養の結果が判明

している場合には,検出された細菌に対しても感受性を有するものを選択する。起因菌の割合は施設ごとに異なるこ

とが予想され,起因菌に関する定期的なサーベイランスの結果をベンチマークとして用いることも重要と考えられ

る。

なお,ISPDガイドライン35)では以下のステートメントが述べられている:「初期の経験的な薬物選択として,経

口投与の抗菌薬で黄色ブドウ球菌に抗菌力を有するペニシリナーゼ抵抗性ペニシリンあるいは第1世代セファロスポ

リンなどの適切な薬剤を用いるべきである。なおMRSAないし緑膿菌感染の既往ないしそれらの常在が確認される

3

██ ポイント1.⿎ 感染が外部カフに及ばない場合は,非観血的治療で対応する。

2.⿎ 出口部および皮下トンネル部分に発赤・腫脹といった明確な炎症所見が確認される場合には,抗菌薬の投与を行うべきと考えられる。

3.⿎ 原則,抗菌薬の投与に先立ち,培養検体を採取する。

4.⿎ 難治例,あるいは感染が外部カフに及んだ場合には,観血的治療を考慮する。

P a r t 1

104

場合にはグリコペプチド系,クリンダマイシン,抗緑膿菌抗菌薬といった適切な薬剤を用いるべきである」。

⿎⿎3-4.投与量,投与期間抗菌薬の投与量は,その薬物の代謝経路が腎である場合には減量する必要がある。具体的には,初回投与はinitial

doseとして腎機能正常者と同量を投与し,その後は薬剤の内容に応じて減量する。投与量調整はISPDガイドライ

ン35)あるいは各種マニュアル64,65)を参考に行う。

投与期間は,モニタリングにおいて出口部・皮下トンネル部の感染所見が完全に正常化するまで行われるべきであ

る。治療継続期間の目安として,ISPDガイドラインでは「出口部感染では2週間,皮下トンネル感染及び緑膿菌感

染では3週間」を推奨している。なお迅速発育抗酸菌ではさらに長期にわたる抗菌薬の投与が必要かもしれない:か

かる起因菌の場合は,超音波やCTにおける所見も抗生物質終了を決定する指標となりうると考えられる。

出口部・皮下トンネル感染に対する観血的対応 

解 説第三章に示すごとく,早期の診断と内科的な加療が病態の進展を阻止し傍カテーテル腹膜炎などを防止する。しか

し外部カフを越えて腹腔方向へ感染が波及した場合,内科的な治療では根治は不可能となる。その際は感染波及部位

をしっかりと診断し適切な外科処置を行う必要がある。いくつかの治療法があり,皮下トンネル感染症の進行の程度

により適切に選択する必要がある。

⿎⿎4 -1.Unroofing法(±cuff shaving法)(図七-6)

感染したカテーテルの外部カフを体外に導出し内部カフと外部カフの間で新出口部を形成する方法66~68)であり,

外部カフを除去するcuff shavingを行う場合と行わない場合がある。感染が広域で手術時の状況でカテーテル抜去が

必要な可能性があるのであれば,麻酔は腰椎麻酔や全身麻酔が望ましいが,予め超音波検査等で感染が限局している

と判断した場合には局所麻酔での施行も可能である。

出口部から皮下トンネルの上壁皮膚ごと切開し,外部カフまで感染したカテーテル周囲を露出させ外部カフを体外

に露出66)させる。この際にカテーテル周囲に貯留した膿は吸引や消毒薬などで可及的に除去・殺菌する。皮下トン

ネル後壁と皮膚の間には切開された脂肪織が存在する。出血のみ電気メスで止血してそのまま開放創とする方法(図七-6a),十分に洗浄消毒した後に閉鎖する方法(図七-6b)がある。前者(図七-6a)のメリットは術後の洗浄や消毒が

行いやすくなり,創の感染持続がないことがあげられる。その後徐々に肉芽組織が盛り上がり自然に閉鎖する。一

方,後者(図七-6b)では感染が残る心配があるが,非感染状態の場合には組織の修復は早く比較的きれいに修復され

る。

外部カフに関してはメスややすり等でダクロン繊維を除去しシリコンチューブのみにするcuff shaving法67)(図七-6c)もあるが,施行の際にはカテーテルに損傷をきたさないように十分な配慮が必要69)となる。基本的には感染が

4

██ ポイント1.⿎ 皮下トンネル感染症において内科的治療に難渋する場合,外科的治療を選択する。

2.⿎ 感染の部位によって施行できる手技は異なる。

3.⿎ すべての治療は腹膜透析の継続ではなく,腹膜の温存を中心に考える。

第七章 カテーテル・出口部管理

第七章 カテーテル・出口部管理

105

Part1

あろうがなかろうが体外に導出されて乾燥した時点で感染源になることはない。

非感染部分カテーテル直上で皮膚切開しカテーテルを保持した後,皮下トンネルごとen blocに除去し修復する方

法(Unroofing-BR法)68)(図七-6d)も報告されている。感染組織を患者側に残存させないための手技で,MRSA感染

を含む難治性の症例でも良好な感染軽快が得られたと報告されている68)。感染が残らなければきれいに早く創傷治

癒する。

これらのunroofing法を行った場合,内部カフまでの距離が短くなり皮下トンネル感染症が進行した際には傍カ

テーテル腹膜炎にリスクがあがるとされている。しかし,図七-3に示したように,ここから内部カフ方向は腹直筋

の内部を通過するため,血行が良く,免疫系因子や白血球の動員が速いために感染の進行は少ない。また新出口部に

感染が生じた際にも皮下トンネルがない分,排膿がスムースに体外に出るために皮下トンネル感染症の進行は少な

く,長期にわたりPDの継続が可能な症例も多い。またこの術式の大きなメリットは,腹膜部分に触れないため,PD

の継続ができる点となる。

⿎⿎4 -2.出口部変更術(subcutaneous pathway diversion: SPD)(図七-7)

Unroofing法による皮下トンネルの短化あるいは施行後の審美的な面から出口部変更術が施行されることもあ

る70~74)。この方法は後に都筑らによってSPDと命名され今日に至る72)。

感染部位をドレッシングフィルム等でゾーンニングし,術創に感染が波及しないように十分注意して手術を開始す

る。内部カフと外部カフとの間の非感染部位において皮下トンネル直上で切開しカテーテルを保持する(図七-7a)。

この時点で少しでも感染の可能性を感じた場合には本術式を継続は行わない。その際にはunroofing法ないしは入れ

替え術を選択する。この部位に感染が継続した場合には,再燃時に出口部への排膿ができなくなり内部カフ方向へ急

速に進行し傍カテーテル腹膜炎を発症するリスクが高いからである。ここでチタニウムエクステンダーを装着した新

しいカテーテル(添付されたカテーテルを用いるか,新しいPDカテーテルの側孔部分を切り落としたカテーテルを

用いてもよい)を接続する(図七-7b)。その後に感染の波及していない皮下に皮下トンネルを形成し新規に出口部を

形成する。

図七-6 アンルーフィングによる感染皮下トンネルの処理a)出血のみ電気メスで止血してそのまま開放創とする,古典的なアンルーフィングb)十分に洗浄消毒した後に閉鎖する方法c)古典的なアンルーフィングに外部カフのシェービングを併用する方法d)皮下トンネルごとen blocに除去し修復する方法

a)

トンネル後壁

b)

旧出口

トンネル後壁

旧出口

c)

トンネル後壁

d)

旧出口

P a r t 1

106

次に新規の傷をドレッシングフィルムでゾーンニングして感染波及を防止した後,旧カテーテルの抜去に移る。こ

の際,unroofi ngの要領で皮下トンネル直上を切開して抜去してもよいが,その場合大きな創ができてしまう。感染

源であるカテーテルがなくなり排膿がなされれば感染創は消失するため,外部カフを除去後の皮下トンネルにペン

ローズドレーンを挿入する方法も取られる。2日程度で排膿がなくなるので抜去すればよい。

この方法は現在広く行われているが,チタニウムエクステンダー部位でカテーテルが外れるあるいは損傷をきたし

離断するといった報告75,76)もされているため,この部位に過度な張力が掛からないように十分に配慮する必要があ

る。

※ チタニウムエクステンダーは製品添付文書においては,「本品は,腹膜透析用カテーテル末端(体外側)の延長を目

的として使用する」とされ,体内でのカテーテル延長における認証の記載はない。このため,使用にあたっては各

施設の適切な審査認証のうえ,術者の責任での施行となる。

⿎⿎4 -3.カテーテル入れ替え術画像診断で外部カフを越えて中枢まで感染が波及している場合,起因菌が緑膿菌77)やセラチアの場合,上記の方

法では改善が得られないことが多い。このような症例の場合で,患者がPDの継続を望むのであれば対側からの新規

挿入ならびに感染カテーテルの抜去が有効である。腹膜炎を発症している場合には感染カテーテルを抜去した後に,

抗生剤で十分加療し二期的に新しいカテーテルを挿入することが望ましい。逆に皮下トンネル感染症にとどまる感染

であれば一期的に挿入抜去でも支障はない(ISPDでは推奨している)78)。この場合上記同様に感染部位をドレッシン

グフィルムで隔離した後,対側より通常どおりPDカテーテルを挿入する。この際,内部カフ部の透析液リーク予防

は十分に施行する必要がある。

新規挿入術創にすべてドレッシングフィルムを張り感染の波及に防止した後,感染カテーテルの内部カフ部直上を

皮膚切開する。まず腹腔内からカテーテルを抜去した後,腹膜部は吸収糸でリークしないようにしっかり閉鎖する。

図七-7 SPD手技解説は本文参照

a)チタニウムエクステンダー

内部カフ

腹腔方向

b)

内部カフ

新出口

腹腔方向ドレッシングフィルム

c)

内部カフ

腹腔方向

d)新出口

ドレッシングフィルム

内部カフ

腹腔方向

新出口

ドレッシングフィルム

第七章 カテーテル・出口部管理

第七章 カテーテル・出口部管理

107

Part1

その後外部カフの除去に移る。先に外部カフの除去を行うと術野ならびに手術器具が汚染するため避ける。

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62) 岡田一義, 窪田実, 久保仁, 他.腹膜透析療法における自己管理・手技・定期検査のあり方. 透析会誌 2006; 39: 57-65.63) Mushahar L, Mei LW, Yusuf WS, Sivathasan S, Kamaruddin N, Idzham NJ. Exit-Site Dressing and Infection in Peritoneal 

第七章 カテーテル・出口部管理

第七章 カテーテル・出口部管理

109

Part1

Dialysis: A Randomized Controlled Pilot Trial. Perit Dial Int 2016; 36: 135-9. 64) 菊池賢,橋本正良 監修. 日本語版 サンフォード感染症治療ガイド2017(第47版). 東京:ライフサイエンス出版, 2017.65) 日本腎臓学会 編. CKD診療ガイド2012. 東京:東京医学社, 2012.66) John HC, Raoul JB. Surgical salvage of peritoneal dialysis catheters from chronic exit-site and tunnel  infections. Am J 

Surg 2005; 190: 4-8.67) Yoshino A, Honda M, Ikeda M, et al. Merit of  the cuff-shaving procedure  in children with chronic  infection. Pediatr 

Nephrol 2004; 19: 1267-72.68) Terawaki H, Nakano H, Ogura M, Kadomura M, Hosoya T, Nakayama M. Unroofing surgery with en bloc resection of 

the skin and tissues around the peripheral cuff. Perit Dial Int 2013; 33: 573-6.69) 山田昌由, 和田尚弘, 北山浩嗣, 上原正嗣, 松本麻里花, 鵜野裕一. Cuff shavingが原因でカテーテル切断が生じたと思われる1例. 日

小児腎不全会誌2010; 30: 174-5. 70) 深澤瑞也, 益山恒夫, 相川雅美, 原徹.PDトンネル感染症に対するチタニウムエクステンダーを用いた出口部変更術の7例.腎と透

析1997; 42別冊腎不全外科1997: 112-3. 71) 深澤瑞也, 国武剛, 望月隆弘, 原徹.PDトンネル感染症に対するチタニウムエクステンダーを用いた出口部変更術の中短期成績.腎

と透析1998; 44別冊腎不全外科98: 47-9. 72) 都筑優子, 西澤欣子, 窪田実, 山下元幸, 高橋康弘, 矢野由紀.PDカテーテルトンネル感染に対する出口変更術(subcutaneous 

pathway diversion: SPD)は,簡便で有用な外科的治療法である.腎と透析2006; 61別冊腹膜透析2006: 329-31. 73) Sakurada T, Okamoto T, Oishi D, et al. Subcutaneous pathway diversion for peritoneal dialysis catheter salvage. Adv 

Perit Dial 2014; 30: 11-4. 74) Fukasawa M, Matsushita K, Tanabe N, Mochizuki T, Hara T, Takeda M. A novel salvage  technique  that does not 

require catheter removal for exit-site infection. Perit Dial Int 2002; 22: 618-21.75) 門浩志, 足立陽子, 西尾晃.出口部変更術後にエクステンダー外側の皮下カテーテルが自然抜去してしまった1例.腎と透析2015; 

79別冊腹膜透析2015: 115-7. 76) 岡英明, 三井島渚, 吉冨亮太, 溝渕剛士, 上村太朗, 原田篤実.出口部変更術後にチタニウムエクステンダーによりカテーテルが断裂

した1例.腎と透析2011; 71別冊腹膜透析2011: 340-1. 77) Lui SL, Yip T, Tse KC, Lam MF, Lai KN, Lo WK. Treatment of refractory Pseudomonas aeruginosa exit-site infection by 

simultaneous removal and reinsertion of peritoneal dialysis catheter. Perit Dial Int 2005; 25: 560-3. 78) Szeto CC, Philip Li PK, Johnson DW, et al. ISPD Catheter-Related Infection Recommendations: 2017 Update. Perit Dial 

Int 2017; 37: 141-54.

P a r t 1

110

⿎⿎小児患者のカテーテル・出口部管理カテーテル挿入

解 説小児患者においてもカテーテル挿入および管理は,成人と同様に重要であり,いかに安全にトラブルなく挿入し管

理できるかが腹膜透析の成功を左右し,ひいては生命予後に大きく影響を与える1)。特に小児では,体格が小さいこ

とや皮下組織が薄いことから挿入部位が限られ,カテーテル挿入や出口部作製などのデザインは制限される。安定し

た透析を行うためには,腹膜炎のリスク要因を理解し2)より綿密にカテーテル挿入経路のデザインを計画することが

重要である。

カテーテルの内径は成人と同じであるが,形状,カフの位置,長さなどはさまざまであり,それらの特徴を十分理

解したうえで,患児の体格や出口のデザインにあわせて選択する。カフは,感染のリスクを減らし,またカテーテル

を固定し安定させるため小児においても可能な限りダブルカフのカテーテルを選択する3)。皮下トンネル部を多くと

り,皮下カフと出口部は2 cm以上離すようにする3)。また挿入直後は強く啼泣することを避けるなど腹圧をかけな

いようにし,さらにカテーテル挿入後透析開始まで2~3週間あけるようにする4)ことで,カフの揺動を回避する。

カテーテル挿入経路のデザインに関して,成長により体格の変化が生じることから,カテーテルの全長だけではな

く各カフからの長さを考慮し,術前の腹部レントゲンを参考に先端がダグラス窩に位置できるようにデザインする。

さらに,出口部は新生児・乳児の場合,汚染されないようにおむつ内には作成せず 5),幼児以降ではベルト位置など

も避けるよう留意する。従来の報告3)において,出口部は下向きや横向きの設置が推奨されている。近年のSCOPE

(The children’s Hospital Association’s Standardizing Care to Improve Outcomes in Pediatric ESRD)の報告6)で

は,米国の734人の小児腹膜透析患者に対する3年間の観察期間中,腹膜炎発症は出口部が上向きの症例に有意に多

いことが確認されている。患児および家族の意見も取り入れ術前から年齢,生活スタイルに合わせたデザインを予め

決めておくことも大切である。

1

██ ポイント1.⿎ 小児では挿入部位やデザインが限られるが,可能な限りダブルカフを用いる。

2.⿎ 小児においても上向きの出口部は避ける。

3.⿎ 成長を考慮したカテーテル挿入経路のデザインが重要である。

第七章 カテーテル・出口部管理

第七章 カテーテル・出口部管理

111

Part1

出口部・皮下トンネル管理

解 説乳児ではおむつによる汚染や尿失禁などにより腹膜炎のリスクが高くなる6)。このため,両親などの保護者が出口

部・トンネル部の観察およびケアを徹底しなければならず,その教育は重要である。小児では出口部の客観的な評価

として,スコアリングシステム(表七-3)を使用する7,8)。シンガポールの報告9)では,小児の透析専門看護師が手順

の監督,臨床ケアの観察など一連の患者教育を続けたところ,感染の発症率は改善した。また米国の子供病院29施

設で出口部ケアの管理を統一して標準化すると,3年間の経過期間中,PDカテーテル関連の感染が有意に改善され

たとの報告10)があり,カテーテル挿入時の患児やその家族の教育および通院時の出口部の継続したフォローアップ

は重要である。さらに成人中心の調査ではあるが,イタリアの多施設研究では11),家庭訪問およびアンケート調査

を行ったところ,小児例では再訓練の必要性が高かったとされている。患者と家族の教育と訓練には,計画,指導,

評価の継続的なプロセスが必要である。

出口部感染の予防として小児に対しての検討では,ムピロシンの局所使用に次亜塩素酸ナトリウム溶液を併用する

ことで出口部感染の発症率低下の可能性があるとの報告12)がされているが,明確な方法は確立されていない。

出口部感染の治療では,非観血的,観血的ともに成人に準じるが,抗菌薬の投与量は腎排泄の薬剤での減量はもち

ろん,小児では年齢,体重,体格などにより投与量を調整し13),投与期間は培養結果に応じ2~3週間とする3)。

引用文献

1)  Szeto CC, Li PK, Johnson DW, et al.  ISPD Catheter-Related Infection Recommendations: 2017 Update. Perit Dial Int 2017; 37: 141-54.

2)  Vidal E. Peritoneal dialysis and infants: further insights into a complicated relationship. Pediatric Nephrology 2018; 33: 547-51.

3)  Warady BA, Bakkaloglu S, Newland J, et al. Consensus Guidelines for the Prevention and Treatment of Catheter-related Infections and Peritonitis in Pediatric Patients Receiving Peritoneal Dialysis. 2012 Update. Perit Dial Int 2012; 32: S32-86.

2

██ ポイント1.⿎ 腹膜炎の発症を抑えるため,カテーテル挿入時だけではなく,外来通院後も継続した患者教

育,出口部ケア管理が重要である。

2.⿎ 小児では出口部の観察では,スコアリングシステムを使用する。

3.⿎ 出口部感染の治療は成人に準じるが,小児量に換算して用いる。

0点 1点 2点腫脹 なし 出口部のみ(<0.5㎝) トンネル部を含む痂皮 なし <0.5㎝ >0.5㎝発赤 なし <0.5㎝ >0.5㎝圧痛 なし わずか 強い

分泌物 なし 漿液性 膿性注:4点以上で疑う。

表七-3 出口部のスコアリング(Twardowski)

P a r t 1

112

4)  Patel UD, Mottes TA, Flynn JT. Delayed compared with  immediate use of peritoneal catheter  in pediatric peritoneal dialysis. Adv Perit Dial 2001; 17: 253-9.

5)  Warady BA, Feneberg R, Verrina E, et al. Peritonitis  in Children Who Receive Long-Term Peritoneal Dialysis: A Prospective Evaluation of Therapeutic Guidelines. J am Soc Nephrol 2007; 18: 2172-9.

6)  Sethna CB, Bryant K, Munshi R, et al. Risk Factors for and Outcomes of Catheter-Associated Peritonitis in Children: The SCOPE Collaborative. Clin J Am Soc Nephrol 2016; 11: 1590-6.

7) 星井桜子.小児PD治療マニュアル 小児のPD腹膜炎と出口部トンネル感染.小児PD研会誌2005; 18: 28-32.8)  Warady BA, Schaefer F, Holloway M, et al.; International Society for Peritoneal Dialysis. Consensus guidelines for the 

treatment of peritonitis in pediatric patients receiving peritoneal dialysis. Perit Dial Int 2000; 20: 610-24.9)  Gunasekara WD, Ng KH, Chan YH, et al. Specialist pediatric dialysis nursing improves outcomes in children on chronic 

peritoneal dialysis. Pediatr Nephrol 2010; 25: 2141-7.10) Neu AM, Miller MR, Stuart J, et al. Design of the standardizing care to improve outcomes in pediatric end stage renal 

disease collaborative. Pediatr Nephrol 2014; 29: 1477-84.11) Russo R, Manili L, Tiraboschi G, et al. Patient re-training in peritoneal dialysis: why and when is it needed? Kidney Int 

Suppl 2006;(103): S127-32.12) Chua AN, Goldstein SL, Bell D, et al. Topical Mupirocin/Sodium Hypochlorite Reduces Peritonitis and Exit-Site 

Infection Rates in Children. Clin J Am Soc Nephrol 2009; 4: 1939-43.13) 見﨑知子,藤田直也,山川聡,他.小児腹膜透析患者のカテーテル感染に対するバンコマイシンの適正投与方法の検討.日小児腎不

全会誌2016; 36: 127-30.

Part 2はじめに1.推奨文のサマリー2.方法 2-1. 診療ガイドライン作成方法について 2-2.腹膜透析ガイドラインの対象について3.結果・推奨 3 -1. CQ1:腹膜透析患者に,レニン・アンジオテンシン系阻害

薬(RAS阻害薬)(ACEI,ARB)の内服は有用か? 3 -2. CQ2:腹膜透析患者に,イコデキストリン透析液使用とグ

ルコース(ブドウ糖)透析液単独使用のどちらが有用か? 3 -3. CQ3:腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシ

ン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗生剤軟膏塗布なしのどれがよいか?

3 -4. CQ4:腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入のどちらが有用か?

3 -5. CQ5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は,経静脈投与か,腹腔内投与のどちらがよいか?

3 - 6. CQ6:糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか?

はじめに

はじめに

115

Part2

はじめに本診療ガイドライン(CPG)は,日本透析医学会腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループが中心となって作

成されたものである。日本透析医学会はこれまでに診療ガイドラインとその改訂版を単独であるいは他団体との協力

で作成し,その多くを英文化して国際的に発信してきた。これらは,作成時点でのいわゆる教科書のような体裁をと

り,学会員である透析医療者にとって役立つ内容であった。今回も,Part 1に関しては2009年の初版腹膜透析ガイ

ドラインを踏襲した教科書的内容とした。しかし,近年診療ガイドラインの定義や作成プロセスが厳格化され,従来

の作成方法や体裁ではその流れに沿わなくなってきた。一般社団法人日本透析医学会は,ガイドライン手順書作成

ワーキンググループ(旧ガイドライン小委員会)を中心に2012 年からガイドラインの作成方法を検討し,どのような

方法でガイドラインを作成していくかの指針をまとめた1)。さらにその指針では,国内のみならず国外への情報発信

の信頼性を高めるために,GRADE ワーキンググループによる方法論に準拠してCPG を作成することが決定されて

いる。今回の腹膜透析ガイドラインPart 2は当学会として初めて,GRADEアプローチに従った,診療ガイドライン

である。

エビデンスが少ない腹膜透析(PD)の分野で,さらに,GRADEアプローチによるCPGを作成することは困難があ

った。さらに,取りあげたエビデンスに日本から発信されたものが少なく,本当に日本のガイドラインといえるかど

うかの疑問が残る。それゆえ,後段にもあげるが,あまりにもエビデンスがなく取り下げられたクリニカルクエスチ

ョン(CQ)もある。現時点で,得ることができたエビデンスに基づく,妥当な手法による解析を用いて出すことがで

きたCPGと自負している。そのため,学術的には推奨されるが,保険収載されていないものも含まれており,そこ

は学術的検討にすぎないということをご考慮いただきたい。さらに,エビデンス不足からか,certainty(確実性)が

乏しく,推奨レベルで強い推奨は一つもなかった。つまり,推奨されていないものもその施行が否定されたわけでは

ないことは,学会員としてしっかりと胸に刻んでいただきたい。臨床的に画一的な患者を扱うことはなく,画一性の

ない患者をひとくくりにして解析せざるを得ない現在の統計手法から類推した推奨度であるので,弱く推奨する場合

でも患者の病態に応じて推奨されない方式を施行することは,ガイドラインを利用する臨床家として当たり前のこと

である。2. 方法:図2-1のように,たとえ強く推奨していても,推奨していない方式を実臨床で実施することもあ

るし,弱く推奨する場合では,実施する例と相対する方法を実施する例がかなりばらつくことになるわけである。

「推奨」が即,そのまま「必ず実施」ではないことは,強調しておきたい。

また学会員の知りたいことをCQにすべきとの声もあったため,チャレンジCQも募集し,ある程度の意見もいた

だいた。特に,慢性腎不全で透析が必要とされた患者にとって,透析が必要ならば,血液透析(HD)がよいのか,PD

がよいのか,PDならば,どのような様式の治療がよいのか,それらの治療選択肢にはどのような害や負担があり,

どちらのほうが生存率がよいか,入院・通院の期間が短縮されるのか,というようなCQも出た。これらに関して

は,患者の個別性が強いこと,すでに世界でPDは標準治療の一つとして確立された方法であること,単一的なHD

とPDの比較という形式の研究がない点から困難と判断した。今後もこのような比較試験が適確に実施される可能性

は低いのではないかと推察する。また,比較的均一な治療のレベルが保たれるHDに比べ,PDOPPSでも示されてい

るようにPDにおいては各施設間の腹膜炎発症率,治療継続率・離脱率等が大きく異なるといった差がある。HDと

PDの比較という点で,どのレベルのPDと比較するのかといった意見もある。治療レベルの向上,均一化をはかる

べく今回のガイドラインが普及してから議論することも必要かと考える。日本透析医学会腹膜透析ガイドライン改訂

ワーキンググループにて検討した結果,あまりにもエビデンスがないなどの理由からチャレンジCQはCQ6が採用

されるにとどまった。計7つのCQが検討されたがCQ7はエビデンスがなく,下記の6つのCQとなった。今後も今

回のガイドラインで取りあげられていないCQがあれば,学会員自らがエビデンスを構築して,世界に日本の成績を

示すべきと考える。

P a r t 2

116

推奨文のサマリーCQ1:腹膜透析患者に,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)(アンジオテンシン変換酵素阻害薬

(ACEI), アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB))の内服は有用か?

推奨文:腹膜透析患者にRAS阻害薬(ACEI, ARB)内服を弱く推奨する(GRADE2C)。

CQ2: 腹膜透析患者に,イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用のどちらが有用

か?

推奨文:腹膜透析患者の体液管理の面において,イコデキストリン透析液使用を弱く推奨する(GRADE2C)。

CQ3: 腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗生剤軟膏塗布なしのどれが

よいか?

推奨文:腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏塗布を行わないことを弱く推

奨する(GRADE2C)。

CQ4: 腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入の

どちらが有用か?

推奨なし

CQ5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は,経静脈投与か,腹腔内投与のどちらがよいか?

推奨文:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は腹腔内投与を弱く推奨する(GRADE2C)。

注意:現在,腹腔内投与については保険適用がない。

CQ6:糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか?

推奨なし

方法⿎⿎2-1.診療ガイドライン作成方法について 

診療ガイドラインの定義ならびに全体の構成は,日本透析医学会が作成した診療ガイドライン作成指針に従っ

た1~3)。詳細な手順としてはコクランハンドブックならびに,Grading of Recommendations, Assessment,

Development and Evaluation(GRADE)ワーキンググループによって開発されたGRADEアプローチに従って作成

した2,4,5)(表2-1, 表2-2)。

日本語の用語など,Minds(日本医療機能評価機構EBM医療情報部)の「Minds診療ガイドライン作成の手引き」

も参考にした6,7)。ただし,作成方法は,GRADEアプローチに従って作成した。

1

2

エビデンスの確実性 定義A:高い 真の効果が効果推定値に近いという確信がある。B:中 効果推定値に対し中等度の確信がある。つまり,真の効果は効果推定値に近いと考えられるが,大きく異な

る可能性も否めない。C:低 効果推定値に対する確信性には限界がある。真の効果は効果推定値とは大きく異なるかもしれない。D:非常に低い 効果推定値に対しほとんど確信が持てない。真の効果は効果推定値とは大きく異なるものと考えられる。

表2-1 CPG におけるエビデンスの質の等級と定義1)

はじめに

はじめに

117

Part2

⿎⿎2-2.腹膜透析ガイドラインの対象について本診療ガイドラインは,腹膜透析を利用する患者を治療する医師を対象としている。

結果・推奨⿎⿎3-1.�CQ1:腹膜透析患者に,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)

(ACEI,�ARB)の内服は有用か?3-1-1.推奨

腹膜透析患者にRAS阻害薬(ACEI, ARB)内服を弱く推奨する(GRADE2C)。

3-1-2.CQについて

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI),アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)といったRAS阻害薬は腎保護効

果,尿蛋白減少効果があり慢性腎臓病(CKD)治療に頻用される薬剤である。腹膜透析患者は過去の研究から残腎機

能が維持されていることが患者予後に有利であることがわかっている。今回,腹膜透析患者にRAS阻害薬を投与す

ることが有効であるのかを検討した。

ACEI,ARBは厳密には異なる作用機序の薬剤であるが,今回のSRでは両者をRAS阻害薬としてまとめSR1.1.と

して検討した。わが国ではACEIに比較して圧倒的にARBの市場シェアが大きく,両者を分けて検討することが現実

に即していないと考えた。一方でACEIとARBのどちらが腹膜透析患者に有利に働くかという疑問が出ることも考え

SR1.2.として検討した。

3-1-3.判断根拠

今回,SR1.1.およびSR1.2.を行ったが,SR1.2.においてACEIとARBのいずれが優位かという判断はできないと

考えられた。よって今回の検討はACEIとARBをRAS阻害薬としてまとめ,その有効性を検討するSR1.1.を推奨根

拠とした。

今回検討したアウトカムのなかで重大と判断したもののエビデンスの確実性は「低」であり,全体的なエビデンス

の確実性も低とした。

RAS阻害薬は多くの患者で腹膜透析導入前から投与されているケースが多く,利益があるとされるのであれば服

用を拒否するケースはほぼないであろう。また残腎機能と腹膜透析患者の予後との関係は過去の研究で示されてい

3

推奨度 定義1:強い推奨 介入による望ましい効果(利益)が望ましくない効果(害・負担・コスト)を上回る,または下回る確信が強い。

患者にとって,その状況下にあるほぼ全員が,推奨される行動を希望し,希望しない人がごくわずかである。2:弱い推奨 介入による望ましい効果(利益)が望ましくない効果(害・負担・コスト)を上回る,または下回る確信が弱い。

患者にとって,その状況下にある人の多くが提案される行動を希望するが,希望しない人も多い。

表2-2 各ガイドライン利用者別の推奨度の強さがもつ意味1)

図2-1

強い推奨 強い推奨

行わない行う

弱い推奨 弱い推奨

P a r t 2

118

る。残腎機能の指標として本SRは尿量を採用した(eGFRを指標とする研究も若干は存在した)。尿量維持は患者自

身が「残腎機能が維持されている」ことを自覚できる妥当な指標と考えられる。価値観(と意向)において重要な不確

実性またはばらつきはおそらくなし,と判断した。

重大なアウトカムと考えられた全死亡,テクニカルサバイバル,心血管イベント発症についてであるが,今回採用

した論文の観察期間が1~2年という短期間であり,イベント数が少なく両群で差が認められず介入による効果は不

明であった。そこで,診療ガイドラインパネル会議では,患者予後やQOLと関連する残腎機能(尿量)とGFRの維持

も重大なアウトカムと考え推奨の判断に用いることができると考えた。介入によって尿量は平均差142.5 mLの増

SR1.1. ACEIまたはARBと他の薬剤の比較のエビデンスプロファイルCertainty assessment 患者数 効果

Certainty 重要性研究数 研究デザ

インバイアスのリスク 非一貫性 非直接性 不精確 その他

の検討ARB or ACEI

other drugs

相対(95% CI)

絶対(95% CI)

全生存率(イベントは死亡数)

6 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 3/135 (2.2%)

2/104 (1.9%)

推定不可 増減なし1,000人当たり(40人減少 ~50人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

テクニカルサバイバル(PD 継続の期間・PD離脱)(PD離脱)

6 ランダム化試験

深刻 c 深刻でない 深刻でない 深刻 d なし 3/134 (2.2%)

3/104 (2.9%)

推定不可 増減なし1,000人当たり(50人減少 ~40人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

テクニカルサバイバル(PD 継続の期間・PD離脱)(腹膜炎)

2 ランダム化試験

深刻でない 深刻でない 深刻 e 深刻 f なし 12/48 (25.0%)

12/46 (26.1%)

RR 0.98(0.49-1.95)

5人減少 1,000人当たり(248人減少~ 133人増加)

⨁⨁◯◯低

重要

尿量・残腎機能(尿量)

6 ランダム化試験

深刻 c 深刻でない 深刻でない 深刻 g なし 105 89 - MD 142.56 mL 増加(25.42mL増加 ~ 259.69mL増加)

⨁⨁◯◯低

重大

尿量・残腎機能(無尿)

3 ランダム化試験

深刻 c 深刻でない 深刻でない 深刻 h なし 23/67 (34.3%)

29/59 (49.2%)

RR 0.70(0.48-1.02)

147人減少 1,000人当たり(256人減少 ~10人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

尿量・残腎機能(GFR)

4 ランダム化試験

深刻 i 深刻でない 深刻でない 深刻 j なし 87 76 - MD 0.97 増加(0.49減少 ~ 1.44 増加)

⨁⨁◯◯低

重大

透析量(総Kt/V)

3 ランダム化試験

深刻 c 深刻でない 深刻 k 深刻 l なし 61 49 - MD 0.21 増加(0.04 減少 ~ 0.46 増加)

⨁◯◯◯非常に低

重要

合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(高カリウム血症)

1 ランダム化試験

深刻 c 深刻でない 深刻でない 深刻 m,n なし 0/30 (0.0%)

0/15 (0.0%)

推定不可 増減なし1,000人当たり(100人減少 ~ 100人増加)

⨁⨁◯◯低

重要

合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(入院)

1 ランダム化試験

深刻でない 深刻でない 深刻 o 深刻 p なし 14/30 (46.7%)

13/30 (43.3%)

推定不可 30人減少 1,000人当たり(280人減少 ~ 220人増加)

⨁⨁◯◯低

重要

その他CQ班が重要としたアウトカム(心血管イベント)

2 ランダム化試験

深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻 q なし 5/48 (10.4%)

5/46 (10.9%)

推定不可 増減なし1,000人当たり(90人減少 ~ 90人増加)

⨁⨁⨁◯中

重大

表3-1 エビデンスプロファイル

CI: 信頼区間; RR: リスク比; MD: 平均差a. 不明が多い,組み入れ研究の半数で不完全なアウトカムデータがハイリスク b. 1%の生存死亡で,薬剤の使用不使用が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたいでいると判断 c. Weightの高い研究のバイアスが無視できないd. 2%の腹膜透析の離脱で,薬剤の使用不使用が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたいでいると判断 e. テクニカルサバイバルの原因として腹膜炎の採用のため f. 2%の腹膜炎で,薬剤の使用不使用が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたいでいると判断 g. 100 mLの尿量の差で,薬剤の使用不使用が異なると考え,MDの95%信頼区間が閾値をまたいでいると判断 h. 5%の無尿で,薬剤の使用不使用が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたいでいると判断 i. 2研究のバイアス評価で高リスク項目を含む j. GFR1.0の差で薬剤使用不使用が異なると考え,MDの95%信頼区間が閾値をまたぐと判断 k. 総 Kt/Vは残腎機能と腹膜による透析量の合計であり,純粋な透析量とはいえない l. 0.1の総 Kt/Vの差で,薬剤の使用不使用が異なると考え,MDの95%信頼区間が閾値をまたいでいると判断 m. イベント数が少ない n. 5%の高カリウム血症で,薬剤の使用不使用が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたいでいると判断 o. 合併症として入院の評価のため p. 2%の入院で,薬剤の使用不使用が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたいでいると判断 q. 2%の心血管イベントで,薬剤の使用不使用が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたいでいると判断

はじめに

はじめに

119

Part2

CI: 信頼区間; RR: リスク比; MD: 平均差a. 不明が多い b. 閾値をまたぐ c. 代理アウトカム d. 1研究のみ e. 症例数が少ない

SR1.2. ACEIとARBの比較(ACEIに対するARBの効果)Certainty assessment 患者数 効果

Certainty 重要性研究数 研究デザ

インバイアスの

リスク 非一貫性 非直接性 不精確 その他の検討

CQ1.2  ARB ACEI 相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

全生存率(イベント死亡数) 

1 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 0/30 (0.0%)

0/30 (0.0%)

推定不可 増減なし1,000人当たり(60人減少~ 60人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

テクニカルサバイバル(PD 継続の期間・PD離脱)(PD離脱)

1 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 0/30 (0.0%)

0/30 (0.0%)

推定不可 増減なし1,000人当たり(60人減少~ 60人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

テクニカルサバイバル(PD 継続の期間・PD離脱)(腹膜炎)

1 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻 c 深刻 b なし 7/30 (23.3%)

6/30 (20.0%)

RR 1.17(0.44-3.06)

34人増加 1,000人当たり(112 人減少~412 人増加)

⨁◯◯◯非常に低

重要

尿量・残腎機能(尿量)

1 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 30 30 - MD 145 mL 増加(8.35mL 減少~ 298.35mL増加)

⨁⨁◯◯低

重大

尿量・残腎機能(無尿)

1 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 12/30 (40.0%)

11/30 (36.7%)

RR 1.09(0.57-2.07)

33人増加1,000人当たり(158人減少~ 393人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

尿量・残腎機能(GFR)

1 ランダム化試験

深刻 d,e 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 30 30 - MD 0.18 減少(0.4減少~0.04 増加)

⨁⨁◯◯低

重大

透析量(総 Kt/V)

1 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻 c 深刻 b なし 42 42 - MD 0.09 減少(0.26減少 ~ 0.08 増加)

⨁◯◯◯非常に低

重要

合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(高カリウム血症)

2 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 6/72 (8.3%)

5/72 (6.9%)

RR 1.20(0.40-3.63)

14 人増加 1,000人当たり(41人減少~ 181人増加)

⨁⨁◯◯低

重要

合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(入院)

1 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻 c 深刻 b なし 4/30 (13.3%)

5/30 (16.7%)

RR 0.80(0.24-2.69)

33人減少1,000人当たり(127人減少~282 人増加)

⨁◯◯◯非常に低

重要

その他CQ班が重要としたアウトカム(心血管イベント)

1 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 4/30 (13.3%)

3/30 (10.0%)

RR 1.33(0.33-5.45)

33人増加1,000人当たり(67人減少~ 445人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

加,95%信頼区間の下限も25.42 mLの増加であった。無尿の発症率も統計学的有意差はないものの介入によって相

対危険度0.70[0.46-1.02]となることからおそらく介入が優位と判断した。また,サブグループ解析において,ACEI

に関する研究(Li 2003,参照付録6-1-2)はリスクオブバイアスが低く,一つの研究ながら介入後のGFR平均差

0.72[0.52-0.90]と効果があると判断した。ARBに関しては尿量とGFRの維持に効果があると判断した結果より,

RAS阻害薬の介入が優位と判断した。

必要資源量について,本邦の保険システムでは介入にかかる費用として患者負担は生じない。国民医療費の増加と

いう視点からもACEI,ARBともに安価な後発医薬品が多く市場に出回っておりコストの問題は大きくないと考えら

れる。

P a r t 2

120

⿎⿎3-2.�CQ2:腹膜透析患者に,イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用のどちらが有用か?

3-2-1.推奨

腹膜透析患者の体液管理の面において,イコデキストリン透析液使用を弱く推奨する(GRADE2C)。

3-2-2.CQについて

腹膜透析の管理において,腹膜除水量と残腎機能は,体液管理そして腹膜透析継続期間に関連するきわめて重要な

因子である。イコデキストリン液は,浸透圧物質としてのブドウ糖を使用せず,またグルコースポリマーで分子量が

大きいため腹膜から吸収されにくく,除水効果に優れた透析液である。特に腹膜平衡試験で腹膜透過性の亢進があり

(カテゴリーではhigh transporterに分類される),通常のブドウ糖液では除水が困難な症例においても有効であり,

腹膜透析継続と関連する体液管理にきわめて有用である。その一方で,残腎機能低下への懸念や皮疹等も報告されて

いる。本邦ではイコデキストリン液は2003年に上市され15年が経過しているものの,2009年に発行された本邦に

おける現行の腹膜透析ガイドラインでは触れられていない。今回,イコデキストリン液のブドウ糖液単独使用に対す

る有効性・害について,システマティックレビュー(SR)を行った。

3-2-3.判断根拠

イコデキストリン液(介入群)のブドウ糖液単独使用(対照群)に対する有用性については,全死亡率がRR

0.75[0.33-1.71],1,000人中7人減少(18人減少~19人増加)で有意差はなかったものの点推定値では優位であっ

た。次に重要なアウトカムである体液管理困難のエピソードに関しては,介入群がRR 0.31[0.12-0.82]で1,000人

中73人減少効果が得られ,有意差をもって介入群が優位であった。また腹膜除水量に関しても有意差はないものの

介入群で多かった。結果としてテクニカルサバイバルに関しても介入群のほうで離脱が少なく,RR 0.57[0.29-

1.12],1,000人中32人減少(9人増加~52人減少)で有意差はないものの良好な結果であった。一方,腹膜除水量増

加に伴う尿量減少や残腎機能低下はみられなかった。診療ガイドラインパネル会議では,今回のエビデンスは,アウ

トカムが体液管理困難のエピソードであり,体液管理困難な患者のみを対象としたエビデンスではないが,主に体液

管理困難な腹膜透析患者に限定した推奨としたほうがよいとする意見があった。一方では,高濃度のブドウ糖液を使

用することで,体液管理ができる可能性もあるとの意見もあった。最終的には,「腹膜透析患者の体液管理の面にお

いて,」を追加して,すべての症例に盲目的にイコデキストリン透析液を使うなどの行き過ぎた使用にならないよう

に配慮することとした。

また,腹膜機能が重大なアウトカムであったが,パネル委員会でアウトカムの重要度に関して再度議論があり,全

生存率やtechnical survivalと比較して明らかに重要性が低いと判断され,最終の診療ガイドラインパネル会議で重

要なアウトカムへ格下げとなった。

害について,腹膜炎はRR 0.95 [0.79-1.15]であり,介入群と対照群の差はみられなかったが,皮疹に関してはRR

1.84 [0.48-7.09]と有意差はなかったものの点推定値では介入群で多く発現していた。しかしながら,皮疹の多くは

イコデキストリン液発売初期の時代の報告であり(Wolfson 2002, Finkelstein 2005,参照付録6-2-2),比較的最近

の報告(Lin 2009a, Chang 2016,参照付録6-2-2)では明らかに減少しており,ブドウ糖液との差はみられていな

い。バクスター株式会社の調査では,イコデキストリン液使用患者537例中の調査の中で,発疹27例(5%),剥奪性

皮膚炎8例 (1.5%)と報告されており,テルモ株式会社からの回答では,2014年12月発売以来,発疹は2015年の全

身性剥奪性皮膚炎の1例のみとのことであり,決して多い比率ではないと推測された。イコデキストリン液によるア

レルギーに関する七松らのcase report中の考察でも,イコデキストリン液の皮疹に関しては,開始後7~10日に多

く,ほとんどが中止により速やかに改善が得られたとのことであった8)。以上よりイコデキストリン液使用による望

ましくない効果は多くないと判断した。

その他,価値観にはばらつきがなく,必要資源量に関しても,本邦の保険治療では,実際に患者が直接支払うコス

トには差がなく影響は少ないと考える。

はじめに

はじめに

121

Part2

よって,効果のバランスは,イコデキストリン液使用がブドウ糖液単独使用と比較して優位であると判断した。

⿎⿎3-3.�CQ3:腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗生剤軟膏塗布なしのどれがよいか?

3-3-1.推奨 

腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏塗布を行わないことを弱く推奨する

(GRADE2C)。

3-3-2.CQについて

腹膜透析の初期の離脱理由として腹膜炎が多い。腹膜透析を安定して継続するためには,腹膜炎およびその原因と

なる出口部感染を予防することは重要である。海外では出口部感染予防のために抗菌薬軟膏を出口部に塗布すること

が推奨され行われているが,日本ではムピロシン軟膏,ゲンタマイシン軟膏ともに保険適用がない。ムピロシン軟膏

が出口部感染,腹膜炎に対する予防効果に対する既存のガイドラインやSRは,ムピロシンを出口部に塗布するもの

と鼻腔に塗布するものとがまざっているものであったり,鼻腔にブドウ球菌を保菌する患者を対象にした研究を含ん

でいたり,RCTだけでなく観察研究が含まれているものであった。このCQではムピロシン軟膏,ゲンタマイシン軟

表3-2 エビデンスプロファイル

Certainty assessment 患者数 効果

Certainty 重要性研究数 研究デザ

インバイアスの

リスク 非一貫性 非直接性 不精確 その他の検討

イコデキストリン透析液

グルコース(ブドウ糖)透析液単独

相対(95% CI)

絶対(95% CI)

全生存率(イベント死亡者数)

10 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 10/592 (1.7%)

14/514 (2.7%)

RR 0.75(0.33-1.71)

7人減少 1,000人当たり(18人減少~19人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)

5 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 c なし 10/239 (4.2%)

17/231 (7.4%)

RR 0.57(0.29-1.12)

32 人減少1,000人当たり(52 人減少~9人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

腹膜除水量(体液管理困難のエピソード)

4 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻でない なし 3/129 (2.3%)

12/111 (10.8%)

RR 0.31(0.12-0.82)

73人減少 1,000人当たり(93人減少~19人減少)

⨁⨁⨁◯中

重大

腹膜除水量(1日総除水量)

6 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 d なし 133 119 - MD 186.76 mL 増加(47.08 mL 減少~ 420.59 mL 増加)

⨁⨁◯◯低

重大

尿量

4 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 d なし 75 61 - MD 106.08 mL 増加(173.29 mL 減少~

385.45 mL 増加)

⨁⨁◯◯低

重大

残腎機能(GFR・CrCl)

5 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻でない なし 97 84 - MD 0.56 増加(0.37 減少~1.49増加)

⨁⨁⨁◯中

重大

腹膜機能(クレアチニン値など)(D/P Cr 値)

2 ランダム化試験

深刻 a 深刻 e 深刻でない 深刻 f なし 55 50 - MD 0.00(0.07減少~ 0.07増加)

⨁◯◯◯非常に低

重要

合併症(腹膜炎)

8 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 128/551 (23.2%)

108/483 (22.4%)

RR 0.95(0.79-1.15)

11人減少 1,000人当たり(47人減少~34人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

合併症(発疹)

4 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 c なし 56/392 (14.3%)

17/334 (5.1%)

RR 1.84(0.48-7.09)

43人増加 1,000人当たり(26人減少~ 310人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

耐糖能異常発症率 - 未報告

- - - - - - - - - - - - 重大

CI: 信頼区間; RR: リスク比; MD: 平均差a. ハイリスクが多い b. 1%の差で,介入の選択が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたぐ c. 2%の差で,介入の選択が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたぐ d. 100 mLの差で,介入の選択が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたぐ e. I2 (研究間のばらつき度)が 65%で,研究間の効果の方向が異なる f. 0.05の差で,介入の選択が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたぐ

P a r t 2

122

膏の出口部への塗布が,抗菌薬軟膏塗布なしに対して腹膜炎,出口部感染の予防に有用であるか,またムピロシン軟

膏とゲンタマイシン軟膏のどちらが感染予防に有用であるかを,鼻腔の保菌の有無は問わず全腹膜透析患者を対象に

したRCTのみでの検討を行った。

3-3-3.判断根拠

ISPD 腹膜炎勧告では,予防と治療に関する2016年度版などには,ムピロシン投与が強く推奨されており,ISPD

の勧告に記載があるSRでもムピロシンが明らかに良いとされていた。このISPDの勧告に記載があるSRでは,鼻腔

投与,または観察研究でムピロシン投与の効果が大きかった(付録参照)。しかし,今回の出口部塗布のRCTのSRの

結果は,ISPDの記載より,ムピロシン投与の効果の大きさがきわめて小さかった。出口部へのムピロシン軟膏塗布

と対象の比較では,点推定値はいずれのアウトカムも,ムピロシン軟膏が優位であった。一方,ムピロシン軟膏塗布

とゲンタマイシン軟膏塗布の比較ではいずれのアウトカムも2薬剤間で大きな差は認めなかった。この結果からは,

塗布療法を行うことによって日本においてもさらに成績が向上する可能性があるという指摘がパネル会議であった。

また,害に関してのエビデンスも広く情報を集めたところ,抗菌薬含有軟膏塗布の予防的長期使用による耐性菌出

現の問題が,診療ガイドラインパネル会議で問題となった。これまで,ムピロシン軟膏使用後のMRSAのムピロシ

ン耐性化率は2.2~81%と報告されているとともに,皮膚や軟部組織感染症の原因菌においては,すでにゲンタマイ

シン耐性を17.7~70.9%で認めることから,いずれも長期使用による耐性菌の出現・増加が懸念される。

日本のPD腹膜炎発症率は0.20 event/patient・yearであり9),ISPDの勧告の0.50を大きく下回っている。海外

ではムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏塗布が有用であっても,日本においては現行の抗生剤軟膏を予防塗布しな

い出口部管理で諸外国に比べてむしろ優れており,塗布による利益は大きくないと考えられた。さらに,コストの

点,薬剤耐性の点を考慮して,ムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏塗布を行わないことを弱く推奨する推奨文を決

定した。また現在,ムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏塗布の出口部への予防的塗布は保険適用外である。

SR3.1. ムピロシン軟膏と対照の比較のエビデンスプロファイルCertainty assessment Incidence rate 効果

Certainty 重要性研究数 研究デザ

インバイアスの

リスク 非一貫性 非直接性 不精確 その他の検討 ムピロシン軟膏 対照 相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

腹膜炎

3 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 37/175patient-year

44/148patient-year

0.78(0.50-1.21)

100人・年当たり6.5イベント減少

(14.9減少~6.2増加)

⨁⨁◯◯低

重大

テクニカルサバイバル

3 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b,c なし 4/175patient-year

3/148patient-year

1.35(0.25-7.21)

100人・年当たり0.7イベント増加

(1.5減少~12.6 増加)

⨁⨁◯◯低

重大

出口部トンネル感染

3 ランダム化試験

深刻 a 深刻 d 深刻でない 深刻 b なし 14/175patient-year

41/148patient-year

0.36(0.13-1.05)

100人・年当たり17.7イベント減少

(24.1減少~1.4 増加)

⨁◯◯◯非常に低

重大

合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる) - 未報告

- - - - - - - - - - - -

CI: 信頼区間; RR: リスク比a. ハイリスクの割合が多い b. 1%の違いがあると,介入選択の有無の判断が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたいでいると判断した c. リスク差の場合,-0.01[-0.05, 0.03]でありグレードは2段階下げる必要がないと判断 d. I2 (研究間のばらつき度) が 72%であり,研究間で効果の方向が違った(95%信頼区間は一部重なっていた)

表3-3 エビデンスプロファイル

はじめに

はじめに

123

Part2

⿎⿎3-4.�CQ4:腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入のどちらが有用か?

3-4-1.推奨

推奨なし

3-4-2.CQについて

腹膜透析を円滑に行うためには適切なカテーテル挿入手術が施行されることが前提である。カテーテル挿入方法は

開腹手術によるカテーテル挿入,腹腔鏡下手術によるカテーテル挿入および経皮的カテーテル挿入に分けられる。本

邦では経皮的カテーテル挿入用のデバイスがないため,多くの施設では開腹手術あるいは腹腔鏡下手術によるカテー

テル挿入が行われている。腹腔鏡下手術は,一般的に皮膚の切開創が開腹手術よりも小さく,美容的にも優れ,手術

後の疼痛も開腹手術に比べ軽いのが特徴である。また,術後の回復が早く,入院期間の短縮と早期に社会復帰できる

ことが最大の利点である。また,腹腔鏡によるカテーテル挿入の場合,術者が直接カテーテルの先端を観察しながら

挿入できること,大網固定術,大網切除術などのカテーテル巻絡予防ができること,腹腔内でカテーテルを固定する

ことによりカテーテルの位置異常が予防できること,腹腔内に癒着のある患者に対して剥離術などの追加手術を行う

ことができること,さらには鼠径ヘルニアを認める患者では同時にヘルニア修復術ができることなどの多くのメリッ

トがある。しかし,全身麻酔が必要であること,専用の医療機器や設備を要しコストが高くなること,手術に際して

は腹腔鏡に精通した外科医が必要となること,トロッカー挿入に伴う臓器損傷や抜去時の出血,気腹に伴う皮下気

腫・ガス塞栓・肺塞栓,限られた視野による臓器損傷などの腹腔鏡下手術に特有の合併症のリスクがあることがデメ

リットとして考えられる。これまでに開腹手術と腹腔鏡下手術によるカテーテル挿入術の術後転帰を比較した研究は

いくつかあるものの,症例数が少なく,どちらが有用であるか十分なエビデンスがない。そこで,カテーテル挿入に

おいて腹腔鏡下手術が開腹手術に比して有用であるかどうかを明らかにする必要があると考え本CQを採用した。

3-4-3.判断根拠

開腹手術に対する腹腔鏡下手術でのカテーテルサバイバルはRR 1.07[0.98-1.16](エビデンスの確実性低)であっ

た。また,開腹手術に対する腹腔鏡下手術でのカテーテル位置異常は,RR 0.42[0.18-0.96]となった(エビデンスの

SR3.2. ムピロシン軟膏とゲンタマイシン軟膏の比較のエビデンスプロファイルCertainty assessment 患者数 効果

Certainty 重要性研究数 研究デザ

インバイアスの

リスク 非一貫性 非直接性 不精確 その他の検討 ムピロシン軟膏 ゲンタマイシン

軟膏相対

(95% CI)絶対

(95% CI)

腹膜炎

3 ランダム化試験

深刻 a,b 深刻でない 深刻でない 深刻 c なし 40/128patient-year

43/133patient-year

0.85(0.32-2.26)

100人・年当たり4.8イベント減少

(22.0減少~40.7増加)

⨁⨁◯◯低

重大

テクニカルサバイバル

3 ランダム化試験

深刻 a,b 深刻でない 深刻でない 深刻 c なし 11/128patient-year

22/133patient-year

0.58(0.28-1.20)

100人・年当たり6.9イベント減少

(11.9減少~3.3増加)

⨁⨁◯◯低

重大

出口部トンネル感染

2 ランダム化試験

深刻 a,b 深刻 d 深刻でない 深刻 c なし 78/99patient-year

30/104patient-year

1.14(0.27-4.81)

100人・年当たり4.0イベント増加

(21.1減少~109.9増加)

⨁◯◯◯非常に低

重大

出口部トンネル感染(Chu 2008の論文を除外)

1 e ランダム化試験

深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻でない なし 29/54patient-year

15/64patient-year

2.31 (1.24-4.31)

100人・年当たり30イベント増加

(5.6 増加~77.2増加)

⨁⨁⨁⨁高

重大

合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる) - 未報告

- - - - - - - - - - - - 重大

CI: 信頼区間; RR: リスク比a. 不明が多い b. 準ランダム化比較試験(交互に割り振った)を含む c. 1%の差が介入選択に影響するとし,95%信頼区間が閾値をまたいだと判断した d. 研究間で効果の方向が異なる e. Chu 2008の研究が準ランダム化比較試験のため除外して感度分析を行い,臨床的に問題と思われたアウトカム

P a r t 2

124

確実性中等度)。その他に,出口部トンネル感染症に関しては,RR 0.99[0.43-2.29](エビデンスの確実性低)であっ

た。全体では統計学的有意差があったカテーテル位置異常については,カテーテルを腹腔内で固定した研究もあった

ことから,カテーテル固定の有無でのサブグループ解析を行った。その結果,カテーテル固定を行わなかった腹腔鏡

下手術と開腹手術では有意差がなかったが(RR 0.58[0.27-1.25]),カテーテル固定を行った腹腔鏡下手術は開腹手術

と比較して有意にカテーテル位置異常が少なかった(RR 0.09[0.01-0.68])。さらに,QOLに関しては疼痛の評価の

みであり,そのエビデンスの確実性は非常に低であった。以上より,小さいながらも腹腔鏡下手術が望ましい効果が

あると判断された。また,病院滞在期間に関しては開腹手術が腹腔鏡下手術と比べて短いという結果であったが,対

象となった研究は2つしかなく,メタ分析の荷重が91%の(Wright 1999,参照付録6-4-2)の入院期間が開腹手術

2.4日と腹腔鏡下手術3.1日と本邦の現状と著しく異なっていたため,判断根拠として採用しないこととした。

一方,害については,合併症が早期(リークの有無)でRR 0.86[0.25-3.02],晩期(ヘルニア)でRR 0.75[0.21-

2.72]であった。また,腹腔鏡下手術では全身麻酔が必要となるが,その害はほとんどないと推察され,望ましくな

い効果はわずかと考えた。

患者の意向に対しては,本CQにおいては,開腹手術であれば局所麻酔・脊椎麻酔下で行えるのに対し,腹腔鏡下

手術では全身麻酔が必要となるため麻酔のリスクも高まるが,腹腔鏡下手術であれば疼痛が少ないと考えられてい

Certainty assessment 患者数 効果Certainty 重要性

研究数 研究デザイン

バイアスのリスク 非一貫性 非直接性 不精確 その他

の検討腹腔鏡下

手術 開腹手術 相対(95% CI)

絶対(95% CI)

カテーテルサバイバル(多いと腹腔鏡下手術が優位に良い)(移植と死亡も離脱に含める)

6 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない b 深刻c なし 211/263 (80.2%)

198/263 (75.3%)

RR 1.07(0.98-1.16)

53人増加1,000人当たり(15人減少~120 人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

カテーテルサバイバル(多いと腹腔鏡下手術が優位に良い)(移植と死亡は離脱に含めない)

5 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない b 深刻c なし 172/211 (81.5%)

164/213 (77.0%)

RR 1.02(0.92-1.13)

15人増加 1,000人当たり(62 人減少~100人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

合併症(イベント発生):早期合併症(リーク)<他のアウトカムも考えられるが,挿入部のリークを代表とした>

7 ランダム化試験

深刻 a 深刻 d 深刻でない 深刻 c なし 14/288 (4.9%)

23/283 (8.1%)

RR 0.86(0.25-3.02)

11人減少1,000人当たり(61人減少~164人増加)

⨁◯◯◯非常に低

重大

合併症(イベント発生):晩期合併症(ヘルニア)<晩期合併症として,ヘルニアが重要と考えた,他の感染症は別のアウトカム>

4 ランダム化試験

非常に深刻 e 深刻でない 深刻でない 深刻 c なし 4/196(2.0%)

6/195(3.1%)

RR 0.75(0.21-2.72)

8人減少1,000人当たり(24人減少~ 53人増加)

⨁◯◯◯非常に低

重大

合併症:PDカテーテル関連感染症(出口部トンネル感染)<腹膜炎は,他の要因が多いため,意思決定に有用でないと考え,出口部トンネル感染を代表とした>

4 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 c なし 10/129 (7.8%)

11/133 (8.3%)

RR 0.99(0.43-2.29)

1人減少1,000人当たり(47人減少~ 107 人増加)

⨁⨁◯◯低

重大

再手術を有する異常

1 ランダム化試験

深刻でない 深刻でない 深刻でない 深刻c なし 8/46(17.4%)

8/44 (18.2%)

RR 0.96(0.39-2.33)

7人減少1,000人当たり(111人減少~ 242 人増加)

⨁⨁⨁◯中

重大

QOL(疼痛1) - 疼痛を訴えた人数(参考:注1)

2 ランダム化試験

深刻 f 深刻でない 深刻 g 深刻 h なし 29/62 (46.8%)

29/65 (44.6%)

RR 1.05(0.80-1.39)

22 人増加1,000人当たり(89人減少~174人増加)

QOL(疼痛2) - 疼痛スコアの平均

1 ランダム化試験

深刻 f 深刻でない 深刻 g 深刻 i なし 21 24 - MD 1 減少(2.24 減少~ 0.24 増加)

⨁◯◯◯非常に低

重大

排液不良を伴うカテーテル位置異常*全体では統計学的有意差があったが,固定の有無でのサブグループ解析では,どちらの群も有意差が存在しなかった。

6 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻でない なし 12/267 (4.5%)

31/259 (12.0%)

RR 0.42(0.18-0.96)

69人減少1,000人当たり(98人減少~ 5人減少)

⨁⨁⨁◯中

重大

CI: 信頼区間; RR: リスク比; MD: 平均差a. ランダム化の記載がないので,1段階下げた b. 本邦と介入の方法が異なる点とアウトカム測定の問題のため,非直接性を下げるかの検討の結果,バイアスのリスクと合わせて1段階下げることとした c. 2%の違いで介入選択が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたぐと判断 d. I2 (研究間のばらつき度)が52%のため非一貫性を1段階下げた e. ランダム化の記載がまったくなかったため,2段階下げた f. 不明が多い g. QOLの代替のアウトカムのため h. 10%の違いで介入選択が異なると考え,95%信頼区間が閾値をまたぐと判断 i. 疼痛スコアの詳細が不明であるが,グレードは1段階下げるとした j. 研究間の入院期間が10日以上の差があり,退院基準が不明 k. 3日の違いで介入選択が異なると考えて,95%信頼区間が閾値をまたいでいないが,症例数が少ない注1:イベントが疼痛を訴えた人数のため,軽度の疼痛でもカウントされるため,評価の方法に問題があるので,参考とのみ掲載した

表3-4 エビデンスプロファイル

はじめに

はじめに

125

Part2

る。しかし,開腹手術であっても侵襲の少ない手術のため,このような腹腔鏡下手術のメリットは少ないと診療ガイ

ドラインパネル会議で意見があった。

コストに関しては,わが国においては現時点で腹膜透析カテーテル挿入術における腹腔鏡下手術は保険適用外であ

り,腹腔鏡を用いた場合には各施設での費用負担となっているのが現状である。

以上より診療ガイドラインパネル会議において,腹腔鏡下手術の利益と害のバランスが不確実であり,各施設での

状況が著しく異なる本邦の現時点の状況下で,腹腔鏡下手術を積極的に行うか行わないかを推奨することは現場の混

乱を増加させると判断し,推奨なしとした。

⿎⿎3-5.�CQ5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は,経静脈投与か,腹腔内投与のどちらがよいか?

3-5-1.推奨

腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は腹腔内投与を弱く推奨する(GRADE2C)。

注意:現在,腹腔内投与については保険適用がない。

3-5-2.CQについて

今回のCQは,(1)抗菌薬投与経路についての,腹腔内投与と経静脈投与との優劣,(2)抗菌薬を腹腔内投与する場合

の,持続的投与と間欠的投与との優劣の2つを明らかにすることがその主眼である。

しかしながら後述の手順に従い施行した文献検索の結果として解析の対象となった2報のRCTは,そのいずれも

が(2)に関する回答を提示し得ない内容であった。具体的には,1報の論文10)は両群ともバンコマイシン(VCM)+ト

ブラマイシン(TOB)の2剤を用いた,経腹膜連続投与(VCM 20 mg/L + TOB 4 mg/LをすべてのPDバッグに混注)

と連日投与(VCM 0.5 or 1.0 g + TOB 1.0 mg/kgBWを1日1回静注)との比較であった。そしてもう1報の論文11)

はVCMの初期投与(loading dose; 1 g/body)を経腹膜的に行うか経静脈的に行うかを比較したものであり,その後

の治療はいずれの群でもVCMの経腹膜投与(25 mg/L)が行われていた。以上より,本CQ5のうち(2)への回答は不

可能と判断した。

上記2報のうち,後者の論文11)では初期対応以外は同一のVCM経腹膜投与レジメンであることより,厳密にはそ

の対照群を「経静脈投与群」とは呼べないとも考えられるが,ここでは対象患者数を十分増加させることの有益性が

より大きいと判断し,後者の論文も組み入れ,本CQ5のうち(1)に回答することを試みた。

3-5-3.判断根拠

PD離脱に関する統計学的有意差がないものの,130人減少/1,000人(430人減少~170増加)であり腹腔内投与を

主体とした治療のほうが優れていることと,害の報告も一般的な静脈内への抗菌薬の投与より多いとする報告がない

ことより,介入が優位と判断された。

ただし,経腹膜投与に関する保険適用の問題,それにVCM以外の抗菌薬について有益性が明らかにされていない

状況を勘案すると,その推奨は現時点においては条件付きとしておくのが妥当と考えられた。また,現時点で,

ISPDのガイドラインに従って,現在の抗菌薬の投与経路としてすでに多くの施設で経腹膜投与を行っているため,

保険適用がないため推奨しないではなく,エビデンスに従って弱く推奨とした。もちろん,この推奨には,静脈内投

与を否定するものではない。将来的な在宅PDを想定した場合に,経腹膜投与が保険適用になるような働きかけが必

要であるという意見が診療ガイドラインパネル会議で出た。

P a r t 2

126

⿎⿎3-6.�CQ6:糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか?

3-6-1.推奨

推奨なし

3-6-2.CQについて 

糖尿病腎不全患者におけるHDとPDの優位性を検討した研究は多いが,ほとんどが観察研究であり,さまざまな結

果が導き出されている。唯一のRCTはあるが12),糖尿病と非糖尿病が混在している集団を対象としており,糖尿病患

者のみでの解析はない。よって,糖尿病患者のみでのSRを観察研究で行うこととなった。

3-6-3.判断根拠

観察研究のみしかなく,リスクオブバイアスも交絡因子の調整が不十分で深刻であったので,非常に低となった。

今回検討した論文では血液透析のほうで全死亡率が低いとするものが多く,少なくとも,腹膜透析を積極的に支持す

るエビデンスではないとの意見もあった。その他,尿量,残存腎機能,血糖コントロールについて比較した論文はな

かった。今回検討したすべての論文において治療条件の詳細(透析液の種類など)や研究対象(年齢など)が不明であっ

た(特に血液透析の治療法が多岐にわたっていた)。このため最終的に推奨の判断はできないと診療ガイドラインパネ

ル会議で判定された。

表3-5 エビデンスプロファイル(静脈内投与に対する腹腔内投与の効果)

CI: 信頼区間; RR: リスク比a. ランダム化,隠蔽化も含めて不明が多い b. 臨床の閾値をまたぐ c. 血管漏洩の合併症であり,注入時の痛みとは違う d. 臨床の閾値をまたぎ症例数も少ないe. バンコマイシンの血管漏洩という特殊な症例が1例のみであるため,参考程度とした

Certainty assessment 患者数 効果Certainty 重要性

研究数 研究デザイン

バイアスのリスク 非一貫性 非直接性 不精確 その他

の検討 静脈内投与 腹腔内投与 相対(95% CI)

絶対(95% CI)

PD離脱(Primary treatment failure)

2 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 13/46 (28.3%)

4/49(8.2%)

推定不可 130人減少 1,000人当たり(430人減少~170人増加)

(リスク差で計算)

⨁⨁◯◯低

重大

合併症(薬剤の有害事象・安全性)

2 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 深刻でない 深刻 b なし 4/47(8.5%)

0/49(0.0%)

RR 5.13(0.63-41.59)

増減なし 1,000人当たり ⨁⨁◯◯低

重大

合併症(Infusion pain,バンコマイシンの血管漏洩)e 参考

1 ランダム化試験

深刻 a 深刻でない 非常に深刻 c

非常に深刻 d

なし 1/10(10.0%)

0/10 (0.0%)

RR 3.00(0.14-65.90)

増減なし 1,000人当たり

腹膜炎の治癒 - 未報告

- - - - - - - - - - - - 重大

腹膜炎の治癒までの期間 - 未報告

- - - - - - - - - - - - 重大

腹膜炎の再発 - 未報告

- - - - - - - - - - - - 重大

Certainty assessment効果 Certainty 重要性

研究数 研究デザイン バイアスのリスク 非一貫性 非直接性 不精確 その他の

検討

死亡

16 観察研究 深刻 深刻 深刻でない 深刻でない なし 血液透析開始が良い:9 報告腹膜透析開始が良い:2報告

⨁◯◯◯非常に低

重大

備考:・17論文よりバイアスのリスクが大きくて,1論文除外が妥当であった・リスクオブバイアスは交絡のコントロールが行われてなく,深刻・韓国,豪州,台湾の共通のデータベースを用いた研究において,PDとHDの方法で非直接性も問題があった・尿量・残腎機能と血糖コントロールのアウトカム:研究なし

表3-6 エビデンスプロファイル

はじめに

はじめに

127

Part2

参考文献

1)新田孝作,政金生人,友雅司,他.日本透析医学会診療ガイドライン(CPG)作成指針.透析会誌2016;49:453-62. 2)相原守夫.診療ガイドラインのためのGRADEシステム第2版.弘前:凸版メディア,2015. 3)NationalResearchCouncil.ClinicalPracticeGuidelinesWeCanTrust.Washington,DC:TheNationalAcademies

Press,2011. 4)GRADE[Internet].TheGRADEworkinggroup[cited2017Apr24].

Availablefrom:http://www.gradeworkinggroup.org/ 5)HigginsJPT,GreenS(editors).CochraneHandbookforSystematicReviewsofInterventionsVersion5.1.0[updated

March2011].TheCochraneCollaboration,2011. 6)福井次矢,山口直人監修.Minds診療ガイドライン作成の手引き2014.東京:医学書院.2014.

https://minds.jcqhc.or.jp/s/doc_tool_manual 7)小島原典子,中山健夫,森實敏夫,山口直人,吉田雅博編集.Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017.公益財団法人日本医

療機能評価機構EBM医療情報部,2017.https://minds.jcqhc.or.jp/s/doc_tool_manual 8)七松東,桂川史子,川井沙記,他.イコデキストリン透析液によるアレルギー性の肝障害,腎障害が疑われた腹膜透析患者の1例.透

析会誌2017;50:309-13. 9)新田孝作,政金生人,花房規男,他.わが国の慢性透析療法の現況(2017年12月31日現在).透析会誌2018;51:699-766.10)Bennett-JonesD,PennyVW,TaubeMD,ChisholmGN,CameronOJS,WilliamsDG.Acomparisonofintraperitoneal

andintravenous/oralantibioticsinCAPDperitonitis.PertDialInt1987;7:31-3.11)BailieGR,MortonR,GanguliL,KeaneyM,WaldekS.Intravenousorintraperitonealvancomycinforthetreatmentof

continuousambulatoryperitonealdialysisassociatedgram-positiveperinonitis?Nephron1987;46:316-8.12)KorevaarJC,FeithGW,DekkerFW,etal.Effectofstartingwithhemodialysiscomparedwithperitonealdialysis in

patientsnewondialysistreatment:arandomizedcontrolledtrial.KidneyInt2003;64:2222-8.

P a r t 2

128

追記

今回のガイドラインにつき,AGREE-Ⅱの外部評価をいただきました。まだまだ,ガイドラインの形として不十分

であることがわかりました。ご指摘いただきました点は,以下の通りでした。次回は,このような点に注意して改訂

作業を行っていく予定です。

1.適用の助言/ツール:どのように推奨を適用するかについての助言・ツールが提供されていない。

2.資金提供者:ガイドラインの内容への資金提供者(組織COI)の影響に関する記載が不十分。

3. モニタリングや監査のための基準:ガイドラインの推奨がどれくらい適用されているか測定するためのモニタリ

ングや監査の基準が提供されていない。

4.改訂手続き:ガイドラインの改訂手続きが記載されていない。

5. 外部評価:外部評価の目的や意図,方法,外部評価の結果をどのように反映させるかについて記載されていな

い。

6.COI:学術的COIについて記載がない。

腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループ

委員長  伊藤恭彦

副委員長 竜崎崇和

Part 2付録1.診療ガイドラインについて 2.資金調達3.クリニカルクエスチョン(CQ)・システマティックレビュー(SR)について 3 -1.Analytic framework 3 -2.クリニカルクエスチョン(CQ) 3 -3.CQとSRの関係4.アウトカムについて 4 -1.アウトカム一覧 4 -2.各アウトカムの詳細な定義5.検索式と解析方法 5 -1.疾患(腹膜透析)について 5 -2.研究デザインについて 5 -3.データベース 5 -4. データ抽出と分析 5 -5.バイアスリスク 5 - 6.治療効果の評価6.EtD frameworks(EtD表)と基になるシステマティックレビュー 6 -1. CQ1:腹膜透析患者に,レニン・アンジオテンシン系阻害薬

(RAS阻害薬)(ACEI, ARB)の内服は有用か? <SR1: 腹膜透析患者における,SR1.1. ACEIまたはARBと

他の薬剤の比較とSR1.2 . ACEIとARBの比較> 6 -2. CQ2:腹膜透析患者に,イコデキストリン透析液使用とグル

コース(ブドウ糖)透析液単独使用のどちらが有用か? <SR2:腹膜透析患者に対する,イコデキストリン透析液使用

とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用の比較>

6 -3. CQ3:腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗生剤軟膏塗布なしのどれがよいか?

<SR3:腹膜透析患者の出口部への塗布としてSR3.1. ムピロシン軟膏と対照の比較,SR3.2 . ムピロシン軟膏とゲンタマイシン軟膏の比較>

6 -4. CQ4:腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入のどちらが有用か?

<SR4:腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入の比較>

6 -5. CQ5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は,経静脈投与か,腹腔内投与のどちらがよいか?

<SR5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者に対して,SR5.1. 抗菌薬の経静脈投与と抗菌薬の持続的腹腔内投与の比較,SR5.2.抗菌薬の経静脈投与と抗菌薬の間欠的腹腔内投与の比較>

6 - 6. CQ6:糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか?

<SR6:糖尿病性腎症の患者への透析療法に対して,腹膜透析開始と血液透析開始の比較>

6 -7. CQ7(取り下げ:経過報告):腹膜炎を併発した腹膜透析患者において, 初回腹腔洗浄を実施することは,腹膜炎治療において有効か?

付録

付録

131

Part2

診療ガイドラインについて本診療ガイドラインは,日本透析医学会腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループが中心となって作成された

ものである。ワーキングメンバーやシステマティックレビュー(SR)委員から出された臨床重要課題からクリニカル

クエスチョン(CQ)が導き出された。それぞれのCQごとにSRが行われ,各班からあがってきた結果をもとにパネル

会議メンバーにて推奨度とその文言が検討され今回の発刊に至った。

資金調達資金:文献調査,会議費,交通費などは日本透析医学会からの資金援助によって施行・支出された。

クリニカルクエスチョン(CQ)・システマティックレビュー(SR)について

⿎⿎3-1.Analytic framework

⿎⿎3-2.クリニカルクエスチョン(CQ)当初は,CQ7を予定していたが,SRでの系統的検索の結果,CQ7に関連する研究は対照を欠く症例報告のみであ

ることがわかった。そのため,推奨を作成するための十分な検討を行うことが困難と考えられ,CQを取り下げた。

また,観察研究によるSRがあるもののRCTが存在せずに一部変更したことに関しては,各CQの項に記載した。以

下,本診療ガイドラインでは,連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術をカテーテル挿入と略称を用いる。

1

2

3

透析導入患者 透析方法

血液透析

リスク:糖尿病非糖尿病

腹膜透析に関する手技など

尿量など間接

アウトカム

死亡心血管イベント

テクニカルサバイバル

腹膜透析

図3-1

表3-1 クリニカルクエスチョン(CQ)一覧

CQ1:腹膜透析患者に,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)(ACEI, ARB)の内服は有用か?

CQ2:腹膜透析患者に,イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用のどちらが有用か?

CQ3:腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗生剤軟膏塗布なしのどれがよいか?

CQ4: 腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入のどちらが有用か?

CQ5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は,経静脈投与か,腹腔内投与のどちらがよいか?

CQ6:糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか?

P a r t 2

132

⿎⿎3-3.CQとSRの関係 CQ1:腹膜透析患者に,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)(ACEI,ARB)の内服は有用か?

   SR1.1. ACEIまたはARBと他の薬剤の比較

   SR1.2. ACEIとARBの比較

CQ2:腹膜透析患者に,イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用のどちらが有用か?

   SR2. イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用の比較

CQ3: 腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗生剤軟膏塗布なしのどれが

よいか?

   SR3.1. ムピロシン軟膏と対照の比較

   SR3.2. ムピロシン軟膏とゲンタマイシン軟膏の比較

CQ4: 腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入の

どちらが有用か?

   SR4. 開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入の比較

CQ5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は,経静脈投与か,腹腔内投与のどちらがよいか?

   SR5.1. 抗菌薬の経静脈投与と抗菌薬の持続的腹腔内投与の比較

   SR5.2. 抗菌薬の経静脈投与と抗菌薬の間欠的腹腔内投与の比較

CQ6:糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか?

   SR6. 腹膜透析開始と血液透析開始の比較

腹膜透析診療ガイドライン臨床の疑問一覧

CQ3:出口部の感染の予防

CQ6:糖尿病性腎症患者への適応

CQ1:レニン・アンジオテンシン系阻害薬の腹膜透析へ与える効果

CQ5:腹膜炎治療への抗菌薬の投与経路の違い

CQ4:カテーテルを挿入する手技の違い

CQ2:透析液の違いでの効果

図3-2 クリニカルクエスチョン(CQ)の概念図

付録

付録

133

Part2

アウトカムについて⿎⿎4 -1.アウトカム一覧

4

表4-1 アウトカムとCQの関係

CQ1 CQ2 CQ3 CQ4 CQ5 CQ6全生存率 8 9 9テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱) 7.5 9 8尿量・残腎機能 8 8 8合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる) 7 7 7腹膜機能(クレアチニン値など) 8 6 耐糖能異常発症率 7腹膜除水量(体液管理困難のエピソード) 9腹膜炎(CQ3) 9出口部トンネル感染 8カテーテルサバイバル(PDカテーテルの開存率) 9合併症(CQ4) 8QOL(術後疼痛を含む) 7.5再手術を要するPDカテーテルの機能異常(位置異常,注排液異常) 8病院滞在期間 7PD離脱 9合併症(薬剤の有害事象・安全性)(CQ5) 6腹膜炎の治癒 9腹膜炎の治癒までの期間 8腹膜炎の再発 8合併症(心血管系・感染症)(CQ6) 8血糖コントロール 7心血管イベント 8

備考:CQ1:テクニカルサバイバルとして,腹膜炎の有無を採用した(非直接性を1段階下げることとした)CQ2:データ抽出のための定義は,以下のSR2の章の6-2-3-3.その他資料に記載    合併症は,合併症(腹膜炎)と合併症(発疹)に分類CQ3:腹膜炎:このCQでは,重要なので,合併症とは分けて考えるCQ4:合併症:以下の3つのサブグループを考えるため,他の合併症とは分けて定義した PDカテーテル挿入後の早期合併症(出血,腸管損傷,液漏れ) PDカテーテル挿入後の晩期合併症(ヘルニア) PDカテーテル関連感染症(術後 2週間以内の出口部感染・腹膜炎) カテーテルサバイバル(PDカテーテルの開存率):死亡や移植,計画的な血液透析への移行を含めたカテーテルサバイバルと死亡や移植,計画的な血

液透析への移行を除いたカテーテルサバイバルに分けた 出口部トンネル感染は,出口部感染とトンネル感染を合わせたものであるCQ5:合併症:薬剤の有害事象と安全性が重大なため,別の定義としたCQ6:合併症:心血管系・感染症をサブグループで分けることもある*合併症に関しては,作成過程で,合併症別に分けたほうがわかりやすいと判断した場合は,分けて定義することとした。* アウトカム間の「競合リスク」を考慮して,「重複カウント」にならないように,診療ガイドラインパネル会議での説明では注意を払った。たとえば,カテーテ

ル挿入によって,[合併症]が発生し,[疼痛]が持続し,[カテーテル機能異常]が起こり,結局[入院]が長引いた,のように考えると,何度も同じ理由で,名目を変えて同じアウトカムを評価することになる。

P a r t 2

134

⿎⿎4 -2. 各アウトカムの詳細な定義(定義が研究によって異なる場合は,厳密に従ってない場合もある)

参考文献:

・合併症などの用語. http://pj.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-b/gappeisyo.html 2017年12月31日アクセス

・ Rong Xu 2012: Rong Xu, Min Zhuo, Zhikai Yang, and Jie Dong. Experiences with Assisted Peritoneal Dialysis in China. Perit Dial Int 2012; 32(1): 94-101. http://europepmc.org/articles/pmc3525378

・ CANUSA 1996: Canada-USA(CANUSA) Peritoneal Dialysis Study Group. Adequacy of dialysis and nutrition in continuous peritoneal dialysis: association with clinical outcomes. J Am Soc Nephrol 1996 Feb; 7(2): 198-207. http://jasn.asnjournals.org/content/7/2/198.long

・ Janssen IM 2015: Janssen IM, Gerhardus A, von Gersdorff GD, Baldamus CA, Schaller M, Barth C, Scheibler F. Preferences of patients undergoing hemodialysis? results from a questionnaire-based study with 4,518 patients. Patient Prefer Adherence. 2015Jun26; 9: 847-55. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4492657/

表4-2 アウトカムの定義一覧

アウトカム 定義全生存率 Overall survival:全生存率/ 死亡率

QOLQOL/Health-related quality of life: 健康関連QOL:Improvement of health-related quality of life/Satisfaction: 満足度:Satisfaction with care at the clinic

PD継続期間

Technique survival(number of patients remaining on PD at study completion):Rong Xu 2012の「Technique survival was defined as inadequate dialysis, ultrafiltration insufficiency, exit-site or tunnel infection, conversion to hemodialysis because of peritonitis, and the presence of any mechanical problem; patient and peritonitis-free survival corresponded to death as the outcome event and first episode of peritonitis respectively.」を参照した。

PD離脱

Technique failure/technical: CANUSA 1996の「Technique failure was defined as transfer to hemodialysis or to conventional intermittent peritoneal dialysis. Death, transplantation, recovery of renal function, and loss to follow-up were censored observations for the technique survival analysis.」を参照した。

残腎機能 Loss of residual renal function: 残腎機能消失 /deterioration of residual renal function

PD関連疾患

Peritonitis rate(episodes/y, episode/total patient-months on PD) and incidence(number of events/follow-up period)腹膜炎・refractory exit site infection: 難治性出口部感染などHD単独では生じないがPDで生じる疾患。PD関連疾患によって,Technique failureとなれば,Technique failureのアウトカムと同じであるが,治療によって治癒しPDの継続があるため,別のアウトカムとしている。

メジャー合併症Major morbid events(AMI, stroke, amputation, loss of vision, 電解質異常(高カリウム血症など重篤になりそうなもの), 赤芽球癆発症率など):メジャーな病的イベント

マイナー合併症Minor morbid events(hypoglycemia, delayed wound healing, infection, visual disturbances, painなど): マイナーな病的イベント

安全性Safety: Safety of treatment (eg, the functioning of hemodialysis machine or other instruments, sterility of dialysis solution).

病院滞在期間Hospital stays: Reduction of hospital stays/Hospital admission.病院滞在期間は,HDと比較してPDの最も大きな利点が,病院への通院が減ることのため,病院滞在期間の延長は,PDの利点の消失となる。

カテーテル挿入合併症

早期合併症 【 穿孔(腸管および膀胱),出血,術後感染症(腹膜炎,出口部およびトンネル感染),液漏れ】 ・晩期合併症 【排液不良,カテーテル位置異常,閉塞,ヘルニア,再挿入や抜去】

腹膜炎の治癒Complete cure of peritonitis (clinical or microbiological improvement or both with no subsequent relapse)

腹膜炎の再発Peritonitis relapse (reoccurrence of peritonitis due to the same organism with the same antibiotic sensitivities within 28 days of completing treatment)

その他再手術率・抗菌薬関連有害事象・耐糖能異常発症率・電解質異常(低ナトリウム血症)ならびに高アミラーゼ血症など

付録

付録

135

Part2

検索式と解析方法詳細は,各SRの論文に従うため,ここでは,代表的なPubMedでの検索式のみの一部を記載した。

⿎⿎5-1.疾患(腹膜透析)について("Peritoneal Dialysis"[MH]) OR (periton*[TW] AND dialy*[TW]) OR (CAPD[TIAB] OR CCPD[TIAB] OR

APD[TIAB] OR TPD[TIAB] OR (PD[TIAB] AND (periton*[TW] OR dialy*[TW]))

⿎⿎5-2.研究デザインについて5-2-1.既存のシステマティックレビュー(SR)・既存の診療ガイドライン(CPG)

("Meta-Analysis"[PT] or "meta-analysis"[TIAB]) OR ("Cochrane Database Syst Rev"[TA] or "systematic

review"[TIAB]) OR ("Practice Guideline"[PT] or "Practice Guidelines as Topic"[MH] or (guideline*[TIAB] not

medline[SB]))

5-2-2.ランダム化比較試験

コクランハンドブックより,Box 6.4.a: Cochrane Highly Sensitive Search Strategy for identifying randomized

trials in MEDLINE: sensitivity-maximizing version (2008 revision); PubMed format,または,Box 6.4.b: Cochrane

Highly Sensitive Search Strategy for identifying randomized trials in MEDLINE: sensitivity- and precision-

maximizing version (2008 revision); PubMed formatを使用した。

例:((randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab]

OR drug therapy[sh] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab]) NOT (animals[mh] NOT humans[mh]))

⿎⿎5-3.データベース基本的に2つ以上のデータベースから検索を行った。Medline(PubMedによる)の検索は,必須とした。その他デ

ータベースとしては,Embase,コクランライブラリー(CENTRAL),医学中央雑誌(医中誌)とした。検索は,日本

医学図書館協会の診療ガイドライン作成支援サービス(文献検索)受託事業へ委託して専門の司書が行った。

⿎⿎5-4.データ抽出と分析 5-4-1.研究の選択

既存のSRおよびCPGに関して,二人の独立したレビュアーがタイトルと抄録を用いてスクリーニングを行った。

スクリーニングで残った文献についてフルテキストを用いて評価し,質の高いレビューを行っているものがあれば選

択した。選択したレビューの検索式と検索日を確認し,検索日以降については再度検索式を用いて文献検索を行っ

た。この検索結果に対しても,二人の独立したレビュアーがタイトルと抄録を用いてスクリーニングを行った。スク

リーニングに残った文献と,選択したレビューに含まれるRCTを合わせたものについてフルテキストを用いて評価

し,最終的な組み入れ研究を決定した。

5-4-2.データ抽出

組み入れ研究のデータ抽出は二人のレビュアーが共通のフォームを用いて独立して行った。二人のレビュアー間で

の不一致については,議論して解決したが,解決に至らない場合は三人目のレビュアーと議論した。

⿎⿎5-5.バイアスリスクコクランハンドブック(引用必要)のrisk of bias toolを用いて,二人のレビュアーが独立して行った。二人のレビ

ュアー間での不一致については,議論して解決したが,解決に至らない場合は三人目のレビュアーと議論した。ドメ

5

P a r t 2

136

インについては,高リスク,低リスク,不明の3つで評価した。

⿎⿎5-6.治療効果の評価2値アウトカムについては相対リスクと95%信頼区間を,連続変数のアウトカムについてはstandardized mean

difference(SMD)またはmean difference(MD)と95%信頼区間を以下の連続変数についてメタアナリシスした。有

害事象などイベントゼロの研究が多くある場合はリスク差を統合した。メタアナリシスに関しては,Review

Manager software (RevMan 5.3)([Computer program]. version 5.3. Copenhagen: The Nordic Cochrane

Centre, The Cochrane Collaboration, 2014)を用いた。臨床的異質性があることが想定されたためrandom-effects

modelを用いてメタアナリシスを実施した。

Evidence-to-decision(EtD)frameworks(EtD表)*1 と基になる システマティックレビュー

⿎⿎6-1. CQ1:腹膜透析患者に,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)(ACEI, ARB)の内服は有用か? <SR1:腹膜透析患者における,SR1.1. ACEIまたはARBと他の薬剤の比較とSR1.2. ACEIとARBの比較>

6-1-1.文献検索 

「Peritoneal Dialysis」,「Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors」,「Angiotensin Ⅱ Type 1 Receptor

Blockers」をキーワードとしてPubMed(2017年4月10日まで),Cochrane CENTRAL(2017年4月10日まで)およ

び医中誌(2017年4月10日まで)の既存のSRとCPGを検索したところ,1988年から2017年で12件が同定された。

その中で,今回の選択基準に一致したSRが2件であった(Akbari 2009 [Perit Dial Int],Zhang 2014[Cochrane

Database Syst Rev])。

Akbari 2009で 採 用 さ れ て い るRCTはZhang 2014で も 採 用 さ れ て い た。Zhang 2014のSRに はLi 2003,

Phakdeekitcharoen 2004,Suzuki 2004,Wang 2007,Zhong 2007,Reyes-Marin 2012の6論文が採用されて

いた。1988年から2017年までのRCTをSR委員会で新たに検索したところ,新たにSuzuki 2003,Shigenaga

2009, Atabak 2013の3件のRCTが同定された。Zhang 2014のSRでは,残腎機能に関するデータの記載がないと

のことでSuzuki 2003,Shigenaga 2009が除外されていたが,今回のCQに対するアウトカムの記載があり採用し

た。Atabak 2013は試験期間が1週間と短期間であり除外した。

以 上 の 理 由 で,Li 2003,Phakdeekitcharoen 2004,Suzuki 2004,Wang 2007,Zhong 2007,Reyes-Marin

2012,Suzuki 2003,Shigenaga 2009の8論文をSRとして採用とした。そして,SR1.1. ACEIまたはARBと他の薬

剤 の 比 較 が,Li 2003,Suzuki 2004,Wang 2007,Zhong 2007,Suzuki 2003,Shigenaga 2009の6論 文 で,

SR1.2. ACEIとARBの比較が,Phakdeekitcharoen 2004,Reyes-Marin 2012の2論文となった。

6

*1 EtD表の項目について:evidence-to-decision frameworkには,異なる視点(たとえば,個人,集団)により,異なるタイプの推奨や決断に合わせて異なるテンプレートが用意されているが,今回は個人のテンプレートを使用した。個人のテンプレートの場合,コストの項目がなくなるため,GRADEアプローチの推奨決定の4要因に従ってコストの項目を追加した。また,容認性,実行可能性に関しては,項目はないが,推奨文を考える場合の要因として議論を行っている。「価値観や意向:values and preferences」は,ある特定の意思決定およびそれによって起こりうるアウトカムに対して各個人が抱く一連の目標,期待,性質,および信念のことを指す。「必要資源量:Cost」は,患者の支払う,直接コストについて記載。ただし,社会問題になった薬剤については,社会的な観点からの情報も記載した。

付録

付録

137

Part2

研究デザイン 対象患者 介入 対照 アウトカム 対象患者の除外基準

文献 Li 2003・オープンラベルRCT・F/U期間 12か月

・3か月以上CAPD施行・中国 単一施設・残腎GFR≧2mL/min/1.73m²・男/女 38/22・6か 月 間,ARBまたはACEIの 服 用 歴がなし

・30名・平均年齢58.0±14.0歳・ラミプリル5mg/日

・30名・平均年齢59.1±9.8歳・ラミプリルを用いない

・ 残 腎GFR(3,6,9,12か月)・無 尿となるまでの期間,無尿・尿蛋白・全死亡・腹膜炎・入院期間・回数・CVDイベント

・ACEIまたはARBの使用歴・心血管合併症の既往・両側腎血管狭窄・ACEIに対するアレルギー,不耐症など

・介入 3名死亡,1名移植,5人内服中断・対象 2名死亡,1名移植,2名ACE開始

Phakdeekitcharoen 2004・オープンラベルクロスオーバー RCT・F/U期間 4か月

・3か 月 以 上CAPD施行・タイ 単一施設・残腎GFR <10mL/min/1.73m²・15~65歳・正常カリウム値・平均年齢44.8±10.1歳・男/女 14/7

グループ1• ACEI: エ ナラプリル10mg/日グループ 2• ARB: カンデサルタン8mg/日

グループ1• ARB: カンデサルタン8 mg/日グループ 2• ACEI: エ ナラプリル10mg/日

• 残腎機能• 血清電解質• 血圧• 有害事象• 適正透析評価• 高カリウム血症

・症候性虚血性心疾患・最近の脳梗塞・肝硬変・ACEIに対するアレルギ-,不耐症・1か月以内の腹膜炎など

2名継続意思なし2名 虚 血 性 心疾患2名食欲不振2名潰瘍と敗血症 た だし, どの薬剤服 用時に離 脱したか は不明

Reyes-Marín FA, 2012・ パ ラ レ ルRCT・F/U期間 12か月

・メキシコ 単一施設・初期腎代替療法としてAPDを1年 以 上受けている。・残腎GFR

2mL/min/1.73m²・男/女 36/24

グループ1 30名• ACEI: エ ナラプリル10mg/日・平均年齢 42.5±18.5歳

グループ 2 30名• ARB: ロサルタン50mg/日・平均年齢 49.2±19歳

•残 腎eGFR(3,6,9,12か月)•腹膜炎•無尿までの期間•心血管イベント•入院回数•有害事象など

・全身性感染症・腹膜炎・重症低栄養・ACEI, ARBへ の 非忍容性・心不全,心筋梗塞・6か月以 内の 脳 梗塞,悪性高血圧など

離脱なし

Suzuki 2003・ダブルブラインドRCT・F/U期間 12か月

・日本・左室肥大を伴うCAPD患者

・14 名・ARB バルサルタン40~80mg/日・平均年齢 56±3歳・透析歴 9.4±2.2月

・10名・プラセボ・平均年齢 57±2歳・透析歴 8.9±3.2月

・血圧・ 尿 量(3,6,12か月)・心胸比・心エコー所見・PWV

・糖尿病・心不全・6か月以内の心筋梗塞,脳血管イベント・妊娠・入院を要する疾患・腹膜炎・免疫疾患など

離脱なし

Suzuki 2004・オープンラベルRCT• F/U期間 24か月

・日本• CAPD導入3か月以上

・18名・ARB バルサルタン40~80mg/日・平均年齢 63.5±3.7歳・男/女 11/9 ?

・16名・ACEIまたはARBを用いない・平均年齢 63.5±3.3歳・男/女 11/7 ?

・尿量(6,9,12,18,24か月)・残腎機能:腎CCR・血圧・血清Cr・総CCR,総Kt/V・腹膜CCR・尿蛋白

・ACEIまたはARB治療を要する心不全・6か月以内の心筋梗塞,重症弁膜症・悪性高血圧・6か月以内の高血圧性脳症または脳血管イベント・ARBへ のアレルギー・不耐症など

・中 断, 離 脱なし・人 数と男女比 が 合 わ ない?介入:腹膜炎3例対象:腹膜炎4例

6-1-2.組み入れた論文

P a r t 2

138

Shigenaga 2009・オープンラベルRCT・F/U期間 6か月

・日本 単一施設• CAPD患者

ARBグループ1・15名・カンデサルタン 4mg/日~・平均年齢 52.9±2.8歳・透析歴 39±9月ARBグループ2・15名・バルサルタン 40mg/日~・平均年齢 53.1±3.0歳・透析歴 41±11月

・15名・ACEIまたはARBを用いない・平均年齢 53.3±3.1歳・透析歴 38±12月

・血圧(6か月)・脈圧・心拍数・体重・心胸比・尿量・CAPD排液量・心エコー所見・ANP,BNP・PWV

・APD・糖尿病性腎症・心不全・急性疾患・4か月以 内のACEIまたはARB使用歴

離脱なし

Zhong 2007・オープンラベルRCT• 研究期間 2004~2007年• F/U期間 12か月

・中国 単一施設・CAPD導入1か月以上• 平均年齢44.0±14.6歳• 男/女  31/17

・24 名・ARBイルベサルタン 300 mg/日

・20名・ACEIまたはARBを用いない

・残腎eGFR(3,6,9,12か月)・尿量(12か月)・血圧・総Kt/V・総CCr・カリウム

・両側腎動脈狭窄・悪性高血圧・高血圧脳症・心血管系合併症 ・腹膜炎・心不全・ACEIまたはARBの3か月以内使用歴 ・ARBへのアレルギーなど

・介入:1名受診しなくなる,1名移植・対象:1名受診しなくなる,1名HD移行

Wang 2005・オープンラベルRCT•研究期間 2004~2007年•F/U期間 28±13月

・CAPD開始3か月以内・中国 単一施設・残腎GFR

2mL/min/1.73m²•平均年齢 42(17~65) 歳• 男/女  22/12

・19名・ARB バルサルタン 80 mg/日

・13名・ACEIまたはARBを用いない

• 残腎機能• 尿量• 尿蛋白• 週あたり総Kt/V• 週あたり総CrCl

・両側腎動脈狭窄・悪性高血圧・高血圧性脳症または脳血管イベントの既往・重症心不全・腹膜炎・ACEIに対するアレルギ-,不耐症など

・介入:2名受診しなくなる・対 象:離 脱なし

付録

付録

139

Part2

6-1-3.論文からのデータ抽出・データの統合

6-1-3-1.リスクオブバイアス(RoB)表 

注意:SR1.1.とSR1.2.(Reyes-Marin 2012)を表示。

6-1-3-1-1.SR1.1.

(1) 全生存率(イベント死亡数)

(2) テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)(PD離脱)

(3) テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)(腹膜炎)

(4) 尿量・残腎機能(尿量)

(5) 尿量・残腎機能(無尿)

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Shigenaga 2009 Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear riskSuzuki 2003 Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear riskSuzuki 2004 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear riskWang 2005 Low risk Unclear risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear riskZhong 2007 Low risk High risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear risk

Li 2003 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Shigenaga 2009 Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear riskSuzuki 2003 Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear riskSuzuki 2004 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear riskWang 2005 Low risk Unclear risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear riskZhong 2007 Low risk High risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear risk

Li 2003 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Suzuki 2004 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

Li 2003 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Shigenaga 2009a Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear riskShigenaga 2009b Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

Suzuki 2004 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear riskSuzuki 2003 Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear riskWang 2005 Low risk Unclear risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear riskZhong 2007 Low risk High risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Suzuki 2004 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear riskWang 2005 Low risk Unclear risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear risk

Li 2003 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk

P a r t 2

140

(6) 尿量・残腎機能(GFR)

(7) 腹膜機能(クレアチニン値など)(総Kt/V)

(8) 合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(高カリウム血症)

(9) 合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(入院)

(10) その他CQ班が重要としたアウトカム(心血管イベント)

6-1-3-1-2.SR1.2.

(1) 全生存率(イベント死亡数)

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成 random

sequencegeneration

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告

selectiveoutcomereporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究内でのバイアスのリスクRisk of bias

withina study

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Li 2003 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

Suzuki 2004 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

Wang 2005 Low risk Unclear risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

Zhong 2007 Low risk High risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータ incomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Suzuki 2004 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

Wang 2005 Low risk Unclear risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear risk

Zhong 2007 Low risk High risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear risk

Li 2003 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Shigenaga 2009 Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Li 2003 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Suzuki 2004 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

Li 2003 Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Reyes-Marin 2012 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

付録

付録

141

Part2

(2) テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)(PD離脱)

(3) テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)(腹膜炎)

(4) 尿量・残腎機能(尿量)

(5) 尿量・残腎機能(無尿)

(6) 尿量・残腎機能(GFR)

(7) 腹膜機能(クレアチニン値など)(総Kt/V)

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Reyes-Marin 2012 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Reyes-Marin 2012 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Reyes-Marin 2012 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Reyes-Marin 2012 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成 random

sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告

selective outcome reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究内でのバイアスのリスクRisk of bias

withina study

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Reyes-Marin 2012 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Phakdeekitcharoen 2004 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear risk

P a r t 2

142

(8) 合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(高カリウム血症)

(9) 合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(入院)

(10) その他CQ班が重要としたアウトカム(心血管イベント)

6-1-3-2.フォレストプロット

6-1-3-2-1.SR1.1. ACEIまたはARBと他の薬剤の比較

(1) 全生存率(イベントは死亡数)

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Phakdeekitcharoen 2004 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk Unclear risk

Reyes-Marin 2012 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Reyes-Marin 2012 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割付の隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Reyes-Marin 2012 Unclear risk Low risk Unclear risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk

付録

付録

143

Part2

(2) テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)(PD離脱)

(3) テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)(腹膜炎)

P a r t 2

144

(4) 尿量・残腎機能(尿量)

(5) 尿量・残腎機能(無尿)

(6) 尿量・残腎機能(GFR)

付録

付録

145

Part2

(7) 腹膜機能(クレアチニン値など)(総Kt/V)

(8) 合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(高カリウム血症)

(9) 合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(入院)

P a r t 2

146

(10) 心血管イベント

6-1-3-2-2.SR1.2. ACEIとARBの比較

(1) 全生存率(イベント死亡数) 

(2) テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)(PD離脱)

(3) テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)(腹膜炎)

付録

付録

147

Part2

(4) 尿量・残腎機能(尿量) 

(5) 尿量・残腎機能(無尿)

(6) 尿量・残腎機能(GFR)

(7) 腹膜機能(クレアチニン値など)(総Kt/V)

(8) 合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(高カリウム血症)

(9) 合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる)(入院)

P a r t 2

148

(10) 心血管イベント

6-1-3-3.その他資料 

6-1-3-3-1.SR1.1. ACEIまたはARBと他の薬剤の比較

6-1-4.EtD表

SR1.1. ACEIまたはARBと他の薬剤の比較とSR1.2. ACEIとARBの比較をまとめたCQ1のためのEtD

エビデンスの確実性効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス 備考○非常に低●低○中○高○採用研究なし

重大なアウトカムが,いずれも「低」であるため(SR1.1.)(SR1.2.)

価値観(と意向)人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○重要な不確実性またはばらつきあり○重要な不確実性またはばらつきの可能性あり●重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし○重要な不確実性またはばらつきはなし

RAS阻害薬は一般的に多く使われている薬剤であるし,利益があるのなら,使うという人がほとんどだろう。よって,ばらつきは,おそらくない。尿量は,患者が水分摂取量が確保できる根拠になり,尿量が多いと満足度が高くなることから重大と判断した。

(SR1.1.)(SR1.2.)効果のバランス望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしくは比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○比較対照が優位○比較対照がおそらく優位○介入も比較対照もいずれも優位でない●おそらく介入が優位○介入が優位○さまざま○分からない

全死亡率は,イベントがなく,テクニカルサバイバルは推定不可であった(SR1.1., SR1.2.)。また,SR1.1.の心血管イベントも推定不可。SR1.2.の心血管イベントはRR1.33とACEI有利な結果であったが症例数30ずつの小規模研究のみの結果であり,発症数の差は1例のみで効果のバランスに差は生じていないと判断した。そのため,患者のQOLを反映する尿量が,臨床判断に最も重大なアウトカムと考えた。尿量は平均差142.5 mLの増加である。95%信頼区間の下限も25.42 mLの増加である。無尿の発症率も統計学的有意差はないものの介入によるRR0.70となることからおそらく介入が優位と判断した(SR1.1.)。ただし,尿量の比較ではACEIのデータを含まない。介入から観察期間終了後のGFRを残腎機能のアウトカムとした解析ではARB,ACEともにGFRが有意に維持されていた。平均差で 0.97 mL/min/1.73 m2の 増 加,95 % 信 頼 区 間 の下 限 は0.49 mL/min/1.73 m2 であった。以上の結果からARB,ACEIともに介

付録

付録

149

Part2

入が有意と判断した。SR1.2.では尿量,無尿発症率ともにARB 有意であったが,尿量の平均はともに500 mL以上あり臨床的に差があるとはいえない。無尿発症についても症例数1の差のみ。介入6~12か月後のGFRにも差は認められない。SR1.2.の結果としてACEIとARBに効果のバランスに差は生じていないと判断した。

必要資源量資源要件(コスト)はどの程度大きいですか?

判断 リサーチエビデンス 備考○大きなコスト○中等度のコスト●無視できるほどのコストや節減○中等度の節減○大きな節減○さまざま○分からない

本邦の社会保険治療において透析患者は,「特定疾病療養受療証」の提示によって,患者が直接支払うコストの差は,まったくない。

当該介入に反対する強い推奨

当該介入に反対する弱い推奨

当該介入または比較対照のいずれかについて

の条件付きの推奨当該介入の弱い推奨 当該介入の強い推奨

○ ○ ○ ● ○

参考文献

・Akbari A, Knoll G, Ferguson D, McCormick B, Davis A, Biyani M. Angiotensin-converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers in peritoneal dialysis: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.Perit Dial Int 2009; 29: 554-61.

・Atabak S, Taziki O, Argani H, Abolghasemi R. Effects of oral enalapril and verapamil on dialysis adequacy and solute clearance in chronic ambulatory peritoneal dialysis. Saudi J Kidney Dis Transplant 2013; 24: 1170-4.

・Li PK, Chow K, Wong TY, Leung C, Szeto CC. Effects of an angiotensin-converting enzyme inhibitor on residual renal function in patients receiving peritoneal dialysis. A randomized, controlled study. Ann Intern Med 2003; 139: 105-12.

・Phakdeekitcharoen B, Leelasa-nguan P. Effects of an ACE inhibitor or angiotensin receptor blocker on potassium in CAPD patients. Am J Kidney Dis 2004; 44: 738-46.

・Reyes-Marin FA, Calzada C, Ballesteros A, Amato D. Comparative study of enalapril vs. losartan on residual renal function preservation in automated peritoneal dialysis. A randomized controlled study. Rev Invest Clin 2012; 64: 315-21.

・Suzuki H, Nakamoto H, Okada H, Sugahara S, Kanno Y. A selective angiotensin receptor antagonist, valsartan, produced regression of left ventricular hypertrophy associated with a reduction of arterial stiffness. Adv Perit Dial 2003; 19: 59-66.

・Suzuki H, Kanno Y, Sugahara S, Okada H, Nakamoto H. Effects of an angiotensin Ⅱ receptor blocker, valsartan, on residual renal function in patients on CAPD. Am J Kidney Dis 2004; 43: 1056-64.

・Shigenaga A, Tamura K, Dejima T, et al. Effects of angiotensin Ⅱ type 1 receptor blocker on blood pressure variability and cardiovascular remodeling in hypertensive patients on chronic peritoneal dialysis. Nephron Clin Pract 2009; 112: c31-40.

・Zhong H, Sha CH, Sui TL, et al. Effects of irbesartan on residual renal function in peritoneal dialysis patients. Chinese J Nephrol 2007; 23: 413-6.

・Wang J, Xiao MY. Protective effects of valsartan on residual renal function in patients on CAPD. Chinese Journal of Blood Purification 2005; 4: 605-6.

⿎⿎6-2. CQ2:腹膜透析患者に,イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用のどちらが有用か? <SR2:腹膜透析患者に対する,イコデキストリン透析液使用とグルコース(ブドウ糖)透析液単独使用の比較>

6-2-1.文献検索

「peritoneal dialysis」,「dialysis solutions」をキーワードとしてPubMed(2017年4月10日まで)で既存のSRお

よびCPGを検索したところ,1968年から2017年で106件が同定された。そのうち対象(P)と介入(I)が一致したの

P a r t 2

150

が17件あり,さらに今回の選択基準に一致したSRが4件,CPGが1件の計5件であった(Cho 2014,Cho 2013,

He 2011, Qi 2011,Hall 2007)。この中で最新のSRがChoらによる2014年のCochrane Reviewであり,これを

既存のSRとして採用し,イコデキストリン透析液とブドウ糖透析液単独を比較したRCT 11件のうちクロスオー

バー試験(Bredie 2001)を除いた10件を抽出した。さらに,このChoらのSR以降にpublishされたRCTに関して,

すなわち2013年以降2017年4月までにPubMedで検索された260件のRCTからPとIが一致した11件を抽出した。

この11件のうち,PとIと比較対照(C)が一致した3論文を最終的に抽出し,コクランレビューで採用されたRCT 10

件と合わせて全部で13件のRCTを本CQの採用論文とした。よって,本CQで対象となったRCT論文一覧は,Lin

2009, Takatori 2011, Finkelstein 2005, Davies 2003, Konings 2003, Posthuma 1997, Paniagua 2008, MIDAS

study, Plum 2002, Wolfson 2002, Yoon 2014, Moraes 2015, Chang 2016である。

6-2-2.組み入れた論文

著者発表年 研究デザイン 対象患者 介入 対照 アウトカム コメント

Chang TI, et al2016

ランダム化比較試験(12か月間)

20歳以 上でPD施行中の100 例

7.5%イ コ デキストリン透析 液を 併用

(ICO)

グルコース透析 液の み を使用(Glu)

全生存率,テクニカルサバイバル,合併症(腹膜炎・発疹),腹膜機能,腹膜除水量

ICO群では1日尿量の減少速度が緩やかであったが(-32.02 vs.-11.88 mL/月),それ以外のアウトカムでは差がなかった。

de Moraes TP, et al2015

ランダム化比較試験(90日間)

DM以外が原疾 患 でAPD施 行 中 の 成人60 例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

全生存率,合併症(腹膜炎)腹膜除水量,体液管理困難のエピソード

ICO群では1日除水量が有意に多かった(800 vs. 586 mL/日)。

Yoon HE, et al2014

ランダム化比較試験(12か月間)

CAPD施行中の成人80 例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

全生存率,テクニカルサバイバル,残腎機 能( 尿 量・GFR/CrCl),合 併 症(腹膜炎),腹膜除水量

Glu群では12か月後の尿量減少が有意であったが(-363.0 mL/日),ICO群では有意な低下を認めなかった(-108.6 mL/日)。

Takatori Y, et al2011

ランダム化比較試験(24か月間)

DMによりCAPDまたはAPD施 行 中の成人41例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

全生存率,テクニカルサバイバル,残腎機 能( 尿 量・GFR/CrCl),腹 膜機能,腹膜除水量,体液管理困難のエピソード

24か月後のテクニカルサバイバルは,ICO群:71.4%,Glu群:41.5%で体液管理不良が主な要因であった。ICO群では1日除水量が有意に多かった

(947.6 vs. 588.7 mL/日)。

Lin A, et al2009

ランダム化比較 試 験(4週間)

18歳以 上でCA PD 施行中の201例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

全生存率,合併症(腹膜炎・発疹)

ICO群ではPETカテゴリーが上がるにつれて除水量が増加した(LA< HA< H)。合併症の発現頻度に差はみられなかった。

Paniagua R, et al2008

ランダム化比較試験(12か月間)

CAPD施行中の成人59 例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

合併症(腹膜炎) ICO群の除水量は観察期間を通してGlu群より一貫して高値で あ った( 平 均 で197 mL/日)。腹膜炎の発症頻度に差はみられなかった。

Finkelstein F, et al2005

ランダム化比較 試 験(2週間)

18歳以 上でAPD施 行 中の92例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

合併症(発疹) ICO群:47例 中11例 に 発 疹が 出 現した。 一方,Glu群:45 例の中で発疹がみられたものはなかった。

Konings J, et al2003

ランダム化比較 試 験(4か月間)

CAPDまたはAPD施 行 中の成人50 例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

全生存率,テクニカルサバイバル,残腎機能(尿量),腹膜除水量

ICO群では除水量が多い傾向で,ECWやLV massが 有 意に減少した。その他のアウトカムでは明らかな差はみられなかった。

Davies SJ, et al2003

ランダム化比較 試 験(6か月間)

18歳以 上でCAPDまたはAPD施 行 中の50 例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

全生存率,体液管理困難のエピソード

ICO群では除水量,体重および細胞外液量の指標がいずれも改善し,体液管理困難を呈したものはいなかった(Glu群では22例中1例)。

付録

付録

151

Part2

6-2-3.論文からのデータ抽出・データの統合

6-2-3-1.リスクオブバイアス(RoB)表

組み入れる論文を,コクランハンドブックのバイアスのリスクテーブルを用いて評価した。評価の項目は以下のと

おりとした(A:ランダム化,B:隠蔽化,C:参加者および研究者の盲検化,D:評価の盲検化,E:不完全なアウト

カム,F:選択的アウトカム報告,G:その他)。バイアスのリスクはアウトカム毎に高リスク,低リスク,不明の3

つで評価した。

(1) 全生存率(イベント死亡数)

(2) テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)

Wolfson M, et al2002

ランダム化比較試験(安全性:52 週 / 有効性:4週間)

安全性:CAPDまたはAPD施 行 中の成人287例有効性:CAPD施行中の成人175 例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

全生存率,合併症(腹膜炎・発疹)

安全性試験(52週)と有効性試験(4週)を合わせて,ICO群では265 例中44例に,Glu群では197例中14例に発 疹が出現した。

Plum J, et al2002

ランダム化比較試験(14週間)

APD施 行 中の成人39 例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

残腎機能(GFR/CrCl)

観察期間終了時の残腎機能(average of creatinine and urea clearance)に違いはみられ な か っ た(ICO群:2.9±3.3,Glu 群:1.7±2.4 mL/min/1.73m2)。

Posthuma N, et al1997

ランダム化比較試験(24か月間)

CCPD施行中の成人38例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

全生存率,残腎機能(尿量・GFR/CrCl),合 併 症( 腹 膜 炎 ),腹膜除水量

腹膜除水量は6か月時点まではICO群が有意に高値であったが,9か月目以降は両群間での有意差は認めなかった。

MIDAS Study Group1994

ランダム化比較 試 験(6か月間)

18歳以 上でCAPD施行中の209 例

7.5%イ コ デキストリン透析液を併用

グルコース透析 液の み を使用

全生存率,腹膜除水量,テクニカルサバイバル

ICOによる腹膜除水量は1.36%グルコース液と比較した場合,有意に増加したが,3.86%グルコース液と比較した場合には有意な差は認めなかった。その他のアウトカムでは明らかな差はみられなかった。

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

MIDAS Study 1994 Low risk Low risk Low risk Low risk High risk High risk Unclear riskPosthuma 1997 Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk High risk Low risk Unclear riskWolfson 2002 Low risk Low risk Low risk Low risk High risk High risk Unclear riskDavies 2003 Low risk Low risk Low risk Low risk High risk Low risk Unclear riskKonings 2003 Unclear risk Low risk Low risk Low risk High risk Low risk Unclear risk

Lin 2009a Low risk Low risk Low risk Low risk Low risk Low risk Unclear riskTakatori 2011 Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk High risk Low risk Unclear riskYoon 2014 Low risk Low risk Low risk Low risk Low risk Low risk Unclear risk

Moraes 2015 Low risk Low risk Low risk Low risk High risk Low risk Unclear riskChang 2016 Low risk Low risk Low risk Low risk High risk Low risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

MIDAS Study 1994 Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk High risk High risk Unclear riskKonings 2003 Unclear risk Low risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskTakatori 2011 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskYoon 2014 Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Unclear riskChang 2016 Low risk Low risk High risk Low risk High risk Low risk Unclear risk

P a r t 2

152

(3) 腹膜除水量(体液管理困難のエピソード)

(4) 腹膜除水量(1日総除水量)

(5) 尿量

(6) 残腎機能(GFR・Ccr)

(7) 腹膜機能(クレアチニン値など) (D/P Cr値)

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Davies 2003 Low risk Low risk Low risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskFinkelstein 2005 Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear riskTakatori 2011 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskMoraes 2015 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Posthuma 1997 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskKonings 2003 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskTakatori 2011 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskYoon 2014 Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Unclear risk

Moraes 2015 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskChang 2016 Low risk Low risk High risk Low risk High risk Low risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Posthuma 1997 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskKonings 2003 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskTakatori 2011 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear riskYoon 2014 Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Posthuma 1997 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear risk

Plum 2002 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk High risk Unclear risk

Konings 2003*(GFR mL/min) Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear risk

Takatori 2011 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear risk

Yoon 2014 Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Takatori 2011 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear risk

Chang 2016 Low risk Low risk High risk Low risk High risk Low risk Unclear risk

付録

付録

153

Part2

(8) 合併症(腹膜炎)

(9) 合併症(発疹)

(10) 合併症(出口部トンネル感染)

なし

(11) 耐糖能異常発症率

なし

6-2-3-2.フォレストプロット

(1) 全生存率(イベント死亡数)

(2) テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱)

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Posthuma 1997 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear risk

Wolfson 2002 Low risk Low risk Low risk Low risk High risk High risk Unclear risk

Paniagua 2008 Low risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk High risk Unclear risk

Lin 2009 Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk

Yoon 2014 Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Unclear risk

Moraes 2015 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Low risk Unclear risk

Chang 2016 Low risk Low risk High risk Low risk High risk Low risk Unclear risk

MIDAS study 1994 Low risk Low risk Unclear risk Unclear risk High risk High risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Wolfson 2002 Low risk Low risk Low risk Low risk High risk High risk Unclear risk

Finkelstein 2005 Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk

Lin 2009 Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Unclear risk

Chang 2016 Low risk Low risk High risk Low risk High risk Low risk Unclear risk

P a r t 2

154

(3) 腹膜除水量(体液管理困難のエピソード)

(4) 腹膜除水量(1日総除水量)

(5) 尿量

(6) 残腎機能(GFR・Ccr)

(7) 腹膜機能 (D/P Cr値)

付録

付録

155

Part2

(8) 合併症(腹膜炎)

(9) 合併症(発疹) 

(10) 合併症(出口部トンネル感染)

なし

(11) 耐糖能異常発症率

なし

6-2-3-3.その他資料表6-1 SR2におけるデータ抽出の規則

1. 全生存率(イベント死亡数) 各研究の観察期間中に理由を問わず死亡したかどうかの2値変数2. テクニカルサバイバル(PD継続の期間・PD離脱) 各研究の観察期間終了時においてPD終了した患者の割合(死亡と移植によるPD離脱は打ち切り扱いとし,カウントしない)の

2値変数 ※ PD終了が報告されていない場合,カテーテル抜去のアウトカムがあれば,それを終了とカウント3. 腹膜除水量(体液管理困難のエピソード) 3-1. 体液管理困難のエピソード 各研究の観察期間中に体液管理困難で病院受診したかどうかの2値変数 3-2. 1日総除水量 ※ それが報告なければ,観察期間終了時の1日総除水量の連続変数4. 尿量・残腎機能 4-1. 尿量 各研究の観察期間終了時における1日尿量の連続変数 ※ それが報告なければ観察期間終了時におけるrenal Ccrの連続変数 ※ 尿量もrenal Ccrも報告なければ,観察期間終了時におけるrenal Kt/Vの連続変数 4-2. 残腎機能(GFR・Ccr) 5. 腹膜機能(D/P Cr) (重要なアウトカム) 各研究の観察期間終了時のPET検査の4時間後のD/P Cr 値の連続変数 6. 合併症(薬剤の有害事象・安全性・病院滞在期間も含まれる) 6-1. 腹膜炎 各研究の観察期間中に腹膜炎(定義は各RCT定義に従う)を1回以上発症したかどうかの2値変数 6-2. 発疹 6-3. 出口部トンネル感染 各研究の観察期間中に出口部感染またはトンネル感染(定義は各RCT定義に従う)を1回以上発症したかどうかの2値変数7. 耐糖能異常発症率 各研究の観察期間において,もともと糖尿病がない患者が,糖尿病(糖尿病の診断は著者定義に従う)を発症するかどうかの

2値変数

P a r t 2

156

6-2-4.EtD表

エビデンスの確実性効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス 備考○非常に低●低○中○高○採用研究なし

腹膜機能(クレアチニン値など)(D/P Cr 値)は重要なアウトカムであり,その他重大なアウトカムから「低」となった。

価値観(と意向)人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○重要な不確実性またはばらつきあり○重要な不確実性またはばらつきの可能性あり○重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし●重要な不確実性またはばらつきはなし

薬液を変えるだけなので,患者の負担もなく,価値感にばらつきはないと考えた。

効果のバランス望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしくは比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○比較対照が優位○比較対照がおそらく優位○介入も比較対照もいずれも優位でない●おそらく介入が優位○介入が優位○さまざま○分からない

全死亡率に違いが7人減少/1,000人(18人減少~19人増加)と有意差がないものの,介入の点推定値が優位だった。その結果をふまえると,次に臨床判断に使われるのが,体液管理困難と腹膜除水量であり,これが患者のQOLに大きく貢献すると思われる。また,テクニカルサバイバルは,それらの結果良くなると思われたので重複カウントに注意しながら判断することとした。また,害に関しては,発疹が多い結果であった。これは,Wolfson 2002に発生率が高いことによる。詳細は,介入群で5名が,発疹で,研究離脱(グルコース単独に移行したのかPD中止かどうかまでは不明)しているが,対照群ではいなかったとなっていた。しかし,専門医から,発疹の割合が本邦より多いと推察されるとの指摘があった。今回の採用論文でも,2002年・2005年と,2009年・2016年に非一貫性があった(95%信頼区間が重なることと,年代によることが原因と考えたため,グレードダウンは行ってない)。よって,近年のイコデキストリン透析液では,ほとんど発疹はおきてないため,害は少ないと判断した。よって,効果のバランスは,おそらく介入が優位と判断した。

必要資源量資源要件(コスト)はどの程度大きいですか?

判断 リサーチエビデンス 備考○大きなコスト○中等度のコスト●無視できるほどのコストや節減○中等度の節減○大きな節減○さまざま○分からない

本邦の社会保険治療において透析患者は,「特定疾病療養受療証」の提示によって,患者が直接支払うコストの差は,まったくない。

付録

付録

157

Part2

参考文献

・Chang TI, Ryu DR, Yoo TH, et al. Effect of icodextrin solution on the preservation of residual renal function in peritoneal dialysis patients: a randomized controlled study. Medicine 2016; 95: 1-10.

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Cochrane Review(Cho 2014)から採用した論文・Takatori Y, Akagi S, Sugiyama H, et al. Icodextrin increases technique survival rate in peritoneal dialysis patients with

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・Paniagua R, Ventura MD, Ávila-Díaz M, et al. Icodextrin improves metabolic and fluid management in high and high-average transport diabetic patients. Perit Dial Int 2009; 29: 422-32.

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・Konings CJ, Kooman JP, Schonck M, et al. Effect of icodextrin on volume status, blood pressure and echocardiographic parameters: a randomized study. Kidney Int 2003; 63: 1556-63.

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・Konings CJ, Kooman JP, Schonck M, et al. Effect of icodextrin on volume status, blood pressure and echocardiographic parameters: a randomized study. Kidney Int 2003; 63: 1556-63.

・Davies SJ, Woodrow G, Donovan K, et al. Icodextrin improves the fluid status of peritoneal dialysis patients: results of a double-blind randomized controlled trial. J Am Soc Nephrol 2003; 14: 2338-44.

・Wolfson M, Piraino B, Hamburger RJ, et al. A randomized controlled trial to evaluate the efficacy and safety of icodextrin in peritoneal dialysis. Am J Kidney Dis 2002; 40: 1055-65.

・Guo A, Wolfson M, Holt R. Early quality of life benefits of icodextrin in peritoneal dialysis. Kidney Int 2002; 62: S72-9.・Plum J, Gentile S, Verger C, et al. Efficacy and safety of a 7.5% icodextrin peritoneal dialysis solution in patients treated

with automated peritoneal dialysis. Am J Kidney Dis 2002; 39: 862-71.・Posthuma N, ter Wee PM, Donker AJ, Dekker HA, Oe PL, Verbrugh HA. Peritoneal defense using icodextrin or glucose for

daytime dwell in CCPD patients. Perit Dial Int 1999; 19: 334-42.・Posthuma N, ter Wee PM, Donker AJ, Oe PL, Peers EM, Verbrugh HA. Assessment of the effectiveness, safety, and

biocompatibility of icodextrin in automated peritoneal dialysis. The Dextrin in APD in Amsterdam(DIANA) Group. Perit Dial Int 2000; 20: S106-13.

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・Posthuma N, ter Wee PM, Niessen H, Donker AJ, Verbrugh HA, Schalkwijk CG. Amadori albumin and advanced glycation end-product formation in peritoneal dialysis using icodextrin. Perit Dial Int 2001; 21: 43-51.

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当該介入に反対する強い推奨

当該介入に反対する弱い推奨

当該介入または比較対照のいずれかについて

の条件付きの推奨

当該介入の弱い推奨 当該介入の強い推奨

○ ○ ○ ● ○

P a r t 2

158

使用した既存のシステマティックレビュー・Cho Y, Johnson DW, Craig JC, Strippoli GF, Badve SV, Wiggins KJ. Biocompatible dialysis fluids for peritoneal dialysis.

Cochrane Database Syst Rev 2014; 27: CD007554.

その他の参考文献 ・Orihuela O, de Jesús Ventura M, Ávila-Díaz M, et al. Effect of icodextrin on heart rate variability in diabetic patients on

peritoneal dialysis. Perit Dial Int 2014; 34: 57-63.・le Poole CY, Schalkwijk CG, Teerlink T, Valentijn RM, Ter Wee PM, van Ittersum FJ. Higher plasma levels of von

Willebrand factor and C-reactive protein during a peritoneal dialysis regimen with less glucose and glucose degradation products. Perit Dial Int 2013; 33: 208-12.

⿎⿎6-3. CQ3:腹膜透析患者に,出口部への塗布としてムピロシン軟膏/ゲンタマイシン軟膏と抗生剤軟膏塗布なしのどれがよいか? <SR 3:腹膜透析患者の出口部への塗布としてSR3.1. ムピロシン軟膏と対照の比較,SR3.2. ムピロシン軟膏とゲンタマイシン軟膏の比較>

6-3-1.文献検索

「peritoneal dialysis」,「mupirocin」,「gentamicins」「anti-bacterial agents」をキーワードとしてPubMedと

Cochrane CENTRAL(2017年4月10日まで)で既存のSRとCPGを検索したところ,1989年から2017年で49件が

同定された。その中で,タイトル,抄録のスクリーニングで今回の選択基準に一致したSR・CPGが17件あり,全文

スクリーニングにて11件であった。そのうち新しいCampbell 2017,Grothec 2016,Tsai 2017を採用した。その

中で引用されている論文が52件であった。52論文の中からRCTとしてBernardini 2005,Wong 2003,Chu

2008,Mortazavi 2011, の4論 文 を 採 用 し た。 上 記 のSR/CPG検 索 後 にISPD Catheter-Related Infection

Recommendations: 2017 Updateが発表され,その中に引用されているFindlay 2013も採用した。Campbell

2017では2016年4月まで文献検索されていたので,それ以降のRCTを検索したところ,19の論文があり,その中

で当CQに適合する論文が1件Olga 2016を採用した。医中誌(2017年4月26日まで)でも同様にSR,CPG,RCT

を検索したが該当するものはなかった。よって全部でRCTの6論文を採用した。

表6-2 SR,CPG

No デザイン 著者 雑誌 年1 SR Tsai Am J Surg 20172 SR Campbell Cochrane Database Syst Rev. 20173 SR Grothe BMC Nephrol 20164 CPG Szeto Perit Dial Int. 2017

表6-3 RCT(1列目はSR/CPG文献番号,〇はSR/CPGから抽出)

No 1 2 3 4Wong 2003 〇 〇Bernardini 2005 〇 〇 〇Chu 2008 〇 〇Mortazavi 2011 〇Findlay 2013 〇Olga 2016

付録

付録

159

Part2

6-3-2.組み入れた論文

文献 研究デザイン 研究対象 介入 対照 アウトカム 除外Wong Perit Dial Int 2003中国

介入試験前向きRCT有効性研究並 行 群 間 比 較試験

研究時期2002年観察期間5か月ムピロシン群:365 patient-month対照群:405 patient-month単施設

ムピロシン軟膏N=73

抗 菌 薬軟膏なしN=81

腹膜炎(6 vs. 12)Technical failure (4 vs. 2)出口部感染(4 vs. 13)

精神疾患皮膚疾患1か月以内の抗菌薬使用すでにムピロシンを使用している現在腹膜炎や出口部感染がある末期がんなどの重篤な疾患

Olga Int Urol Nephrol2016ギリシャ

介入試験前向きRCT有効性研究並 行 群 間 比 較試験

研究時期2010~2014年平均観察期間28か月ムピロシン群:1,040 patient-month対照群:725 patient-month単施設

ムピロシン軟膏N=33

抗 菌 薬軟膏なしN=29

腹膜炎(7 vs. 7)Technical failure (0 vs. 0)出口部感染(6 vs. 4)

3か月以内に出口部感染あるいは腹膜炎

Findaly Antimicrobial Agents and Chemotherapy2013イギリス

介入試験前向きRCT有効性研究並 行 群 間 比 較試験

平均観察期間13か月ムピロシン群:697 patient-month対照群:647 patient-month単施設

ムピロシン軟膏N=53

抗 菌 薬軟膏なしN=53

腹膜炎(24 vs. 25)Technical failure (0 vs. 1)出口部感染(4 vs. 24)

1か月以内の腹膜炎および出口部感染

BernardiniJSAN2005アメリカ

介入試験前向きRCT有効性研究並 行 群 間 比 較試験

研究時期2001~2003年観察期間の中央値は8か月ムピロシン群:53.8 patient-yearゲンタシン群:64.3 patient-year3施設

ムピロシン軟膏N=66

ゲンタシン軟膏N=67

腹膜炎(28 vs. 22)Technical failure(10 vs. 19)出口部感染(29 vs. 15)

ゲンタシンあるいはムピロシンにアレルギー1か月以内に出口部感染あるいは腹膜炎

ChuPerit Dial Int 2008香港

介入試験前向きRCT有効性研究並 行 群 間 比 較試験

研究時期2005年観察期間ムピロシン群:539 patient-monthゲンタシン群:476 patient-month単施設

ムピロシン軟膏N=38

ゲンタシン軟膏N=43

腹膜炎(12 vs. 13)Technical failure (1 vs. 3)出口部感染(9 vs. 15)

活動性の感染,4週間以内の腹膜炎および出口部感染ゲンタシンあるいはムピロシンにアレルギー

Mortazavi Journal of Isfahan Medical School2011イランペルシャ語

介入試験前向きRCT有効性研究並 行 群 間 比 較試験

観察期間は6か月ムピロシン群:357 patient-monthゲンタシン群:353 patient-month単施設

ムピロシン軟膏N=61

ゲンタシン軟膏N=60

腹膜炎(0 vs. 8)Technical failure (0 vs. 0)

1か月以内の抗菌薬の使用軟膏に対するアレルギー

P a r t 2

160

6-3-3.論文からのデータ抽出・データの統合

6-3-3-1.リスクオブバイアス(RoB)表

注意:SR3.1.(上段3研究)とSR3.2.(下段3研究)をまとめた表

(1) 腹膜炎

(2) テクニカルサバイバル

(3) 出口部トンネル感染

6-3-3-2.フォレストプロット

SR3.1. ムピロシン軟膏と対照の比較

(1) 腹膜炎

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成 random

sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告

selective outcome reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究内でのバイアスの

リスク Risk of bias

within a study

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Wong 2003 Unclear risk Unclear risk High risk Low risk Low risk Unclear risk High risk Unclear riskOlga 2016 Unclear risk Unclear risk High risk Low risk Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk

Findlay 2013 Unclear risk Unclear risk High risk Low risk Low risk Unclear risk High risk Unclear riskBernardini 2005 Low risk Low risk Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk

Chu 2008 High risk Unclear risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk High risk Unclear riskMortazavi 2011 Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk High risk Low risk High risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成 random

sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告

selective outcome reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究内でのバイアスの

リスク Risk of bias

within a study

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Wong 2003 Unclear risk Unclear risk High risk Low risk High risk Unclear risk High risk Unclear riskOlga 2016 Unclear risk Unclear risk High risk Low risk Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk

Findlay 2013 Unclear risk Unclear risk High risk Low risk Low risk Unclear risk High risk Unclear riskBernardini 2005 Low risk Low risk Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk

Chu 2008 High risk Unclear risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk High risk Unclear riskMortazavi 2011 Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk High risk Low risk High risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成 random

sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告

selective outcome reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究内でのバイアスの

リスク Risk of bias

within a study

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Wong 2003 Unclear risk Unclear risk High risk High risk Low risk Unclear risk High risk High riskOlga 2016 Unclear risk Unclear risk High risk High risk Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk

Findlay 2013 Unclear risk Unclear risk High risk High risk Low risk Unclear risk High risk High riskBernardini 2005 Low risk High risk Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk

Chu 2008 High risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Unclear risk

付録

付録

161

Part2

(2) テクニカルサバイバル

(3) 出口部トンネル感染

SR3.2. ムピロシン軟膏とゲンタマイシン軟膏の比較

(1) 腹膜炎

(2) テクニカルサバイバル

(3) 出口部トンネル感染

出口部トンネル感染:Chu 2008の論文を除外したフォレストプロット(テクニカルサバイバルと腹膜炎は,Chu

2008の論文を除外しても,点推定値の方向,有意差の有無の違いがなかったので,出口部トンネル感染のみ結果を

示す)

P a r t 2

162

6-3-3-3.その他資料

ISPD 腹膜炎勧告:予防と治療に関する2016年度版などには,ムピロシン投与が強く推奨されており,SRでもム

ピロシンが明らかに良いとされていた。しかし,今回の結果は,ISPDの記載より,ムピロシン投与の効果の大きさ

が小さかった。よって,その違いがどのような理由で生じたかの解説を行うこととした。

ISPD 腹膜炎勧告:予防と治療に関する2016年度版での記述「14件の研究のメタ解析(そのうち3件はRCT,他

の11件は後ろ向きコホート研究である)ではムピロシンの塗布は黄色ブドウ球菌感染による総体的なリスクを72%

減らし,黄色ブドウ球菌由来の腹膜炎を40%減らしたことを示している。」ならびに,ISPD カテーテル関連感染症

に関する勧告:2017 年改訂:「一部のメタアナリシスには,ムピロシン鼻腔用軟膏に関する研究も含まれており,

プール解析の結果,出口部へのムピロシン投与で黄色ブドウ球菌による ESI のリスクは72%減少した。」でメインの

エビデンスとして用いられているのは,Xu 2010のSRである。

このXu 2010のSRでは,鼻腔内投与(観察研究とRCT)と出口部軟膏(観察研究のみ)が存在した。それに,CQ3

で行ったSR3.1.のシステマティックレビューである出口部軟膏塗布(RCT)のメタ分析を組み合わせて,新たにフォ

レストプロットを作成して検討した。

その結果,観察研究に対してRCTの効果が小さいこと,鼻腔投与より,出口部への軟膏塗布の効果が小さいこと

が判明した。ただし,Xu 2010のSRの部分のエビデンスの確実性は非常に低であることに注意する必要がある。

なお,Xuの解析ではrelative riskで解析されており,比較のために,CQ3で行ったSRもrelative riskで解析しな

おしたため,ガイドラインのエビデンスプロファイルとは点推定値が異なっている。

付録

付録

163

Part2

(1) 腹膜炎

P a r t 2

164

(2) 出口部感染

6-3-4.EtD表

エビデンスの確実性効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス 備考●非常に低:SR3.2.●低:SR3.1.○中○高○採用研究なし

SR3.1.:効果の方向が同じ,SR3.2.:効果の方向が不一致

価値観(と意向)人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○重要な不確実性またはばらつきあり○重要な不確実性またはばらつきの可能性あり●重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし○重要な不確実性またはばらつきはなし

本邦では,消毒またはシャワーで洗浄のみがほとんどである。消毒またはシャワーで洗浄は,軟膏塗布においても必ず行うので,軟膏塗布の手間が若干増えることとなる。しかし,手間の負担は少ないので,利益があるならば,使う人がほとんどだろう。

付録

付録

165

Part2

効果のバランス望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしくは比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○比較対照が優位○比較対照がおそらく優位介入も比較対照もいずれも優位でない●おそらく介入が優位SR3.1.,SR3.2.○介入が優位○さまざま○分からない 

SR3.1. ムピロシン軟膏と対照の比較:有意差がないものの,点推定値は腹膜炎・出口部感染において,ムピロシン軟膏が優位であった。今回対象としたRCTではムピロシンの副作用はいくつかの論文でごく少数に皮膚症状を認めた程度であるが,これまでムピロシンの出口部塗布に関連してムピロシン耐性菌について報告した観察研究がある。4年間ムピロシンへの出口部塗布を行った施設での149人の患者の研究では4例(3%)でムピロシン耐性ブドウ球菌が検出された(その他の使用文献1)。7年間出口部へのムピロシン塗布を行った施設での147人の患者の研究では4例(2.7%)でムピロシン耐性ブドウ球菌が検出された程度であり頻度は低い(その他の使用文献2)。しかし合計203人の患者においてムピロシンを塗布する施設とゲンタシンを塗布する施設での観察研究では,ムピロシン塗布施設でのグラム陽性球菌の出口部感染の16.7%がムピロシン耐性であった(その他の使用文献3)。以上のように報告によって耐性菌の頻度も異なっており,長期的な影響についてはまだ十分な情報がなく注意が必要かもしれない。SR3.2. ムピロシン軟膏とゲンタマイシン軟膏の比較:テクニカルサバイバルはムピロシン軟膏が優位であったが,腹膜炎・出口部感染は研究間で効果のばらつきを認めた。いずれの結果も2剤間で大きな差は認めなかった。以上より,ムピロシン軟膏のかわりにゲンタマイシン軟膏を出口部に塗布するという選択も許容されるかもしれない。ゲンタマイシン軟膏塗布についての副作用は,今回の対象RCTではいくつかの論文でごく少数に皮膚症状の報告があるだけであった。出口部の塗布をムピロシン軟膏からゲンタマイシン軟膏に変更した444人の観察研究で,耐性菌や真菌感染症が増加しなかったとする報告がある一方(その他の使用文献4),377人の検討で腸内細菌,シュードモナス属菌種へのゲンタマイシンの感受性が低下したとの報告がある(その他の使用文献5)。その他にもムピロシン軟膏からゲンタマイシン軟膏に変更した結果,耐性シュードモナス属菌種による出口部感染を発症した2例の報告(その他の使用文献6),非定型マイコバクテリウムによる出口部感染,腹膜炎を発症した9 例の報告がある(その他の使用文献7)。ゲンタマイシン軟膏の長期使用については耐性菌の出現や菌交代現象に注意が必要であると思われる。

耐性菌についての資料ゲンタマイシンの皮膚や軟部組織感染症から得られた細菌において・ MSSA S(感受性あり):63.2%, I(中間):4.6%,

R(耐性あり):32.2%・ MRSA S(感受性あり):25.5%, I(中間):3.6%,

R(耐性あり):70.9%・ S.epidermis S(感受性あり):50.5%, I(中間):9.3%,

R(耐性あり):40.2%・ S.lugdunensis S(感受性あり):80.6%, I(中間):1.3%,

R(耐性あり):17.7% (J Infect Chemother 2017; 23: 503-511)

ムピロシン軟膏使用患者の鼻腔から得られたMRSA185 株のうち1例が高度耐性,4例が中等度耐性を生じた。

(感染症誌 2001; 75: 7-13)一方で諸外国の低レベル耐性を含むデータではムピロシン使用後のMRSAの耐性は2.2~81%と大きなばらつきがある。

(J Antimicrob Chemother 2015; 75: 2681-2692)

・全身投与を前提にしたMIC,耐性の評価データになっているので,軟膏の局所投与となると薬剤濃度や組織移行性の問題など変わってく

P a r t 2

166

参考文献

採用論文: ・Wong SS, Chu KH, Cheuk A, et al. Prophylaxis against gram-positive organisms causing exit-site infection and peritonitis

in continuous ambulatory peritoneal dialysis patients by applying mupirocin ointment at the catheter exit site. Perit Dial Int 2003; 23: 153-8.

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・Chu KH, Choy WY, Cheung CC, et al. Aprocpective study of the efficacy of local application of gentamicin versus mupirocin in the prevention of peritoneal dialysis cathter-related infections. Perit Dial Int 2008; 28: 505-8.

・Mortazavi M, Halabian M, Seirafian S, et al. The effect of topical gentamicin and mupirocin on peritonitis and exit site infection in peritoneal dialysis patients. Journal of Isfahan Medical School 2011; 28 (116)

使用した既存のシステマティックレビュー,診療ガイドライン ・Grothe C, Taminato M, Belasco A, Sesso R, Barbosa D. Prophylactic treatment of chronic renal disease in patients

undergoing peritoneal dialysis and colonized by Staphylococcus aureus: a systematic review and meta-analysis. BMC Nephrol 2016; 17: 115.

・Tsai CC, Yang PS, Liu CL, Wu CJ, Hsu YC, Cheng SP. Comparison of topical mupirocin and gentamicin in the prevention of peritoneal dialysis-related infections: A systematic review and meta-analysis. Am J Surg 2018; 215(1): 179-85.

・Campbell D, Mudge DW, Craig JC, Johnso DW, Yong A, Strippoli GF. Antimicrobial agents for preventing peritonitis in peritoneal dialysis patients. Cochrane Database Syst Rev 2017.

・Szeto CC, Li PK, Johnson DW, et al. ISPD Catheter-related infection recommendations: 2017 update. Perit Dial Int 2017; 37: 141-154.

その他使用した文献・Xu G, Tu W, Xu C. Mupirocin for preventing exite-site infection and peritonitis in patients undergoing peritoneal dialysis.

Nephrol Dial Transplant 2010; 25: 587-92.・Li PK, Szeto CC, Piraino B, et al. ISPD Peritonitis Recommendations: 2016 Update on Prevention and Treatment. Perit

Dial Int 2016; 36: 481-508.

当該介入に反対する強い推奨

当該介入に反対する弱い推奨

当該介入または比較対照のいずれかについて

の条件付きの推奨

当該介入の弱い推奨 当該介入の強い推奨

○ ● ○ ○ ○

ることから,あくまでも参考にしかならず,実際の抗生剤軟膏の効果とは濃度や保湿剤の効果などを含めて乖離がある可能性がある。・ムピロシンは治療薬ではないので,一般のサーベイランスでは,測定されず,ムピロシン軟膏に対する本邦におけるブドウ球菌の耐性率は不明。・感染予防目的での抗生剤軟膏の連日使用は感染症専門の医師からは耐性獲得の観点から批判的な意見が多かった(私信)。

上記のように耐性率に関しては不明な点が多い。必要資源量資源要件(コスト)はどの程度大きいですか?

判断 リサーチエビデンス 備考●大きなコスト○中等度のコスト○無視できるほどのコストや節減○中等度の節減○大きな節減○さまざま○分からない

本邦では,ムピロシン軟膏の適応は,鼻腔内投与の適応のみである。よって,保険診療で行わなければ,大きなコストとなってしまう。

付録

付録

167

Part2

・Boudville N, Johnson DW, Zhao J, et al. Regional variation in the treatment and prevention of peritoneal dialysis-related infections in the Peritoneal Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study. Nephrol Dial Transplant 2018 Jul 23. doi: 10.1093/ndt/gfy204. [Epub ahead of print]

・日本透析医学会統計調査委員会.わが国の慢性透析療法の現況(2017年12月31日現在).第6章 腹膜透析.透析会誌2018; 51: 729-31. 

EtD表に使用した文献・Annigeri R, Conly J, Vas S, et al. Emergence of mupirocin-resistant Staphylococcus aureus in chronic peritoneal dialysis

patients using mupirocin prophylaxis to prevent exit-site infection. Perit Dial Int 2001; 21: 554-9.・Lobbedez T, Gardam M, Dedier H, et al. Routine use of mupirocin at the peritoneal catheter exit site and mupirocin

resistance: still low after 7 years. Nephrol Dial Transplant 2004; 19: 3140-3. ・Al-Hwiesh AK, Abdul-Rahman IS, Al-Muhanna FA, Al-Sulaiman MH, Al-Jondebi MS, Divino-Filho JC. Prevention of

peritoneal dialysis catheter infections in Saudi peritoneal dialysis patients: the emergence of high-level mupirocin resistance. Int J Artif Organs 2013; 36: 473-83.

・Chen SS, Sheth H, Piraino B, Bender F. Long-Term Exit-Site Gentamicin Prophylaxis and Gentamicin Resistance in a Peritoneal Dialysis Program. Perit Dial Int 2016; 36: 387-9.

・Pierce DA, Williamson JC, Mauck VS, Russell GB, Palavecino E, Burkart JM. The effect on peritoneal dialysis pathogens of changing topical antibioticprophylaxis. Perit Dial Int 2012; 32: 525-30.

・Nessim SJ, Jassal SV. Gentamicin-resistant infections in peritoneal dialysis patients using topicalgentamicin exit-site prophylaxis: a report of two cases. Perit Dial Int 2012; 32: 339-41.

・Lo MW, Mak SK, Wong YY, et al. Atypical mycobacterial exit-site infection and peritonitis in peritoneal dialysis patients on prophylactic exit-site gentamicin cream. Perit Dial Int 2013; 33: 267-72.

⿎⿎6-4. CQ4:腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入のどちらが有用か? <SR 4:腹膜透析患者にカテーテル挿入を行う場合,開腹手術のカテーテル挿入と腹腔鏡下手術のカテーテル挿入の比較>

6-4-1.文献検索 

「peritoneal dialysis」,「laparoscopy」,「catheter」 を キ ー ワ ー ド と し てPubMed(2017年4月10日 ま で ),

Cochrane CENTRAL(2017年4月10日まで)および医中誌(2017年4月10日まで)の既存のSRとCPGを検索したと

ころ,1989年から2017年で122件が同定された。その中で,今回の選択基準に一致したSRが6件,CPGが4件であ

った(Qiao 2016,Chen 2015,Hagen 2013,Xie 2012,Strippoli 2004 [Cochrane Database Syst Rev],Strippoli

2004 [J Am Soc Nephrol],Haggerty 2014,Figueiredo 2010,De Vecchi 2007,The CARI guidelines 2004)。一

部のSRには観察研究も含まれていたため,SRの中で採用されていたRCTを抽出することとした。また,Qiaoらの

SRでは2016年まで検索が行われていたが,検索式の記載が不十分であった。そこでStrippoliらによってコクラン

データベースで検討された2004年以降のRCTの検索を再び行った。1986年から2004年までのRCTはTsimoyiannis

2000,Wright 1999,Gadallah 1999の3件が同定され,2004年から2018年のRCTはSR委員会で新たに検索した

表6-4 CQ4 SR, CPG

デザイン 著者 雑誌 年SR Qiao Q Ren Fail 2016SR Chen Y Surg Laparosc Endosc Percutan Tech 2015CPG Haggerty S Surg Endosc 2014SR Hagen SM PLoS One 2013SR Xie H BMC Nephrol 2012CPG Figueiredo A Perit Dial Int 2010CPG De Vecchi A G Ital Nefrol 2007SR Strippoli GF Cochrane Database Syst Rev 2004

CPGCaring for Australians withRenal Impairment (CARI)

Nephrology (Carlton) 2004

SR Strippoli GF J Am Soc Nephrol 2004

P a r t 2

168

ところ,Jwo 2010,Qiao 2012,Xu 2010の3件のRCTが同定された。その中で,Qiao 2012(中国語)とXu 2010

(中国語)は,委員会のスクリーニングでは検索できず,既存のSRから選択した。よって,本CQで対象となったRCT

論文一覧は,Wright 1999, Gadallah 1999, Tsimoyiannis 2000, Jwo 2010, Xu 2010, Qiao 2012, van Laanen 2018

である。

6-4-2.組み入れた論文

表6-5 RCT 上記SRから抽出したもの(1列目はSR著者名)

著者名 発表年 Qiao Q Chen Y Hagen SM Xie H Strippoli GF Strippoli GFJwo 2010 ○ ○ ○ ○Qiao 2012 ○Tsimoyiannis 2000 ○ ○ ○ ○ ○ ○Wright 1999 ○ ○ ○ ○ ○ ○Xu 2010 ○Gadallah 1999 ○ ○ ○ ○

文献 対象 方法 結果Jwo SCJ Surg Res2010

台 湾 の1施 設 に お い て2002~2006年に初回カテーテル挿入を予定した末期腎不全患者77例

腹腔鏡下手術あるいは開腹手術でのカテーテル挿入術にランダムに割り付けて手術時間,疼痛スコア,合併症などを比較

腹腔鏡下手術を行った患者は37例,開腹手術を行った患者は40 例であった。腹腔鏡下手術では手術時間が長く,創の長さは短く,コストが高かった。しかし,疼痛のスコアや入院期間には差がなかった。早期合併症(術後4週以内)では位置異常,液漏れ,出血に差はなかった。後期合併症(術後4週以降)では位置異常,液漏れ,腹膜炎,ヘルニアに差はなかった。カテーテルが閉塞した患者の割合も差がなかった。

Tsimoyiannis ECSurg Laparosc Endosc Percutan Tech2000

ギリシャの1施設においてカテーテル挿入を予定した末期腎不全患者50 例

腹腔鏡下手術あるいは開腹手術でのカテーテル挿入術にランダムに割り付けて手術時間,位置異常,液漏れ,腹膜炎などを比較

腹腔鏡下手術を行った患者は25 例,開腹手術を行った患者は25 例であった(最終解析は開腹群20名となった)。腹腔鏡下手術では手術時間が長く,位置異常や液漏れが少なかったが,腹膜炎には差がなかった。カテーテル抜去した患者の割合にも差がなかった。

Wright MJPert Dial Int1999United Kingdom

英国の1施設においてカテーテル挿入を予定した末期腎不全患者50 例

腹腔鏡下手術あるいは開腹手術でのカテーテル挿入術にランダムに割り付けて手術時間,疼痛スコア, 入 院 期 間,合併症などを比較

腹腔鏡下手術を行った患者21例,開腹手術を行った患者24例が解析された。腹腔鏡下手術では手術時間が長く,疼痛スコアは低い傾向であったが,位置異常や液漏れは少なかったが,入院期間には差がなかった。早期合併症(術後6週以内)では排液時痛,カテーテル機能異常,液漏れ,出口部感染,腹膜炎に差はなかった。後期合併症(術後6週以降)では排液時痛,カテーテル機能異常,液漏れ,出口部感染,腹膜炎に差がなかった。カテーテルが閉塞した患者の割合も差がなかった。

Gadallah MFAm J Kidney Dis1999

米 国の 多施 設において1992~1995年に初 回カテーテル挿入を予定した末期腎不全患者148名

腹腔鏡下手術あるいは開腹手術でのカテーテル挿入術に月ごとに割り付けて合併症などを比較している(準ランダム化比較試験)

腹腔鏡下手術を行った患者は76 例,開腹手術を行った患者は72例であった。早期合併症(術後 2週以内)は腹腔鏡下手術で少なかった(液漏れ,腹膜炎)。後期合併症(術後2週以降)は差がなかった。しかし,カテーテル機能不全の割合は腹腔鏡下手術で少なく,術後 2年,3年でのカテーテルが閉塞した割合も低かった。

付録

付録

169

Part2

Qiao QJiangsu Med J2012

中 国の単 施 設 にお いて2007~2011年に初回カテーテル挿入を予定した116名

腹腔鏡下手術あるいは開腹手術でのカテーテル挿入術にランダムに割り付けてカテーテル機能異常などの合併症などを比較

腹腔鏡下手術を行った患者は58例,開腹手術を行った患者は58例であった。カテーテル機能異常は腹腔鏡下手術で少なかった。腹膜炎には差がなかった。カテーテルの閉塞した割合に差はなかった。

Xu TJ Nephrol Dialy Transplant2010

上 海 の単 施 設において2008~2010年に初回カテーテル挿入を予定した50名

腹腔鏡下手術あるいは開腹手術でのカテーテル挿入術にランダムに割り付けて合併症などを比較

腹腔鏡下手術を行った患者は25 例,開腹手術を行った患者は25 例であった。腹膜炎の発症率に差はなく,カテーテルの閉塞の割合も差がなかった。

van LaanenPDI2018

オランダの3施設において2010~2016年にカテーテル挿入を予定した90名

腹腔鏡下手術あるいは開腹手術でのカテーテル挿入術にランダムに割り付けて合併症などを比較

腹腔鏡下手術を行った患者は46 例,開腹手術を行った患者は44例であった。テクニカルサバイバル(論文の表現は,clinical success)では,差がなかった。

6-4-3.論文からのデータ抽出・データの統合

6-4-3-1.リスクオブバイアス(RoB)表 

SRに組み入れる論文を,コクランハンドブックのバイアスのリスクテーブルを用いて評価した。評価の項目は以

下のとおりとした(A:ランダム化,B:隠蔽化,C:参加者および研究者の盲検化,D:評価の盲検化,E:不完全な

アウトカム,F:選択的アウトカム報告,G:その他)。バイアスのリスクは高リスク,低リスク,不明の3つで評価

した。

(1) カテーテルサバイバル(移植と死亡も離脱に含める)

(2) カテーテルサバイバル(移植と死亡は離脱に含めない)

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Gadallah 1999 High risk High risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskJwo 2010 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

van Laanen 2018 Low risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Low risk High riskQiao 2012 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk High risk

Wright 1999 Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskXu 2010 Unclear risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Gadallah 1999 High risk High risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskJwo 2010 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

van Laanen 2018 Low risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Low risk High riskQiao 2012 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk High riskXu 2010 Unclear risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

P a r t 2

170

(3) 合併症(イベント発生)

(4) 関連感染症(出口部トンネル感染)

(5) 再手術を有する異常

(6) QOL(疼痛1)疼痛を訴えた人数(参考)

(7) QOL(疼痛2)疼痛スコアの平均

(8) 病院滞在期間

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Wright 1999 Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskXu 2010 Unclear risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskJwo 2010 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

van Laanen 2018 Low risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Low risk High risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

van Laanen 2018 Low risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Low risk High risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Jwo 2010 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskXu 2010 Unclear risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Wright 1999 Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Wright 1999 Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskJwo 2010 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

van Laanen 2018 Low risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Low risk High risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Gadallah 1999 High risk High risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskWright 1999 Low risk Low risk Low risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

Tsimoyiannis 2000 Low risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskJwo 2010 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskXu 2010 Unclear risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

Qiao 2012 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk High riskvan Laanen 2018 Low risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Low risk High riskGadallah 1999 High risk High risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

Jwo 2010 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskXu 2010 Unclear risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

Qiao 2012 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk High risk

付録

付録

171

Part2

(9) カテーテル位置異常

6-4-3-2.フォレストプロット 

(1) カテーテルサバイバル(移植と死亡も離脱に含める)

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Gadallah 1999 High risk High risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskJwo 2010 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

van Laanen 2018 Low risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Low risk High riskQiao 2012 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk High risk Low risk High risk

Tsimoyiannis 2000 Low risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Low risk Low riskXu 2010 Unclear risk Unclear risk Unclear risk Unclear risk Low risk Low risk Low risk

P a r t 2

172

(2) カテーテルサバイバル(移植と死亡は離脱に含めない)

(3) 合併症(イベント発生)

付録

付録

173

Part2

(4) 関連感染症(出口部トンネル感染)

(5) 再手術を有する異常

(6) QOL(疼痛1)疼痛を訴えた人数(参考)

(7) QOL(疼痛2)疼痛スコアの平均

P a r t 2

174

(8) 病院滞在期間

(9) カテーテル位置異常

6-4-3-3.その他資料 

6-4-4.EtD表 

エビデンスの確実性効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス 備考○非常に低●低○中○高○採用研究なし

効果の方向が一致しており,エビデンスの確実性は「低」とした。

価値観(と意向)人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○重要な不確実性またはばらつきあり○重要な不確実性またはばらつきの可能性あり●重要な不確実性またはばらつき

患者としては,ばらつきは少ない。もし腹腔鏡下手術で担当医以外の術者になる場合も,ばらつく可能性が増えるだろう。今回の採用論文では,多くは腎臓内科医が行っていた。患者の要因ではないが,施設間での実行可能性のばらつきは多いだろう。

付録

付録

175

Part2

はおそらくなし○重要な不確実性またはばらつきはなし効果のバランス望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしくは比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○比較対照が優位○比較対照がおそらく優位○介入も比較対照もいずれも優位でない○おそらく介入が優位○介入が優位○さまざま●分からない

腹腔鏡下手術は,ほぼ全身麻酔が必要であるが,近年の報告では,全身麻酔のリスクはわずかと考えた。開腹手術に対する腹腔鏡下手術の害は,わずかであるが,利益があることより, 腹腔鏡下手術が優位と判断した。また,再手術を有する異常のデータは,両群とも本邦と比較して多いのではないかという意見があった。また,入院期間に関しては本邦の現状と,きわめて異なる(術後管理が異なる)ため,エビデンスとして採用しないほうがよいと判断された。また腹腔鏡下手術において,カテーテルの固定や癒着剥離術などの追加手術が,開腹手術より容易であるという意見もあった。カテーテル位置異常では統計学的有意差があったが,固定の有無でのサブグループ解析では,どちらの群も有意差が存在しなかった。

必要資源量資源要件(コスト)はどの程度大きいですか?

判断 リサーチエビデンス 備考○大きなコスト○中等度のコスト○無視できるほどのコストや節減○中等度の節減○大きな節減●さまざま○分からない

腹腔鏡下手術は,保険適用はないため,患者負担か病院の負担による。

コストの資料:各病院で異なるので調査は困難のため,ある1病院での納入価格データを示す。償還対象外コストの合計(内訳は添付資料を御参照下さい), 腹腔鏡関連の機材でのコストの差が大きい。腹腔鏡手術(全身麻酔)例1 ¥101,767,例2 ¥82,805開腹手術 (全身麻酔)  例1 ¥17,478,例2 ¥15,548償還対象の物品(テンコフカテーテル,体温センサー付き尿道バルーン,挿管チューブなど)についてはすべて同額¥112,773施設によって,自費で行うか,病院負担で行うかなどの情報が欠如しており,実行可能か不明である。

開腹手術では,本邦の社会保険治療において透析患者は,「特定疾病療養受療証」の提示によって,患者が直接支払うコストは,ごくわずかである

(地域によっては,まったく自己負担がない場合もある)。

保険点数の記載では,K635-3 連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術 12,000点通知連続携行式腹膜灌流を開始するにあたり,当該カテーテルを留置した場合に算定できる。また,当該療法開始後一定期間を経て,カテーテル閉塞等の理由により再度装着した場合においても算定できるとなっており,内視鏡ではなく切開でなければならないとの記載はない。

当該介入に反対する強い推奨

当該介入に反対する条件付きの推奨

当該介入または比較対照のいずれかについて

の条件付きの推奨

当該介入の条件付きの推奨

当該介入の強い推奨

○ ○ ○ ○ ○

P a r t 2

176

参考文献

採用論文 ・Gadallah MF, Pervez A, el-Shahawy MA, et al. Peritoneoscopic versus surgical placement of peritoneal dialysis catheters:

a prospective randomized study on outcome. Am J Kidney Dis 1999; 33: 118-22.・Wright MJ, Bel'eed K, Johnson BF, Eadington DW, Sellars L, Farr MJ. Randomized prospective comparison of laparoscopic

and open peritoneal dialysis catheter insertion. Perit Dial Int 1999; 19: 372-5.・Tsimoyiannis EC, Siakas P, Glantzounis G, et al. Laparoscopic placement of the Tenckhoff catheter for peritoneal dialysis.

Surg Laparosc Endosc Percutan Tech 2000; 10: 218-21.・Jwo SC, Chen KS, Lee CC, Chen HY. Prospective randomized study for comparison of open surgery with laparoscopic-

assisted placement of Tenckhoff peritoneal dialysis catheter--a single center experience and literature review. J Surg Res 2010;159: 489-96.

・Xu T, Zang L, Xie JY, et al. Efficacy and safety of laparoscopic and conventional placement of peritoneal dialysis catheters in patients with ESRD. J Nephrol Dialy Transplant 2010; 19: 430-4.

・Qiao Q, Lu GY, Xu DY, Zhou XJ, Li L. A comparison of two methods for catherization in peritoneal dialysis. Jiangsu Med J 2012; 38: 2812-4.

・van Laanen JHH, Cornelis T, Mees BM, et al. Randomized Controlled Trial Comparing Open Versus Laparoscopic Placement of a Peritoneal Dialysis Catheter and Outcomes: The CAPD I Trial. Perit Dial Int 2018; 38: 104-112.

使用した既存のシステマティックレビュー・Qiao Q, Zhou L, Hu K, Xu D, Li L, Lu G. Laparoscopic versus traditional peritoneal dialysis catheter insertion: a meta

analysis. Ren Fail 2016; 38: 838-48.・Chen Y, Shao Y, Xu J. The Survival and Complication Rates of Laparoscopic Versus Open Catheter Placement in

Peritoneal Dialysis Patients: A Meta-Analysis. Surg Laparosc Endosc Percutan Tech 2015; 25: 440-3.・Hagen SM, Lafranca JA, Steyerberg EW, IJzermans JN, Dor FJ. Laparoscopic versus open peritoneal dialysis catheter

insertion: a meta-analysis. PLoS One 2013; 8: e56351.・Xie H, Zhang W, Cheng J, He Q. Laparoscopic versus open catheter placement in peritoneal dialysis patients: a

systematic review and meta-analysis. BMC Nephrol 2012; 13: 69.・Strippoli GF, Tong A, Johnson D, Schena FP, Craig JC. Catheter type, placement and insertion techniques for preventing

peritonitis in peritoneal dialysis patients. Cochrane Database Syst Rev 2004; (4): CD004680.・Strippoli GF, Tong A, Johnson D, Schena FP, Craig JC. Catheter-related interventions to prevent peritonitis in peritoneal

dialysis: a systematic review of randomized, controlled trials. J Am Soc Nephrol 2004; 15: 2735-46.

その他の参考文献 なし

⿎⿎6-5. CQ5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者へ,抗菌薬は,経静脈投与か,腹腔内投与のどちらがよいか? <SR5:腹膜炎を起こした腹膜透析患者に対して,SR5.1. 抗菌薬の経静脈投与と抗菌薬の持続的腹腔内投与の比較,SR5.2. 抗菌薬の経静脈投与と抗菌薬の間欠的腹腔内投与の比較>

6-5-1.文献検索

「peritoneal dialysis」「peritonitis」「intraperitoneal injectionないしadministration」「intravenous injectionな

いしadministration」をキーワードとしてPubMed(2017年6月30日),Cochrane CENTRAL(2017年6月26日ま

で),医中誌(2017年4月26日まで)で既存の報告を検索したところ,1967年から2017年までの期間で,PubMed

で1,094件,Cochrane CENTRALで171件,医中誌で463件がそれぞれ同定された。この結果に対し,タイトルと

抄録のスクリーニング,および全文のスクリーニングを行い,本CQの内容に合致するものとしてRCTの2論文

(Bennett-Jones 1987,Bailie 1987)を採用した。

また,上記2報のうちBailie 1987は,初期投与以外は同一のVCM腹腔内投与であることより,厳密にはその対照

群を「経静脈投与群」とは呼べないとも考えられたが,ここでは対象患者数を十分に増やすことの有益性がより大き

いものと判断し,当該論文を組み入れて本CQの(1)への回答を試みた。

付録

付録

177

Part2

6-5-2.組み入れた論文

6-5-3.論文からのデータ抽出・データの統合

6-5-3-1.リスクオブバイアス(RoB)表

(1) PD離脱 Primary treatment failure

文献 研究デザイン 研究対象 介入 対象 アウトカム 除外Bennett-Jones DPerit Dial Int1987

ランダム化比較試験

英 国 の1施 設において腹膜炎を発症した腹膜透析患者93名

※腹膜炎発症:腹 膜 透析排液細胞数>100 mm3

抗菌薬の経腹膜投与

(バンコマイシン 20 mg/L,トブラマイシン 4 mg/Lを10日間すべての腹膜透析液に混注)

抗菌薬の経静脈投与(バンコマイシン 0.5 g(体表面積 <1.73m2)ないし1.0g(体表面積 >1.73m2),トブラマイシン1.0 mg/kg)を初回投与,のちバンコマイシン 0.5 gを6日目に投与,トブラマイシン 20~60 mgを血中濃度により2,4,6日目に投与ただし4日目の培養と感受性の結果によってはその他の抗菌薬の経口投与に切り替える

・介入群 39症例のうち35症 例(89.1%)で治療成功,対照群 36症 例 の う ち23症 例

(65.9%)で 治療 成 功(p <0.02)・トブラマイシン耐性菌を起炎菌とする25症例において,介入群10 症 例のうち9症 例

(90%)で 治 療 成 功,対照群15症例のうち6症 例(40%)で 治 療成功(p <0.05)※治療 成 功:10日以内の腹膜炎症状の消失と腹膜透析排液細胞数の陰性化(<100 mm3)

・カテーテル漏出を呈した症例・皮下トンネル感染や重度の出口部感染を呈した症例・真菌性腹膜炎・敗血症・腸管穿孔・15日以内の再燃性腹膜炎

Bailie GRNephron1987

ランダム化比較試験

英 国 の1施 設においてグラム陽性球菌性腹膜炎を発症した腹膜透析患者20名

※腹膜炎発症:排液培養でグラム陽 性 球菌陽性,または「腹痛」「排液混濁」

「排液白血球数>100 mm3」のいずれか2項目以上

抗菌薬の初回投与としてバンコマイシン 1 gを単回の腹膜透析液に混注し経腹膜投与

抗菌薬の初回投与としてバンコマイシン 1 gを60 分以上かけて経静脈投与

・両群の全症例で治療成功・治療開始後 24時間後と14日後の血中と腹膜透析排液中のバンコマイシン濃度に差なし・対照例のうち3症例で経静脈投与に伴う有害事象※治療成功:腹膜炎の症状・所見の消失

・グラム陰性桿菌による腹膜炎・4週 間 以 内の先行する腹膜炎・グラム染色で検出されない起炎菌による腹膜炎

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成 random

sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Bailie 1987 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk

Bennett-Jones 1987 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk

P a r t 2

178

(2) 合併症(薬剤の有害事象・安全性)

(3) 合併症(Infusion pain,バンコマイシンの血管漏洩)

6-5-3-2.フォレストプロット

(1) PD離脱 Primary treatment failure リスク差で表示

(2) 合併症(薬剤の有害事象・安全性)

(3) 合併症(Infusion pain,バンコマイシンの血管漏洩)

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Bailie 1987 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk

Bennett-Jones 1987 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk

著者名 発表年 (Forest plot 表示)

RoB 評価

ランダム割付順番の生成

random sequence generation

割り付けの隠蔽化allocation

concealment

ブラインド blinding不完全な

アウトカムデータincomplete

outcome data

選択されたアウトカムの報告selective outcome

reporting

その他のバイアス

other sources of bias

研究参加者と治療提供者

participants and personnel

アウトカム評価者outcome

assenssors

Bailie 1987 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk High risk Unclear risk

Bennett-Jones 1987 Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk Unclear risk High risk Unclear risk

付録

付録

179

Part2

6-5-4.EtD表

エビデンスの確実性効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス 備考○非常に低●低○中○高○採用研究なし

採用研究が2論文にすぎず,そのサンプルサイズも合計100名と比較的小さい。加えて,対象患者の大部分が含まれる論文(Bennett-Jones 1987)において,患者の重要な属性(年齢・性別・身長・体重・併存疾患・comorbidityなど)に関する記載がなされていない。

価値観(と意向)人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○重要な不確実性またはばらつきあり○重要な不確実性またはばらつきの可能性あり●重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし○重要な不確実性またはばらつきはなし

腹膜炎は生命にかかわる合併症であることより,経腹膜的投与が明確に優れていることが明らかにされれば,保険適用のいかんにかかわらず優れているとされた治療法を選択することに躊躇はないと予想される。

効果のバランス望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしくは比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○比較対照が優位●比較対照がおそらく優位○介入も比較対照もいずれも優位でない○おそらく介入が優位○介入が優位○さまざま○分からない

PD離脱に関する統計学的有意差がないものの,130人減少/1,000人(430人減少~170増加)であり腹腔内投与を主体とした治療のほうが優れていることと,害の報告も一般的な静脈内への抗菌薬の投与より多いとする報告がないことより,介入が優位と判断した。

必要資源量資源要件(コスト)はどの程度大きいですか?

判断 リサーチエビデンス 備考○大きなコスト○中等度のコスト●無視できるほどのコストや節減○中等度の節減○大きな節減○さまざま○分からない

両治療レジメンにおいて使用される薬剤の種類および投与量はほぼ同一であることより,コストの差はないと判断される。加えて,本邦の社会保険治療において透析患者は,「特定疾病療養受療証」の提示によって,患者自身が直接支払うコストの差は,まったくない。

当該介入に反対する強い推奨

当該介入に反対する弱い推奨

当該介入または比較対照のいずれかについて

の条件付きの推奨

当該介入の弱い推奨 当該介入の強い推奨

○ ○ ○ ● ○

P a r t 2

180

参考文献

採用論文: ・Bennett-Jones D, Penny VW, Taube MD, Chisholm GN, Cameron OJS, Williams DG. A comparison of intraperitoneal

and intravenous/oral antibiotics in CAPD peritonitis. Pert Dial Int 1987; 7: 31-3.・Bailie GR, Morton R, Ganguli L, Keaney M, Waldek S. Intravenous or intraperitoneal vancomycin for the treatment of

continuous ambulatory peritoneal dialysis associated gram-positive perinonitis? Nephron 1987; 46: 316-8.

その他の参考文献 ・Ballinger AE, Palmer SC, Wiggins KJ, et al. Treatment for peritoneal dialysis-associated peritonitis. Cochrane Database of

Systematic Reviews 2014, Issue 4. Art. No.: CD005284. DOI: 10.1002/14651858.CD005284.pub3.

⿎⿎6-6. CQ6:糖尿病性腎症の患者の透析療法は腹膜透析開始と血液透析開始のどちらがよいか? <SR6:糖尿病性腎症の患者への透析療法に対して,腹膜透析開始と血液透析開始の比較>

6-6-1.文献検索

まず,システマティックレビューを探したところ,Couchoud 2015SRがみつかった。そのため,Couchoud

2015SRで検索した以降の期間について,あらためて検索を行った。その結果17論文が組み入れられた。

6-6-2.組み入れた論文について

Couchoud 2015SRの論文は,25論文を検討していた。また,Couchoud 2015SRのシステマティックレビュー

としての研究の質は,A MeaSurement Tool to Assess Reviews (AMSTAR)[AMSTAR 2007]の点数も高く,高い

と判断された。その結果,メタ分析は不可能であり,質的に統合しており,腹膜透析開始と血液透析開始に関して論

文間の一貫性がなく,どちらが優先されるか不明であり,また,エビデンスの確実性は非常に低いとの結果であっ

た。

また,Couchoud 2015SRの25論文いずれの研究も観察研究であった。今回新たに採用した17論文もすべて観察

研究であった。また,この17論文も評価方法が明確でなく,メタ分析は困難と判断された。さらに,バイアスのリ

スクを検討した結果,1論文の除外が妥当と判断されたので,採用論文は16論文となった。

よって,観察研究をすべて統合して41論文として検討するのは,さらに混乱を招くと考えられた。さらに,

Couchoud 2015SRらの結果が,エビデンスの確実性が非常に低く腹膜透析開始と血液透析開始のどちらか不明であ

ったことを考えると,新たに採用された16論文の検討の結果で,腹膜透析開始と血液透析開始のどちらが推奨され

るか,また,条件によってどちらも推奨されるかを判断することとした。

付録

付録

181

Part2

文献 研究デザイン 研究対象曝露

(腹膜透析)対照

(血液透析)アウトカム

研究対象の除外基準

コメント

Kim 2017

Retrospective cohort study

Korean Health Insurance Review and Assessment Service (HIRA) databaseから抽出した新規透析導入症例32,280 例(糖尿病50.1%)

糖尿病PD 3,996 例

糖尿病HD 12,190 例

PDで全死亡率が高い

18歳未満

Shen 2016

Retrospective cohort study

Taiwan National Health Insurance Research Databaseから抽出した新規透析導入症例15,947例

(糖尿病14.8%)

糖尿病PD 359 例

糖尿病HD 7,485 例

PDで心房細動の 新 規 発症率が高い

18歳未満,85歳以上,悪性疾患

アウトカムが死亡でなく,心房細動の新規発症である。

Tamayo Isla 2016

Retrospective cohort study

Polokwane Kidney and Dialysis Centre (PKDC) of the Pietersburg Provincialから抽出した新規に透析を導入し3か月間安定していた340 例(糖尿病10.3%)

糖尿病PD 13例

糖尿病HD 22例

PDで全死亡率が高い

なし

Nesrallah 2016

Retrospective cohort study

The United States Renal Data System (USRDS)から抽出した新規に連日在宅血 液 透 析(Home HD)かPDを 開 始した78,064例

(糖 尿病31.6%),およびPropensity score matchingした 5,336 例

(糖尿病28.8%)

糖尿病PD 23,825 例

(Propensity score matching後は768例)

糖尿病Home HD 858例

(Propensity score matching後は768例)

PDで全死亡率が高い

18歳未満 在 宅 血 液 透 析(Home HD)という限られた集団を対象にしている。全集団での解析と,Propensity score matchingの集団での解析がある。

Lee 2016

Retrospective cohort study

韓国のnationwide multicenter joint network prospective cohort study on ESRD patientsか ら 抽出した 新 規にHDかPDを開始した糖尿病末期腎不全 902例(糖尿病100%),およびHbA1cのデータを有する773例(糖尿病100%)

糖尿病PD 265 例

(HbA1cの データを有する症 例 は235例)

糖尿病HD 637例

(HbA1cのデータを有する症 例 は538例)

HD と PD で全 死 亡 率を比 較した 際に一貫 性 のある 結 果 なし

18歳未満,移植歴あり,悪性疾患,急性期 疾 患,3か月以上の余命が期待されない症例

登 録 症例はすべて糖尿病

Marshall 2016

Retrospective cohort study

The Australia and New Zealand Dialysis and Tr ansp l an t Reg i s t r y (ANZDATA)から抽出した新 規の 透 析を導 入した57,738例(糖尿病41.6%)

糖尿病PD 7,271例

糖尿病HD 16,727例

HD と PD で全 死 亡 率を比 較した 際に一貫 性 のある 結 果 なし

18歳未満 H D か 施 設 H D(Facility HD)と在宅HD(Home HD)に分けられ,さらに, そ れ ぞ れ がConvent ional,Quasi-intensive,intensiveに 分 類されている。

P a r t 2

182

Wang 2016

Retrospective cohort study

the National Health Insurance Research Database (NHIRD) of Taiwanから抽出した新規に透析を導入し,3か月以上が経過しており,かつ,透 析 導 入 前 に 脳 卒 中

(stroke)の 既 往 が あ る2,857例( 糖 尿 病70.3%)およびPropensity score matchingした1,950 例

(糖尿病66.5%)

糖尿病PD 648例

(Propensity score matching後は648例)

糖尿病HD 1,359 例

(Propensity score matching後は647例)

PDで全死亡率が高い

20歳未満,移植歴あり,データが不完全

脳 卒 中(Stroke)の既往がある症例に限 定している。全集団での解 析と,Propensity score matchingの集 団での解 析がある。

Waldum-Grevbo 2015

Retrospective cohort study

The Norwegian Renal Registryから抽出した新規 に 透 析 を 導 入 し た3,089 例( 糖 尿 病32.1%)およびPropensity score matchingした1,384 例

(糖尿病30.0%)

糖尿病PD 200 例

(Propensity score matching後は200 例)

糖尿病HD 792例

(Propensity score matching後は209 例)

PDで全死亡率 が 低い(5年全死亡率:HR1.22,95%信頼区間0.80-1.86)

18歳未満 全集団での解 析と,Propensity score matchingの集 団での解 析がある。

Yang 2015

Retrospective cohort study

SingaporeのNational University Hospital (NUH)の single-center cohortから抽出したHDかPDを新 規に導入して90日 間 生 存 し た871例

(糖尿病68.7%)

糖尿病PD 172例

糖尿病HD 426 例

PDで全死亡率が高い

18歳未満

Kim 2015

Retrospective cohort study

Korean Health Insurance Review and Assessment Service (HIRA) databaseから抽出した新規に透析を導入し,3か月間はmajor adverse cardiac and cerebrovascular events (MACCE)を発症せずに安定していた症例30,729 例

(糖尿病48.9%)

糖尿病PD 3,658例

糖尿病HD 11,154例

PDでM A C C E の新 規 発 症 率が高い

18歳未満,透析導入後3か月以内にmajor adverse cardiac and cerebro vascular events (MACCE)の新規発症あり

アウトカムが死亡でなく,major adverse cardiac and cerebrovascular events (MACCE)の新規発症である。

Marshall 2015

Retrospective cohort study

The Australia and New Zealand Dialysis and Transplant Registry (ANZDATA)から抽出した新 規の 透 析を導 入した37,123例(糖尿病43.8%)

糖尿病PD症例数不明

糖尿病HD 症例数不明

HD と PD で全 死 亡 率を比 較した 際に一貫 性 のある 結 果 なし

18歳未満 糖尿病の解析は時代(era)ごとに 行われており,DMの 率 をmordalityごとに計算するのは困難。Supplemental dataを確認する必要か。

付録

付録

183

Part2

Ryu 2015

Retrospective cohort study

Koreaのthe Health Insurance Review and Assessment Service (HIRA) and the National Health Insurance Claims Databaseから抽出した新規透析導入症例32,357例

(糖尿病50.1%)

糖尿病PD 症例数不明

糖尿病HD 症例数不明

PDで全死亡率が高い

18歳未満,透析 開 始 後90日以内に死亡した症例

Wang 2015

Retrospective cohort study

the National Health Insurance Administration Research Database in Taiwanから抽出した新規透 析 導 入 症 例20,272例

(糖尿病35.6%)

糖尿病PD 3,658例

糖尿病HD 3,587例

PDで硬膜下血腫

(Subdural hematoma: SDH)の新規発 症 率が 低い

透 析 開 始 後90日以内の死亡,硬膜下血腫(Subdural hematoma: SDH)の 既 往あり,20歳未満

アウトカムが死亡でなく, 硬 膜 下血腫

(Subdural hematoma: SDH)の新規発症である。

Marshall 2014

Retrospective cohort study

ANZDATA Registry, the National (NZ) Health and Disability Ethics Committee and the Counties Manukau Institutional Review Boardから抽出した新規透析導入症例6,419 例(糖尿病50.1%)

糖尿病PD 症例数不明

糖尿病HD 症例数不明

PDで全死亡率が高い

18歳未満

Kim 2014

Retrospective cohort study

Korean Health Insurance Review and Assessmentから抽出した新規透析導入症例32,280 例(糖尿病50.1%)およびPropensity score matchingした14,098例(糖尿病51.7%)

糖尿病PD 3,996 例

(Propensity score matching後は3,902例)

糖尿病HD 12,190 例

(Propensity score matching後は3,685 例)

PDで全死亡率が高い

透 析 開 始 後90日 以 内 の死亡, 18 歳未満

全集団での解析と,Propensity score matchingの集団での解析がある。

Heaf 2014

Retrospective cohort study

DenmarkのThe Danish Nephrology Registry

(DNR),National Patient Registry (LPR)から 抽 出した 新 規 透 析 導 入 症 例12,095 例 (糖尿病23%)

糖尿病PD 916 例

糖尿病HD 1,812例

HD と PD で全 死 亡 率 を比較した際に一貫性のある結果なし

なし

Mircescu 2014

Retrospective cohort study

the Romanian Renal Registry(RRR)から抽出した新 規 透 析 導入 症例9,252例 (糖尿病35.6%)

糖尿病PD 194例

糖尿病HD 1,246 例

PDで全死亡率が高い

18歳未満,移植歴あり,透析 開 始 後90日以内に移植を受けるか腎機能が改善した症例

Kim 2017,Kim 2015,Ryu 2015,Kim 2014では同じデータベース(Korean Health Insurance Review and Assessment Service (HIRA) database)を利用Shen 2016,Wang 2016,Wang 2015では同じデータベース(the National Health Insurance Research Database (NHIRD) of Taiwan)を利用Marshall 2014,Marshall 2015,Marshall 2016では同じデータベース(the Australia and New Zealand Dialysis and Transplant Registry (ANZDATA))を利用

P a r t 2

184

6-6-3.論文からのデータ抽出・データの統合

6-6-3-1.リスクオブバイアス(RoB)表

選択された研究がすべて観察研究のため,相原の教科書に記載してある表の基準を利用した。

結果の統合

今回検索された,CouchoudらのSRの中で採用されている論文は,古い研究がほとんどであることと,結果が不

一致であったことより,今回は採用せず,その後報告された新しい17論文でSRを行った。

バイアスのリスクを検討した結果,1論文(Wang 2015)の除外が妥当と判断された。16論文のリスクオブバイア

スは交絡のコントロールができてないのがほとんどであり,深刻と考えられた。また,死亡のアウトカムに関して

は,血液透析開始が良いとされる研究は9報告(Kim 2017, Tamayo Isla 2016, Nesrallah 2016, Marshall 2016,

Wang 2016, Kim 2015, Ryu 2015, Marshall 2014, Kim 2014)あり,腹膜透析開始が良いとする研究は2報告であ

った(Lee 2016, Heaf 2014)。残りの研究は,サブグループ解析があるものの,全体の糖尿病患者への効果量の報告

はなかった。尿量・残腎機能と血糖コントロールのアウトカムを報告している研究はなかった。合併症(心血管系・

感 染 症 )は,1研 究 で 全 死 亡 と 主 要 心 脳 血 管 イ ベ ン ト(major adverse cardiac and cerebrovascular events:

MACCE)の複合アウトカムに対する影響を検討しており,腹膜透析開始のほうが新規MACCE発症が多いことを報

告していた(Kim 2015)。また,1研究が腹膜透析開始のほうが心房細動の新規発症が多いことを報告していた(Shen

2016)。なお,韓国,豪州,台湾の共通のデータベースを用いた研究があり,PDとHDの方法には注意しなければ

表6-6 観察研究におけるリスクオブバイアス表

◦ 適切な適格基準を確立していない,あるいは適用していない(対照群の組み入れ) ・症例対照研究における過小または過大なマッチングになっている。 ・コホート研究において,曝露した人と曝露していない人が背景の異なる集団から選出されている。◦ 曝露およびアウトカムの双方における測定の不備・曝露やアウトカムの測定が不確かな場合(例:思い出しバイアス) ・曝露群と非曝露群で曝露内容やアウトカムの調査方法が異なっている。◦ 交絡が十分にコントロールされていない ・すべての既知の予後因子を測定していない,もしくは正確に測定していない。 ・曝露群と非曝露群で予後因子や背景因子が一致していない,または解析の際にそれらの統計学的な調整がされていない。◦ 追跡が不十分または観察期間が短すぎる ・特に前向きコホート研究においては,両群のフォローアップは同じ期間であるべきである。

論文名 ID 適切な適格基準 測定の不備 交絡のコントロール 追跡が不十分Kim 2017 1 Low Low High UnclearShen 2016 2 Low Low High UnclearTamayo Isla 2016 3 Low Low High HighNesrallah 2016 4 High Low High UnclearLee 2016 5 Low Low High LowMarshall 2016 6 Low Low High LowWang 2016 7 Low Low High UnclearWaldum-Grevbo 2015 8 Low Low High LowYang 2015 9 Low Low High UnclearKim 2015 10 Low High High UnclearMarshall 2015 11 Low Low High UnclearRyu 2015 12 Low Low High UnclearMarshall 2014 14 Low Low High UnclearKim 2014 15 Low Low High UnclearHeaf 2014 16 Low Low High UnclearMircescu 2014 17 Low Low High Low

付録

付録

185

Part2

ならない。PDについては,使用バッグ数や酸性・中性透析液が,HDでは水質や使用透析膜が本邦とは異なる可能

性があり,結果の評価には注意を要すると思われた。また,全体のエビデンスの確実性は,非一貫性が深刻であるこ

とより,「非常に低い」と判断された。

注:糖尿病患者のみのHR(ハザード比)と95%信頼区間が記載されている研究よりデータ抽出

注: Marshall 2014とMarshall 2016は, 同 じ デ ー タ ベ ー ス(the Australia and New Zealand Dialysis and

Transplant Registry (ANZDATA))を利用

注:Marshall 2014は,糖尿病をType 1とType 2に分類しており,Type 2のデータを採用

注: Kim 2014,Kim 2015,Kim 2017は,同じデータベース(Korean Health Insurance Review and Assessment

Service (HIRA) database)を利用

注:Nesrallah 2016は,対象(Reference)が在宅血液透析(Home HD)である。

6-6-4.EtD表

6-6-5.参考エビデンスの確実性効果に関する全体的なエビデンスの確実性は何ですか?

判断 リサーチエビデンス 備考●非常に低○低○中○高○採用研究なし

観察研究のみで,リスクオブバイアスも交絡因子の調整が不十分で深刻であったので,非常に低となった。

価値観(と意向)人々が主要なアウトカムをどの程度重視するかについて重要な不確実性はありますか?

判断 リサーチエビデンス 備考●重要な不確実性またはばらつきあり○重要な不確実性またはばらつきの可能性あり○重要な不確実性またはばらつきはおそらくなし○重要な不確実性またはばらつきはなし

血液透析には,患者が仕事などの状況によっては,選択を望まない場合もあり,ばらつきがある。

効果のバランス望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入もしくは比較対照を支持しますか?

判断 リサーチエビデンス 備考○比較対照が優位○比較対照がおそらく優位○介入も比較対照もいずれも優位でない○おそらく介入が優位○介入が優位○さまざま●分からない

血液透析(対照とした)のほうが全死亡率が低いとする論文より,少なくとも,腹膜透析を積極的に支持するエビデンスではないと考えられた。しかし,各研究に詳細な治療法が記載されておらず,治療が多岐にわたっていることより,分からないと判断された。

P a r t 2

186

6-6-5.参考

血液透析開始よりも腹膜透析開始のほうがよかった研究について

死亡をアウトカムとした15研究で,血液透析開始よりも腹膜透析開始のほうがよかった研究は,Heafらの論文

(Heaf 2014)とLeeらの論文(Lee 2016)であり,これらの研究について考察する。

Heafらの論文(Heaf 2014)では,糖尿病患者全体でのHR(ハザード比)と95%信頼区間のデータはなく,年代

(1990~1999年,もしくは2000~2010年),年齢(65歳以上,もしくは65歳未満)での解析のみだが,そのいずれ

においても,PDの生命予後が良好だった。Leeらの論文(Lee 2016)は糖尿病腎不全症例のみを対象として,PDと

HDの生命予後を比較しており,非糖尿病例の登録はなく,全症例での検討はcrudeデータを用いたHRとなってい

る。しかし,全体の85%を占める血糖コントロール良好(HbA1c<8.0%)群ではcrudeのHRが0.59(0.37-0.93),

Propensity scoreで補正すると,HRが0.59(0.37-0.94)という結果であった。一方で,HbA1c高値(HbA1c≧

8.0%)群ではHDの生命予後がよかった。血糖コントロールの影響を検討している論文は本論文のみであるが,血糖

コントロールが生命予後に対する強力な交絡因子であると思われる。このように,研究間の結果の相違には,補正困

難な患者背景などの残余交絡が影響している可能性がある。

参考文献

採用論文:・Kim HJ, Park JT, Han SH, et al. The pattern of choosing dialysis modality and related mortality outcomes in Korea: a

national population-based study. Korean J Intern Med 2017; 32: 699-710.・Shen CH, Zheng CM, Kiu KT, et al. Increased risk of atrial fibrillation in end-stage renal disease patients on dialysis.

Medicine (Baltimore) 2016; 95: e3933.・Tamayo Isla RA, Ameh OI, Mapiye D, et al. Baseline Predictors of Mortality among Predominantly Rural-Dwelling End-

Stage Renal Disease Patients on Chronic Dialysis Therapies in Limpopo, South Africa. PLoS One 2016; 11: e0156642.・Nesrallah GE, Li L, Suri RS. Comparative effectiveness of home dialysis therapies: a matched cohort study. Can J Kidney

Health Dis 2016; 3: 19.・Lee MJ, Kwon YE, Park KS, et al. Glycemic Control Modifies Difference in Mortality Risk Between Hemodialysis and

Peritoneal Dialysis in Incident Dialysis Patients With Diabetes Results From a Nationwide Prospective Cohort in Korea. Medicine (Baltimore) 2016; 95: e3118.

・Marshall MR, Polkinghorne KR, Kerr PG, Hawley CM, Agar JW, McDonald SP. Intensive Hemodialysis and Mortality Risk in Australian and New Zealand Populations. Am J Kidney Dis 2016; 67: 617-28.

・Wang IK, Liang WM, Lin CL, et al. Impact of dialysis modality on the survival of patients with end-stage renal disease and prior stroke. Int Urol Nephrol 2016; 48: 139-47.

・Waldum-Grevbo B, Leivestad T, Reisæter AV, Os I. Impact of initial dialysis modality on mortality: a propensity-matched study. BMC Nephrol 2015; 16: 179.

・Yang F, Khin LW, Lau T, et al. Hemodialysis versus Peritoneal Dialysis: A Comparison of Survival Outcomes in South-

当該介入に反対する強い推奨

当該介入に反対する弱い推奨

当該介入または比較対照のいずれかについて

の条件付きの推奨

当該介入の弱い推奨 当該介入の強い推奨

○ ○ ○ ○ ○

必要資源量資源要件(コスト)はどの程度大きいですか?

判断 リサーチエビデンス 備考○大きなコスト○中等度のコスト●無視できるほどのコストや節減○中等度の節減○大きな節減○さまざま○分からない

本邦の社会保険治療において透析患者は,「特定疾病療養受療証」の提示によって,患者が直接支払うコストの差は,まったくない。

付録

付録

187

Part2

East Asian Patients with End-Stage Renal Disease. PloS One 2015; 10: e0140195.・Kim H, Kim KH, Ahn SV. Risk of major cardiovascular events among incident dialysis patients: A Korean national

population-based study. Int J Cardiol 2015; 198: 95-101.・Marshall MR, Polkinghorne KR, Kerr PG, Agar JW, Hawley CM, McDonald SP. Temporal Changes in Mortality Risk by

Dialysis Modality in the Australian and New Zealand Dialysis Population. Am J Kidney Dis 2015; 66: 489-98.・Ryu JH, Kim H, Kim KH, et al. Improving survival rate of Korean patients initiating dialysis. Yonsei Med J 2015; 56: 666-

75.・Wang IK, Cheng YK, Lin CL, et al. Comparison of Subdural Hematoma Risk between Hemodialysis and Peritoneal

Dialysis Patients with ESRD. Clin J Am Soc Nephrol 2015; 10: 994-1001.・Marshall MR, Walker RC, Polkinghorne KR, Lynn KL. Survival on home dialysis in New Zealand. PLoS One 2014; 9:

e96847・Kim H, Kim KH, Park K, et al. A population-based approach indicates an overall higher patient mortality with peritoneal

dialysis compared to hemodialysis in Korea. Kidney Int 2014; 86: 991-1000.・Heaf JG, Wehberg S. Relative survival of peritoneal dialysis and haemodialysis patients: effect of cohort and mode of

dialysis initiation. PLoS One 2014; 9: e90119.・Mircescu G, Stefan G, Gârneaţă L, Mititiuc I, Siriopol D, Covic A. Outcomes of dialytic modalities in a large incident

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使用した既存のシステマティックレビュー ・Couchoud C, Bolignano D, Nistor I, et al. Dialysis modality choice in diabetic patients with end-stage kidney disease: a

systematic review of the available evidence. Nephrol Dial Transplant 2015; 30: 310-20.

その他の参考文献・[相原 2015] 相原守夫. 診療ガイドラインのためのGRADEシステム 第2版. 弘前:凸版メディア, 2015.・[AMSTAR 2007] Shea BJ, Grimshaw JM, Wells GA, et al. Development of AMSTAR: a measurement tool to assess the

methodological quality of systematic reviews. BMC Med Res Methodol 2007; 7:10.・Pike E, Hamidi V, Ringerike T, Wisloff T, Klemp M. More Use of Peritoneal Dialysis Gives Significant Savings: A

Systematic Review and Health Economic Decision Model. J Clin Med Res 2017; 9: 104-16.・Korevaar JC, Feith GW, Dekker FW, et al. Effect of starting with hemodialysis compared with peritoneal dialysis in

patients new on dialysis treatment: a randomized controlled trial. Kidney Int 2003; 64: 2222-8.

⿎⿎6-7. CQ7(取り下げ:経過報告):腹膜炎を併発した腹膜透析患者において,初回腹腔洗浄を実施することは,腹膜炎治療において有効か?

6-7-1.文献検索と取り下げの経過

「腹膜炎を併発した腹膜透析患者において,初回腹腔洗浄を実施することは,腹膜炎治療において有効か?」という

CQに対して,まずは,既存のSRを検索したところ,後述の3編があった。これらのSRの対象RCTは,Ejlersenら

のRCT(Perit Dial Int 1991;11(1):38-42)1編のみであり,この論文を確認した。

対象(P)はPD関連腹膜炎罹患患者であり,介入(I)は腹膜洗浄あり,対照(O)は腹膜洗浄なし,アウトカム(O)は

腹膜炎の治癒,およびそれに有した期間であった。腹膜洗浄群では,1回2リットルの液で24時間に計60リットル

を用いており,一方で,腹膜洗浄を行わない群においては,2バッグのみを速やかに注排液していた。現代の本邦の

治療法としては,前者の方法は非現実的であり,むしろ後者が現代の腹膜洗浄法に近いものだった。よって,本

RCTは今回用いることはできないと判断した。

次に,PubMedと医中誌より,82編の観察研究を抽出し,一次スクリーニングの手法に準じてすべての抄録を確

認,23論文を選択し,二次スクリーニングの手法に準じて,この23論文の全文(フルペーパー)を取寄せチェックし

た。いずれの論文も対照(C)を欠く症例報告であり,研究内に対照を有する研究はなく,洗浄法も症例ごとに異なっ

ており,これらの論文を用いてのCQの検討を行うことは困難と判断した。以上をもって,本CQについて取り下げ

となった。

参考文献

使用した既存のシステマティックレビュー・Ballinger AE, Palmer SC, Wiggins KJ, et al. Treatment for peritoneal dialysis-associated peritonitis. Cochrane Database

P a r t 2

188

Syst Rev 2014; 26: CD005284. doi: 10.1002/14651858.CD005284.pub3.・Wiggins KJ, Craig JC, Johnson DW, Strippoli GF. Treatment for peritoneal dialysis-associated peritonitis. Cochrane

Database Syst Rev. 2008; CD005284. doi: 10.1002/14651858.CD005284.pub2. Review. Update in: Cochrane Database Syst Rev. 2014; 4: CD005284.

・Wiggins KJ, Johnson DW, Craig JC, Strippoli GF. Treatment of peritoneal dialysis-associated peritonitis: a systematic review of randomized controlled trials. Am J Kidney Dis 2007; 50: 967-88. Review. Erratum in: Am J Kidney Dis. 2009; 54: 585.

その他の参考文献・Ejlersen E, Brandi L, Løkkegaard H, Ladefoged J, Kopp R, Haarh P. Is initial (24 hours) lavage necessary in treatment of

CAPD peritonitis? Perit Dial Int 1991; 11: 38-42.

189

和文索引

アミカシン 75

アミノグリコシド 66, 67, 68, 70, 71

アムホテリシン 74

アンジオテンシン受容体拮抗薬 18

アンジオテンシン変換酵素阻害薬 

18

安静呼気時最大径 19

安全性 140, 142, 145, 147, 178

アンピシリン 70

異化亢進 33

イコデキストリン 14, 15, 18, 46,

116, 120, 132, 149

イソニアジド 75

イトラコナゾール 74

栄養障害 3, 33, 38

エキノカンジン系 74

エタンブトール 75

塩分摂取量 19, 35, 36, 38

ガイドラインパネル会議 118, 120,

122, 125

外部カフ 94, 96, 97, 103

開腹手術 94, 116, 123, 124, 125, 132,

167, 175

確実性 115, 116, 117, 148, 156, 162,

164, 174, 179, 180, 185

合併症 140, 178

合併症(発疹) 153

家庭血圧 16, 18

カテーテル挿入 110

カテーテル挿入術 93, 94, 123, 125

カテーテル抜去 61, 65, 71, 75, 76,

100, 103, 155

カテーテル留置 55, 77

間欠的腹腔内投与 176

患者予後 5, 117, 118

管理栄養士 42

キヌプリスチン / ダルホポリスチン 

70

教育プログラム 78

局所麻酔 124

グラム陰性菌 66, 67, 72

グラム陽性球菌 63, 100

グラム陽性菌 66, 72

クラリスロマイシン 75

クリアスペース 21

グルコースポリマー 120

クレアチニン値 152

経静脈投与 125, 176

経腸管感染 61

経鼻胃管 42

経皮的カテーテル挿入 123

経皮的挿入法 99

血圧管理 16, 18

血液生化学的所見 36

血液中心房性ナトリウム利尿ペプチド 

19

血液透析 3, 8

血液透析開始 126, 180

血液培養ボトル 65

結核性腹膜炎 75

血行性感染 61

血漿中重炭酸(HCO3-)濃度 16

血清アルブミン値 35

限外濾過不全 11, 14, 19, 20, 22,

53, 54

嫌気性菌 63

ゲンタマイシン軟膏 116, 121, 122,

158, 161

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 63,

69

高カリウム血症 3, 9, 140, 142, 145,

147

抗菌薬 62, 65, 66, 67, 68, 102, 103,

116, 125, 176

抗菌薬含有軟膏 122

好中球 64

国際腹膜透析学会 17, 53, 62

コスト 119, 120, 122, 123, 125

コリネバクテリウム 71

再燃性腹膜炎 61, 62

再発性腹膜炎 61

残腎機能 136, 140, 141, 144, 147,

152, 154, 184

残腎機能(尿量) 118, 139, 141, 144,

147

残腎機能(無尿) 139, 141, 144, 147

残存腎機能 4, 5, 6, 11, 18, 19, 20,

24, 25

次亜塩素酸ナトリウム溶液 111

歯科的処置 80

子宮鏡 80

糸球体濾過量 3, 5

子宮内視鏡 79

システマティックレビュー(SR)

33, 68, 77, 78, 94, 102, 120, 121,

122, 126, 131, 135, 136, 149, 158,

162, 167, 180, 184, 187

持続的腹腔内投与 176

死亡率 11, 14, 17, 18, 19, 22, 56, 60,

71

収縮期血圧 16, 17, 18

主観的栄養評価 36

腫脹 103

190

浄化空間 21

小児の推算式 8

小分子溶質 11, 13, 14

上腕筋囲長 37

上腕筋面積 37

上腕三頭筋皮下脂肪厚 37

上腕周囲長 37

除脂肪体重 35

腎移植 3, 4, 8

心胸比 19

真菌 63, 65, 100

真菌性腹膜炎 74

心血管イベント 140, 142, 146

身体計測 36, 37

腎代替療法 3, 4, 5, 6, 8, 20, 59

浸透圧差 12, 14

浸透流 11

推奨レベル 115

推定式 5

数理モデル 11, 12

ステージ 4 3

ステージ 5 3, 5

清浄化透析液 26

脊椎麻酔 124

セファロスポリン 66, 67, 68, 69,

70, 103

全身麻酔 123, 124

全生存率 139, 140, 142, 146, 151,

153

専門医 4, 5, 8

総 Kt/V 11, 13, 24, 25

総括物質移動・膜面積係数 45

臓器損傷 123

鼠径ヘルニア 123

第 3 の細孔 12

体液過剰 9, 18, 19, 33, 35

体液量 8, 11, 13, 22

体液量(細胞外液量) 16, 18, 19

体重減少 33

体成分分析 36

大腸内視鏡 79

ダグラス窩 94, 96, 97, 110

多職種 38, 39

多職種チーム 42

ダプトマイシン 70

ダブルカフ 110

蛋白異化率 37

蛋白喪失 33, 35

チーム医療 38, 39

チタニウムエクステンダー 105,

106

膣瘻 80

中・大分子溶質 12, 14

中性化透析液 14, 15, 16, 46, 51, 54,

56, 57

腸球菌 70

腸内細菌 72

低栄養 24, 25, 36, 42

低栄養状態 33

デキストリン 14, 15

適正透析 11, 13, 16, 19, 24, 30, 31

出口部 61, 62, 64, 93, 96, 97, 100,

103, 104, 110, 111, 121, 132, 158,

162

出口部感染 155

出口部感染予防 101, 121

出口部形成術 94, 98

出口部トンネル感染 160

出口部変更術 103, 105

テクニカルサバイバル 139, 141,

143, 146, 151, 153, 160, 161

透析量 12, 13, 14, 24, 30

導入 3, 4, 6

導入前患者教育 4

糖尿病腎不全患者 126

糖尿病性腎症 34, 126, 132, 180

トブラマイシン 125

ドライウェイト 16, 18, 19, 22, 30

ドレッシングフィルム 102, 105,

106

トロッカー挿入 123

トンネル感染 155

難治性腹膜炎 61, 100

入院 140, 142, 145, 147

尿量 139, 144, 147, 152, 154, 184

ノンスタイレット法 97

排液混濁 63, 64

ハイパフォーマンスメンブレン 26

培養陰性腹膜炎 73

発症率 54, 59, 62, 63, 119, 153, 155

発赤 100, 103

バンコマイシン 66, 125

バンコマイシン耐性腸球菌 70

反復性腹膜炎 61, 65

皮下トンネル 61, 96, 103, 104, 105,

111

非観血的治療 103

鼻腔 121

非結核性マイコバクテリア 75

皮疹 120

被囊性腹膜硬化症 13, 18, 53, 59

病院滞在期間 124, 140, 142, 145,

147

標準化蛋白窒素出現量 35

ピラジナマイド 75

腹腔鏡下手術 97, 116, 123, 124, 125,

132, 167, 168, 169, 174, 175

腹腔内投与 125

複数菌 70, 72

腹壁前壁固定法 98

191

腹膜炎 60, 61, 63, 64, 75, 116, 120,

121, 125, 139, 141, 143, 146, 153,

155, 160, 163, 176

腹膜休息 15, 26

腹膜除水量 154

腹膜透析 3, 4, 5, 6, 8, 33, 34, 42,

43, 45

腹膜透析開始 126, 180

腹膜透析患者 116, 117, 120, 121, 123,

125, 132, 136, 149, 158, 167, 176, 187

腹膜平衡試験 45, 46, 53, 120

腹膜劣化 53, 54, 55, 56

婦人科的原因 79

ブドウ球菌 121

フルコナゾール 74

フルシトシン 74

分子拡散 12

膀胱鏡 79

保険適用外 122, 125

ボリコナゾール 74

マイコバクテリウム属 63

ムピロシン 111

ムピロシン軟膏 116, 121, 122, 158,

160, 161

薬剤 140, 142, 145, 147, 178

有害事象 140, 142, 145, 147, 178

予後 13, 17, 18

予防的抗菌薬投与 79

リーク 80, 96, 106, 124

リネゾリド 70

リファンピシン 75

緑膿菌 71, 100

るい瘦 33

ループ利尿薬 16

レニン・アンジオテンシン・アルド

ステロン系阻害薬 16

レニン・アンジオテンシン系阻害薬 

116, 117, 132

連鎖球菌 70

192

欧文索引

記 号

%クレアチニン産生速度(%CGR) 

35

ACEI 18, 116, 117, 119, 132, 136,

142, 146, 148

ANP 19, 22

ARB 18, 116, 117, 119, 132, 136,

142, 146, 148

β2MG eGFR 9

β2- ミクログロブリン(β2-MG) 

11, 12, 13, 22, 23, 24, 25

bioelectric impedance analysis

(BIA) 18, 19, 37

CA125 47, 49, 54

Candida albicans 74

certainty 115

CKD 3, 5

CNS 69

Cr eGFR 9

CRP 22, 23, 37

cuff shaving 104

CysC eGFR 9

C 反応性蛋白 37

D/D0 Glu 45, 49

D/P Cr 26, 45, 46, 50, 54, 55, 152,

154, 155, 156

dual-energy X-ray absorptiometry

(DEXA) 37

eGFR 3, 4, 5, 6, 8, 9

eGFRCr 9

eGFRCys 9

eGFRβ2MG 9

empiric therapy 89

EPS 13, 53, 54, 55, 56, 59, 60, 61

equivalent urea renal clearance 

21

ESBLs 72

fast transporter 46

FGF23 30

geriatric nutritional risk index

(GNRI) 37

GFR 3, 4, 5, 9, 118, 119, 140, 141,

144, 147, 152, 154

Glucose Degradation Products

(GDPs) 14

GRADE 115, 116

Hb 値 23, 25

High 45, 50, 55, 59

High average 26, 45

IL-6 46, 47, 55

ISPD 17, 53, 55, 62, 64, 65, 66, 68,

73, 75, 78, 89, 94, 100, 102, 103, 104,

122, 162

ISPD ガイドライン 62, 64, 65, 66,

68, 73, 75, 94, 102, 103, 104, 125

IVCe 19

K/DOQI 8, 13, 30, 36, 42

Kt/V 140, 141, 145, 147

Lean Body Mass 35

Low 26, 45

Low average 26, 45

Minds 116

MMP-2 55

MRSA 66, 69, 93, 100, 105, 122

MTAC 45, 46

non-dipper 型 18

normalized PCR(nPCR) 37

nPNA 35

PCR 37

PD+HD 併用療法 11, 14, 19, 20,

21, 22, 23, 24, 26, 30, 31

PD 継続期間 139, 141, 143, 146, 151,

153

PD 離脱 139, 141, 143, 146, 151, 153,

177, 178

PET 45, 46, 50, 53, 55, 59, 60

pH 15, 16

Protein Index 35

PubMed 135, 136, 149, 150, 158,

167, 176, 187

PWAT 98

QOL 5, 33, 118, 124, 170, 173

reverse epidemiology 16, 17

Review Manager software

(RevMan 5.3) 136

rHuEPO 25

RRF 18, 20, 21

SEP 53

slow transporter 46

SMAP 5, 98, 99

SMAP 挿入術 98

subcutaneous pathway diversion

(SPD) 105

Subjective Global Assessment

(SGA) 37

ultra-small pore 12

193

Unroofing-BR 法 105

Unroofing 法 104

VEGF 46, 47

VRE 70

日本透析医学会ブックシリーズ1

腹膜透析ガイドライン 2019 2019 JSDT “Guidelines for Peritoneal Dialysis”                           定価(本体3,500円+税)

2019年11 月18日 第1版第1刷発行

編 集 一般社団法人日本透析医学会    学術委員会 腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループ発行者 鈴木文治発行所 医学図書出版株式会社 〒113 -0033 東京都文京区本郷2-29 -8 大田ビル TEL 03 -3811 -8210 FAX 03 -3811 -8236 URL http: //www.igakutosho.co.jp 郵便振替口座 東京 00130 -6 -132204

編集・デザイン 朝日メディアインターナショナル/印刷 木元省美堂/製本 フォーネット社

Ⓒ 2019 IGAKU TOSHO SHUPPAN Co. Ltd.Published by IGAKU TOSHO SHUPPAN Co. Ltd.Printed in Japan ISBN 978 -4 -86517 -350 -5 C3047・ 本書に掲載された著作物の翻訳・複写・転載・データベースへの取り込みおよび送信に関する許諾権は,

小社が保有します。・ <出版者著作権管理機構 委託出版物>本書の無断複製は著作権法上での例外を除き禁じられています。複製される場合は,そのつど事前に,出版者著作権管理機構(電話03-5244-5088 , FAX 03-5244-5089 , e-mail: [email protected])の許諾を得てください。

腹膜透析ガイドライン

腹膜透析ガイドライン

日本透析医学会ブックシリーズ1

2019 JSDT“Guidelines for Peritoneal Dialysis”

腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループ

腹膜透析ガイドライン改訂ワーキンググループ

一般社団法人日本透析医学会

20192019