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❶ 循環,呼吸,発汗など,自分の意志でできない機能を制御する。主として拮
きっ
抗こう
的に働く交感神経と副交感神経の2つに分けられる。
❷ ホルモンを分泌する器官の総称。主として血液中に微量のホルモンを分泌することにより,自律神経系の調節よりもゆっくりと機能を調節する。口絵②参照。
❸ p.111「ストレス」の項参照。
1 心身相関のしくみとストレス1 心身相関のしくみ 軽い運動をすると,気分が爽
そう
快かい
になり,思考も活
発になります。逆に,気持ちがゆったりとリラックスしていると,体の動き
が軽くなり,スポーツでよい記録を出せることがあります。これらは,心と
体の密接なかかわりを示す心身相関の例です。
スポーツの大会や,練習成果の発表会を控えたときなどに,「勝てるだろ
うか」「うまくできるだろうか」などの思いが出てくることがあります。そ
れは大脳新皮質の働きによるものです。これが大脳辺縁系に影響を及ぼし,
不安を生じさせます。大脳辺縁系によって生じた不安は,自じ
律りつ
神しん
経けい
系けい❶や内
ない
分ぶん
泌ぴつ
系けい❷を介して,意志とは関係なく心臓がどきどきしたり,唾
だ
液えき
の分泌が
減ってのどがかわいたりなど,体の働きに影響を及ぼします。このように,
心身相関のしくみによってさまざまな反応が引き起こされます 図1 。
2 さまざまな原因によるストレス 何らかの原因によって,心や体に負担がかかった状態をストレス❸といいます。日常生活のなかで,私たちはさま
ざまなストレスを体験しています。学校生活での友だちとの対人関係のスト
レスや,満員電車など多数の人々と時間を過ごすときのような社会的な場面
図1 心身相関のしくみとその例
心身の相関とストレス 毎日の生活のなかで,何かに困難を感じて胃が痛くなったり,下
げ
痢り
をしたりすることはありませんか。そのように,心に受けた刺激が体に影響を与えることがあります。心と体は,どのように関係しているのでしょうか。
心の働きは体に,体の働きは心に互いに影響を与えている。
うまくできるかどうかいろいろ考える
不安をもつ
胸がどきどきする口がかわく
思考が活発になる
爽快に感じる
血液循環の促進体温上昇
軽い運動
交感神経が緊張する
体から心へ
心から体へ
心
体
自律神経系・内分泌系
体の諸器官●筋肉
●血管など
大脳辺縁系大脳新皮質
1.現代社会と健康 41
16心身の相関とストレス
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❹ ストレスの原因を,ストレッサーともいう。
❺ ストレスの反応は,警告反応期,抵抗期,疲
ひ
労ろう
困こん
憊ぱい
期き
に分けられる。
❻ Post-Traumatic Stress Disorderの略。大地震や大事故など実際に死傷するようなできごとを体験したり,目撃したりしたとき,それが心の傷となり,ストレスの症状が出る場合をいう。症状としては,眠りが浅くなる,怒りっぽくなる,警戒心が強くなる,集中力が欠けるなどの不安定な状態が続く。
❼ ストレスに耐える力をストレス耐性という。
でのストレスがあります。現代社会では,こうした心理・社会的なものが原
因で起こるストレスが大きな問題です。一方,冬の寒さや,湿度の高い暑い
夏の天候にさらされるなどの,物理的なものが原因で起こるストレスもあり
ます。このように,ストレスが起こるにはさまざまな原因があります❹ 図2 。
2 ストレスの影響と心の健康1 ストレスによる影響 適度なストレスは精神的な発達のために役立つ,という面もあります。しかし,限度をこえたストレスは,心にも体にも
大きく影響します。たとえば,大おお
勢ぜい
の人の前での発表を控えていたり,悩み
ごとや不安を抱えていたりすると,それらが原因で心に緊張が生まれたり,
下げ
痢り
や便べん
秘ぴ
になったり,胃い
痛つう
が起きたりすることがあります❺。不安や悩み
などを原因とする精神的ストレスから,体に何らかの症状があらわれた場合,
それを心しん
身しん
症しょう
といいます。また,命にかかわるような事故や災害を経験した
ときに,そのストレスによって心にPTSD❻(心しん
的てき
外がい
傷しょう
後ご
ストレス障害)な
どの障害が生じることもあります。
2 ストレスと心の健康 私たちには,ある程度のストレスに対して耐えられる力が備わっています。ただ,その力には個人差があり,同じようなス
トレスでも,たいして苦痛に感じない人もいますが,それをとてもつらく感
じる人もいます❼。したがって,自分にふさわしい方法で,適切にストレス
をコントロールし,対処することが心の健康につながります。
考えてみよう
日常生活のなかでのストレスを思い出して,それらが心理・社会的な要因によるのか,それとも物理的な要因によるのかを考えてみよう。
図2 ストレスのしくみと原因
ストレスの原因があって心や体がその影響を受ける。ストレスが大きくなると,心や体にさまざまな影響が及ぶ。
ストレスの原因
ストレスの原因によって心や体が影響を受けている状態
ストレスの原因によってストレスの症状(イライラや腹痛)が出ている状態
通常の状態 ストレス(何らかの原因で心や体に負担がかかった状態)
親の叱責 満員電車 寒さ