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GLMとMIXEDによる2剤2期クロスオーバーデザインの解析
~再考~~再考~
斎藤和宏
株式会社タクミインフォメーションテクノロジー システム開発推進部
Analysis of 2x2 Crossover designusing GLM and MIXED
Kazuhiro SaitoSystem Development Department, Takumi Information Technology Inc.
要旨:2剤2期クロスオーバーのデザインに起因する主効果と
交互作用の関係や 最小 乗平均に いて視覚的に交互作用の関係や、最小二乗平均について視覚的に確認する。また、解析はGLMとMIXEDプロシジャを用い、解析結果の違いについて検討する。
キーワード:
2
2剤2期クロスオーバーデザイン、持ち越し効果交互作用、最小二乗平均、GLM、MIXED
2剤2期クロスオーバーデザイン時期「時期」と区別しやすくするため、「シー
ケンス」ではなく「グループ」と表記1 2
グループ
1
y111
y121
y131
y
Test
e
y112
y122
y132
y
Ref
eren
ce
Yijk
i番目のグループ (i=1,2)j番目の被験者 (j=1,2,…,n)k番目の時期(k=1,2)
ケンス」ではなく「グル プ」と表記
3
本稿ではバランスのとれたデータを扱う
グ
2y211
y221
y231Ref
eren
ce y212
y222
y232
Testグループに無作為に割り
つけられる
クロスオーバーデザインの混合モデル• 本稿で取り扱う解析モデル このモデルに交互作用項はありません
– γi: i番目のグループの固定効果(i=1,2)
– bij: i番目のグループ、 j番目の被験者の変量効果• bij~ N(0,σb
2) σb2:被験者間分散
時 定効
( ) ①ijkkidkijiijk bY ετπγμ +++++= ,
– πk: k番目の時期の固定効果(k=1,2)
– τd(i,k) : i番目のグループ、k番目の時期に対する薬剤の固定効果( d(i,k)=T, R ) 例:d(1,1)=T
– εijk: 被験者内の誤差• εijk~N(0,σw
2) σw2:被験者内分散
4
持ち越し効果とその差異
持ち越し効果• 持ち越し効果
– クロスオーバーデザインの潜在的な脆弱性
– 1つ前の時点の薬剤の効果
– 問題となるのは、持ち越し効果が薬剤によって
持ち越し効果が同じ 持ち越し効果が異なる
薬剤によって異り、交互作用が存在する場合
5
TestReference
時期
1 2時期
1 2薬剤
3要因の組合せと観測の有無 モデル①
クロスオ バ デザインでは要因の組合せが全てそろ ていない• クロスオーバーデザインでは要因の組合せが全てそろっていない
– 3つの要因の8つの組合せの内、4つの組合せのみが観測される。
• 解析モデル①には、交互作用項が存在しない
<グループ 1> <グループ 2>観測されるTest観測されるReference観測されないTest
6
時期1 2
時期1 2
観測されないTest観測されないReference
グループ間差グループ間差があるときにあたかも薬剤・時期の交互作用が存在するかのように見える
3要因の組合せと観測の有無 モデル②
グ プ間差がなく 薬剤 時期の交互作用項が存在• グループ間差がなく、薬剤・時期の交互作用項が存在する解析モデルを想定してみる
– 全要因の組合せを視覚化すると‥‥
<グループ 1> <グループ 2>観測されるTest観測されるReference
7
時期1 2
時期1 2
グループ間差なし
観測されないTest観測されないReference
3要因の組合せと観測の有無 モデル③
グル プ間差も 薬剤 時期の交互作用項も存在するかもしれない• グループ間差も、薬剤・時期の交互作用項も存在するかもしれない
– もし3要因全ての組合せが観測されていれば、主効果と交互作用を両方とも推定できたでしょう
<グループ 1> <グループ 2>観測されるTest観測されるReference観測されないTest
8
時期1 2
時期1 2
観測されないTest観測されないReference
グループ間差 観測されるポイントの推定値は、モデル①とモデル②と同じ
観測される組合せと解析モデル
• 測定される要因の組合せが限られるため、測定される要因の組合せが限られるため、
– 実際にはどの解析モデルが母集団に即しているか、データのみから判別することができない
<モデル①> <モデル②><モデル③>
9
時期1 2
時期1 2
時期1 2
グループ 交互作用グループ+交互作用
主効果と交互作用の混在
グ プ 効果と薬剤 時期 交互作用 効果が• グループの効果と薬剤・時期の交互作用の効果が交絡(高橋,芳賀,大橋(1989),P135)
実際にはグループの効果が存在している
変数Groupが有意であるとき どちらの効果によるものなのか
10
実際には薬剤・時期の交互作用(持ち越し効果の差異)が存在している
変数Groupが有意であるとき、どちらの効果によるものなのか、もしくは両方なのかは分からない
効果の混在を踏まえた解釈
観測される組合せが限られるため• 観測される組合せが限られるため、
– モデル①と②のどちらの解析モデルでも推定可能
– つまり、どちらの効果が存在したとしても、もう一方の解析モデルを当てはめることができてしまう
• ただし、GLMでは交互作用のないモデル①のみ※1
• 解釈解釈
– 無作為化によりグループ間の差はないことが仮定されるのであれば、変数Groupが有意である場合には持ち越し効果の差異が存在していると考えられる。
• ただし、無作為化が十分でない場合にはこの解釈はできない。
11※1 GLMでは被験者をMODELステートメントに含めると、グループの因子も連動してモデルに含まれてしまうため。
時期、薬剤と交互作用の混在
変数 d• 変数Period– 時期と薬剤・グループの交互作用が混在
– 無作為化を前提として、グループが異なると薬剤間差が異なることはないことが仮定されるのであれば、時期の効果として考えられる
• そもそもグループの主効果がないことを仮定しているので、それを含む交互作用も存在しない
• 変数Treatment– 薬剤と時期・グループの交互作用が混在
– 同様に、薬剤の効果として考える
12
GLMによるクロスオーバーデザインの解析
l d t C 1proc glm data=Crossover1;class Subject Group Period Treatment;model LnAUC = Group Subject(Group) Period Treatment
/ ss3;random Subject(Group) / test ;
quit;
CLASSステートメント: 質的変数として扱う因子を指定MODEL テ トメント 目的変数と説明変数(因子)を指定
13
MODELステートメント: 目的変数と説明変数(因子)を指定SS3オプション: Type3の平方和を計算
RANDOMステートメント:変量効果として扱う因子を指定TESTオプション:適切な誤差を用いた検定結果が算出される
GLMプロシジャでは、全ての因子が固定効果であることを想定してモデルを当てはめ、事後的に変量効果を考慮している
GLM:混合モデルの解析結果
GLM プロシジャRANDOMステートメントのTESTオプションによ 混合モデル分散分析に対する仮説検定
従属変数 : LnAUC
Type III要因 自由度 平方和 平均平方 F 値 Pr > F
Group 1 2.020326 2.020326 2.49 0.1319
Error 18 14.601976 0.811221Error: MS(Subject(Group))
持ち越し効果の差異
時期の効果
のTESTオプションによる解析結果
14
Type III要因 自由度 平方和 平均平方 F 値 Pr > F
Subject(Group) 18 14.601976 0.811221 16.73 <.0001Period 1 0.281648 0.281648 5.81 0.0269Treatment 1 3.154406 3.154406 65.05 <.0001
Error: MS(Error) 18 0.872915 0.048495
薬剤の効果2ˆ wσ
GLM プロシジャ
GLM:期待平均平方と被験者間分散RANDOMステートメントによるアウトプット GLM プロシジャ
要因 Type III 期待平均平方
Group Var(Error) + 2 Var(Subject(Group)) + Q(Group)
Subject(Group) Var(Error) + 2 Var(Subject(Group))
Period Var(Error) + Q(Period)
Treatment Var(Error) + Q(Treatment)
期待平均平方を基に被験者間分散を求める
によるアウトプット
15
期待平均平方を基に被験者間分散を求める
( )( )( ) ( ) ( )( )( )( ) ( )
( )( ) ( )
204849528.081122091.0381362815.02
ˆ
ˆ22
2
2
−=
−=
+=+=
ErrorMSGroupSubjectMSErrorMSGroupSubjectMS
GroupSubjectVarErrorVarGroupSubjectMSE
b
b
σ
σ
被験者間分散:
最小二乗平均とその差
最小二乗平均• 最小二乗平均
– 薬剤ごとの、2時点の期待値の平均
• グループの因子が有意であった場合、
– 時期によって薬剤間差が異なる
– →時期ごとの薬剤間差と最小二乗平均の差に乖離が示唆
Testの最小二乗平均
二乗平均の差に乖離が示唆される
16時期1 2Referenceの最小二乗平均
GLM:最小二乗平均の差
lsmeans Treatment /GLMでは固定効
Referenceを参照水準とする
LnY の最小 2Treatment 乗平均 90% 信頼限界
pdiff=control('R') cl alpha=0.1;
LSMEANSステートメント: 最小二乗平均算出PDIFF=オプション: 最小二乗平均の群間差の算出CLオプション: 信頼区間の算出
GLMでは固定効
果モデルを基に最小二乗平均を求めているため、被験者間分散が考慮されていない
17
R 4.077673 3.992284 4.163061T 3.516032 3.430643 3.601420
効果 Treatment に対する最小 2 乗平均
LSMean(i)-LSMean(j) の同i j 平均の差 時 90% 信頼限界
2 1 -0.561641 -0.682399 -0.440883
90%信頼区間
最小二乗平均の差( Test – Reference )
MIXEDプロシジャによる指定 その1
i d d t C 1proc mixed data=Crossover1;class Subject Group Period Treatment;model LnY = Group Period Treatment;random Subject(Group);lsmeans Treatment /
diff=control('R') cl alpha=0.1;run;
18
CLASSステートメント: 質的変数として扱う因子を指定MODELステートメント: 目的変数と説明変数(因子)を指定RANDOMステートメント:変量効果として扱う因子が指定
GLMプロシジャと異なり、MODELステートメントに変量効果( Subject(Group) )となる因子が含まれない
MIXED: 分散成分と固定効果共分散パラメータ推定値
2共分散パラメータ 推定値
Subject(Group) 0.3814Residual 0.04850
固定効果の Type 3 検定
効果 分子の自由度 分母の自由度 F 値 Pr > F
Group 1 18 2.49 0.1319Period 1 18 5.81 0.0269Treatment 1 18 65 05 < 0001
被験者間分散2ˆ bσ
被験者内分散2ˆ wσ
19
Treatment 1 18 65.05 <.0001
GLMでの混合モデルの結果と一致している被験者間分散が直接推定され、GLMでの
手計算の結果と一致している
MIXED:最小二乗平均の差
最小 2 乗平均
被験者間分散も考慮され、GLMの信頼
区間よりも広くなっている
効果 Treatment 推定値 標準誤差 自由度 t 値 Pr > |t| アルファ 下限 上限
Treatment R 4.0777 0.1466 18 27.81 <.0001 0.1 3.8235 4.3319Treatment T 3.5160 0.1466 18 23.98 <.0001 0.1 3.2618 3.7703
最小 2 乗平均の差
効果 Treatment _Treatment 推定値 標準誤差 自由度 t 値 Pr > |t| アルファ
Treatment T R -0.5616 0.06964 18 -8.07 <.0001 0.1
20
最小 2 乗平均の差
効果 Treatment _Treatment 下限 上限
Treatment T R -0.6824 -0.4409
GLMの信頼区間と一致している
GLM: 負の被験者間分散!?
の平均平方よりも b ( )の平均平方が• Errorの平均平方よりもSubject(Group)の平均平方が小さいデータを解析すると、
– 計算式の構造上、被験者間分散の推定値はマイナス
Type III
MS(Subject(Group))
( )( ) ( )
225.145.04.0
2ˆ 2
−=−
−=
ErrorMSGroupSubjectMSbσ
GLM
21
Type III要因 自由度 平方和 平均平方 F 値 Pr > F
Subject(Group) 8 3.600000 0.450000 0.36 0.9151Period 1 1.800000 1.800000 1.44 0.2645Treatment 1 115.200000 115.200000 92.16 <.0001
Error: MS(Error) 8 10.000000 1.250000 MS(Error)
MIXED:RANDOMステートメントによる被験者間分散
共分散パラメータ推定値
RANDOMステートメント共分散パラメータ 推定値
Subject(Group) 0Residual 0.8500
固定効果の Type 3 検定
効果 分子の自由度 分母の自由度 F 値 Pr > F
Group 1 8 0.24 0.6406Period 1 8 2.12 0.1837Treatment 1 8 135 53 < 0001
GLMと異なる
によって推定される共分散パラメータの推定値の下限は0※1
22
Treatment 1 8 135.53 <.0001
proc mixed data=CrossSmallBetVar ;class Group Subject Period Treatment;model LnAUC = Group Period Treatment ;※2
random Subject(Group);run;
※1 PROC MIXEDステートメントにNOBOUNDオプションを付与することで、負の分散を許容できるようになる※2 本稿では、GLMとの比較を容易にするため、Satterthwaiteなどの自由度調整方法は取り扱わない。
MIXED:周辺モデル(CS構造)
( )Y ετπγμ ++++=
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡
++
⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡
12
1
112
2
1 ,00
σσσσσσ
εε
w
w
ij
ij MVN~
( ) ijkkidkiijkY ετπγμ ++++= ,
負の値も許容する共分散であるため、「σb2」 ではなく、「σ1」と表記
混合モデルの変量効果bijと誤差εijkを一つの誤差としてまとめると、被験者ごとの誤差は次のように表される
⎠⎝ ⎦⎣⎦⎣⎦⎣ 112 σσσ wij
• 被験者を変量効果とした前出の混合モデルと、上の周辺モデル(Compound Symmetry構造)は、同等なモデル(菅波,五所(2002))
– ただし、周辺モデルでは、「σ1」に負の値も許容する。
– REPEATEDステートメントを用いて周辺モデルを当てはめる
23
σ1」と表記
MIXED:REPEATEDステートメントによる周辺モデル共分散パラメータ推定値
ブ負の値が
共分散パラメータ サブジェクト 推定値
CS Subject(Group) -0.4000Residual 1.2500
固定効果の Type 3 検定
効果 分子の自由度 分母の自由度 F 値 Pr > F
Group 1 8 0.44 0.5237Period 1 8 1.44 0.2645Treatment 1 8 92 16 < 0001
GLMと一致している
負の値が
推定されている
24
Treatment 1 8 92.16 <.0001
repeated / subject=Subject(Group) type=cs; (Mueller-Cohrs(2006)より)
SUBJECT=:この因子の水準ごとに誤差の相関構造が構成されるTYPE=CS: 誤差の相関構造をCompound Symmetryと指定
まとめ• 変数Groupに混在する主効果と交互作用の効果
Testの最小二乗平均
交互作用の効果
– 無作為化によりグループの効果は存在しないと仮定し、持ち越し効果の差異ととらえた
• 最小二乗平均
持ち越し効果の差異が存在するときには 時期ごとの群
時期1 2Referenceの最小二乗平均
– 持ち越し効果の差異が存在するときには、時期ごとの群間差と乖離することを視覚的に確認した
• 負の被験者間分散(負の共分散)
– MIXEDプロシジャではREPEATEDステートメントを用いることにより、負の共分散を扱うことができるようになった
25
参考文献• 岸本淳司(1996), PROC MIXED入門, SUGI‐J ‘96論文集, 179‐197
• 菅波秀規,五所正彦(2002), MIXEDプロシジャを用いた反復測定データ菅波秀規,五所正彦(2002), MIXEDプロシジャを用いた反復測定デ タの解析, 日本SASユーザー会総会および研究発表会論文集, 149‐158
• 高橋行雄,芳賀敏郎, 大橋靖雄(1989), SASによる実験データの解析, 東京大学出版会
• 松山裕, 山口拓洋(2001), 医学統計のための線形混合モデル, サイエンティスト社
• 吉村功(1987), 毒性・薬効データの統計解析, サイエンティスト社
• Zaizai Lu(2006), Estimate Carryover Effect in Clinical Trial Crossover Designs, PharmaSUG 2006
• Jochen Mueller‐Cohrs (2006), Analysis of incomplete two‐period crossover trials with SAS PROC MIXED, PhUSE 2006
• SAS Institute Inc.(2010), SAS/STAT® 9.22 User’s Guide26