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Title哺乳動物小胞体ストレス応答に関与するシス配列ERSE-IIの解析ならびに転写因子ATF6のターゲティングに関する研究( Dissertation_全文 )

Author(s) 山本, 敬祐

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2004-09-24

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k11159

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion author

Kyoto University

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新制

生一4

哺乳動物小胞体ストレス応答に関与するシス配列ERSE-IIの

解析ならびに転写因子ATF6のターゲティングに関する研究

2004

山本敬祐

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哺乳動物小胞体ストレス応答に関与するシス配列ERSE-IIの

解析ならびに転写因子ATF6のターゲティングに関する研究

2004

山本敬祐

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目次

緒言・・・・・・…  ●●●’●●●●’●”●.・・・・・…   1

第一章 小胞体ストレス応答性シス配列ERSE-IIの解析

実験結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  .....

考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

実験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

 11(∠

第二章A7F6αおよびATF6β遺伝子のターゲティング

実験結果・・・・・・・・・・・・・…  ’’”●●●’●●●”

考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  ........

実験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

2(」(」

結語・・・・・・・…

謝辞・・・・・・・…

論文目録・・・・・…

引用文献・・・・・…

●  ・  ●  ・  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ○  .

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緒言

生物の構成単位である細胞において、特に真核細胞では内部に高度に発達し

たいくつかの小器官が観察される。小胞体(Endoplas血CReticulum;ER)は、新規

に合成された分泌蛋白質や膜蛋白質が糖鎖付加やジスルフィド結合形成を受け

て折り畳まれ正しい高次構造を形成 (フォールディング)する細胞小器官であ

る[1-3]。蛋白質は自身のアミノ酸配列を基に各々に固有の高次構造を形成する

ことによって初めて機能を発揮することができる。したがって、小胞体は正し

くフォールディングされている蛋白質とそうでない蛋白質とを厳密に区別する

蛋白質の品質管理を行う細胞小器官としても重要である。小胞体内腔における

蛋白質のフォールディングは、小胞体局在性の分子シャペロンである石ip/GRP78、

GRP94,糖蛋白質に特異的な分子シャペロンである calreticulin、さらにジスル

フィド結合形成に関与するフォールディング酵素である pDIなどといった小胞

体シャペロンによりフォールディングプロセスが介助されており、分泌系蛋白

質は通常効率よくフォールディングされている。

しかしながら、小胞体ストレスと呼ばれる条件下では、フォールディングプ

ロセスが阻害を受け、高次構造に異常をきたした蛋白質が小胞体内腔に蓄積さ

れるような状況が起こり、小胞体の機能が著しく損なわれる。このような異常

事態が起こると細胞は、(1)小胞体シャペロンを転写レベルで誘導し、小胞体

内のフォールディング容量を増大させる転写誘導、(2)新生蛋白質の翻訳を停止

させ小胞体の負担を軽減する翻訳抑制、(3)異常蛋白質を小胞体から細胞質へ移

しユビキチン、プロテアソーム系で処理する分解(小胞体関連分解:ER-associated

degradation;ERAD)、といった応答機構を活性化させることで小胞体内の恒常

性の維持を図る。特に、小胞体シャペロンの転写誘導機構の解析から、真核細

胞は小胞体内腔の異常蛋白質の蓄積を感知しその情報を核内へ伝達するという

細胞内小器官間の情報伝達機構を備えていることが明らかになった【4]。この小

胞体ス トレスに対する一連の応答は小胞体ス トレス応答あるいは unfolded

proteinresponse(UP良)と呼ばれ、酵母から晴乳動物に至るまで非常によく保存

されている[5-81。

小胞体ストレス応答の分子機構の解析は真核細胞のモデルである出芽酵母を

用いて進展した。まず、1992年に小胞体シャペロン遺伝子の転写誘導に必要十

分なシス配列UpRE(unfoldedproteinresponseelement)が同定され[9,10]、次いで

小胞体膜上で異常タンパク質の蓄積を感知する膜貫通型蛋白質である Irelp

_1-

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(inositol requiring 1)が単離され[14,15]、さらにUpREに結合する転写因子

Hac lp(homologous to ArF and CREB 1)が単離された[11-13]。出芽酵母の小胞体ス

トレス応答は、Hac lpをコードする磁C1前駆体mRNAがIre lpが持つエンド

ヌクレアーゼ活性を介して小胞体ストレス依存的にスプライシングされること

により巧妙に調節されている。スプライシングによりC末端部分が置換された

Haclpは強力な転写活性を有し、標的遺伝子のUPREに結合し転写を誘導する

[16-18】。出芽酵母では、このIrelp-Haclp経路のみで小胞体ストレスに応答し

ている。

 一・方、哺乳動物における小胞体ストレス応答の機構解明は遅れていたが、1998

年に小胞体シャペロンの転写誘導に必須なシス配列CCAA}N9-CCACG(ER

stress response element;ERSE)ヵ洞定された。 ERSEのCCAArには普遍的な転

写因子NF-Yが恒常的に結合するためCCACG部分が小胞体ストレス応答の特

異性を担うと考えられた。CCACGに結合する蛋白質としてベーシックロイシ

ンジッパー(bZiP)型転写因子ArF6(Activating transcription factor 6)およびXBP1

(X-box binding protein 1)が単離同定された[19]。 ArF6は小胞体に局在するII型

の一回膜貫通型蛋白質で、膜に埋まった前駆体pArF6(P)[P;precursor fo㎜]の状

態で恒常的に合成されている[20]。小胞体ストレスが負荷されるとpArF6(P)は

ゴルジ装置へ移行しプロテアーゼSIRS2Pにより2段階の切断を受ける[21-25]。

この結果、細胞質側に位置し転写活性を有するN末端部分がpArF6(N)[N;nuclear

and active fo㎜]として小胞体膜から遊離する。 pArF6(N)は核内へ移行して標的

遺伝子のプロモーター上に存在するERSEにNF-Y存在下で直接結合すること

で小胞体シャペロン遺伝子の転写を誘導する[26-28]。また、組換え蛋白質とし

て大腸菌で発現精製したArF6と結合するオリゴヌクレオチド配列TGACGTG(GIA)が同定された[29]。この配列は小胞体ストレス応答性の転写活

性を持つのだが、その後生理的濃度のArF6とは結合しないことが明らかにな

り、新たにuPREと命名された[30,31]。 ArF6と共に単離同定されたxBP1は、

出芽酵母のHac lpに相当し、 XBP1前駆体mRNAが小胞体ストレス依存的に出

芽酵母IrelpのホモログIRE1のりボヌクレアーゼ活性によりスプライシングを

受ける。その結果、C末端部分が置換して転写活性を持つ蛋白質pXBP1(S)[S;

spliced fom1]が合成され、核内に移行し標的遺伝子のプロモーター上に存在する

ERSEもしくはUPREに結合する事で転写を誘導する[30,32-34]。

 現在、哺乳動物の小胞体ストレス応答においては、出芽酵母のIrelpと機能

的に対応する分子として3つの分子が知られている。Irelpのホモログである小

.2一

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           ER 8跡088   Endoplasmic Reticulum(ER》

→ → →    P P

楠」≦IF2肋P

     ↓

 t「anSlatiOnal a繋enUa価On

 transla価onal induc髄on of

pArF40

P肝6(Nρ

XBPI pre-mRNA一→XBPI mRNA

     ORF2-ERSE    ORF1

団P’GRP78GRP94CHOPHerP

隅↓

F・

ERSE

ORF1+ORF2

 ↓

●pXBP1(S)

「豊「ご職

Fig.0・1. Model for the mammallan unfolded protein respon等e. ln mammalian ER, three

transmembrane sensors(PERK, A「F6, and IRE1)exist and transmit signals across the

membrane. ER stress induces the activation of the PERK。elF2a phosphorylati◎n。A「F4 pathway

(le髭), A「F6 pathway(middle), or IRE1-XBPI pathway(面ght). A.S.;asparagine synthetase[40,

41】.

胞体膜結合性エンドリボヌクレアーゼIRE1、小胞体膜結合性転写因子ArF6お

よび小胞体膜結合性蛋白質リン酸化酵素PERK(PKR-1ike endoplasmic redculum

ldnase)[35]である。 IRE1には、多くの組織で発現が認められるIRElαと消化器

官での発現が認められるIRE1βが存在し【36,37】、 ArF6にも共に多くの組織で

発現が認められるATF6αとArF6βが知られている[26]。 PERKは翻訳開始因子

であるeIF2のαサブユニットをリン酸化することで蛋白質の翻訳抑制という応

答を導く。この翻訳抑制下で逆説的に、転写因子ArF4の翻訳が促進され、シ

ス配列AARE(置血。 acid response element)を介して・転写因子CHOPあるいはア

ミノ酸代謝や抗酸化ストレスに関わる分子群の転写誘導が起こる[38]。小胞体

ストレス応答性のシス配列は、出芽酵母ではUPREのみであるが、哺乳動物で

は4つ知られている。Bipのプロモーター領域から同定されたERSE[19]、人工

一3一

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的なオリゴヌクレオチド配列のスクリーニングで同定された UpREl29]、小胞

体ストレス負荷により最もよく転写誘導される分子の一つである Herpのプロ

モーター領域か ら同定された ATTGG-N-CCACG (ERSE-ⅠⅠ)[39]な らびに

AARE[38,40,41]である。IREl、ArF6およびpERKは、各々下流の情報伝達経

路に転写因子(ⅩBPl,ArF6,ATF4)および転写因子が認識し結合するシス配列

(ERSE,UPRE, ERSE-II,AARE)を備えており、その一連の情報伝達機構は

IRE1-XBPl経路、ATF6経路およびpERKIATF4経路と呼ばれている(Fig.0-1)0

本研究は、小胞体ストレス応答機構の全容解明の一環として、第一章で、小

胞体ス トレス応答性のシス配列 ERSE-ⅠⅠの解析を行った。これまでに、ERSE

にはNF-Y依存的にATF6およびxBPlが共に直接結合し、UpREにはATF6は

直接結合せずに ⅩBPlが NF-Y非依存的に直接結合することが明らかにされて

いた(Fig.0-2)。さらに、IRElを欠損した細胞を用いた解析から、IREトⅩBPl経

路を欠く場合に ERSEの転写活性は影響を受けないが、UpRE の転写活性は消

失することも明らかにされていた(Fig.0-2)。しかし、ERSE-ⅠⅠとATF6もしくは

ⅩBPlといった転写因子との直接結合や ERSE-ⅠⅠの転写活性とIRE1-ⅩBPl経路

との関与については未解明であった。本研究において筆者は、ERSE-ⅠⅠには、NF-Y

依存的に ArF6および NFY非依存的に ⅩBPlが直接結合し、小胞体ストレス

負荷時の Herpの転写誘導が IRE1-ⅩBPl経路の寄与を大きく受けていることを

明らかにした。次に第二章で、小胞体ス トレス応答において、 異常蛋白質の

蓄積を感知するセンサー分子であり転写実行因子でもある小胞体膜結合性転写

因子 ArF6αおよび ArF6βの個体レベルでの機能解析を行うために、遺伝子改変

マウス (ノックアウトマウス)の作製を目指した研究を行った。その第一歩と

して、まず肝性幹 (Embryonicstem;ES)細胞において ATF6αおよび ATF6βの変

異型ヘテロ接合体(+/-)を得た。ArF6αならびに ATF6βは、これまで培養細胞を

用いた解析しか行われておらず、ノックアウトマウスを用いた個体レベルでの

機能が興味深い分子である。

-4-

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ERSE NF-Y-dependent

Binding to ATF6 +++

Binding to XBPI +Transactivation in the absence

of the lREI-XBPI pathway Unaffected

Targets ER chaperones such as BiP & GRP94

ERSE-ll

t7 l

7 -

UPRE

+++

t7 1

Herp &

NF-Y-independent

Abolished

omponents of ERAsuch as EDEM & HRDI

D

Fig. O-2. Summary of the ER stress -response cispacting elements.

-5-

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第一章

小胞体ストレス応答性シス配列ERSE-IIの解析

 Herpは小胞体スト・レス時に最も高いレベルで転写誘導される分子の1つとし

て知られている小胞体膜蛋白質である【38,42]。このHerpのプロモーター領域

にはERSEが見い出され、さらにもう1つERSEともUPREとも異なるシス配

列が存在することが報告されていた[39]。このシス配列はArTGG-N-CCACGを

コンセンサス配列としており、ERSEと共通するCCAATおよびCCACG配列が

含まれている。しかしながら、スペーサー(N)が1塩基であること、一般的な転

写因子NF-Yの結合配列として知られているCCAATとCCACGが、逆向きの

配列になっている点がERsEと大きく異なり、新たにERsE-IIと命名された(Fig.

1)[39]。また、転写活性型であるpArF6(N)を過剰発現した条件下でERsE-IIを

含むHerpプロモーターの転写活性が効果的に上昇することも示されていた[39]。

            AARE       E-box

噂200GTGACGCAGACGCGGCGGGTTGC酊CAGCCCGTGCCCACGTGCTCGGTCCGCCCTCτGCCACCCGGATCC

       ERSE-ll                      ERSE

・130GGACGCCGArTGGGCCACG丁τGGGAGAGTGCCTCCGCCTCAG囲3GGCGGCAGCCACAGAGCGTTCT      囮                      NF-Y site              TATA-box                               ・1「レExon 1

儘60GTCCGCAGAGCCGGGCGCGGGGCTTCTA「『AAAAGGCGCCCGAAGCGGGGGCGCGCGCCCCAGAGACGTGA

Fig.1. Human Herp promo壮er Regulatory motifs are labeled with line. The CCAAT motif is

boxed. Transcription start site is set as+1.

本研究で筆者は、ERSE-IIのシス配列としての機能解析を2つゐ観点からさら

に発展させた。1っはERsE-IIと転写因子ArF6工程びにxBP1との結合を明ら

かにし、ERSEやUPREの場合と比較すること。もう1つはpXBP1(S)を産生で

きない細胞でのERSE-IIの転写活性牽測定し、 ERSEやUPREの場合と比較す

ることである。

一6一

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実験結果

転写因子ATF6αおよび転写因子XBP 1はシス配列ERSE・IIと∫πッ∫’mで直

接結合する

 Kokame, Kらにより、培養i細胞にArF6αの活性型であるpArF6α(N)を過剰

発現させるとERSE-IIの転写活性が上昇することが報告されており、少なくと

もERsE-IIにArF6αは結合すると予想されていた[39]。しかしながら、 ERsE-II

と転写因子との結合を直接確認するための実験はこれまでに行われていなかっ

た。そこで、ERSE-IIと転写因子ArF6及びXBP1との結合を調べるためにゲル

シフト解析(Electrophoresis Mobility Shi且Assay(EMSA)を行った(Fig.2)。

pArF6α(N)およびpXBP1(S)は’ηv’加で翻訳した。 NF-YはNF.撚, NF.YB, NF,

YCから成るヘテロ三量体であるので、それぞれのサブユニットを組み替え蛋

白質として発現精製して三量体を再構成した[27]。ERSEとUPREは対照実験の

ため用いた。Complex Iは32P-ERSBとNF-Yとの2者複合体を示し、 Complex II

は32P-ERSEとNF-YとpArF6α(N)もしくはpXBP1(S)との3者複合体を示す。

NF-Y存在下で32P-ERsEにpArF6(α)およびpxBP1(s)は共に直接結合して

Complex IIを形成した(lanes l and 2)。 NF-Y非存在下で32P-UPREには

pArF6α(N)は直接結合できなかったが(lane 3)、 pXBP1(S)は直接結合してXBPl

complexを形成した(1ane 4)。.これらは既に発表された結果と一致する[30]。

ERSE-IIのコンセンサス配列は逆向きの配列ではあるがCCAArを含むことか

ら、普遍的な転写因子NF-Yとの直接結合が予想された。そこで、まずERSE-II

とNF-Yとの結合を調べた。32日目ERSE-IIとNF-Yをインキュベートするとcomplex

Iを形成した(lane 5)。ここで、さらにERSE-IIとNF-Yとの直接結合示すため

にスーパーシフト解析を行った。スーパーシフト解析は、シス配列と転写因子

とが特異的に直接結合しているかを示すために用いられる解析である。実験手

順としては、シス配列、転写因子ならびに特異的に転写因子を認識する抗体を

同時に加える。シス配列と転写因子とが直接結合していれば、加えた抗体がさ

らに結合することにより複合体の分子量が大きくなり、泳動度が遅くなるため

にバンドが上にシフト(スーパーシフト)する。この場合は、抗NF-YA抗体を用

いたスーパーシフト解析でcomplex Iのバンドが上にシフトし、 ERSE-IIとNF-

Yとの特異的な直接結合を確認した(lane 6)。さらに、 pArF6α(N)と32P-ERSE-II

との直接結合は検出できなかったが(lane 11)、 NFY存在下でpArF6α(N)と32P-

ERSE-IIとはcomplex IIを形成し(1ane 7)、抗ArF6α抗体を加えるとcomplex II

一7一

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 32p,probe

 NF・Y

 pATF6α(N)

 pXBP1(S)

 anti・NF・YA

 anti-ATF6α

 antトXBP1

・。巾exll[

ERSE UPRE… ERSE-ll

XBP1 [complex

・・鵬1[

十十

十一十

十 ÷

十十

十十

十 十

十 十

十 →・

÷

1 2  3 4  5  6 7 8 9 10 11 12 13.

Flg.2. Specmc direct blndlng of p酊F6α(N》and pXBP1(S)to ERSE・II. Each O.1 pmol

oligonucleotide of ERSE(lanes l and 2), UPRE(lanes 3 and 4), or ERSE・ll(lanes 5-13)was

labeled w趾h[α一32P】dCTP and incubated with(+)or without(一)1μl of’ηw8㈲translated

pA「F6α(N)or pXBP1(S)in the presence(+)or absence(一)of recombinant NF-Y(5 fmo1). For

supershi仕assays, a mixture of’ργ酌。 translated pAτF6α(N)or pXBP1(S)in the presence or

absence of r㏄ombinant NF-Y was treated with(+)or without(一)the various antibodies prior t◎

gel electrophoresis. Proteh・DNA complexes formed were analyzed by electrophoretic mobility

shift assay(EMSA). The positions of DNA・protein complexes formed are indicated as complex l,

complex ll, and XBPI complexゲ

は消失したGane 8)。この場合は、抗体を加えたことでさらに大きな複合体にな

り泳動時にゲルに入りきらなかったためと考えている。よって、pArF6α(N)は

NF-Y存在下でのみERSE-1【と結合すると結論した。一方、 XBP 1はNF-Yの非

存在下(1ane 12)および存在下σane 9)のどちらの場合でもERSE一皿と直接結合し

一8一

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てXBPI complexを形成し、抗XBP1抗体を加えるとXBPI complexがシフトし

た(lanes 10 and 13)。これらの結果をまとめると、 ERSE一■はERSEともUPRE

とも異なり、pArF6α(N)との結合はNF。Y依存的であるのに対して、 pxBP1(s)

との結合はNF-Y非依存的であることが分かった。

ERSE-II 32P-probe UPRE

  ERSE-ll      UP RE     Competitor    UPRE      ERSE・II

㌫謬即

吟灘

12345678910

コXBP1[ co巾ex

懲識難灘 

 轟職懸驚轟

  鋭.羅難山

   Fρ.:た;・ .ρ

罐羅二四…難灘

11 12 1314 15’1617 181920

Flg.3. Competltion assay between ERSE・ll and UPRE to bind pXBP1(S). The speci舗c

binding of 1μl of’ηγκm translated pXBP1(S)to each O.1 pmol 32P・labeled probe of ERSE-ll

(lanes 1-10)or UPRE(lanes 11・20)was competed with increasing concentrations(10㍉30一,

100・,and 300-molar excess)of unlabeled ERSE・H(lanes 2・5 and 17-20)or unlabeled UPRE

(lanes 7・10 and 12-15). DNA・protein complexes fomed were analyzed by EMSA. The position

of XBPI complex is indicated.

 pXBP1(S)はUPREとERSE-n:の両方にNF-Y非依存的に結合することが明ら

かになったので、pXBP1(S)との結合に際してERSE-IIがUPR耳と競合するのか

を調べることを目的として、非標識のオリゴヌクレオチドを用いた競合実験を

行った(Fig.3)。非標識のERsE-Hは、32P-ERsE-Hおよび32P-uPREとpxBP1(s)

一9一

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との結合を添加量依存的に競合し、非標識の UPREは、32p-upREおよび 32p-

ERSE-ⅠⅠと pxBPl(S)との結合を添加量依存的に競合した。これらの結果から、

ERSE-ⅠⅠおよび UpREは ⅩBPlの同じ部位と結合することが明らかになった。

ここで、非標識の UPREが 32p-ERSE-ⅠⅠを競合する場合(lanes6-10)と、逆に非

標識のERSE-ⅠⅠが 32p-upRE を競合する場合(lanes16-20)とでⅩBPIcomplexの

形成量を比べると、前者の方がより競合が見られた。よって、UPREはERSE-ⅠⅠ

よりもpxBPl(S)との結合の親和性が高い配列であると考えられる。

シス配列 ERSE-IIと転写因子 ATF6αおよび転写因子 XBPlとの結合には

バリンドロミックな配列が重要である

ERSE-ⅠⅠと転写因子との結合の機構をさらに詳しく調べるために、ERSE-ⅠⅠの

コンセンサス配列である cCACG とそのすぐ下流の 3塩基(TTG)まで含んだ配

列をよく見ると、転写因子がシス配列との結合において好んで認識すると考え

られているバリンドロミックな配列が存在している事が分かった(Fig.4A)。そ

こで、ERSE-ⅠⅠのCCACGの下流の3塩基(TTG)に3'側からトランスバージョン

(T-G,G-T)の形で 1塩基(ml)、2塩基(m2)、3塩基(m3)に順に変異を導入し

た(Fig.4A)01塩基に変異を導入した mlでは、NF-Y依存的な pATF6α(N)との

結合には影響がなく(Fig.4Bcomparelane2withlane1)、NF-Y 非依存的な

pxBPl(S)との結合にも同じく影響が見られなかった(comparelanes7and8with

lanes5and6)。このことから、4塩基からなるバリンドロミックな配列があれば

pxBPl(S)との結合は影響を受けないことが分かった。次に、2塩基に変異を導

入したm2では、結果的にcACGTGの6塩基からなるバリンドロミックな配列

となった。興味深いことに、m2と pArF6α(N)(comparelane3with1)および

pXBPl(S)(comparel弧eS9and10withlanes5and6)との結合は強くなった。これ

は、pArF6α(N)および pxBPl(S)がバリンドロミックな配列を認識していること

を示唆している。同時に 3塩基に変異を導入した m3では、バリンドロミック

な配列が破壊され、pArF6α(N)およびpxBPl(S)との結合が消失した(lanes4,ll,

and12)O以上の結果より、ERSE-IIと転写因子との結合にはバリンドロミック

な配列が重要であることが分かった。

-10-

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AERSE-ll wt

ERSE-11 ml

ERSE-11 m2

ERSE-11 m3

B 32p-probe NF-Y pATF6ct<N)

pXBPI (S)

complex ll[

XBPI [ complex

-N-GGGGATccGGAcGccdAiiiiiG6Gs2g}Ess2giiTrGGGAGAGTGccT

GGGGATccGGAcGccdAiiiiiGli]Gs}s }Nas}s i'TT t GGAGAGTGccT

-NGGGGATccGGA cGccdNi±lllllGccAcGTg t GGAGAGTGccT

GGGGATccGGAcGccdilliiGGGcEIAI:IGI g-g t GGAGAGTGccT

wt ml m2 m3 wt

++++-+-++++----- -・ -+++

ml m2 m3

complex l [

+-+-++++ ++

12 34 56789 10 11 12

Fig. 4. Mutational analysls of the nucleotides outslde of the ERSE-11 consensus sequence

on the binding of pMF6(z(N) and pXBPI(S). (A) The nucleotide sequences of the wild-type

(wt) ERSE-ll and its mutants (ml, m2, and m3) for probes are indicated. The complementary

sequence of CCAAT is boxed and the sequence CCACG is underlined. Mutated nucleotides are

marked by small letters. Palindromic sequences are shown by arrows. (B) Each O.1 pmol

oligonucleotide of either wt ERSE-ll or its mutants (ml, m2, and m3) was radiolabeled and

incubated with (+) or without O lpl of in vitto translated pATF6ct(N) or XBPI(S> in the presence

(+) or absence (-) of recombinant NF-Y <5 fmol). DNA-protein complexes formed were analyzed

by EMSA. The positions of complex l, complex 11, and XBPI complex are indioated.

-11-

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0.8

0.7

診0・6三8 0.5

謹04旦

£o.3董

80.2

0.1

0

口untreated

。+Tm日+Tg

、凸  -脚レ.1

曽‘

諱F1ゴ

         書

a@         ,D ・

          ・!.@         iご垂?     謬          、マレ

章    ・    ご

1

V6ctα

 2

ERS臼1 (x1)

 3ERSE・ll (x3)

4

ERSE

5

UPRE

Fig.5. Transcrip輔onal activlty of ERSE・II durlng ER stress. HeLa cells were transiently

transfected with pGL3-Promoter vector(vector), plxERSE・ll・GL3[ERSE-II(x1)L p3xERSE-ll-

GL3[ERSE-ll(x3)】, pGL3-GRP78(・132)一luc【ERSE】or p5xUPRE-GL3[UPRI司together with the

intemal control plasmid pRL-SV40 containing Renilla Iuciferase gene. Transfected cells were

treated with or without 10μg!ml tunicamycin(Tm)or 1μM thapsigargin(Tg)for 16 h. The

relative lucife旧se activity was detemined by dividing luminescence of舗refly lucife旧se activity by

that of Renilla luciferase activ亜y, The averages fr◎m triplicate deteminations of three

independent transf㏄tions are shown with sセ颪ndard deviations(error bars).

ERSE・Hの持つプロモーター活性

 ERSE一:n:はHerpのプロモーター領域に存在し、 ERSE一皿を含むプロモーター

断片が小胞体ストレスに応答し、ERSE-11に変異を導入すると小胞体ストレス

時にレポーター活性が減少することは既に報告されていたが[39]、ERSE』のみ

で小胞体ストレス応答性が決定されるのかどうか明らかでなかった。そこで、

SV40の最小限のプロモーターとホタルルシフェラーゼ遺伝子を融合させたレ

ポータープラスミドpGL3-Promoter恥ctorのSV40プロモーター上流に、 ERSE-

H含むオリゴヌクレオチド配列を導入したコンストラクトを作製した。コンス

一12一

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トラクトはリン酸カルシウム法を用いてHeLa細胞へ一過性に導入し、ルシフ

ェラーゼ活性を測定した(Fig.5)。小胞体ストレス誘導剤として、新規合成され

たタンパク質へのN型郷国の付加を阻害することにより小胞体ストレスを誘導

することが知られているツニカマイシン(Tm:終濃度10μg/ml)および小胞体膜

上に存在するCa2+一ArPaseを阻害し小胞体内のカルシウム濃度を低下させるこ

とにより小胞体ストレスを誘導するタブシガルジン(Tg:終濃度1μM)を用い

た[5】。誘導剤は細胞回収の16時間前に添加した。SV40プロモーターだけでは

小胞体ストレスに応答しなかった(lane 1)。 ERSE-IIを1つ含むコンストラクト

ではルシフェラーゼ活性が小胞体ストレスに応答して少し上昇し(1ane 2)、

ERSE-IIを3つ直列につないだコンストラクトではルシフェラーゼ活性がさら

に上昇した(lane 3)。 ERSEレポーターとして、ヒトBiPプロモーターからERSE

を3つ含む領域(一132/+7:転写開始点を+1としTArA boxも含む)をレポーター

プラスミドpGL3-B asic V6ctorに組み込んだものを利用した。 UPREレポーター

としてUPREを5つ直列につないだ配列をSV40の最小限のプロモーターを有

するレポータープラスミドpGL3-Promoter V6ctorに導入したものを使用した。

この結果から、シス配列ERSE-IIはERSE及びUPREと同じく単独で小胞体ス

トレスに応答し転写活性を有するシス配列であることが分かった。

ERSE-IIからの転写はIRE1・XBP1経路に依存する

 ERSE-IIの転写活性におけるXBP1の役割を調べるために、 IRE 1αの野生型

(+/+)とホモ接合型(一/一)のMouse embryonic fibroblast(MEF)を用いてルシフェラー

ゼアッセイを行った(Fig.6)。 IRE1α一/-MEFではIRE1αを介したxBP1前駆体

mRNAのスプライシングが起らないためpXBP1(S)が産生されないことが既に

示されている[31,34]。IRE 1αMEFにレポータープラスミドを一過性に導入し、

細胞内のルシフェラーゼ活性を測定した。小胞体ストレス誘導剤として、ツニ

カマイシン(Tm:終濃度10μg/ml)ならびにタブシガルジン(Tg:終濃度1μM)

を細胞回収の16時間前に培地に添加した。その結果、ERSEレポーターは

IRE1α+/+MEFおよびIRE1α≠MEFで、ツ耳塞マイシンもしくはタブシガルジ

ン処理により同じレベルで活性化された(lanes 3 and 4)。この結果は過去の報告

と一致する[31,34]。この結果の解釈として、IRE1-XBP1経路が機能しなくな

った場合でも、ArF6経路によってERSEの転写活性機能が補完されているこ

とを考えている。対照的に、UPREでは、ツニカマイシンあるいはタブシガル

ジン処理したIRE 1α+/+MEFで見られた転写活性が(lane 5)、 IRE 1α一/-MEFで

一13一

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3

2.5

2

51

1

〉躍ξ目垢邸」2。三Φ〉二一Φ匡

0.5

0

ロuntreated

■ボ「m降

旧+Tg

巽 「

ざ,

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躍■

一ゴ

冠 }一 3

幽び ,

裏 孟 ⊆1

ざ;

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=「 、 「

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君§ 竃 章翼

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.ヒ

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■       o7

■        9 心 1 ぬ

         123456781RE1αMEF +ノ+ ・み +ノ+  一1・ +1+ ≠  ・←!+  ・!・

Reporter   Vec量or   ERSE   UPRE   ERSE。l1

9 10 11 12十ノ÷・ 一1。  十!・÷  圃1齢

Vector  ERSE-l l in

     HelP P「omoter

Fig.6.日fects of transcriptional activity of ERSE, UPRE and ERSE-ll in the presence or

absence of四ε7αduring ER stress.1RE1α+1+and IRE1α・!・MEFs were transiently

transfected with pGL3・Promoter vector【vector], pGL3・GRP78P(・132)luc[ERSE】, p5xUPRE-GL3

[UPRE】, or p3xERSE-II-GL3【ERSE・ll】together with the internal control plasmid pRしSV40 with

or w穐hout 10腸g/ml tunicamycin(Tm)or 1μM thapsigargin(Tg)for 16h. lRE1α+1+and lRE1α・み

MEFs were also transiently transfected with pGL3-Herp promoter(一200 to+98)・luciferase fusion

gene,in which ERSE-II(一122 to-112)is functional while ERSE(・88 to-70)is disrupted by

mutagenesis(lanes ll and 12)【39]. The averages from triplicate deteminations of three

independent transfections are shown with standard deviations(error bars).

完全に消失している(1ane 6)。これは、UPREにはpArF6α(N)が結合せず(Fig.21Ime

3)、UPREの転写活性はpXBP1(S)のみに依存しているためと考えられている[31,

34]。興味深いことに、ERSE一:[【はERSEもしくはUPREとは違い、ツニカマイ

シンあるいはタブシガルジン処理したIRE 1α+1+MEFで顕著に見られた転写活

性が(1ane 7)、 IRE1α一!一MEFでは消失するのではなく少し減少した(lane 8)。ここ

一14一

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でアッセイに用いたERSE-IIレポーターはERSE-IIのコンセンサス配列を3つ

直列につないだ人工的なコンストラクトであるので、Herpプロモーターに存在

する内在性のERSE-IIの転写活性を測定した。使用したコンストラクトは、

ERSE-IIならびにERSEを含むHerpプロモーター領域(一200/+98)で、かつERSE

に変異を導入しERSE-IIのみの転写活性を残したコンストラクトである[39]。

Herpプロモーターに存在するERSE-IIの転写活性は、 IRE 1α一/-MEFにおいて顕

著に減少した(lane 12)。以上の結果から、 ERSEの転写活性がIRE 1-XBP1経路

に依存せず、UPREの転写活性がIRE 1-XBP1経路に完全に依存しているのに対

しERSE-IIの転写活性は、 UPREほどではないがIRE 1-XBP1経路に大きく依存

していることが明らかになった。

小胞体ストレス時のHerpの転写誘導はIRE1-XBP1経路の制御を受ける

 Fig.6のルシフェラーゼアッセイの結果から予想されるように、 IRE1-xBP1

経路が小胞体ストレス負荷時のH8η・の転写誘導に大きな影響を及ぼすかどう

かをノーザンプロット解析により調べた。ツニカマイシンあるいはタブシガル

ジンで処理したIRE1α+/+MEFでは、 B∫PおよびH8ηアが経時的に転写誘導され

た(Fig.7, lanes 1-5 and lanes 11-15)。 IRE1α一/-MEFでは・翫Pの転写誘導は

IRE1α+/+MEFと同じように起こっているのだが、∬6η,の転写誘導はIRE1α一/-

MEFではIRE1α+/+MEFと比べると約1/4くらいにまで抑えられていた(lanes

6-10and lanes 16-20)。よって、 H8η,の転写誘導にはIRE 1-XBP1経路が大きく

寄与していることが分かった。これは、B∫Pの転写誘導がERSEを介している

のに対し、E6η,の転写誘導がERSEならびにERSE-IIの両方を介しているため

と考えられる。

,15一

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IREIa +A+ IREI ct V- IREI ct -+l+ IREIa Y- Tm: O2 4 8 12 o 2 4 s 12 (h) Tg:O 2 4 8 12 O2 4 s 12 (h) -:.rl.1"i.1-ii'"7;・3"::J・[IIiiii]・tqiHerpmRNA)tt,-・..t-{'t・i,,gR':Jdl!pl-itL.:JI,il・-I,tiFr[/lll/rd.-,g

ii16ilttt-:.U+2i,:,,,,"[;'L'ii:E:i::,ftIP,RX,",;g+:-:-!itL{i'.,;.i・tLI..Ii":・:

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

-1REIct +A-

Tm "IREIct V' Tg He rp mRNA BiP mRNA He rp mRNA BiP rnR NA GAPDH mRNA GAPDH rnRNA GAPDH mRNA GAPDH mRNA

O 2 4 8 12 (h) O 2 4 8 12 th) O 2 4 8 12 fo) O 2 4 8 12 fo)

Fig. 7. Effects of the presence or absence of the IREI-XBPI pathway on induction of Herp

mRNA and BLP mRNA during ER stress. IREIct+h・ and IREIct-/- MEFs were treated with 10

pg/ml tunicamycin (Tm) or 1 pM thapsigargin (Tg) for the indicated periods. "fota[ RNA was

extracted and analyzed by Northem blot hybridization using a cDNA probe specific to Herp, BiR

or GAPDH. Chemiluminescenoe intensities of each band (Hetp mRNA, BiP mRNA, and GAPDH

mRNA ) were determined using LAS-1000plus Luminolmage analyzer, normalized to GAPDH

mRNA values, and plotted as atoitrary units.

-16-

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考察

 哺乳動物の小胞体ストレス応答においてArF6あるいはXBP1は小胞体スト

レスに応答して、それぞれ特徴的な翻訳後調節もしくは転写後調節により活性

化される。ArF6の活性化は、非ストレス時から小胞体膜に局在している前駆

体ArF6が小胞体ストレス依存的なプロテオリシスを受けて活性化されるとい

う点で、極めて迅速であると考えられている。一方、XBP1の活性化は、小胞

体ストレスにより活性化されたIRE1のりボヌクレアーゼ活性により、 XBP1前

駆体mRNAがスプライシングされ成熟型mRNAから転写活性型のXBP1が翻

訳されるというステップを踏むため、ArF6に比べると時間を要すると考えら

れている。しかしながらXBP1の場合、 XBP1のプロモーター上にERSEが存

在する点を考慮すると、一度活性化されたXBP1は自分自身のERSEに結合す

ることで、IRE 1が活性化されている限りあるいは異常蛋白質の蓄積が回避され

るまで持続的に活性化することができるという点は着目に値する。これらの結

果からArF6経路は迅速な応答を、 IRE1-xBP1経路は持続的な応答を分担して

いるのではないかと考えられている。

 哺乳動物の小胞体蛋白質の転写制御に関与するシス配列としては、ERSE、

UPREおよびERSE-IIの3つが現在知られている。ERSE(CCAAr-N9-CCACG)は、

1998年にヒトBipプロモーター領域から小胞体ストレス応答性のシス配列とし

て同定され、ArF6ならびにxBP1が結合し転写活性化される。 ArF6の主要標

的配列であるERSEは、 Bipを始めとした多くの小胞体シャペロンのプロモー

ター上に存在していることから、ArF6経路は小胞体シャペロンの転写誘導を

行うと考えられている。UPRE(TGACGTG(GIA))は、塩基配列をランダムに作製

したオリゴヌクレオチドライブラリーと組換え蛋白質として大腸菌で発現精製

したArF6との結合親和性を調べるスクリーニングで同定された[29]。ところ

が、過去の報告および本研究で筆者が示したように∫ηv∫∫π)で翻訳したArF6と

UPREとの結合はほとんど即ちれず(Fig.21ane 3)、かわりにXBP1とUPREと

のNF-Y非依存的な結合が確かめられている(Fig.21ane 4)[30]。 ArF6はERSE

に結合するがUPREに結合できないのに対し、 XBP1はERSEにもUPREにも

結合することができることから、XBP1はより多くの標的遺伝子を持つと考え

られる。

 プロモーター上にこのUPREを有し実際にその配列を介して転写誘導される

分子の報告はまだない。しかしながら、小胞体関連分解(ER associated

.17一

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Binding to ATF6

Binding to XBP1

NF-Y-dependent

ERSE ERSE-ll UPRE

十十十

Transactivation in the absence

of the lRE1-XBPI pathway

Targets

Unaffected

ER chaperonessuch as BiP&GRP94

       NF-Y-independent

Mitigated Abolished

H・・p

Fig.8. Summary of the ER stress・responslble o’5acting elements.

degradation;ERAD)に関わる分子群に含まれるEDEM(ER degradation enhancing

α一mannosidase-1ike protein)や HRD 1(3-hydroxy-3-methylglutaryl (HMG)一CoA

reductase degradation 1)は、 IRE 1ノックアウト細胞もしくはXBP1ノックアウト

細胞では全く誘導されないことから、これらがXBP1に特異的な標的分子の候

補として考えられている(Fig.8)[31,43,44]。特に、 EDEMの転写誘導がB∫Pの

転写誘導に比べると明らかに時間的に遅れることは[31]、先にも述べたArF6

とXBP1の活性化機構における時間的な相違との相関が考えられる。これらの

事実から、哺乳動物細胞はArF6およびXBP1を時間軸上で巧妙に使い分ける

ことで、異常蛋白質の修復および分解を効率良く行うのではないかと考えられ

ている[24]。

 本研究において箋者は、ERSE-IIはERSEもしくはUPREと2つの点で異な

ることを示した。1つは、ArF6はNF-Y依存的にERsE-IIと直接結合し、 xBP1

はNF-Y非依存的にERSE-IIと直接結合することであり、もう1つは、 ERSE-II

の転写活性がIRE 1-xBP1経路を欠く細胞で減少することである(Fig.8)。特に、

ERSE-IIの転写活性については、人工的に合成したレポーターコンストラクト

でのルシフェラーゼアッセイ(Fig.5)および内在性のHerpプロモーターでのル

シフェラーゼアッセイ(Fig.6)においてIRE1-/-MEFで転写活性が消失せずに減

少することは、ArF6ならびにXBP1が共に生理的濃度でERSE-IIの転写活性に

寄与していることを示している。ノーザンプロット解析(Fig.7)で、小胞体スト

レスを負荷したIRE 1+/+MEFでのH6η,の転写誘導がβ∫Pの場合とよく似た時

一18一

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問経過で早い段階から起こることは、H6η:,の転写誘導にArF6が関与している

ことを強く示唆している。小胞体ストレス負荷したIRE 1-/-MEFでH6ワの転写

誘導が顕著に減少することは、XBP1の関与が大きいことを示している。ただ

し、H6耽ρの転写がERSE+ERSE-II(ERSEおよびERSE-IIの各々が有する転写活

性能の総和を示す)で制御されているとするとIRE 1-/-MEFにおいて、 ERSEお

よびERSE-IIからのルシフェラーゼ活性が減少する程度(Fig.6)とHerp mRNA

の減少の程度(Fig.7)が完全には相関しないことは、現在のところその理由は分

かっていない。

 Herpは、元来、内皮細胞に傷害を与える化合物であるホモシステインにより

転写誘導される分子として、ディファレンシャルディスプレイ法により同定さ

れた[45]。その後、Herpは蛋白質分解に関与するユビキチン様ドメインをN末

端に持つ小胞体膜結合性蛋白質で、小胞体ストレスによっても転写誘導される

’ことが報告された[461。このゴビキチン様ドメインがHerp自身の分解に関与し

ているという報告[47]や、Herpの過剰発現がプレセニリンを介してβアミロイ

ドの産生を充進させるという報告[48]もあるが、Herpの∫ηv∫voでの機能は未解

明である。ここで、ERsEならびにERsE-IIを有するH8η,の転写誘導にArF6

およびXBP1が関与することから、 HerpがERSEを介して転写誘導される小胞

体シャペロン遺伝子群とUPREを介して転写誘導されると考えられている小胞

体関連蛋白質分解の遺伝子群との橋渡しをするという機能を持っている可能性

も考えられる。

 哺乳動物の小胞体ストレス応答に、ArF6経路ならびにIRE 1-xB P 1経路に加

えてPERK-ArF4経路が存在することは前述したが、このPERK-ATF4経路の下

流では、CHOPあるいはアミノ酸代謝や抗酸化ストレスに関わる分子群が転写

誘導されることが知られている[38]。興味深いことに、最近になってHerpプロ

モーター上にArF4が結合するシス配列AAREが存在するという報告が出され

た[49]。このAAREは、 ArF6経路及びPERK経路による転写制御を受けてい

るCHOPのプロモーター上にも存在する。 Herpのプロモーター上に小胞体スト

レス応答性のシス配列が複数存在し、小胞体ストレス応答に重要な3つの経路

(ArF6経路、 IRE 1-XB P 1経路、 PERK経路)の制御を直接受けるために、 Herp

は小胞体ストレスに対して多様な対応をすることが可能になっていると考えら

れる。

.19一

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                 実験方法

細胞培養

IRE 1α+/+MEE IRE 1α一/一MEFはKaufman博士(University of Michigan)より恵与

された。MEFもしくはHeLa細胞は、10%fetal calf serum,2mMglutamine,100 U/ml

penicillin及び100μg/ml streptomycin sulfateを含むDulbecco’s modi且ed Eagle’s

medium(DMEM)培地(GIB CO BRL)を用いて、37℃の5%CO、インキュベータ

ー中で培養した。

プラスミドの構築

Human Herpプロモーター由来のERSE-II(下記の配列の下線部分)を含むゲノ

ム配列 (cGccGArTGGGccAcGTTGGGAGA:24bp)に対して、5’末端側にBα〃2

HI認識配列の一部(gatc)と3’末端側にB8Z 11認識配列の一部(a)を付着させた

配列A(5・一gatcCGCCGArTGGGCCACGTTGGGAGAa-3’)とこの配列に相補的な

配列B(5’一GArCTTcTCCCAACGTGGCCCAArCGGCG-3’)をoligo DNAとして

設計した。このAと8をアニーリングさせたのち、ライゲーションして連結し、

ERSE-II配列を1つもしくは3つ含むような配列、 ERSE-II(x1,.x3)をSV40プロ

モーターを含むpGL3 Promoter Vector(Promega)のB8111サイトへ挿入レた。Vbctor

に挿入後の配列はABI 3100(Perkin Elmer)で確認した。

トランスフェクションならびにルシフェラーゼアッセイ

MEF細胞は24穴プレート(Falcon)に約10-20%の細胞密度で播いた。翌日、ホ

タルルシフェラーゼ遺伝子を含むレポーター遺伝子(1μg),及び内部標準用の

SV40プロモーターおよびエンハンサー制御下のウミシイタケルシフェラ「ゼ

遺伝子を含むpRL-SV40ベクター(Promega)(0.1μg)を同時に導入し、40時間後

に細胞を20μ1のpassive lysis buffer(Promega)に溶解した。5μ1をDual-Luciferase

Reporter Assay System(Promega)を用いた解析に用い、ホタルルシフェラーゼ活

性およびウミシイタケルシフェラーゼ活性をLuminoskan luminometer(Labsystems)により測定した。相対シフェラーゼ活性は、ホタルルシフェラーゼ

測定値をウミシイタケルシフェラーゼ測定値で補正することにより算出した。

ERSEはヒトBiPのプロモーター領域(一132/+7)をpGL3-B asic V6ctorに挿入した

pGL3-GRP78P(一132)一luc[19,29,31]を用い、 UPREはUPREを5つ連結した

p5xUPRE-GL3[29-31,34]を用いた。

.20一

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ノーザンプロット解析

全RNAは、 ISOGEN(ニッポンジーン)を用いて精製し、2.2 M fo㎜aldehyde(和

光純薬)を含む1.2-1.4%アガロースゲルで1レーン当たり10μgのRNAを電気

泳動し、Hybond N+膜(Amersham)にキャピラリートランスファー法により転写

した。プローブは、Alkaphos direct labeling kit(Amersham Bioscience)を用いて蛍

光ラベルし、LAS-1000plus LuminoImage analyzer(Fuji fi㎞)で蛍光シグナルを検

出した。Herpに対するプローブはヒトHerpのcDNA全長を含む断片を用い、

GAPDHに対するプローブはClontechにより購入した。 BiPに対するプローブ

は、ヒトBipのcDNA断片を用いた[31]。,

ゲルシフト解析

ヒトNF-YA, NFYB, NF-YC三量体は、’組み換え蛋白質として大腸菌で発現さ

せて精製したサンプルを使用した[27]。pArF6α(N)もしくはpxBP1(s)は、 T7プ

ロモーターを有するpcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen)にArF6α(N)もしくは

XBP1(S)を導入したプラスミドから、TNT T7 quick coupled transcription-translation

system(Promega)を用いてゴηv∫∫π,でそれぞれ作製した。抗NF-YA抗体はRockland

社より購入した。抗ArF6α抗体[20]および抗xBP1抗体[30]は、ウサギに対して

免疫した血清を精製して作製されたものを用いた。二本鎖の合成オリゴヌクレ

オチドプローブは、照enow fragmentと[α一32P]dCTP(222TBq/㎜ol)で放射’腰

識し、ProbeQuan G50 Micro Colu㎜s(Amersh鉦n)を用いて精製した・ERsEプロ

ーブはGRP78/B iPプロモーター上に存在する3つのERsEのうちの1つである

ERSE1(GGAGGGCCTTCACCAArCGGCGGCCTCCACGACGGGGCTGG)を含む

41bpの配列を用い、uPREプローブは(TcGAGAcAGGTGcTGAcGTGGcGArTc)

の配列を用い、ERSE-IIプローブはHerpプロモーター上のERSE-II

(GGGGArccGGAcGccGArTGGGccAcGTTGGGAGAGTGccT)を含む41 bp

の配列を用いた。変異型ERSE-IIプローブは、m1(GGGGArCCGGACGCCGArTGGGCCACGTTtGGAGAGTGCCT)  、   m2

(GGGGArCCGGACGCCGArTGGGCCACGTgtGGAGAGTGCCT)  、   m3

(GGGGArCCGGACGCCGArTGGGCCACGggtGGAGAGTGCCT)を用いた。放射性非標識プローブを用いた競合実験 (Fig.3)において、加える非標識プローブ

は、標識プローブのmol数に対して0,10,30,100,300倍量で放射性標識プロー

ブと同時に反応バッファに添加した。反応は、反応バッファ(20mM HEPES pH

7.9,100mM KCI,10%glycerol,1mM MgC12,1mM 2-mercaptoethanol,0.1%

一21一

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Tween-20,20 Fglml poly(dI-dC)・poly(dI-dC)(Amersham))中で、いずれかのオリ

ゴヌクレオチドプローブ(0.1pmol:~9,000 cpm)とin vitroの転写翻訳系でそれ

ぞれ作製したpArF6α(N)もしくはpxBP1(s)、さらにはNF-Y三量体の存在、

非存在下で4℃で1時間行った。試料は、非変性ポリアクリルアミド7.5%ゲ

ル(第一化学)上で、10mA,4℃で210分間電気泳動(12.5 mM Tris base,96 mM

glycine,0.5 mM MgC12,0.5 mM 2-mercaptoethano1,0.5%Tween 20,5%glycerol)した。

泳動後のゲルを乾燥した後に、Imaging plate(F両i film)に露光し、放射活性を持

つバンドはFLA-3000G FIuoroImage analyzer(Fuj i film)で解析した。

一22一

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第二章

A7:F6αおよびA7:F6β遺伝子のターゲティング

 哺乳動物の小胞体ストレス応答で知られている3つの経路のうちの1つであ

るArF6経路は、出芽酵母には存在せず、進化的に新しく獲得された経路であ

る。このArF6経路を担うArF6は、細胞質側領域に転写因子ドメインを持ち

小胞体膜に埋まった前駆体蛋白質pArF6(P)として合成されている。小胞体内腔

に異常蛋白質が蓄積すると、プロテオリシスを受け、細胞質側領域の転写因子

ドメインpArF6(N)が膜から遊離する。遊離したpArF6(N)は核へ移行してERsE

を介して小胞体シャペロンの転写を誘導する。ArF6は、小胞体でめ異常蛋白

質の蓄積から転写誘導まで全てのステップに関与するという点が特徴的である。

一方、IRE 1あるいはPERKは小胞体膜に結合したままで、その下流の転写因子

を介して応答する形式を採る点が大きく異なる。ArF6には、ArF6αおよびArF6β

が存在することが知られているが、いずれもほぼ全身で発現し小胞体ストレス

に応答して切断されるため、細胞レベルおよび個体レベルで機能的な差異があ

るかはまだ明らかでない[26]。このArF6αとArF6βとで実際にその機能にどの

ような差異があるのか、また、ArF6経路のより詳しい解析、 ArF6経路と他の

IRE 1-XBP1経路やPERK経路との関係といった点を調べるためにも、ノックア

ウトマウスを用いた個体レベルでの機能解析は非常に重要である。そのために、

本研究において筆者は、相同組換えを利用したジーンターゲティング法[50]を

用いてAτF6αノックアウトマウスおよびA71F6βノックアウトマウスの作製を目

指した。

一23一

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実験結果

ATF6のゲノム構造

ArF6α

 2004年5月現在のサンガーセンターのEnsemblデータベースによると、マウ

スA]rF6α遺伝子は、全長約160 kbpであり、16個のエクソンから構成されてい

る(Fig.9A)。 ArF6αの機能に重要と考えられるドメインのうち、標的DNA配

列への結合に必要なベーシック領域、二量体化に必要なロイシンジッパー領域、

および膜貫通領域は、エクソン8(186bp)およびエクソン9(92 bp)にコードされ

ている(Fig.9A)。正確に言うとエクソン8およびエクソン9は、ベーシック領

域のN末端アミノ酸より4残基分N末端側のアミノ酸から膜貫通領域中の21

アミノ残基のうちの18番目のメチオニンンまでをコードしていた。

ArF6β、

 同様にEnsemblデータベースから、マウスATF6β遺伝子は、全長755 kbpで

あり、18個のエクソンから構成されている(Fig.9B)。 ArF6βの機能に重要と考

えられるドメインのうち、標的DNA配列への結合に必要なベーシック領域、

二量体化に必要なロイシンジッパー領域、および膜貫通領域は・エクソン10(186

bp)およびエクソン11(92 bp)にコードされている(Fig.9B)。正確に言うとエクソ

ン10およびエクソン11は、ベーシック領域のN末端アミノ酸より4残基分N

末端側のアミノ酸から膜貫通領域中の21アミノ残基のうちの18番目のバリン

までをコードしていた。

 興味深いことに、ArF6の機能に重要と考えられるドメインをコードする2

つのエクソンの塩基数(186bp,92bp)はA]rF6αおよびA】rF6βにおいて完全に一致

した。またこの塩基数の一致は、ヒトA】rF6αおよびAτF6βにおいても当てはま

ることから、よく保存された非常に重要なエクソンであると考えられる(Fig.9)。

 ターゲティングベクターを作製するにあたり、どのエクソンをターゲットに

して破壊するのかを決める必要がある。ターゲティングベクター構築時には、

マウスATF6α遺伝子についてはcDNAもクローニングされておらずゲノム構造

もまだ明らかになっていないという状況であった。一方、Aη死6β遺伝子のcDNA

ならびにゲノム構造は既にデータベースに登録されていた。A1:F6αについては、

ヒトA7:F6αがゲノム上で200 kbpにまたがる比較的大きい遺伝子であることが

分かっていたので、マウスA7:F6α遺伝子も同様にイントロンがほとんどのゲノ

一24一

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A mume A7F6α1  234 567   89   1011121314                      15        16

←一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 160.08kb 一一一■騨一ロー一一一一一國一一一一一一一一一一一一一一一一一一i>

  human!亀7F6α

1  23456 7   89    1011121314          15          16

〈←一曜一■一一一一一一一一國一一一一一一一一一一一一一一一一 19279kb一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一國一一一一一一一一一一〉

B murine A71F6β

1011    121314151617  18

<←一一一一一一一一一一一一一一一一一 7.55kb一一一一一一一一→レ

                678   9 1011 12131415161718

 human AIF6β

1234  5

<←一一一一一一一一一一一12.97kb一一一一一一一一一一一一一一一→レ

Fig.9. Schematic genomic structure of the 477r6 gene翫(A)Genomic structure of the murine

or human A7渦5αgene.(B)Genomic structure of the murine or human、A刀rββgene。 Exons are

indicated by black boxes or red boxes(target exons). Open boxes indicates theロntranslated

region. Exons are numbered.

ム領域を占め個々のエクソンが離れて存在するような遺伝子構造をとることが

予想された。そこで、Aτ酪α、 A7%β共にArF6の機能に重要であるベーシッ

ク領域、ロイシンジッパー領域、膜貫通領域をコードするエクソンをターゲッ

トに決めた。実際にαの場合、ターゲヅトとして選んだエクソンは結果的に2

つ(エクソン8およびエクソン9)で、その間には約4kbのイントロンが介在

し、隣のエクソンには共に10kb以上離れて存在していた。

一25一

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ゲノムライブラリースクリーニング

ArF6α

 マウスA7:F6α遺伝子を得るために、129/Sv系統マウス由来のゲノムライブラ

リーであるLambda FixH(Stratagene)を利用した。マウスA7:F6α遺伝子のベーシ

ック領域、ロイシンジッパー領域、膜貫通領域をコードするcDNA配列をPCR

反応で増やしたプローブ(251bp)を用いて、3つのファージクローン(λφ4,λφ6,

λφ13)を単離した。これらのクローンはそれぞれ一部分が重なるクローンである

こと、および重要3領域をコードするゲノム配列を含むことを制限酵素処理に

よる制限酵素地図作製ならびにシークエンスにより確認した(Fig.10A)。さらに、

これらのファージクローンからエクソン8およびエクソン9の5’側および3’側

のゲノム領域を制限酵素処理で適当な長さの断片にしてpBluescript II SK(+)

(Stratagene)にサブクローニングした。サブクローニングした断片をターゲテ,イ

ングベクター構築時に必要な5’側および3’側の相同領域として使用した。

ArF6P

 マウスAπ死6β遺伝子は比較的短いことから、cDNAの一部をプローブとして

マウスA7F6α遺伝子の場合と同様に、マウスゲノムライブラリーLambda FixII

をスクリーニングした。その結果、4つのλファージクローンが取れ、そのうち

の2つ(λφ16,λφ23)をpBluescript II SK(+)(Stratagene)にサブクローニングした。

λφ23はマウスA7F6β遺伝子のエクソンを全てカバーするようなゲノム領域を持

っていたため、ターゲティングベクター構築にはλφ23をサブクローニングした

断片を使用した(Fig.10B)。

.26一

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A智

5 Exon8 Exon9 3

Sall RV Xhol Notl

〈←一一一一一一一一一一一一一一一一→〉.         λφ6

         λφ4

         λφ13

B

5

           Exop10           Exon11

12345  6789    12 17 18

1kb

一 3

λφ23

    袖16

Fig.10. The relationship between the obtained genomic clones.(A)Phage ciones for

ArF6α. Three clones(λφ4,λφ6, andλφ13)were obtained and contained exon8 and exon9・(B)

Phage clones for AτF6β。 Two cIones(λ,φ16andλφ23)were subcloned.λφ16contained aII exons・

Exons are indicated by black boxes. Some exons are numbered. RV;EooRV.

ターゲティングベクターの構築、エレクトロポレーションならびに

サザンプロット解析

ArF6α

 AτF6α欠損マウス作製にあたり、まず、マウス胚性幹(embryonic steln;ES)細

胞での変異型ヘテロ接合体(+/一)を得るために、相同組換えに必要なターゲティ

ングベクターを作製した。Fig.11がターゲティングベクターならびにサザンプ

ロット解析用の戦略である。ファージライブラリーのスクリーニングから得ら

一27一

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A

VVIId-type allele

Apal RI RI Hpal

Sal;tlnker

"

Exon8(1ee tp)

Sal1

1 kb

Exon 9 (92 bp)

ApalApal SpoISpol Spol Apal

'tsrgeting ..・" .""' ,S i' Nctt ."' ."'Apal y :' loxP loxP pBluescript krgeted allote

5'probe(250bp) neoprobec2oito) 3'ptobe{sooop) -- -Apa; RIRt Apal SpoISpaI SpoI Apal

loxP

Rec. 9 kb

Wt. 4.6 kb

loxP

Apal

ApalWt. 16.5 kb

Rec. 13.5 kb

+/+ +/-

3' probe

c

-9ko

- 4.6 ko

+/+ +/-

s' probe

D

=gig re

:・

2 +/-

"-9kb

neo probe

Fig. 11. 'largeted disruptlon of the ATF6agene. (A> largeting strategy with pomoter trap and

positive negative selection. Exon8 and exon9 (black boxes) were replaced with an SA-

IRESLacZneo cassette. DT:A was used as a negative selection marker. The probes used for

screening are indicated. Wt.; wild type. Rec.; Recombinant. (B)(C)(D) Southern blot analyses of

genomic DNA from ES cells digested with Apal and probed with 3' external probe (B), 5' external

probe(C), or neo probe (D). 1argeted alleles yield 9 kb (B), 13.5 kb (C), and 9 kb (D) products,

respectively. N.H.; a non-homologous clone. Rl; ECoRl

-28-

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れた、約4kbのイントロンを介して存在する2つのエクソン8およびエクソン

9の塩基数の合計は278であり3の倍数にはなっていないことをシークエンス

により確認した。5’相同領域(珈α1/3αJI-5α11)として約8.Okb、3’相同領域(勘61-5ヵ81)

として約0.9kbのゲノム領域を用いた。エクソン8およびエクソン9を含む

約4.5kbpのゲノム領域を相同組換えによりネオマイシン耐性遺伝子を含むカ

セットで置換することでフレームシフトが起こり、すぐ下流でのストップコド

ンの出現やmRNAの不安定化による翻訳妨害によりArF6αの蛋白質合成が阻

害されることを期待した。ここで、ArF6の機能に重要な3領域をコードする

エクソン8およびエクソン9の直前のエクソン7までの転写産物が実際に翻訳

される可能性がある。しかしながら、仮にこのようなN末端のみの部分的な翻

訳産物が合成された場合でも、標的DNA配列に結合するのに必要なベーシッ

ク領域(核移行シグナルとしても機能する)、転写因子同士の二量体化に必要

なロイシンジッパー領域ならびに小胞体局在に必要な膜貫通ドメインの殆どの

領域を欠いた産物であるため転写因子として機能しないと考えている。また、

非相同組換えによるG418耐性コロニーの出現を減らすために、ジフテリア毒

素のAフラグメント遺伝子(DT-A)を3’相同領域の下流に連結した(ネガティブ

選別)。さらに、相同組換え体を厳選するために、ネオマイシン耐性遺伝子の発

現にプロモーター制御配列をあえて抜いたカセットを用いた(プロモータート

ラップ)[51]。こうすることで、ATF6αの正しい対立遺伝子座で相同組換えを

起こしたクローンにおいては、ES細胞内で機能しているA7:F6α自身のプロモ

ーターによりネオマイシン耐性遺伝子が転写される。このプロモータートラッ

プに先立ち、ES細胞のウエスタンプロット解析を行い、 ArF6αおよびArF6βの

蛋白質の発現を確認している(data not shown)。

 作製したターゲティングベクターをくわπで消化して直線化してからエレクト

ロボレーショ’ 当@によりES細胞(J1)に導入し、 G418耐性コロニーをピックア

ップし、サザンプロット解析を行った。その結果、3’プローブはFig.11A下段

で示しているが、Aρα1消化後に野生型では4.6 kbの位置にバンドが検出される

のに対し、予想通り相同組換え体では9kbの位置に検出された(Fig.11B)。3’プ

ローブを用いてG418耐性334クローンをスクリーニングしたところ10クロー

ンの相同組換え体を同定したので、相同組換え体の頻出度は3.0%であった。さ

らに、この10クローンについて、5’プローブ及びneoプローブでのサザン解析

も行った。5’プローブではA四1消化後に野生型では165kb、相同組換え体で

は13.5kbの位置にバンドが検出された(Fig.11C)。 neoプローブではApα1消化

一29一

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後に相同組換え体でのみ9kbのバンドが検出された(Fig.11D)。 loクローンを

調べた結果、全てのクローンが相同組換え体であることを確認した(data not

shown)。

ArF6β

 ArF6βのES細胞での変異ヘテロ接合体(+/一)を得るために、ターゲティングベ

クターを設計した(Fig.12A)。5’相同領域(勤oI一研ηcII)として約6.7 kb、3’相同領

域(N461-5Fα11)として約。.9kbのゲノム領域を用いた。 ArF6βの機能に重要な3領

域をコードするエクソン10およびエクソン11を含む約1kbのゲノム領域を、

ArF6αで用いたネオマイシン耐性遺伝子を含むカセットで置換することで遺伝

子破壊を行うこととした。ネガティブ選別用に、DT-Aを3’相同領域の下流に

連結した。プロモータートラップ法を用い相同組換え体の濃縮を目指すなど全

体的な戦略はAτF6αの場合と同じである。作製したターゲティングベクターを

N∂∫1で消化して直線化してからエレクトロポレーション法によりES細胞(J1)

へ導入し、耐性コロニーをピックアップしサザンプロット解析を行った。3’プ

ローブはFig.12A上段で示しているが、 Bα〃2HI消化後に野生型では8kbの位

置にハンドが検出されるのに対し、予想通り相同組換え体では4.5kbの位置に

ハンドが検出された(Fig.12B)。3’プローブを用いてG418耐性433クローンを

スクリーニングすると13クローンで相同組換えが起こっていた。さらに、neo

プローブでのサザンプロット解析を行った。neoプローブによりBα〃2HI消化後

に相同組換え体でのみ45kbのバンドが検出された(Fig.12c)。13クローンのう

ち2クローンについてネオマイシン耐性遺伝子のゲノムへのランダムな挿入が

確認されたため、現在11クローンを相同組換え体とみなしている。5’プローブ

は保持しているが、現時点で検出に成功していない。しかしながら、相同組換

え体を厳選するためにも5’プローブでのサザン解析は今後行う必要がある。

一30一

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A

Wild-typo allele

HinctlNclo1 Xbol BamHl

ExonlO(IB6 bp)Exonll(92 bp)

Hincll lhldel SaSt

3' probe(260 bp)

- BamHl

1 kb

dlargeting /" --vector "" Net1 i---

t--

-:-

sa1

T3argeted allote

Ndel

sasl s.

---t

"x --}-

prcs

Spol saI

Wt. 8 kb

pBluescript

IRES lacz neo rloxP

su1

loxP

neo probec2ol op)

- su1 BatnHt

UIESlaCZ neo

laxPBarnHl ioxP

Rec. 4.5 kb

c+/+ +/-

3' probe

--

8 kb

4.5 kb

i 2 +/-

A3iF・ L.

I-t,

.・E :;. - "-t

neo probe

4.5 kh

Fig. 12. fargeted disruption of the ATFop gene. (A) 'largeting strategy for the A7Top gene is

essentially the same as one for the A7F6a gene. Exons 10 and 11 (black boxes) were replaced

with an SA-IRESLacneo cassette. The probes used for screening are indicated. Wt.; wild type.

Rec.; Recombinant. Exons except 10 and 11 are indicated by gray boxes. (B)(C) Southem blot

analyses of genomic DNA from ES cells digested with BarnHl and probed with 3' external probe

(B) or neo probe(C). fargeted alleles yield 4.5 kb products. N.H.; a non-homologous clone.

-31-

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考察

 ArF6αおよびArF6βのノックアウトマウス作製を目指して、ターゲティング

ベクター構築のために必要なマウスゲノム断片をマウスゲノムライブラリーか

らスクリーニングする段階から始めた。マウスArF6αについては、筆者が研究

を始めた時はまだクローニングされておらず、cDNAおよびゲノム情報が無い

状況から開始した。ターゲットにするエクソンを決めるにあたり、通常2種類

の選択肢がある。(A)翻訳開始コドンArGを含むエクソンを選ぶ[52,53]、(B)

機能に重要なドメインをコードするエクソンを選ぶ[51]の2種類である。本研

究においては(B)を選択した。小胞体ストレス応答に関連する分子で既にノック

アウトマウスが作製されている分子をみてみると、Ron, D.らによるIRE1α、

IRE Iβ、およびPERKについては全て膜貫通領域をコードするエクソンをター

ゲットに選んでおり[37,54,55]、Glimcher, L.H.らによるXBP1についてはエク

ソン1およびエクソン2をターゲットに選んでいた[53,56]。

 小胞体に局在し異常蛋白質の蓄積を感知するセンサー分子としては、小胞体

シャペロンの転写誘導を担うArF6の他に、翻訳抑制に働くPERKと、出芽酵

母のIre l pのホモログIRE 1αおよびIRE 1βが知られている。 ArF6以外の分子に

ついては全てジーンターゲティングを用いたノックアウトマウス作製による個

体レベルでの解析結果が既に報告されており、PERK経路、 IRE1-XBP1経路の

生理的意義ならびに分子機構解明が飛躍的に発展した。例えば、小胞体ストレ

スを感知して小胞体シャペロンの転写誘導を行うIRE 1αは全身に発現しており、

IRE 1αノックアウトマウスは胎生95日から11.5日の問に致死に至る[37]。ここで

注目すべきは、IRE1α一/-MEFを用いた細胞レベルでの解析で、小胞体ストレ

ス応答のマーカーである窺Pの転写誘導にほとんど影響が見られなかったこと

である[31,34]。IRE1αは、マウスの個体発生においては必須の分子であるが、

小胞体シャペロンの誘導という観点では小胞体ストレス応答に必須の分子では

ないと考えられる。これは、哺乳動物ではIRE1-XBP1経路に支障をきたした場

合でも、ArF6経路やPERK経路によって小胞体ストレス応答が活性化される

からと考えられている。IRE1βはIRE1αと同じく小胞体シャペロンの転写誘導

を行うが、その発現は消化器官の上皮細胞に限定されている。IRE1βノックア

ウトマウスは生後正常に育ち、腸炎を引き起こす薬剤であるデクストラン硫酸

ナトリウムを授与した場合にのみ感受性が増加すると報告されている[54]。ま

た、IRE 1経路の下流に存在しIRE 1αのりボヌクレアーゼ活性の基質であるXBP1

一32一

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についても個体レベルでの機能解析がなされている。XBP1ノックアウトマウ

スでは、肝臓の発育不全が起こり胎生期12.5-14.5日で致死に至る【53]。さらに、

免疫細胞特異的にXBP1をノックアウトした場合、 B細胞が抗体の産生分泌を

行う形質細胞へ分化することができなくなるという表現型が報告されている

[56]。最後にPERKは小胞体膜貫通型蛋白質リン酸化酵素で小胞体ストレス時

には、翻訳開始因子elF2のαサブユニットをリン酸化し、その結果、蛋白質の

翻訳が抑制されることが知られている。PERKノックアウトES細胞は小胞体

ストレスに対しての感受性が野生型に比べて著しく増大し細胞の生存も悪くな

る[55】。PERKノックアウトマウスでは、膵臓が機能不全に陥り生後数週間で

糖尿病の所見が観察される[57]。上で挙げた小胞体ストレス応答関連分子は

IRE1β以外は全て全身で発現されているにもかかわらず、ノックアウトマウス

において特定の器官で際立った表現型が報告されていることは非常に興味深い。

特に、生体内において蛋白質合成が非常に盛んな器官、例えば、肝臓、膵臓、

腎臓、脾臓等では蛋白質の品質管理がより厳密になされる必要があるため、ノ

ックアウトによる異常が大きい影響を及ぼすからかもしれない。これから将来

のArF6αおよびArF6βノックアウトマウスの個体解析にあたっても充分に考慮

すべき点であろう。今後は、得られたES細胞での相同組換え体クローンをマ

ウスの胚盤胞(blastocyst)ヘマイクロインジェクションすることでキメラマウス

を作製し、キメラマウスを戻し交配(backcross)してキメラマウスに導入したES

細胞が生殖系列細胞に分化した(germline transmission)ことを確認する。あとは

キメラマウスの子孫として生まれてくるヘテロ(+/一)マウスのオスとメスを選び

交配させることでホモ(一/一)マウス(ノックアウトマウス)が得られる。今後、

ArF6αならびにArF6βの欠損が及ぼす影響をMEFや個体を用いて解析し、小

胞体ストレス応答の機構解明に役立てるつもりである。

.33一

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                実験方法

ターゲティングベクターの構築

ArF6α:129/SvマウスのゲノムライブラリーであるLambda Fixl【library

(Stratagene)から、ベーシック領域、ロイシンジッパー領域及び膜貫通領域に対

応するマウスATF6αcDNA配列をPCR(Forward primer:5’一CAGAAGTATGGGTTCGGATA皿3’,    Reverse     primer:    5’一

ACACAGACAGCTCTTCGCTTT-3’)で増幅してプローブに用い、3つのゲノムク

ローンを単離した。全てのクローンはベーシック領域及びロイシンジッパー領

域をコーディングするエクソン8およびエクソン9を含み、pBluescript II SK(+)

(Stratagene)にサブクローニングした。5’側の相同領域は、1かα1認識配列を5α∬認

識配列に変換し下流の翫∬との8kbの長さの領域で、3’側の相同領域は勘61

認識配列から5ρ81認識配列までの約。.9kbの長さの領域を選んだ(Fig.11A)。

エクソン8,9を含む約4.5kbのゲノム領域を、SA(splicing acceptor)、IRES(internal

ribosome entry site)、 LacZ、プロモーターを抜いたネオマイシン耐性遺伝子を含

むpIRESLabZneopolyAカセットで置換することでプロモータートラップ法によ

る遺伝子破壊を試み、ネガティブ選別用カセットとしてpolyAを含まない

pMC 1-DTAカセットを用いた[51】・

ArF6β:ArF6αと同じくLambda FixH library(Stratagene)からA7F6βのcDNAを

PCR(Forward primer:5’一GGCAArTGTAAAGGAAGACG-3’, Reverse primer:5’一

ArAAACTGACTTCTGCCACC-3’)で増幅して作ったプローブを用いて4つのゲ

ノムクローンを単離した。うち2つのクローンをpBluescript II SK(+)(Stratagene)

にサブクローニングした。5’側の相同領域は、勤oIからH∫ηcllまでの約6.7 kb、

3’側の相同領域はく娩1から3α∬までの約0.9kbのゲノム領域を用いた。ポジテ

ィブ選別用カセットおよびネガティブ選別用カセットにはArF6αで用いたもの

と同じネオマイシン耐性遺伝子を含むカセットおよびDT-Aカセットをそれぞ

れ用いた(Fig.12A)。

DNAトランスフェクション

エレクトロポレーションのためにマイトマイシンC処理をした胎仔線維芽細胞

(Embryonic fibroblast:EF>細胞を0,2%ゼラチンコートした10 cmディッシュに播

いた。ES細胞(J1)はこのEF細胞の上に播き、 ES培地(DMEM(GIBCO),0.1 mM

2-mercaptoethanol(SIGMA),5x 104U ESGRO(Murine Leukemia inhibitory Factor,

一34一

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GIBCO),1%NEAA(MEM Non-Essential Amino Acids Solution, GB CO),20%FB S

(Fetal Bovine Serum, GIBCO))で培養した。マイトマイシンC処理したネオマイ

シン耐性用のEF細胞はエレクトロポレーションしたES細胞を播く前に、10 cm

ディッシュ6枚に播いた。QIAGEN maxiprep kit(endo一仕ee)で精製したArF6αお

よびArF6βのターゲティングベクター(30μg)を制限酵素Nd’1で消化して直線

化してから、エレクトロポレーション法(400V 25μF:Gene Pulser(BioRad))に

よりArF6αは2x lo7個、 ArF6βは4x lo7個のEs細胞にトランスフェクション

し、6枚の10cmディッシュに各々播いた。エレクトロポレーションしてから

36時間後からその後はポジティブ選別のために175μg/m1の. G418(GIBCO)を

含むES培地で培養した。 G418耐性コロニーのピックアップはエレクトロポレ

ーションしてから8日後から14日後まで続けた。ピックアップしたコロニー

はトリプシン処理して半分に分け2枚の96we11プレートに播き、1枚はストッ

ク用に培養して20-50%コンフルエントになると一80℃へ凍結保存し、もう一枚

はサザン解析用に96wellプレートから24 wellプレートに移して70%以上コン

フルエントになると1ysis buffer(10 mM Tris-HCI pH 8.0,25 mM EDTA pH8.0,75

mM NaCl,1%SDS)に終濃度1F9/ml Proteinase K(Merk)を入れてES細胞を溶解

した。

サザンプロット解析

サザン解析用にESクローンを24 wellプレートで培養し、70%以上コンフルエ

ントの状態でlysis buf6erに溶かして回収した。 lysis bufferからフェノール、フ

ェノール:クロロホルム(1:1)、エタノール沈澱を行いゲノムES DNAを精製し

た。全DNA量の1/3を37℃で一晩、制限酵素(ArF6α:Aρα1, ArF6β:Bα〃3HIで

消化した。サザンプロット解析用のプローブ標識にはDIG System(Roche)を用

いた。ArF6αおよびArF6β共に、ゲノムDNAサブクローニングしたプラスミ

ドを鋳型にしてPCR反応によりdigoxigenin(DIG)を取り込ませたPCR産物を

スクリーニングプローブとした。サザンプロット解析用のプローブ作製のため

に必要なPCR primerとして、 ArF6αの3’プローブは(Forward primer:5’一

CTCTTGACCCTGTGTCTTCTGT-3,    Reverse     primer:    5’一

ArACAAACGACACCAGGGArGC-3’)、5’プローブは(Forward primer:5’一

GTGTTTAGAArTCCAGAGGAAC-3’,    Reverse    primer:    5’一

GAcccAcTGGAATAAcccAGAA-3’)で、 ArF6βはゲノムライブラリーのスクリ

ーニングの時と同じPCR primer pairをそれぞれ用いた。ネオマイシン耐性遺伝

一35一

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子の内部で設計したneoプローブのためのPCR primerは、(Forward primer 5’一

TGGGCACAACAGACAArCCG-3’,Reverse primer 5’一ACTTCGCCCAATAGCCAG-

3’)をそれぞれ用いた。ハイブリダイゼーションはDIG Systemのプロトコール

に従った。バンドの検出は、CDP-Star(Amersham)を用いた化学発光を行い、

LAS-1000plus LuminoImage analyzer(F両i Film)を用いた。

一36一

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結語

 筆者は、哺乳動物における小胞体ストレス応答に関わるシス配列ERSE-IIの

解析と転写因子ArF6についてのターゲティングに関する研究を行い、以下の

結果を得た。

第一章 小胞体ストレス応答性シス配列ERSE-IIの解析

 小胞体ストレス応答性シス配列ERSE-IIには、転写因子NF-Y依存的に転写

因子ArF6が直接結合し、転写因子NF-Y非依存的に転写因子xBP1が直接結

合することを示した。ERsE-IIの転写活性は生理的濃度のArF6およびxBP1に

より制御されていることも明らかにした。ERSE-IIは、 ERSEおよびUPREの

それぞれの特徴を合わせ持つことが本研究において明らかになり、このことか

らERSE-IIをプロモーター領域にもつ遺伝子は小胞体シャペロンもしくは蛋白

質分解に何らかの形で関わる分子であることが考えられる。

第二章 A7:F6αおよびA7:F6β遺伝子のターゲティング

 相同組換えを利用したジーンターゲティング法を用いて小胞体膜結合性転写

因子A】rF6αおよびA]rF6β遺伝子のES細胞での変異型ヘテロ接合体を得た。

一37一

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謝辞

 本研究の終わりに臨み、本研究の機会を与えて下さいました京都大学大学院

生命科学研究科 生体システム学分野教授 根岸学 博士に謹んで謝意を表し

ます。

 また、終始御指導と御鞭燵を賜りました京都大学大学院理学研究科 生物物

理学教室 ゲノム情報分野教授 森和俊 博士に深甚なる謝意を表します。

 本研究に際し終始有益な御助言を賜りました京都大学大学院理学研究科研究

員 吉田秀郎 博士、京都大学大学院理学研究科 生物物理学教室 ゲノム情

報分野助手 岡田徹也 博士、京都大学大学院生命科学研究科生体システム学

分野の諸氏に謝意を表します。

 ノックアウトマウス作製にあたり、群馬大学生体調節研究所細胞構造分野教

授、原田彰宏 博士、群馬大学生体調節研究所細胞構造分野助手 佐藤隆史 博

士、群馬大学生体調節研究所細胞構造分野の諸氏に謝意を表します。

 最後に、研究に専念する環境を与えて下さり、また生活全般においても筆者

を温かく見守って下さった父 敏良、母 憲子に心から感謝いたします。

.38一

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論文目録

本研究の主要部分は以下の論文に公表した。

Keisuke, Yamamoto., Hiderou, Y6shida., Koichi, Kokame., Randal J. Kauf血an., and

Kazutoshi, Mori.(2004)

Diffbrential colltribution of ArF6 and XBPl to the activation of endoplasmic reticulum

stre串s-responseive d3-acting elements ERSE, UPRE and ERSE-II. Journal of

Biochemistry.(in press).

一39一

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protein) gene product related to activating transcription factor 6 as a transcriptional

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