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20160403 第3回法と経済学勉強会 事故法_第8章及び第9章

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第 3 回法と経済学勉強会第Ⅱ編事故法第 8 章及び第 9 章2016/4/3( 日 )

FED 事務局

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Page 2: 20160403 第3回法と経済学勉強会 事故法_第8章及び第9章

目次• 第Ⅱ編 事故法– 第 8 章 責任と抑止:基礎理論– 第 9 章 責任と抑止:企業の場合– 第 10 章 抑止の分析の展開– 第 11 章 責任、 リスクの負担、保険– 第 12 章 責任制度と運営費用

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アイスブレイク

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ギャンブルと投資の違いは何か?

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前提条件• 当事者はリスク中立的• 目的関数Min 社会的総費用    = 「注意にかかる費用」   +「事故による期待損害額」

注意水準 注意の費用 事故の確率事故による期待損害額 社会的総費用

なし 0 15% 15 15

中 3 10% 10 13

高 6 8% 8 14

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無責任ルール、厳格責任ルール過失責任ルール無責任ルール ・事故を起こしても責任が課されない場合は、加害者は注意をまったく払わない。・社会的総費用は一般に最適な水準を超えてしまう。

厳格責任ルール・加害者は事故で生じたすべての損害分を支払う・加害者の目標は、社会的総費用を最小にしようとする社会の目標と一致。・加害者に最適な「中」レベルの注意をさせることになる。

注意水準 注意の費用 事故の確率事故による期待損害額 社会的総費用

なし 0 15% 15 15中 ( 相当の注意 ) 3 10% 10 13高 6 8% 8 14

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過失責任ルール・加害者は自らに過失があったときに限り、事故で生じた損害の責任を負う。・「過失があるとき」というのは、加害者の注意水準が、裁判所の定める「相当の注意」と呼ばれる水準に達していなかった時をさす。・「相当の注意」の水準を、社会にとって最適な注意水準と等しくなるように裁判所が設定をしていれば、加害者は「相当の注意」を払うようになり、社会にとって最適な結果を実現する。

注意水準 注意の費用 責任 期待責任額加害者にとっての

総費用なし 0 あり 15 15中 ( 相当の注意 ) 3 なし 0 3高 6 なし 0 6

表 8.1  加害者の注意と事故リスク  P203

表 8.2  過失責任ルール  P205

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責任ルールの比較• 厳格責任ルールも過失責任ルールも社会的に最適な行動という結果を導く。• 厳格責任ルール:裁判所が判断しなければならないのは、発生した損害の大きさだけ• 過失責任ルール:発生した損害に加えて、実際に払われた注意水準を判定し、社会にとって最適な「相当な注意」を割り出す必要がある。

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双方的事故と注意水準Min 社会的総費用    = 「加害者が注意のために払う費用」+    「被害者が注意のために払う費用」+    「事故による期待損失額」

加害者の注意 被害者の注意 加害者の注意費用

被害者の注意費用

事故の確率 期待損害額 社会的総費用× × 0 0 15% 15 15

× ○ 0 2 12% 12 14

○ × 3 0 10% 10 13

○ ○ 3 2 6% 6 11

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加害者 被害者 結果

無責任ルール 加害者は注意を払おうとしない。事故による損害が減るため、注意を払う。

被害者が注意をするかしないかに関わらず、加害者は注意をしない。また、加害者が注意をするかしないかに関わらず、被害者は注意をする。支配戦略の状況。

厳格責任ルール① 事故で生じた損害の責任を負うため、注意を払うインセンティブを持つ。

加害者から補償されるため、注意を払わない。

加害者は「注意する」、被害者は「注意しない」が支配戦略となる。

厳格責任ルール②(過失寄与の抗弁を認める。)

「相当の注意」の水準を社会的に最適な水準に裁判所が定めていれば、相当の注意を払う。

「相当の注意」の水準を社会的に最適な水準に裁判所が定めていれば、相当の注意を払う。

被害者は「注意する」が支配戦略。加害者は「注意する」は支配戦略ではないが、被害者が注意することを予想し、「注意する」を選択する。

過失責任ルール①

「相当の注意」の水準を社会的に最適な水準に裁判所が定めていれば、相当の注意を払う。

「相当の注意」の水準を社会的に最適な水準に裁判所が定めていれば、相当の注意を払う。

加害者は「注意する」が支配戦略。被害者は「注意する」は支配戦略ではないが、加害者が注意することを予想し、「注意する」を選択する。

過失責任ルール②(寄与過失の抗弁を認めるケース)

過失責任①と同じ。被害者に最適な行動をとらせるという目的からすれば、過失責任ルールの場合に、寄与過失の抗弁をさらに認める必要はない。

過失責任ルール③(過失相殺ルール)

加害者も被害者も「相当の注意」を払わなかった場合のみ、双方で被害を分担する。

無責任ルール、厳格責任ルール、過失責任ルール

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責任ルールの比較• 注意を払う動機を被害者に与えることが出来ないため、厳格責任ルールは社会にとって最適な結果を導かない。• 「最適な注意を払うと事故による損害の負担を完全に回避できる」か「最適な注意を払うと当事者が実際に負う期待損害額の大きさを最小に出来る」のどちらかの理由により、過失責任ルールは社会にとって最適な結果をもたらす。• 最適な状況を導く各ルールを適用するためには、事故による損害の大きさ、実際に払われた注意水準、そして加害者または被害者の「相当の注意」の最適水準を裁判所が判断しなければならない。

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現実に用いられいる責任ルール

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アメリカ 過失相殺ルール寄与過失の抗弁つきの過失責任ルール寄与過失の抗弁つきの厳格責任ルール

イギリス、フランス、ドイツ過失相殺ルール寄与過失の抗弁つきの厳格責任ルール

日本・大原則は過失責任ルール・日本法における自動車事故の損害については、運行共用者が原則として責任を負うが、運行共用者側に過失がなく、被害者に過失があるときは、責任負わない旨が定められている。

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一方的事故:注意水準と活動水準Max 「活動に従事することで得られる効用」 −    ( 「注意の費用」+「事故による期待損失額」 )   

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社会的総費用

活動水準 効用の合計 注意費用の合計 事故による損害額の合計

社会的厚生0 0 0 0 01 40 3 10 272 60 6 20 343 69 9 30 304 71 12 40 195 70 15 50 5

P223 表 8.4  活動水準、事故、社会的厚生

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無責任ルール、厳格責任ルール過失責任ルール

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無責任ルール ・加害者は注意を怠るようになるだけではなく、活動を行いすぎるようになる。・加害者は、追加的な効用が少しでも得られる限りは活動を行い続けるようになる。・加害者が複数いる場合には、いわゆる共有地の悲劇に起る。

厳格責任ルール・加害者の効用から加害者の負担する期待費用を差し引いたものが社会的厚生の値に等しくなる。・最適な注意水準を選択すれば、活動の度に自分が負担する期待費用を最小にすることができるため、加害者はそのような注意水準を選択する。・加害者は社会的厚生を最大にするように行動する。

過失責任ルール・裁判所が「相当の注意」を最適な水準に設定すれば、加害者は過失責任ルールの下で最適な注意を払うようになる。・しかし、加害者は「相当の注意」をはらうので、自ら起こしたどんな事故の損害についても責任を免れてしまう。・結果、加害者は得られる効用から注意の費用を差し引いた値が正になるときはいつでも活動を行う。

活動水準 効用の合計 注意費用の合計 効用の合計−注意費用の合計

限界効用0 0 0 0 1 40 3 37 372 60 6 54 173 69 9 60 64 71 12 59 -15 70 15 55 -4

P226 表 8.5 過失責任ルールと活動水準

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責任ルールの比較• 厳格責任ルールの下でも過失責任ルールの下でも、加害者は社会的に最適な注意水準を選択するようになる。• 過失責任ルールの場合は、厳格責任ルールと違って自分の引き起こした事故による損害分を支払わなくてもすむので、加害者は活動を行いすぎることとなる。• 過失責任ルールがもつ欠陥がどれほど重大であるかは、活動によって引き起こされる期待損害額の大きさに依存する。

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双方事故:注意水準と活動水準

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Max 「被害者と加害者が活動に従事することで得られる効用」 −    ( 「注意の費用」+「事故による期待損失額」 )

仮定- 被害者も加害者も活動を行うかどうかの 2 者択一。   - 加害者と被害者の両方が存在しているときのみ事故が   発生する。

効用関数数値例   - 行動によって加害者は 35 、被害者は 25 の効用を得る。   - 社会的厚生は 35 + 25-11=49   - 加害者のみや被害者のみが行動をするようも   両方が活動を行うことが最適となる。   

社会的総費用

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厳格責任ルールと過失責任ルール

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厳格責任ルール( 寄与過失の抗弁を認めるケース )

・裁判所が「相当の注意」を最適水準に設定すれば、寄与過失を認める厳格責任ルールの下では、加害者も被害者も活動を行うときに最適な注意を払うようになる。・被害者は、自分の受けた損害は補償されるので、活動を行いすぎるようになる(一方的事故と同様)。・望ましいのは「『相当の注意』の費用」と「活動の結果生じる事故による期待損害額」の和を被害者の効用が上回るときだけ活動を行う。

過失責任ルール(寄与過失の抗弁を認める、あるいは認めない過失責任ルール)

・裁判所が「相当の注意」を最適水準に設定すれば、過失責任ルールの下では、加害者も被害者も活動を行うときに最適な注意を払うようになる。・加害者は「相当な注意」をすれば責任から免れるであろうから、加害者の活動水準は高くなりがちである。・活動により加害者は 8 の効用、被害者は 25 の効用を得るケースを考える。過失で責任ルールでは、被害者のみが活動するのが最適となり、被害者は活動を行うようになるが、加害者も活動することになってしまい、社会にとっては望ましくなくなる。

加害者の注意 被害者の注意 加害者の注意費用

被害者の注意費用

事故の確率 期待損害額 社会的総費用× × 0 0 15% 15 15× ○ 0 2 12% 12 14○ × 3 0 10% 10 13○ ○ 3 2 6% 6 11

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責任ルールの比較• 寄与過失の抗弁を認める厳格責任ルールは、短所(被害者が活動を行いすぎること)が、過失責任ルールの短所(加害者が活動を行いすぎること)ほどに重要でなければ、より高い社会厚生を導く。• 被害者の活動水準をコントロールするよりも、加害者の活動水準をコントロールすることが、社会にとって重要であれば、厳格責任ルールの方が大きな社会的厚生をもたらす。• 被害者の活動水準よりも加害者の活動水準をコントロールすることが重要であるか否かは文脈による。• 最適な活動水準を導く責任ルールは存在しない。

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厳格責任ルール及び過失責任ルールの実際の利用状況

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英米法 ・過失責任ルールが基本法。・厳格責任ルールは特定の領域での事故にしか適用されない。(野生動物が生ぜしめた損害、火災による特定の種類の損害、建造物爆破、引火性のある液体の貯蔵、核物質の輸送等、「異常に危険な活動から生じた損害のみ」)

ドイツ民法典・加害者に、故意・過失が認められる場合だけに責任を貸している。・厳格責任ルールは、飼育されている動物以外の動物による損害、特別法によって鉄道・道路・航空等の交通、電気・ガス・原子力エネルギーから生じた損害に関して採用されている。

日本・大原則は過失責任。・例外としての厳格責任(無過失責任)の領域は例えば以下。製造物責任法、原子力損害の賠償に関する法律、鉱業法等。

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活動水準に関する理論からみた厳格責任ルール及び過失責任ルール• 相応の注意をしてもなお活動に高いリスクが伴う場合に過失責任ルールではなく、厳格責任ルールを用いれば、こうした活動への従事を減少させて望ましい方向に導くことが出来る。• 厳格責任ルールでカバーされる範囲の活動が過失責任ルールでカバーされる範囲の活動よりも概して危険。• 厳格責任ルールと過失責任ルールとの間の選択は常に危険性の違いに基づいて簡単に説明できるわけではない。

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一方的事故 双方的事故:活動水準と注意費用

双方的事故:活動水準と注意費用

無責任ルール 社会的総費用は最適な水準を超える。

社会的総費用は最適な水準を超える。

効用関数は、最適な水準よりも低くなる。

厳格責任ルール 最適な社会的費用が実現される。

過失寄与の抗弁を認める場合は、最適な社会的費用が達成される。認められない場合は、被害者は注意を払わなくなるため、社会的総費用は一般的な水準を超える。

過失寄与の抗弁が認められる場合は、被害者は活動を行いすぎることとなる。⇒期待損害率があがる。

過失責任ルール 加害者に相当に注意があった場合、最適な社会費用が実現される。

寄与過失の抗弁に有無に関係なく、裁判所が相当な水準を適切に設定できれば、社会的総費用の最適化を実現できる。

加害者は「相当な注意」をすれば責任から免れるであろうから、加害者の活動水準は高くなりがちになる。⇒期待損害率が上がる。

責任と抑止:基礎理論まとめ

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ディスカッションテーマ• 社会的費用を最も小さくするであったり、注意費用にコストがかかるといった仮定は本当に妥当か。• 無責任ルール、厳格責任ルール及び過失責任ルールから導かれる結論は妥当か。• 自転車事故の相手が子ども、老人、バイク、車、男性、女性といったことで、結論は変わるのだろうか。また感情的な配慮はどう扱うべきか。

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目次• 第Ⅱ編– 第 8 章 責任と抑止:基礎理論– 第 9 章 責任と抑止:企業の場合– 第 10 章 抑止の分析の展開– 第 11 章 責任、 リスクの負担、保険– 第 12 章 責任制度と運営費用

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責任と抑止:企業の場合• 被害者が企業と関わりのない人の場合

• 被害者が企業の顧客や取引先である場合

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企業の不祥事

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企業で印象的な不祥事は?

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被害者が企業とかかわりのない人(消費者以外)である場合• 責任ルールについて導かれる結論は前章と同じ。• 企業の場合はどの責任ルールを採用するかによって、製造物の価格は変わってくるという点が異なる。• 過失責任ルールの場合よりも、厳格責任ルールの方が価格は高くなる。

– 厳格責任ルールの下では事故による期待損害額が価格に織り込まれることになるが、過失責任ルールの下では、そうはならない。

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企業の活動水準

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Max 「製造物を追加的に消費することで消費者が得る効用」 −    ( 「直接の生産費用」+「注意の費用」+「事故による期待損失額」 )

・過失責任ルールの下では生産水準は最適な水準よりも高くなってしまう。結果、事故が多くなってしまう。・厳格責任ルールの下では、価格が1単位の生産にかかる社会的費用と等しくなるから、生産水準は最適になる。・被害者の活動水準についての結論も前章と同じ。過失責任ルールの下では、被害者が事故による損害を負担することになるため、被害者は最適な活動水準を選択する。

社会的総費用

消費者 製造物の効用 生産コスト 効用−費用A 40 15 25B 20 15 5C 17 15 2D 13 15 -2E 11 15 -4

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被害者が消費者である場合• 企業の行動者は、責任を負う可能性に加え、製造物のリスクに関する消費者の認知からも影響を受ける。• 消費者が製造物を購入するのは以下の場合のみ

      消費者の効用 > 「市場で実際につけられる価格」+                「自分が認知している期待損害額」

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リスクに関する消費者の知識が完全な場合• 消費者の知識が完全であれば、責任が課されなくても企業は最適な注意を払うようになる。• 製品の価格 = 「市場における製品の価格」+          「製品が破裂する可能性を考慮した期待損害額」• 企業が最適な水準に満たない注意しか払わなければ、潜在的消費者はこのことを認識し、高めの期待損害額を全体価格の要素として含めて考える。結果、消費者は他のところに逃げる。  ⇒市場価格は高くても最適な注意を払っており、より低い全体価格で   製造物を提供してくれる競争相手の企業から購入したいと考える。  ⇒企業が責任を課されなくても、競争の圧力によって企業は最適な注意    を払うようになる。 P244 例 3

• どのような責任ルールの下でも企業は。製造物を扱う際に最適な注意を払い、消費者は自身の効用が価格を上回る時だけ、商品を購入し、結果、社会にとって望ましい結果となる。27

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リスクに関する消費者の知識が不完全な場合• 企業に責任が課されなければ、企業は注意を払わなくなる。

– ⇒企業に最適な注意を払わせるためには責任を課すことが必要。• 企業が責任を課されない場合は、消費者が買う製造物の量も最適でなくなる。

– ⇒リスクを過大に見積もれば全体価格も課題に見積もり、逆にリスクを過小に見積もれば、全体価格を過小に見積もることとなる。• 寄与過失の抗弁付き厳格責任ルールの場合、企業が損害を補償してくれるので、消費者がリスクを間違って評価することは問題にはならない。

– ただし、消費者の「相当の注意」の判断を行うことは難しい。• 過失責任ルールの場合、「相当な注意」を裁判所が設定するのが難しくまた、過失の有無の判断を行うのも難しい。

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厳格責任ルール対過失責任ルール

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• 電子レンジを使用する際、健康へのリスクについて個人が不完全な知識しか持っていない。• マイクロが放出されていることによる被害が深刻な問題になるかもしれない。• 電子レンジの設計を変更できるかどうかを裁判所が確かめるのは難しい。• 事故のリスクを減らすために電子レンジのユーザーがなしうることはあまりない。

• 商用で冷蔵庫を購入する人は冷蔵庫が故障するリスクについてよく知っている。• 冷蔵庫が故障するリスクはすでに低いので、リスクを減少させるために冷蔵庫の製造業者が出来ることはそう多くはない。• 寄与過失を判断するときに裁判所がユーザーの管理の適切さを判定するのは困難である。

製造物を設計する段階で安全性を高めるインセンティブを生み出すために、厳格責任ルールを採用する方が望ましい。

ユーザーの使用のインセンティブを適切にするために、過失責任ルールの方が優れている。

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製造物の品質保証• 企業が製造物の品質保証を提供するということは、当事者自らが責任を選択するのと同じ効果がある。• 消費者がリスクを見誤らなければ、提供される保証の水準は真の全体価格を最小にし、それゆえ社会にとって最良の保証の水準になる。• 消費者がリスクを見誤ってしまうと、市場で提供される保証は社会にとって望ましいものではない可能性がある。

– リスクを実際より低く見積もる消費者は、リスクの担保を限定したり拒否したりするような保証を受け入れてしまいがちである。– リスクを実際よりも過大に見積もっていると、過度に担保範囲の広い保証を求めるようになる。

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不完全競争と市場支配力• 市場支配力を持つ企業は1単位あたりの費用よりも価格を高く設定するため、消費者は完全競争市場の場合ほどには製造物を購入しなくなる。• 厳格責任ルール:

– 市場支配力をもつ企業は「生産費用」「注意費用」「事故に伴う費用」の和よりも高い価格を設定することになる。– 価格が高くなるため、消費者が製造物を購入する量は最適にはならず、過小になる。

• 過失責任ルール– 市場支配力を持つ企業は1単位あたりの「生産費用」「注意費用」の和よりも高い価格を設定する。– もし消費者がリスクを過小評価していれば購入量は過大になるはずだが、価格が高いので、過大購入の一部は相殺される。

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消費者に対して企業が実際に負う責任• アメリカの大半の州では、製造物の欠陥による事故から生じた損害については、企業は厳格責任を負う。

– 消費者が立証しなければならないのは、製造物の欠陥が原因で損害が発生したという事実のみ。

• 製造物の設計とリスクの警告にかかる過失責任ルール– ある企業の同種の製造物すべてに含まれる危険な特徴が原因で損害が生じた場合、合理的な費用で別のより安全な設計を採用できたのであれば、企業はその損害の責任を負う。– 企業が製造物のリスクについて警告しなかった場合、合理的な費用でそれが可能だったのであれば、企業は責任をおう。

• 保証に免責条項をいれて企業が責任を回避するという手段は徐々に阻止されるようになっている。32

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ディスカッションテーマ• パナソニックがルンバのような掃除機を発売できなかったのは、本当に厳格責任ルールが影響していたのか?• 1970年代には、アメリカの自動車メーカーが、人の命に値段をつけて、リコール問題における費用便益分析を行った。これをどう考えるべきか?

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