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平成23年10月 | 監修:西出 優子/ 編集:小林 主茂 NON- PROFIT SEMINAR 2011 Earthquake Volunteering Introductory Seminar

2011 Earthquake Volunteering Introductory Seminarynishide/files/2011vseminar...2011 Earthquake Volunteering Introductory Seminar 1 東北大学経済学部非営利組織論ゼミナール

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平成23年10月 | 監修:西出 優子/ 編集:小林 主茂

NON-PROFIT SEMINAR

2011 Earthquake Volunteering Introductory Seminar

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東北大学経済学部非営利組織論ゼミナール

震災復興ボランティア入門講座

―今日を創る、明日を変える、ボランティアのちから―

講 座 報 告 書

監修:西出 優子/ 編集:小林 主茂

平成23年10月

あああ

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震災復興ボランティア入門講座 ―今日を創る、明日を変える、ボランティアのちから―

主催:東北大学経済学部 非営利組織論ゼミナール

協力:株式会社デュナミス

目 次

はじめに 3

Ⅰ.ボランティア入門講座の概要 5

Ⅱ.震災復興ボランティアの現状分析―問題点 6

Ⅲ.震災復興ボランティアの現状分析―解決策 7

Ⅳ.講座実施内容要約 9

Ⅴ.プロジェクト・インパクト評価 19

Ⅵ. プロジェクト運営評価 26

おわりに Ⅵ. 36

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はじめに-学生による主体的な震災復興に向けて

2011 年 3 月に発生した東日本大震災。震災当日は学生が春休み中であり、全国各地、そして

海外から仙台に学びに来ている学生で、私が指導するゼミ生や春から当ゼミに入る予定の新ゼ

ミ生、研究生、院生は合わせて 30 名ほどいたが、仙台で地震にあった者はその三分の一である。

私自身は大学の研究室で縦にも横にも大きく長く揺れる地震にあった。なかなか揺れがおさ

まらず、研究室の両側にある本棚からあらゆる本や書類が部屋中に散乱し山積み状態になり、

机上のパソコンも、飾っていた絵も床におち、ガラスの破片も飛び散った。散乱した部屋から

研究室と家の鍵を何とか探しあてた直後に、窓からは、雪がこんこんと降りしきっているのが

見え、茫然自失となりながら、電気も信号も消え、寒くて真っ暗な街中をひたすら歩いて家路

についた。

電気が復旧してからは、指導するゼミ生や院生、研究生、ゼミ卒業生の安否確認を行った。

仙台にいた学生は、いずれも家の近くの避難所や友人宅に避難しており、避難所でも食糧がほ

とんどなかったりという苦労があったり、避難所の中でお互い助けあったりしている様子をき

いた。数日間連絡がとれなかった学生もいるが、帰省している学生や卒業生も含めて全員の無

事を確認できたときは、ものすごくほっとした。

ともかく学生の安全を第一に考え、大学としては学生の帰省をすすめていた。仙台の避難所

にいたゼミ生も、何とか 3 月中には全員仙台を脱出した。新幹線がストップし、東京行きのバ

スも出ていない中、大行列に並んで高速バスを使って山形から新潟に行き、そこから関東に帰

省した者もいた。留学生もほぼ全員一時帰国した。ゼミのメーリングリストやツイッター等も

使って、情報共有を行って、助けあって仙台を脱出した。

この間、私が理事を務める(特活)せんだい・みやぎ NPOセンターでは、地震発生の一週間

後、3 月 18 日に理事会を開催し、震災に対応すべく「みやぎ連携復興センター」の開設を決め、

その翌日には震災対応に向けた戦略会議を行った。その後センターには震災復旧復興に向けて、

全国から NGO・NPOが駆けつけたり、「被災者と NPOをつないで支える合同プロジェクト

(つなプロ)」等を実施していた。

私は大学で非営利組織論を担当する教員として、それを学んだ学生達も一緒に何か貢献した

いと思ったが、気がつけば周りの学生は全員帰省していた状態である。私自身に何ができるか、

自問自答する日々が続いた。個人的に災害ボランティアセンターに行って、中学生や高校生の

グループ、大学生等、若いパワーに触れながら、避難所の清掃等のボランティアを行ったりも

した。が、やはり非営利組織の理論と実践をテーマとする当ゼミとして、震災復興に貢献した

いと考え、春休みにゼミ生からも企画提案のアイディアを募った。

震災の影響で、春学期の開始時期はゴールデンウィーク明けまで一カ月延び、迎えたゼミ初

日の 5 月 11 日。4 年生の小林君から、ボランティアに参加したいけど、一歩をふみ出せない学

生に対するボランティア講座が提案された。この日のゼミや翌週のゼミでは、これまでにも

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NPO インターンシップでお世話になってきており、今回の震災後に、つなプロを運営している、

株式会社デュナミスの代表取締役社長やスタッフがゼミを訪れ、一週間単位で宮城県内の避難

所の運営サポートを行う学生ボランティアを募集し、実際に数名のゼミ生がつなプロのボラン

ティアに参加した。

そのような中、企画のはじめから同社の協力を得ながら、今回のボランティア講座の企画を

ゼミ生主体で進めてきた。これまで当ゼミでは、年に 1~2 回、単発の講座やセミナーの企画運

営を行ってきたが、集中的に 3 回連続行うのははじめてであり、しかも全体の三分の二は新し

くゼミに入ったばかりの 3 年生で、「NPO とは?」「ボランティアとの関係は?」という状態

の者も少なくなかった。それでも試行錯誤しながら、自分の役割を果たす中で、徐々に議論に

参加したり、積極的に行動する学生も増えてきた。この成果報告書の最後には、参加者アンケ

ート結果や、ゼミ生がこの講座を通して何を感じ、学び、成長したかを記載している。学生の

学びと成長を実感できたことは教員冥利に尽きる。

今回の一連の講座を実施するにあたり、企画段階から熱心に、毎週の企画会議を開催し、学

生を叱咤激励してくれた、講座協力の株式会社デュナミスに、心よりお礼申し上げる。また、

第二回の現地ボランティア活動に際しては、日本財団が主催するボランティアツアーに参加、

広報協力する形となった。大変貴重な機会をいただいた日本財団に深く感謝申し上げる。さら

に、広報や参加の面で協力していただいた、東北大学ボランティア支援室、東北大学地域復興

プロジェクト HARU、東北大学大学院法学研究科、同経済学研究科、同震災復興研究プロジェ

クト、同福嶋ゼミにも感謝申し上げる。

何よりも、本講座の趣旨に賛同し、ご自身も震災復興活動等で多忙を極める中、講演・報告

を引き受けていただいた講師・パネリストの皆様に、心より厚く御礼申し上げる。実際に震災

復興活動を行っている方々ばかりであり、震災復興への情熱や参加した学生への熱い思いがひ

しひしと伝わってきた。

これらの連続講座を学生が主体的に提案し、企画案を詰めていき、実際に実施し、ふりかえ

りを行い、この成果報告書を作成・編集したことの意義は大きいと考える。今回の経験が、こ

れからの震災復興に短期的・長期的に何らかの役に立つものであると信じている。なお、本講

座は、平成 23 年度科学技術研究費・基盤研究(C)(課題番号:23530456)「アジアにおける

非営利組織の次世代育成とリーダーシップ-社会関係資本の視点」(代表:西出優子)の助成

を受けて実施した。今後の東北、そして日本における震災復興を担う若者達が、今回の講座へ

の参加や運営を契機に、ボランティア活動に参加したり、社会を変革する NPO に関わったりと、

市民社会に貢献する意欲と行動力を高め、各地で長期にわたりリーダーシップを発揮していく

ことを大いに期待している。

東北大学大学院経済学研究科 准教授 西出優子

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I.ボランティア入門講座の概要

2011 年 7 月、3 回にわたって、非営利組織論ゼミナールはボランティア入門講座シリーズを

提供した。このプロジェクトの主たる目標は、ボランティア活動に興味がある学生に対して参加

のきっかけとなるような体験を提供することと設定された。

この目標達成のためには、ボランティア活動の現場にて個人が自己のキャパシティーを最

大限に応用できるようになることが重要である。そのためには、ボランティア活動に対する十

分な情報とともに、活動に対する熱意が生まれるような体験談を共有するのが効果的である。

この講座シリーズは、ボランティア活動参加者の質と量の双方を拡大することによって、地域

復興に直接貢献することを目指すものである。

震災地域でのボランティア活動が地域の復興に対してプラスの影響を持つと仮定すると、ボ

ランティア活動のインパクトが大きくなればなるほど、復興への貢献度も比例的に増加する。

ここで、

ボランティア活動のインパクト

=ボランティア総数×ボランティア活動時間×ボランティア参加者の質

と仮定すれば、提供される講座シリーズはボランティア総数と参加者の質の向上の両方にプ

ラスの影響を与える。ボランティアとはあくまで自発的に行う活動であるため、ボランティア活

動の時間を増大させるような提言・アプローチは活動の定義に反する上、非効率的である。

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II.震災復興ボランティアの現状分析-問題点

東日本大震災後、特に春休みシーズン明けから復興プロセスにおける人材不足が深刻化し

ている。この問題の特に重要な点は、物的資源の不足が国内・国際的な支援によってある程

度容易に補充されるのに対して、人的資源の補充と強化は比較的困難であるという点にある。

しかしながら、特に学内ではボランティア活動に対して興味がある学生が多く存在し、数々の

ボランティア団体を設立したり個人的な活動を行なっているケースも多い。つまり、ボランティ

ア参加へのモチベーション・ポテンシャルが高い学生の数と、実際に活動参加という決断をす

る学生の数の間に乖離があるというのが現実である。

このような現状において、特に以下の点が可視的な問題点として観察されている。

1. 学生ボランティア総数の減少

2. 学生ボランティアの持つ高い情熱に対して、個人の能力の限界から生じる無力感

3. 参加という決断に到るまでの心理的なバリアの高さ

通常は地域内での NPO や他の組織がワークショップや講座、活動準備トレーニングを提供

することによってこれらの問題の多くは解決されるが、現在は市内においてそのような動きは

見られていない。特に NPO は自組織の活動に手一杯のため人的資源育成がプライオリティ

ーとされていない。

現実におけるギャップとは問題であるのと同時に、機会でもある。非営利組織論ゼミナール

ではこの問題に着目し、ボランティア入門講座の提供を通して人的資源の増大と強化を行うこ

とで、地域復興に対する貢献を行う。

©Non-Profit Seminar 2011

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III.震災復興ボランティアの現状分析―解決策

II で示された問題点を解決するため、2011 年 6 月-7 月間の 3 回にわたって、非営利組織

ゼミナールはボランティア入門講座シリーズを提供した。このプロジェクトの主たる目標は、ボ

ランティア活動に興味がある学生に対して参加のきっかけとなるような体験を提供することで

ある。この目標を実現するためには、ボランティア活動の現場にて個人が自己のキャパシティ

ーを最大限に応用できるようになることが重要である。そのためには、ボランティア活動に対

する十分な情報とともに、活動に対する熱意が生まれるような体験談を共有するのが効果的

である。

プロジェクト・ミッション

ボランティア活動に興味がある学生が一歩を踏み出すきっかけとなるような体験を提

供すると同時に、ボランティア活動の現場にて個人が自己のキャパシティーを最大限に

応用できるようになるための準備ステージを提供することで、震災復興における地域内

の人的資本の増加・強化を図る。

組織としての管理目標

非営利目的のプロジェクト管理の基本を実践を通して学び、協働を通して1つの大き

なプロジェクトを企画することで、リーダーシップ、マネージメント能力、状況分析能

力を強化する。

講座ターゲット

東北大学経済学部にて、特に経営学系の学問を学ぶ学部学生。ただし、学内外に対し

て講座は開放形式をとり、学籍等の参加条件は設定しない。また、講座参加は原則とし

て無料である。

プロジェクト遂行体制

プロジェクト・コーディネーター

広報担当

デュナミス担当

各回講座企画

1 - 3回

渉外担当

西出優子准教授を筆頭として、プロジ

ェクト管理のために以下の組織を編成

した。プロジェクト内容について設

定・変更に関してはゼミナール内プロ

ジェクト会議と担当教員の合議で決定

する。

ボランティア入門講座の運営にあたっ

ては、以下の運営組織を置く。各担当

者は管轄範囲内における決定権と最終

責任を有する。プロジェクト・コーデ

ィネーターは全事項に関して最終決定

権を持たず、情報の提供と調整のみを

行うが、対外的に代表としての機能を

果たす。

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予算その他対外関係に関する事項に関しては、全て担当教員の了承を得る必要がある。

各ポジションは全て並列の関係にあり、重要事項の決定に関してはゼミ全体での承認を

要する。

©Non-Profit Seminar 2011

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Ⅳ.講座実施内容の要約

今回のボランティア入門講座は非営利組織論ゼミナール主催、若者の就職支援や震災復興

プロジェクトを運営している株式会社デュナミスの協力で実施された。講座は 7 月 6 日から 13

日の間に全 3 回シリーズとして開講され、「イントロダクション&インスピレーション」を

共通テーマに、学内外より多数の講師をお迎えした実践的な内容となった。

第 1 回講座:今からできる、震災ボランティア 実施年月日:2011 年 7 月 6 日(水) 15:30-18:00

実 施 場 所 :東北大学川内南キャンパス 経済学部第三講義室 第1回入門講座は、講師や経験者の 話をお聞きするかたちで提供され、今 後能動的なアクションにつなげていく 上でのボランティア活動の基礎を学ぶ ことに主眼が置かれた。基調講演では ビジネス・NGO のフィールドで活躍 されている国際 NGO Greenheart Project の Gavin Allwright 氏をお招きし、ワー クショップやグループ・ワークを取り 入れたインタラクションにあふれる講 義が展開された。基調講演のあとには、 東北大学の公式ボランティア団体「HA RU」から 2 名の学生をお招きし、非営 利組織論ゼミナールの学生 2 名を交え、 パネルディスカッション形式で参加者 と議論が行われた。 基調講演(英語講演・日本語通訳)

スキルから始める、新しいボランティアのカタチ。 Gavin Allwright 氏 Commercial Director 国際NGO Greenheart Project 講師プロフィール イギリスに生まれ、アメリカ、アフリカ、日本など世界中 で起業、コンサルティング、NGO運営、 会社経営など様 々な社会活動に携わった後、現在は国際NGO

©Non-Profit Seminar 2011

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Greenheart Projectのコマーシャル・ダイレクター、ビジネス・トレーナーとして活躍中。東北大学経

済学部に てビジネス・コミュニケーション講義も担当。 2011年の東日本大震災で被災し福島近郊の自宅を失うが、被災直後より石巻市を中心 としてNPO、

公共セクター、大学、そして地域住民を巻き込みながら様々なプロジェ クトを立案・企画し、宮城

県内・石巻市内にて復興開発を先導中。 講演要約 被災者(Victim)とボランティア(Volunteer)と いう単純な二項対立は意味をなさない。なぜなら、 与えられる側と与える側がひとつでないようなシ ステムはいつでも機能しないからだ。震災ボラン ティアを考えるに当たっては、以下の 3 つの重要 点がある。 要点 1:被災者とボランティアはみな同じである。

人々がボランティア活動に踏み出す際に抱く恐

れ、不安、アクセスのなさ、お金の問題、時間の

無さ、情報のなさ、健康問題、家族関係、距離、スキル不足、安全性、言語、年齢、日

常生活との両立、自信のなさ、といった問題は全て被災者が持っているそれらと同じで

ある。これらのネガティブな要素を恐れるのではなく、逆に被災者と自分をつなぐキー

として使って欲しい。 要点 2:人間とはスキルと時間資源の集合である。

ボランティアをする際には、常に自分の持って

いるスキルを第一に考え、それを限られた時間の

中でどのように役立てたらよいのかを考えなくて

ならない。ここでいうスキルとは、なにもコンサ

ルティングやプログラミングなどの高度知識のこ

とだけを指すコンセプトではない。趣味もスキル

に役立つ。例えば、読書が好きでサラリーマン経

験があるひとは被災地の子どもが書いた詩集を売

って支援金にしたり、小さな図書館をつくるボラ

ンティアプロジェクトができるかもしれない。要

は、自分のプロフィールにマッチした活動をする

ことが長期的な関わり合いと楽しみにつながる。 要点 3:ボランティア活動を行う上で軸となるのは3P(People:ひと, Possession:も

の, Place:ばしょ)である。

あひとに関しては、例えばこども、お年寄り、障害者、若者、店をなくした経営者など

©Non-Profit Seminar 2011

©Non-Profit Seminar 2011

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さまざまな設定ができ、被災者という単純な枠組みで考えるべきではない。ものに関し

ては、汚れてしまった写真、いなくなったペット(「もの」ではないが所有物)など、

それを取り戻すことで心の復興につ

ながるものもたくさんある。ばしょ

に関しても、現地、避難所、仮設住

宅のみがボランティアの活動場所で

はない。インターネット上でボラン

ティア情報を管理したり、大学で募

金を集めたり、友人にボランティア

活動を勧めたりと、ボランティア活

動はどこでもで場きる。活動所の多

様性を忘れないでほしい。

©Non-Profit Seminar 2011

文責:小林 主茂

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パネルディスカッション

体験者と語る、ボランティア活動の「今」 パネラー:

東北大学地域復興プロジェクト 「HARU」

上原 千寿氏・北原 充氏

非営利組織論ゼミナール生 大羽 将夫

モデレーター:

非営利組織論ゼミナール生 下斗米 曜 パネリストプロフィール

上原 千寿

東北大学 2 年生 最初は HARUのメンバーとして参加し、5月からは宮城県山本町を中心として、主に週末個人でボ

ランティア活動を行う。HARU派遣ボランティアとして約 1 週間山本町の災害ボランティアセンタ

ー本部の受付等の業務補佐を行い、他にも体育文化センターで物資の仕分けに従事する。また、個

人ボランティアとしては仮設住宅に生活支援物資を配布したり、イチゴ農園で農作業の手伝いをし

た。

北原 充

東北大学 3 年生 HARU のマネージメント・事務メンバーとして HARUのボランティアプロジェクト表作成やミーテ

ィングを主催する傍ら、東京の教育支援団体 TERACOのメンバーとして現地の小中高生の教育支援

を行う。また、ボランティア活動に参加した人向けのネットワーキングも推進している。TERACOでの活動では、毎週日曜日に避難所生活を送っている小中高生の自習を手伝い現地へ赴く。教育支

援の一環として、ホテルの一室を借りて寄付された参考書等を使用しての学習サポートを行なって

いる。

大羽 将夫

東北大学 4 年生 ボランティア派遣団体「つなプロ」に参加し、宮城県石巻市にある避難所としての小中学校を中心

として 3週間ボランティア活動を行う。湊小学校では、4人からなるチームの一員として本部のボ

ランティアセンターの運営をサポートし、人手が足りない際には自ら泥だし・瓦礫撤去にも参加し

た。大街道小学校では遊びを通して、子どもたちの精神的な支えになるような活動を行う。その他、

4ヶ所程の避難所で、衛生状態、栄養状態等アセスメント(調査活動)を行った。

「実際の被災の現状を見ると想像以上に衝撃的です。でも、私

みたいにいい出会いが必ずあり、『楽しんでやるんだ』くらいの気持ちで、十分ボランティアができるようになりま

す!」

「HARU のメンバー達自身も弱音を吐きあいながら、出来る範

囲で頑張ってます。ボランティア活動の難しい課題を出会って

も、『知ってよかった、これを解決しよう』と思

えるくらい、仲間とのいい出会いがあります!」

「色々活動参加を考え込んでしまうことが多いと思いますけ

ど、思い切ってやってみると絶対に思いがけない出会いをして、また行きたくなると思います!」

©Non-Profit Seminar 2011

文責:下斗米 曜(非営利組織論ゼミナール)

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第 2 回講座:ボランティア活動被災地体験 -牡鹿半島の鹿立屋敷地区 主催:日本財団/ 共催:株式会社デュナミス

協力:東北大学経済学部 非営利組織論ゼミナール

実施年月日:2011 年 7 月 10 日(日) 6:45-19:00 (当初予定) 実 施 場 所 :宮城県石巻市 狐崎浜鹿立屋敷

ボランティアをするに当たって存在する障壁には現地までのアクセスが難しい、個人

で行くには心細い、何をしに行けばいいのかわからないなどといった障害が見受けられ

た。そこで、7 月 10 日の第 2 回講座では日本財団の学生ボランティア派遣事業に参加

する形で、ボランティアの実体験を企画した。このような派遣事業を利用することで、

単身でボランティアに行く心細さや衛生面での心配を軽減することができるので、特

にボランティア初心者にはおすすめの企画となった。 私たちがまず訪れたのは、津波の甚大な被害を受けた牡鹿半島の鹿立屋敷地区であっ

た。現地に近づくにつれて、破壊された町並みが目に飛び込んできた。瓦礫はだいぶ片

づいてはいたが未だに手つかずの部分も多く、4 ヶ月たった現在でも、人手やその他の

資源が深刻に不足していることを一同実感した。また、今回訪問した鹿立屋敷地区の被

災地はかなり奥まったところにあり、ボランティアや各種支援が届きにくいという印象

も受けた。地理上のアクセスの悪さや震災による交通の遮断などによって、このよう

な場所がまだ多く残されているのである。

今回行ったボランティア作業は、津波で流されたカキの養殖に使用する貝殻を回収・

選別するお手伝いであった。当日は非常に暑く、また、ボランティアの服装は安全上の

保護のため長袖・マスク等の装備が必要なので厳しい作業環境となった。ボランティア

活動に参加する際には、水分補給や衛生管理には十分気を付けてなくてはいけないとい

うことを身を持って実感した。

ボランティアの作業自体は単純作業だったが、関東など他の地域から参加している学

生ボランティアの方たちと交流しながらの楽しい活動となった。このようにあちこちか

ら復興のために手伝いに来てくれる仲間がいるとわかると、自分も頑張るぞという気持

ちになり、大きな励ましを感じた。

今回の企画で残念だったのは、当日午前中に発生した大きな余震により津波注意報が

発令され、全体の作業が昼で中止になってしまったことだった。このようにまだまだ被

災地は安心できない状況ではあるが、それでも現地で頑張っている方々が大勢いる。そ

のことを意識するようになっただけでも、今回の体験は意義のあるものとなった。訪

れた集落は海と緑に囲まれた美しく静かな場所で、完全に元通りになるようにこれか

らもボランティア活動に参加していきたいと強く感じた。

文責:堀内 香那

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第 3 回講座:仲間と語る、震災ボランティア 実施年月日:2011 年 7 月 13 日(水) 15:30-18:00

実 施 場 所 :東北大学川内南キャンパス 文科系総合研究棟 2F 206 教室

講座入門第 3 回目は、講師や経験者と 少人数設定で、双方向的なコミュニケー ションを重視した体験の共有講座として 企画された。会場は団体ごとにブースに 仕切られ、3 グループに分かれた学生が 対話や質問も交えながら、多様なスタイ ルのボランティア活動、ボランティア管 理を行う上での重要論点に対する理解を 深めた。 この第 3 回には国際 NGO の Peace Boat、 東北大学におけるボランティア学生団体の 3.11. MOVEMENT に加えて、宮城県内にお けるNPOによる震災復興を主導する「つなプロ (被災者をNPOとつないで支える合同プ

ロジェクト ) 」にも参加していただき、参加者は講師やお互いとの語り合いを通して、

より実践的なボランティア活動の視点を学習した。

©Non-Profit Seminar 2011

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参加団体要約 国際 NGO Peace Boat Peace Boat の主たる活動は「国際交流の 船旅」の企画。旅の中の出逢いや国際交 流を通して、世界平和に貢献するミッシ ョンを掲げている。災害支援では、阪神 大震災をはじめ、パキスタンの大地震、 スリランカの津波などで活動を行ってき た。東日本大震災では3月17日から石 巻市を中心に活動を開始。3ヶ月間で約 2,500人のボランティアを派遣した。 炊き出しや物資の配給、泥かきなどを続 けている。 3.11. MOVEMENT 震災後、Facebook 上で立ち上がった東北 大学生による復興支援団体。「3.11 を忘 れない」、「毎月11日に活動しよう」 をコンセプトに、中長期的な支援プロジェ クトを企画、運営している。最近では留学 生と共に松島旅行を企画中で、ツーリズム を通じたボランティア活動にも取り組んで いる。 つなプロ ―被災者と NPO をつないで支える合同プロジェクト 避難所でのこれ以上の死者、状況悪化者を 出さないために、避難所での課題・困りご とを発見し、専門性を持つ NPO 等からの支 援とつなげることをミッションとして設立。 非常事態という環境のもとで特殊なニーズ を抱える高齢者、障害者などを主な対象と して、ニーズを成果につなげるべく、避難 所現状の分析や政策提言も行っている。

©Non-Profit Seminar 2011

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ブース講演要約 松村 真澄 氏 国際NGO Peace Boat

Peace Boat では、3月17日から現地に入り災害支援を行った。これまでに約3000名の

一般ボランティアを石巻に派遣してきた。また Peace Boat の国際的なネットワークを生

かして、海外からのボランティアの受け入れも行っている。 Peace Boat における主なボランティア活動内容としては、以下の7つ挙げられる。

1. クリーン 泥かき、瓦礫撤去などがこれに該当する。

2. 漁業支援 石巻は漁業の町であり、津波によって流され絡まってしまった漁具を元通りにす

る作業を行っている。 3. ダニ駆除

アレルギーの原因にもなるダニを、各避難所を回り駆除している。 4. 仮設住宅支援

Peace Boat は、女川町の仮設住宅の建設を任されることになった。 5. デリバリー

炊き出しはもちろん、食料以外にも必要なものを避難所などに届ける活動を行っ

ている。 6. キッチン

震災の被害で営業できなくなった居酒屋の厨房を借りて、料理を作っている。こ

こでの仕事には給料も発生し、雇用の場としての機能も果たしている。 7. ストア

これは主に物資整理で、先に述べたデリバリーをスムーズに行うためにも非常に

大事な仕事である。 講師の松村氏は今回の支援を通して、ボランティアを行う際の「政治力」の必要性を

強調された。その地域の歴史や文化、現地のニーズを共有できなければ、スムーズに支

援は行えないためだ。そして、市民によるきめ細やかなケアは、復興支援で大変重要な

役割を担うという。ボランティアをする中では、自然と考える力がつく。これはクリエ

イティビティ、自発性につながるため、学生にもぜひ一度、ボランティア参加してほし

いということであった。 文責:土井 由佳理

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余力 悠司 氏 3.11 Movement 余力氏が所属している 3.11Movement では、3.11 の東日本大震災以来、毎月 11 日に募

金活動や、留学生の松島観光ツアーなどを精力的に行っている。しかしながら、4 月 11日に募金活動を行った際にはまだ現地を見ておらず、現地のニーズにきちんと対応でき

ているのかどうか、被災地の役に立っているのか、不安があったと余力氏は語る。 しかし、5 月 11 日に実際に現地に赴き、津波の被害にあった家で整理・掃除をした

時に、思い出の品を惜しむことなく捨てる住民の方を見て、人間最後に残るのは経験な

のだと強く感じたという。そこで初めて、自分で震災復興のためにやりたいことを見つ

けよう、と思うことができたと余力氏は語った。 講座の参加者との対話の中で、被災地で活動している余力氏に「被災地でイベントを

行うときに気を付けるべきことは?」という質問があった。それに対して余力氏は、

「自分たちがやりたいことをやるだけではなく、現地の人と話し合いながら行った方が

いい。また、継続的にやるべき。現地では若者が来ることだけでもとても喜ばれるので

ぜひ頑張ってほしい」と、あくまでも現地コミュニティーの意志を尊重することの重要

性を説いた。 また余力氏は、今年 10 月 23 日に予定されている TEDxTohoku という、有識者が一堂

に会す会議の運営にも携わっている。TED のスピーカーは坂本龍一さんや猿回しの太

郎次郎さんなどエンターテインメント性が強い方も考えているそうだが、これからは震

災対応で活躍している人にもウェイトをおいてゲストを編成したい意向。 震災対応に奔走する余力氏の長期的な目標は「不幸をなくす」ということ。これは、

震災以前から漠然と世界を変えたいと思う気持ちがあり、今回のボランティアを通して

目標を達成するには不幸なこと・人を減らしていくことが大切なのではないのか、とい

う気持ちに至ったからだそうだ。パワーポイントに「考えるよりまず動く」とあったよ

うに、余力氏の言葉には「自分も何かしなければ、動かなければ」、という気持ちにさ

せられるような強い思いを感じた。 文責:堀内 香那

川崎 克寛 氏 つなプロ/最北エリアマネージャー

川崎氏は 3 月 11 日の震災時四国にいたが、大地震の知らせを聞くとすぐに仙台の友

人らに連絡を取り、被災地の状況を集め、自らも被災地に行く準備をした。宮城では主

に気仙沼の大島にて活動を行い、時には陸前高田などにも足を運びボランティアを行っ

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た。震災ボランティアに赴いた初期は被災者の方がなかなか心を開いてくれず大変な思

いもしたが、真正面からぶつかり、互いの思いを語り合っていくうちに信頼関係を築き

上げていった。今では、「つなプロ」のエリアマネージャーとして現地ボランティアを

統括する立場にある。

「つなプロ」で活動する中で感じたことは「ありがとう」の言葉の大切さだそうだ。

ボランティアが帰る際、被災者は皆「来てくれてありがとう」と言う。ボランティア参

加者はそれを受けて「どういたしまして」ではなく、「こちらこそありがとう!」とみ

んなが返すそうだ。「ありがとう」に「ありがとう」と返す、このことは非常に素晴ら

しいことではないか、これが復興の第一歩ではないか、と川崎さんは考えるようになっ

た。

また、川崎氏は学生ボランティアの是非についても語った。川崎氏の私見では、学生

がボランティアに行くことは素晴らしいことだが、必ずしも推奨するとは言えないそう

だ。「今自分にできることは何かということを模索していく中で、1 つの手段としてボ

ランティアがあるだけで、20 年後自分がどうあるのか、どう生きていたいかを大学生

の時期にしっかり模索して今を生きてほしい。」川崎氏はそう話してくださった。

文責:吉田 尊

©Non-Profit Seminar 2011

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Ⅴ.プロジェクト・インパクト評価

震災ボランティア入門講座のプロジェクト評価・ミッション達成度評価は、第 1 回・

第 3 回講座の最後に配布された参加者アンケートを基に分析した。第 2 回目に関しては、

活動場所が被災地であったのに加え、計画されたプログラム内容の一部が当日発生した

地震のためにキャンセルされてしまったため、全体的な評価からは除外した。 講座全体の総括としては、全 3 回シリーズの中で約 120 名の参加者に講座を開講し、

参加者のバックグラウンドも大学生、大学管理職員、教員、一般企業従業員、NPO 実

践者と多岐に渡った。プロジェクトに対する参加者の評価は総じて高く、ボランティア

活動に赴くための知識と情報を提供しただけではなく、ボランティア活動に対しての心

理的バリアをもある程度軽減させる効果を生んだ。 また、本章の担当は東北大学の留学生であり、ロシア連邦ノボシビルスク国立大学で

社会学・社会調査分析を専門としてを学んでいるユリヤ・コンスタンチノーブナ・サヴ

ィンコワ氏に執筆を依頼した。同氏の快諾と質の高い調査分析結果の提供に感謝を表す

る。

第 1 回講座成果 ー参加者アンケートよりー 総参加者数:65 人 有効回答数:32 人(49.2 パーセント、ゼミ生および主催側関係者は除く) 成果計測方法: 資料と同時配布のアンケート記入形式 (評価質問 5 問、属性質問 3 問の合計 8 問、加えて自由コメント欄) 有効回答デモグラフィック

項目/属性と人数 属性 1 属性 2 性別 男性 16 人 女性 16 人 所属 東北大学学生 30 人 その他大学生・一般 2 人 言語 日本語ネイティブ 24 人 日本語非ネイティブ 8 人

以下の評価質問において、最大評価は1また最小評価は5で記入される。

1) 強くそう思う Yes, strongly 2) おおむねそう思う Yes, perhaps 3) どちらともいえない Indifferent 4) あまりそうは思わない No, perhaps 5) 全くそうは思わない No, strongly

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20

44%

50%

0% 6% 0%

1.あなたは今回の講座参加によって、ボランティア活

動に対する知識や情報を得ることができましたか?

1

2

3

4

5

34%

41%

22%

3% 0%

2.あなたは今回講座参加によって、ボランティア活動

に参加してみたいという意志が強くなりましたか?

1

2

3

4

5

22%

59%

13% 6%

0%

3.あなたは今回の講座参加によって、ボランティア活動に

おける主要な問題点、解決されるべき点などに対する理解

を深めることができましたか?

1

2

3

4

5

25%

63%

9%

0% 3%

4.あなたは今回の講座参加によって、ボランティア活動

において自分ができること、できないことをより明確に

認識できるようになりましたか?

1

2

3

4

5

60%

28%

9%

3% 0%

5.今回の講座内容はあなたにとって満足のいくものでした

か?

1

2

3

4

5

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データ解釈 第一に、講座に対する満足度(質問 5)は総じて高く、全体の 60%が最大の評価、高

い評価である 1 と 2 を合わせると全体の 88%に上った。また、ボランティア活動に対

する知識や情報が手に入ったと答えた参加者は全体で 94%で、そのうち約半数の 44%が「強くそう思う」と答えた。ボランティア未経験者にとって情報の収集と共有が大き

な課題として指摘されている現状を鑑みれば、情報提供という点における第 1 回講座の

貢献は大きいものであったと考えられる。ただし情報提供者(講師・パネリスト)から

は、同日に提供された情報はあくまでも当時のものであって、被災地では状況の急変が

頻繁に発生するため、各自での情報収集や情報の妥当性の精査が必要不可欠とのコメン

トをいただいた。 第二に、ボランティア活動に対する問題解決意識、自己キャパシティーの再考につな

がった参加者はそれぞれ 81%、85%(質問 3・質問 4)であり、本講座のミッションで

あった「自己のキャパシティーを最大限に応用できるようになるための準備ステージを

提供する」に大きく貢献した。さらに、ボランティア参加の意志が強まった参加者は全

体の 75%であったが(質問 2)、全体の 25%が「どちらともいえない」、「あまりそ

うは思わない」と回答した。この点においては、ある程度の情報や体験共有をした上で

も、ボランティア活動に対する時間的・心理的制約は完全には解決されないものと結論

づけられる。 質的データ(自由コメント欄より) 以下は、参加者に配布されたプロジェクト評価アンケートにおける自由記述欄を抜粋

したものである。自由コメントについては、ミッションの達成度評価に有意性を与える

と思われるもの、講座プログラムに対する評価、講師に対する評価、全体的な改善要望

に大別し以下に引用した。 ミッション達成計測に有意なコメント 自分でも何かするためのスキルがあると思えました。 ボランティアはしてみたいと思いましたが、なかなか踏み出せなかった。今回の

講座を通して、夏休みなどを利用してボランティアに参加してみたいと思う。 ボランティアに行ってみようと思いました。 After this seminar, I'm interested in volunteers!

講座に対する評価 やる気が出ました。 自分自身の活動について考え直す・振り返るきっかけとなりました。ありがとう

ございました。 とてもためになりました。ボランティア活動の内容が詳しくわかりました。

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講師に対する評価 ギャヴィン先生の話が、ためになりました。西出ゼミの皆様、本当にお疲れ様で

した。 HARU に興味をもてました。 Thank you Prof. Allwright! ^o^ After this seminar, I'm interested in volunteers! Mr. Allwight is so exciting

person! Thank you for today!! Mr. Allwight is so exciting person! Thank you for today!!

講座に対する改善意見 ボランティアに参加するメリットが見えづらかった。元々ボランティアに参加し

ているので、「特にこの講演で」というわけではない。 被災地のもっと詳細な情報を聞きたいです。

おつかれさまでした!もっと参加者たちの声とかを聞いたらもっとよくなると思

います。

ボランティアに対する意識が高まりました。しかしながら、ボランティアへの参

加方法、実際の取り組み方など、具体的に踏み込んだ内容が少なかったように思

います。

ボランティアに参加することに迷いを感じているひとを後押しするような内容が

あるともっと魅力的に感じると思いました。

©Non-Profit Seminar 2011

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第 3 回成果 ー参加者アンケートよりー 総参加者数:33 人 有効回答数:20 人(60.6 パーセント、ゼミ生及び主催側関係者を含む) 成果計測方法: 資料と同時配布のアンケート記入形式(評価質問 5 問、属性質問 3 問の合計 8 問、加えて自

由コメント欄) 有効回答デモグラフィック

項目/属性と人数 属性 1 属性 2 性別 男性 11 人 女性 9 人 所属 東北大学学生 16 人 その他大学生・一般 4 人

参加形態 今回初参加 5 人 第 1・2 回に参加 15 人

以下の評価質問において、最大評価は1また最小評価は5で記入される。

1) 強くそう思う Yes, strongly 2) おおむねそう思う Yes, perhaps 3) どちらともいえない Indifferent 4) あまりそうは思わない No, perhaps 5) 全くそうは思わない No, strongly

©Non-Profit Seminar 2011

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45%

50%

5%

0% 0%

1.あなたは今回の講座参加によって、ボランティア活動に

対する知識や情報を得ることができましたか?

1

2

3

4

5

30%

60%

10%

0% 0%

2.あなたは今回講座参加によって、ボランティア活動

に参加してみたいという意志が強くなりましたか?

1

2

3

4

5

15%

55%

25% 5%

0%

3.あなたは今回の講座参加によって、ボランティア活動

における主要な問題点、解決されるべき点などに対する

理解を深めることができましたか?

1

2

3

4

5

15%

60%

20% 5%

0%

4.あなたは今回の講座参加によって、ボランティア活

動において自分ができること、できないことをより明

確に認識できるようになりましたか?

1

2

3

4

5

40%

35%

25%

0% 0%

5.今回の講座内容はあなたにとって満足のいくものでしたか?

1

2

3

4

5

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データ解釈 講座に対する満足度(質問 5)は総じて高く、高評価である 1 と 2 を合わせると全体

の 75%に上った。特に第 3 回の特徴としては、最も高い評価を持って「知識や情報を

得ることができた」と回答した参加者が全体の半数近くに上ったことが挙げられる。こ

れは、ブース・個別形式というより小規模な運営形態がよりニーズにあった情報と知識

へのアクセスにつながったものと考えられる。第 1 回目講座と比較すればより講師への

距離も近く、容易に質問ができる環境が整っていたという点においても、第 1 回と第 3回はそれぞれ異なるインパクトを有した講座を提供することができたものと結論付けら

れる。 さらに、今回の講座に参加したことで「ボランティア活動に参加してみたいという意

志」が強くなったかという項目(質問 2)においては、「強くそう思う」「おおむねそ

う思う」が 90%であった。第 1 回講座の同 75%と比較すれば、第 3 回講座はより具体

的な形で参加者のボランティア意志を強めることに成功したと解釈できる。これは、総

論的な性格が強かった第 1 回講座と比較して、第 3 回講座ではより具体的かつ親近感が

沸く形でのボランティア活動の描写ができたためであると考えられる。 最後に、第 3 回目のボランティア講座に参加したことによって問題点の認識や自分が

果たせる役割についてのイメージが描けたかという質問(質問 3・4)の回答は第 1 回

目とほぼ同じ水準であり、全体的な満足度や情報の提供に比べれば、より個人に焦点を

絞った形でインパクトを与えることは比較的困難であると理解される。今後同等のプロ

グラムが開催される場合には、この個人へのアプローチを強化することによって、さら

に影響力が強いトレーニングプログラムが開催できるものと判断される。 質的データ(自由コメント欄より) 第 3 回目アンケートは回答者が 20 名と少数であったため、体系的に質的分析ができ

るような有意性があるデータを回収することはできなかった。しかし、コメントの総合

としては企画者への感謝や講座への満足度を示すコメントが多数を占めた。質的・量的

観点の双方から見て、提供された講座に対する参加者の全体的満足度は非常に高い水準

にあった。

統計分析・評価・執筆: Юлия Константиновна Савинкова (Yuliya Konstantinovna Savinkova)

(ロシア連邦 ノボシビルスク国立大学 経済学部 社会学科/ 東北大学 International Program in Liberal Arts)

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Ⅵ.プロジェクト運営評価

最後に、今回の講座を実施した成果の一環として、本連続講座を企画運営した非営利

組織論ゼミナール生による、省察レポートからの抜粋を掲載する。(ただし、個人情報

保護や文体の統一のため、担当教員による修正を加えた。)振り返りを行った項目は、

以下の通りである。

1) ボランティア講座の内容を通して学んだこと、印象に残ったこと、ボランティア活

動・NPO に対する考えがどのように変わったか。

2) 企画運営について、うまくいったこと、うまくいかなかったこと、改善点、学んだ

こと、自分自身がどう成長・変化したか。

今回のプロジェクト発足にあたっては、「ボランティア参加をためらっているひとに

情報と後押しを」という大きなミッションに加え、「ひとつのプロジェクト運営を通し

てゼミナールとしての企画力・運営力を強化する」という内部目標も設定された。ゼミ

ナール生は、企画者として、また同時に参加者として、多くの経験と教訓を共有するこ

とととなった。この章ではこれらの学びを共有することで、今後セミナーや講演会など

の企画を行っていく際の留意点を列挙することを目的とする。

プロジェクト運営評価 ーゼミナール参加者省察レポートよりー 1)ボランティア講座の内容

全体的に一番学んだこと

• 今後ボランティアに踏み出す人にとっては厳しい話もあったが,あまり聞かれな

い経験者の声を自分の活動に役立てて欲しい。

• この全 3 回となるボランティア・トレーニング講座に、大変といってもいいほど

に満足した。それほどにかつてない程の充実感を味わうことができたと感じてい

る。

第 1 回講座 基調講演

• ギャビン先生の講義の中で、人々がボランティア活動に踏み出す際に抱く恐れ、

不安、アクセスのなさ、お金の問題、時間の無さ、情報のなさ、健康問題、家族

関係、距離、スキル不足、安全性、言語、年齢、日常生活との両立、自信のなさ

といった問題は全て被災者が持っているそれらと同じであり、むしろこれらのネ

ガティブな感情も自分と被災地をつなぐキーとなりえることを学んだ。これは、

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ボランティア活動だけではなくNPOの運営や国際開発プロジェクトを遂行して

いく際にも非常に重要なコンセプトであると考える。

• 講座に参加する以前に現地でのボランティア経験があったため、その時の被災地

の状況なども踏まえながら、Gavin 先生や各団体の活動についてのお話を聞いた。

その中で、震災においては情報共有のシステムといったハード面や、避難所運

営の人材というソフト面など、様々な部分で課題があることを知った。

• ボランティアに参加したいと思っている人の背中を押してやるという講座のコン

セプトはとてもよかった。ボランティアから遠ざかる要因を聞くと情報の不足を

挙げる声が聞かれたこともあり意義があった。ギャビン先生の講演は会場を被

災地として再現し,臨場感を感じさせるすばらしいアイデアだった。

• 震災復興への関わり方は多様で、個々人によって最適な関わり方を見つける事

が大事である。人材の需要と供給のミスマッチを防ぐために講演で使用したテ

ンプレートといった道具立てを充実させていくことも有用な取り組みであること

を知った。また、学生はこのような講座をプロデュースするといったことによっ

て間接的にこの状況に貢献することもできると聞き、柔軟な発想で今後の震災復

興への関わり方を模索していこうと思った。さらに、この指摘は自分が企画を受

け持つ講座へのモチベーションにもなった。

• ボランティアにつながりそうな自分のスキルを考えたが,直接結びつきそうなも

のはなかなか見つからなかった。しかし,周りと相談して変わった視点のアイ

デアが出てきたこともあり,現地のニーズやボランティア経験者の話を取り入

れながら自分の仕事を見つけることもできるとわかった。 第 1 回講座パネルディカッション

• 自分のボランティア活動についての印象が改まった。ボランティア活動経験者と

言っても、本当に自発的に活動をしたいと思ってはじめた人だけではなく、周囲

の人の誘いや自分の周りの状況によって参加を決めた人もいたため、自発的と

いうよりも、むしろ人とのつながりや情報網のほうが活動のきっかけとなる決

め手としては重要なのではないかと感じた。

• まず自分の生活を成立させていくこと、必要以上に気負いすぎないことが大事

であるという点に共感した。講座の趣旨としてボランティアの数や作業時間を増

やすということがあったため、趣旨と矛盾するという意見もあったようだが、自

分の生活もままならない人が他人を助けることは実際難しい。そのような状況で

あればむしろ、迷惑をかけてしまうこともありうる。さまざまな条件のバランス

を取りながら関わることが、結局のところ息の長い活動につながっていくのでは

ないか。

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第 2 回講座 現地体験

• 一番ためになったことは、やはり実際に現地に行って、短いながらもボランテ

ィア活動ができたことだと思う。私も今回の講座の対象者と同じように、ボラ

ンティアに行きたくてもきっかけを掴めないうちの1人だったので、とてもいい

経験をさせてもらった。

• 現地体験の講座ではまだまだボランティアが不足していること,作業環境は厳し

いことなどを実感した。特に交通の良くない地域では今回のようなバスによる

派遣などを利用するとボランティアに参加しやすいはずである。自分もこれで

終わらせずこれからも参加していきたい。

• 第 2 回のボランティア 1 日体験は、地震やそれに伴う津波注意報の影響で午前中

のみの活動となってしまったが、破傷風予防のために完全防備で行う夏場の屋

外での作業がどれだけ過酷なものか知ることができた。私は体力に自信がない

ので、これからボランティアを探すときは、このようなもの以外で、自分がしっ

かり貢献できそうなものを見つけようと思っている。

• 私にとってボランティア活動に対する視野を最も大きく広げる事となった活動は、

現地における実地調査となった第 2 回である。「習うより慣れろ」ということ

わざの通り、聴講するだけでは決して学べない、被災地の現状を肌で感じるこ

とができた。

• 被災地では活動にあたり、多くの危険が伴う。例えば、病気などが代表的な例で

ある。破傷風を防ぐために僕たちは長袖・長ズボンを着用するのだが、当然なが

ら猛暑のなかでも着用を義務付けられている。強烈な日光、そして風通しの悪い

長袖・長ズボンの衣服の着用により、発汗量も想像を絶するほどであった。私た

ちボランティア人員は、常に熱中症の危険と隣り合わせであった。すなわち、死

の危険もあったのだ。被災者、そしてボランティアの人々は様々な脅威に晒さ

れていることを、改めて痛感することとなった。

• ボランティア活動をする上で、相手のために何かをしなければならないという

気持ちが強すぎてはいけないこと、がんばりすぎてはいけないこと。 視野が狭

くなり、本当に相手が望んでいることをできなくなる恐れがあるから。必要以

上の責任は自分を追い込んでしまうから。

• 今回の講座で一番学んだことは、ボランティア活動をする際の情報収集の重要さ

である。今回のボランティアでは、大地震の影響もあり津波の被害を受けた町で

の泥だし、物資整理などが主な内容だと思っていた。私は子供のころから体が非

常に弱いのでそのような活動は少し厳しいと考えていて、正直なところ参加しよ

うとは考えていなかった。しかし、実際にボランティアに行った方々の話を聞

き、そのような力仕事のみではなく、情報の整理といった屋内での活動もある

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と知れたことがとても驚いた。次からはしっかり情報を集めてから、ボランテ

ィアに行けるか、行くかどうかを決めたい。

• はじめて現地入りしてボランティアに参加したが、東京の学生と触れあえたのは

大きかった。平日は学校に、休日は被災地にという生活を続けているのだという。

大学を出てさまざまな人と触れ合うことができて大変貴重な経験だった。

• ボランティアを行う現場に近づき、バスの中から見た津波の傷跡は、テレビを通

じてみるものとはやはり異なった印象を受けた。それは実際に現地に自分の身を

置いてみることによって、震災から4カ月たって自分の生活圏が正常な日常を

取り戻していることに慣れきってしまっていたということに改めて気付いたこ

とによるのだと思う。現地に行くということの意味は、一つには震災の記憶を

取り戻すことにもあるのかもしれない。また、自分の判断で長靴の代替装備を

持っていったが、「それでは全然だめ」とのことで次回はもっとちゃんと事前の

準備や質問を行う必要があると感じた。

第 3 回講座全体

• 自らファシリテーターとして参加したこともあり、多くのことを学べた。その中

で印象的だったのは、講師の方全員が、もっとも重要なのは現場のニーズであり、

何をすればいいかわからなくても、とりあえず行動を起こすことが重要と強調

していた点である。

• 三者三様の震災復興への関わり方があるということをより強く認識した。そう

感じたのは、講演形式とは異なり、より対話を通じた双方向的な学びの場となっ

たから。

第 3 回講座 松村氏講演

• 特に印象的だったのは、第三回目のゲストであったピースボートは、船で世界一

周というプログラムを実施しており、その参加費から NGO の活動資金を生み出

しているという話だ。約三ヶ月間の船旅で 100 万 円程度の参加費を徴収してい

るそうだ。学生にはやや高い気もするが、ボランティアをすることでポイントが

たまり、旅費が割引されるというシステムもあり、 より参加しやすいように工

夫されている。世界各国を訪れられ、なおかつ寄付にもつながるということで大

変魅力的に感じた。このようにボランティアといっても様々な形があり、自分

が関わりやすい形で関わって行くことができるということを、この講座を通し

て学んだ。

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第 3 回講座 余力氏講演

• 私が一番学んだことは、第3回の余力さんのお話での「考えるよりまず行動」と

いうことであった。震災後私は「何かしたいけど何ができるんだろう」と1カ月

も悩んでいました。しかし、いったん行動してみれば少しは自分のできること

はあって、少しは役に立てることもあって、もっと早く色々なことに携わって

いたかったと最近後悔していたので余力さんの言葉は胸に染みた。逆に、考え

てばかりで何もしなければ何も生まれないのだと思う。

第 3 回講座 川崎氏講演

• 私が今回の講座で一番印象に残ったのは、川崎さんの言葉である。第 3 回講座で

「10 年後、20 年後の自分のありたい姿を考えて生活していくことが復旧である」

という言葉に非常に感銘を受けた。私自身、授業のほかに資格講座も受けている

ため、ボランティアに行くのが日程上厳しい部分があり、今まで被災地に行けな

いでいた。そのようなこともあり、ボランティアに行ったゼミ生や友人に対して

どうしても引け目を感じてしまうときがあったのだが、川崎さんの言葉を受けて

考え方が変わった。確かにボランティアに行くことはいいことだが必ずしも被

災地に行ってボランティアをする必要はなく、自らの可能性を模索していく過

程にボランティアを入れるのもひとつの生き方だということである。被災地の

悲惨な現状がある中でボランティアに行けていないことをマイナスに捉えていた

が、今では、プラスでもマイナスでもないのではないか、むしろそう捉えたこと

が意味ないことではないかと思うようになった。私はこれからの自分を考えてい

く上で、日程が空いている日にボランティアに行くことも視野に入れながら生活

していきたいと思う。

ボランティア活動・NPO に対する考えがどのように変わったか

• ボランティア活動の形は様々あると思った。以前は「ボランティア」と聞くと

現地でがれき撤去作業であったり募金活動であったりを想像していた。第2回講

座で現地に行った時にもがれき撤去ではなく、牡蠣の貝殻集めや貝殻に紐を通す

作業であった。第1、3回講座の講師の方も団体の運営の方もいらっしゃれば現

地で活動している方もいらっしゃった。色々なニーズに応えて活動するのがボラ

ンティア活動なのであって、活動は無限にあると感じた。

• 何でもかんでもやればいいということではなく、人それぞれの多様性に合わせ

たボランティア活動への関わり方というものがあり、それを見つけることが大

事だと思った。しかし、それは頭で考えているだけではだめで実際にいろんな

活動に参加してみることでわかる部分もある。

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• 行動と自己省察の往復から、自分に最適な活動を見出すことになるのだろう。だ

からこそ、大学にいて自由になる時間が多くある間にいろんなボランティア活

動や NPO の活動に積極的に関わってみることが必要なのだと思った。 2)ボランティア講座の企画運営 全体的な感想

• 私は今回の講座で渉外担当をやらせていただいた。今まで自分で外部の方と接触

をして交渉を行うということを経験したことがなかったので、不安でいっぱいだ

った。 渉外担当を通して、外部の方と交渉することの大変さを知った。これ

から生きていくうえで多くの方と交渉する機会を持つと思うが、今回うまくいか

なかったことを糧にしてやっていければと思う。

• 今回私は、各回担当の一人として講座運営に携わった。今年度のゼミ自体が始ま

ったばかりの時期から、このような公開の講座を企画・運営し、主催できたとい

う経験は、今後のゼミの活動に良い影響を与えると考えている。ただ、ゼミとし

ての日が浅いという意味では、ゼミ生間のコミュニケーションや共通認識の形成

に時間がかかったというデメリットもあったと思う。講座自体の目的や位置づけ

といったものを全員で話し合い、運営に入る以前の段階でもっと議論を尽くすこ

とができれば、さらによいイベントになったのではないか。私も含めて、全体

的に日程に押されて仕事をこなしたという感じが否めない。次にこのような講

座を主催するときには、多少なりとも余裕を持たせた計画で進めたい。

• 運営面では、講座の担当という役割を持っていたのだが、一つの講座を実施する

にも、他の団体と交渉したり、ゼミ内で話し合ったりと非常に多くの役割があり

とても大変だった。良くできた点としては、時間があまりなかったということも

あり、主体的に、積極的に活動できたことだ。 普段大学の授業を受けている際

は、受身の活動が多いため新鮮に感じた。でも難しかった点は、自分が担当す

る講座に意識が偏ってしまい、講座全体を俯瞰的に みることが出来なかった点

である。次回このような活動をやる際は、視野を広く持ち、余裕を持って全体を

見渡せるように気をつけようと思う。

• スケジュールが厳しかったことや意志疎通が不完全だったために細部の詰めや集

客に課題があった。自分自身役割を把握できていない部分があった。今後は初

期段階から全員で企画に対する足並みを揃えて,役割も明確にしていきたい。

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講座運営上の成功点

• 全 3 回の講座を総括的にみると、とても充実したものであったと感じた。第 1 回

のギャビン先生やボランティア経験者を招いての講座、第 2 回の実地体験、第 3回の川崎さん、松村さん、余力さんを招いての講座。第 2 回は津波の危険を危惧

し途中での終了となってしまったが、どれも私はとても充実感・やりがいを感

じた。ボランティア活動に馴染みのないゼミ生も、これをきっかけに興味をも

つことができたことは間違いない。

• 今回のボランティア・トレーニング講座は初の試みであったために対処するべき

論点が多かったため、講座の直前の週まで決定しなかった内容もあった。だか、

そういった苦労を通して企画力や判断力などを更に身につけることができた。

将来を見据えた場合、むしろ良かった点ともいえるのではないか。これらの経験

は、プロデューサー塾やインターンシップ活動において、遺憾なく発揮されるで

あろう。

• 講座の内容はとても充実したものだった。現地で最前線に立って活動している人

の話を聞いて、考え方に触れて、漠然としているが人間としての広さを感じ、

充実感、達成感が伝わってきた。 講座運営上の反省点

• 自分の役割には最初から最後まで責任を持つ。早くから参加者集めをするために

も、広報の増員が必要。1日前に焦って人を集めるのは大変。広報や講師の方

のためにも早めにスケジュールを決めて、変更はなるべくないようにしなければ

ならなかった。

• 話が進んでいないと感じることが多かったのにもかかわらず流れを変えるよう

な発言ができなかったこと。意見を述べるのが一部の人に限られていたこと。

ミーティング、特にゼミ内で決まったことや決まらなかったことをメーリス等で

共有。それによって共通認識を増やす。

• 講師の方にお願いすることがある時は、伝えることをまとめてなるべく1回で

済ませるようにする。協力団体や講師の方にどの情報を伝えて、何を聞くかと

いうこと等が分からないことがあったので明確にする。

• 企画として、時間のゆとりをもって動けなかった。打ち合わせの仕方、他の人

への仕事の振り方、人の動かし方、などがうまくいっていなかったから。

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講座運営上の改善点

• 全員が意見をできるようにすること。それをある程度強引にまとめ上げる権利を

持つ人を決めること。みんなで決めなければいけない議題だけでなくそうでな

いものにも多くの時間を割いていた。

• 1 つ気になったのは、日程の変更についてである。今回ボランティア講座第 1 回

目の日程が変更になったが、この変更が確定する以前から出演依頼交渉を始めて

いたので、改めてお願いしなければいけなくなった。今回は、こちらにとっても

先方にとっても、日程の変更がプラスの方向に作用したが(もともと先方から考

える時間が少ないと言われていたので)、避けるべきだと思う。 全体的に、議

論に時間をかけすぎて、実際の活動準備期間が短すぎたように思える。

• ボランティア講座の中では、「人間とはスキルと時間資源の集合である。」とい

うパースペクティブを学んだ。この観点からすれば、今回の私の仕事はまだまだ

大きな改善の余地があった。第一に、各自に仕事を割り振ってそのタスク詳細を

説明するだけでなく、各自のタスクの進捗状況・達成度を全体的に評価・監督

し不十分な点をフォローし合うようなシステムを構築する必要があった。また、

担当者としてのゼミ生ひとりひとりのキャパシティーや興味を把握し、個人の

時間とスキルがもっと活きるような運営方法を考える必要があった。第二に、

全体調整(コーディネーション)が不十分であったため、ゼミでのミーティング

に大きな時間を費やす結果となってしまった。講座各回担当者ともっと頻繁にミ

ーティングや情報共有の機会を設けておけば、全体会としてのゼミでは決定事項

の承認とプロジェクトの改善にもっと時間を割くことができた。今回は全体会

でのコンセンサスを重視しすぎたがために議論が停滞し、講師選定や交通の確

保といった外部要因を決定するのが遅くなってしまった。第三に、ボトルネッ

クとしての広報の役割を第一に考えるべきであった。今回のプロジェクト・ミ

ッションに最も直接的に影響をあたえるのは参加者人数、そして講座の質であっ

たが、講座のクオリティー向上にこだわっていたために数の向上まで手がまわ

らなくなってしまっていた。次回このようなプロジェクト運営をする際には、

チャネル毎に広報担当者を置き、広報第一戦略でさらにインパクトを高められる

ようにしていきたい。

• 打ち合わせのシステム化を進めること。具体的には、議事録やタスク管理の書

式・プロジェクト運営のフローチャートなどの考案をし、浸透させる。また、話

し合いの進め方やホワイトボードの記録方法に最低限のきまりごとを設けた方が

よいのでは?

• メーリングリストに情報を公開しても、ちゃんと見ていない人がいるように感じ

る。機能的に大きな違いがあるのであれば他のより優れたシステムのメーリス

に移行するという選択肢もあるのではないか。また、ゼミ生にとって他人事・

無関心になっている部分があるのではないか?

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• 会場設営の際、手の空いた人は担当の割り当てに関わらず、他の人に聞くなどし

て自分から仕事を見つけて、手待ちの人がいることがないように自覚して動く

ようにしてほしい。

• 今回のように一部の人に仕事が偏るやり方には問題がある。組織の作り方、機

能のさせ方について実践を見据えた勉強会をやってもよいかもしれない。担当割

り当ての際は個人的な興味だけでなく、就職活動状況なども総合的に考慮した人

員配置を行うべき。そのためには、それに関連する情報の共有方法をどのようす

るかを決める必要がある。

• 指示したことに対してのフットワークの重さがいくらか見られた。スピード感

を持って動いてほしい。また、司会の進め方としては、アナウンスをいつどの

ように入れるべきかをもっと詰めるべきだった。

• 会場の大きさからいって、フリートークの際には各テーブルのファシリに直接に

司会が指示を入れるという形のほうが良かったかもしれない。また、会場設営

にも言えることだが、自分の分身のように動ける人間を作っておく必要も感じ

た。そのためには、日ごろのコミュニケーションが極めて大事になる。

• ゼミ内の情報共有が大切だ。必要な人に必要な情報がいっていなかったので気

をつけていかなければならない。

講座運営を通して得た教訓と成長

• 一人ひとりが自分なりに一生懸命取り組まないとイベント等は成功しにくい。

• 人を動かすこと・適切な指示を与えることのむずかしさ。自分ひとりで多くの

ことを抱え込むと破綻するので、いかに手の空いている人に気持よく仕事をやっ

てもらうかを考える必要があると痛感した。そのためには、普段のコミュニケー

ションも大事だと思う。

• 結局のところ周囲の人にうるさく言ったとしてもあまり効果はない。自分が手

本になることでしか、周囲の人間は変わらないと思う。なので、まずは自分が

変わることに尽きる。

• 1つのプロジェクトを計画から実行までやるということが初めてだったため、 計画から運営まで、プロジェクトの具体的な進め方を知ることができ、とても

勉強になった。今回の自分の役割は、運営とファシリテーター役 だったが、こ

ういった活動が初めてだったこともあり、戸惑うことが多く、コーディネーター

の補佐的な役割しかできなかった。そのため、今 後同じような機会があれば、

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自ら積極的に運営にかかわるように努めていきたいと思う。また、メーリングリ

ストを用いて、情報を全員で共有したのは、連携を 強化する上で、とても有用

だったと思う。

• この講座を通じてボランティア活動への意欲が高まったことが一番の収穫であ

る。今後、夏休みなどを利用して、自分ができることを、できる範囲でしていき

たいと思う。様々な活動への参加を通じて、自分自身を成長させていきたい。

• プロジェクトマネジメントは難しいと分 かった。いままで周りの流れに身を任

せてきたので自分から発信することが少なかったが、自分の中の意見もほかのみ

んなと共有しないといけないことを強く感 じた。情報や意識を共有することは、

運営する上でとても大事だった。また、多くの活動の中でさまざまな人とかか

わることができ、いろんな生き方があること を知ることができた。もっといろ

んなことにチャレンジしてみることが大切だと思った。

• こういった講座を企画するのは初めてで何もわからない状 態だったので、最初

こそ議論などにも参加しづらかったが、準備を進めていくうえで、こうしたほう

がいいなど自分の意見を持ち、それを言えるようになった。 少しではあるが、

自主性、積極性を身につけられた。

• 企画をすることの大変さを身をもって学ぶことができた。次またこのような機会

があれば、今回の反省点、改善点を生かしていきたいと思う。大変だったが、と

ても楽しい 1 ヶ月間だった。自分のふがいなさをすごく感じたので、より効率

的に、と考えて行動するようになった。また、外部の方と接する機会があった

ので、メールでの伝え方等を学ばせていただいた。情報等を伝える際の語彙力も

増やしたい。これからも今回のような講座やイベントを開いていくことができれ

ばとよい。

• 講座の運営にも携わったことによって、経営学の講義で学んだことをいかに実践

につなげるかということをより意識的にするようになると思う。また、会場を

手配するといったことははたから見ると簡単なことのように見えるが、意外と

考慮すべきことが多くあったり、どこに聞けばどういう情報を得られるかを知

るだけでも手間がかかることを知り良い経験になった。他の一つ一つのこまご

まとしたことも同様であるが、知るべきことのポイントはある程度つかめたよう

に思う。それは、当り前のことではあるが物事を決定する上で必要な最低限の

情報(現実的な選択肢と、その選択肢の差異を明確にする情報)を集めること

の重要性である。決定の遅れがプロジェクトの各進行段階で見られたが、それ

はこのような具体的な情報の欠如によるところが大きかったように感じる。くわ

えて、既存の組織によるだけでなく、自分で何か活動を立ち上げるというやり方

もあるので、そういう方向を模索するということも検討に値すると思った。学術

的なアプローチをしてみることも有意義だと思うので、そういったことも視野に

入れてこの経験を活かしていきたい。

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おわりに-

哲学者 Karl Theodor Jaspers はかつて、「ものごとが壊れ始め、そしてやがて消え去るとき、

その本質が明らかになる」と述べた。震災から半年が経った今、私たちはこの言葉が語る真実

をかみしめている。震災による津波と火災を目前にして、私たちははじめて、お金がただの紙

切れに過ぎないことを理解することができた。電気が消え、水道が途絶え、今まで当然に思っ

ていたことの全てが変わった時、私たちはこの地域が長く持ち続けていた本質を目にすること

ができた。津波は家と金庫と車を奪っていったかもしれないが、地域のつながりや思いやりを

流し去ることはできなかった。地震は私たちの大地と生活を揺さぶったかもしれないが、国と

地域の、そして日本と世界の絆は決して揺らぐことがなかった。 戦後最大の危機と呼ばれた惨禍の中において、宮城県内で戦後最大規模の NPO活動とボラン

ティア活動が行われていることを考えると、これが私たちの本質なのだろうと感じる。今回非

営利組織ゼミナールが開催した「震災復興ボランティア入門講座」は、こんなダイナミックな

流れに参加したいと思っているが、情報不足や健康など様々な不安のために小さな一歩を踏み

出せないでいる学生や市民を後押しするために企画された。全 3 回のシリーズを通しては、延

べ約 120 人の参加者に講座を提供することができ、参加者の大きな学びと高い満足度は、私た

ちの期待していた以上の成果を示す結果となった。講座の中では、ボランティア活動に参加し

ている多様なバックグラウンドの人々から、多くのライフストーリーをお聞きする機会に恵ま

れた。でも、どこで何をしていようと、彼ら全てに共通していたのは、「ボランティア活動の

ペイバック」を思いっきり楽しんでいるという点である。今まで私たちはどれくらい給料が高

いとか、どれくらい福利厚生が充実しているとか、そんな物質的なペイバックのみを指標とす

る生活を築いてきた。しかしボランティアという視点を通して企画者・参加者は、ひとつの

「ありがとう」が最高の地位や分厚い札束よりも大きな、信じられないくらい大きな幸せを

「ペイバック」してくれることに気づいた。ボランティア経験者は、これからの世界を生きて

いくにあたっての、新たな視点を手にすることができたのである。 危機は国家と人間の性格を変えるものと思われているが、私はこれに賛成しない。多くの政

治学者は、9.11 事件に遭遇したアメリカが共和国から帝国へと変貌したと説いた。しかしこれ

は、建国以来、もともとアメリカが持っていた帝国としての顔が全面に押し出されるようにな

ったと言った方が正しい。同じく危機に際した日本でも、震災後に新しい日本が生まれたわけ

ではなく、もともと日本が持っていた国家・国民としての本質が現れただけである。絆であれ、

地域愛であれ、おもいやりであれ、ボランティア講座に参加した私たちは、私たちの持ってい

る本質が世代と世代をつなぎ、異なる文化や多様なバックグラウンドの架け橋となることを学

んだ。大好きなゲームを買おうと 1 年間貯めていたお小遣いを寄付する小学生を見るとき、何

もかも失ったのに「笑顔だけは失わないから」と復興に全力を上げるお年寄りを見るとき、そ

して、単位なんてもらえなくても毎週休まずにボランティア活動に参加する大学生を見るとき、

私たちは新しい「人生のものさし」を見つける。私は、これがボランティア活動が私たちに与

えてくれる大きな価値のひとつであると信じる。 今回の講座開催にあたっては、担当教授である西出先生をはじめとして、株式会社デュナミ

ス、多数の外部講師の方々と、多くの方々のお世話になった。末筆ながら、このボランティア

講座の企画と成功に協力して下さったすべての方々に対して、大きな「ありがとう」を伝えた

い。 プロジェクトコーディネーター 小林 主茂

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2011 年 10 月 1 日発行

-執筆担当者一覧-

監修:西出優子 (東北大学経済学部准教授) 編集:小林主茂 (非営利組織ゼミナール ) 第Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ部執筆担当: 小林主茂 (非営利組織ゼミナール) 第Ⅳ部執筆担当: 小林主茂、下斗米 曜、堀内 香那、土井 由佳理、吉田 尊(非営利組織ゼミナール)

第Ⅴ部統計分析・評価・執筆担当: ユリヤ・コンスタンチノーブナ・サヴィンコワ(ロシア連邦 ノボシビルスク国立大学 経済学部 社会学科/東北大学 International Program in Liberal Arts)