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平成 24 年 2 月 20 日 阪大歯学部同窓会報 (42) 第 109 号 大阪大学歯学部 60 周年記念事業 第 9 回市民フォーラム 再生歯科医療 ―「削る・詰める」から「取り戻すへ」― 学部附属病院の森崎市治郎病院長から開会の挨拶 がありました(写真2)。森崎病院長は、国内で2ヶ 所しかない国立大学歯学部附属病院を擁する大阪大 学歯学部の創立から現在に至る60年間の経緯を話さ れ、今回の市民フォーラムの企画への意気込みを述 べられました。そして、第1演者の生化学教室の西 村理行准教授が壇上にあがり(写真3)、「骨惜しみ しないライフワークのために」と題して、歯科医療 における、骨のリモデリングの重要性をふまえて、 骨・軟骨の疾患に対する治療法の現状と将来につい て、解説されました。続いて第2演者の歯科補綴学 第一教室の江草宏助教(写真4)は、「歯茎から作れ る万能細胞~ iPS 細胞で夢の再生医療を~」と題し 平 成23年10月15日、 大 阪 大 学歯学部60周年記念事業 市 民フォーラムが、大阪大学歯 学部附属病院(森崎市治郎病 院長)の主催で開催されました。 21世紀 COE プログラムの情報公開の一環として企 画されて始まった市民フォーラムでしたが、その 後、歯学研究科に主体を移し、歯学部附属病院・歯 学会・同窓会からのご支援と、毎日新聞社・大阪府・ 吹田市教育委員会の協力を頂きながら継続してきま した。本年は大阪大学歯学部が創立60周年を迎えた こともあり、 60周年記念事業の一環という位置づけ で本フォーラムが企画されました。 過去の一連の市民フォーラムでは、口腔の様々な 疾患や口腔と関わりのある健康の問題、それらに対 する歯科医師の取り組みと最新の歯科医療技術につ いて、市民の皆様にわかりやすく伝えてきました。 今回は、創立60周年を迎えたことを踏まえ、大阪大 学歯学部附属病院、歯学研究科のミッションの原点 に立ち返り、長年にわたる基礎・臨床研究の成果の 現状と近未来の新たな歯科医療へ向けての取り組み を、市民の皆様に理解していただくことが目的とな りました。そこで、今回はトピックとして、「再生 歯科医療」を取り上げました。 さて、フォーラムの会場は、例年通り、大阪梅田 の毎日新聞社オーバルホールでした。当日はどんよ りして雨が降りそうな空模様で、準備のために早め に会場入りした身としては、来聴者の出足が少し心 配でした。が、それも杞憂に終わり、受付を開始す る頃には、会場へは順調に皆さんが集まり始め、開 演時にはほぼ満席状態 となりました。フォー ラムは、予防歯科学教 室の天野敦雄教授の司 会で幕を開けました (写真1)。まず、主催 者である大阪大学歯 口腔解剖学第二教室 講師 加 藤 隆 史 (41 回生) 写真 3 西村先生の講演 写真 4 江草先生の講演 写真 1 司会の天野先生 写真 2 森崎先生の開会の辞

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平成 24 年 2 月 20 日阪大歯学部同窓会報(42)第109 号

大阪大学歯学部 60 周年記念事業第 9 回市民フォーラム

再生歯科医療 ―「削る・詰める」から「取り戻すへ」―

学部附属病院の森崎市治郎病院長から開会の挨拶がありました(写真2)。森崎病院長は、国内で2ヶ所しかない国立大学歯学部附属病院を擁する大阪大学歯学部の創立から現在に至る60年間の経緯を話され、今回の市民フォーラムの企画への意気込みを述べられました。そして、第1演者の生化学教室の西村理行准教授が壇上にあがり(写真3)、「骨惜しみしないライフワークのために」と題して、歯科医療における、骨のリモデリングの重要性をふまえて、骨・軟骨の疾患に対する治療法の現状と将来について、解説されました。続いて第2演者の歯科補綴学第一教室の江草宏助教(写真4)は、「歯茎から作れる万能細胞~ iPS 細胞で夢の再生医療を~」と題し

平 成23年10月15日、 大 阪 大学歯学部60周年記念事業 市民フォーラムが、大阪大学歯学部附属病院(森崎市治郎病院長)の主催で開催されました。

21世紀 COE プログラムの情報公開の一環として企画されて始まった市民フォーラムでしたが、その後、歯学研究科に主体を移し、歯学部附属病院・歯学会・同窓会からのご支援と、毎日新聞社・大阪府・吹田市教育委員会の協力を頂きながら継続してきました。本年は大阪大学歯学部が創立60周年を迎えたこともあり、60周年記念事業の一環という位置づけで本フォーラムが企画されました。

過去の一連の市民フォーラムでは、口腔の様々な疾患や口腔と関わりのある健康の問題、それらに対する歯科医師の取り組みと最新の歯科医療技術について、市民の皆様にわかりやすく伝えてきました。今回は、創立60周年を迎えたことを踏まえ、大阪大学歯学部附属病院、歯学研究科のミッションの原点に立ち返り、長年にわたる基礎・臨床研究の成果の現状と近未来の新たな歯科医療へ向けての取り組みを、市民の皆様に理解していただくことが目的となりました。そこで、今回はトピックとして、「再生歯科医療」を取り上げました。

さて、フォーラムの会場は、例年通り、大阪梅田の毎日新聞社オーバルホールでした。当日はどんよりして雨が降りそうな空模様で、準備のために早めに会場入りした身としては、来聴者の出足が少し心配でした。が、それも杞憂に終わり、受付を開始する頃には、会場へは順調に皆さんが集まり始め、開

演時にはほぼ満席状態となりました。フォーラムは、予防歯科学教室の天野敦雄教授の司会で幕を開けました

(写真1)。まず、主催者である大阪大学歯

口腔解剖学第二教室 講師 加 藤 隆 史(41 回生)

写真 3 西村先生の講演

写真 4 江草先生の講演写真 1 司会の天野先生

写真 2 森崎先生の開会の辞

(43)平成 24 年 2 月 20 日 阪大歯学部同窓会報 第109 号

て、歯肉から作成した iPS 細胞の再生医療で有効に活用する技術の将来性について言及されました。第3演者の口腔外科学第一教室の古郷幹彦教授(写真5)が「口唇裂・口蓋裂の形態と機能の再建」について、機能検査法や手術法・材料の改善・改良によって、患児の発育成長という長いスパンの中で顎口腔顔面の形態と機能の回復が実現できることを、症例を示しながら紹介されました。また、第4演者の口腔外科学第二教室の岩井聡一助教(写真6)による「インプラント治療を視野に入れた骨移植と骨再生術」では、歯槽骨の欠損部への自家骨移植ではなく、患者への侵襲が少ない人工骨が利用できるよう、進行中の人工骨充填材料の開発についてお話されました。最後に「『橋渡し研究』って何?-みんなで考えましょう。再生歯科医療の未来-」と題し、口腔治療学教室の村上伸也教授(写真7)が、治験段階に入った歯周組織の再生療法を紹介しつつ、「夢は終わらない。夢に終わらせない」と次世代の新しい歯科医療の開発が大阪大学歯学部附属病院・歯学研究科の使命の一つであると熱弁をふるわれました。全ての講演終了後、総合討論が行われ、会場の皆さんから数々の質問があり、天野敦雄教授の司会のも

と、和やかな雰囲気の中で演者の先生方とのやりとりがありました

(写真8と9)。閉会の挨拶では、脇坂聡歯学研究科長が、科学を臨床につなげて社会に還元すること、そのような視点をもつ歯科医師を育てることを大阪大学歯学研究科・歯学部附属病院の使命であると語り、閉会となりました(写真10)。

このようにして、今年も無事、フォーラム が 終 了 し ま し た。フォーラム終了後に来聴者からいただいたアンケートの回答内容に、

「とても難しい内容を大変わかりやすく話していただいた」、「歯科医療が進歩している様子がよくわかった」、「今日お話しされた治療を大阪大学で早く受けられるよう期待します」など、専門的で難しい内容を、楽しく理解していただけた様子がわかるコメントがいくつもあったことを付け添えさせていただきます。「より正確にわかりやすく科学を伝えたい」という熱意から、演者をはじめとする関係各位の先生方がリハーサルなどをふまえて、講演準備に尽力されたことが実を結びました。

最後になりましたが、当日は小児歯科学教室・口腔病理学講座の先生方、歯学会事務の方々が、受付や場内進行をお手伝いしてくださいました。また、歯学部同窓会の尾上好申会長も、お忙しい中、応援に駆けつけてくださいました。今後も市民フォーラムの開催の折には、同窓会の皆様からのご協力ご支援をよろしくお願いいたします。

写真 5 古郷先生の講演

写真 8 総合討論

写真 6 岩井先生の講演

写真 7 村上先生の講演

写真 9 講演メモを見ながら質問!

写真 10 脇坂先生の閉会の辞