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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 蓄電池を活用した新たなエネルギー産業に関する調査 報告書 経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 政策課 御中 2016331

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蓄電池を活用した新たなエネルギー産業に関する調査

報告書

経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 政策課 御中

2016年3月31日

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目次

プロジェクト概要 ・・3

I. 蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算 ・・31

II. 蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのバリューチェーン分析 ・・124

III. 海外における蓄電池関連の施策及びビジネスの調査 ・・206

IV. 蓄電池等の競争力比較 ・・247

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調査の目的・背景

仕様書を踏まえ、本事業の目的を以下のように理解している

<仕様書より>

(1)蓄電池は、電力需給の負荷平準化やスマートグリッド社会実現など、分散電源の促進にとって核となる重要技術である。また、①系統用(長周期対策用、短周期対策用)、②需要家用(工場・ビル・集合住宅用、家庭用、緊急時・災害対策用)、③民生用(パソコン用、携帯電話用等)、④車載用(HV用、PHV用、EV用)と様々な用途に活用可能であり、世界的にも市場拡大が想定される成長分野である。これまで、蓄電池産業における電池セル部分は、日本企業が高い技術力でマーケットシェアを獲得していた分野であるが、近年では、特に韓国蓄電池メーカーが価格競争力を武器にシェアを伸ばしており、その競争は激化している。

(2)このため、蓄電池のバリューチェーンを詳細に分析し、各レイヤーの日本企業及び海外企業の強み・弱みを把握することで、今後の政策支援のあり方の方向性を検討する。さらに、系統用蓄電池のマルチアプリケーションや需要家用蓄電池の群制御など、新たな主体による新たなビジネスが生まれている。これらについても、どのような主体がどのようにビジネスを行っているかを分析し、政策的支援の必要性及びあり方を検討する。

(3)その際、日本のみならず、海外の有望マーケットも調査対象とし、現地政府の規制や支援策がどのように影響を与えているのかを分析し、日本へのインプリケーションについて考察する。また、蓄電池の用途ごとに、日本企業のグローバルでの位置づけと、今後の見通しについても俯瞰できるよう分析する。

(4)また、蓄電池を活用したビジネスの経済性を詳細に分析することで、他の対策と比較した際の、蓄電池の競争力及びエネルギー政策上の意義を整理し、今後の政策立案の検討材料とする。

重 要

① 蓄電池産業における、日本企業の位置づけと今後の見通しの俯瞰

② 他対策に対する蓄電池の競争力・エネルギー政策上の意義の整理

③ 我が国蓄電池産業に対する今後の政策支援のあり方の方向性の検討

④ 新たなビジネス形態に対する政策的支援の必要性及びあり方の検討

⑤ 海外の規制や支援策を踏まえた、日本へのインプリケーションについての考察

海外の取組を踏まえた検討

現状分析を踏まえた検討

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プロジェクト概要

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Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算 -①考え方、結果概要-

≪考え方≫

以下のような6つのアプリケーションに対して、蓄電池の社会的価値及び事業性を評価した。

各アプリケーションではそれぞれベースとなるケースを想定し、各対策を実施するために必要となる容量[kW]及び電力量[kWh]を算出した。蓄電池はアプリケーションに応じて時間率を想定した。

≪結果概要≫

長周期の充放電が求められるアプリケーションでは蓄電池単体のコストが大きくなるため発電コストが高く、事業性は低い。

一方、短周期の充放電が求められるアプリケーションではコスト競争力が期待できる。

短周期: ①、②-1、③

長周期: ②-2、④、⑤

アプリケーション

① 周波数調整

②-1 再エネ導入拡大-短周期対策

②-2 再エネ導入拡大-長周期対策

③ インバランス調整

④ ピークカット

⑤ 送配電網増強

⑥ 自動車

蓄電池の社会的価値・事業性

a. エネルギー自給率

b. CO2削減効果

c. 発電コスト

d. 事業性評価(市場規模推計)

前提

ベースケース(比較対象)想定

蓄電池の必要量(kW、kWh)

短周期/長周期注

シナリオ

注 短周期の調整力のような1回の充放電時間が比較的短い場合は0.25時間率(4C)、長周期の調整力のような1回の充放電時間が比較的長い場合は5時間率(0.2C)とした。

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Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算 -②試算内容-

3E(エネルギー自給率、CO2削減効果、経済性)及び事業性(市場規模)の観点から行う6つのアプリケーションごと

の試算に加えて、蓄電池の社会的及び事業的意義をより詳細に分析するため、下表のような試算を行った。

コスト競争力のある蓄電池価格の推計、及び全電源平均による試算を追加で実施した。

試算内容 考え方

i. 競合手段と事業性が同程度になる蓄電池の価格の試算

• (蓄電池の事業性)-(比較対象とするリソースの事業性)≧0を満たす蓄電池の固定費を算出

ii. 蓄電池をマルチユースした場合の

組合せ検討 • 比較的事業性の見込める短周期用途に長周期用途(⑥自動車を除く)を組合せて事業性の見込めるマルチユースのパターンを検討

ⅲ. 調整力としての価値がある

地域(電力管内)の検討

• 比較的事業性の見込める短周期用途について、地域別に2030年までの必要調整力と供給可能な調整力(揚水発電+火力発電)を計算して、蓄電池が導入される可能性が比較的高い地域を検証

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Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算 -③試算結果まとめ(1/4)-

蓄電池については自給率はすべて向上、CO2排出量はすべて削減という結果となった。

発電コストは削減▲に進むアプリケーションが望ましい。

アプリケーション 比較対象となるベースケース

蓄電池のスペック 手段

自給率 [%]

CO2 排出量

[万t-CO2/年]

発電コスト

固定費 燃料費 合計 MW MWh

①周波数調整 石油火力 1,582 396

A.蓄電池 +0.004% ▲2,929 ▲463 ▲14,495 ▲14,958

B.LNG火力 0% ▲2,898 ▲267 ▲14,424 ▲14,691

C.揚水発電 +0.004% ▲2,929 ▲398 ▲14,495 ▲14,893

②-1再エネ導入拡大- 短周期対策

B.LNG火力 6,921 1,730 A.蓄電池 +0.23% ▲268 +543 ▲608 ▲65

C.揚水発電 +0.23% ▲268 +831 ▲608 +223

②-2再エネ導入拡大- 長周期対策

C.出力抑制 12,614 63,068 A.蓄電池 +0.58% ▲415 +12,563 ▲452 +12,111

B.揚水発電 +0.58% ▲415 +1,463 +133 +1,596

③インバランス調整 石油火力 36 9

A.蓄電池 +0.0004% ▲7.0 +0.9 ▲34 ▲33

B.LNG火力 +0.0000% ▲6.6 ▲0.9 ▲33 ▲34

C.揚水発電 +0.0004% ▲7.0 +2.4 ▲34 ▲31

④ピークカット 石油火力 12,203 61,013

A.蓄電池 +0.040% ▲25 +11,778 ▲33 +11,744

B.燃料電池 +0.037% ▲25 +28,804 ▲8 +28,796

C.ヒートポンプ +0.040% ▲25 +1,253 ▲69 +1,184

D.自家発電 0% ▲8 +1,540 ▲19 +1,521

⑤送配電網増強 出力抑制 12,614 63,068 A.蓄電池 +0.58% ▲415 +12,555 ▲473 +12,083

B.送配電網投資 +0.58% ▲415 +679 ▲861 ▲183

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短周期用途

(3C注2)

長周期用途

(0.2C)

Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算 -③試算結果まとめ(2/4)-

①周波数調整及び③インバランス調整では、事業性が見込める結果となった。

①周波数調整注1 ②-1 再エネ短周期 ③インバランス調整

②-2 再エネ長周期 ④ピークカット ⑤送配電網増強

事業性(市場規模)の試算結果

-9,972

-2,370

662

-12,000

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

2,000

蓄電池

出力抑制

揚水発電

-27,034

-9,944

0 241 617

-30,000-25,000-20,000-15,000-10,000-5,000

05,000

燃料電池

蓄電池

石油火力

自家発電

ヒートポンプ

-11,976

-199

0

-14,000-12,000-10,000-8,000-6,000-4,000-2,000

0

蓄電池

送配電網投資

出力抑制

[億円/年] [億円/年] [億円/年]

[億円/年] [億円/年]

[億円/年]

(注1)純粋なコストに対する事業性を算出するため、①周波数調整で考慮した蓄電池の応答性に対する対価は0とした

-11

29 36

108

-20

0

20

40

60

80

100

120

揚水発電

蓄電池

石油火力

LNG火力

-223

-47

0

-250

-200

-150

-100

-50

0

揚水発電

蓄電池

LNG火力

-0.4

0.5

2.0

3.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

揚水発電

蓄電池

石油火力

LNG火力

(注2)NEDOロードマップと整合性を取るため、ここでは短周期の時間率を3Cとして計算した

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Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算 -③試算結果まとめ(3/4)-

短周期用途では、LNG火力や石油火力に比べると価格競争力は低いが、減価償却期間中の揚水より高い注1

長周期用途では、②-2再エネ長周期で7.9[万円/kWh]まで価格が下がれば出力抑制と同程度の価格競争力になる

アプリケーション 競合手段と価格競争力が同じになる時(同じ事業性を得る時)の蓄電池システムの価格 価格の単位

短周期

用途

(3C注3)

①周波数

調整注2

万円/kW ②-1 再エネ

短周期

③インバランス調整

長周期

用途

(0.2C)

②-2再エネ

長周期

万円/kWh ④ピーク

カット

⑤送配電網増強

現在の

価格 石油

火力

損益分岐

価格 C.揚水

(償却中)

B.LNG

火力

9.5 4.5 11 12 15 5

現在の

価格 C.揚水

(償却中)

9.5 10 12 15 8.8

・B.LNG火力

・損益分岐価格

現在の

価格

C.揚水

(償却中)

損益分岐

価格

石油

火力

B.LNG

火力

9.5 10 2.6 5.3 11 12 15

5

5

現在の

価格 B.揚水

(償却中)

損益分岐

価格

4.2 10 20 3.1 5 5.9 6.4 7.9

C.出力

抑制

マルチユース

(×②-1) マルチユース

(×①, ③)

現在の

価格

C.ヒート

ポンプ D.自家

発電 B.燃料電池

損益分岐

価格

3.3 3.7 20 48 10 2.7 5 5.7 6.2

マルチユース

(×②-1) マルチユース

(×①, ③)

現在の

価格 マルチユース

(×①, ③)

損益分岐

価格

1.0 10 20 1.3 5 3.3

B.送配電

網投資

マルチユース

(×②-1)

2.8

9.0 10

注1 第六回発電コスト検証WG 資料1より、揚水コストに占める資本費と運転維持費の比は4:1とした 注2 純粋な競争力を比較するため、①周波数調整で考慮した蓄電池の応答性に対する対価は0とした

注3 NEDOロードマップと整合性を取るため、ここでは短周期の時間率を3Cとして計算した

C.揚水

(償却済)

2.4

C.揚水

(償却済)

2.4

C.揚水

(償却済)

2.4

B.揚水

(償却済)

1.2

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0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

20 10 7 3

事業

規模

[億円

] Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算 -③試算結果まとめ(4/4)-

20[万円/kWh]~10[万円/kWh]の場合、競合手段より事業性がある短周期用途(①、②-1、③)のみ導入が進む

7[万円/kWh]まで価格が下がると、②-2で出力抑制より事業性が大きくなるため、出力抑制から蓄電池への切り替えが進む

これに伴い蓄電池導入量が20倍程度になるため、マルチユースの活用や大量生産等、さらなるコスト削減も期待できる

3[万円/kWh]になると、①~④の5つのアプリケーションで各々事業性が成立するため、自然に蓄電池の普及が進む段階である

事業規模 蓄電池導入量

②-2:出力抑制→蓄電池の切り替えメリット注

注1 ②-2では揚水の設備容量が限られているため、出力抑制か蓄電池のいずれかが導入される必要がある。価格が7[万円/kWh]まで下がっても

蓄電池による事業性はマイナスであるが、出力抑制より事業損失が少ない蓄電池への切り替えが進むと想定し、ここではその切り替えメリットを示している

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

20 10 7 3

蓄電

池導

入量

[MW

h]

注2 短周期用途は4Cを想定。①周波数調整は蓄電池の応答性に対する対価を考慮

■①周波数調整

■②-1 再エネ短周期

■③インバランス調整

■ ②-2 再エネ長周期

■④ ピークカット

事業性が成立する

アプリケーション

蓄電池システム価格

(5時間容量) 20[万円/kWh] 10[万円/kWh] 7[万円/kWh] 3[万円/kWh]

■①周波数調整

■②-1 再エネ短周期

■③インバランス調整

■ ②-2 再エネ長周期

■④ ピークカット

事業性が成立する

アプリケーション

蓄電池システム価格

(5時間容量) 20[万円/kWh] 10[万円/kWh] 7[万円/kWh] 3[万円/kWh]

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Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算 -マルチユース試算結果-

各組合せのマルチユースの事業性を試算して、長周期用途単体ユースの場合の事業性と比較した

短周期用途とのマルチユースによって少し事業性が改善されたが、長周期用途のための蓄電池量[kWh]を確保するために非常にコストが掛かるため、大きな事業性の改善には至らなかった

②-2再エネ長周期 ④ピークカット ⑤送配電網増強

注1 長周期用アプリケーションとして蓄電池がフル充電された場合、すぐに放電する(SOCが100%の時は無い)として試算

(短周期用途:①周波数調整、②-1再エネ短周期対策、③インバランス調整)

-9,972 -9,969

-9,633

-9,573

-10,100

-10,000

-9,900

-9,800

-9,700

-9,600

-9,500

-9,400

-9,300

②-2

②-2

②-2

②-2

②-1

事業性

[億円

]

-9,944 -9,941

-9,604

-9,543

-10,000

-9,900

-9,800

-9,700

-9,600

-9,500

-9,400

-9,300

②-1

事業性

[億円

]

-11,976 -11,973

-11,637

-11,578

-12,100

-12,000

-11,900

-11,800

-11,700

-11,600

-11,500

-11,400

-11,300

②-1

事業性

[億円

] 注2 短周期用途は4Cを想定。①周波数調整は蓄電池の応答性に対する対価を考慮

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(500)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

(50)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄

2015年

C 119 433 2,316 1,216 28 989 279 55 467 76

C / A 93% 95% 97% 97% 78% 96% 94% 89% 95% 97%

2020年

C 59 334 1,949 1,094 23 963 190 19 262 66

C / A 80% 90% 94% 95% 62% 94% 87% 61% 87% 95%

2030年

C 23 176 1,497 676 ▲24 606 106 9 151 44

C / A 47% 73% 87% 86% ▲1,427

% 84% 67% 29% 69% 87%

Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算 -地域別検討試算結果-

①周波数調整と②-1再エネ短周期(ケース1:地域別電力需要比率案分)+③インバランス調整の2パターンについて、調整余力の年次推移(2015、2020、2030年)を算出注

①の場合、最も調整力が不足するのは北陸電力管内で、2020年以降は四国電力管内でも調整力が不足する

②-1+③の場合、北陸または四国電力管内の調整余力が最も少なく、2030年では北陸電力管内で調整力が不足する

①周波数調整 ②-1再エネ短周期(ケース1)+③インバランス調整

北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄

2015年

C 16 35 386 170 ▲9 143 38 4 58 7

C / A 50% 47% 75% 73% ▲133% 68% 54% 24% 58% 64%

2020年

C 8 22 340 156 ▲9 143 27 ▲0.3 31 6

C / A 34% 36% 72% 71% ▲134% 67% 45% ▲2% 42% 59%

2030年

C 4 4 289 103 ▲14 99 18 ▲0.4 19 3

C / A 21% 8% 68% 61% ▲850% 59% 35% ▲3% 31% 44%

(A.供給可能調整力、B.必要調整力、C.調整余力(A-B))

注 本試算では、①周波数調整と②-1再エネ短周期、③インバランス調整で火力による供給可能調整力の考え方が異なるため

(①では火力発電設備容量の10%、②-1と③では70%を供給可能調整力の割合としている)

[万kW] [万kW]

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Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのVC分析 -米国のBM調査(1/4)-

ユーティリティコストの値差が大きいところでビジネスが拡大

カリフォルニア州や離島などの地域間値差や昼夜間値差が大きな地域を主なビジネス領域として事業を拡大

補助金を前提としたビジネスが主

特にピークカットをメインビジネスとする企業などは、補助金が打ち切られるとビジネスの持続性が担保できなくなる可能性も

需要家とユーティリティ企業双方にサービス提供をする事例も

蓄電池のマルチユースなどの技術を活用し、顧客層の拡大を志向しているものと想定される

アメリカでも、現状ではあまねく場所をターゲットに、補助金抜きでビジネスを行うことは困難

今後はマルチユースなどの技術を活用し、顧客層を広げることによって収益性の改善を進めていくものと想定される

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Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのVC分析 -米国のBM調査(2/4)-

需要家向けピークカットをメインビジネスとして行っている企業はカリフォルニアなど値差が高い場所を中心に事業展開を行っている。

下記主要企業の中で、利益を公開していてかつ黒字の企業はない。

Stem Green Charge Networks Solar City

設立年 2009 2009 2006

売上高 NA 2M$(2013年度) 300 M$

営業利益 NA NA -452M$

資金調達額 100.1M$ 56M$以上(総額は非公開) NA

顧客 商業施設等の一般電力

ユーザー、ユーティリティ企業 商業施設等の電力ユーザー、 学校・役所などの公的機関

一般家庭、商業施設等の 電力ユーザー、政府機関

ビジネスモデル

ピークカット ピークカット ピークカット

• 蓄電池とEMSアプリなどがセットになったフルターンキーシステムを10年契約でリース

• DRのPilot Programをユーティリティ企業と現在進めている

• 一種のリース形式で、GCNがシステムを保有したまま、顧客の下で設置・運用・管理

• 顧客はリース料ではなく、システムによって削減された電気料の一部をGCNへ支払う

• 太陽光パネル・蓄電システム(powerwall)の設置、アプリ、モニタリング・修繕

• 購入形態としては、リース型、ローン型、購入型等の複数形態を提供

提供するリソース PV、蓄電池 PV、蓄電池 PV、蓄電池

提供エリア カリフォルニア州、ハワイ州、ニューヨーク州

カリフォルニア州、ニューヨーク州 北東部と西部を中心とした19州とワシントンDC

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Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのVC分析 -米国のBM調査(3/4)-

ユーティリティ向けにビジネスを行っている企業には電力事業者の関連会社が多い。

Sunverge Energy AES Energy Storage NextEra Energy Resource

設立年 2009 2007 1997

売上高 3M$ NA

(連結:17,146M$) 88M$(2013年度)

(連結:17,021M$,2014年度)

営業利益 NA NA

(連結:2,901M$) NA

(連結:4,384M$,2014年度)

資金調達額 NA NA NA

顧客 ユーティリティ企業、 不動産デベロッパー

ユーティリティ企業、再生可能 エネルギーのデベロッパー

NextEra Energyの電力ユーザー

ビジネスモデル

ピークカット 電力安定化

(短周期・長周期) 再エネ補償、周波数調整

• 一般家庭や企業等に分散型蓄電システムを設置

• ユーティリティ企業などと提携し、特定の地域に集中的にシステムを提供することで、スマートグリッドを実現するプロジェクトを実施

• 電力事業者等を対象とした大容量系統向けの蓄電システムを提供

• 蓄電池、PCS、EMSアプリ、安全装置等からなるシステムを、設置から運用・保守までフルターンキーで提供

• 風力等の自然エネルギー発電を対象とした大容量系統用蓄電システムを提供

• 蓄電池、EMSソフトを含む蓄電システムを自社の発電施設に設置、電力需給のバランスを図り、顧客に自然エネルギー発電の電力を低価格で販売

提供するリソース PV、蓄電池 蓄電池 (風力)、蓄電池

提供エリア アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、ドイツ

PJM、カリフォルニア州、ハワイ州、プエルトリコ、イギリス、フィリピン他

イリノイ州、カリフォルニア州、アリゾナ州他

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Stem

Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのVC分析 -米国のBM調査(4/4)-

米国では蓄電池を用いたビジネスが台頭しているが、それらの市場は限定的であり、今後の市場化等を見据えた先行投資であると考えられる。これらの企業が日本をフィールドとしてビジネスを大きく展開することは考えにくい。

各社の共通点として、①ソフトウェアを開発、②蓄電池の運用まで実施、③セルは他社から調達、があげられる。

系統側 需要家側

自社保有

AES SolarCity

Green Charge

Networks

Sunverge

NextERA 電力会社

スタートアップ企業

企業、ホテル等 一般家庭

システム提供方法(リスクの取り方)

蓄電池の設置個所

リース

販売

NextERA 自社保有の再エネ発電所に蓄電池を設置

顧客に自然エネルギー発電の電力を低価格で販売

GCN リースだが、初期投資・リース料は無料 システムによって削減された電気料の一部を顧客から獲得

AES ユーティリティへの販売のほか、自社保有発電所に併設 技術+運用・保持能力があり、フルターンキーシステムで提供

Sunverge ユーティリティ企業、不動産デベロッパーが主要顧客 一般家庭など、特定の地域に集中的にシステムを提供

Stem, SolarCity Stemは商用施設、SolarCityは一般家庭が主要設置場所 リースにより、蓄電池システムを提供

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Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのVC分析 -日米の比較-

日本では、蓄電池コストが高く、電力価格の値差が小さく、調整力市場が乏しいことから、蓄電池を活用したサービスへの進出が進んでいない。

電力事業法の改正や市場の創設により、日本も米国の現状に近づいていくことが予想され、さらなるPVの導入やPPSの参入により、電力価格の値差がさらに拡大することで、蓄電池のオペレーション市場創出につながる。

日本 米国

電気事業法 途上

• 発送電分離が進められている最中である

済 • 既に発送電分離が進んでいる

調整力

〇 • 東電管内は調整力に余裕がある • 北海道や九州では調整力が比較

的乏しい

× • 電力会社が保有している調整力が

少ない

市場化

× • アンシラリー、容量市場、ネガワット、

DR市場等の市場が未整備である

〇 • アンシラリーサービス等の蓄電池を

活用したサービスが市場化されている地域も複数存在する

経済性 (ユーティリティコス

トの値差)

小 • 現在はピークとオフピークでの値差

が約7.5円/kWh※

• デマンド料金は約1,700円※

大 • 現在はピークとオフピークでの値差

が約4円/kWh

• デマンド料金は約1,850円

※東京電力 業務用季節別時間帯別電力(契約電力500kW未満)

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≪参考≫アメリカにおけるピークカットによるコストメリット

カリフォルニアの平均的な単価の地域においてピークカットを行った場合、補助金を加味しても、蓄電池のコスト回収だけで10年前後の期間を要する(蓄電池システム単価により期間は変動)

PG&E平均単価 備考

電気料金

デマンド料金夏 15.54 $/kW.月

PG&E Commercial/General ServiceのTOUを想定

デマンド料金冬 7.31 $/kW.月 Peak価格 0.15 $/kWh

Off Peak価格 0.12 $/kWh

コスト関連

充放電速度 10 kW 設置容量 30 kWh

蓄電システム単価 800

$/kWh 3ケースを想定 1,000 1,200

充放電効率 90 %

ピーク持続時間 3 h/日 ピーク対象日 260.7 日/年 充電時間 7,821 kWh/年

蓄電システム投資

800$/kWh 24,000 $ 1,000$/kWh 30,000 $ 1,200$/kWh 36,000 $

補助金額 14,600 $ SGIPによる$1.46/Wから計算

コストメリット デマンド料金削減 1,371 $/年

電気料金差 77 $/年

回収年 800$/kWh 8 年間

金利として3%を設定 1,000$/kWh 13 年間 1,200$/kWh 20 年間

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≪参考≫アメリカのホテルにおけるStem導入事例

IntercontinentalがStem導入実績をもとにビジネスケースを提供 *1

SGIPによる補助金割合を60%とすると、蓄電池の総コストは2M$, 10年償却であれば年間200k$となる。実際にIntercontinentalが償却している金額は80k$/yrと推察できる。その差分(120k$/yr=SGIPによる年間の償却金額)とコスト削減総額を比較すると、ほぼ同額となっているため、補助金がなかった場合にはコストメリットは10~30k$/yr程度まで落ち込むこととなる。

Stemは蓄電池の出力と容量の比率を1:1に近づけることにより効率的に補助金を獲得し、収益性を担保する工夫も行っているといわれている。 *2

備考

典型的な ホテルでの ケース

前提条件 導入ホテル数 2 hotels

設備容量 54 kW/hotel

コスト関連 想定コスト削減 11 k$/yr/hotel

Intercontinental全体

SGIPの補助金による資本抑制 1,200 k$ (16 hotels) 16のホテルで導入した際の補助金合計が1.2M$。16ホテルの設備容量と上記のモデルホテルの設備容量は異なる可能性あり

コスト削減総額 130-150 k$/yr

*1: https://www.jointventure.org/images/stories/pdf/SEEDZ%20Storage3_InterContinental%20Case%20Study%20Stem%20for%20SEEDZ.pdf

*2: http://www.forbes.com/sites/peterdetwiler/2015/01/29/stem-well-positioned-in-on-site-energy-storage-market/

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Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのVC分析 -蓄電池製造企業の変遷(1/2) -

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

製造企業(日本)

蓄電池製造から撤退

座間工場稼働

徳島工場稼働 貝塚工場稼働 加西工場稼働

テスラと 米国工場設置

住之江工場稼働

加西・住之江工場 ライン増設

京都工場増設 京都新工場稼働

柏崎工場稼働 佐久工場稼働(~2012年)

シンガポール・中国工場へ事業移転

製造企業(日本以外)

論山第二工場稼働 論山第三、第四工場稼働 (韓)

(韓) 中国西安工場稼働 マレーシア工場増設

米ホランド工場 稼働

梧倉第一工場 稼働

梧倉第二工場 稼働

梧倉第三工場、中国南京工場稼働

坑梓工場稼働

(韓)

(中)

(中)

青島工場、蘇州工場 施工開始

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

蓄電池を製造している工場は、2009年前後に日本での稼働開始が目立ったが、近年では海外への移転・海外企業による

工場稼働開始が目立っている

蔚山工場で

EV用蓄電池製造 ※1995年に天安工場、2000年

に蔚山工場を建設

中国・蘇州工場

ライン増設

富山工場稼働

恵州工場稼働

※1997年設立から、天津工場の生産能力を増強

三洋電機

パナソニック

日立マクセル

東芝

NEC(オートモーティブエナジーサプライ)

ソニー

三菱重工

Kokam

Samsung SDI

LG Chem

BYD

Lishen

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Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのVC分析 -蓄電池製造企業の変遷(2/2) -

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

会社 工場 投資額 稼働時期

(増設含む) 規模

パナソニック(AIS社)

徳島 約800億円

2004 1.2億セル/年 (HEV換算:150~200万台/年) 加西 2010

貝塚 2009 ‐

住之江 約500億円 2009 3億セル/年

米国 1,500~2,000億円 2016~ EV換算:50万台/年

日立マクセル

京都 ‐ 2005(増設) ‐

京都新 数十億円 2014~ 792万セル/年

富山 約20億円 2011 80MWh/年

東芝 佐久 ‐ 2008 180万セル/年

柏崎 250億円 2011 1,200万セル/年

NEC(オートモーティブエナジーサプライ株式会社)

座間 ‐ 2009 EV換算:9万台/年

ソニー シンガポール・中国 ‐ 2014 約8.9億セル/年

三菱重工 長崎造船所内 100億円 2010~ 80MWh/年

Kokam 論山第二 ‐ 2011 42MWh/年

(論山第一工場含む) 論山第三、第四 ‐ 2014

Samsung SDI マレーシア ‐ 2012 14億700万セル/年

(天安工場や蔚山工場含む) 中国西安 6億USドル 2014~2020

LG Chem

米ホランド(ミシガン州) 2兆ウォン 2010 800MWh/年

(EV換算:6万台分/年) (HEV換算:20万台/年)

梧倉第一 ‐ 2011 1,600MWh/年

梧倉第二 ‐ 2012 1,600MWh/年

梧倉第三 ‐ 2015~ 1,600MWh/年

中国南京 ‐ 2016~ ‐

BYD 恵州 ‐ 2009 1.6GWh/年

坑梓 ‐ 2015~ 3.2GWh/年

Lishen 青島 30億元 2014~(施工) 1.5GWh/年

蘇州 40億元 2014~(施工) 1.8GWh/年

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オペレーション企業(米国以外)

$10M $25M $33M $24M

$10M $30M $527M $294.8M $403.74M $201M $113M

$5.23M $2.43M

$18.3M

※CESA(California Emergency Services Association)Membersより抜粋して記載

※ICE Energy及びSolarCityは、それぞれ製氷装置とPVパネル事業への投資が大半を占める $18M

$2.9M $10.2M $15M $72M

$66M

オペレーション企業(米国)

蓄電機能付太陽光発電開発 家庭用蓄電システム市場導入

蓄電システム開発着手 家庭用蓄電システム市場導入

家庭用蓄電レンタル開始

蓄電事業開始・Dispatch Energy Innovationと提携し蓄電システム発表 (独)

(日)

(日)

(日)

蓄電システム実証実験開始 (独) 欧州初の商用電池プラント稼働

EMS開発 蓄電システム市場導入 (中)

※製造企業のSamsung SDI(韓国)も家庭用蓄電システムの販売を2014年より開始している。

Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのVC分析 -オペレーション企業の変遷(1/2) -

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

蓄電池のオペレーションにより収益を上げている企業は特に近年アメリカを中心に拡大。他国では蓄電システムの提供にとどまっている企業も多い。

ICE Energy

SolarCity

Demand Energy

Greensmith Energy

Green Charge Networks

Stem

ニチコン

伊藤忠エネクス

IBC Solar

Yunicos

Alpha-ESS

ONEエネルギー

Advanced Microgrid Solutions

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2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

Ausgridとして独立、スマートシティ/スマートグリッドプロジェクトに蓄電システムで参入

蓄電システム市場導入

オペレーション企業(豪)

蓄電システム開発着手 (豪)

前身:Energy Australia (豪)

(豪) 蓄電事業へ参入 家庭用蓄電システム市場導入

Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのVC分析 -オペレーション企業の変遷(2/2) -

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

Magellan Power

Audsgrid

ecoult

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Ⅲ.海外蓄電池関連の施策及びビジネスの調査 -米国の蓄電池実証概要-

米国の各地域で実施されている実証事業については以下のとおり。

Webでは目的等の概要は把握できるものの、詳細については不明

①Distributed Energy Storage Research Project

②Battery Energy Storage Pilot Project

③Borrego Springs Microgrid

④Irvine Smart Grid Demonstration

実施主体

NRECA/CRN

PG&E

SDG&E

SCE

プロジェクト概要

2013年より4電力共同事業体にて実施

10kWh前後の蓄電池を住宅/業務オフィスに設置し、需要家側メリットと系統の負荷抑制/安定化に貢献できることの検証を実施

需給調整(ピーク抑制を含む)、電力品質向上、BCP(停電時の自立)対策の効果をNaS電池を用いて実証

変電所と研究施設に20MWh程度設置

変電所に蓄電池やディーゼルガス発電を設置することでピークロードの削減や無効電力制御の実証を実施

韓国KoKam製のリチウムポリマー電池を1,500kWh程度導入

家庭用蓄電池や複数世帯で活用するコミュニティストレージのほか、配電網の系統安定化を目的に配電網用蓄電池(DBESS)を2014年から設置。

DBESSはA123製のリチウムイオン電池500kWh等を導入

出所)各種資料より三菱総研作成

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Ⅲ.海外蓄電池関連の施策及びビジネスの調査 -米国現地訪問調査(1/3)-

<ヒアリング項目>

特に以下の観点について訪問先の考え方(課題意識やモチベーション等)や想定される今後の展開を伺うことを意識してヒアリングを実施した。

配電系統における技術的効果

需要家及び電力会社にとっての経済効果

想定されるESSの運用及びマネジメントの手法

ESSを活用したプロジェクトを多く実施している米国の電力会社を中心に、我が国における今後の蓄電池産業の展開に向けて示唆を得るべくヒアリングを実施した

訪問先 業態 訪問日時 所在地

PG&E 電力会社 2016年3月15日 カリフォルニア州

NRECA 電力協同組合 2016年3月16日 バージニア州

AES 発電事業者

蓄電池サービサー 2016年3月17日 バージニア州

SCE 電力会社 2016年3月18日 カリフォルニア州

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Ⅲ.海外蓄電池関連の施策及びビジネスの調査 -米国現地訪問調査(2/3)-

【有望と考えるアプリケーション】

経済的には、「周波数調整」「送配電網投資抑制」が最も有望視されており、次いで「マイクログリッド(自立運転と再エネとの統合)」、「分散型蓄電池のアグリゲーション」が注目されている。

技術的には、蓄電池ならではの強みやメリットが現在模索されているところである。配電系統のサポートとして蓄電池に期待しており、「電圧調整」と「設備寿命延長」について具体的なビジネスケースを検討している会社もあった。

【各社の技術・経済的価値についての分析及び評価】

蓄電池の価値は他のアプリケーションにも活用できることで、そうすれば更に事業性が向上する

他の技術では解決できない複雑な課題を蓄電池で解決するケースについて、まだ具体的な答えは無いが可能性はあるため検討中

現在事業性が成り立つビジネスケースを検討中で、特に電力システムにおけるEVの活用に注目している

蓄電池の経済性は調達も含めたトータルコストで考えるべきで、LNG火力と比べても競争力を持つ

【課題意識】

課題意識としては最も共通して挙げられたのは「安全性に係る標準の不足」であり、全米で検討が進められている

インバータも含めた蓄電システムや需要家レベルでの安全性に関するリクアイアメントが不足

内容としては、特に「発火防止・消防」についてのリクアイアメントが不足

蓄電池のビジネスケース確立のために、米国では以下のような状況に対応する必要があることが分かった

現時点で事業性が見込める「周波数調整」サービスにおいて、蓄電池の入札が増えるにつれて入札価格が下がってきている

市場サービスではなく、送配電会社の運用において事業性のある蓄電池のビジネスケースを作る必要がある

アプリケーションの定義が十分でないため、蓄電システムの仕様についてサプライヤーとコミュニケーションを取ることが難しい

蓄電池のコストが下がり様々なアプリケーションが可能になった場合に、具体的なオペレーションやビジネスモデルの設計及び統合が難しい

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Ⅲ.海外蓄電池関連の施策及びビジネスの調査 -米国現地訪問調査(3/3)-

米国現地調査の結果、我が国における今後の蓄電池産業の創出に向けて以下のようなフィードバックがあった

1.蓄電池のアプリケーションに関する検討

米国では「周波数調整」と「送配電網投資抑制」が注目されているが、周波数調整の入札価格の下落やアプリケーションの定義不足等の問題もあ

る。我が国でもいずれ同様の問題に直面することが予想されるため、広く蓄電池のアプリケーションを検討し、ビジネスモデルやオペレーションの定義及

び更なる事業性の検討が必要である。

米国では、経済的には「周波数調整」「送配電網投資抑制」が最も有望視されている

アプリケーションの定義が十分でないため、蓄電システムの仕様についてサプライヤーとのコミュニケーションが難しい状況

蓄電池を中心に周波数調整市場への入札が増えており、どんどん入札価格が下がっている

2.安全性に関する標準化状況のフォロー及び検討

米国では蓄電池の安全性に関する標準化検討が進んでおり、米国の標準が世界のデファクトとなる可能性もあるため、我が国としても状況をフォ

ローし、国内でも検討を開始すべきである。

米国では特に蓄電システムや需要家レベルでの安全性に関する課題意識が高く、標準化が必要と認識されている

安全性を含め、蓄電池に係る標準化の検討がEPRIを中心に全米で進められている状況

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Ⅲ.海外蓄電池関連の施策及びビジネスの調査 -米国・欧州におけるV2Gプロジェクト整理-

米国・欧州においてはV2Gに関する研究・開発プロジェクトや、実証プロジェクトが各種行われている。

V2Gプロジェクトには、その関連機器・インターフェース・システムの開発・設計に取り組むものと、社会実装を通じたデータ収集に取り組むものがある。

米国・欧州におけるV2Gプロジェクトを、その主要目的に応じてマッピングした。

EV

SE, ス

マー

トメ

ータ

等関

連機

器の

開発

需要

予測

、ア

グリゲ

ート

シス

テム

、制

御セ

ンタ

ー等

のシ

ステ

ム・プ

ラット

フォー

ム開

標準

仕様

設計

、動

作信

頼性

試験

設計

等の

相互

運用

性の

確保

ユー

ザ嗜

好、都

市計

画な

ど、

ソフト

面・社

会的

課題

の検

機器技術開発 社会面検討

研究開発段階 実装・導入段階

EVの

系統

利用

(スケ

ール

アウ

トを

見込

んだ

)社

会実

Green e-Motion

SMARTV2G

COTEVOS e-DASH

V2X Energy

Air Force

Open VGI Platform(Phase 2)

Grid on Wheel

Toyota/Duke Energy 米国

Power UP

通信技術開発 仕様・試験設計

PlanGridEV 新規

新規

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Ⅲ.海外蓄電池関連の施策及びビジネスの調査 -欧米における実証の方向性-

欧米では過去の実証において、システム開発や仕様策定が実施された結果、通信規格やシステム開発は一定程度、実施されており、既にISO/IEC 15118等における標準化も進展。

一方、欧米ともに上記の規格を活用したEVの有効な普及施策には至っていないのが現状。

このため、近年の実証においては、欧米ともに規格を活用したビジネス創出のためのユースケースの検討、及び電力系統-EV間のインターフェース規格の実装に向けた検討が行われている。

ビジネス創出のための ユースケースの検討

電力系統-EV間の インターフェース規格の実装

EV普及のため、ステークホルダーへの価値提供が可能となるビジネスモデルの創出が必要との認識。

近年、欧米で課題となりつつある分散型電源の増加等への対応を足がかりとして、EVを用いた電力系統に対する価値創出のためのユースケース検討が実施されている。

EVの活用可能性の拡大のため、多様なEVを利用可能とするためのインターオペラビリティ(相互運用性)の確保が必要との認識。

電力系統-EV間のインターフェース規格として、米国ではSEP2.0(SAE

J2847)、欧州ではISO/IEC 15118等の標準化が進展しており、これらの実装を目的とした実証が行われている。

欧米の近年の実証における検討の方向性

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≪参考≫BMWとPG&EによるDR実証

BMWとPG&Eは共同プロジェクト「BMW i ChargeForward Program」において、電気自動車の充電制御によるディマンドリスポンス(DR)のテストを2015年7月より開始

BMWは100台の「BMW i3」対し、PG&E社からの信号により最大1時間充電遅延が可能となるように設定し、自社の使用済み電池200kWhと合わせて、PG&E社からの100kWのDR要請に対応

自動車オーナーが外出などの予定があれば、充電遅延を断る通知を行うことも可能

自動車オーナーは本プロジェクトへの参加により最大1540$(開始時に1000$のベースフィー、期間中の協力の成績により終了時に最高540$の成功フィー)の報奨金を受けとることが可能

電力会社

需要家

BMW

「BMW i ChargeForward Program」の概要

DR指令

DR対価

(※不明)

二次利用電池

(200kWh)

BMW i3

(100台=6,600kW相当)

充電延期指令

応答 DR供給

応答に応じた

インセンティブ

(最大1,540$)

出所)BMWプレスリリース等より整理

PG&E

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Ⅳ.蓄電池等の競争力比較 -蓄電池のコスト分析-

将来の量産効果を想定し、蓄電池セルあたり及びPCSのコスト分析を行った。

リチウムイオン電池セルのコスト分析結果(2015年)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

10 MWh 100 MWh 500 MWh 1,000 MWh 10,000 MWh

利益

販管費

製造設備費

間接労務費・材料費

直接労務費

セル部品

セパレータ

電解液

負極材

正極材

1工場当たりの年間蓄電池製造量

セルコスト(円/k

Wh

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

現状 2倍 10倍 20倍

10 kWh, 100 kWh 1 MWh 10 MWh

PCSの量産効果推計(蓄電池規模ごと)

PCS

コスト(円/k

W

2017年頃の価格

2025年頃の価格

PCSの累積生産量(2013年を基準とした場合)

出所)各種資料より三菱総研作成

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Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算

i. 競合手段と事業性が同程度になる蓄電池の価格の試算

ii. 蓄電池マルチユースした場合の組合せ検討

iii.調整力としての価値がある地域別(電力管内)の検討

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短周期用途

長周期用途

1.試算結果サマリー -事業性-

蓄電池の短周期用途(①周波数調整、②ー1再エネ短周期、③インバランス調整)では、事業性が見込める結果となった

①周波数調整 ②-1 再エネ短周期 ③インバランス調整

②-2 再エネ長周期 ④ピークカット ⑤送配電網増強

事業性(市場規模)の試算結果

-11

36

108

262

-50

0

50

100

150

200

250

300

揚水発電

石油火力

LNG火力

蓄電池

-223

0

65

-250

-200

-150

-100

-50

0

50

100

揚水発電

LNG火力

蓄電池

-0.4

1.1

2.0

3.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

揚水発電

蓄電池

石油火力

LNG火力

-9,972

-2,370

662

-12,000

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

2,000

蓄電池

出力抑制

揚水発電

-27,034

-9,944

0 241 617

-30,000-25,000-20,000-15,000-10,000-5,000

05,000

燃料電池

蓄電池

石油火力

自家発電

ヒートポンプ

-11,976

-199

0

-14,000-12,000-10,000-8,000-6,000-4,000-2,000

0

蓄電池

送配電網投資

出力抑制

[億円/年] [億円/年]

[億円/年]

[億円/年] [億円/年]

[億円/年]

注短周期用途は4Cを想定。①周波数調整は蓄電池の応答性に対する対価を考慮

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1.試算結果サマリー -事業競争力比較 -

長周期用途では、蓄電池のシステム価格が数[万円/kWh]程度まで下がれば事業性が見込める

マルチユースした場合、②-2再エネ長周期と①周波数調整の組合せでは9.1[万円/kWh]で事業性が見込める

アプリケーション 競合手段と価格競争力が同じになる時(同じ事業性を得る時)の蓄電池システムの価格 価格の単位

短周期用途

(4C)

①周波数

調整

万円/kW ②-1 再エネ

短周期

③インバランス調整

長周期用途

(0.2C)

②-2再エネ

長周期

万円/kWh ④ピーク

カット

⑤送配電網投資

現在の

価格 C.揚水

損益分岐

価格

石油

火力

B.LNG

火力

7.9 10 20 18 22 24 25 15 5

現在の

価格 C.揚水

7.9 10 20 12 15 8.8

・B.LNG火力

・損益分岐価格

現在の

価格 C.揚水

損益分岐

価格

石油

火力

B.LNG

火力

7.9 10 20 2.6 5.3 11 12 15

5

5

現在の

価格 B.揚水

マルチユース

(×①) 損益分岐

価格

4.2 10 20 3.1 5 5.9 6.4 7.9 9.1

C.出力

抑制

マルチユース

(×②-1) マルチユース

(×③)

現在の

価格

C.ヒート

ポンプ D.自家

発電 B.燃料電池

損益分岐

価格

3.3 3.7 20 48 10 2.7 5 8.8

マルチユース

(×①)

5.7 6.1

マルチユース

(×②-1) マルチユース

(×③)

現在の

価格 マルチユース

(×③)

損益分岐

価格

1.0 10 20 1.3 5 5.9 3.2

B.送配電

網投資 マルチユース

(×①)

マルチユース

(×②-1)

2.8

注 短周期用途は4Cを想定。①周波数調整は蓄電池の応答性に対する対価を考慮

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2.評価における前提 -①蓄電池の諸前提- 蓄電池で蓄電する電力はすべて太陽光及び風力などの変動する再エネもしくは夜間の原子力発電と仮定。注1

蓄電池の利点は自ら調整できない電源の出力を調整できるため

追加試算として、全電源平均での推計も行った。

充放電ロス及び価格、寿命は各種文献より以下のように設定。

蓄電する電源 ①太陽光及び風力などの変動する再エネもしくは夜間の原子力発電 ②全電源の平均値

充放電ロス 1kWhの電気を充電して放電する際の効率:85%

蓄電システム単価 短周期(0.25時間容量)の場合:蓄電池+PCSの価格 7.9[万円/kW](31[万円/kWh]) 長周期(5時間容量)の場合: 蓄電池+PCSの価格 20[万円/kWh] ※ 蓄電池の単価:19.4[万円/kWh]、PCSの単価:3[万円/kW]

耐用年数 10[年]

表 本試算における蓄電池の諸前提

注1 ベースとなる石炭火力などの電源も考慮する必要はあるが、簡単のためこのような想定をした。 出所)資源エネルギー庁「蓄電池技術の現状と取組について」(2009) 出所)経済産業省「蓄電池戦略」(2012) 出所)経済産業省「大型蓄電池システム・大型 PCS 認証基盤整備に向けたブループリント」(2014)

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2.評価における前提 -②エネルギー自給率及びCO2削減量- 火力発電の自給率は0%、原子力及び再エネの自給率は100%とした。

エネルギー自給率については、日本では火力発電燃料の大半を海外からの輸入に依存しているため

エネルギー自給率は総発電電力量に占める割合を推計したため、電力における自給率の向上を推計。

実際のエネルギー自給率は1次エネルギーベースでの推計が必要

CO2排出量は、本試算では火力発電の燃料燃焼によるCO2排出のみを考慮することとした。

火力発電の燃料燃焼によるCO2排出以外に、設備の製造工程や廃棄の際の排出が考えられるが、各電源で1kWhあたりのライフサイクルCO2排出量に大差はなく、火力発電の燃料燃焼による排出量と比較すると小さいため

表 各電源で想定したエネルギー自給率 及びCO2排出原単位

出所)電力中央研究所 日本の発電技術のライフサイクルCO2排出量評価(2009)

自給率

[%]

CO2排出原単位

[g-CO2/kWh]

石炭火力 0 864

石油火力 0 695

LNG火力 0 476

再生可能エネルギー 100 0

原子力 100 0

設備の建設や運用の コストに大きな差は無い

各電源の1kWhあたりのライフサイクルCO2排出量

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2.評価における前提 -③発電コスト:固定費及び燃料費- 発電コストは、設備の建設コストやメンテナンスコストなどの固定費(kWコスト)と、実際に発電する際に掛かる燃料費などの燃料費(kWhコスト)がある。

揚水、蓄電池、ヒートポンプは自ら発電しないため、燃料費は蓄電した電源の発電コストを考慮。

本試算では太陽光・風力及び原子力を採用

原子力及び太陽光・風力は、本試算では蓄電池及び揚水で蓄電することを想定しているため、固定費も含めて1kWh発電するために必要なコストを用いた。

太陽光・風力は今後も新設が増えることが期待されるためコストは資本費及び運転維持費とした

原子力は運転維持費のみを固定費として考慮した

注1 第6回発電コスト検証WG 資料1(2015) のデータをベースとする 注2 固定費の内、運転維持費を示す 注3 出所)経済産業省「ヒートポンプ」より想定

電源及び機器の種類 固定費(kWコスト)[円/kW/h] 燃料費(kWhコスト)[円/kWh]

概要 建設費用等の資本費 メンテナンス等の運転維持費 発電に必要な燃料費

LNG火力 0.23注2 10.8

石油火力 0.42注2 21.7

家庭用燃料電池 29 19.5

蓄電池 アプリケーションに応じて考慮 蓄電した電源の発電コスト÷85%

揚水発電 1.37 蓄電した電源の発電コスト÷70%注4

ヒートポンプ 1.67注3 蓄電した電源の発電コスト÷COPの数値(4.0)注5

自家発(ガスコジェネ) 1.96 16.5

太陽光・風力 19.8注6

原子力 1.5

表 各電源及び機器の発電コスト注1

注4 出所)IEA「水力発電技術ロードマップ」(2014) 注5 経済産業省 省エネルギー小委員会 第1回工場等判断基準WG 資料1(2013)より想定 注6 長期エネルギー需給見通しの太陽光と風力の発電量比率を考慮して算出

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2.評価における前提 - ≪参考≫揚水発電固定費の試算 -

出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)

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2.評価における前提 -≪参考≫各電源の発電コスト-

出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)

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2.評価における前提 -≪参考≫コジェネ燃料電池の発電コスト-

出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)

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3.試算方法と結果(想定するシナリオ) -①周波数調整力-

周波数調整力として、揚水発電とLNG火力・石油火力の部分負荷運転によって調整力を供給していることを想定。このとき、LNG火力・石油火力の場合は部分負荷運転に伴う追加発電コストが発生

これに対して、比較的発電コストが高い石油火力による調整力を各対策で代替することで、石油火力をより発電コストが安いLNG火力で代替して最経済運用することができ、運転維持費も削減できる 追加発電コストも削減できるので社会コスト削減に寄与

ベースケース(石油火力)

対策導入後(B.LNG火力)

LNG火力 石油火力

調整力

揚水発電

発電コスト

対策導入後(A.蓄電池)

※C.揚水発電についても同様に算出

熱効率の低下による追加発電量

調整力

調整力

蓄電池

石油火力をLNG

火力で代替 石油火力の運転維持費の削減

石油火力の運転維持費の削減

調整力

LNG火力

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3.試算方法と結果(計算ロジック) -①周波数調整力-

周波数調整に必要な石油火力の設備容量と定格容量に対する調整力の割合から必要な蓄電量(kW)を算出。また、社会コスト試算のために熱効率低下分を考慮して調整力確保のための追加発電コストも算出。

事業性については、調整力(kW)の提供に対する対価(アンシラリーサービス)による収入を想定。

A.蓄電池の場合は送配電事業者からの指令に対する迅速性や正確性も考慮

①周波数調整に必要な

石油火力の設備容量

周波数調整用石油火力の設備容量注1

最大3日平均需要注1

最大3日平均需要の内、周波数調整に必要な割合注2

②必要な蓄電量(kW)

定格容量に対する周波数調整力の割合注3

③追加発電コスト

調整火力の平均稼働率注4

熱効率低下分注5

試算プロセス

用いたデータ

注1 第10回制度設計WG 資料4(2014)の東京電力のデータを参考に日本全国の場合を想定 注2 第3回調整力等に関する委員会 資料2(2015)より想定 注3 電力取引等監視委員会「第9回電気料金審査専門委員会」 関西電力資料(2015)より 注4 長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告(2015)より 注5 電力中央研究所「火力発電の複数の運転モードと需給調整力を考慮した電源構成モデルの開発」(2013)を基に想定

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3.試算方法と結果 -①周波数調整力-

LFC調整力について、石油火力をベースケースにA.蓄電池、B.LNG火力、C.揚水発電で代替することを想定

どの代替手段よりも蓄電池の発電コスト削減が大きい

蓄電池の迅速かつ正確な応答に対する対価注1の効果もあり、A.蓄電池が最も事業性が見込める結果となった

対価の想定を仮に0.5/0[円/kW/h]とすると、B.LNG火力と同じ価格競争力になる時の蓄電池システム価格は8.9/4.5[万円]となる

手段 自給率 [%]

CO2排出量 [万トン-co2/kWh/年]

A.蓄電池 +0.004% ▲2,929

B.LNG火力 0.0% ▲2,898

C.揚水発電 +0.004% ▲2,929

表2 自給率及びCO2削減量

表1 必要な蓄電池のスペック

蓄電容量[MW] 1,582

蓄電電力量[MWh] 396

22万円 18万円 24万円 蓄電池システム

価格[円/kW]注2 注1 対価はPJMの事例を参考に、1.5[円/kW/h]と設定

注2 競合手段と同じ価格競争力になる時の蓄電池システム価格 25万円

0

-14,691 -14,893 -14,958 -16,000

-14,000

-12,000

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

石油火力 B.LNG火力 C.揚水発電 A.蓄電池

発電コストの差

億円

-11

0

36

108

262

-50

0

50

100

150

200

250

300

C.揚水発電 損益分岐点 石油火力 B.LNG火力 A.蓄電池

事業性(市場規模)

億円

7.9万円

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3.試算方法と結果(想定シナリオ)-②-1再エネ短周期対策-

再生可能エネルギーの短周期対策として、LNG火力を部分負荷運転することで調整力を供給していることを想定。このとき、部分負荷運転に伴う追加発電コストが発生

これに対して対策導入後は、LNG火力が供給する調整力を代替することで、LNG火力が最経済運用できる

追加発電コストが削減できるので社会コスト削減に寄与

ベースケース(B.LNG火力) 対策導入後(A.蓄電池)

LNG火力 LNG火力

蓄電池

最低

稼働率

調整用 最経済運用

LNGが

供給する調整力

最経済運用

蓄電池が

供給する調整力

熱効率の低下による追加発電量

※C.揚水発電についても同様に算出

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3.試算方法と結果(計算ロジック) -②-1再エネ短周期対策-

再生可能エネルギーの短周期対策のために掛かった追加費用と燃料費のデータから、LNG火力が供給している調整力を計算し、必要な蓄電量(kW)を算出

事業性については、現行制度ではFITの対象となる太陽光・風力の場合、短周期対策費用は託送料金で負担されているが、将来的にこの追加発電分を発電インバランスとして再エネ事業者が負担するようになると想定

発電インバランス回避が事業性の源泉

①調整力確保のための追加発電量

再エネ短周期対策に掛かった追加費用注2

燃料費注3

②調整用LNG火力の

合計容量注1

調整火力の平均稼働率注3

熱効率低下分注3

1年間(8760時間)

③必要な蓄電量(kW)

調整火力の最低稼働率注3

試算プロセス

用いたデータ

注1 (調整用LNG火力の合計設備容量[kW])×(熱効率低下分[%])×8760[h] = (LNG火力の再エネ短周期用調整力確保のための追加発電量[kWh/年])にて計算 注2 第6回発電コスト検証WG 資料1(2015)より 注3 長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告(2015)より

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3.試算方法と結果 -②-1再エネ短周期対策-

エネルギーミックスにおける再エネ導入量を想定し、再エネの短周期対策としてB.LNG火力をベースとして、A.蓄電池、C.揚水発電で代替した場合について試算

発電コストの削減分がそのまま事業性に直結する想定をしている。蓄電池は8.8万円/kWでB.LNG火力と同程度の事業性になる

手段 自給率 [%]

CO2排出量 [万トン-co2/kWh/年]

A.蓄電池 +0.23% ▲268

B.LNG火力 ベースケース

C.揚水発電 +0.23% ▲268

表2 自給率及びCO2削減量

表1 必要な蓄電池のスペック

蓄電容量[MW] 6,921

蓄電電力量[MWh] 1,730

蓄電池システム

価格[円/kW]注1 注1 競合手段と同じ価格競争力になる時の蓄電池システム価格 8.8万円 12万円

-65

0

223

-100

-50

0

50

100

150

200

250

A.蓄電池 B.LNG火力 C.揚水発電

発電コストの差

億円

-223

0

65

-250

-200

-150

-100

-50

0

50

100

C.揚水発電 B.LNG火力

損益分岐点

A.蓄電池

事業性(市場規模)

億円

7.9万円

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0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011121314151617181920212223

ベース電源 PV 風力 火力 蓄電池 需要

3.試算方法と結果 -②-2再エネ長周期対策/⑤送配電網増強-

ベースケースでは、再生可能エネルギーの長周期対策として、出力抑制によって太陽光・風力の余剰電力は抑制されているとする

対策導入後は、太陽光・風力による余剰電力を蓄電して他の時間帯に放電するため、ベースケースでは抑制されていた余剰電力を有効活用できる

ベースケース(C.出力抑制) 対策導入後(A.蓄電池)

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011121314151617181920212223

ベース電源 PV 風力 火力 需要

出力抑制

余剰電力

放電

蓄電

※B.揚水発電についても同様に算出

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3.試算方法と結果 -②-2再エネ長周期対策/⑤送配電網増強-

①1日当たりの余剰電力発生量

揚水動力活用分注1

揚水稼働日数注1

②必要な蓄電量(kWh)

試算プロセス

用いたデータ

発電コスト検証ワーキンググループの資料で揚水を活用した余剰電力対策の試算が行われていたため、そのデータを活用して余剰電力発生量を計算し、必要な蓄電量を算出

事業性については、吸収した余剰電力をFITで売電する場合を想定

注1 出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)

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3.試算方法と結果 -②-2再エネ長周期対策-

再エネの長周期の変動対策として、リードタイムの短さ等から、C.出力抑制をベースケースとしてA.蓄電池、B.揚水発電で代替した場合について試算

長周期対策ではkWよりkWh価値が重要であるため、必要な蓄電容量[kWh]が大きくコストが掛かる

また、余剰電力を吸収してFITで売電注1したとしても事業性は見込めない

手段 自給率 [%]

CO2排出量 [万トン-co2/kWh/年]

A.蓄電池 +0.58% ▲415

B.揚水発電 +0.58% ▲415

C.出力抑制 ベースケース

表2 自給率及びCO2削減量

表1 必要な蓄電池のスペック

蓄電容量[MW] 12,614

蓄電電力量[MWh] 63,068

蓄電池システム

価格[円/kWh]注2 4.2万円 20万円 注1 売電価格は10kW以上のPV買取価格より28[円/kWh]とした

注2 競合手段と同じ価格競争力になる時の蓄電池システム価格 7.9万円

0

1,596

12,111

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

C.出力抑制 B.揚水 A.蓄電池

発電コストの差

億円

-9,972

-2,370

0 662

-12,000

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

2,000

A.蓄電池 C.出力抑制 損益分岐点 B.揚水発電

事業性(市場規模)

億円

3.1万円

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3.試算方法と結果 -⑤送配電網設備増強繰り延べ-

エネルギーミックスにおける再エネ導入量を想定し送配電網の容量増強(設備投資)が必要となる場合、ベースを出力抑制とし、余剰電力をA.蓄電池、B.送配電網の容量増強で補てんする場合について試算

②-2ケース同様、必要な蓄電容量[kWh]が大きいため発電コストの増分が大きい

送配電網投資や出力抑制に比べて事業性としては見込めない結果となった

手段 自給率 [%]

CO2排出量 [万トン-co2/kWh/年]

A.蓄電池 +0.58% ▲415

B.送配電網投資 +0.58% ▲415

表2 自給率及びCO2削減量

表1 必要な蓄電池のスペック

蓄電容量[MW] 12,614

蓄電電力量[MWh] 63,068

蓄電池システム

価格[円/kWh]注 注 競合手段と同じ価格競争力になる時の蓄電池システム価格

1.3万円 20万円

-183

0

12,083

-2,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

B.送配電網投資 出力抑制 A.蓄電池

発電コストの差

億円

-11,976

-199

0

-14,000

-12,000

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

A.蓄電池 B.送配電網投資 出力抑制

損益分岐点

事業性(市場規模)

億円

1.0万円

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≪参考≫系統安定化費用の分析

出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)

②ー1再エネ短周期対策で掛かった追加費用

②ー2再エネ長周期対策として活用した揚水

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3.試算方法と結果(想定するシナリオ) -③インバランス調整-

ベースケースでは、小売電気事業者がインバランス調整力として石油火力の部分負荷運転を行っていると想定。このとき、部分負荷運転に伴う追加発電コストが発生

これに対して、発電コストが高い石油火力による調整力を各対策で代替することで、石油火力をLNG火力で代替して最経済運用することができ、運転維持費も削減できる

ベースケース(石油火力)

対策導入後(A.蓄電池の場合)

石油火力

蓄電池

最低

稼働率

調整力

調整力

※C.揚水発電についても同様に算出

熱効率の低下による追加発電量

対策導入後(B.LNG火力の場合)

LNG火力

調整力

石油火力をLNG

火力で代替 石油火力の運転維持費の削減

石油火力の運転維持費の削減

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3.試算方法と結果 -③インバランス調整-

小売電気事業者による年間のインバランス発生量から、1時間当たりのインバランス発生量を計算して、必要蓄電量を算出。また、社会コスト試算のために熱効率低下分を考慮して調整力確保のための追加発電コストも算出

事業性については、調整力(kW)を確保することによるインバランス清算の回避を収益源として想定

①1時間当たりのインバランス発生量

小売電気事業者によるインバランス発生量注

1年間(8760時間)

②必要な蓄電量(kW)

③追加発電コスト

調整火力の平均稼働率注2

熱効率低下分注3

試算プロセス

用いたデータ

注1 経済産業省「第4次電気事業制度改革の効果検証について」(2011)より 注2 長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告(2015)より 注3 電力中央研究所「火力発電の複数の運転モードと需給調整力を考慮した電源構成モデルの開発」(2013)を基に想定

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3.試算方法と結果 -③インバランス調整-

小売電気事業者に発生するインバランスを送配電事業者が石油火力で調整するとし、石油火力をベースとして、A.蓄電池、B.LNG火力、C.揚水発電で代替する場合について試算

どの代替手段でも石油火力より発電コストは削減できるが、その大きさは同程度。

事業性はあるものの、現在の価格では揚水発電や石油・LNG火力ほどのコスト競争力は見込めない。

表2 自給率及びCO2削減量

表1 必要な蓄電池のスペック

蓄電容量[MW] 36

蓄電電力量[MWh] 9

蓄電池システム価格[円/kW]注 5.3万円

手段 自給率 [%]

CO2排出量 [万トン-co2/kWh/年]

A.蓄電池 +0.0004% ▲7.0

B.LNG火力 0% ▲6.6

C.揚水発電 +0.0004% ▲7.0

注 競合手段と同じ価格競争力になる時の蓄電池システム価格 7.9万円 11万円 12万円

-31

-33

-34 -34

-34

-33

-33

-32

-32

-31

-31

-30

C.揚水発電 A.蓄電池 B.LNG火力

発電コストの差

億円

-0.4

0

1.1

2.0

3.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

C.揚水発電 損益分岐点 A.蓄電池 石油火力 B.LNG火力

事業性(市場規模)

億円

2.6万円

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3.試算方法と結果(想定シナリオ)-④ピークカット-

ベースケースでは、1年間の電力需要の内、上位1[%](88時間)のピーク需要を石油火力で供給しているとする

蓄電池導入後は、ピーク需要を供給していた石油火力を代替することができる。この便益は、石油火力の運転維持費の削減(kW価値)と石油火力の燃料コスト代替(kWh)の2点があり、社会コストの削減に寄与する

出所)総合資源エネルギー調査会 第5回長期エネルギー需給見通し小委員会 資料5(2015)を基に三菱総研作成

ベースケース(石油火力) 対策導入後(A.蓄電池)

【蓄電池導入の便益①】

石油火力の運転維持費の削減(kW価値)

石油火力で供給

【蓄電池導入の便益②】

石油火力の燃料コスト代替(kWh)

※B.燃料電池、C.ヒートポンプ、D.自家発電についても同様に算出

放電

蓄電

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3.試算方法と結果(計算ロジック) -④ピークカット-

電力需要データから上位1[%](88時間)のピーク需要をカットするために必要な蓄電量をkW、kWhの両方から算出して、より大きい容量を必要蓄電量として設定

事業性については、ピークカットによる契約電力(kW)の引き下げを収入源として想定

年間の電力需要データ注1

上位1%のピーク時間(88時間)注2

①kW

比較して必要蓄電量が大きい方を基準にする

試算プロセス

用いたデータ

①kWh ②必要蓄電量

(kWh)

比較

③ピークカットした電力量

上位1%のピーク時間(88時間)

注1 各電力会社ホームページの2014年の電力需要実績データより 注2 ピークカット時間に対する感度分析も実施

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-27,034

-9,944

0 241 617

-30,000

-25,000

-20,000

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

B.燃料電池 A.蓄電池 石油火力

損益分岐点

D.自家発電 C.ヒートポンプ

事業性(市場規模)

億円

0 1,184 1,521

11,744

28,796

11,704

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

石油火力 C.ヒートポンプ D.自家発電 A.蓄電池 B.燃料電池

発電コストの差

億円

3.試算方法と結果 -④ピークカット・ピークシフト-

上位1%(88時間)のピーク電力をカットすることを想定注1。ベースケースは石油火力として、A.蓄電池、B.燃料電池、C.ヒートポンプ、D.自家発電で代替した場合について試算

燃料電池を除く代替手段と比べて発電コストも増加し、事業性も見込めない結果となった

表2 自給率及びCO2削減量

表1 必要な蓄電池のスペック

蓄電容量[MW] 12,203

蓄電電力量[MWh] 61,013

蓄電池システム

価格[円/kWh]注3 3.7万円 48万円

手段 自給率 [%]

CO2排出量 [万トン-co2/kWh/年]

A.蓄電池 +0.040% ▲25

A’.蓄電池注2 +0.015% ▲10

B.燃料電池 +0.037% ▲25

C.ヒートポンプ +0.040% ▲25

D.自家発電 0.0% ▲8

注1 2014年の電力需要実績より推計

注2 全電源から蓄電した場合

注3 競合手段と同じ価格競争力になる時の蓄電池システム価格

A’(注2) A

20万円 3.3万円 2.7万円

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3.試算方法と結果(想定シナリオ)-⑥自動車-

ベースケースでは、一般家庭における自家用乗用車としてガソリン車を使用し続けると想定。

これに対して、「A. EV導入ケース」ではガソリン車の代わりに電気自動車(EV)を導入し、日常生活においてガソリン車代替として利用するものと想定。

また、EVの充放電制御によるピークカットを行う「B. EV系統利用ケース」を設定。 通勤にEVが一定利用されると仮定し、家庭でのV2Hに加え、勤務地充電(V2LやV2B等)による系統利用も想定。

この他、公共地に設置された普通充電器や急速充電器による充電も想定されるが、一定の充電パターンを想定しづらく、系統利用は困難であるため、試算からは除外。

ベースケース(ガソリン車) A. EV導入ケース B. EV系統利用ケース

日常生活に利用

ガソリン車を導入 EV導入

日常生活に利用

(ガソリン車代替)

EV導入

日常生活に利用

通勤利用 休日利用 通勤利用 休日利用 通勤利用 休日利用

系統対策に

利用

(ピークカット)

系統対策に利用

(勤務地充電も考慮)

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3.試算方法と結果(計算ロジック) -⑥自動車-

EV導入ケースでは、EVを導入した際のガソリン車との比較における車両単体での採算性を試算する。

また、系統利用ケースでは、一定のEV導入が必要と考えられることから、2020年断面でのEV普及台数及びこれに伴う供給力を想定し、EVからの供給力によるピークカット、インバランス削減の効果を加味した採算性の検討を行う。

①EV単体の採算性

現状のEVとガソリン自動車の価格差

自動車の年間平均走行距離

燃費及び電費

②EV普及時の供給力の想定

2020年のEV普及台数想定

EVの利用状況想定

EVからの供給力によるピークカット、インバランス削減効果

試算プロセス

用いたデータ

③EVからの供給力の

価値を加味した採算性

EV導入ケース及びEV系統利用ケースにおける試算の考え方

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3.試算方法と結果(EVによるピークカット効果) -⑥自動車-

前述のピークカットと同様、ベースケースは石油火力として、V2H等によるピークカット効果を試算。

家庭、勤務地とも石油火力の代替による社会コストの低減が見込める。

また、V2Hによりガソリン車とEVの差額分の補填が可能となり、EVの事業性が改善。

項目 ①家庭 ②勤務地 備考

調整力 15万kW 15万kW

年間ピークカット実施回数

120回 240回 家庭は平日の半分(120日)、勤務地は平日毎日(240日)と想定

V2Hの 追加費用

16万円/kW ニチコン製V2H機器(48万円/台(3kW))を導入と想定

0

(38)

(58)

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

石油火力 EV(家庭) EV(勤務地)

発電コストの差

億円

手段 自給率 [%]

CO2排出量 [万トン-co2/kWh/年]

A.EV導入 +0.08% ▲125

B. EV系統利用 (家庭) +0.090% ▲130

B. EV系統利用 (勤務地) +0.098% ▲135

11.89

4.26

0.32

0

2

4

6

8

10

12

14

ベースシナリオ

(ガソリン車)

A.EV導入 B.EV系統利用

(家庭)

B.EV系統利用

(勤務地)

事業性

万円

※1台あたりのガソリン車からの差額分(10年間)

暫定

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Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算

i. 競合手段と事業性が同程度になる蓄電池の価格の試算

ii. 蓄電池マルチユースした場合の組合せ検討

iii.調整力としての価値がある地域別(電力管内)の検討

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4.追加試算 ii. マルチユース -試算方針-

試算結果によると、短周期用途では蓄電システムのコストが抑えられるため、蓄電池の事業性が見込める結果となった。一方で、長周期用途では蓄電池(KWh)のコストが高くなるため事業性が出にくい試算結果となった

マルチユースの試算では、長周期用途では蓄電池を使用する時間が限定的で蓄電池容量(kWh)が余っている時間があるため、蓄電システムにPCS(kW)を追加することで蓄電池容量を有効活用することを考える

長周期用途と短周期用途の組合せでマルチユースの事業性を検討

長周期用アプリケーション

⑤ 送配電網増強

短周期用アプリケーション

① 周波数調整

②-1 再エネ導入拡大-短周期対策 ④ ピークカット

②-2 再エネ導入拡大-長周期対策

③ インバランス調整

マルチユースの組合せ

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4.追加試算 ii. マルチユース -試算のイメージ-

例えば、以下のように長周期用途の蓄電池「4MW/20MWh」に「4MW」を加えて「8MW/20MWh」の蓄電池でマルチユースする場合を考える

この場合、SOCが100%(充電量20MWh)の時以外は短周期用途としても活用でき、マルチユースが可能である

マルチユースのイメージ

充放電 SOC

-4

-2

0

2

4

6

0:0

0

1:1

5

2:3

0

3:4

5

5:0

0

6:1

5

7:3

0

8:4

5

10

:00

11

:15

短周期ユース

0

5

10

15

20

25

0:0

0

0:4

5

1:3

0

2:1

5

3:0

0

3:4

5

4:3

0

5:1

5

6:0

0

6:4

5

7:3

0

8:1

5

9:0

0

9:4

5

10

:30

11

:15

12

:00

SOC

-6-4-20246

0:0

0

1:1

5

2:3

0

3:4

5

5:0

0

6:1

5

7:3

0

8:4

5

10

:00

11

:15

長周期ユース

-10

-5

0

5

10

0:0

0

0:4

5

1:3

0

2:1

5

3:0

0

3:4

5

4:3

0

5:1

5

6:0

0

6:4

5

7:3

0

8:1

5

9:0

0

9:4

5

10

:30

11

:15

12

:00

短周期ユース+長周期ユース

マルチユース時 マルチユース時

[MW] [MW]

[MW]

[MWh]

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4.追加試算 ii. マルチユース -試算結果-

各組合せのマルチユースの事業性を試算して、長周期用途単体ユースの場合の事業性と比較した

短周期用途とのマルチユースによって少し事業性が改善されたが、長周期用途のための蓄電池量[kWh]を確保するために非常にコストが掛かるため、大きな事業性の改善には至らなかった

②-2再エネ長周期 ④ピークカット ⑤送配電網増強

注 長周期用アプリケーションとして蓄電池がフル充電された場合、すぐに放電する(SOCが100%の時は無い)として試算

(短周期用途:①周波数調整、②-1再エネ短周期対策、③インバランス調整)

-9,972 -9,969

-9,633

-9,573

-10,100

-10,000

-9,900

-9,800

-9,700

-9,600

-9,500

-9,400

-9,300

②-2

②-2

②-2

②-2

②-1

事業性

[億円

]

-9,944 -9,941

-9,604

-9,543

-10,000

-9,900

-9,800

-9,700

-9,600

-9,500

-9,400

-9,300

②-1

事業性

[億円

]

-11,976 -11,973

-11,637

-11,578

-12,100

-12,000

-11,900

-11,800

-11,700

-11,600

-11,500

-11,400

-11,300

②-1

事業性

[億円

]

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4.追加試算 ii. マルチユース -追加試算の方針-

マルチユース試算について、以下の仮説に基づき2つの感度分析を実施した

蓄電池の容量を減らせばコストを抑えてマルチユースの事業性を改善できるかもしれない

④ピークカットで想定しているカット時間を減らして蓄電池の時間容量を小さくすればコストを抑えることができ、マルチユースの事業性を改善できるかもしれない

時間容量

ベース試算

感度分析

蓄電池の容量

長周期用途の必要蓄電量(kW、kWh)

+短周期用途に必要な蓄電池容量(kW) 5時間容量注

a.蓄電池の容量

b.④ピークカットでの蓄電池の時間容量

及び蓄電量

10MW 50MWh

100MW 500MWh

1,000MW 5,000MWh

右記で設定された時間容量の時の④ピークカットに必要な蓄電量(kW、kWh)

+短周期用途に必要な蓄電池容量(kW)

5時間容量

1~3時間容量の間で任意に設定注

追加試算の方針

注 マルチユースのために短周期用途に必要な蓄電池容量(kW)を追加しているため、時間容量はこの数字より小さくなる

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4.追加試算 ii. マルチユース a.蓄電池の容量感度分析 -試算結果-

×①周波数調整 ×②-1再エネ短周期 ×③インバランス調整

②-2再エネ

長周期

④ピークカット

⑤送配電網

投資

-5 -55

-547 -600

-400

-200

0

10MW 100MW 1,000MW

-7 -70

-703 -800

-600

-400

-200

0

10MW 100MW 1,000MW

-7 -75

-787 -1,000

-500

0

10MW 100MW 1,000MW

各マルチユースの組合せにおいて、蓄電池の容量を変化させた時の事業性及び損益分岐点を算出した

どの組合せでも蓄電池の容量が増加するに従って蓄電池のコストが多くなるため事業性が悪化

①及び②-1とマルチユースする場合は蓄電池の容量を変化させても損益分岐価格は一定

-6 -56

-558 -600

-400

-200

0

10MW 100MW 1,000MW

-7 -71

-714 -800

-600

-400

-200

0

10MW 100MW 1,000MW

-7 -76

-798 -1,000

-500

0

10MW 100MW 1,000MW

損益分岐価格:9.1[万円/kWh] 損益分岐価格:5.9[万円/kWh] 損益分岐価格[万円/kWh]

6.4 5.0 4.3

損益分岐価格:8.8[万円/kWh]

10 / 100 / 1,000[MW](5時間容量)の時の各マルチユースの事業性及び損益分岐価格

損益分岐価格:5.7[万円/kWh] 損益分岐価格[万円/kWh]

6.1 4.7 4.0

-7 -71

-706 -800

-600

-400

-200

0

10MW 100MW 1,000MW

損益分岐価格:5.9[万円/kWh]

[億円]

-7 -70

-703 -800

-600

-400

-200

0

10MW 100MW 1,000MW

損益分岐価格:2.8[万円/kWh]

[億円]

[億円] [億円]

[億円]

[億円]

[億円]

[億円]

-8 -91

-945 -1,000

-500

0

10MW 100MW 1,000MW

損益分岐価格[万円/kWh]

3.2 1.8 1.1

[億円]

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4.追加試算 ii. マルチユース a.蓄電池の容量感度分析 -考察-

試算結果より、蓄電池の容量が短周期用途の必要蓄電量以下の場合は損益分岐価格が一定で、必要蓄電量以上の場合は蓄電池容量の増加に伴って低下することが分かった

これは下図の通り、蓄電池の容量が短周期用途の必要蓄電量以下の場合はマルチユース時の事業性が蓄電池の容量に比例(切片=0)するが、そうでない場合は一次関数(切片≠0)になることに起因する

10,000

5時間容量の

蓄電池のコスト

1,000

1,000

2,000

[億円/年]

①の事業性

(蓄電池コスト除く)

短周期用途による

事業性は増えなくなる

マルチユース時の蓄電池の容量と事業性・コストの関係(①周波数調整と②-2再エネ長周期の場合)

12,614

-1,000 ①と②-2のマルチユース

による事業性

蓄電池の容量

[MW]

②-2の事業性

(蓄電池コスト除く)

①の必要蓄電量

1,582[MW]

マルチユース時の事業性は蓄電池の容量に比例

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4.追加試算 ii. マルチユース b.④ピークカットの感度分析-試算結果-

各組合せにおいて、④ピークカット用途に必要な蓄電量及び時間容量を変数として事業性を算出して比較を行った

④の単体ユースでは事業性はプラスにならないが、①もしくは②-1とマルチユースする場合、④に必要な蓄電池の時間容量が1~2時間の時は事業性がプラスになり得る

④ピークカット ④×①周波数調整

④×②-1再エネ短周期 ④×③インバランス調整

(①単体ユース) (④×①マルチユース)

[時間容量注] [時間容量注]

[時間容量注]

(②-1単体ユース) (④×②-1マルチユース) (③単体ユース) (④×③マルチユース)

注 時間容量は、④ピークカット用途に必要な蓄電池の時間容量を指す

-17 -125

-332

-694

-1,357 -1,500

-1,000

-500

0

1 1.5 2 2.5 3

事業性

[億円

]

262 322 215 8

-355

-1,018 -1,500

-1,000

-500

0

500

0 1 1.5 2 2.5 3

事業性

[億円

]

65 133 226 69

-294

-957

-1,500

-1,000

-500

0

500

0 1 1.5 2 2.5 3

事業性

[億円

]

1

-14 -122

-329

-691

-1,354 -1,500

-1,000

-500

0

500

0 1 1.5 2 2.5 3

事業性

[億円

]

[時間容量]

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4.追加試算 ii. マルチユース b.④ピークカットの感度分析 -考察-

試算結果より、④に必要な蓄電池の時間容量を変化させると1~2時間容量の時に事業性が比較的大きくなることが分かった

これは下図の通り、④に必要な蓄電量が短周期用途の必要蓄電量以下の場合は、④に必要な蓄電量の増加に従って短周期用途から得られる事業性が増えるが、そうでない場合は短周期用途からの事業性が得られなくなることに起因する

0

1,000

[億円/年]

④ピークカットに必要な蓄電量を変化させた時のマルチユースの事業性変化(×②-1再エネ短周期の場合)

④に必要な

蓄電量 [MWh]

④の事業性

(蓄電池コスト除く)

2時間容量 2.5時間容量

②-1の事業性

(蓄電池コスト除く)

-1,000

蓄電量[kWh]が増えるに従って

②-1による事業性も増える

蓄電量[kWh]が増えても

②-1による事業性は増えない

各時間容量ごとの

蓄電池のコスト

②-1と④のマルチユース

による事業性

②-1の必要蓄電量

1,730[MWh]

1.5時間容量 1時間容量

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Ⅰ.蓄電池のエネルギー政策上の意義、事業性試算

i. 競合手段と事業性が同程度になる蓄電池の価格の試算

ii. 蓄電池マルチユースした場合の組合せ検討

iii.調整力としての価値がある地域別(電力管内)の検討

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4.追加試算 iii. 地域別比較 -試算方針-

短周期アプリケーション(①、②-1、③)において、地域別に、2030年までの各年で供給可能な調整力と必要になる調整力を計算して、2030年時点での調整力の過不足を比較した

調整力を供給する電源は揚水発電、LNG火力、石油火力で、火力は40年廃炉として年々調整力が不足していくと想定

必要になる調整力は各アプリケーションの試算で用いた数字を前提として算出し、現時点から2030年まで線形で推移すると仮定

②-1再エネ短周期:ケース1における東京電力管内の調整力試算結果 [万kW]

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030

揚水 LNG火力 石油火力 必要調整力

出所)各種資料より三菱総研作成

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0

100

200

2015 2020 2025 2030

石油火力

LNG火力

揚水

0

500

2015 2020 2025 2030

石油火力

LNG火力

揚水

0

2,000

4,000

2015 2020 2025 2030

石油火力

LNG火力

揚水

0

1,000

2,000

2015 2020 2025 2030

石油火力

LNG火力

揚水

0

20

40

2015 2020 2025 2030

石油火力

LNG火力

揚水

0

1,000

2,000

2015 2020 2025 2030

石油火力

LNG火力

揚水

0

200

400

2015 2020 2025 2030

石油火力

LNG火力

揚水

0

50

100

2015 2020 2025 2030

石油火力

LNG火力

揚水

0

500

1,000

2015 2020 2025 2030

石油火力

LNG火力

揚水

0

50

100

2015 2020 2025 2030

石油火力

LNG火力

揚水

4.追加試算 iii. 地域別比較 -供給可能調整力-

電力管内別に、各年で揚水発電、LNG火力、石油火力で供給できる調整力を計算

北海道

東北

東京

中部

北陸

関西

中国

四国

九州

沖縄

注 設備容量に対する調整力の割合は、火力が70%、揚水が15%として計算

[万kW]

[万kW]

[万kW]

[万kW]

[万kW]

[万kW]

[万kW]

[万kW]

[万kW]

[万kW]

出所)各種資料より三菱総研作成

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4.追加試算 iii. 地域別比較 - ①周波数調整-

①周波数調整の社会的価値及び事業性評価の計算ロジックを前提に、現時点で必要な調整力を計算し、必要な調整力は需要の伸びに比例すると想定して、各年で必要な調整力を算出

地域別の必要な調整力の比率は、電力需要の比率に等しいと仮定

①全国で現時点で

必要な調整力

①周波数調整の計算ロジック注1

②全国で各年に

必要な調整力

現時点での全国需要注

2030年時点での全国需要注3

試算

プロセス

用いた

データ

注1 ①周波数調整の計算ロジックを参照 注2 各電力会社ホームページの2014年の電力需要実績データより 注3 経済産業省「長期エネルギー需給見通し」(2015)より

③各地域で各年に

必要な調整力

全国の電力需要注2

各地域の電力需要注2

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■A.供給可能調整力 20 44 422 167 2 168 50 13 61 7

■B.必要調整力 16 40 133 65 16 70 32 14 42 4

■C.調整余力(A-B) 4 4 289 103 ▲14 99 18 ▲0.4 19 3

C / A 21% 8% 68% 61% ▲850% 59% 35% ▲3% 31% 44%

4.追加試算 iii. 地域別比較 - ①周波数調整-

各電力管内別に2030年時点での周波数調整力の調整余力(供給可能な調整力と必要になる調整力の差)を算出

石油火力による調整力が大幅に減少する北陸電力管内で最も調整力が不足する。また、同様に石油火力による調整力が減少する四国電力管内でも調整力が不足する

2030年時点での地域別の周波数調整力 [万kW]

-50

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C

北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄

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4.追加試算 iii. 地域別比較 - ②-1再エネ短周期-

②-1再エネ短周期対策の社会的価値及び事業性評価の計算ロジックを前提に、2030年時点で必要な調整力を計算し、現時点から2030年まで必要な調整力は線形で推移すると仮定して、各年で必要な周波数調整力を算出

地域別の必要な調整力の比率は、ケース1:電力需要比率案分とケース2:FIT認定量比率案分の2パターンを想定

①全国で2030年時点に必要な調整力

②-1再エネ短周期対策で必要な蓄電量注1

②全国で各年に

必要な調整力

現時点での再エネ(PV+

風力)導入量注2

2030年時点での再エネ(PV+風力)導入量注3

試算

プロセス

用いた

データ

注1 ②-1再エネ短周期対策の試算結果より 注2 経済産業省ウェブページ「FIT都道府県別認定量・導入量」の2015年3月時点のデータより 注3 第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015) 注4 各電力会社ホームページの2014年の電力需要実績データより

③各地域で各年に

必要な調整力

(ケース1)

<ケース2>

全国のFIT認定量注2

各地域のFIT認定量注2

③各地域で各年に

必要な調整力

(ケース2)

<ケース1>

全国の電力需要注4

各地域の電力需要注4

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■A.供給可能調整力 49 241 1,722 781 2 723 158 31 219 51

■B.必要調整力 25 64 214 104 25 112 52 22 68 7

■C.調整余力(A-B) 24 177 1,509 677 ▲24 611 106 9 151 44

C / A 49% 73% 88% 87% ▲1,427% 85% 67% 29% 69% 87%

4.追加試算 iii. 地域別比較 -②-1再エネ短周期(ケース1)-

各電力管内別に2030年時点での再エネ短周期調整力(ケース1:地域別電力需要比率案分)を算出

石油火力による調整力が大幅に減少する北陸電力管内で調整力が不足する

[万kW]

2030年時点での地域別の再エネ短周期調整力(ケース1:地域別電力需要比率案分)

-200

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C

北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄

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■A.供給可能調整力 49 241 1,722 781 2 723 158 31 219 51

■B.必要調整力 26 131 150 87 10 55 53 24 151 5

■C.調整余力(A-B) 23 110 1,573 694 ▲9 668 105 7 67 46

C / A 47% 46% 91% 89% ▲525% 92% 67% 22% 31% 91%

4.追加試算 iii. 地域別比較 -②-1再エネ短周期(ケース2)-

各電力管内別に2030年時点での再エネ短周期調整力(ケース2:地域別FIT認定量比率案分)を算出

ケース1同様、石油火力による調整力が大幅に減少する北陸電力管内で調整力が不足する

[万kW]

2030年時点での地域別の再エネ短周期調整力(ケース2:地域別FIT認定量比率案分)

-200

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C

北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄

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6.92%

17.2%

2015年 2030年

4.追加試算 iii. 地域別比較 -③インバランス調整-

①全国で現時点で

必要な調整力

③インバランス調整の計算ロジック注1

②全国で各年に

必要な調整力

新電力シェアの年次推移注2

試算

プロセス

用いた

データ

③各地域で各年に

必要な調整力

新電力の地域別構成比率注3

③インバランス調整の社会的価値及び事業性評価の計算ロジックを前提に、現時点で必要な調整力を計算し、現時点から2030年まで必要な調整力は新電力のシェアの伸びに比例すると仮定して、各年で必要な周波数調整力を算出

地域別の必要な調整力の比率は、新電力の地域別構成比率に等しいと仮定

注1 ③インバランス調整の計算ロジックより 注2 経済産業省ウェブページ「電力調査統計」 注3 経済産業省「第4回制度設計ワーキング 資料5-4」(2013)より

北海道 5%

東北 6%

東京 53%

中部 7%

北陸 0%

関西 23%

中国 3%

四国 0%

九州 3%

沖縄 0%

図 新電力の地域別構成比率 図 新電力のシェアの年次推移

+0.7%/年

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4.追加試算 iii. 地域別比較 -③インバランス調整-

各電力管内別に2030年時点でのインバランス調整力の余力を算出

必要なインバランス調整力が少ないため、概ね供給可能な調整力の比較と同様の結果になった

[万kW]

2030年時点での地域別のインバランス調整力

■A.供給可能調整力 49 241 1,722 781 2 723 158 31 219 51

■B.必要調整力 1 1 12 2 0 5 1 0 1 0

■C.調整余力(A-B) 48 240 1,711 780 2 718 158 31 218 51

C / A 98% 99% 99% 100% 100% 99% 100% 100% 100% 100%

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C

北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄

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4.追加試算 iii. 地域別比較 -②-1(ケース1)+③-

供給可能調整力が共通な②-1再エネ短周期(ケース1:地域別電力需要比率案分)と③インバランス調整について、各電力管内別の2030年時点での必要調整力を足して調整余力を比較

②-1(ケース1)単独の結果と同様、北陸電力管内で調整力が不足する

[万kW]

2030年時点での地域別の②-1再エネ短周期(ケース1)+③インバランス調整

■A.供給可能調整力 49 241 1,722 781 2 723 158 31 219 51

■B.必要調整力 26 66 225 106 25 117 53 22 68 7

■C.調整余力(A-B) 23 176 1,497 676 ▲24 606 106 9 151 44

C / A 47% 73% 87% 86% ▲1,427% 84% 67% 29% 69% 87%

-200

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C

北海道 東北 東京 中部 北陸 関西 中国 四国 九州 沖縄

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4.追加試算 iv. 価格感度分析 -試算方針-

①~⑤の全アプリケーションを対象に、蓄電池のシステム価格(5時間容量)が各々20、10、7、3[万円/kWh]の場合の社会的価値及び事業性を計算して比較した

蓄電池の導入が進むタイミングは、事業性がプラスで、且つ他の競合手段に対して事業性が大きくなった場合を想定

②-2と④の場合は、蓄電池より事業性の大きい競合手段が存在するため、蓄電池が獲得できる事業規模を別途算出

20[万円/kWh]

① 周波数調整

②-1 再エネ短周期

③ インバランス調整

各蓄電池価格において事業性の成立するアプリケーション

10[万円/kWh]

① 周波数調整

②-1 再エネ短周期

③ インバランス調整

7[万円/kWh]

① 周波数調整

②-1 再エネ短周期

②-2 再エネ長周期

③ インバランス調整

3[万円/kWh]

① 周波数調整

②-1 再エネ短周期

④ ピークカット

②-2 再エネ長周期

③ インバランス調整

②-2に必要な容量の内、揚水で供給できない分を蓄電池で供給

競合手段(ヒートポンプと自家発電)との事業性の大きさで案分

蓄電池システム価格

(5時間容量)

事業性が成立する

アプリケーション

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4.追加試算 iv. 価格感度分析 - ②-2再エネ長周期の考え方-

B.揚水発電が最も事業性が大きいため優先的に②-2再エネ長周期対策として導入が進むが、揚水の設備容量には限りがあるため、②-2で必要な容量に対する不足分はA.蓄電池かC.出力抑制で供給する必要がある

C.出力抑制と同程度の事業性になる蓄電池システム価格は7.9[万円/kWh]であるため、20、10[万円/kWh]の場合はC.出力抑制が優先的に導入されるが、7、3[万円/kWh]の場合はA.蓄電池が優先的に導入されるようになる

C.出力抑制 A.蓄電池 B.揚水発電

②-2用の容量

競合手段と同じ価格競争力になる時の蓄電池システム価格

[万円/kWh]

②-2に必要な容量

12,614[MW]

10[万円/kWh]の場合

3.1

7.9

10

7[万円/kWh]の場合

揚水が供給できる最大容量

3,936[MW]注

C.出力抑制 A.蓄電池 B.揚水発電

②-2用の容量

②-2に必要な容量

12,614[MW]

3.1

7.9

7.0

揚水が供給できる最大容量

3,936[MW]注 C.出力抑制に比べてA.蓄電池は導入の

優先度が低い C.出力抑制に比べてA.蓄電池は導入の優

先度が高い

注 経済産業省「再生可能エネルギーの導入を巡る事実関係」(2012)及び「第5回発電コスト検証WG 資料3」(2015)より、 全国の揚水設備容量を26,240[MW]、平均稼働率を15[%]として算出

競合手段と同じ価格競争力になる時の蓄電池システム価格

[万円/kWh]

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4.追加試算 iv. 価格感度分析 -④ピークカットの考え方-

価格が3[万円/kWh]まで下がると④ピークカットにおける蓄電池の事業性が成立するため、④用途としての蓄電池の普及が期待できるが、 C.ヒートポンプとD.自家発電の方がA.蓄電池より事業性が大きい

従って、各手段で④ピークカットを行った時の事業性の比率で、④の事業性の源泉となるピークカット容量11,444[MW]を案分して、元々の試算の計算ロジックに従って再度A.蓄電池の事業性を算出した

A.蓄電池(3万円/kWhの時)

C.ヒートポンプ

D.自家発電

617[億円]

241[億円]

429[億円]

図 各手段で④ピークカットを行った時の事業性の比率でピークカット容量を案分するイメージ

11,444[MW] 5,486[MW]

2,144[MW]

3,814[MW]

各手段で④ピークカットを行った時の事業性の比率

このピークカット容量で④の事業性を再計算

元々の試算で想定した④のピークカット容量

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4.追加試算 iv. 価格感度分析 - エネルギー自給率-

蓄電池システム価格が20、10、7、3[万円/kWh]の各場合について、蓄電池導入によるエネルギー自給率の変化を計算した

②-1再エネ短周期対策として蓄電池が導入されることで、調整力確保に伴うLNG火力の部分負荷運転分を削減できるため、エネルギー自給率が向上する

価格が7[万円/kWh]以下になると、②-2再エネ長周期対策において出力抑制の代わりに蓄電池が導入されるため、大量の再生可能エネルギーの抑制が無くなり、大幅にエネルギー自給率が改善される

図 各蓄電池システム価格におけるエネルギー自給率の変化

0.0%

0.1%

0.2%

0.3%

0.4%

0.5%

0.6%

0.7%

20 10 7 3

自給

率増

加分

[%]

①周波数調整 ②-1再エネ短周期 ③インバランス調整 ②-2再エネ長周期 ④ピークカット [万円/kWh]

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4.追加試算 iv. 価格感度分析 - CO2削減効果-

蓄電池システム価格が20、10、7、3[万円/kWh]の各場合について、蓄電池導入によるCO2削減効果を計算した

①周波数調整と②-1再エネ短周期において蓄電池が導入されることで、調整力確保に伴う石油火力及びLNG火力の部分負荷運転分を削減できるため、CO2が削減される

価格が7[万円/kWh]以下になると、②-2再エネ長周期対策において出力抑制の代わりに蓄電池が導入されるため、大量の再生可能エネルギーの抑制が無くなり、 CO2が削減される

図 各蓄電池システム価格におけるCO2削減効果

-3,600

-3,500

-3,400

-3,300

-3,200

-3,100

-3,000

-2,900

-2,800

-2,700

-2,600

20 10 7 3

CO

2削

減[万

トン

]

①周波数調整 ②-1再エネ短周期 ③インバランス調整 ②-2再エネ長周期 ④ピークカット

[万円/kWh]

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4.追加試算 iv. 価格感度分析 - 発電コスト-

蓄電池システム価格が20、10、7、3[万円/kWh]の各場合について、蓄電池導入による発電コスト削減効果を計算した

①周波数調整として蓄電池が導入されることで、調整力確保に伴う石油火力の部分負荷運転分を削減できるため、社会全体の発電コストが削減される

価格が7[万円/kWh]以下になると、②-2再エネ長周期対策において出力抑制の代わりに蓄電池が導入されるが、発電コストは蓄電池より出力抑制の方が小さいため、社会全体の発電コストは微増する

図 各蓄電池システム価格における社会全体の発電コスト削減効果

-18,000

-16,000

-14,000

-12,000

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

2,000

4,000

20 10 7 3

社会

コス

ト削

減[億

円]

①周波数調整 ②-1再エネ短周期 ②-2再エネ長周期 ③インバランス調整 ④ピークカット 合計

[万円/kWh]

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≪参考≫揚水発電の設置コストの検証

揚水発電の設置コストとして2.3[万円/kWh]と表記され始めたのは、「低炭素電力供給システムに関する研究会 第2回 新エネルギー大量導入に伴う系統 安定化対策・コスト負担検討小委員会(2008)」と思われる。数字の出所は不明。

本試算では、設置コストとして20[万円/kW]注を採用している。PCS価格3[万円/kW]として、蓄電池システムのコストが揚水の設置コスト20[万円/kW]及び2.3[万円/kWh]と等しくなる時間容量を計算すると5.2時間容量になる。

揚水と蓄電システムでは価格構成も異なるため一概には言えないが、揚水の設置コスト20[万円/kW]と2.3[万円/kWh]が同じ数字を表す場合の時間容量の一例として示す

出所)低炭素電力供給システムに関する研究会 第2回 新エネルギー大量導入に伴う系統 安定化対策・コスト負担検討小委員会 資料3(2008)

出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ (2015)

揚水発電の設置コスト(2.3[万円/kWh])

長周期用コスト[円/kWh]

(7時間容量)

短周期用コスト[円/kW]

(1/3時間容量)

2.0 7.0

0.3 1.5

2.3 8.5

蓄電池ロードマップの目標値

出所)NEDO 「二次電池技術開発ロードマップ 2013」(2013)

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≪参考≫揚水発電の時間容量の具体例

出所)第3回系統WG 資料9(2014)

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≪参考≫アプリケーションごとの試算プロセス詳細

①周波数調整

②-1再エネ導入拡大-短周期対策

②-2再エネ導入拡大-長周期対策

③インバランス調整

④ピークカット

⑤送配電網増強

⑥自動車

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①周波数調整 -想定するシナリオ-

【想定するシナリオ及び蓄電池のスペック】

現在、周波数調整力を確保するために発電コストの高い石油火力を稼働させているケースをベースとして、A.蓄電池/B.LNG火力/C.揚水発電で代替する場合を想定する

周波数調整では長時間電力量を充放電し続ける必要は無いため、蓄電池は0.25時間容量とした

【試算における諸前提】

需要変動の内、短周期成分に当たるLFC調整力(数分~数十分以内に応答)を周波数調整力として定義した。現在、LFC調整力の考え方は各電力会社で異なるが、本試算では最大3日平均需要の3%注1を採用した

周波数調整は僅かな電力量の上げ下げだけを制御するため、実際に”周波数調整力として”供給した電力量の総和は0とした。一方で、火力の場合は調整力を確保するために部分負荷運転を行う必要があるため、A.蓄電池やC.揚水発電を使用する場合に比べて”周波数調整力を確保するための発電計画の調整によって”余分な発電量が生じる

A.蓄電池の事業性の試算では、迅速かつ正確な応答に対するパフォーマンス対価αを考慮した

東京電力管内の試算結果をもとに、東京電力と全国の発電電力量の比(全国/東京電力=4程度)注2を考慮して算出した

①周波数調整として想定

出所)NEDO「再生可能エネギー白書」(2014)

(注1)出所)第3回調整力等に関する委員会 資料2(2015)より想定 (注2)東京電力ホームページの発電量実績データ及び電事連「電源別発電電力量構成比」(2014)より

図 需要変動の分類

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①周波数調整 -試算結果-

手段 自給率

[%] CO2排出原単位

[g-co2/kWh]

発電コスト

固定費[円/kW/h] 燃料費[円/kWh]

石油火力 0 695 0.42 21.7

A.蓄電池 100 0 0.90 -

B.LNG火力 0 476 0.23 10.8

C.揚水発電 100 0 1.37 -

表 試算に用いたデータ

手段 自給率

[%] CO2排出量

[万トン-co2/年]

発電コスト[億円/年] 事業性 (市場規模)

[億円/年] 固定費 燃料費 合計

A.蓄電池 +0.004% ▲2,929 ▲463 ▲14,495 ▲14,958 262

B.LNG火力 0.000% ▲2,898 ▲267 ▲14,424 ▲14,691 108

C.揚水発電 +0.004% ▲2,929 ▲398 ▲14,495 ▲14,893 ▲11

石油火力 (ベースケース) 36

表 各ケースにおける試算(結果は各ケース想定後のベースケースに対する変化量を示す)

発電コストはA.蓄電池、B.LNG火力、C.揚水発電のいずれも同程度のメリットがある

事業性については、蓄電池の迅速かつ正確な応答に対する対価α(=1.5[円/kW/h])の効果もあり、B.LNG火力及びC.揚水発電より高い収益性が見込める結果となった

※必要な蓄電容量:1,582[MW]、必要な蓄電電力量:396[MWh]

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①周波数調整 -試算の前提:試算の考え方-

各ケースの kW、kWhの

考え方

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> kW:石油火力によって確保されていた調整力の容量を代替する kWh:周波数調整力を確保するために石油火力を稼働させる必要が無くなり、石油火力の代わりに燃料費の安いLNG火

力を最経済(定格効率)で運転することができる <B.LNG火力> kW:石油火力の代わりに部分負荷運転を行い、調整力を供給する kWh:石油火力の調整力を代替するため、部分負荷運転に伴う追加の発電コストが発生する

自給率の変化

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> (元々の原子力・再エネの発電量)÷{(総発電電力量)-(部分負荷運転による発電量増分)}-(元々の自給率) <B.LNG火力の場合> 石油火力及びLNG火力のエネルギー自給率は0[%]で、発電量に変化は無いため自給率の変化は無い

CO2変化量

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> (周波数調整用火力の合計発電量)×(LNG火力のCO2排出原単位)-{(周波数調整用火力の合計発電量)+(部分負荷運転による見かけの発電量増分)}×(石油火力のCO2排出原単位) <B.LNG火力> {(周波数調整用火力の合計発電量)+(部分負荷運転による見かけの発電量増分)}×{(LNG火力のCO2排出原単位)-(石油火力のCO2排出原単位)}

発電コスト (固定費)

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> (石油火力による周波数調整容量)×(蓄電池・揚水の固定費)-(周波数調整用石油火力の設備容量)×(石油火力の運転維持費分) <B.LNG火力> (周波数調整用火力の設備容量)×{(LNG火力の運転維持費分)-(石油火力の運転維持費分)}

発電コスト (燃料費)

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> (周波数調整用火力の合計発電量)×(LNG火力の燃料費)-{(周波数調整用火力の合計発電量)+(部分負荷運転による見かけの発電量増分)}×(石油火力の燃料費) <B.LNG火力> {(周波数調整用火力の合計発電量)+(部分負荷運転による見かけの発電量増分)}×{(LNG火力の燃料費)-(石油火力の燃料費)}

事業性 (市場規模)

(アンシラリーサービスの収入;1.29[円/kW/h])+(※蓄電池の場合 高い応答性による対価α;1.5[円/kW/h])-(リソースの導入コスト)

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①周波数調整 -試算の前提:東京電力管内の周波数調整力-

東京電力管内を想定すると、必要な周波数調整力はH24~26年度の年間最大3日平均の需要に3%を乗じて、56,800[MW]×3[%]=1,704[MW]である

東京電力の調整機能を持つ電源の内訳は水力7,128[MW]、火力36,823[MW]である。火力については短周期調整力を有するのは石油火力とLNG火力のみで、その比率は東京電力の石油火力とLNG火力の設備容量の比率注と同じと仮定すると、調整機能を持つ石油火力は10,262[MW]、LNG火力は26,561[MW]である

揚水発電、石油火力、LNG火力でそれぞれ容量当たり同程度の調整力を確保すると仮定すると、それぞれの電源で確保する必要がある調整力は下表の通りである

水力 LNG火力 石油火力 合計

調整機能を持つ設備容量[MW] 7,128 26,561 10,262 43,951

必要な調整力[MW] 276 1,030 398 1,704

表 東京電力管内における周波数調整力を持つ電源

出所)制度設計WG 第10回 資料4「電力システム改革を踏まえた一般送配電事業者が確保する調整力について」

注 出所)東京電力ホームページ「電力供給設備」

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①周波数調整 -試算の前提:調整力確保に必要な石油火力-

周波数調整用火力の最低負荷を90[%]として、調整力を供給する火力発電は全て95[%]で稼働しているとする。この場合、実際に調整力を供給する石油火力の設備容量は(東京電力管内の石油火力による周波数調整容量)÷{100[%]-(最低負荷率)}=398[MW]÷(100[%]-90[%])=3,979[MW]

部分負荷運転による熱効率の低下を考慮しない場合、調整力を確保するために稼働させた石油火力の発電電力量は年間で、(実際に調整力を供給する石油火力の設備容量)×(稼働率)×8,760[h]=3,979[MW]×95[%]×8,760[h]=331[億kWh]である

出所)電力取引等監視委員会「第9回電気料金審査専門委員会」 関西電力資料(2015)

図 調整力確保のために発電計画の調整を行い部分負荷運転を行うイメージ

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①周波数調整 -試算の前提:部分負荷運転に伴う見かけの発電量増分-

石油火力の稼働率が最経済運用の100[%]から稼働率95[%]まで低減した時の熱効率の低下分は下図を参考にして▲0.5[%]程度である

熱効率の低下に伴い発生するのは厳密には燃料費の増大であるが、ここでは計算の便宜上、見かけの発電量が増大するとした

石油火力の部分負荷運転に伴う見かけの発電量の増分は、(周波数調整力用石油火力の年間発電量)×(熱効率低減分)=331[億kWh]×0.5[%]=1.66[億kWh]。従って、調整力を確保するために発電した石油火力の発電量を(331+1.66=)333[億kWh]として計算した

出所)電力中央研究所「火力発電の複数の運転モードと需給調整力を考慮した電源構成モデルの開発」(2013)

石油火力の場合

負荷率95%の時

表 火力発電の部分負荷効率

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①周波数調整 -試算の前提:周波数調整、需給バランス調整の対価-

周波数及び需給バランス調整は、供給される電力量[kWh]より確保した容量[kW]に価値があるため[kW]に対する対価のみ考える

東京電力管内では、周波数制御・需給バランス調整のための水力及び火力を43,951[MW]を所有しており、その年間固定費は(981+3,979=)4,960[億円]であるため、調整力1MW当たりの費用は年間で、(年間固定費[億円/年])÷(周波数制御・需給バランス調整のための水力及び火力の設備容量[MW])=4,960[億円/年]÷43,951[MW]=1,129[万円/MW]である注。従って、1時間当たりでは、1.29[円/kW/h]である

固定費のみ考慮する

出所)第8回制度設計ワーキング(2014)

図 一般送配電事業者の送配電業務と費用の回収状況

注 制度設計WG 第10回 資料4「電力システム改革を踏まえた一般送配電事業者が確保する調整力について」を参考に計算

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①周波数調整 -試算の前提:α(即応性による対価)の考え方-

FERCのOrder755によって蓄電池、フライホイール、DRなどの素早い応答が可能なリソースによるアンシラリーサービスを拡大するために価格設計の見直しが行われ、米国のPJMなどでは、系統運用者の需給調整指令に対しての応答性及び正確性を考慮した価格スキームが2011年10月から導入された

下図のPJMの例を参考にすると、迅速かつ正確なパフォーマンスへの対価は15$/MW/h程度である。本試算では、この価格を短周期調整力が火力から蓄電池に代替された時の+αの価値として想定する

Order755で以下の2つのスキームが追加 Pay for Mileageスキーム: ある時間における容量(MW)の総変動量を考慮。下図の緑線の長さの合計にあたる

Pay for Performanceスキーム: 系統運用者の需給調整指令に対しての応答パフォーマンスの正確性(%)を考慮

出所)GSS「Frequency Regulation(US)」

図 PJMの周波数安定化市場料金の推移

出所)CAISO「Pay for Performance Regulation」(2015)

図 追加された価格スキームイメージ

蓄電池に対する対価

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②再生可能エネルギー導入拡大 -想定する系統安定化コスト-

再エネが導入拡大した場合の短周期対策と長周期対策として、それぞれ以下のような費用が発生することを想定

短周期対策:LNG火力の設備利用率を減少させて部分負荷運転することで調整力を確保するための費用を想定(下図①)

長周期対策:再エネの変動対策としては、まず火力の部分負荷運転(下図①)や停止・抑制(下図②)による調整が行われることが想定される。本試算では、再エネの長周期対策として火力で調整できなかった太陽光・風力の余剰電力を調整する場合(下図③)を想定する

出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)

図 再生可能エネルギー導入に伴う系統安定化費用の分類

②-2長周期対策で考慮

②-1短周期対策で考慮

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②-1 短周期対策 -想定するシナリオ-

【想定するシナリオ】

太陽光及び風力によって発生している出力の変動をB.LNG火力で調整するケースをベースとして、A.蓄電池/ C.揚水発電で代替する場合を想定する

短周期変動では、長時間電力量を充放電し続ける必要は無いため、蓄電池は0.25時間容量とした

【試算における諸前提】

再生可能エネルギーの導入が拡大した場合の具体的な数字として、長期エネルギー需給見通しの数字を想定

再エネの短周期対策費用として、LNG火力を部分負荷運転することによって生じた費用608[億円/年]注を前提に、B.LNG火力で再エネの短周期対策のために必要な調整力[kW] を算出し、A.蓄電池、C.揚水発電でB.LNG火力を代替した場合を試算する

再エネの短周期対策では僅かな電力量の上げ下げだけを制御するため、実際に再エネの短周期対策として供給した電力量の総和は0とした。一方で、火力の場合は調整力を確保するために部分負荷運転を行う必要があるため、A.蓄電池やC.揚水発電を使用する場合に比べて再エネの短周期対策をするための発電計画の調整によって余分な発電量が生じる

注 出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)より

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②-1 短周期対策 -試算結果-

手段 自給率

[%] CO2排出原単位

[g-co2/kWh]

発電コスト

固定費[円/kW/h] 燃料費[円/kWh]

A.蓄電池 100% 0 0.90 -

B.LNG火力 0% 476 - 10.8

C.揚水発電 100% 0 1.37 -

表 試算に用いたデータ

手段 自給率

[%] CO2排出量

[万トン-co2/年]

発電コスト[億円/年] 事業性(市場規模) [億円/年] 固定費 燃料費 合計

A.蓄電池 +0.23% ▲268 +543 ▲608 ▲65 +65

B.LNG火力 (ベースケース) 0

C.揚水発電 +0.23% ▲268 +831 ▲608 +223 ▲223

表 各ケースにおける試算(結果は各ケース想定後の変化量を示す)

発電コストは、B.LNG火力の部分負荷運転に伴う燃料費増分よりA.蓄電池の固定費の方が安く、合計の発電コストでもメリットがある。一方、C.揚水発電は充放電効率の差で蓄電池よりも固定費が高く、合計の発電コストとしてもB.LNG火力よりコストが掛かる結果となった

事業性は、再エネ事業者の発電インバランス回避分を収益の源泉として想定しているため、B.LNG火力に対する発電コストのメリット分がそのまま事業性に直結する

※必要な蓄電容量:6,921[MW]、必要な蓄電電力量:1,730[MWh]

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②-1 短周期対策 -試算の前提:試算の考え方-

各ケースの kW、kWhの

考え方

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> kW:B.LNG火力によって確保されていた再エネ短周期対策調整力を代替する kWh:再エネ短周期用調整力を確保するためにB.LNG火力を部分負荷運転させる必要が無くなり、最

経済(定格効率)で運転することができる

自給率の変化 (元々の原子力・再エネの発電量)÷{(総発電電力量)-(部分負荷運転による発電量増分)}-(元々の自給率)

CO2削減量 -(部分負荷運転による見かけの発電量増分)×(B.LNG火力のCO2排出原単位)

発電コスト (固定費)

(B.LNG火力による再エネ短周期調整容量)×(A.蓄電池・C.揚水の固定費)注

発電コスト (燃料費)

-(部分負荷運転による見かけの発電量増分)×(B.LNG火力の燃料費)

事業性 (市場規模)

(B.LNG火力による再エネ短周期対策に掛かる費用)-(A.蓄電池・C.揚水の導入コスト) =(部分負荷運転による見かけの発電量増分)×(B.LNG火力の燃料費)-(B.LNG火力による再エネ短周期調整容量)×(A.蓄電池・C.揚水の固定費) ※発電インバランス回避が事業性の源泉と想定

注 LNG火力はミドル電源として、全体の需要動向に応じた出力調整が要求されるため、再エネの短周期調整力を蓄電池や揚水で代替しても固定費 (運転維持費)は削減できないとした

表 試算の考え方

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②-1 短周期対策 -試算の前提:再エネの短周期対策に必要な調整力-

LNG火力を部分負荷運転して短周期調整力を確保することで発生する燃料費増分は年間608[億円]注

部分負荷運転の熱効率低下によって発生したLNG火力の発電量増分は(LNG火力の部分負荷運転により発生する燃料費増分)÷(LNG火力の燃料費)=608[億円]÷10.8[円/kWh]=56[億kWh]

再エネの短周期変動用調整力を供給するLNG火力は、最低負荷率30[%]、平均稼働率65[%]で稼働しているとすると、熱効率低下率は下図より▲10[%]程度である。従って、最経済運用時のLNG火力の年間発電量は、(部分負荷運転に伴う発電量増分)÷(熱効率低下率)= 56[億kWh]÷ 10[%] =563[億kWh]

また調整力を供給するために設備稼働率を100[%]から65[%]に落としたLNG火力は563[億kWh]÷8,760[h] ÷65[%]=9,887[MW]である。この内、最低負荷率30[%]を差し引いた70[%]が調整力のための容量であるため、6,921[MW]が必要な蓄電量である

図 再エネの短周期対策として火力の部分負荷運転をする場合の費用の考え方

出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)

注 第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)より

定格比65%の時

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②-2 長周期対策 -想定するシナリオ-

【想定するシナリオ】

再エネの変動対策としては、まず火力の部分負荷運転や停止・抑制による調整が行われることが想定される。本試算では火力で調整できなかった再エネの余剰電力を調整する場合を想定する

本試算では、発生している余剰電力は全て太陽光発電によるものと仮定して計算した

長周期の変動を解決する手段としては、A.蓄電池導入/B.揚水発電/C.出力抑制/D.送配電網増強の4つを想定した。また、ベースケースとしては、リードタイムの短さとコストの観点からまずは出力抑制による調整が行われることが想定されるため、C.出力抑制をベースケースとして試算した

長周期対策では長時間の電力の充放電が必要となるため、5時間容量を想定した

【試算における諸前提】

再生可能エネルギーの導入が拡大した場合の具体的な数字として、長期エネルギー需給見通しの数字を想定

出力抑制された電力量は全電源から補うとする。この場合の全電源は長期エネルギー需給見通しの発電量及び電源構成とする

出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)

図 再エネの変動対策のイメージ

まずは火力による調整

次に揚水や 出力抑制

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②-2 長周期対策 -試算結果-

手段 自給率

[%] CO2排出原単位

[g-co2/kWh]

発電コスト

固定費[円/kW/h] 燃料費[円/kWh]

A.蓄電池 100% 0 11.42 25注3

B.揚水発電 100% 0 1.37 30注3

C.出力抑制 44%注2 374注2 0.05注1 7.8注2

表 試算に用いたデータ

手段 自給率

[%] CO2排出量

[万トン-co2/年]

発電コスト[億円/年] 事業性 [億円/年] 固定費 燃料費 合計

A.蓄電池 +0.58% ▲415 +12,563 ▲452 +12,111 ▲9,972

B.揚水発電 +0.58% ▲415 +1,463 +133 +1,596 +662

C.出力抑制 (ベースケース) ▲2,370

表 各ケースにおける試算(結果は各ケース想定後のベースケースに対する変化量を示す)

発電コストは、A.蓄電池、B.揚水発電のいずれも固定費の安いC.出力抑制よりコストが掛かる結果となった

事業性は、発電事業者が余剰電力をFITで売電することを想定しているため、 B.揚水発電では余剰電力の売電収入によってプラス、C.出力抑制では売電機会損失によってマイナスになった。A.蓄電池は売電収入はあるが蓄電池の導入コストが高いため事業性はマイナスになっている

※必要な蓄電容量:12,614[MW]、必要な蓄電電力量:63,068[MWh]

注1 出力抑制制御機器の単価は、「第二回発電コスト検証ワーキンググループ 資料5」(2015)より0.4万円/kWで、これをPCSの耐用年数10年で除して算出 注2 出力抑制した分の発電量は全電源から補うとして、長期需給見通しの発電量割合を考慮して算出。各電源の発電コストは「第6回発電コスト検証ワーキンググループ

資料1」(2015)より、2030年モデルプラントの数字を想定 注3 「第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1」(2015) より太陽光発電の発電コストを20.9[円/kWh]として、それぞれ充放電効率を考慮

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②-2 長周期対策 -試算の前提:試算の考え方-

各ケースの kW、kWhの 考え方

<A.蓄電池、B.揚水発電の場合> kW:1h当たりの余剰電力発生量を必要な蓄電容量とする kWh:ベースケースでは抑制される年間の余剰電力発生量を吸収して発電機会損失を減らす

自給率の変化 (年間の余剰電力発生量)×{(A.蓄電池・B.揚水の場合の自給率)-(C.出力抑制の場合の自給率)}÷(長期需給見通しにおける総発電量)

CO2削減量 -(年間の余剰電力発生量)×(C.出力抑制のCO2排出原単位)

発電コスト (固定費)

(1h当たりの余剰電力発生量)×{(A.蓄電池・B.揚水の固定費)-(C.出力抑制の固定費)}

発電コスト (燃料費)

(年間の余剰電力発生量)×{(A.蓄電池・B.揚水の燃料費)-(C.出力抑制の燃料費)-(発電機会損失;太陽光の発電コスト)}

事業性

<A.蓄電池、B.揚水発電の場合> (年間の余剰電力発生量)×(太陽光のFITの売電価格;28[円/kWh]注1)×(充放電ロス注2)-(1h当たりの余剰電力発生量)×(A.蓄電池・B.揚水の固定費) <C.出力抑制の場合> -(1h当たりの余剰電力発生量)×(C.出力抑制の固定費)-(年間の余剰電力発生量)×(発電機会損失;太陽光の発電コスト)

表 試算の考え方

注1 2015年時点での10kW以上の太陽光発電の買取価格より想定 注2 出力抑制を回避した分の追加FIT売電収入

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②-2 長周期対策/⑤送配電網増強 -試算の前提:余剰電力量-

太陽光・風力の余剰電力量は揚水動力活用分(億kWh)より111[億kWh]、余剰発生日は揚水稼働日数より176[日]に想定

本試算では5時間容量の蓄電システムを想定したため、1日当たり5時間余剰電力が発生していると仮定する。従って、111[億kWh]÷176[日]÷5[kWh/kW]=12,614[MW]の蓄電容量が必要である

出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)

系統安定化費用の分析

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③インバランス調整 -想定するシナリオ-

【想定するシナリオ】

PPSによって発生しているインバランスを系統運用者が石油火力で補てんするケース(必要なインバランス調整対策がPPSによって講じられていないケース)をベースとして、A.蓄電池/B.LNG火力/C.揚水発電で調整する場合を考える

インバランス調整では長時間電力量を充放電し続ける必要は無いため、蓄電池は0.25時間容量とした

【試算における諸前提】

全国でのインバランス発生量から必要な調整容量を算出して、各ケースにおける試算を行う。各ケースの調整力確保の方法は、A.蓄電池及びC.揚水発電では調整のための容量を確保し、B.LNG火力では部分負荷運転により調整容量を確保するものとする

本試算では具体的なインバランス発生量として1.57[億kWh]注を採用する。1時間当たりのインバランス発生量は1年を通して一定とすると、インバランス発生量を調整するために必要最低限な調整力は上げ代、下げ代共に1.57[億kWh]÷8,760[h]=18[MW]である

A.蓄電池及びC.揚水発電の場合、設備利用率を50[%]として上げ方向と下げ方向のインバランス発生が交互に同程度発生する理想的な場合を想定すると、必要な容量は18[MW]×2=36[MW]である

注 経済産業省「第4次電気事業制度改革の効果検証について」(2011)より、2009年度のPPSによるインバランス発生量を採用

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③インバランス調整 -試算結果-

手段 自給率

[%] CO2排出量

[万トン-co2/年]

発電コスト[億円/年] 事業性(市場規模) [億円/年] 固定費 燃料費 合計

A.蓄電池 +0.0004% ▲7.0 +0.9 ▲34 ▲33 +1.1

B.LNG火力 0.0000% ▲6.6 ▲0.9 ▲33 ▲34 +3.0

C.揚水発電 +0.0004% ▲7.0 +2.4 ▲34 ▲31 ▲0.4

石油火力 (ベースケース) +2.0

表 各ケースにおける試算(結果は各ケース想定後の変化量を示す)

発電コストは、A.蓄電池、B.LNG火力、C.揚水発電のいずれも石油火力よりメリットがある結果になった

事業性は、小売電気事業者のインバランス回避によるメリットは各ケースで変わらないため固定費の差がそのまま事業性の差として表れており、A.蓄電池はB.LNG火力、石油火力に次いで事業性がある

※必要な蓄電容量:36[MW]、必要な蓄電電力量:9[MWh]

手段 自給率

[%] CO2排出原単位

[g-co2/kWh]

発電コスト

固定費[円/kW/h] 燃料費[円/kWh]

石油火力 0 695 0.42 21.7

A.蓄電池 100 0 0.90 -

B.LNG火力 0 476 0.23 10.8

C.揚水発電 100 0 1.37 -

表 試算に用いたデータ

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③インバランス調整 -試算の前提:試算の考え方-

各ケースの kW、kWhの 考え方

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> kW:石油火力によって確保されていた調整力の容量を代替する kWh:インバランス調整力を確保するために石油火力を稼働させる必要が無くなり、石油火力の代わりに燃料費の安いLNG火力を最経

済(定格効率)で運転することができる <B.LNG火力> kW:石油火力の代わりに部分負荷運転を行い、調整力を供給する kWh:石油火力の調整力を代替するため、部分負荷運転に伴う追加の発電コストが発生する

自給率の変化

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> (元々の原子力・再エネの発電量)÷{(総発電電力量)-(部分負荷運転による発電量増分)}-(元々の自給率) <B.LNG火力の場合> 石油火力及びLNG火力のエネルギー自給率は0[%]で、発電量に変化は無いため自給率の変化は無い

CO2変化量

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> (インバランス調整用火力の合計発電量)×(LNG火力のCO2排出原単位)-{(インバランス調整用火力の合計発電量)+(部分負荷運転による見かけの発電量増分)}×(石油火力のCO2排出原単位) <B.LNG火力> {(インバランス調整用火力の合計発電量)+(部分負荷運転による見かけの発電量増分)}×{(LNG火力のCO2排出原単位)-(石油火力のCO2排出原単位)}

発電コスト (固定費)

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> (石油火力によるインバランス調整容量)×(A.蓄電池・C.揚水発電の固定費)-(インバランス調整用石油火力の設備容量)×(石油火力の運転維持費分) <B.LNG火力> (インバランス調整用火力の設備容量)×{(B.LNG火力の運転維持費分)-(石油火力の運転維持費分)}

発電コスト (燃料費)

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> (インバランス調整用火力の合計発電量)×(B.LNG火力の燃料費)-{(インバランス調整用火力の合計発電量)+(部分負荷運転による見かけの発電量増分)}×(石油火力の燃料費) <B.LNG火力> {(インバランス調整用火力の合計発電量)+(部分負荷運転による見かけの発電量増分)}×{(B.LNG火力の燃料費)-(石油火力の燃料費)}

事業性 (市場規模)

<A.蓄電池、C.揚水発電の場合> (インバランスの単価;2.5[円/kWh])×(インバランス発生量)-(リソースの導入コスト)

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③インバランス調整 -試算の前提:調整力を確保するためのLNG火力-

石油火力によって、上げ代、下げ代共に18[MW]のインバランス調整力を供給するために、最低負荷率30[%]で運用する必要があるLNG火力の容量は18[MW]×2÷70[%]=51[MW]

部分負荷運転による熱効率の低下を考慮しない場合、石油火力による発電力量は設備稼働率を65[%]とすると51[MW]×65[%]×8760[h]=2.9[億kWh]

石油火力において、稼働率を100[%]から65[%]に落とした場合、熱効率の低下率は▲3[%]程度である。従って、インバランス調整力を確保するための部分負荷運転に伴う石油火力の発電量増分は、(インバランス調整力を供給する石油火力の発電量)×(熱効率低下率)=2.9[億kWh]×3[%]=0.1[億kWh]

表 火力発電の部分負荷効率

出所)電力中央研究所「火力発電の複数の運転モードと需給調整力を考慮した電源構成モデルの開発」(2013)

石油火力の場合 負荷率65%の時

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③インバランス調整 -試算の前提:インバランスによる事業者の実質的ロス-

インバランス精算単価はインバランス発生率を2[%]注とすると16.5[円/kWh]程度であり、平均的なスポット価格で差し引くと2.5[円/kWh]がインバランスによる実質的なロスと考えることができる(次頁参照)

インバランス精算単価 16.5円/kWh

スポット平均価格 14.0円/kWh

実質的なロス ▲2.5円/kWh

表 期待されるインバランス料金

インバランス精算単価: インバランスによってPPSが系統運用者に支払う料金 (e.g. 16.5円/kWh)

不足インバランスの場合:PPSが供給すべきだった電力分の費用

余剰インバランスの場合:PPSが売電してしまった電力分の収入

(e.g. スポット平均価格14.0円kWh)

PPSが負担する実質的なインバランスロス(e.g. 2.5円/kWh)

図 インバランス料金の仕組み

注 2%は実績値同時同量における卸電力市場におけるインバランス発生率である

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③インバランス調整 -≪参考≫インバランス料金とインバランス発生頻度-

出所)制度設計WG 第9回 資料5-4「インバランス制度に係る詳細制度設計」

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④ピークカット・ピークシフト -想定するシナリオ及び試算の考え方-

【想定するシナリオ】

各電力会社の2014年の電力需要実績データから、下図のようなデュレ―ションカーブを作成し、上位1%(88時間)のピークをカットすることを想定する。ピークカットの手段としては、 A.蓄電池導入、B.エネファーム、C.ヒートポンプ、D.自家発電の4つが挙げられる、それぞれのケースにおいて上位1%のピークをカットした場合を考える

ピークカット、ピークシフトでは長時間の電力の充放電が必要となるため、5時間容量を想定した

【試算の前提】

ピークカットには、需要ピーク時の電力量を抑制する効果と、ピーク時に電力を供給するための容量を削減する効果の2つがある

ピークカットするための蓄エネに用いた電源は朝方もしくは夕方の再エネ余剰か夜間の原子力発電を想定する。また、需要が多い日の上位1[%]のピークを供給する電源は石油火力を想定する

出所)総合資源エネルギー調査会 第5回長期エネルギー需給見通し小委員会 資料5

図 ピークカット・ピークシフトのイメージ

kWh価値 kW価値

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④ピークカット・ピークシフト -試算結果-

手段 自給率

[%] CO2排出量

[万トン-co2/年]

発電コスト[億円/年] 事業性(市場規模) [億円/年] 固定費 燃料費 合計

A.蓄電池 +0.040% ▲25 +11,778 ▲33 +11,744 ▲9,944

B.燃料電池 +0.037% ▲25 +28,804 ▲8 +28,796 ▲27,034

C.ヒートポンプ +0.040% ▲25 +1,253 ▲69 +1,184 +617

D.自家発電 0% ▲8 +1,540 ▲19 +1,521 +241

石油火力 (ベースケース) 0

表 各ケースにおける試算(結果は各ケース想定後の変化量を示す)

※必要な蓄電容量:12,203[MW]、必要な蓄電電力量:61,013[MWh]

手段 自給率

[%] CO2排出原単位

[g-co2/kWh]

発電コスト

固定費[円/kW/h] 燃料費[円/kWh]

A.蓄電池 100% 0 11.42 12.6注2

B.燃料電池 93%注1 0 29 19.5

C.ヒートポンプ 0% 0 1.67 2.7注2

D.自家発電 100% 476 1.96 16.5

石油火力 0% 695 0.42 21.7

表 試算に用いたデータ

発電コストは、A.蓄電池、B.燃料電池、C.ヒートポンプ、D.自家発電のいずれも石油火力よりコストが掛かる

事業性は、発電コストや事業性の観点では、固定費の安いC.ヒートポンプが最もメリットがある。A.蓄電池は比較的長い充放電が必要となるピークカットでは、コストが大きくなる

注1 出所)資源エネルギー庁「水素の製造、輸送・貯蔵につい」(2014)より 注2 ピークカットするための電力は原子力及び太陽光・風力から補うとして、「第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1」(2015)を参考に想定

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④ピークカット・ピークシフト -試算の考え方-

各ケース kW、kWhの

考え方

kW:ピークカットすることでピーク電源の石油火力の設備容量11,444[MW]を削減する kWh:1年の上位1%(88時間)の総ピーク需要3.64[億kWh]を違う時間帯に蓄エネしていた電力や自家発電によって

供給し、ピークカットを行う

自給率の変化

<A.蓄電池、C.ヒートポンプの場合> {(カットされた総ピーク需要)×(A.蓄電池、C.ヒートポンプの自給率)+(2014年の再エネ・原子力の発電量)}÷(2014年の全国の発電量)-(2014年の自給率) <B.燃料電池の場合> {(カットされた総ピーク需要)×(B.燃料電池の自給率)+(2014年の再エネ・原子力の発電量)}÷(全国の発電量)-(2014年の自給率) <D.自家発電の場合> (カットされた総ピーク需要)×{(LNG火力の自給率)-(石油火力の自給率)}

CO2削減量

<A.蓄電池、B.燃料電池の場合、C.ヒートポンプの場合> -(カットされた総ピーク需要)×(石油火力のCO2排出量) <D.自家発電の場合> (カットされた総ピーク需要)×{(LNG火力のCO2排出原単位)-(石油火力のCO2排出原単位)}

発電コスト (固定費)

<A.蓄電池の場合> (A.蓄電池の固定費)×(必要蓄電量の容量;61,013[MWh]÷5[時間容量])-(ピークカットにより不要になる石油火力の容量)×(石油火力の運転維持費分) <B.燃料電池、C.ヒートポンプ、D.自家発電の場合> {(B.燃料電池、C.ヒートポンプ、D.自家発電の固定費)-(石油火力の運転維持費分)}×(ピークカットにより不要になる石油火力の容量)

発電コスト (燃料費)

(カットされた総ピーク需要)×{(A.蓄電池、B.燃料電池、C.ヒートポンプ、D.自家発電)-(石油火力の燃料費)}

事業性 (市場規模)

(契約電力単価;1,650[円/kW/月]注)×(ピークカットにより不要になる石油火力の容量)-(A.蓄電池、B.燃料電池、C.ヒートポンプ、D.自家発電の導入コスト)

注 各電力会社の高圧向け契約料金より設定

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0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

1

210

419

628

837

1046

1255

1464

1673

1882

2091

2300

2509

2718

2927

3136

3345

3554

3763

3972

4181

4390

4599

4808

5017

5226

5435

5644

5853

6062

6271

6480

6689

6898

7107

7316

7525

7734

7943

8152

8361

8570

④ピークカット・ピークシフト -試算の前提:削減される石油火力-

2014年の各電力会社の需要実績データから、日本全国の需要について以下のようなデュレーションカーブを作成した

需要が多い日の上位1[%]のピークをカットした場合の合計ピークカット電力量は3.64[億kWh]、ピークカットによって運転維持費が不要になる容量は11,444[MW]である

上位1[%]の内、1日の合計ピークカット量が最も多かった日で61,013[MWh/日]であった。これは11,444[MW]×5=57,220[MW]よりも大きいため、必要蓄電量の基準を61,013[MWh]とした

図 2014年の日本における需要デュレーションカーブ

出所)各電力会社の2014年の電力需要実績データから三菱総研作成(ただし、北陸電力、中国電力、沖縄電力については2010年のデータを採用)

11,444 [MW]

合計3.64 [億kWh]

ピークカット

[万kWh]

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⑤送配電網設備増強繰り延べ -想定するシナリオ及び試算の考え方-

【想定するシナリオ】

送配電網の容量増強(設備投資)が必要となるシナリオとして、②-2再生可能エネルギー導入拡大ケースの長周期対策と同様、長期エネルギー需給見通しの場合を想定し、火力で調整しきれない太陽光・風力による余剰電力を送配電網の容量増強で補てんする場合について試算を行う

②-2再生可能エネルギー導入拡大ケースの長周期対策と同様、出力抑制をベースケースとして想定し、A.蓄電池とB.送配電網投資で対策した場合を試算する

【試算の前提】

送配電網増強によって、太陽光・風力による電力は抑制されることなく供給されるため、A.蓄電池とB.送配電網投資では発電構成に違いは無い

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⑤送配電網設備増強繰り延べ -試算結果-

手段 自給率

[%] CO2排出原単位

[g-co2/kWh]

発電コスト

固定費[円/kW/h] 燃料費[円/kWh]

A.蓄電池 100% 0 11.42 23注3

B.送配電網投資 100% 0 0.66 20注3

出力抑制 44%注2 374注2 0.05注1 7.8注2

表 試算に用いたデータ

手段 自給率

[%] CO2排出量

[万トン-co2/年]

発電コスト[億円/年] 事業性 [億円/年] 固定費 燃料費 合計

A.蓄電池 +0.58% ▲415 +12,555 ▲473 +12,083 ▲11,976

B.送配電網投資 +0.58% ▲415 +679 ▲861 ▲183 ▲199

出力抑制 (ベースケース) 0

表 各ケースにおける試算(結果は各ケース想定後の変化量を示す)

発電コストは、A.蓄電池は固定費の影響で出力抑制に比べて割高になるが、B.送配電網投資は出力抑制よりメリットが出る結果となった

一方、送配電事業者から見た事業性では、A.蓄電池やB.送配電網投資によって託送収入は増えるがそれ以上にコストが掛かるためマイナスの結果となった

※必要な蓄電容量:12,614[MW]、必要な蓄電電力量:63,068[MWh]

注1 出力抑制制御機器の単価は、「第二回発電コスト検証ワーキンググループ 資料5」(2015)より0.4万円/kWで、これをパワーコンディショナの耐用年数10年で除して算出 注2 出力抑制した分の発電量は全電源から補うとして、長期需給見通しの発電量割合を考慮して算出。各電源の発電コストは「第6回発電コスト検証ワーキンググループ

資料1」(2015) より、2030年モデルプラントの数字を想定 注3 「第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1」(2015) の太陽光及び風力の発電コストを長期エネルギー需給見通しの電源構成比で案分。A.蓄電池の場合は充

放電効率85[%]を考慮

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⑤送配電網設備増強繰り延べ -試算の前提:試算の考え方-

各ケースの kW、kWhの 考え方

kW:1h当たりの余剰電力発生量を必要な蓄電容量もしくは系統増強容量とする kWh:ベースケースでは抑制される年間の余剰電力発生量を吸収もしくは系統容量増強によって抑制を回避して発

電機会損失を減らす

自給率の変化 (年間の余剰電力発生量)×{(A.蓄電池、B.送配電網増強の場合の自給率)-(出力抑制の場合の自給率)}÷(長期需給見通しにおける総発電量)

CO2削減量 -(年間の余剰電力発生量)×(出力抑制のCO2排出原単位)

発電コスト (固定費)

(1h当たりの余剰電力発生量)×{(A.蓄電池・B.送配電網増強の固定費)-(C.出力抑制の固定費)}-(※A.蓄電池の場合;γ(リードタイム短縮によるメリット))

発電コスト (燃料費)

(年間の余剰電力発生量)×{(A.蓄電池・B.送配電網増強の燃料費)-(C.出力抑制の燃料費)-(発電機会損失;太陽光の発電コスト)}

事業性 (送電会社)

(増加した託送送電収入)-(A.蓄電池、B.送配電網増強の導入コスト) =(1h当たりの余剰電力発生量)×(託送基本料金;350[円/kW/月]注)×12カ月+(年間の余剰電力発生量)×(100%-(※A.蓄電池の場合;充放電ロス85[%]))×(託送従量料金;6[円/kWh]注)-(A.蓄電池、B.送配電網増強の導入コスト)

表 試算の考え方

注 電力10社が2015年8月までに提出した託送料金の低圧及び高圧の価格より想定

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⑤送配電網設備増強繰り延べ -試算の前提:送電網増強費用-

出所)総合資源エネルギー調査会 第3回電力システム改革専門委員会地域間連系線等の強化に関するマスタープラン研究会 資料4(2012)

東北電力管内の系統増強費用のポテンシャルから系統増強単価を算出する注。kW当たりの送電網強化費用は(増強費用[億円])×(送変電設備年経費率[%/年])÷(増強された送電容量[MW])=202[億円]×(8[%/年]÷8,760[h])÷(2,220[MW]-1,940[MW])=0.66[円/kW/h]

必要な送配電網増強容量は、②-2再エネ長周期対策で算出した余剰電力発生量12,614[MW] とする

図 東北電力管内における送電網強化によるポテンシャル

送電網増強によって260[MW]容量増強

注 この試算では特に連系変電所への投資を想定している

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⑤送配電網設備増強繰り延べ -試算の前提:γ(リードタイム短縮メリット)-

A.蓄電池がB.送配電網投資よりメリットがある点として、対策の実施までのリードタイムが短いことが挙げられる。蓄電池は機器を購入して設置するだけであることから≒0[年]として、送配電網工事には12 [年]程度要するものとする

再エネが導入拡大した時の対策として、B.送配電網増強による対策を講じる場合、工事が完了するまでの12年間は別の対策で再エネの余剰電力問題に対応する必要がある。A.蓄電池の場合と比較するため、B.送配電網増強の工事が完了するまでの12年間は出力抑制及び揚水発電で再エネの余剰電力に対応することを想定し、揚水でも吸収しきれない出力抑制分は太陽光10[億kWh/年]、風力2[億kWh/年]とする注

抑制された電力は、A.蓄電池で吸収する場合と比べて余分に発電しなければならない社会全体の発電コストと考えられるため、上記の抑制が12年間発生すると仮定すると、蓄電池のγ(リードタイムの短縮によるメリット)の価値は、(再エネの年間抑制量)×(抑制分を余分に発電をするための発電コスト)÷(送配電網増強工事期間)=12[億kWh]×7.8[円/kWh]÷12[年]=7.8[億円/年]

出所)経済産業省「地域間連系線等の強化に関するマスタープラン」

図 送電線工事の工期短縮の可能性について(電事連整理)

注 出所)第6回発電コスト検証ワーキンググループ 資料1(2015)

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⑥自動車 -EV単体の採算性

EVを導入した際のガソリン車との比較における車両単体での採算性試算の結果を示す。

10年間の合計支出では、ガソリン車と比較して、EVが12万円多い結果となっており、現時点の車両価格では、車両単体で採算性を得ることは難しい

項目 ガソリン車 電気自動車 備考

車両価格 218.9万円 259.6万円 「クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金補助事業」のLEAF 24Sモデルの参考定価(EV)と基準額(同レベルのガソリン車想定)

燃費・電費 20.3km/L 6km/kWh ・燃費:総合資源エネルギー調査会における乗用車の2020年度燃費基準目標値 ・電費:日産ホームページより

自動車の年間平均走行距離

8,858km/年 平成26年度「自動車燃料消費量統計」における普通自家用ガソリン車の走行距離より

燃料価格 ガソリン: 110円/L

電力: 13円/kWh

各社の価格情報より設定

10年の合計支出 266.9万円 278.8万円 利用期間を10年とし、車両価格+燃料費で算出

表 本試算におけるガソリン車とEVの系統利用

EV導入ケースの合計支出が約12万円多い

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⑥自動車 - EV普及時の供給力想定-

EVのストックでの普及目標として、長期エネルギー需給見通しでは、2030年に16%(概算で約900万台、プラグインハイブリッド車含む)と目標を設定している。

2020年断面では、現行のEVに対して、各社の販売努力や支援策により、順調に販売台数を拡大させたと仮定し、約100万台の普及を想定する。

注1 一般社団法人 次世代自動車振興センター「電気自動車等保有台数統計」

注2 乗用車保有台数を約5600万台と想定

2020年断面での電動車普及の想定

2015年 2030年 2020年

約9万台注1

約900万台注2

約100万台

(想定)

長期エネルギー需給見通しに

おける目標値

実績

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⑥自動車 - EV普及時の供給力想定-

前ページの普及想定を前提とし、家庭と勤務地でのEV制御による調整力を試算。

自家用車を通勤に用いる場合は勤務地、通勤に用いない場合は家庭でV2HやV2Lを行うことを想定。

ともに10%程度の車両がV2Hを行なった場合、15万kW程度の調整力となる。

項目 設定 備考

普及台数 100万台 2020年断面の想定

自家用車の

通勤利用率 50%

平成22年度国勢調査における全国平均46.27%より設定

家庭EVの系統制御対応可能比率

10% V2H機器導入し、かつピークカット等を行う家庭

勤務地EVの系統制御対応可能比率

10% 同上

充放電出力 3kW 一般的な200V、15Aの普通充電器を想定

普及目標に基づく調整力試算

家庭 勤務地

想定される調整力 15万kW 15万kW

B. EV系統利用ケース

EV導入

日常生活に利用

通勤利用 休日利用

系統対策に

利用

(ピークカット)

系統対策に利用

(勤務地充電も考慮)

②勤務地の充電設備でのピークカット

②家庭の充電設備での

ピークカット

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Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのバリューチェーン分析

i. 部材~EMSレイヤーのバリューチェーン分析

ii. オペレーションレイヤーのバリューチェーン分析

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部材~PCSのレイヤーにおける主要企業リスト

部材、セル(BMU含む)、パッカー、PCSのレイヤーにおける主要企業を下記のリスト①~⑳のように整理した。

PCSはセル・パッカーのレイヤー企業が担っているケースも多く見受けられるため、PCSに特化している企業のみを選定した。

部 材 セ ル パッカー PCS

鉛電池 リスト①~④ リスト⑤

リスト⑳

リチウムイオン電池 リスト⑥~⑨

リスト⑩ リスト⑪

リスト⑫

ニッケル水素電池 リスト⑬~⑯ リスト⑰

NAS電池 リスト⑱

レドックスフロー電池 リスト⑲

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≪参考≫パッカーの定義

主にリチウムイオン電池においては、ベアセル(シリンダ型・角型・ラミネート型)のままでは基本的に使用できない。ベアセルを最終製品とするためには、ベアセルに保護回路などを取り付け、容器に入れてセット機器として使用できるような形にする必要がある。

例えば、ノートブックPCの場合、ベアセルに上蓋、下蓋、ピン、保護回路を取り付け、プラスチック製のケース(蓋)に格納され、端子により出力される。このような工程を「パック化」と呼び、主にこの工程の事業を扱うプレイヤーのことを「パッカー」と定義した。

1パック当たりに入るセル数は大きく分けて3タイプあり、デジタルスチルカメラ、携帯電話端末などが1~2セル、ノートブックPC、電動工具などが多セル(数~10数セル)、ESS用などその他が100~200セルである。

近年、リチウムイオン二次電池セルメーカは、中国にパック生産拠点をシフトしつつある。低コスト化が主な目的であり、パナソニックでは2011年頃からパック化拠点を中国にシフトしたことで、日本国内のパック化比率は大幅に減少している。

画像:カメラ映像機器工業会

パック化のイメージ

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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鉛電池 主要企業リスト①~④

鉛電池の部材(正極材・負極材・電解液・セパレータ)レイヤーにおける主要企業を下記リスト①~④に整理した。

正極材・負極材は大手金属系メーカが多く、電解液は化学薬品メーカ、セパレータは化学・製紙メーカが中心である。

リスト①・② 正極材・負極材 リスト③ 電解液 リスト④ セパレータ

企業名 本 社 企業名 本 社 企業名 本 社

東邦亜鉛 日本 三菱マテリアル電子化成 日本 旭化成 日本

住友金属鉱山 日本 昭和電工 日本 日本板硝子 日本

神岡鉱業 日本 要薬品 日本 阿波製紙 日本

小坂製錬 日本 高杉製薬 日本 ジーエス化成工業 日本

八戸製錬 日本 ENTEK 日本

細倉金属鉱業 日本 北越紀州製紙 日本

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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≪参考≫鉛 マテリアルフロー

鉛の用途の9割は蓄電池である。

素材供給は、ほとんどが鉄鋼メーカによる。

鉛のマテリアルフロー

出所)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 鉱物資源マテリアルフロー

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鉛電池 主要企業リスト⑤

鉛電池のセル・パッカーレイヤーにおける主要企業を下記リスト⑤に整理した。

リスト⑤ セル・パッカー

企業名 本 社 系 統 需要家

長周期対策 短周期対策 工場・ビル 集合住宅

家 庭 緊急時 災害対策

Johnson Controls 米国 - - ○ ○ -

GSユアサ 日本 ○ - ○ ○ ○

Exide Technologies 米国 ○ - ○ ○ ○

EnerSys 米国 ○ - ○ ○ ○

天能電池集団[Tianneng] 中国 ○ - ○ ○ ○

East Penn 米国 ○ - ○ ○ ○

新神戸電機 日本 ○ - ○ ○ ○

古河電池 日本 ○ - ○ ○ ○

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

詳細企業分析有

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リスト⑤-1 Johnson Controls

企業名 Johnson Controls

種類 鉛蓄電池

用途 自動車用バッテリー、産業用電池、電源装置事業

事業実績 <売上高>

• 2015年のJohnson Controls全体の売上高は371億ドル

事業見通し • グローバルワークプレイスソリューションズの売却などによる事業ポートフォリオの組み替えにより、今後も営業利益率15%程度を維持しつつ、ビルディング業務などを中心に成長を図る。

価格設定 • 自動車スタータ用

3,000~10,000円/個

• 二輪車用

1,000~4,500円/個

(1個=576VAh ,12V×48Ah=576VAh)

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

Johnson Controlsは、鉛蓄電池事業を含むパワーソリューションズ部門だけでなく、自動車シート製品を扱うオートモーティブシステムズや、ビルの空調システムや自動制御機器を扱うビルディングシステムズ部門を持つ。

ビルやオフィスにおける設備・機器のエネルギー使用量や運転状況の見える化を実現するエネルギー管理システムである「ENE Partner」のために、蓄電池を応用可能。

競争力の源泉 Johnson Controlsは、あらゆる主要電気化学バッテリーシステムを提供している世界で唯一のメーカーであり、鉛蓄電池分野でのシェアも世界No.1である。

また、世界50か国に展開する販売網を持ち、代表的バッテリー製造メーカーである。

事業戦略 2015年10月、米シカゴの世界最大級商業ビルマーチャンダイズマートに分散型エネルギー貯蔵技術を導入し、ワールドクラスのバッテリー技術とビル管理システムのノウハウの提供開始。

2015年10月、日立との合弁会社ジョンソンコントロールズ日立空調を設立し、ビル・オフィスへのトータルソリューションの提供を目的とする

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 40,833 41,955 41,410 38,749 37,179

営業利益 6058 6,148 6,465 6,305 6,447

営業利益率 14.8% 14.7% 15.6% 16.3% 17.3%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

(億ドル)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑤-2 GSユアサ

企業名 GSユアサ

種類 鉛蓄電池

用途 自動車用バッテリー、産業用電池、電源装置事業

事業実績 <売上高>

• GSユアサ全体で2015年は過去最高の連結売上高、営業利益となる。

事業見通し • 自動車用バッテリーや産業電離電源事業の海外展開強化やリチウムイオン電池事業の自立・安定化を図り、2015年度には売上高4,000億円、営業利益240億円、営業利益率6.0%を目標とする。

価格設定 • 自動車スタータ用

3,000~10,000円/個

• 二輪車用

1,000~4,500円/個

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

GSユアサは、鉛蓄電池事業とリチウムイオン電池事業を持ち、特に自動車向けの電池製造に力を入れている。独自技術による優れたエンジン始動性能と長寿命性能に加え、リチウムを配合した新たな電解液を使用し、アイドリングストップ車用の高効率・高耐久鉛蓄電池の開発に取り組む。

ボッシュ、三菱商事と2013年にリチウムエナジーアンドパワー社を設立し、これまで培ってきた蓄電池技術を用いて、現在の2

倍の性能を目指した次世代リチウムイオン電池の開発に取り組む。

競争力の源泉 [自動車用バッテリー]

世界シェア3位であり、積極的な海外展開へのM&Aや出資などを通して、世界シェアNo.1のJohnson Controlsに迫る。

[産業用鉛蓄電池]

大容量蓄電システム向けサイクル用据え置き鉛蓄電池として、寿命性能2.5倍の世界最高水準の「SLR形」電池を開発。

事業戦略 2015年度にトルコのバッテリー大手インヂ・アク・サナイ・イ・ヴェ・テヂャーレットに出資、中東や北アフリカ市場に参入。

2016年度にパナソニックの鉛蓄電池事業を約300億円で買収、中国・インド・タイの拠点を獲得。

注 売上高の約8割が鉛蓄電地事業

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 272,514 285,434 274,509 347,995 369,760

営業利益 17589 16,030 9,775 18197 20914

営業利益率 6.5% 5.6% 3.6% 5.2% 5.7%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

-200

300

800

1,300

1,800

2,300

2,800

3,300

3,800

4,300(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リチウムイオン電池 主要企業リスト⑥~⑨

リチウムイオン電池の部材(正極材・負極材・電解液・セパレータ)レイヤーにおける主要企業を下記リスト⑥~⑨に整理した。

リスト⑥ 正極材 リスト⑦ 負極材 リスト⑧ 電解液 リスト⑨ セパレータ

企業名 本 社 企業名 本 社 企業名 本 社 企業名 本 社

Umicore ベルギー 日立化成 日本 三菱化学 日本 旭化成 イーマテリアルズ

日本

日亜化学工業 日本 貝特瑞[BTR] 中国 宇部興産 日本 東レバッテリー セパレータフィルム

日本

湖南杉杉[Shanshan]

中国 上海杉杉[Shanshan]

中国 張家港国泰華栄 [Guotai-Huarong]

中国 Polypore 米国

L&F 韓国 三菱化学 日本 新宙邦科技[Capchem]

中国 SK Innovation 韓国

住友金属鉱山 日本 JFEケミカル 日本 BASF(Novolyte) ドイツ 住友化学 日本

三井金属鉱業 日本 日本カーボン 日本 富山薬品工業 日本 宇部興産 日本

戸田工業 日本 昭和電工 日本 セントラル硝子 日本 ダブル・スコープ 日本

日本化学工業 日本 三井化学 日本 三菱樹脂(三菱ケミカルホールディングス)

日本

出所)各種資料に基づき三菱総研作成

詳細企業分析有

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リスト⑥-1 日亜化学工業

企業名 日亜化学工業

種類 リチウムイオン電池の正極材

用途 車載用、民生用

事業実績 <売上高>

• 事業実績のデータなし

事業見通し 中国のスマートフォン向けの電池を生産しており、2014年にはLCOが同社史上過去最高の生産量を達成した。今後も海外電池メーカ向けにLCOやNMCの生産量が増加する見通しである。

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

蛍光体のトップメーカーとして培った紛体合成技術をコア技術とし、リチウムイオン電池用活物質の開発・製造を行う。

原料から一貫製造を行うことで、顧客からの様々な要求にスピーディーに対応し、リチウムイオン電池の高容量化、高安全性に応えてきた。

競争力の源泉 世界最大の正極材料メーカーとして、LiCoO2、LiMn2O4、LiNixCoyMnzO2の製造を行っており、独自の合成プロセスや共沈技術により、高い安全性を有した正極材製造を可能としている。

事業戦略 電池材料事業において、スマホ、パソコン向けを中心とした民生用の出荷量は減少したものの、車載、蓄電向けを中心とした産業用が増加しており、生産設備の増強を進める。

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑥-2 住友金属鉱山

企業名 住友金属鉱山

種類 リチウムイオン電池の正極材

用途 車載用、民生用

事業実績 <売上高>

• 企業全体では1兆円弱だが、材料事業で、2014年の売上高1,742億円、利益129億円

事業見通し • 世界の非鉄リーダー、日本のエクセレントカンパニーを目指し、2021年度に売上高1兆円、当期純利益1000億円を目標とする。(ニッケル15万トン、銅権益30万トン、金30トン、新規材料経常利益50億円)

また、電池材料事業に関しては、世界でのxEV用電池材料シェア25%以上を目標とする。

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

住友金属鉱山株式会社は、資源事業、精錬事業、材料事業の3つのコアビジネスを持ち、鉱物の探鉱から精錬、そして材料供給まで行っており、垂直的サプライチェーンに強みを持つ。

精錬技術に関しては、卓越した乾式・湿式精錬技術を持ち、純度の高い材料供給を可能としている。

競争力の源泉 材料供給だけでなく、探鉱から精錬まで自社で行っており、国内外で鉱山・精錬所を自社でオペレーションしている。

テスラと提携しているパナソニックへの正極材の供給。

事業戦略 二次電池の需要増加を見込み、2015年にニッケル酸リチウム増強のため総額200億円の設備投資を行う。

原料→プリカーサ→正極材料→リサイクルの総合事業により、顧客ニーズに対応する。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 864,077 847,897 808,540 830,546 921,334

営業利益 96,038 88,498 95,785 75,418 125,779

営業利益率 11.1% 10.4% 11.8% 9.1% 13.7%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

-200

800

1,800

2,800

3,800

4,800

5,800

6,800

7,800

8,800

9,800

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑦-1 日立化成

企業名 日立化成

種類 リチウムイオン電池の負極材

用途

事業実績 <売上高>

• 2015年の売上高は、約5,000億円

事業見通し • 2015年度には、売上高全体で6,000億円、営業利益率10%を目標とし、中でも蓄電デバイスに関しては、1,100億円を目指す。

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

日立化成は、半導体用材料化から、基板材料、樹脂材料、無機材料などの製造とともに、自動車部品や蓄電デバイス・システムなどの先端部品や・システムまで製造しており、エレクトロニクス関連部品を幅広く提供している。

世界No.1シェアであるリチウムイオン電池用負極材だけでなく、蓄電デバイス・システム製造も行っており、シナジーが見込める。

競争力の源泉 日立化成のリチウムイオン電池用負極材は粒子内部に多数の細孔を有する球塊状の人造黒鉛であり、このユニークな構造により、高容量かつ放電不可特性に優れたリチウムイオン電池を実現。また、低温でも高い充放電効率を示し、寒冷地での使用にも適している。

事業戦略 蓄電デバイス事業に関しては、将来の主力事業として、グローバル成長加速、2016年度以降の本格成長に向けた盤石な事業基盤を確立させる。

2011年に、鉛蓄電池大手の新神戸電機を360億円を用いて完全子会社化したことにより、電池素材の開発スピードを高める。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 497,452 473,069 464,655 493,766 533,955

営業利益 43,471 24,495 23,559 27,775 35,144

営業利益率 8.7% 5.2% 5.1% 5.6% 6.6%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7%

8%

9%

10%

-200

800

1,800

2,800

3,800

4,800

5,800

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑦-2 三菱化学

企業名 三菱化学

種類 リチウムイオン電池の負極材、電解液

用途

事業実績 <売上高>

• 2015/03期での売上高は、1.9兆円

事業見通し • 三菱化学が子会社として含まれる三菱ケミカルHDでは、2015年に売上高3兆6,563億円、営業利益1,657億円であったが、2015年度には、2,800億円を目指す。

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

二次電池に必要な正極材以外の、負極材、セパレーター、電解液の事業を持つ。(正極材は2014年に撤退)

・リチウムイオン電池用負極材「MPG(天然黒鉛系)」、「ICG(人造黒鉛系)」

MPGは急速充放電に優れており、ICGは高容量で優れた寿命特性を有している。

・電解液「ソルライト」

リチウムイオン電池向けを主用途とし、リチウムイオン一次電池、アルミ電解コンデンサーなどに使用される有機溶媒系電解液。機能性添加剤により、電池性能の大幅な向上が可能。

競争力の源泉 リチウムイオン電池に必要な主要部材を正極材以外すべて製造しており、リチウムイオン電池の性能向上にあらゆる面から取り組むことができる。(正極材についても製造は行っていないが、正極材研究開発所は他部材支援のため存続)

事業戦略 リチウムイオン電池の電解液と負極材を手掛ける三菱化学と、セパレータを手掛ける三菱樹脂、また同じく化学系の三菱レイヨンの3社統合を2017年4月をめどに検討。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 2,019,5 2,080,9 1,961,8 2,159,6 1,942,9

営業利益 88,077 23,077 4,208 23,078 19,435

営業利益率 4.4% 1.1% 0.2% 1.1% 1.0%

0%

1%

1%

2%

2%

3%

3%

4%

4%

5%

5%

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑧-1 宇部興産

企業名 宇部興産

種類 リチウムイオン電池の電解液、セパレータ

用途

事業実績 <売上高>

• 2015/03期での売上高は、6,400億円

事業見通し • 宇部興産は主要数値目標として、2015年度には営業利益550億円以上、自己資本2,700億円以上を目指す。

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

リチウム電池の電解液の製品名は「ピュアライト」であり、高純度溶剤や炭酸ジメチルなどをもとに電解質を混合したものである。

宇部興産は基礎原料から一貫生産で、電池の長寿命化を図っている。電解液の溶媒の一つである炭酸ジメチルを自社技術事業化しているのが特徴。

競争力の源泉 宇部興産は、リチウムイオン電池に必要な主要部材の電解液とセパレータを製造・販売しており、電解液市場においてシェアNo.1である。

また、ダウ社やTDK子会社など多くの企業と特許提携や合弁会社を設立している。

事業戦略 電解液:アメリカのダウ社との中国電解液合弁会社「AET張家港」が2013年6月より稼働。

セパレータ:リチウム電池用セパレータの生産能力を4割増強予定。宇部ケミカル工場・堺工場の設備の再構築と新規設備の設置を段階的に行う。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 616,000 638,600 626,000 650,500 641,700

営業利益 44,300 46,000 29,900 24,400 24,100

営業利益率 7.2% 7.2% 4.8% 3.8% 3.8%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7%

8%

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑨-1 旭化成イーマテリアルズ

企業名 旭化成イーマテリアルズ

種類 リチウムイオン電池のセパレータ

用途

事業実績 <売上高>

• 旭化成イーマテリアルズが含まれる旭化成エレクトロニクスセグメントの売上高を記載

事業見通し • 旭化成のエレクトロニクスセグメントは2015年度に1,610億円、営業利益165億円を見込む。

電池事業としては、民生向け事業の拡大と車載向け需要の獲得を目標とする。

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

旭化成イーマテリアルズは、旭化成株式会社のグループ関連会社であり、旭化成(株)のエレクトロケミカル事業を集約した会社である。旭化成イーマテリアルズで製造したナノエレクトロニクス・エネルギー用材料は、旭化成の電気事業などへた事業へのシナジーが大きい。

競争力の源泉 「ハイポア」というリチウムイオン電池のセパレータに用いられている旭化成のポリオレフィン製平膜を製造。旭化成の平膜「ハイポア」は約25~数百μmの膜厚と0.05~0.5μmの微小孔を持つ高機能平膜。

事業戦略 旭化成は2015年2月にセパレータ用などの高分子ポリマー膜メーカーを製造するアメリカのポリポア社電池材料事業を約2600億円で買収を行う。

2015年9月に湿式リチウムイオン電池セパレータを年産3.5億平方メートル体制への増強に向け、約50億円を投資する。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 159,066 146,721 131,569 145,485 150,932

営業利益 14,258 6,423 2,824 14,239 14,300

営業利益率 9.0% 4.4% 2.1% 9.8% 9.5%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑨-2 東レバッテリーセパレータフィルム

企業名 東レバッテリーセパレータフィルム

種類 リチウムイオン電池のセパレータ

用途

事業実績 <売上高>

• 東レバッテリーセパレータフィルムが含まれる東レプラスチック・ケミカル事業のの売上高を記載

事業見通し • グリーンイノベーション事業として掲げる1部門であるリチウムイオン電池事業では、アジアを中心とした成長市場での事業拡大を目指し、売上高4,500億円、営業利益350億円を目標とする。

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

東レバッテリーセパレータフィルムは、東レ株式会社の子会社であり、リチウムイオン二次電池向けバッテリーセパレータフィルムのパイオニア&グローバルサプライヤーである。

また、東レはSi系材料の負極材料やポリイミド・アミド系樹脂のバインダー、東レエンジニアリングでの電池製造設備や東レリサーチセンターでの分析開発技術など、リチウムイオン電池における最先端な技術を持つ。

競争力の源泉 リチウムイオン電池セパレータ2位企業であり、耐熱微多孔フィルムとOPP微多孔フィルムなどの、高透過性、薄膜・高強度、優れた熱的安定性・安全機構など、東レBSFが持つ高度な製膜技術を持つ。(膜厚5~25μm)

事業戦略 東レは2015年中に韓国LG化学からリチウムイオン電池の主要材料であるセパレーターの工場を約30億円で取得し、世界シェア首位の旭化成を追う体制を整える。また韓国・亀尾の工場でも100億円を投じて、設備の増強を進める。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 408,320 425,644 423,781 503,293 496,400

営業利益 27,108 27,381 18,302 18,010 23,900

営業利益率 6.6% 6.4% 4.3% 3.6% 4.8%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7%

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リチウムイオン電池 主要企業リスト⑩~⑫

リチウムイオン電池のセル・パッカーレイヤーにおける主要企業を下記リスト⑩~⑫に整理した。

リスト⑩ セル リスト⑪ パッカー リスト⑫ セル・パッカー

企業名 本 社 企業名 本 社 企業名 本 社

新神戸電機 日本 新普[SIMPLO] 中国 Samsung SDI 韓国

順達[Dynapack] 中国 LG Chemical 韓国

加百裕[Celxpert] 中国 パナソニック 日本

トーカドエナジー 日本 ソニー 日本

ケイテック 日本 天津力神[Lishen] 中国

東洋システム 日本 オートモーティブエナジーサプライ 日本

Tesla Motors 米国 東芝 日本

Deutsche Accumotive ドイツ 日立マクセル 日本

Bosch ドイツ NEC 日本

ニチコン 日本 エリーパワー 日本

出所)各種資料に基づき三菱総研作成

詳細企業分析有

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リチウムイオン電池 主要企業リスト⑪~⑫×製品用途

リチウムイオン電池のセル及びセル・パッカー企業と製品用途の組合せを下表に整理した。

リスト⑪~⑫×製品用途

企業名 本社 系 統 需要家 民 生 車 載

長周期対策 短周期対策 工場・ビル 集合住宅

家 庭 緊急時 災害対策

パソコン スマートフォン 携帯電話

H V PHV E V

Samsung SDI 韓国 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ - ○ ○

LG Chemical 韓国 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

パナソニック 日本 - - ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

ソニー 日本 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ - - -

天津力神[Lishen] 中国 - - - - - ○ ○ - - -

オートモーティブエナジーサプライ 日本 - - - ○ - - - ○ - ○

東芝 日本 ○ ○ ○ ○ ○ - - - ○ ○

日立マクセル 日本 - - - ○ - ○ - - - -

NEC 日本 ○ ○ ○ ○ ○ - - - - -

エリーパワー 日本 ○ - ○ ○ ○ - - - - -

新普[SIMPLO] 中国 - - - - - ○ ○ ○ ○ ○

順達[Dynapack] 中国 - - - - - ○ ○ ○ - -

加百裕[Celxpert] 中国 - - - ○ - ○ ○ - - -

トーカドエナジー 日本 - - ○ ○ - ○ ○ - - -

ケイテック 日本 - - - - - ○ - - - -

東洋システム 日本 - - - - - ○ - - - -

Tesla Motors 米国 - - - ○ - - - ○ ○ ○

Deutsche Accumotive ドイツ - - - - - - - ○ ○ ○

Bosch ドイツ - - - - - - - ○ ○ -

ニチコン 日本 - - ○ ○ ○ - - - - -

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑪-1 トーカドエナジー

企業名 トーカドエナジー

種類 リチウムイオン電池

用途 需要家用、系統用

事業実績 <売上高>

• 非上場により、事業実績のデータなし

事業見通し

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

トーカドエナジーは創業以来、三洋電機製充電式電池をはじめ、様々な電子デバイスの販売代理店として幅広い業界に部品や情報を提供。

SEP事業(電池事業)だけでなく、ESP事業(電源装置事業)、PIP事業(カメラ周辺機器事業)を持ち、技術商社として強みを持つ。

競争力の源泉 製品開発から生産までワンストップビジネスで行っており、顧客のニーズに応えるために、営業と開発が一体となって、ニッチ分野の高難易度・小ロット生産を行っている。

事業戦略 電池ビジネスの歴史の中で、さまざまなフィールドの顧客とのコミュニケーションを築き、独自の設計、生産をすることにより蓄積された膨大なノウハウを生かし、クライアントコミュニケーションの最前線に立つことで、ニーズをとらえた先端テクノロジーの最適化を行う。

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リスト⑪-2 ケイテック

企業名 ケイテック

種類 リチウムイオン二次電池

用途 リチウムイオンバッテリー評価

事業実績 <売上高>

• 非上場により、事業実績のデータなし

事業見通し

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

ケイテックは受託生産企業(EMS)であり、製品構想、施策立ち上げ等を含む開発段階からの設計サービスから、高度な信頼性評価技術や生産技術支援を伴う生産サービスを提供。

また、アフターサービスのみならず、部材調達コストダウン、製品化や新規事業マーケティングといった付加価値も提供。

競争力の源泉 三洋電機が約15%の株を保有。

リチウムイオン二次電池に関わる部分では、リチウムイオンバッテリー評価専用のラボを持ち、充放電サイクル試験などを行う。

製造におけるテスター開発や顧客の後方における製品立ち上げそのものへの技術支援等も積極的に行う。

事業戦略 顧客の課題をあらゆる面で解決するソリューション企業であるために、受託生産企業(EMS)を超えた活動領域を目標とする。

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リスト⑪-3 東洋システム

企業名 東洋システム

種類 リチウムイオン電池

用途 二次電池の試験装置、需要家用

事業実績 <売上高>

• 2014年10月の決算では、売上高42億円

事業見通し • 2015年10月決算では、46億円を予想する。

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

二次電池の充放電評価装置及び安全性評価装置などの、二次電池に関する試験装置の幅広いラインナップを持つ。

東洋システムでは、充放電評価装置、安全性評価装置、電池試作装置で培った技術、経験を生かし、電池応用製品として、顧客のニーズに合わせてカスタマイズ化した電池パックをOEM供給。

競争力の源泉 携帯電話などの二次電池の試験装置で国内首位。主力は充放電評価装置、電池試作設備など。

再生可能エネルギー利用の普及やハイブリッド車の生産拡大が寄与し、受注好調続く。

事業戦略 2015年1月に横浜事業所、関西評価センターを開設。

今後、市場の拡大が見込めるリチウム電池のための評価装置として、小型化や高性能化を進めることで、世界の電池開発に欠かせない存在を目指す。

2010 2011 2012 2013 2014

売上高 2,690 4,354 4,616 3,881 4,155

営業利益

営業利益率 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑪-4 ニチコン

企業名 ニチコン

種類 リチウムイオン電池

用途 系統用、車載用

事業実績 <売上高>

• 2015年3月期決算では、売上高1,073億円

事業見通し • 「創エネ」「蓄エネ」「省エネ」に対するニーズを満たすために、エネルギー事業に力を入れ、さらなる成長を目指す。

価格設定 定置用リチウムイオン電池

• [家庭用]

2.5kW/7.2kWh 200,278(円/kWh)

2.5kW/14.4kWh 180,139(円/kWh)

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

アルミ電解コンデンサに強みを持つが、エネルギー分野の需要の拡大を見込み、蓄電池システムに注力。

• V2Hシステム「EVパワーステーション」

電気自動車を家庭用蓄電池として活用するトータルソリューションを提供。

• 省スペース型EV用急速充電器

10~50kW出力機種や課金対応可能なタイプなど幅広いラインナップを提供。

競争力の源泉 アルミ電解など各種コンデンサー総合経営で世界有数のメーカー。

また、「トップノッチ経営」を掲げ、品質、コスト、納期、サービス、技術のあらゆる面でトップノッチを目指す。その実現のために、コンデンサ事業本部と回路製品事業を統括するNECST事業本部の2事業本部体制を確立。

事業戦略 2015年5月に、電源装置の製造・販売を手掛けるユタカ電機製作所の買収を発表し、蓄電システム事業の強化を図る。

また、生産体制の集約化を図るとともに、欧米やアジア諸国で販売体制を強化。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 105,914 107,658 90,813 104,689 107,294

営業利益 5061 2,134 -3,359 4,215 3,877

営業利益率 4.8% 2.0% -3.7% 4.0% 3.6%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

-200

0

200

400

600

800

1,000

1,200

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑪-5 テスラ

企業名 テスラ

種類 リチウムイオン電池

用途 系統用、需要家用

事業実績 <売上高>

• 非上場により、事業実績のデータなし

事業見通し • 電気自動車が主力商品であるが、蓄電池及びエネルギー利用にも注力しており、蓄電池生産工場であるギガファクトリの建設や蓄電池販売のテスラーエナジー(社内)を設けて蓄電池及び蓄電池システムの製造・販売を開始している。

価格設定 定置用リチウムイオン電池

• [家庭用] PowerWall

2kW/ 7kWh 51,429円/kWh

2kW/ 10kWh 42,000円/kWh

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

電気自動車を製造、販売しているTesla MotorsやPV発電システムのリースを実施しているSolarCityとのシナジーが発揮されている。例えば、家庭用電池(Powerwall)は兄弟会社であるSolarCity社を中心に市場投入し、産業用電池(PowerPack)はSTEM社などとアライアンスを組んで市場投入を始めている。

競争力の源泉 販売面においては、蓄電池システムのリース(Powerwallの場合、初期費用:$1,500、月額利用料金:$15)を行っており、3年以上の保有で販売価格を上回る計算となるほか、Solar Cityでは、Bank of AmericaやUS Bank、Deutsche

Bank等との融資契約を締結しており、資金調達に長けていると言える。

事業戦略 蓄電池ビジネスはギガファクトリが運用開始する前にも関わらず戦略的な価格設定をしたため事業としては苦しい状況になっている。具体的には生産が追い付かず、在庫が無いため投入市場や販売チャネルを絞っている。この価格戦略はこれまで蓄電池の導入が困難であった分野や用途に蓄電池活用の可能性を示せた意味で非常に重要であり、大きな反応があった模様。

注 上記価格は豪州での販売価格 1USD=120円で計算。PCSは別売

出所)企業ヒアリング、各種公開資料に基づき三菱総研作成

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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 147

リスト⑫-1 Samsung SDI

企業名 Samsung SDI

種類 リチウムイオン電池

用途 ESS用(系統用)、需要家用、車載用

事業実績 <売上高>

• Samsung SDIIで6,000億の売上高だが赤字

事業見通し • 2015年に太陽電池の生産能力を年間300万kW拡大を目指す。また同年までに、約1650億円を投資し、シェア8%、売上高約2,600億円を目指す。

価格設定 定置用リチウムイオン電池

• [家庭用]

2kW/3.6kWh 233,928(円/kWh)

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

Samsungは、電子、機械、化学、金融保険、建設など多くの関連会社を持ち、リチウムイオン電池の製造・販売を行っているSamsung SDIから、電池が用いられる分野への供給(特にスマートフォン)が可能であり、垂直的シナジーが見込める。

また、車載用リチウム電池に力を入れており、2015年に、中国の自動車部品メーカーである安慶環新集団と合弁会社を設立し、西安に電気自動車バッテリー生産工場を作る。

競争力の源泉 低価格高容量である小型リチウム電池に強みを持っていたが、今後の需要が見込める電気自動車や系統用蓄電システムの強化を進めている。

事業戦略 2015年にグループ会社のSamsung精密化学から電池部材事業を約19億円で買収し、電池の一貫生産体制を強化。

また、同年にカナダのティア1サプライヤ・Magna International

傘下でオーストリアに本拠を置くMagna Styerの車載リチウムイオン電池パック事業の買収を発表。

2014年には、シャープと太陽電池事業で提携。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 543,491 577,389 612,104 363,630 580,607

営業利益 30419.9 11,663 19,820 -1672.1 -17762.6

営業利益率 5.6% 2.0% 3.2% -0.5% -3.1%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

-1,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

(億円)

注 上記価格は欧州での販売価格 1€=130円で計算

出所)http://www.europe-solarstore.com/samsung-sdi-

ess-lithium-ion-storage-3-6-kwh.html

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑫-2 LG Chemical

企業名 LG Chemical

種類 リチウムイオン電池

用途 ESS用(系統用)、需要家用、車載用

事業実績 <売上高>

• LG化学全体の売上高は約2.5兆円

事業見通し • LG化学は、2020年に中国で電気自動車バッテリー事業売上1兆5,000億ウォン、シェア25%以上の達成を目標とする。

価格設定 定置用リチウムイオン電池

• [家庭用]

5kW/6.4kWh 112,198(円/kWh)

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

LGグループは、LG化学、LGエレクトロニクス、LG商事、LGディスプレイなど多くの関連会社を持ち、リチウムイオン電池の製造・販売を行っているLG化学から、携帯電話の製造を行っているLGエレクトロニクスへの供給といった垂直的シナジーが見込める。

また、車載用リチウム電池に力を入れており、南京への電気自動車バッテリー生産工場を竣工するなどにより、10万台分を超える生産能力(LG化学の世界生産能力の40%を超える)を持つ。

競争力の源泉 Apple社へのラミネート型リチウムイオン電池の供給量が多く、出荷も好調。低価格戦略を取ることで市場シェアを拡大。

また、自動車メーカー大手数社に対し、単独供給の決定により、安定的収益源としている。

事業戦略 ヒュンダイ自動車の2009年下半期から量産開始する、アバンテのハイブリットカーにリチウムポリマー電池の単独供給が決定。

GMの電気自動車用リチウムイオンバッテリーの2010年から6

年間の単独供給が決定。

また、電気自動車メーカーTesla社への供給が決定。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 20,557 23,939 24,559 24,433 23,836

営業利益 2,979 2,976 2,017 1,759 1,296

営業利益率 14.5% 12.4% 8.2% 7.2% 5.4%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

0

50

100

150

200

250

300

(100億円)

注 上記価格は豪州での販売価格 1AUD=81円で計算。PCSは別売り

出所)http://www.rpc.com.au/catalog/lg-chem-lithium-ion-battery-

6400wh-48v-p-4164.html

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑫-3 パナソニック

企業名 パナソニック (オートモーティブ&インダストリアルシステムズ)

種類 リチウムイオン電池

用途 需要家用、車載用、系統用

事業実績 <売上高>

• 2015年の蓄電池事業を持つオートモーティブ&インダストリアルシステムズの売上は約2.8兆円程度

事業見通し • ICT分野において販売減が見込まれるものの、車載電池や最エレクトロニクス、FAや蓄電システムなど車載・産業分野の販売増加により、2015年度には売上高28,350億円、営業利益1,164億円、営業利益率5.0%を見込む。

• 全社において車載事業では2018年度に売上高2.1兆円を目指す。

価格設定 定置用リチウムイオン電池

• [家庭用] 創蓄連携システム

5.5kW/5.6kWh 217,143(円/kWh)

5.5kW/11.2kWh 190,000(円/kWh)

• [公共・産業用] リチウムイオン蓄電システム

10kW/15kWh 180,400(円/kWh)

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

パナソニックは、アプライアンスセグメント、エコソリューションズセグメント、AVCネットワークスセグメントなど、多くのセグメントを持ち、それらの開発資産を活用しつつ、開発プラットフォームの標準化・横展開などを進め、開発の効率性を推進している。

また、車載事業で電池事業だけでなく、インフォテインメントやセンシングデバイスなどの事業を展開しており、車載事業における幅広いサービスが可能である。

競争力の源泉 パナソニックは、2014年にテスラ社の大規模電池工場「ギガファクトリー」内でリチウムイオン電池の生産を開始し、大量生産・一貫生産による効率化やロジスティクスコスト削減を図る。

全種類の電池を展開する幅広いラインナップに加え、高容量・高信頼性が認められたリチウム電池に強みを持つ。

事業戦略 テスラ社と連携して、北米リチウムイオン新会社設立やフィコサ社との資本業務提携合意などの、需要の拡大が見込める車載・産業分野での成長に向けた積極的な開発投資や、設備の拡大を行うとともに、ICT分野などの不採算事業の撤退・縮小による製品ミックスの改善を図る。

注 2013年に蓄電池事業を担うエナジーセグメントは、

他セグメントと統合しオートモーティブ&インダストリアルシステムズに

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 637,015 614,885 2,737,6042,721,7942,782,537

営業利益 711 -15,232 29,458 69,150 105,677

営業利益率 0.1% -2.5% 1.1% 2.5% 3.8%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑫-4 ソニー

企業名 SONY (デバイスソリューションズ事業)

種類 リチウムイオン電池

用途 系統用、需要家用

事業実績 <売上高> 電池事業を含む「デバイス事業」のみ

• 電池事業単体では、2015年決算では減損321億円

事業見通し • 一時は、電池事業の売却も検討していたが、円高修正や需要の増加を背景に成長事業と位置付ける。

電池事業を持つデバイス事業は、成長事業と位置付け、イメージセンサーを中心に利益成長を見込む。

ただし、現状としては他事業への応用のための研究開発という側面が強く、単事業での利益を見込んではいない。

価格設定 定置用リチウムイオン電池

• [公共産業用]

1kW/1.1kWh 410,909(円/kWh)

1kW/2.2kWh 299,091(円/kWh)

1kW/3.3kWh 257,576(円/kWh)

1kW/5.6kWh 271,500(円/kWh)

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

SONYは、多くのエレクトロニクス製品のラインナップを持つため、電池事業の強化は他事業への活用につながる。

特にスマートフォンをはじめとする携帯機器成長のためには、リチウムイオン電池の強化は必要であり、研究開発に注力。

近年は、スマートフォンだけでなく、ウェアラブル機器やフレキシブルデバイスへの応用を想定した小型大容量電池の研究開発も行う。

競争力の源泉 ソニーの持つエレクトロニクス製品を支える小型大容量リチウム電池に強みを持ち、今後も伸ばしていく方向性である。

また、電解質に固定剤用を活用した全固定電池の開発など、フレキシブルデバイスへの搭載を想定した研究開発を進める。

事業戦略 2014年にカナダ最大の電力会社ハイドロ・ケベック社と電力系統用の大規模システムの研究開発を行う合弁会社を設立。

電池事業を成長事業と位置付け、2014年に設計開発機能を郡山事業所に集約。

注 デバイス部門には、半導体やセンサーなどが含まれる

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 1,151,8 1,026,5 848,575 772,979 927,080

営業利益 34,893 -22,126 43,895 -12,420 89,031

営業利益率 3.0% -2.6% 5.7% -1.3% 9.6%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

-2,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑫-5 オートモーティブエナジーサプライ

企業名 オートモーティブエナジーサプライ

種類 リチウムイオン電池

用途 車載用、ESS(系統用)、需要家用

事業実績 <売上高>

• 2015年度の売上高は、約489億円

事業見通し

価格設定 • バッテリー単体での販売は行っておらず、AESCでは顧客の用途に合わせたパックシステムとして販売。

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

オートモーティブエナジーサプライは、日産とNECによる合弁会社であり、車載用の高性能リチウム電池の開発、製造、販売に強み持つ。

特に日産リーフ向けの車載電池の開発で培った技術力を生かし、ポータブル蓄電池などにも応用。

出資比率は以下の通りである。

日産自動車株式会社 51%

日本電気株式会社 42%

NECエナジーデバイス株式会社 7%

競争力の源泉 日産とNECによるリチウムイオン電池のメーカーであり、NECのラミネート型電池セルの技術と日産の電池自動車用の電池モジュール・パックの技術により量産化を実現。

事業戦略 日産自動車が、電気自動車用の電池にLG化学の電池を採用しようとしていることもあり、独占供給が危ぶまれている。

そのため、災害時やレジャー時に用いるような一般家庭用のポータブル蓄電池などにも力を入れる。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 16,656 62,212 43,804 44,213 48,946

営業利益

営業利益率 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

700

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑫-6 東芝

企業名 東芝 (電力・社会インフラ事業グループ)

種類 リチウムイオン電池

用途 系統用、需要家用、車載用

事業実績 <売上高>

• 不正会計問題により、現在セグメント別の財務データなし

• インタビュー調査により確認

事業見通し • 蓄電池事業を持つ電力・社会インフラ事業グループは、2014

年度に売上高2.0兆円だったものを、2016年度に売上高2.3

兆円を目指す。

価格設定 定置用リチウムイオン電池

[家庭用] 定置式蓄電システムENEGOON

2.5kW/4.4kWh 232,727(円/kWh)

3kW/ 6.6kWh 208,613(円/kWh)

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

競争力の源泉 東芝のSCiBTMは安全、長寿命、急速充電が可能なリチウムイオン電池(バッテリー)であり、小規模のものから大規模のものまで要素に合わせた製品群を持つ。

事業戦略

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑫-7 日立マクセル

企業名 日立マクセル

種類 リチウムイオン電池

用途 需要家用、系統用、車載用

事業実績 <売上高> 蓄電池事業を含む「エネルギー」部門のみ

・日立マクセル全体の売上高は1560億円

事業見通し • 自動車市場向けのコイン形のリチウム電池や光学部品の成長市場の強化や早期退職制度を含めた事業構造改革等の施策により、2017年度には売上高1,700億円、営業利益120億円、営業利益率7%超を見込む。

価格設定 定置用リチウムイオン電池

• [家庭用] エナジーステーション

0.8kW/1.4kWh 367,143(円/kWh)

太陽光発電システム連携付

0.8kW/1.4kWh 388,571(円/kWh)

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

日立マクセルは、住生活・インフラ分野を持ち、家庭用蓄電池システムの分野にも応用している。2015年発売の暮らしサポートHEMS「Hemlia」はエネルギーマネジメントシステムに加え、見守りによる高齢者/育児支援を実現。

競争力の源泉

リチウムイオン電池の中でも、小型やシート状の民生用電池において最先端の技術を持つ。。2015年にマルチコプター市場に参入し、国内有数のメーカーである(株)エンルートと共同で開発生産を行う。

事業戦略 リチウムイオン電池事業においては、民生用電池で培ってきた先進的技術を応用することにより、今後の需要拡大が見込まれるウェアラブル機器に適した小型やシート状の薄型電池など、様々な小型電池の開発を進める。

注 2011年の財務表データなし

日立により完全子会社化されていたため

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 25,443 22,298 38,988 37,721

営業利益 942 129 2,468 1,031

営業利益率 3.7% 0.6% 6.3% 2.7%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

(億円)

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑫-8 NEC

企業名 NEC

種類 リチウムイオン電池

用途 系統用、需要家用、車載用

事業実績 <売上高> 蓄電池事業を含む「その他」部門のみ

・NEC全体の売上高は2.9兆円

事業見通し • 中期経営計画として、(1)社会ソリューション事業への注力、(2)アジアへの注力、現地主導型ビジネスの推進、(3)安定的な財務基盤の構築などにより、2015年度には、売上高32,000億円、営業利益1,500億円、営業利益率4.7%を目指す。

価格設定 定置用リチウムイオン電池

• [家庭用] 小型蓄電システム

2kW/5.53kWh 222,785(円/kWh)

3kW/7.8kWh 201,026(円/kWh)

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

NECは、エネルギーにおけるトータルソリューションの提供を目標としており、IoT技術を活用した、蓄電システム、エネルギーマネジメトやEV・PHV充電インフラなど様々なサービスを提供。

特に、NECの蓄電池システムは、系統連系機能とクラウドを介したエネルギーマネジメト機能を備えており、系統電力網や太陽電池に加え、燃料電池とも連携を達成し、需要家の電力自立化に貢献。

競争力の源泉 [小型蓄電システム]

小型蓄電システムと太陽光発電システムをセットで活用することで効率的な蓄電システムを実現。

[電力事業者向け大型蓄電システム]

GSS蓄電ソリューション、PCS出力変換システム、再生可能エネルギーの需給バランス調整に強み。

事業戦略 日産自動車株式会社と共同開発したリチウムイオン電池は、EV「日産リーフ」に採用、2011年7月には家庭内電力を自律制御できるリチウムイオン蓄電池搭載の家庭用蓄電池システムを商品化。

2014年にはNorthern Powergrid(英電力会社)に欧州最大クラスの大容量リチウムイオン蓄電システムを納入。

2011 2012 2013 2014 2015

売上高 244,732 322,412 685,697 525,921 374,145

営業利益 7288 11,141 16,992 -1,398 4,023

営業利益率 3.0% 3.5% 2.5% -0.3% 1.1%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

-1,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

(億円)

注1 蓄電池事業は「その他」の部門に含まれる

注2 2012年度連結会計年度より、セグメント区分の変更あり

注3 「その他」部門の中のメイン事業は蓄電池

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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リスト⑫-9 エリーパワー

企業名 エリーパワー

種類 リチウムイオン電池

用途 系統用、需要家用

事業実績 <売上高>

• 2014/03期での売上高は、4,767(百万円)

• 非上場により、事業実績のデータなし

事業見通し • 米国の家庭用太陽光発電の電力変換装置を手掛けるエンフォーズ・エナジーとの供給提携などを背景に、2017年に100

億円程度の売上高を見込む。

価格設定 定置用リチウムイオン電池

• [家庭用] 太陽光/蓄電ハイブリットシステム

1kW/2.5kWh 264,000(円/kWh)

3kW/6.2kWh 211,613(円/kWh)

• [公共・産業用]

10kW/14.9kWh 177,450(円/kWh)

関連ビジネス(事業ポートフォリオ、他事業とのシナジー)

大型のリチウム電池及び蓄電システムの開発、製造、販売

を行う。

特に、太陽光電池と蓄電池システムを組合せたハイブリットシステムに強み。

また、HEMS(ホーム・マネジメント・システム)との連携により、充電・放電の状態、蓄電池の残容量なども一目でわかり電力の見える化を実現。

競争力の源泉 吉田社長を中心とした慶應義塾大学研究室のメンバーで設立しており、蓄電システムに関わる最先端の研究開発に強みを持つ。ポータブル蓄電システム「エリーワン」が、2014年度「グッドデザイン賞ベスト100」及び「未来づくりデザイン賞」を受賞。2015年には、充電速度が既存品に比べて6倍のリチウムイオン電池を開発。

事業戦略 提携先の米エンフォーズ・エナジーと蓄電池の供給契約を背景に、2016年度にリチウムイオン蓄電池の生産能力を4割引き上げる。

日本国内においても、川崎工場に約30億の投資を行い、生産体制の強化を図る。また、2018年をめどに関西での新工場設立を検討。

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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≪参考≫蓄電池システム価格のメーカ比較

出所)SII資料、公開資料に基づき三菱総研作成

家庭用蓄電池システムのkWh当たり平均価格 産業用蓄電池システムのkWh当たり平均価格

家庭用蓄電池システムのkWh当たり平均価格は248,223円、産業用蓄電池システムのkWh当たり平均価格は208,520円である。

家庭用蓄電池システムの価格が高いのは、全体に占めるPCSの価格が高いことが原因であると考えられる。

家庭用蓄電池システムにおいて、日立マクセルの価格が他と比較して高くなっているのは、蓄電池重量が30kg以下となるような小型化を図っていることが原因であると想定される。

産業用蓄電池システムにおいて、ソニービジネスソリューションの価格が他と比較して高くなっているのは、小型で全体に占めるPCSの価格が高いことが原因であると想定される。

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

400,000

kW

h当たり単価(円)

パナソニック 東芝ライテック エリーパワー

日本電気(NEC) 日立マクセル 全社平均

参考値

※LG Chemicalはモジュールのみ

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≪参考≫蓄電池システム価格のメーカ比較 詳細版(1/8)

出所)SII資料、公開資料に基づき三菱総研作成

メーカ 用 途 製品名称 型 番 蓄電容量

(kWh)

定格出力

(Wh)

価 格

(円) 付属品 保証・サービス

パナソニック 住宅用 創蓄連携システム PLJ-25522KN1 5.6 5,500 1,216,000

パワーステーション本体

LJP25522K、LJP25522K004

パワーステーションベース

LJP522K、LJP522K004

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156004

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

パナソニック

住宅用

(特定用途向) 創蓄連携システム PLJ-255228KN1 5.6 5,500 1,216,000

パワーステーション本体

LJP255228K、LJP255228K004

パワーステーションベース

LJP5228K、LJP5228K004

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156004

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

パナソニック 住宅用 創蓄連携システム PLJ-25532KN1 5.6 5,500 1,216,000

パワーステーション本体

LJP25532K、LJP25532K050

パワーステーションベース

LJP533K、LJP533K050

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156050

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

パナソニック 住宅用

(特定用途向) 創蓄連携システム PLJ-255328KN1 5.6 5,500 1,216,000

パワーステーション本体

LJP255328K、LJP255328K050

パワーステーションベース

LJP5338K、LJP5338K050

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156050

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

パナソニック 住宅用 創蓄連携システム PLJ-25533KN1 11.2 5,500 2,128,000

パワーステーション本体

LJP25533K、LJP25533K050

パワーステーションベース

LJP533K、LJP533K050

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156004

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 158

≪参考≫蓄電池システム価格のメーカ比較 詳細版(2/8)

出所)SII資料、公開資料に基づき三菱総研作成

メーカ 用 途 製品名称 型 番 蓄電容量

(kWh)

定格出力

(Wh)

価 格

(円) 付属品 保証・サービス

パナソニック 住宅用

(特定用途向) 創蓄連携システム PLJ-255338KN1 11.2 5,500 2,128,000

パワーステーション本体

LJP255338K、LJP255338K050

パワーステーションベース

LJP5338K、LJP5338K050

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156004

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

パナソニック 住宅用 創蓄連携システム PLJ-25522K 5.6 5,500 1,186,000

パワーステーション本体

LJP255228K、LJP255228K004

パワーステーションベース

LJP5228K、LJP5228K004

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156004

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

パナソニック 住宅用

(特定用途向) 創蓄連携システム PLJ-255228K 5.6 5,500 1,186,000

パワーステーション本体

LJP255228K、LJP255228K004

パワーステーションベース

LJP5228K、LJP5228K004

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156004

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

パナソニック 住宅用 創蓄連携システム PLJ-25532K 5.6 5,500 1,186,000

パワーステーション本体

LJP25532K、LJP25532K050

パワーステーションベース

LJP533K、LJP533K050

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156050

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

パナソニック 住宅用

(特定用途向) 創蓄連携システム PLJ-255328K 5.6 5,500 1,186,000

パワーステーション本体

LJP255328K、LJP255328K050

パワーステーションベース

LJP5338K、LJP5338K050

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156050

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

Page 160: 蓄電池を活用した新たなエネルギー産業に関する調査蓄電池を活用した新たなエネルギー産業に関する調査 ... の <

Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 159

≪参考≫蓄電池システム価格のメーカ比較 詳細版(3/8)

出所)SII資料、公開資料に基づき三菱総研作成

メーカ 用 途 製品名称 型 番 蓄電容量

(kWh)

定格出力

(Wh)

価 格

(円) 付属品 保証・サービス

パナソニック 住宅用 創蓄連携システム PLJ-25533K 11.2 5,500 2,098,000

パワーステーション本体

LJP25533K、LJP25533K050

パワーステーションベース

LJP533K、LJP533K050

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156004

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

パナソニック 住宅用

(特定用途向) 創蓄連携システム PLJ-255338K 11.2 5,500 2,098,000

パワーステーション本体

LJP255338K、LJP255338K050

パワーステーションベース

LJP5338K、LJP5338K050

蓄電池ユニットLJB1156、LJB1156004

接続箱

点検お知らせサービス

10年間保証(蓄電池ユニット)、

15年保証(パワーステーション)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON ENG-B4420B3-N6 4.4 2,000 1,024,000

蓄電システム本体

蓄電パワコン

蓄電池本体(SCiB)

リモコン

6年間無償保証

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B6630A2-

N2 6.6 3,000 1,376,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B6630A2-

N3 6.6 3,000 1,376,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B6630A2-

N4 6.6 3,000 1,376,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 160

≪参考≫蓄電池システム価格のメーカ比較 詳細版(4/8)

出所)SII資料、公開資料に基づき三菱総研作成

メーカ 用 途 製品名称 型 番 蓄電容量

(kWh)

定格出力

(Wh)

価 格

(円) 付属品 保証・サービス

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B6630A2-

N5 6.6 3,000 1,376,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B6630A2-

N6 6.6 3,000 1,376,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B6630A2-

N7 6.6 3,000 1,376,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B4425A2-

N1 4.4 2,500 1,024,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B4425A2-

N2 4.4 2,500 1,024,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B4425A2-

N3 4.4 2,500 1,024,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B4425A2-

N4 4.4 2,500 1,024,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

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≪参考≫蓄電池システム価格のメーカ比較 詳細版(5/8)

出所)SII資料、公開資料に基づき三菱総研作成

メーカ 用 途 製品名称 型 番 蓄電容量

(kWh)

定格出力

(Wh)

価 格

(円) 付属品 保証・サービス

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B4425A2-

N5 4.4 2,500 1,024,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B4425A2-

N6 4.4 2,500 1,024,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B4425A2-

N7 4.4 2,500 1,024,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

東芝ライテック 家庭用 定置式蓄電システ

ムENEGOON

ENG-B6630A3-

N6 6.6 3,000 1,024,000

蓄電システム本体

コントローラー

蓄電池(SCiB)

電池チェックサービス(年に一度)

10年間保証(コントローラーは2年間保証)

エリーパワー 家庭用

太陽光/蓄電ハイブリッドシステム

パワーイエ6ハイブリッド

EPS-20H-200 6.2 5,500 1,312,000

パワーイエシックスハイブリット

リチウムイオン蓄電池ユニット

ハイブリットパワーコンディショナー

リモコン

見守りサービス

不明(10年の無償保証)

エリーパワー 家庭用

太陽光/蓄電ハイブリッドシステム

パワーイエ6ハイブリッド

EPS-20H-100 6.2 5,500 1,312,000

パワーイエシックスハイブリット

リチウムイオン蓄電池ユニット

ハイブリットパワーコンディショナー

リモコン

見守りサービス

不明(10年の無償保証)

エリーパワー 家庭用 定置型蓄電システ

ム パワーイエ6 EPS-11 6.2 3,000 1,312,000

蓄電システム本体

リモコン

見守りサービス

システムは3年、電池は10年の無償保証

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≪参考≫蓄電池システム価格のメーカ比較 詳細版(6/8)

出所)SII資料、公開資料に基づき三菱総研作成

メーカ 用 途 製品名称 型 番 蓄電容量

(kWh)

定格出力

(Wh)

価 格

(円) 付属品 保証・サービス

エリーパワー 家庭用 パワーイレ・プラス EPS-11 2.5 1,000 660,000 蓄電システム本体 見守りサービス

3年の無償保証

エリーパワー 家庭用 パワーイレ・プラス PPS-20 2.5 1,000 660,000 蓄電システム本体 見守りサービス

3年の無償保証

日本電気(NEC) 家庭用

(特定顧客向け) 小型蓄電システム

ESS-003007C1-

M5 7.8 3,000 1,568,000

蓄電システム本体

操作パネル

見守りサービス

最長15年保証

日本電気(NEC) 家庭用

(一般顧客向け) 小型蓄電システム ESS-003007C1 7.8 3,000 1,568,000

蓄電システム本体

操作パネル

見守りサービス

最長15年保証

日本電気(NEC) 家庭用 家庭用蓄電システ

ESS-H-

002006B2A 5.53 2,000 1,232,000

蓄電システム本体

操作パネル

システムコントローラー

見守りサービス

最長15年保証

日本電気(NEC) 家庭用 小型蓄電システム ESS-003007C0 7.8 3,000 1,602,000 蓄電システム本体

操作パネル

見守りサービス

最長15年保証

日立マクセル 家庭用 エナジーステーション

タイプC ES-C01 1.4 800 514,000

システム本体

(SES080C-014E)

ESコントローラー

(C1K-07UMM)

見守りサービス

① 蓄電システム本体:工事完了後10年(メーカー標準保証1年+9年延長保証)

② ESコントローラー:工事完了後2年(メーカー標準保証

1年+1年延長保証)

日立マクセル 家庭用 エナジーステーション

タイプC ES-C02 1.4 800 544,000

システム本体

(SES080C-014E)

ESコントローラー

(C1K-07UMM)

見守りサービス

① 蓄電システム本体:工事完了後10年(メーカー標準保証1年+9年延長保証)

② ESコントローラー:工事完了後2年(メーカー標準保証

1年+1年延長保証)

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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 163

≪参考≫蓄電池システム価格のメーカ比較 詳細版(7/8)

出所)SII資料、公開資料に基づき三菱総研作成

メーカ 用 途 製品名称 型 番 蓄電容量

(kWh)

定格出力

(Wh)

価 格

(円) 付属品 保証・サービス

日立マクセル 家庭用 エナジーステーション

タイプH ES-H01 1.4 800 514,000

システム本体(SES080H-

014E)

ESコントローラー(C1K-

07UMM)

見守りサービス

① 蓄電システム本体:工事完了後10年(メーカー標準保証1年+9年延長保証)

② ESコントローラー:工事完了後2年(メーカー標準保

証1年+1年延長保証)

日立マクセル 家庭用 エナジーステーション

タイプH ES-H02 1.4 800 544,000

システム本体(SES080H-

014E)

ESコントローラー(C1K-

07UMM)

見守りサービス

① 蓄電システム本体:工事完了後10年(メーカー標準保証1年+9年延長保証)

② ESコントローラー:工事完了後2年(メーカー標準保

証1年+1年延長保証)

パナソニック 公共・産業用 リチウムイオン蓄電

システム LJ-ME15A 15 10,000 2,706,000

蓄電システム本体

LJ-ME15A

蓄電池部×6台

LJ-ME15A2

パナソニック 公共・産業用 リチウムイオン蓄電

システム LJ-ME15BK 15 10,000 2,706,000

蓄電システム本体

LJ-ME15A

蓄電池部×6台

LJ-ME15A2

パナソニック 公共・産業用 リチウムイオン蓄電

システム LJ-MH20A 20 20,000 3,490,000

パナソニック 公共・産業用 リチウムイオン蓄電

システム PLJ-SF50AK 5 1,500 1,016,000

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≪参考≫蓄電池システム価格のメーカ比較 詳細版(8/8)

出所)SII資料、公開資料に基づき三菱総研作成

メーカ 用 途 製品名称 型 番 蓄電容量

(kWh)

定格出力

(Wh)

価 格

(円) 付属品 保証・サービス

東芝ITコントロールシステム

公共・産業用 蓄電システム BEM003-10K 9.9 10,000 1,844,000 蓄電システム本体 6年間無償保証

エリーパワー 公共・産業用

Power Storager

10 (パワーストレージャー・テン)

SPS010Y2-015C-

N3 14.9 10,000 2,644,000 蓄電システム本体

見守りサービス

保守契約は別途

エリーパワー 公共・産業用

Power Storager

10 (パワーストレージャー・テン)

SPS010Y2-030C-

N3 29.8 10,000 5,028,000 蓄電システム本体

見守りサービス

保守契約は別途

エリーパワー 公共・産業用

Power Storager

10 (パワーストレージャー・テン)

SPS010Y2-045C-

N3 44.7 10,000 7,412,000 蓄電システム本体

見守りサービス

保守契約は別途

エリーパワー 公共・産業用

Power Storager

10 (パワーストレージャー・テン)

SPS010Y2-060C-

N3 59.6 10,000 9,796,000 蓄電システム本体

見守りサービス

保守契約は別途

ソニービジネスソリューション

公共・産業用 業務用蓄電池 ESSP-3001/10 1.1 1,000 452,000 蓄電池本体 保証はオプション

ソニービジネスソリューション

公共・産業用 業務用蓄電池 ESSP-3002/10 2.2 1,000 628,000 蓄電池本体 保証はオプション

ソニービジネスソリューション

公共・産業用 業務用蓄電池 ESSP-3002/14P 2.2 1,000 658,000 蓄電池本体 保証はオプション

ソニービジネスソリューション

公共・産業用 業務用蓄電池 ESSP-3003/14P 3.3 1,000 850,000 蓄電池本体 保証はオプション

ソニービジネスソリューション

公共・産業用 業務用蓄電池 ESSP-3005/18P 5.6 1,000 1,218,000 蓄電池本体 保証はオプション

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リチウムイオン電池 製造コスト比較 -韓国の蓄電池産業ー

韓国では人件費、地価・事務所賃料、公共料金の価格が日本よりも安価であり、製造コストが抑えられる。

2012年頃までウォン安により韓国製蓄電池はコスト競争力があったが、現在は円安により、日本企業と比較したときの為替による価格競争力は ほとんどないものとみられる。

また、政府の製造業産業支援策としては、R&D投資額(対GDP比)の増加、「製造業革新3.0戦略」の一環としてスマート工場の建設に向けた 投資を行うといった動きも見られる。(詳細は後ろの参考スライドを参照)

出所)JETRO、電力中央研究所

0.060

0.070

0.080

0.090

0.100

0.110

0.120

ウォン

円-ウォン価格推移

円/1

ウォン

韓 国

(ソウル)

日 本

(東 京)

日 本

(名古屋)

製造業人件費

(月額)

ワーカー (一般工)

1,729 2,373 2,305

エンジニア (中堅技術者)

2,536 3,147 2,969

中間管理職 (課長クラス)

3,316 4,227 4,128

地価・事務所賃料

(1㎡当たり)

工業団地(土地) 購入価格

316 914-1,502 187

工業団地借料 0.19 2.5-11 5.61

事務所賃料 54 33 24.7

公共料金注

(業務用)

電気 (1kWh当たり)

5.01 (0.07)

13.1 (0.11)

15.0 (0.13)

水道 (1㎥当たり)

0.51 (0.69)

3.2-247 (0.2)

20-203 (0.09-2.85)

※単位はすべて米ドル

注:基本料金を記載。()内は従量料金

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≪参考≫韓国における政府支援(R&D投資)

近年、韓国ではGDPに占めるR&D投資の比率が高まっており、2009年以降からは日本を抜いて世界一となった。

R&D投資の内訳は情報分野が最も高く約15%、以降は医療分野が約13%、エネルギー・資源分野が約10%となっている。

2014年6月には「製造業革新3.0戦略」が打ち出され、2024年には輸出1兆ドルを達成することが目標とされている。

出所)世界銀行、韓国国家科学技術委員会資料

主要5か国におけるGDPに占めるR&D投資比 韓国政府によるR&D投資の内訳

※製造業革新3.0戦略

2014年6月、韓国政府はスマート生産方式の導入や融合新産業の創出によって、製造業の先進国を先導する「製造業革新3.0戦略」を打ち出した。具体的なマイルストーンとしては、2017年までに官民共同で計約24兆ウォン(約2兆6,000億円)を投資し、2020年までに韓国国内1万か所にスマート工場を設置することを掲げている。

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≪参考≫韓国における政府支援(設備投資)

2015年7月、政府は年後半にかけて1,500億ウォン(約143億円)を投資し、スマート工場を900か所建設すると発表した。 既存の工場と合わせて、年内1,200か所の達成を目指している。また、今後のマイルストーンとして、2017年までに4,000か所、2020年までに10,000か所のスマート工場建設を達成することを発表している。

また、大韓商工会議所では、1社当たり約4,000万ウォン(約382万円)の支援金を提供している。資金は、スマート工場を 構築するための現場診断やソリューションの設定、自動化機械の購入などに充てられている。

出所)日本機械輸出組合「韓国の国際競争力強化策」等、各種公開資料

Samsung SDI LG Chemical

2014年におけるSamsung SDI(全社)の設備投資額は、前年比30%減の4,595億ウォン(約438億円)を見込む。

設備投資の配分については、従来は民生用LiBが主体であったが、2014年は車載用の比重が高くなっている。

2015年については、設備投資を前年比で大幅に増やす方針で、小型ポリマー電池と車載用電池に投資を集中する計画である。

主要投資先は中国・西安における車載用LiBの新工場建設で、中国の自動車部品メーカ安慶環新集団との合弁会社を設立し、今後の5年間で6億ドル(約600億円)の投資を見込んでいる。新工場は14年下半期着工・15年内に稼働開始する。

2015年10月、西安の車載用バッテリー工場が稼働を開始した。新工場は、高性能自動車駆動用バッテリー(純EV規格)の最先端の生産ラインを有しており、年産では4万個の生産が可能。セルからモジュールまで全工程を包括している。

2014年におけるLG Chemical(電池部門)の設備投資額は、

2,100億ウォン(約200億円)を見込む。

上記のうち、新規・拡大投資は、600億ウォン(約59億円)を予定しており、モバイル用ポリマー型LiBの生産拡大を図る。

2014年8月、LG Chemicalは中国(南京)に電気自動車用リチウムイオン電池工場を建設すると発表した。南京市の企業との合弁で2015年の稼働を目指す。10万台分を超える生産能力を予定しており、LG Chemicalの世界の生産能力のうち、40%を超える規模となる見込み。

2015年9月、韓国国内のセパレータ(絶縁材)工場を年内に東レに売却すると発表した。売却額は、30億円程度とみられる。LG Chemicalでは、近年の不安定なウォン相場等、経営環境が変化する中、リチウムイオン電池の材料となるセパレータに関しては日本メーカーからの購入を増やし分業するのが効率的と判断した。

主要企業の設備投資に関する動き

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≪参考≫日本・韓国・中国・マレーシアの投資コスト

日本・韓国と比べて、中国・マレーシアでは人件費コストが圧倒的に低くなっている。

地価・事務所賃料についても上記と同様、中国・マレーシアのコストが低くなっている。

出所)JETRO

日 本

(東 京)

日 本

(名古屋)

韓 国

(ソウル)

中 国

(北 京)

中 国

(上 海)

中 国

(広 州)

中 国

(大 連)

中 国

(成 都)

中 国

(武 漢)

マレーシア

(クアラルンプール)

製造業人件費

(月額)

ワーカー

(一般工) 2,373 2,305 1,729 566 474 462 393 229-571 426 418

エンジニア

(中堅技術者) 3,147 2,969 2,536 921 947 785 633 655-816 729 924

中間管理職

(課長クラス) 4,227 4,128 3,316 1,680 1,561 1,442 1,141 1,061-2,367 1,395 1,715

地価

事務所賃料

(1㎡当たり)

工業団地(土地)

購入価格 914-1,502 187 316 73-90 196-245

98

(最低額) 59-91 78 55 119

工業団地借料 2.5-11 5.61 0.19 4.90-7.35 3.43-4.90 2.94-8.16 1.76-3.67 2.94 1.63-3.59 5.37

事務所賃料 33 24.7 54 109 54 24 39.2-47.0 16-36 18-29 20

公共料金注

(業務用)

電気

(1kWh当たり)

13.1

(0.11)

15.0

(0.13)

5.01

(0.07)

(0.14)

(0.14-0.15)

(0.11)

(0.15)

(0.14)

(0.16)

169

(0.10)

水道

(1㎥当たり)

3.2-247

(0.2)

20-203

(0.09-2.85)

0.51

(0.69)

(1.33)

(0.80-0.82)

(0.79)

(0.66)

(0.72)

(0.61)

10

(0.58-0.64)

※単位はすべて米ドル

注:基本料金を記載。()内は従量料金

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ニッケル水素電池 主要企業リスト⑬~⑯

ニッケル水素電池の部材(正極材・負極材・電解液・セパレータ)レイヤーにおける主要企業を下記リスト⑬~⑯に整理した。

リスト⑬ 正極材 リスト⑭ 負極材 リスト⑮ 電解液※ リスト⑯ セパレータ

企業名 本 社 企業名 本 社 企業名 本 社 企業名 本 社

住友金属鉱山 日本 中央電気工業 日本 昭和化学 日本 日本バイリーン 日本

河南科隆[Kelong] 中国 三井金属鉱業 日本 東京応化工業 日本 Freudenberg ドイツ

田中化学研究所 日本 厦門鎢業 [Xiamen Tungsten]

中国 東亞合成 日本 三菱製紙 日本

金天能源[Gold] 中国 日本重化学工業 日本 関東化学 日本 常州康捷[Kangjie] 中国

関西触媒化学 日本 三徳 日本 和光純薬工業 日本 ニッポン高度紙工業 日本

ダイワボウポリテック 日本

※ 電解液(水酸化カリウム)に関しては、蓄電池向けに供給している企業ではない。 水酸化カリウムは配管詰まりの洗浄剤や、石けんなどに利用されており、化学・薬品メーカが主要な製造元である。

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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ニッケル水素電池 主要企業リスト⑰

ニッケル水素電池のセル・パッカーレイヤーにおける主要企業を下記リスト⑰に整理した。

リスト⑰ セル・パッカー

企業名 本 社 系 統 需要家 車 載

長周期対策 短周期対策 工場・ビル 集合住宅

家 庭 緊急時 災害対策

H V

プライムアースEVエナジー 日本 - - - - - ○

パナソニック 日本 - - - - - ○

GP Batteries※ 香港 - - - - - -

FDK 日本 - - - ○ - -

豪鵬[High Power] ※ 中国 - - - - - -

科力遠[Corun] 中国 - - - - - ○

Johnson Controls 米国 - - - - - ○

川崎重工 日本 △ 実証試験

△ 実証試験

△ 実証試験

△ 実証試験

△ 実証試験

※ 蓄電池比較表(案)に記載されているが、パソコン・携帯用への供給ではなく、コードレスクリーナー等に採用されている。

出所)各種公開資料に基づき三菱総研作成

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NAS電池・レドックスフロー電池 主要企業リスト⑱、⑲

NAS電池・レドックスフロー電池の主要企業を下記リスト⑱、⑲に整理した。

リスト⑱ NAS電池 リスト⑲ レドックスフロー電池

企業名 本 社 企業名 本 社

日本ガイシ 日本 住友電気工業 日本

POSCO 韓国 Prudent Energy 中国

RONGUE POWER 中国

ZBB 米国

RedFlow オーストラリア

DMG MORI SEIKI Aktiengesellschaft ドイツ

出所)各種資料に基づき三菱総研作成

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PCS 主要企業リスト⑳

今回はPV用PCSの市場シェアが高い企業のうち、蓄電池向けPCSを製造している企業を抽出し、下記リスト⑳に整理した。

「短周期用」「長周期用」はPCSの出力(kW)と蓄電池の容量(kWh)の比率と蓄電池の種類によって決定されるため、PCSでの分類は困難。

リスト⑳ PCS

企業名 本 社

用途

供給先 系統用

需要家用 車載用 (V2H) 工場・ビル

集合住宅 家 庭

SMA ドイツ △注1 △

ABB スイス ○

オムロン 日本 ○ ○

TMEIC 日本 ○

田淵電機 日本 ○ ○ ○ パナソニック(北米にてパナソニック製蓄

電池との組合せでシステムを提供)

富士電機 日本 ○

明電舎 日本 ○

安川電気 日本 ○ ○

パナソニック 日本 ○ ○ 自社製蓄電池向け

ニチコン 日本 ○ ○ 日産、三菱自動車

出所)IHS PV Inverter Ranking 2014より三菱総研作成

注1 △は蓄電池の実証実験において採用されており、商用として販売されていない

注2 出力規模はそれぞれ、10kW未満、10~100kW未満、100kW以上

2014年におけるPV用PCSの世界販売金額上位5社(IHS調べ)

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PCS PV向けと蓄電池向けの違い

電子部品:PV向けと蓄電池向けで共用が可能。

筐体:サイズや設置個所が異なるため、共用できない。

製造プロセス:PV用、蓄電池用ともに、製造工程のほとんどが手作業で実施されており、労務費のコストに占める割合が大きいと予想される。

部材

電子部品 筐体

PV用 PVからの不安定な直流を整流し、交流に変換 室内設置がほとんど。PV用PCSの出荷量も多い。

蓄電池用 直交変換において整流の必要性がないため、PV用よりも部品数は少ない

室内設置、屋外設置の両方がある。出荷数が少なく、筐体の量産効果が小さいことが予想される

PV・蓄電池用 電力が3方向に流れるため、部品数はPV用よりも多い

屋外設置が多く、環境耐性等が必要になるため、筐体費用が高く、量産効果も小さい

車載用 2011年以降に、直交変換機能を車体に搭載。周波数調整等の必要がないため、部品数は少ない

車体自体が筐体の役割を担うため、筐体にかかる費用が小さい(蓄電池モジュールも同様)

出所)企業ヒアリング、各種公開資料等に基づき三菱総研作成

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Ⅱ.蓄電池産業・蓄電池を活用したビジネスのバリューチェーン分析

i. 部材~EMSレイヤーのバリューチェーン分析

ii. オペレーションレイヤーのバリューチェーン分析

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海外オペレーションレイヤー企業 ①AES(AES Energy Storage) (1/5)

《企業概要・事業内容》

21カ国で火力発電、再生可能エネルギー発電等を展開する電力事業会社。

主たる事業は発電事業とユーティリティ事業の二つ。

発電事業では発電所を所有・操業、発電した電力を卸売市場の顧客に販売する。アメリカとチリでは170MWの蓄電池による蓄電システムの運用を行う。

ユーティリティ事業では電力の発電、売買、配電、送電等をエンドユーザーの顧客に対して提供する小売事業を行う。

《業績》

2010年 12月期

2011年 12月期

2012年 12月期

2013年 12月期

2014年 12月期

売上高 16,647 17,274 18,141 15,891 17,146

営業利益 3,572 3,743 3,413 3,027 2,901

営業利益率 21.5% 21.7% 18.8% 19.0% 16.9%

(単位 M$)

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《蓄電事業》

蓄電を担うのは100%子会社のAES Energy Storage

設立: 2007年

商品・サービス名: ADVANCION

利用蓄電池種類: リチウムイオン

電力事業者等を対象とした大容量系統向けの蓄電システム。システムの設置から運用までフルターンキーでサービスを提供

海外オペレーションレイヤー企業 ①AES(AES Energy Storage) (2/5)

出所)AES Energy Storage HPより

《ADVANCION開発の経緯》

2010年、ニューヨーク州のLong Island Power Authorityが新たな電力源の確保を命じ、他の16企業が新たな発電所や送電線の整備等に着手した一方、AES Energy Storageは蓄電池を選択。

アメリカでは電力需要が高くなった場合、ピーク時のみに発電する発電所(peak power plant, peakers)による対応が主流だが、 AESはpeakersに代わる電池によるピーク対応を提案。

2014年、ピーク電力発電の代替となるリチウムイオンバッテリーによる蓄電システムAdvancionを発表。

これまで実証実験等で関わった系統運用者はNew York ISO、 PJM Interconnection, ERCOT in Texas、 California ISO and SING など。

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《ビジネスモデル》

海外オペレーションレイヤー企業 ①AES(AES Energy Storage) (3/5)

出所)AES Energy Storage HPより

顧客 ユーティリティ企業(ガス会社、電力会社)や再生可能エネルギーのデベロッパー

提供エリア 現在展開しているのはPJM、カリフォルニア、ハワイ、プエルトリコ、イギリス、フィリピン他。

サービス内容 下記のセット内容で、蓄電システムをフルターンキーで提供。

《システム本体》 Advancionバッテリーアレイ※(様々なサプライヤーから供給されたリチウムイオンバッテリー、パワコン、特許出願中のEMSアプリ、安全装置等と組合せたもの)

《システム設置》 立地から許可取得、相互接続、設備設計、エンジニアリング、調達、建築までを含む計画・設置サービス

《システム運用》 運用、安全・保守サービス

※ バッテリーアレイのサイズ・容量等は数十MW~数百MWまで、保持時間は30分から4時間以上とニーズに応じた対応が可能となっている。 ※ 費用は$1,000/kW、 $250/kWh、つまり100万$/MW、4MWhと、他の企業よりも大幅に価格を下げた設定。

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《電池のサプライヤー》

海外オペレーションレイヤー企業 ①AES(AES Energy Storage) (4/5)

Samsung, Panasonic, BYD, LG化学、日立、SONY,NEC等の有名バッテリー企業から仕入れ、自社工場でチェック・組み立てを行なう

《バリューチェーン》

前駆体(原料)メーカー

部材メーカー (正極材、負極材、セパレーター、電解液)

セル(電池)メーカー (Samsung, Panasonic, BYD等)

オペレーションレイヤー:AES (電池パック・電池アレイの製造、販売、運用)

ユーティリティ企業や再生可能エネルギーの デベロッパー、系統運用者

出所)AES Energy Storage HPより

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《競争力の源泉》

電力会社機能を有する優位性

【販売チャネル】 ⇒ 発電事業として卸売市場への販売及び送電、配電等を行う。

電力小売事業や、風力・太陽光発電などの自然エネルギー発電などを21カ国で展開するなど幅広いビジネス網を保持。

【商品開発力】 ⇒ 火力発電や自然エネルギー発電所を所有・操業していたため、

電力会社のニーズに即したAdvancionバッテリーアレイを生み出す力(自らに新たな技術をイノベートする力)が備わっていた。

【運用までのサービス展開】 ⇒ 技術面だけでなく、運用・保持する能力もあったため、フルターン

キーシステムとしての提供が可能。

海外オペレーションレイヤー企業 ①AES(AES Energy Storage) (5/5)

《事業戦略》

事業環境の適した国への展開(より電力需要が高く、ピーク電力発電のための天然ガス等の価格が高い国々でピーク電力事業を展開予定)

将来動向を見越した価格設定※

ピーク電力の市場規模の大きさ、今後の蓄電池価格の低下を見越し、$1,000/kW $250/kWhと低価格路線を設定。

《ビジネスモデルの成立要因》 電力需要の増大とピーク電力発電※のコストの高さ、

ピーク電源の代替案の必要性

リチウムイオンの価格の低下

電力小売市場・アンシラリー市場の拡大

出所)AES Energy Storage HP、Greenmedia.comより

※ 電力需要のピーク時にのみ発電する発電所

※ 他社への影響(インパクト) • Eos Energy Storage:亜鉛電池による蓄電シス

テム、目標価格を$200~$250/KWhと発表。 • Aquion Energy:Aqueous Hybrid Ion バッテ

リーを一般的な鉛電池と同程度の目標価格を発表。

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《企業概要・事業内容》

EMS関連のソフト開発を行うスタートアップ企業。

クラウドサービスを利用したEMSと蓄電池による蓄電システムを提供。

現在は投資を募っている段階ではあるが、カリフォルニア州のホテルや小売店、銀行等に蓄電システムをリース。

設立は2009年、創業時はPowergetics名。

2014年には助成プログラム「Sun Shot Initiative」に採択され、93万5000USDの資金を獲得。

海外オペレーションレイヤー企業 ②Stem (1/5)

《資金調達状況》

スタートアップ企業のため、業績等は非公開。2014年12月期の売上高は数億円程度と見られる。

これまでの資金調達額は総額1億10万USD。

Date ラウンド※ 投資額 投資家数 投資家

Apr, 2011 Debt Financing $2.9M 0 ‐

Apr, 2012 Series A $10.2M 2 Angeleno Group, Greener Capital

Dec, 2013 Series B $15M 3 GE Ventures, Iberdrola, Angeleno Group

Jan, 2015 Series B $27M 2 Constellation Technology Ventures, Total Energy Ventures

Apr, 2015 Series C $12M 6 Angeleno Group, Mitsui & Co. Global Investment, Iberdrola, GE Ventures, Constellation Energy, Total Energy Ventures

Aug, 2015 Series C $33M 1 RWE Supply & Trading

出所)Stem HP,crunchbase.com、techon.nikkeibp.co.jp

※ 特定のプロジェクト、目標を掲げ資金調達を募る段階的なターム

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《蓄電システム内容》

リチウムイオン蓄電池とEMSソフトウェアを組合せた蓄電システム。

EMSはクラウドサービスを利用して電力量を30日先まで予測、電力の安い時間帯に蓄電、ピーク時に蓄電した電力を用いる。EMSによる電力ピークカットで電気代20%の削減を謳う。

10年間のリース形式で、導入費用は無料。月々決められた料金を支払う形式。

ピーク電力料が徴収される商用施設等が対象で、現在はカリフォルニア州のホテルや小売店、銀行等に蓄電システムをリースしている。

また京セラやSunpower等の太陽光発電事業会社と提携し、太陽光発電と組合せた蓄電システムの提供も開始。

海外オペレーションレイヤー企業 ②Stem (2/5)

出所)Stem HP,Greentechmedia、techon.nikkeibp.co.jp

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海外オペレーションレイヤー企業 ②Stem (3/5)

出所)Stem HP, theatlantic.com

《ビジネスモデル》

顧客 一般企業や小売店、ホテルなど大容量の電気消費者、電力会社等のユーティリティ企業

提供エリア カリフォルニア州

サービス内容 蓄電池とEMSアプリなどがセットになったフルターンキーシステムを10年契約でリース

費用 54kW(18kWの電池3パックセット)システムでは、導入費用が97,000USD、カリフォルニア州では州の補助金がそのうち60%をカバー。現在は投資家からの資金調達によって導入費用分は無料。利用者は月々利用料を支払う。今後も導入費用を無料とするのかどうかは不明。

《太陽光発電との提携》

提携先 京セラ(米国子会社Kyocera Solar社)

顧客 オフィスや店舗等の電力ユーザー

提供エリア カリフォルニア州、ハワイ州、ニューヨーク州

システム販売者 京セラ(京セラとの提携の場合)

太陽光発電や風力発電と蓄電池・EMSを組合せた新たな蓄電システムの提供を開始(2014年)。

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ESS用リチウムイオンバッテリー。パナソニックやLG化学など大手メーカー複数社のものを利用。スタートアップ企業が開発したバッテリーは使用せず。

海外オペレーションレイヤー企業 ②Stem (4/5)

出所)Stem HP, Wallstreet journal より

《利用バッテリー》

《バリューチェーン》

前駆体(原料)メーカー

部材メーカー (正極材、負極材、セパレーター、電解液)

セル(電池)メーカー (Panasonic, LG等)

一般企業や小売店、ホテルなど大容量の電気消費者、ユーティリティ企業

オペレーションレイヤー:京セラ (太陽光発電・蓄電システムの販売)

Stem: オペレーションレイヤー(蓄電システムの統合、販売、設置)/蓄電システムのサプライヤー

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海外オペレーションレイヤー企業 ②Stem (5/5)

出所)Stem HP,Greentechmedia

《競争力の源泉》

スタートアップ企業ならではの起動力と展開力、資金調達力。

ソフトウェア開発能力を生かしたEMSの開発。

《事業戦略》

ピークカットにより電気代が20%程度削減できるという特徴から、電気代が高いカリフォルニア、ハワイなどでビジネス展開。

導入費用を低く抑えて、蓄電システムの普及を図る。

京セラ、Sunpowerなどの太陽光発電会社と提携し、複数の電源を利用可能な蓄電システムを展開。

大型案件ではあるものの、保守的で新なシステム導入へ時間のかかるユーティリティ企業よりも、市場としての規模、成長の伸び代が大きい一般の大容量電気利用者をターゲットとする。

《ビジネスモデルの成立要因》

ピーク時の電気代の高さ(カリフォルニア、ハワイ)

カリフォルニア州ならではの、スタートアップ企業の特性並びにスタートアップ企業が事業展開できる土壌の醸成

⇒資金調達と補助金利用による事業を展開。

盛んなソーラービジネスへの資金融資

⇒ソーラービジネスへの投資経験を持つ投資家たちがプロジェクトに融資。

市場の発展

⇒政府の後押し、価格競争等によりソーラーパネル、風力発電等の自然エネルギー発電市場が成長

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海外オペレーションレイヤー企業 ③SolarCity (1/5)

《業績》

出所)SloarCity HP, Statistica.com ,Speeda

《企業概要・事業内容》

太陽光発電システムの製造・販売・設置企業。

一般家庭を主な対象としたソーラーパネルのリース型ビジネスモデルの先駆者。リース型の顧客は全国で5万ほど(期間は20年)。

2006年設立、2012年ナスダック上場。

本拠地はカリフォルニア。

一般家庭用太陽光発電設置のシェアは34%で1位、商業用は6%で2位(2015年時点)

電気自動車メーカーTeslaやPaypalを立ち上げた企業家・投資家のイーロン・マスクが創業にかかわり、現在は取締役を務める。

2011年 12月期

2012年 12月期

2013年 12月期

2014年 12月期

2015年 6月期

売上高 60 129 164 255 300

営業利益 (61) (69) (149) (336) (452)

営業利益率 -102.9% -53.5% -91.2% -131.6% -150.6%

(単位 M$)

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海外オペレーションレイヤー企業 ③SolarCity (2/5)

▲ DemandLogic energy storage ▲ battery backup service

《太陽光パネル・蓄電事業》

太陽光パネルの製造、マーケティング、販売、融資、設置、モニタリング・運用等すべてを自社で手掛ける。

リース型のビジネスモデルの先駆けであり、契約、設置からモニタリングまでフルサービスの提供も特徴。

2014年から太陽光パネルとバックアップ用の蓄電池、モニタリング用のアプリ等を組合せたシステムの展開を開始。

利用電池: リチウムイオン蓄電池

コントロールシステムによって太陽電池、バックアップ蓄電池、電力会社からの電気と時間帯によって複数の電源の使い分けが可能。

利用するのはテスラ社の蓄電池Powerwall(セルはパナソニック、サムスン)。

商用・政府機関用システム名 DemandLogic energy storage

小系統用システム名 GridLogic microgrid

一般家庭用システム名 turnkey battery backup service

出所)SloarCity HP

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顧客 一般家庭、企業・小売店等の事業所、政府機関

提供エリア 北東部と西部を中心とした19州とワシントンDC

提供方法 【リース型、PPA型(Power Purchase Agreement:使用した電力量に応じた料金の月払い)】 契約期間は20年、設置の際の導入費用はかからない。 【購入型、ローン型】 ローン期間、保証期間、モニタリングサービスの提供期間ともに30年間。また30%の税額控除が受けられる。

サービス内容 太陽光パネル・蓄電システム(テスラ社蓄電池powerwall)の設置、アプリ、モニタリング・修繕サービス

海外オペレーションレイヤー企業 ③SolarCity (3/5)

出所)SolarCity HP, Greentechmedia.com、ジェトロ

《ビジネスモデル》

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海外オペレーションレイヤー企業 ③SolarCity (4/5)

出所)Solarcity, Tesla HP, Greentecmedia

《利用モジュール(太陽光パネル)》

《バリューチェーン》

《利用蓄電池》

京セラ、Yingi、Trina

ただし近年ではSolarCityも自らモジュールの製造を 手掛けている。

《利用蓄電デバイス》

前駆体(原料)メーカー

部材メーカー(正極材、負極材、セパレーター、電解液)

セル(電池)メーカー(Panasonic,Samsung)

オペレーションレイヤー:SolarCity (販売、設置、保守・運用)

一般家庭、事業所、政府機関など

モジュール (太陽光パネル)メーカー (Yingi、京セラ、Trina)

⇒シリコン原料からモジュール化まで一貫体制の傾向

※近年は自らもモジュール製造を手掛ける

蓄電デバイスメーカー(Tesla)

Panasonic、Samsung SDI Tesla社のPowerwall

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海外オペレーションレイヤー企業 ③SolarCity (5/5)

《競争力の源泉》

【フルサービスでの提供】

小規模事業者が多い太陽光発電の中で、販売から設置、 運用まで一貫したフルサービスを提供

【導入に対するハードルの低減】

リースやPPAや、商用、小系統用、家庭用など、顧客に応じて提供方法や提供内容に関する多様なバリエーションを用意

【調達コストの低減】

蓄電池を大量生産するテスラ社とのつながり

【金融機関からの資金援助】

リース事業のため金融機関とのパイプを作り、US Bancorp、Google Ventures、Bank of Americaから資金を獲得

《事業戦略》

リース事業のために金融機関などから資金を獲得し、導入費用をゼロに抑えることで多くの顧客を獲得。

ソーラーローン事業にも着手し、太陽光発電を所有したいという顧客の要望に応える。

(フルサービスでの提供)

Zep Solar(2013年)、 Silevo(2014年)等の企業を買収し、セルやモジュール、取り付け機材等も自社で製造。設置から運用までのフルサービスの提供に加え、太陽光発電のシステム製造の一貫体制を図る。

製造からサービスの提供まで行なうことで、他者へ支払うマージン等を削減。利益の確保につなげる。

《ビジネスモデルの成立要因》

【外部】

市場規模の拡大

⇒太陽光発電システムの価格競争、技術コストの低下

⇒リチウムイオンバッテリーの価格低下

⇒小売電力の価格の高さ、自然エネルギーへの関心の高まり

製造からサービスの提供まで行なうことで、他者へ支払うマージン等を削減。利益の確保につなげる。

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海外オペレーションレイヤー企業 ④Green Charge Networks (1/5)

出所)GNC HP、 Speeda、Crunchbaseより

《業績・資金調達歴》

《企業概要・事業内容》

カリフォルニアに本拠を置く蓄電システムのスタートアップ企業。

2009年設立。

蓄電池とEMSソフトを用いた蓄電システムによる節電で電気料を削減。

システムの設置からモニタリング、保守・管理までフルターンキーでサービスを提供。

Stemと並ぶ分散型蓄電システムの大手で、現在までの資金調達額は$56M。

現在カリフォルニア州やニューヨーク州で事業を展開。

7―ElevenやWalgreenなどの小売店、学校、ホテル等の大容量電力利用者が顧客。

太陽光発電システム企業との提携や、日産のEV用リチウムイオンの再利用事業などにも着手。

2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

売上高 0 0 - 2 ‐

営業利益・利益率 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐

(単位 M$) 【事業業績】

Date ラウンド 投資額 投資家数 投資家

Dec, 2013 Angel 非公開 1 Richard Lowenthal

Jul, 2014 Venture $56M 2 K Road Power、George Coelho

【資金調達歴】

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海外オペレーションレイヤー企業 ④Green Charge Networks (2/5)

出所)GCN HPより

《蓄電システム》

小売業・商用・産業用ユーザー向けの定置用リチウムイオン蓄電池システム

風力や太陽光発電など複数の電力系統との統合が可能。

電気自動車の充電にも利用できる。

クラウドベースのEMSソフトによってデマンドチャージの最小化を図り、電気料を20%から最大50%まで削減する。

太陽光発電のSunEdison、ユーティリティ企業のConedison、EV自動車の充電ステーション企業のChargepoint等の企業と提携し、分散型蓄電池の普及とビジネスモデルの発展を図る。

蓄電システム名 GreenStation

ソフト名 GridSynergy

利用電池種類 リチウムイオン蓄電池

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顧客 小売業、商用施設、学校・役所などの公的機関

提供エリア カリフォルニア州、ニューヨーク州

サービス内容 蓄電池、EMSソフトを含む蓄電システム、設置・保守・管理等の運用サービス。

提供方法 Power Efficacy Agreement。一種のリース形式で、システムはGCNが保有したまま、顧客の下で設置・運用・管理する。顧客はリース料ではなく、システムによって削減された電気料の一部をGCNに支払う。もし電気料が削減されなかった場合、支払いは発生しない。

導入費用 無料

契約期間 10年間

海外オペレーションレイヤー企業 ④Green Charge Networks (3/5)

出所)GCN HPより

《ビジネスモデル》

《顧客》

公共:自治体や高校に設置

民間:Seven-elevenやSafeway等の小売り事業者や、UPS等の企業が利用

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海外オペレーションレイヤー企業 ④Green Charge Networks (4/5)

出所)GCN HPより

《利用蓄電池》

《バリューチェーン》

《EMS用ソフトウェア》

Samsung、日産(EV用電池の再利用事業) BOSHのVisual Rules

前駆体(原料)メーカー

部材メーカー (正極材、負極材、セパレーター、電解液)

セル(電池)メーカー(Samsung、日産等)

Green Charge Networks: オペレーションレイヤー(システムの統合、設置、保守・モニタリング)/蓄電システムのサプライヤー

小売店、ホテル、学校など大容量電気消費者

EMS用ソフトメーカー(BOSH、 Flextronics)

オペレーションレイヤー:伊藤忠商事/SunEdison等

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海外オペレーションレイヤー企業 ④Green Charge Networks (5/5)

出所)GCN HPより

《競争力の源泉》

【資金調達力】

2回のラウンドで$56Mを得ただけでなく、エネルギー省から$12Mの助成金を、2014年にはTIP Capitalから$10Mの資金を受け、導入費用無料を実現。

【他企業とのパイプ】

EV充電ステーション企業のChargepointからのエンジェル投資や提携など、分散型蓄電システムビジネス拡大のための足場となるつながりを持つもしくは拡大する。

【顧客やパートナーの知名度】

知名度の高いSeven‐ElevenやWalgreens等の顧客、日産やSunEdison等のパートナーを持つことによる宣伝効果。

《事業戦略》

PEFという契約方式により、導入費用を無料にするだけでなく、蓄電システムの効果次第での利用料金を設定。システム導入にあたっての金銭面に関する心理的ハードルを下げる。

太陽光発電のSunEdison、ユーティリティ企業のConedison、EV自動車の充電ステーション企業のChargepoint、ソフト開発のFlextronics等など、他企業と提携することによるビジネス展開を図る。

日産とともにEV用電池の再利用事業に着手し、使用するリチウムイオン価格を下げることで競争力をつける。

カリフォルニア州やニューヨーク州など電気代が高い地域でのビジネス展開。

《ビジネスモデルの成立要因》

電気料金の地域的な偏り

⇒特にカリフォルニアやニューヨークではピーク電力料が電気料金全体の50%以上になるなど高額。

分散型蓄電池展開の土壌が醸成

⇒EV車、EV充電ステーション、太陽・風力発電、電気の小売りなどの拡大

⇒Stem等のライバル企業との競争による市場の発展

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海外オペレーションレイヤー企業 ⑤NextEra Energy (1/5)

出所)GNC HP、 Speeda、Crunchbaseより

《業績》

《企業概要・事業内容》

フロリダに本拠を置く電力会社。

風力・太陽光・火力・原子力発電施設を保有・操業し、電力の卸売・小売を行う。

変電所、配電所も所有・運用し、電力の買取・再販売や、リスクマネージメントサービスも提供。

全米26州、カナダ4州でトータル42,500MWの発電を担い、顧客は500万人以上。

アメリカで最も大きな自然エネルギー発電事業者の一つ。

風力発電能力は全米の17%、太陽光発電能力は全米の14%を占めている。

子会社はFLORIDA Power &Light Company(FPL)とNextEra Energy Resources, LLC(NEER)。

(単位 M$)

2011年 12月期

2012年 12月期

2013年 12月期

2014年 12月期

2015年 6月期

売上高 15,341 14,256 15,136 17,021 17,781

営業利益 3,378 3,276 3,241 4,384 4,970

営業利益率 22.0% 23.0% 21.4% 25.8% 28.0%

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《蓄電事業主体》

子会社であるNextEra Energy Resourceによる。

フロリダに本拠を置き、全米25州とカナダで事業展開。

再生可能エネルギー発電に注力し、発電量の95%がクリーンエネルギーによる。

発電の他電力、ガスの取引や液化天然ガス・石油の精製、パイプラインのインフラ整備も行う。

《蓄電池事業》

2012年から実証実験を開始し、2014年に実用化。

自社の運用するイリノイ州の風力発電所Lee DeKalb Wind Energy Center で操業開始。

3,000個の蓄電池を用いた20MWの蓄電システムで、風力で発電した電力を蓄電し、必要に応じて放電させる。

電池の種類はリチウムイオンバッテリー。

カリフォルニア、アリゾナ、北東部など電気量が 最も高いとされる地域で蓄電システムの試用を 行っており、来年度は蓄電プロジェクトに 1億ドルの投資予定。

海外オペレーションレイヤー企業 ⑤NextEra Energy (2/5)

出所)NextEra Energy, NextEra Energy Resource HPより

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海外オペレーションレイヤー企業 ⑤NextEra Energy (3/5)

出所)NextEra Energy HP, Bloomberg, Annual Report、Greensmith HPより

▲ Greensmith社の蓄電システム ▲ イリノイ州リーデカルブ風力発電

蓄電事業 実施エリア

イリノイ州リーデカルブ風力発電、カリフォルニア、アリゾナ、米国北東部

内容 蓄電池、EMSソフトを含む蓄電システムを自社の発電施設に設置、電力需給のバランスを図り、顧客に自然エネルギー発電の電力を低価格で販売する。

蓄電システム供給元

他社の蓄電システムを用いる。イリノイで用いられているのはGreensmith社の蓄電システム (EMSソフト、BMS、PCS、蓄電池など)。蓄電システム施設もBlattner Energyに設計・建築を委託。

《ビジネスモデル》

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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 198 出所)DOE Energy Storage Database

海外オペレーションレイヤー企業 ⑤NextEra Energy (4/5)

前駆体(原料)メーカー

部材メーカー (正極材、負極材、セパレーター、電解液)

蓄電システムインテグレーター:Greensmith

設計調達建設:Blattner Energy(蓄電システム設備の設計・建設)

電力利用者

蓄電池メーカー:LG Chem

オペレーションレイヤー:NextEra Energy(発電施設・蓄電システムの運用、電力の販売)

電力の販売

《利用蓄電池》

《バリューチェーン》

《インテグレーター》

LG Chem

Greensmith

EMSソフト開発企業。系統用の蓄電システムも手掛け、BMS(Battery Management System)・コントローラーからシステムデザイン、ソフトウェア開発、インテグレーション、設置まで一括で提供する。

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出所)Greentechmedia

海外オペレーションレイヤー企業 ⑤NextEra Energy (5/5)

《競争力の源泉》

自社で再生可能エネルギー発電を保有・運用

研究施設を保持し、ソーラーや蓄電システムなど独自の開発を進める

《事業戦略》

風力・天然ガスに加え、太陽光発電を強化するため2013年に太陽光発電のSmart Energy Capitalを買収。

蓄電システムを「成長のための3つのプラットフォーム」の一つと位置づけ、来年度は1億ドルの蓄電システムプロジェクトをPJMやカリフォルニア、アリゾナなどで展開予定。

蓄電システムにより自社の風力発電・太陽光発電をバックアップ、電気料金を下げることで自然エネルギー発電の浸透を図る。

《ビジネスモデルの成立要因》

リチウムイオンバッテリーの価格低下

風力・太陽光発電事業と市場の拡大

風力・太陽光発電の効率化の必要性

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海外オペレーションレイヤー企業 ⑥Sunverge Energy (1/5)

《企業概要・事業内容》

カリフォルニアに本拠を置くスマート蓄電システムのスタートアップ企業。

2009年設立。

太陽光・蓄電システムのインテグレーターで、主にユーティリティ企業に家庭・企業用の分散型蓄電システムを提供する。

カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等、ユーティリティ企業と提携したプロジェクトを グローバルに展開。

カリフォルニアでの蓄電地補助金交付量シェアは1%だが、州内での発電量はSolar City、Stemに次ぐ第3位。

《業績・資金調達歴》

2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

売上高 ‐ ‐ 1 1 3

営業利益・利益率 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐

(単位 M$) 【事業業績】

Date ラウンド 投資額 投資家数 投資家

Jun, 2014 Series B $15M 3 Siemens Venture Capital、Southern Cross Renewable Energy Fund、Total Energy Ventures

Dec. 2011 Series A 非公開 ‐ ‐

【資金調達歴】

出所)Sunverge HP、 Speeda、Crunchbaseより

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《蓄電システム》

蓄電システム名はSolar Integration System(SIS)。UL認証を取得している。

太陽光発電とリチウムイオン蓄電池、蓄電・放電をコントロールするクラウド上のソフトウェアを組合せた分散型蓄電システム。

ユーティリティ用、ビジネス用、家庭用が主たる用途。風力や太陽光発電など複数の電力系統が利用でき、電気自動車の/からの充電にも対応する。

特定の地域内に集中的に配置し、電力系統と接続して電力を融通し合うことで、スマートグリッドを実現。

太陽光発電のSunpowerと提携することによる太陽光発電とセットでの事業展開や、ユーティリティ企業と提携し、分散型蓄電池並びにスマートグリッドの普及とビジネスモデルの発展をも図っている。

海外オペレーションレイヤー企業 ⑥Sunverge Energy (2/5)

出所)Sunverge HPより

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顧客 ユーティリティ企業、不動産デベロッパー

提供エリア アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ニュージーランド、韓国、ドイツ

サービス内容 蓄電池、クラウド上の電力管理ソフト、パワコン等からなる蓄電システムの提供、運用・管理

導入費用 システム価格:2万5,000ドル(補助金等の利用で実質負担額は無料)

提供方法 ユーティリティ企業やデベロッパーと提携し、特定の地域に集中的にシステムを提供。スマートグリッドを実現するプロジェクトを実施している。

設置先 一般家庭、企業

《ビジネスモデル》

海外オペレーションレイヤー企業 ⑥Sunverge Energy (3/5)

《主要プロジェクトと提携先》

SMUD 2500 R St. Housing Development Sacramento Municipal Utility District(カリフォルニア)

Discovery at Spring Trails Residential Energy Storage

Center For Commercialization of Electric Technology (テキサス)

Glasgow Electric Plant Board - Sunverge 165 Home Pilot

Glasgow Electric Plant Board (EPB)(ケンタッキー)

UCSD Sunverge 10 kW UCSD(カリフォルニア)

PowerStream / Sunverge - 20 Home Ontario Pilot

Power Streme(カナダ)

出所)Sun verge HP、DOE Energy Storage Database

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海外オペレーションレイヤー企業 ⑥Sunverge Energy (4/5)

出所)Sunverve HP、 Greentechmediaより

《利用電池》

《バリューチェーン》

Kakom(韓国)

《利用蓄電システム》

前駆体(原料)メーカー

部材メーカー (正極材、負極材、セパレーター、電解液)

セル(電池)メーカー(Kokam)

Sunverge Energy: インテグレーター(システムの統合、保守・モニタリング)/蓄電システム・パワーエレクトロニクスのサプライヤー※

一般家庭、企業など電気使用者

ソフトウェアメーカー、 パワコンメーカー等

オペレーションレイヤー: ユーティリティ企業(Con Edison、Power Stream)等

太陽光モジュールメーカー (Sunpower)

※プロジェクトによっては他社の蓄電システムを利用、Sunvergeはパワーエレクトロニクスの提供のみの場合もある。

Yunicos(ドイツ)、Valence(米国)

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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 204 出所)Greentechmedia、 Sunverge HPより

海外オペレーションレイヤー企業 ⑥Sunverge Energy (5/5)

《競争力の源泉》

太陽光発電と蓄電を設置した世帯がそのピーク時料金へどのように反応するか、といったノウハウを活かし、顧客であるユーティリティ企業と、利用者である一般電力消費者双方のWin-Winモデルを構築

⇒消費者にとっては電気代の削減

⇒ユーティリティ企業にとっては分散型蓄電池からの 電力の収集・管理ソフトウェアによる再分配というスマートグリッドの実現による、グリッドの安定化・管理の容易化

米国、カリフォルニア州等に留まらず、オーストラリア、ニュージーランドの企業とも提携し、事業を展開するといった、ネットワーク構築力と事業展開力

《事業戦略》

太陽光発電企業のSunpowerと提携し、太陽光発電と蓄電システムのセットで市場展開

一般消費者用分散型蓄電システムを消費者に直接提供するのではなく、ユーティリティ企業に提供するモデルを展開することで、競合との差異化を実現

ユーティリティ企業とともに特定の地域内に蓄電システムを集中的に配置。スマートグリッドの実現を図り、分散型蓄電システムによるスマートグリッドモデルの普及を図る

室温調節器や住宅全体のエネルギー・データ、気象予報データ、通信プラットフォームを使ったエネルギー管理技術も活用

《ビジネスモデルの成立要因》

ピーク電力などによるグリッド安定化の必要性の高まり

電力会社等のユーティリティ企業によるピーク電力対応

カリフォルニア州などの政府による蓄電システム設置の推奨

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≪参考≫Kokam リチウムポリマー電池

Kokam製リチウムポリマー電池は、米国のスマートグリッド実証実験(SDG&EのBorrego Springs Microgrid、SCEのIrvine Smart Grid Demonstration、など)や蓄電池オペレーター(Sunverge)に採用されている。正極材は三元系を使用していると推測される。

リチウムポリマーは電解液としてゲル状の高分子ポリマーが採用されたリチウムイオン電池で、スマートフォンのバッテリーとして広く採用されている。

2002年に、米国で開催された国際マイクロ飛行機コンテストでKokam製蓄電池を採用した飛行機が優勝しており、ここから米国での認知度が上がっている。2003年にはEV用蓄電池の製造を開始し、2005年頃には米国企業の投資を誘致している。2009年には米ダウ・ケミカルとともにJV(現:XALT Energy)を設立するなど、米国での知名度は非常に高いと推測される。

リチウムポリマー電池のイメージ

出所)Sony資料

メリット

液漏れによる揮発、発火の恐れなし

液漏れ対策としてのケースが不要、フィルム包

装でよく、小型・軽量

デメリット

高価。材料費に加えて製造コストが高い

素材が反応性に富み、過充電により発火、炎

上の恐れが高い。

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Ⅲ.海外における蓄電池関連の施策及びビジネスの調査

i. 蓄電池関連ビジネスの市場環境・施策動向調査(実証事業等)

ii.米国現地訪問調査

iii. EV産業の蓄電池産業への影響分析

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1.米国における蓄電池実証の調査 -海外調査方法-

以下のように、米国では電力会社(Utility)を中心に、特に需要家や配電変電所等(以下、需要家等)の低圧部分に蓄電池を使った実証を行っている。

実証事業を行っていることはWebでもある程度把握できるものの、具体的な実証の内容や成果、ステータスについては把握が困難な状況。

背景・目的 進め方 期待される成果

本調査における、蓄電池関連の

施策及びビジネスの調査の文脈

需要家等の蓄電池を活用した実

証事業について現地調査を行う

Webではその詳細がわからない。

<仕様書抜粋> (3)海外における蓄電池関連の施策及びビジネスの調査

蓄電池関連ビジネスについて、アメリカ・ドイツ・オーストラリア等の諸外国の市場環境や施策動向、その背景、将来の市場見通し等について分析する。 (5)海外調査

(2)及び(3)の調査に当たっては、日本のみならず、海外の主要国における動向も把握するべく、必要に応じて現地調査(アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアの3地域程度を想定)も併せて行うものとする。

エネ庁殿からのご了解をいただく

現地企業へのインタビューの可能

性を電話・メール等で確認

現地調査で情報収集を確認して

実施

需要家等における蓄電池設置の

実データに基づく効果及びその検

証結果を把握可能

弊社で調べた限りこれらの実証に

ついて整理した文献はない

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① NRECA/CRN - Distributed Energy Storage Research Project

《プロジェクト概要》

プロジェクトは4電力共同事業体(Distribution Co-ops)と2013年より実施

a) Federated Electric Cooperative

b) Minnesota Valley Electric Cooperative (MVEC)

c) Wright-Hennepin Cooperative Electric Association(WHCEA)

d) Meeker Electric Cooperative

Rural Electric Cooperative(Owner & Operator)によって実施

一部ARRAによるDOEの資金支援を受けている

注:NRECA:National Rural Electric Cooperative Association(米国農業電力協同組合) [全米47州に亘り4200万世帯に電力を供給する900以上の電力供給共同事業体を代表する団体] CRN:Cooperative Research Network [technology research arm of NRECA(NRECAの技術調査部門)]

電力共同事業体 a) Federated b) MVEC c) WHCEA d) Meeker

実施場所 Jackson Jordan Rockford Litchfield

蓄電池の設置場所 Federated本部オフィス 住宅 及び

MVEC本部オフィス 住宅 及び WHCEAの施設

Meeker本部オフィス

蓄電池の容量 11.8kWh×1 11.8kWh×3

(1軒PV連系) 23.6kWh×2

11.8kWh×8 23.6kWh×3 (1軒WT連系)

11.8kWh×1

各プロジェクトの概要

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《プロジェクト内容・目的》

複数の住宅やビルの需要家側(behind the meter)に鉛蓄電池を設置し、需要家側の経済メリットを実現するほか、需要家の蓄電池を束ねる(aggregate)ことで、系統の負荷抑制、安定化に貢献できること、その経済性を確かめることを狙いとする

具体的には、複数の需要家に蓄電池を設置し、Utility(NRECA)がそれらを束ね、管理することで以下を目的としている

需要家のピーク負荷のシフトを行って需要家のコストが低減されること、

系統の混雑抑制、周波数調整やSpinning Reserveのアンシラリーサービスに貢献できること、

停電時のバックアップで電力供給の信頼性向上が図られること、

鉛蓄電池の適合性(性能、コスト)と課題を明らかにすること

① NRECA/CRN - Distributed Energy Storage Research Project

設置個所

蓄電池設置個所 《蓄電池設置個所》

Silent Power Inc.製 鉛蓄電池/PCシステム

家庭用:4.6kW/11.8kWh、オフィス用:9.2kW/23.6kWhの2種類を設置

電池セルは、GSユアサ製の246Ahを採用

Silent Power社は2014年初めに倒産し、現在蓄電池の運用・保守がはっきりしない状況(2014年7月時点)

需要家の低圧ライン(120V/240V)に接続

PVとの連系の場合は、DC/DCコンバータでPVと連系

Critical分電盤を設け、停電時に選択負荷に対し電力供給できるように構成

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《経済性試算》

① NRECA/CRN - Distributed Energy Storage Research Project

Base 4.6kWSystem

Base 9.2kWSystem

Reduced-Cost4.6kW System

Low-Cost9.2kW System

Unit cost $13,000 $18,800 $9,000 $13,015 蓄電システム価格

Unit cost per kWh $1,101 $797 $763 $551 $/kWh 同上 kWh単価

lnstallation cost $I,200 $I,200 $1,000 $1,000 工事費

Nameplate rating 4.6 9.2 4.6 9.2 kW-AC 蓄電池定格 kW

kWh rating 11.8 23.6 11.8 23.6 kWh-AC 蓄電池定格 kWh

Actual rating for 2 hours, 60%DOD 2.7 5.5 2.7 5.5 kW-AC 運用出力

Discharge hours per cyde 2 2 2 2 hours 1回の放電時間

Electric rate when discharging $0.117 $0.117 $0.117 $0.117 $/kWh 放電の電力価格

Electric rate when charging $0.049 $0.049 $0.049 $0.049 $/kWh 充電の電力価格

Demand value (average) $23.51 $23.51 $23.51 $23.51 $/kW/mo ピーク削減対価

Round-trip efnciency 60% 60% 60% 60% % AC充放電効率

Recharge energy per cycle or event 9.00 18.34 9.00 18.34 kWh

Number ofcycles per month 5 5 5 5 per month

Recharge energy per month 45 92 45 92 kWh per month

Recharge cost $2.21 $4.49 $2.21 $4.49 $ per month

Discharge energy per month 27 55 27 55 kWh per month

value ofdischarge energy per month $(3.16) $(6.44) $(3.16) $(6.44) $ per month

Tare load 40 80 40 80 watts per hour 維持消費電力

Monthly tare load 29 58 29 58 kWh-AC/mo.

Tare energy cost $3.42 $6.83 $3.42 $6.83 $per event

Net cost energy for the ES (value for discharge energy less tare load and charge energy)

$2.46 $4.89 $2.46 $4.89 $kWh/mo.

Demand charge savings $63.48 $129.31 $63.48 $129.31 $ per month

Net monthly savings for ES $61.01 $124.41 $61.01 $124.41 $ per month

Financing years 10 10 10 10 years

lnterest rate per year 5% 5% 5% 5% per year 年利率

Monthly payment for battery $122.24 $176.77 $84.63 $122.38 $ per month

Monthly net benefit $(61.22) $(52.36) $(23.61) $2.03 $ per month 利益(月間)

Lifetime net benent $(8,571.36) $(7,330.53) $(3,305.75) $284.85 $ over lifetime Lifecycle利益(11.7年)

DOD 60% 60% 60% 60% DOD

Cycle life 700 700 700 700 cycles

Battery life,in years 11.67 11.67 11.67 11.67 years

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② PG&E Battery Energy Storage Pilot Project

《プロジェクト概要》

Yerba BuenaとVacaの2か所においてNAS電池を利用した実証試験を実施。

蓄電池による、需給調整(ピーク抑制を含む)、電力品質向上、BCP(停電時の自立)対策の効果を実証することを目的に、 Vaca (2012年から)とYerba Buena (2013年から)で実施。

2015年現在は、CAISO Marketにおいて商用運転を実施しているとみられる。

PG&E が蓄電池を運用しており、CEC(California Energy Commission)がファイナンスの支援を、S&C Electric Co. がEPC及び実証設備のインテグレータとして参画、EPRIが実証試験の評価・検証を担当している。

Yerba Buenaでのプロジェクトでは、CECが事業予算1,810万$のうち、330万$を支援。

S&C Electric Co.はPCSやEMSを提供している。

設置個所

蓄電池設置個所 《蓄電池設置個所》

日本ガイシ製 NAS電池

4MW/28MWh(Yerba Buena)

2MW/14MWh(Vaca)

Yerba Buena では、CA州、HGSTの研究施設に隣接して設置し、21kVの配電網に接続。

VacaではVaca-Dixon変電所に設置されている。

注:HGST:HDD等の電子部品を開発製造するハイテク企業(2012年日立が売却)

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② PG&E Battery Energy Storage Pilot Project

《結果》

ピーク負荷の低減とシステムロスの低減に貢献

施設(HGST)の停電時自立運転移行:種々の条件で成功

シミュレーションによるPV、WTの出力平準化:効果的な平準化を実証

CAISOにおけるアンシラリーサービス適合性:1秒以下の負荷応答性を実証

アンシラリーサービスの実証メニュー:①Regulation-Up and Regulation-Down、

②Spinning Reserve、③Non-Spinning Reserve 、④Voltage Support

NAS電池の総合効率(round-trip efficiency):73~79%

施設が停電した際の自立運転移行

出所)PG&E’s NAS Battery Demonstration Projects(2014年)

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③ SDG&E Borrego Springs Microgrid

《プロジェクト概要》

DOEが支援しているマイクログリッドプロジェクトの一つ。蓄電池や分散型電源の利用により、ピークロードの削減や無効電力制御の実証を目的としている。

変電所への蓄電池併設のほか、コミュニティストレージやディーゼルガス発電を導入している。

SDG&Eが運用を担当し、DOEとCECがプロジェクト資金を支援。

DOEは約800万$、CECは約280万$を提供している。

設置個所

蓄電池設置個所 《蓄電池設置個所》

韓国KoKam製のリチウムポリマー電池を採用

変電所設置: 500kW/1500kWhを1台

コミュニティストレージ: 25kW/50kWhを3台

コミュニティストレージは12kVの配電系統に接続

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③ SDG&E Borrego Springs Microgrid

《プロジェクト概要図》

出所)Borrego Springs Microgrid Demonstration Overview (2015年)

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④ SCE Irvine Smart Grid Demonstration

《プロジェクト概要》

スマートグリッドの実証試験。家庭用蓄電池のほか、コミュニティストレージについても実証試験をサブプロジェクトとして実施している。 家庭用蓄電池や複数世帯で活用するコミュニティストレージのほか、配電網の系統安定化を目的に配電網用蓄電池(DBESS)を2014年から設置。

DOEのARRAスマートグリッド実証プロジェクトの一つであり、約8,000万$の内、4,000万$が支援されている。

DBESSの効果についてはまだ報告がなされていない。

予定では2015年12月31日に最終レポートがDOEへ提出される予定である。

設置個所

蓄電池設置個所 《蓄電池設置個所》

韓国KoKam製のリチウムポリマー電池を採用

コミュニティストレージ: 50kW/100kWh

DBESSはA123製のリチウムイオン電池を採用

DBESS:2MW/ 500kWh

DBESSは12kVの配電系統に接続

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④ SCE Irvine Smart Grid Demonstration

《プロジェクト概要図》

出所)SCE’s Irvine Smart Grid Demonstration (2012年)

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Ⅲ.海外における蓄電池関連の施策及びビジネスの調査

i. 蓄電池関連ビジネスの市場環境・施策動向調査(実証事業等)

ii.米国現地訪問調査

iii. EV産業の蓄電池産業への影響分析

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その他の主要なヒアリング内容

【電圧調整の制御方法】

有望と考えるアプリケーションとして電圧調整を挙げていた会社からは、以下のようなコメントを頂いた

電圧最適化と言うとき2通りの側面がある。1つは我々が需要家に供給する電力の電圧を適切な幅に収めることである。もう1つはCVR(Conservation Voltage Reduction;大停電を避けるため、電力会社が事前の予測に基づいて電圧を下げること)で、できるだけ電圧を最小化して、効率的なエネルギー運用を行うことである。我々は蓄電システムを活用して無効電力の吸収や注入を行い、電圧最適化を行っている

【リチウムイオン電池の価格に関する現在の状況及び今後の展望】

リチウムイオン電池のシステム価格は、現在800~1,000$/kWh程度と思われる

あと数年で蓄電池そのものの事業性が成り立つ価格になるという機運が高まっている

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Ⅲ.海外における蓄電池関連の施策及びビジネスの調査

i. 蓄電池関連ビジネスの市場環境・施策動向調査(実証事業等)

ii.米国現地訪問調査

iii. EV産業の蓄電池産業への影響分析

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(1)PlanGridEV(欧州) -①概要-

期間:2013-2016

予算:7,500,000€(内EU負担分は4,800,000€)

参加国:ドイツ(RWE)、イタリア(ENEL)、アイルランド(ESB Networks)、ポルトガル(EDP Distribuição)

内容:各国配電会社、研究機関、自動車会社が参加するFP7の実証の一つ。大量普及したEVの統合制御を活用し、分散型電源の最大限の導入を可能とする新たな配電計画及び運用手法の確立を目的とし、ドイツ、イタリア、アイルランド、スペインの各国の配電会社(DSO; Distribution System Operator)の配電網を利用した実証実験を実施。

目的とEVの位置づけ: EVの統合制御を活用した新たな配電計画手法及び運用手法の開発

成果:

4カ国の実証フィールドにおいて、EVの充電制御を用いた配電系統の電圧調整等に関する実証実験を終了。

上記成果に基づき、欧州の配電系統におけるEVを活用した新たな系統の構築手法に関する報告書を2015年12月に公開。

今後の展開:

実証結果に基づき、WP7にて、Reccomendationやビジネスモデル、開発戦略等の検討を実施。

本プロジェクトの特徴

これまでの実証にて開発された通信規格やGreen eMotion Projectにおけるビジネスモデルの検討に基づき、実際に配電系統を用いた実証を実施、将来的な配電系統の計画や分散型電源の導入拡大にEVの活用を志向。

実装・導入

図 PlanGridEVプロジェクトのWP構成 出所)http://www.plangridev.eu/project/workplan.html

SGAM:Smart Grid Architecture Model

スマートグリッド全体が3次元で表現された、相互接続性を確保するためのモデル。電力機器を表すドメイン軸、制御対象範囲を示すゾーン軸、サービスや機能を配置する相互接続レイヤの3つの軸で表現される。

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(1)PlanGridEV(欧州) -②実証シナリオ(1/2)-

PlanGridEVでは、EVが低~中電圧網に組み込まれる際の電力需給の調整方法について4つのシナリオを定義し、それぞれについて欧州各国において実証実験を実施している。

V2H/V2Gに関しては、双方向の電力のやり取りを行うSmart Gridシナリオが適合する。

シナリオ名 Conventional Safe Proactive Smart Grid

充電の負荷調整 無し 車両中心

(Soft fleet-focused)

大規模

(Massive)

大規模かつ局所

(Massive, Local)

電動車による負荷調整の方法 無し On/Off On/Off 電力量調整

系統の容量拡大

EV関連 最小限 有り 最小限 無し

EV関連以外 最小限 最小限 無し 無し

電力の流れ 系統→EV 系統→EV 系統→EV 系統⇔EV

サービスの提供者 EVSE* Operator EVSE Operator EVSE Operator EVSP

報酬の仕組み 無し 使用時間 個別契約 競争市場

発電量の制御方法

緊急制限 集中管理 集中管理 集中管理 集中管理

将来予測に基づく制限 無し 集中管理 分散管理 分散管理

リアルタイム制限 無し 無し 無し 分散管理

TSO向けアンシラリーサービス 無し 無し 無し 分散管理

電力交換 無し 無し 無し 分散管理

分散型電源統合制御 無し 無し 無し 分散管理

V2G/V2Hに関連するユースケース

出所)PlanGridEV「D5.1 Selection of use cases and testing infrastructure at DSOs」より三菱総研作成

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(1)PlanGridEV(欧州) -②実証シナリオ(2/2)-

前頁の4つのシナリオは、ポルトガル、アイルランド、ドイツ、イタリアの4か国のTest Bedにて実証が行われている。(一か国内で複数シナリオを実証)

本調査では、特にV2Gに関連する「Smart Grid」シナリオの実証を行っているドイツ(RWE社)及びイタリア(Enel社)における実証について詳細を確認する。

DSO 国 都市/地方 需要家規模 シナリオ

ESB アイルランド 地方 4世帯、11人 Conventional-Safe

シナリオ

EDP ポルトガル 都市部 1238世帯、

2971人

Conventionalシナリオ

ENEL イタリア 都市部 1925世帯、

5390人

Proactive-Smart

Gridシナリオ

RWE ドイツ 地方 173世帯、

565人

Proactive-Smart

Gridシナリオ

Test Bed位置図 各Test Bedにおける実証概要

V2G/V2Hに関連するユースケース実証

Italy

Ireland

Germany

RWE Test Bed

Portugal

ENEL Test Bed

ESB Test Bed

EDB Test Bed

出所)PlanGridEV「D5.1 Selection of use cases and testing infrastructure at DSOs」より三菱総研作成

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EV/EVSE

(1)PlanGridEV(欧州) -③実証スキーム(ドイツ・RWE)(1/2)-

ドイツにおける実証スキームの詳細を示す。需要想定及び分散型電源の発電量想定に基づき、DSOより各需要家やEV、電力設備への制御シグナルが発信される。家庭内のEVはHEC(Home Energy Controller)経由で制御が行われる。

DSOからの信号プロトコルについては、「電力が用いる標準(Standards)に準拠すべき(should conform)」と定められており、特定のプロトコルは規定されていない。ただし、充電制御に関する通信については、将来的にISO/IEC 15118の活用を志向している。

DSO

需要家

Smart operator

HEC (※)

分散型電源

Demand

電力設備

Forecasting tool

⑤リソース制御

(ISO61850 or

ISO 60870 etc.) ※Home energy Controller

スキーム概要

①系統監視 DSOにおいて系統の状態監視を行う ②系統状態の推定 ①のモニタリングデータより系統状態を示す各種パラメー

タを推定 ③発電量・需要予測 天候データ及び過去の需要データ等より、24時間分の

需要と発電量の予測を実施(リアルタイムで更新) HECは家庭の予測需要量をDSOに送付する

④系統解析 ③を考慮し、系統状態をSmart operator が解析

⑤充電制御(需要家、電力設備) 低圧系統のコンディションに応じて、系統の制限値に収ま

るよう、DSOにて変圧器、開閉器等のリソースの制御を行う

また、DSOはHECに対してインセンティブと制御シグナル(On/Off またはOpen/Close)を配信

家庭の需要家は、DSOからの制御シグナルに応じて、自身の望む充電等を選択することが可能

①モニタリング

②系統の

状態推定

ドイツ(RWE)での実証スキーム

③発電量・

需要予測

⑤リソース制御

(ISO 62746,

OpenADR etc.)

Monitoring & Control

③需要予測

⑤充電制御

(将来的にはISO/IEC 15118の利用等を志向)

出所)PlanGridEV「D5.1 Selection of use cases and testing infrastructure at DSOs」より三菱総研作成

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EVユーザー

(1)PlanGridEV(欧州) -③実証スキーム(イタリア・Enel)(2/2)-

同様にイタリアにおける実証スキームの詳細を示す。DSOの定めたターゲット需要に対し、EVユーザーの希望する充電スケジュールを考慮し、EVの充電スケジュールを設定する。

ドイツでの実証と同様、DSOからの信号プロトコルについては、特定のプロトコルは規定されていない。一方、充電制御に関する通信については、将来的にISO/IEC 15118の活用を志向している。

DSO

EVSE

EVSE operator

分散型電源

Demand

※Home energy Controller

スキーム概要 イタリア( Enel )での実証スキーム

(発電量・

需要予測)

①ターゲット需要の設定 分散型電源の発電予測及び需要予測に基づき、DSO

にてターゲット需要が設定される。 ②ユーザーが希望する充電スケジュール設定 電動車のユーザーから、サービス事業者(EVSP等)を

介して、希望する充電スケジュールが送られる。 ③充電制御 ①、②のインプットに基づき、充電設備の運用者(主に

はDSOが運用)による個々の電動車の充電制御が行われる。

緊急時以外は、原則として電動車ユーザーの希望する充電スケジュールが優先される。

EVサービス

事業者

②ユーザーが希望する

充電スケジュールの設定

③充電制御

(将来的にはISO/IEC 15118の利用等を志向)

Distribution Management

System (DMS)

①ターゲット需要の設定

出所)PlanGridEV「D5.1 Selection of use cases and testing infrastructure at DSOs」より三菱総研作成

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(2) Open VGI Platform(米国) -①概要-

期間:2012~2018 (Phase 1: 2014まで、Phase 2: 2016まで、Phase3: 2018まで)

参加国:米国カリフォルニア州(コーディネーター)、カナダ(電力会社)、日本(プラットフォーム構築)

内容:EV・電力会社・需要家・OEM機器を統合制御するためのプラットフォーム(Open Vehicle-Grid Integration Platform)の構築。その際、既存標準との適合性・オープンなインターフェースやデータ・安全性・展開可能性・あらゆる通信方法への対応(Private WAN, Public WAN, Automotive Private WAN)に留意する。

目的とEVの位置づけ:地球温暖化緩和に資する交通モードとしてEVを導入するにあたり、その負荷平準化や再生可能エネルギー導入の補助となるようなシステムを開発する

成果:

2014年10月にPhase1実証が完了、12月に報告書が完成

⇒デマンドレスポンスと需要緩和の機能を備えたPEVをグリッド連携させるためのソフトウェア開発(オフピーク時の自動充電、運転者によるDR参加・不参加の決定機能等)、実証実験

今後の展開:

Phase2は以下を目的とする

上記システムを住宅用・商業用に対応させ、地域単位でのデマンドマネジメント(リアルタイムプライシング)に対応

VGIが各ステークホルダーに与える価値を明確化

相互運用性を実現するために標準仕様とすり合わせる

利用者にとって使いやすいようにシステムを簡素化

本プロジェクトの特徴

利用者まで含めたデマンドレスポンス、リアルタイムプライシングが主眼

システム開発(Phase1)

出所)EPRI “Smart Charging and Vehicle Grid Integration”

図 Open VGI Platformの全体像

PP

SEP2IEC/ISO15118Client/Server

Open ADR 2bVEN/VTN

Data/TariffRepository

OpenAPI

Aggregation

Demand Response

Measurement &Verification

Measurement &Verification

Dynamic Pricing

Frequency Regulation

Energy Market Interface

System Coordination

UtilityDRAS

HomeEMS

Charging Network Provider

BuildingEMS

OPEN VGI Platform

Open Standard“Infrastructure”

Applications

Future Extensions

Security Privacy

実装・導入(Phase2)

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(2) Open VGI Platform(米国) -②EV制御方式-

OpenVGI Platformにおいては、EPRI(米国電力中央研究所)が中心となって検討されたOEM Central Serverが用いられている。

本システムでは、複数の自動車会社(OEM; Original Equipment Manufacture)のサーバーを統合することで多様なメーカのEVをアグリゲートし、電力会社に対して変動負荷として提供するビジネスケースを志向。

通信方式の違いにより、2種のインターフェースによる実証が行われている。

• OpenADR 2.0プロトコルを用い

た間接的なデマンドレスポンス

• 電動車両の充電をアグリゲート

し、電力側から見て変動可能

な負荷とする

サーバーケース

AMIケース

• スマートメーター(AMI)や

SEP2.0によるHAN(Home

Area Network)を用いた直

接的なデマンドレスポンス方式

• 個別の電動車を電力会社が

直接制御する

出所)EPRI「Smart Charging and Vehicle Grid Integration」

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(2) Open VGI Platform(米国) -③今後の検討-

2015年以降、Phase2実証として、ビジネス実装に向けた大規模実証を行い、ユースケース検討や各種通信規格を用いたインターフェース構築を行う予定。

EPRI主導の概念実証

OEMセントラルサーバーを用いたEVと電力系統の双方向コミュニケーションの実証

ビジネス実装に向けた大規模実証

B to B及びB to Cのユースケース検討

SEP2.0、IEC/ISO 15118 などの通信規格を用いたインターフェース構築

実証項目 内容

ユースケースの検討 配電系統に分散設置された電動車によるDRアグリゲーション(PG&E)

リアルタイムプライシングによる負荷制御(SDG&E)

電動車向け電気料金スケジュールを用いた家庭でのデマンドレスポンス(SCE)

EV充電システムとエネルギーマネジメントシステムを用いた負荷調整

ステークホルダーに対する

価値の検討

自動車会社:電動車統合制御を行うインセンティブ

消費者:プラットフォームへの参加インセンティブ

技術開発 相互運用性(interoperability)を確保するための標準的なインターフェースの構造設計

標準的なプロトコルと非標準的なプロトコルの統合

消費者受容性の向上 利便性やコスト抑制の検討

消費者にとっての多様な選択肢(メニューの提供の検討)

Phase1(~2014年) Phase2(2015年~)

Phase2における実証項目

OEMセントラルサーバーを用いた実証実験スケジュール

出所)EPRI「 Smart Charging and Vehicle Grid Integration 」より三菱総研作成

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≪参考≫欧米におけるV2H/V2G関連の通信規格の検討状況

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EV-電力系統間のインターフェースに関する規格

欧米における電力系統とEVのインターフェースに関するユースケースや通信プロトコルについては、欧州においてはISO/IEC 15118、米国ではSAE J2847(SEP2.0)、J2931等において規格化の検討が進められている。

これらの検討は連携して進められており、SAE J2836はISO/IEC 15118のPart 1として、SAE J2847は、ISO/IEC 15118 Part2の通信インターフェースとして、SAE J2931はISO/IEC 15118 Part 3として新たな国際標準の策定につながっている。

5 Session

4 Transport

3 Network

2 Data Link

1 Physical

6 Presentation

Layer

7 Application

SAE J2836Use cases

SAE J2847Messages, Sequences & Timing

SAE J2931Protocols, Security &

Communication technologies

ISO / IEC 15118 Vehicle to grid communication interface

Part 1: General information and use-case definition

ISO / IEC 15118 Vehicle to grid communication interface

Part 2: Technical protocol description and Open Systems

Interconnections (OSI) layer requirements

ISO / IEC 15118 Vehicle to grid communication interface

Part 3: Wired physical and data link layer requirements

出所)NEDO「電気エネルギーの充放電に伴う車両とインフラ間のインターフェースの国際標準化に関する検討報告書」

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参考)ISO/IEC 15118の検討状況

ISO/IEC15118における各規格の検討状況は下記の通り。

プロトコルの概要と使用例を規定したISO/IEC 15118-1と、ネットワークとアプリケーション層の仕様を規定したISO/IEC 15118-2は国際規格(IS)として発行済み。また、物理層とデータリンク層の仕様であるISO/IEC 15118-3も2015年5月にIS発行。

出所)EPRI 「Infrastructure Working Council (IWC)」 Rich Scholer氏プレゼンテーション資料

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SAEにおけるEV-電力系統間のインターフェースに関する規格

SAEにおけるEV-電力系統間のインターフェースに関する規格の整理は下記の通り。

出所)EPRI 「Infrastructure Working Council (IWC)」 Rich Scholer氏プレゼンテーション資料

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≪参考≫V2H/V2Gプロジェクトレビュー

i. EU諸国

ii. 米国

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(プロジェクト名) 主要コンポーネント

期間:プロジェクト期間

費用:プロジェクト費用

参加国:プロジェクト参加国・参加企業所属国

内容:プロジェクト内容

目的とEV位置づけ:プロジェクトの目的、目的におけるEVの位置づけ(あれば)

成果:

成果品

発表資料

今後の展開:

今後の展開(横展開・深堀等) プロジェクトイメージ

本プロジェクトの特徴

各プロジェクトを他プロジェクトと比べた時の特長

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PowerUP Project

期間:2011/07/01~2013/06/30

費用:3,544,246€(内EU負担分は2,413,515€)

参加国:スロバキア(コーディネーター)・オランダ・イタリア・フランス・ギリシャ・ドイツ・スウェーデン

内容:V2Gインターフェースの開発(V2Gインターフェースプロトコルの標準化、V2G関連機器のプロトタイプ制作、V2Gシステムの実証実験と相互運用性確認試験設計 ※特に充電機器とスマートメーターを主眼におく)

目的とEVの位置づけ:EV車の大量導入のための機器・システム開発

出所) http://www.power-up.org

図 PowerUp Projectスコープ

成果:

車両側関連機器(バッテリーマネジメントやHMIと連携)、インフラ側関連機器(スマートメーターと連携)、接続機器(既存のUPA・HomePlug・G3インフラと連携)のプロトタイプ製作

ISO/IEC試験標準における、TTCN-3ベースの動作信頼性試験仕様(ISO/IEC 15118-2に対応した動作信頼性試験仕様)

プロジェクト成果(全体像・開発アーキテクチャ・製品/システム/試験仕様・実証実験設計と結果)はDeliverablesとして公表

今後の展開:

標準化設計は既存のIEC 15118-2、62056をベースに行われ、成果はIEC TC69・IEC TC13に反映

動作信頼性試験設計は、ETSI(欧州電気通信標準化機構)にて活用

本プロジェクトの特徴

既存の標準と連携が進んでいなかった、充電機器とスマートメーターに主眼

V2G標準に対応した初の動作信頼性試験仕様策定

機器・システム標準化

動作信頼性試験設計

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SMARTV2G Project

期間:2011/06/01~2014/05/31

費用:3,274,370€(内EU負担分は2,520,000€)

参加国:スペイン(コーディネーター)・スロヴェニア・ドイツ・イタリア

内容:EVと系統間での安全・安定的な情報通信を実現するための接続確立(制御システム、EV-充電ステーション間の情報処理プロセスに関する設計、標準仕様策定、成果の実証実験)

目的とEVの位置づけ:持続可能な都市形成を達成するにあたり、EV車の大量導入による系統への負荷を平準化

出所) http://www.smartv2g.eu/publications.html

成果:

充電ステーション開発、EV・ステーション・スマートグリッド間の情報通信網/インターフェース開発、電力品質維持のためのスマートグリッドサービス開発(制御センター、電力需要予測システム・稼働V2G予測システム)、利用者システムの開発

開発されたシステムの使用はDeliverablesとして公表

今後の展開:

開発された各機器・システムをEU内で普及

充電ステーションはETREL・ITEによって、制御センターはCIT

Developmentによって、予測システム(電力需要・EV稼働)はElektro Lubljanaによって、情報通信に係る標準仕様策定はFraunhofer ESKによって行われる見通し。

本プロジェクトの特徴

充電ステーション・EV・スマートグリッド間の情報通信システムに主眼が置かれており、制御センターや需要予測アルゴリズムの開発が行われている

利用者サービスの開発も同時に行われている

図 SMARTV2G Projectシステム構成

システム開発

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COTEVOS Project

期間:2013/09/01~2016/02/29

費用:5,648,413€(内EU負担分は4,351,777€)

参加国:スペイン(コーディネーター)・オランダ・ポーランド・スロバキア・ドイツ・オーストリア・イタリア・デンマーク

内容:EVとEVSE間の情報通信に関する相互運用性・動作信頼性を試験するための設計、体制の確立

目的とEVの位置づけ:EU域内でのEV走行を可能にするため、関連機器・システムの相互運用性確立

出所) http://cotevos.eu/publications/

成果:

ISO/IEC 15118(V2G通信インターフェースに関する標準)のPart 1-3に関する動作信頼性試験設計は完了

各仕様の内容に関してはDeliverableとして公表

今後の展開:

ISO/IEC 15118 Part 4、5に関する動作信頼性試験設計を2016年までに完了予定

動作信頼設計を完了次第、新しい試験設計による試験施設を設計予定

プロジェクト期間は2016年2月末までだが、遅延予定

本プロジェクトの特徴

主眼はあくまでEVSEとEV間の情報通信の相互運用性に関する動作信頼性試験の設計

将来的なV2G需要を見越して、スマートグリッドにおけるプロトコル、データ通信等の要素も試験設計の中に組み込まれているが、セカンダリーアクターとして捉えられている(主要対象ではない)

図 COTEVOS Projectシステム構成

動作信頼性試験設計

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e-DASH Project

期間:2011/09/01~2014/08/31

費用:8,533,674€(内EU負担分は5,300,000€)

参加国:ドイツ・デンマーク・スロバキア・スペイン・フランス・イタリア

内容:欧州の電力グリッドにおける電動車両のリアルタイム連携を達成するための情報通信技術やプロセスの開発(各EVに対する最適化バッテリーマネジメント・複数EV車管理によるデマンドレスポンス開発、系統側の電力需要配分サービス開発、予備電力市場の開発)

目的とEVの位置づけ: EV車の大量導入による系統への負荷を平準化

成果:

左図に表されるようなシステムの開発

今後の展開:

不明

本プロジェクトの特徴

EVを系統に電源として組み込むことを想定して、EV個車のバッテリー最適化のみならず、複数EVの稼働を管理し、電力需要と合わせて管理することで、価格設定や電力市場の開発を試みている。

出所) http://edash.eu/

図 e-Dashプロジェクトスコープ・WP構成

システム開発

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Green eMotion Project

期間:2011~2015

費用:42,000,000€(内EU負担分は24,000,000€)

参加国:ドイツ・デンマーク・フランス・スペイン・イタリア・ベルギー・ギリシャ・日本・アイルランド・オランダ・英国

内容:デモ地域における実証実験・データ収集・分析を通じて、相互運用可能な電動車両システムの欧州フレームワークを策定すること。(電動車両システムに関する標準仕様の策定、インターフェースのIT設計、インフラ設計・開発、相互運用性の試験・確認、ステークホルダー間調整、実利用や受容度における課題の整理)

目的とEVの位置づけ: 持続可能な都市形成を達成する交通モードとしてのEVの導入促進に資する、機器・システム・標準化等・規制・都市計画の検討

成果:

各WP成果は随時Deliverableという形で公表

プロジェクト総括として最終レポートが公表。大きく3パートにより構成:①電動車両システムの社会的需要に向けた課題、②EU全域での相互運用に向けた課題、③経済面での課題

今後の展開:

標準化に関する成果は各機関にフィードバック

自治体に関する提言は、ベストプラクティスのハンドブックを提供

研究成果をまとめたEducational websiteの創設

本プロジェクトの特徴

EVの普及における課題を洗い出すために、社会的側面(計画面・心理面)や経済的側面からの検討が行われている。

高度なシステムや機器仕様の設計は本プロジェクトの主眼ではない。

政策的・社会的課題検討

出所) http://www.greenemotion-

project.eu/upload/pdf/about_us/Green_eMotion_short.pdf

図 Green eMotionプロジェクトのWP構成

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IoE Project

期間:2011/05/01~2014/04/30

費用:44,564,257€(内EU負担分は7,442,230€)

参加国:ノルウェー・ドイツ・ルクセンブルグ・イタリア・スペイン・オランダ・英国・オーストリア・ベルギー・フィンランド

内容:ARTEMISの3年プロジェクトであり、EV導入にあたってスマートグリッドインフラに関するアーキテクチャを提言する。(蓄電機器等やスマートメーター等のハードウェア機器の開発、データ処理システムやセキュリティ・ビジネスモデルや都市計画などのソフトウェアの開発・提案、データ処理システムと各種発電源を接続するためのミドルウェア接続)

成果:

本プロジェクトの結果に関する報告書等は公表されていない

プロジェクト期間中に参加メンバーによって発表された各種論文がPublicationsとしてウェブサイトに公開

今後の展開:

不明

本プロジェクトの特徴

具体的な内容は不明

システム開発

出所) http://www.artemis-ioe.eu/index.htm

図 IoEプロジェクトのコンセプト

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Smart Grid V2X Energy & Mobility Project

期間:2014-2016

予算:1,600,000€(TKI研究としての位置づけ)

参加国:オランダ(アムステルダム・ロッヘム)(Cofely, Alliander, ABB, Mitsubishi Motor Corporation, Amsterdam Smart City, Amsterdam University of Applied Sciences, Nieuw-West地区)

内容:2014 Vehicle2Home(ロッヘム)、2015 Vehicle2Building(アムステルダム)、2016 Vehicle2Grid(アムステルダム)の3部構成となっており、Vehicle2Home・Vehicle2Buildingに関しては最終フェーズのVehicle2Gridに向けた実証実験としての立てつけ。

目的とEVの位置づけ: PV等再生可能エネルギーの自家消費を達成するにあたり、 EV車による供給量変動の緩和

成果:

Vehicle2Home 2014が2月より開始し、実証実験の対象世帯に対して、システム(家庭をスマートグリッドに接続し、EVから充電・放電するか選べる)運用・データ収集

⇒当該システムの導入により、グリッドからの電力消費が全消費電力に占める割合が83%から27%に低下(3月データ)

今後の展開:

Vehicle2Homeの結果を踏まえ、Vehicle2Building・Vehicle2Grridで徐々にスケールアウト、最終的には特定の道路全体または近隣地域全体を対象とした導入を検討

本プロジェクトの特徴

PVなどの再生可能エネルギーによるエネルギー自給が最終的な目標であり、EV車のエネルギー貯蔵はこれに貢献するものとして捉えられている。この背景から、EV車におけるエネルギー貯蔵と再生可能エネルギーなどの分散型電源との連携が重視されている。

実装・導入

出所)http://amsterdamsmartcity.com/projects/detail/id/72/slug/vehicle2grid”

図 Vehicle2Gridの全体像

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≪参考≫V2H/V2Gプロジェクトレビュー

i. EU諸国

ii. 米国

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≪再掲≫ Open VGI Platform

期間:2012~2018 (Phase 1: 2014まで、Phase 2: 2016まで、Phase3: 2018まで)

参加国:米国カリフォルニア州(コーディネーター)、カナダ(電力会社)、日本(プラットフォーム構築)

内容:EV・電力会社・需要家・OEM機器を統合制御するためのプラットフォーム(Open Vehicle-Grid Integration Platform)の構築。その際、既存標準との適合性・オープンなインターフェースやデータ・安全性・展開可能性・あらゆる通信方法への対応(Private WAN, Public WAN, Automotive Private WAN)に留意する。

目的とEVの位置づけ:地球温暖化緩和に資する交通モードとしてEVを導入するにあたり、その負荷平準化や再生可能エネルギー導入の補助となるようなシステムを開発する

成果:

2014年10月にPhase1実証が完了、12月に報告書が完成

⇒デマンドレスポンスと需要緩和の機能を備えたPEVをグリッド連携させるためのソフトウェア開発(オフピーク時の自動充電、運転者によるDR参加・不参加の決定機能等)、実証実験

今後の展開:

Phase2は以下を目的とする

上記システムを住宅用・商業用に対応させ、地域単位でのデマンドマネジメント(リアルタイムプライシング)に対応

VGIが各ステークホルダーに与える価値を明確化

相互運用性を実現するために標準仕様とすり合わせる

利用者にとって使いやすいようにシステムを簡素化

本プロジェクトの特徴

利用者まで含めたデマンドレスポンス、リアルタイムプライシングが主眼

システム開発(Phase1)

出所)EPRI “Smart Charging and Vehicle Grid Integration”

図 Open VGI Platformの全体像

PP

SEP2IEC/ISO15118Client/Server

Open ADR 2bVEN/VTN

Data/TariffRepository

OpenAPI

Aggregation

Demand Response

Measurement &Verification

Measurement &Verification

Dynamic Pricing

Frequency Regulation

Energy Market Interface

System Coordination

UtilityDRAS

HomeEMS

Charging Network Provider

BuildingEMS

OPEN VGI Platform

Open Standard“Infrastructure”

Applications

Future Extensions

Security Privacy

実装・導入(Phase2)

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Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 243

CAエネルギー委員会 “Air Force Vehicle-to-Grid Demonstration”

期間:具体的な開始・終了時期が不明だが、現在進行中

費用:USD470百万(カリフォルニアエネルギー委員会資金)

参加機関:CAエネルギー委員会、LA空軍基地、国立研究機関、電力事業者、私営企業等40以上の機関

内容:空軍基地内で34台のPEV(リチウムイオン電池各種搭載)を導入、充電ステーションにて充電・放電できるシステムを構築。電力売買市場・アンシラリーサービス市場の形成もプロジェクトの一環であり、PEV所有者はグリッドへの電力供給によって利益を得ることが可能。

目的とEVの位置づけ:マイクログリッドの運用を実現する資源としてのEVとするため、関連機器・システムを開発・実証

成果:

2015年5月時情報:導入予定の34車両の内20車両・20充電ステーションの設置完了

⇒全体では996kWhの電池容量(50kW容量の車両を5車両・15kW容量の車両を29車両)となる予定

今後の展開:

実証実験期間後は、蓄電池の個数を変えて全体へのインパクトを分析する予定。

Fort Hood, Joint Base Andrews, Joint Base McGuire-Dix-

Lkehurst and Mountain View Army Reserve Centerも後々対象地域となる見通し

本プロジェクトの特徴

EV車の系統における役割としてアンシラリーサービスも言及されている

V2G実証実験としては世界最大級

参考)http://www.energy.ca.gov/research/energystorage/tour/af_v2g/

参考)https://building-

microgrid.lbl.gov/sites/all/files/projects/LAAFB%20Diagram.png

システム開発

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Grid on Wheel Project

期間:2012/09/01~(継続中)

参加機関:eV2g(デラウェア大学とNRG EnergyのJV)、BMW、AutoPort

内容:EV車両搭載蓄電池のアグリゲーションソフトウェアの電力市場導入(これにあたって企業向けのBMW E車両2年リース契約を提供。メンテナンスコスト込の年間USD3600のリース料。充電器は購入者負担。)

目的とEVの位置づけ:アンシラリーサービス資源としてのEV実現のための、システム開発・実装

成果:

2008年に、7車両におけるEV車載蓄電池のアグリゲーションソフトウェア・周波数制御機能の実証実験に成功

2012年より数十台のEV車を含む、PJM(電力会社)の発電所として認定される規模へと拡大

2013年にはPJMのアンシラリーサービス市場において系統制御機能による利益の創出

今後の展開:

本プロジェクト参加企業(利用EV車両数)を増やして規模を拡大していく。

出所)https://chargedevs.com/newswire/university-delaware-to-offer-bmw-

mini-e-evs-for-lease-in-v2g-project/

http://grid-on-wheels.com/ 出所)http://www.evgrid.com/blog/item/5179e34aa6c509af0c000006

本プロジェクトの特徴

EV車載蓄電池を活用した初のアンシラリーサービス市場参入事例

実装・導入

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Real World Application of SAE Protocol

期間:2013/1~2014/1

参加機関:トヨタ・Duke Energy・Energy Systems Network・住友電工

内容:トヨタPHV車両と電力網をつなぐ共同実験。EV・EVSE・グリッド間の通信システム、EV車両の充電状況管理システム性能の実証。米国インディアナ州を対象として、5台のPHV充電器を系統接続し、デマンドレスポンスシステム・充電管理システムの実証実験を行った(SAE J2931に基づくシステム)。(最初の半年はDuke Energy従業員を対象にHMI・システムフィードバックの実証実験、かつ安全性の確認。翌半年は、一般家庭を対象としたパフォーマンス・受容度に関する実証)

目的とEVの位置づけ:デマンドレスポンス資源としてのEV、そのための機器・システムの実証

成果:

実証実験・分析は完了。

DR要請時の対応確率は80%以上。システム要請によるオフピーク充電の対応確率は95%以上等、システム機能と利用者反応に関する分析を完了。

上記分析より、SAE J2931/2836/2847はデマンドレスポンスへの活用基準として適切であると結論。

本プロジェクトの特徴

SAE基準のシステムにおける適切性の実証実験、分析プロジェクトとなっている。

システム開発

参考 EPRI “Infrastructure Working Council Presentations Day One”資料トヨタパート (2014.3)

SAE(Society of Automotive Engineers) 規格:陸上輸送・航空宇宙機器分野の団体標準である。J2931はPEV・EVSE・電力事業者のサービスインターフェース・メーター・家庭ネットワーク間の情報通信に関する基準。J2836はPEV・電力系統間の電力通信のユースケース特定。J2847はPEV・電力系統間の電力通信基準

標準仕様試験

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≪参考≫V2G-Sim Project

期間:2014年にライセンス販売

費用:Laboratory Directed Research and Development資金を活用

参加機関:Lawrence Berkeley National Laboratory

内容:PEV個車の種類・走行距離/時間・充電時間・場所等が系統電力に与える影響をシミュレーションするモデル。1台~100万台規模の導入に関するシミュレーションを実施可能。

目的とEVの位置づけ:EV大量導入にあたる系統への負荷予測

成果:以下の分野におけるシミュレーション適用事例を公表

車両サイド:バッテリー劣化・走行距離パターンとバッテリーの関係分析等

EV車両使用サイド:EV車両によって代替可能全米トリップ数・量分析等

系統サイド:デマンドレスポンス分析・再生可能エネルギーとの併用・PEV稼働予測等

本プロジェクトの特徴

シミュレーションソフトのライセンスを販売していると同時に、V2G関係者に対するコンサルティングや共同開発を行っている。

参考 http://v2gsim.lbl.gov/overview

シミュレーション

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Ⅳ.蓄電池等の競争力比較

i. コスト構造分析

ii. 蓄電池比較表

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1.蓄電池セルのコスト構造分析と量産効果の試算方針

実施内容 既往モデル等を元に、蓄電池セル及びPCSのコスト構造分析及び量産効果の情報をアップデートした。

ヒアリング調査等の実施により、PCSのコスト構造と量産効果について検討した。

部材(セル・周辺パーツ)調達量の増

→調達価格の削減

<原材料コスト等(可変費)の低減> <設備費等(固定費)の低減>

製造設備の稼働率上昇

→設備製造費の削減

蓄電池セル

部材1 部材2

製造コスト

コスト

リチウムイオン電池セルの量産効果 PCSの構造

PCS

筐体

IGBT

リアクトル

その他

電子部品

制御ユニット

モニター

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2.既往調査結果(セルコスト)

2010年時点での1工場当たりの製造能力が平均500MWh/年であると仮定した。 2010年に竣工した東芝のリチウムイオン電池製造工場は製造能力が年間約450MWh。

2010年度の機械統計によると、リチウムイオン電池の価格は38,000円/kWh。

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

100,000

LMO NMC LFP LMO NMC LFP LMO NMC LFP

10MWh 100MWh 1,000MWh

セル

コス

ト(円

/kW

h)

正極材料 負極材料 電解質セパレータ セル部品 直接労務費間接材料・労務費 製造設備費 販売費・一般管理費利益

出所)「系統連系円滑化蓄電システム技術開発」共通基盤研究、H19-H22年度(NEDO)より

リチウムイオン電池セルの量産効果 リチウムイオン電池セルのコスト構造

正極材料14%

負極材料9%

電解質6%

セパレータ14%

セル部品6%直接労務費

3%

間接材料・

労務費1%

製造設備費30%

販売費・一

般管理費14%

利益3%

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≪参考≫ 経験曲線(量産効果)(1/2)

経験曲線は累積生産量(もしくは業務量)増加による、生産コストの減少を示す。 1960年代にBCGの創業者である、B. Hendersonによって提唱された概念。1970年代に様々な産業において経験曲

線が確認されている。

学習曲線が累積生産量の増加により、労働投入量が減少することを示しているのに対し、経験曲線では実質コストが下がるとしている。学習曲線よりも広義の概念を持つ。

出所)BCG Perspective

フォード製の車両価格推移 集積回路の価格推移

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≪参考≫ 経験曲線(量産効果)(2/2)

経験曲線から、蓄電池製造工場の能力に応じた量産効果を算出する式を作成した。 製造コストが減少する理由としては、労働者の能率向上、作業の専門化と方法の改善、新しい生産工程の導入、生産設

備の能率向上、活用資源ミックスの変更、製品の標準化、製品設計による改善、歩留まりの向上、といった要因が挙げられている。

初期コストについては確認が困難なため、設備稼働率や大量調達を表す係数であると解釈している。

コスト弾力性は、生産量が1%増加した際のコストの増加(減少)率を示している。

出所)BCG Perspective

部材価格= 𝛼 + 𝛽 ∙ 𝑁−𝜎

原材料価格(下限値)

設備稼働率・大量調達

年間製造量 コスト弾力性

𝐶𝑛 = 𝐶1 ∙ 𝑛−𝜎

n個目の製品コスト

1個目の製品コスト

累積生産数 コスト弾力性

本調査における量産効果算出式

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0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

10 MWh 100 MWh 500 MWh 1,000 MWh 10,000 MWh

今回 既存

3.セルのコスト構造分析(製造コスト) -直接労務費(人件費)の推計-

直接労務費は3/4乗則によって推計している。 人件費は、国税庁の「民間給与実態統計調査結果」における製造業での平均年間給与と、総務省統計局の「労働力調

査」における製造業、電気機械器具製造業での生産工程従事者の平均年間就業時間から算出。 平均年間就業時間を1,900時間から2,000時間へ、平均人工単価を3,000円/時から2,750円/時へと変更。

総人件費は文献調査での結果を基準として、3/4乗則を適用している。 3/4乗則により、製造能力が10倍になった際に、総人件費が10の3/4乗(≒5.6)倍に増加する。

NEDO事業では超電導電力貯蔵システム(SMES)のコスト算定に利用している。

間接労務費は直接労務費の3%を要するとしている。

人件費に関する量産効果

1工場当たりの年間蓄電池製造量

直接労務費

(円/kWh)

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3.セルのコスト構造分析(製造コスト) -製造設備費用の推計-

製造設備費用についても量産効果を使用し推計した。 建物と製造設備については、投資回収年を5年と仮定。

建物は一律で延床面積を500m2/MWh として計算。延べ床面積当たりの工場単価は、国土交通省の「建築着工統計」及び「建築工事受注動態統計」を参照し、60,000円/m2としている。

製造設備は、2010年度の調査で使用した設備を引き続き利用。 調合装置、塗工装置、スタッキング装置といった設備機器を想定。

製造設備費の量産効果

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

10MWh 100MWh 500MWh 1,000MWh 10,000MWh

1工場当たりの年間蓄電池製造量

製造設備費

(円/kWh)

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3.セルのコスト構造分析(製造コスト) -蓄電池セルのコスト推計-

部材価格、製造コスト、歩留りを考慮し、セルコストを推計した。 工場の製造能力に合わせて歩留りを設定し、セルコスト推計に利用している。

その他、部材コストの3%を間接材料費とし、販管費を製造原価の17%、営業利益を全体の3%とした。 販管費及び利益については、電機・重工メーカ 7社の財務状況から推計(既往調査より)。

リチウムイオン電池セルのコスト分析結果(2015年)

19%

7%

4%

12%

1%4%

1%

35%

14%

3%正極材

負極材

電解液

セパレータ

セル部品

直接労務費

間接労務費・材料費

製造設備費

販管費

利益

(LCOシリンダ型、500MWh/年)

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3.セルのコスト構造分析(製造コスト) -蓄電池セルのコスト推計(量産効果)-

部材価格、製造コスト、歩留りを考慮し、セルコストを推計した。 試算によると、1工場当たりの年間蓄電池製造量が500MWhから10,000MWhになるとセルコストが約27%低減する。

リチウムイオン電池セルのコスト分析結果(2015年)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

10 MWh 100 MWh 500 MWh 1,000 MWh 10,000 MWh

利益

販管費

製造設備費

間接労務費・材料費

直接労務費

セル部品

セパレータ

電解液

負極材

正極材

1工場当たりの年間蓄電池製造量

セルコスト

(円/kWh)

(LCOシリンダ型)

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蓄電池システムコスト内訳から、100kWh以下の蓄電池向けPCSの価格は10,000円/kWとした。 蓄電池システムコスト内訳からは、蓄電池1kWh/0.5kWあたりPCSの価格が50,000円となっている。

既往研究では、2011年におけるPV用PCSを58,000円/kWと仮定している。

機械統計の分析結果から、習熟度は0.75としている(累積生産量が2倍になると、価格は0.75倍となる)。

変換機の価格推移

4.PCSのコスト構造分析 -既往調査結果(PCSのコスト推計)-

出所)経済産業省「機械統計」より三菱総研作成

価格

(円/台)

累積生産台数(1995年を起点)

1,000

10,000

100,000

1,000,000

10,000,000

100,000,000

100 1,000 10,000 100,000 1,000,000 10,000,000 100,000,000

電力変換装置(PCS)

系統用・一般負荷用

系統用・その他の一般負荷用

系統用PCS

一般負荷用PCS

一般負荷用PCS(UBS除く)

無停電電源装置

電動機駆動用変換装置

インバータ

汎用インバータ

その他のインバータ

その他の電動機駆動用変換装置

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0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

現状 2倍 10倍 20倍

10 kWh, 100 kWh 1 MWh 10 MWh

4.PCSのコスト構造分析 -今後のPCSコスト試算結果-

PCSの生産量が2倍、10倍、20倍した際の量産効果を推計した。 既存文献等の予測では、ESS用のリチウムイオン電池生産量は2017年に2倍になる(2013年比)。

また、電力貯蔵システム向け二次電池の市場規模については、2025年に約14倍になると予測(2013年比)。

PCSの量産効果推計(蓄電池規模ごと)

PCSコスト

(円/kW) 2017年頃の価格

2025年頃の価格

PCSの累積生産量(2013年を基準とした場合)

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4.PCSのコスト構造分析 -今後のシステムコストについて-

蓄電池システムコスト内訳から、蓄電池セル工場の平均年間製造量と、PCSの累積生産量がそれぞれ2倍、10倍、20倍になる場合の蓄電池システムコストを試算した。 工事費や建屋に関しては、量産効果を適用していない。

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

現状 2倍 10倍 20倍

建屋、屋外キュービクル、コ

ンテナ

工事費

PCS(制御盤含む)

筐体電池箱(付属品含)

蓄電池セル

蓄電池システムの量産効果推計

システムコスト

(千円)

(LCOシリンダ型で100kWh/50kWの蓄電池)

1工場当たりの年間蓄電池製造量(500MWh)

PCSの累積生産量

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≪参考≫ PCSの分類

ヒアリング調査等により、PCSは6部材に大きく分けられることが判明した。 価格の側面から、主要なパーツは①筐体、②IGBT、③リアクトル、④その他電子部品、⑤制御ユニット、⑥モニターに分類

される。

各パーツごとに価格を整理するためには、民生用でない価格をコスト構造分析に利用する必要がある。

出力制御機能付きPCSの主要パーツ

• フィルムコンデンサ

• セラミックコンデンサ

• 抵抗

• CT

• PWB

• 配線

• ダイオード

• 表示用LED

• コア

• ROM

• 直流開閉器

• ファン

PCS

筐体

IGBT

リアクトル

その他

電子部品

制御ユニット

モニター

狭義のPCS

広義のPCS

(出力制御用)

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≪参考≫ PCSにおける量産効果、コスト削減余地について

量産効果に関しては、筐体部分と人工費の削減余地が大きいと想定される。 IGBTやリアクトルについてはPV用PCSとの共用が可能であり、現在も実施。

筐体については、PV用と共用できておらず、さらに各蓄電池メーカ向けによっても形状が異なる。

筐体では標準化が難しいため、現在は製造ラインではなく手作業での組み立てとなっているとのこと。

筐体デザインは競争力の一因であり、各メーカに筐体を標準化することは難しい。

PCSの保証、アフターサービスに関して検討する余地がある。 PCSは設置後にメンテナンスをほとんど実施しないため、長期にわたって耐久性が求められる。

10年、20年間の保証を求められる場合もあり、初期費用にこれらのアフターサービス費用をあらかじめ含めている。

保守管理を需要家側負担にすることにより、5年単位での交換奨励などにより、市場の流動化も考えられる。

蓄電池用PCS

PV用PCS

各メーカ・用途ごとに筐体を製造

PCS製造の現状イメージ

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Ⅳ.蓄電池等の競争力比較

i. コスト構造分析

ii. 蓄電池比較表

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鉛蓄電池(系統用)の比較表注1

GSユアサ (18種)

パナソニック (2種)

新神戸電機 (11種)

古河電池 (14種)

Johnson Controls

代表商品名 小形制御弁式鉛蓄電池

NP/PEシリーズ(PE12V17)

制御弁式鉛蓄電池 LCシリーズ

( LC-XC1228AJ)

制御弁式据置鉛蓄電池 《MSEシリーズ》

標準タイプ (MSE-50-12)

ベント形据置 鉛蓄電池

CS形 (CS-90-6E)

系統用蓄電池 の情報なし

寿命 寿命(年) 3 6 7~9 10~14

サイクル寿命(回) ‐ 400 ‐ ‐

充放電効率(%~%) ‐ ‐ ‐ ‐

セル電圧(V) 12 12 12 6

セル容量(Ah) :20 or 10時間率

17 28 50 90

体積(Wh/L) 88.8 93.1 68.0 33.3

重量(Wh/kg) 34.0 30.5 27.3 22.5

蓄電容量(セルベース:Wh) 204 336 600 540

容量当たりコスト セル(円/kWh) 100,490 65,476 216,000 205,715

部材供給メーカ

正極材 例)東邦亜鉛、住友金属鉱山、神岡鉱業、小坂製錬、八戸製錬、細倉金属鉱業

負極材

セパレータ 例)三菱マテリアル電子化成、昭和電工、要薬品、高杉製薬

電解液 例)旭化成、日本板硝子、阿波製紙、ジーエス化成工業、ENTEK、北越紀州製紙

生産能力 注2 工場数(棟) 29 3 3 22

生産量(万個/年) 4,232~ 1800~ 690~ 不明

注1:実証実験等の系統接続している鉛蓄電池システムの価格はわからないため、産業向けの鉛蓄電池の価格を参照した。

注2:生産している蓄電池の用途については分類できない(車載用や民生用が含まれている)。

鉛蓄電池の製品を下記に整理した。

出所)各種公開資料等に基づき三菱総研作成

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鉛蓄電池(系統用)の比較表 -調査データ‐

GSユアサ(18種) パナソニック(2種) 新神戸電機(11種) 古河電池(14種)

商品名

小形制御弁式鉛蓄電池

NP/PEシリーズ(PE12V17)

制御弁式据置鉛蓄電池

MSEシリーズ (MSE-200)

制御弁式鉛蓄電池 REHシ

リーズ (REH70-12)

制御弁式鉛蓄電池

LCシリーズ ( LC-

XC1228AJ)

制御弁式鉛蓄電池

UPシリーズ

制御弁式据置鉛蓄電池

《MSEシリーズ》

標準タイプ (MSE-50-

12)

小形制御弁式鉛蓄電池

《ハイパック》LHMシリーズ

超長寿命タイプ (LHM-38-12)

小形制御弁式鉛蓄電池

《ハイパック》HPシリーズ

標準タイプ (HP24-12A)

ベント形据置 鉛蓄電池

CS形 (CS-90-6E)

制御弁式据置 鉛蓄電池

HSEシリーズ (HSE-40-

12)

小形制御弁式 鉛蓄電池

FPXシリーズ (FPX1255

寿命

寿命(年) 3 7~9 5~6 6 6 7~9 13 不明 10~14 5~7 3~5

サイクル寿命(回) ‐ ‐ ‐ 400 400 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐

充放電効率(%~%) ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐

セル電圧(V) 12 2 12 12 12 12 12 12 6 12 12

セル容量(Ah) デフォルトまたは10時間率

17 200 70 28 ‐

50 35 22 90 40 5.5

セル容量(Ah)1時間率 ‐ ‐ ‐ ‐ 45W/2V ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐

体積(Wh/L) 88.8 67.3 165.2 93.1 0.0 68.0 76.0 72.7 33.3 57.0 102.7

重量(Wh/kg) 34.0 26.7 28.0 30.5 0.0 27.3 26.3 28.1 22.5 28.2 33.0

蓄電容量(セルベース:Wh) 204 400 840 336 0 600 420 264 540 480 66

容量当たりコスト

セル(円/kWh) 100,490 155,950 140,014 65,476 ‐ 216,000 102,907 48,784 205,715 137,500 120,909

出所)各種公開資料等に基づき三菱総研作成

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リチウムイオン電池(需要家用)の比較表

パナソニック 東芝 NEC 日立マクセル

商品名 リチウムイオン蓄電システム (蓄電容量:5kWh)

(LJ-SF50AK1)

小規模スマートバッテリ 6.6kW

(ENG-B6630A2-N)

法人用 リチウムイオン 電池搭載 小型蓄電システム

ESS-003007C0/ESS-003007C1

リチウム イオン 蓄電 システム

エナジーステーション タイプ C ES-CO1

寿命 寿命(年) ‐ ‐ 15 ‐

サイクル寿命(回) ‐ 10,000 5,500 4,000

充放電効率(%~%) ‐ ‐ ‐ ‐

応答性 ‐ ‐ ‐ ‐

放電レート(C) ‐ ‐ ‐ ‐

セル電圧(V) 100 100 ‐ ‐

セル容量(Ah) ‐ ‐ ‐ ‐

体積(Wh/L) 49.2 28.21 23.1 43.6

重量(Wh/kg) 74.6 47.83 52.0 48.3

蓄電容量(セルベース:Wh) 5,000 6,600 7,800 1,400

出力(kW) 1.5 ‐ ‐ ‐

容量当たりコスト システム

(円/kWh) 215,568 409,091 ‐ ‐

部材供給メーカ

正極材

部材リスト参照 負極材

セパレータ

電解液

生産能力 注2 工場数(棟) 9 1 2 4

生産量 (万セル/年)

70,000~ 1,200~ 2万台(システム) 26,400~

リチウムイオン電池の製品を下記に整理した。

出所)各種公開資料等に基づき三菱総研作成

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リチウムイオン電池(需要家用)の比較表 -調査データ‐

パナソニック 東芝 NEC 日立マクセル

商品名

リチウムイオン蓄電システム

(蓄電容量:5kWh)

(LJ-SF50AK1)

蓄電容量5kWh

スタンドアロンタイプ

LJ-SF50AK

住宅用] 創蓄連携システム 5.6kWh

(LJB1156)

小規模スマートバッテリ

6.6kW (ENG-

B6630A2-N)

小規模スマートバッテリ

無瞬断パワーユニット700W (SBE1P-

U10010SC)

法人用 リチウムイオン 電池搭載 小型蓄電シ

ステム ESS-

003007C0/ESS-003007C1

小型蓄電システム 7.8kWhモデル

(ESS-003007C0)

リチウム イオン 蓄電 システム エナジーステー

ション タイプ C ES-

CO1

リチウム イオン 蓄電 システム エナジーステー

ション タイプ H ES-

HO1

寿命

寿命(年) ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ 15 ‐ ‐ ‐

サイクル寿命(回)

‐ ‐ ‐ 10,000 ‐ 5,500 5,500 4,000 ‐

充放電効率(%~%) ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐

セル電圧(V) 100 ‐ 93.6 100 100 ‐ 100 ‐ ‐

セル容量(Ah) ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐

体積(Wh/L) 49.2 49.2 83.2 28.21 15.9 23.1 23.1 43.6 38.3

重量(Wh/kg) 74.6 74.6 82.4 47.83 26.7 52.0 52 48.3 46.7

蓄電容量 (セルベース:kWh)

5 5 5.6 6.6 1.6 7.8 7.8 1.4 1.4

出力(kW) 1.5 1.5 ‐ ‐ 0.7 ‐ 3 ‐ ‐

容量当たりコスト システム(円

/kWh) 215,568 199,600 185,714 409,091 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐

出所)各種公開資料等に基づき三菱総研作成

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リチウムイオン電池(系統用・車載用)の比較表

パナソニック 東芝 NEC(AESC)

商品名 円筒形 リチウムイオン電池

NCR18650B Li-ion充電池 SCiB 20Ah大容量タイプ EV用セル

寿命

寿命(年) ‐ ‐ ‐

サイクル寿命(回)

‐ 15,000 ‐

充放電効率(%~%) ‐ ‐ ‐

セル電圧(V) 3.6 2.3 3.75

セル容量(Ah) 3.2 20 32.5

体積(Wh/L) 676 26.7 317

重量(Wh/kg) 243 86.8 157

蓄電容量(セルベース:Wh) 11.5 46 122

出力(kW) ‐ ‐ ‐

容量当たりコスト セル(円/kWh) ‐ ‐ ‐

系統用・車載用蓄電池については、システム単位での性能情報取得が困難なため、使用される蓄電池セルの性能を整理した。

出所)各種公開資料等に基づき三菱総研作成

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(様式2)

頁 図表番号193036959797110121127129167167177178179182187187188188192197198198201202206211212213214215217221223224225226227230231

OEMセントラルサーバーを用いた実証実験スケジュール

Sunverge カリフォルニアでの蓄電地補助金交付量シェア

Sunverge 蓄電システム

リチウムポリマー電池のイメージ

NRECA 経済性試算

PG&E 蓄電池設置イメージ

各電源の1kWhあたりのライフサイクルCO2排出量

SolarCity サービス内容

GCN 蓄電システム

NextEra 蓄電池事業

NextEra Greensmith社の蓄電システム

火力発電の部分負荷効率

AES 電池のサプライヤー

Stem 蓄電システム内容

SolarCity DemandLogic energy storage

SolarCity battery backup service

SolarCity 提供エリア

追加された価格スキームイメージ

イタリア・Enelでの実証スキーム

Open VGI Platformの全体像

二次利用未承諾リスト

Advancionバッテリーアレイ

PJMの周波数安定化市場料金の推移

火力発電の部分負荷効率

パック化のイメージ

鉛のマテリアルフロー

主要5か国におけるGDPに占めるR&D投資比

韓国政府によるR&D投資の内訳

報告書の題名 蓄電池を活用した新たなエネルギー産業に関する調査

委託事業名 平成27年度新エネルギー等導入促進基礎調査

受注事業者名 株式会社三菱総合研究所

PG&E 施設が停電した際の自立運転移行

SDG&E 蓄電池設置イメージ

EV-電力系統間のインターフェースに関する規格

ISO/IEC 15118の検討状況

ドイツRWEでの実証スキーム

タイトル

「BMW i ChargeForward Program」の概要

2020年断面での電動車普及の想定

PlanGridEVプロジェクトのWP構成

PlanGridEVプロジェクトのTestBed位置図

Stem Hotelにおける導入事例

AES蓄電池利用イメージ

SDG&E プロジェクト概要図

SCE プロジェクト概要図

NextEra イリノイ州リーデカルブ風力発電

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(様式2)

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SAEにおけるEV-電力系統間のインターフェースに関する規格

フォード製の車両価格推移

集積回路の価格推移

PowerUp Projectスコープ

V2G-Sim Project

Vehicle2Gridの全体像

Open VGI Platformの全体像

Air Force Vehicle-to-Grid Demonstration

Grid on Wheels Project

Real World Application of SAE Protocol

SMARTV2G Projectシステム構成

COTEVOS Projectシステム構成

e-Dashプロジェクトスコープ・WP構成

Green eMotionプロジェクトのWP構成

IoEプロジェクトのコンセプト