18
薬学領域のヒューマニズム教育に 薬学領域のヒューマニズム教育に おける おける IT IT 活用と学びのふり返り 活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博 慶応義塾大学薬学部 慶応義塾大学薬学部 2008/9/3 1

薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

薬学領域のヒューマニズム教育に薬学領域のヒューマニズム教育におけるおけるITIT活用と学びのふり返り活用と学びのふり返り

飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

慶応義塾大学薬学部慶応義塾大学薬学部

2008/9/3 1

Page 2: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

薬学生の実践型教養教育推進システムの構築薬学生の実践型教養教育推進システムの構築慶應義塾大学薬学部慶應義塾大学薬学部 医療人GP(平成医療人GP(平成1818年度採択)年度採択)

「科学の基盤をもった、人に優しく尽くす、資質の高い薬剤師を育成し、社会に貢献する」

2008/9/3 2

項目 平成18年度 平成19年度 平成20年度

1年「生命の大切さを知るためにⅠ」(必4)

2年前期「生命倫理」(必1)

1) ヒューマニティ教育カリキュラム

3年「患者から学ぶ」(必1)

医療系学生交流合同セミナー(自1)

1年「早期体験学習」 (必1)

2) 体験学習プログラム

2・3年「体験学習プログラム」(自1)

システム(ハードウェア・ソフトウェア)整備3) 学習支援ITネットワークシステム 各種ライブラリーの構築、データ蓄積

4) 評価委員会 委員会設置 本取組の評価 本取組の取りまとめ

5) FD活動 ワークショップ、学外体験施設の医療従事者との交流会

報告書作成と配布、学会発表、教科書出版6) 取組成果の公表

シンポジウム開催、HP公開

Page 3: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

3

ヒューマニズム教育のポイントヒューマニズム教育のポイント

専門科目と異なり、ヒューマニズム教育では、さまざまな場面で個人の考え方が異なり、その多様性を理解しなければならない。

⇒⇒ 教育の範囲が無限教育の範囲が無限

ヒューマニティを醸成するためには、個々の学生がテーマに沿って考え、自分なりの見解、発見、解釈にたどり着くことが重要。

⇒⇒ プロセスを重視する学習が必要プロセスを重視する学習が必要

2008/9/3 3

Page 4: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

4

薬学領域における薬学領域におけるヒューマニズム教育の問題点ヒューマニズム教育の問題点

薬剤師教育では、患者への態度教育と、物質である薬に関する教育が混在している。このため、学年が進むと学生は、物質である薬に関心が移ってしまう。

ヒューマニズム教育の時間が、学年を進むごとに少なくなり、5~6年次の実務実習を行う際

に、低学年で学んだ内容を忘れてしまう可能性がある。⇒⇒ さまざまな場面で、学びのふり返りが必要さまざまな場面で、学びのふり返りが必要

2008/9/3 4

Page 5: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

52008/9/3 5

「生命の大切さを知るために「生命の大切さを知るためにⅠⅠ~~ⅢⅢ」」

Page 6: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

ヒューマニズム教育の実施状況 6

Page 7: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

学習支援学習支援ITITシステム導入の目的システム導入の目的

時間的、空間的な制約を取り除いて、学生間、学生-教員間のコミュニケーションを高め、学習支援を行う。

講義内容をデジタル化して蓄積することで、次年度開講した際に、均一な情報を学生、教員、学外支援者間で共有することが可能となる。

ポートフォリオ機能で、学生が過去の学習内容を一生涯、ふり返ることを可能とし、将来薬剤師となった際にも、学習当時のモチベーションを維持し、医療に貢献する。

2008/9/3 7

Page 8: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

8⇒⇒ コミュニケーション促進コミュニケーション促進⇒⇒ 討論内容の熟考促進討論内容の熟考促進

問題点

授業時間内では、十分なグループディスカッションができない。

教員への質問に、時間的な制約がある。

間違った情報により、討論の方向がずれてしまう。

実施内容

学習支援ITネットワークシステムを導入し、学外からのアクセスを可能とした。

支援結果

掲示板システムを利用し、学生間の意見交換が容易となり、討議の促進につながった。

議論の方向の早期修正、活性化が可能となり、討論内容の熟考を促すことが可能となった。

1.1. グループワーク支援グループワーク支援

Page 9: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

9

掲示板機能掲示板機能• 講義科目ごとに、話

題を設定して意見を交換することが可能。

• グループ単位での話題設定が可能。

• 学生だけではなく、教員の参加も可能。

Page 10: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

課題の提出と教員からのフィードバック課題の提出と教員からのフィードバック

10

学生からの提出物

生命の大切さを知るためにⅠ 特別講義(H19.9.19)「ヒューマニズムについて学ぶ ―生と死― 第3回:人の誕生」-石川紀子先生 総合母子健康センター愛育病院 看護師長-

人は誰かの愛情なくては生きていけない。愛育病院では、“カンガルーケア”と呼ばれるモノをおこなっているそうだ。これは、生まれたばかりの赤ちゃんを、母親が胸に抱くという親子のスキンシップを積極的に取り入れようという方針によるものらしい。赤ちゃんは、母親の心音を聴き、安心して寝入ってしまう。NICUに入ることになった赤ちゃんとも、できるだけ実際に触れ合えるように、というのを心がけているそうだ。親になるのは赤ちゃんが生まれた瞬間ではなく、赤ちゃんと一緒に徐々に親として成長していくもののようで、そのためにも、肌の触れ合いを通したスキンシップというのは大切なのだ。その始まりはできるだけ早いほうが望ましい。だが、現在の医療の発達により、そのようなほほえましい関係とは程遠くなってきている。出生前診断により、障害児が生まれてくる確率を見て、生命の取捨選択が行われるようになった。そこはあくまで“可能性”の領域であるにも関わらず。また、わが子が障害児と分かったとたん手のひらを反したように冷たくなり、安楽死を望むようにもなる人もいるという。中には虐待に走る人もいる。科学の進歩により、世界の傾向はよりいっそう弱者に対して厳しいものとなった。だが、かんがえてみてほしい。切捨てられていく命は、望まれてこの世に生を受けたのではなかったか。自分の思いと違ったからといって切り捨てても良い命なのか。人間とは 何であろうか。命とは?この問いを常に問いかけなければならなくなってしまった世界がかなしい。

学生からの提出物

生命の大切さを知るためにⅠ 特別講義(H19.9.19)「ヒューマニズムについて学ぶ ―生と死― 第3回:人の誕生」-石川紀子先生 総合母子健康センター愛育病院 看護師長-

人は誰かの愛情なくては生きていけない。愛育病院では、“カンガルーケア”と呼ばれるモノをおこなっているそうだ。これは、生まれたばかりの赤ちゃんを、母親が胸に抱くという親子のスキンシップを積極的に取り入れようという方針によるものらしい。赤ちゃんは、母親の心音を聴き、安心して寝入ってしまう。NICUに入ることになった赤ちゃんとも、できるだけ実際に触れ合えるように、というのを心がけているそうだ。親になるのは赤ちゃんが生まれた瞬間ではなく、赤ちゃんと一緒に徐々に親として成長していくもののようで、そのためにも、肌の触れ合いを通したスキンシップというのは大切なのだ。その始まりはできるだけ早いほうが望ましい。だが、現在の医療の発達により、そのようなほほえましい関係とは程遠くなってきている。出生前診断により、障害児が生まれてくる確率を見て、生命の取捨選択が行われるようになった。そこはあくまで“可能性”の領域であるにも関わらず。また、わが子が障害児と分かったとたん手のひらを反したように冷たくなり、安楽死を望むようにもなる人もいるという。中には虐待に走る人もいる。科学の進歩により、世界の傾向はよりいっそう弱者に対して厳しいものとなった。だが、かんがえてみてほしい。切捨てられていく命は、望まれてこの世に生を受けたのではなかったか。自分の思いと違ったからといって切り捨てても良い命なのか。人間とは 何であろうか。命とは?この問いを常に問いかけなければならなくなってしまった世界がかなしい。

教員からのコメント

医療の世界や患者に対する倫理は、机に向かい紙の上で展開する観念的な倫理と違い、一つ一つが違った個別的な議論を必要とするものだということをはっきりと意識できたことは素晴らしいと思います。「信念」はもちろん大事ですが、実践を通して変えていくことも必要ですね。頑張ってください。

教員からのコメント

医療の世界や患者に対する倫理は、机に向かい紙の上で展開する観念的な倫理と違い、一つ一つが違った個別的な議論を必要とするものだということをはっきりと意識できたことは素晴らしいと思います。「信念」はもちろん大事ですが、実践を通して変えていくことも必要ですね。頑張ってください。

Page 11: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

2.2. 講義データのデジタル化講義データのデジタル化問題点

グループワークの発表について他グループ、自分のグループの発表を、後から振り返ることが困難。

現場の医師・看護師の特別講演では、患者の写真等があり、個人情報に配慮するため、録画が許可されにくい。

実施内容

講義録画装置を導入し、発表、講演の内容をデジタル化する。

個人情報に配慮するため、容易に画像の差し替えが可能なシステムを導入。

支援結果

発表風景、発表内容を簡便に見ることができるため、これまで自身が考えてきたこと、意見が多様であったことを容易に再確認することができる。

Page 12: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

講義録画装置による記録イメージ講義録画装置による記録イメージ

12

Page 13: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

3.3. ポートフォリオ機能の概略ポートフォリオ機能の概略

各科目での学習内容を記録し、オンラインで卒業時まで参照可能とする。卒業時、DVD等のメディアに保存し、配布する。

蓄積可能データは、パワーポイント、ワード等のファイル、ITシステム上の掲示板記載内容、個人の記録。

紙媒体で提出したレポートは、スキャナで取り込み、容易に登録可能。

学生自身でも、カテゴリを作成し、関連するあらゆる電子ファイルを整理、保存可能。

しおり、検索機能を充実させて、ふり返りを容易とする。

アクセス統計の確認が可能。

13

Page 14: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

2008/9/3 14

教員によるふり返りの頻度の確認

学生が関連ファイルを自由にアーカイブ可能

教員との連絡掲示板設置

教員による指定データの保存

Page 15: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

ポートフォリオによる学習過程のふり返りポートフォリオによる学習過程のふり返り

2008/9/3 15

学生自身が、「6年間、単一年度、科

目」などのカテゴリ別に、目標を追加し、逐次方略、評価を記載する。

アドバイザー教員が、その内容に対するコメントを記載可能。

Page 16: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

ポートフォリオにより期待される効果ポートフォリオにより期待される効果

学習者の関心に合わせた学習が可能となり、「長時間にわたり」、「全体をとらえた」、「プロセスを重視した」学習が可能となる。

自分自身で成長の過程を確認することは、学びに自信を持つことにつながり、学習意欲が高まる。

進級してからも、過去の学習内容、自分自身がたてた目標を見直して、ヒューマニズムの原点をふり返るきっかけができる。

卒業時に関連したファイルをメディアで配布することで、一生涯、この内容を活用でき、将来にわたって学習当時のモチベーションを維持し、医療に貢献できる。

2008/9/3 16

Page 17: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

17

コミュニケーションコミュニケーション プレゼンテーションプレゼンテーション情報収集(情報科学)情報収集(情報科学)

ヒューマニズム科目

講義科目実習科目

ポートフォリオを利用してふり返る

患者の気持ちを理解し、より良い医療へ貢献する

(病院・薬局)

Page 18: 薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学 …薬学領域のヒューマニズム教育に おけるIT活用と学びのふり返り 飯島史朗・石川さと子・小林静子・江原吉博

ポートフォリオ機能を活用するための方策ポートフォリオ機能を活用するための方策

自己のポートフォリオを定期的に確認するようなコンテンツを準備し、サイト参照を促す。

自分の過去のレポートを参考とし、レポートを作成する課題

特別講演会に関連したテーマ

1年次に考えたテーマについて、再考を促すもの

後輩のレポートを活用

下位学年のレポートに関し、コメントを依頼する

専門系講義の活用

講義資料も掲載し、後日、目にする機会を与える

18