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Empowered lives. Resilient nations. 共栄のためのインクルーシブビジネスの構築 BuildingInclusiveBusinessesforSharedProsperity (UNDP) アフ カの の育 アフリカの富の実現 RealizingAfrica’sWealth

アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

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Page 1: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

Empowered lives. Resilient nations.

共栄のためのインクルーシブビジネスの構築Building Inclusive Businesses for Shared Prosperity

国連開発計画(UNDP)アフリカの包括的な市場の育成プログラム報告書

Empowered lives. Resilient nations.

アフリカの富の実現

共栄のためのインクルーシブビジネスの構築

アフリカの富の実現Realizing Africa’s Wealth

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本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成プログラム(African Facility for Inclusive Markets: AFIM)」の主導、調整、資金によって作成されました。AFIMは、UNDPアフリカ局の民間セクターによる包括的な市場の育成を目指した地域プログラムです。その目的は、アフリカ全域で貧困者を重視した包括的な市場の構築を支援することにより、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた進展を加速させることです。AFIMは地域経済共同体(RECs)、各国政府、UNDPの各国事務所、その他のステークホルダーの人材育成に取り組み、アフリカにおける包括的な市場の構築とインクルーシブビジネスの育成を支援しています。このプログラムでは、民間セクター主導、市場主導で貧困削減、環境の持続可能性、紛争から復興、およびジェンダー平等などを推進・解決するために、知識の共有、金融サービスへのアクセス、成功事例の広報活動を推進しています。www.undp.org/africa/privatesector

 本報告書に関する調査はUNDPの「包括的な市場の育成(GIM)プログラム」から支援を受けて実施されました。GIMはインクルーシブビジネス研究に関する専門知識を生かして、概念的なコンセプトのアドバイスとフィードバックを提供しました。2006年に開始されたGIMは、UNDPが主導する世界中の関係者が参加する研究・アドボカシーのためのプログラムであり、世界各国におけるインクルーシブなビジネスモデル構築への理解、実現、促進を行い、それによって世界の低所得層の人々に新たな機会とより良い暮らしをもたらすことをも目的としています。本報告書のために実施した調査では、GIMのこれまでの研究によって培われた経験と蓄積された成功事例を活用しています。世界各国の研究者と協力して、GIMはインクルーシブビジネスに関する166の詳細なケーススタディを実施し、数々の国、地域、世界全体に関する報告書を発行してきました。そのなかには

「Creating Value for All: Strategies for Doing Business with the Poor(貧困層を対象にしたビジネス戦略:すべての 人 々 の た め に 価 値 を 創 造 す る )」 と「The MDGs: Everyone’s Business(ミレニアム開発目標(MDGs):全ての人々のビジネス)」が含まれます。

【謝辞】本報告書をまとめるにあたり、助言と協力を頂いた関係者:UNDPアフリカ局戦略諮問ユニット。African Union Commission, African Development Bank, NEPAD - Comprehensive Africa Agriculture Development Programの代表からなる諮問委員会。Alliance for a Green Revolution in Africa、Ashley Insight、Business Fights Poverty、Business Unity South Africa、Gordon Institute of Business Studies、NEPAD Business Foundation、Pan African Agribusiness & Agro-Industry Consort ium、Southern Afr ica Trust、TechnoServe。

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共栄のためのインクルーシブビジネスの構築Building Inclusive Businesses for Shared Prosperity

UNDP「アフリカの包括的な市場の育成プログラム」報告書

アフリカの富の実現Realizing Africa’s Wealth

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は じ め に

読者の皆様 過去10年間、アフリカは力強い経済成長を見せてきました。実際のところ、世界でもっとも成長著しい国のいくつかはアフリカにあり、現在の世界の不透明な経済情勢にもかかわらず、成長は拡大しています。こうしたことが新たな楽観主義を生み、アフリカでの貧困削減に寄与していますが、アフリカでの飛躍的な経済の進歩は、すべての人々に繁栄をもたらしているわけではありません。包括的な市場の開発の重要な要素であるインクルーシブビジネスは、低所得者層をバリューチェーンに組み入れることにより、経済成長の恩恵を直接彼らに届ける有望なアプローチです。

 本報告書にある事例研究が示すのは、あらゆるタイプ・規模の企業や起業家の革新と起業家精神が、アフリカの最大の富、すなわちそこに居住する、若く、そして増加している人々を顕在化させることにより、ビジネスと人間開発を促進できるということです。この報告書は、インクルーシブビジネスの状況だけでなく、私たちが「エコシステム」と呼ぶインクルーシブビジネスを支援する構造について理解してもらうことも目指しています。

 UNDPによるこれまでの研究は、貧困削減とミレニアム開発目標(MDGs)の達成にインクルーシブビジネスが寄与する可能性を示してきました。本報告書では、起業家と企業の挑戦を支援する、他の関係者が果たす重要な役割についても明らかにしています。そして、本報告書は、アフリカにおけるインクルーシブビジネスへの現在の支援の構造を明らかにする最初のステップです。アフリカの富を実現するために、インクルーシブビジネスを現実的に普及させるために必要なさまざまな関係者とその役割について明確にしています。

 私たちの調査では、官民によるいっそうの連携と協調が、エコシステムのさまざまな関係者をまとめるのに必要であることを示しています。企業と起業家には、インクルーシブビジネスを実施し、拡大させるために、情報、インセンティブ、投資、および実施サポートが必要です。個々の貢献は、他の関係者の貢献と統合されると、大きなものになります。

 さらに重要なこととして、私たちはさらに行動を起こす必要があります!インクルーシブビジネスの推進者として若い起業家と革新者が必要です。インクルーシブビジネスの仲介者、支援者、資金提供者としての役割を担う組織が必要です。また、インクルーシブビジネスの可能性を実現するために、民間セクター、アフリカ連合、地域経済共同体、政府、開発機関・銀行、市民社会組織、研究機関、および財団によるいっそうの協調も必要です。

 この点に関し、UNDPアフリカ局は「アフリカの包括的な市場の育成プログラム(AFIM)」を通じて重要な役割を担ってきました。AFIMは、地域レベル、国家レベルで公共セクターと民間セクターをとりまとめる役割を担い、包括的な市場の開発を進めています。まとめるならば、インクルーシブビジネスは貧困を繁栄に変えることができ、それによって、包括的な成長と持続可能な開発に寄与することを可能にします。本報告書が、読者の皆様がアフリカでのインクルーシブビジネスのいっそうの促進に向けて行動を起こすための情報提供ときっかけづくりになることを願っています。

ババカー・シセ

ババカー・シセ国連開発計画(UNDP)アフリカ局 副局長

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Page 6: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

目 次

本報告書について6ページ

要約8ページ

傾向と展望12ページ

事例研究

ロクシタン13ページ

インタビュー

サグン・サクセナ氏CleanStar CEO, Mozambique 23ページ

情報の提供30ページ

事例研究

Ecotact31ページ

インタビュー

ダニエル・アンヌローズ氏CEO, Manobi34ページ

インセンティブの創出38ページ

事例研究

Aspen Pharmacare39ページ

インタビュー

リバン・エガル氏CEO, First Somali Bank

(モガディシュ)45ページ

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 「インクルーシブビジネスのエコシステム」(P.9参照)の構図は、本報告書の骨子です。第1章では、サハラ以南アフリカの低所得層をバリューチェーンに組み入れているビジネスの事例を概観します。こうしたビジネスを支えるエコシステムの4つの機能として、情報、インセンティブ、投資、および実施サポートがあります。第2章から第5章では、これらの4つの機能それぞれについて課題を特定し、これまでの成果を明らかにし、さらなる支援の可能性について、詳しくとり上げます。最終章では、インクルーシブビジネスのエコシステムをどのように構築すべきか、提案を行います。

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投資の実現48ページ

事例研究

GADCO49ページ

インタビュー

ジェームズ・ムワンギ氏CEO, Equity Bank(ケニア)55ページ

実施サポート56ページ

事例研究

モンデリーズ57ページ

インタビュー

ゲリー・ヴァン・デン・ホーテン氏SABMillerアフリカ企業開発部長61ページ

インクルーシブビジネスのエコシステムの構築62ページ

事例研究

M-Pesa63ページ

インタビュー

ヘラード・クッツェー氏Absa Consumer Bankingインクルーシブ・バンキング戦略イニシアティブ主任68ページ

付録71ページ

注釈72ページ

略語74ページ

事例研究76ページ

参考情報100ページ

参考文献105ページ

謝辞106ページ

4 5 6

エコ

シス

テム

エコ

シス

テム

インセンティブ

インクルーシブビジネス

投 資情 報

実施サポート

エコ

シス

テム

エコ

シス

テム

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本報告書について 本報告書は、サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスと、この地域のインクルーシブビジネスの支援システム――本報告書内で「エコシステム」と呼ぶもの――をとり上げたUNDPによる初の調査結果です。本報告書では、4つの方法で調査を行っています。

・事例研究:2008年から2012年にかけて発表された、サハラ以南アフリカの16か国における43件の詳細なケーススタディを分析しました。その要約は巻末の付録で参照できます。

・面接調査:2012年の5月から10月にかけて、地元企業と開発支援機関のほか、関連する専門家に対して、合計30回の面接調査を実施しました。

・アンケート調査:サハラ以南アフリカで活動を行っている600の開発支援機関に関するデータベースをとりまとめ、オンライン調査を実施した結果、100件の回答を得ました。主な開発支援機関の連絡先については、巻末の付録に掲載しています。

・文献調査:サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスに関する既存の文献について、分析を行いました。

 本調査は厳密な実証的アプローチに基づいています。これまでのUNDPの調査・研究で得た知見をベースにして、低所得市場で企業や組織が直面する一般的な制約と、そうした制約に対処するための解決策、そして、企業や組織が得られる一般的な支援策について理解することから始めています1。こうした枠組みを背景に、サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスとその支援機関を特徴づけるパターンを明らかにするために、すべてのデータを分析しました。特に、調査チームはインクルーシブビジネスの構築に関連した課題、既存の支援構造の限界、支援構造を改善しうる手段について、理解するよう努めました。調査結果について、諮問委員会のメンバーがその内容について議論し、審査を行いました(諮問委員のリストについては巻末を参照)。本報告書の対象はサハラ以南アフリカとしています。

 サハラ以南アフリカ全域にわたるインクルーシブビジネスの支援機能について、幅広い情報を得るのは困難な作業でした。本報告書は包括的であるよりも、インクルーシブビジネスへの地域的な支援を調査、理解、改善する継続的なプロセスの第一歩となることを目指しました。そのため、サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスの支援に取り組むさまざまな分野の関係者間のコミュニケーションと連携に資すると考えています。

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図1:サハラ以南アフリカの国々と地域経済共同体(RECs)

モロッコ

チュニジア

アルジェリア リビアエジプト

モーリタニアニジェール

チャドスーダン

ナイジェリア

マリ

中央アフリカエチオピア

コンゴ民主共和国

タンザニア

ケニア

アンゴラ

ザンビア

ナミビア

ボツワナ

南アフリカ

セネガル

ガンビア

ギニアビサウ

ギニア

シエラレオネ

リベリア

サントメ・プリンシペ

ブルキナファソ

カメルーン

エリトリア

赤道ギニア

ガボン

ジブチ

ソマリア

マダガスカル

モザンビーク

スワジランド

レソト

ジンバブエ

ガーナ

トーゴ

ベナンマラウイ

ルワンダ

ブルンジ

カーボヴェルデ

コートジボワール

コンゴ

セーシェル

コモロ

モーリシャス

ウガンダ

東南部アフリカ共同市場(COMESA)

東アフリカ共同体(EAC)

中部アフリカ諸国経済共同体(ECCAS)

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)

政府間開発機構(IGAD)

南部アフリカ開発共同体(SADC)

南スーダン

サハラ以南アフリカ

サハラ以南アフリカ

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 アフリカの富は、そこに居住する人々です。彼らは若く、またその数も増加しており、常に社会参加や雇用の機会を求めています。これらの人々をビジネスに参加させることができるならば、民間セクターは、彼らの持っている潜在力を顕在化させることができます。インクルーシブビジネスは低所得層の人々をバリューチェーンに組み込むことで、こうした人々の基礎となるさまざまな機会を生み出します。これまでもアフリカでは、さまざまなイノベーションや起業家精神に基づいたインクルーシブビジネスが実施されてきました。しかし、アフリカのビジネス環境には数多くの制約があるため、多くの場合、より大きな規模で展開するまでには至っていません。適切な情報やインセンティブを提供し、投資やビジネスの実施を後押しするような支援型のエコシステムが整備されれば、より大きな影響力を持ったインクルーシブビジネスが増えると考えられます。

要約:

アフリカの富の実現 ― 共栄のためのインクルーシブ  ビジネスの構築

 本報告書は、サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブビジネスの現状と、インクルーシブビジネスのアプローチを推し進めている企業と起業家を支えるエコシステムについて説明し、また、これらの企業と起業家が、より多くの、より強力なインクルーシブビジネスを構築することを可能にする、これらのエコシステム強化のための有望な機会を明らかにするものです。

 インクルーシブビジネスの原動力となっているのは企業ですが、それを取り巻くエコシステムを発展させようとするならば、社会のすべての関係者が起業家精神を持つことが必要です。現在、地域の支援機関はあまり存在していないため、それらが構築されれば、インクルーシブビジネスの発展に大いに資することになるでしょう。インクルーシブビジネスのエコシステムを構築することで、アフリカの富が実現され、共栄が可能となります。

サハラ以南アフリカは成長を続けているが、すべての人がその恩恵を受けているわけではない

 サハラ以南アフリカは、現在世界の中で最も急速に成長している地域のひとつです。市場環境は依然として厳しいところが多いものの、規制上の枠組みや資本へのアクセスは改善しつつあり、経済成長に弾みがついています。しかし、この成長の恩恵を受けないまま、基本的な物資やサービスへのアクセス、あるいは雇用や定期的収入の機会も持たない人々が依然として数多く存在しています。

インクルーシブビジネスは利益を生み、潜在力を解き放つ

 インクルーシブビジネスは、低所得層の人々を、消費者、生産者として、あるいは、労働者、起業家としてなど、さまざまな立場でバリューチェーンに組み込みます。そうすることで、インクルーシブビジネスは低所得層に成長の恩恵を直接に届けることができます。これは決して慈善事業ではありません。 インクルーシブビジネスによって、これまで市場から排除されていた人々が市場に参加することができるようになり、その結果、利益と長期的な成長の恩恵も受けられるようになります。

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図2:インクルーシブビジネスのエコシステムの構図

インクルーシブビジネスは、すべての人に恩恵が及ぶグリーンな成長をもたらすための具体的な手段

 インクルーシブビジネスは、低所得層の人々に、所得、基本的なモノとサービス、選択肢へのアクセス機会を提供します。しかも、インクルーシブビジネスは、資源を保全し、環境を保護する「グリーン」な事業活動である場合が多く、サハラ以南アフリカにおける主要な例では、このパラダイムシフトが実現されただけでなく、さまざまな利害関係者にとって、利益とメリットが生まれていることも明らかになっています。例えば、「M-Pesa」の電子マネー・サービスはケニアだけで1500万人が利用しており、同様の電子マネー・サービスにより地方の住民を含めたアフリカ大陸の何百万もの人々が金融サービスへアクセスできるようになっています2。「Equity Bank」は、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダ、南スーダンの800万人の顧客に銀行業務および与信サービスを提供しています3。南アフリカの「SAB Miller」はザンビア、ジンバブエ、南スーダン、ウガンダ、モザンビーク、タンザニアの5万以上の小規模農家より原材料を調達しています4。

 また、地域の起業家たちもすばらしい変化を作り出しています。Nancy Abeiderrahmaneは、ほぼゼロの状態からモーリタニアに酪農業を興しました。現在、「Tiviski Dairy」は1000以上の遊牧民からラクダのミルクを調達しています。ケニアでは、David Kuriaが衛生サービスを提供する社会事業として「Ecotact」を創設しました。EcotactのIkotoilet(Ecotactのトイレ設備)は、現在5万人近いスラム居住者に衛生的なトイレを提供しています。Johan WasserfalとJan Kitshoffによって設立された南アフリカの「Eduloan」は、同社の顧客ベースの「潜在能力を引き出す」ことを目標とし、これまでに高等教育を受ける学生60万人以上に教育ローンを提供しています。こうしたインクルーシブビジネスの例は他にも多数あり、こ

れらはUNDPの「GIM(包括的な市場の育成)」プログラムに示されており、オンライン・データベースからアクセスが可能です5。

インクルーシブビジネスにはそれを支援するエコシステムが必要

 インクルーシブビジネスが低所得層に特有な厳しい市場条件に打ち勝つためには、インクルーシブビジネスを支える環境が必要です。「インクルーシブビジネスのエコシステム」とは、インクルーシブビジネスが成功し、より大きな影響力を持つことを可能にする、それぞれの関係者が相互に連結されたネットワークを意味します6。インクルーシブビジネスのエコシステムの構図(図2)は、インクルーシブビジネスを支えるために必要とされる4つの基本的機能を表しています。

・情報は、事業者が低所得市場で事業展開するために必要な認識、知識、技術、ノウハウを提供します。

・インセンティブは、ポジティブな外部要因を提供し、事業コストを削減することで、事業者に低所得層向けビジネスを行う動機付けとなります。

・投資は、低所得市場への参入を可能にする金融支援を事業者に提供します。

・実施サポートは、インクルーシブビジネスが多様でダイナミックな環境の中で機能するよう、物流、取引、マーケティング、コミュニケーション、マイクロビジネスの支援サービスを提供します。

 企業、政府、開発関係機関、市民社会組織(CSO)、研

エコ

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テム エ

コシ

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エコ

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テム

エコ

シス

テム

インクルーシブビジネス

情 報

インセンティブ

投 資

実施サポート

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究機関、その他の仲介機関はすべて、この構図の中の4つの機能それぞれの強化に貢献できます。この報告書では、インクルーシブビジネスの環境をより良いものとするために、それぞれの主体がイノベーションと起業家精神を発揮するよう求めています。また、インクルーシブビジネスに対する投資が貧困の削減と持続可能な発展という点で十分な成果を上げられることを明らかにしています。

中小企業がアフリカのインクルーシブビジネスを推進し、経済を力強くリードする

 現在、アフリカにはインクルーシブビジネスの事例が数多く存在しています。成功している事例はどの分野にも見られますが、大部分は、農業ビジネス、エネルギー、金融サービス、情報通信技術(ICT)分野に集中しています。また、注目を集めるのは大企業による低所得コミュニティでの活動ですが、実際には、成功例の大部分を占めているのは中小企業(micro, small and medium-sized enterprises: MSME)です。

 持続的な経済成長を達成し、しっかりとしたガバナンス・システムの見られる国では、相対的に多くのインクルーシブビジネスが存在しています。特に南アフリカとケニアはインクルーシブビジネス分野のリーダーとして台頭してきており、事業者は充実したエコシステムから恩恵を受けています。

より多くの地域の支援機関が必要

 一般的に、サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブビジネスへの支援で圧倒的に大きな役割を果たしているのは国際機関ですが、国際レベルでこうしたアプローチが開発され、強力に推進されていることを踏まえれば、決して驚くべきことではありません。特に官民の開発関係機関は、資金提供、研究の実施、認識の向上、現場レベルでの支援の提供を通じて、インクルーシブビジネスを推し進めてきました。しかし、ほとんどの国では、参加者が推し進める地域のエコシステムは出現し始めたばかりです。各国政府も、誰もが恩恵に浴する成長をもたらすインクルーシブビジネスの持つ潜在力についての認識を一段と強めており、その結果生まれる社会的かつ環境的なメリットに対して報いる方法を模索しています。ビジネススクールやシンクタンクは、こうした新しい概念の社会的普及に努めており、地域機関は新しいソリューションについての研究や開発を進めています。企業サイドも、直面するであろう課題を認識し、小規模事業者や生産者の能力開発を支援する目的等で、起業家精神を促進したり、新しい組織を分社化したりするなど、支援環境を自分たちで整える努力を続けています。

 とはいえ、市場調査会社、信用調査会社、バリューチェーンの促進組織、新規事業支援組織、ベンチャーキャピタル

など、潜在的に有用性の高い地域の支援機関の数は、すべてのレベルで大部分において不十分な状況です。地域の支援機関が設立されれば、インクルーシブビジネスの設立ははるかにスムーズなものになると考えられます。また、すでに設立された企業が低所得市場へと参入する際のコスト削減にも大いに役立つと考えられます。

エコシステムの構築が高い将来性を示す

 インクルーシブビジネスを育成するエコシステムを構築することは簡単なことではありません。さまざまな機能がお互いに補完し合わなければならず、さまざまな参加者がその実現のために協力しなければなりません。企業はインクルーシブビジネス推進の原動力ではありますが、企業努力を可能にし、その企業努力を支援するためには、多国籍組織から地域の市民社会組織(CSO)に至るまで、すべてのレベルで、イノベーションと起業家精神が発揮されることが必要となります。個々の関係者の行動が効果的であるためには、関係者の連携や協力が重要です。低所得市場で真の意味での自由競争が行われるには、インクルーシブビジネスのエコシステムが「協力的な起業家精神」によって構築されることがベースとなります。

 インクルーシブビジネスのエコシステム構築には、エコシステム構築のための取り組みが特に大きな力を発揮してきました。これらの取り組みは、複数のレベルにおける多様なエコシステム参加者を連携させ、個々の参加者の行動が他の参加者の行動に基づいて行われ、互いの行動を強化するようになっています。「アフリカ綿競争力強化イニシアティブ」(The Competitive African Cotton Initiative: COMPACI)は、農業ビジネス、繊維メーカー、開発関係機関、小規模の綿農家をまとめ上げ、持続可能で包括的な綿の供給チェーンを構築しました。ケニアの「金融セクター深 化 イ ニ シ ア テ ィ ブ 」(Financial Sector Deepening Initiative)は、低所得層の金融サービスへのアクセスを改善するために、さまざまな政府機関、銀行、小規模金融機関、教育および研究機関とともに動いています。「アフ

夜、照明を使って読書をする少女。「アフリカに光を」(Lighting Africa)は、何百万もの アフリカの人々に最新の照明機器へのアクセスを提供しました。

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リカに光を」(Lighting Africa)というプログラムでは、照明機器メーカーが自社の製品の質のチェックを受け、その証明を受けるプラットフォームとなっており、複数の国において、製品の販売状況を改善して、低所得の消費者の照明へのアクセスの強化に取り組んでいます。これらの例は、エコシステム構築のための取り組みがインクルーシブビジネスを成長させる、非常に有望なアプローチであることを明らかにしています。

すべての参加者はインクルーシブビジネスのエコシステムの改善に貢献できる

 企業および起業家は、新しいビジネスアプローチへの投資、定量的・定性的な市場調査の実施、革新的なサービスおよび製品を手頃な価格で市場に提供するテストの実施、技術的スキルの構築、低所得コミュニティをバリューチェーンに組み込む際の戦略の実現、他の企業をサポートする物流およびその他のサービスの提供などを通して、率先して包括的戦略を実施することができます。企業と起業家は市場調査を行い、革新的なビジネスモデルを開発することで、ベンチャー・ビジネスの初期段階で協力することができます。また、低所得層に属する人々が経営する非公式の企業からモノまたはサービスを購入し、原材料やその他の消耗品の現地調達を増加させることで、インクルーシブビジネスを導入することができます。

 政府は、インクルーシブビジネスのための環境を整備し、インセンティブを提供することで、大きな支援的役割を果たすことができます。政府は規制を撤廃し、経済活動を行いやすいルールを制定することができ、インフラ、情報、教育に投資することができます。また、企業の社会的および環境的な貢献を評価したり、低所得コミュニティをバリューチェーンに組み込んでいる企業から優先的に調達を行うなど、インクルーシブビジネスを促進する直接的なインセンティブを設けることができます。

 開発関係機関は、公的、民間を問わず、現在不足している、地域の支援機関の創設を促進し、成功事例を記録・分析して、その結果を共有するとともに、官民の対話を進めることができます。さらに、政府の支援政策の策定を支援するなど、インクルーシブビジネスのアプローチを加速させることが可能です。

 市民社会組織(CSO)は、地域の起業家によるインクルーシブビジネスの立ち上げを支援することが可能です。市民社会組織は企業が低所得層にアクセスするための仲介役となるとともに、低所得層の利益を守るための監視役となることでインクルーシブビジネスの発展を支援できますが、何よりも重要な役割は、インクルーシブビジネスに対する認識を向上させ、低所得層の能力を強化することです。

 研究機関には、サハラ以南アフリカにおけるインクルーシ

ブビジネスが成功するための情報を収集し、詳しく分析することが期待されています。またインクルーシブビジネス・モデルに関する情報を集めて共有し、インクルーシブビジネス・アプローチを提唱することが可能です。また、現在の、そして将来の起業家およびリーダーを教育し、訓練することもできます。さらに、インクルーシブビジネスがどれほど包括的で、どのような結果が生じているかをより正確に測定する手法を開発することで、政策決定者や影響力のある投資家に対して必要なデータを提供することも期待されています。

 仲介機関は、インクルーシブビジネスの成功事例を特定し、社会に明示することで、さらなるインクルーシブビジネスの参入を促すことができます。さまざまな関係者の調整を行うほか、機能的なバリューチェーンを組織して標準化を進めて、市場調査の共同プラットフォームを創設し、生産者と製品のマッチングを支援することも可能です。また、仲介機関は、関係者が必要とする支援を仲介し、インクルーシブビジネスが成長できる場を創設できます。

 インクルーシブビジネスを推進している企業および起業家自身も、支援的なエコシステムを開発し、推進することが必要です。企業と起業家は、各種支援に影響を受けるのではなく、支援を管理し、効果的なソリューションを協力して作り上げるため、政府やその他の支援機関との対話を進めることで、自分たちが直面するチャレンジを透明化させ、エコシステムの構築を達成することができます。実際、企業と起業家はエコシステム全体の起業家となる必要があります。

行動要請

 インクルーシブビジネスのアプローチを推し進めるには、すべての主体が革新性と起業家精神を持つ必要があります。また、協力と連携を可能にする仕組みも必要です。そのため、この報告書では、個々の関係者に対する提案に加えて、インクルーシブビジネスのエコシステム構築を目指した、より広い支援的な仕組みを構築するよう求めます。

・インクルーシブビジネスのエコシステム構築に特化した、新しいエコシステム構築のための取り組みが、国家レベルおよび地域レベルで開発される必要があります。

・エコシステム構築を支援する地域レベルおよび国家レベルの金融制度の策定が必要です。

・インクルーシブビジネスと市場に関する中核的研究拠点を地域および国家レベルで創設し、インクルーシブビジネスのアプローチについての知識を集約・共有する必要があります。

 私たちが協力すれば、アフリカの富、つまりアフリカの人々とその潜在能力を顕在化させ、その結果もたらされる繁栄を共有することが可能です。

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1 傾向と展望 インクルーシブビジネスは、企業や低所得層の人々に機会を提供します。ロクシタンは、ブルキナファソの1万5000人の女性からシアバターを調達しています。これは、企業の商業的な成功を促しつつ、低所得者のニーズに積極的に応えている数多くの企業の一例です。またこの事例は、インクルーシブビジネスを育成する中で、各主体がエコシステムのいかに多様なレベルで関与できるかを示しています。

 本章では、インクルーシブビジネスのエコシステムの概念、および本報告書の基本的な枠組みであるエコシステムの構図について説明します。そして、アフリカにおけるインクルーシブビジネスのエコシステムの傾向を、国、分野、主体別に紹介します。

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インクルーシブビジネスは国や分野によって極めて多様ですが、いくつかの傾向が現れ始めています

改良型の過熱機器により、シアの実の加工に必要な薪が少なくてすむか、全く必要なくなります。ロクシタンは、生産者がこうした設備を入手できるようにするため、環境基金の設立に協力しました

ブルキナファソで協同組合の育成を行うロクシタン ロクシタンは、大きな成功を収めている多国籍の化粧品会社であり、天然の原料を使用した高級な商品を提供していることで世界的に知られています。何十年もの間、この企業の商品を代表する原料のひとつがシアバターです。ロクシタンの創設者オリビエ・ボーサン(Olivier Baussan)氏は、1982年にブルキナファソを旅した後、現地コミュニティを支援しつつ自社製品の原料としてシアバターを調達することを約束しました。しかし、女性たちから直接シアバターを調達することは困難であることがわかりました。伝統的な知識を守るため、女性たちは職人的な現地の方法でシアバターを生産していましたが、この方法は輸送や品質管理の面で課題があり、フランスに到着する頃には、品質が欧州の基準を満たさないような状態になっていることがしばしばあったのです。

 長年にわたって、ロクシタンは合計1万5000人の会員を擁する5つの現地の協同組合と強固な関係を築いてきました。同社はこれらの協同組合の設立と強化に協力するとともに、現地女性たちの能力開発を支援しました。この2つの取り組みは、カナダの市民社会組織である「国際問題協 力 セ ン タ ー」(Centre d’Etude et de Cooperation Internationale: CECI)との協力により進められました。さらにロクシタンは、現地で包装・物流システムを導入し、出荷工程で品質が劣化することのないようにしました。また、同社は2009年より、仕入れ先にオーガニック&フェアトレード認証を取得してもらう取り組みを開始しました。さらに、協同組合は自らのエコシステムを構築する方法を学びました。例えば、ある協同組合は、オランダの市民社会組織ICCOによる研修、ドイツの開発機関GIZによる改良型の(より環境に優しい方法でシアバターの生産を可能

にする)加熱機器の提供、オランダの開発機関SNVによる戦略的助言、およびスイス開発協力庁によるシア資源保護に関する支援を受けています。

 こうした取り組みにより、ロクシタンは生産段階を改善し、現在では非常に高品質な約100種類のシアバター化粧品を提供しています。その代表例が、同社のベストセラー商品であるシアバターハンドクリームで、世界各地の2000以上の店舗で3秒に1個のペースで売れています。ロクシタンがブルキナファソで確立したビジネスモデルにより、現地でシアバターを生産する女性たちは、シアバターの取引から直接利益を得ています。

 2012年、ロクシタンはブルキナファソから500トン以上のシアバターを購入しました。これにより、協同組合とその会員におよそ120万ドルの収入がもたらされ、2%のフェアトレード奨励金が地域のプロジェクトに投資されました。

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事例研究:ロクシタン

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Page 16: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

サハラ以南アフリカは急速に成長しているが、利益の配分は不平等 サハラ以南アフリカの多くの地域における経済的展望は、急速に好転しつつあります。2013年、アフリカ大陸全体のGDP成長率は5.4%に達する見込みであり、同大陸は世界で最も急速に成長している地域のひとつとなっています7。図3に示した通り、サハラ以南アフリカの南スーダンを除くすべての国は、2007年から2012年にかけてプラスの経済成長を遂げています8。過去10年間に世界で最も急速に成長した10か国のうち6か国がアフリカ諸国であり、この傾向は今後も中・短期的に続くことが予想されます9。

 また、図4からわかる通り、資本もアフリカ大陸に流入しています。過去10年間にわたって、アフリカ大陸に向けた海外直接投資は着実に増加しており、2008年には734億ドルに達しました。この数字は2011年には544億

ドルと、世界経済危機の間も比較的堅調に推移しました10。実際、2005年以降、アフリカに向けられる投資額は援助額を上回っています。他地域で暮らすアフリカ大陸出身者は、重要な資本源となりつつあり、彼らからの送金は増え続け、2012年には500億ドル近くに達しました。

 こうした傾向も手伝って、世帯収入は増加しています。アフリカ大陸における消費者支出は、2020年までに1兆4000億ドルに達する見込みであり、これは2008年から5200億ドルの増加となります11。低所得市場が、この支出の大部分を占めています。2007年、アフリカで1年当たりの収入が3000ドルに満たない人々の総支出は、「購買力平価」(purchasing power parity: PPP)ベースで推定4290億ドルでした12。

サハラ以南アフリカ全域

5.20

図3:アフリカ各国のGDP成長率(2007~2012年)

モロッコ

チュニジア

アルジェリア リビアエジプト

モーリアニアニジェール

6.09 チャド 3.78

スーダン

ナイジェリア 7.05

マリ 2.97

エチオピア 9.25

コンゴ民主共和国

6.07

タンザニア 6.77

ケニア 4.42

アンゴラ 8.83 ザンビア

6.49

ナミビア 3.96

ボツワナ3.16

南アフリカ

2.71

セネガル 3.52

ガンビア 4.04

ギニアビサウ 2.57

ギニア 2.83

カーボベルデ 5.52

シエラレオ 8.20

リベリア 7.98

サントメ・   プリンシペ 4.83

ブルキナ ファソ 5.32

カメルーン 3.29

エリトリア 2.32

赤道ギニア 8.28

ジプチソマリア

マダガスカル 2.23

モザンビーク 7.06

スワジランド 1.06

レソト 4.64

ジンバブエ 1.35

ガーナ 8.24

トーゴ 3.68

ベナン 3.63

マラウイ 6.99

ルワンダ 7.39

ブルンジ 4.25

コートジボワール

2.24

コンゴ共和国 4.76

セイシェル 4.04

コモロ 1.67

モーリシャス 4.35

ウガンダ 6.44

–27.00 to 0.00

0.00 to 0.75

0.75 to 1.50

1.50 to 2.25

2.25 to 3.00

3.00 to 3.75

3.75 to 4.50

4.50 to 5.25

5.25 to 6.00

6.00 to 6.75

6.75 to 7.50

7.50 to 8.25

8.25 to 9.00

9.00 to 9.75

ガボン 4.30

南スーダン

–26.77中央アフリカ

2.97

実質GDP成長率2007~2012年の

平均年率

出典:国際通貨基金(IMF)

傾 向 と 展 望1

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 サハラ以南アフリカには8億を超える人々が暮らしています。2008年の世界銀行のデータによると、極度の貧困を表す国際基準である「1日当たり1.25ドル未満」(PPPベース)で暮らす人は全体の47.5%でした。同様に、もうひとつの国際的な貧困基準である「1日当たり2ドル未満」で暮らす人は68.8%でした。また、ほぼすべてのアフリカ人(97%)が、低所得市場の定義として「世界資源研究所」(World Resources Institute: WRI)と「国際金融公社」(International Finance Corporation: IFC)により使用されている基準である「1日当たりの収入8ドル未満」の層に分類されます26。確かに、「低い」とみなされる収入の正確な水準はつねに恣意的であり、「1日当たり2ドル」が意味するものは、小規模農家と都市部の労働者とでは異なります。

 本報告書では「低所得者」について、特定の所得水準によって定義づけるのではなく、正規市場やより大きなバリューチェーンに関与するうえで大きな課題に直面している人々という理解に基づいて定義づけています。大部分の低所得者は、主に非正規市場で取引を行います。彼らには、正規市場にアクセスするための法的文書、金融サービス、教育、技能、情報がありません。このため企業は、正規の方法で彼らと関与することが困難です。インクルーシブビジネスの進展をめぐる課題の多くは、こうした正規・非正規のギャップの克服に関わるものです。

 低所得層は、都市部と農村部のどちらにも存在します。サハラ以南アフリカの人口の約70%が農村部に暮らしており、農村部では貧困率がより高くなっています27。都市部にも、市場環境が欠如しているために企業の手が届きづらい貧困地区があります。市場を求める小規模農家、所得機会を求める零細起業家、子どものための栄養と医療を求める母親、仕事を求める若い女性といった人々は皆、バリューチェーンに組み込まれることで恩恵を受けることができます。したがって、本報告書の主要テーマは、十分なサービスを受けていない人々、失業している人々、または能力を十分に生かせない仕事に就いている人々など、これまで従来の市場から排除されていた人々、いわゆる低所得層の人々が、正式なビジネス・エコシステムに組み込まれることにより、さまざまな機会を手にすることができるという点にあります。

 低所得者とは?

図4:アフリカへの資本流入(2000~2012年)

2000 2001

2002 2003

2004 2005

2006 2007

2008 2009

2010 2011

2012

80

70

60

50

40

30

20

10

0

12

11

10

9

8

7

6

 海外直接投資    政府開発援助    送金    外部からの資本流入総額(右軸)単位:100億米ドル単位:

GDPに占める割合(%)

出典:「アフリカ経済見通し2012」(アフリカ開発銀行(AfDB)、経済協力開発機構(OECD)、国連開発計画(UNDP)、国連アフリカ経済委員会(UNECA))

チャンスを渇望する若年層の増加

 サハラ以南アフリカの総人口は約8億人です。アフリカ大陸に暮らす人々の平均年齢は、世界の全地域の中で最も低くなっています。2015年までに、アフリカの人口の75%が30歳未満となります13。さらに、2045年までには、若者の数は2倍になると予想されています14。増加する若年層は、消費者、生産者、被雇用者、起業家として大きな潜在力を秘めています。

 それにもかかわらず、若年層の大半は、極度の貧困、飢餓、病気、失業など、生活に関わる基本的な問題に苦しんでいます。・サハラ以南アフリカの人口の半数近くが、1日当たり

1.25ドル未満(PPPベース)の収入で暮らしています15。・サハラ以南アフリカで暮らす約2億3900万人が栄養不

良です16。・2009年に5歳未満児死亡率が出生児1000人当たり100人

以上だった世界中の31か国中、30か国がサハラ以南アフリカの国でした17。世界全体の平均寿命が69.2歳であるのに対し、サハラ以南アフリカ全体の平均寿命は52.5歳です18。

・2010年、アフリカの総労働人口3億8200万人中、正規雇用されている人はわずか1億700万人でした19。労働年齢人口の3分の2が、自給農業、非正規自営業、または家族の仕事の手伝いなど、不安定な非正規雇用に就いています20。若者はアフリカの労働者の3分の1以上を占めていますが、2009年のアフリカ大陸全体の若年失業率は約12%でした21。

・アフリカの成人人口の約38%、つまり1億5300万人の成人が、日常生活に必要な基本的な読み書き・計算技能を習得していません。アフリカの成人非識字人口の60%以上を女性が占めています22。アフリカの若者の識字率は72%で23、世界最低となっています。アフリカに暮らす3100万人以上の子ども(そのほとんどが女子)が学校に通っていません24。

 人間開発のその他の主要分野にも、大きな課題が立ちはだかっています。安全な飲料水を利用できる人は人口のわずか66%、衛生的なトイレを利用できる人はわずか40%、電力を利用できる人はわずか30%となっています25。

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インクルーシブビジネスは利益と社会的価値を生む

 インクルーシブビジネスは、アフリカの増加する人口、特に若年層に機会をもたらし、この地域の隠れた富を解放します。インクルーシブビジネスは、開発課題を解決することによって価値を生み出すことができます。革新的なビジネスアプローチは、低所得者を消費者、生産者、被雇用者、起業家といったさまざまな立場でバリューチェーンに組み込みます。さらに、インクルーシブビジネスは、これまで市場から排除されていた人々を市場に参加させることにより、利益と長期的成長のための強い基盤を構築します。一方、低所得者は、収入増の機会を与えられるとともに、基本的な財、サービス、その他の選択肢を手に入れることができます。そして、インクルーシブビジネスはしばしば、資源を節約し、環境を保護するグリーンなビジネス慣行をともないます。したがってインクルーシブビジネスは、包括的で環境に優しい成長の実現に向けた具体的な解決策となり得るのです。

 アフリカには、このようなパラダイムシフトの実現が可能であり、さまざまなステークホルダーにとって有益であるということを示す多くのよい事例があります。例えば、携帯電話を介した電子マネーサービス「M-Pesa」は、ケニアだけで1500万人に利用されており、同様の電子マネー・サービスにより、農村部を含むアフリカ大陸全体に暮らす数百万人が金融サービスを利用できるようになりました28。「Equity Bank」は、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダ、南スーダンの顧客800万人に預貯金・信用サービスを提供しています29。南アフリカのビール会社

「SAB Miller」は、ザンビア、ジンバブエ、南スーダン、ウガンダ、モザンビーク、タンザニアの約5万の小規模農家から原料を調達しています30。

 現地の起業家たちも、大きな変化をもたらしています。Nancy Abeiderrahmane氏は「Tiviski Dairy」を設立し、ほぼゼロの状態からモーリタニアの酪農業界を興しました。現在この会社は、1000以上の遊牧民からラクダのミルクを調達しています。ケニアでは、David Kuria氏が衛生サービスを提供する社会事業「Ecotact」を設立し、同社のトイレ設備「Ikotoilet」は現在、スラムに暮らす5万近くの人々に使用されています。顧客の「潜在力の解放」を目的としてJohan Wasserfal氏とJan Kitshoff氏が設立した南アフリカの「Eduloan」は、高等教育を受ける60万人以上の高卒以上の学生に教育ローンを提供してきました。さらにソマリアでも、起業家精神が再び成長しつつあります。起業家のLiban Egal氏は、内戦後初の銀行だけでなく、印刷会社、市場調査会社、および携帯電話を介した電子マネーサービスも設立しました(第3章のインタビュー参照)。この他にも数多くのインクルーシブビジネスの事例が、UNDPの「包括的な市場の育成(GIM)プログラム」によって確認されています31。

インクルーシブビジネスは低所得者を、需要面では顧客として、また供給面では被雇用者、生産者、起業家として、バリューチェーン内のさまざまな過程に組み込みます。インクルーシブビジネスは、相互の利益のために、ビジネスと貧しい人々を結びつけます。

包括的な成長とは、公正さ、平等な正義、政治的多様性を促す環境で、より多くの人々、国、地域に持続可能で社会経済的な機会を幅広く与えつつ、社会的弱者を保護する経済成長を意味します。これはまさにインクルーシブビジネスが目指すものです。

出典:「Creating Value for All」国連開発計画(2008年)Briefing Notes for AfDB’s Long-Term Strategy、および Briefing Note 6: Inclusive Growth Agenda、アフリカ開発銀行(2012年)

 インクルーシブビジネスとは? 包括的な成長とは?

インクルーシブビジネスは潜在力を解放する

 低所得者は、顧客、生産者、被雇用者、起業家として、ビジネスのバリューチェーンの中でさまざまな役割を果たすことができます。彼らはしばしば、複数の役割でバリューチェーンに組み込まれます。正式なバリューチェーンへのアクセスを手に入れることで、人々は自らの潜在力を十分に生かしながら、自らの選択を表明し、自らの才能を最大限に発揮して、より良い生活のために財やサービスを手に入れられるようになります。

 顧客として、低所得者は自らの生活と生産性を向上させる財やサービスを手に入れることで恩恵を受け、企業は市場を拡大することができます。例えば「ToughStuff」は、電力を利用できないコミュニティで太陽電池式のランプを販売しています。また、マイクロフランチャイズ型の流通モデルで、現地の起業家を活用しています。さらに、クリーンな再生可能エネルギーを使用したToughStuffの製品には、灯油や電池などの他の選択肢に比べて、健康面・環境面で大きなメリットがあります。

 生産者として、小規模農家や小規模製造業者は、安定した買い手を見つけ、企業の新たな調達先となることができます。また、インクルーシブビジネスは生産者に技能を移転し、雇用を生み出し、生産性を向上させます。例えば、世界的なビール会社の「ハイネケン」と「SAB Miller」は、どちらも過去数十年間にわたり、生産の現地化を着実に進めています。東西アフリカの何千もの小規模農家が、ビールの生産に必要なキャッサバ、大麦、ソルガム、ホップをこれらの企業に供給しています。

傾 向 と 展 望1

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図5:低所得者の役割別アフリカのGIM(包括的な市場の育成)事例の数(計43件)

 被雇用者や起業家として、低所得者は労働力の供給源となるとともに、地元に関する情報やコネクションを企業に提供します。特に雇用と収入機会を求めているアフリカの多くの若い起業家たちは、収入増と新たな技能取得の恩恵を受けることができます。その一例として、南アフリカの大手携帯電話会社「Vodacom」は、国全域に9万を超える携帯電話ショップを展開しました。起業家たちが、低所得コミュニティにおいてこの通信サービス直販店を経営しています32。

消費者

生産者

被雇用者

起業家

サハラ以南アフリカのGIM事例研究43件の分析(詳細については巻末を参照)注:低所得者は、ビジネスのバリューチェーンに複数の役割で組み込まれる場合がある。

 インクルーシブビジネスは、しばしば低所得者を複数の立場でバリューチェーンに組み込みます。例えば、調理用コンロ製造企業の「Toyola」は、バリューチェーン全体で低所得者に門戸を開いています。このガーナの企業は、自国内で現地の職人200人と契約を結んで調理用コンロを製造し、販売業者は地元市場でコンロを販売して10%の手数料を得ます。また、最も貧しい人々もこの製品を購入できるよう、同社は時にバーター(物々交換)融資を行っています。

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このマダガスカルの店主やタンザニアの職人のように、起業家として、またはこのタンザニアの保健・医療施設に集まった人々のように、患者や顧客として、低所得者はさまざまな立場でビジネスに参加しています

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インクルーシブビジネスはさまざまな主体によって推進される

 インクルーシブビジネスを推進する主体は、中小企業から大企業、地元企業から多国籍企業、非営利組織から営利組織まで、多岐にわたります。商業目的と社会的な目的のバランスはビジネス主体によって異なり、小さな非営利組織が大きな多国籍企業には真似ができないような方法で新たなモデルを試行するといったことも多々あります。しかし全体的に見て、すべてのインクルーシブビジネスを定義づける特徴は、商業目的と開発上の目的が補完的であるということです。

インクルーシブビジネスはすべてのビジネスの基本である「価値の創造」に根ざしている

 ビジネスは、人々の暮らしをよりよくすることにより、価値を生み出します。サハラ以南アフリカが持つ最大の未開発資源は人です。人々がその潜在力を発揮できるよう支援することで、ビジネスはアフリカが持つ富を活性化し、共栄を実現することができます。表1は、インクルーシブビジネスが企業、低所得者、およびエコシステム内のその他の主体に提供できる付加価値をまとめたものです。

企業にとっての付加価値 低所得者にとっての付加価値 その他のエコシステム関係者にとっての付加価値

新たな市場の確立:低所得市場における高成長、および掘り起こされるニーズによってもたらされる機会が、長期的な利益と増収に結びつく。

ニーズの充足:人々は食料と栄養、エネルギー、清潔な水と衛生設備、住宅、金融サービスなど、必要とする財・サービスを手に入れることができる。

政府は、社会的な目的を達成するために民間投資を活用し、特に若者の雇用創出、所得増加、基本的な財・サービスへのアクセス改善を実現することができる。

サプライチェーンの強化:小規模農家や製造業者の開拓により、企業は新たなサプライチェーンへのアクセスを手に入れることができる。

収入の増加:仕事を見つけて収入を増やし、生活を改善することができる。低所得者向けの低価格の設定は、低所得者の購買力増加につながる。

開発関係機関は、資金援助が終了した後も継続できる持続可能なソリューションにつなげることができる。

ブランド価値の向上:具体的な社会貢献により、企業の評判やブランド価値が高まり、地元での事業許可が得やすくなる。

生産性の強化:電気、金融サービス、保健・医療サービス、電気通信、情報、技術へのアクセス、能力開発の結果、生産性が高まる。

市民社会組織は、対象とする低所得層の人々にさまざまな機会をもたらすことができる。

従業員の確保と動機づけ:社会的に貢献することにより、従業員にやる気を持たせ、才能ある人材を集めることができる。

選択肢の拡大:正規市場に組み込まれることにより、新たな選択肢と、自ら決断を下す能力を手に入れることができる。

研究機関は、企業と連携することにより、資金提供を受けることが可能になる。

イノベーションの推進:低所得市場における挑戦は、既存市場でも適用可能なイノベーションを推進する。

自信の確立:選択肢が増えることで、人々は自信を獲得し、自らの人生をコントロールしているという気持ちを手に入れることができる。

仲介機関は、仲介する関係者に具体的な成果を提供することにより、自らの価値を高めることができる。

表1:インクルーシブビジネスが各主体にもたらす恩恵

出典:「Creating Value for All」国連開発計画(2008年)

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 「ミレニアム開発目標」(Millennium Development Goals: MDGs)は、多岐にわたる挑戦をともなう「人間開発」という概念を具体的な実行を促す目標へと変換し、人々の生活の改善を測る包括的な枠組みを国連機関にもたらしています。2015年までの目標達成を目指しており、目標の多くにおいて進展が見られるものの、多くのアフリカ諸国では達成までにまだかなりの道のりが残されています。民間セクターはMDGsの達成に向けて重要な役割を果たすことができます。実際、以下に示す「包括的な市場の育成」事例からもわかるとおり、インクルーシブビジネスは8つの目標それぞれに貢献することが可能です。

     ミレニアム開発目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅綿のフェアトレードは、西・中央アフリカで

194の生産者組織に所属する農民2万3000人の収入を増加させ、2005年から2006年までに520万ドル以上の収入を生み出しました。これは、従来よりも約260万ドル増となる額です。

     ミレニアム開発目標2:普遍的な初等教育の達成ウガンダでは「Association of Private Water

Operators」の加盟企業が、50万人にきれいな水を供給しています。これは住民、特に若い女性が、水汲みに時間を費やす必要がなくなり、学校の勉強により集中できるようになることを意味します。

     ミレニアム開発目標3:ジェンダー平等の推進と女性の地位向上多国籍の化粧品会社「ロクシタン」は、2011

年にブルキナファソの農村部に暮らす約1万5000人の女性に、シアバターの販売による合計120万ドルの収入をもたらしました。さらに同社は、女性たちによる協同組合の設立を支援するとともに、彼女たちに研修の機会や環境に優しい生産手法、少額融資を提供することによって、女性の地位向上を図っています。

     ミレニアム開発目標4:乳幼児死亡率の削減マリでは、市民社会組織の「Pesi-Net」が地

元の看護師たちを対象に、子どもの体重を量り、その情報をメールで医師に伝えるよう研修を行い、乳幼児死亡率の削減に貢献しました。低体重の子どもがいる場合、看護師はその子どもの健康を改善する方法についての情報を受け取ります。この単純な方法によって、乳幼児死亡数の半数以上を削減することが可能です。

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     ミレニアム開発目標5:妊産婦の健康状態の改善ケニアでは、「Child and Family Wellness

(CFW)」の66か所の店舗、小規模薬局、および診療所が、低所得層に安全な医薬品と保健・医療を提供しています。CFWはフランチャイズ方式で運営されており、財団が看護師を採用して定期的に研修を行うとともに、製品とサービスの品質管理を行っています。2012年、CFWは約40万人の患者や顧客に利用され、妊婦や母親たちは、保健・医療の恩恵を受け、蚊帳などを購入できるようになりました。

     ミレニアム開発目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病のまん延防止

タンザニアの繊維会社「A to Z Texitiles」は、長持ちする殺虫剤処理済の蚊帳を生産するため、日本の化学会社「住友化学」との合弁事業を設立しました。この蚊帳はアフリカやその他の地域で広く提供され、マラリアの予防に役立っています。両社の共同工場の生産能力は年間3000万個で、2011年には7500人を雇用しました。

     ミレニアム開発目標7:環境の持続可能性を確保セネガルの企業「Du Vent, de L’Eau pour

la Vie(VEV)」は、風力ポンプを使って地下水を汲み上げ、それを地元の女性たちが販売しています。このビジネスにより、きれいな水へのアクセスが改善され、女性が水汲みに費やす時間が削減されます。

     ミレニアム開発目標8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進ブルキナファソでは「Inova」という企業が、

携帯電話を介した電子マネーサービスを6万人に提供し、人々が安全かつ低コストの取引を実現できるよう環境を整えています。これにより時間の節約と取引のセキュリティ向上が実現しました。

 さまざまな企業がどのように8つのMDGsに貢献しているのか、またそれらの企業を他の主体がどのように支援しているのかを示す他の事例については、UNDPの「 包 括 的 な 市 場 の 育 成 」 報 告 書「The MDGs: Everyone’s Business(ミレニアム開発目標(MDGs):全ての人々のビジネス)」をご覧ください。

 2015年を目前に控え、国際社会はすでに「ポスト2015開発アジェンダ」の枠組みの策定を進めています。新たな枠組み作りのための協議プロセスとその実施のいずれにおいても、民間セクターが重要な役割を果たすということについては、広く合意が形成されています33。

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 インクルーシブビジネスは、どのようにMDGs達成に貢献できるか

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インクルーシブビジネスのエコシステムは規模と影響の拡大を可能にする インクルーシブビジネスは、困難な環境のもと実施されます。2008年の「包括的な市場の育成」(GIM)の調査で再確認されたように(下記コラム参照)、低所得市場は、市場に必要な条件の多くを欠いています。信頼できるマーケット情報はしばしば存在せず、規制は多くの場合不十分で、物理的なインフラも多くの市場で不十分です。低所得者は生産的な形でバリューチェーンに参加するために必要な知識や技術を最初は持たず、金融サービスへのアクセスも多くの場合、非常に限られていす。これらの条件がない、または不足している場合、企業はそのギャップを自ら埋めなければならないため、取引コストがかさみます。アフリカにおけるインクルーシブビジネスの試みは大きな可能性を秘めているにもかかわらず、しばしば大きな障害が存在します。

 アフリカにおけるインクルーシブビジネスの潜在力を生かすために、これらの障害を克服するようなエコシステムが必要とされています。

 インクルーシブビジネスのエコシステムは、インクルーシブビジネスが成功し、影響力を生み、規模を拡大するうえで役立つ行動をする、相互接続的・相互依存的な参加者のネットワークで構成されます34。こうしたエコシステムには、企業、政府、開発関係機関、市民社会組織、研究機関、仲介機関など、さまざまな主体が含まれます。

 「包括的な市場の育成」(GIM)プログラムからの考察

GIMの使命は、インクルーシブビジネス・モデルと、それがこのニジェールの男性のような何百万人もの人々にもたらす影響を明らかにすることです

 2006年以来、UNDPのGIMプログラムは、インクルーシブビジネスのアプローチについての考察と広報に努めてきました。50の事例の分析に基づき、このプログラムの最初の報告書「貧困層を対象にしたビジネス戦略 ―すべての人々のために価値を創造する」(Creating Value for All – Strategies for Doing Business with the Poor)(2008年)は、企業が低所得者をビジネスパートナーとする際に主に5つの市場の障害(マーケット情報の欠如、経済活動を促進しない規制環境、劣悪な物理的インフラ、知識とスキルの不足、金融サービスへの限られたアクセス)に直面するということを明らかにしました。またこの報告書では、これらの障害を克服するための5つの戦略(製品やプロセスの低所得市場への適応、障害を克服するための投資、低所得層の人々の人的活用、他の主体との資源や能力の結集、政府との対話)も示しています。これらの戦略は、企業がインクルーシブビジネスを確立するためには、しばしば他の主体の協力と支援が必要となるということを示しています。

 これらの考察に基づき、GIMプログラムの二番目の報告書「ミレニアム開発目標(MDGs):全ての人々のビジネス」(The MDGs:Everyone’s Business)(2010年)は、さまざまな事業体(多国籍企業、大手国内企業、中小企業、市民社会組織)が、8つの目標それぞれに貢献できるということを強調しました。またこの報告書では、他の主体、特に政策立案機関、研究・アドボカシー機関、金融機関などが、いかに支援を提供できるかということについても説明しています。

 欧州新興国と中央アジアに関する報告書「Business Solutions to Poverty」(2010年)では、インクルーシブビジネスの支援に必要な条件、そして企業が使用するモデルと必要な支援の種類は、地域によって大きく異なるということが明らかになりました。欧州新興国と中央アジア諸国のほとんどはかつて社会主義体制下にあったため、インフラは比較的充実しているものの、起業家文化は乏しいという環境にあり、起業家の創造力によってインフラ不足を補う必要があるサハラ以南アフリカとは状況が全く異なります。

 本報告書ではGIMプログラムを基盤として、インクルーシブビジネスのアプローチを促進する、地域固有の具体的なソリューションを模索しています。

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 UNDPは「包括的な市場の開発」(IMD)をどのように支援しているのか

「包括的な市場の開発」(IMD)は、インクルーシブビジネスのエコシステムを構築することにより、小規模農家や中小企業に機会をもたらします

図6:サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブビジネス・エコシステムの機能の欠如

インセンティブ

投資

情報

実施サポート

非常に大きく欠如している

大きく欠如している

少し欠如している

全く欠如していない

出典:アフリカの100の開発支援機関を対象としたアンケート調査

0 10 20 30 40 50 %

 「包括的な市場の開発」(Inclusive Market Development: IMD)とは、生産者、消費者、起業家、被雇用者として、貧しい人々やその他の市場から排除されてきた人々の選択肢と機会を拡大するような市場の開発を意味します。IMDは、政府、主要な企業、およびその他の開発関係主体との連携により、供給者・流通業者としての小規模

農家や中小企業(非正規ビジネスや小規模な家族経営ビジネスを含む)の生産性向上と参加を促すことを目的とした全体的なアプローチです。したがってIMDの実施は、小規模農家や中小企業のための機会を拡大しつつ、その能力を開発する統合的なバリューチェーンとビジネス分野の強化をともないます。

 UNDPのIMD戦略は、中小企業が成長し、貧困削減に貢献できるようにすることを目指す「民間セクター育成」(Private Sector Development: PSD)と、先進国、後進国を問わない多国籍企業から中小企業までのさまざまな企業間で途上国の開発に向けたパートナーシップを育成する「民間セクター連携」(Private Sector Engagement: PSE)とを組み合わせたものです。

 IMDは、3つのレベルで実施されます。まずミクロレベルでは、小規模な生産者と取引業者の能力構築と、重点部門のバリューチェーンへの支援が行われます。中間レベルでは、バリューチェーンの連携が強化され、官民の対話と協力が促進されます。マクロレベルでは、市場インフラの開発が支援され、包括的な経済成長に向けたセクター別の施策が推進されます。IMDは、インクルーシブビジネスのエコシステムを活性化および強化することにより、インクルーシブビジネスを支援しているのです。

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4種類のインクルーシブビジネス支援

 起業家は、ビジネスを開始・実施するため、4つのビジネス促進機能が特に必要です。まずは、ビジネスチャンスや市場の特徴についての情報を必要とします。また起業家は、ビジネス活動に関与する理由となる商業的なインセンティブを必要とします。さらに、金融投資を必要とします。最後に起業家は、技術的な実施サポートを必要とします。図6に示した通り、100の開発支援機関を対象に行ったアンケート調査では、アフリカのインクルーシブビジネスのエコシステムにおける各機能の欠如は非常に大きいということが明らかになりました。回答者の半数以上が、4つのカテゴリーのすべてにおいて、大きい欠如または非常に大きい欠如があると答えており、これらのカテゴリーのいずれにも欠如がないと考えている回答者はほとんどいませんでした。最も大きな改善が求められるのは「投資」で、回答者の半数以上が「非常に大きな欠如がある」と回答しています。

 情報と関連知識はビジネス活動の基盤となります。しかし、データを収集し、ビジネスに活用することは、低所得市場においてはしばしば大きな課題となります。信頼できる市場データはないことが多く、コンサルティング会社や調査機関なども多くの場合、存在しません。さらにアフリカでは、インクルーシブビジネスがどのように機能するかということについての情報が、現地の企業や起業家には入手困難です。学術機関や、コンサルティング会社、シンクタンク、市場調査機関、ならびに開発支援機関とその民間セクタープログラムは、この分野で重要な役割を果たすことができます。

 インセンティブはビジネスの推進力です。アフリカではビジネスを行うためのコストが、特に低所得・非正規市場では高くなりがちです。各種の規制は不十分であり、業務管理プロセスは大きな負担となります。ビジネス活動にともなう社会的・環境的な負の影響がビジネスコストに含められることはほとんどなく、良い影響に対して金銭的報酬が与えられることも通常ありません。ビジネス環境を改善して、低所得者の市場参加を促し、社会的・環境的メリットに報酬を与えることにより、社会問題を解決するビジネスを模索・実施するよう起業家へのインセンティブを拡大させることができます。この分野では、公共政策が重要な役割を果たしますが、民間企業の方針や官民連携も影響を及ぼすことができます。

 投資はビジネスの燃料となります。アフリカへの資本流入は増加していますが、債務やリスクキャピタルはまだ不十分であるか、現地のニーズに十分に適合していません。一般にインクルーシブビジネス・プロジェクトは、すでに確立された資金調達の枠組みを採用するのが難しい場合があります。なぜなら、インクルーシブビジネス・プロジェクトは、収支が見合うまでに時間がかかる場合があり、リスクが大きく、不安定であるとみなされがちだからです。官民の開発関係機関は、こうした課題に取り組むためのインパクト・インベストメント(次頁のコラム参照)のメカニズムを作っています。また、銀行は、中小企業へのサービス提供を強化しています。そして、起業家や生産者に直接マイクロファイナンスを提供することにより、インクルーシブビジネスの資金調達ニーズを緩和することが可能です。

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エコ

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インセンティブ

インクルーシブビジネス

投 資情 報

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図7:インクルーシブビジネスのエコシステムの構図

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 インパクト・インベストメントとは?

サグン・サクセナ氏Sagun SaxenaCEO, CleanStar Mozambique

 「CleanStar Mozambique」は、食料・エネルギーを扱い、森林保護を行う企業です。同社はモザンビークの小規模農家と協力して、輸入食料・木炭に代わる食品やエネルギー作物を生産し、都市中心部で加工・販売しています。

起業家がサハラ以南アフリカにおいてインクルーシブビジネスを立ち上げるうえで、どのような課題があるとお考えですか? アフリカの都市部の低所得層の消費パターンに関する信頼できる市場データがほとんどないため、私たちのようなインクルーシブビジネス事業者が、市場ニーズを把握して戦略を立てることが困難な状況です。そのため、私たちは自ら現地での市場調査・分析を行うために大きな投資をしなければなりません。

 また、農産物の仕入れ先である小規模農家の間では正式な取引活動が行われていないため、当社は取引のための基本的な物理的インフラ、また金融インフラの構築にも投資しなければなりません。

 ビジネスの運営に関しても、モザンビークでは会計や法令遵守といった分野が十分に発達していません。そして、木炭の流通のような非正規の経済活動を正規のインクルーシブビジネス・モデルに移行させるための明確な規定(例えば、付加価値税に関する規則など)がありません。

課題の中に、投資についてのお話はありませんでしたが、インクルーシブビジネスへの資金供給は十分なのでしょうか? ビジネスの包括化によって複雑さが増すのではなく、リスクを削減できるということを実証できる、説得力のあるベンチャー事業は資金を得ることができます。概念の実証は、ビジネスモデルの正当性を立証し、実施能力を実証することにより、リスクに対する認識を調整するうえで有益です。多くのインクルーシブビジネスの起業家たちは、金融機関との取引実績がないので、金融機関の資本を利用するのに苦労します。開発援助による資金調達は、新規ビジネスにとって致命的な遅延と依存を生む場合があります。

インタビュー

 実施サポートは、インクルーシブビジネス・モデルを現実のものとするための支援をします。ビジネスを実行するためには、効率的な取引システム、流通・調達経路、マーケティング・通信サービス、小規模ビジネスに向けた支援が必要とされます。低所得層では多くの場合、これらのサービスはまずは市民社会組織、開発支援機関、その他の仲介機関によって提供されます。

 これらの機能が一体化して、持続可能な開発と商業的な成功をもたらすビジネスに向けて、起業家を後押しします。本報告書では、これらの機能を図7のような「インクルーシブビジネスのエコシステムの構図」にまとめています。

「私たちは自ら現地での市場調査・分析を行うために大きな投資をしなければなりません」

インパクト・インベストメントは、従来の投資ノウハウと社会的な目的を結合させます。このマダガスカルの女性たちは、個人的・社会的な目的を達成するために、自分たちの貯蓄と融資グループのための経理処理を行っています

 インパクト・インベストメントとは、投資へのリターンだけでなく、社会的・環境的なよい影響がもたらされることを目的とした、企業、組織、基金に向けた投資です。インパクト・インベストメントは、さまざまな資産において行われ、プライベート・エクイティ、ベンチャー・キャピタル、債務に含みます。革新的なモデルを持つがゆえに、困難な市場環境に直面することが多く、採算が取れるまでに比較的長い時間のかかることが多いインクルーシブビジネスにとって、インパクト・インベストメントは重要です。

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主体 含まれる組織 各機能において果たす役割の例 記号情報 インセンティブ 投資 実施サポート

企業 多国籍企業、大手企業、国有企業、中小企業、新規事業と起業家、社会事業、市場調査会社、コンサルティング会社、金融機関およびマイクロファイナンス機関、投資家

市場調査の実施、コンサルティングサービスの提供

自主的な規制・基準・認証、良好なコーポレートガバナンス

ベンチャー・キャピタルとプライベート・エクイティの提供

物流およびマーケティング・サービス、支払いシステム、金融インフラ(信用登録を含む)の提供

政府 国家政府、公共機関、地 域 経 済 共 同 体

(REC)、国際機関

経済データの公表、適切な識別システムの提供、データの収集

法的・規制的枠組みの構築、インクルーシブビジネスからの調達、社会的・環境への良い影響に対する見返り

投資に対する保証の提供

企業と公共サービスとの連携の実現、インフラの改善、良質な教育と研修プログラムの提供、小規模ビジネス支援機関の設立、ビジネス・インキュベーターの育成

開発関係機関 二国間・多国間公共開発関係機関、民間財団

成功事例の文書化と分析、官民連携の促進、インクルーシブビジネスを促進する政策について政府への助言

国の戦略や支援におけるインクルーシブビジネス・アプローチの推進

長期間にわたる資本の提供

技術支援、助言サービス、能力開発支援

市民社会組織 市民社会組織、NGO、NPO

低所得層に関する市場調査、インクルーシブビジネス・アプローチの促進

低所得層の利害の番人としての役割

低所得層の金融サービスへのアクセスの促進

低所得層の意識向上と能力開発支援

研究機関 大学、シンクタンク、研究機関

インクルーシブビジネスに関する知識の生 成 と 普 及、 知 的リーダーシップ、インクルーシブビジネスに関する議論への影響

ビジネスモデル構築のための情報提供、インセンティブシステムの評価、提言の実施

新たな投資手段の有効性の評価

インクルーシブビジネス実施のための情報提供

仲介機関 ビジネス団体、基準設定機関、テーマ別組織、メディア

エコシステムの機能・主体間の連携の促進、関係者間の情報 共 有、 ア ド ボ カシー

基準の設定・監視・評価

インフラ改善のための資金の共同出資、研究への投資

企業間における実績の共有

すべての社会的な主体はインクルーシブビジネスのエコシステムを強化することができる

 インクルーシブビジネスのエコシステムは、さまざまなタスクを共有するネットワークの中で協働するさまざまな主体で構成されています。私たちはこれらの主体を、企業、政府、開発関係機関、市民社会組織、研究機関、仲介機関

という6つに分類します。もちろん、ひとつの主体にひとつの分類が単純に当てはまるわけではなく、現実には、仲介サービスを行う企業や調査サービスを行う市民社会組織など、複合的な主体も多く見られます。しかしこの分類は、アフリカにおけるインクルーシブビジネスのエコシステム内の主な特徴を明らかにするうえで有益であり、この報告書による提言の基盤となり得るものです。

表2:インクルーシブビジネスのエコシステムの主体とそれが各機能に果たす役割の例

以下の各章では、これらの主体のひとつに特に関連のあるものについて、該当する記号を表示します。これにより、各主体に的を絞って報告書を読み進めることができます。

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サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブビジネスの傾向 サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブビジネスのエコシステムについての調査で、関与する事業体の種類、支援を提供する主体の種類、およびビジネス活動が行われる国や部門に関して、いくつかの傾向が明らかになっています。大企業は規模の面でいくつかの目覚ましい成果を挙げていますが、インクルーシブビジネスの主な所有者は中小企業です。支援サービスは現在、主として国際機関により提供されていますが、現地の支援ネットワークも出現しつつあります。そして、インクルーシブビジネスの機会は、さまざまな分野に存在しています。

中小企業はインクルーシブビジネスの強力な推進役

 多国籍企業が実施しているインクルーシブビジネスに注目が集まりがちですが、実はサハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスの多くは中小企業によって実施されています。図8に示した通り、我々が行った400件の事例研究のうち、半数近くが中小企業により実施されています35。アフリカ各国内の大企業も、自らのバリューチェーンに低所得者を意図的に組み込み始めています。ケニアに1500万人の顧客を持つ「M-Pesa」の印象的な事例が示すように、大企業や多国籍企業には短期間で規模拡大を実現することのできる能力があります。市民社会組織は、従来はあまり市場を基盤としていなかったものの、貧困緩和にとって重要性の高い保健・医療や教育などの分野において、最も革新的なビジネスモデルの一部を担っています。協同組合もまた、特に生産者をバリューチェーンに組み込む際に重要な役割を果たしています。

主な支援提供者は国際機関だが、現地主体も出現しつつある

 国際機関、特に開発関係機関、インパクト・インベスター、市民社会組織は、サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブビジネス設立の推進力となっています。これらの組織は、起業家への資金提供や技術支援に直接関与していますが、連携の枠組みや能力開発サービスなど、インクルーシブビジネスのエコシステムのその他の要素への資金提供や実施も担っています。インクルーシブビジネスに関する調査の多くは、国際的な研究機関やコンサルティング会社によって実施され、国際的な市民社会組織、ビジネス団体、開発関係機関、大学は、研修、調査、情報交換を実施しています。

図8:サハラ以南アフリカで実施されているインクルーシブビジネスの内訳(組織形態別)

出典:サハラ以南アフリカの400件の事例をもとに集計

中小企業 195

大企業 62

市民社会組織 55

多国籍企業(外資系)57

協同組合 18

多国籍企業(開発途上国)13

合計400

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 世界的にこうした傾向が見られるのは当然のことです。インクルーシブビジネスの概念は、C.K. Prahalad氏やStuart Hart氏などの著作により、最初に米国で注目を集めました36。その後、インクルーシブビジネスの概念はビジネスと開発の両方に対する戦略的なアプローチと捉えられ、開発関係機関と多国籍企業に強い影響を与えました。これと対照的に、多くの開発途上国においては、インクルーシブビジネスの概念はまだ馴染みがないか、十分に理解されていません。

 したがって開発途上国の人々は、インクルーシブビジネス・モデルの価値をあまり認識していません。インクルーシブビジネスを認識するプロセスはいくつかの形態で進んでいます。途上国政府は市場を基盤としたアプローチのメリットを次第に認識しつつあり、政策や各種プログラムを通じて、このアプローチを促進する方法を模索しています。

「包括的アフリカ農業開発プログラム」(Comprehensive Africa Agriculture Development Programme: CAADP)などのマルチステークホルダー型の取り組みは、インクルーシブビジネスを促進する調整・共同推進の枠組みを構築しています。開発途上国のインクルーシブビジネスのエコシステムの整備は各種政策と並行して整備が進んでおり、現在、ビジネススクールによる調査・研修プログラム、商業銀行の金融サービス、現地のインパクト・インベスターや育成機関により提供される投資と技術支援などが進んでいます。現地のマイクロファイナンス機関は、低所得の消費者や生産者に資金提供を行っています。しかし、市場調査機関、コンサルティング会社、インキュベーター、信用調査会社、格付け機関、認証機関、バリューチェーン促進機関、経営者教育機関等、現地におけるインクルーシブビジネスの仲介機関は依然として大きく不足しています。

 インクルーシブビジネスのエコシステムは近年発達してきてはいるものの、現地の起業家たちがビジネスベースのアプローチを通じて、大規模に開発課題に取り組めるようにするには、より強固なエコシステムが必要です。本報告書の最終章に示す提言では、エコシステムを強化するために各主体にできることを指摘しています。

インクルーシブビジネスのエコシステムは、経済発展にともなって発達する

 サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスの展望には、大きな偏りが存在します。この地域では経済発展、ガバナンス、歴史の面で大きな差異が存在することを考えれば、これは驚くに値しません。概して、これまでの証拠からわかることは、国の経済発展やガバナンス能力の水準と、その国のインクルーシブビジネスのエコシステムの状態には相関関係があるということです。図9は、我々のデータベースにあるインクルーシブビジネスの事例400件を国別に分類したものです。3分の1以上が、インクルーシブビジネス・アプローチを採用・奨励してきた南アフリカまたはケニアの事例で、残りの事例のほとんどは、経済が安定的であり、かつ成長期にある他の国々の事例です。確実な経済発展やガバナンスとインクルーシブビジネスの間に関連性があるのは当然のことです。なぜなら、主流のビジネスを促進する要因は、低所得層のビジネスも促進するからです。大きな経済発展は、インクルーシブビジネスを構築することのできる主体を多く生み出します。同様に、インクルーシブビジネス活動の増加は、これらの活動を支援する主体が増加することを意味します。

図9:サハラ以南アフリカで実施されているインクルーシブビジネスの内訳(国別)

出典:サハラ以南アフリカの400件の事例をもとに集計

南アフリカケニアガーナ

サハラ以南アフリカ全体タンザニア

ウガンダセネガル

ナイジェリアマダガスカル

マリエチオピア

ブルキナファソルワンダザンビアナミビア

カメルーンマラウイリベリア

モザンビークアンゴラガンビアスーダン

モーリタニアジンバブエ

スワジランドシエラレオネ

ニジェールソマリア

コートジボワールコンゴ民主共和国

ボツワナベナン

73

69

35

33

31

28

18

18

13

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 南アフリカは、アフリカで最も経済発展が進んだ国であり、ひとり当たりGDPは購買力平価ベースで1万1000ドルで、金融・法律・通信・エネルギー・輸送部門はよく発達し、効率的な物流システムを支える近代的な商業インフラが整っています。同国の政策「ブラック・エコノミック・エンパワーメント」(Black Economic Empowerment: BEE)は、優先調達により、アパルトヘイト政策のもとで困難に直面していた人々をビジネスに組み込む強い動機を企業に与えました。その結果、コンサルティング会社、市場調査機関、研究機関、その他の組織からなるエコシステムが発展しました。またケニアも、非正規市場の重要性を明確化したことも手伝って、主流な商業活動に低所得者を組み入れることにおいて大きな前進を遂げています。この国では、経済発展と人間開発の双方を実現することを目的とする総合的な政策である「ビジョン2030」、ならびに「金融部門深化イニシアティブ」などの政策(第6章参照)により、インクルーシブビジネスのエコシステムの構築に成功しています。

 その対極にあるのが、長年にわたり内戦や政治的混乱の続いているソマリア、コンゴ民主共和国、スーダンなどの国々です。これらの国では、正規な市場ですら未発達で、インクルーシブビジネスのアプローチを極めて困難にしています。しかし、このような困難な状況にあっても、なんとか発展し、地元住民に大きな恩恵をもたらしているビジネスもあります。例えば、紛争が続くスーダンのダルフール地方では、鍛冶屋が協同組合を設立して、地元市場向けの工具を生産し、多くの雇用を生み出しています。ソマリアでは、Liban Egal氏が「First Somali Bank」を設立しました(第3章のインタビュー参照)。

インクルーシブビジネスは、農業、エネルギー、金融サービス、情報通信技術分野に集中

 アフリカのほとんどすべてのビジネス分野が、低所得者がビジネスパートナーと成りうる機会をもたらします。しかし、「包括的な市場の育成」(GIM)プログラムによる43件の詳細な事例分析からは、低所得者をどう組み込むかはビジネス分野によって異なることが明らかになっています(図10)。消費財、エネルギー、金融、保健・医療、住宅・建設、情報通信技術、水・衛生などの部野は、貧しい人々を主に顧客としてビジネスに組み込んでいます。アフリカに暮らす低所得者のほとんどは、少なくとも何らかの形で農業分野の労働に従事しており、この分野では、インクルーシブビジネス・モデルはこれらの人々に生産者としての機会をもたらします。またすべてのビジネス分野のインクルーシブビジネスは、低所得層が被雇用者や起業家としての役割を果たす機会を生み出します。農業とエネルギー分野は、4つの役割(消費者、生産者、起業家、被雇用者)すべてにおいて、低所得者に機会をもたらす可能性が最も大きい分野です。

 確かに、人々の生活への大きな影響はいくつかのビジネス分野からもたらされる場合もあります。例えば、情報通信技術と移動通信の利用により、何百万人もの低所得の消費者や起業家の生活が改善されました。特定のビジネス分野は、他よりもインクルーシブビジネス活動が盛んで、図11からもわかる通り、400件の事例によると、アフリカにおいてインクルーシブビジネスの割合が最も高い部野は、農業、エネルギー、金融サービス、情報通信技術となっています。

図10:ビジネス分野および低所得層の役割別に見るインクルーシブビジネスの可能性 低所得者の役割

起業家 被雇用者消費者 生産者

農業・林業

消費財

エネルギー

金融サービス

保健・医療

住宅・建設

情報通信技術

廃棄物

水・衛生

高い可能性 中程度の可能性 低い可能性出典:「包括的な市場の育成」イニシアティブによるサハラ以南アフリカの43件の事例の分析より

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 農業は、今もアフリカの現役労働者約60%の生計手段となっており、アフリカ全体のGDPの34%を占めています37。世界銀行によると、農業分野は、他の分野に由来するGDP成長よりも、極度に貧しい人々の収入を増やすには、はるかに効果的である場合が多いとされています38。農業では、小規模農家を生産者としてサプライチェーンにうまく組み込めるということが、多くの事例で示されています。ケニアの「Nakumatt」や南アフリカの「Shoprite」などの現地小売業者は、生鮮品の地元調達の割合を増やしています。他の事業体は小規模農家に情報を提供し、新たな市場を開拓しながら農家の生産性向上を支援しています。例えば、国際的な市民社会組織である「IDE」は、アフリカ全域の農家に低コストの灌漑システムを提供しています。そして、低所得の消費者に栄養の高い食品を提供している企業もあります。例えば、新興企業の「GADCO」は、手ごろな価格で米をガーナの地元市場で販売しています。

 低所得世帯は、収入の約7%をエネルギーに費やしており、アフリカ全体で合計266億ドルの市場となっています39。家庭用ソーラーシステムや環境に配慮した調理用コンロなどのオフグリッド・ソリューションは、遠隔地に暮らす人々にもクリーンなエネルギーを提供します。多くの場合、地元の起業家がこれらの製品の製造、販売、修理を行います。

「Toyola Energy」は、ガーナでエネルギー効率の良い調理用コンロを製造・販売しています。「EDF」はマリで小規模なエネルギー網を構築しました。

 近年、消費者や小規模起業家の金融サービスへのアクセスは大きく改善されました。マイクロファイナンス機関によるサービス提供に加えて、従来型の銀行もオンラインバンキングにより低所得市場への参入を進めています。例えば南アフリカでは、「Standard Bank」が1万か所のアク

セスポイント(主に南アフリカの黒人居住区で取引を行う非正規の金融事業者)からなるネットワークを構築しました。携帯電話を介した電子マネーサービスにより、何百万もの人々が金融システムへのアクセスを得ました。ある報告によると、サハラ以南アフリカに暮らす成人の16%が、過去12か月間に携帯電話を使って支払いや送金、現金の受け取りを行っています40。しかし、サハラ以南アフリカの成人人口4億600万人のうちの80%が、2009年末時点で銀行サービスを利用できない状態にありました41。

 情報通信技術分野は、低所得層を金融サービス、情報、市場に結び付け、その生活を改善する主な推進力となっています。データサービス・プロバイダー「Esoko」は、携帯電話を通じて市場価格、取引情報、気象警報を配信しています。これは小規模農家が、どの作物をいつ植えるべきか、また自分たちの農産物に高い価格をつけてくれるのはどの市場かということを判断する際に役立ちます。同社はすでにアフリカ16か国で事業を展開しています。また、電話による融資やこれに関連したサービスは、大規模なフランチャイズシステムの一部として、現地の起業家によって小規模農家に提供される例も多いです。

 インクルーシブビジネスの事例が多い分野では、支援機関を巻き込んだ、よりレベルの高いエコシステムが発達する傾向があります。近年確立されたさまざまな取り組みが、農業分野のバリューチェーンのさまざまな段階で各主体を結び付け、小規模農家の市場への参入を支援しています。近年、多くの投資家や投資ファンドが、低所得世帯のためのエネルギー・ソリューションの開発を支援しています。また、多くの国が、貧困層への金融機会の提供と携帯電話を基盤としたソリューションの普及を目指した新たな政策を実施しています。

図11:サハラ以南アフリカで実施されているインクルーシブビジネスの内訳(分野別)

出典:サハラ以南アフリカの400件の事例をもとに集計

合計400

農業・林業 106

消費財 22

教育 5

エネルギー 77

鉱業 8

金融サービス 47

保健・医療 27

住宅・建設 11

情報通信技術 44

観光 12

廃棄物 15

水・衛生 26

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エコ

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第3章:インセンティブ

インクルーシブビジネス

第4章:投資第2章:情報

第5章:実施サポート

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インクルーシブビジネスのエコシステムについてのさらなる考察 インクルーシブビジネス・モデルは、アフリカの急速な成長を低所得層の機会へと転換する大いなる可能性を秘めています。関係する多くの主体が、インクルーシブビジネスの成功と成長を可能にするエコシステムの構築に貢献することができます。以下の4つの章では、インクルーシブビジネスのエコシステムの4つの機能(情報、インセンティブ、投資、実施サポート)のそれぞれについてさらに詳しく考察します。各章は同じ構成になっており(図12)、まず、各機能に関連する課題を明らかにし、次にこれまでに見られる成果を分析します。最後に、さらなる機会を明らかにします。

図12:インクルーシブビジネスのエコシステムの各機能についてのさらなる考察:各章の構成

課題

成果

さらなる機会

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2 情報の提供 信頼できる情報の取得は、あらゆるビジネスの開始と運営における基盤であるとともに、低所得層を対象に活動する組織にとって大きな課題ともなります。ケニアのスラム居住者に衛生サービスを提供している「Ecotact」の例を見てみましょう。実行可能なビジネスプランを策定するために、この社会企業は低所得層の市場規模はどの程度か、人々のニーズや嗜好はどのようなものかなどのいくつかの疑問に対する答えを見つけなければなりませんでした。市場の可能性を確信した後、さらに同社は、「衛生」というテーマそのものについての意思決定者の認識も変えなければなりませんでした。本章では、このような事例に基づき、情報が調査を通じてどのように生み出され、アドボカシーを通じてどのように共有されるかということについて考察します。

 調査は、インクルーシブビジネスの成功に必要な知識基盤を構築します。調査には、市場戦略の策定を可能にする定量的・定性的な市場データ、ならびにインクルーシブビジネスを確立するために必要なプロセスや新しい製品についての情報が含まれます。

 アドボカシーは、インクルーシブビジネス・アプローチをすべての社会的ステークホルダーに奨励し、成功事例を共有します。これにより、インクルーシブビジネスに関する重要なノウハウを広め、関係者の能力を開発し、インクルーシブビジネスの実施を支援します。

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Esokoは、小規模農家に情報を提供し、より良いビジネス判断を下すことに貢献しています

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衛生に対する認識を変える 2007年にケニアで設立された社会企業Ecotactは、衛生設備を提供する革新的で持続可能なアプローチを推進しています。ケニアの人口4100万人のうちの40%以上が、適切な衛生設備を利用できない状態にあります42。ナイロビ郊外にあるキベラなどのスラムでは、住民の大多数が最低限の衛生設備を利用することができません。汲み取り便所の数も不十分で、大雨の時期にはあふれてしまうことがあります。公共トイレもわずかながらありますが、大抵は行きづらい場所にあり、非衛生的で、プライバシーや安全性も確保されていません。ケニアで発生している病気の約30%が衛生不備に関連するもので、毎年何千人もの子どもが下痢性疾患で命を落としています43。

 衛生サービスへの膨大な需要に応えるために、Ecotactはこの5年間で、主に都市部のスラムに60の近代的な衛

生設備「Ikotoilet」を建設し、4万8000人以上に利用されています。Ikotoiletは各地域の起業家によって運営されており、トイレの使用には6米セント相当、温水シャワーの使用には12米セント相当の料金を課しています。

 Ecotactは、「Water and Sanitation for the Urban Poor(WSUP)」という組織と提携して、ケニアの都市部と都市周辺部の衛生状態についての調査を実施し、人々のニーズや期待についての極めて重要な情報を得ました。この情報をもとにIkotoiletの設計が行われ、現地の人々のニーズに合った設備が作られました。さらに、地方自治体や中央政府と同社が共同で行ったアドボカシーは、衛生についての認識を高め、政策立案者や地方住民のそれまでの衛生に対する考えを変革するうえで役立ちました。

Ecotactは、都市居住者に清潔な衛生設備を提供しています。同社は、確実なサービスを提供するため、ターゲット層の調査から始めました

事例研究:Ecotact

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課題 小規模なインクルーシブビジネスであっても、その実現には大量の情報が必要となります。これは全体的な構想段階から始まって、その後、既存のビジネスモデルやソリューションについての詳細な情報、市場データ、ビジネスに採用できる可能性のある慣行や製品についての技術的な情報などが必要になります。これらの情報はさまざまな情報源から得られるものであり、すべての情報があるかどうかは、地域によって状況が異なるためわかりません。しかし明らかに、通信環境がよくないため、アフリカにおける情報入手は困難で、低所得市場に関したデータ自体も限られています。

 通信環境の不備は、今日のビジネス環境においては特に大きな課題です。「モバイル革命」はアフリカにも到達し、携帯電話の普及率は2000年の2%未満から2013年には60%超にまで急上昇しました(図13)44。しかし、大量な情報への迅速なアクセスを可能にするインターネット接続率は、アフリカでは、2011年末時点で推定13.5%にとどまっています45。モバイルブロードバンド契約者数は増加しており、今後数年間で情報をめぐる状況が劇的に変わることは間違いありません46。

 企業も、低所得市場に関する情報の入手に困難を感じています。ほとんどのアフリカ諸国では、有効なマクロ、およびミクロ経済データの作成と蓄積が不十分で、入手可能なデータであっても、古いか、なかなか入手できない状態にあります47。ビジネスの設立を成功させるためには、企業は、ターゲット層の特徴、市場環境、経済動向など、参入を目指す市場についての具体的な最新の情報を必要とするので、この状況は問題です。

図13:アフリカの情報通信普及率(2005~2013年)

出典:ITUウェブサイト(www.itu.int/ITU-D/ict/statistics/at_glance/keytelecom.html)

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情 報 の 提 供2

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 「Esoko」は、アフリカ16か国の小規模農家を対象とした、携帯電話のメッセージサービスです。同社は最新の市場価格をリアルタイムで農家に知らせ、古い情報による農家の機会損失を回避します。確かな情報を手に入れるため、同社は、各地の市場価格を収集する大勢のエージェントを雇っています。また、農家はEsokoを介して取引を行うこともできます。そして、企業はこれらの情報を活用して農作物の生産レベルを把握し、農家から直接作物を購入することができます。出典:Esokoウェブサイト(www.esoko.com)

アフリカの小規模農家に情報を届ける「Esoko」

通信時間の代わりにデータを収集する「Jana」

Esokoは、市場価格や生産レベルなどの数々の最新情報を、小規模農家や彼らから農作物を購入する企業の手元に届けています

Janaの調査に参加した人は、プレミアとして携帯電話の通信時間を取得します

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 「Jana」はボストンに拠点を置く企業で、企業や団体が携帯電話を通じてターゲット層と直接つながることを可能にする会社です。調査に協力した現地のターゲット層の人々には、報酬として携帯電話の通信時間が与えられます。同社は、携帯通信会社232社と提携しており、通信時間を大口で購入して、それをエンドユーザーにプレミアとして与えることで、調査への回答、データの提供、時には商品の購入を促します。このモデルにより、Janaは、85か国(うち8か国がアフリカ諸国)に急速に事業を拡大しました。出典:Jana ウェブページ(www.jana.com)

成果 インクルーシブビジネス・アプローチに重点を置いた調査やアドボカシーは、主として大学、開発関係機関、財団などの国際機関によって行われています。しかし、詳細な技術的な情報は現地の団体によって提供される場合も多々あります。農業研究機関は農業慣行に関するノウハウを提供し、情報通信技術関連の機関は新しい携帯電話ベースのアプリケーションや関連技術を開発し、現地の大学はバリューチェーンの特徴や製品の機能性の評価をすることが可能です。影響力のある現地カウンターパートとしてアフリカでもビジネススクールが出現しつつあり、インパクト・インベストメントや社会起業家精神などの国際的な概念を現地で広めています。

アフリカの低所得市場の規模を分析する調査は少ない 「世界資源研究所」(WRI)と「国際金融公社」(IFC)は、2007年の報告書「次なる40億人」(The Next 4 Billion)の中で、国、地域、分野別に新興市場の規模を初めて明らかにしました48。この報告書は、110か国(うち22か国がアフリカ諸国)を対象とした国民所得と消費に関する調査に基づいています。特定の分野については、より詳細な調査が実施されま し た。 主 に「 英 国 国 際 開 発 省 」(Department for International Development: DFID)から資金提供を受けた

「FinMark Trust」のイニシアティブ「FinScope」が、需要と供給の両面からアフリカ14か国の金融サービスを調査しました。ケープタウン大学は、南アフリカの農村部と都市周辺部でファイナンシャル・ダイアリー調査を実施し、低所得層における収入と支出の追跡調査を行いました49。しかし、これまでのところ、こうした取り組みはいまだ散発的で、アフリカの低所得市場の全体像を明らかにするまでには至っていません。

低所得市場に特化した市場調査会社は少ない アフリカ市場に重点を置いている市場調査会社の大半は、南アフリカを拠点としています。例えば、「Field Africa」と

「Eighty20」は南アフリカを拠点とする調査機関であり、低所得層に関するデータを収集し、定量的・定性的な調査を行っています。ケニア、タンザニア、ナイジェリア、ウガンダ、エチオピアで活動する「Consumer Insight」も、アフリカの消費者に関する市場調査を行っていますが、低所得市場に特化してはいません。「Research Africa」はウガンダとオランダを拠点とする市場調査機関であり、社会的影響を与えるビジネスに重点を置いています。しかし、ほとんどのサハラ以南アフリカ諸国では、ビジネスデータを収集しようとする企業は市民社会組織の力を借りざるを得ません。

携帯のアプリケーションはデータ収集の巨大なチャンス 携帯電話を活用することによって、企業はターゲット層に対して情報提供を直接求めたり、生産者や消費者に情報共有を働きかけたりすることができます。「Esoko」や「Jana」など、多くのサービスがこうした機会を提供しています。

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インクルーシブビジネスのための調査とアドボカシーは、主に国際機関によって実施されている インクルーシブビジネスは新しいアプローチであり、ビジネス機会の特定、成功するビジネスモデルの構築、関係者との協力、成果の把握、成長管理に関して、まだ多くの疑問が残っています。しかし、いくつかの国際機関がこうした状況に進展をもたらしています。これらの国際機関には、UNDPの「包括的な市場の育成」(GIM)プログラムや、

「スウェーデン国際開発協力庁」(Sida)と「英国国際開発省」(DFID)が資金を提供しているプロジェクトである

「Practitioner Hub」、官民の開発関係機関が支援するコンサルティング、およびミシガン大学ウィリアム・デヴィッドソン研究所の「Base of the Pyramid」(BOP)イニシアティブ、ハーバード・ケネディスクールの「企業の社会的責任」(Corporate Social Responsibility: CSR)イニシアティブ、コーネル大学ジョンソン経営大学院の「持続可能なグローバル企業センター」(Centre for Sustainable Global Enterprise)などの大学を拠点としたプログラムが含まれます。これらの機関による調査の大部分は、サハラ以南アフリカの状況に特化したものではありませんが、アフリカの多くの事例研究が文書化されています。これらの機関は、世界で積極的にインクルーシブビジネス・アプローチを提唱している機関でもあります。

現地主体は、製品やバリューチェーンのパフォーマンス評価を行っている 大学、現地のサービス提供者、市民社会組織は多くの場合、現地でパフォーマンス評価を行うための専門知識を備えています。スーダンでは、国際的な市民社会組織「Practical Action」とエルファーシル大学が、ある冷蔵システムの食品保存性能を評価するための実験を行いました。農業関連の市民社会組織や公共の調査機関は、バリューチェーン評価に実績があります。例えば、「エチオピア農業変革機関」

(Ethiopian Agriculture Transformation Agency: EATA)は、同国のヒヨコ豆のバリューチェーンを評価して5年間のロードマップを策定しました。このロードマッ

ダニエル・アンヌローズ氏Daniel AnneroseCEO, Manobi

 アフリカ最大手のデータプロバイダーのひとつである「Manobi」は、10年前にセネガルで設立され、その後、マリ、コートジボワール、ブルキナファソ、ニジェール、ベナンに事業を拡大しました。同社のサービスは主に小規模農家を対象としていますが、水や衛生設備、自治体のサービス提供の質、保健と環境、子どもの保護など、その他の部門にも拡大しつつあります。

アフリカにおけるデータや市場情報の入手に関する現状をどのように評価していますか? この数年間で、状況は間違いなく大きく改善しています。さまざまな技術、ならびにアフリカ大陸の隅々にまで携帯電話の普及が進んだことによって、さまざまな経済分野に関するデータや市場情報をリアルタイムで収集・処理することが非常に容易になりつつあります。

データや情報はインクルーシブビジネスの発展をどのようにして促すのでしょうか? 当社の場合、個々の農家、農民団体、現場エージェントなど、いくつかの情報源から情報を収集しています。これらの情報源からの情報が巨大なデータベースを作成し、これが、さまざまな用途で使用されます。農家は当社が開発したアプリケーションを使って、特定の条件下である作物を育てるにはどれだけの肥料が

必要なのかなどを調べ、その後、植えた作物の量、収穫量、価格などを記録します。当社のアプリケーションとデータは、戦略的な情報へのアクセス、土地管理、農産物のマーケティング、仕入れ先との関係構築、生産管理を農家に提供します。情報が可能にすることは農家の生産支援だけではありません。

銀行や融資提供者も、データをもとに作物、収穫量、気候条件などに関するリアルタイムの情報と具体的な数字を手に入れることができます。これによって、銀行や融資提供者は、そうした情報がない場合よりもはるかに良い条件で農家に融資を提供することができるのです。

リアルタイムの情報によってもたらされた最大の恩恵は何だとお考えですか? 情報の収集・処理にかかるコストが大幅に削減されました。基礎調査や定量的分析を手作業で行うと非常に費用がかかりますし、処理が終わるころには情報が古くなってしまいます。データや情報の本質は、それが静的ではなく、動的なものであるということです。Manobiのようなシステムにより、私たちは迅速、かつ正確な方法でチャンスを掴み取ることができます。例えば当社は、母国であるセネガルで、または世界中のあらゆる場所で、数百万世帯の市場データを容易に収集することができます。このような情報は、市場の規模、人々のニーズ、支出パターンなどを理解するために不可欠なものです。

インタビュー

「当社の情報サービスによって銀行は、そうした情報がない場合よりもはるかに良い条件で農家に融資を提供することができるのです」

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インクルーシブビジネスの概念を広める「Business Action for Africa」

 「Business Action for Africa」は、企業、ビジネス団体、開発関係者のネットワークです。会員は、アドボカシー、行動、知識の共有でアフリカの開発を支援するべく、このネットワークに参加しています。例えば、この団体の最近の報告書「新しいアフリカ:ビジネスとアフリカにとっての新たな機会」

(The New Africa: Emerging Opportunities for Business and Africa)では、ビジネス界やその他の部門の主要な人々が、ビジネス基盤の整備がどのようにアフリカの課題を解決するかについての洞察を共有しています。出典:Business Action for Africaウェブサイト(www.businessactionforafrica.org)

情 報 の 提 供2

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iLabAfricaに集まった若者たちが、教育、保健、テクノロジー分野のプロジェクトを進めています

プにより、「ペプシコ」「国連世界食糧計画」(WFP)「米国国際開発庁」(USAID)などのプロジェクトパートナーは、的を絞ったプロジェクト計画を立てることができました。

製品・技術革新は現地で実現することが可能 ケニアは製品・技術開発の最先端を行く存在であり、同国ではすでに低所得市場向けのモバイル・ソリューションを生み出すIT開発が活発に進められています。IT開発が活発な地域は、現在、他のいくつかのアフリカ主要都市にも広 が り つ つ あ り、 そ の 例 が、 ダ ル エ ス サ ラ ー ム の

「TANZICT」センター(タンザニア)、キガリの「kLab」(ルワンダ)、ダカールの「Jokkolabs」(セネガル)です。

農業調査は主に公共機関によって実施されている 各国の農業研究センターは、現地の条件で作物を栽培し、家畜を管理するための成功事例についての情報を提供しています。そして、いくつかの国際的な農業研究センターがアフリカに拠点を置いています。国際的に評価の高い「国際 農 業 研 究 協 議 グ ル ー プ 」(Consultative Group on International Agricultural Research: CGIAR)と関連する3つの研究センター(ナイジェリアの「国際熱帯農業研究所」、ベナンの「アフリカ・ライス・センター」、ナイロビの「国際アグロフォレストリー研究センター」)が、アフリカに拠点を置いています。エチオピア農業省の研究部門である「エチオピア農業研究機構」は、ペプシコとUSAIDのヒヨコ豆調達プロジェクトのための調査を支援して、プロジェクトに適当な2つの地域を特定しました。また、エチオピア農業研究機構は、農家と緊密に連携し、改良された種の導入による生産性の向上に取り組んでいます。

社会革新を促進する現地のビジネススクール ケニアのジョモ・ケニヤッタ農工大学、タンザニアのダルエスサラーム大学、南アフリカのウィトワーテルスランド大学などのビジネススクールでは、起業家精神とイノベーションの分野の修士レベルコースを提供しています。その他の大学でも、主として企業幹部向けの認証コースとして、インクルーシブビジネスに関する専門性の高い研修を提供しています。南アフリカのゴードン経営学研究所では「社会起業家認証プログラム」を、ケープタウン大学経営大学院では「持続可能なビジネスプログラム」を、ウガンダのカンパラにあるマケレレ大学ビジネススクールではマイクロファイナンスの修士課程を提供しています。さらに、南アフリカのノースウェスト大学やケニアのストラスモア大学などのビジネススクールは、中小企業のビジネス開発を支援しています。ロックフェラー財団は、いくつかのアフリカ諸国におけるインパクト・インベストメントについての調査に資金を提供しています。この調査の目的は、政策上の課題について理解し、インパクト・インベストメントの成長を促す国家政策を提案することです。

社会的利益をもたらす新たなビジネスパラダイムについて、メディアでの議論が進んでいる CNNの「マーケットプレイス・アフリカ」やBBCの「アフリカ・ビジネスレポート」などのアフリカに焦点を当てた国際的な報道番組、ならびに「Pan-African Business Magazine」「Africa Investor」「African Business」

「African Business Review」、またはフランス語圏アフリカ の「Jeune Afrique」「Afrique Magazine」「Afrique Expansion」といった地元のビジネス誌は、サハラ以南アフリカの低所得層が関与するビジネスについて、定期的に報告しています。

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 「iLabAfrica」は、ナイロビのストラスモア大学情報技術学部の研究センターです。ここで実施されているプロジェクトは、MDGsの達成とケニアの経済政策である「ビジョン2030」を実現する情報通信技術(ICT)イノベーションの先駆けとなることを目的としています。例えばiLabAfricaは現在、ICT企業のヒューレット・パッカードの協力のもと、HIV/エイズの母子感染予防を目的とした南アフリカのプログラムに向けて、患者の追跡調査のための監視・評価システムの開発を行っています。出典:iLabAfricaウェブサイト(www.ilabafrica.ac.ke)

開発のためのICTを生み出す「iLabAfrica」

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能力開発を進めることにより、現地起業家によるインクルーシブビジネス設立が可能に 現在、サハラ以南アフリカの現地起業家は、社会的目標と商業的な目標を結び付ける方法についての指導を得る術がほとんどありません。開発関係機関は、現地の大学、商工会議所、またはビジネス・インキュベーションセンターと協力して、この方法に関する情報を提供することが可能です。国際的なインパクト・インベスターや現地のビジネススクールは、現地起業家のための助言・指導プログラムを提供することができます。商工会議所やその他のビジネス団体も、セミナーや啓発イベントを実施することが可能です。

研究開発コストの共有を促進する枠組み 初期段階の市場調査やパイロット・プロジェクトは多くの場合、あまりにコストがかさみ、リスクをともなうものであるため、企業や組織が単独で実施することは困難です。企業が連携し、それぞれの目的を説明し、財源をプールし、共同で調査や変革を進めるようにするための枠組みが求められます。ベンチャーキャピタルの世界で馴染みのある「アクセラレーター」「インキュベーター」などの制度を、インクルーシブビジネス開発にも適用することも可能です。

さらなる機会 過去10年間に、インクルーシブビジネスの概念そのものについては多くの研究がなされてきましたが、サハラ以南アフリカの状況に特化した考察はこれまでのところ、あまり行われていません。詳細な市場情報を必要とする企業は通常の場合、独力で、あるいは市場調査やサハラ以南アフリカ地域を専門としていないパートナーと協力して、調査を行わざるを得ません。アフリカでは新たなビジネス・アプローチとして、インクルーシブビジネスに対する関心が高まっていますが、現地のビジネスリーダーや起業家たちの多くにとって、この概念はまだ馴染みがありません。こうしたギャップに、いくつかの機会が存在します。

国際開発機関や企業は、現地の調査・アドボカシー能力の向上を支援することが可能 現地の調査・アドボカシー能力向上の第一歩はすでに踏み出されています。例えば「ドイツ投資開発公社」(DEG)は、サハラ以南アフリカの大学における市場調査能力を向上するため、ドイツの大手市場調査機関「GfK」と提携を結びました。「ロックフェラー財団」は、インパクト・インベストメントに関する研究を行うための資金を、アフリカのさまざまな大学に提供しています。「グーグル」「メルトウォーターグループ」、およびその他のソフトウェア開発企業は、現地のIT能力育成を目的に、ケニアをはじめとして、大学のIT学部と協力したり、自ら学校や大学を設立したりしています。世界で最も重要な経営研究者団体である「経営学会」(Academy of Management)は、2013年1月にヨハネスブルクにおいて、アフリカで初めての会合を開催しました。しかし、国際的な研究機関や大学は、現地のパートナーとより一層協力し、さらに強い関係を築く余地があるのは明らかです。

さらなる事例を作り出すための成功事例の紹介 多くの企業や起業家には、インクルーシブビジネスがどのような形態をとり得るのかがわかりにくくなっています。表彰や公的評価を行うことにより、成功したビジネスモデルを紹介し、他の者に対して、先行者に続くよう動機づけを行うことができます。いくつかの国際的な表彰がすでに存在しており、アフリカの事例も評価されています。こうした賞には、「世界ビジネス・デベロップメント賞」(World Business and Development Awards)、「G20チャレンジ:革新的なインクルーシブビジネス」(G-20 Challenge on Inclusive Business Innovation)、「SEEDアワード:持続可能 な 開 発 に お け る 起 業 家 精 神 」(SEED Awards for Entrepreneurship in Sustainable Development)などがあります。「ビジネス開発ネットワーク」(BID Network)や「New Ventures」などのビジネスプラン・コンペも、資金や技術的な支援を提供しています。政府、政府間組織、ビジネス団体は、サハラ以南アフリカ地域、もしくは個々の国に焦点を当てた、このような表彰やビジネスプラン・コンペを主催するのに適しています。

情 報 の 提 供2

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「ロクシタン」はブルキナファソで、数千の起業家からシアバターを調達しています。情報へのアクセスが改善されることにより、起業家はインクルーシブビジネスを構築し、新たな市場にアクセスすることが可能になります

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3インセンティブの

創出 商業的、また政策的なインセンティブは、低所得市場に欠けがちなビジネスの展望を提供することによって、投資に踏み切る動機をインクルーシブビジネスに与えます。HIV/エイズ感染者の治療に使われる多くの医薬品を南アフリカで生産している「Aspen Pharmacare Holdings」の事例は、このようなインセンティブの重要性を示しています。同社は、南アフリカ政府による税控除と販売先の保証という明確なインセンティブに促され、この分野への投資を行いました。インセンティブは、企業主導の施策と公共政策により生み出されます。

 公共政策には、法律や規則、資金提供やビジネス実行支援などが含まれます。公共政策は、国家政府や開発関係機関、または多国間機関によって導入されます。公共政策は、企業がビジネスを実施できるようにさまざまな障壁を取り除いてビジネスを促進する環境を作りだすこと、低所得者が市場に参加できるようにすること、また、低所得者を事業活動に組み込む企業に直接的な見返りを提供するという3つの方法によって、インクルーシブビジネスを促すインセンティブを生み出します。

 企業主導の施策は、企業内の指針を定める施策と、社外のより多くの主体の指針を定め、インクルーシブビジネスの推進を促す施策という2つのカテゴリーに分類できます。社外の主体には、他企業のほかに市民社会組織、仲介機関、官民の開発関係機関、政府が含まれます。基準・認証スキームなどが、特にこの企業主導の施策に該当します。

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「Aspen Pharmacare」は、税控除と市場の確保に促されて、抗レトロウイルス薬の生産を始めました。インセンティブは、低所得市場にありがちな課題を克服しようとする起業家精神を刺激します

成長を可能にする税優遇措置 「Aspen Pharmacare Holdings」(以下「Aspen Pharmacare」)は、南アフリカのダーバンに本社を置く大手製薬会社です。同社は、HIV/エイズ、結核、マラリアなど、命に関わる病気の治療に使われる医薬品を手ごろな価格で提供しています。1997年に設立されたAspen Pharmacareは、アフリカ最大の錠剤とカプセルの生産メーカーへと成長しました。同社は現在、製品ラインを多様化し、ラテンアメリカ、アジア太平洋地域、オーストラリアを含む、世界中の100か国近くで製品を販売しています。その過程において、南アフリカ、タンザニア、ケニアの製造工場で数千の雇用を生み出しました。

 Aspen Pharmacareの成功は、政府によって提供されたインセンティブがきっかけでした。南アフリカの高いHIV/エイズ感染率を受けて、政府はジェネリックの

「抗レトロウイルス薬」(anti-retrovirals: ARV)を現地

生産する必要性を認識していました。これは一部には、市民社会組織が10年間にわたり継続的な働きかけを行ってきた成果でもあります。政府は税優遇措置を実施し、製造工場に投資するようAspen Pharmacareに促しました。さらに政府は、国のHIV/エイズ・プログラムのために大量のARVを同社から購入する準備を整えました。このような、投資と市場確保の約束により、同社はいくつかの多国籍な特許保持者から任意ライセンスを取得し、さまざまな種類のARVを生産できるようになりました。

 現在、南アフリカには、無料かつ全国民を対象とした公共のHIV/エイズ治療プログラムがあります。これは主に、Aspen Pharmacareや他の複数の企業が現地で生産する安価なジェネリックARVの安定的供給のおかげです。

Aspen Pharmacareは、南アフリカのポートエリザベスとイーストロンドンにある拠点で、高品質かつ手ごろな価格の医薬品を生産しながら、地元住民に雇用と能力訓練を提供しています

事例研究:Aspen Pharmacare

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Page 42: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

 低所得者は、法的手続きを行う金銭的余裕のない場合が多く、法的な証明書類を入手できないため、または単に正式な制度を利用する恩恵を理解していないため、非正規市場を利用することが多くなります53。アフリカでは、労働者の10人中9人が非正規雇用に就いています54。特に女性や若者は非正規市場以外で働く機会が多くの地域で、あまりありません55。2000年には、国民総所得に占める割合で見た非正規経済の平均規模が、低いところではアフリカ大陸最大の経済国である南アフリカの30%弱、高いところではナイジェリア、タンザニア、ジンバブエの約60%というものでした56。しかしこのような非正規経済は、有益なビジネス連携を構築するうえで障害となります。正規企業が非正規組織から製品やサービスを調達するのは困難です。また、銀行やその他の金融機関は、証明文書を提出できない、または財務記録を作成できないクライアントへのサービス提供に躊躇します。

 基準設定など、企業の方針決定にも、制度的インフラが必要です。しかし認証機関は経済規模の大きな国にしか存在しないため、認証手続きはかなり高コストになっています。

課題 サハラ以南アフリカでは、ビジネスを行う際の障害の大きさゆえに、そこでビジネスを開始するインセンティブが世界の他の地域に比べて概して低くなりがちです。この地域の多くの国では、規則や官僚主義がビジネスの設立・運営コストを高くしています。サハラ以南アフリカ48か国のうち、世界銀行の「ビジネスのしやすさ」ランキングで上位50か国に入ったのはモーリシャスと南アフリカだけで、上位100か国に入ったのはルワンダ、ナミビア、セーシェル、ザンビアの4か国のみでした。これ以外の国々は、ほとんどが最下位グループに入っていました50。つまり、これらの国々では、ビジネスの立ち上げ、建設許可の取得、不動産の登録、越境取引の実施、税金の支払いに要する手続きが、高コストで非常に官僚的であるということです。調査データによると、サハラ以南アフリカの経営者は、労働時間の5~10%を規制当局への対応に充てています51。さらに制度の弱さは、規則が適切に施行されないということ、また、政権交代がビジネスに大きな影響を及ぼす可能性があるということを意味しており、これらはビジネスの不安定さを著しく高める要因となります52。その結果、アフリカのビジネス制度はあらゆる地域の中で最も困難なものとなっています(図14)。

 アフリカ各国における起業に要する時間を見てもわかる通り、こうした状況は決して均一的なものではありません

(図15)。起業に100日以上かかる国もあれば、ビジネス設立を容易にする改革を実施した国もあります。例えば、ルワンダでは起業にかかる日数はわずか3日です。

図14:地域別に見た法制度の強度およびビジネス制度の複雑さとコスト

法制度は強いが、ビジネスの制度は複雑で高コスト

法制度は弱く、ビジネスの制度は複雑で高コスト

法制度は強く、ビジネスの制度は簡易で低コスト

法制度は弱いが、ビジネスの制度は簡易で低コスト

弱い

ビジネス制度の複雑さとコスト

法制

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強度

強い

複雑で高コスト 簡易で低コスト

サハラ以南アフリカ

南アジア

中東・北アフリカラテンアメリカ・カリブ地域

東アジア・太平洋地域

東欧・中央アジア OECD高所得国

3兆6240億ドル(2011年)/73位

2兆2710億ドル(2011年)/121位

1兆2630億ドル(2011年)/140位5兆6460億ドル(2011年)/97位 1兆2020億ドル(2010年)/98位

9兆3130億ドル(2011年)/86位

43兆8900億ドル(2011年)/29位

出典:「Doing Business 2013」世界銀行(2012年)

地域、GDP(米ドル換算)、「ビジネスのしやすさ」平均順位

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図15:サハラ以南アフリカの主な国における起業に要する日数

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多くの国の政府がビジネス環境を改善している 意思決定において加盟国16か国の合意を必要とする「アフリカ商法調整機関」は、2010~2011年、地域の商法を統一するための作業を開始しました57。世界銀行によると、2005年以降、ビジネス制度の改善が著しかった50か国のうち、最も大きな割合(3分の1)を占めていたのがサハラ以南アフリカでした58。しかし、一般的なビジネス規制や制度を強化するだけでなく、インクルーシブビジネスの促進に特化した規則も求められます。

政府はインクルーシブビジネスに市場を開放しつつある 多くの政府は、開発において民間企業が果たす貢献を認識しており、エネルギー、医療、教育など、これまで国家が独占してきた市場を開放しつつあります。マリ政府は、世界銀行の支援を受けて、民間業者によるエネルギーサービスの提供を可能にする規則を作りました。2006年にこの規則が導入された直後に、50の小さな業者が小規模なエネルギービジネスを運営するためのライセンスを申請、取得しました。このように、特定の分野に特化した政策が重要な役割を果たしますこともあります。例えば、ケニアでは制度を改善し、固定価格買い取り制度などのインセンティブを導入することによって、再生可能エネルギーと近代的エネルギーサービス拡大のための投資を呼び込みました。

成果 アフリカでは、各国政府がビジネス制度を強化する取り組みを進めるとともに、地域経済共同体(REC)が越境取引を促進していることにより、ビジネス環境は全体的には改善しつつあります。しかし、企業に対して低所得者を事業活動に組み込むよう促す明確なインセンティブを導入した政府はまだ少数にとどまっています。ビジネス活動にともなう社会的な恩恵に報いるための政府調達と「スマート補助金」は、ある程度導入されています。国際的な開発関係機関は、インクルーシブビジネス開発のための助成金を企業に提供することで、より積極的にインセンティブを提供しています。国際的な炭素排出権市場の発達も、インクルーシブビジネスに便宜を与えるメカニズムにつながっています。

 企業側も、社会的な恩恵を製品価格に転嫁するための基準を他の主体と協力して作成しています。円卓会議や各種のプラットフォームが、こうした基準づくりに貢献しています。

出典:「Doing Business Database」世界銀行(2012年)

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 「Broad-Based Black Economic Empowerment Act of 2003」(B-BBEE法)に基づく南アフリカの黒人経済力強化計画は、南アフリカの経済改革を加速させるとともに、根強い経済的不平等を是正することを目指す一連の公共政策です。この政策は、所有権、経営管理、雇用における正当性、優先調達、事業開発、社会経済開発などの主要な分野で、歴史的に不利な立場に置かれてきた人々の経済力の強化を目的としています。すべての国有企業、ならびに政府からの受注に入札する企業は、B-BBEE法に従わなければなりません。これを遵守する負担が起業家精神を抑圧することのないよう、年間売上高が500万ランド(2013年3月の為替レートで55万米ドル)未満の小規模ビジネスは、自動的に「BEE準拠企業」の資格を与えられます。BEEの実施は任意的なものであり、罰金や法的制裁などの抑圧的手段で執行されるものではありません。相互のインセンティブ、すなわち各企業がBEE準拠企業である取引業者やサービス提供者を優遇することによって、方針遵守が実現します。公認認証機関のネットワークがBEEの目標に向けた進展を評価し、BEEスコア証明書を毎年発行しています。出典:

「National Black Economic Empowerment Act」(2003年法令53、DTI実施基準)www.info.gov.za/view/DownloadFileAction?id=68031

ブラック・エコノミック・エンパワーメント:南アフリカの不平等に対する取り組み

地域統合により、一般的なビジネスの環境とインクルーシブビジネス特有の環境がともに改善されつつある アフリカでは、「東南部アフリカ市場共同体」(Common Market for Eastern and Southern Africa: COMESA)、「東アフリカ共同体」(East African Community: EAC)、「西アフリカ諸国経済共同体」(Economic Community of West African States: ECOWAS)、「南部アフリカ開発共同体」

(Southern African Development Community: SADC)、などの地域経済共同体が、「アフリカ経済共同体」(African Economic Community: AEC)、のもとで域内貿易の促進と各種取り組みを連携して行い、地域統合が進んでいます。関税の削減、国境での入国・通関時間の短縮、および域内物流ネットワークの改善により、商業活動の活性化が進みました。また、これらの経済共同体は連携し、インクルーシブビジネスと関連性の高いテーマにも取り組んでいます。世界銀行は、域内貿易障壁を段階的に撤廃することによって、新たに200億ドルの農産物取引が発生するとともに、全体的な生産量が拡大して、他の大陸からの輸入への依存度が低下し、食糧の安全保障が改善されると予測しています59。

国際的な開発関係機関は、インクルーシブビジネスを開始する企業に大きなインセンティブを与える この報告書の分析に含まれる事例のほとんどは、資金拠出国による資金提供や何らかの形の支援を受けています。開発関係機関は通常、「チャレンジ基金」や同様の資金拠出メカニズムを通じて、企業に資金を提供しています(詳細については第4章参照)。そして、開発関係機関は、技術支援の提供や官民対話の促進によって、また、他国でのインクルーシブビジネス支援に用いられた政策介入モデルについての情報を共有することによって、さらにリスクを軽減することができます。ビジネスへの資金提供に携わる

「 開 発 金 融 機 関 」(Development finance institutions: DFI)も、優先債権者の地位を利用して、政治的リスクの軽減に貢献することができます。「英国国際開発省」(DFI)は、評価基準の一環として、厳密な環境・社会的基準の遵守を

地域統合は、物流ネットワークの改善と関税の削減を意味します。このスーダン人女性は、自分の作った綿をより多くの市場で販売することができるという恩恵を受けています

Tedcorは同社のトラック運転手たちに起業機会を与えています。BEEの遵守によって、この廃棄物処理会社は政府からの受注を得ました

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ますます強く求めるようになっており、結果としてインクルーシブビジネス・アプローチを間接的に優遇しています。

政府調達は、インクルーシブビジネスに直接的な恩恵をもたらす 開発途上国では、政府調達が国家予算の大部分を占めており、GDPの約25~30%に相当します60。低所得者を生産者や被雇用者として関与させるビジネスを優遇するために、この政府調達を活用することができます。BEEプログラムを実施している南アフリカには、アフリカにおいて最も広範な調達スキームがあります。このスキームでは、すべての供給業者は、歴史的に不利な立場に置かれてきた人々の機会創出にどのように貢献しているかを明示しなければなりません。

 政府や開発関係機関は、インクルーシブビジネスが政府調達に参加できるよう、その能力強化にも取り組んでいます。タンザニアのダルエスサラームでは、自治体が廃棄物収集と市の清掃サービスに低所得コミュニティを関与させようとしています。コミュニティを基盤とする組織

(Community-Based Organization: CBO)は通常、廃棄物をゴミ廃棄場に運ぶために必要な車両を購入する余裕がないため、市がこの作業を引き受けています。さらに市は、CBOの能力強化と資金管理も支援しています。

政府と開発関係機関は主要な購入者となることで、インクルーシブビジネスにとってのリスクを削減して安定した市場を提供する 政府や開発関係機関がインクルーシブビジネスからの購入を進めることは、他の潜在的顧客にそのインクルーシブビジネスの品質と信頼性を示す役割を果たします。2004年にコンゴ民主共和国の紛争が終結した後、政府は携帯電話

 「包括的アフリカ農業開発プログラム」(CAADP)は、地域経済共同体と国の円卓会議を通じて、アフリカ全体の農業生産性向上に取り組んでいます。CAADPは、「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(New Partnership for Africa’s Development: NEPAD)の農業プログラムであり、NEPADは「アフリカ連合」

(African Union: AU)のプログラムです。2003年にAU総会で設立されたCAADPは、食糧の安全保障と栄養の改善、および主に農業を基盤とするアフリカ経済における所得の拡大に重点を置いています。CAADPは、農業生産性を少なくとも年間6%向上させること、また、農業分野への公共投資を年間国家予算の10%にまで増やすことにより、この目標の達成を目指しています。CAADPは、地域市場の統合を推進し、これらの市場における現地産品の競争力向上に努めています。また、CAADPは開発関係機関と連携も行っています。例えば、米国の「アフリカ成長機会法」は、CAADPとの連携の結果、アフリカから米国への輸出品を管理する規則を合理化しました。出典:CAADPウェブサイト(www.nepad-caadp.net)

小規模農家統合政策に貢献するCAADP

 「国連世界食糧計画」(WFP)は、「前進のための食糧購入」プログラムを通じて、小規模農家から直接、農作物を調達しています。このプログラムでは、パイロット国21か国の小規模農家に対し、信頼できる購入者に農作物を販売し、適正な代価を受け取る機会を与えています。このプログラムは、2008年9月に発足して以来、110万人以上の農民を擁する約1000の農民団体と連携して進められてきました。このうち200以上の農民団体が20万トンを超え る 食 糧 をWFPに 販 売 す る 契 約 を 結 び、11万6000以上の農家、倉庫業者、中小規模の貿易会社が、組織管理、農業技術、品質管理、収穫後の農作物の取り扱いなどについての研修を受けました62。これらの投資は、長期的な食糧の安全保障に直接貢献します。出典:WFPウェブサイト(www.wfp.org/purchase-progress)

WFPの「前進のための食糧購入」

会社「Celtel」(現在の「airtel」)が設立したモバイル決済サービス「Celpay」を利用し、国家再編プログラムの一環として15万人の戦闘員に給料を支払いました。南アフリカでは、

「Amanz’ abantu Services」が、東ケープ州の農村部住民に給水サービスを提供する政府プロジェクトを落札しました。利用者は1日当たり25リットルの水を無料でもらうことができ、追加分の代金はスマートカードで支払います。

自然保護・生態系サービスを優遇する国際政策 気候、海、熱帯雨林が果たす地球の生態系のバランス機能は、地球規模でしか維持できません。国連の「クリーン開発メカニズム」(Clean Development Mechanism: CDM)は、地球の生態系維持への貢献を優遇する初めてのメカニズムです。このメカニズムにより、先進工業国の企業は、開発途上国において排出削減活動を実施することで、自社の排出削減目標の一部を達成することができます。そして、炭素排出を削減または回収した企業は、炭素取引市場から追加収入を得ることができます。「Toyola」が配布した調理用コンロ、南アフリカで「Kuyasa」が実施した設備改良プロジェクト、および「ToughStuff」のソーラーランプは、このメカニズムから恩恵を受けた事例のごく一部です。沿岸地域や熱帯雨林などの生態系を支えたり保護するその他の活動についても、同様のシステムを確立することが可能です61。

WFPの「前進のための食糧購入」プログラムは、このエチオピア人女性のような農民が自給自足農業から商業的農業へと移行するための手助けをしています

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各種基準や認証から企業は成功事例から学ぶことができる 各種の基準や認証システムにより、企業は最低限の技術的・社会的・環境的な基準を設定、実施することができます。有名な「フェアトレード認証」の基準は、包括的な生産プロセスに見返りを与えるためによく用いられます。フェアトレード活動の目的は、開発途上国の生産者が自分たちの製品からより多くの利益を得られるよう支援しつつ、持続可能性を推進することです。民間の炭素取引市場は、企業による炭素クレジットの自主的な売買を可能にし、インクルーシブビジネスを促すさらなるインセンティブを生み出しています67。

 各種基準は、低所得消費者に品質を知らせるためにも使用されます。例えば、ソーラーランプの中には、低所得者が高い費用で購入したのに、すぐに故障してユーザーを失望させるものもあります。「アフリカに光を」(Lighting Africa)プログラムの新しい品質保証マークによって、ユーザーはどの製品が信頼できるのか知ることができるようになりました。

障壁を減らし、インクルーシブビジネスのインセンティブを強化するテーマ別枠組み インクルーシブビジネスのインセンティブを強化する枠組みは、企業やその他の主体を団結させ、インフラや能力開発など、共通の利益を生む財に共同で投資するよう促します。「持続可能な樹木作物プログラム」、「包括的アフリカ綿栽培イニシアティブ」(Competitive African Cotton Initiative: COMPACI)、「アフリカカシューナッツ協会」など、いくつかの枠組みが特定のバリューチェーン内において品質を高め、小規模農家に利益をもたらすために活動しています。より地理的なアプローチをとっている例として、少なくとも2つの主要なサハラ以南アフリカの地域開発グループが、農業バリューチェーンに官民の投資を呼び込んでいます。「タンザニア南部農業成長回廊」と「ベイラ農業成長回廊」は、低所得コミュニティの小規模生産者を主流経済に組み込むことを具体的な目標としており、それぞれタンザニアとモザンビークの政府を国際的な投資家や開発関係機関と結び付けるべく活動しています68。

市場参加者の活性化により、さらなるインセンティブを生み出す 低所得層の購買力を高めることにより、低所得者は消費者として製品やサービスを利用できるようになります。南アフリカの社会助成金制度は、年間約130億ドルの現金を1700万人の受益者に直接支給しています63。エチオピアでは、800万の人々が「生産的セーフティネット・プログラム」の恩恵を受けています。このプログラムは、助成金を支給するとともに、公共事業プログラムによって雇用機会を提供しています64。現金支給は、就学や医療受診など特定の分野を対象として行われる場合もあります。マラウイでは、女子に対し、学校に通うための助成金が提供されています65。このような現金支給プログラムは、医療や教育など、特定のサービスの需要を創出する手段になり得ます。

より直接的な需要拡大に貢献する「スマート補助金」 「スマート補助金」は、特定の人々に補助金によって財やサービスを提供すると同時に、特定の市場を発達させるメカニズムです66。マリでは、「家庭エネルギー開発および地方電化局」(Agency for the Development of Household Energy and Rural Electrification : Amader)が、農村地域エネルギーサービス会社により提供されるサービスを拡大するため、最大70%の補助金を提供しています。企業の利益が20%を超えると、補助金は削減されます。こうして政府はエネルギーサービスの市場の構築を支援しています。「スマート(賢明な)」と呼ばれる所以は、ひとたび対象の市場が成熟すると自動的に補助金が削減されるという点にあります。

南アフリカの黒人居住区で太陽熱温水器を提供している「Kuyasa」などの「ゴールド・スタンダード」プロジェクトは、炭素排出量を削減し、さらなる社会的恩恵を生み出しています

 「ゴールド・スタンダード」は、自発的炭素取引市場と整備された炭素取引市場の両方における質の高い排出削減プロジェクトに適用される独立基準です。この基準の目的は、炭素クレジットを適切で検証可能にするだけでなく、持続可能な開発に測定可能な貢献を果たすようなものにすることです。ゴールド・スタンダードは、2003年に「世界自然保護基金」

「SouthSouthNorth」「Helio International」によって設定されました。追加基準は、再度広範な協議プロセスを経て、2006年に設定されました。ゴールド・スタンダードのクレジットで排出量を取引する企業は、認知度の高い認証マークを表示することができます。ゴールド・スタンダードは、二酸化炭素排出量の削減と排出量取引の監視、報告、検証を行い、第三者の監査報告を内部調査します。ゴールド・スタンダードのプロジェクトはプロセスの信頼性が非常に高いため、そのクレジットは市場で非常に高く評価されます。GIMデータベースにある3つのプロジェクト(「Toyola」「Kuyasa」「ToughStuff」)は、ゴールド・スタンダード認証を受けています。出典:ゴールド・スタンダード ウェブサイト(www.cdmgoldstandard.org)

炭素排出削減を優遇する「ゴールド・スタンダード」

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大企業のライセンス供与は、小企業のインクルーシブビジネス設立を可能にする 「Aspen Pharmacare」は、「グラクソ・スミスクライン」

「ベーリンガーインゲルハイム」「ブリストル・マイヤーズスクイブ」をはじめとするいくつかの大手の世界的製薬会社 か ら 任 意 ラ イ セ ン ス を 取 得 し ま し た。「A to Z Textiles」は、殺虫剤処理済の蚊帳を生産するジョイントベンチャーの一環として、「住友化学」から使用料なしの技術移転を受けました。これらの任意ライセンス契約には、製品の製造と流通に対する支援が含まれる場合もあります。

「フェアトレード・アフリカ」の基準は、このガーナの女性のような農業協同組合のメンバーが、収入を増やし、生活の質を改善できるよう手助けをしています

リバン・エガル氏Liban EgalCEO, First Somali Bank(モガディシュ)

 2012年5月、リバン・エガル氏はソマリアで、20年に及ぶ戦争後初の銀行「First Somali Bank」を開業しました20年以上にわたる海外暮らしを経て祖国に戻ってきたこのソマリア人起業家は、父親の印刷会社の運営を行うとともに、市場調査会社、無線ブロードバンド・プロバイダー、および携帯電話を介した電子マネー・サービスも立ち上げました。

アフリカの多くの地域では法制度や規制がビジネスを促進する水準に達していないということをよく耳にしますが、ソマリアでは規制が一切ないことがビジネスに不確実性をもたらしているようです。こうした課題にどのように対処していますか? ある面、規制が一切ないことによって、ソマリアでの起業は非常に容易になっています。たくさんの書類に記入する必要もなければ、対応しなければならない官僚制度もありませんし、高額な登録料を支払う必要もありません。一方で、強制力のある規則や契約法がないということは、ビジネスが普通に機能しないということを意味します。例えばFirst Somali Bankは、

債務不履行が発生した場合に貸付金の返済や契約の実行を保証できないため、誰に対しても信用を供与することができません。正規経済を発展させる規制の枠組みが絶対的に必要ですが、規制は

シンプルで、かつ市場機能を促進するものでなければなりません。あまりに規制が多すぎると、ビジネスは地下に潜ってしまい、非正規経済が維持されることになります。これは誰の利益にもなりません。

ビジネス成功のために、法制度や規制に何を求めますか? 現在、政府機能が徐々に立て直されつつあるので、政策立案者はビジネスがどのように機能するのかということについてある程度理解する必要があります。現在ソマリアに戻ろうとしている人々は、経済が高度に統制されていたシアド・バーレ時代にソマリアで働いていた人たちです。新しい枠組みを作らずに単に古い制度を復活させただけでは、新たな投資が生まれる見込みはまずありません。もうひとつ例を挙げましょう。現在、この国の税率は非常に低い状態にあります。港から物資を輸入する際、積荷の価格が1000ドルであろうと10万ドルであろうと、量に応じて税金が課せられます。これはばかげたことであり、社会サービスや警察業務などに使えるだけの十分な税金を政府が徴収できるよう、この制度を改める必要があります。

インクルーシブビジネスへの資金提供を促すうえで有益な政策は何でしょうか? 機能する行政サ−ビスと社会サービスが必要です。私はインクルーシブビジネスの概念を強く支持していますが、この概念を推進する組織体、すなわちアフリカ全体にまたがる機関や国際機関、または何らかの国家連合が必要となります。

インタビュー

「……規制はシンプルで、かつ市場機能を促進するものでなければなりません」

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 2011年、「フェアトレード・インターナショナル」ネットワーク傘下の「フェアトレード・アフリカ」に所属する生産者組織の数は300を超え、前年比で25%増加しました。2010年には、このグループの会員、すなわち29か国のアフリカ諸国に暮らす70万人の農民や労働者は、フェアトレード製品の売上として合計1億7500万ドルを獲得しました。また、生産者は1800万ドル以上のフェアトレード奨励金を受け取り、これはコミュニティのプロジェクトに投資されました。 ブルキナファソでは2011年、多国籍の化粧品会社「ロクシタン」が、500トンを超えるシアバターをフェアトレード価格(現地の通常市場価格の約2倍)で購入しました。その結果、供給業者組合とその会員である農村部に暮らす女性1万5000人は、120万ドルの収益を得ました。この収益の約2%が、相互医療保険プログラムなどのコミュニティ開発プロジェクトに使われました。出典:「Annual Review 2011」フェアトレード・アフリカ(2012年)

アフリカの農民70万人に基準を与える「フェアトレード・アフリカ」

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政府は民間セクターのイノベーションを受け入れるべき 低所得者を組み込んだ革新的なビジネスモデルを確立しようという企業の取り組みは、政府が営業許可の付与を拒むなど、さまざまな規制などによって抑圧されることがあります。新しいビジネスモデルに対してより柔軟な立場をとること、また民間企業の関与をより積極的に受け入れることによって、インクルーシブビジネスに対する障壁を大きく削減することができます。

研究機関は包括性の尺度を作ることができる ビジネスが真に包括的であるかどうか、またどの程度包括的なのかを、外部から判断することはしばしば困難です。確かに低所得層のみをターゲットとする企業もありますが、その数は多くはありません。多くのビジネスは、低所得層を対象とした調達、関与、雇用、または提供といった活動を、ビジネスの一部として行っています。研究機関は包括性の指標や同様のツールを作ることによって、企業の低所得層への貢献に対する認識を高めることができます。

ロビー団体は、インクルーシブビジネスにインセンティブを与える政策転換を提唱することができる ビジネス団体、市民社会組織、大学は、ビジネス運営の新たな形についての議論を盛り上げるうえで、主導的な役割を果たすことができます。官民の連携だけでなく、エネルギー、農業、金融サービス、医療など産業間の分野をまたがった連携は、特に強力なものとなり得ます。この種の共同の取り組みは、企業が1社で取り組むよりも新しい経済価値を生み出すことにつながり、低所得者のニーズを伝えるうえで、より信頼性があります。

さらなる機会 インクルーシブビジネスに特化したインセンティブは、サハラ以南アフリカ諸国の政府においては、依然として比較的少ない状態にあります。包括的なかつ社会性のあるインクルーシブビジネスを優遇する、より多くの、そして有効な措置を導入することによって、大きくなりがちな低所得コミュニティでのビジネス運営コストを抑えることができます。これにより、貧困緩和に向けた市場主導型のアプローチをより大きく成長させることができ、ミクロレベルでインクルーシブビジネスを成長させる方針が具体的な意味を持つこととなります。

開発関係機関は、インクルーシブビジネスに対し、さらに多くの技術的な支援や政策対話の場を提供し、インクルーシブビジネスに関連する活動を活発化するべき 開発関係機関の活動に占めるインクルーシブビジネス・プログラムの割合は非常に小さく、他の活動がインクルーシブビジネスの阻害要因を生む場合もあります。例えば、開発関係機関が蚊帳、家族計画用品、または肥料などを無料で提供することにより、現地市場を弱体化させてしまう可能性もあります。また開発関係機関は、直接的な資金提供以外の方法で、インクルーシブビジネスにインセンティブを与える方法についても検討するべきです。例えば、より良いインクルーシブビジネスに関する政策について地元政府と協議を行う、政府との対話プロセスを主導することにより企業を支援する、テーマ別の枠組み・プログラムの設立と運営を支援する、企業にサービスを提供する現地仲介者を発達させるための資金を提供する、技術的支援を提供する、といったことです。これは、既存の国家プログラム(民間セクター開発に重点を置いたプログラムなど)を世界的なインクルーシブビジネス・プログラムに統合することによっても実現することができます69。

政府は、インクルーシブビジネスのインセンティブを主要な政策に組み込むことができる インクルーシブビジネス・アプローチは、経済開発と人間開発を結び付けることにより、包括的な成長を実現します。UNDPの「包括的な市場の開発」(IMD)や多国間ドナーアプローチ「貧困者に益する市場システムの構築」などの枠組みは、経済開発政策と人間開発政策を意図的に統合することが可能であることを示しています。例えば、包括戦略は政府調達プロセスに組み込むことも可能です。

レインフォレスト・アライアンスは、持続可能な農業の基準を提供しています。このガーナの小規模農家は、今では国際市場に、より有利に参加できるようになりました

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企業は、社内および納入業者のインセンティブを生むことができる 企業は、低所得層をビジネスに組み込むインセンティブを含んだ行動規範や戦略を導入することが可能です。例えば、「モンデリーズ・インターナショナル(旧クラフトフーズ)・ヨーロッパ」は、2015年までにすべてのコーヒー豆を持続可能な方法で仕入れるようにすることを約束しました70。この目標を達成するために、同社は現在、小規模農家や開発関係機関と緊密に連携し、サプライチェーンの改善と農家に対する公正な取引の保証に取り組んでいます。2010年には、もうひとつの大手多国籍企業である消費財メーカーの「ユニリーバ」が、顧客数を10億人超にまで伸ばしつつ、環境フットプリントを半減し、すべての農産物原料を持続可能な方法で調達するという目標を定めました71。この目標を達成するために同社は、環境にやさしい調理用コンロなどの持続可能な製品を活用した、低所得層を対象とするいくつかの革新的なプロジェクトを立ち上げました。「ウォルマート」は、持続可能な農業を実現する取り組みの一環として、100万人の中小規模農家から調達した10億ドル相当の食品を販売し、100万人の農民を対象に訓練を行って、同社と契約している中小規模の農作物生産者の収入を10~15%増加させることを目指しています。これらのベンチマークは、社内においてイノベーションと投資を促すインセンティブを生むとともに、競合他社にも同様の取り組みを促します。

統一された基準や認証は、関係者の認識を向上させる 現在、多種多様な認証や取り組みの存在が、消費者の混乱を招いています。これらを統合することによって、消費者の高い認識を促すことができます。欧州連合では、オーガニック生産の最低基準を示す統一された認証が導入されました。いまだ、異なる基準に基づいたさまざまなオーガニック製品認証が存在していますが、現在、消費者はこの統一された認証マークでオーガニック製品を見分けられるようになりました。同様のアプローチにより、公正な製品や倫理的な製品の市場の拡大を促すことができます。コーヒー産業の国際的な枠組み「4C Association」と、熱帯雨林の保護に尽力する国際的な市民社会組織「レインフォレスト・アライアンス」は、レインフォレスト・アライアンスの認証保持者が4Cの承認プロセスを経ずに4Cライセンスを取得できるようにしました72。さらに、メディアや標準化機構は、既存の認証に対する認知度向上に貢献することができます。認知度向上のための共同出資や共同マーケティングは、すべての関係者にとって有益です。

求められる開発途上国の監視・認証機関 開発途上国の現地に監視・認証機関が存在しない場合、監視・認証制度の導入は高コストになります。実際、多くのサハラ以南アフリカ諸国には、二酸化炭素取引、フェアトレード、オーガニック生産、その他の基準の遵守を監視することのできる現地機関がありません。監視・認証サービス提供者は、開発途上国でのサービスを拡大する必要があります。

ウォルマートは、このジンバブエの養殖業者など、持続可能かつ公正な方法で魚を仕入れるために、市民社会組織の「Sustainable Fisheries Partnership(持続可能な漁業パートナーシップ)」と連携しています

国連世界食糧計画(WFP)は、現地の監視・評価チームがプロジェクトの評価を行えるよう、研修を実施しています。現地の評価能力育成は、各種認証を実現するために不可欠です

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4 投資の実現 インクルーシブビジネスではしばしば、経営が安定するまでの大きな初期投資が必要とされます。地元市場向けの米を栽培するガーナの企業「GADCO」の事例は、インクルーシブビジネスの設立に関するこうした障害の存在を示しています。GADCOは堅実なビジネスモデルを持っていたにもかかわらず、現地で得られる融資の利率があまりにも高かったため、農場と研修施設を建設するために、外部資本による投資を必要としました。インクルーシブビジネスのための資金は、ビジネスを興す組織内から、または外部の財源から提供されます。起業家が利用できる資金・財源は、組織形態によって大きく異なります。

 大企業レベルにおいては、通常の場合、法人が持つ財団からの資金を含む内部財源が、助成金、借入金、または株式発行という形式での外部資金調達によって補完されます。

 中小企業レベル(ソーシャルビジネスを含む)においては、商業銀行、開発金融機関、インパクト・インベストメント基金、またはより規模が大きいビジネスパートナーによって資金が提供されます。

 零細企業レベル、特に非正規ビジネスの場合においては、マイクロファイナンス機関とバリューチェーン・パートナー(例えば農作物の購入者など)がしばしば信用を供与します。

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種から食品まで、あらゆる農作物を提供するGADCOの包括的なビジネスモデルは、大きな投資を必要とします。「ペイシェント・キャピタル」によって、インクルーシブビジネスは長い資本回収期間と高いリスクに対処することができます

小規模農家と連携するための融資の獲得 「世界農業開発会社」(Global Agri-Development Company: GADCO)は、ガーナを拠点とする総合的な農業食品会社です。同社は、ボルタ州中部地域の小規模農家を農業食品と農産物加工のバリューチェーンに組み込むとともに、信頼性のある食品を低価格でアフリカの消費者に提供することを目指しています。GADCOは、最初の農産物として米を選び、このモデルの展開を始めました。同社はまず、中核となる営利農場を設立し、そこで地元の小規模生産者を対象に、持続可能な農業の方法、農機具、収穫量の高い種、肥料、灌漑設備などに関する研修を行いました。2012年に事業を開始した同社は、以後5年間で1万1000人以上の農民とその家族を巻き込んで、各農家の収入を3倍にすることを目指しています。

 ガーナでは、基準貸出の年間利率が30%と非常に高く、設立時に200万ドル以上の資本が必要であることを考えると、外部からの支援なしにビジネスを開業することは不可能です。このため、GADCOは当初、金銭的・社会的・環境的利益を求める銀行やインパクト・インベスターから財務支援を受けました。「アキュメンファンド」が150万ドルの株式投資を行い、「サミット・キャピタル」と「アフリカ農業貿易投資基金」(Africa Agriculture and Trade Investment Fund: AATIF)も資本を提供しました。AATIFは、ドイツ政 府、「 ド イ ツ 復 興 金 融 公 庫 」(Kreditanstatlt fur Wiederaufbau: KfW)、ドイツ銀行が資金を提供する官民ファンドであり、インクルーシブビジネスにペイシェント・キャピタルを提供しています。さらに、インパクト・インベスターの「Root Capital」はGADCOに調達融資を提供しており、これによってGADCOは農家に対し、初期投資にかかる費用を事前に支払うことが可能になりました。

事例研究:GADCO

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GADCOは適切な資金提供パートナーを得たおかげで、地元のブランド米の栽培に成功し、事業を拡大し続けています

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ために必要な最低限の情報を銀行に提出することができません。しかし、正規部門の中小企業も同じような課題に直面しています。アフリカでは会計基準が緩いか、全く存在しません。信用調査機関も存在しないか、あったとしてもあまり機能していません。リスクキャピタルは借入金よりもさらに確保が困難です。世界の他の地域とは違い、サハラ以南アフリカでは、起業支援プログラム、ベンチャーファンド、プライベート・エクイティ、エンジェル投資家は、資金供給において非常に小さな役割しか果たしていません75。

 零細企業は、マイクロファイナンス融資やビジネスパートナーからのバリューチェーン融資を受けることができます。他方、大企業は通常、内部資本を活用するか、投資家や銀行から資金を調達します。しかし「空白の中間層」、つまり1000ドルから10万ドル程度の資金を必要とする企業への投資が不足しています76。このため、多くの有望なインクルーシブビジネス構想が実現されずにいます。国際金融公社と「McKinsey Global Institute」が実施した調査によると、アフリカの中小企業における資金調達不足の総額は、1400~1700億ドルとなっています77。

課題 インクルーシブビジネスは、困難な低所得市場に挑み、新しいビジネスモデルを試すため、多くの場合、他のビジネスに比べて投資を獲得するのに苦労します。その結果、従来型の銀行や投資家はインクルーシブビジネスを高リスクとみなすため、利率が上がり、株式発行による資本の獲得も困難となります。したがってインクルーシブビジネスは、「ペイシェント・キャピタル」を必要とします。ペイシェント・キャピタルとは、従来の投資に比べてリスク許容度が高く、収益期待度の低い、比較的長いタイムスパンで投資される資本のことです73。こうした忍耐に対する見返りは、未成熟市場での利益の拡大、投資に対する評判の向上、ステークホルダーとの関係の強化という形で得られます。

 債権や信用貸しへのアクセスは、サハラ以南アフリカで特に問題となっています。世界銀行の企業調査によると、アフリカ企業の44.9%が融資へのアクセスを事業活動の大きな障害とみなしています74。融資やクレジットラインが与えられている事業体の割合は平均でわずか23.1%と、他地域の開発途上国に比べて著しく低い状態です(図16)。

 アフリカの多くの中小企業や零細企業は非正規分野で発達しているため、法的文書や財務諸表など、融資を受ける

図16:各国における銀行融資へのアクセス(2006~2010年)

出典:「Financing Africa: Through the Crisis and Beyond」アフリカ開発銀行(2011年)

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銀行融資やクレジットラインを与えられている企業の割合(%)

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「TEF」がタンザニアのMtanga Farmsで行っているようなインパクト・インベストメントは、社会奉仕と営利事業との隔たりの解消に貢献しています

成果 「インパクト・インベストメント」は比較的新しい概念で、株式や借入金といった従来型の資金調達手段を社会的目的のために用いるものです。これまで、アフリカのインクルーシブビジネス・プロジェクトを支援するインパクト・インベスターのほとんどは、国際的な開発金融機関、民間財団、投資ファンドでした。しかし、現地のインパクト・インベストメント事情が進展しつつあります。「チャレンジ基金」は、インクルーシブビジネス・モデルの促進を目的として、助成金を提供しています。地元の銀行は中小企業に対する融資を増やしており、マイクロファイナンス機関は零細ビジネスを対象にサービスを提供しています。また、送金は、この地域の中小零細企業への資金提供において重要な役割を果たしています。

インパクト・インベストメントは社会的な目的と商業的な目的を結び付ける投資手法である インパクト・インベストメントは、利益を得ながら、定量的な社会的・環境的影響を生み出すことを意図して、企業、組織、または基金において行われる投資です78。この投資は、あらゆる資産クラスにおいて行われ、プライベート・エクイティやベンチャーキャピタルの他、借入金も含みます。インパクト・インベスターには、ベンチャーキャピタル基金やプライベート・エクイティ基金、開発金融機関、財団、機関投資家が含まれます。社会的な目的と商業的な目的のバランスは、投資家が持つ背景や使命によって異なります。例えば、財団は金利なしで資金を提供するかもしれませんが、プライベートエクイティ基金は利益を期待する傾向があります。インパクト・インベストメントは、今後15年間にわたって、インクルーシブビジネスの主要な財源となることが予想されます。コンサルティング会社「Dalberg」によると、インパクト・インベスターは、今後5年間に西アフリカだけで32億ドルの投資を予定しています79。「Global Impact Investing Network」が最近実施した調査によると、99の回答者のうち34%が投資をアフリカに集中させていると答えています80。

台頭しつつある現地のインパクト・インベスター アフリカでは新しいタイプの個人富裕層が台頭しつつあります。こうした人々の多くは、自らの富を祖国のために投資したいと考えています。過去10年間に、著名な実業家たちが財団を設立し、アフリカの起業家を支援するために多額の寄付を行ってきました。その一例が、「トニー・エルメル財団」と「ダンゴート財団」です。

中小企業への資金提供を拡大している商業銀行 例えば、トーゴに拠点を置く「Ecobank」は、この3年間で中小企業への貸付金を269%増額し、西・中央アフリカの6か国に対する合計融資残高が6億300万ドルに達しました81。この貸付は必ずしもインクルーシブビジネスを対象としたものではありませんが、多くの革新的なビジネスモデルが融資を受けています。例えば、ケニアのリテール銀行

「Equity Bank」と「K-Rep Bank」は、数千の小規模農家の収 入 を 拡 大 さ せ た「 ケ ニ ア 農 産 品 取 引 所 」(Kenya Agricultural Commodity Exchange: KACE)に資金を提供しました。Equity Bankは農家に信用を供与し、K-Rep Bankは事業立ち上げ段階における財務保証を提供しています。

 テクノロジー、特に携帯電話技術によって、アフリカの銀行やその他の金融機関は、規模の経済を促進し、中小企業への貸付金を容易に増やすことができるようになりました。この「規模の経済」により、銀行はリスク閾値を上げることができ、新たな金融サービスの提供コストを削減することができます82。また、ケニアのEquity Bankや南アフリカのStandard Bankが始めたような無店舗バンキングによって、中小企業や零細起業家向け融資に利用できる資本が拡大しつつあります。

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 「トニー・エルメル財団」(Tony Elumelu Foundation: TEF)は、ナイジェリアの実業家トニー・O・エルメル氏によって2010年に設立されたアフリカの非営利組織です。この財団は、アフリカ全域におけるビジネス・リーダーシップと起業家精神の促進を目的としています。例えば、「アフリカ市場インターンシップ・プログラム」

(African Markets Internship Programme: AMIP)は、アフリカや他地域の一流ビジネススクールのMBA生たちと、アフリカ全域のアフリカ人が所有する革新的な中規模ビジネスとの橋渡しをしています。また同財団は、主要な開発分野において金融・社会・環境面でプラスの影響をもたらす革新的なアフリカのビジネスに投資しています。また、アフリカにおけるインパクト・インベストメントの先駆者として、アフリカ全域で農場作りに取り組むとともに、この分野におけるオピニオンリーダーとしての役割を果たしています。出典:トニー・エルメル財団ウェブサイト(www.tonyelumelufoundation.org)

アフリカの起業家精神を支える「トニー・エルメル財団」

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マイクロファイナンスは、顧客や生産者に金融サービスを提供することにより、インクルーシブビジネスの資金調達ニーズを緩和する マイクロファイナンス機関(micro-finance institutions: MFI)は、平均投資規模50~1000ドル程度の零細企業や個人起業家に重点を置いてサービスを提供しています。MFIは、供給業者、消費者、流通業者にこのように資金を提供することによって、インクルーシブビジネスを間接的に支援しています。MFIのアフリカ向け融資の総額は2011年に72億ドルに達し、融資対象者は合計570万人でし た83。 ケ ニ ア で は、 ソ ー ラ ー テ ク ノ ロ ジ ー 企 業 の

「ToughStuff」が地元のMFIと連携、マイクロクレジットを活用して支払期間を延長することによって、消費者がソーラーランプを購入することを可能にしました。

開発関係機関は、チャレンジ基金によってイノベーションを促進する チャレンジ基金は、コンペによって民間企業に公的資金を与える基金であり、プロジェクトの質や予想されるインパクトに応じて助成金を提供します。チャレンジ基金はビジネスに対し、特定の社会的および環境的問題に取り組むインセンティブを与えます。通常、チャレンジ基金が提供するのはマッチング・グラントで、全投資額の少なくとも半分を対象となる民間企業が拠出します。公的財源からの資金獲得はしばしば非常に長いプロセスとなり、事務手続きにかなりの時間と費用がかかる場合があります。しかし、このような基金から資金を獲得した事業体は多くの場合、別の資金調達も非常に容易になります。

バリューチェーン・プログラムは、ビジネス環境を強化するバリューチェーンの開発に資金を提供する 開発関係機関は、提供する支援が市場を育成とし、持続可能であるように、バリューチェーン・アプローチをますます重視しています。バリューチェーン・プログラムは、バリューチェーン上の空白を埋めることにより、民間企業が持続可能な方法で介入できるよう、仲介し、投資を行います。こうして低所得市場への参入コストを削減することにより、インクルーシブビジネス事業者に間接的な資金提供を行っています。

イノベーションのための資金を提供する「アフリカ企業チャレンジ基金」(AECF)

AECFの受益者のひとつである「Mtanga Farms Limited」は、タンザニアの小規模農家のために、30年間で4つのジャガイモの新種を開発しました

Photo:AECF

 「アフリカ企業チャレンジ基金」(AECF)は、アフリカのインクルーシブビジネスを支援するために創設された基金です。この1億9000万ドル規模の民 間 基 金 は、「 オ ー ス ト ラ リ ア 国 際 開 発 庁 」

(AusAID)、「デンマーク国際開発庁」(Danida)、「英国国際開発省」(DFID)、「国際農業開発基金」(IFAD)、

「オランダ外務省」(NMFA)、「スウェーデン国際開発協力庁」(Sida)の支援を受けています。この基金は、すべてのアフリカ諸国から提案を募り、ひとつの賞につき25万ドルから150万ドルの助成金を提供します。2008年の創設以来、同基金は14度、提案を募り、アグリビジネス、再生可能エネルギー、気候変動への適応、農村部の金融サービス、およびメディアと情報といった分野における新たな投資を支援しました。AECFはこれまでに、アフリカ全域22か国において合計133件のプロジェクトを支援しています。出典:AECFウェブサイト(www.aecfafrica.org)

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「ユース・トゥ・ユース基金」は、若者たちが地元のコミュニティでプロジェクトを実践し、ビジネスを立ち上げるために必要とする手段を与えるものです

西アフリカの「ASNAPP玉ねぎプロジェクト」は、2012年にキャタリティック助成金を受けたプロジェクトのひとつです

イノベーションを促進するモバイル・テクノロジー ケニアの「Safaricom」は、アフリカの大手金融機関のひとつである「Equity Bank」と提携し、「M-Kesho」と呼ばれる貯蓄・マイクロローン口座を設定しました。このプログラムのもと、零細起業家は1ドルから60ドルまで、30日間の融資を申請することができます。これは、非正規ビジネスがしばしば直面する資金繰りの問題を克服するうえで極めて有効です84。このような手段は、資金調達の隙間を自ら埋めなければならないインクルーシブビジネス事業者にとって、負担の軽減となります。例えばアグリビジネス企業は、契約栽培農家に種やその他の原材料を掛け売りし、収穫後に代金を回収します。

送金は、草の根レベルのインクルーシブビジネスにペイシェント・キャピタルを提供する 世界銀行の推定によると、2011年のサハラ以南アフリカ向け送金の合計額は220億ドルで、2014年までに270億ドルに達する見込みです85。エリトリアやカーボベルデなどの国では、送金がGDPの3分の1以上を占めています86。送金は、インクルーシブビジネスを運営する現地の起業家や中小企業にとって、重要な資金源となっています。

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国境を越えたアグリビジネスのための「AFIMキャタリティック基金」

若手起業家を奨励する「ユース・トゥ・ユース基金」

 UNDPの「アフリカの包括的な市場の育成プログラム」(AFIM)のキャタリティック(触媒)助成金は、所得や雇用の創出と食糧の安全保障の改善を通じてMDGsを推進するアグリビジネスおよびアグロインダストリー分野のバリューチェーン開発プロジェクトに資金を提供します。NGOは、国境を越えた、または地域を限定したバリューチェーンの活性化、民間投資の呼び込み、または地元組織の支援を担う「プロジェクト推進者」として、助成金を申請することができます。例えば、「サヘル地域玉ねぎ生産性・市場強化プログラム」は、ガーナとブルキナファソの2500人の農民やバリューチェーン関係者と協力し、玉ねぎ農家の収穫量と生産性の向上、および収穫後の損失の削減に取り組んでいます。このプログラムの参加者は、農業改善についての研修も受けます。出典:「Catalytic Funding for Cross-Border Regional Agri-Food Value Chain Projects」AFIM(2012年)

 「ユース・トゥ・ユース基金」は、若者のビジネス設立を助けるために、東部、および西部アフリカの青少年団体を対象に資金提供と研修を行っています。この基金は「若年雇用ネットワーク」(Youth Employment Network: YEN)のプログラムで、国際労働機関(ILO)が主導し、国連、ILO、世界銀行が共同で実施しています。青少年団体はこのプログラムのチャレンジ基金からの資金提供によって、青少年協同組合を設立することができます。現在までにこの基金によって、450を超えるビジネスの発足や支援が実施されました。出 典:ILOウ ェ ブ サ イ ト(www.ilo.org/public/french/employment/yen/whatwedo/projects/y2y.htm)

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保証基金はインクルーシブビジネスのために民間資金を活用することができる 融資保証、ポートフォリオ保証、債券保証は、ビジネスにおいてよく活用される手法です。政府、開発関係機関、開発金融機関は、インクルーシブビジネスのために同様の手法を導入することが可能です。インクルーシブビジネスに各種保証を提供することにより、官民の主体は回避不能なリスクを共有することができます。

国際的な資産運用会社や投資銀行はインクルーシブビジネス投資ファンドを立ち上げることができる これまでのところ、インパクト・インベストメントは主として開発金融機関、財団、専門的な投資ファンドによって実施されています。インパクト・インベストメントを一般の投資銀行や資産運用会社に導入することによって、インクルーシブビジネスに、より多くの資金を呼び込むことができます。そうすれば、金銭的利益をそれほど重視しない社会投資家はビジネス開発の初期段階に集中することができるため、新規ビジネスは利益を求める投資家の期待に応え得る規模の拡大、専門性、潜在的利益を実現することができます。

社会的影響を測定するために、さらなる支援が必要 インパクト・インベスターは、自らの投資によって達成される社会的影響についての確実なデータを必要とします。しかし、多くのインクルーシブビジネスには、十分な測定・報告システムを確立する能力がありません。大学、ビジネススクール、その他の現地のサービス提供者は、社会的影響の測定方法に関する研修や教育を実施し、必要となるシステムを確立できるよう支援することが可能です。

さらなる機会 インパクト・インベスターの間では、サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブビジネスへの投資に対する関心が高まっています。いま欠けているものは、この関心と地元の需要を適切に結び付けるインフラです。

インパクト・インベスターなどの投資家とビジネスを結び付ける仲介機関の必要性 ますます多くの資金がアフリカに流入し、そのうちのかなりの額が社会的な影響を生み出すために配分されているにもかかわらず、インパクト・インベスターやその他の投資家は、会計・報告基準を満たし、堅実なビジネスプランや有望なビジネスモデルの提供に関する要件をも満たすビジネスをうまく見いだせずにいます。現地のベンチャーキャピタル、インキュベーション機関、エンジェル投資家は、投資する価値のあるインクルーシブビジネスの特定に貢献することができます。これらの機関は、有望なベンチャー事業が外部資本を受け入れられるよう事業力を強化し、各種の申請・報告手順の遵守に協力し、商業的、そして社会的な影響に対する期待に応えられるよう支援することができます。オンライン市場やビジネスプラン・コンペは、起業家たちに自らのアイデアを紹介する場を与えます。

開発関係機関と市民社会組織はインクルーシブビジネスが投資の受け入れ態勢を整えるための支援ができる 開発途上国で成長したビジネスはしばしば、持続可能なビジネスモデルを構築して、国際基準を満たし、会計や報告に関する投資家の期待に応えるために、研修や助言サービスを必要とします。このことを踏まえて、英国国際開発省(DFID)の「ビジネスイノベーション・ファシリティ」は、 ビ ジ ネ ス に こ の よ う な 支 援 を 提 供 し て い ま す。

「TechnoServe」は、経営面やその他専門的な助言を提供する市民社会組織の一例です。投資の受け入れ態勢が整ったプロジェクトを求めるインパクト・インベスターの需要を満たすために、この種の支援がさらに求められます。

国際的なNGO「TechnoServe」は、地元企業が業務プロセスを国際基準に適合させ、投資の受け入れ態勢を整えられるよう支援を行っています

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オンライン・プラットフォームはインクルーシブビジネスに個人の投資を直接導くことができる クラウドソーシング・プラットフォームはすでに、個人投資家から資金を集める機会をさまざまなプロジェクトに提供しています。オンライン資金調達プラットフォーム

「MyC4」は、過去3年間にアフリカ数か国における1万1000の小規模ビジネスに2200万ドルの融資を集め、5万2000件の雇用維持に貢献しました87。また、アフリカへの投資を検討している個人投資家の多くは社会的目的にも関心を持っており、このような投資家に的を絞ったプラットフォームを確立することによって、インクルーシブビジネスの資金調達を支援することができます。

「Equity Bank」は、手ごろな融資や保険を提供することにより、インクルーシブビジネスの資金調達において低所得層の顧客を支えています

「MyC4」は、ナイロビで古着を売るこの女性のようなアフリカの中小零細企業への個人の投資を可能にするオンライン・プラットフォームです

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ジェームズ・ムワンギ氏Dr. James MwangiCEO, Equity Bank(ケニア)

 「Equity Bank」はケニアのリテール銀行です。超低所得層を中心に800万人以上の顧客を抱えるこの銀行は、ケニアの銀行の中で最大の顧客基盤を誇っています。

アフリカのインクルーシブビジネスにとっての資金調達の可能性について、現状をどのように評価しますか? この10年間で状況は大いに改善されたと考えています。アフリカには、有望で持続可能な素晴らしい投資機会がたくさんありますし、その結果、資金調達の可能性も大きく成長しています。商業的な成功を生み出すことに投資の重点が置かれるべきです。

過去5年間に、チャレンジ基金とインパクト・インベスターがインクルーシブビジネスへの投資のあり方を変えたようです。この点についてどのように解釈しますか? チャレンジ基金とインパクト・インベスターは、アフリカ

における投資に全く新しい側面をもたらしました。これらは非常に革新的な方法で銀行を補完し、特に新たなビジネスモデルの試行や検証といった重要なビジネス段階の支援で、大きな役割を果たします。チャレンジ基

金とインパクト・インベスターは、インクルーシブビジネスが機能し、実行可能であるということを証明しています。

「空白の中間層」を埋めて中小企業の資金調達をより容易にするために、何をすればよいのでしょうか? 確かに、零細企業と大企業の間に位置する中小企業は資金調達に苦労しています。この問題は、正規と非正規市場という二分法の問題と切り離して考えることはできません。非正規市場と異なり、正規市場はバリューチェーンのエコシステムの中で発達します。一般的に、非正規市場では、バリューチェーン関係者の相互の結び付きがはるかに小さいか、あるいは少なくとも正規市場のような方法で結び付きを活用することができません。より柔軟な資金調達方法を考案し、「準正規」市場、すなわち正規化を遂げつつあるが、あと一押しを必要としているビジネスに向けた橋渡しを始める時が来たのかもしれません。

投資家と起業家を結び付けるために、どのような仲介機関が必要でしょうか? インクルーシブビジネス・モデルの構築支援を得意とする市民社会組織や公的機関など、より多くの能力開発支援機関が必要であることは確かです。中小企業の抱える課題のひとつは、持続可能なビジネスの構築に関するノウハウと専門知識の不足です。ある企業は他の分野への多様化を考えているが、この多様化がどのような影響をもたらすかがわからないのかもしれません。またある企業は、個人事業として開業したために、ガバナンス構造が弱いのかもしれません。ある企業は他の地域に事業を拡大したいと考えているかもしれません。こうした企業が次のレベルへと迅速に進化できるような助言サービスが提供されることが重要なのです。

インタビュー

「より柔軟な資金調達方法を考案する時が来たのかもしれません」

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5実施サポート

 たとえ市場の情報が提供され、ビジネスのインセンティブが確保され、ビジネスを促進する投資が行われたとしても、インクルーシブビジネス推進の鍵は、さまざまな仲介・支援サービスにあります。例えば、世界最大のカカオ購入企業のひとつである「モンデリーズ」は、カカオ生産コミュニティの改善に着手した際、独力では成し得ないビジョンを実現するために、専門知識を持ったパートナーから技術的な支援を受けました。このような事例からもわかる通り、実施サポートには、企業が低所得層をバリューチェーンに組み込み、彼らとスムーズに連携できるようにするためのさまざまなサービスが含まれます。

 物流サポートは、低所得層に製品やサービスを届けるため、また低所得者から製品を集めるために不可欠なものです。

 取引サポートは、代金の支払いや受取りなどの金銭取引、およびその取引に必要となる文書化・管理システムの整備を促進します。

 マーケティング・コミュニケーションサポートは、低所得消費者の認識を高め、潜在顧客に製品やサービスの利点を知らせ、それらを使用する際に必要な情報を提供するのに役立ちます。

 零細企業サポートは、零細事業者がより大きなバリューチェーンに参画するために必要な基準に自らのビジネスを適合させられるよう支援します。これには、零細企業の特定、募集、設立、ならびに基準を満たした製品やサービスを提供するための能力開発が含まれます。

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モンデリーズは、ガーナの小規模農家からカカオを購入しています。同社は、小規模農家に対する研修の実施と現地の開発計画の策定のために、市民社会組織の支援を必要としています

次世代のカカオ農家を育てる「モンデリーズ」 カカオは、主に開発途上国の小規模農家によって生産されています。ガーナは世界第2位のカカオ輸出国で、2010年には世界の生産量の23%を占めていました。しかし、ガーナのカカオ生産は減少傾向にあります。現在、同国の人口2500万人のうち、およそ70万人がカカオ農民で、その平均年齢は約56歳です。カカオの栽培は難しく、高リスクで、あまり儲からないため、大抵のカカオ農民は自分の子どもには違う職業に就くよう勧めます。

 大手チョコレートメーカー「モンデリーズ」(旧「クラフト」)にとって、カカオの生産量と質の低下は供給面における大きなリスクです。しかし、次世代のカカオ農家を育てるには、単に収穫量を上げ、価格を高くするだけでは不十分です。同社は、繁栄し、持続可能なカカオ栽培コミュニティを作り出すという目標を設定しました。しかし、この目標を達成するためにはパートナーが必要でした。2008年、モンデリーズはUNDPの支援を受けて、7000万ドル強相当の10年計画の取り組み「キャドバリー・カカオ・パートナーシップ」を立ち上げました。この取り組みの目的は、世界の主要なカカオ産地のカカオ生産コミュニティを支援することであり、その最初のターゲットがガーナでした。

 モンデリーズは、3つの経験豊かな市民社会組織(「CARE」「ワールド・ビジョン」「VSO」)と連携し、最初に100のコミュニティとの連携を進めました。これらの市民社会組織は、この取り組みのもと、農民団体と協力してコミュニティの行動計画を策定しました。この行動計画は、カカオ生産、インフラ開発、持続可能な環境に関するコミュニティの優先課題を定めたものです。さらに市民社会組織は、カカオ生産者に

よる農民団体の設立にも協力しました。団体設立後は、交渉力を強化するために農民団体間の提携も進められました。

 さらにモンデリーズは、「ガーナ・カカオ・ボード」(COCOBOD)とも提携しました。COCOBODは、17人のコミュニティ派遣員の訓練を行い、管理もしています。これらの派遣員は、カカオ農家を対象に農業研修を行い、フェアトレード認定の取得を支援しています。また彼らは各地域で、2~3人の地元のカカオ生産推進役とも協力しています。この推進役には通常、追って派遣員の任務を引き継ぐことができるコミュニティの若者が就きます。 この取り組み開始後の3年間で、参加した100のコミュニティで収穫量が20%増加し、550万ドルのフェアトレード奨励金がもたらされ、ソーラーパネルや井戸など、200近くの開発プロジェクトが開始されました。このパートナーシップは、2015年までに500のコミュニティに活動を拡大することを目指しています。

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ガーナの農民がカカオ豆を選り分けています。農民たちは研修を受けることによって、質の良いカカオを生産できるようになるだけでなく、コミュニティ派遣員として、自分たちの持つ知識を他の人々に伝えることができるようになります

事例研究:モンデリーズ

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技術と知識 インクルーシブビジネスは多くの場合、低所得層のビジネスパートナーの能力不足に対処しなければなりません。生産者は特定の生産基準を満たすための技術を持っていないことが多く、起業家は会計プロセスを備えておらず、多くの消費者は製品情報を読むことができません。アフリカの学生のうち、中等教育を修了する者は19%しかおらず、高等教育修了者にいたってはわずか5%です(図17)89。サハラ以南アフリカの成人人口の約38%が、日常生活に必要な基本的な読み書き計算能力を身に付けていません。また、非識字人口の60%以上が女性です90。国の職業訓練システムが十分ではないため、事業者は必要な技術を自ら身につけなければなりません。

金融インフラ サハラ以南アフリカに暮らす人々の大半は、正規の金融市場に参加していません(図18)。この地域の成人のうち、銀行口座を持っている人はわずか24%です91。このため、金融取引は通常、現金で行われます。しかし現金の取り扱いは、低所得コミュニティの起業家にとってセキュリティ上の問題をもたらす可能性があり、会計手続きも複雑になります。こうした状況は、「Safaricom」の「M-Pesa」や

「Lonestar」などの携帯電話を介した電子マネーサービスの普及にともない、変わりつつあります。ある調査によると、2011年にはアフリカの成人の16%が携帯電話を使って支払いや送金、現金の受取りを行っています92。

課題 インクルーシブビジネスは、低所得コミュニティで事業を行っているという事実により定義されます。こうした状況下では、従来型の事業環境と比べて、物理的インフラ、技術と知識、金融インフラなどの市場環境の欠如によってビジネスが複雑化し、対象主体との関与が困難となります。

物理的インフラ 道路、鉄道、安定したエネルギー源、堅牢な保管施設・倉庫、およびその他の物理的な市場インフラの不足により、低所得コミュニティとの取引コストは増大します。例えば、サハラ以南アフリカの地方の住民の70%以上が、通年使用できる道路から2km以上離れた場所に住んでいます88。

図17:アフリカの教育ピラミッド(2009年)

出典:「Financing Higher Education in Africa」世界銀行(2010年)

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学校教育の年数

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総入学率 96%

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進学 77%

進学 68%

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実 施 サ ポ ー ト5

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成果 市民社会組織(CSO)と開発機関は、アフリカ市場で活動する企業が受ける実施サポートの大部分を提供しています。政府機関は、小規模農家を対象とした追加の支援を行う場合もあります。しかし一般的に、企業が利用できる現地での実施サポートは依然として限られており、特に物流や取引に関する支援は乏しいというのが現状です。したがって、企業は、例えば、現地CSOのスピンオフや現地の零細起業家の能力開発などにより、支援のエコシステムを自ら作り出さなければなりません。昨今の携帯電話技術の普及により、このプロセスはいくぶん簡易化され、取引コストの削減とインクルーシブビジネス・プロセスの効率化が進んでいます。

零細企業支援、マーケティング、コミュニケーションは、主にCSOや開発機関によって提供されている CSOや開発機関の多くは、現地コミュニティに深く根付いているため、蓄積された信頼と確立されたネットワークを活用することができると同時に、地元住民の考え方を良く理解しています。したがってCSOや開発機関は多くの場合、新たなサービスを低所得顧客に知らせたり、生産者や零細起業家の能力を開発したりするうえで、最も望ましいパートナーとなります。ガーナのカカオ生産者と協力した先述の「モンデリーズ」の事例では、農民団体の設立とコミュニティ開発計画の策定をCSOが引き受けました。

 時に零細企業支援は、現地起業家を支えることによって、インクルーシブビジネスの育成に実質的に貢献します。例えば「EnterpriseWorks」は、「Toyola Energy」の創設者に対してエネルギー効率の良い調理用コンロの生産に関する研修を実施しました。このプロセスにより、創設者たちは会社設立のための技術を手に入れました。現在までに、Toyolaは10万台を超える調理用コンロを販売し、14万トン以上の二酸化炭素排出を相殺し、現在、300人以上の低所得者を雇用しています。

図18:アフリカ諸国における低所得層への金融機会の提供の状況

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出典:「Inclusive Business Finance Field Guide 2012: A Handbook on Mobilizing Finance and Investment for MSMEs in Africa.」UNDP(2012年)

銀行サービスを受けている金融機関により提供される従来型の銀行商品

金融サービスを受けていない正規サービスも非正規サービスも受けていない

非正規の金融サービスを受けている公認の法的ガバナンスなしに運営される非正規商品(雇用者に預けた貯蓄など)

その他の金融サービスを受けているその他の正規商品(銀行商品や銀行によって提供されるもの以外)

DFIDの「BIF」は、何百もの小規模事業者や被雇用者に支援を提供してきました

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インクルーシブビジネスに専門知識を提供する「ビジネス・イノベーション・ファシリティ」

 英国国際開発省(DFID)の「ビジネス・イノベーション・ファシリティ」(Business Innovation Facility: BIF)は、草の根レベルで活動するインクルーシブビジネスに技術的支援を提供することを目的として、2010年に創設されました。5か国に現地拠点が設立され、そのうちの3つ(マラウイ、ナイジェリア、ザンビア)がアフリカにあります。これら3つの拠点は、大企業と小企業を含む、合わせて58のビジネスに集中的に支援を提供してきました。各拠点のマネージャーはグローバルなネットワークを活用して、市場経路の評価、サプライチェーンの開発、ビジネスモデルの「ストレステスト」、または企業が直面するその他の数多くの障害への取り組みを行うことのできる技術専門家を見つけることができます。このプロセスから学んだ教訓は、インクルーシブビジネスをテーマとするオンライン・コミュニティ

「Practitioner Hub」で共有されています。出典:Practitioner Hubウェブサイト(www.businessinnovationfacility.org)

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低所得者自身も物流・取引サービスの提供において重要な役割を果たしている 多くのインクルーシブビジネスは、フランチャイジーやサービス提供者として地元コミュニティの零細起業家を採用しています。インクルーシブビジネスは、こうした地元住民の能力を構築するためにしばしば初期投資をしなければなりませんが、この投資はコスト削減、地元コミュニティとのより密接な結び付きやより深い理解という形ですぐに報われます。低所得コミュニティでクリーンエネルギー機器を販売する「ToughStuff」と「Toyola」は、ソーラーランプと調理用コンロを販売する零細起業家のネットワークを設立しました。

モバイル通信と情報通信技術はインクルーシブビジネスの実施コストを削減する 携帯電話を介した電子マネー・アプリケーションは、送金コストとリスクを削減します。モバイル情報サービスは、各種サービスについての情報と提案を低所得顧客に伝え、小規模農家に天気、価格、マーケティング機会についての情報を提供し、零細起業家に販促活動について知らせることができます。「ケニア農産品取引所」(Kenya Agricultural Commodity Exchange: KACE)のイニシアティブは、農家とバイヤーを結び、さまざまな商品についての情報を中継します。「e-Soko」も、アフリカ16か国で同様のサービスを提供しています。

インクルーシブビジネスは、小規模ビジネス支援を行うCSOをスピンオフさせたり、育成したりすることができる 2007年に「ロクシタン」は、シアの実をシアバターに加工するブルキナファソ農村部の女性数千人に、シアバターの生産、一般的な経営管理、簿記、フェアトレード基準についての能力構築支援と訓練を提供するために、

「Association Nord et Sud」(南北組合)というCSOを設立しました。同様に、モーリタニアの「Tiviski」も、牛飼いが家畜を管理し、獣医サービスを受けられるよう、

「Tiviski牛乳生産者組合」というCSOを設立しました。

政府機関は時に農業バリューチェーンの確立に関与する 「モンデリーズ」の事例では、「ガーナ・カカオ・ボード」が同社のビジネス運営、研修、カカオ農家の能力構築を担当する17人の派遣員の管理に必要な専門知識の構築に協力しました。「エチオピア農業変革機関」は、国内のヒヨコ豆生産の発展を支援し、これは「ペプシコ財団」のヒヨコ豆関連イニシアティブの持続可能性につながっています。

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生活協同組合の組合員とアグリビジネスの間の透明性を実現する「SAP」のソフトウェア

 「SAP」の「バーチャル・コープ」は、小規模農家を含む農業サプライチェーンのトレーサビリティーと効率性を高めます。このドイツのソフトウェア会社は、「ドイツ技術協力公社」(Deutsche Gesellschaft für Internationale Zusammenarbeit GmbH)と連携し、ガーナとブルキナファソでカシューナッツとシアバターのバリューチェーンにこのシステムを導入しました。このシステムは小規模農家を、加工会社、卸売業者、小売業者と結び付けます。このシステムによりこれまでに約1000トンの農産物が取引され、1万2000件 の 取 引が 電 子 的に処 理されました。7000人以上の小規模農家が透明性の向上と支払いの迅速化の恩恵を被り、サプライチェーン全体が完全に追跡可能となりました。出典:「African Cashew initiative: cooperation with SAP」GIZ(2012年)

実 施 サ ポ ー ト5

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さらなる機会 現場レベルでのインクルーシブビジネス実施サポートは依然として不十分です。一般的に取引コストは非常に高く、ビジネスの採算が取れないこともよくあります。多くの場合、企業は市民社会組織や開発機関の支援に頼らざるを得ません。しかし、これらの機関は自らの目的や活動基準を追求するため、支援が困難な場合もあります。より専門的なビジネス支援制度を構築することにより、ビジネスの実施ははるかに容易になります。

研究機関は部門横断的なパートナーシップの効果的なガバナンス構造について研究するべきである 民間セクター以外のビジネスパートナーはしばしば、ビジネスに不可欠な能力を提供してくれますが、こうした部門を超えたパートナーシップはビジネスにかなりの複雑性と管理コストをもたらす場合があります。こうした部門を超えたパートナーシップの基盤となるガバナンス構造については、まだあまり理解が進んでいません。こうしたパートナーシップの統治方法、ならびに有効な手段やそうでない手段について、さらなる研究が必要です。

開発機関と政府は、既存のビジネス開発サービスにおいてインクルーシブビジネスの主流化を進めるべきである 多くの開発機関と政府はすでに、民間セクタ開発プログラムの伝統的な要素である「ビジネス開発サービス」(Business Development Services: BDS)を通じて、中小零細企業へのビジネス設立支援を提供しています。こうした既存のサービスをさらに発展させて、インクルーシブビジネス開発のための特別な支援を含めることが可能です。そのためには、社会的・環境的成果を明確に重視することが求められます。

市民社会組織と開発機関は、現地のサービス提供者の構築を支援することができる 市民社会組織と開発機関は、自らビジネス実施サービスを提供する代わりに、そうしたサービスを独立的・商業的方法で提供できるよう現地主体を訓練することに力を入れることができます。サービスを現在提供しているものの、求められる企業基準に自らのプロセスを適応させることが難しいと考える市民社会組織から、こうしたサービス企業を分離独立させることも可能です。

政府は一般的なビジネス環境を改善することにより、インクルーシブビジネスの実施を促進することができる 道路や物流システムの改善は、輸送コストの削減に貢献し、低所得コミュニティ、特に農村地域への参入をより容易にします。一般的な教育や職業訓練の改善は、社員の能力開発や意識向上に取り組む企業の負担を減らします。

携帯電話ベースの情報通信技術に関しては、大きな支援機会が未開拓のまま残されている これには、大企業のICTシステムに統合可能な小規模ビジネスの倉庫管理・会計システムが含まれます。数多くのICTソリューションを自由に使えるようになれば、小規模ビジネスは在庫を管理し、物品や資金の流れを追跡し、より効率的な計画を立て、他者と情報を交換することが可能になります。

ゲリー・ヴァン・デン・ホーテン氏Gerry Van Den HoutenSABMillerアフリカ 企業開発部長

 「SABMiller」は世界第2位のビール会社です。同社は、ジンバブエ、ウガンダ、モザンビーク、タンザニアなどの数万人の小規模農家を含む、アフリカ全域10万人の農業直接雇用を支えています。

仕入れ先である小規模農家との取引や物流をどのように組織化しているのですか? 本来、SABMillerのような企業が非正規経済に属する仕入れ先と取引をするのは容易なことではありません。また、離

れた場所からこうした取引を行うことは絶対に不可能で、現場における永久的なプレゼンスが必要です。ですから、いくつか微調整を施した末に「ハブアンドスポーク」モデルを編み出しました。細部は地域によって異なりますが、一貫した原則が存在します。それは、ひとりの商業的農家がハブの中心となって、約100人の小規模農家と協力すると

いうものです。この商業的農家は、当社と小規模生産者との間の仲介者としての役割を果たします。場所によっては商業的農家が全く存在しないこともありますが、その場合、当社は時に専門的な農業サービス提供者の手を借りて、「指導的農家」を特定します。

御社は小規模農家に研修や支援を提供していますか? 商業的農家は当社のビジネスに刺激を受けます。そして彼らが、小規模農家に収穫量の拡大や新種のテストなどについての研修や支援を提供します。

御社は小規模農家への資金提供に関与していますか? 取引レベルでは、SABMillerの相手は主に普通銀行です。当社は、個々の小規模農家よりも大きな影響力を持っていますので、彼らへの融資や信用に関してより良い条件を獲得することができます。しかし、金融は当社の本業ではありませんので、それ以上の関与はしていません。

インタビュー

「場所によっては商業的農家が全く存在しないこともありますが、その場合、当社は時に専門的な農業サービスプロバイダーの手を借りて、

『指導的農民』を特定します」

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6インクルーシブ

ビジネスのエコシステムの構築

 低所得市場への進出、またはインクルーシブビジネスの設立を考えているアフリカの起業家や企業は、さまざまな支援を利用することができます。インクルーシブビジネス・アプローチの気運が高まるなか、国際主体により提供される支援を補完する現地の支援プログラムが出現しつつあります。起業家や企業は今こそ、こうしたチャンスをつかみ、低所得層の収入、商品とサービス、選択へのアクセスを生む収益性の高いビジネスを生み出すべきです。

 同時に、現在のインクルーシブビジネス支援の状況にはムラがあり、インクルーシブビジネスの成長とその影響力の強化のために改善すべき点が数多くあります。「M-Pesa」による携帯電話を介した電子マネー・サービスは、アフリカにおけるインクルーシブビジネスの代表例ですが、右頁の事例研究からもわかる通り、南アフリカでは同じような成功には至っていません。インクルーシブビジネス・エコシステムの違いが、ケニアではM-Pesaの成功を後押しし、南アフリカでは成長を阻害しているようです。

 エコシステムを構築することで、インクルーシブビジネスのエコシステムを構成するさまざまな主体の結合が可能になります。各主体は、それぞれ独自の能力を生かして、ビジネスを成功に導くエコシステムの構築に貢献することができます。本章の後半で、具体的な行動についての提言を示します。

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畑仕事をするリベリアの女性。インクルーシブビジネスのエコシステムの構築により、彼女の畑の収穫量は大幅に増加しました

ケニアと南アフリカの「M-Pesa」 「M-Pesa」は、携帯電話を介した電子送金システムです。ケニアの大手モバイルネットワーク・オペレーターである「Safaricom」は、「ボーダフォン・グループ」と英国国際開発省(DFID)からの資金提供を受けてM-Pesaの技術を開発し、2007年にサービスを開始しました。このサービスはたちまちケニアの金融サービス市場で大きなシェアを獲得し、2011年には契約者数が1500万人に達しました。その後、タンザニアとアフガニスタンでも各国版のM-Pesaサービスが開始され、成功をおさめています。

 しかし南アフリカでは、M-Pesaはこれらの国々のような成功を遂げることができませんでした。2010年、ボーダフォンは大手金融機関「Nedbank」と連携し、南アフリカにM-Pesaシステムを導入しました。2国間における違いをもたらした要因のひとつは、両国の規制環境の違いです。南アフリカの顧客登録と流通業者承認に関する規則は、ケニアに比べてはるかに厳格です。その結果、M-Pesaのサービスは、ケニアでは何万もの非正規業者のネットワークを通じてほぼ普遍的に利用可能であるのに対して、南アフリカでは主に数百の「ボーダコム」正規代理店とNedbankの支店や現金支払機でしか利用することができません。このため、南アフリカのほとんどの低所得コミュニティ、特に農村地域では、M-Pesaへのアクセスが物理的に困難となっているのです。

 また、南アフリカでは犯罪率が高いため、非正規小売業者は犯罪者の標的となることを恐れ、現金や預金の引出所となりたがりません。さらに、南アフリカ版M-Pesaは、ケニアのそれとは異なり、外部からの資金提供や支援を受けていません。そのため、検証や現地のニーズと環境への適応を進める余裕がありませんでした。

 南アフリカでは2012年末現在、正規の銀行サービスを利用できていないとされる推定1200万人のうち、M-Pesaに契約している人は、わずか120万人にとどまっています。

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「Safaricom」は、ブランドと市場を確立するために、追加の通信時間や各種サービスなどの特典をM-Pesaの顧客に提供しています

事例研究:M-Pesa

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エコシステム構築による効果を示す3つの事例 近年、いくつかのインクルーシブビジネスのエコシステムの構築が進められ、そのいくつかは大きな成果を上げています。これらの取り組みは、低所得者を取り入れたエコシステムの構築における長年の研究と経験に基づいており、その中でも特筆すべきものが「貧困者に益する市場システムの構築」とバリューチェーン・アプローチです93。表3では、異なる国の異なる部門における3つの取り組みを紹介しています。

・「 ケ ニ ア 金 融 部 門 深 化 イ ニ シ ア テ ィ ブ 」(Kenyan Financial Sector Deepening Initiative: FSD)は、特に低所得者を対象に、金融サービスへのアクセス拡大を目指しています。この取り組みは、さまざまな政府機関、銀行、マイクロファイナンス機関、金融サービスの非正規提供者、教育・研究機関との協力により、金融市場における正規・準正規包括率を、2006年の26%から2009年には40%にまで改善することに貢献しました。

・ ガーナとケニアの「アフリカに光を」(Lighting Africa)プログラムは、照明器具の品質保証マーク、製品とサービス提供者のデータベース、会員企業への技術支援、調査、政策対話を提供することにより、照明器具の市場条件を改善しています。その結果、2500社を超える企業がウェブサイトを通じて会員登録し、2012年4月までにアフリカの250万人の人々に照明器具が提供され、1900万人の人々を対象に消費者教育キャンペーンが実施されました。

エコシステムの構築が各機能の結合を実現する

 多くの専門家の意見では、「調整」がインクルーシブビジネスのエコシステムの構築における中心的課題です。インクルーシブビジネスを促進する条件を整えるためには、4つの支援機能のすべてが揃っていなければなりません。これらの機能を同時に発達させるためには、何らかの方法で各主体の活動を調整する必要があります。しかし、調整自体にも費用がかかります。したがって何らかの主体が、パズルのすべてのピースをひとつにまとめる「結合組織」の役割を果たさなければなりません。開発関係機関は、包括的な市場の開発に取り組むなかでこの必要性を認識し、こうした調整機能の開発に投資し始めています。

図19:インクルーシブビジネスのエコシステムには各機能を結合する働きが必要

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「アフリカに光を」は、起業家や消費者の利益のために、「Barefoot Power」のような企業に対し、市場拡大のためのさまざまな支援を提供しています

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・「アフリカ綿栽培競争力強化イニシアティブ」(COMPACI)は、アフリカ6か国で、小規模な綿栽培農家や協同組合を、アグリビジネスや繊維会社、開発関係機関、市民社会組織、政府と結び付け、持続可能な綿産業のバリューチェーンの構築に取り組んでいます。この取り組みでは、サハラ以南アフリカの240万人の人々を支援しており、中には綿生産のみで純利益が45%増加した人もいます。

 これら3つの取り組みはすべて、インクルーシブビジネスを促進するエコシステムの構築において大きな成果を上げており、その結果、多くの低所得者が生産者、消費者、被雇用者、起業家として、より大きなバリューチェーンに組み込まれました。表3は、「インクルーシブビジネスのエコシステムの構図」の機能ごとに、各取り組み内容をまとめたものです。

エコシステム構築の成功要因 前述の3つの取り組み内容は異なりますが、共通するパターンがいくつか見られます。

 3つの取り組みはすべて、厳密に実態に基づいています。市場の状況や既存のエコシステムに足りない機能に関する現地調査を踏まえたうえで、イニシアティブの全体設計や個々の活動が決定されています。この情報は、オンライン・データベースを通じて、または一定の基準として体系化された形で、一般に公開されています。例えば、「アフリカに光を」のデータベースには照明器具を提供している3000社が登録されています。FSDは、「FinAccess」の調査を公表しています。COMPACIは、成功事例に基づいた持続可能な綿生産の基準を確立しました。

 これら3つの取り組みでは、こうした実態に基づき、情報提供と関係者間の対話の機会を設定することを通じ、さまざまなレベルで政策立案者と緊密に連携して、政策決定を支援しています。FSDは、ケニアの各省庁や規制当局と協力し、COMPACIは、綿産業の戦略に対する影響力を持つ た め に、「 包 括 的 ア フ リ カ 農 業 開 発 プ ロ グ ラ ム 」

(Comprehensive Africa Agriculture Development Programme: CAADP)の枠組みのもとで活動しています。そして「アフリカに光を」は、国連「クリーン開発メカニズム」(CDM)理事会に対し、クリーンなオフグリッド照明によるクレジット(排出削減量)取引の方法論と「アフリカに光を」の品質保証枠組みを厳密に整合させるよう働きかけました。

 資金の大部分は、研究やプロジェクト開発のために活用されます。この研究やプロジェクト開発には、革新的な資金調達モデルの開発も含まれます。「アフリカに光を」は、輸入業者や販売業者のための貿易金融と資金提供モデルを確立しました。COMPACIは、小規模農家が持続可能な農業慣行に切り替えることができるよう、少額融資を提供しています。これらの取り組みは、商業金融と競合するような融資や助成金を提供するのではなく、「アフリカに光を」の事例で見られるように、業界基準を確立してビジネスの信用度を高めるといった方法などにより、資金調達を支援します。

 これらの取り組みが果たす重要な役割のひとつは、新たな仲介機関を設立する、または既存の組織内における実行支援能力を強化することです。FSDは、保険会社による家畜保険商品の開発を支援し、マイクロファイナンス機関が銀行としての地位を獲得できるよう協力しました。また、少額貯蓄商品に関する研修を実施する「MicroSave」のような仲介機関の能力開発にもあたりました。「アフリカに光を」は、情報共有プラットフォームと品質保証プロセスを設立しました。また、照明器具の購入資金を融資するためのマイクロファイナンス商品の提供方法について、マイクロファイナンス機関に対し、研修を実施しています。COMPACIは、その認証基準の遵守を徹底するために、契約綿生産パートナーに対し、持続可能な農業に必要とされる研修の機会と資源を農家に提供するよう求めています。

 3つの取り組みはすべて、このような包括的なアプローチを通じて、目覚ましい成功を遂げています。わずか2、3年の間に、何百万もの低所得世帯の生活に影響を及ぼし、計画よりもはるかに早く目標を達成しました。これらの取り組みは、インクルーシブを支援するエコシステムの構築が大規模なインクルーシブビジネスの実現を可能にし、多くの人々に所得・雇用・消費の機会をもたらすことによって包括的な経済成長を達成することができるということを示す明確な証拠なのです。

 このように、エコシステムの構築がインクルーシブビジネスのエコシステムをひとつにまとめる結合機能を生むことは明らかです。

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ケニア金融部門深化イニシアティブ(Kenya Financial Sector Deepening Initiative: FSD) アフリカに光を(Lighting Africa) 包括的アフリカ綿栽培イニシアティブ

(Comprehensive Africa Cotton Industry Initiative: COMPACI)

分野 金融サービス エネルギー 農業

国 ケニア ケニア、ガーナ。現在、タンザニア、エチオピア、セネガル、マリに拡大中。

サハラ以南アフリカ6か国(ベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、マラウイ、モザンビーク、ザンビア)。

開始年 2005年 2005年 2008年

内容 ケニアの金融市場の開発支援と貧困層への金融機会等の提供を目的とした独立信託。さまざまな分野の60の組織からなるネットワークとの連携によって、この目的を追求している。

アフリカにおいて安全で手ごろな価格の最新オフグリッド照明システムの持続可能な市場を構築するために、民間セクターを活用している。

アフリカの小規模な綿栽培農家が、自らの経済状態を改善する持続可能な農業を実施できるよう支援。「コットン・メイド・イン・アフリカ」(Cotton made in Africa: CmiA)製品の購入者は、認証ラベルを使用するためにライセンス料を支払う。

支援機関 ・ケニア政府・ 開発関係機関(AFD、DFID、Sida、世界銀行、ビル&メリ

ンダ・ゲイツ財団)

IFC、世界銀行 Trade Foundation、BMZ、ビル&メリンダ・ゲイツ財団

インセンティブ ・ケニア政府に対し、同国のビジネス環境を強化する方法について助言を行った。情報を提供し、マルチステークホルダー協議を促進。

・ノンバンクに銀行チャネルを開放する政策オプションについての分析を委託することによってケニア中央銀行を支援した。この分析結果はステークホルダー作業部会で提示された。

・「SACCO規制当局」(SACCO Societies Regulatory Authority: SASRA)の設立を支援し、「準正規の貯蓄信用協同組合」

(Semiformal Savings and Credit Cooperatives: SACCOs)を正規化。

・信用調査所の設立と管理に関する規則について助言を提供。

・8か国におけるオフグリッド照明ソリューションへの政策・規制の障壁を明らかにし、代替となる政策提言を実施。研究成果について、政府やその他の分野の要人と議論を実施。この議論の結果、2か国がオフグリッド照明に関する政策を改正。

・オフグリッド照明を農村部のエネルギー・電化プログラムに組み込むために、アフリカ4か国の政府と直接協力。

・国連CDM理事会に対し、そのクリーンなオフグリッド照明によるクレジット(排出削減量)取引の方法論と「アフリカに光を」の品質保証枠組みを厳密に整合させるよう説得。

「包括的アフリカ農業開発プログラム」(Comprehensive Africa Agriculture Development Programme: CAADP)の枠組みの中で活動し、綿農業の開発を通じた貧困緩和について、アフリカ諸国の政府に助言。

情報 「FinAccess」調査を実施。需要調査では、貧困層への金融機会の提供の現状と傾向を把握。供給調査では、付随的な金融サービス分野の地理的範囲と市場規模についての最新情報を毎年提供。

・業界が情報に基づいて決断を下せるように、市場調査を実施し、流通ネットワークを分析し、市場動向を評価。

・サービスを宣伝し、ビジネスチャンスを特定するためのオンライン・プラットフォームを提供。

フォーカスグループ・インタビューやサプライチェーンに沿った定量的調査を活用して、中立的な研究機関による独立したプロジェクト監視・評価を手配。

投資 ・プロジェクトや調査のための資金を提供。・ 中小企業のためのサプライチェーン金融商品を開発するた

め、銀行と連携。

・生産能力向上のため、貿易金融機関を設立。・輸入業者や販売業者が、増加する需要に見合う安定して、持

続可能な商品供給を行えるようにするための資金供給制度を設立。

・小規模農家が開業時の生産に必要な資金を調達できるよう、少額融資を提供。

・地域の検証機関を強化するための投資を実施。

実施サポート ・家畜保険商品などの商品開発のため、専門的な支援を提供。・金融機関が銀行としての地位を獲得できるよう協力。・マイクロファイナンス機関に対して研修やさまざまな支援

を提供する「MicroSave」などの仲介機関の能力を開発する。また、商業銀行やコミュニティ基盤の組織など、サービスを提供するリテール金融機関とも協力。

・「金融教育・消費者保護パートナーシップ」(Financial Education and Consumer Protection Partnership: FEPP)を通じて、金融リテラシーの向上に貢献。

・製品の品質と性能を保証する生産者品質保証マークを導入した。ナイロビ大学の研究室と協力して、製品テスト、品質評価、テスト結果の分析に関する研修を実施。セネガルのダカールに、初歩的なスクリーニングを実施するための低コストの試験センターを設立。

・会員企業に、製品デザイン、定期的な製品導入実験、技術的な能力開発、企業間取引の機会、地元流通業者への仲介などの支援と助言を有料で提供。

・消費者金融について、マイクロファイナンス機関に対して研修を実施。「アフリカに光を」の品質保証制度により、マイクロファイナンス機関は融資の安全性を向上。

・ケニアとガーナで、消費者教育キャンペーンを実施。現在までに合わせて1000回の村落フォーラムが実施された。

・特徴的な赤いラベルのCmiA認証の管理とマーケティングを実施。

・契約綿生産パートナーは、持続可能な綿栽培を実施するために必要な研修と資源を農家に提供。

・第三者機関(現在は「EcoCert」と「AfriCert」)が、CmiA要件の遵守を実現するため、農家と契約綿生産パートナーの監査を実施。

・小売業パートナーが必要な綿を必要な時に入手できるよう、紡績工場や繊維メーカーのネットワークへの容易なアクセスを提供。

成果 ・正規・準正規金融市場への参加率が、2006年の26%から2009年には40%に改善された。

・ケニアにおいて金融サービスから完全に疎外されている人の割合は、南アフリカを除くアフリカ諸国の中で最も低い。

・2500社以上の企業がウェブサイトで会員登録。・2012年4月までに、アフリカの250万の人々に照明器具が

提供された。・1900万人を対象に、消費者教育キャンペーンが実施された。・7つのマイクロファイナンス機関が、LAの品質テストに合

格したオフグリッド照明器具を購入するための少額融資を消費者に提供。ケニアでは、ソーラーランタンを購入する消費者に、41万1000ドルの資金供給と融資が提供された。

・COMPACIは、契約農家の数と綿実生産量の急増を報告しており、価格も史上最高水準。

・サハラ以南アフリカの240万人の人々を支援しており、中には綿生産のみで純利益が45%増加した人もいる。

・当初は民間企業がこの取り組みに必要な資金の3分の1を提供していたが、その割合は2015年までに50%に増加する見込み。

出典 FSDウェブサイト(www.fsdkenya.org)、および年次報告書 「アフリカに光を」ウェブサイト(www.lightingafrica.org)、および年次報告書

「COMPACI」ウェブサイト(www.compaci.org)

表3:3つのエコシステム構築の取り組みの比較

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ケニア金融部門深化イニシアティブ(Kenya Financial Sector Deepening Initiative: FSD) アフリカに光を(Lighting Africa) 包括的アフリカ綿栽培イニシアティブ

(Comprehensive Africa Cotton Industry Initiative: COMPACI)

分野 金融サービス エネルギー 農業

国 ケニア ケニア、ガーナ。現在、タンザニア、エチオピア、セネガル、マリに拡大中。

サハラ以南アフリカ6か国(ベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、マラウイ、モザンビーク、ザンビア)。

開始年 2005年 2005年 2008年

内容 ケニアの金融市場の開発支援と貧困層への金融機会等の提供を目的とした独立信託。さまざまな分野の60の組織からなるネットワークとの連携によって、この目的を追求している。

アフリカにおいて安全で手ごろな価格の最新オフグリッド照明システムの持続可能な市場を構築するために、民間セクターを活用している。

アフリカの小規模な綿栽培農家が、自らの経済状態を改善する持続可能な農業を実施できるよう支援。「コットン・メイド・イン・アフリカ」(Cotton made in Africa: CmiA)製品の購入者は、認証ラベルを使用するためにライセンス料を支払う。

支援機関 ・ケニア政府・ 開発関係機関(AFD、DFID、Sida、世界銀行、ビル&メリ

ンダ・ゲイツ財団)

IFC、世界銀行 Trade Foundation、BMZ、ビル&メリンダ・ゲイツ財団

インセンティブ ・ケニア政府に対し、同国のビジネス環境を強化する方法について助言を行った。情報を提供し、マルチステークホルダー協議を促進。

・ノンバンクに銀行チャネルを開放する政策オプションについての分析を委託することによってケニア中央銀行を支援した。この分析結果はステークホルダー作業部会で提示された。

・「SACCO規制当局」(SACCO Societies Regulatory Authority: SASRA)の設立を支援し、「準正規の貯蓄信用協同組合」

(Semiformal Savings and Credit Cooperatives: SACCOs)を正規化。

・信用調査所の設立と管理に関する規則について助言を提供。

・8か国におけるオフグリッド照明ソリューションへの政策・規制の障壁を明らかにし、代替となる政策提言を実施。研究成果について、政府やその他の分野の要人と議論を実施。この議論の結果、2か国がオフグリッド照明に関する政策を改正。

・オフグリッド照明を農村部のエネルギー・電化プログラムに組み込むために、アフリカ4か国の政府と直接協力。

・国連CDM理事会に対し、そのクリーンなオフグリッド照明によるクレジット(排出削減量)取引の方法論と「アフリカに光を」の品質保証枠組みを厳密に整合させるよう説得。

「包括的アフリカ農業開発プログラム」(Comprehensive Africa Agriculture Development Programme: CAADP)の枠組みの中で活動し、綿農業の開発を通じた貧困緩和について、アフリカ諸国の政府に助言。

情報 「FinAccess」調査を実施。需要調査では、貧困層への金融機会の提供の現状と傾向を把握。供給調査では、付随的な金融サービス分野の地理的範囲と市場規模についての最新情報を毎年提供。

・業界が情報に基づいて決断を下せるように、市場調査を実施し、流通ネットワークを分析し、市場動向を評価。

・サービスを宣伝し、ビジネスチャンスを特定するためのオンライン・プラットフォームを提供。

フォーカスグループ・インタビューやサプライチェーンに沿った定量的調査を活用して、中立的な研究機関による独立したプロジェクト監視・評価を手配。

投資 ・プロジェクトや調査のための資金を提供。・ 中小企業のためのサプライチェーン金融商品を開発するた

め、銀行と連携。

・生産能力向上のため、貿易金融機関を設立。・輸入業者や販売業者が、増加する需要に見合う安定して、持

続可能な商品供給を行えるようにするための資金供給制度を設立。

・小規模農家が開業時の生産に必要な資金を調達できるよう、少額融資を提供。

・地域の検証機関を強化するための投資を実施。

実施サポート ・家畜保険商品などの商品開発のため、専門的な支援を提供。・金融機関が銀行としての地位を獲得できるよう協力。・マイクロファイナンス機関に対して研修やさまざまな支援

を提供する「MicroSave」などの仲介機関の能力を開発する。また、商業銀行やコミュニティ基盤の組織など、サービスを提供するリテール金融機関とも協力。

・「金融教育・消費者保護パートナーシップ」(Financial Education and Consumer Protection Partnership: FEPP)を通じて、金融リテラシーの向上に貢献。

・製品の品質と性能を保証する生産者品質保証マークを導入した。ナイロビ大学の研究室と協力して、製品テスト、品質評価、テスト結果の分析に関する研修を実施。セネガルのダカールに、初歩的なスクリーニングを実施するための低コストの試験センターを設立。

・会員企業に、製品デザイン、定期的な製品導入実験、技術的な能力開発、企業間取引の機会、地元流通業者への仲介などの支援と助言を有料で提供。

・消費者金融について、マイクロファイナンス機関に対して研修を実施。「アフリカに光を」の品質保証制度により、マイクロファイナンス機関は融資の安全性を向上。

・ケニアとガーナで、消費者教育キャンペーンを実施。現在までに合わせて1000回の村落フォーラムが実施された。

・特徴的な赤いラベルのCmiA認証の管理とマーケティングを実施。

・契約綿生産パートナーは、持続可能な綿栽培を実施するために必要な研修と資源を農家に提供。

・第三者機関(現在は「EcoCert」と「AfriCert」)が、CmiA要件の遵守を実現するため、農家と契約綿生産パートナーの監査を実施。

・小売業パートナーが必要な綿を必要な時に入手できるよう、紡績工場や繊維メーカーのネットワークへの容易なアクセスを提供。

成果 ・正規・準正規金融市場への参加率が、2006年の26%から2009年には40%に改善された。

・ケニアにおいて金融サービスから完全に疎外されている人の割合は、南アフリカを除くアフリカ諸国の中で最も低い。

・2500社以上の企業がウェブサイトで会員登録。・2012年4月までに、アフリカの250万の人々に照明器具が

提供された。・1900万人を対象に、消費者教育キャンペーンが実施された。・7つのマイクロファイナンス機関が、LAの品質テストに合

格したオフグリッド照明器具を購入するための少額融資を消費者に提供。ケニアでは、ソーラーランタンを購入する消費者に、41万1000ドルの資金供給と融資が提供された。

・COMPACIは、契約農家の数と綿実生産量の急増を報告しており、価格も史上最高水準。

・サハラ以南アフリカの240万人の人々を支援しており、中には綿生産のみで純利益が45%増加した人もいる。

・当初は民間企業がこの取り組みに必要な資金の3分の1を提供していたが、その割合は2015年までに50%に増加する見込み。

出典 FSDウェブサイト(www.fsdkenya.org)、および年次報告書 「アフリカに光を」ウェブサイト(www.lightingafrica.org)、および年次報告書

「COMPACI」ウェブサイト(www.compaci.org)

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誰もが貢献可能 インクルーシブビジネスのエコシステムの構築は複雑な作業ですが、低所得層における持続的な雇用創出、成長、および生活条件の改善といった形で見返りが得られます。インクルーシブビジネスの成功を実現するうえで、「情報」

「インセンティブ」「投資」「実施サポート」という4つの支援機能が重要であるということが明らかになっています。表4は、これまでの各章で特定されたインクルーシブビジネスのエコシステム構築における貢献機会を主体別にまとめたものです。アフリカでインクルーシブビジネスのエコシステムを構築するためには、企業だけでなくすべての社会的主体において、起業家精神と革新的ソリューションが求められます。

 インクルーシブビジネスを推進する企業や起業家は、以下の方法によって、エコシステム開発の具体化と推進にも関わる必要があり、このプロセスを促進することが可能です。

・自らの課題を公表すること。結局のところ、支援環境は起業家や企業の実際のニーズに応えるものでなければなりません。問題点や失敗、成功やその要因についてオープンに話すことにより、学習文化が促され、支援機関に不可欠な情報が提供されます。

・支援の影響を受けるのではなく、支援を管理すること。支援の影響を受ける危険性は、特に新興企業や社会事業において顕著ですが、大企業であっても支援機関の優先事項やプログラムが意思決定に影響を及ぼす場合があります。しかし、ビジネスは経済的な意味をなし、真の価値を生み出してこそ持続可能なものとなります。したがって企業や起業家は、自らが必要とする具体的支援について積極的な姿勢で臨むべきです。

・効果的なソリューションをともに生み出すために、政府やその他の支援機関との対話を行うこと。インクルーシブビジネスの事業者だけが、支援政策やプログラムが実際に役立つか、または市場に好ましくない歪みをもたらすかを見極めることができます。ソリューションの構築に関わることで、この深い判断力をインクルーシブビジネスのエコシステムの構築プロセスに直接活かすことができます。

 実際に企業や起業家は、革新的なビジネスモデルを生み出すだけでなく、それを取り巻くエコシステムを組織化し、具体化する「エコシステム起業家」とならなければなりません。

ヘラード・クッツェー氏Gerhard CoetzeeAbsa Consumer Bankingインクルーシブ・バンキング戦略イニシアティブ主任プレトリア大学アフリカ・インクルーシブ・バンキング・センター所長

 「バークレイズ銀行」の子会社である「Absa Group Limited」(Absa)は、南アフリカ最大の金融サービスグループのひとつです。そのインクルーシブ・バンキング部門は、低所得顧客に的を絞ったサービスを提供しています。

現在のインクルーシブビジネスの支援環境において欠けているものは何だとお考えですか? さまざまなレベルでの支援が必要です。制度・政策レベルでは、今よりもはるかにインクルーシブビジネスを促進する状況を作り出す必要があります。例えば、小規模ビジネスに事業を外注しようとすると、そうした小規模ビジネスを登録するためにおよそ150段階もの手続きが必要となります。これではあまりに複雑すぎます。 産業レベルでは、適切な研修・教育支援が不可欠です。ほとんどの大企業は、技術革新と投資によって自らこの課題を乗り越えます。しかし、インクルーシブビジネスを実行したくても、そうした課題に対処する能力を持たない中小規模のビジネスにとって問題となっているのです。 企業レベルでは、「アメ」が重要です。Absaのような大企業の場合でも、少額の助成金がインクルーシブビジネスのきっかけとなることもあります。なぜなら、インクルーシブビジネスに投資するよう上層部を説得するうえでそれが役立つからです。そのおかげで私は、Absa内ではるかに収益性の高い他のビジネスモデルと対抗することなく事業に着手することができ、実例を示すことができるわけです。そしてこれがひとたび機能すれば、私は根拠をもって競争を始めることができるのです。

インクルーシブのエコシステム構築の成功事例とはどのようなものでしょうか? インクルーシブビジネスを実施しようとする企業が自ら支援を求めることが重要であり、その逆ではいけません。例えば

「Equity Bank」は、新たなビジネスラインを生み出すために、助成金をうまく活用しています。同行はモバイルバンキング事業の構築を開始した際、このテーマに関心を持っていた「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」にプロジェクトの提案を行いました。このように、企業は支援を活用することで方向性を見失うのではなく、自らが何を必要としているのかを正確に把握したうえで、支援システムを活用しなければなりません。

どのような支援が提供される機会があるでしょうか? 企業はお互いから学ぶために、もっと積極的に情報共有を行う必要があります。仲介機関は、情報の開放を促進することができます。現在、競争があまりに重視され、連携が軽視されがちです。インクルーシブビジネスとそのエコシステムを構築するために、企業はもっと連携し、競争を後回しにする必要があります。仲介機関は、事例研究の共有やノウハウの交換を行うフォーラムなどの開催によって、「連携した競争」を促す雰囲気作りに貢献することができます。

インタビュー

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主体 情報 インセンティブ 投資 実施サポート

企業 ・低所得市場に特化した市場調査サービスを提供する。

・データ収集のためのモバイルアプリケーションを開発・提供する。

・インクルーシブビジネスの現地での開発を可能にするため、技術ライセンスを提供する。

・非正規市場との連携を可能にするインセンティブを設定する(調達方針など)。

・低所得者層を取り込む事業に見返りを与える基準を設定・施行する。

インクルーシブビジネス投資基金を立ち上げる。

・支援サービスを提供する零細企業や小企業を分離独立させる。

・低所得層におけるビジネスを促進するICTシステムを開発する。

政府 ・ 市場データ(世帯調査データなど)への民間企業のアクセスを可能にする。

・ 公的研究機関(農業研究機関など)の民間企業との協力を奨励する。

・インクルーシブビジネスの推進に対する表彰制度を確立する。

・インクルーシブビジネスを促進する政策により、これを促進する環境を構築する。新たな市場を生み出すため、「スマート補助金」を活用する。

・「インクルーシブ調達」など、インクルーシブビジネスの主要な調達者としての役割を果たし、供給業者の能力を開発する。ごみ収集などのサービスの外注を通じてインクルーシブビジネスの構築を促す。

投資家のリスクを軽減する保証基金を設立し、インクルーシブビジネスにより多くの資本を呼び込む。

出張サービスなど、公的機関が民間企業と協力できるようにするための枠組みを作る。

開発関係機関 ・市場調査、およびインクルーシブビジネス・モデルとエコシステム開発に関する調査に資金を提供する。

・開発途上国の調査・助言サービスの開発を支援する。

・「インクルーシブ調達」など、インクルーシブビジネスの主要調達者としての役割を果たし、供給業者の能力を強化する。

・基準の策定または市場インフラへの投資により、各主体が連携するための枠組みに資金を提供するとともにその促進を行う。

・専門的な助言や政策対話の場を提供することを通じて、インクルーシブビジネスを支援する。

・現地の監視・認証機関の育成を支援する。

イ ン キ ュ ベ ー タ ー や ベ ンチャー・キャピタル基金など、現地仲介機関を構築する。

・チャレンジ基金や同様の資 金 提 供 プ ロ グ ラ ム を、現場レベルの技術支援と結び付ける。

・現地のマーケティングや物流などのインクルーシブ ビ ジ ネ ス を 支 援 す るサービスの設立に関して、起業家を支援する。

市民社会組織 ・市場調査サービスを行うための現地起業家の能力を強化する。

・低所得コミュニティにおける市場調査を促進する。

基準・認証システムの開発と導入を支援する。

小規模・零細ビジネスの投資受け入れ能力を強化する。

現地のマーケティングや物流などのインクルーシブビジネス支援するサービスの設立に関して、起業家を支援する。

研究機関 ・インクルーシブビジネスの仕組みと、それをどう支援できるかについて、地域に特化したノウハウを構築する。

・ 管理者教育と合わせ、インクルーシブビジネスや起業についての研修を実施する。

・ 業績評価などにおいてインクルーシブビジネス事業者に協力する。

インセンティブの目標を正しく設定できるよう、より良い包括性評価尺度を作る。

社会的影響の測定において、インクルーシブビジネスを支援する。

分 野 を 超 え た パ ー ト ナ ーシップの効果的なガバナンス構造について考察する。

仲介機関 ・各主体間においてインクルーシブビジネスを推進する。

・複数の企業が研究コストを共有できるようにするための枠組みを確立する。

・各種認証の標準化を促進するマルチステークホルダー・プラットフォームを確立する。

インクルーシブビジネスを促進する政策を提唱するロビー団体を結成する。

ペイシェント・キャピタルとインクルーシブビジネスの仲介役となる。

既存サービスの透明性を高める。

表4:主体および機能別に見たエコシステム構築への貢献機会

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Page 72: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

行動要請 何百万人もの若いアフリカの人々の活力を活かして、インクルーシブビジネス・アプローチをさらに前進させ、アフリカの富を実現するためには、すべての主体がより深く連携し、調整を進めなければなりません。インクルーシブビジネスのエコシステム構築の取り組みの成功事例では、主体間の調整によって、エコシステムの成果が迅速に得られるということが示されています。この「結合機能」を生み出すためには、資金の提供と情報の共有が極めて重要です。これまでに学んだ教訓から得られたいくつかの追加的提言を以下に示します。

・包括的な市場の創出とインクルーシブビジネスの促進を目的とした、インクルーシブビジネスのエコシステム構築のための新たな取り組みが、国・地域レベルで実行されるべきです。これらの取り組みは、新たな市場の創出に関わるさまざまな関係者を調整し、インクルーシブビジネスを推進する起業家や企業に直接的な支援を提供するものでなければなりません。

・エコシステムの構築を支援する地域・国レベルの金融支援制度が必要です。これらの制度は、インクルーシブビジネスに直接資金を提供するのではなく、大規模にインクルーシブビジネスのエコシステムを構築するための調整・情報提供・資金提供を進めるために必要な資源を提供します。これには、インクルーシブビジネスのためのインキュベーター、研究プログラム、投資ファンド、ビジネス開発サービスなどが含まれます。

・インクルーシブビジネスと市場に関する中核的研究拠点は、国・地域レベルでインクルーシブビジネス・アプローチについての知識を構築・共有することが必要です。このような拠点は、特に、既存のエコシステム構築の取り組みについての研究を行い、成功した例を文書化し、新たな取り組みの養成・調整役を務めることができます。

 「ポスト2015開発アジェンダ」の枠組みは、民間企業に対し、コアビジネスを通じて、開発目標に貢献するよう求めます。しかし、インクルーシブビジネスのエコシステムがなければ、企業がこの期待に応えることは難しいでしょう。そのため、すべての社会的主体が、インクルーシブビジネスを促す適切な環境作りと、アフリカの最大の富の源である、若く、多くの人々の活力を活かして、それぞれの役割を果たさなければならないのです。

イ ン ク ル ー シ ブ ビ ジ ネ ス の エ コ シ ス テ ム の 構 築6

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Page 73: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

付 録

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Page 74: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

1. これらの見識については、次の出版 物 に 詳 述 さ れ て い ま す。

「Creating Value for All(貧困層を対象にしたビジネス戦略 )」UNDP(2008年 )「The MDGs: Everyone’s Business(ミレニアム開発目標:全ての人々のビジネス)」UNDP(2010年)

2. 包括的な市場の育成プログラムの事例一覧からの例については、脚注で個別に詳述されたり引用されたりしていません。要約については、事例研究の付録を参照してください。

3. Equity Bank Group(エクイティ・バンク・グループ)ウェブサイト

www.equitybankgroup.com

4. 「実施サポート」(第5章)のインタビューを参照してください。

5. GIMウェブサイト www.growinginclusivemarkets.

org

6. 出典:「Tackling Barriers to Scale - From Inclusive Business Models to Inclusive Business Ecosystems(拡大への障壁と闘う—インクルーシブビジネス・モデルからインクルーシブビジネスのエコシステムへ)」クリスティーナ・グラドル、ベス・ジェンキンス(Christina Gradl and Beth Jenkins)(2011年)

7. 「African Economic outlook 2012(アフリカ経済見通し 2012年 版 )」AfDB、OECD、UNDP、UNECA(2012年)

8. 前掲書

9. 「World Economic outlook 2012(世界経済見通し 2012年版)」IMF(2012年)

10. 「African Economic outlook 2012( ア フ リ カ 経 済 見 通 し 2012年 版 )」AfDB、OECD、UNDP、UNECA(2012年)

11. 「Lions on the move - the progress and potential of African economies(動くライオン—アフリカ経済の進展と可能性)」McKinsey Global Institute

(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)(2010年)

12. これらは22か国での世帯調査に基 づ い て 算 出しまし た。「The Next 4 Billion. Market Size and Business Strategy at the Base of the Pyramid( 次 な る40 億人—ピラミッドの底辺(BOP)の市場規模とビジネス戦略)」IFCおよびWRI(2007年)を参照してください。

13. 「African Economic outlook 2012 : Promoting Youth Employment(アフリカ経済見通し 2012年版:若年雇用の促進)」AfDB、OECD、UNDP、UNECA

(2012年)

14. 前掲書

15. 「Africa Human Development Report 2012 - Towards a Food Secure Future(アフリカ人間開発報告書 2012:食糧が安定確保される未来に向けて)」UNDP(2012年)

16. State of Food Insecurity in the World 2012(世界の食料不安の現状 2012年版)」国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金

(IFAD)、世界食糧計画(WFP)(2012年)

17. 「Levels & Trends in Child Mortality(子どもの死亡に関する年間報告書)」IGME(2010年)

18. 「Africa Development Indicators Factoids 2011 - Ten Facts about Sub-Saharan Africa Compared with the World(アフ リ カ 開 発 指 標 の 疑 似 事 実 2011——世界と比較した場合のサハラ以南アフリカの10の真実)」世界銀行(2011年)

19. 「Africa at work - Job creation and inclusive growth(アフリカの雇用—雇用の創出と包括的な成長)」McKinsey Global Institute

(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)(2012年)

20. 前掲書

21. 「Regional overview: Youth in Africa(地域概要:アフリカの若者)」国連(2011年)

22. 「Education for All Global Monitoring Report 2010(万人のための教育:グローバル・モニタ リ ン グ・ レ ポ ー ト 2010)」UNESCO(2010年)

23. 「Adult and Youth literacy: Global Trends in Gender Parity(成人・若年識字率:ジェンダーパリティの世界的動向)」ユネスコ統計研究所(2010年)、UISファクトシートNo. 3、2010年9月。

24. 「Education for All Global Monitoring Report 2010(万人のための教育:グローバル・モニタ リ ン グ・ レ ポ ー ト 2010)」UNESCO(2010年)

25. 「Scaling Up Renewable Energy In Africa(アフリカでの再生可能エネルギーの拡大)」国連工業開発機関によるエネルギーデータ

(2009年)、12th Ordinary Session of the Assembly of Heads of States and Governments of the African Union(アフリカ連合の国・政府の代表者による第12回常会)、エチオピア、アディスアベバ。AfDB、AUC、UNDP、UNECAによる水と衛生設備に関するデータ(2012年)。Assessing Progress in Africa Towards the Mil lennium Development Goals(ミレニアム開発目標の達成に向けてアフリカの進捗状況を評価する)。

26. 「The Next 4 Billion(次なる40億人)」WRIおよびIFC(2008年)。所得水準に関するすべてのデータは、世界銀行のPovCalデータベースから引用しました。

http://iresearch.worldbank.org/PovcalNet/index.htm?1

27. 「World Development Report 2012(世界開発報告 2012)」世界銀行(2011年)

28. 包括的な市場の育成プログラムの事例一覧からの例については、脚注で個別に詳述されたり引用されたりしていません。要約については、事例研究の付録を参照してください。

29. Equity Bank Group(エクイティ・バンク・グループ)ウェブサイト

www.equitybankgroup.com

30. 「実施サポート」(第5章)のインタビューを参照してください。

31. GIMイニシアティブのオンライン・ケース・データベース(www.growinginclusivemarkets.org)を参照してください。

32. 「Bop Learning Lab South Africa(BOPラーニング・ラボ・サウス・アフリカ)」(2008年)

「Low Income does not mean no income(低所得とは無収入のことではない)」ファクトシート

33. 「 P o s t - 2015 M i l l enn ium Development Goals - What role for business?(ポストミレニアム開発目標—ビジネスの役割は?)」ODI(2012年)

34. 「Tackling Barriers to Scale - From Inclus ive Business Models to Inclusive Business Ecosystems(拡大への障壁と闘う—インクルーシブビジネス・モデルからインクルーシブビジネスのエコシステムへ)」クリスティーナ・グラドル、ベス・ジェンキンス(Christina Gradl and Beth Jenkins)(2011年)

35. 包括的な文献調査により400の例を特定しました。

36. 「The Fortune at the Bottom of the Pyramid(ピラミッドの底辺

(BOP)における富)」C・K・プラハラドおよびスチュアート・ハート(C.K. Prahalad and Stuart Hart)(2001年)。「The Fortune at the Bottom of the Pyramid(ピラミッドの底辺(BOP)における富 )」C・K・ プ ラ ハ ラ ド(C.K. Prahalad)(2004年)

37. 「Agriculture for Development( 開 発 の た め の 農 業 ):World Development Report( 世 界 開発報告)」。世界銀行(2008年)

38. 前掲書

39. 「The Next 4 Billion. Market Size and Business Strategy at the Base of the Pyramid(次なる40 億人—ピラミッドの底辺

(BOP)の市場規模とビジネス戦略)」WRIおよびIFC(2008年)。

40. 「Financial Inclusion in sub-Saharan Africa(サハラ以南アフリ カ の 金 融 包 摂 )」Bill and Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)および世界銀行(2012年)。Findex Notes No 04

41. 「Global Topics: Inside Africa(グローバル・トピックス:インサ イ ド・ ア フ リ カ )」Roland Berger Strategy Consultants

(ローランド・ベルガー)(2012年)

42. USAidのデータに基づく。

43. Kenya’s Ministry of Public health and Sanitation(ケニア公衆衛生省)のデータによる。

www.publichealth.go.ke

44. 「Comparative ICT Sector P e r f o r m a n c e R e v i e w 2009/2010(ICTセクターの業績比較評価2009/2010)」Research ICT Africa(リサーチICTアフリカ)エンリコ・カランドロ、アリソン・ギルワルド、ムフォ・モヨ、クリス ト フ・ ス ト ー ク(Enrico Calandro, Allison Gillwald, Mpho Moyo, and Christoph Stork)(2010年)

45. 国際電気通信連合ウェブサイト www.itu.org

46. 前掲書

47. 「Doing business in post-conflict and fragile states: Challenges and risks(紛争後の脆弱な国家でのビ ジ ネ ス:課 題 とリス ク )」DBSA(2011年)。Development Planning Division Working Paper No. 23(デベロップメント・プランニング・ディヴィジョン・ワーキングペーパーNo.23)。

48. 「The Next 4 Billion. Market Size and Business Strategy at the Base of the Pyramid(次なる40 億人—ピラミッドの底辺

(BOP)の市場規模とビジネス戦略)」WRIおよびIFC(2007年)

49. Financial Diaries( フ ァ イ ナ ンシャル・ダイアリーズ)ウェブサイト

www.financialdiaries.com

50. 「Doing Business 2013: Doing B u s i n e s s i n a M o r e Transparent World(ビジネス環境の現状2013:ビジネス環境における透明性強化)」世界銀行

(2012年)

51. 「Africa’s Private Sector: What’s Wrong with the Business Environment and What to Do About It(アフリカの民間セクター:ビジネス環境の課題と対策)」CGAD(2009年)

注 釈

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h72

Page 75: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

52. 「Doing business in post-conflict and fragile states: Challenges and risks(紛争後の脆弱な国家でのビ ジ ネ ス:課 題 とリ ス ク )」DBSA(2011年)。Development Planning Division Working Paper No. 23(デベロップメント・プランニング・ディヴィジョン・ワーキングペーパーNo.23)。

53. 「Making the Law Work for Everyone(法をすべての人々のために機能させる)」UNDPおよびUN Rule of law(国連ルール・オ ブ・ ロ ー)、Commission on legal Empowerment of the Poor(コミッション・オブ・リーガル・エンパワーメント・オブ・ザ・プア)(2008年)

54. 「Africa at work - Job creation and inclusive growth(アフリカの雇用—雇用の創出と包括的な成長 )McKinsey Global Institute

(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)(2012年)

55. 「The informal economy in Africa: Promoting transition to formality: Challenges and strategies(アフリカのインフォーマル経済:フォーマル経済への移行を促す:課題と戦略)」ILO(2009年)

56. 「The Impact of Globalization on the Informal Sector in Africa(アフリカのインフォーマルセクターにグローバリゼーションがもたらす影響)」ECA(国連アフリカ経済委員会Economic and Social Policy Division( エコノミック・アンド・ソーシャル・ポ リシ ー・デ ィヴ ィジ ョン ))、IZA(Institute for the Study of Labor(インスティテュート・フォー・ザ・スタディ・オブ・レイバー)(2006年)

57. 「Doing Business 2013: Doing Business in a More Transparent World( ビ ジ ネ ス 環 境 の 現 状 2013:ビジネス環境における透明性強化)」世界銀行(2012年)

58. 前掲書

59. 「Africa can help feed Africa - Removing barriers to regional trade in food staples(アフリカによるアフリカのための食料生産の可能性—主食の域内貿易に対する障壁を取り除く)」世界銀行

(2012年)

60. 「Sustainable Public Procurement( 持 続 可 能 な 公 共 調 達 )UN P r o c u r e m e n t C a p a c i t y Development Centre(国連プロキュメント・キャパシティ・デベロップメント・センター)、UNDP

(2012年)

61. 「Markets for Ecosystem Services -A Potential Tool for Multilateral Environmental Agreements(エコシステムサービスのための市場—多国間環境協定のための有望なツール)」IISD

(2006年)

62. 国連世界食糧計画 Purchase for Progress(前進の

ための食糧購入)プログラムのウェブサイト

  www.wfp.org/purchase-progress/overview

63. South African Social Security Agency(南アフリカ社会保障局)のウェブサイト

www.sassa.gov.za

64. 「Cash Transfers Literature Review(送金に関する文献のレビュー)」DFID(2011年)

65. 「Schooling, Income, and Sexual B e h a v i o r : T h e D e s i g n , Implementation, and Short-Term Impacts o f a CCT Programme for Schooling in Malawi(学校教育、所得、性行動:マラウィの学校教育のためのCCTプログラムの設計、実施、短期的影響)」サラ・ベアード、エフラム・チウワ、クレイグ・マッキントッシュ、バーク、オズラー(Sarah Baird, Ephraim Chirwa, Craig McIntosh and Berk Özler)(2010年 )。www.iza.org/conference_files/riskonomics2009/4990.pdf

66. 「Towards 'smart' subsidies in agriculture? Lessons from recent experience in Malawi

(「スマートな」農業補助金へ? マラウィでの最近の経験からの教訓)」。ODI(2008年)

67. 自発的炭素取引市場の概観については、WWF(2008年)。Making Sense of the Voluntary Carbon Market - A Comparison of Carbon offset Standard(自発的炭素取引市場を機能させる—カーボンオフセット基準の比較)を参照してください。

68. SAGCOTウェブサイト www.sagcot.coお よ びwww.

beiracorridor.com

69. 「Bertelsmann International Stiftung(ベルテルスマン・スティフトゥング)およびUN Global Compact(国連グローバルコンパクト)(2011年)。「Partners in Development - How Donors can better engage the private sector for development in LDCs(開発支援機関―援助国は、LDCの開発に民間セクターの関与をどのように深化させることができるか)」

70. Mondelez International(モンデリーズ・インターナショナル)のウェブサイトwww.kraftfoodscompany.com/eu/en/Responsibility/sustainability/index.aspx

71. Unilever(ユニリーバ)持続可能性ウェブサイト

www.unilever.com/sustainable-l i v i n g / o u r a p p r o a c h /oursustainabilitystrategy

72. 「Promoting standards for responsible investment in value chains(バリューチェーンへの責任投資のための基準の促進)」UNCTAD(2011年),High-Level Development Working Group(ハイレベル開発作業部会)へのG20報告書。

73. 「Patient Capital for an Africa That Can't Wait(アフリカへの一刻も早いペイシェント・キャピタルを)トーマス・L・フリードマン(Thomas L. Friedman)(2007年)」ニューヨークタイムズ(2007年4月20日)。

74. 世界銀行企業調査。 www.enterprisesurveys.org

75. 「Financing SMEs in a context o f s t r o n g i n f o r m a t i o n asymmetry. Private Sector & Development(1)(情報の非対称性が強い場合の中小企業への融資。民間セクターと開発(1)」。

76. Global Development Advisors(グローバル・デベロップメント・ア ド バ イ ザ ー ス )(2011年 )。Impact investing in West Africa

(西アフリカのインパクト・インベストメント)。

77. 「Two Trillion and Counting: Assessing the credit gap for micro, small and medium-sized enterprises in the developing world(2兆と集計:開発途上地域の零細・中小企業のクレジット・ギャップ評価)。

78. Global Impact Invest ing Network(グローバル・インパクト・インベストメント・ネットワーク)ウェブサイト

www.thegiin.org

79. 「Dalberg Global Development Advisors(ダルバーグ・グローバル・デベロップメント・アドバイザース)」(2011年)。「Impact investing in West Africa(西アフリカのインパクト・インベストメント)」。

80. Global Impact Invest ing Network(グローバル・インパクト・インベストメント・ネットワーク)および「Perspectives on Progress - The Impact Investor Survey(進歩に関する見通し―インパクト・インベストメント調査)」。JP Morgan(J・.P・ モルガン)(2012年)

81. ア ー ノ ル ド・ エ ク ペ(Arnold EKPE)、Ecobank(エコバンク)CEO、テミトペ・オシコヤ教授(Dr. T e m i t o p e O S H I K O Y A )、Ecobank(エコバンク)Senior Policy Adviser(上級政策アドバイザー)へのインタビュー。

82. ジェームズ・ムワンギ(James Mwangi)、Equity Bank(エクイティ・バンク)CEOへのインタビュー。

83. Mix Market(ミックス・マーケット)ウェブサイト

www.mixmarket.org/mfi/region/Africa

84. 「How we made it in Africa(私たちがアフリカで成功したわけ)」

ウェブサイト www.howwemadeitinafrica.

com/mobile-banking-moving-b e y ond - ju s t - p r o v i d i ng -transactional-services/4705/

85. 世界銀行(2012年)。「Remittances Flows in 2011- an Update

(2011年の送金フロー—改訂版)。Migration and Development Brief(移住と開発ブリーフ)」

86. IFADウェブサイト www.ifad.org/remittances/

maps/africa.htm

87. MyC4ウェブサイト www.myc4.com

88. 「Doing business in post-conflict and fragile states: Challenges and risks(紛争後の脆弱な国家でのビジネス:課題とリ ス ク )」。Development Planning Division Working Paper No. 23(デベロップメント・プランニング・ディヴィジョン・ワーキングペーパーNo.23)

89. 「Education at a Glance(図表でみる教育)」OECD(2011年)

90. 「Education for All(すべての人のための教育)」UNESCO(2010年)

91. 「Measuring Financial Inclusion: The Global Findex Database

(金融包摂の測定:グローバル・フィンデックス・データベース)」。Policy Research Working Paper 6025(政策研究ワーキング ペ ー パ ー6025)。 世 界 銀 行

(2012年)

92. 前掲書、2。

93. Making Markets Work for the Poor(貧困者層に資する市場開発)(M4P)アプローチについての 詳 細 は、DFIDお よ びSDCの2008年刊行A Synthesis of the Making Markets work for the Poor(M4P)Approach( 貧 困者層に資する市場開発(M4P)アプローチの統合)を含む、一連の刊行物などを参照してください。

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 73

Page 76: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

略語 正式名称と訳AFD French Development Agency

フランス開発庁AATIF Africa Agriculture and Trade Investment

Fundアフリカ農業貿易投資基金

Absa Absa Group Limitedアブサグループ

ACA African Cashew Allianceアフリカカシューナッツ協会

AEC African Economic Communityアフリカ経済共同体

AECF Africa Enterprise Challenge Fundアフリカ企業チャレンジファンド

AECID Span ish Agency for In ternat iona l Development Cooperationスペイン国際開発協力庁

AFIM African Facility for Inclusive Marketsアフリカ包括的市場ファシリティ

AMADER Malian Agency for the Development of H o u s e h o l d E n e r g y a n d R u r a l Electrificationマリ地方電化家庭エネルギー開発局

ARV anti-retrovirals抗レトロウイルス薬

AU African Unionアフリカ連合

AusAid Australian Agency for International Developmentオーストラリア国際開発庁

B2B Business to Business企業間取引

BEE Black Economic Empowerment黒人経済権限付与計画

BID Network Business in Development Networkビジネス開発ネットワーク

BMZ German Federal Ministry for Economic Cooperation and Developmentドイツ連邦経済協力開発省

BOP Bottom of the Pyramid所得ピラミッドの最下層

CAADP Comprehensive Afr ica Agr icul ture Development Programme包括的アフリカ農業開発プログラム

CARE Cooperative for Assistance and Relief Everywhere国際ケア機構(地球規模の支援及び救援組合)

CBO community-based organizationsコミュニティを基盤とする組織

CDM Clean Development Mechanismクリーン開発メカニズム

CECI CSO Centre d’Etude et de Coopération Internationaleカナダ国際問題協力センター

CFW Child and Family Wellnessチャイルド・アンド・ファミリー・ウェルネス(子どもと家族の健康)

略語 正式名称と訳CGIAR Consultative Group on International

Agricultural Research国際農業研究協議グループ

COCOBOD Ghana Cocoa Boardガーナ・カカオ・ボード

COMESA Common Market fo r Eas tern and Southern Africa東南部アフリカ市場共同体

COMPACI Comprehensive African Cotton Initiative包括的アフリカ綿栽培イニシアティブ

CSO civil society organization市民社会組織

CSR corporate social responsibility企業の社会的責任

DADTCO Dutch Agricultural Development and Trading Companyオランダ農業開発貿易会社

Danida Danish International Development Agencyデンマーク国際開発庁

DEG German Investment and Development Corporationドイツ投資開発公社(DEG)

DFI development finance institution開発金融機関

DFID U.K. Department for Internat ional Development英国国際開発省

EAC East African Community東アフリカ共同体

ECOWAS Economic Community of West African States西アフリカ諸国経済共同体

EDF Electricité de Franceフランス電力会社

EIAR Ethiopian Institute for Agricultural Researchエチオピア農業研究機構

FEPP Financial Education and Consumer Protection Partnership金融教育・消費者保護パートナーシップ

FSD Kenya Financial Sector Deepening Initiativeケニア金融部門深化イニシアティブ

GADCO Global Agri-Development Company世界農業開発会社

GDP Gross Domestic Product国内総生産

GfK Society for Consumer Research消費者調査会社(GfK)

GIM Growing Inclusive Markets包括的な市場の育成

GIZ German Soc iety for In ternat iona l Cooperationドイツ国際協力公社

HIV/AIDS Human Immunodeficiency Virus/Acquired immune deficiency syndromeヒト免疫不全ウイルス/後天性免疫不全症候群

略 語

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h74

Page 77: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

略語 正式名称と訳ICCO Interchurch organization for development

cooperation開発協力のための宗派間組織

ICT i n fo rmat ion and communicat ions technology情報通信技術

iDE International Development Enterprises国際開発エンタープライズ

IFAD International Fund for Agricultural Development国際農業開発基金

IFC International Finance Corporation国際金融公社

IFPRI International Food Policy Research Institute国際食糧政策研究所

IISD International Institute for Sustainable Development持続可能な開発に関する国際研究所

IITA Internat ional Inst i tute of Tropical Agriculture国際熱帯農業研究所

ILO International Labour Organisation国際労働機関

IMD Inclusive Market Development包括的な市場の開発

IT Information Technology情報技術

ITFC Integrated Tamale Fruit Companyタマレ総合果実会社

KACE Kenya Agricultural Commodity Exchange Ltd.ケニア農産品取引所

LA Lighting Africaアフリカに光を

MDG Millennium Development Goalsミレニアム開発目標

MFI micro-finance institutionsマイクロファイナンス機関

M4P Making Markets Work for the Poor貧困者に益する市場システムの構築

MNC multinational company多国籍企業

MSME m i c r o , s m a l l a n d m e d i u m - s i z e d enterprises中小零細企業

NMFA Netherlands Ministry of Foreign Affairsオランダ外務省

OHADA Organization for the Harmonization of Business Law in Africaアフリカ商法調整機関

PSE private sector engagement民間部門の参画

REC regional economic communities地域経済共同体

RESCO Rural Energy Services Companies農村地域エネルギーサービス会社

略語 正式名称と訳SACCO Sav i ng s and C red i t Coope ra t i v e

Organisation貯蓄信用協同組合

SADC S o u t h e r n A f r i c a n D e v e l o p m e n t Community南部アフリカ開発共同体

SAGCOT Southern Agricultural Growth Corridor of Tanzaniaタンザニア南部農業成長回廊

SASRA SACCO Societies Regulatory AuthoritySACCO規制当局

Sida Swedish International Development Cooperation Agencyスウェーデン国際開発協力庁

SME small and medium enterprises中小企業

SNV Dutch Development AgencySNV(オランダ開発機構)

UNCTAD United Nations Conference on Trade and Development国連貿易開発会議

UNDP United Nations Development Programme国連開発計画

USAID United States Agency for International Development米国国際開発庁

VEV Senegalese company Du Vent, de L’Eau pour la Vieセネガル企業「生活のための風と水」

VSO Voluntary Service Overseasボランタリー・サービス・オーバーシーズ

WFP World Food Programme国連世界食糧計画

WRI World Resources Institute世界資源研究所

WSUP Water and Sanitation for the Urban Poor都市部貧困層のための水と衛生

WWF World Wide Fund for Nature世界自然保護基金

YEN Youth Employment Network若年雇用ネットワーク

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 75

Page 78: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

企業名 国 企業形態 分野 執筆年Adina for life(アディナ・フォー・ライフ) セネガル 中小企業 農林業 2010年Amanz’ abantu(アマンザバンツ) 南アフリカ 中小企業 水と衛生設備 2008年Aspen Pharmacare(アスペン・ファーマケア) 南アフリカ 多国籍企業(途上国) 医療 2008年Association of Private Water Operators( アソシエーション・オブ・プライベート・ウォーター・オペレーターズ)

ウガンダ 中小企業 水と衛生設備 2008年

Barclays(バークレイズ) ガーナ 多国籍企業(外資系) 金融サービス 2008年BRAC リベリア 市民社会組織 金融サービス 2012年Cadbury Cocoa Partnership(キャドバリー・カカオ・パートナーシップ)

ガーナ 多国籍企業(外資系) 農林業 2012年

Cashew Producers(カシュー・プロデューサーズ)およびUSAID(米国国際開発庁)

ギニア 中小企業 農林業 2008年

Celtel(セルテル)およびCelpay(セルペイ) コンゴ民主共和国 多国籍企業(途上国) ICT 2008年Chaka Group(チャカ・グループ) セネガル 中小企業 ICT 2008年Du vent, de l’Eau pour la Vie(ドゥ・ヴァン・デロ・ポー・ラ・ヴィ)

セネガル 中小企業 水と衛生設備 2010年

Dunavant(デュナバント) ザンビア 多国籍企業(外資系) 農林業 2012年Ecotact(エコタクト) ケニア 市民社会組織 水と衛生設備 2010年EDF(フランス電力公社) マリ 多国籍企業(外資系) エネルギー 2008年Edu-loan(エデュローン) 南アフリカ 中小企業 金融サービス 2008年The El-Fashir Blacksmiths Cooperative(エル・ファーシル・ブラックスミス・コーポラティブ)およびPractical Action(プラクティカル・アクション)

スーダン 市民社会組織 消費財 2010年

Esoko(エソコ) ガーナ 市民社会組織 ICT 2010年Ethiopian Honey and Beeswax Producers and Exporters Association(エチオピアン・ハニー・アンド・ビーワックス・プロデューサーズ・アンド・エクスポーターズ・アソシエーション)

エチオピア 市民社会組織 農林業 2012年

Fair Trade Cotton(フェア・トレード・コットン) マリ 市民社会組織 農林業 2008年GADCO(世界農業開発会社) ガーナ 中小企業 農林業 2012年Inova(イノヴァ) ブルキナファソ 中小企業 金融サービス 2012年Integrated Tamale Fruit Company(インテグレイテッド・タマレ・フルーツ・カンパニー)

ガーナ 中小企業 農林業 2008年

K-REP Bank(Kレプ・バンク) ケニア 大企業 金融サービス 2008年Kenya Agricultural Commodity Exchange Limited(ケニア・アグリカルチュラル・コモディティ・エクスチェンジ・リミテッド)

ケニア 市民社会組織 農林業 2010年

Kuyasa(クヤサ) 南アフリカ 市民社会組織 エネルギー 2010年L’occitane(ロクシタン) ブルキナファソ 多国籍企業(外資系) 農林業 2012年Lonestar(ローンスター) リベリア 中小企業 ICT 2012年MAP International(MAPインターナショナル) ウガンダ 中小企業 金融サービス 2010年Mobah Rural Horizons(モバー・ルーラル・ホライズンズ)

ナイジェリア 中小企業 消費財 2010年

事例研究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h76

Page 79: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

企業名 国 企業形態 分野 執筆年Moladi(モラディ) 南アフリカ 中小企業 住宅・建設 2010年 Mondi Recycling(モンディ・リサイクリング) 南アフリカ 多国籍企業(外資系) 廃棄物 2010年Olam(オーラム) ナイジェリア 多国籍企業(外資系) 農林業 2010年 PepsiCo(ペプシコ) エチオピア 多国籍企業(外資系) 農林業 2012年 Pésinet(ペシネット) マリ 市民社会組織 医療 2008年 RMBおよびNedbank(ネッドバンク) 南アフリカ 大企業 金融サービス 2008年 Safaricom(サファリコム)によるM-Pesa(Mペサ) ケニア 多国籍企業(外資系) ICT 2008年 Sanofi(サノフィ) サハラ以南アフリカ 多国籍企業(外資系) 医療 2008年 Tedcor(テッドコア) 南アフリカ 中小企業 廃棄物 2010年 The Sustainable Healthcare Foundation( サスティナブル・ヘルスケア・ファウンデーション)

ケニア 市民社会組織 医療 2008年

Tiviski Dairy(ティビスキー・デイリー) モーリタニア 中小企業 農林業 2008年 ToughStuff(タフスタッフ) ケニア 中小企業 エネルギー 2012年 Toyola(トヨラ) ガーナ 中小企業 エネルギー 2010年 VidaGás(ヴィダガス) モザンビーク 市民社会組織 エネルギー 2008年

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 77

Page 80: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

ア ディナ・フォー・ライフは2004年に設立されたジョイントベンチャーで、文化的伝

統のある健康飲料を北米市場に販売しています。在外セネガル人のマルゲット・ウェイド・マルシャン 氏 は、 セ ネ ガ ル 文 化 の 重 要 な 象 徴 で あ る、Bissap(ビサップ)と呼ばれるハイビスカスドリンクが消えつつあることを知り、この構想を思いつきました。彼女は、飲料業界の起業家グレッグ・ステルテンポールさんと手を組み、セネガルで飲用のハイビスカスの花を栽培する「クオリティ・バイオロジカル・アグリカルチュラル・コーポラティブ」

(Quality Biological Agricultural Cooperative: QABCOO)とフェアトレード契約を結びました。この協同組合に加入している527人は、その大半が女性であり、所得が8倍に増加し、能力構築から恩恵を受けました。アディナは、同様のビジネスモデルを、エチオピア、グアテマラ、インド、インドネシアでも実施しています。

 アディナの創業資金は、大部分が民間資本とベンチャーキャピタリストから提供されました。また、多国籍農業コンサルタント、「アグリビジネス・イン・サスティナブル・ナチュラル・アフリカン・プランツ」(Agribusiness in Sustainable Natural African Plants: ASNAPP)と、セネガル大統領夫人が主導する非営利団体、「アソシエーション・エデュケーション・サンテ」(Association Education Santé: AES)も支援を行っており、両団体は助言とモニタリングを行いました。AESは、事業の初期段階で同協同組合に研修も実施しました。

Adina for Life(アディナ・フォー・ライフ)国

セネガル企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年2010年

ママドゥ・ガエ(Mamadou Gaye)

農林業

投資実施サポート

南 アフリカのイースタンケープ州では、多くの人が飲料水と衛生設備を利用できず、数

時間歩いて非衛生的な川の水を汲みに行かなければなりませんでした。

 ホサ語とンデベレ語、ズールー語で「人々のための水」を意味するアマンザバンツは、イースタンケープ州の都市周辺や農村のコミュニティで不足しているこれらのサービスを補うために、1997年に民間企業として設立されました。同社は国際的な品質基準を満たす水を供給し、個人がスマートカード技術を利用したスタンドパイプにアクセスできる場所にパイプで配水します。自宅から200メートル以内に安全な水が供給されることにより、住民の生活は変わりました。アマンザバンツは、地元の労働力を利用して、雇用を創出し、雇用に適した技能を教授し、水道・衛生システムの設計・建設のあらゆる側面について訓練を実施

しています。アマンザバンツは、設計と建築、配水・衛生事業において、環境上健全な慣行に従っています。

 1990年代後半、南アフリカ政府は、サービス提供への需要に対する官民パートナーシップによるソリューションを導入しました。南アフリカ水問題・森林省が対応した「建設・運営・訓練・譲渡」

(Build, Operate, Train, Transfer: BoTT)プログラムが、アマンザバンツ設立の下地を作りました。

Amanz’ abantu(アマンザバンツ)国

南アフリカ企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年2008年

ママドゥ・ガエ(Mamadou Gaye)ウスマン・モロー

(Ousmane Moreau)

水と衛生設備

インセンティブ実施サポート

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h78

Page 81: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

南 アフリカは、世界でもっともHIV/エイズ罹患率が高い国のひとつですが、2001年まで、

ほとんどの感染者にとって、抗レトロウイルス(ARV)薬は高価すぎて手が届きませんでした。

 「アスペン・ファーマケア・ホールディングス」(Aspen Pharmacare Holdings Ltd.: アスペン)は、ダーバンに本社を置く大手製薬会社であり、南アフリカの公共セクターによる、誰もが無料で受けられるHIV/エイズ治療プログラム向けに、安価なジェネリックARV薬を供給しています。また、結核、マラリアなどの他の生命に関わる疾病の治療のために、安価な医薬品も供給しています。同社は、スティーブン・サード氏によって1997年に設立されました。小規模で始まった同社は、現在ではアフリカ最大の医薬品メーカーに成長しています。

 アスペンは、南アフリカでのジェネリック薬の開発において組織支援を受けました。南アフリカ政府は、市民社会団体からの圧力を受けて、ジェネリックARV薬の製造の必要性を認識し、「戦略的投資プログラム」(Strategic Investment Programme: SIP)に定められた税制上の優遇措置を利用して、アスペンがジェネリックARV薬の製造施設に投資できるようにしました。その投資と南アフリカにおけるARV薬の大規模プログラムへの期待に基づき、アスペンは多種多様なARV薬を生産するために、特許権を持つ多数の多国籍企業から任意ライセンスを取得しています。

Aspen Pharmacare(アスペン・ファーマケア) 国

南アフリカ 企業形態

多国籍企業(途上国)

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

コートニー・スプレイグ(Courtenay Sprague)スチュ・ウールマン

(Stu Woolman)

医療

インセンティブ

ウ ガンダでは、人口の85%以上が農村地域に暮らしています。そうした地域は、しばし

ば水供給が不十分で、貧困が悪化し、疾病の蔓延につながるような状況です。

 2003年、ウガンダは、水に対する農村のニーズに応えるための官民パートナーシップを考案しました。政府が用地を探し、井戸を掘り、コミュニティに土地の購入を促し、敷設に補助金を拠出します。「アソシエーション・オブ・プライベート・ウォーター・オペレ−ターズ」(APWO)の傘下で運営する民間の給水業者は、配水と安全点検を行い、利益を確保します。一方、コミュニティの水道委員会は、その資産を所有し料金と方針を定めます。2011年、ウガンダ全土の74の小さな町で、3万5000人が民間の給水業者による給水施設に接続しました。

 創業資金の大部分は、「貧困活動基金」(Poverty Action Fund: PAF)から拠出され、さらにウガンダ政府や他の援助国からも資金供与がありました。1999年に実施された「ウガンダ国家水政策」

(Ugandan National Water Policy)は、改革のための政策枠組みを提供しました。APWOは、加入を認めるための認定マニュアルを策定しました。APWO加入者は、GIZとウガンダ政府が提供する技術訓練、管理研修を受けます。

Association of Private Water Operatorss (アソシエーション・オブ・プライベート・ウォーター・オペレーターズ)

ウガンダ 企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

ウィニフレッド・N・カルガ(Winifred N. Karuga)ダイアン・ヌデゥトゥ・カンヤグラ

(Diane Ndutu Kanyagla)

水と衛生設備

インセンティブ 投資 実施サポート

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 79

Page 82: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

ス ス(Susu)は、アフリカで300年以上の歴史を持つ金融サービスで、貯蓄預金を行う

インフォーマルな制度です。集金人は、毎日または毎週、所定の金額を集めます。ガーナでは4000人のスス集金人が活動しており、毎日200人から850人の顧客にサービスを提供しています。

 2005年、「ガーナ・バークレイズ銀行」(Barclays Bank of Ghana)は、ススによる集金を利用して、ガーナの小規模商人や零細起業家向けのマイクロファイナンスの拡大に着手しました。集金人は、バークレイズの支店に安全にお金を預けることができ、利息を得られます。代わりに、バークレイズは集金人の既存顧客を顧客として獲得し、集金人のノウハウと顧客との信頼関係から恩恵を得られます。このプログラムにより、銀行はそのネットワークを拡大することなく、キャッシュフローを増やすことができます。同社は、集金人を通じて、

小規模企業金融などの他のサービスを販売します。

 バークレイズは、潜在的なエンドユーザーを、財務管理と保険を対象にしたミーティングや講習会に招待することで、「スス・コレクターズ・イニシアティブ」(Susu Collectors Initiative)についての認識を向上させています。また、延滞管理、金融債権、リスク管理について、スス集金人に研修も行っています。

Barclays(バークレイズ)国

ガーナ企業形態

多国籍企業(外資系)

支援機能

分野

著者

執筆年2008年

ロバート・ダーコ・オセイ(Robert Darko Osei)

ICT

情報実施サポート

リ ベリアは、14年におよぶ内戦が2003年に終結してから、物的資本と人的資本の両方

の再建で重大な問題に直面しています。正式に就労 し て い る の は、 国 民 の わ ず か15 % で あ り、68%が貧困線以下で暮らしています。

 BRACは、1972年にバングラデシュで設立されたNGOで、リベリアでは2008年に活動を開始しました。小規模企業への融資だけでなく、一般的には小規模な事業を行う女性に対して、マイクロファイナンスを提供します。また、農業投入物と無料の講習会を提供することで、小規模農業従事者の農業活動を支援します。担保を要求せず、有利な利率で100ドルから500ドルの小口融資を実施します。同団体は、リベリアの15の郡のうち7つの郡に30か所のマイクロファイナンスの窓口を開設して、約300人のリベリア人を雇用し、約2万5000人の低所得者にマイクロフィナンスを提

供しています。

 BRACは、リベリア外務省と連携し、定款を発行して、マイクロフィナンス会社の登録を可能にしました。BRACは、「BRACキヴァ」(BRAC-Kiva)や「家族のオンライン安全機関」(FOSI)、「英国国際開発省」(DFID)、「キヴァ」(KIVA)、「ソロス経済開発基金」(SEDF)などの他の援助機関から資金を獲得しました。

BRAC国

リベリア企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年2012年

アルフレッド・K・ターウェイ・トワラ(Alfred K Tarway-Twalla)

金融サービス

インセンティブ投資

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h80

Page 83: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

2 012年、カカオはガーナの総輸出収入の22.5%を占めていました。しかし、低い生産

性、農業投入物と融資へのアクセスの欠如などの障害が、カカオの持続的な生産を脅かしています。

 キャドバリー・カカオ・パートナーシップは、「モンデリーズ・インターナショナル」(Mondelēz International)(元キャドバリー/クラフト)、「ガーナ・ コ コ・ ボ ー ド 」(Ghana Cocoa Board)

(COCOBOD)、UNDP、「ワールド・ビジョン」(World Vision)、「ケア・インターナショナル」(CARE International)などのパートナーによって、2008年に設立されました。同パートナーシップは、現在、7つの地区の209のコミュニティに利益をもたらしています。各コミュニティで地元のまとめ役を選び出して、定期的な収穫、殺虫剤の散布、フェアトレード認証のほか、運営情報の交換などを促す農村共同体の形成を通じて、生産を拡大す

るためにカカオ農家と密接に連携するよう研修を行います。また、同パートナーシップは、仲間同士のメンタリングや意識向上プログラムによって、若者のカカオ農業への関心を引き出そうと働きかけています。

 同パートナーシップは、政策レベル、実施レベル、コミュニティレベルで働きかけるパートナーとの強固なネットワークから恩恵を得ています。モンデリーズ・インターナショナルは3000万英国ポンドの実施資金を拠出し、パートナーの調整を行っています。UNDPは、プログラムの展開を拡大するために、戦略的・技術的助言を提供しています。COCOBODは、技術サポート、研究開発、施策を後押しします。ケア・インターナショナルなどのNGOは、コミュニティレベルで、能力構築とコミュニティ開発計画形成への支援に取り組んでいます。

Cadbury Cocoa Partnership (キャドバリー・カカオ・パートナーシップ)

ガーナ 企業形態

多国籍企業(外資系)

支援機能

分野

著者

執筆年 2012年

ロバート・ダーコ・オセイ (Robert Darko Osei)

農林業

情報 投資 実施サポート

2 008年、ギニアでは約5000トンのカシューナッツが生産されました。肥沃な土壌と気

候条件が高品質のカシューの大規模栽培に適しているにもかかわらず、ギニアの生産高は期待されるよりもずっと少ない量です。市場開発のための政府による支援、資金供給、調整がないために、この部門の可能性が十分に引き出されていません。

 2004年以降、「グローバル・デベロップメント・ア ラ イ ア ン ス・ パ ー ト ナ ー シ ッ プ 」(Global Development Alliance Partnership)―ギニアのいくつかのカシュー協同組合、ギニア政府、USAID、多国籍食品企業の「クラフト・フーズ」

(Kraft Foods)が参加―が、ギニア人農業従事者によるカシューの生産と販売を支援しています。老朽化したカシューのプランテーション農園が修復され、種子品質が改良されて、多くの農業従事者が訓練による恩恵を受けました。

 同パートナーシップは、米国USAIDとSPCIA―地元の農業支援・輸出組織―とクラフト・フーズからの100万ドルの資金提供を受けて開始されました。ギニア政府は輸出税を適用しないことで、この部門の成長に寄与しています。SPCIAは、活動を調整して情報を共有するための農業従事者による協同組合の設立を支援しています。また、他のNGOと協力して、重要な技術訓練も実施しています。

Cashew Producers(カシュー・プロデューサーズ)および USAID(米国国際開発庁)

ギニア 企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

ママドゥ・ガエ (Mamadou Gaye) ウスマン・モロー (Ousmane Moreau)

農林業

インセンティブ 投資 実施サポート

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 81

Page 84: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

コ ンゴ民主共和国(Democratic Republic of Congo: DRC)の電気通信業界は、長ら

くインフラの欠如と破綻した経済に悩まされ、長年の内戦に妨げられて、開発が進んでいませんでした。「セルテル・インターナショナル」(Celtel International)(2010年に「バーティ・エアテル」

(Bharti Airtel)に買収され、現在の商標は「エアテル」(Airtel))が、2000年にDRC市場に参入しました。市場を取り巻くのは、貧困の蔓延、人的能力の劣化、政情不安でした。潜在的な顧客基盤は小さく、そこまで届ける機会も限られていました。こうした障害にもかかわらず、セルテルは、同国で200万人以上の顧客を獲得しました。また、同社はモバイル・バンキングシステムとして、セルペイ―現在は「ファーストランド」(FirstRand)金融グループが所有―を設立しました。セルテルは地元経済に現金を注入し、何百もの直接雇用と何千もの間接雇用を創出し、これまでは内戦とイ

ンフラの欠如から孤立していたコミュニティ間での情報交換を可能にしました。

 セルテルDRCは、親会社から強力な財政支援を受けていて、政治指導者とも強固な関係を築いています。2003年に可決された、電気通信業に一段と明確な枠組みを提供する法律からも恩恵を受けました。セルテルは、意欲溢れる若手従業員と経験を積んだ管理職を対象にした研修プログラムに投資しています。

Celtel(セルテル)およびCelpay(セルペイ)国

コンゴ民主共和国企業形態

多国籍企業(途上国)

支援機能

分野

著者

執筆年2008年

フアナ・デ・カトー(Juana de Catheu)

ICT

情報投資実施サポート

セ ネガルの貧困に悩む多くの世帯が、国外移住者からの送金に依存していますが、送金

は必ずしも簡単にできるわけではありません。

 チャカ・グループの事業を代表する旗艦会社、「マネー・エクスプレス」(Money Express)は、西アフリカ諸国への安価で便利な送金手段を提供します。1994年にセネガル人起業家、メイサ・デゴネ・ンゴマ(Meissa Deguene Ngoma)が設立したマネー・エクスプレスは、農村地域でも都市部でも営業しており、村にある小規模銀行の複数のネットワークと提携しています。同じ部門での既存の大手競合他社より、マネー・エクスプレスを利用する方が安価に送金できます。また、同社による送金サービスは、既存銀行を利用するのに必要な身分証明書を持たない顧客も利用でき、完全な現金での取引と口座振替のどちらか、あるいは両方を組み合わせた送金オプションを提供し

ています。同社は、顧客や代理人に、高齢の顧客に対する現金宅配払いも実施すると謳っています。

 マネー・エクスプレスは、国立銀行から村の小規模貯蓄機関にいたる金融機関からなるネットワークと協力しています。「セネガル・ハウジング・バンク」(Senegalese Housing Bank)は、大きなセネガル人社会のある国すべてで営業しているため、特に重要なパートナーです。マネー・エクスプレスは研修にも重点を置いています。

Chaka Group(チャカ・グループ)国

セネガル企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年2008年

ママドゥ・ガエ(Mamadou Gaye)ウスマン・モロー

(Ousmane Moreau)

ICT

実施サポート

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h82

Page 85: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

給 水は、セネガル農村地域の重要課題です。こうした地域に暮らす人々は、古くからあ

る井戸の水に依存していますが、そうした井戸は、ときに頼りなく、主に女性にとって大変な骨折りになります。

 この問題を解決するために、1981年から1991年にかけて、資金が枯渇するまで、イタリアの援助機関、「レイ・ボランティアーズ・インターナショナ ル・ ア ソ シ エ ー シ ョ ン 」(Lay Volunteers International Association)(LVIA)が、セネガルの130の村に、風力を利用した給水ポンプを設置しました。同機関に雇用されていた地元の男性、ミッチェル・タイン(Michel Tine)が、その後、Du vent, de l'Eau pour la Vie(Wind, Water for Lifeという意味)という名称の企業を設立して、事業を引き継ぎました。同社は、ポンプのメンテナンスと修理を行い、ポンプを新設する際には現

地部品を調達するとともに、新しいポンプの製造とコミュニティの用地への設置を続けています。ポンプによって、庭での耕作による所得、健康状態の改善、水汲みに要する時間の短縮など、数々の恩恵がコミュニティにもたらされています。660人から1100人の雇用も創出されました。

 セネガル政府は、LVIAプロジェクトを継続する許可を与え、インドから輸入せざるをえなかったポンプの部品について、VEVに減税措置を講じました。同社は、途上国の小規模エネルギービジネスを支援するNGO、「エコ」(E+Co)から初期の融資を受けました。VEVは、カトリック教会の国際的慈善団体、「カリタス」(Caritas)から経営指導も受けました。

Du vent, de l’Eau pour la Vie(ドゥ・ヴァン・デロ・ポー・ラ・ヴィ) 国

セネガル 企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年 2010年

ママドゥ・ガエ (Mamadou Gaye)

水と衛生設備

インセンティブ 投資 実施サポート

ザ ンビアの綿工業は、およそ35万人の小規模農業従事者に生計手段を提供していますが、

こうした農業従事者の生産性は、つねにマラリアの脅威にさらされています。

 デュナバント・ザンビアは綿を扱う多国籍商社で、小規模農業従事者から実綿を購入し、リント布に加工して世界中に販売しています。5つの州の15万人以上の小規模農業従事者と取り引きしています。公衆衛生のためのセクターを越えた相乗効果を築くために、「ナショナル・マラリア・コントロール・センター」(National Malaria Control Centre)とデュナバント・ザンビアは、4万戸のきわめて貧しい綿農家世帯を対象に、大規模なマラリア予防プログラムを実施しました。そうした世帯でのマラリア発生率は半減し、デュナバントは農業従事者との結び付きを深め、綿の生産高が上昇しました。同プログラムは、サハラ以南アフ

リカの同種のイニシアティブと比べて、大幅に安価なものでした。予備段階の結果から、このプロジェクトを拡大すれば、ザンビアの綿農家世帯に大きな経済的恩恵と健康上のメリットがもたらされると考えられます。

 ナショナル・マラリア・コントロール・センターは、プロジェクトのためのロジスティクス支援、機材、臨時スタッフを提供します。ビル&メリンダ・ゲイツ財団は資金を供与します。

Dunavant(デュナバント) 国

ザンビア 企業形態

 多国籍企業(外資系)

支援機能

分野

著者

執筆年 2012年

アンドレア・ロサーノ (Andrea Lozano)

農林業

投資 実施サポート

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 83

Page 86: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

ケ ニアでは、人口の40%以上が満足のいく衛生設備を利用できず、都市のスラム街では

さらにひどい状況です。

 エコタクトは2007年、ケニアの都市設計家、「デイヴィッド・クリア」(David Kuria)によって設立されました。同社は、ケニアの都市のスラム街に60の多機能「イコトイレット」(Ikotoilets)

(別名「トイレット・モール」(toilet malls))を設置しました。1日に4万8000人以上が利用しています。これらの設備は財政的に自己完結しており、利用者が少額の利用料を支払い、零細起業家が商用スペースを借り、イコトイレットの施設への広告も収入源になります。イコトイレットは、革新的な水の保全対策を利用しています。

 エコタクトは財政支援を受けずに設立されましたが、その後、「アショカ財団」(Ashoka)、「シュ

ワブ財団」(Schwab Foundation)、「国際ロータリー」(Rotary International)、オランダ 政府、

「イースト・アフリカ・ブリュワリー」(East Africa Breweries Limited)、「サファリコム」(Safaricom)か ら 資 金 提 供 を 受 け ま し た。 エ コ タ ク ト は、

「ウォーター・アンド・サニテーション・フォー・ジ・アーバン・プア」(Water and Sanitation for the Urban Poor:WSUP)と連携して、ケニアの都市部と都市周辺地域の衛生設備に関する調査を実施しています。そうした調査は、設計の基礎を築き、地元のニーズを確実に考慮することになります。地方政府と中央政府によるアドボカシーへの取り組み、それに同社自体がその成功に寄与してきました。エコタクトは、NGOと協力して地域に働きかけ、良い衛生状態と適切な廃棄物処理の重要性についてコミュニティを教育しています。

Ecotact(エコタクト)国

ケニア企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年2010年

ウィニフレッド・N・カルガ(Winifred N. Karuga)

水と衛生設備

情報投資

マ リで電気を利用できるのは人口のわずか17%であり、農村地域ではもっと少ないの

です。

 コラエ・クルンバ(Koraye Kurumba)とイールン・クラ(Yeelen Kura)は、「フランス電力会社」(Electricite de France: EDF)、オランダのエネルギー企業の「ヌオン」(Nuon)、フランスのエネルギー企業「トタル」(Total)がマリで運営する農村エネルギーサービス企業で、「フランス・環境エネルギー管理庁」(French Agency for the Environment and Energy Efficiency)の支援を受けています。両社の低コストの電気は、住宅用太陽光設備と、ディーゼル発電機で供給される小規模・低電圧の村のマイクロネットワークを利用しており、発展―生活水準の向上、新たな所得創出活動、医療と教育の質の向上―にかなりの影響を与えてきました。このモデルは、3000

人の顧客にサービスを提供しています。

 EDFのマリでの活動が始まったのは1990年代で、農村地域の電化について実行可能性を総合的に研究しました。同社の活動は、法律上、規制上、財政上有利な条件で進められ、「マリ地方電化家庭エネルギー開発局」(Malian Agency for the Deve lopment o f Househo ld Energy : AMADER)の監督を受けました。プログラム資金は、オランダ政府、世界銀行、それにEDF自体が拠出し、現地子会社に研修プログラムと機械設備も提供しています。

EDF(フランス電力公社)国

マリ企業形態

多国籍企業(外資系)

支援機能

分野

著者

執筆年2008年

ママドゥ・ガエ(Mamadou Gaye)

エネルギー

情報投資実施サポート

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h84

Page 87: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

ア パルトヘイト時代、南アフリカ政府の諸機関は、同国の大多数への教育の必要性を長

くないがしろにしてきました。現在の新経済では、開発を持続させるために、教育を受けた熟練労働者が差し迫って必要になっています。しかし、歴史的に不利な状況に置かれていた多くの人々は、中等後教育を受ける費用がなく、従来からあるタイプのローンの申請に必要な資格もありません。

 エデュローンは、中等後教育向けのローンを提供する営利目的の企業で、過去に不利な状況に置かれていた申請者に、シンプルな返済オプションを手頃な利率で提供します。1996年に発足して以来、エデュローンは60万人近くの学生に、合計3億ドル以上の融資を行ってきました。ほとんどのローンに課されるのは、プライムレートに1%プラスした利率です。エデュローンは大学に前払いするために、多くの場合、授業料の10%割引を

確保することができます。

 エデュローンはリテールバンクからプライムレートで融資を受け、借り主の授業料を支払います。リテールバンクと取り引きする際、エデュローンは、「フランス開発庁」(AFD)、「国際金融公社、ドイツ投資開発公社」(DEG)、「スタンダード銀行」

(Standard Bank)の保証を受けます。

Edu-loan(エデュローン) 国

南アフリカ 企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

ファリッド・バダシェ (Farid Baddache)

金融サービス

投資

エ ル・ファーシルの鍛冶工は、スーダンのダルフールで社会的にもっとも排除されてい

る階級で、組織化して恩恵を受けることもなく、最低生存水準で働いています。英国に拠点を置く国 際NGO「 プ ラ ク テ ィ カ ル・ ア ク シ ョ ン 」

(Practical Action)とのパートナーシップを通じて、エル・ファーシルの鍛冶工は、数々の恩恵につながる協同組合を形成しました。

 1990年代、プラクティカル・アクションは、ダルフールの鍛冶工に新しい製造技術、原料、経営慣行を紹介しました。協同組合を構成するとすぐ、鍛冶工たちはプラクティカル・アクションから、さらに金属の調達、契約交渉、完成品の出荷で支援を受けました。協同組合の加入者は、投入物(金属と炭)の大量仕入れ、大量注文に応えるための相互支援、製造とデザインのイノベーションに関する情報交換から恩恵を得ています。現在、同協

同組合は、75の作業場を所有・運営しており、それらはエル・ファーシルの市場の金属加工部門に集中しています。彼らが製造する農業用の機械や道具は、ダルフールとその近隣州に広く流通しており、国連食糧農業機関などの国際機関と多くの契約を結んでいます。

 プラクティカル・アクションは、この鍛冶協同組合にかなりの初期支援を行いました。また、現在行われている能力構築によって、鍛冶工が自分たちの事業が果たす中核的な機能に対して、より大きな責任を負えるようになっています。

The El-Fashir Blacksmiths Cooperative(エル・ファーシル・ブラックスミス・コーポラティブ)およびPractical Action(プラクティカル・アクション)

スーダン 企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年 2010年

サメル・アブデルヌール (Samer Abdelnour)

消費財

実施サポート

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 85

Page 88: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

2 005年にガーナで設立された「エソコ・ネットワークス」(Esoko Networks)は、エソ

コによる携帯電話事業で、農業バリューチェーンにおける取引コストの削減と情報の非対称性の克服を目的に開発されたモバイル情報システムです。このシステムによって、小規模農業従事者の交渉力と所得が拡大しています。IT起業家のマーク・デイヴィスさんが始めた同社は、地元の専門家と世界的な専門家からなるチームと協力して、携帯電話によって可能になるサービスを開発しました。開発の際には、4年間の試験段階で、技術を地元市場に合わせて調整しました。エソコに登録した小規模農業従事者は、現在の市場価格、買い手と売り手の値段のマッチング、天気予報のほか、ニュースやヒントなどの週決めの助言サービスをテキストメッセージで受け取ります。国によっては、ボイスメッセージでの受信も可能で、農業専門家がコールセンターに常駐して、データのア

ラートに対応します。農業従事者はより有利な価格で交渉し、より有利に販売できる市場や時間を選ぶことができるだけでなく、エソコのこれまでの分析力と評判を利用して、契約栽培(out-growers)スキームに参加することもできます。参加した農業従事者は、作物の平均収穫量が10%から30%増加しました。

 エソコは、「国際金融公社」(IFC)、「ソロス経済開発基金」(Soros Economic Development Fund: SEDF)からの資金提供を受けて、ドナーが資金供与するプロジェクトとして始まりました。

Esoko(エソコ)国

ガーナ企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年2010年

オレインカ・デイヴィッド・ウェスト

(Olayinka David-West)

ICT

情報インセンティブ

エ チオピアの蜂蜜・蜜蝋産業は、自然資源に恵まれているにもかかわらず、開発が進ん

でいません。小規模養蜂家は、養蜂と蜂蜜生産に伝統技術を使う傾向にあり、その結果、生産性と品質が不十分なものになっています。

 バリューチェーンを開発するために、地元企業7社が集まって、協業と拡張のためのプラットフォームとして、2005年にエチオピアン・ハニー・アンド・ビーワックス・プロデューサーズ・アンド・エクスポーターズ・アソシエーション(EHBPEA)を創設しました。さまざまなNGO、政府、研究パートナーからの援助を受け、EHBPEAはこの部門の水準を大幅に向上させることができ、国際的なニッチ市場への参入につながりました。EHBPEAは契約栽培スキームも立ち上げて、8000人以上の小規模養蜂家に、最新の養蜂方法と収穫後の作業に関する講習会を開催し、最新の養蜂箱などの

投入物を信用に基づき提供します。

 EHBPEAに対して、大きな財政・技術支援があります。援助機関、特に「オランダ開発機構」

(Netherlands Development Organization: SNV)が多額の資金を供与しています。エチオピア政府も援助を行っており、同産業の全国基準を策定し、国際認定を受けられるように支援しました。

Ethiopian Honey and Beeswax Producers and Exporters Association(エチオピアン・ハニー・アンド・ビーワックス・プロデューサーズ・アンド・エクスポーターズ・アソシエーション)

エチオピア企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年2012年

トフィク・シラジ・フィテ(Tofik Siraj Fite)

農林業

インセンティブ投資実施サポート

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h86

Page 89: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

綿 花はマリの輸出収入の30%以上を占めており、何百万人もの人々の主要な収入源に

なっています。マリの農業従事者は、一般的に小規模農園で時代遅れの道具を用いて働き、多額の補助金を受ける富裕国の生産者と競争しています。その結果、国際価格の変動と市場の不安定性に対してきわめて脆弱になっています。

 「国際フェアトレードラベル機構」(Fairtrade Labelling Organizations International: FLO)とそのフランス支部の「マックス・ハーフェラール」(Max Havelaar)は、こうした状況に対処するために、フランス、ベルギー、スイス、英国の多数の衣料品小売業者(フランスの「アルモーリュックス」(Armor Lux)など)とともにフェアトレード・パートナーシップに加わって、マリおよび周辺国の所得を引き上げ、綿花生産慣行の持続可能性を高めることを目指しています。重視

しているのは、労働環境が改善され、生産コストを上回る価格が保証される持続可能な開発です。マックス・ハーフェラールとフランスの繊維・農業開発機関である「ダグリ」(Dagris)は、1990年代、国際フェアトレード基準を満たせるかどうかを判断するために、マリの小規模綿花農場の評価を始めました。「マリ・テキスタイル・デベロップメント・カンパニー」(Mali Textile Development Company)は、このプログラムの一環として、農業従事者に技術サポートを行っており、生産される綿花の品質が向上しています。

Fair Trade Cotton(フェア・トレード・コットン) 国

マリ 企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

ママドゥ・ガエ (Mamadou Gaye)

農林業

情報 実施サポート

ガ ーナの農業分野は、労働力の50%以上を雇用しており、2010年にはGDPの28%に寄

与しました。

 GADCOはハイブリッド穀物の生産促進、持続可能なインフラを通じた農産品への付加価値の付与、自社ブランドのCOPA穀物製品の売り込みを目 指 す 農 業 食 品 会 社 で す。GADCOは、 そ の

「COPAコネクト」(COPA Connect)プログラムを通じて、小規模農業従事者をバリューチェーンに組み込み、自給自足農業から商業的農業への移行を後押ししています。GADCOは、農業従事者から良質な農産物を購入し、農業従事者に供給する改良種などの農業投入物のほか、一般諸経費や機械設備の使用を含む設備支出を賄うためのサービス料を徴収します。小規模農業従事者は、GADCOの1000ヘクタールの中心農場にある土地を耕作します。GADCOの農場は、他の農業従

事者からの購入を促すデモンストレーション施設としても機能しています。このプログラムにより、農業従事者の年間所得が倍増すると見込まれています。

 GADCOがこの事業で協力しているパートナーには、種子などの農業投入物を供給し、現地でR&Dを行う「シンジェンタ」(Syngenta)や、モデル開発を支援するために厳格な影響評価を行う世界銀行、西アフリカ全域へのCOPAの流通拡大を支援する予定の「フィナトレード」(Finatrade)があります。その他のパートナーには、財政支援・技術サポートとともに経営支援も行うチャレンジ・ファンドやNGOがあります。

GADCO(世界農業開発会社) 国

ガーナ 企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年 2012年

ロバート・ダーコ・オセイ (Robert Darko Osei)

農林業

情報 インセンティブ 投資 実施サポート

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 87

Page 90: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

ブ ルキナファソは、国民の43%が国内貧困線未満で暮らす低所得国です。同国の金融セ

クターは、他の低所得国と比較した場合でも、発展が後れたままです。

 イノヴァは、2007年にブルキナファソで設立され、モバイル金融サービスを提供しています。イノヴァが採用しているフランチャイズモデルでは、個人や既存企業が国内に同社のサービスセンターを設立し、消費者が現金の預け入れや引き出しを行うことができます。約6万人の顧客を抱えるイノヴァは、2011年に送金、公共料金の支払い、購買、入出金など、600万ドル相当のモバイル金融サービスの取引を記録しました。

 この地域での金融サービスの利用を促進するため、「西アフリカ諸国中央銀行」(Central Bank of West African States: BCEAO)は、近代の

中央銀行としては唯一、銀行以外の機関による電子送金を認めました。こうした有利な規制環境により、新規開業者は「取次店を持たない」銀行業務を行い、いっそう幅広いサービスを展開することが可能になりました。

Inova(イノヴァ)国

ブルキナファソ企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年2012年

ヤーリ・カマラ(Yarri Kamara)

金融サービス

インセンティブ

ガ ーナの農村地域は、高い貧困率が特徴で、多くの人が仕事を持っていません。インテ

グレイテッド・タマレ・フルーツ・カンパニー(ITFC)は、ガーナのサベルグ・ナントン郡で事業を営んでおり、小規模農業従事者と協力して、現地市場と輸出市場向けに認証を受けた有機農法のマンゴーを栽培しています。同社は広大な一区画の土地を取得するのではなく―これは物理的にも財政的にも非現実的です―、2001年に創設され2008年には農業従事者1300人にまで拡大した契約栽培スキームによって、高い生産高を上げています。ITFCは、農業投入物や技術サービスによって、契約農家に無利子のローンを提供します。農業従事者は木から実が採れるようになれば、ローンの返済を始めればいいのです。こうした取り決めにより、同社は高品質の有機マンゴーを確実に大量に得られ、農業従事者はマンゴー生産による長期的な所得が見込めます。ITFCは、農業従事者

に技術サポートも行っています。

Integrated Tamale Fruit Company(インテグレイテッド・タマレ・フルーツ・カンパニー)

ガーナ企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年2008年

ロバート・ダーコ・オセイ(Robert Darko Osei)

農林業

投資実施サポート

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h88

Page 91: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

1 999年に営業を開始したKレプ・バンクは、ケニア初のマイクロファイナンス銀行でし

た。商業成立性を損なうことなく、低所得労働者に銀行サービスを提供します。同行は、銀行・金融サービスを基本的人権と考えています。マイクロファイナンス、個人向けローン、マイクロファイナンス提供者へのホールセール貸し付け、預金・貯蓄制度、信用状、銀行保証などの多様な商品とサービスを提供しています。グラミン銀行の「グループ・レンディング」(group-lending)モデルから発想を得て、Kレプ・バンクのマイクロファイナンスは3つのカテゴリーに分かれています。グループは、民間金融機関からの融資を受ける資格を得るまで、これらのカテゴリーを進みます。2007年、同銀行は18万人の貸し主とほぼ同数の預金者を抱えていました。

 恵まれない地域やコミュニティで、Kレプ・バンクは定例グループ会議の間、十分な教育を受けていない顧客に金銭管理・財務管理の研修を実施しています。

K-REP Bank(Kレプ・バンク) 国

ケニア 企業形態

大企業

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

ウィニフレッド・N・カルガ(Winifred N. Karuga)

ダイアン・ヌデゥトゥ・カンヤグラ(Diane Ndutu Kanyagla)

金融サービス

実施サポート

サ ハラ以南アフリカの農村地域の小規模農業従事者は、市場や市場情報への限られたア

クセスと、利益の大部分を吸い上げる中間流通業者への過度の依存が原因で、現地の農業市場や国際農業市場で、しばしば不利な立場にあります。

 1997年、エイドリアン・ムケビ教授が、ケニアでこうした問題に対処するために、KACEを設立しました。この中小企業は、さまざまな市場での価格と流通状況について最新情報を収集し、そうした情報を、農業従事者やステークホルダーは、携帯電話のテキストメッセージサービスや、KACEの農村情報センター、毎日放送される全国的なラジオ番組を通じて、わずかな手数料で入手することができます。農業従事者はこのシステムを利用して、潜在顧客や販売業者からの買い付け申し込みを見たり、自分たちの販売申し込みをしたりすることができます。ケニアでは何千人もの農業従

事者が、農産物によっては22%から最大150%、所得が増加しており、同社はウガンダとタンザニアでも営業を開始しました。

 KACEは外部からの資金供給や融資を受けずに設立されましたが、その後、USAIDやロックフェラー財団などの数々の国際援助組織から資金提供を受けています。こうした資金の大部分が特定のプロジェクトに向けられており、能力構築と事業の拡大に利用されています。

Kenya Agricultural Commodity Exchange Limited (ケニア・アグリカルチュラル・コモディティ・エクスチェンジ・リミテッド)

ケニア 企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年 2010年

ウィニフレッド・N・カルガ (Winifred N. Karuga)

農林業

投資

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 89

Page 92: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

南 アフリカでは、アパルトヘイト終了後、公共住宅に入居した何百万人もの人々が、熱

効率の悪さによる、金銭面、健康面での大きな負担を強いられています。

 「クヤサ」(Kuyasa)クリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクトが考案されて、ケープタウン周辺の不法居住者入植地、クヤサにある2309戸の低所得者住宅に、ソーラー湯沸かし器、断熱天井、電球型蛍光灯が設置されました。同プロジェクトは、非営利組織の「サウスサウスノース」

(SouthSouthNorth)が、京都議定書のCDMの可能性に気づき、考案しました。このプロジェクトは、既存の低コスト住宅の伝熱能力とエネルギー効率の向上を目指しており、再生可能エネルギーと省エネ技術を貧困層が利用できるようにすることで、エネルギー不足を緩和しようとしました。このプロジェクトは、実施と資金に関するモ

デル上の問題が原因で2年間中断されていましたが、2008年8月に再開され、2010年10月に終了しました。

 改修工事が行われた住宅の居住者が、このプロジェクトに対して毎月少額の寄付を行う一方、「南アフリカ環境観光省」(South African Department of Environmental Affairs and Tourism)と州政府の「住宅省」(Department of Housing)が、プロジェクトに外部資金を提供しました。

Kuyasa(クヤサ)国

南アフリカ企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年2010年

マイケル・ゴールドマン(Michael Goldman)

エネルギー

インセンティブ

ブ ルキナファソでは、農村人口の52%が貧困生活を送っています。クリームや石鹸とし

て調理や個人衛生に利用されるシアバターの採取と加工が収入源の1つです。

 「ロクシタン」(L’occitane en Provence)は、フランスに本社のある多国籍化粧品メーカーで、天然成分を主原料とする贅沢な製品で有名です。1980年代以降、ブルキナファソの女性グループからシアバターを調達しており、約1万5000人の女性の経済的自立を支援してきました。同社は最近、供給者によるフェアトレード、オーガニック認証の取得を後押しし、現在、そのシアバターをフェアトレード最低価格で―2011年には500トン―購入しています。シアバターの協同組合は、それぞれの売上収入の2%を生産者コミュニティの社会開発基金に寄付しています。ロクシタンは、協同組合がシアナッツの栽培、購入、加工にかか

る費用を支払えるように、毎年、代金の80%を前払いしています。品質検査のための試験所を用意し、もっとも高い品質基準を満たしたシアバターにはボーナスを出します。

 ロクシタンは、ブルキナファソでカナダの「国際研究と協力センター」(Centre d’Etude et de Cooperation Internationale: CECI) な ど、 いくつかの非営利組織と協力して、女性グループによる協同組合の組織を支援し、継続的に技術訓練を実施しています。また、協同組合によるフェアトレード、オーガニック認証の取得を支援しています。

L’occitane(ロクシタン)国

ブルキナファソ企業形態

多国籍企業(外資系)

支援機能

分野

著者

執筆年2012年

ヤーリ・カマラ(Yarri Kamara)

農林業

インセンティブ実施サポート

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h90

Page 93: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

4 年におよぶ内乱で、リベリアの経済とインフラは荒廃していました。「ローンスター・

コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ズ・ コ ー ポ レ ー シ ョ ン 」(Lonestar Communications Corporation: LCC)は、電気通信の格差の是正を目的に、1999年に設立されました。ボイスパッケージ、データパッケージ、ショートメッセージサービス(SMS)のほか、最近では、モバイルバンキングを含む安価なモバイルサービスをリベリア国民に提供しています。加入者が100万人を超えるLCCは、内戦中に反体制派勢力によって兵士として徴集され、犯罪に走る恐れの高い失業中の若い男性グループを対象にして、多くの雇用機会を提供しています。同社は500人を直接雇用し、多くの間接雇用を創出しています。

 LCCは、いくつかのパートナーから支援を受けています。たとえば財務省は、公務員の給与をローンスターのモバイルマネーを利用して支払うこと

で、同社の商品に信用を与えました。LCCは、「エコバンク」(Ecobank)と提携してモバイルバンキングサービスを確立し、「リベリア大学」(University of Liberia)を通じて、一般国民に無料のICT講座を実施しています。また、NGOなどの他のパートナーと協力して、さらに進んだ研修を実施し、子どもの権利や教育などの重要な目標を表明しています。

Lonestar(ローンスター) 国

リベリア 企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年 2012年

アルフレッド・K・ ターウェイ・トワラ (Alfred K Tarway-Twalla)

ICT

インセンティブ

ウ ガンダは、農村地域への金融サービスの拡大と、金融機関が求める身分証明書の低所

得者への配布のなかで、深刻な問題に直面しています。2006年時点では、人口の90%が銀行口座を利用していませんでした。

 2007年、ニューヨークに拠点を置くMAPインターナショナルは、ウガンダでの金融サービスへのアクセスの改善、経済的エンパワーメント、雇用の創出、事業の創造を目指して、営業所を設立しました。同社は、中央銀行の認可を受けた生体認証と、消費者、商店主、銀行、サービスプロバイダをつなぐバーチャル金融サービスを提供しています。顧客は、ATM、携帯電話、パソコンなどの多くのアクセスポイントを利用できます。

 MAPインターナショナルは、顧客基盤を拡大して、営業開始以来、10万枚以上のデビットカード

を発行してきました。また、ウガンダ全域で26台のATMと150台以上のPOS端末装置を運営しています。

 同社は、完全国営銀行の「ポストバンク・ウガンダ」(PostBank Uganda)と契約を交わしています。このパートナーシップは、顧客確保の点でMAPインターナショナルに非常に有益で、その後同社は、ポストバンク・ウガンダのモバイルバンキングのインフラを開発しました。

MAP International(MAPインターナショナル) 国

ウガンダ 企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年 2010年

エリア・ヒサール (Eria Hisali)

金融サービス

インセンティブ

1

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 91

Page 94: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

ニ ジェールの農村地域では、道路・電力のインフラが不十分で、流通網に乗る前に農産

物が傷んでしまうため、農業従事者は自分たちの商品が低価格になるのを受け入れざるをえません。

 農業従事者の農産物の保存に役立てようと、「ポット・イン・ポット」(pot-in-pot)冷却器(「貧困層のための冷蔵庫」)が考案されました。地元大学の講師であるモハメド・バー・アバー氏は、彼個人の貯蓄を使い、失業中の多数の労働力を利用して、最初に1万2000セットの壺を製造しました。それを無料で家庭に配布し、地元の需要を刺激しました。2000年、彼は販売数を増やすため、モバー・ルーラル・ホライズンズを設立しました。同社は現在、ニジェールとナイジェリアで、食料を保存する必要のある農業従事者などの利用者に、年間3万個の冷却器を販売しています。アバーは新規市場で地元の壺製造者を見つけ出し、壺の製

造を依頼しています。

 モバー・ルーラル・ホライズンズは、家族とUNDPから資金提供を受けたほか、ロレックス賞の賞金、7万5000ドル相当も投入されました。同社は、「連邦女性省」(Nigeria's Ministry of Women's Affairs)などの機関による公的調達から恩恵を受けており、農村地域の受益者に冷却器が配布されます。同社は、訪れた新しい村ごとにマーケティングとアドボカシーの取り組みを行い、映画を使って、同社の技術の有用性について地元の農業従事者にピーアールしています。

Mobah Rural Horizons(モバー・ルーラル・ホライズンズ)国

ナイジェリア企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年2010年

オルウェミモ・オルワソラ(Oluwemimo Oluwasola)

消費財

情報インセンティブ投資

世 界の開発途上国には、安価な住居に対する大きな需要があります。資源、資金、技術

の不足に環境上の問題が合わさり、多くの政府がこの需要を満たすのに苦労しています。

 モラディは、建設技術に積極的に関わる独立型の家族企業で、貧困層への安価な住居の供給という課題への解決策を提供しています。ヘニー・ボーツ氏が1980年代に南アフリカに設立したモラディは、気泡モルタル(砂を混ぜないコンクリート)を注ぎ込むプラスチックパネル製の鋳型という革新的な方法を用います。この建築法では、時間とコストだけでなく、従来からの建築資材へのニーズも削減しながら、比較的容易に作業ができます。モラディの技術は、南アフリカの建築業界から反発を受けましたが、アフリカとラテンアメリカの途上国16か国で、低価格の公営住宅にこれまで以上に広く採用されて、多数の雇用を生み出

しています。

 モラディは、新しいプロジェクトのたびに建築業者に訓練を行います。同社は未熟練労働者に建設施工と企業経営を訓練するため、南アフリカに

「モラディ・カレッジ」(Moladi College)を設立するプロセスを進めています。

Moladi(モラディ)国

南アフリカ企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年2010年

ピエール・クッツァー(Pierre Coetzer)

住宅・建設

実施サポート

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h92

Page 95: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

南 アフリカの廃棄物処理セクターには、炭素の放出や環境の持続可能性などの問題に取

り組みながら、現在24.9%という同国の失業率の改善に役立つ可能性があります。

 モンディ・リサイクリングは、「モンディ・パッケージング・サウス・アフリカ」(Mondi Packaging South Africa)の一部門で、オーナードライバー制度を通じて、回収繊維のサプライチェーンの主要部分を元従業員にアウトソーシングして、独立した仕分け・梱包の事業を設立し、買い戻しセンターと個人の行商人のネットワークを利用してビジネスを行っています。オーナードライバーの多くが起業家として成功しており、南アフリカの数百人の低所得者に生活手段を提供しています。この制度により、40社の小規模企業が設立され、それぞれが毎年約107万南アフリカランド(14万3000ドル)をモンディから得ています。

 モンディは、国が支援する事業体などから援助を 受 け て お り、「 産 業 開 発 公 社 」(Industrial Development Corporation: IDC)からは、2005年の買い戻しセンター設立資金の一部として、50万南アフリカランド(6万6700ドル)の資金供与を受けました。買い戻しセンターを運営する多くの小規模起業家は、南アフリカ貿易産業省から金融理解力と経営能力の訓練を受けました。

Mondi Recycling(モンディ・リサイクリング) 国

南アフリカ 企業形態

多国籍企業(外資系)

支援機能

分野

著者

執筆年 2010年

ピエール・クッツァー (Pierre Coetzer)

廃棄物

インセンティブ 実施サポート

ナ イジェリアの農業セクターは、総労働力の65%を雇用しています。しかし、市場アク

セスへの障害と生産水準の低さが原因で、GDPの41.5%を占めるにすぎません。

 「オーラム・ナイジェリア・リミテッド」(Olam Nigeria Limited)は、出来損ないの生産物、外国為替取引、市場情報の欠如に関係する問題に対処しようと取り組んでいます。同社は当初、カシュー、カカオ、シアナッツなどの一次産品に重点を置いていましたが、その後、生産を加工食品生産へと拡張しました。小規模農業従事者を雇用して、農機具や農業投入物を提供し、農業従事者はそれらを中期融資の形式で返済します。また、同社は農業従事者に研修を行いながら、協同組合の組織を促します。同社の事業は、農産物のサプライチェーン全体におよび、地元の買い付け代理人、第一次加工施設、ロジスティックスサービスのネットワークを利用しています。オーラムは、500人の直接雇用、1万人の

間接雇用を創出し、1ヘクタール当たりの農業所得は、235ドルから1000ドルに増加しました。オーラムはその取り組みから、2011年「アフリカ・ビジネス・アワード・フォー・コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ」(Africa Business Award for Corporate Social Responsibility)と2010年

「オーバーオール・ベスト・エクスポーター・オブ・ジ・イヤー」(Overall Best Exporter of the Year)など、いくつもの賞を受賞しています。

 オーラムは、「ナイジェリア製造業者協会」(Manufacturers Association of Nigeria: MAN)と「ナイジェリアン・アソシエーション・オブ・チェンバーズ・オブ・コマース・インダストリー・マインズ・アンド・アグリカルチャー」(Nigerian Association of Chambers of Commerce, Industry, Mines and Agriculture:NACCIMA)と協力してアドボカシーに取り組み、インフラ問題と政策の矛盾に対処するようナイジェリア政府に圧力をかけています。

Olam(オーラム) 国

ナイジェリア 企業形態

多国籍企業(外資系)

支援機能

分野

著者

執筆年 2010年

オルウェミモ・オルワソラ(Oluwemimo Oluwasola)

農林業

情報 実施サポート

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 93

Page 96: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

エ チオピアは、世界最大級のヒヨコ豆生産国・輸出国です。しかし、降雨が当てにならな

いことなどの複数の問題から、ヒヨコ豆は裏作として作付けされています。

 2011年、ペプシコは、WFP、USAID、エチオピア政府とともに官民パートナーシップを確立して、最新の農業慣行の導入、灌漑の改善、多収穫種の採用により、エチオピアのヒヨコ豆生産高、輸出高の増大を目指しています。これにより、ヒヨコ豆を主原料とした多様なペプシ商品を確実かつ長期的に供給するのに役立ち、同時に、アフリカにおけるこうした商品の市場を評価することが可能になります。ペプシコは現在、WFPを通じて4万人の栄養失調児に届ける目的で、ヒヨコマメか ら 作 ら れ た 経 済 的 で 調 理 不 要 な 補 助 食 品

(RUSF)の開発と生産に取り組んでいます。このプロジェクトの最終目的は、1万人の小規模農業

従事者に影響を及ぼすことです。

 ペプシコは、農業従事者に最新の農業技術について講習を実施し、より高品質のヒヨコ豆種子の開発研究を支援するため、USAIDと「エチオピアン・インスティテュート・フォー・アグリカルチュラル・リサーチ」(Ethiopian Institute for Agricultural Research: EIAR)に働きかけました。USAIDは技術援助資金を提供するために、このパートナーシップに700万ドルの補助金を拠出しました。

PepsiCo(ペプシコ)国

エチオピア企業形態

多国籍企業(外資系)

支援機能

分野

著者

執筆年2012年

トフィク・シラジ・フィテ(Tofik Siraj Fite)

農林業

投資実施サポート

マ リは乳幼児の死亡率が非常に高く(約10%)、その主な原因には、医療へのアク

セスが限られていることによる不十分な医療レベルと診断の遅れなどがあります。

 ブリュッセルに拠点を置く「アフリーク・イニシアティブ」(Afrique Initiatives)が2002年に創設したペシネットは、低所得世帯の子どもの健康変化を早期に察知するシステムです。母親が、ごくわずかな料金でペシネットのサービスに申し込むと、現地代理人が週に2回、その子どもの体重を測ります。結果は地元の医師に伝えられ、医師は体重表を調べて、体重が通常よりも低い場合

(これは多くの場合、治療の必要性を示します)、受診を要請します。セネガルで非営利のベンチャー企業として設立されたこのプロジェクトは、当初は財政的に持続不可能な結果になりましたが、後に戦略的パートナーシップと技術と財務の改善

策を利用して、2007年にマリでの活動再開に成功しました。現在まで、ペシネットには800人の子どもが登録しています。

 アフリーク・イニシアティブが財政支援、技術サポートを実施し、さらにフランスの地方当局からも寄付が行われました。「アルカテル・ルーセント」

(Alcatel-Lucent)と「オレンジ・マリ」(Orange Mali)という電気通信企業2社が、能力構築と機材を支援しています。

Pésinet(ペシネット)国

マリ企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年2008年

ママドゥ・ガエ(Mamadou Gaye)ウスマン・モロー

(Ousmane Moreau)

医療

投資実施サポート

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h94

Page 97: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

低 所得者へのまともな住宅の提供は、南アフリカの大きな懸案事項です。黒人居住区、

すなわち都市周辺地域にある半インフォーマルな居住地は、アパルトヘイト下で何十年も放置された結果、無秩序に開発され、インフラも不十分なままでした。

 「ランド・マーチャント銀行」(Rand Merchant Bank: RMB)と「ネッドバンク」(Nedbank)という南アフリカの銀行2行が、南アフリカの低所得者住宅市場をターゲットにした革新的な金融商品をそれぞれ開発しました。どちらの事業も2007年に開始され、政府支援を受けて民間セクターが考案した黒人経済エンパワーメント戦略、

「任意金融サービス憲章」(Voluntary Financial Services Charter)を遵守しています。

 RMBは、黒人居住区の社会的多様性を促す手頃な住宅計画に資金を供給しています。ネッドバンクは、これまで顧みられなかった市場、すなわちあまりにも貧しいため従来の住宅ローンを利用できないものの、公的な住居支援を受けるには政府の基準を上回っている人々に、住宅ローンを提供しています。

 どちらの事業も、顧客に金融に関する講習会を実施しています。たとえばネッドバンクは、新たな借り手に住宅金融と家を所有することによる責務について啓発します。

 「 フ ラ ン ス 開 発 庁 」(French Development Agency: AFD)からの財政支援により、銀行は大きな参入障壁―世帯が低所得という点に由来するリスク―を克服することができました。

RMBおよびNedbank(ネッドバンク) 国

南アフリカ 企業形態

大企業

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

ファリッド・バダシェ (Farid Baddache)

金融サービス

インセンティブ 投資 実施サポート

ケ ニアでは、人口の7%未満しか正式な銀行口座を所有していません。銀行取引にかか

るコストが高い場合もあり、銀行口座の開設は中所得・高所得層が対象です。

 M-Pesa(「M」はモバイル、「ペサ」はお金を意味するスワヒリ語に由来)は、地元の大手携帯電話事業者のサファリコムによって、低所得層の顧客に金融サービスを利用しやすくするために、2008年にケニアで創設されたモバイル送金システムです。顧客は取り扱い業者の店舗のほか、スーパーマーケットやガソリンスタンドなどの販売店で、バーチャル口座を利用して入出金できるため、銀行に行く必要がありません。非常に少額の取引―請求書の支払い、商品やサービスの購入、送金―ですら、最小コストでテキストメッセージを介して行うことができます。このシステムは、加入者が1500万人を超えるケニアと、隣国のタンザ

ニア(加入者700万人以上)で大きな成功を収めています。

 M-Pesaは、「ボーダフォン・グループ」(Vodafone Group Plc)とDFIDから初期資金の援助を受けました。このシステムは、取引先登録と銀行窓口の新規獲得に柔軟性を与えるケニアの有利な規制環境からも恩恵を受けています。

Safaricom(サファリコム)によるM-Pesa(Mペサ) 国

ケニア 企業形態

多国籍企業(外資系)

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

ウィニフレッド・N・カルガ (Winifred N. Karuga) トリザ・ムウェンワ (Triza Mwendwa)

ICT

インセンティブ 投資

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 95

Page 98: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

2 006年、サハラ以南アフリカ全域で、推定50万人が睡眠病(アフリカトリパノソーマ

症)に感染していました。治療せずに放っておけば、ほとんどの場合、死に至る疾病です。

  サ ノ フ ィ は ヨ ー ロ ッ パ 最 大 の 製 薬 会 社 で、2001年にWHOと協力して、睡眠病や他の顧みられない疾病への対処に乗り出しました。睡眠病を制御するために、複数の活動―医薬品の寄付、配布プログラムへの補助、治療と診断を改善するためのR&D―を組み合わせました。両者のパートナーシップの開始以降、15万人以上の患者が治療を受け、睡眠病の治療を受ける患者数は60%以上減少しました。報告される新患者数は、2001年の3万人から2009年には1万人を下回るまでに減少しました。医師などの医療従事者に、睡眠病の診断と治療の研修も実施しました。

 今日まで、サノフィは7500万ドルを睡眠病プログラムに寄付しており、同プログラムは2016年まで続けられる予定です。睡眠病に対する政治的関心も高まっており、それがもっとも高まったのは、2005年にアフリカ連合が睡眠病のはびこる国からの同疾病の根絶を求める決議案を承認したときでした。それにより、新たな治療と診断の選択肢の研究・開発に多額の投資が行われることになりました。

Sanofi(サノフィ)国

サハラ以南アフリカ企業形態

多国籍企業(外資系)

支援機能

分野

著者

執筆年2008年

ロバート・ダーコ・オセイ(Robert Darko Osei)

医療

情報投資実施サポート

南 アフリカの都市部の多くのスラム街には、地方政府の資金不足から、十分なサービス

が届いていません。当局は、廃棄物処理などの一部のサービスを民営化することで対応してきました。

 テッドコアは、コミュニティベースの営利目的の廃棄物処理会社で、黒人起業家の事業の立ち上げを支援しながら、顧みられてこなかった地域への安価なサービスを提供するために設立されました。実業家のジョン・ホートン氏が1996年に創業した同社は、コミュニティの請負人に対して、継続的な財政・事業支援と、公認の研修を実施し、請負人は廃棄物収集車両のオーナードライバーになります。テッドコアは、外部委託した南アフリカの都市廃棄物管理システムの株式を10%保有し、120人のコミュニティの請負人のために廃棄物管理会社を設立しました。必要な技能を確保するた

めに、テッドコアは中等教育を卒業した黒人起業家とのみ提携し、財務・経営管理の広範囲にわたる研修を実施しています。

 南アフリカでの事業に対するアファーマティブ・アクションの重要性を考慮して、新進の黒人起業家の支援に重点を置くテッドコアは、銀行ローンを受け、優遇金利で廃棄物収集車を取得することができました。

Tedcor(テッドコア)国

南アフリカ企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年2010年

マイケル・ゴールドマン(Michael Goldman)

廃棄物

投資実施サポート

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h96

Page 99: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

ケ ニアでは、スラム街や農村地域に暮らす多くの人々が安価な医薬品や基本医療を利用

できず、マラリアや下痢などの疾病で苦しみ、命を落としています。

 2000年に設立されたサスティナブル・ヘルスケア・ファウンデーションは、農村地域と都市のスラム街で、「子どもと家族のための医療」(child and family wellness: CFW)を重視した営利目的の零細規模の薬局と診療所を経営しています。フランチャイズ主宰者として営業しており、フランチャイズ経営者(コミュニティの医療従事者)を選び、規定を遵守させながら、共通のブランド、ロジスティクスネットワーク、研修を提供します。CFWの薬局と診療所は、安価な医療へのアクセスをもたらす一方、十分な収益を上げて看護師のフランチャイズ経営者やスタッフに水準以上の給与を支払っています。同ファウンデーションは、

ケニアに66店、ルワンダに10店の加盟店があり、300万人以上にサービスを提供しています。

 同ファウンデーションは、フランチャイズ経営者に開業資金、研修、良質の医薬品を支援しながら、診療所の新規設立に対する政府の認可やその他の規制上の要件に対応し、保健省との関係を構築しています。コミュニティのメンバーがサービスについて知り、ニーズを表明するようになることで、コミュニティへの働きかけが進みます。また、学術機関と協力して、CFWがケニア国民の健康に与える影響を評価しています。

The Sustainable Healthcare Foundation (サスティナブル・ヘルスケア・ファウンデーション)

ケニア 企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

ウィニフレッド・N・カルガ (Winifred N. Karuga)

医療

実施サポート

牧 畜はモーリタニアの重要な文化的伝統で、350万人が遊牧による牧畜業を営んでいま

す。しかし、そうして生計を立てることがますます困難になっています。

 1987年、ナンシー・アベイディラハーン氏がモーリタニアに設立したティビスキーは、アフリカ初のラクダ乳業会社です。現在では、国内消費向けに牛と山羊の乳も加工しています。遊牧民の家族は家畜の乳を長らく飲んできましたが、都市の食品雑貨店では、容器詰めや加工された新鮮なミルクや乳製品を手に入れることはできませんでした。ティビスキーは、半遊牧生活で最低水準の所得を得ている家畜所有者から乳を調達し、彼らが伝統的な生活様式を維持しながら、所得を得られるようにしています。ティビスキーの乳製品は、ヨーロッパからの輸入品に取って代わり、モーリタニア経済を活性化しています。同社は現在、ラ

クダ乳製品の輸入をヨーロッパ諸国に働きかけています。

 ティビスキーは、「フランス経済協力中央金庫」(Caisse centrale de coopération économique)から15万ユーロの初期融資を受けて設立されました。乳製品への度重なる投資は400万ユーロと推定され、200万ユーロ(フランス経済協力振興投資公社(Proparco)からの50万ユーロ、国際金融公社(IFC)からの50万ユーロ、地元の銀行GBMからの100万ユーロ)のローンを要した超高温熱処理(UHT)プラントへの投資も含まれます。

Tiviski Dairy(ティビスキー・デイリー) 国

モーリタニア 企業形態

 中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

ママドゥ・ガエ (Mamadou Gaye)

農林業

投資 実施サポート

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 97

Page 100: アフリカの富の実現...本報告書について 国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成 プログラム(African Facility for Inclusive

ケ ニアでは、人口の84%が電力供給網を利用できません。そのため、生産性が著しい影

響を受け、高価で環境に有害な化石燃料への依存度が高まり、人々は灯油の燃焼時に発生する煙など健康上有害なさまざまな物質にさらされます。

 「タフスタッフ・イースト・アフリカ」(ToughStuff East Africa)は、「タフスタッフ・インターナショナル」(ToughStuff International)の子会社で、ケニアに本社を置き、ケニアやほかの東アフリカ諸国の低所得者へのクリーンで安価なエネルギーの提供を目指しています。タフスタッフは、農村の低所得消費者にソーラーランプ、携帯電話用の充電器やバッテリーを販売しています。2010年の営業開始以来、タフスタッフは、アフリカ最大の太陽光製品市場の1つであるケニアの市場を大きく開拓してきました。

 タフスタッフ製品の迅速な投入は、複数のパートナーシップにより後押しされました。KREPやKADET、「ファウル・ケニア」(Faulu Kenya)などのマイクロクレジット・グループが、融資担当者を通じてローンを実施し、個人が決まった返済期間でタフスタッフ製品を入手できるようにしています。タフスタッフは「ワン・エーカー基金」

(One Acre Fund)とも協力して、農業従事者にランプパネルと携帯電話用充電器のほか、種子や肥料などの農業投入物を供給し、彼らがより長くより少ない障害で働けるようにしています。

ToughStuff(タフスタッフ)国

ケニア企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年2012年

ウィニフレッド・N・カルガ(Winifred N. Karuga)ダイアナ・W・キマニ

(Diana W. Kimani)

エネルギー

実施サポート

ガ ーナでは、33%の世帯が木炭コンロを使用しています。木炭コンロは高価なだけでな

く、深刻な健康問題の一因にもなります。

 トヨラの調理用コンロは、燃料効率が50%改善するよう陶磁器のライナーで補強されています。通常のコンロよりもクリーンで燃料効率がよく、耐久性に優れているうえに、1個7ドルで購入できます。トヨラは2006年に創業され、2011年までに15万4000個のコンロを生産し、94万人の低所得者―ほとんどが農村地域で暮らしています―の調理に関するニーズに応えてきました。同社はそのバリューチェーン上で、全国の300人以上の職人に研修と雇用を提供してきました。トヨラは顧客が買い求めやすくなるように、掛けで買って、木炭の節約で浮いたお金で3か月以上かけて返済するオプションも提供しています。今では、トヨラのコンロは、トーゴとブルキナファソでも売ら

れています。

 創業者のガーナ人起業家、スライ・ワハブ氏とアーネスト・ケイ氏は、USAIDが支援したプログラムの下、2002年に「エンタープライズワークス・ガーナ」(EnterpriseWorks Ghana)による燃料効率のよいコンロを生産するための技術訓練を受けた職人グループに属していました。「クマシ環境技術研究所」(Kumasi Institute of Technology and Environment)がビジネスモデルについて助言を行い、「エコ」(E+Co)が初期融資を実施したおかげで、同社は最初のトラックを購入することができました。さらに、UNEPの「アフリカ村落部エ ネ ル ギ ー 事 業 開 発 」(African Rural Energy Enterprise Development: AREED)プログラムからも融資を受けて、同社は事業を拡大しています。

Toyola(トヨラ)国

ガーナ企業形態

中小企業

支援機能

分野

著者

執筆年2010年

ロバート・ダーコ・オセイ(Robert Darko Osei)

エネルギー

投資実施サポート

事 例 研 究

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h98

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人 口10万人当たりに医師が3人というモザンビークでは、農村集落に医療サービスを届

けることが急務となっています。モザンビーク北部では、診療所にとっての大きな問題は、手術用の照明とワクチンの冷蔵保存に使う燃料が信頼性に欠けることです。

 こうした燃料サービスの拡大を目的にしたパイロットプロジェクトが、2002年に立ち上げられました。このプロジェクトのパートナーには、子どもの健康に尽力した元教育大臣のグラサ・マシェル氏、シアトルに本拠地のある医療必需品を届けるNGOのVillageReach(ヴィレッジリーチ)、モザンビーク保健省、地域開発のニーズに詳しいコミュニティ財団の「地域開発基金」(Fundacao para o Desenvolvimento da Comunidade: FDC)があり、FDCは改良したコールドチェーン

を導入し、遠隔地の医療施設の老朽化したケロシン冷蔵庫を、液化石油ガス(LPG)冷蔵庫に取り替えました。2011年には350トン以上のLPGが輸送され、同社は現在、モザンビークの北部4州すべてで事業を行っています。スタッフ全員が医療研修と指示を受けます。

 資金は、当初、シアトルの資金源から集められ、プロジェクトが拡大するにつれて、スコットランドの「ハンター財団」(Hunter Foundation)やオランダ政府の二国間援助機関など、より大きなパートナーから協力が得られるようになりました。

VidaGás(ヴィダガス) 国

モザンビーク 企業形態

市民社会組織

支援機能

分野

著者

執筆年 2008年

コートニー・スプレイグ (Courtenay Sprague)

エネルギー

投資 実施サポート

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h 99

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情報以下の組織は、データの収集、研究の実施、アドボカシーへの関与により、インクルーシブビジネスに関する知識の蓄積に貢献しています。

アドボカシーアドボカシーには、あらゆる社会的ステークホルダーへの、インクルーシブビジネス普及の促進が含まれます。多くの場合、政策立案者との対話を築き、決定された政策について社会に情報を提供することも含まれます。

Afr ican Women in Business Initiative(アフリカン・ウーマン・イン・ビジネス・イニシアティブ)資金調達を容易にすることにより、アフリカの女性起業家によるSMEの設立を支援します。www.afdb.org/en/topics-and-sectors/init iatives-par tnerships/african-women-in-business-initiative

Ashoka(アショカ財団)インクルーシブビジネス・モデルを構築する個人の社会起業家に、財政支援と専門的支援を提供します。www.ashoka.org

Aspen Network of Development Entrepreneurs(アスペン・ネットワーク・オブ・デベロップメント・アントレプレナーズ)資金とノウハウを投資して、新興市場での起業活動を推進する組織のグローバルネットワークです。www.aspeninstitute.org/policy-work/a s p e n - n e t w o r k - d e v e l o p m e n t -entrepreneurs

Business Action for Africa(ビジネス・アクション・フォー・アフリカ)企業と開発パートナーのネットワークです。アドボカシーを通じて、また、パートナーシップを築いて知識の共有を進めることで、アフリカの開発を進めます。www.businessactionforafrica.org

C e n t r e f o r E n t e r p r i s e Development(センター・フォー・エンタープライズ・デベロップメント)南アフリカに拠点を置く研究・アドボカシー組織で、現地で得た経験に基づき、中央政府への政策提案を打ち出します。www.cde.org.za

Global Development Alliance( グローバル開発アライアンス)共同で定めたビジネス目標、開発目標の実現を目指す官民パートナーシップのための、市場を基盤としたビジネスモデルです。http://idea.usaid.gov/organization/gp

Global Impact Investing Network(グローバル・インパクト・インベスティング・ネットワーク)インパクト・インベストメントの規模の拡大と有効性の改善に尽力するNPOです。www.globalimpactinvestingnetwork.org

I n i t i a t i v e f o r R e s p o n s i b l e Development( イ ニ シ ア テ ィ ブ・フォー・レスポンシブル・デベロップメント)ハーバード大学のイニシアティブで、投資家と社会への長期的な価値の実現を目指す責任投資に関する応用研究に従事しています。http://hausercenter.org/iri

International Business Leaders Forum(国際ビジネス・リーダーズ・フォーラム)独立したグローバルな会員制の協会で、多数のセクター、市場、課題を越えて、企業責任と開発について、ビジネスリーダーシップを促進、奨励します。w w w. i b l f . o r g / e n / p r o g ra m m e s /inclusive-growth/inclusive-business-models.aspx

Schwab Foundation for Social Entrepreneurship(シュワブ財団)持続可能な社会革新のリーディングモデルに光を当て、それを促進するために、地域レベル、グローバルレベルでプラットフォームを提供します。www.schwabfound.org/sf/index.htm

World Business Council for Sustainable Development(持続可能な発展のための世界経済人会議)

(WBCSD)企 業 のCEOが 主 導 す る 組 織 で、ステークホルダーと強固な関係を築き、持続可能な開発のソリューションに資する政策変更を推進します。www.wbcsd.org

World Economic Forum – New Vision for Agriculture( 世 界 経 済フォーラム―農業のための新しい視点)官民の関係者を含むこのプラットフォームは、市場を基盤にしたソリューションにより、持続可能な農業成長を実現するために、共通の行動指針を考案し、マルチステークホルダーの協調を促進することを目指します。w w w . w e f o r u m . o r g / i s s u e s /agriculture-and-food-security

賞これらの賞により、成功事例を紹介し、効果的なソリューションと教訓が提供されます。

Ashden Awards(アシュデン賞)貧困を削減し、人々の生活を向上させる、環境に優しいエネルギーソリューションを奨励します。アシュデン賞は、エネルギーパイオニアの事業開発を支援します。www.ashdenawards.org

The BiD Network(ザ・ビッド・ネットワーク)このネットワークは、高成長中のSMEに重点を置き、ウェブプラットフォームを主催して、ビジネスプラン・コンペ、コミュニティ構築ツールとコーチングを推進します。www.bidnetwork.org

G20 Challenge on Inclusive Business Innovation(G20チャレンジ・革新的なインクルーシブビジネス)革新的で規模があり、商業的に実現可能な方法で、途上国の低所得層と協働する企業を対象とした国際コンペです。www.g20challenge.com/

SEED Awards for Entrepreneurship in Sustainable Development(環境の持続可能な開発を目指す活動を支援するSEED賞)社会的利益と環境保全上の利点をビジネスモデルに統合する、世界各地の現地主導の革新的な小規模企業を支援します。www.seedinit.org

参考情報 さまざまな組織がビジネスパートナーとして、低所得層の人々と協働しようとする企業や起業家を支援しています。本報告書のために実施した事例研究、インタビュー、アンケート調査のほか、「プラクティショナー・ハブ」(Practitioner Hub)のデータベースから、インクルーシブビジネスのエコシステムの4つの機能である情報、インセンティブ、投資、および実施サポートに従事する組織の一覧を、以下に掲載しました。この一覧は、支援を求める企業への情報提供を目的としたものですが、国家レベルの支援機関については掲載しておらず、すべての支援組織を網羅しているわけではありません。

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World Business and Development Awards(世界ビジネス・デベロップメント賞)International Chamber of Commerce(国際商業会議所)とUNDPが創設したこの賞は、開発に寄与する企業を表彰します。w w w. i cc w b o. o rg / t ra i n i n g - a n d -events/competitions-and-awards/instituteof-world-business-law/world-business-and-development-awards

インクルーシブビジネスに関する研究機関インクルーシブビジネスに関する研究は、課題、優れたソリューション、効果的なビジネスモデル、規模の拡大、成功事例への価値ある洞察をもたらします。

BoP Knowledge Network(BoPナレッジ・ネットワーク)BoP市場での包括的なイノベーションの開発を促すNPOです。www.bopinc.org

BoP Learning Lab Southern Africa(BoPラーニング・ラボ・サザン・アフリカ)アフリカでのインクルーシブビジネスについて、知識を共有する機会を提供します。www.bop.org.za/BOP_Lab/Home.html

Business Call to Action(ビジネス行動要請)企業が参加できるプラットフォームのほか、開発への市場志向型アプローチのノウハウ、知識、成功事例を共有する機会を提供します。www.bcta-initiative.org

Bus ines s f o r Deve lopment Pathfinder(ビジネス・フォー・デベロップメント・パスファインダー)アフリカでのインクルーシブビジネスを促進するために、ビジネス団体やCEOと協力し、インクルーシブビジネスに関心を持つ企業に対して、実績の測定や実際的なサポートを提供します。www.b4dpathfinder.org

Business Fights Poverty(ビジネス・ファイツ・ポバティ)企業と開発の専門家によるネットワークで、インクルーシブビジネスにおける同業者間での取り組みと知識の共有を促進します。www.businessfightspoverty.org/

Center for Sustainable Global Enterprise(Cornell)(持続可能な世界企業センター(コーネル大学))インクルーシブビジネスの戦略策定と実施に重点を置いた、共同応用研究と企業主催のプロジェクトに従事しています。www.johnson.cornell.edu/Center-for-Sustainable-Global-Enterprise.aspx

Consultative Group to Assist the Poor(貧困層支援協議グループ)世界の貧困層による、金融サービスへのアクセスの改善に尽力する、33の開発機関と民間基金からなる独立の政策研究センターです。www.cgap.org

Endeva(エンデヴァ)インクルーシブビジネス・モデルに関する一般的な情報のほか、分野別(アグリビジネス、マイクロ保険、エネルギー、医薬品など)の情報を用いて、インクルーシブビジネスの推進に尽力する研究コンサルティング機関です。www.endeva.org

Gordon Institute of Business Science(ゴードン・インスティテュート・オブ・ビジネス・サイエンス)(GIBS)インクルーシブビジネスに関する研究とリーダーシップ対話を実施する南アフリカの経営学大学院です。www.gibs.co.za

Harvard CSR Initiative(ハーバードCSRイニシアティブ)研究、対話、ワークショップ、教育、および広報・普及活動を通じて、企業の社会的責任の効率性について研究し、その向上を追求しています。www.hks.harvard.edu/m-rcbg/CSRI

Intellecap(インテルキャップ)社会と環境の改善に取り組む、収益性が高く、持続可能な事業の構築と拡大を支援する、革新的なビジネスソリューションを提供しています。www.intellecap.com

The LSE Co-Creation Lab(ジ・LSEコークリエーション・ラボ)主要な学識者、NGO、社会起業家、企業間のパートナーシップです。成功を収めているビジネスモデル・イノベーションを通じて、貧困削減を追求しています。www.icclab.com

Monitor Inclusive Markets( モ ニター・インクルーシブ・マーケット)包括的市場の特定、開発、拡大促進 の た め の 投 資 を 重 視 し たMonitor Group(モニター・グループ)の専門化した事業部門で、最近、Deloitte(デロイト)に買収されました。www.mim.monitor.com

Next Billion(ネクスト・ビリオン)インクルーシブビジネスに関心を持つ個人と組織を対象に、ディスカッション・フォーラム、知識基盤、ネットワーキングサイトとしての機能を果たすオンラインプラットフォームです。www.nextbillion.net

ODI Private Sector and Markets(ODIプライベート・セクター・アンド・マーケット)企業、政府政策、ビジネス環境の開発上の影響を研究し、影響を改善するための経済的インセンティブを検証しています。www.odi.org.uk/work/programmes/business-development

Reciprocity(レシプロシティ)インクルーシブビジネス・モデルに特化した南アフリカのコンサルティング会社で、ビジネス実行と市場調査サポートも実施しています。www.reciprocity.co.za

UNDP Growing Inclusive Markets(UNDP包括的な市場の育成)よりインクルーシブなビジネスモデル構築の理解、実現、動機づけを目指す研究・アドボカシーのイニシアティブです。www.growinginclusivemarkets.org

市場調査低所得市場に関する信頼できる情報はあまり存在しないため、市場調査を専門に行う以下の企業が重要なパートナーになります。

Consumer Insight Ltd(コンシューマー・インサイト)ナイロビに拠点を置く、アフリカ市場専門の市場調査会社です。www.ciafrica.com/oindex

Field Africa(フィールド・アフリカ)南アフリカに本社を置く企業で、全アフリカ諸国の市場調査を実施します。www.fieldafrica.com

FinScope(フィンスコープ)FinMark Trust(フィンマーク・トラスト)によるイニシアティブで、金融サービスと財務上の問題について、消費者知覚に関する全国代表調査を実施し、消費動向と財務管理についての情報を提供します。www.finscope.co.za/new/pages/default.aspx

Initiative for Global Development(イニシアティブ・フォー・グローバル・デベロップメント)会員制のネットワークで、企業の結び付きを促し、分野を重視する利益グループについて市場情報を提供します。www.igdleaders.org

Jana(ジャナ)携 帯 電 話 の 通 信 時 間(mobile airtime)を利用したインセンティブを通じて、新興市場の消費者をブランドと結び付ける市場調査会社です。www.jana.com

Research Africa(リサーチ・アフリカ)ウガンダとオランダに拠点を置き、社会的影響に焦点を当てた市場調査会社です。www.researchafrica.com

インセンティブインセンティブは、インクルーシブビジネスにより適した事業環境を作り、低所得消費者を対象にした企業に報い、低所得者が市場に参入できるようにする政策と基準を設定することによって、アフリカでのビジネスの推進を支援します。

プラットフォームプラットフォームは、企業が他のステークホルダー、特に政府との対話に参加し、連携できる場を形成します。

African Cashew Initiative(アフリカン・カシュー・イニシアティブ)カシューナッツの持続可能な生産のための基準の策定と実施支援を行う、マルチステークホルダーのイニシアティブです。www.aci.org

Alliance for Green Revolution in Africa(アフリカ緑の革命のための同盟)(AGRA)AGRAのプログラムは、改良種を供給し、土壌肥沃度を高め、市場アクセスを向上させ、パートナーシップを促すことにより、農業セクターの開発に重点を置いています。www.agra-alliance.org

The Comprehens i ve A f r i ca Agriculture Development Platform

(ザ・コンプリヘンシブ・アフリカ・アグリカルチャー・デベロップメント・プラットフォーム)アフリカにおける農業生産性向上を目的とした、アフリカの人々が所有し、アフリカの人々が主導するイニシアティブです。www.nepad-caadp.net

Competit ive Afr ican Cotton Initiative(コンペティティブ・アフリカン・コットン・イニシアティブ)

(COMPACI)環境、経済、社会の持続可能性に関する基準に従って、サハラ以南アフリカの綿花生産の向上を促進しています。www.compaci.org

Donor Committee for Enterprise Development(企業開発のためのドナー委員会)途上国の民間セクターの開発を通じて、経済的機会と自主性を推進しています。www.enterprise-development.org

Grow Africa(アフリカの成長)農業の国家的優先課題に基づき、アフリカの農業への投資と変革の加速を模索するパートナーシップのプラットフォームです。www.growafrica.com

Lighting Africa(アフリカに光を)照明器具を対象にした、製品品質保証プログラムを考案しました。www.lightingafrica.org

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Making Finance Work for Africa(アフリカで金融セクターを機能させる)重複を避け、開発効果を最大限に引き出すために、アフリカ全土で金融セクターの開発を調整することによって、アフリカの金融セクター開発を支援するイニシアティブです。www.mfw4a.org

Nepad Business Foundation(Nepadビジネス基金)アフリカ全域での経済と社会の持続可能な開発を促進する、会員制の基金です。www.nepadbusinessfoundation.org

Sustainable Commodity Initiative(サスティナブル・コモディティ・イニシアティブ)(SCI)持続可能な開発のための国際研究所(IISD)と国連貿易開発会議

(UNCTAD)の合同イニシアティブで、世界の商品生産と貿易において、持続可能な慣行が確実に採用されることを目指しています。www.idhsustainabletrade.com

Sustainable Trade Initiative( サ スティナブル・トレード・イニシアティブ)世界における持続可能な生産と消費の推進という目的と、貧困削減、環境保全、公正で透明な貿易慣行の普及などの目標を持って、連携する主要企業、市民社会団体、および政府を集めています。www.idhsustainabletrade.com

UNDP African Facility for Inclusive Markets(UNDPアフリカの包括的な市場の育成プログラム)UNDPの地域プログラムで、地域レベル、大陸レベルでの政策、企画、パートナーシップによる介入を通じて、アフリカでの包括的な市場の育成を支援しています。www.undp.org/africa/privatesector

基準基準は、社会と環境への利益に報いる政策を策定します。

Fairtrade International( フ ェ ア トレード・インターナショナル)国際フェアトレード基準を策定し、フェアトレードに参加する農業従事者を支援する25の組織のネットワークです。www.fairtrade.net

Gold Standard(ゴールド・スタンダード)高い効果の見込めるカーボンオフセット・プロジェクトに資金を動員する認証制度です。www.cdmgoldstandard.org

The International Federation of Organic Agriculture Movements(国際有機農業運動連盟)(IFOAM)有機農業運動のための世界的な統括組織です。IFOAMは、IFOAM基礎基準を策定しました。これに基づき、官民の基準設定団体が、より明確な有機基準を考案することができます。www.ifoam.org

Rainforest Alliance(レインフォレスト・アライアンス)特定の社会、経済、環境に関する持続可能性基準を満たす農園の認証を行う国際NGOです。www.rainforest-alliance.org

SA(ソーシャル・アカウンタビリティ規格)8000労働者の権利を促進するとともに、雇用主によるまともな仕事と労働条件を保証するための制度に基づくアプローチの継続的な実施を可能にするための国際規格です。www.sa-intl.org

UTZ Certified(UTZ認証)持続可能な農業慣行に対する認証です。農業従事者がより良い農法を学び、労働環境を改善し、環境を保全することができるようにします。www.utzcerti!ed.org

投資以下の機関は、インクルーシブビジネス・モデルの特有のニーズに合う資本とインパクト・インベストメントを提供することにより、ビジネスの活性化を支援します。

チャレンジ・ファンドチャレンジ・ファンドとは、企業などが提出した提案に基づいて、特定の分野への資金配分を行う融資メカニズムです。

Africa Enterprise Challenge Fund(アフリカ企業チャレンジ・ファンド)(AECF)AECFは、民間セクターの企業への競争的補助金(5万米ドルから10万米ドル)を通じて、アフリカにおける革新的で新しいビジネスモデルを支援するチャレンジ・ファンドです。www.aecfafrica.org

COOP Africa Challenge Fund( アフリカ協同組合ファシリティー・チャレンジ・ファンド)ア フ リ カ 協 同 組 合 フ ァ シ リティー・チャレンジ・ファンドは、協同組合と協同組合を統括する団体、および他の協同組合支援組織に補助金を供与します。w w w . i l o . o r g / p u b l i c / e n g l i s h /employment/ent/coop/africa/areas/challenge.htm

Youth-to-Youth Fund(ユース・ツー・ユース・ファンド)ILO、国連、世界銀行による合同イ ニ シ ア テ ィ ブ、Youth Employment Network(若年雇用ネットワーク)が提供する、青年団体向けの基金です。資金提供の目的は、若い起業家による企業の立ち上げを支援することです。w w w . i l o . o r g / p u b l i c / e n g l i s h /e m p l o y m e n t / y e n / w h a t w e d o /projects/y2y/y2y.htm

開発金融組織(DFI)DFIには、貸付金基金、マイクロファイナンス機関など、さまざまな組織があり、開発を促進する投資のために、民間セクターに融資を行います。

African Development Bank(アフリカ開発銀行)地域の加盟国に投資する民間企業に、融資、補助金、専門的な支援を提供します。

CDC(英連邦開発公社)CDCは、事業の確立を支援することで貧困と闘うことを目的として、アフリカと南アジアの企業に、直接または仲介者を介して、借入資本と自己資本を提供します。www.cdcgroup.com

Development Bank of Southern Africa(南部アフリカ開発銀行)物的・社会・経済インフラに資金を提供することで、持続可能な社会経済開発を促進する開発金融組織です。www.dbsa.org

DEG長期債券類、エクイティファイナンス、メザニンファイナンス、保証など、途上国の生活水準を向上させる民間セクターの投資に資金を提供します。www.deginvest.de/EN_Home/About_DEG/index.jsp

ECOWAS Bank for Investment and Development(西アフリカ諸国経済共同体投資開発銀行)(EBID)西アフリカに重点を置いた開発金融組織です。www.bidc-ebid.org/en/index.php

Finance for Development(ファイナンス・フォー・デベロップメント)オランダに拠点を置く企業開発銀行で、開発途上市場の企業、プロジェクト、金融機関に対して、株式、融資、保証を提供します。www.fmo.nl

I n d u s t r i a l D e v e l o p m e n t Corporation(産業開発公社)アフリカ全土で経済成長と産業開発を促進するために設立された、国家開発金融機関です。南アフリカ政府が所有する産業開発公社は、Econom ic Deve lopmen t Ministry(経済開発省)の管理下にあります。www.idc.co.za

International Finance Corporation(国際金融公社)(IFC)世界銀行グループの1機関で、主に、中規模・大規模企業向けに融資を行い、民間セクターを支援しています。www.ifc.org

Norfund(ノルウェー開発途上国投資資金)途上国に収益性の高い持続可能な企業を設立し、経済成長と貧困削減を実現できるように育成する投資会社です。www.norfund.no

PROPARCO(フランス経済協力振興投資公社)新興国と途上国のほか、南半球の地理的地域に投資を行うフランスのDFIです。www.proparco.fr/lang/en/Accue-il_PROPARCO

USAID Development Credit Authority(USAID開発信用保証メカニズム)民間金融機関が行った融資のデフォルトについて、50%までをカバーする部分的信用保証を通じて、インクルーシブビジネス・モデルに参加する小規模農業従事者と中小企業の資金へのアクセスを促します。w w w . u s a i d . g o v / w h a t - w e - d o /e c o n o m i c - g r o w t h - a n d - t r a d e /d e v e l o p m e n t - c r e d i t - a u t h o r i t y -putting-local-wealth-work

助成金提供団体助成金は、ビジネスモデルのいくつかの段階できわめて重要な資本となる場合があり、具体的なプロジェクトへの資金として用いられることも多くあります。

African Grantmakers Affinity Group(アフリカン・グラントメイカーズ・アフィニティ・グループ)アフリカでの、より効果的ないっそうの助成金の提供を促進します。また、基金や財団がネットワークを作り、助成金の提供に関する情報を共有し、新たな情報源を構築するためのフォーラムを提供しています。www.africagrantmakers.org

参 考 情 報

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Bill & Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)助成金とパートナーシップによって、インクルーシブビジネスの構築を支援しています。www.gatesfoundation.org

Innovations Against Poverty(イノベーションズ・アゲインスト・ポバティ)小規模・大規模企業に、助成金、財務保証、技術サポートを提供し、それらの企業によるインクルーシブビジネス・モデルの舵取り、規模拡大を支援します。http://businessinnovationfacility.org/page/about-us-about-innovations-against-poverty

Rockefeller Foundation(ロックフェラー財団)研究を実施し、インパクト・インベストメントやイノベーションを可能にする環境の創造などをともなう開発イニシアティブに、助成金を供与する大規模財団です。www.rockefellerfoundation.org

Skoll Foundation(スコール財団)社会起業家を支援する財団で、資金提供とパートナーシップによって、イニシアティブを援助しています。www.skollfoundation.org

The Small Enterprise Foundation(ザ・スモール・エンタープライズ・ファウンデーション)非営利のマイクロファイナンス機関で、社会から隔絶されている零細企業にマイクロローンを提供します。www.sef.co.za

Tony Elumelu Foundation(トニー・エルメル・ファウンデーション)起業家に起業資金(借入資本と自己資本)を提供し、自分のアイデアを確実なプロジェクトにできるよう後押しするBDSsを支援して、強力な経営陣の下で、財政的に持続可能な事業の設立を促します。www.tonyelumelufoundation.org

UNCDF(国連資本開発基金)世界の後発開発途上国49か国を対象とした国連の資本投資機関で、マイクロファイナンスと投資資本へのアクセスを拡大することにより、貧困層とその小規模事業に対して新たな機会を創出します。www.uncdf.org

U n i t e d S t a t e s A f r i c a n Development Foundation(ユナイテッド・ステイス・アフリカン・デベロップ メ ント・ フ ァ ウ ン デ ー シ ョ ン )

(USADF)アフリカの社会から隔絶され、十分にサービスを受けていないグループに恩恵をもたらす地域団体と小規模企業に、最大25万ドルの助成金を供与します。www.adf.gov

インパクト・インベストメントファンドインクルーシブビジネスを重視する以下の投資会社は、多くの場合、特定の地域、分野、事業規模を対象としています。

Acumen Fund(アキュメン・ファンド)低所得消費者に対して、安価な医療、水、住宅、エネルギー、農業投入物を提供する初期段階の企業への債券投資、株式投資を行います。www.acumenfund.org

African Agricultural Capital( ア フリカン・アグリカルチュラル・キャピタル)東アフリカの小規模農業従事者の生活を改善する高い可能性を持った、商業的に実現可能な中小規模の農企業に投資を行います。www.aac.co.ke/web

Agri-Vie(アグリ・ヴィ)サハラ以南アフリカの食料と農業を重視した、民間の株式投資会社です。www.agrivie.com/

The Ca l ve r t Soc ia l Impac t Foundation(ザ・カルバート・ソーシャル・インパクト・ファウンデーション)安価な融資を実施して、非営利のマイクロファイナンス機関、フェアトレードコーヒー協同組合、社会的企業の成長資金を提供しています。www.calvertfoundation.org

Developing World Markets( デ ベロッピング・ワールド・マーケット)世界規模で、経済と社会の持続可能な開発を促進している資産運用管理・投資銀行です。www.dwmarkets.com

E + Co(エコ)気候変動と貧困への持続的な解決策を提供する新設企業とSMEに重点を置いて、途上国でクリーンエネルギーへの投資を行っています。www.eandco.net

Emerging Africa Infrastructure Fund(新興アフリカ諸国インフラストラクチャー基金)外貨建ての長期融資や商業的条件でのメザニン型融資を提供して、民間インフラの建設、開発に資金を供給するデット・ファンドです。www.emergingafricafund.com

G r a m e e n C r e d i t A g r i c o l e Foundation(グラミン・クレディ・アグリコル基金)マイクロファイナンス機関と社会的事業に適した融資を促進します。www.grameen-credit-agricole.org

Grassroots Business Fund(グラスルーツ・ビジネス・ファンド)企業と提携して、課題克服に必要な長期投資資本とビジネス上の助言サービスを提供する、営利・非営利を組み合わせたモデルです。www.gbfund.org

Leapfrog Investments(リープフロッグ・インベストメンツ)アジアとアフリカの新興消費者への金融サービスを重視する企業に投資を行う、利益の使途をあらかじめ定めた基金です。ww.leapfroginvest.com

LGT Venture Philanthropy(LGTベンチャー・フィランソロピー)社会と環境に優れた影響を与える組織を支援する、インパクト・インベストメント機関です。www.lgtvp.com

Lundin Foundation(ランディン・ファウンデーション)インクルーシブビジネス・モデルを構築しているアフリカのSMEに、直接または仲介機関を通じて投資を行う基金です。www.lundinfoundation.org/s/home.asp

Root Capital(ルート・キャピタル)非営利の社会投資基金で、小規模で発展途上の農業ビジネスに対して資本を融資し、金融に関する研修を行い、市場との結び付きを強化することによって、アフリカとラテンアメリカの貧しく環境上脆弱な地域に農業による繁栄をもたらします。www.rootcapital.org

Small Enterprise Assistance Fund(スモール・エンタープライズ・アシスタンス・ファンド)十分にサービスの行き届いていない市場の初期段階の企業に対して投資を行う民間企業です。www.seaf.com

Soros Economic Development Fund(ソロス経済開発基金)雇用の創出や衰退しつつあるコミュニティの再開発を通じて、貧困の緩和に取り組む持続可能なビジネスやイニシアティブに投資することで、経済開発を支援する基金です。www.sedfny.org

TLG Capital(TLGキャピタル)特にサハラ以南アフリカのフロンティア市場で、現地の成長資金

(growth capital)を扱うニッチ金融機関です。社会的利益にかなう影響をもたらす、収益性の高い企業に投資します。www.tlgcapital.com/home

未公開株式投資会社とファンド・マネージャーこれらの投資運用会社は、資本を貯めて、特定の分野(この場合はインクルーシブビジネス)を対象に投資を行います。

Actis(アクティス)新興市場に投資を行い、未公開株、インフラ、不動産の3つの資産区分を提供する、未公開株式投資会社です。www.act.is

Adlevo Capital(アドレボ・キャピタル)最新技術を可能にして、社会開発に好結果を生み出すビジネスモデルに焦点を当て、サハラ以南アフリカの民間企業に、株式投資と株式リンク投資を行います。www.adlevocapital.com

Advanced Finance & Investment Group(アドバンスド・ファイナンス&インベストメント・グループ)アフリカに重点を置いた未公開株式運用会社で、金融貢献に留まらず、価値付与を重視したアフリカの未公開株の専門家が運営する投資に、現地の資本を投入します。www.afigfunds.com

Aureos(オレオス)新興市場の未公開株式投資会社で、金融サービス、一般的サービス、建築・工学、製造業、日用消費財、TMT(電気通信/メディア/IT)など、いくつかの主要投資分野に成長資金を提供します。www.aureos.com

Developing Partners International(デベロッピング・パートナーズ・インターナショナル)アフリカの新たに民営化した紛争後の国・地域に投資を行う、未公開株式投資会社です。www.dpi-llp.com

Emerging Capital Partners(エマージング・キャピタル・パートナーズ)アフリカを重視した未公開株式投資会社です。制限的競争などが特徴のビジネス環境や、アフリカの比較優位性があるか、満たされていないニーズがある分野で事業を展開している企業に投資を行います。www.ecpinvestments.com

Ethos(エトス)南アフリカと、特にサハラ以南アフリカの中規模から大規模の企業に対して長期投資を行う、未公開株式投資会社です。www.ethos.co.za/live/index.php

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GroFin(グロフィン)SMEを対象とした金融・開発会社で、アフリカと中東の成長企業にベンチャーキャピタルと事業開発支援を組み合わせて提供します。www.grofin.com

Jacana(ジャカナ)アフリカ全域を対象にした未公開株式投資会社で、起業家に投資して順調なSMEを確立し、持続可能な財務上、社会上の利益をもたらします。www.jacanapartners.com

実施サポート実施には、ビジネスアイデアの実現も含まれます。以下の組織は、助言サービス、物流サポート、能力開発、融資の提供を含む、多方面にわたるサービスを提供することで、インクルーシブビジネス・モデルの立ち上げを支援します。

A c c e n t u r e D e v e l o p m e n t Partnerships(アクセンチュア・デベロップメント・パートナーシップ)組織を強化し、新興市場を構築します。その中から、アクセンチュアの中核的スキルと資産を、国際的な開発セクターに利用できるようにする非営利モデルを採用します。w w w . a c c e n t u r e . c o m / u s - e n /c o n s u l t i n g / i n t e r n a t i o n a l -development/Pages/index.aspx

AgDevCo(アフリカ農業開発企業)ソーシャルベンチャーキャピタルに投資して、サハラ以南アフリカにおける商業的に実行可能な農業関連産業への投資機会を創出します。www.agdevco.com

Agri-ProFocus(アグリプロフォーカス)オランダにルーツのあるパートナーシップで、途上国の小規模農業従事者による起業活動を奨励します。www.agri-profocus.nl

The Business Place(ザ・ビジネス・プレイス)南部アフリカでの起業活動の奨励と、持続可能なビジネスの創設を目指しています。www.tbp.co.za

Business Growth Initiative(ビジネス・グロース・イニシアティブ)プロジェクト設計、プロジェクト評価、調査、テクニカルブリーフ、ワークショップ、セミナー、パイロット実証プロジェクトを通じて、直接的、間接的支援を行います。bgi.usaidallnet.gov

Business Innovation Facility( ビ ジネス・イノベーション・ファシリティ)インクルーシブビジネス関連の情報の共有と、革新的なインクルーシブビジネス・モデルの構築や規模拡大を行う企業の支援を目的として、オンラインプラットフォーム「Practitioner's Hub(プラクティショナーズ・ハブ)」を運営しています。www.businessinnovationfacility.ning.com

CNFA民間セクターの強化により、途上国の経済成長を刺激し、農村地域の生活を向上させることを使命としています。www.cnfa.org

develoPPP.de( デ ベ ロッピ ーピ ーピー・ドット・ディーイー)この多国間イニシアティブは、インクルーシブビジネスを支援する企業と開発機関の間のパートナーシップをサポートしています。www.developpp.de/en/index.html

Deve lopment A l t e rna t i v e s International(デベロップメント・アルタナティブズ・インターナショナル)社会戦略開発、官民パートナーシップ、市場動向調査、市場開発、地元の供給業者の振興を通じて、民間セクターと非営利財団にサービスを提供する国際開発コンサルタントです。www.dai.com

Engineers Against Poverty(エンジニアズ・アゲインスト・ポバティ)エンジニアリングと国際開発の分野で活動を行う専門的なNGOです。www.engineersagainstpoverty.org

Enterprise Development Work(エンタープライズ・デベロップメント・ワーク)途上国で、ビジネスチャンスを追求するSME向けの資本(借入資本と自己資本)と、政治リスク保険を誘致するのに不可欠な供給源を引き合わせます。www.ednaccess.com

Imani Development(イマニ・デベロップメント)従業員が所有する民間の経済開発コンサルティング会社で、政策立案者と民間セクターに幅広いサービスを提供します。貿易、民間セクター開発、経済成長、地域統合が専門です。www.imanidevelopment.com

Innovations for Poverty Action(イノベーションズ・フォー・ポバティ・アクション)製品開発などのランダム化比較試験(RCT)の利用を支援します。www.poverty-action.org

In ternat ional Development Enterprise(国際開発エンタープライズ)(IDE)非営利の開発機関で、市場主導型のプロジェクトや灌漑、飲料水供給、収穫後の加工などの技術を支援します。www.ideorg.org

Oxfam International(オックスファム・インターナショナル)食糧の安全保障と農業に重点を置く国際NGOで、多くの場合、民間セクターと協働しています。www.oxfam.org

Phytotrade(フィトトレード)会員制の非営利組織で、アフリカの農業従事者を国際市場に結び付け、会員に助言と研修、認証に関するサポート、人脈作りの機会を提供します。www.phytotradeafrica.com

Practical Action(プラクティカル・アクション)技術を用いて貧困問題に対処する国際NGOで、多くの場合、民間セクターと協働しています。www.practicalaction.org

Private Enterprise Partnership Africa(アフリカ民間企業パートナーシップ)国際金融公社によるこのイニシアティブは、多国間機関、政府、民間セクターとのパートナーシップにより、投資環境を改善し、民間セクターの投資を動員し、アフリカの民間企業の競争力を強化するためのプログラムと助言サービスを実施します。www.ifc.org/Africa

SNV非営利の国際的な開発機関で、援助国のクライアントに助言、情報交換、アドボカシーサービスを提供しています。www.snvworld.org

Technoserve(テクノサーブ)人々を情報、資本、市場に結び付けることにより、貧困に対するビジネスソリューションを考案しるNPOです。http://www.technoserve.org

Total Impact Advisors(トータル・インパクト・アドバイザーズ)社会的にも財政的にも魅力ある国際投資の機会を明らかにしたり、開発したりすることを専門に助言を行う事務所です。www.totalimpactadvisors.com

UNDP African Facility for Inclusive Markets(UNDPアフリカの包括的な市場の育成プロググラム)UNDPによる地域プログラムで、地域レベルと大陸レベルでの政策、企画、パートナーシップによる介入を組み合わせて、アフリカ全域の包括的な市場の育成を支援します。www.undp.org/africa/privatesector

U N D P I n c l u s i v e M a r k e t Development(UNDP包括的な市場の開発)UNDPのGrowing Sustainable Business(持続可能なビジネスの育成)イニシアティブから派生した、この包括的な市場の開発アプローチは、企業のコアビジネスに関して、企業と協力しながら、開発目標の実現を推進します。www.undp.org/content/undp/en/home/ourwork/partners/private_sec-tor/IMD

参 考 情 報

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アフリカのインクルーシブ ビジネス

Monitor Inclusive Markets(モニター・インクルーシブ・マーケット)(2011年)Promise and Progress: Market-Based Solutions to Poverty in Africa(プロミスとプログレス:アフリカの貧困に対する市場主導型ソリューション)Monitor Group(モニター・グループ)アフリカの貧困問題に取り組む、財政的に持続可能な企業について、総合的に分析しています。

UNDP(2012年)Inclusive Business Finance F i e l d G u i d e 2 0 1 2 : A Handbook on Mobi l iz ing Finance and Investment for MSMEs in Africa(インクルーシブビジネス・ファイナンス・フィールド・ガイド2012年版:アフリカのMSMEへの資金と投資に関するハンドブック)UNDP African Facil ity for Inclusive Markets(UNDPア フリカの包括的な市場の育成プログラム)MSMEに資金を提供する金融機関から、インクルーシブビジネスへの融資を動員するためのフィールド・ガイドです。

UNDP(2012年)The Roles and Opportunities for the Pr ivate Sector in Africa’s Agro-Food Industry

(アフリカ農業食品産業の民間セクターの役割と機会)UNDP African Facil ity for Inclusive Markets(UNDPア フリカの包括的な市場の育成プログラム)アフリカ農業食品産業の民間セクターにとっての機会を明らかにしています。

アフリカの開発

AfDB、AUC、UNDP、 お よ びUNECA(国連アフリカ経済委員会)(2012年)MDG Report 2012: Assessing Progress in Africa toward the Mil lennium Development Goals(2012年版国連MDG報告:ミレニアム開発目標の達成に向けたアフリカの進捗状況評価)MDGの達成に向けて、アフリカの 進 捗 状 況 を た ど り、 ポ ス ト2015年開発アジェンダと現在のMDGから得られた教訓を、最も適切に取り入れる方法について論じています。

AfDB、OECD、UNDP、およびUNECA(2012年)African Economic Outlook(アフリカ経済見通し)アフリカの経済・社会・政治的発展についてモニタリングする年次報告書です。2012年のテーマは、若年雇用の促進です。

McKinsey Global Institute(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)(2010年)L ions on the move - The progress and potential of African economies(動くライオン―アフリカ経済の進展と可能性)McKinsey Global Institute

(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)アフリカの成長が加速した原因を調査し、企業のビジネスチャンスを明らかにしています。

R o l a n d B e r g e r S t r a t e g y Consultants(ローランド・ベルガー戦略コンサルタント)(2012年)Inside Africa(インサイド・アフリカ)Ro l and Be r ge r S t r a t egy Consultants(ローランド・ベルガー戦略コンサルタント)成長の見通しと機会を含め、セクターごとに分析を行っています。

UNDP(2012年)Africa Human Development Report 2012 - Towards a Food Secure Future(アフリカ人間開発報告書2012:食糧が安定確保される未来に向けて)アフリカの人間開発に関する年次報告書です。

インクルーシブビジネス

クリスティーナ・グラドル、クローディア・クノブロッフ(Christina Gradl and Claudia Knobloch)

(2010年)Inclusive Business Guide( インクルーシブビジネス・ガイド)Endeva(エンデヴァ)インクルーシブビジネス・モデルをどのように構築すればよいのか、企業が低所得市場により深く関与するにはどうすればよいのかなどの概況を提供する入門書です。

クリスティーナ・グラドル、ベス・ジェンキンス(Christina Gradl and Beth Jenkins)(2011年)Tackling Barriers to Scale(拡大への障壁と闘う)Harvard Kennedy School(ハーバード・ケネディ・スクール)、CSR Initiative(CSRイニシアティブ)インクルーシブビジネスのエコシステムと、企業がエコシステムの中で事業を効果的に強化し、活動に利用できる3つの構造について説明しています。

Monitor Inclusive Markets(モニター・インクルーシブ・マーケット)(2009年)Emerging Markets, Emerging Models(エマージング・マーケット、エマージング・モデル)Monitor Group(モニター・グループ)世界の貧困という課題に取り組む市場を基盤としたソリューションの働き、経済的側面、ビジネスモデルについて分析した報告書です。

C・K・プラハラド、スチュアート・L・ハート(Prahalad, C.K. and Stuart L. Hart)(2002年)The Fortune at the Bottom of the Pyramid . S t rategy + Business 26, no. 1st quarter

(2002): 14(ピラミッドの底辺(BoP)における富。戦略プラスビジネス26、第1四半期(2002年):14)貧困と闘う経済・利益志向のアプローチに賛成する議論を展開しています。

UNDP(2008年)Crea t i ng Va l ue f o r A l l : Strategies for Doing Business with the Poor(貧困層を対象にしたビジネス戦略:すべての人々のために価値を創造する)50の ケ ー ス ス タ デ ィ に 基 づ き、インクルーシブビジネスを行うベンチャー企業の制約と有望な解決法を明らかにしています。

UNDP(2010年)The MDGs: Everyone’s Business

(ミレニアム開発目標:全ての人々のビジネス)MDGに基づく政策立案、調査とアドボカシー、資金提供、補足的能力の提供によって、インクルーシブビジネスを支援する組織に指針を与えます。

WRI(世界資源研究所)(2007年)The Next 4 Billion: Market Size and Business Strategy at the Base of the Pyramid(次なる40 億人―ピラミッドの底辺

(BoP)の市場規模とビジネス戦略)分野別、国別に定量的評価を用いて、BoP市場の市場機会を測定しています。

 一般的なインクルーシブビジネスとアフリカの開発に関する参考文献は、膨大な数に上ります。以下のリストには、参考資料としていくつか重要なものを上げています。サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスに、特に重点を置いた出版物もいくつかあります。

 オンライン出版物に関しては、著者と発行年、タイトルのみを記載しています。こうした出版物は、一般的な検索エンジンに資料のタイトルを入力すれば見つかります。

参考文献

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諮問委員会以下の諮問委員が提供してくれた指針と洞察は、アフリカの包括的な市場の育成プログラムと本報告書にとって、計り知れないほど貴重なものです。

キャロライン・アシュリー(Caroline Ashley)、Ashley Insight Ltd(アシュリー・インサイト・リミテッド)取締役マ ー テ ィ ン・ ブ ワ ル ヤ(Martin Bwalya)、Comprehensive Africa Agriculture Development Programme(包括的アフリカ農業開発プログラム)(CAADP)代表リ ネ ッ ト・ チ ェ ン(Lynette Chen)、NEPAD Business Foundation

(NEPADビジネス基金)(NBF)CEOイッサ・フェイ(Dr. Issa Faye)、アフリカ開発銀行(AfDB)Development Research Division(デベロップメント・リサーチ・ディビジョン)マネージャージャメル・グリブ(Djamel Ghrib)、African Union Commission(アフ リ カ 連 合 委 員 会 )(AUC)Division Private Sector Investment & Resource Mobilization(ディヴィジョン・プライベート・セクター・インベストメント&リソース・モビライゼーション)代表タシュミア・イシュマエル(Tashmia Ismail)、Gordon Institute of Business Studies(ゴードン・インスティテュート・オブ・ビジネス・スタディーズ)シニア・レクチャラー、BoPハブマネージャーウーリッヒ・クリンス(Ullrich Klins)、B4D Pathfinder(B4Dパスファインダー)、Southern Africa Trust(南部アフリカトラスト)研究開発コーディネーターオーガスティン・ランギンテュオ(Dr. Augustine Langyintuo)、Alliance for a Green Revolution in Africa(アフリカ緑の革命のための同盟)

(AGRA)、Policy and Partnerships(ポリシー・アンド・パートナーシップ)代表フティ・ムトバ(Futhi Mtoba)、Business Unity South Africa(南アフリカビジネス連合)(BUSA)代表ルーシー・ムチョキ(Lucy Muchoki)、Pan African Agribusiness & Agro-Industry Consortium(パン・アフリカン・アグリビジネス&アグロインダストリー・コンソーシアム)(PanAAC)CEOフレッド・オガナ(Fred Ogana)、TechnoServe(テクノサーブ)ケニア所長ザヒード・トレス・ラーマン(Zahid Torres-Rahman)、Business Fights Poverty(ビジネス・ファイツ・ポバティ)ファンディング・ディレクター

OIKOS UNDP YOUNG SCHOLARS DEVELOPMENT ACADEMY(OIKOS・UNDPヤング・スカラーズ・デベロップメント・アカデミー)2012年8月12日から17日にナイロビで開催されたOIKOS・UNDPヤング・スカラーズ・デベロップメント・アカデミーのパートナーシップの参加者は、本報告書に関するアイデアと提言に寄与しました。

事例研究の執筆者サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスに関する事例研究は、いくつかのGIM研究イニシアティブによって作成されました。28の研究については、2008年と2010年に実施された研究プロジェクトの間に進められ、15の新しい研究については、本報告書のために実施されました。それぞれの寄稿に対して、次の執筆者の方々に謝意を表します。

フアナ・デ・カトー(Juana de Catheu)、エセック経済商科大学院大学(フランス)オレインカ・デイヴィッド・ウェスト(Olayinka David-West)、Pan-African University(パン・アフリカン大学)、Lagos Business School(ラゴス・ビジネス・スクール)(ナイジェリア)ママドゥ・ガエ(Mamadou Gaye)、African Institute of Management(アフリカン・インスティテュート・オブ・マネジメント)、ダカール(セネガル)マイケル・ゴールドマン(Michael Goldman)、Gordon Institute of Business Science(ゴードン・インスティテュート・オブ・ビジネス・サイエンス)(南アフリカ)エリア・ヒサール(Eria Hisali)、Makerere University(マケレレ大学)(ウガンダ)ヤーリ・カマラ(Yarri Kamara)、Initiatives Conseil International(イニシアティブ・コンセイユ・インターナショナル)(ブルキナファソ)ダイアン・ヌデゥトゥ・カンヤグラ(Diane Nduta Kanyagia)、(ケニア)ウィニフレッド・カルガ(Winifred Karuga)、Jomo Kenyatta University of Agriculture and Technology(ジョモケニヤッタ農工大学)(ケニア)アンドレア・ロサーノ(Andrea Lozano)、Aligned Strategies(アラインド・ストラテジーズ)コンサルタント(米国)トリザ・ムウェンワ(Triza Mwenda)、(ケニア)ウスマン・モロー(Ousmane Moreau)、(セネガル)オ ル ウ ェ ミ モ・ オ ル ワ ソ ラ(Oluwemimo Oluwasola)、Obafemi Awolowo University(オバフェミアウォロウォ大学)(ナイジェリア)ロバート・D・オセイ(Robert D. Osei)、University of Ghana(ガーナ大学)(ガーナ)トフィク・シラジ・フィテ(Tofik Siraj Fite)、Jimma University(ジンマ大学)(エチオピア)コ ー ト ニ ー・ ス プ レ イ グ(Courtenay Sprague)、University of the Witwatersrand(ウィットワーテルスラント大学)(南アフリカ)ア ル フ レ ッ ド・K・ タ ー ウ ェ イ・ ト ワ ラ(Alfred K Tarway-Twalla)、University of Liberia(リベリア大学)(リベリア)

 本報告書作成のためにご尽力くださった多くの方々に、謝意を表します。

謝 辞

R e a l i z i n g a f R i c a’ s W e a lt h106

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インタビュー協力者時間と見識を与えてくださったすべての専門家の方々に感謝いたします。

サラ・アブダルハフィズ・ユスフ(Sarah Abdulhafiz Yusuf)、ICE Addis(ICEアディス)オリダプポ・アデオエ(Olidapupo Adeoye)、Tony Elumelu Foundation

(トニー・エルメル・ファウンデーション)ダニエル・アンナローズ(Daniel Annarose)、Manobi(マノビ)ジェイ・バンジェード(Jay Banjade)、CARE International Ethiopia(ケア・インターナショナル・エチオピア)ギブ・バアロッホ(Gib Bulloch)、Accenture(アクセンチュア)ゲルハルト・クッツェー(Gerhard Coetzee)、ABSA(アブサ)ア ン ド レ・ デ ル ヴ ォ ー ト(Andre Dellevoet)、African Enterprise Challenge Fund(アフリカ・. エンタープライズチャレンジ基金)ヴァレンティーナ・ドゥアラ(Valentina Douala)、HIV/AIDS に関するPan African Business Coalition(パン・アフリカン・ビジネス・コリション)(PABC)リバン・イーガル(Liban Egal)、First Somalia Bank(ファースト・ソマリア・バンク)アーノルド・エクペ(Arnold Ekpe)、Ecobank(エコバンク)ジョン・フェイ(John Fay)、Shared Value Africa(シェアード・バリュー・アフリカ)ヨハネス・フロスバッフ(Johannes Flosbach)、Roland Berger(ローランド・ベルガー)ラミラ・ハティファ(Lamira Hatifa)、CSI + ニーナ・ヘニング(Nina Henning)、Johnson and Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)クリス・アイザック(Chris Isaac)、AgDevCo(アフリカ農業開発企業)ニコラ・ジョエル(Nicola Jowel)、SAB Miller(SABミラー)ボ ー ツ・ ブ ラ ッ キ ー・ カ イ ジ ー ル(Boaz Blackie Keizire)、African Union Commission(アフリカ連合委員会)オスカー・キマニ(Oscar Kimani)、Business Mind Africa(ビジネス・マインド・アフリカ)アンニャ・ケーニッヒ(Anja Koenig)、Reform Consulting(リフォーム・コンサルティング)ジュリア・クーニャ(Julia Kurnia)、Zidisha(ジディシャ)ユフキル・クマロ(Ufukile Kumalo)、IDC(産業開発公社)ダニエル・モブリー(Daniel Mobley)、Standard Chartered Bank(スタンダードチャータード銀行)リチャード・モーガン(Richard Morgan)、Anglo American(アングロ・アメリカン)ジェームズ・ムワンギ(James Mwangi)、Equity Bank(エクイティ・バンク)イニ・オヌク(Ini Onuk)、Thristle Consulting(トリストル・コンサルティング)テミトペ・オシコヤ(Temitope Oshikoya)、Ecobank(エコバンク)サグン・サクセナ(Sagun Saxena)、Cleanstar Ventures(クリーンスター・ベンチャーズ)ハインリヒ・シュルツ(Heinrich Schultz)、Organimark(オーガニマーク)サフィアトー・トラオレ(Safiatou Traore)、African Union Commission

(アフリカ連合委員会)ジャスティン・スミス(Justin Smith)、Woolworths(ウールワース)ラ イ ア ル・ ホ ワ イ ト(Lyal White)、Gordon Institute of Business Science(ゴードン・インスティテュート・オブ・ビジネス・サイエンス)ゲリー・ファン・デン・ハウテン(Gerry van Den Houten)、SAB Miller

(SABミラー)

報告書作成チーム本書は、UNDPアフリカ局(RBA)によって作成されました。作成チームは、RBA局長のテゲグネワーク・ゲトゥー(Tegegnework Gettu)と副局 長 バ バ カ ー・ シ セ(Babacar Cissé)、UNDP Regional Service Centre(UNDPリージョナル・サービス・センター)マネージャーのゲルト・トログマン(Gerd Trogemann)に特に謝意を表します。

トーマス・セールス(Tomas Sales)率いるUNDP AFIMチームメンバー:ティーナ・トゥルネン(Tiina Turunen)、ユルゲン・ナグラー(Jürgen Nagler)、パスカル・ボンゾム(Pascale Bonzom )、ダニエル・アクアイ(Daniel Acquaye)

サーバ・ソバーニ(Sahba Sobhani)率いるGIMチームメンバー:スバ・シヴァクマラン(Suba Sivakumaran)、ティーラウト・ティーラスパルク(Teerayut Teerasupaluck)

これらのチームは、研究コンサルティング機関の「エンデヴァ」(Endeva)と「レシプロシティ」(Reciprocity)から支援を受けました。

私たちは、報告書の中心的な共著者として、クリスティーナ・グラドル(Christina Gradl)とピエール・クッツァー(Pierre Coetzer)、エイリーン・クレイマー(Aline Krämer)、ニコ・パスカレル(Nico Pascarel)、クローディア・クノブロッフ(Claudia Knobloch)、アリッサ・リベラ

(Alyssa Rivera)に感謝します。

また、UNDP RBAのチーフ・エコノミスト、ペドロ・コンセイソン(Pedro Conceicao)のほか、アヨデル・オデュソラ(Ayodele Odusola)、マル コ ス・ ネ ト(Marcos Neto)、 キ ャ ス パ ー・ ソ ネ ソ ン(Casper Sonesson)ドミンゴス・マシヴィラ(Domingos Mazivila)、アーネスト・フォースター(Ernest Fausther)らUNDPの同僚たち、そのほかの方々から貴重な支援をいただいたことにも謝意を表します。

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アフリカの富の実現―共栄のためのインクルーシブビジネスの構築

2013年5月

本報告書で表明されている意見や提言は、必ずしも国連、UNDP、およびその加盟国の見解を反映したものではありません。また、本書の地図に掲載している国境、国名、名称は、国連が公式に支持もしくは承認していることを示すものではありません。

Copyright © 2013国連開発計画(UNDP)

One United Nations Plaza, New York, NY 10017, USA

すべての著作権は保護されています。UNDPの事前の許可なく、本出版物のいかなる部分の電子、機械、コピー、その他のいかなる形や手段での複製、保管システムへの保存、伝送を禁じます。

デザイン:Martin Markstein編集:Barbara Serfozo

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アフリカの富は、そこに居住する人々です。彼らは若く、またその数も増加しており、つねに社会参加や雇用の機会を求めています。これらの人々をビジネスに参加させることができるならば、民間セクターは、彼らの持っている潜在力を顕在化させることができます。インクルーシブビジネスは、低所得層の人々をバリューチェーンに組み込むことで、こうした人々の人生の基礎となる様々な機会を生み出します。

これまでもアフリカでは、さまざまなイノベーションや起業家精神に基づいたインクルーシブビジネスが実施されてきました。しかし、アフリカのビジネス環境には数多くの制約があるため、多くの場合、より大きな規模で展開するまでには至っていません。適切な情報やインセンティブを提供し、投資やビジネスの実施を後押しするような支援型のエコシステムが整備されれば、より大きな影響力を持ったインクルーシブビジネスが増えると考えられます。

本報告書は、サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブビジネスの現状と、インクルーシブビジネスを進めている企業と起業家を支えるエコシステムについて説明しています。また、これらの企業と起業家が、より多くの、より強力なインクルーシブビジネスを構築することを可能にする、エコシステム強化のための有望な機会を明らかにするものです。

国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-70UNハウス8Fウェブサイト:www.jp.undp.orgFacebook:www.facebook.com/UndpTokyo

Empowered lives. Resilient nations.

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アフリカの富の実現

共栄のためのインクルーシブビジネスの構築