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肝細胞増殖因子(HGF)の特異的抗体の開発に成功 Word - tohokuuniv-press20160906_02.docx Author df71513315 Created Date 9/6/2016 1:34:58 PM

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Page 1: 肝細胞増殖因子(HGF)の特異的抗体の開発に成功 Word - tohokuuniv-press20160906_02.docx Author df71513315 Created Date 9/6/2016 1:34:58 PM

2016 年 9 月 6 日 報道機関各位

東北大学大学院医学系研究科

大阪大学蛋白質研究所

金沢大学がん進展制御研究所

【研究概要】

東北大学大学院医学系研究科の加藤 幸成(かとう ゆきなり)教授、金子 美

華(かねこ みか)准教授、小笠原 諭(おがさわら さとし)助教(地域イノベ

ーション分野)の研究グループは、大阪大学蛋白質研究所の高木 淳一(たかぎ

じゅんいち)教授、海津 正賢(うみつ まさたか)特任助教および金沢大学がん

進展制御研究所の松本 邦夫(まつもと くにお)教授、酒井 克也(さかい かつ

や)助教の研究グループと共同で、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療やがんの

進行とも深く関わりのある肝細胞増殖因子(HGF)に対するモノクローナル抗体

を作製することに成功しました。本研究で活性を持つ成熟型 HGF のみを特異的

に認識できる抗体や、活性を阻害する抗体の産生に成功したことにより、今後こ

れらの抗体を利用して HGF シグナリングの活性化に必要な分子メカニズムを明

らかにできることが期待されます。

本研究成果は、2016 年 9 月 9 日午前 10 時(現地時間、日本時間 9 月 9 日 午

後 6 時)、英科学誌 Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)に掲載

されます。

本研究の一部は、AMED 創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(創薬等

支援技術基盤プラットフォーム事業)、文部科学省地域イノベーション戦略支援

プログラム、AMED 革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業、文部科学省科

学研究費補助金、次世代がん医療創生研究事業によってサポートされました。 【研究のポイント】

肝細胞増殖因子(HGF)活性化の分子メカニズムは不明な点が多い。 HGF に対する阻害抗体および成熟型特異的抗体を作製することに成功。 新規の抗体医薬品の開発に貢献できる可能性。

肝細胞増殖因子(HGF)の特異的抗体の開発に成功

- HGF シグナリングの分子メカニズム解明に向けて -

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【研究内容】

肝細胞増殖因子(HGF)注 1 は日本で発見されたタンパク質で、その受容体で

ある Met 注 2 に結合することで、細胞の増殖や生存促進、遊走といった生物学的

活性を引き起こします(図 1)。HGF は運動神経の生存を促すことから、HGF に

よる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を目的とした臨床試験が東北大学と大阪

大学の別の研究グループで進められています。一方、Met 受容体の異常な活性化

はがんの進行に関わっており、Met を標的とした阻害剤や HGF と Met の結合を

阻害する抗体医薬品注 3 の開発が進められています。HGF は、最初活性のない一

本鎖の前駆体タンパク質として細胞から分泌され、その後、タンパク質分解酵素

による切断を受けて二本鎖の活性を持つ成熟型となります(図 2)。一本鎖の前

駆体 HGF、二本鎖の成熟型 HGF、両者はともに Met 受容体(鍵穴)に結合しま

す。にもかかわらず、不思議にも受容体を活性化できるのは二本鎖成熟型 HGF

だけです。一本鎖前駆体 HGF が二本鎖への切断によってどのような構造変化が

生じ、Met を活性化するのか不明のままでした。

この問題を解明するために、本研究グループは、はじめに HGF の切断部位を

人為的な切断配列に変えることで、未切断型(前駆体)および切断型(成熟型)

両方の HGF タンパク質を産生しました。さらに、これらの HGF タンパク質を

用いて結合部位や活性阻害効果の異なる抗 HGF モノクローナル抗体注 4 を 6 種

類樹立し、HGF 前駆体と成熟型 HGF の構造の違いを見分ける抗体(t8E4)や Met

の活性化を強く阻害する抗体(t1E4)を作製することに成功しました(図 3)。今

後、これらの抗体を利用した HGF 構造解析を通して、HGF の構造変化と受容体

Met への結合を介したシグナリングの分子メカニズムについてのさらなる理解

が進み、新規の抗体医薬品の開発などに貢献することが期待されます。

本研究の一部は、AMED 創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(創薬等

支援技術基盤プラットフォーム事業)、文部科学省地域イノベーション戦略支援

プログラム、AMED 革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業、文部科学省科

学研究費補助金、次世代がん医療創生研究事業によってサポートされました。

【用語説明】

注 1.肝細胞増殖因子(HGF): 692 アミノ酸もしくは 697 アミノ酸からなる糖

タンパク質。アミノ末端領域(N)、4 つの Kringle(K1-K4)領域、カルボキシ

ル末端の活性を持たないセリンプロテアーゼ領域(SP)からなる。活性化に伴う

切断は K4 領域と SP 領域の間で生じる。

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注 2.受容体型チロシンキナーゼ Met:HGF に結合し、リン酸化酵素活性を持つ

膜タンパク質。膜貫通型チロシンキナーゼ受容体である Met は、細胞外に HGF

結合領域、細胞内にキナーゼ領域およびリン酸化部位を持つ。細胞外での成熟型

HGF が結合すると Met 受容体同士が近づき、自身のキナーゼ領域の活性化によ

りリン酸化される。その結果、細胞内のシグナル活性化を経て、細胞の脱着およ

び遊走といった生物学的応答がおこる。

注 3.抗体医薬品:抗体は、リンパ球のうち B 細胞が産生するタンパク質で、特

定の分子(抗原)を認識して結合する。血液中や体液中に存在し、細菌やウイルス

などの微生物に結合すると、白血球による貪食が起こる。また、がん細胞に結合

しがん細胞を殺す働きもあり、臨床でも使用されている。

注 4.モノクローナル抗体:単一抗体のこと。血清から精製するポリクローナル

抗体と異なり、抗体産生細胞から無限に生産が可能であり、抗体医薬に使われて

いる。

図 1:本研究で作成された HGF に対する阻害抗体と成熟型特異的抗体

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図 2:HGF の活性化メカニズム

図 3:作製した 6種類の HGF 抗体は異なる結合部位とシグナル阻害能を有する

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【論文題目】

Probing conformational and functional states of human hepatocyte growth factor by a

panel of monoclonal antibodies

「肝細胞増殖因子の活性化機構解明に向けた特異的抗体の開発」

著者:Masataka Umitsu, Katsuya Sakai, Satoshi Ogasawara, Mika K. Kaneko, Ryoko

Asaki, Keiko Tamura-Kawakami, Yukinari Kato, Kunio Matsumoto, Junichi Takagi

掲載誌:Scientific Reports

【お問い合わせ先】 (研究に関すること) 東北大学大学院医学系研究科 地域イノベーション分野 教授 加藤 幸成(かとう ゆきなり) E メール:[email protected] 大阪大学蛋白質研究所 教授 高木 淳一(たかぎ じゅんいち) E メール:[email protected] 金沢大学がん進展制御研究所 教授 松本 邦夫(まつもと くにお) E メール:[email protected] (報道担当) 東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室 講師 稲田 仁(いなだ ひとし) 電話番号:022-717-7891 FAX 番号:022-717-8187 E メール:[email protected] 大阪大学蛋白質研究所・庶務係 吉村 則子(よしむら のりこ) 電話番号:06-6879-4317(内線 9201) E メール:[email protected] 金沢大学総務部広報室 寺口 浩史(てらぐち ひろふみ) 電話番号:076-264-5024 E メール:[email protected]