2012.3 17 チームラボ代表 猪子 寿之さんインタビューも収録! 特集 情報科学と感性 研究室から飛び出す、その先は? 特集 アメリカ VS 鹿児島? キミの活躍の場はどっち 新連載 インキュビー編集部ブログ「麗しの RNA 研究者に会う」 募集開始! 自治体初!肝付町賞を設置 第 11 回リバネス研究費

インキュビー(incu-be) Vol.17

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研究キャリア応援マガジン『incu-be /インキュビー』 vol.17

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Page 1: インキュビー(incu-be) Vol.17

2012年3月1日発行 リバネス出版

〒160ー0004 東

京都新宿区四谷2-11-6 

VARCA四谷10階

Tel:03ー6277ー8041 Fax:03ー6277ー8042

2012.3 *17

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leaveanest.com

チームラボ代表 猪子 寿之さんインタビューも収録!

<特集>情報科学と感性研究室から飛び出す、その先は?

<特集>アメリカVS鹿児島? キミの活躍の場はどっちだ

<新連載>インキュビー編集部ブログ「麗しのRNA研究者に会う」<募集開始!>自治体初!肝付町賞を設置第11回リバネス研究費

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 産業界と大学とが連携し、次代を担う若手研究者を支援する活動、それが「若手研究者応援プロジェクト」です。研究活動の活性化、そして研究キャリアを主体的に選択し行動できる若手研究者の育成を通して、科学技術の発展に寄与することを目的とします。 リバネスを中心とした若手研究者応援企業、そして若手を思う多くの若手研究者応援教員とともに、研究キャリア応援マガジン『incu-be(インキュビー)』や産学連携推進マガジン『GARAGE』の発刊、そしてリバネス研究費の運営など、自らの将来を考え、夢を実現しようと行動する若手理系人材をあらゆる面からサポートします。

『incu-be』は若手研究者応援プロジェクトの一環で制作しています。

リバネス研究費「科学技術の発展と地球貢献の実現」に資する若手研究者に対し、自らの研究に対する熱い思いを実現し、独創性を持った研究を遂行するための助成を行う研究助成制度です。

研究キャリア応援マガジン『incu-be(インキュビー)』および産学連携推進マガジン『GARAGE』を通して、研究キャリアの紹介や有用な研究情報を発信しています。

若手研究者がキャリアを考えるきっかけとなるイベントを開催、紹介します。

理系大学生・大学院生が切磋琢磨し、成長する場としてインターンシップを通年で実施しています。

インターンシップ

Career Café

雑誌

CareerDiscovery

博士号を取得後に社会で活躍する方を囲み語り合う場を、定期的に設けています。

若手研究者応援企業・機関(30 社・1 自治体)

株式会社ディー・エヌ・エー 株式会社リコー

アトー株式会社 アフィメトリクス・ジャパン株式会社 株式会社医学生物学研究所 株式会社ヴィレッジ 株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ

カクタス・コミュニケーションズ株式会社 株式会社カヤック 肝付町 キャリパーライフサイエンス クラシコ株式会社

株式会社クロスアビリティ サイエンス・グラフィックス株式会社 株式会社サイバーエージェント JITSUBO株式会社 株式会社スタッフジャパン

株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン テラベース株式会社 東レ株式会社 トミーデジタルバイオロジー株式会社 株式会社トライアングル

株式会社ニッピ 株式会社 バイオインパクト 株式会社はなまる 株式会社ベネッセコーボレーション 株式会社マイクロテック・ニチオン

株式会社 毛髪クリニックリーブ21® 株式会社リバネス レボックス株式会社 和光純薬工業株式会社

22012.3 No.17

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2011年の年末に「RNA Study Meeting」という若手研究者の会合に誘われたのです。聞けば、日本分子生物学会の年会期間の夜に開催されるとのこと。朝から夕方まで、発表を聞き、自分の研究発表も行い、そのうえで夜も研究の話を肴に晩酌だなんて、研究者として熱過ぎじゃないかと。その熱にやられて、会合への出席を即答。アクティブな研究者とディスカッションできる刺激というのは何ものにも代え難いものです。さらに、僕は学生時代にRNA病原体を研究していたRNA lover。久しぶりにマニアックな会話を楽しめるウキウキ感で出かけることになりました。

出迎えてくれたのは、会の代表を務める慶應義塾大学大学院の高根香織さん。甲斐甲斐しく出席者をとりまとめ、僕のような新参者にもさりげなく話を振ってくれる素敵なお嬢さんでありました。だがしかし、ただのお嬢さんではありませんでした。彼女もまた、麗しのRNA研究者であったのです。席に着くと、早速挨拶代わりに「どんなRNA分子を研究されてたんですか?」との質問が高根さんから。出席者同士でRNA談義が始まりました。

DNAの単なるコピーだと考えられていたRNAに、生体内を制御する役割が発見されてから約30年。異なる役割を持つRNA分子が、今も続々と発見されています。そのためRNA生物学は、新しい研究が次々に生まれる非常にアクティブな分野となりました。高根さんが研究するRNAはmicroRNA(miRNA)と呼ばれる20塩基ほどの小さな分子で、ここ10年ほど注目を集め続けています。miRNAは細胞分裂、分化、がん化、ウイルスの感染への応答など、生物学的・医学的に重要な現象の制御に広くかかわっているからです。重要だからこそ、競争も激しいこの分野に身を置く理由を「miRNAがタンパク質や他のRNA分子と連動しながら生体全体を精妙にコントロールする仕組みが美しいから」と高根さんは表現していました。純粋な知的好奇心から研究をドライブしているようです。高根さんの話が終わると、今度は他の参加者が自分の研究するRNA分子について語るプレゼン大会に発展。麗しのRNA研究者の知的好奇心に引っ張られ、RNA loverたちの夜はふけていったのです。

麗しきRNA研究者に会う

インキュビー編集部ブログ

vol.1

3 2012.3 No.17

▲麗しのRNA研究者、高根香織さん。

編集部スタッフが、出会った人や参加したイベント、

日々の活動で思ったことについて、本人の言葉その

まま自由に綴るコーナーです。

武田 隆太  Ph.D.2011年、The Ohio State University

にて博士号取得。学生時代はRNA病原体

ウイロイドの研究に従事していた。アメ

リカ生活6年の間は研究&スポーツ観戦

の日々。

今注目しているのは、MITでパイロット

版が作られているLEGO®tRNA kitであ

ります。やはり最後はRNA愛。

武田 隆太 編

Page 4: インキュビー(incu-be) Vol.17

海外留学を支援するプログラム海外特別研究員制度(2012年度採用分の募集終了)▶ http://www.jsps.go.jp/j-ab/index.html

留学生交流支援制度(長期派遣)(2012年度の募集終了)▶ http://www.jasso.go.jp/scholarship/long_term_h.html

グローバル人材育成スカラーシップ(2012年度の募集終了)各大学で選考後、財団による選考。対象は13大学(東北大学、筑波大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学、慶應義塾大学、上智大学、明治大学、早稲田大学、同志社大学、立命館大学)

[図1] 日本から海外への留学者数の推移

4

6

7

8

9

( 万人 )

( 年 )

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

[図2]2010-2011期 各国から米大学への留学生数の変化(前年比)

前年比 (%)

-20

-10

0

10

20

30

日本 中国 インド

42012.3 No.17

日本人学生、引きこもる

最近よく耳にする「グローバル人材」。要は、世界を相手にできる視点とスキルを持つ人だ。政治・経済・学術、あらゆる分野でのグローバル化に伴い、グローバル人材の需要はますます高まり、日本政府は国を挙げて人材育成に力を注いでいる。理系人材は特に、グローバルな視点が必要だ。自分の成果は世界を相手に発信する必要があるし、ライバルは世界中にいる。実際に海外に行って世界を見ることには、大きな意味があるだろう。

ところが、日本の学生は国内に「引きこもり化」してしまっているようだ。

2012年に文部科学省が発表した「日本人の海外留学状況」によると、2009年に海外の大学等に留学した日本人は各国・地域で約6万人。対前年比約10%の減少となっている(図1)。最も多くの日本人が留学しているアメリカの大学での留学者数の変化を見ても、他のアジアの国と比べて日本の減少率が顕著であることがわかる(図2)。

お金がなくても留学できる

では、最近の学生が留学に興味がないのかというと、そういうわけでもない。8大学工学教育プログラム・グローバル化推進委員会第3分科会が実施した「日本人学生の留学に関する意識調査」(調査時期:2008年1月~12月、対象:8大学工学系学部生・大学院生)では、50%の学生が「強く行きたい」「どちらかと言えば行きたい」と答えている。興味はあるものの実際に留学する人は少ないというのが現状のようだ。その原因として最も多いのは費用。86%の学生が、渡航費や滞在費が「大きな問題」または「多少問題」であると答えている(同上、日本人学生の留学に関する意識調査より)。

そんな学生に朗報だ。今、政府と産業界の両方で日本からの留学生支援が強化されてきている。政府は、支援のため2011年度予算に19億円を計上しており、前年度から大幅に増額された。また、日本経団連はグローバル30*採択13大学と協力して、2012年度から学部生を対象に新たな奨学金「グローバル人材育成スカラーシップ」の募集を開始する。

国内からの支援だけではない。海外の大学院は、学生に対する金銭的支援が厚い。学費が免除されるケースもあるし、大学院生はRAやTAの給料をもらって研究をするのが一般的だ。大学・学部学科によって異なるが、たとえばオハイオ州立大学の分子遺伝学専攻では、すべての学生が年間26,196ドル(約200万円)を受け取ることができる。優秀な学生はさらに奨学金を得ることも可能だ。

選択肢を広げよう

海外の大学・大学院に進学するのは、なにも特別なことではない。興味のある研究室を探して出願する。日本の大学院に行く場合と同じだ。研究室選びの際には、海外という選択も考えてみてはいかがだろう。

(文 瀬野 亜希)

世界は広いが、遠くない。

自分のことなのになかなか見えてこない理系の実態。若手研究者を取り巻く環境に数字から迫ります。

数 字 で 見 る 理 系

-10%海外の大学等に留学した日本人

の数の前年比(2009年)

*グローバル30:グローバル人材の養成を目的とした、文部科学省による国際化拠点整備事業。

Open Doors 2011 Regional Fact Sheet: Asia(Institute of International Education)を基に作成

ユネスコ文化統計年鑑、OECD、IIE等における統計による、日本人の海外留学者数の推移平成24年1月 文部科学省集計「日本人の海外留学状況」より

鹿児島?キミの活躍の場はどっちだ

Page 5: インキュビー(incu-be) Vol.17

5 2012.3 No.17

VS

世界は、急速に近づきつつある。

インターネットで世 界 各 地がつながり、情 報は瞬 時に手に入

る。 交通手段も発達し、ひと昔前と比べると、ぐっと安く、短い

時間でより遠くまで行けるようになった。 研究室から一歩外に

出たら、海外でも国内でも、どこでも同じ。もう、そんな時代だ。

で は、キ ミ が 一 番 活 躍 で

き る 場 所 は ど こ だ ろ う。

た と え ば、日 本 の 地 域 で、地 元 が 抱 え る 課 題 を 解 決

で き る よ う な 研 究 テ ー マ に 挑 む。 た と え ば、海 外 に

行 って、憧 れ の 研 究 者 と の デ ィス カッションを 試 み る。

地域からでも世界は見える。 海外に出てこそ、日本がわかる。

どちらの環 境も、自分の成 長を後 押ししてくれるに違いない。

さあ、どこから世界に打って出る?

鹿児島?

アメリカ

キミの活躍の場はどっちだ

特集 1

Page 6: インキュビー(incu-be) Vol.17

62012.3 No.17

地方の町に、博士が集う

鹿児島県

肝き

付つ

町ちょう

鹿児島空港から車で2時間程度、鹿児島県大隅半島の南東部に位置する肝付

町が、「研究者の専門性を活かす場所」として、にわかに注目を集め出して

いる。博士号取得の先のキャリアとして、企業でもアカデミアでもない、新

たな可能性が広がろうとしているのだ。

要拠点として開設され、今年で50年

を迎えた。これまで多くの研究者が

訪れ、人工衛星の打ち上げが行われ

てきた。現在では、2013年度の

イプシロンロケット初号機打ち上げ

に向けた、大幅なリニューアルが進

められている。町民がともに空を見

上げ、ロケットの打ち上げを喜び、

研究者に慣れ親しんできた肝付町

は、宇宙教育プロジェクトを通して

リバネスと関わる中で、「研究者の

専門性を活かした町おこし」という

新たな活動を展開することとなる。

2011年9月には、その第一歩

として、東京農工大学に所属する博

士号取得者2名を招き、それぞれの

専門性を活かした町の活性化案につ

いて、町長をはじめ町役場のスタッ

フとともにディスカッションが繰り

広げられた。施設見学や住民へのヒ

アリングなどを行い集められた生の

声を踏まえて作成されたプランに

博士に一番近い町

肝付町の東側、海に面した高台に

は、小惑星探査機「はやぶさ」を打

ち上げた「内之浦宇宙空間観測所」

がある。日本のロケット工学の父、

糸川英夫博士によって宇宙開発の重

は、「町で盛んな畜産業からの排泄

物を利用したメタン発酵と、回収し

たメタンガスをエネルギーとして使

用する」、「新規就農者の獲得による

農業の活性化を図るため、農業公社

を立ち上げる」など、それぞれの専

門分野から見た課題が抽出され、町

が目指すべき未来が描かれていた。

町が研究フィールドになる

研究者から提案された町の活性化

プランには多くの気づきがあり、実

現に向けた動きも出始めているとい

う。継続的な研究支援を行うこと

や、明確なテーマを設定すること

で、さらに研究者を巻き込んだ、地

域に根ざした改革プランの創出につ

ながる可能性が見えてきた。これを

受けて、2012年3月1日、肝

付町は研究者とのより密なコミュニ

ケーションを実現するため、自治

体として初めて「若手研究者応援

プロジェクト」に参加、研究費助成

と、その成果を活用した地域の活性

化に向けて動き出した。

今回、町が提示したテーマは、ズ

バリ「肝付町の農業の活性化」。一

次産業が主体となる地方自治体に

とって、新たな地域活性化策として

モデルケースに成り得るだろう。自

然科学系のみならず、人文社会系を

含む全ての専門家を対象とし、実証

実験の実施協力や住民へのヒアリン

グ等、町内での活動・連携構築は、

肝付町が全面的にバックアップす

る。この研究で得られる成果は、必

ずや町の活性化に寄与するはずだ。

研究の高度化、細分化が進んだ

今、自らの研究成果と世の中とのつ

ながりを見出す機会は確実に減って

きている。しかし、研究とは本来、

世の中の課題を解決し、より良い世

界をつくるためにあったはず。高度

な専門性を身につけた博士にとって

は、その知識や経験が、実際の現場

でどこまで通用するかチャレンジで

きる1つの場所となるだろう。そし

て、そこで得られた現場の声は、今

後の研究方針やテーマを考えるうえ

での貴重なサンプルとなるはずだ。

今回の取り組みによって、地域活性

化における博士の果たす役割が大き

く変わっていくことを確信する。

▲ディスカッションの様子

▲内之浦宇宙空間観測所の衛星ヶ丘展望台にある20mパラボラアンテナ

▶詳しくは、P.25リバネス研究費募集自治体 肝付町賞

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7 2012.3 No.17

スクリプス研究所博士研究員

岡お か

本も と

啓け い

治じ

さん

海外へ導いたテロメア研究

岡本さんはテロメア研究を行う研

究者。真核生物のDNA末端に存在

するテロメアには、結合タンパク質

が複合体として存在し、テロメアD

NAの伸長に働くテロメラーゼの活

性を制御する。通常細胞ではこのタ

ンパク質の働きのため、テロメラー

ゼ活性が制御され、テロメアは細胞

分裂のたびに短くなる。ガン細胞な

どの異常細胞では、このタンパク質

の働きの異常でテロメラーゼ活性が

保たれるのではないか、と考えられ

ている。博士課程では、この結合タ

ンパク質の一種、TRF1の機能に

ついて調べていた。

学生のときに出会った恩師が、海

外行きを考えるきっかけを最初に与

えた人だ。ポスドク時代をアメリカ

で過ごした経験を聞き、「自分自身

の目で、海外のライバルたちを見て

みたい」と、博士取得後のキャリア

として海外に行くことが漠然と選択

肢に入った。テロメアはがんや老化

に関わるため、日本では医学分野で

のアプローチが多い。基礎生物学的

な面からテロメアを研究したいとい

う意志が次第に強くなっていった岡

本さんは、この分野での基礎生物学

の研究が充実しているアメリカに次

のチャレンジの場を求めよう、と考

えた。

決めたら思い切ってやる

決断まではたったの2~3か月

だった。普通は希望する研究室のボ

スとSkype

で面談をしたり、事前に

大学を訪れたりしてから決める場合

が多い中、なんと岡本さんの場合、

自分がやりたいテーマができるかど

うかをボスにメールしただけで行

くことが決まってしまったのだとい

う。事前に準備したことといえば、

「向こうで使える携帯や銀行の準備。

あとは英語の勉強を少し」。海外で

研究をするということに対して何の

抵抗もなく岡本さんは出発した。

渡米直後、言語の壁は想像以上に

大きかった。しかし、アメリカでの

研究を目指す研究者は世界中から

集まっている。「誰もが通る道だか

ら」と割り切ってその苦労を受け入

れた。今では日本にいたとき以上に

積極的に人に話しかけられるように

海外に行く理由は研究、

ただひとつ

私たちは「海外」と聞くと、なぜか身構えてしまう。言葉は通じるか。どん

な生活になるのか……。しかし、考えてみてほしい。海外で研究をすることは、

日本で研究することと何がそんなに違うのだろうか。現在、南カリフォルニ

アのサンディエゴにあるスクリプス研究所でポスドクとして研究をしている

岡本啓治さんはその違いを意識せず、海外に飛び出した研究者の1人だ。

なっている。

研究所ではトップレベルの研究者

がセミナーを開催するので刺激も多

い。昨年ノーベル医学生理学賞を受

賞したブルース・ボイトラー教授の

セミナーも聞いた。何よりも、仲間

に楽しそうに研究をする人が多く、

苦労よりも刺激の方が勝っている。

日本とアメリカの

ハイブリッド研究者に

岡本さんに5年の任期が終わった

後のことを訪ねると、日本で研究が

したいのだという。「サンディエゴ

はいいところだけれど、ずっと暮ら

していく場所だとは思っていない」。

やはり、故郷の心地よさには勝てな

いのだろう。自分の研究室が持てる

なら、アメリカのような「オン・オ

フ」がしっかりした生活を送るつも

りだ。反対に現在の研究室では、日

本の研究室に比べて事前の実験計画

に粗さが目立つことが気になってい

る。海外から見た日本の良さも、両

方を経験した自分が取り入れたいと

考えている。

やりたい研究をしたいというたっ

た1つの気持ちが、岡本さんを海外

に向かわせた。場所も言語も関係な

い。研究室は世界中から選ぼう。や

りたいことを実現するために、思い

切って行動に出る。それこそが自分

が成長する原動力になるはずだか

ら。

(文 住吉

美奈子)

VS鹿児島?アメリカキミの活躍の場はどっちだ

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82012.3 No.17

典型的な引っ込み思案

引っ込み思案な性格から抜け出し

たいが、なかなか行動には移せな

い。そう思っている人は世の中にた

くさんいるだろう。首都大学東京大

学院理工学研究科の吉丸貴宏君もそ

の1人だった。学校のゼミでの発表

では自信がない話し方をしていると

周りから指摘され、今回の海外イン

ターンシップの初顔合わせ会では、

他の人なら言い返すようなことを言

われても苦笑いするのが精一杯。ア

メリカ到着直後には、チャリティー

募金の勧誘を断れず、現地の人に言

われるがまま署名してしまい支払い

を迫られるといった具合であった。

海外インターンシップ体験では、

カリフォルニア州のシリコンバレー

周辺のエバーノート、スタンフォー

ド大学、カルビーアメリカなど様々

な大学・企業を訪問する。自分で用

意したプレゼンテーションをもと

に、実際に海外で働く日本人や現地

の人とディスカッションをする経験

を通して、学生の意識改革と自主性

を引き出すことが目的の1週間のプ

ログラムだ。日本と海外の違いを体

感したいし、プログラムに参加すれ

ばこんな自分でも変われるのではな

いか

─吉丸君がこのプログラム

に参加した理由は、こんな漠然とし

た気持ちからだった。

追い込まれたから気づけた

成長のきっかけ

滞在2日目に訪れたエバーノート

でのプレゼンテーションは、エバー

ノートを使ってみて感じた改善点

や、追加で欲しい機能を提案すると

いうものであった。吉丸君は、アイ

デアが浮かばず、プレゼンメンバー

に立候補しなかった。プレゼンテー

ション前日に、準備ができている人

はできていない人の手伝いをするよ

うにとスタッフから言われる。その

とき彼は、自分のことを非常に情け

なく思ったと言う。明日みんなが発

表する中、自分はアイデアが浮かば

なかったという理由だけで挑戦する

ことすら諦めようとしている。発表

前日の夜、そんな思いに苛さ

いな

まれて、

彼はなかなか寝つけずにいた。

そんなとき、ふと彼の視界に入っ

てきたのは、同じ部屋で深夜まで

黙々と準備する仲間の姿であった。

仲間の頑張る姿なんて、今まで生き

てきた中でいくらでも見てきたは

ず。けれども、追い込まれた状況で

初めて意識した仲間の姿はいつもと

違って見えた。ようやく得られた自

分の殻を破るためのチャンスを、今

までと同じように自分はただ見過ご

そうとしていることに気づかされ

た。「……このまま何もせずには終

われない」。日本の仲間という身近

な存在が頑張る姿は、彼にとって、

飛びだそう、窮地へ典型的な引っ込み思案だった人間が、アメリカでのわずか 1 週間の海外インターンシップ体験を通して「一番積極的な男」に這い上がる。成長のきっかけは、追い込まれた状況下で初めて意識した身近な存在。涙を流すほどの挑戦。これは、人生観を変える一歩を踏み出すことのできた、ある大学院生の話である。

首都大学東京 大学院理工学研究科 機械工学専攻

修士課程 1 年

吉よ し

丸ま る

貴た か

宏ひ ろ

さん▲スタンフォード大学でイートン教授と握手する吉丸君。

Page 9: インキュビー(incu-be) Vol.17

9 2012.3 No.17

自分が追い込まれた状況だから初め

て意識できたものであった。

その直後、彼の徹夜の準備が始ま

る。出発1時間前にようやく思い浮

かんだアイデアを必死の思いで資料

にまとめあげ、プレゼンテーション

の内容自体も筋が通ったものを完成

させた。本番では自分のアイデアが

エバーノートの社員に伝わり、笑い

もとれた。諦めずに頑張れば今の自

分でも何とかできると思った瞬間で

あった。

涙を流すほど本気の挑戦

吉丸君が今回の海外インターン

シップ体験で一番の挑戦と位置づけ

ていたのが、スタンフォード大学訪

問でのイートン教授とのディスカッ

ションである。吉丸君の研究テーマ

は、調理場のダクト内に吹き込む油

を特定の箇所に集める方法について

流体力学的観点から実験検討を行う

というもの。同じく流体力学を専門

とし、シミュレーションによる検討

を行うイートン教授とのディスカッ

ションは、唯一自分でアポイントメ

ントの取れたものであったこともあ

り、とても思い入れのある時間だっ

た。しかし、学会発表経験がない彼

にとって、英語で自分の研究紹介を

他校の教授に行い、意見交換するこ

とへの不安は大きかったと言う。

本番当日、事前準備の甲斐もあ

り全てが予定通り順調に進んでい

く。時間はあっという間に過ぎ、気

がつけば残された時間はあと5分。

「Any other question?

」イートン

教授が吉丸君に尋ねる。さっきまで

の勢いが突然止まった。昔の吉丸君

なら、聞きたいことは一通り意見交

換できたので、そこでディスカッ

ションを終えたはずだ。しかし、少

しでもいいから教授と意見交換した

いという強い思いが、彼をさらなる

挑戦へと駆り立てた。時間にして3

分、沈黙が教室を包み込む中ひたす

ら質問内容を考えていた。

「If you make it, how

do you do?

」実験上での課題を先ほど指摘

されたばかりの吉丸君が、シミュ

レーションでの検討を専門とする

イートン教授に、実験系での解決策

を尋ねた最後の質問である。土壇場

で吉丸君の口から出たこの質問は

イートン教授も答えに詰まるほどで

あった。訪問終了後、吉丸君の目か

ら涙が頬を伝わる。本気で挑戦した

後の達成感と、イートン教授が真摯

に応えてくれたことの嬉しさが彼に

もたらした涙であった。自分がどう

いう人間で、どんな研究をし、何を

考えているのかを真剣に発信し、そ

れがきちんと相手に届く。そして相

手も自分に返してくれたときにだけ

感じられる高揚感を味わったのだ。

「相手のことを知りたい、そのため

に自分のことをもっと伝えよう」と

彼は思った。

その思いは行動に移され、帰国後

もゼミで堂々と発表できるように

なった。彼の成長は現在も続いてい

る。

やっかいな環境に踏み込んだ

結果、人生観が変わった

「残念ながら最初の一歩はやはり

自分で踏み出すしかないです。しか

し、どうせ踏み出すならやっかい

な環境を勧めます」。やらざるを得

ない状況に自分をあえて追い込んだ

から成長できたのだと、この体験を

振り返って彼は言う。彼にとっての

やっかいな環境は、自分から積極的

に行動し、発信しなければ何の成長

も得られないアメリカの地であっ

た。海外インターンシップ体験を

通して、「いろいろなことを学びた

い、様々な人に会って多くのことを

吸収したい」という彼の軸が形成さ

れた。現在の目標は東京都の公務員

になることだ。自分の軸を実現する

ために、様々な人・考えが行き来す

る世界最先端の都市でこそできる、

多種多様な仕事があると考えたから

だ。自

分にとってのやっかいな環境と

はどこだろうか。とりあえず踏み出

してみるのもいいだろう。踏み出し

た結果、わずか1週間という短い期

間であっても、追い込まれた状況下

なら人は劇的に成長することを彼は

教えてくれたのだから。

(文 國利

洸貴/編集 萩原

怜実)

VS鹿児島?アメリカキミの活躍の場はどっちだ

▲訪問終了後の1コマ。 達成感は涙とともに。

▲ 白熱のディスカッション。身を乗り出して説明する吉丸君と、 真剣にメモを取るイートン教授。

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102012.3 No.17

首都大学東京 大学院 理工学研究科 海外インターンシップ体験より

踏み出してみれば、「なんとかなる」誰も知らない世界へと挑戦するのが、科学研究の世界。研究を志す理系学生なら、一度は書を捨て、自分が知らない世界へと飛び込んでみればいい。経験者は言う。

「なんとかなる!」と。

「好きなことをやれ まず動け なんとかなる」

大塚 薫

「やりたいことをやれ 悩むのはあたり前、なんとかなる!」

國利 洸貴

「何にもないのと自分を出せるのが自分の道」

前川 明日翔「即行動!! 常に全力!!」

大町 岳

訪問先のCallbee America, Inc.にて。

Page 11: インキュビー(incu-be) Vol.17

11 2012.3 No.17

VS鹿児島?アメリカキミの活躍の場はどっちだ

2011年11月、首都大学東京大学院理工学研究科の学生を対象に、サンフランシスコでの7日間の研修プログラム 「海外インターンシップ体験」が行われた。訪問先は、シリコンバレーエリアの大学と企業である。スタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレー校では、研究内容を教授陣に聞いてもらうチャンスをプログラム参加者自らが作り出さなければならない。渡米前に訪問先の教授にe-mailを送り、自分のために時間をとってくれるようにお願いするのが事前課題だった。また、エバーノート社では「自分なりのエバーノートの使い方と新しいサービスのアイデア」についてプレゼンテーションすることが課題として与えられた。自社のサービスを知り尽くしている社員に向けて、新しいアイデアを、しかも英語でプレゼンテーションしなければならない。こんな刺激的な課題が、そのへんに転がっているわけがない。

これらの課題を聞いた学生たちは、「そんなムチャな!」と思ったという。そんな彼らだったが、多くの経験とともに、1つの指針を得て研修を終えた。写真の色紙に書いてあるのは、研修を終えた参加者が未来の自分へ宛てたメッセージだ。新しく何か始めたいとき、最初の一歩が踏み出せなくなってしまったら、ここに立ち返ればいい。あなたにも、そのメッセージが聞こえないだろうか?

「進化の反対は不変化である」

小林 寛康

「とりあえず行動する」

伊藤 克徳

「お互いの事を知り、何かをやってみる。それを続けよう。」

吉丸 貴宏

「自分で選ぶ」

五十嵐 透

「本気を出せば成長できる。」

星合 裕太

「一歩一歩」

伏屋 健吾

「私がやる!」

萩原 怜実

Page 12: インキュビー(incu-be) Vol.17

前期インターンシップ

1月 2月 3月 4月 5月 6月2011年度 2012年度

実験教室/ライティングコア期間

サイエンスブリッジコミュニケーター®育成講座

サイエンスブリッジライター®育成講座

後期インターンシップ

理系学 のためのインターンシッププログラム

生株式会社リバネス株式会社リバネスは、理工系の学生15人が集まり、科学教育を主事業にスタートした日本で初めての会社です。「科学技術の発展と地球貢献を実現する」という理念のもと、教育・人材育成から研究開発まで、科学技術に関連した幅広い事業を展開しています。

2012年度前期インターンシップ参加者募集!http://lne.st/intern/

対象:理系学部3年~博士3年

ウィークエンド型研究活動に多くの時間を費やす理系大学生・大学院生のために「ウィークエンド型インターンシップ」を採用しています。インターンシップ活動と研究活動の両立を実現することで、理系人材の活躍の場を広げます。

特徴1○リバネスのインターンシップ3つの特徴

プロジェクト実践型サイエンスブリッジコミュニケーター®育成講座・サイエンスブリッジライター®育成講座の2つの育成プロジェクトに参加することで、実践を通して社会人として活躍するために必要なマインドとスキルを育てます。

特徴3

長期実践型インターンシップを「実践を通じた自己成長の場」と位置づけ、長期的な参加(6か月~2年間)によるインターン生の本質的なスキルアップを支援します。

特徴2

SBC育成講座 SBW育成講座

スタートアップ研修

コミュニケーション研修

プレゼンテーション研修

ライティング研修①

ライティング研修②

マネジメント研修

リーダーシップ研修

特別講演

座学研修スケジュール(予定)

•サイエンスの魅力を多くの人に伝えたい。 •研究経験を活かしながら、もっとスキルアップしたい。•自分が本当にやりたいことを見つけたい。リバネスのインターンシップでは、そんなあなたの想いを実現できます。社会で巣立つ第一歩を、ここから踏み出してみませんか?

○サイエンスブリッジコミュニケーター®育成講座(SBC育成講座)座学研修と実地研修(小学生~高校生まで、様々な対象に対して開催される実験教室)を通して「サイエンスをわかりやすく伝える」スキルを持ち、自らのやりたいことを実現する人材を育成します。○サイエンスブリッジライター®育成講座(SBW育成講座)座学研修と実地研修(高校生向け科学雑誌『someone(サムワン)』や研究キャリア応援マガジン『incu-be(インキュビー)』に掲載する記事の作成)を通して、文章を通じて研究現場と社会の橋渡しを実現する人材を育成します。

2012年前期

4 /22

4 /29

5 /6

5 /13

5 /20

5 /27

6 /3

6 /10

創立記念パーティー超異分野交流会&卒業式

122012.3 No.17

Page 13: インキュビー(incu-be) Vol.17

13

発想力を磨き、世界へ

BPSは、ウェブおよびモバイルサイト

の企画から設計、デザイン、システム開発、

サーバ保守までの全工程を行う、慶應義塾大

学湘南藤沢キャンパス(S

FC)の卒業生が大学で身に

つけた専門性を活かして設立

した、5年目の若い会社だ。

ベンチャー企業といえば、新しいサービス

の創造に特に大きな喜びを見出し、クライア

ント主導で進行する自由の効く範囲の狭い仕

事を嫌うところも多いが、BPSではあえて

受託開発を中心とした事業を行っている。多

くの開発を経験することで新しい技術に触れ

たり、知識を深めたりすることができるのは

もちろん、最も重視しているのは「プログ

ラマーがクライアントと直接コミュニケー

ションを取ること」によって、依頼された仕

事の内容から今のトレンドがうかがえたり、

クライアントとの会話から新しい発想が生ま

れたりすることだ。世界中で爆発的に広がっ

たFacebook

も、システム自体はそんなに難

しいものではない。これまでになかった「仕

組み」を提案し、時代にあった新しい「価

値」を生み出す。様々な発想を得て、世界に

打って出るのが目的だ。

趣味は「プログラミング」

とはいえ、アイデアがあっても、技術がな

ければ始まらない。新しいことができるの

は常に最先端の技術を持っていればこそだ。

「BPSが誇れるのは、『技術を大切にしてい

る会社』であること」と話すのは、人事担当

の植野準太さん。入社希望者の面談で見るポ

イントは、プログラムコードをきれいに書い

ているか、そのロジックは新しいか、会話

から知識の深さはうかがえるか

─。そし

て、必ず質問するのは「趣味」だ。現在の

開発メンバーはほとんどが「プログラミン

グ」が趣味と言えるほど、朝から晩までずっ

とコードを書いている。それくらいプログラ

ミングが好きな人ばかりなのだ。そんな人た

ちが集まったBPSが目指すのは、「日本発、

世界を代表するITベンチャー企業になる」

こと。仲間とともに、世界を変える価値観を

生み出そう。

(文 磯貝

里子)

最新技術を探求し、

世界に誇れる

サービスを

生み出せ!

ビヨンド・パースペクティブ・ソリューションズ株式会社

プログラミング技術への愛は誰にも負けない。そんな人たちが集まった、平均年齢27.4歳の若いITベンチャーがビヨンド・パースペクティブ・ソリューションズ株式会社(以下、BPS)だ。今、一緒に成長し、夢に向かってチャレンジできる仲間を求めている。

一緒に世界を目指す仲間を募集中!

BPS 株式会社 http://www.bpsinc.jp/

連絡先と志望動機だけでエントリー可能!採用情報ページhttps://www.bpsinc.jp/recruit

BPSが現在押し出すマンガ事業で使用されている各社員をモチーフにしたキャラクター

2012.3 No.17

マネージャー(人事担当)

植う え

野の

準じゅん

太た

さん

代表取締役

渡わ た

辺な べ

正ま さ

毅き

さん

Page 14: インキュビー(incu-be) Vol.17

142012.3 No.17

ビッグバン以前の宇宙を観測

宇宙は高温・高密度な状態「ビッ

グバン」から始まったとするビッグ

バン宇宙論は、様々な観測事実を説

明できる。ビッグバンの残光ともい

われる宇宙マイクロ波背景放射(C

MB)は宇宙に満ち満ちている微弱

な電波であり(温度換算して約マイ

ナス270℃)、その存在はビッグ

バンの実験的証拠の1つといわれ

る。しかし、ビッグバン宇宙論だけ

では説明がつかない観測結果が得ら

れてきたことから、30年ほど前から

ビッグバン以前の宇宙に対しての理

解が求められてきた。そこで登場

したのが、「インフレーション宇宙

論」だ。この理論によると、宇宙は

その誕生直後に急激な加速度膨張を

したという。時期にして、宇宙誕

生後10 -36秒から10 -34

秒までの一瞬

のできごとだ。アメーバが一瞬にし

て銀河の大きさになると比喩される

ほどの変化が、ビッグバン以前に

あったという。この説は、今では多

くの宇宙論研究者の支持を集めた定

説となっているが、その決定的な観

測証拠は得られていない。総合研究

大学院大学の田島治さんは、この理

論を観測的に証明するための実験

「GroundBIRD

」のプロジェクト責

任者だ。

これまでにない電波望遠鏡

インフレーション理論を証明する

には、インフレーションの際に生じ

たとされる原始重力波の存在を見つ

けることが必要だ。その最も有効な

手段と考えられているのが、Bモー

ドと呼ばれるCMB偏光パターン

の検出である。世界各国が衛星や

地上観測でBモードを検出しよう

としのぎを削っている中、田島さん

が取り組むのは、小型の電波望遠

鏡「GroundBIRD

」の開発だ。その

名の通り、地上からBモードの検出

宇宙のはじまりは学融合で切り拓かれる

「宇宙のはじまりとは?」その究極の問いに答えるべく、様々な分野の研究者が協力している。基礎科学の分野では、電波や素粒

子を測定する実験装置の設計、現場での組み立て、そしてデータの解析も研究者の手によって行われ、ときには共同研究者が数

百名に及ぶこともある。その最先端は、学融合する研究者によって切り拓かれているのだ。

総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科 素粒子原子核専攻(高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所)

田た

島じ ま

治おさむ

准教授

Page 15: インキュビー(incu-be) Vol.17

15 2012.3 No.17

を目指す。これまでの観測では、微

弱なBモードを詳細に解析するため

に装置の大型化が進められてきた。

しかし、田島さんは装置を小型化す

るという独自の路線を歩むことにし

た。小型化することで、観測する視

野を高速で動かせるため、従来実験

の10倍もの観測領域が実現する。観

測領域の拡大により、パターン分析

の精度、つまり、Bモードの測定精

度が向上する。装置の調整にかかる

時間も短縮でき、開発のスパンが短

くなることは激しい国際競争の中で

有利に働くはずである。装置の肝と

なるミラーと検出器の設計は、光学

分野の研究者と田島さんがそれぞれ

担当する。ほかに天文学、加速器物

理学の研究者が加わることで、これ

までにない装置が完成し、実装デー

タを出すことができる予定だ。

素粒子を通して宇宙を観る

田島さん自身は学生時代、素粒子

物理学が専門だった。宇宙創成か

ら存在すると予想される素粒子か

ら、初期宇宙について考えられるこ

とが魅力だった。学生時代、ニュー

トリノを検出するスーパーカミオカ

ンデの研究で、それまで質量がない

とされていたニュートリノに質量が

あることを裏付ける証拠が観測さ

れた。のちにノーベル物理学賞を受

賞された小柴昌俊さんの弟子、戸塚

洋二さんの大発見である。この頃は

ニュートリノ実験の観測技術が向上

していった時期でもあった。田島さ

ん自身も、「K

amLA

ND

」と呼ばれ

るニュートリノ検出装置で研究をし

た。物質と反応しにくいために検出

が困難なニュートリノの研究をする

中で、現在の研究にもつながる検

出困難な対象を研究するノウハウを

学んだ。博士号取得後は、高エネル

ギー加速器研究機構で行われていた

Bファクトリー加速器実験に従事し

た。実験データを解析するだけでな

く、Belle

検出器と呼ばれる素粒子

の挙動を測定する装置の改善にも着

手した。実験、解析、そして装置の

改善まで、田島さんが研究の中で獲

得したマルチな経験は現在の研究の

礎となっている。

変化と融合が

新しい視点を創出する

「CP対称性の破れ」を論じた小

林・益川理論を証明し、2人のノー

ベル賞受賞に寄与した高エネルギー

加速器研究機構の加速器実験「B

ファクトリー」。そこでは、15の国

と地域から約60の大学・研究機関に

所属する約400人の研究者により

建設・データ収集、解析が行われて

きた。高エネルギー加速器研究機構

に専攻を置く総研大高エネルギー加

速器科学研究科は装置の開発、実験

データの取得・解析、そして理論的

裏づけと予想など、様々な分野の研

究者が関わることが当たり前な環境

だ。装置1つ開発するにしても、異

なる専門家が相互に補完しながら、

新しい視点を生んでいる。

田島さんは若手の研究者に「学位

を取ったら研究分野を一度は変えて

みよう」と言う。環境を変える、研

究分野を変えることは、自分をリ

セットすること。自分をリセットす

ることで、新しい視点を取り入れる

隙間ができる。「自分の研究が他人

にはわからない」とい

う経験をすることも、

研究者として重要だ。

人当たりの良い田島さ

んだが、「異なる分野

の研究者とのディス

カッションは確かに難

しい」と言う。基本的

な考え方から専門用語

までが違う中でコミュ

ニケーションをとりな

がら、1つの目標に向

かう。言葉1つとって

もわからないことだら

けだ。だからこそ田島

さんのように、1つの

研究分野にとどまらず

に、新しい視点を取り

入れる柔軟性を持った

人材がキーになってい

5,000 m 以上の高地、チリ・アタカマで CMB のBモード観測を行う田島さん。観測用の QUIET 望遠鏡とともに。

くだろう。

宇宙分野だけでなく、分野間の相

互作用によって、新しいフィールド

をつくる学融合型の研究は研究界全

体のトレンドであり、総合研究大学

院大学が学融合推進センターの活動

を通じて積極的に取り組んでいる課

題だ。自らの分野を立脚点に新しい

学問分野を取り入れる変化を恐れな

い者が、最先端の研究をつくるトッ

プランナーになる。

(文 武田

隆太)

大 学 院 に 行 こ う

Page 16: インキュビー(incu-be) Vol.17

162012.3 No.17

Π(パイ)型ではなく、

Γ型(ガンマ)人材を育てる

現在、世界では健康長寿社会の実

現に向けて、様々な技術が結集しつ

つある。創薬、食品、化学、医療機

器・診断等の分野は互いに連携し合

い、そこにIT化や精密計測技術が

融合することで、新たな研究開発の

潮流、新たな市場開拓の可能性が高

まっている。特に生命科学分野と情

報科学は、大量データからの推論や、

生体をシステムとして捉えたシミュ

レーションなど、その親和性が高く

なってきた。それは、生命科学の方

法論そのものに対する根本的な革新

のうねりになりつつある。さらに、

そのような先端的研究を進めるため

には、孤立した研究活動ではなく、

異分野間の国際的な協調と迅速な情

報交換がますます欠かせない。

しかし、現在の大学院教育ではこ

の成功事例は少ない。たとえば、研

究人材の育成を議論するときによく

例に出されるモデルに、Π(パイ)

型人間がある。2つの高い専門性を

持つΠ型人材の育成は5年間という

博士課程教育の期間を考えると時間

が足りず、短期間で育成しようとす

ると、結果的に中途半端な人材と

なってしまうという課題を抱えてい

る。そ

こで東京工業大学が考えたの

が、1つの深い専門性を持つととも

に、もう1つの専門分野の基本的な

考え方と方法論を理解する、Γ型人

材の育成プログラムだ。「生命科学

系の研究者が情報技術を道具として

使いこなせるようになれば、研究の

スピードは大きく加速する。いきな

り2つの専門性を極めるのではな

く、まずはツールとして使えるよう

になるところまでを大学院教育でカ

バーすることが不可欠だ」と関根先

生は語る。

経験を通してスキルを

身につけろ

Γ型人材育成プログラムの特徴

は、実践的な科目の多さにある。ど

んなに深い専門知識を身につけたと

しても、異分野の人材と連携して課

題発見・解決を行う人材としての素

養を身につけるためには、多彩な実

務的環境に身を置き、様々な状況に

対応して自ら迅速に判断をするため

の訓練が必要になる。そこで、この

プログラムでは生命科学と情報科学

それぞれの分野の学生が組んで実施

するグループ型問題解決演習や、海

外の学生チームを招いて行う「国際

情報生命コンテスト」の開催、学生

の自主企画により海外から著名講師

や海外提携校の学生を招いて行う

「国際生命健康夏の学校」の開催な

ど、ユニークな機会を数多く提供す

理系学生よ、ガンマを目指せ

東京工業大学大学院生命理工学研究科長生命理工学部長

関せ き

根ね

光み つ

雄お

教授

大学院進学率が90%に達する東京工業大学では、大学院教育に重点を置き、全学的にプログラムの強化を進めてきた。

そんな東京工業大学が今年、生命理工学研究科、総合理工学研究科、情報理工学研究科の3研究科にまたがる複合領域型大学院

教育プログラムをスタートさせようとしている。それが、新しい人材育成のコンセプト「Γ(ガンマ)型人材の育成」である。

このプログラム開発を統括する東京工業大学大学院生命理工学研究科長の関根光雄さんにお話を伺った。

Page 17: インキュビー(incu-be) Vol.17

17 2012.3 No.17

る。さらに、修士課程での1週間に

わたる国内インターンシップや博士

課程での海外協力機関でのインター

ンシップの必修化など、実践重視の

姿勢はプログラムの随所に現れてお

り、専門性を高めるだけに留まらな

いという大学側の強い意志が感じら

れる。さらに、博士後期課程の学生

には、奨学金制度を設けて最大で月

に20万円の支援を行うことで、学生

がプログラムに集中できる環境も整

備している点など、博士課程の実情

を意識したプログラムとなってい

る。

産業界の若手メンターから

経験とスキルを盗め

もう1点、興味深い特徴として「産

業界若手メンター制度」がある。こ

れは、一定期間、大学の研究室に30

~35歳前後の産業界の若手メンター

に常駐してもらうことで研究室内の

学生と交流し、異なる視点や将来的

な社会とのネットワーク構築に発展

する機会を創出するというものだ。

「もともと、学生が一番成長できる

場所は、授業でも体験学習でもなく、

研究室でのディスカッションだった

はず。しかし、助教や講師といった

若手研究者の学内ポストの減少や、

産業界から来る研究生の減少といっ

た世の中の流れで、最近の研究室で

は30歳から35歳くらいの、メンター

となるべき年代の人材数が極端に

減ってしまった。特に産業界から来

る人材が減ってしまったことで、実

際に就職をするまで学生が産業界の

研究開発の実態を知る機会も減って

しまい、学生は昔よりも就職後のイ

メージを具体的に持てていません。

産業界若手メンター制度を導入する

ことで、今よりももっと学生を成長

させることができるはずです」。関

根さんの話に熱がこもる。

進化する大学院プログラム

東京工業大学はこれまで、12件の

21世紀COEプログラム、9件のグ

ローバルCOEプログラム、13件の

大学院教育GP等の採択拠点の活動

を通して大学院教育の改善・改革に

組織的に取り組んできた。近年では、

博士一貫教育プログラムをはじめと

する最高水準の博士課程教育と、産

業界にキャリアパスをつなげること

の両立を図るための模索を続けてき

た経緯を持つ。そんな中で、このプ

ログラムは、複合領域における人材

育成の新しいプロトタイプの創出に

つながることが産業界、学術界の両

方から期待されている。

21世紀のリーダー育成を目指して

進化し続けるこの人材育成プログラ

ムでは、熱意ある学生の応募を待っ

ている。

(文 徳江

紀穂子)

目標 内容

生命科学と情報科学の両者を理解する力を持つこと

・Γ型人材養成 基盤科目・先端科目による複合領域教育

自ら問題を発見し、大量の情報の中からその本質を見抜き、正しい決定をする力を持つこと

・異分野学生が組むグループ型問題解決演習

・“国際生命健康夏の学校”を学生が海外と連携して自主企画

・バイオ版のロボコン“国際情報生命コンテスト”の開催

優れた異文化コミュニケーション能力を磨くこと

・プロフェッショナルな講師による異文化コミュニケーション科目

・博士後期課程では海外協力機関へのインターンシップを全員に必修化

・博士課程修了までにTOEIC 750点以上、など外部試験を活用した質の保証

表 1.カリキュラムの目標と主な内容

大 学 院 に 行 こ う

Page 18: インキュビー(incu-be) Vol.17

182012.3 No.17

常に求められる難治疾患研究

難治疾患とは、いわば「不治の

病」。病因や発症機構が明らかにさ

れていないために未だ有効な診断法

や治療法、予防法が確立されていな

い病気だ。難治疾患であるかどうか

はその時代の医療水準にも依存し、

研究により原因や治療法が明らかに

なれば難治疾患ではなくなる。結核

やコレラなどの感染症がかつて不治

の病だったように、科学の発展によ

り治療が可能となる病気もある。そ

のため、国も様々な難治疾患の原因

を探り、治療方法を確立する研究を

支援している。人の命を救うため、

非常に必要とされている研究分野な

のだ。

「自分の仕事」という意識

東京医科歯科大学難治疾患研究所

は、日本で唯一の難治疾患に特化し

た国立大学附置研究所だ。現在3部

門21分野に分かれ、がんや代謝疾患、

アルツハイマー病などの神経変性疾

患、遺伝病など疾患に関する研究や、

発生学、遺伝学といった基礎学問の

研究があり、多くの大学院生が研究

に励んでいる。この研究所で育てた

いのは、「研究者の覚悟と魂」だ。

大学院生とは、学生から社会人への

移行期間だ、と北嶋さんは言う。待っ

ているだけで問題や答えが与えられ

る学生とは違い、社会人は自分で資

金を得て、仕事を進めていかなけれ

ばならない。学部学生と社会人の移

行期間にいる大学院生は研究を通じ

て、自分の力で進めていくという意

識を育てる期間なのだ。「必ずしも、

研究所の学生全員が研究職に就くわ

けではありません。しかし自分が社

会の一員であり、社会の役に立つん

だという心構えや自主性を持つこと

はどの職業でも共通なのです」。そ

れが北嶋さんの伝えたい思い。一人

前になるという「研究者の覚悟と魂」

を大学院という場で身につけて、「社

会に貢献できる人間になってほし

い」と考えている。

挑戦の場はここにある

大学院生を一人前の研究者に。そ

んな使命を持つこの研究所では、大

学院生であっても、1人の研究者と

して扱われる。

研究所には独自の研究助成制度が

あり、大学院生も研究費の獲得に挑

戦しやすい。平成22年度にこの制度

で支援を受けた6人のうち、3人が

大学院生だ。さらに、RA制度を充

実させており、技術の向上と同時に

経済的支援も準備されている。また、

新しい実験技術の習得や共通実験機

器施設の使用について、研究所全体

でのサポート体制が充実している。

ゲノム解析やプロテオーム解析、遺

伝子組換えマウスの作製など、学内

でほとんど全ての分子生物学分野の

解析が可能だ。さらに、学内では定

期的に機器利用に関するセミナーが

行われている。やる気次第で新しい

実験技術を習得したり、研究室の枠

を超えた研究をしたりすることがで

きるのだ。

研究助成制度や施設の充実まで、

この研究所は本気で研究する人を大

切にする研究所であることがわか

る。理念は「難治疾患の学理と応用」。

研究を通じて難治疾患の原因や治療

法を明らかにし、社会の役に立つこ

とを目的とする。自分の力で社会に

役立つ研究をやり遂げたいと思う学

生にとっては、自分がどこまでやれ

るのか、挑戦できる素晴らしい場だ

と感じた。

(文 小橋

優子)

「一人前の研究者」として不治の病に挑む

東京医科歯科大学 難治疾患研究所

所長 北き た

嶋じ ま

繁し げ

孝た か

教授

学生といえども、誰かに与えられたテーマや方法をただ実行するだけの研究生活ではもの足りない。

自分で考えて、試して、結果を導く。そんな意欲的な学生が「一人前の研究者」として扱ってもらえる環境が

東京医科歯科大学難治疾患研究所には整っている。今回、所長の北嶋繁孝さんに話を聞いた。

大 学 院 に 行 こ う

Page 19: インキュビー(incu-be) Vol.17

19 2012.3 No.17

情報科学と感性

特集2

―ヒトはどこへ向かうのか―

 近年のスマートフォンの急速な普及に

よって、私たちは一層簡単に、情報に

アクセスできるようになった。情報化社

会は加速され、人々の情報技術に対す

る注目はいよいよ次のステージに進む。

 高度な技術を駆使して得られる情報は

「知識」にかかわるもののみに留まらな

い。ヴィジュアルイメージ、文字、音声、

身体表現、造形など、いわゆる「感性」

と呼ばれる人間独自の感覚に訴えられる

ものも含まれる。今、情報技術が、人

間の感性をも変化させてきているのだ。

 それでは、感性とはいったい何か。こ

れまで忙殺されていた日常のほとんど全

てをコンピュータに任せることができるよ

うになった人間の生活の中で、唯一の

「人間らしさ」として残ると思われるこ

の特徴を、人はどのように捉え、技術を

進歩させていけばよいのか。

 本特集では、感性を起点としたサービ

スを展開している人、感性を科学してい

る人やコンピュータで再現しようとしてい

る人を取り上げ、これまで科学として説

明が難しかった「感性」から、21 世紀

の技術を眺めてみようと思う。

Page 20: インキュビー(incu-be) Vol.17

202012.3 No.17

大みそかにデジタル技術で

日本中を驚かす

チームラボは、東京都文京区に本社

を構える、システム開発やウェブプロ

デュースを主事業とする企業。2001

年、当時東京大学工学部の学生だった猪

子さんが、仲間とともに事業をスタート

した。データマイニングやバイオイン

フォマティクスをはじめとした自然言語

処理の高い技術力に加え、特徴的なのは、

芸術分野での高いクリエイティビティ

だ。パリ・ルーブル宮内装飾美術館への

映像作品「花と屍」の出展など、テクノ

ロジーと、アート、デザインの境界線を

曖昧にして、インターネットサイトから

空間芸術までを手掛け、急速に発展を続

けている。さらに最近では、猪子さん自

身の独創的な考え方と、不思議なキャラ

クターからTV番組への出演も増えるな

ど、企業としても個人としても大きく注

目を受けている。「技術が高度化しすぎ

た結果、もはや消費者に技術の違いは極

端に見えづらくなってしまった。性能の

良さとかの合理的なアピールが難しく

なって、より人の行動が、感動や共感と

いった非合理的な部分が重要になってき

ているってことなんだ」。猪子さんは、

感性や主観が、ものづくりにおいて重要

になってくる、と早くから主張している

1人だ。

人は変わらない。でも、テクノロジーは根本から変わる。

2011年最後を締めくくる紅白歌合戦。白組の司会を務める嵐が2曲目を歌うタイミングで背景が突然デジタルなスクリーンに切り変わる。スクリーン上のボールはあたかも嵐のメンバーが投げ合っているかのように動き、最後にはそのスクリーンとなっていた背景が割れ、瞬時に消えた。会場にいた人たちは突然の出来事にどよめき、一瞬の間をおいて会場から大きな喝采が巻き起こる。日本中を大いに驚かすこの演出を行ったのが、猪子寿之さんが代表を務めるチームラボだ。

プロセスが重視される時代

「NHKの放送のとき、非常に面白かっ

たことがあるんだよ」。紅白の演出につ

いて、とても楽しそうに、そしてとても

真剣なまなざしで、種明かしをしてくれ

た。「あのとき、会場にいた人たちから

一番大きな歓声があがったのは、メド

レーの最後で、デジタルのスクリーン背

景が割れて元のステージ背景が出てきた

部分。でも、テレビを見ていた人たちは、

その瞬間にカメラが切り変わって、嵐の

アップになっていたのでその映像を見て

いない。注目が集まったのは、嵐のメン

バーがデジタル映像で作られたボールを

動かしていた部分だったのだ。会場にい

た人たちは事前に何が起こるかっていう

プロセスの部分を知っていたから、スク

リーン背景が割れる部分で驚いていた。

でも、テレビで見ていた人たちは、結果

としてわかりやすいボールを動かしてい

る部分までは感覚的に興味を持てたけ

ど、背景が割れたことについてはわけが

わからなくて、瞬間的に理解できなかっ

た。つまり、これってプロセスを理解し

たほうが、感動が大きくなるってこと

なんだよね」。現在、情報分野の技術だ

けでなく、自動車やプラントといったも

のづくりの分野においても、純粋な技術

力や性能の良さではなく、その開発にお

けるドラマや物語を見せることでアピー

ルする事例は数多い。消費行動をより情

緒的な側面から促進させている事例であ

チームラボ株式会社代表 猪

い の

子こ

寿と し

之ゆ き

さん

Page 21: インキュビー(incu-be) Vol.17

21 2012.3 No.17

る。「要は、プロセスの一部を見せると

完成品が良く見えたりする。それって、

情報産業をはじめとした知識産業だけで

なく、特許やノウハウとしてプロセスを

隠してきた製造業であってもプロセスの

一部を公開することが収益につながると

思うんだよね」。

情報化社会で変わった価値観

猪子さんは、情報が伝わる媒体が多様

化し、情報伝達のスピードが加速される

ことによっても、感性、特に「好奇心」

が重要視されるようになると言う。「情

報化社会になる前、情報は必ずものを通

じて媒介されるものだったと思うんだよ

ね。たとえば、芸術も見方を変えれば本

当はただの情報って言うこともできる

じゃない。その場合、情報だけでは人間

が認識できないから、油絵の具でキャン

バスに書くことで、初めて認識できるよ

うになったって考え方もあるはず。でも、

情報化社会が来たことで、物理的な「も

の」を介在しなくても、情報のみを人間

が認識できるようになった。物質という

制約を解かれたことで、人間はより感情

に素直になってると思うんだよ」。そも

そも情報だけなら製造コストはかからな

いし、際限なくコピーできる。もともと、

「もの」を通じて得ていた情報が、今や

情報だけで受け渡しができるようになっ

た。「結果として、情報を媒介するため

の「もの」への依存心はなくなっている

と思う。だから今の若い世代は、高級車

にも高級料理にもあまり興味がないん

じゃないかな。その代わり、無限にコピー

できる情報が一気に広がることで、今ま

でにない新しい情報に対する欲求が高く

なる。つまり、好奇心が人を動かす大き

な原動力になるよ、きっと」。

技術者のゴールも変化する

人々の価値観が変わることで、社会の

ニーズにあったものを生み出すという技

術の概念も大きく変わる。技術は今まで、

社会のニーズについて客観的な現象や論

理をベースに考えられてきた。しかし好

奇心という個人の主観をベースにする考

え方に変わることで、技術も、より個人

の価値観で評価されるため、社会にニー

ズのある技術とは何かが判断しづらくな

る。そのため、理論だけでなく、それを

実際に作り上げ、世に出して反応をうか

がうことが重要になってくる。つまりは、

作り手は時として論理的でない消費者の

感情の動きを認め、それに合った技術を

生み出し続け、試し続けることが求めら

れるようになるのだ。さらにこれは、技

術だけでなく、科学においても今後大き

なウエイトを占めてくるはずだと言う。

これまで困難とされてきた「感性」の理

解のために、近年注目を集めている脳科

学や文理融合分野が台頭し始めている。

情報化社会が、自然科学の概念をも変え

る時代が今まさに到来しているのだ。

(文 長谷川

和宏)

百年海図巻チームラボ, 2009, 映像インスタレーション,10min 00sec(19m 200mm × 2m 400mm),音楽:高橋英明

生命は生命の力で生きているチームラボ, 2011, アニメーション,

6min 23sec (9:16), 書:紫舟

情報科学と感性

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222012.3 No.17

異なるアプローチで新たな論理を構築できるか

的な理解を要するメタファー(比喩)は

脳の右側でも処理をされていたりする。

通常の言葉の理解と感性に働きかける際

の処理の相違が見られるのだ。このよう

に、言語を理解する過程が脳の活性から

見えるようになったら、機械にそのプロ

セスを踏襲させるシステムが考えられる

かもしれない。

量から密度への移行が、

機械を人に近づける

石崎さんが脳に注目するようになった

理由は、より人間の脳に近い情報処理の

仕組みを作り出せないかと考えたから

だ。元々の専門は「自然言語処理」。音

声認識や機械翻訳、情報検索で使われて

いるこの技術のこれまでのアプローチ

は、大量データをいかに効率よく処理で

きるかを追求することだった。たとえ

ば、自動要約システムは、その文書の中

これからのものづくりでは、いわゆる大量生産よりも質を重視して、人間の脳に素直なもの、感性や主観に訴えるものの価値が重要になるならば、情報科学では人間により近い「感性」や「主観」をいったいどのように捉えるのか。「感性」で受け取っている情報の1つ、「言葉」について研究しているのが慶應義塾大学の石崎俊さんだ。コンピュータにできることは増えてきているが、人間と同じように言葉を「理解する」ことはできていない、と話す石崎さん。自然言語処理と脳の機能への2つのアプローチで「言葉の理解」を科学して、機械が人間に近付くヒントを探している。

で頻出する名詞を探しだし、その名詞を

中心に統計処理をして重要な文をピック

アップしていくことで、ある程度の精度

で要約された文章が出てくるが、これは

コンピュータが文書の内容を理解してい

ることとはまったく違う。

そこで石崎さんは今、人間の「連想

力」を統計処理に取り込むアプローチ

を新たに構築しようとしている。人が

「魚」という言葉から連想する「動物」

「海」などの言葉を上位概念、環境概念、

として関係づけし、もとの言葉「魚」

とそこから連想される言葉の距離データ

を計算して蓄積していく。その大量の

データで連想概念辞書をつくるのだ。こ

の辞書を用いて翻訳、検索、要約といっ

たシステムをつくるときに、その単語同

士の連想の距離も加点対象として統計処

理できるため、今までよりも人間に近い

処理ができるようになる。「これまでは

いかに多くのデータを対象にしてシステ

ムをつくるか、ということを追及してき

ましたが、これからはデータ同士の密度

を高度化することで、質を重視した本質

に近いアプローチができるのではないか

と考えています」。

感性という不可思議な脳の機能は、論

理では説明できないのか。もしくは、概

念の距離や高密度化の研究を重ねていく

ことで、これまで考えてきたことと全く

異なる新たな論理が構築できるようにな

るか。その答えが出るときが、機械が本

当の意味で人間に近づくことができる時

代なのだろう。

(文 環野

真理子)

慶應義塾大学 環境情報学部

石い し

崎ざ き

俊しゅん

教授 工学博士

言葉を理解する場所

石崎さんは今、近赤外分光法(N

IRS

を用いる装置を使って、言葉に関する脳

内の活性を見ている。外部から入ってく

る情報を受け取るとき、脳は私たちの想

像を超える複雑な働きをしている。た

とえば、「一升瓶を飲む」と聞いた私た

ちの頭で連想されることは、瓶を飲み

込んでいる姿ではない。すぐさま「一

升瓶の中のお酒を飲む」の意味に置き換

えられる。このように、私たちのコミュ

ニケーションや何か情報を受け取った

ときに感じる感性は、脳が瞬時に行う

「連想の力」によって支えられている。

NIR

S

によると、より抽象的な上位概念

と具体的な下位概念では、人間が、記憶

している脳の場所が違ったり、通常の言

葉は脳の左側で処理されているが、感覚

Page 23: インキュビー(incu-be) Vol.17

23 2012.3 No.17

情報技術が理解力を拡張する

どの相互の関連性からサビを見つける。

「たとえば繰り返しの中で長いものは、

歌詞の1番と2番を表しています。その

最後に重なる短い繰り返しがサビである

ことは多いですね」。この技術によって、

好きな歌の「サビ部分」だけを次々と聴

くこともできる。この技術は「S

ongle

(http://songle.jp

)というウェブサイトで

試験的に公開中だ。他にも、歌詞のテキ

ストと音楽とをリンクさせ、歌詞中の言

葉をクリックしただけでその言葉から音

楽が再生できる技術も開発した。

情報の受け取り方にも個性がある

音楽、絵画、物語は人の感性で受け取

る情報の塊だ。たとえば、同じ音楽でも

人によって好き嫌いがあるのは、個々人

で情報の受け取り方が異なるからだ。さ

らに個人の中でも状況や年齢で受け取り

方は変化する。しかし、普段の生活では

自分自身ですら何に着目して音楽を聴

いているのかを意識したことはないだろ

う。コンピュータが音楽の中身を自動的

に理解して可視化してくれれば、今まで

自分の感性では意識に上らなかったよう

な情報も意識できる。それにより、より

深くその曲のことを理解でき、音楽鑑賞

をもっと豊かなものにできる可能性があ

る。音楽を自動的に理解する技術がヒト

の音楽に対する理解力を拡張する。それ

が後藤さんが切り拓こうとしている未来

の1つだ。自らのテーマを「能動的音

楽鑑賞インタフェース」と名付け、音楽

音楽の楽しみは今も昔も生活に欠かせない。デジタル技術が発達したことで人は音楽を持ち歩き、配信サービスで膨大な数の楽曲に簡単にアクセスできるようになった。いつでもどこでも好きなだけ音楽が聴けるようになった私たちの生活において、まだ変わっていないことがある。それは、音楽の「聴き方」である。産業技術総合研究所の後藤真孝さんは、「音楽を自動的に理解する」技術を開発して、聴き手の音楽理解を促進する、新しい鑑賞スタイルを築こうとしている。

の楽しみ方をより能動的で豊かにしたい

と考えている。

未来を切り拓く研究テーマを

自身も音楽が好きでこの研究を始めた

後藤さん。情報技術分野ではソフトウェ

ア開発が主軸のため、少人数でも直接社

会に役立つものをつくれる実感がある。

情報が物質の媒介を経ずに流通し、人々

がますます情報技術に依存する時代にな

れば、この分野の研究者の出番は今以上

に増えてくるだろう。「1人のユーザー

としてその技術を愛していることがテー

マとの出会いにつながるでしょう」。音

楽に限らず、身近なところにいくらでも

課題は眠っているのだ。後藤さんも音楽

鑑賞支援にとどまらず、自分好みの音色

や音量バランスにドラム音を調整できる

音楽加工や、好きな歌手の声質に似た声

質の別の歌手の曲を見つける音楽検索な

ど、新しい技術開発に絶えず挑戦してい

る。これらによって私たちは自分好みに

曲を加工したり、思いがけない曲と出

会ったりと、今までにない音楽の楽しみ

方ができるだろう。「『初音ミク』などの

歌声合成技術を使用し、大規模な協調的

創造活動が起き始めているように、音楽

もみんなで共有して加工し、より良いも

のにできたらいいですね」。

感性が情報技術を進化させ、情報技術

は感性を豊かにしていく。このサイクル

の中で、後藤さんの研究も日々進化して

いく。

(文 環野

真理子)

独立行政法人 産業技術総合研究所情報技術研究部門 上席研究員兼 メディアインタラクション研究グループ長

後ご

藤と う

真ま さ

孝た か

さん 博士(工学)

情報科学と感性

歌のサビを抽出する

コンピュータ

後藤さんは「音楽のサビ」をコンピュー

タに見つけさせる技術を世界で初めて開

発した研究者だ。なぜ人間は音楽のサビ

をサビと理解するのか。「音楽のサビはい

わば音のパターンの繰り返し。繰り返し

を見つけてくることが、サビを見つける

ことになるのです」。後藤さんは、音の波

形をフーリエ変換によってパターン化し、

パターンの繰り返しを時間軸に沿って可

視化した「音楽地図」をつくった。地図

の中では、転調したり伴奏が大きく変

わったりしていても様々な繰り返しが検

出され、楽曲全体での繰り返しの仕方な

◀「音楽地図」を可視化したサビ出し機能付き音楽試聴システムSmartMusicKIOSKの画面

Page 24: インキュビー(incu-be) Vol.17

DeNA賞Webテクノロジーに関する研究全般

大阪府立大学 工学研究科 電気・情報系専攻 博士前期課程2年上野 未貴(うえの みき)さん

「絵情報共有型会話エージェント Pictgent の提案-絵を用いた新しいコミュニケーションを目指して-」

テラベース賞位相差電子顕微鏡による様々な試料の観察自然科学(バイオ、有機無機材料(ソフトマテリアル))実験対象が数百ナノメートルオーダーの構造を持っていると尚可

大阪大学大学院 基礎工学研究科 物質創成専攻 化学工学領域 助教尾島 由紘(おじま よしひろ)さん

「大腸菌の線毛観察によるバイオフィルム形成機構の解明」

アフィメトリクス・ジャパン賞マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析による、疾患などの研究、または植物・畜産・アグリバイオ研究など

関西学院大学 理工学部 生命科学科 生命科学専攻 専任講師関 由行(せき よしゆき)さん

「PRDM14のエピゲノムリプログラミング活性を利用した高品質iPS細胞の樹立」

ヴィレッジ賞新たに海外で研究する研究者

NASA Ames Research Center/ 横浜国立大学 博士後期課程3年河合 純(かわい じゅん)さん

「タイタン模擬環境における原始生体膜の生成」

スクリプス研究所 博士研究員與那城 亮 (よなしろ りょう)さん

「炎症を制御するミトコンドリアユビキチンリガーゼ」

レボックス賞光源を使った研究

名古屋大学・大学院理学研究科 生命理学専攻 准教授須藤 雄気(すどう ゆうき)さん

「新規光機能性分子の発掘とその利用」

ディスカヴァー・トゥエンティワン賞DIS+COVERサイエンスシリーズとして書籍化にご協力いただける方を募集

京都大学 再生医科学研究所 幹細胞分化制御研究領域 / 京都大学 iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 グローバルCOE特定研究員山水 康平(やまみず こうへい)さん

「転写因子発現システムを有するES細胞バンクを用いた細胞分化機構の網羅的解析と新規ES/iPS細胞分化誘導法の確立」

若手スタートアップ賞すべての理工系修士1年生の研究

(博士前期課程1年生も可)

茨城大学大学院 工学研究科 博士前期課程1年今野 拓矢(こんの たくや)さん

「テラヘルツ波高機能制御のための電磁メタマテリアルによる任意屈折率を有する光学素子の研究」

第9回リバネス研究費 採択者発表!

242012.3 No.17

※所属・肩書きは 2012 年 2 月時点のものです。

産業界と大学が連携し、未来を担う若手研究者を支援する

活動、それが「若手研究者応援プロジェクト」です。

研究活動の活性化、そして研究キャリアを主体的に選択し

行動できる若手研究者の育成を通して、科学技術の発展に

寄与することを目的としています。

若手研究者応援企業はP.2に掲載しています。

リバネス研究費「科学技術の発展と地球貢献の実現」に資する若手研究者に対し、自らの研究に対する熱い思いを実現し、独創性を持った研究を遂行するための助成を行う研究助成制度です。

博士号を取得後に社会で活躍する方を囲み語り合う場を、定期的に設けています。

Career Café

若手研究者がキャリアを考えるきっかけとなるイベントを開催、紹介します。

Career Discovery

理系大学生・大学院生が切磋琢磨し、成長する場としてインターンシップを通年で実施しています。詳しくは P.12をご覧ください。

インターンシップ

若手研究者応援プロジェクト『incu-be』および産学連携推進マガジン『GARAGE』を通して、研究キャリアの紹介や有用な研究情報を発信しています。

雑誌

Page 25: インキュビー(incu-be) Vol.17

第11 回 リバネス研究費 募集要項発表 ! 募集中 !

エディテージ賞生命科学、自然科学、人文科学の全分野の研究

採択件数 本賞 1件奨励賞 若干数

応募締切 2012年4月30日(月)到着分まで 

助成内容 ◯ 本賞 研究費上限50万円および10万円分のサービス(弊社が提供す

る全サービスが対象)もしくは論文投稿支援パック・プラチナサービス◯ 奨励賞 10万円分のサービス(弊社が提供する全サービスが対象)

もしくは論文投稿支援パック・プラチナサービス※ プラチナサービスは129,990円ですが、例外的にこのサービスは10万円を超えても

提供の対象とさせていただきます。

担当者より

一言

研究者の論文出版をサポートするエディテージは、優れた日本の研究の国際出版を支援する活動の一環として、自分の研究成果を世界に発信したい研究者を募集します。エディテージは 2002 年の創業より世界90 か国、3 万人以上の研究者の論文投稿を支援してきました。このエディテージ賞を通じて、より多くの日本の研究が国際ジャーナルに出版され、世界の研究発展に貢献する一助となることを期待します。

はなまる賞健康と食の関連についての研究

採択件数 1名

応募締切 2012年4月30日(月)到着分まで

助成内容 研究費上限50万円

担当者より

一言

食は、カロリーや栄養、即ち人が生命を維持し活動するために必要ですが、さらに QOL

(Quality of Life)の向上には健康性機能や生体調節機能も非常に重要です。栄養・健康を切り口に、人々の生活に寄与する食品の開発、様々な成分の新しい機能解明について、若手研究者が主体となって進める独創的なテーマを募集します。

肝き も

付つ き

町ちょう

賞肝付町の活性化に資する研究テーマ

募集分野 自然科学系のみならず、人文社会系を含む全ての分野から募集します。実証実験や住民へのヒアリング等、町内での活動・連携構築が必要な場合には、肝付町が全面的に協力を行います。

採択件数 若干名

応募締切 2012年5月31日(木)到着分まで

助成内容 研究費上限50万円および町のリソース(資源、情報など)をできる限り

担当者より

一言

肝付町の基幹産業は、農業! 農業の活性化が、「元気な肝付町」の第一歩だと考えています。農業の活性化には、経営の大規模化、生産物の高品位・高付加価値化、流通、加工、他産業との連携(アグリビジネスの展開)、農村公園化など様々なアプローチやその組み合わせが考えられます。県下一元気なまちを目指す肝付町にマッチした、そして実践可能な若手研究者の農業活性化策を募集します。追伸:肝付町は、いいところです。

www.editage.jp

25 2012.3 No.17

Page 26: インキュビー(incu-be) Vol.17

262012.3 No.17

素材開発部が差別化の切り札

「最近の外食産業では、新サービ

スを提供しても、同業他社に簡単に

真似されてしまう。価格を下げてい

くこと以外で他社との差別化が図り

にくくなってきているのです」。そ

う話すのは素材開発部の長野裕一さ

ん。なぜ、外食チェーンを展開する

はなまるが、健康というテーマで研

究費を募集するのか。理由はそこに

あった。他社が簡単には真似できな

い「科学」をベースにして、コンセ

プトを打ち出したい。そこで「健康

な素材」の開発・研究というこれま

でに社内ではなかった角度からの勝

負に出ることにしたのだ。

長野さんの所属する素材開発部

は、昨年11月に発足されたばかりの

新しい部署。現在2名で奮闘中だ。

まずは既存のメニューの「カロリー

オフ」に注目し、はなまるの定番商

品である「かき揚げ」のカロリーを

もっと少なくできないかと研究を始

めた。既存の商品でカロリーオフを

図ることで「はなまるうどん=健康

な食事」というイメージを少しずつ

浸透させていくつもりだ。

未開拓の境地を切り開く

「かき揚げでは成功したカロリー

カットの方法が、他のてんぷらでは

成功しなかったりします。揚げもの

の機構1つとっても、不思議なこと

ばかりでした」。長野さん自身、健

康なメニューづくりを起点に科学的

な検証を始めたことで、素材そのも

のを追求していきたいという欲求が

高まっているという。そこで、新し

い研究の種を見つけ出すため、関連

している企業や大学などとネット

ワークの構築を始めたところ、素材

メーカーですら持っていない知見が

まだまだたくさんあることがわかっ

た。麺ののどごしとは科学的にどう

説明できるのか、だしは何が良いの

か。科学的な追及によって、「うどん」

のおいしさはもっと広がっていくと

考えている。

食の未来をつくる研究者を

求めています

食のプロ、はなまると科学の融合

をさらに加速させるための1つの方

法が「研究費」の設立だ。健康につ

いてどんな研究が行われているの

か、新規性のある素材にはどういっ

た知見があるのか。食と健康は、は

たしてどんなかたちで結びつくの

か。研究者を応援しながら、専門家

が今、健康について何を知り、何を

考えているのかを知りたいと思っ

ている。「ゆくゆくは、研究者が研

究している新しい素材を使ったメ

ニューの商品化など、実際にコラボ

レーションできる研究者との出会い

があるといいですね」。長野さんは

こう期待を寄せる。

企業と共同で何か新しいプロジェ

クトに取り組んでみたい人、一緒に

新しいことにチャレンジをしてみた

い研究者は、はなまると一緒に挑戦

してみてはいかがだろうか?

(文 徳江

紀穂子)

「健康」を届ける、新はなまるスピリット

株式会社はなまる 素材開発部

長な が

野の

裕ゆ う

一い ち

さん

外食が続いた時には、どうしても健康に良くないのでは、と考えてしまいがち。栄養が偏ったり、知ら

ない間にカロリーを摂り過ぎたりと、家庭料理よりもどうしても不健康なイメージが付きまとってしま

う。そんな外食に対するイメージを払しょくしたいと、「はなまるうどん」で有名な株式会社はなまるは、

『健康』に配慮した新しい外食企業へ生まれ変わることを決意した。その第一歩となるのが、食の未来

を考える研究者への支援活動。健康をテーマにリバネス研究費「はなまる賞」を設置した。

information株式会社はなまるhttp://www.hanamaruudon.com

▶詳しくは、P.25リバネス研究費募集企業 はなまる賞

Page 27: インキュビー(incu-be) Vol.17

若手研究者がキャリアを考えるきっかけとなるセミナーを開催します!10 年間、サイエンスコミュニケーションビジネスに挑戦してきた

研究者集団リバネスのスタッフがお届けする、社会に出るための自分の磨き方。成長のチャンスをつかみに、参加してみませんか?

理系学生のためのキャリアイベント

3地域開催!Career Discovery SeminarCareer Discovery Seminar

http://www.incu-be.com/seminar mail : [email protected]お申し込み・お問い合わせ

理系大学生、大学院生、ポスドク対象者 各回20名定 員

「相手に伝わる」プレゼンテーション研修東 京

2012年4月21日(土)14:00~16:00日 時 株式会社リバネス 四ッ谷本社11階場 所

プレゼンテーション研修内 容

研究室で、学会で、就職活動で、研究者にはプレゼンテーションの場がたくさんあります。プレゼンテーションはトレーニングで上達するもの。今回のセミナーでは、数多くの実験教室で自らも講師を務めながら大学院生のプレゼンテーショントレーニングを行ってきた講師が、学会発表で、就職活動の面接で使える、「相手に伝わる」プレゼンテーションのポイントをお伝えします。

1,000円参加費

コミュニケーションについて考えよう!2012年4月22日(日)13:30~16:00日 時

無料参加費第 1部 コミュニケーション研修第 2 部 県内企業による講演

内 容

4月は新しい出会いが多い季節です。研究室での新しい先生、新しい後輩・先輩との日々の活動の中でコミュニケーションは大事な要素の1つです。これから共に研究をすすめる、仕事をすすめる人たちと円滑にコミュニケーションを行う秘訣を、「サイエンスをわかりやすく伝える」ことをビジネスとして展開してきたリバネスが解説します。第2部は、県内企業からお招きする講師による講演です。既存の考え方にとらわれずに活躍する方から、キャリアについてお話しいただきます。

沖 縄

琉球大学産学官連携推進機構 201教室場 所 予 定

「想いを伝える」コミュニケーション研修大 阪

コミュニケーション研修内 容

専門性を武器にビジネスを展開し、新たな「研究者の可能性」を開拓し続けているリバネスでは、自らの専門性を相手に「的確に、かつわかりやすく」伝えることを続けてきました。今回は、これまでのノウハウを交えながら「想いを伝えるコミュニケーション」をテーマに研修会を開催します。どうすれば、自分の研究テーマを伝えることができるのか、一緒に考えてみませんか?

1,000円参加費

2012年4月22日(日)10:00~12:00日 時 株式会社リバネス 関西事業所場 所

*毎週日曜日に開催されている、リバネスのインターンシップでは高校生を対象とした実験教室を通して「研究を伝える」実践を積むことができます。興味のある方は、研修後にインターンシップを見学いただくことも可能です。

2012年度の開催予定 2012年 6月 23日(土) セルフマーケティング研修 2012年 7月 7日(土) 英語プレゼンテーション研修 2012年 10月 13日(土) コミュニケーション研修 2013年 1月 26日(土) ライティング研修

2012年度の開催予定 2012年 7月 22日(日) セルフマーケティング研修 -自分自身を見つめ直そう!-

2012年 10月 28日(日) セルフマネジメント研修 -自分の生活をマネジメントしよう!-

2013年 2月 10日(日) プレゼンテーション研修 -自分の研究を発表しよう!-

27 2012.3 No.17

Page 28: インキュビー(incu-be) Vol.17

282012.3 No.17

第 16 回

博士の会社の興し方

高橋 栗林さんは、研究の事業化を目

指していらっしゃいます。日本の中で

起業を目標にしている研究者は珍しい

ですね。

栗林 大学は工学部の出身で、展開構

造物の技術の医療への応用を目指して

研究していました。展開構造物の研究

は宇宙開発で盛んで、人工衛星のソー

ラーパネルやパラボナアンテナをコン

パクトに宇宙に運んで広げるために使

われている技術です。修士のときに参

加した国際学会でオックスフォードの

先生と知り合って、その先生にお誘い

いただき、留学をしました。就職も決

まっていたんですけど、世界で自分の

実力を試すために! 若い頃は怖いも

の知らずでした。イギリスの先生方は

自分の技術を起業して世の中に出して

いくということに前向きな雰囲気で、

そのための議論をたくさんしてくれま

した。現地のTLO

も熱心にアドバイス

をしてくれるので、良い技術があって

世の中に絶対役立つなら起業するのは

自然なことでした。ですから、日本に

帰っても起業をしたいと考えているの

です。

を付けるために国際特許を持ちたいの

ですが、まず英語の壁があります。サ

ポート環境も違います。イギリスでは、

TLO

の中に博士課程のうちに会社を興

した経験のある方がいたりするので、

研究内容や起業を肌感覚で理解してく

れます。うまくいかないときの愚痴か

ら共有できたり、起業後の経済の不安

も理解してもらえたり、そんなコミュ

ニケーションができると心強いし、起

業することが身近になりますよね。私

も今年こそ起業する、と毎年言ってい

るのに踏み切れないんですよね。

高橋 どんなところが一番難しいですか。

栗林 5年後、10年後を見据えた事業

をつくりたい、と考えているのですが、

会社となると、翌年のキャッシュを生

まないといけない。いきなり医療用

の装置だと難しいので、長期的な視点

を持ちつつも、もっとわかりやすく日

常でこの技術を使える商品をつくって

売っていくことになるでしょうね。

高橋 稼げるベースをつくりながら

好きなことにチャレンジする、という

のは1つ良い考え方ですよね。僕も地

道に売れる受託解析をベースに、その

利益で研究費を運営したりと、新しい

ことを生み出しています。10年かけて

やっとベースで稼いで新しい事業を生

む、というリズムをつくれるようにな

りました。

栗林 ラボを持つようになったら、自

分で資金を獲得し、運用していく視点

が必要なのかもしれないけれど、今は、

起業をすることの方が、先が見えない

高橋 リバネスは理系の修士・博士で

立ち上げた会社ですが、特定の大学に

所属した会社ではなかったので、お金

も施設も技術もないという制約がある

中で自分たちにできることを探しまし

た。結果、研究室で研究されている最

先端科学をわかりやすく伝える教育事

業にたどりついたのです。でも僕は基

礎研究が面白くて、それをアカデミア

とは別のフィールドで挑戦したいと考

えてこの会社に来ました。今は事業が

広がってきて、会社でラボを持つこと

ができるようになったので、そこで新

しい技術を生み出すこと、大学に眠っ

ている技術を産学連携によって世の中

に出すことを目指したいと思っていま

す。栗林さんの考え方と近いかもしれ

ないですね。

栗林 リバネスさんは研究の面白さや

重要性を理解している研究者らしさを

強みに起業されているので、博士で起

業していきたい人の良いモデルケース

になりますよね。博士が集まってくる

のも頷けます。

アカデミアとビジネスの狭間で

高橋 起業は海外の経験の中で自然と

育まれた選択肢だったのですね。日本に

帰って、環境の違いに驚かれたでしょう?

栗林 起業を勧める先生はやっぱり

日本では少ないですね。論文を確実

に出してポストに就くことの方が安全

ですから。研究から事業を興すこと

は、日本ではまだハードルが大きいよ

うに感じます。たとえば、国際競争力

 東京大学生産技術研究所の栗林香織さんは、細胞を折り紙のように折りたたむ技術を研究し、血管内に人工血管などを運ぶステントへの応用を目指している。人工血管を細胞に乗せて折りたたみ、血管内に入れてやる。目的地に着いたところで瞬時に展開させれば、生体にダメージを与えることなく、コンパクトに運び込むことができるのだ。 栗林さんがまわりの研究者と少し違うところ。それは、自らの技術をもとに、起業を目指している、ということだ。リバネス研究開発事業部で産学連携によって新しい事業を生み出そうとしている高橋宏之がお話を伺った。

日本発の技術を世の中に出す人でありたい

Page 29: インキュビー(incu-be) Vol.17

栗くり

林ばやし

(繁富)香か

織おり

さん Ph.D. 高たか

橋はし

宏ひろ

之ゆき

 博士(理学)

東京大学 生産技術研究所 マイクロナノメカトロニクス国際センター 特別研究員 株式会社リバネス 研究開発事業部 部長2003年、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科にて博士前期課程修了。2009年1月、横浜市立大学大学院総合理学研究科生体超分子システム科学専攻にて博士号取得。2009年7月より株式会社リバネス研究開発事業部に所属。趣味は料理、読書、釣り、音楽鑑賞。人生初の海外旅行は、仕事で行ったアフリカのレソト王国だった。レソト大学にて日本人初の講義を行った。

2004年、英国オックスフォード大学大学院博士課程エンジニアリングサイエンス研究科修了。同年より東京大学生産技術研究所にて機関研究員。2007年、日本学術振興会(JSPS)特別研究員(SPD- 機械工学分野)。2009年、科学技術機構(JST)若手研究者ベンチャー創出推進事業JST起業研究員。2010年、JST ERATO特任研究員(兼任)。2011年、文部科学省(MEXT)新学術領域特任研究員。また、2004年にオックスフォード大学発ベンチャー企業Origami Instruments-medical deviceを設立した。

29 2012.3 No.17

ですね。だからちょっとずつ、大学に所

属を置きながら飛び立てるように、試

行錯誤です。まだどうなるかわからな

いですけど。研究者として生きていく

なら、30代でラボを持つことを目標に

しないと、と思います。まわりの優秀

な研究者を見ていてわかるのは、次の

ステップに確実にチャレンジすること

ですね。成功している研究者はそうし

ている。自分も早く自分の地位を確立

しないと、と思っています。

自分への戦略を持て

高橋 栗林さんに大きな影響をもたら

した海外経験ですが、もともと海外志

向が強かったのですか?

栗林 海外はおろか、博士課程に進む

ことも考えていませんでした。私は大

学受験で第一志望の大学に落ちて、別

の大学に行ったんです。そこで、当時の

先生方から様々なサポートとチャンス

をいただきました。そして、交換留学

制度があることを知って燃えました。

自分が絶対に行く! と、友だちや先

生方に宣言していました。

高橋 日本の人は目標に向かって、が

つがつすることをよくない、と思う傾

向があるように思いますが、それは間

違ってますよね。

栗林 自分への戦略を持つことはどん

な状況であっても必要です。そのため

に必要な成績、人脈を使うことが自分

の地位を確立していきます。中でも人

脈は大切。博士課程の中で一番得たも

のは人脈だったと思います。今でも学

会で多くの人と会うことで、次のヒン

トやチャンスをもらったりします。仲

間をつくれれば、実現したいことを助

けてもらえる。

高橋 行動力があるんですね。チャン

スを引き寄せるのに人脈は大事です。

リバネスの仕事も、研究を続けている

後輩やお世話になった教授から広がる

ことがあります。

栗林 そしてチャンスをいただいて、

ぱっとそのチャンスをつかみたい! 

と思うか。つかみたいと思ったら、あら

ゆる手を尽くすこと。留学のお誘いを

くださった先生とつながった国際学会

も、もともとは4年に1回しかなくて、

自分で行きたい! と先生にプレゼン

して行かせてもらった学会でした。自

分がやりたいことを行動で発信して

いくことが次のチャンスを引き寄せま

す。

高橋 博士として、大切にしている考

え方はありますか。

栗林 博士は自分が得た知識を世の中

に出すためにいる、と思っています。ビ

ジネスそしてアカデミア両方の視点か

ら、日本発の技術を世の中に出してい

きたい。せっかく他の人と違うチャレ

ンジをしているのだから、自分自身で

博士の雇用を生んだり、多様なキャリ

アパスのモデルケースになったりして、

次世代の博士に貢献できる人にもなっ

ていきたいですね。

(取材・構成 環野

真理子)

Page 30: インキュビー(incu-be) Vol.17

株式会社リバネス

⒈ 教育開発事業部⒉ 人材開発事業部⒊ 研究開発事業部⒋ 地域開発事業部⒌ メディア開発事業部

※ 上記事業部に在籍しながら、グローバルチームの活動(中国・シンガポール・アメリカなどで活躍)をしてみたい、チャレンジ精神旺盛な留学生(日本語および第2外国語、たとえば中国語・英語などが堪能)も同時に募集中。

⒍ プログラマーデザイナー・イラストレーター(専任) ※ 事業部にとらわれずに、すべての事業部の仕事において、ウェブ

システムの構築やデザインを担当します。

サイエンスブリッジコミュニケーター、サイエンスブリッジライター

募 集 事 業 部

募 集 職 種

2012年5月入社のスタッフを募集中です。

http://lne.st/about/recruit.html▶URL

イベント情報! 人材募集!大 学 編 企 業 編

(*ウェブページの情報をもとにしています)

01 総合研究大学院大学

2012年3月30日(金)日 程

http://www.nibb.ac.jp/opencampus/▶URL

内 容

研究者を目指す大学生・修士学生などを対象としたオープンキャンパスを開催します。研究所の様子が知りたい。研究についてじっくり話を聞いてみたい。大学院生活をのぞいてみたい。そんな人のための春休み特別企画です。入試の詳細などがわかる大学院説明会も同時開催します。先着順で宿泊補助もあります。

基礎生物学研究所オープンキャンパス2012・大学院説明会

01 ビヨンド・パースペクティブ・ソリューションズ株式会社

・Webエンジニア・スマートフォンエンジニア

募 集 職 種

https://www.bpsinc.jp/recruit▶URL

技術力、開発力を存分に発揮したい方、BPSに興味を持ってくださった方、ご応募お待ちしています。P.13にもBPSの紹介記事を掲載しています。ぜひご覧ください。

03 東京医科歯科大学 難治疾患研究所

2012年3月27日(火)研究所説明13時~14時 研究室訪問14時~17時

日 程

http://www.tmd.ac.jp/mri/events/open-campus/240327/index.html▶URL

内 容

大学院を受験される方を対象にオープンキャンパスを開催します。研究室訪問では、教員・若手研究者との対話や研究室の見学などを通して各研究室で行われている研究を実体験できます。研究指導を受ける教員と直接対話できる機会です。研究所全体と各分野についての紹介も行います。

難治疾患研究所オープンキャンパス

02東京工業大学

5月:すずかけ台キャンパス10月:大岡山キャンパス

日 程( 予 定 )

http://www.titech.ac.jp/admission/event/index.html▶URL

内 容

学部概要や入試に関する講演会が行われるほか、学部紹介や在学生による大学生活の紹介、類別ブースでの個別相談なども行います。また、普段入ることのできない研究室を訪問することもでき、研究の最先端の空気を感じることができます。

「オープンキャンパス」と同時期に、東工大の学園祭である「工大祭」(大岡山)、「すずかけ祭」(すずかけ台)を開催しています。

オープンキャンパス

02

302012.3 No.17

Page 31: インキュビー(incu-be) Vol.17

[若手研究者応援教員]*敬称略

康文,福田裕穂,大気海洋研究所 塚本久美子,総合文化研究科 石浦章一,新領域創成科学研究科 有田正規,工学系研究科 原田香奈子,中須賀真一,数理科学研究科 一井信吾)◉東京電機大学(工学部 世良耕一,理工学部 長原礼宗,未来科学部 岩瀬将美)◉東京農業大学(国際食料情報学部 中西康博,志和地弘信)◉東京農工大学(農学研究院 普後一,夏目雅裕,共生科学技術研究院 大野弘幸,アグロイノベーション高度人材養成センター 金承鶴)◉東京薬科大学(生命科学部 都筑幹夫,太田敏博)◉東京理科大学(理学部 梅村和夫,理工学部 朽津和幸,武田正之,越地耕二,基礎工学部 島田浩章)◉同志社大学(理工学部 小寺政人)◉東邦大学(理学部 岸本利彦)◉東北大学(高度イノベーション博士人財育成センター 高橋富男,工学研究科 五十嵐太郎,農学研究科 青木優和)◉東洋大学(生命科学部 下村講一郎)◉鳥取環境大学(人間形成教育センター 足利裕人)◉鳥取大学(医学系研究科 押村光雄)◉富山大学(医学薬学研究部 杉森道也)◉豊橋技術科学大学(環境生命工学系 後藤尚弘)◉名古屋産業大学(学長 伊藤雅一)◉名古屋大学(産学官連携推進本部 河野廉,社会貢献人材育成本部 森典華)◉名古屋文理大学(情報文化学部 長谷川聡)◉奈良女子大学(理学部 遊佐陽一)◉奈良先端科学技術大学院大学(バイオサイエンス研究科 別所康全,情報科学研究科 孫為華,小町守)◉新潟大学(農学部 藤村忍)◉日本大学(理工学部 宮崎康行,高橋芳浩,畔柳昭雄,生産工学部 野呂知加子,工学部 遠藤央)◉光産業創成大学院大学(光産業創成研究科 牧野孝宏)◉広島大学(生物圏科学研究科 江坂宗春,総合科学研究科 坂田省吾,小川景子,理学研究科 田川訓史,医歯薬学総合研究科 兼松隆)◉法政大学(生命科学部 西尾健,鍵和田聡,理工学部 新井和吉)◉北海道情報大学(医療情報学科 西平順)◉北海道大学(人材育成本部 樋口直樹,低温科学研究所 笠原康裕,工学研究科 日野友明,農学研究科 石塚敏, 地球環境科学研究院 山中康裕)◉三重大学(教育学部 松岡守)◉宮崎大学(フロンティア科学実験総合センター 明石良,農学部 林雅弘)◉明治大学(農学部 矢野健太郎)◉山形大学(理工学研究科 綾部誠)◉横浜国立大学

(環境情報研究院 平塚和之,中村達夫)◉横浜市立大学(生命ナノシステム科学研究科 古久保哲朗)◉立教大学(生命理学研究科 上田恵介)◉立命館大学(情報理工学部 西浦敬信,山下茂)◉琉球大学(工学部 瀬名波出,岡﨑威生,理学部 松本剛,久保田康裕,新垣雄光,立原一憲,萩原秋男,傳田哲郎,中村宗一,分子生命科学研究施設 新里尚也,徳田岳,農学部 赤嶺光,福田雅一,伊藤進,外山博英,嬉野健次,熱帯生物圏研究センター 岩崎公典)◉早稲田大学(先進理工学部 本間敬之,政治学研究科 田中幹人)ほか(2012年2月現在)

◉茨城大学(工学部 木村成伸,鈴木健仁)◉大阪市立大学(理学研究科 保尊隆享,工学研究科 長崎健)◉大阪大学(医学系研究科 米田悦啓,工学研究科 森勇介,中野貴由,藤田克昌,杉本宜昭,関修平,池道彦,理学研究科 梶原康宏)◉大阪府立大学(生命環境科学研究科 中野長久)◉岡山大学(新技術研究センター 仁科勇太)◉お茶の水女子大学(人間文化創成科学研究科 渡辺知恵美)◉花き研究所(花き研究領域 大坪憲弘)◉学習院大学(理学部 清末知宏)◉金沢大学

(医学系研究科 郡山恵樹)◉関西学院大学(理工学部 巳波弘佳)◉基礎生物学研究所(広報国際連携室 倉田智子)◉北里大学(理学部 井上浄)◉九州大学(システム情報科学研究院 中村大輔)◉京都大学(化学研究所 浅見耕司,理学研究科 前野悦輝,冨田良雄,布施直之,森和俊,物質―細胞統合システム拠点 原田慶恵,薬学研究科 土居雅夫,奥野恭史,医学研究科 原田浩,防災研究所 寶馨,生存圏研究所 篠原真毅,ウイルス研究所 松岡雅雄,農学部 河井重幸)◉近畿大学(総合理工学研究科 浅野昌也)◉群馬大学(生体調節研究所 北村忠弘)◉慶應義塾大学(慶應義塾大学病院 山川裕之,理工学部 足立修一,牛場潤一,松本緑)◉高エネルギー加速器研究機構(広報室長 森田洋平)◉神戸大学(遺伝子実験センター 森垣憲一,医学研究科 新矢恭子)◉国際基督教大学(理学研究科 小林牧人,アーツ・サイエンス研究科 布柴達男)◉国立感染症研究所(ウイルス第二部 有田峰太郎)◉埼玉大学(理工学研究科 長谷川有貴,西山佳孝,日原由香子,是枝晋)◉産業技術総合研究所(生物プロセス研究部門 藤原すみれ)◉静岡大学(創造科学技術大学院 田中滋康,永津雅章)◉首都大学東京(理工学研究科 住吉孝行,水沼博,小方聡,古島剛)◉上智大学(国際教養学部 岡田仁孝,理工学部 早下隆士)◉生理学研究所(細胞器官研究系 小泉周)◉総合研究大学院大学(先導科学研究科 本郷一美)◉千葉工業大学(工学部 富山健)◉千葉大学(園芸学研究科 後藤英司)◉筑波大学(生命環境科学研究科 濱健夫,佐藤忍,白岩善博,三浦謙治,人間総合科学研究科 足立和隆,数理物質科学研究科 小林正美)◉帝京大学(医学研究科 槇村浩一)◉東海大学(ワーク・ライフ・バランス推進室 谷俊子,理学部 石原良美,工学部 小島直也)◉東京医科歯科大学 (国際交流センター 竹本佳弘,難治疾患研究所 木村彰方)◉東京海洋大学(海洋科学部 岡本信明,神田穣太,海洋科学技術研究科 廣野育生,理事・副学長 竹内俊郎)◉東京工科大学(メディア学部 佐々木和郎)◉東京工業大学(バイオ研究基盤支援総合センター 太田啓之,社会理工学研究科 梅室博行,生命理工学研究科 有坂文雄,理工学研究科 石曽根隆,大竹尚登,総合理工学研究科 柏野牧夫)◉東京工芸大学(工学部 西宮信夫)◉東京大学(農学生命科学研究科 高橋修一郎,嶋田透,大島研郎,生物生産工学研究センター 小柳津広志,理学系研究科 榎森

配布・設置詳細は、incu-be WEBをご覧ください。http://www.incu-be.com/

「研究キャリア」を考えるきっかけとして、研究活動の活性化を促進するために、『incu-be』の配布にご協力くださる先生方を募集しております。ご協力いただける場合には、右までご連絡ください。お待ちしております。

[お問い合わせ先]株式会社リバネス 人材開発事業部incu-be編集部Tel:03-6277-8041  Fax:03-6277-8042E-mail:[email protected]

研究キャリア応援マガジン『incu-be』は、研究の世界へ踏み出した大学生・大学院生・ポスドクに対して、研究経験が活きる「研究キャリア」を歩んでほしいというメッセージを込めて、2007年6月に創刊しました。研究者や、研究経験を活かした分野で活躍する人々のインタビュー記事、研究活動を支援する有用情報を掲載した雑誌として、毎号2万部を全国理系大学の研究室などに年4回、配布・設置しております。2010年9月発刊の『incu-be』11号より、若手研究者応援教員のみなさまに配布のご協力をいただいております。

配布先一覧

203名

■ incu-be 配布・設置

『incu-be』は全国の理系大学・大学院の学生課・就職課で配布しております。詳しい配布・設置場所につきましては http://www.incu-be.com/pub/ をご覧ください。学校単位での配布・設置をご希望の場合は [email protected] までご連絡ください。また、Amazon ならびに全国の大手書店(紀伊國屋、丸善、ジュンク堂など)にてご購入も可能です。

株式会社リバネス incu-be 編集部

研究を始めたら、incu-beを手に取ろう!

『incu-be』は、自らの未来に向かって主体的に考え、行動する理工系の若手研究者のための雑誌です。

多くの大学、企業とともに理工系の研究キャリアを応援します。

< STAFF >リバネス出版編集部 編

編集長 磯貝 里子

編 集 環野真理子 石澤 敏洋 武田 隆太 徳江紀穂子 長谷川和宏 小橋 優子 住吉美奈子 瀬野 亜希

発行人 丸  幸弘

発行元 リバネス出版 (株式会社リバネス) 〒 160-0004 東京都新宿区四谷 2-11-6  VARCA四谷 10F Tel 03-6277-8041 Fax 03-6277-8042 http://lne.st

表 紙   清原一隆(KIYO DESIGN)

D T P   KIYO DESIGN

印 刷 昭栄印刷株式会社

<編集後記>『incu-be』は、リバネスの人材開発事業部メンバーと、自分たちのキャリアを考え、本誌を通して同年代の仲間に伝えたいという理系大学院生とがチームになって制作にあたっています。どんな人がつくっているのかを、読者のみなさんにもっと知ってほしい! というわけで、新コーナーを立ち上げました。その名も「インキュビー編集部ブログ」。編集部スタッフが交代で登場し、日々のあれこれを綴ります。これをきっかけに、編集部スタッフに親しみを持ってもらえたら幸いです。(磯貝 里子)

『incu-be』が、iPadアプリ「Lindoc」に登場予定! https://lindoc.jp/

31 2012.3 No.17

2012.3

No.17

Page 32: インキュビー(incu-be) Vol.17

第1回

超異分野学会株式会社リバネスは、設立した2002年より、分野を超えた若手研究者の

研究発表交流を目的として「超異分野交流会」を実施してきました。

来る2012年3月17日、記念すべき第10回を迎えます。

そこで、これを機に「超異分野学会」と名称を変え、

企業も参加した研究と産業の両方を活性化する活動へ発展させていきます。

アカデミアの研究者と企業の研究者・エンジニアが対等に議論する場、

まったく分野が異なる研究者同士が対等に議論する場を創出することを目指します。

このたび、第1回の開催を記念して、シンポジウムを開催します。

産業界と大学とが連携し、次代を担う若手研究者を支援する

「若手研究者応援プロジェクト」参加企業が

自社の取り組みについて紹介するほか、研究費採択者の講演を行います。

超異分野学会 設立記念シンポジウム

「アカデミア、企業、教育が共存する、 新しいイノベーションの時代」

実施日時 2012年 3月17日(土) 13:00~15:00

お茶の水女子大学 共通講義棟1号館203号室、204号室共通講義棟2号館101号室

場 所

200名定 員

お問い合わせ

❶ 新しい研究スタイルの確立に向けた挑戦 株式会社リバネス 研究開発事業部部長 高橋 宏之

❷ 若手研究者応援企業による講演 株式会社ディスカバー・トゥエンティワン 東レ株式会社  株式会社ニッピ レボックス株式会社 他

❸ リバネス研究費採択者による講演❹ 次の10年を創る、  分野の垣根を越えた研究×教育のかたち  株式会社リバネス 代表取締役COO 高橋 修一郎

※リバネス研究費各賞採択者のポスターセッションも同時開催します。

開催!

[email protected]までご連絡ください。

2012年3月1日発行 リバネス出版

〒160ー0004 東

京都新宿区四谷2-11-6 

VARCA四谷10階

Tel:03ー6277ー8041 Fax:03ー6277ー8042

2012.3 *17

広告に関するお問い合わせはこちら incu-be@

leaveanest.com

研究室から飛び出す、その先は?

<特集>アメリカVS鹿児島? キミの活躍の場はどっちだ

9784903168760

1920440005009

ISBN978-4-903168-76-0

C0440 ¥500E