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はじめに... 各アタッチメントの比較 大阪大学大学院歯学研究科 特任教授(名誉教授) 有床義歯補綴学・高齢者歯科学・スポーツ歯科学分野 日本口腔インプラント学会 専門医・指導医 日本補綴歯科学会 名誉会員 スポーツ歯科医学会 認定医 MMMM有床義歯研究会 主催 前田 芳信先生 NEWS IOD 特別号 2017.07発行 http://www.yamahachi-dental.co.jp/ インプラントオーバーデンチャー (IOD) のアタッチメントの選択 ~天然歯への応用を含めたクーゲルホックの利点~ インプラントオーバーデンチャーのための様々なアタッチメ ントが各社から発売されている。この度、山八歯材工業から発 売されている、「クーゲルホックアタッチメント」のインプラン ト用として「クーゲルホックアバットメント」が薬事承認され発 売に至った。 この製品の開発から携わっているが、本紙面にて他との比較 やその利点を述べたい。 インプラントオーバーデンチャーにおいては、インプラント にて支持を行うことから、良好な咬合力を得られることが期 待できる。その一方で、インプラントには歯根膜が存在しない ことからデンチャーの動き(沈下や回転・側方運動等)を考慮 することが求められる。 特にインプラントの埋入位置・本数によって生じる回転軸の 有無などを考慮した選択が必要になる。下図に各アタッチメン トの許容できる動きを示した。 各アタッチメントそれぞれに許容できる動きは様々なので、 それに沿った選択が求められる。 クーゲルホックについては、『アイドリングスペース』によっ て回転方向並びに上下方向の動きも許容されている。 また、クーゲルホックの利点として、メール部ならびにフィ メール部の高径が小さいことが挙げられる。 これにより大きなクリアラ ンスが必要としないことは デンチャー作製上、大きなメ リットといえる。インプラン トオーバーデンチャーでは 補強構造が不可欠であるが、 クーゲルホックの場合は 「フィメール+補強構造+人 工 歯 」で 最 小 限8m m のス ペースが必要であるが、他の アタッチメントと比較しても 少ないスペースで済む。 アタッチメントによる許容性の違い アイドリングスペースの構造 【 咬合時】 【非咬合時】 咬合 受圧面 【 側方時】 側方圧 アイドリング スペース 義歯床の浮き上がり 8mm 1

NEWS IOD 特別号ƒŸューワンニュース IOD特別号 | 2017.07発行 維持力とメインテナンス インプラントオーバーデンチャーにおいての維持力は

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はじめに...

各アタッチメントの比較

●大阪大学大学院歯学研究科 特任教授(名誉教授) 有床義歯補綴学・高齢者歯科学・スポーツ歯科学分野●日本口腔インプラント学会 専門医・指導医●日本補綴歯科学会 名誉会員

●スポーツ歯科医学会 認定医●MMMM有床義歯研究会 主催

前田 芳信先生

NEWS IOD特別号2017.07発行

http://www.yamahachi-dental.co.jp/

インプラントオーバーデンチャー(IOD)のアタッチメントの選択~天然歯への応用を含めたクーゲルホックの利点~

インプラントオーバーデンチャーのための様々なアタッチメ

ントが各社から発売されている。この度、山八歯材工業から発

売されている、「クーゲルホックアタッチメント」のインプラン

ト用として「クーゲルホックアバットメント」が薬事承認され発

売に至った。

この製品の開発から携わっているが、本紙面にて他との比較

やその利点を述べたい。

インプラントオーバーデンチャーにおいては、インプラント

にて支持を行うことから、良好な咬合力を得られることが期

待できる。その一方で、インプラントには歯根膜が存在しない

ことからデンチャーの動き(沈下や回転・側方運動等)を考慮

することが求められる。

特にインプラントの埋入位置・本数によって生じる回転軸の

有無などを考慮した選択が必要になる。下図に各アタッチメン

トの許容できる動きを示した。

 各アタッチメントそれぞれに許容できる動きは様々なので、

それに沿った選択が求められる。

 クーゲルホックについては、『アイドリングスペース』によっ

て回転方向並びに上下方向の動きも許容されている。

 また、クーゲルホックの利点として、メール部ならびにフィ

メール部の高径が小さいことが挙げられる。

これにより大きなクリアラ

ンスが必要としないことは

デンチャー作製上、大きなメ

リットといえる。インプラン

トオーバーデンチャーでは

補強構造が不可欠であるが、

クーゲルホックの場合は

「フィメール+補強構造+人

工歯」で最小限8mmのス

ペースが必要であるが、他の

アタッチメントと比較しても

少ないスペースで済む。

アタッチメントによる許容性の違い

アイドリングスペースの構造

【 咬合時】 【非咬合時】

咬合受圧面

【 側方時】

側方圧アイドリングスペース

義歯床の浮き上がり

8mm

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ミュー ワン ニュース   I O D 特 別 号   |   2 0 1 7 . 0 7 発 行

維持力とメインテナンス インプラントオーバーデンチャーにおいての維持力は

600g以上が必要と言われている。クーゲルホックにおいては

初期値が700g以上あり、1000回の脱着試験においても劣化

が確認されていない。これにより通常の取り扱いの範囲であ

れば1年間はフィメールの取り換えが不要ともいえる。また、取

り換えの際もデンチャー内部に小型のフィメールが物理的に

とまっているだけなので、極めて容易に取り換えが可能であ

る。日々のメンテナンスについてだが、ポリプロピレン(PP)は

130℃の耐熱性を持つ素材で耐薬品性も高い。これらのこと

から、市販の義歯洗浄剤等を使用して洗浄することで清潔感

を保つことが可能である。

まとめ インプラントを支台とするオーバーデンチャーは歯根膜

がない事から応力緩和は極めて重要なファクターと言える。

クーゲルホックは、その材質並びにアイドリングスペースの

効果により、デンチャーを介して加わる咬合力からインプラ

ントを保護することが期待できる。また、天然歯との混在して

いる症例への利用等その応用性の広さにも大きな期待をし

ている。

 インプラントの数、配置等に適した使用方法を選択すれ

ば、最大限の利用効果が期待でき、インプラントオーバーデ

ンチャーに極めて有効なアタッチメントのひとつとなるとい

える。

フィメールのレジリエンスの効果

安定性把持と回転抑制効果から

第47回公益社団法人日本口腔インプラント学会学術大会当社共催ランチョンセミナー

●開催日時:●開催会場:●セミナー名:● 講 演 名 :

●座長(所属):

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2017年 9月24日(日) 12:20~13:20(予定)

第5会場(仙台国際センター会議棟3階 白橿)

ランチョンセミナー10 

『クーゲルホックアバットメントを用いたイン

プラントオーバーデンチャーの臨床応用と

今後~ミューワンHAインプラントを合わせ

てのその効果~』(仮題)

前田芳信先生(大阪大学大学院 特任教授)

大森桂二先生(大森歯科医院・大森インプラントセンター院長)

●開催日時:●開催会場:●セミナー名:

●講師(所属):

2017年 7月23日(日) 10:00~16:00

大阪/新大阪丸ビル別館4-1号室

『インプラントオーバーデンチャーのア

タッチメントの選択~天然歯根への応用

を含めたクーゲルホックの利点~』

前田芳信先生(大阪大学大学院 特任教授)

当社主催クーゲルホックセミナー情報

セミナー案内

応力緩和機構により

インプラントと天然歯が混在した

症例においても利用できる

[第一回]

●開催日時:●開催会場:

2017年 秋

九州地区予定

[ 第 二 回 ]

2

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 インプラントオーバーデンチャー(以下IODと略す)の臨床への

応用は近年では本邦においても多数の患者に試みられており、特

に無歯顎患者で高度顎堤吸収の症例においては良好な結果が多

く報告されている。無歯顎患者へIODを行う際には固定性のボー

ンアンカードブリッジによるものとIODが挙げられるが患者の負

担を考えると少数のインプラントで機能回復が可能なIODの適応

がより有 用 であ ると考 えら れ る。また 2 0 0 2 年 の M c G i l l

Consensusでは長期的な臨床研究から下顎無歯顎患者には数本

のインプラントを使用したIODを適応することが非常に有効であ

ると発表された。またIODの利点として食物を舌や頬、口唇で咬合

面に運びやすいためスムーズな食事が可能であるとの報告もみら

れる。そして下顎無歯顎患者にインプラントを2本使用する場合は

バーアタッチメントよりもスタッドアタッチメントの方がインプラ

ント体にかかるストレスが少ないという報告もある。

 今回我々は70才女性の下顎無歯顎患者にクーゲルホック(山八

歯材工業)という新規のインプラント上部用アタッチメントを使用

して良好で満足のいく結果を得ることができたので報告する。

患 者 :

初 診 :

主 訴 :

既 往 歴 :

現 病 歴 :

現 症 :

70歳・女性

2016年 10月26日

下顎の歯冠補綴物が脱落して良く咬めない。

高血圧症にて投薬を受けている。

12年程前に上下顎の部分床義歯の作成を受け良好に経過し

摂食もある程度満足のいく状態であったが約2ヶ月前に3 ,23

の歯冠補綴物が脱落し義歯の鈎歯を喪失してしまったために

摂食が十分に行えず当院を受診した。

口腔内では71 17,321 123が残存しているが1 17,321

123は保存不可能であった。また7は歯周疾患は認めるも

適切な歯周処置を行えば鈎歯として利用することは可能と思

われた。パノラマエックス線所見では1 17は残根状態であり

21 1も歯周疾患が進行しており抜歯の適応と判断した。全身

的所見では高血圧症にて投薬を受けているも服用していれば

正常血圧を維持している。その他は特に異常は認められな

かった。

図1 初診時パノラマエックス線所見3 , 123は冠が脱落していた。

また321 , 233 , 1 17は保存不可能と診断した

Ⅰ. 症例の概要

ミュー ワン ニュース   I O D 特 別 号   |   2 0 1 7 . 0 7 発 行

図4 抜歯後2週のパノラマエックス線所見

オトガイ孔間の顎堤の状態は良好な骨高が存在することを確認した

大森 桂二先生

クーゲルホックアバットメントの臨床応用~ミューワンHAインプラントシステムを用いたインプラントオーバーデンチャーについて~

図2 321 123抜歯後2週の口腔内所見抜歯後の経過は良好で粘膜の創傷治

癒は問題ないと判断した

図3 抜歯後2週の口腔内所見両側臼歯部分の歯槽堤は長期の部分

床義歯の使用により中等度の顎堤吸

収を認めた

●福岡歯科大学 咬合修復学講座インプラント学分野 臨床准教授●日本口腔インプラント学会 専門医・指導医・評議員●MIRG 宮崎インプラント研究会 会長●ICOI JAPAN 九州エリア支部役員●FIRA 福岡口腔インプラント研究会 理事・施設長

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 下顎前歯の6本はいずれも保存不可能であることを説明し抜去

後は下顎は無歯顎となるため全部床義歯のみによる治療方法と

IODによる治療法の説明を行ったところ私のIODによる治療の立

案の提示に対し患者は内容を十分に理解した上で IODによる治

療を希望した。

 2017年1月30日に321 123の抜歯を行った。抜歯後の経過

は良好で2週間後に既存の下顎部床義歯の修理を行い暫間義歯と

して使用してもらった。抜歯創の治療を待って同年2月14日に局

麻下に4,4部にインプラント埋入手術を施行した。使用したイン

プラント体はいずれも直径3.8mm長さ10mm(ミューワンHAイン

プラント2ピースタイプ山八歯材工業 日本)を使用した。埋入は骨

造成等の必要性は認めなかったが5から5相当部にかけての

歯槽頂部分に骨鋭縁を認めたのでボーンファイルを使用して骨整

形術を行った。術後の経過は良好で2月22日に抜糸を行い同部に

暫間義歯の軟性リべース処置を行った。

 4月21日に二次手術を行いヒーリングアバットメントを装着し

た。この時のぺリオテスト値は2本とも-7を示した。5月8日に口

腔内にクーゲルホック(メール部分)を装着し下顎総義歯のための

印象採取を行った。5月29日は最終下顎総義歯を装着しクーゲル

ホックアバットメント(フィメール部分)の装着を直接に口腔内にて

即時重合レジンを用いて行った。その後の3週間内に3回の義歯

調整とインプラント周囲のブラッシング指導を行った。

図5 術前CT所見左右のオトガイ孔の位置を確認し、その5ミリ遠心にインプラント埋入位置を決

定し43 相当部にインプラントを埋入することとしたインプラント体の大きさは

両側とも直径3.8ミリ長さ10ミリとした

Ⅱ. 治療内容

ミュー ワン ニュース   I O D 特 別 号   |   2 0 1 7 . 0 7 発 行

図10 術直後のパノラマエックス線所見左右のインプラント体はほとんど平行な状態で埋入することが出来た。また両側の

オトガイ孔からも十分な安全距離のある場所に埋入されていることを確認した

図6 インプラント埋入手術時の口腔内所見①5 から 5にわたるにわたり歯槽頂部

分に骨の鋭縁を認めた

図7 インプラント埋入手術時の口腔内所見②歯槽頂部分の鋭縁をボーンファイル

で骨整形を行った後に4,4相当部に

インプラント埋入のためのドリリング

を行った

図8 インプラント埋入手術時の口腔内所見③インプラント体を埋入終了した。骨造

成等の必要性は認めなかった

図9 インプラント埋入手術時の口腔内所見粘膜の縫合終了時の所見で、マットレ

ス縫合と単純縫合を併用した

図11 インプラント2次手術時の口腔内所見4,4部ともに高さ5ミリのヒーリング

アバットメントを装着した

装着後のぺリオテスト値は両側とも

-7を示し十分な骨結合が起こってい

ることが示唆された

図12 ヒーリングアバットメント装着後2週の口腔内所見インプラント周囲の粘膜の治癒状態

は良好であった。同日にクーゲルホッ

クのメール部分をインプラント上部に

装着し、暫間義歯の内面にフィメール

部分を装着した

図13 最終上部構造を装着して1か月の口腔内所見上部構造周囲の粘膜は患者のセルフメンテナンスが充分に行われており清掃状

態は良好で炎症所見などの異常は認めなかった

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下顎の最終義歯装着後は1ヶ月に1回のメンテナンスを行ってい

るが患者の口腔衛生状態は良好でインプラント周囲骨吸収や軟

組織の異常等は認めていない。義歯の咬合状態も毎回チェックを

行っているが特に問題はなく経過してる。IOD装着後の患者の満

足度は非常に高く咀嚼能力は大きく向上したものと考えられた。

義歯装着後の6ヶ月のX線所見においてもなんら異常を認めてい

ない。今後も注意深く経過観察を行っていく予定である。

ミュー ワン ニュース   I O D 特 別 号   |   2 0 1 7 . 0 7 発 行

図16 デンチャー装着時の口腔内所見安定した使用感から高い患者満足度が得られている

図14 最終義歯の作製を行った患者の暫間義歯の試用期間は1か月間であった

Ⅲ. 経過

 下顎無歯顎患者への全部床義歯の作成は上顎全部床義歯に比

較して義歯床面積が狭くなることや舌圧を側方から受けることな

どの理由で下顎総義歯の安定は臨床的に難しいとされている。歯

科医の力量や技術力において大きな差が出てくるものと考えられ

る。また高度な顎堤吸収患者においては、下顎全部床義歯の安定し

た使用はかなり高度な義歯作成の技量が歯科医に問われる事に

なる。

 しかしIODを使用することで下顎義歯の安定性は大きく向上す

ることがこれまでの経験で実証されている。McGill consensusで

はIODが今後の下顎総義歯治療のスタンダードとして望ましいこと

を提唱している。また2本のインプラント体を埋入することを示し

ているがどの様なアバットメント使用すれば良いかという所は触れ

ておらずアタッチメントの種類についてはいろいろな意見の多い

所である。

 下顎無歯顎患者はインプラント埋入術後も義歯を早めに装着し

て咀嚼機能の回復を早期に回復させることも考えなければならず

この様な症例においては早期に骨結合を期待できる超薄膜HA

コーティングインプラント(ミューワンHAインプラント2ピース

タイプ 山八歯材工業 日本)を使用することで比較的早い日程で

ヒーリングアバットメントを装着することが可能であった。また今回

は新しく開発されたクーゲルホックアバットメントを使用すること

で高齢者にとっても着脱が容易であり、咬合力が大きく義歯に加

わった場合においても上下間の動きの許容性があること及び側方

力に対する動きに対しても緩衝作用を得ることが可能で、インプラ

ント本体に負荷が過重になることを避けることが可能なアバットメ

ントと思われた。

Ⅳ. 考察

図15 術後6か月のパノラマエックス線所見インプラント体周囲の骨の状態は良好で骨吸収などの異常所見は認めていな

い。今後も注意深く検査を行っていく予定である

 ミューワンHAインプラン

トは薄膜の結晶性の高いハ

イドロキシアパタイト(HA)

がコーティングされている。

このHA膜は均一で且つチタ

ン基材との密着性が非常に

高い。140Ncmの埋入トルク

でも剥離しないとのデータ

から今までのHAコーティングインプラントと比較しても安心感がも

てる。また、結晶サイズが60~80nmとのことで、天然骨のHA結晶サ

イズと近似しているとの報告もある。

 この結晶サイズが功を奏して、動物実験での結果から他のHA

コーティング方法と比較しても早期で且つ強固な骨結合が得られ

ることが示されている。

5

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また、HAコーティングインプラントでありながら、高い感染抵抗

性を持つことも大きな魅力である。

東京医科歯科大学にて行われた実験で、インプラント周囲に意

図的に感染炎症を起こさせ、骨吸収を経時的に見た動物実験にお

いて、スパッタイトはプラズマ溶射HAコーティング法と比べて骨

吸収が少なく、切削加工チタンやサンドブラスト酸エッチングの

表面状態の製品と同程度と確認されている。

これは治験での報告でも確認されており、治験開始から10年以

上経過でもインプラント周囲炎や大きな骨吸収が確認されてお

らず長期予後が良好と示されている。

<参考文献>●菅原孝 他・インプラントオーバーデンチャーの荷重支持能力に関する実験

的研究、日本補綴歯科学会誌 2007:51:270-279●西村正宏 他・ミニインプラント高齢者無歯顎患者の下顎義歯安定のために、

広島大学歯学誌 2007:39:185-187●赤川安正、松浦正朗 他・よくわかる口腔インプラント学第2版:医歯薬出版、

2011:193-200●Ozeki K, Yuhta T, Aoki H, et al: Bio-Medical Materials and Engineering, 2003:13:451-463.●Madi M, Kasugai S, et al: J oral Maxillofac Implants, 2013:28:701-709.

1.下顎無歯顎患者にIOD治療を行うことで患者の大きな満足を得

ることができた。

2.またHAコーティングインプラントを使用することで患者の口腔

機能の回復が比較的早期に行うことが可能となった。

3.新開発のクーゲルホックアバットメントはインプラント用アタッ

チメントとしては製品化されて日は浅いが天然歯用アタッチメン

トとしての臨床応用は古くから行っておりその実績どおりにイン

プラント用アタッチメントとしても臨床的に安定した状態を維持

している。

4.クーゲルホックはアバット部分の高さが低くそのため回転力の

許容や側方力に対しての緩和が大きいことも利点の1つとして

考えられ、フィメール部分に使用したポリプロピレン(PP)という

樹脂も実験データとして衝撃吸収の効果が高いことも立証され

ている、また患者の着脱に対する操作性も高く安定した使用感

があるとの患者の感想を得た。

Ⅴ. 結論

患者;70歳 女性

 様々なインプラントオーバーデンチャーパーツは使用してき

ましたが、今回のクーゲルホックアバットメントに関しては「患者

満足度」について最も高い感触を得られています。維持力が長

期に継続されることにより噛みごこちの良いデンチャーを継続

できること。「アイドリングスペース」によってデンチャーの圧迫

感が少なく、付けごこちも良いことが患者様から聞かせて頂け

ることは非常に嬉しい事です。

ミュー ワン ニュース   I O D 特 別 号   |   2 0 1 7 . 0 7 発 行

神岡 徹 先生

ユーザーレポート

(東京都 北区開業)

ユーザーレポート

1

患者;78歳 男性

 高齢になり複数インプラントの埋入が難しい症例や、義歯の

使用に慣れている患者さんの義歯維持力向上のためにクーゲ

ルホックアタッチメントは有効な手段であると思います。また、ア

タッチメントスペースが少なくても装着可能であり、維持力も持

続するため臨床上大変有用な選択肢のひとつであると考えま

す。さらには他アタッチメントと比べて低価格というのも利点で

はないでしょうか。

関 孝史 先生(埼玉県 所沢市開業)

ユーザーレポート

2

6

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 メール間角度を変えて維持力を測定した。その結果、角度10度まで維

持力は変わらなかったが、20度を超えると維持力が大きく増大した。こ

れは市販Oリングタイプとほぼ同等の傾向であった。

 着脱を繰り返した後の維持力の変化を調べたところ、プラスチックメー

ルタイプは100回で約20%維持力が低下したが、それ以降の低下は軽

微で、1,000回でも750gの維持力を示した。一方、Oリングタイプは

100回で約30%低下し、それ以降も着脱回数に従って直線的に低下し、

1,000回での維持力は450gであった。

 クーゲルホックフィメールに使用されている材料は、代表的なエンジ

ニアリングプラスチックの一つ、ポリプロピレン(PP)です。

 PPは引張り強さ、曲げ強さ、硬度、伸びなど高い機械的特性を有してい

ます。また化学的にも耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性にすぐれ、かつ吸水

性を有していないことから、さまざまな使用環境下でも安定した機械的

特性が得られる、というすぐれた特徴を有しています。

 PPはこのように、機械的特性、化学的安定性にすぐれ、かつ生体安全

性にもすぐれていることから、今日ではディスポシリンジ、心臓カテーテ

ルコネクター、縫合糸など、水溶液や体液などに長時間触れる可能性の

ある医療用品に広く応用されています。

 クーゲルホックフィメールも、口腔内という湿潤環境で継続使用される

中においても安定した機械的強度が維持されることになります。

Basic Information繰り返し脱着時の維持力評価

ミュー ワン ニュース   I O D 特 別 号   |   2 0 1 7 . 0 7 発 行

クーゲルホックフィメールの物理化学的特性

メール間角度

維持力(g)

着脱回数 (回 )

維持力(g)

クーゲルホックアバットメント

Oリングタイプ

項目

物理的性質

  比重

  吸水率

機械的性質

  引張り弾性率

  引張り降伏応力

  伸び

  曲げ弾性率

  曲げ応力

  ロックウェル硬度(Rスケール)

化学的性質

  耐酸性

  耐アルカリ性

  耐溶剤性

特徴

単位

MPa

MPa

MPa

MPa

数値

0.91

0.01

2,000

55

200

2,050

40

R85-110

高剛性で化学的に安定

メール間角度と維持力の関係

アタッチメント維持力試験治具

繰り返し着脱回数と維持力の関係

着脱反復後に維持力測定

フィメール

メール間角度(0~30 度)

メタルメール

アバットメント設置角度の評価

7

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ポスト部長さ 5.05㎜

ポスト部長さ 5.05㎜

全長7.75㎜

全長7.75㎜

球状部の直径φ2.16㎜

球状部の直径φ2.16㎜

2.30㎜2.30㎜

φ3.50㎜φ3.50㎜

口径 φ2.04㎜口径 φ2.04㎜

クーゲルホックアタッチメント(メタルメール タイプ)

クーゲルホックアバットメント ドライバービット

歯科用精密ボールアタッチメント

標準価格

メタルメール 1個/箱包装単位

¥9,800(税抜)

■ メタルメール ■ フィメール(クーゲルホックアバットメントにも共用です)

クーゲルホックアタッチメントには、本品(メタルメール タイプ)の他に、メール部を鋳造して製作するタイプの商品もあります。詳細については別途、リーフレットをお取り寄せのうえご参照下さい。

※フィルム中央の穴にメール 球面部を差し込んでご使用下さい。

[セッティングフィルム]

標準価格

包装単位フィメール 1個/箱

セッティングフィルム2枚付属

¥2,800(税抜)

フィメール 5個/箱セッティングフィルム10枚付属

¥12,600(税抜)

1個入1個入 5個入

クーゲルホックアバットメント

直 径直 径

カフ高さカフ高さ

20mm20mm

型 番

KA34-02

KA34-04

KA34-06

KA38-02

KA38-04

KA38-06

KA43-02

KA43-04

KA43-06

KA50-02

KA50-04

KA50-06

カフ高さ(mm)

2

4

6

2

4

6

2

4

6

2

4

6

直径(mm)

3.0

3.4

3.9

4.6

<φ3.4用 > <φ4.3用 >

<φ3.8用 > <φ5.0用 >

ミューワンHAインプラント 2ピース高度管理医療機器 歯科用インプラントシステム 医療機器承認番号 22600BZX00051000

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〒443-0105 愛知県蒲郡市西浦町大知柄54番地1 TEL (0533)57-7121

5109700028

<お問合せ先:インプラント営業所 >

03-3295-3451 03-3295-3452TEL FAX

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ミューワンインプラント営業部 検索

〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-20-14 増渕ビル2Fhttp://www.mu-one.com