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相互依存性を検証する手段 としてのAPIM実証データを用いて 鬼頭美江(明治学院大学 社会学部) 佐藤剛介(名古屋大学 学生相談総合センター)

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相互依存性を検証する手段としてのAPIM:実証データを用いて

鬼頭美江(明治学院大学 社会学部)

佐藤剛介(名古屋大学 学生相談総合センター)

Outline1. APIM:基礎編

◦ 二者関係における相互依存性とは?

◦ APIMとは?

2. APIMの適用例◦ 夫婦データを用いてAPIMの実証例を紹介

3. APIM:実践編◦ APIMを行う際のTips

Aのストレス反応には、A自身のネガティブ感情だけでなく、Bのネガティブ感情も影響

二者関係における相互依存性

A B

イライラ!

相互依存性=一個人の行動・心理過程・特性が別の個人に影響を与えている状態(Kenny & Cook, 1999)

つまらない・・・

つまらない・・・

Aのネガティブ感情

Aのストレス反応Bのネガティブ感情

APIM とは?• 行為者観察者相互依存性モデル(Actor-Partner Interdependence Model: APIM; Kenny, 1996)

• 二者関係における変数の関連性を、自分自身からの効果と相手からの効果に分離して、それぞれの効果を検証する(e.g., Kenny et al., 2006; 清水、2014)

パートナーA1

パートナーB1

個人

ペア ペア1

パートナーA2

パートナーB2

ペア2

パートナーAn

パートナーBn

ペアn

全参加者

APIMでは、二者間の相互依存関係が分析可能

・・・・・

APIM:パス図

A:ネガティブ感情 A:ストレス反応

B:ネガティブ感情 B:ストレス反応

e1

e2

Actor効果(A)

Actor効果(B)

APIM:パス図

A:ネガティブ感情 A:ストレス反応

B:ネガティブ感情 B:ストレス反応

e1

e2

Partner効果(A:ネガティブ感情→

B:ストレス反応)

Partner効果(B:ネガティブ感情→

A:ストレス反応)

APIMの適用例• 対人関係

◦恋人の愛着スタイルは、ストレス状況における行動を予測するか?(Cambell et al., 2001)

◦カップルの性別や年齢は、関係持続性を予測するのか?(West et al., 2008)

◦攻撃行動や向社会的行動は、友人関係の良好さを予測するのか?(Cillessen et al., 2010)

• 臨床心理学◦夫婦の対処方略は、PTSDの重症度を予測するのか?(Gilbar et al., 2012)

• スポーツ心理学◦選手とコーチの自己効力感は、3ヶ月後の選手の努力量を予測するのか?(Jackson & Beauchamp, 2010)

二者関係の種類• 親子

• 教師-生徒

• コーチ―選手

• 夫婦

• 恋人

• 友人

• 同僚

識別可能

=特定の要因によって二者の得点を区別できる

識別不可能

=特定の要因によって二者の得点を区別することができない

役割によって識別可能

異性間→性別によって識別可能

同性間→識別不可能

Outline1. APIM:基礎編

◦ 二者関係における相互依存性とは?

◦ APIMとは?

2. APIMの適用例◦ 夫婦データを用いてAPIMの実証例を紹介

3. APIM:実践編◦ APIMを行う際のTips

APIMの実証例• 327名の参加者が質問紙に回答

• そのうち、夫婦のどちらかの回答しか得られなかった79名と性別不明な2名を除いた、123組(246名)が分析対象

APIMの実証例:測定変数• 自尊心尺度(Rosenberg, 1965):6項目

◦夫α=0.83、妻α=0.84

• 夫婦満足度:1項目

• 人生満足度:1項目

• 自己収入:1項目

実証例における問い1a. 夫の自尊心が高いほど、夫と妻が感じる夫婦満足度は高いのか?

1b.妻の自尊心が高いほど、妻と夫が感じる夫婦満足度は高いのか?

2a. 夫の収入が多いほど、夫と妻の人生満足度は高いのか?

2b.妻の収入が多いほど、妻と夫の人生満足度は高いのか?

APIMの実証例1:モデル

夫:自尊心 夫:夫婦満足度

妻:自尊心 妻:夫婦満足度

e1

e2

1. 夫と妻の自尊心が高いほど、夫婦それぞれが感じる夫婦満足度が高いのか?

APIMの実証例1:結果

夫:自尊心 夫:夫婦満足度

妻:自尊心 妻:夫婦満足度

e1

e2

Note: AMOSを用いて分析。数値は非標準化パス係数および級内共分散。a p = .057, * p < .05, *** p < .001

0.03

0.61a

1.05***

0.91* 0.67*1.43***

妻のActor効果:「自尊心の高い妻ほど、夫婦満足度が高い」

APIMの実証例1:結果

夫:自尊心 夫:夫婦満足度

妻:自尊心 妻:夫婦満足度

e1

e2

Note: AMOSを用いて分析。数値は非標準化パス係数および級内共分散。a p = .057, * p < .05, *** p < .001

0.03

0.61a

1.05***

0.91* 0.67*1.43***

夫→妻のPartner効果:「自尊心の高い夫を持つ妻ほど、夫婦満足度が高い」

APIMの実証例1:結果

夫:自尊心 夫:夫婦満足度

妻:自尊心 妻:夫婦満足度

e1

e2

Note: AMOSを用いて分析。数値は非標準化パス係数および級内共分散。a p = .057, * p < .05, *** p < .001

0.03

0.61a

1.05***

0.91* 0.67*1.43***

妻→夫のPartner効果:「自尊心の高い妻を持つ夫ほど、夫婦満足度が高い」

APIMの実証例2:モデル2. 夫と妻の収入が多いほど、夫婦それぞれの人生満足度が高いのか?

夫:収入 夫:人生満足度

妻:収入 妻:人生満足度

e1

e2

APIMの実証例2: 結果

夫:収入 夫:人生満足度

妻:収入 妻:人生満足度

e1

e2

- 0.13

0.79***

0.10

0.36* - 0.240.29**

夫のActor効果:「自己収入の高い夫ほど、人生満足度が高い」

Note: AMOSを用いて分析。数値は非標準化パス係数および級内共分散。* p < .05, ** p < .01, *** p < .001

APIMの実証例2: 結果

夫:収入 夫:人生満足度

妻:収入 妻:人生満足度

e1

e2

- 0.15

0.79***

0.10

0.36* - 0.240.97**

夫→妻のPartner効果:「収入の高い夫を持つ妻ほど、人生満足度が高い」

Note: AMOSを用いて分析。数値は非標準化パス係数および級内共分散。* p < .05, ** p < .01, *** p < .001

Outline1. APIM:基礎編

◦ 二者関係における相互依存性とは?

◦ APIMとは?

2. APIMの適用例◦ 夫婦データを用いてAPIMの実証例を紹介

3. APIM:実践編◦ APIMを行う際のTips

データの形式:識別可能データ• Individual Structure

Kenny et al. (2006) Dyadic Data Analysis. p. 16.

ペアID ペア内の個人ID(性別、役割など)

個人レベルのデータ構造→個人のデータを縦に並べ、一個人で一行

• Dyad Structure

データの形式:識別可能データ

ペアID

ペアレベルのデータ構造 → 一ペアで一行ペアのデータを縦に並べ、変数として個人のデータを横に並べる

ペア内の個人1の変数 ペア内の個人2の変数

Kenny et al. (2006) Dyadic Data Analysis. p. 16.

データの変換• Individual Structure → Dyad Structure

• SPSSにおけるデータ変換マクロ(Kenny, 2014)◦ http://davidakenny.net/kkc/c1/restructure.htm

• 欠損値→マクロがうまく動作しない可能性

APIM におけるPower分析• PowAPIM.R (Kenny, 2015)

◦ Rを用いた、APIMにおけるPower分析

• ブラウザで利用可能なPower分析ツール(Ackerman & Kenny, 2015)

• https://robert-ackerman.shinyapps.io/APIMPowerR/

Power分析:識別不可能データ

1. 「Power given N」を選択

2.入力する効果量の種類を選択

3. Actor効果とPartner効果の効果量を入力

4.二者の独立変数間、エラー間の相関を入力

5.欠損値のないペア

数、欠損値を含むペア数を入力

6.第1種の過誤率を入力

https://robert-ackerman.shinyapps.io/APIMPowerR/

Power分析:識別可能データ

1. 「Power given N」を選択

2.入力する効果量の種類を選択

3. Actor効果とPartner効果の効果量を入力

4.二者の独立変数間、エラー間の相関を入力

5. 「0」と入力

7.第1種の過誤率を入力

https://robert-ackerman.shinyapps.io/APIMPowerR/

6.ペア数を入力

必要サンプル数の決定

1. 「N given desired level of power」を選択

2.入力する効果量の種類を選択

3. Actor効果とPartner効果の効果量を入力

4.二者の独立変数間、エラー間の相関を入力

6. Powerを入力

5.第1種の過誤率を入力

https://robert-ackerman.shinyapps.io/APIMPowerR/

Actor効果を検出するには59組、Partner効果を検出するには159組のペアデータが必要

https://robert-ackerman.shinyapps.io/APIMPowerR/

Take Home Message• APIMは、ペアデータを用いて、二者間における相互依存性を検討するために必須の分析方法

• 特に、Actor効果だけでなく、Partner効果による個人間過程の分析が有用

ご清聴ありがとうございました

鬼頭美江(明治学院大学 社会学部)

佐藤剛介(名古屋大学 学生相談総合センター)

測定変数の項目例• 自尊心尺度

◦ 「少なくとも人並みには、価値のある人間である」

◦1=全くそう思わない、5=とてもそう思う

• 夫婦満足度◦ 「全体的に考えて、あなたは次にあげる人間関係にどのくらい満足していますか。--配偶者(あるいは恋人)との関係」

◦1=不満、10=満足

測定変数の項目例• 人生満足度

◦ 「全体的に考えて、あなたは、あなたの生活にどのくらい満足していますか。」

◦ 1=不満、10=満足

• 収入◦ 「過去一年間のあなた個人の収入は、税・手当て、ボーナス込みで次の中のどれに近いでしょうか。」

◦ 1=なし、2=150万円未満、3=300万円未満、4=500万円未満、5=700万円未満、6=1,000万円未満、7=1,000万円以上